説明

つかみ装置

【課題】ワークが不意に離脱するのを規制しつつ、長寿命化および作業の迅速化を図ること。
【解決手段】第1チューブ体2および第2チューブ体3と、各チューブ体2、3の両端がそれぞれ全周にわたって固定され、該チューブ体2、3との間に流体が給排される空間Aが形成された固定部材5と、該固定部材5に連結された弾性変位可能な可動部材6と、を備え、第1チューブ体2は、膨張変形したときに可動部材6を押圧して弾性変位させ、第2チューブ体3は、当該つかみ装置1とワークWとを軸線O方向に沿って相対的に接近移動させることでワークWに内挿または外挿され、可動部材6には、第2チューブ体3がワークWに内挿または外挿されるときに、弾性変位した可動部材6が復元変位することでワークWの被係合部W1に係合し、ワークWに対する第2チューブ体3の内挿または外挿が解除されるのを規制する係合部16が設けられているつかみ装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、つかみ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるようなつかみ装置が知られているが、この種のつかみ装置であって、筒状のワークをつかむつかみ装置として、弾性体からなるチューブ体と、チューブ体の両端がそれぞれ全周にわたって固定され、該チューブ体との間に流体が給排される空間が形成された固定部材と、を備える構成が知られている。
該つかみ装置では、チューブ体をワークに内挿させた後、前記空間内に流体を供給し、前記チューブ体を膨張変形させワークの内周面に密接させることによりワークをつかむ。
また前記つかみ装置の他の用途として、ワークが有底筒状の場合に、前述のようにチューブ体をワークの内周面に密接させることで、ワークの内部を密閉するといったいわゆるシール用途が知られている。前記つかみ装置をこのシール用途に用いた場合には、その後、例えば、密閉されたワークの内部に検査流体を供給しワークのリーク検査などを行う。
【0003】
しかしながら、前記つかみ装置では、例えば、該つかみ装置をシール用途に用いリーク検査を行った場合、密閉されたワークの内部に検査流体を供給するときにワークの内部の圧力が高まることから、ワークがつかみ装置から不意に離脱するおそれがあった。また、該つかみ装置を用いて重量物のワークをつかむ場合にも同様に、ワークがつかみ装置から離脱するおそれがあった。
【0004】
そこで、このような問題を解決するために、つかみ装置として、前記チューブ体および前記固定部材に加え、ワークにチューブ体が内挿された状態で締め付けられることによりワークの被係合部に係合する複数のねじ部材を備える構成を採用することが考えられる。これらのねじ部材は、被係合部に係合することで、ワークに対するチューブ体の内挿が解除されるのを規制する。
該つかみ装置では、チューブ体をワークに内挿させた後、チューブ体を膨張変形させてワークの内周面に密接させるとともに、複数のねじ部材をそれぞれ締め付けて前記被係合部に係合させる。これにより、ワークに対するチューブ体の内挿が解除されるのが規制され、ワークがつかみ装置から不意に離脱するのを規制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−317990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のつかみ装置では、複数のねじ部材をそれぞれ締め付けて前記被係合部に係合させる必要があり、またねじ部材と被係合部との係合を解除する際には、複数のねじ部材をそれぞれ緩める必要があり、作業に時間がかかるという問題がある。
またねじ部材は、締め付け作業および緩め作業により破損し易いことから早期に寿命に至るおそれがあり、前記従来のつかみ装置では、ねじ部材が破損するたびにねじ部材を交換したり、場合によってはつかみ装置全体の交換をしたりする必要があるという問題もある。
