説明

それぞれの分子が明確なグリカン単位を含む2つのN−グリコシル化部位を有する遺伝子組み換えあるいは形質転換因子VII組成物

【課題】本発明は、ウイルスに対する安全性が増大し、免疫原性が非常に低減されたFVIIの組成物を開発することを目的とする。
【解決手段】本発明は、それぞれの分子が2つのN−グリコシル化部位を示す遺伝子組み換えあるいは形質転換因子VII(FVII)の組成物において、その組成物のすべてのFVII分子の中でのGalα1、3Galグリカン部分の割合が0−4%の範囲であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はそれぞれの分子が明確なグリカン単位を含む2つのN−グリコシル化部位を有する組成物の形状で得られる遺伝子組み換えあるいは形質転換因子VIIと、医薬品としてのその利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
因子VII(FVII)は、活性化された状態(FVIIa)で、カルシウム及び繊維因子の存在下で因子X及び因子IXを活性化する凝固プロセスに関与するビタミンK依存糖蛋白質である。FVIIは406の残基で構成される単一ペプチド鎖の形状で分泌され、その分子量は約50kDaである。FVIIは4つの明確な構造領域を有しており、それはN末端γカルボキシル領域(Gla)、2つの『表皮成長因子(EGF)状』領域、そして1つのセリン・プロテアーゼ領域である。FVIIからFVIIaへの活性化は、Arg152−Ile153領域(アルギニン152−イソロイシン153)結合の切断によって特徴付けられている。従って、FVIIaは分子量が約20kDaの152個のアミノ酸で構成される軽鎖と分子量が約30kDaの254個のアミノ酸で構成される重鎖が1つのジスルフィド架橋で連結された1つの化合物(Cys135−Cys262)である。
血漿FVIIaはいくつかの翻訳後修飾を含んでおり、最初の10個のグルタミン酸はγカルボキシル化されており、Asp63は部分的に水酸化されており、Ser52(セリン52)とSer60(セリン60)はOグリコシル化されていてそれぞれグルコース(キシロース)0−2及びフコース・パターンを担持しており、そしてAsn145(アスパラギン145)とAsn322(アスパラギン322)は主に2つの触角部分でバイシアル化された複雑な構造によってNグリコシル化されている。
FVIIは、例えば先天的なFVII欠乏症など、その他の凝固因子の欠乏症を示す患者の場合と同様に因子VIIIの欠乏(A型血友病)あるいは因子IX の欠乏(B型血友病)を示す血友病患者の措置に用いられる。従って、注射可能なFVIIaの濃縮物を利用できるようにすることが必要である。
FVIIa濃縮物を得るための最も古い方法は、分留によってもたらされる結晶淡白からのFVIIaを精製するステップを含んでいた。
【0003】
その目的のために、文献EP0,346,241はFVII及びFVIIaと、因子IX(FIX)、X(FX)及びII(FII)、特にPPSB(P=プロトロンビンあるいはFII、P=プロコンバーチンあるいはFVII、S=スチュアート因子あるいはFX、そしてB=抗血友病因子BあるいはFIX)の前段階溶出液などのその他の蛋白質を含んでいる血漿タンパク質の分留の二次性生物の吸着と溶出後に得られるFVIIaを多量に含んだ画分の調製について述べている。このプロセスの欠陥は、得られたFVIIが依然として微量の他の凝固因子を含んでいることである。
【0004】
同様に、文献EP0,547,932はビタミンK依存因子及びFVIIIをほとんど含んでいない高純度FVIIa濃縮物の製造プロセスについて述べている。このプロセスで得られるFVIIは、その純度にも拘らず、残留血栓形成性活性を示す。
【0005】
従って、これらのプロセスの重大な欠陥のひとつは、それらのプロセスが少量の生成物だけをもたらす点である。さらに、血漿内に存在している他の蛋白質をまったく含まない生成物を得ることはさらに難しい。最後に、ウイルスやバクテリアに関する安全性を確保するために血漿凝固因子調製のすべての段階で多数の予防措置が取られているにも拘らず(献血者の追跡調査、公知のウイルスやバクテリアによる汚染を検出するためのテスト、厳格な精製、そして、血液に含まれる病原性作用因子放出の危険性をできるだけ減らすためのウイルス非活性化措置)、病原性作用因子による汚染のすべての危険性は必ずしも排除されていない。
加えて、新しいタイプのクロイツフェルド・ヤコブ病の出現が血液製剤によるこれまでに知られていない病原性作用因子の放出の懸念を抱かせている。さらに、献血者から集められる血漿の量も依然として限られたものである。
【0006】
従って、1980年代以後、ヒトの因子VIIをコードするDNAが単離され(Hagen et al. (1986); Proc. Natl. Acad. Sci. USA; Apr 83(8): 2412−6)、哺乳動物BHK細胞(生まれたばかりのハムスターの腎臓)で発現された(文献EP0,200,421)。FVIIを製造するこの方法が必要な蛋白質がつくられる培養液の管理制御に利点を有しているとしても、ハムスターの細胞がそれらが発現する蛋白質にGalα1,3Gal部位を混入させてしまい(Spiro RG et al, J. Biol. Chem, 1984, vol.259, N 15, 9858及びFurukawa K. et al., J. Biol. Chem, 1992, vol. 267, N. 12, 8012)、その免疫原性が実証されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】EP0,346,241
【特許文献2】EP0,547,932
【特許文献3】EP0,200,421
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
循環しているヒトB型リンパ球の1%がエピトープGalα1,3Galに対する抗体を発生させることが分かった〈Galili et al, Blood, 1993, vol.82,2485〉。このエピトープと抗体がその捕体を活性化させて生体移植後の急性移植拒絶反応などの重大な免疫反応につながる。ハムスター細胞でつくられたFVIIで措置を受けた血友病患者の15−20%が免疫反応を示すことが示された(Prowse C.V et al, Blood Reviews, 1988, vol. 12, 99)。このタイプの免疫反応は血友病患者においては悲劇的な結果をもたらす。というのは、FVIIとFVIIIは免疫原性に変化すると、出血を引き起こし、対処することが非常に困難だからである。
従って、免疫原性をできるだけ低下させ、好ましくはウイルスに関する安全性が増大した遺伝子組み換えあるいは形質転換FVIIaの組成物を得る必要性は依然として存在している。
従って、本出願人は好ましくはウイルスに対する安全性が増大し、免疫原性が非常に低減されたFVIIの組成物の開発を目的として研究を行った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、それぞれの分子が2つのN−グリコシル化部位を示す遺伝子組み換えあるいは形質転換因子VII(FVII)の組成物において、その組成物のすべてのFVII分子の中でのGalα1、3Galグリカン部分の割合が0−4%の範囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、ウイルスに対する安全性が増大し、免疫原性が非常に低減されたFVIIの組成物を開発することができた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】雌のウサギの母乳内でつくられた本発明による形質転換FVIIの抽出及び精製/活性化プロセスの一例の概要図である
【図2】N−グリコシル部分を担持するペプチドの解析された質量分光スペクトルESIを示す図である
【図3】PNGase FによるFVIIの脱グルコシル化後の電気泳動写真HPCE−LIFを示す図である 書き込み: 中央の2つの電気泳動写真: FVII−tg; (△) フコース、(■) GlcNAc (N−アセチルグリコサミン)、(●)マンノース、(●)ガラクトース、(▲) シアル酸 電気泳動写真(上):FVII−pd 電気泳動写真(中央:2):FVII−tg 電気泳動写真(下): FVII−rec
【図4】NP−HPLCによるFVII−tg(電気泳動写真:中央)、FVII−pd(電気泳動写真:中央)、及びFVII−rec(クロマトグラフィ写真:下)の特徴づけを示す図である。糖残基についての書き入れ:図3参照。
【図5】MALDI−TOFMSによるFVII−tgのグリカン形態の大多数の表示を示す図である。糖残基についての書き入れ:図3参照。
【図6】サイログロブリンのオリゴ糖のHPCE−LIFによる分析を示す図である。糖残基についての書き入れ:図3参照。
【図7】形質転換FVIIのオリゴ糖のHPCE−LIFによる分析を示す図である。糖残基についての書き入れ:図3参照。
【図8】Galα1、3Gal構造の定量を示す図である。
【図9】FVII抽出メカニズムの例を示す図である。
【図10】O−グリコシル部分を担持するペプチドの解析された質量分光スペクトルESIを示す図である。これらのペプチドはトリプシンによる消化、そしてLC−SEIMS分析後に得られたものである。Fuc:フコース;Glc:グルコース;Xyl:キシロース。
【図11】γ−カルボキシル化箇所を示す図である。これらのペプチドはAsp−Nによる消化とLC−SEIMS分析後に得られたものである。得られた結果はFVII−tgのそれぞれのバッチと非常に類似している。それぞれのペプチドの質量はモノアイソトピック質量である。Gla:γ−カルボン酸
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、それぞれの分子が2つのN−グリコシル化部位を示す遺伝子組み換えあるいは形質転換因子VII(FVII)の組成物で、その組成物のすべてのFVII分子の中でのGalα1、3Galグリカン部分の割合が0−4%の範囲であることを特徴とする組成物に関するものである。
驚くべき事に、本出願人は本発明のFVII組成物内のグリカン部位Galα1, 3Galの割合が患者の治療に用いられた場合に免疫原性とはならなことを発見した。
本発明によるFVIIは組成物の形状をしている。実際、血漿からのものであれ、遺伝子組み換え、あるいは形質転換されたものであれ、すべてのFVII はFVIIのいくつかの蛋白質の混合物の形状をとっており、これらの蛋白質は特にそれらが同じ翻訳後修飾を示さないという点で異なっている。この翻訳後の処理は異なった細胞部位内にFVII蛋白質を移入すると細胞の生物物質のより行われる。これらの生化学的修飾はその蛋白質を大幅に修飾して、最終的に得られる蛋白質はその遺伝子によって直接コードされるものとはかなり違ったものとなる。これらの化学的修飾はその蛋白質の活性の調節に影響を及ぼすと同時に、その局所化にも影響を及ぼす。したがって、本発明においては、FVIIという表現とFVIIの組成物は同じ意味を持っている。
【0013】
『遺伝子組み換えあるいは形質転換FVII』とは、遺伝子工学によって得られ、特に上に述べたグルコシル化という翻訳後修飾の特徴、つまり、FVIIの背生物においてGalα1、3Galの割合がゼロかあるいは非常に低くて免疫原性を示さない2つのグリコシル化部位を有しているという特徴を示すすべてのFVIIを意味している。対照的に、本発明によるFVIIは血漿性FVIIではない。つまりヒトや動物の血漿から精製された生成物ではない。
より具体的に言えば、活性化されたFVIIとは上述の翻訳後修飾の特徴と明確なグリコシル化部分を有する2つのO−グリコシル化部位、1つのγ−カルボキシル化及び固有のジスルフィド架橋を有する遺伝子工学で得られたすべての活性化FVIIを意味している。
Galα1,3Gal部分とは2つのαl,3−結合ガラクトースで構成された構造である。これは、N結合構造のオリゴ糖性触角部分の末端上に位置している。この部分は免疫原性であることが知られている。実際、その合成を誘発する酵素をコードする遺伝子(α1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ)が非活性化されているので、このグリカン部分はヒト及び一部のサルでは欠失している。従って、こうした部分を示す蛋白質をヒトに投与すると、そのようにグルコシル化された蛋白質に対する抗体の発生が誘発される。
従って、そうした免疫原性部分が医薬用蛋白質内で見つからないことが非常に望ましい。