【0007】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ワークが不意に離脱するのを規制しつつ、長寿命化および作業の迅速化を図ることができるつかみ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るつかみ装置は、筒状のワークをつかむつかみ装置であって、弾性体からなる第1チューブ体および第2チューブ体と、これらの各チューブ体の両端がそれぞれ全周にわたって固定され、該チューブ体との間に流体が給排される空間が形成された固定部材と、該固定部材に連結された弾性変位可能な可動部材と、を備え、前記第1チューブ体は、膨張変形したときに前記可動部材を押圧して弾性変位させ、前記第2チューブ体は、当該つかみ装置と前記ワークとを軸線方向に沿って相対的に接近移動させることで前記ワークに内挿または外挿され、前記可動部材には、前記第2チューブ体が前記ワークに内挿または外挿されるときに、弾性変位した前記可動部材が復元変位することで前記ワークの被係合部に係合し、前記ワークに対する第2チューブ体の内挿または外挿が解除されるのを規制する係合部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
この発明では、ワークをつかむときには、まず、つかみ装置とワークとを軸線方向に沿って相対的に接近移動させることで、第2チューブ体をワークに内挿または外挿する。このとき、弾性変位した可動部材が復元変位することで、可動部材の係合部がワークの被係合部に係合する。そして、第2チューブ体を膨張変形させてワークの内周面または外周面に密接させることで、ワークをつかむ。
【0010】
その後ワークを離すときには、まず、第2チューブ体を収縮変形させてワークの内周面または外周面から離間させる。また、第1チューブ体を膨張変形させて可動部材を弾性変位させることで、可動部材の係合部とワークの被係合部との係合を解除する。そして、つかみ装置とワークとを軸線方向に沿って相対的に移動させてワークを離す。
【0011】
以上のように、第2チューブ体をワークの内周面または外周面に密接させてワークをつかむので、ワークを安定して把持することができる。またこのとき、可動部材の係合部がワークの被係合部に係合しているので、ワークに対する第2チューブ体の内挿または外挿が解除されるのが規制され、ワークがつかみ装置から軸線方向に不意に離脱するのを規制することが可能になり、ワークを確実に安定してつかむことができる。
【0012】
また、第2チューブ体がワークに内挿または外挿されるときに、弾性変位した可動部材が復元変位することで、可動部材の係合部がワークの被係合部に係合し、さらに第1チューブ体を膨張変形させて可動部材を弾性変位させることで、係合部と被係合部との係合を解除させることができる。このように、可動部材に作用する弾性力を利用して係合部を被係合部に係合させたり、その係合を解除させたりすることができるので、作業の簡便化および迅速化を図ることができる。
さらにこのように、可動部材に作用する弾性力を利用して係合部を被係合部に係合させたり、その係合を解除させたりするので、係合作業時に係合部が破損し難く、つかみ装置の長寿命化を図ることができる。
【0013】
なおワークが有底筒状であり、第2チューブ体が、つかみ装置とワークとを軸線方向に沿って相対的に接近移動させることでワークに内挿される場合には、第2チューブ体が膨張変形してワークの内周面に密接することで、ワークの内部を密閉することができる。
またこのように、つかみ装置を、ワークの内部を密閉するシール用途に用いる際に、例えばワークの検査のためにワークの内部に検査流体を供給する場合などには、ワークの内部の圧力が高まろうとするものの、可動部材の係合部をワークの被係合部に係合させることで、ワークに対する第2チューブ体の内挿が解除されるのを規制することが可能になり、ワークがつかみ装置から軸線方向に不意に離脱するのを規制することができる。
【0014】
また、前記可動部材は、前記第2チューブ体が前記ワークに内挿または外挿されるときに、前記係合部が前記被係合部に摺接することにより弾性変位し、かつ軸線方向に沿って当該つかみ装置が前記ワークに対して接近移動する方向に前記係合部が前記被係合部を乗り越えることにより復元変位しても良い。
【0015】
この場合、第2チューブ体がワークに内挿または外挿されるときに、係合部が被係合部に摺接することにより可動部材が弾性変位し、かつ係合部が被係合部を前記接近移動する方向に乗り越えることにより可動部材が復元変位するので、係合部を被係合部に係合させるために、可動部材を弾性変位させた後に復元変位させるという作業を別途行わなくても良く、作業の一層の簡便化および迅速化を図ることができる。
【0016】
また、前記可動部材は、前記係合部が前記被係合部に係合した状態で、軸線方向に沿って延在していても良い。
【0017】
この場合、係合部が被係合部に係合した状態で、可動部材が軸線方向に沿って延在しているので、ワークがつかみ装置から軸線方向に離脱しようとしたときにワークから可動部材に加えられる力の方向が、可動部材の延在方向に一致し、ワークから可動部材に曲げ力ではなく引張力が加えられ易くなる。これにより、ワークの離脱をより効果的に規制することができる。
【0018】
また、前記固定部材または前記可動部材には、前記係合部が前記被係合部に係合した状態で、軸線方向に沿った方向のうち、前記被係合部に対して前記係合部が位置する方向の反対側から前記ワークに近接または当接する規制部が設けられていても良い。
【0019】
この場合、係合部が被係合部に係合した状態で、規制部が前記反対側からワークに近接または当接しているので、第2チューブ体とワークとの軸線方向における相対的な位置関係を安定させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るつかみ装置によれば、ワークが不意に離脱するのを規制しつつ、長寿命化および作業の迅速化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係るつかみ装置における縦断面図である。
【図2】図1に示すつかみ装置の作用を説明する縦断面図である。
【図3】図2に示すつかみ装置における要部の縦断面図である。
【図4】図1に示すつかみ装置の作用を説明する縦断面図である。
【図5】図1に示すつかみ装置の作用を説明する縦断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るつかみ装置における縦断面図である。
【図7】図6に示すつかみ装置における可動部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、図面を参照し、本発明の第1実施形態に係るつかみ装置を説明する。
図1に示すように、つかみ装置1は、弾性体からなる第1チューブ体2および第2チューブ体3と、これらの各チューブ体2、3の両端がそれぞれ全周にわたって固定され、該チューブ体2、3との間に流体が給排される密閉空間Aが形成された固定部材5と、該固定部材5に連結された弾性変位可能な可動部材6と、を備えている。
【0023】
固定部材5は、例えばステンレス鋼やアルミニウム等の金属材料で形成された柱状体とされ、固定部材5およびチューブ体2、3は共通軸と同軸に配設されている。以下、この共通軸を軸線Oといい、軸線O方向に沿って一端側(図1から図5における上側)を上側、他端側(図1から図5における下側)を下側といい、軸線Oに直交する方向を径方向といい、軸線Oを中心に周回する方向を周方向という。
【0024】
固定部材5の上端部には、径方向の外側に向けて突出する鍔部7が形成されている。鍔部7は環状に形成されており、固定部材5において鍔部7よりも下側に位置する部分は、チューブ体2、3に内挿されている。
各チューブ体2、3は、例えばナイロン糸等からなる補強層が内装された円筒状に形成されている。
【0025】
チューブ体2、3の両端は、該チューブ体2、3の端部を介して固定部材5に外嵌された加締リング8により、固定部材5の外周面に固定されている。なお本実施形態では、各チューブ体2、3の下側部分は、径方向の内側に上側に向けて折り返されており、加締リング8のうち、チューブ体2、3の下端を固定部材5に固定する加締リング8は、チューブ体2、3の上側部分により径方向の外側から覆われている。
【0026】
チューブ体2、3は、固定部材5の外周面に軸線O方向に沿って複数配設されており、各チューブ体2、3により形成される密閉空間Aは、互いに独立している。
これらのチューブ体2、3のうち、上側に位置するものが第1チューブ体2、下側に位置するものが第2チューブ体3となっており、第2チューブ体3は、当該つかみ装置1と有底筒状(筒状)のワークWとを軸線O方向に沿って相対的に接近移動させることでワークWに内挿される。