この組成物は存在している因子VIIのすべての分子でグリカン部分、Galα1,3Galが欠失しているのが好ましい。
なお、このことはFVIIの場合、構造Galα1,3Galの割合がゼロかあるいは非常に低くて、現在利用できる分析装置を用いて測定したバックグランドと区別がつかないこと、あるいは、その割合が特に4−クロロ−1−ナフトールの存在下で着色することによるレクチン−ブロット検出法によっても検出できないことを意味している。この定量方法は実施例の箇所で詳しく述べる。この表現は、同様の意味で、Galα1,3Galの割合が血漿性FVIIのそれと近いすべての組み換えあるいは形質転換FVIIにも適用される。いずれの場合であれ、本発明によるFVIIの組成物におけるGalα1,3Galの割合はヒトに対しては免疫原性を示さない。
逆に、市販されている組み換えFVIIは検出可能なレベルのGalα1,3Galの割合を示し、従って、分析装置を用いてバックグランド・ノイズから区別することができる。
このように、用いられる定量方法に応じて、Galα1,3Gal部分はまったくないか、あるいは4%未満、あるいは3.5%未満、さらには3%未満などとなるが、これらの量はバックグランド・ノイズとは区別することができない。好適に、Galα1,3Gal部分は血漿FVIIの場合とまったく同じかほぼ同じ割合で存在している。
【0014】
本発明によるFVIIはポリペプチドで、そのペプチド配列は天然のヒトFVIIのそれと同じであってもよいが、ヒトの体内に存在する配列はFVIIに関連した不規則さは示さない。そうした配列は、例えば、文献EP0,200,421に示されている配列1bによってコードすることができる。
好適に、本発明によるFVIIの配列は配列SEQ ID NO:1である。
別の実施の形態で、本発明によるFVIIはその免疫原性が天然のFVIIのそれより高くなければ、天然のヒトFVIIの変種であってもよい。従って、この変種のペプチド配列は天然のヒトFVIIの配列の少なくとも70%、好適には80%か90%、そしてより好適には99%以上の一致度を示しており、こうした変種は天然のFVIIと同様の生物学的活性を有している。
さらに、本発明によるFVIIは天然のFVIIと比較して同じかあるいはそれより低い生物学的活性を有するすべてのFVIIも含んでいる。例として、血栓症の治療あるいは予防に用いられてきた組み換えヒト非活性化FVII、FFR−FVIIaなどをあげることが出来る〈Holst et al. Eur.J. Vasc. Endovasc. Surg., 1998 Jun, 15(6): 515−520〉。こうしたFVIIは1つ以上のアミノ酸の挿入、欠失、あるいは置換によって天然のFVIIの配列とは異なったアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
最後に、さらに別の実施の形態で、本発明によるFVIIは活性化されていてもよい(FVIIa)。FVIIaはFVIIが繊維因子と相互作用して活性化される場合の凝固活性と比較して25−100倍も高い発生を凝固活性を示す。FVIIの活性化はジスルフィド架橋によって結合されている2つの鎖内の異なったプロテアーゼ(FIXa、FXa、FVIIa)によるチモーゲンの切断によってもたらされる。FVIIaは例えば循環性抗体を有する血友病患者における止血に関与する凝固因子である。本発明によるFVIIは特に好適な形態で完全に活性化される。
【0015】
本発明によるFVIIaは以下のようないくつかの翻訳後修飾を含むことができ、それは、最初の9−10個のN末端グルタミン酸がγ−カルボキシル化されていたり、Asp63が部分的に水酸化されていたり、Ser52とSer60がO−グリコシル化されていてそれぞれグルコース(キシロース)0−2及びフコース部分を担持していたり、Asn145とAsn322が主に2つの触角部分のモノシアル化複合構造によってN−グリコシル化されている、などのことである。
本発明によるFVIIの生物学的活性は、例えば、米国特許弟5,997,864に述べられているように、FVIIを含まない血漿及びトロンボプラスチンによる血液凝固を開始するFVII組成物の能力を測定することによって定量することができる。この特許で述べられている評価テストで、その生物学的活性は比較対象サンプルと比較して凝固活性が何分の一に低下したかによって示されており、1ユニット/mlのFVII活性を含んでいるヒト血清〈プール〉の基準と比較しての『FVIIのユニット数』に換算されている。
本発明による遺伝子組み換えFVIIは生物系内で蛋白質の発現を可能にするようは当業者に知られている標準技術を用いて得ることが出来る。
本発明によるFVIIは上に述べたようなグリコシル化の特徴、つまりFVIIの祖部内でGalα1,3Galの割合が低いかあるいはゼロであるという条件に合致するどんな微生物、植物、あるいは動物でも発現させることができる。微生物とはすべてのバクテリア、菌類、ウイルスあるいは細胞系を意味しており、その細胞は植物性でも哺乳動物のものであってもよい。哺乳動物の細胞は動物の細胞であってもヒトの細胞であってもよい。αl,3ガラクトシルトランスフェラーゼに関してノックアウトされたいずれの細胞を用いてもよい。
本発明によるFVIIは、それらの動物や植物がFVII組成物に上に述べたような特徴、つまり、FVII組成物内でGalα1,3Galが存在していないか、存在していてもその割合が非常に低いという特徴をFVIIに付与するものである限り、形質転換された動物や植物内でもつくりだすことができる。これらの動物としてはウサギ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、牛肉、ひよこ、あるいはαl,3ガラクトシルトランスフェラーゼに関してノックアウトされたいずれの動物であってもよく、これら以外の動物を用いてもよい。
本発明によるFVIIは、ヒトのFVIIの場合と同様に、位置145と322に2つのNグリコシル化部位を持っており、位置52と60に2つのO−グルコシル化部位を有している。1つのNグリコシル化部位で、オリゴ糖鎖がアスパラギン(N結合)に結合されている。O−グリコシル化部位では、オリゴ糖鎖はセリンに結合されている。これらのアミノ酸に結合された部分はその組成物の各蛋白質とは通常異なっている。しかしながら、その組成物全体に関して、グリカン部分毎、あるいは糖毎に定量することが可能である。
本発明で与えられる異なったグリカンの割合(パーセント)にはO−グリコシル化は考慮されない。
【0016】
好ましくは、FVII組成物は、そのFVII組成物のすべてのグリカン部分の中で、少なくとも40%が2つの触角部分を有するモノシリアリル化されたグリカン形態である。さらに別の実施の形態では、このモノシリアリル化されたグリカン形態の割合が少なくとも50%である。さらに別の実施の形態では、このモノシリアリル化されたグリカン形態の割合が少なくとも60%である。
好適に、FVIIのグリカン形態はその大半が2つの触角部分を有するモノシアル化グリカン形態である。
このFVII組成物は因子VIIの少なくとも一部のシアル酸がα2−6結合である可能性を示している点に特徴がある。
好適に、FVIIのシアル酸の少なくとも65%がα2−6結合である可能性を示めしている。より好適には、このFVIIのシアル酸の少なくとも70%、あるは80%、さらには少なくとも90%がα2−6結合である可能性を示している。
本発明の1つの実施の形態によれば、因子VIIのすべてのシアル酸がα2−6結合である可能性、つまり、すべてのシアル酸がα2−6結合でガラクトースに結合されている可能性が示されている。本発明によるFVII組成物はさらにα2−3結合の可能性を示すシアル酸を含むこともできる。
FVII組成物のシアル酸の少なくとも65%がα2,6分岐である可能性を示しているという事実は、穂名によるFVIIの利点の1つである。事実、市販されている遺伝子組み換えFVIIのシアル酸の場合はα2,3結合だけの可能性を示唆するだけである。それに対して、血漿性FVIIはこれら2つの異性体の混合物である。しかしながら、後者はα2,6結合をより多く含んでおり、このことは本発明のFVIIを血漿性FVIIにより近づけている。本発明によれば、FVIIのシアル酸の65%から100%がα2,6結合である可能性を示唆している。いくつかの実施の形態では、FVIIのシアル酸の70%あるいは80%から100%がa2,6結合である可能性を示唆している。
好適に、このFVIIの2つの触角ぶぶんを有するモノシアル化された形状のうちで、その過半数はフコース化されていない。
好ましくは、これらの2つの触角部分を有するモノシアル化されているがフコース化されていないグリカン形態は本発明によるFVII組成物内に20%以上の割合で存在している。好適には、この割合は25%、あるいは40%より高い方が好ましい。
特に好適な方法で、本発明によるこのFVII組成物のフコース化の割合は20%から50%の範囲である。本発明の1つの実施の形態では、この割合は15%未満であってもよい。
この特徴は本発明によるFVIIの利点の1つである。実際、市販されている組み換えFVIIは100%のフコース化の割合を示すのに対して、血漿性FVIIの場合のフコース化の割合は16%程度である。従って、本発明によるFVIIのフコース化の程度は血漿性FVIIの場合に近く、このことは免疫原性という面で本発明によるFVIIに利点をもたらしている。
【0017】
好適に、本発明によるFVIIは形質転換性FVIIである。従って、本発明によるFVIIは好適に、形質転換でつくられた組み換えFVII生成物である。
本発明の特定の実施の形態で、本発明によるこの形質転換FVIIは形質転換された動物の母乳内でつくられる。
こうした蛋白質の生成は問題の蛋白質を母乳蛋白質の合成に関与する遺伝子の1つの規制領域上にコードして、その遺伝子が乳腺内でのその蛋白質の合成と母乳内への分泌を命令する遺伝子を移植することによって行うことができる。
特に好適な態様で、本発明によるFVIIは形質転換された雌のウサギによってつくりだされる。
ウサギはプリオン、特に人間の健康にとって重大な問題である遺伝性の準急性海綿状脳症に対して感作性をもっていないようなので、この種は特に好適である。
さらに、ウサギとヒトの間の種の壁が重要な意味を持っている。反対にヒトと市販される組み換えFVIIが体内で作り出されるハムスターとの間の種の壁の重要度は低い。
従って、ウサギでのFVIIの生成は病原性の作用因子の放出という面で好適である。
本発明の好ましい実施の形態で、本発明によるFVIIは雌のウサギの乳腺内でつくりだされる。
乳腺から問題の蛋白質を分泌させて形質転換された哺乳動物の母乳に分泌できるようにするのは組織に依存した状態での組み換え蛋白質の発現の制御に関する分野の当業者には公知の技術である。
発現の組織制御は蛋白質の発現をその動物の特定の組織で行わせることを可能にしてくれる配列を利用して行われる。これらの配列とはプロモータ配列とペプチド信号配列である。
乳腺内での問題の蛋白質の発現を促進するプロモータの例としては、WAPプロモータ(乳漿酸性蛋白質)、カゼイン・プロモータ、例えばβカゼイン・プロモータ、βラクトグロブリンなどで、その他のプロモータも使用可能である。
【0018】
形質転換された動物の母乳内で組み換え蛋白質をつくりだす方法は以下のステップを含んでいる。つまり、ヒトFVIIをコードし母乳内に自然に分泌される蛋白質のプロモータに制御される遺伝子を含む合成DNA分子をヒト以外の哺乳動物の胚に組み入れる。その後、その胚を同じ種の哺乳動物の雌に入れる。その胚を受け入れた哺乳動物が十分に成長したら、その哺乳動物からの分泌を誘発させて母乳を集める。この母乳が問題の形質転換FVIIを含んでいる。
ヒト以外の哺乳動物の雌の母乳内で蛋白質をつくるプロセスの一例が文献EP0,527,063に述べられており、この文献が教示している内容を本発明による問題の蛋白質の生成に適用することができるが、それ以外の方法も利用可能である。
WAPプロモータを含んでいるプラスミドはWAP遺伝子のプロモータを含む配列を導入することによってつくられ、このプラスミドはそのWAPプロモータに制御される外来遺伝子を受け入れることができるようにつくられる。ヒトFVIIをコードする遺伝子が組み入れられて、WAPプロモータの制御下に置かれる。そのプロモータ及び問題のたちをコードする遺伝子を含んだプラスミドが雄のウサギの前核に注入して形質転換された雌ウサギを得るのに用いられる。その後、その胚を元気で生殖力のある雌の卵管に移す。トランス遺伝子の存在は、上に述べたようにして得られた形質転換された若いウサギから抽出されたDNAからのサザーン・ブロットによって示される。そしてそれらの動物からの母乳内での濃度は特殊な放射免疫アッセイによって評価される。