【0027】
ここで、固定部材5において第1チューブ体2と第2チューブ体3との間に位置する部分には、固定部材5と別体に形成された規制部材(規制部)9が設けられている。規制部材9は、固定部材5に外嵌された環状部10と、環状部10から下方に向けて延設された筒状部11と、を備えており、これらの環状部10および筒状部11は、いずれも軸線Oと同軸に配設されている。
【0028】
環状部10の外周縁は、鍔部7の外周縁よりも径方向の内側で、かつ筒状部11の外周面よりも径方向の外側に位置しており、環状部10における径方向の外端部は、筒状部11よりも径方向の外側に突出している。
筒状部11は、加締リング8のうち、第2チューブ体3の上端を固定する加締リング8を、径方向の外側から全周にわたって覆っている。また、筒状部11における下端面と外周面とは、下方から上方に向かうに従い漸次、径方向の外側に向けて延在するガイド面12を介して連結されている。
【0029】
また固定部材5には、固定部材5の下端面に開口し、当該つかみ装置1によりつかまれたワークWの内部に例えばエア等の検査流体を給排する検査流体通路13が形成されている。検査流体通路13は、軸線O方向に沿って延在するとともに軸線Oと同軸に配設され、検査流体通路13における給排気口13aは、固定部材5の上端面に開口している。
【0030】
また固定部材5には、前記密閉空間A内に流体を給排する給排通路14が形成されている。給排通路14は、固定部材5に互いに独立して2つ形成されるとともに検査流体通路13から独立しており、それぞれの給排通路14は、互いに独立した各密閉空間A内に各別に連通している。また、各給排通路14の給排気口14aは、固定部材5の上端部において前記鍔部7よりも上側に位置する部分に開口している。これらの給排通路14を通して密閉空間Aへ流体を供給すると、チューブ体2、3が径方向の外側に膨張変形する。
【0031】
可動部材6は、周方向に間隔をあけて複数配設されており、本実施形態では、2つの可動部材6が、周方向に同等の間隔をあけて配設され、つまり軸線Oを挟んで径方向に対応する位置に配設されている。そして可動部材6の上端部は、ボルト15により固定部材5の鍔部7に固定され、可動部材6の下端部は、規制部材9の筒状部11よりも径方向の外側に、該筒状部11との間に径方向の隙間をあけて配置されており、これらの可動部材6の間には、前記第1チューブ体2が位置している。
各可動部材6は、軸線O方向に沿って延在する板状に形成されるとともに、可動部材6の表裏面は径方向を向いており、本実施形態では板ばねにより構成されている。
【0032】
また可動部材6には、第2チューブ体3がワークWに内挿されるときに、ワークWの被係合部W1に係合し、ワークWに対する第2チューブ体3の内挿が解除されるのを規制する係合部16が設けられている。係合部16は、可動部材6の下端部から径方向の内側に向けて突出するとともに可動部材6に一体に形成されており、可動部材6の下端部における周方向の両端部に各別に設けられている。なお係合部16は、例えば可動部材6を構成する前記板ばねを、径方向の内側に向けて折り曲げることにより形成することができる。
また、係合部16の下端と係合部16における径方向の内端縁とは、下方から上方に向かうに従い漸次、径方向の内側に向けて延在する傾斜部17を介して連結されている。
【0033】
さらに、可動部材6において第1チューブ体2に径方向に対向する部分には、径方向の内側に向けて張り出す張出部18が形成されている。張出部18における径方向の内端縁は、軸線O方向に沿って延在するとともに、係合部16における径方向の内端縁と径方向の位置が同等となっている。そして、張出部18における径方向の内端縁が、膨張変形した第1チューブ体2により押圧されることにより、可動部材6が、径方向の外側に弾性変位させられる。
【0034】
なお本実施形態では、張出部18は、可動部材6と別体で形成され、屈曲された板状部材により構成されるとともに、可動部材6において径方向の内側を向く裏面に連結されている。この張出部18は、径方向の内端縁を構成するとともに可動部材6との間に径方向の隙間をあけて配置された当接部19と、当接部19の上下両端から径方向の内側に向けて延設され可動部材6に連結された一対の連結部20と、を備えている。
【0035】
次に、以上のように構成されたつかみ装置1の作用について説明する。
なお本実施形態では、ワークWの被係合部W1は、図2に示すように、ワークWの口部W2における開口端部に、径方向の外側に向けて突設されるとともに全周にわたって延設されたフランジ状に形成されているものとする。
【0036】
つかみ装置1でワークWをつかむときには、まず、第2チューブ体3をワークWに内挿させるために、つかみ装置1を上側に位置させるとともにワークWを下側に位置させた状態で、つかみ装置1とワークWとを、径方向に位置合わせしながら軸線O方向に沿って相対的に接近移動させ、固定部材5の下端部および第2チューブ体3をワークWの口部W2内に漸次、進入させる。
この過程で、規制部材9の筒状部11が前記口部W2内に進入し始めると、筒状部11のガイド面12によりワークWがガイドされ、ワークWの前記開口端部が、筒状部11と可動部材6の係合部16との間に配置される。
【0037】
このとき、ワークWの前記開口端部の外周側では、図3に示すように、係合部16が、その傾斜部17および内端縁の順に被係合部W1に径方向の外側から摺接しながら、該被係合部W1を、軸線O方向に沿ってつかみ装置1がワークWに対して接近移動する方向である上側から下側に乗り越える。
ここで図2に示すように、可動部材6は、係合部16が被係合部W1に摺接することにより、上端部から下端部に向かうに従い漸次、径方向の外側に向かうように弾性変位させられる。また図4に示すように、可動部材6は、係合部16が被係合部W1を乗り越えることにより、径方向の内側に向けて復元変位させられる。
【0038】
このように、弾性変位した可動部材6が復元変位することで、可動部材6がワークWの口部W2に対して径方向の外側に位置した状態で、可動部材6の係合部16が、ワークWの被係合部W1に下側から係合する。
なお本実施形態では、係合部16が被係合部W1に係合した状態で、可動部材6が軸線O方向に沿って延在しているとともに、規制部材9の環状部10が、被係合部W1に対して係合部16が位置する方向の反対側である上側からワークWに近接または当接している。
【0039】
その後、第2チューブ体3と固定部材5との間に形成された密閉空間Aに、給排通路14を通して流体を供給することにより、第2チューブ体3を膨張変形させてワークWの内周面に密接させることで、ワークWをつかむ。
またこのように、第2チューブ体3を膨張変形させてワークWの内周面に密接させることで、ワークWの内部が密閉される。そこで本実施形態では、ワークWの内部を密閉した後、前記検査流体通路13を通してワークWの内部に検査流体を供給し、例えばワークWのリーク検査などを行う。
【0040】
その後ワークWを離すときには、まず図5に示すように、第2チューブ体3と固定部材5との間に形成された密閉空間Aから、給排通路14を通して流体を排出することにより、第2チューブ体3を収縮変形させてワークWの内周面から離間させる。
また、第1チューブ体2と固定部材5との間に形成された密閉空間Aに、給排通路14を通して流体を供給することにより、第1チューブ体2を膨張変形させ、可動部材6を径方向の外側に弾性変位させることで、可動部材6の係合部16とワークWの被係合部W1との係合を解除する。
そして、つかみ装置1とワークWとを軸線O方向に沿って相対的に移動させてワークWを離す。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係るつかみ装置1によれば、図4に示すように、第2チューブ体3をワークWの内周面に密接させてワークWをつかむので、ワークWを安定して把持することができる。またこのとき、可動部材6の係合部16がワークWの被係合部W1に係合しているので、ワークWに対する第2チューブ体3の内挿が解除されるのが規制され、ワークWがつかみ装置1から軸線O方向に不意に離脱するのを規制することが可能になり、ワークWを確実に安定してつかむことができる。
【0042】