雌のウサギによってその母乳内につくりだされた形質転換FVIIは組成物の形態で得られ、この組成物においては、その因子FVIIの各分子は2つのN−グリコシル化部位を示し、そのFVII組成物のすべての分子内でのGalαl,3Galグリカン部分の割合が4%未満、あるいはゼロであることを特徴としている。従って、好適に、この雌のウサギによってつくられる形質転換FVIIはGalα1,3Galグリカン部分を含んでいない。
好ましくは、本発明による雌ウサギによってつくられる形質転換性FVIIの組成物は、その組成物のすべてのグリカン部分で、少なくとも40%が2つの触角部分を有するモノシアル化された形状である。さらに別の実施の形態で、モノシアル化形状は少なくとも50%の割合で存在している。さらに別の実施の形態では、モノシアル化形状は少なくとも60%の割合で存在している。
好適に、グリカン形状は2つの触角部分を有するモノシアル化された形状である。
FVIIの組成物は、因子VIIの少なくとも一部のシアル酸がα2−6結合である可能性を示唆している。
好適には、FVIIのシアル酸の少なくとも65%がα2−6結合である可能性を示している。より好適には、シアル酸の少なくとも70%あるいは80%、そして特に90%がα2−6結合である可能性を示している。
【0019】
本発明の1つの実施の形態によれば、因子VIIのすべてのシアル酸がα2−6結合である可能性、つまり、すべてのシアル酸がα2−6結合によってガラクトースに結合している可能性を示す。本発明によるFVII組成物は、さらに、α2−3結合である可能性を示すシアル酸を含んでいる場合もある。
好ましくは、上記の2触角形状のモノシアル化グリカン形状で、グリカン形状の過半数はフコース化されていない。好適には、これらの2触角形状のモノシアル化されており、しかもフコース化されていないグリカン形状はこのFVII組成物内に20%よりは高い割合で存在している。好適には、この割合は25%より高く、あるいは40%より高い。
好ましくは、本発明によるFVII組成物におけるフコース化の割合は20%から50%の範囲である。
本発明の1つの実施の形態で、この割合は15%未満であってもよい。
本発明による形質転換FVIIaはいくつかの翻訳後修飾を含むことができる。その翻訳後修飾とは、最初の9つあるいは10個のN−末端グルタミン酸がγ−カルボキシル化されていること、Asp63(アスパラギン酸63)が部分的に水酸化されていること、Ser52(セリン52)とSer60(セリン60)がO−グリコシル化されていて、グルコース(キシロース)0−2とフコース部分をそれぞれ担持していること、Asn145及びAsn322の大部分は2触角形状のモノシリアル化された複合構造によってN−グリコシル化されている。
本発明によるFVIIは当業者に公知の技術を用いて、母乳から精製することができる。例えば、米国特許第6,268,487に述べられているような、母乳から問題の蛋白質を精製する方法は、以下のようなステップを含むことができる。すなわち、a)母乳を保持分と通過分とを形成するのに十分な孔隙率を有する膜上で接線ろ過にかけて、外因性蛋白質を含んだ通過分を得るステップと、b)上記外因性蛋白質を取り出すと共に溶出液を得るために上記通過分をクロマトグラフィによって捕捉装置にかけるステップと、c)その溶出液と保持分を組み合わせるステップと、そしてd)脂質、カゼイン・ミセルからFVIIが分離され、FVIIが少なくとも75%まで回収されるまで、ステップa)からc)までを繰り返すステップ、である。
好適に、本発明によるFVIIは活性化される。FVIIaは、ジスルフィド架橋によって結合された2つの鎖において、異なったプロテアーゼ(FIXa、FXa、FVIIa)によってチモーゲンを切断することでin vivoで得ることができる。FVIIa自体は非常に低い酵素活性を有しているが、その共因子である組織因子(TF)と複合化されていて、FX及びFIXを活性化することで凝固プロセスを開始させる。
従って、本発明によるFVIIaは分子量が約20kDaの152個のアミノ酸で構成される軽鎖と、分子量が約30kDaの254個のアミノ酸の重鎖によって構成される化合物で、この軽鎖と重鎖は単一のジスルフィド結合で結合されている(Cys135−Cys262)。
【0020】
本発明によるFVIIは活性を有し、血漿性FVIIに類似した構造を有する活性化されたFVIIである。
FVIIaは、組織因子(TF)と反応すると、FVIIと比較して25−100倍も高い凝固活性を示す。
本発明の1つの実施の形態で、FVIIは因子Xa、VIIa、IIa、IXa及びXIIaによってin vitroで活性化される。
本発明のFVIIは、その精製プロセス中に活性化される場合もある。
本出願人は、驚くべきことに、乳清内で自然につくられた蛋白質のプロモータ、例えばWAPプロモータの制御下に置かれても、FVIIが母乳のカルシウム・イオンと、従ってカゼイン・ミセルと結合する傾向を示すことを発見した。
従って、乳清と結びついているか、あるいはカゼイン・ミセルに係合しているかに関係なくこの蛋白質を捕捉できるFVII、母乳のカルシウム・イオンに対する親和性を示すFVIIを抽出、精製するプロセスを開発することは非常に有益であろう。
例えば、形質転換された動物の母乳内に含まれている形質転換性FVIIの抽出及び生成のプロセスは以下のステップを含んでいる。
a) 母乳から、前記母乳の有機及び/又は無機塩及び/又はカルシウムの複合体と結合しているFVIIを、その母乳に添加された可溶性塩を加えることで得られたカルシウム化合物を析出することでFVIIを抽出するステップで、この可溶性塩の陰イオンが不溶性のカルシウム化合物を形成してその塩及び/又は複合体からこうした方法で因子VIIを放出できる能力があるかどうかを基準として選択され、その場合因子VIIは液相内に存在しているステップと、
b) カルシウム化合物の沈殿物から蛋白質を多量に含む液相を分離して、その液相をさらに脂質相と上記蛋白質を含む水性の非脂質相に分離するステップと、
c) 所定の濃度でリン酸塩に基づく溶出緩衝剤を用いて上記水性の非脂質相を親和性クロマトグラフィにかけるステップと、そして
d) ステップc)で得られた因子VIIの溶出液を、弱塩基性陰イオン交換カラム上で、そのカラム上に保持された因子VIIを連続的に溶出させるのに適した緩衝剤を用いて2又は3回クロマトグラフィで処理するステップ。
【0021】
本出願人は、驚くべきことに、こうしたプロセスが母乳のカルシウムの有機及び/又は無機塩及び/又は複合体と結合したFVIIをその母乳に不溶性の塩を加えて得られる不溶性のカルシウム化合物を沈殿させることによって抽出するステップを含み、加えられる塩はその陰イオンがカルシウム化合物の沈殿物を形成する能力を有しているかどうかを基準として選択されるにもかかわらず、FVIIが前記母乳のカルシウムのこれらの有機及び/又は無機塩及び/又は有機あるいは無機複合体から放出され、液相内に再度見出されることに気付いた。
FVIIは前記母乳のカルシウムの有機及び/又は無機塩及び/又は有機あるいは無機複合体に結合しており、このことはFVIIがカルシウムのこれら塩及び/又は複合体に対する親和性を示すことを意味している。従って、FVIIは、全体的にであれ部分的にであれ、これらの塩及び/又は複合体の固定に十分な数の部位を有しているのである。
前記カルシウムの有機及び/又は無機塩及び/又は有機あるいは無機複合体とはコロイド状カゼイン・ミセルと相互作用するリン酸カルシウム塩を示す。異なったカゼインがリン酸三カルシウム、つまりCa(POの凝集体(『クラスター』)の形で存在するリン酸塩と共にコロイド状ミセル複合体を形成し、その直径は0.5μm程度に達する場合もある。こうしたミセルは疎水性の核を取り囲んでいるカゼインkを多量に含んだ親水性層で構成されるカゼインのサブユニットから形成され、前記リン酸三カルシウム塩は親水性の相とは静電作用で結合している。これらのリン酸三カルシウム塩はそのカゼインに結合しないでそのミセルの内部に存在している場合もある。これらの塩及び/又は複合体はリン酸一カルシウム及び/又はリン酸二カルシウムなどの形態でも母乳の中に存在しており、それらは行われた化学的及び生化学的相互作用に応じて存在する他のイオン形態と均衡状態にある。これらのカルシウム塩及び/又は複合体はカゼインのミセルの内部に存在する場合もある。
カルシウムのこうした有機及び/又は無機塩及び/又は複合体に対するFVIIの上に述べたような親和性は、修飾されていない、あるいは例えば翻訳後修飾によってin vivoあるいはin vitroで修飾された蛋白質の相互作用によってもたらされている可能性もある。
本発明によるプロセスにおいては、形質転換FVIIとは、特にグリコシル化に関して色々な特性を示すすべての形質転換FVIIを意味する。好適に、本発明によるFVIIも上に定義されている通りである。
不溶性カルシウム化合物とは母乳への可溶性が0.5%未満のカルシウム塩あるいは複合体を意味する。
FVIIの過半数はカゼイン・ミセルのリン酸塩と結合している。FVIIはカルシウムに対しては強い親和性を有しており、親和性定数が高く、FVIIの少なくとも70%から90%はカゼイン・ミセル内に取り込まれている。残りのFVIIはカルシウムの他の形態の上に述べた有機及び/又は無機塩及び/又は複合体に対する親和性を示す。
【0022】
観察されたメカニズムに対していろいろな解釈があったとしてもそれには関係なく、本出願人は可溶性の塩を加えるとミセルのリン酸塩の均衡状態が変化して、その破壊とカゼイン・サブユニットの凝集体の沈殿をもたらすのだと考えている。ミセル内及び/又はミセル上に捕捉されたリン酸塩と結合したFVIIは、この破壊によって培養液内に放出される。加えて、FVIIもそれらのリン酸塩から放出あるいは切り離される。何故なら、それらは本発明によるプロセスで用いられる可溶性塩の影響で不溶性カルシウム化合物の形態で沈殿するからである。同様に、カルシウムの可溶性の有機及び/又は無機塩及び/又は複合体も同じタイプの反応で解離される(図9参照)。
本発明の範囲において、上記の可溶性塩とは望ましい効果を得ることを可能にしてくれるすべての塩を意味している。
本発明によるプロセスで用いられる可溶性塩はカルシウムの塩及び/又は複合体からのFVIIの分離を達成するために当業者によって選ばれた濃度で母乳中に存在することができる。事実上の問題として、この濃度はFVIIの少なくとも20%、公的には少なくとも30%から50%が分離できれば十分である。特に好適な方法では、その濃度はFVIIの少なくとも60%から80%、あるいは少なくとも90%を分離させることができるに足るレベルである。
本発明のプロセスはカゼイン・サブユニットの凝集体を簡単に沈殿させる。この沈殿は、上にも述べたようにカゼイン・ミセルが破壊されるので起きる。本発明のプロセスを適用すると、沈殿によって母乳のコロイド状態が不安定になる。
従って、本発明のプロセスは母乳のコロイド状態から液体状態への移行を可能にするプロセスであり、これはコロイド/液体の直接抽出に相当する。
本発明によるプロセスは、最初の状態の母乳より色の薄い乳清を得ることも可能にしてくれる。事実上、これらはその白い色を母乳に移してしまったカゼインである。一度沈殿すると、それらはもはやその白色を母乳に移すことはできない。
【0023】
本発明による可溶性塩とは、母乳に対してその塩の少なくとも0.5部分(重量ベール)が母乳に対して可溶性を有している塩を意味している。
好適に、このプロセスで用いられる可溶性塩はリン酸塩である。この塩は水に溶かしてから母乳に加えることもできるし、あるいは粉末状態にして直接母乳に加えることもできる。
好ましくは、このリン酸塩はリン酸ナトリウム、リン酸リチウム、リン酸カリウム、リン酸ルビジウム、及びリン酸セシウムで構成される群から選択され、特に好ましいのはリン酸ナトリウムである。
あるいは、本発明によるプロセスで用いられる可溶性塩はアルカリ金属のシュウ酸塩、特にシュウ酸ナトリウムあるいは炭酸カリウムであってもよく、あるいはアルカリ金属の炭酸塩、特に、炭酸ナトリウムあるいは炭酸カリウム、あるいはそれらの混合物であってもよい。
好適に、上記のプロセスを実行するためにつくられた水溶液内での上記可溶性塩の濃度は100mMから3Mの範囲であり、より好ましくは200mMから500mMの範囲であり、特に好ましくは200mMから300mMの範囲である。
抽出されるべきFVIIを含んでいる母乳は生のままの母乳であってもよいし、スキム・ミルクであってもよい。本発明によるプロセスをスキム・ミルクに適用することによって得られる利点は、その脂質含有量が低いことである。このプロセスは新鮮な母乳にでもあるいは凍結させた母乳にも適用できる。