また、係合部16が被係合部W1に係合した状態で、可動部材6が軸線O方向に沿って延在しているので、ワークWがつかみ装置1から軸線O方向に離脱しようとしたときにワークWから可動部材6に加えられる力の方向が、可動部材6の延在方向に一致し、ワークWから可動部材6に曲げ力ではなく引張力が加えられ易くなる。これにより、ワークWの離脱をより効果的に規制することが可能になり、ワークWをさらに確実に安定してつかむことができる。
【0043】
さらに、係合部16が被係合部W1に下側から係合した状態で、規制部材9の環状部10がワークWに上側から近接または当接しているので、第2チューブ体3とワークWとの軸線O方向における相対的な位置関係を安定させることが可能になり、ワークWをさらに確実に安定してつかむことができる。
【0044】
また本実施形態のように、つかみ装置1を、ワークWの内部を密閉するシール用途に用いる際に、ワークWの内部に検査流体を供給する場合には、ワークWの内部の圧力が高まろうとするものの、可動部材6の係合部16をワークWの被係合部W1に係合させることで、ワークWに対する第2チューブ体3の内挿が解除されるのを規制することが可能になり、ワークWがつかみ装置1から軸線O方向に不意に離脱するのを規制することができる。
【0045】
また、第2チューブ体3がワークWに内挿されるときに、弾性変位した可動部材6が復元変位することで、可動部材6の係合部16がワークWの被係合部W1に係合し、さらに第1チューブ体2を膨張変形させて可動部材6を弾性変位させることで、係合部16と被係合部W1との係合を解除させることができる。このように、可動部材6に作用する弾性力を利用して係合部16を被係合部W1に係合させたり、その係合を解除させたりすることができるので、作業の更なる簡便化および迅速化を図ることができる。
【0046】
さらに本実施形態では、第2チューブ体3がワークWに内挿されるときに、係合部16が被係合部W1に摺接することにより可動部材6が弾性変位し、かつ係合部16が被係合部W1を上側から下側に乗り越えることにより可動部材6が復元変位するので、係合部16を被係合部W1に係合させるために、可動部材6を弾性変位させた後に復元変位させるという作業を別途行わなくても良く、作業の一層の簡便化および迅速化を図ることができる。
【0047】
また以上のように、可動部材6に作用する弾性力を利用して係合部16を被係合部W1に係合させたり、その係合を解除させたりするので、係合作業時に係合部16が破損し難く、つかみ装置1の長寿命化を図ることができる。すなわち、ねじ部材は、締め付け作業により破損し易いことから、係合部16としてねじ部材を採用した場合、早期に寿命に至るおそれがある。
【0048】
また、密閉空間Aに流体を給排してチューブ体2、3を膨張変形または縮小変形させることで、つかみ装置1によりワークWをつかんだり離したり、または可動部材6を弾性変位させたりすることができるので、例えばモータ等を採用した場合などに比べて、構造の簡素化を図ることができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るつかみ装置を説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0050】
図6に示すように、本実施形態に係るつかみ装置30では、前記鍔部7には、可動部材6が連結される被連結部32が、周方向に間隔をあけて複数配設されている。本実施形態では、2つの被連結部32が、周方向に同等の間隔をあけて配設され、つまり軸線Oを挟んで径方向に対応する位置に配設されている。
【0051】
図7に示すように、被連結部32は、鍔部7から径方向の外側に向けて突出する一対の連結板33が、周方向に間隔をあけて配設されてなる。連結板33において周方向を向く表裏面は、軸線O方向に沿って延在するとともに、連結板33の上下面は、径方向に沿って延在している。そして、一対の連結板33同士のうち、周方向に互いに対向する部分同士には貫通孔34が各別に形成されており、この貫通孔34内に周方向に延在するシャフト35が挿通されている。
【0052】
前記可動部材6の上端部は、一対の連結板33の間に位置するとともに、この上端部に形成された挿通孔36に前記シャフト35が挿通されることで、被連結部32にシャフト35を介して連結されている。可動部材6は、軸線O方向の位置によらず周方向に沿った幅が同等とされた板状に形成されており、可動部材6において周方向を向く表裏面は、軸線O方向に沿って延在している。