このプロセスは脂質相内と上記蛋白質を含んだ水性の非脂質相内で脂質相を分離するステップb)を含んでおり、このステップは遠心分離で行われることが好ましい。上記非脂質水性相が実際には乳清である。この分離ステップはカゼイン・ミセル・サブユニットの凝集物とカルシウム化合物の沈殿物の単離も可能にしてくれる。
このプロセスはさらに、分離ステップの後に、空隙率が好ましくは1μm、次に0.45μmと低下するフィルター上で連続的に行われる非脂質水性相のろ過ステップを含むこともできる。例えばグラス・ファイバーに基づくこれらのフィルターを用いると、母乳内に自然に存在する脂質、脂肪球、そしてリン脂質の含有量を減らすことができる。空隙率が0.5μm未満のフィルターを用いることにより、非脂質水性相および後者の精製用基質の微生物学的品質を保持することができる。これらの脂質相は好ましくは母乳の脂肪球を完全に捕捉すしろ過物が清澄であるフィルターを用いて行うのが好ましい。
【0024】
このステップのすぐ後に、限外ろ過によって濃縮/透析を行うステップを設けることもできる。
濃縮を行うと、保存すべき非脂質水性相の体積を減らすことが可能である。この限外ろ過に用いられる部材は、処理対象の蛋白質の特性によって選択される。一般的には、FVIIの分子量以下の孔サイズの空隙率限界であれば問題とするようなロスなしに生成物を濃縮することが可能であろう。例えば、50kDaの孔サイズを有する膜であれば、50kDaの分子量のFVIIをロスを生じさせることなしに濃縮が可能である。
透析は後の精製ステップ、つまりクロマトグラフィ・ステップを含む非脂質水性相の調整を目的とするものである。透析はラクトース、塩、ペプチド、プロテオース−ペプトン、及びその生成物の保持に障害を及ぼすすべての作用因子などの小さな分子サイズの成分を除去できるようにしてくれる。この目的のためには、FVIIがその幕を通じてろ過されないようにするために、50kDaを保持限度とする膜を用いるのが好ましい。
好ましくは、透析用緩衝剤はリン酸ナトリウムの0.025−0.050M溶液、pH
7.5−8.5である。
ろ過及び/又は濃縮/透析ステップ後に得られるものなど、ステップb)後に得られる非脂質水性相をその後の精製ステップにかける前に凍結して、−30度の温度で保存しておいてもよい。
その後、ステップb)で得られた非脂質水性相を標準的なクロマトグラフィ装置を用いて行われる親和性クロマトグラフィ(ステップc))にかけられるが、このステップは好ましくはヒドロキシアパタイト・ゲル(Ca10(PO(OH))あるいはフロオロアパタイト(Ca10(PO)ゲルである基質を用いたクロマトグラフィ・カラムで行われる。従って、水性相のFVIIが基質上に保持され、保持されない乳酸蛋白質の過半数は取り除かれる。
0.025M―0.035Mリン酸ナトリウム、pH7.5−8.5に基づく水性緩衝剤Aと均衡化されたクロマトグラフィ・カラムを用いるのが好ましい。FVIIの含有量を高めた水性相をカラムに注入すると、FVIIの保持が可能になる。保持されない画分は乳酸蛋白質などの望ましくない化合物が取り除かれたことを示すベースラインに戻るまで(RBL)緩衝剤Aの浸出ろ過を行うことによって除去される。吸着度の測定は、280nmの波長(λ)で行われる。
ステップc)によるFVIIの溶出は、リン酸ナトリウムやリン酸カリウム、あるいはその混合物などのリン酸塩に基づく所定の濃度の干渉剤、好ましくは0.25M−0.35Mのリン酸ナトリウムに基づく緩衝剤Bを用いて行われ、pHは7.5−8.5の範囲である。溶出された画分はRBLまで回収される。吸着度の測定は280nmの波長(λ)で行われる。
このステップのおかげで、すべての乳酸蛋白質の90%以上が除去され、FVIIの90%以上が回収される。この段階でのFVIIのこの溶出された画分の純度は5%程度である。
この純度は、FVIIと対象となるサンプル、画分、あるいは溶出物内に存在しているすべての蛋白質の間の重量比で決められる。
好適に、FVIIの比活性度はFVIIのクロマトグラフィ基質に対する親和性の結果として、10−25倍高まる。
【0025】
その後、ステップc)から得られるFVIIの溶出物を接線ろ過にかけるのが好ましい。
接線ろ過膜はFVIIの特性に従って、当業者が選択する。一般的に言えば、孔の空隙率限界をFVIIの分子重量の2倍にすると、そのろ過が可能になる。従って、100kDaのサイズの孔を有する膜を用いれば、有効な収率でFVIIをろ過することが可能になる。
このろ過ステップの目的は、特にFVIIより大きな分子量を有する蛋白質の負荷を減らすこと、特に不規則な形状のFVII(例えば、ポリマー化された形状のFVII)と一定の時間が経過した場合にそれを変質劣化させるプロテアーゼを除去することである。この目的のために、空隙率限界が100kDaの化合物である膜を使用するのが特に好ましい。
好適に、得られたFVIIのろ過された溶出液はさらに濃縮され、保持限界が50kDaの膜による限外ろ過によって透析される。この透析緩衝剤は好ましくは0.15M−0.20M塩化ナトリウム溶液である。
ステップc)の終了時に得られたFVIIの溶出液は、オプションとしてろ過、濃縮及び透析された後、カラム上で保持された因子VIIの以後に行われる溶出に適した緩衝剤を用いて、弱塩基性対応の陰イオン交換カラム上での2あるいは3段階のクロマトグラフィ・ステップにかけられる。これらのステップによって、特に乳酸蛋白質に関してFVIIをさらに精製することが可能になる。これらのステップは標準的なクロマトグラフィ装置を用いて実施される。
最初の陰イオン交換クロマトグラフィ・ステップは好適には、そのステップの後の操作上の優先条件に基づいて、因子VIIを捕捉するQ−Sepharose(登録商標)FFゲル・タイプのクロマトグラフィ基質を用いて実行される。この基質は緩衝剤0.05Mトリス、pH7.0−7.5を用いて洗浄される。捕捉されない画分は、ベースラインに回帰するまで上記の緩衝剤を用いて除去される。FVIIの溶出は0.05Mトリスと0.020M−0.05Mの範囲、好ましくは0.05Mの塩化カルシウムに基づく水性緩衝剤、pH7.0−8.0を用いて、FVIIの最初の溶出液を得るために行われる。吸着度の測定は280nmの波長(λ)で行われる。
このステップでのFVIIの回収は少なくとも70%で、これによって、結びついている蛋白質、特に母乳蛋白質の80%程度の除去が可能になる。
【0026】
その後、上にも述べたように、0.15M−0.20Mの塩化ナトリウム溶液を緩衝剤として用いて、このFVIIの溶出液を透析ステップにかけることができる。
二回目のクロマトグラフィ・ステップは好適にはQ−Sepharose(登録商標)FFゲル・タイプのクロマトグラフィ基質を用いて実行され、この基質上に最初のクロマトグラフィ・ステップで陰イオン交換器で得られたFVIIの最初の溶出液を、後に行われれる操作上の優先条件に従って注入する。この基質は0.05M、pH7.0−7.5のトリス緩衝剤を用いて洗浄される。捕捉されない画分はベースラインに回帰するまで、洗浄によって除去される。検出は波長(λ)=280nmでの吸着度測定によって行われる。
基質上に捕捉されたFVIIの溶出は0.05Mトリス及び0.005M塩化カルシウム,pH7.0−8.0に基づく水性緩衝剤を用いて行われ、純度が90%以上の高純度因子VIIの第2の溶出液が得られる。吸着度測定は波長(λ)=280nmで行われる。
二回目のクロマトグラフィ・ステップは起こり得る蛋白質分解性劣化を制限することを意図している。
この段階で、上記溶出液の純度は90%程度で、捕捉された結合蛋白質の95%以上が除去される。その後、この溶出液を上に述べたように0.15−0.20M塩化ナトリウムを緩衝剤に用いて透析ステップにかけることができる。
本発明の非常に好ましい実施の形態によれば、このプロセスはそのカラムからの因子VIIの連続的溶出を行うのに適した緩衝剤を用いて弱酸性タイプの陰イオン交換器を用いて行われる3回のクロマトグラフィ・ステップを含んでいる。従って、上記の2回の陰イオン交換クロマトグラフィ・ステップの後、三回目の陰イオン交換クロマトグラフィが行われる。このステップによって、医学的使用に適した方法で蛋白質を多量に含んだ組成物を調製することができる。
この三回目のクロマトグラフィ・ステップは好適にはQ−Sepharose(登録商標)FFゲル・タイプのクロマトグラフィ基質を用いて実行され、その基質上に、以下の好ましい操作条件に基づいて、陰イオン交換装置上で上記の二回目のクロマトグラフィ・ステップで得られたFVIIの二回目の溶出物が注入される。
上記二回目の陰イオン交換クロマトグラフィ・ステップで得られた二回目の溶出物は、好ましくは1−5体積分の精製注入用水(WIF)によって希釈した後に、因子VIIを細くするQ−Sepharose(登録商標) deタイプを充填したカラムに注入される。この基質は、0.05Mとリス緩衝剤、pH7.0−7.5で洗浄される。捕捉されない画分は洗浄用緩衝剤を用いてRLBまで除去される。吸着度の測定は280nmの波長(λ)で行われる。
上記基質上に捕捉されたFVIIの溶出は、0.02Mとリス及び0.20―0.30M、好ましくは0.28Mの塩化ナトリウム、pH6.5−7.5に基づく水性緩衝剤を用いて行われる。吸着度の測定は280nmの波長(λ)で行われる。
【0027】
このようにして得られた形質転換FVIIの組成物の純度は95%より高い。非常に好適には、この組成物はFVIIの濃縮物の形状を呈している。
このプロセスを実施すると累積州立は20−25%に達し、処理された母乳1リットルあたり少なくとも20mgのFVIIが精製可能である。
その結果、陰イオン交換ゲル上での3枚のクロマトグラフィ・ステップによってFVIIをさらに精製することが可能になる。さらに、それらのステップによってFVIIの濃縮とその組成物の調製が可能になる。
FVIIの活性化はこのプロセス中に起き、特に最初の陰イオン交換クロマトグラフィ・ステップ中に行われる可能性がある。
最終的な溶出物が回収されたら、その溶出物は0.22μmフィルターでのろ過ステップ、容器内での分散ステップにかけ、そして、−30℃に凍結させて、この温度で保存することができる。
本発明による上記のプロセスはさらに、製剤、ウイルス不活性化、そして滅菌ステップの少なくとも1つを含むことも出来る。一般的に言えば、このプロセスは、親和性クロマトグラフィ・ステップの前に、抗ウィルス処理ステップを含むこともでき、このステップは好適には、溶剤/洗剤によって、特にTween(登録商標)80(1%w/v)とTnBP(トリ−n−ブチルホスフェート)(0.3% v/v)の存在下で実行され、被覆されたウイルスの不活性化がもたらされる。さらに、イオン交換装置上での二回目のクロマトグラフィ・ステップから得られたFVIIの溶出物は、好ましくは、ウイルス、特にパルウイルスB19などの被覆されていないウイルスなどのウイルスを効率的に除去するためにナノろ過ステップにかけることができる。15nmより大きなサイズのウイルスを保持するASAHI PLANOVA(登録商標)15フィルターを用いることができる。
【0028】
本発明のさらなる目的は、医薬品としての用いるための本発明によるFVIIの組成物を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、血友病の患者を治療するための医薬品を調製するための本発明によるFVII組成物の利用である。
本発明のさらに別の目的は、多重出血性傷害を治療するための医薬品を調製するための本発明によるFVII組成物の利用である。
本発明のさらに別の目的は、手術による止血での大量の制御不能な出血を措置するための医薬品を調製するための本発明によるFVII組成物の利用である。
本発明のさらに別の目的は、抗凝結剤の過剰投与による出血あるいは大出血を措置するための医薬品を調製するための本発明によるFVII組成物の利用である。
本発明のさらに別の目的は、本発明による因子VIIを薬学的に許容される賦形剤及び/又は基剤を含む医薬品組成物を提供することである。
この賦形剤は薬学的な使用になじむ、そして当業者の知られた食塩水、生理的、等張性、あるいは緩衝溶液などの溶剤、ゲルあるいは粉末などのいずであってもよい。本発明による組成物はさらに、分散剤、可溶剤、安定剤、界面活性剤、及び保存剤から選択される1つあるいは複数の薬剤あるいは基剤を含むことができる。他方、本発明による組成物はさらに別の薬剤あるいは活性成分を含んでいてもよい。
さらに、この組成物は異なった方法、あるいは異なった形状で投与することができる。投与は特に全身ルート、静脈、皮内、腫瘍内、皮下、腹腔内、筋肉内、あるいは動脈内注射など、こうしたタイプの治療方法のための古典的な経路を用いて行うことができる。例えば、腫瘍内注射や腫瘍に近接した箇所への注射、あるいは腫瘍洗浄などを挙げることができる。
投与量は投与回数、他の有効成分との関係、あるいは病気の程度などに応じて変えることができる。
【0029】
以下の実施例で、本発明のさらなる態様及び利点について述べるが、これらは本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲の限定を意図するものではない。
【0030】
実施例説明のための略語
FVII−tg=FVIIa−tg: 本発明による活性化された形質転換FVII
FVII−rec=FVIIa=rec: 市販されている遺伝子組み換え活性化FVII
FVII−pd=FVIIa−pd: ヒトの血漿から精製された血漿由来の活性化されたFVII
MALDI−TOF: マトリックス支援レーザーイオン化−飛行時間
HPCE−LIF: 高性能毛細管電気泳動−レーザー誘導蛍光
ESI−MS: 質量分光−電気スプレイ・イオン化
LC−ESIM: 液体クロマトグラフィ−質量分光−電気スプレイ・イオン化
NP−HPLC: 正常相液体プロマトグラフィ
PNGase F: ペプチド:N−グリコシダーゼF
LC−MS: 液体クロマトグラフィ−質量分光
【実施例1】
【0031】
実施例1: 母乳でヒトFVII蛋白質をつくりだす形質転換された雌ウサギの産出
最初に、p−ポリIII−Iベクター(Lathe et al., Gene (1987) 57, 193−201参照)内で、配列Bam H1と配列Hind IIIの間にWap遺伝子(Devinoy et al., Nucleic Acids Research, vol. 16, No. 16, 25 August 1988, p. 8180参照)のWAP遺伝子のBam H1−Hind III(6.3 Kbフラグメント)を導入することで、調製する。
このクローニング・プロセスで、箇所Bam H1を抑制し、ベクターp1内に存在している箇所Cla Iで置換した。従って、このベクターp1は6.3Kb WAPプロモータの依存下にある外来遺伝子と受け入れうることができるプラスミドである。外来遺伝子の導入は、例えば、ポリリンカーの箇所Sal I内に行うことが出来る。
ポリリンカー全体と外来遺伝子を含んだ挿入物はp−polyIII−lプラスミドのポリリンカーの末端にある2つの箇所Not Iを切断した後プラスミドから分離できる。
プラスミドp1から得たプラスミドp2はウサギのWAP遺伝子のプロモータ〈6.3Kb〉とヒトFVIIの遺伝子を含んでいる。形質転換雌ウサギを得るために用いられるフラグメントはこれら2つの箇所Not1の間に含まれている。
箇所Hind IIIはクローニング箇所として用いるように、箇所固有突然変異誘発によって遺伝子のリーダー配列内に導入された。
これらの形質転換された雌のウサギは従来の微量注射(Brinster et al, Proc. Natl. Acad. SCi. USA (1985) 82, 4438−4442)によって得られたものである。その遺伝子を500コピー含んでいる1−2plがマウス胚の雄前核に注入された。これらの構成物はp−polyIII−Iベクター(Lathe et a, Gene (1987)57,193−201)内でつくられた。組み換え遺伝子を含んでいるこのベクターのフラグメントNot 1−Not 1を微量注射した。その後、これらの胚をホルモン的に調製した養子妊娠させるメスの卵管に移した。操作された胚の約10%が若いウサギを妊娠させ、また操作された胚の2−5%が形質転換された若いウサギを妊娠させた。人為的に導入された遺伝子の存在は、ウサギの尾から抽出されたDNAからのサザーン移動法によって明らかにされた。これらの動物の血液と母乳内のFVIIの濃度は特殊は放射免疫アッセイによって評価された。
FVIIの生物学的活性は細胞あるいはウサギ哺乳類移植片培養液にその母乳を加えることで評価した。その母乳内での本発明によるFVIIをつくりだす形質転換された雌ウサギを得るために用いられた技術はEPNo.0,527,063により詳細に述べてある。
【実施例2】
【0032】
実施例2: 得られたFVIIの抽出及び精製
a) FVIIの抽出
生の全乳500mlを取り出して、9体積分の0.25Mリン酸ナトリウム緩衝剤、pH8.2 で希釈する。室温で30分間攪拌した後、FVIIの含量を多くした水相を10000gで1時間15℃で遠心分離する(遠心分離Sorvall Evolution RC−6700rpm−ロータSLC−6000)。約835mlのポット6個が必要。
遠心分離によって3つの相が得られ、その1つはその表面の脂質相(クリーム)、1つは非脂質水性FVII濃縮相(多数相)、そしてもう1つはペレット上の固体白色相(不溶性カゼインとカルシウム化合物の沈殿物)である。
FVIIを含む非脂質水性相はペリスタルティック・ポンプを用いてクリーム相まで集められる。このクリーム層は別個に回収される。固体相(沈殿物)は取り除かれる。
しかしながら、非脂質水性相は未だ非常に少量の脂質を含んでいるので、一連のフィルター(Pall SLK7002U010ZP−孔サイズが1μmのガラス・ファイバー・プレフィルタ−、そしてPall SLK7002NXP−孔サイズ0.45μmのNylon66)を通じてろ過される。ろ過が終了したら、脂質相がこのフィルター配列を通過させられて、母乳の脂質小球が完全に取り除かれ、ろ過物は透明になる。
ろ過された非脂質水相は次に限外ろ過膜(Millipore Biomax 50 kDa−0.1m)で透析され、クロマトグラフィ相と共存できるようにされる。分子量が50kDa程度のFVIIは母乳内の塩類、糖類、及びペプチドとは違ってこの膜を通過することは出来ない。最初に、溶液(約5,000ml)が500mlに濃縮され、限外ろ過で透析が行われ、体積は変わらないので、電解質を取り除き、その生物素材をクロマトグラフィ・ステップのために調整することができる。透析緩衝剤は0.025Mのリン酸ナトリウム緩衝剤、pH8.2である。
FVIIを含むこの非脂質水性相はFVII−tgの含量を多くした乳清に順化させることができる。この製剤は以後のプロセスに回される前に−30℃の温度で保存される。
このステップでのFVIIの回収の総収率は非常に満足すべきレベル、つまり90%である(リン酸を用いた抽出で91%+99%透析/濃縮)。
このステップの終了時のFVIIを含む非脂質水性相は完全に透明で、その後に行われるクロマトグラフィ・ステップで用いることができる。
約93,000IUのFVII−tgがこの段階で抽出される。この製剤でのFVIIの純度は0.2%程度のレベルである。
【0033】
b) FVIIの精製
1. ヒドロキシアパタイト・ゲル上でのクロマトグラフィ
アミコン90(直径:9cm、断面積:64 cm)にバイオラッド社のセラミック・ヒドロキシアパタイト・タイプ1(CHT−I)ゲルを充填する。
このゲルを0.025Mリン酸ナトリウムと0.04M塩化ナトリウムの混合物に基づく水性緩衝剤A、pH8.0で均衡させる。この調剤全体を−30℃で保存して、使用時に氷の塊が完全になくなるまで37℃の温水槽で解凍して、ゲル上に注入する(線形流速は100cm/hで、これは1分あたり105mlに相当)。捕捉されない画分は0.025Mリン酸ナトリウムと0.04M塩化ナトリウム(pH8.2)を含む緩衝剤を通過させて除去し、ベースラインに戻す(RBL)。吸着度の測定は280nmの波長(λ)で行う。
FVII−tg を含む画分の溶出は、0.25Mリン酸ナトリウムと0.4M塩化ナトリウムを含む緩衝剤B(pH8.0)を用いて行われる。溶出された画分はベースラインに戻るまで集められる。吸着度の測定は280nmの波長(λ)で行う。
このクロマトグラフィを行うことで、FVII−tgの90%以上を回収すると同時に、乳酸蛋白質の95%以上を除去することができる。比活性(S.A)は25倍に増大する。この段階で、純度4%のFVII−tgが約85,000IU回収される。
【0034】
2. 100kDa接線ろ過と50kDa濃縮/透析
前のステップで得られた溶出物全体を100kDa限外ろ過膜(Pall OMEGA SC 100K−0.1m)で接線ろ過する。このFVIIは100kDA膜でろ過されるが、分子量が100kDA異常の蛋白質はろ過することができない。
その後、ろ過された画分を約500mlに濃縮して、上に述べた50kDa限外フィルターで透析する。この透析緩衝剤は0.15M塩化ナトリウムである。
プロセスのこの段階で、生成物を−30℃で保存しておいて、その後、イオン交換クロマトグラフィにかける。
この段階の処理によって、分子量が100kDa以上の蛋白質、特に酵素前駆体の負荷を減らすことができる。100kDa膜で処理することで、蛋白質の50%程度を捕捉するすることができ、これは高分子量蛋白質で、同時にFVII−tgの95%がろ過され、82,000のFVII−tgが得られる。
この処理によって、それ以後のステップでの蛋白質分解のリスクが低減される。
【0035】
3. Q−Sepharose(登録商標)FFゲルでのクロマトグラフィ
イオン交換ゲルQ−Sepharose(登録商標)FF(Fast Flow)〈QSFF〉上で3回連続でクロマトグラフィを行って、活性成分を精製し、FVIIを活性化されたFVII(FVIIa)へと活性化し、そして最後に、濃縮してFVIIの組成物を作成する。この化合物の検出はλ=280nmでの吸着度測定によって行われる。
【0036】
3.1 Q−Sepharose(登録商標)FF1ステップ−溶出『高カルシウム』
直径2.6cm(断面積:5.3cm)のカラムにQ−Sepharose(登録商標)FFゲル(GE Healthcare)を100ml充填する。
このゲルを0.05Mトリス緩衝剤、pH7.5 で均衡させる。
画分全体を−30℃で保存して、使用時には氷塊が完全になくなるまで、37℃の水槽で溶かす。この画分を均衡化緩衝剤で1/2(体積比)に希釈して、その後、ゲル上に注入し(流量:13ml/分、これは150cm/時間の線形流速に相当)、そして、捕捉されない画分をRBLまでその緩衝剤内を通過させて除去する。
FVIIの含有量が低い最初の蛋白質画分を0.05Mトリス及び0.15M塩化ナトリウム緩衝剤、pH7.5 で9ml/分(つまり、100cm/時間)で溶出させ、そのあと除去する。
第二のFVIIを多量に含んだ画分は0.05Mトリス及び0.05M塩化ナトリウム、そして0.05 M塩化カルシウム緩衝剤(pH7.5)を用いて、9ml/分(つまり、100cm/時間)で溶出される。
この第二の画分は上に述べた50kDa限外フィルターで透析される。この透析緩衝剤は0.15M塩化ナトリウムである。この画分は一昼夜+4℃で保存され、その後、陰イオン交換クロマトグラフィで二度目の処理にかけられる。
この段階によって、73%のFVII(つまり、6000IUのFVII−tg)を回収することができると同時に、関連する蛋白質の80%を除去することができる。さらに。FVIIを活性化してFVIIaとすることができる。
【0037】
3.2 Q−Sepharose(登録商標)FF2 2 ステップ−溶出『低カルシウム』
直径2.5cm(断面積:4.9cm)カラムに30mlのQ−Sepharose(登録商標)FF〈GE Healthcare〉ゲルを充填する。
このゲルを0.05Mトリス緩衝剤、pH7.5で均衡化させる。
+4℃の温度で保存されている前に溶出させた画分(第二の画分)を希釈してから、ゲルに注入する(流量:9ml/分、つまり、線形流速:100cm/時間)。
この第二の画分を注入した後、捕捉されない画分を除去するために、RLBまで均衡化緩衝剤で洗浄する。
非常に高い純度のFVIIを含んでいる画分は0.05Mトリス、0.05M塩化ナトリウム、及び0.005M塩化ナトリウムに基づく緩衝剤、pH7.5内で4.5ml/分(つまり50cm/時間)で溶出させる。
23,000IUのFVII−tgが精製され、これは12mgのFVII−tgに相当する。
このステップによって、関連蛋白質(ウサギ母乳蛋白質)の95%以上が除去できる。
この溶出物は90%以上の純度を有し、天然のヒトFVII分子のものに近い構造的及び機能的特徴を示す。イオン交換クロマトグラフィの三回目の処理で濃縮、製剤化される。
【0038】
3.3 Q−Sepharose(登録商標)FF3 ステップ−『ナトリウム』溶出
直径2.5cm(断面積:4.9cm)のカラムにQ−Sepharose(登録商標)FFゲル(GE Healthcare)10mlを充填する。
このゲルを0.05Mトリス緩衝剤(pH7.5)を用いて均衡化させる。
前のステップで溶出された精製画分を注入用の純水(PWI)で5倍に希釈してから、ゲルに注入する(流量:4.5ml/分、線形流速:50cm/時間)。
上記画分を注入した後、このゲルを均衡化緩衝剤を用いてRLBまで洗浄して、捕捉されていない画分を除去する。
その後、FVII−tgを0.02Mトリス及び0.28M塩化ナトリウム緩衝剤(pH7.0)を用いて、流量3ml/分で溶出させる。
濃縮物の形状のFVII−tgの組成物は純度が95%以上である。この生成物は静脈注射に使用できる。このプロセスは累積収率が22%に達し、用いられる母乳の1リットルあたり少なくとも20mgの精製が可能になる。
さらに、FVII−tgの組成物は以下の実施例で述べられるような種々の構造分析に処せられる。
【実施例3】
【0039】
実施例3: 一次配列の調査
1. ペプチド・マップ
FVII−pd、FVII−rec、及びFVII−tgのサンプルのトリプシンとAsp−Nによる消化後にLC−MS及びUV検出クロマトグラムを得る。
トリプシン消化後に得られるペプチド・マップの分析によれば、それらは65分間の保持時間ではほぼ同様である。それ以上の時間が経過すると、重鎖のペプチド・フラグメントに対応する種がFVII−recとFVII−tgには認められるが、FVII−pdでは認められない。質量が大きな(4500Da−8000Da)これらのペプチドは、不全分裂に対応している。これらのペプチドは他のFVII−pdバッチでも見出され、従って、それらの存在を異なったトリプシン感作性に関係付けることはできない。
Asp−N消化後に得られるペプチド・マップはFVIIタイプ相互で非常に類似しており、この傾向は保持時間全体を通じて認められる。強度において認められる相違は注入量によるだけで、構造的な違いとは関係ない。
【0040】
2. 配列のカバーリング
MS及び/又はMS/MSによって示されるペプチドから配列の重複を計算する。表1は異なったサンプルで得られた結果を示す。トリプシン及びAsp−N消化を考慮に入れると、一次配列の95%以上が確認され、得られた結果は文献(Thim L. et. al, Biochemistry, 1988, 27, 7785−7793)に述べられているのと同様の傾向を示している。
【0041】
【表1】

【0042】
ペプチドの強度を確認するために、HPLC画分をMALDI及びEdman配列決定法で分析する。
Edman配列決定法で分析されるHPLC画分のすべてで、80%の配列重複が得られる。LC−MSでFVII−tg及びFVII−recに関して行われた配列確認では、一次配列の重複度が95%を上回っていた。
【実施例4】
【0043】
実施例4: グリコシル化箇所及び糖ペプチドのESI−MSによる特徴づけ
FVII−tgのN−グリコシル化箇所をLC−ESIMS(/MS)で同定し、MALDI−TOFMSで確認し、そして、その微少異種性をLC−ESIMSによって判定した。
図2は、2つのグリコシル化Asn残基を含む糖ペプチドの解析ESIスペクトルを示している。グリコシル化箇所の位置はMALDI−TOF(/TOF)とEdman配列決定法で確認した。
N−グリコシル化箇所Asn145及びAsn322をそれぞれ有する血漿FVII(FVII−pd)の糖ペプチド質量スペクトル[D123−R152]と[K31.6−R353]を分析した結果、2つの触覚を持ち、バイシアル化され、フコース化はされていない構造(A2)(糖ペプチドの観察質量:5563.8Da)及びフコース化された構造(A2F)(観察質量:5709.8Da)の存在が明らかになった。また、3つの触覚を持ち、トリシアル化され、フコース化されていない構造(A3)(観察質量:6220.0Da)とフコース化された構造(A3F)(観察質量:6366.1Da)の存在も示された。形質転換されたFVII(FVII−tg)の場合、Asn145上に存在しているオリゴ糖の大多数は2つの触覚を有し、モノシリアル化サレ、フコース化されていないかフコース化されているもの(A1、A1F)、及びA2、A2Fタイプのものである。3つの触覚部を有する形状はあまり存在していない。
Asn322糖形状の過半数に関して言えば、同じグリカン構造が異なった割合で観察される。図2は、Asn145ほど処理されていない形状(つまり、触覚部及びシアル化の程度がより低い形状)の存在を示している。例えば、3つの触覚部を有する構造は血漿生成物の場合Asn322とAsn145ではそれほど存在しておらず、FVII−tg上では存在していない。さらに、Asn322とAsn145は100%グリコシル化されている点についても注意すべきである。半定量的ではあるが、これらの結果はHPCE−LIGHT INCOMING FACE及びNP−HPLCで得られる数値と一致している。
【実施例5】
【0044】
実施例5: HPCE−LIFによるN−グリカンの定量
N結合されたオリゴ糖の同定及び定量を、PNGase Fによる脱グリコシル化後にHPCE−LIFによって実行する。FVIIサンプルをエグゾグリコシダーゼ(シアリダーゼ(酵素/基質(FVII)比率:1mg/10μg)、ガラクトシダーゼ、ヘクスナカーゼ(キット:プロザイム)、フコシダーゼ(比率E/S:1 mIU/10μg)で処理して、それぞれの単離された構造の同定と定量を確実にできるようにする。得られたグリカンをフルオロクロームでラベルして、その質量と電荷で分離する。2つの標準(グルコース・ホモポリマーとオリゴ糖)を用いることで、構造の同定が可能になる。定量は定量されたオリゴ糖全体と各ピークとの組み合わせでおこなわれる。
この例では、毛管電気泳動用Proteolab PA800装置(Beckman−Couter社製)を用い、その毛管は長さ50cm、内径50μmでN−CHO(Beckman−Couter社製)によって被覆されている。『ゲル緩衝剤−N』(Beckman−Couter社製)と呼ばれる分離緩衝剤も用いられる。実験は25kV、20℃の条件下で20分間行われる。検出はレーザーを用いて行われる(励起λ=488nm、放出λ=520nm)で行われる。
シアリダーゼ、ガラクトシダーゼ、ヘクスナカーゼによる同時脱グリコシル化の後、『コア』とフコース化された『コア』に対応するピーク・エリア間の比率に基づいて計算される。
FVII−pdのグリカンの大部分は2つの触覚部を有するバイシリアル化されたタイプのもの(A2)と、2つの触覚部を有し、モノシリアリル化され、さらにフコース化されたタイプのもの(A2F)であった。FVII−tgのグリカン形状(図3参照)は、2つの触覚部を有し、モノシリアリル化され、さらにフコース化された、あるいはフコース化されていないタイプ(A1F、A1)、及び2つの触覚部を有し、バイシリアル化され、フコース化されてない、あるいはフコース化されたタイプ(A2、A2F)の存在を示している。FVII−recの形状は種々の観察された構造(A1F、A2F)に対して非定型的移行期があることを示している。
【0045】
【表2】

【0046】
種々のグリカン構造の定量分析(表2)の結果では、FVII−pdの場合シアル化された構造が優勢で、約51%がバイシアル化されたグリカン(A2及びA2F)で30%が3つの触覚部分をち、シアル化され、フコース化されていない、あるいはフコース化された形状のもの(G3及びG3F)であることが示されている。FVII−tg(バッチAとバッチB)はFVII−pdと比較するとシアル化の程度が低く、35%が2つの触覚部分を有し、バイシアル化された形状のもので、6%だけが3つの触覚部分を有するシアル化された形状のものである。これらの形状の過半数はモノシアル化されており、50%は構造A1とA1Fである。FVII−recもFVII−pdと比較するとシアル化の程度が低く、45%がA2F構造であり、3つの触覚部をもち、シアル化されたグリカンが6%だけである(結果は示さず)。
FVII−recの場合、フコース化されていない構造の割合が低い点が注目される。
【0047】
【表3】

【0048】
定量的な分析の結果は、FVII−pdのフコース化の割合が低く(16%),
FVII−tgの場合はフコース化の割合が24〜42%、そしてFVII−recの場合はフコース化の割合が100%であることを示している。
【実施例6】
【0049】
実施例6: NP−HPLCによるN−グリカンの定量
FVII−pdとFVII−tgのN−グリコシル化の定量及び定性分析をNP−HPLCで行った。蛋白質の脱塩及び乾燥後に、この蛋白質を変性させ、当業者に公知の手順で還元する。そして、グリカンが酵素経路で放出され(エンドグリコシダーゼPNGase F)、エタノール沈殿で精製される。このようにして得られるグリカンを蛍光プローブ:2−アミノベンズアミドでラベルする。ラベルされたグリカンをNP−HPLC(アミド−80、カラム−4,6/250mm−Tosohaas)を用いて、その親水性を利用して分離する。注入を行う前に、カラムを80%アセトニトリルで均衡化させる。オリゴ糖類は140分以上の時間をかけて、蟻酸アンモニウム50mM(pH4.5)の増大勾配を用いて溶出させる。検出は蛍光光度法で行われる。(励起λ=330nm;放出λ=420nm)。
FVII−pdのクロマトグラフィ的特徴(図4)は、グリカンの大多数が2つの触覚部分を有し、バイシアル化されたタイプ(A2)で、その割合は最大39%である。2つの触覚部分を有し、バイシアル化され、フコース化されたタイプ(A2F)、モノシアル化されたタイプ(A1)、及び3つの触覚部分を持ち、フコース化された、及びフコース化されていない形状(A3F及びA3)も、より少量ではあるが観察される。
FVII−tgで行われるNP−HPLCによる分析で、タイプA1のオリゴ糖が最大27%の割合で存在していることが確認される。構造A1F、A2、及びA2Fの割合はそれほど高くなく、3つの触覚部をもつ形状は微量しか存在しない。このことは、FVII−pdとシアル化の程度が低い因子FVII−tgとの間のシアル化の程度の違いを示している。
【実施例7】
【0050】
実施例7: MALDI−TOFMSの同定
質量分光分析MALDI−TOF MS (Matrix−Assisted Laser Desorpotion/Ionization Time of Flight Mass Spectrometory)はペプチド類、蛋白質、グリカン類、オリゴ糖類、そしてほとんどのイオン化可能なポリマーの分子量を高い精度で測定することを可能にしてくれる技術である。
分析対象のペプチド、蛋白質、及びグリカンは用いられるレーザーのナ長で吸収する基質に混合される。主要な基質はペプチドを分析するためのα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(HCCA)、蛋白質を分析するためのシナピン酸(SA)、そしてオリゴ糖類を分析するための2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)である。
この方法では、基質/検体共結晶体をパルス化レーザーで照射して、基質及び検体分子を共脱着させる。気相をイオン化させると、検体分子が飛行時間検出器を横断する。質量と飛行時間とは直接の相関性を有していることを考えれば、後者を測定することで標的検体の質量を判定することができる。同定は質量理論値と観察された質量測定値との比較を通じて行われる。配列決定は、得られたイオン・フラグメントに基づいて、MS/MSモードで行うことができる。用いられる装置はBruker Autoflex 2で、これはTOF及びTOF/TOFモードで作動する。
FVII−tg内に存在しているグリカン構造を同定するために、予備的なNP−HPLC(図5)で得られた溶出画分上で、MALDI−TOF MS分析を行った。
FVII−tgのMALDI−TOF分析でNP−HPLCによって分離されたグリカンの素性、つまりその大部分がモノシアル化されたA1構造であり、少部分がA1F、A2F、及びA2タイプであることが確認できた。
この研究で、3つの触覚部分をもち、バイシアル化及びトリシアル化された少数形状と、複合形状、それにタイプMan5及びMan6−P−HexNAcタイプのオリゴマンノースも同定できた。
さらに別のグリカン形状を同定するために、脱シアル化後に因子FVII−tgのMALDI−TOF MS分析を行った。
脱シアル化後、2つの少数形状G2とG2Fの存在が認められ、その割合はそれぞれ35%と28%(NP−HPLCによる定量)であった。これらの結果は(脱シアル化されていない)『天然』生成物の構造の同定結果と一致している。
他の同定された形状も少量ではあるが存在しており、それらは、実質的に、オリゴマンノース、Man6−p−HexNAC及び、Man7−p−HexNAC、そして水素化物タイプである。バイフコース化形状の存在も観察された。
【実施例8】
【0051】
実施例8: シアル酸−ガラクトース結合のHPCE−LIF分析
シアル酸−ガラクトース結合(『ブランチング』)の研究に関連する実験手順は実施例5ですでに述べたものと類似している。PNGase Fによる脱グリコシル化の後、オリゴ糖類を特殊なエグゾシアリダーゼで処理して、各探知された構造を同定、定量できるようにする。用いられるシアリダーゼは肺炎連鎖球菌(a2−3結合を特徴とし、0.02IU、E/S=0.4W/W)、ウェルシュ菌(a2−3及びa2−6結合を特徴とし、0.04IU、E/S=0.1W/W)、及びアルスロバスター・ウレアファシエンス(a2−3、a2−6、a2−8及びa2−9結合を加水分解させることができ、0.01IU、E/S=0.05W/W)からの遺伝子組み換え酵素である。
分析によって、FVII−recは2つの触覚部分を有し、シアル化され、フコース化されたグリカン構造を有しており、その大部分はA2Fで、2つの触覚部分を有するモノシアル化され、フコース化された(A1F)形状ももっていることが示された。 これらA2F及びA1F構造に関しては、通常こうした構造に見られるのとは違った不規則な移行時間が観察される。つまり、これらのオリゴ糖シアル化構造は、FVII−tgのものと比較してHPCE−LIF及びNP−HPLCにおいて不規則な移行時間を示す。一方、単糖類におけるその組成物の分析では、Neu5Acと異なった特別のシアル酸は見つからず、質量分光分析の結果では、質量がバイシアル化されたタイプのものとほぼ同じグリカンが見つかっている。最後に、FVII−recのグリカンの脱シアル化を行うと、FVII−tg及びFVII−pdのオリゴ糖のものと同様のクロマトグラフィ及び電気泳動挙動を再度確認することができる。
これら電気泳動及びクロマトグラフィ挙動におけるこれらの違いは、シアル酸の異なったブランチングによって説明することができる。この仮定は、いろいろな手法のHPCE−LIF及びMSでも裏づけられている。
これらの結果を表4に示す。
【0052】
【表4】

【0053】
これらの結果は3つのFVIIのシアル酸レベルでそれぞれ特徴のある等長性を示す。実際、FVII−recのシアル酸はa2−3結合の存在を示唆しており、タグの方は分岐a2−6を示し、FVII−pdがこれら2つのアイソマーの混合物であることを示している。
HPCE−LIFとHP−HPLCで、FVII−recのグリカンのFVII−tgとFVII−pdに対する挙動の違いはシアル酸レベルでのこれら等長性の違いに関係している。
【実施例9】
【0054】
実施例9: O−グリコシル化に関する研究
FVIIはSer52とSer60レベルで2つのO−グリコシル化箇所を示す。これらの残基はグルコース−(キシロース)0−2及びフコース部位をそれぞれ含んでいる。この研究の枠組みでは、O−グリコシル化について、LC−ESIMS(/MS)によって、そして、MALDI−TOF(/TOF)の場合と同様の方法で研究が行われた(結果は示さず)。
図10はサンプルFVII−pd、FVII−rec、及びFVII−tgのO−グリカンの構造を示している。m/z3297.4でのピークはSer52 上のグルコース−(キシロース)部位とSer60のフコース分を含むペプチド[Leu39−Lys62]に対応している。m/z3165.4及び3033.3でのピークはこのグリコペプチド上での1及び2キシロースのロスとそれぞれ対応している。これら3つのタイプのFVIIは均等にフコース化及びグリコシル化されているが、キシロース残基の数と、対応する糖形状の割合において異なっている。従って、FVII−pdにおいてはキシロースが0、1及び2の形状がほぼ同じ割合で存在しているが、FVII−recとFVII−tgはキシロースが0と2の形状を含むだけである。
MS分析はFuc及びGlc(Xy1)の構想を担持しているペプチド[Leu39−Lys62]に対応するm/z1516.6に二価のイオンが存在していることを示している。MS/MSで得られる異なった単糖に連続的な質量ロスは、それぞれ、グルコース及びフコース残基によす修飾を示している。Edman配列によって、修飾箇所に関してこれらの結果を裏づけることができる。
同様に、m/z1648.7での二価イオンはFuc及びGlc(Xyl)構造を担持するペプチド[Leu39−Lys62]に対応している。MS/MSで得られる異なったイオン・フラグメントは、キシロース部位がグルコースに結合していることを裏づけている。
【実施例10】
【0055】
実施例10: γ−カルボキシル化の研究
FVII−pdの最初の10個のグルタミン酸はγ−カルボキシル化されており、FVII−recの10番目のグルタミン酸は部分的にγ−カルボキシルかされているだけである。形質転換されたFVII及びその類似物のγ−カルボキシル化について調べるために、Asp−N及びトリプシン消化後に得られるペプチドをLC−MSで分析した。これら2つの酵素に関する結論は類似しており、Asp−N消化に関するデータだけを示す。
これらの実験的条件で、γ−カルボキシル化の可能性を示す3つのペプチド[Ala−Lys32]、[Asp33−Ser45]、及び[Asp33−Ser45]が確認された。ペプチド[Ala−Lys32]は最初の9つのγ−カルボン酸(Gla)を含んでおり、他の2つのペプチド[Asp33−Ser45]と[Asp33−Ser45]は、10番目のGla残基を含んでいるだけである。従って、10番目の残基の部分的修飾を具体的に研究する方がより簡単である。
FVII−pdの質量分光分析の結果(図11)は4296.8Daに最初の9個のグルタミン酸(Glu)上での完全にγ−カルボキシル化されたペプチド[Ala−Lys32]に対応する主要ピーク(約90%)と、10番目のGlu35のレベルに完全にγ−カルボキシル化されたペプチド[Asp33−Ser45]の特徴を示すピークの存在を示す。これらの結果は、文献(Jurlander B et al., Semin. Thromb. Hemost., 2001, 27, 373−384)に述べられているように、FVII−pdの最初の10個のGlu残基がγ−カルボキシル化されていることを示している。
同じ実験的条件の下で異なったデータが得られたので、FVIIの異なったバッチの比較研究が可能である(表5)。
図11は、FVII−recとFVII−tgの場合、完全にγ−カルボキシル化されたペプチド[Ala−Lys32]に対応する4296.8 Daのピークが主要であることを示している。一方、両方のFVIIの場合、1614.9に主要ピークの存在が認められ、このことはGla35上にγ−カルボキシル化されていないペプチド[Asp33−Ser45]の特徴を示している。この結果は、FVII−recの場合に約35−40%の割合で確認されている10番目のGlaの部分的γ−カルボキシル化を示しており、このことは公開されている数値(Thim L. et al., Biochemistry, 1988, 27, 7785−7793 and Jurlander B. et al., Semin. Thromb. Hemost, 2001, 27, 373−383)と一致している。ペプチド[Ala−Lys32]に8つのGlaが無視できない強度で存在していることも報告しておくべきであろう。この最後の点はこのペプチドにおける1つ以上のGlaの部分的γ−カルボキシル化を示しており、7つのGlaを有する『微量』部分の存在はむしrp単一の残基が関与していることを強く示すものであろう。
【0056】
【表5】

【実施例11】
【0057】
実施例11: ジスルフィド架橋の研究
非還元状況、つまりジスルフィド架橋が維持されている状態で得られたトリプシン加水分解物を用いてFVIIのジスルフィド架橋の研究を行った。
遊離シスチンの混入を防ぐために、そして、塩基性pHで行われるステップ中のジスルフィド架橋の交換が起きるのを避けるために、ヨードアセトアミドによる反応ステップを含めた。
これらの条件下で、12個のジスルフィド架橋の存在を確認することと、10個のシスチンをペアリングすることが可能であった(表6)。しかしながら、強調しなければならないのは、FVIIの配列のこの部分に関連して得られた結果は論理的なペアリングと一致している点である。これらの結論は調べられた両方のサンプル、つまり、FVII−pdとFVII−tgの両方に適用できる。
【0058】
【表6】

【0059】
用いられた実験の基本方針は翻訳後修飾を行っていないペプチド[Gls354−Ser379]/[Asp338−Lys341]に対して適用される(結果は示さず)。この基本方針は4つの補足的方針の必要性を示唆しており、それはi)ESI−MS及びMALDI−MSによる実験的質量と観察される質量との間の質量の二重『マッチング』によるジスルフィドを含むジペプチドの同定。ii)S−S架橋の化学的還元による構造の確認ジスルフィドから発生した2つのペプチドのMS同定、及び(iii)MS/MSと自動的Edman微小配列決定によるジペプチドの配列決定である。
これらの結果は、実験で得られた質量(3264.6Da)と理論質量(3264.5Da)との『マッチング』によって、ジスルフィド架橋Cys340−Cys368の存在を示唆するジペプチド[Gly354−Ser379]/[Asp318−Lys341]の最初の同定を示している。
還元後、このジスルフィド架橋Cys340−Cys368を含むジペプチド[Gly354−Ser379]/[Asp318−Lys341]に対応するピークが消失することが、Cys368を含むペプチド[Gly354−Ser379](理論質量:2816.3Da)に特有のm/z2816.3でのピークのおかげで観察される。MS/MS及びEdman化学反応による配列決定は、ジペプチド[Gly354−Ser379]/[Asp318−Lys341]とジスルフィド架橋Cys340−Cys368の同定を裏付けるものである。
【実施例12】
【0060】
実施例12: アスパラギン酸63のβ−水酸化の研究
蛋白質のトリプシン『消化』によってペプチド分析を行う。蛋白質はMALDI−MSで分析する。水酸化されたペプチドの同定は観察された質量をその理論質量と比較することによって行う。用いられる装置はTOFモードで作動するBruker Autoflex2である。
表7に異なった結果を示す。文献はFVII−pdとFVII−recのβ−水酸化は起きないと述べているが(Thim L. et al., Biochemistry, 1988, 27, 7758−7793)、これら両方のサンプルで部分的な修飾は観察されたこと、及びその程度はFVII−tgバッチと比較するとやや控えめであったことは強調しておくべきであろう。
【0061】
【表7】

【実施例13】
【0062】
実施例13: Galαl,3Gal構造の存在に関する研究
FVII−tgにおけるGalαl,3Gal構造の存在の可能性について調べるために、Galα1,3Gal構造のポジティブ・コントロールとして仔ウシ・サイログロブリンを用いる。
生成物を、Pngase Fで脱グリコシル化した後、Galα1,3Gal分岐に特有の反応を示すシアリダーゼ、フコシダーゼ、及びα−ガラクトシダーゼで処理する。
図6は仔ウシ・サイログロブリン上に天然形状(”Natif”)及び脱アシル化、脱フコース化、そしてα−脱ガラクトース化形状(Diasil+Dfuc+Dgalα(1,3,4,6))を重ねておくことで実行される研究を示している。α−脱ガラクトース化後に得られたグリカン形状は、この構造が上記酵素を用いて処理した後完全に消失することを示しており、したがって、用いられたa−ガラクトシダーゼが完全に活性であることを証明している。得られたGalα1,3Gal構造の割合は、予想された割合と一致している。
図7は脱シアル化され脱フコース化されたFVII−tg生成物(Dasil+Dfuc)と、脱シアル化され脱フコース化され、さらにa−脱ガラクトース化された生成物(Dasil+Dfuc+Dgalα(1,3,4,6))の電気泳動写真を重ね合わせたものである。
なお、両方の形状とも完全に重ね合わせが可能である。これらの結果は、FVII−tgにおいてはGalα1,3Gal構造が存在していない可能性を示唆している。なお、近接して存在してはいないグリカン・フコースに対応した多少の構造(*)も存在している。
【実施例14】
【0063】
実施例14: Galα1,3Gal糖類部位の定量
ヒト遺伝子組み換え、形質転換FVII 10μgをジスルフィド架橋還元条件に従って処理し、電気泳動ゲル上に沈殿させてから、ニトロセルロース膜状に移した。
エピトープ・アルファ(1,3)ガラクトシルの含有量が高いので、仔ウシ・サイログロブリンのサンプル(仔ウシ甲状腺からのサイログロブリン、T1001、Sigma社)をポジティブ・コントロールとして用いる。α−Gal部位(ガラクトース―アルファ−3ガラクトース−(3)4GlcNAc−R)をアグルチニン・ペロキシダーゼでラベルされ、α−Galエピトープに特有の反応を示す精製レクチン・マラスミウス・オレアデス(シバフタケ)(EY Laboratories、H−9001、MOA−HRP)を用いて明らかにする。その後、ペロキシダーゼ活性は色発生基質(Fluka, 4−クロロ−1−ナフソール)を用いて検出し、信号デジタル化(Bio−Rad, Quantity−one)によって定量する。信号の特殊性を確認するために、同じ膜をアルファ−ガラクトシダーゼ(Prozyme, Green coffee bean)で処理する。 同時に、総蛋白質量もクマシー・ブルーで染色した同じSDS−PAGEゲルによって染色することで調べる。
これらの結果は仔ウシ・サイログロブリンに関して観察された強力な信号とアルファ−ガラクトシダーゼで処理した後それが消失することの結果としてのレクチン・マラスミウス・オレアデス(MOA)と特殊性を示している。MOA信号の強度を分析される蛋白質の量に対応した信号の強度で割った値に関して示されている結果は、FVII−tgサンプルに対する残留α−Gal信号(2,3,a,3,7)のレベルを示しており、遺伝子組み換えFVIIはより高い値を示している。
これらの結果(図8参照)は、ウサギで発現された形質転換FVII上でのα−Galエピトープが存在しないか、例えば、ハムスターの細胞内での遺伝子組み換えFVII生成物と比較して非常にわずかばかり多いことを示している。
表Aは本発明によるFVIIの組成物を提供するための本発明の好ましい1つの実施の形態によるプロセス・ステップを示すものであり、各ステップでの異なった収率、純度、及び比活性を示している。
【0064】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、因子VIIIの欠乏(A型血友病)あるいは因子IXの欠乏(B型血友病)を示す血友病患者の治療に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの分子が2つのN−グリコシル化部位を示す遺伝子組み換えあるいは形質転換因子VII(FVII)の組成物において、その組成物のすべてのFVII分子の中でのGalα1、3Galグリカン部分の割合が0−4%の範囲であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記FVIIのシアル酸の少なくとも65%がα2−6結合である可能性を示すことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記FVIIのシアル酸のすべてがα2−6結合である可能性を示すことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物のFVIIがさらにα2−3結合である可能性を示すシアル酸を含んでいることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物のFVIIのすべてのグリカン部分のうちで、少なくとも40%が2つの触角をもった形状のモノシアル化されたグリカン形状であることを特徴とする請求項1−4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記FVIIの2つの触角をもった形状のモノシアル化されたグリカン形状が過半数であることを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記FVIIの2つの触角をもった形状のモノシアル化されたグリカン形状のうちで、グリカン形状の過半数がフコース化されていないことを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記因子VIIのフコース化の割合が20%−50%の範囲であることを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
形質転換された雌ウサギによってつくりだされることを特徴とする請求項1−8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記因子VIIが活性化されることを特徴とする請求項1−9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
医薬品として使用するための、請求項1−10のいずれか1項に記載の因子VIIの組成物。
【請求項12】
血友病患者の治療のための医薬品製造のための、請求項1−10のいずれか1項に記載の因子VIIの組成物の利用。
【請求項13】
多重出血性外傷治療のための医薬品製造のための、請求項1−10のいずれか1項に記載の因子VIIの組成物の利用。
【請求項14】
外科手術に伴う制御不能な大量出血を措置するための医薬品を製造するための、請求項1−10のいずれか1項に記載の因子VIIの組成物の利用。
【請求項15】
抗凝固剤の過剰投与による出血あるいは大量出血を措置するための医薬品製造のための、請求項1−10のいずれか1項に記載の因子VIIの組成物の利用。
【請求項16】
請求項1−10のいずれか1項に記載の因子VIIと薬学的に受け入れ可能な賦形剤及び/又は基質を含む医薬品組成物。
【請求項17】
形質転換された動物の母乳に含まれる形質転換性FVIIの抽出および精製のためのプロセスにおいて、
a) 母乳から、前記母乳の有機及び/又は無機塩及び/又はカルシウムの複合体と結合しているFVIIを、その母乳に添加された可溶性塩を加えることで得られたカルシウム化合物を析出することでFVIIを抽出するステップで、この可溶性塩の陰イオンが不溶性のカルシウム化合物を形成してその塩及び/又は複合体からこうした方法で因子VIIを放出できる能力があるかどうかを基準として選択され、その場合因子VIIは液相内に存在しているステップと、
b) カルシウム化合物の沈殿物から蛋白質を多量に含む液相を分離して、その液相をさらに脂質相と上記蛋白質を含む水性の非脂質相に分離するステップと、
c) 所定の濃度でリン酸塩に基づく溶出緩衝剤を用いて上記水性の非脂質相を親和性クロマトグラフィにかけるステップと、そして
d) ステップc)で得られた因子VIIの溶出液を、弱塩基性陰イオン交換カラム上で、そのカラム上に保持された因子VIIを連続的に溶出させるのに適した緩衝剤を用いて2又は3回クロマトグラフィで処理するステップ
とで構成されることを特徴とするプロセス。
【請求項18】
前記可溶性塩がリン酸塩であることを特徴とする請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
上記リン酸塩がリン酸ナトリウム、リン酸リチウム、リン酸カリウム、リン酸ルビジウム、及びリン酸セシウムで構成される群から選択され、特にリン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項17又は18に記載のプロセス。
【請求項20】
上記可溶性塩がアルカリ金属シュウ酸塩であり、特にシュウ酸ナトリウムあるいはシュウ酸カリウムであり、あるいはアルカリ金属炭酸塩であり、特に炭酸ナトリウムあるいは炭酸カリウムであるか、あるいはそれらの混合物であることを特徴とする請求項17に記載のプロセス。
【請求項21】
水溶液内での前記可溶性塩の濃度が100mMから3Mの範囲にあり、より好ましくは200mMから500mMの範囲にあり、特に好ましくは200mMから300mMの範囲にあることを特徴とする、請求項17−20のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記ステップb)が遠心分離によって行われることを特徴とする、請求項17−21のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項23】
前記分離ステップの後に、好ましくは 1μm から0.45μmに孔隙度を減らしたフィルター上で連続的に行われる非脂質性水相のろ過ステップと、それに続く限外ろ過による濃縮/透析のステップを含む、請求項17−22のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項24】
前記脂質相が、好ましくは1μm から0.45μmに孔隙度を減らしたフィルター上でろ過されることを特徴とする、請求項17−23のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項25】
前記親和性クロマトグラフィがクロマトグラフィ・カラム上で行われ、その基質がヒドロキシアパタイト・ゲル(Ca10(PO(OH))またはフルオロアパタイト・ゲル(Ca10(PO)であり、前記溶出緩衝剤が0.25M−0.35Mリン酸ナトリウム、pH7.5−8.5に基づく緩衝剤であることを特徴とする、請求項17−24のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項26】
前記ステップc)で得られる FVIIの溶出液がその後接線ろ過にかけられることを特徴とする、請求項17−25のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項27】
1回目のクロマトグラフィ・ステップがQ−Sepharose(登録商標)FFゲルタイプのクロマトグラフィ基質上で行われることを特徴とする、請求項17−26のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項28】
FVIIの溶出が0.05Mトリス及び0.020M−0.05M塩化カルシウム、pH7.0−8.0に基づく水性緩衝剤を用いて行われることを特徴とする請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
前記2回目のクロマトグラフィ・ステップがQ−Sepharose(登録商標)FFゲルタイプのクロマトグラフィ基質上で行われ、その基質上に1回目の陰イオン交換クロマトグラフィ・ステップで得られたFVII溶出液が注入されることを特徴とする、請求項17−28のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項30】
FVIIの溶出が0.05Mトリス及び0.005M塩化カルシウム、pH7.0−8.0に基づく水性緩衝剤を用いて行われることを特徴とする、請求項29に記載のプロセス。
【請求項31】
前記3回目のクロマトグラフィ・ステップがQ−Sepharose(登録商標)FFゲルタイプのクロマトグラフィ基質上で行われ、その上に2回目の陰イオン交換クロマトグラフィ・ステップで得られたFVIIの二回目の溶出液を注入することを特徴とする、請求項17−30のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項32】
前記FVIIの溶出が0.02Mトリス及び0.20−0.30M、好ましくは0.28Mの塩化ナトリウム、pH6.5−7.5に基づく水性緩衝剤を用いて行われることを特徴とする、請求項31に記載のプロセス。
【請求項33】
製剤、ウイルス非活性化、及び滅菌のうちの少なくとも1つのステップを含んでいる、請求項17−32のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項34】
前記親和性クロマトグラフィ・ステップの前に、溶剤/洗剤を用いて行われる抗ウイルス・ステップを含んでいる、請求項17−33のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項35】
前記2回目の陰イオン交換クロマトグラフィ・ステップで得られた溶出液がナノろ過にかけられることを特徴とする、請求項17−33のいずれか1項に記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2009−538885(P2009−538885A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512641(P2009−512641)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際出願番号】PCT/FR2007/000909
【国際公開番号】WO2007/138199
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(508183139)エルエフビー バイオテクノロジース (7)
【Fターム(参考)】