【0053】
また、可動部材6において上端部よりも下側に位置する部分には、一対の連結板33のうち、一方の連結板33に下方から当接するストッパー部37が、周方向に向けて突設されている。ストッパー部37は四角柱状とされ、ストッパー部37の上面は、径方向に沿って延在するとともに前記一方の連結板33の下面に当接している。
図6に示すように、前記張出部18および前記係合部16は、可動部材6と一体に形成された板状に形成されており、図7に示すように、張出部18および係合部16の各幅は、可動部材6の幅と同等となっている。
【0054】
また可動部材6の上端部は、一対の連結板33の間において前記一方の連結板33側に位置しており、一対の連結板33の間において他方の連結板33側には、前記シャフト35が挿通されたトーションスプリング38(付勢部材)が配置されている。
図6および図7に示すように、トーションスプリング38の一端38aは、前記他方の連結板33の上端縁から周方向の前記一方の連結板33側に向けて突設された支持突部39に下方から当接している。またトーションスプリング38の他端38bは、可動部材6に径方向の外側から当接している。以上により、トーションスプリング38は、可動部材6を径方向の内側に向けて付勢している。トーションスプリング38による可動部材6への付勢力は、前記ストッパー部37を介して前記一方の連結板33に受け止められている。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係るつかみ装置30によれば、前記第1実施形態と同様の作用効果を奏功させることができる。
【0056】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、可動部材6の係合部16がワークWの被係合部W1に係合した状態で、軸線O方向に沿って延在しているものとしたが、軸線O方向に沿って延在していなくても良い。
【0057】
また前記実施形態では、係合部16の下端と係合部16における径方向の内端縁とが前記傾斜部17を介して連結されているものとしたが、第2チューブ体3がワークWに内挿されるときに、係合部16が被係合部W1に摺接することにより、可動部材6が弾性変位し、かつ係合部16が被係合部W1を上側から下側に乗り越えることにより、可動部材6が復元変位すれば、これに限られるものではない。例えば、係合部16の下端と係合部16における径方向の内端縁とが、径方向の内側に向けて突形状をなす湾曲部を介して連結されていても良い。
【0058】
また前記実施形態では、係合部16は可動部材6に突設されているものとしたが、これに限られるものではない。例えば、可動部材6の下端部に、この下端部を径方向に貫通する窓部が形成され、該下端部において窓部よりも下側に位置する部分が係合部とされても良い。
【0059】
また前記実施形態では、第2チューブ体3がワークWに内挿されるときに、係合部16が被係合部W1に摺接することにより、可動部材6が弾性変位し、かつ係合部16が被係合部W1を上側から下側に乗り越えることにより、可動部材6が復元変位するものとしたが、これに限られない。例えば、可動部材6の係合部16をワークWの被係合部W1に係合させるために、第2チューブ体3がワークWに内挿されるときに、第1チューブ体2を膨張変形させることにより、可動部材6を弾性変位させても良い。この場合、係合部16を被係合部W1に対して上方から下方に移動させた後、第1チューブ体2を収縮変形させて可動部材6を復元変位させることにより、係合部16を被係合部W1に係合させることができる。
【0060】
また前記実施形態では、規制部材9が、固定部材5と別体に形成されているものとしたが、一体に形成されていても良い。
さらに前記実施形態では、規制部材9が、固定部材5に設けられているものとしたが、これに限られるものではなく、例えば可動部材6に設けられていても良い。
さらにまた前記実施形態では、前記規制部材9は、環状部10と筒状部11とを備えているものとしたが、筒状部11はなくても良く、さらに規制部材9自体がなくても良い。
【0061】
また前記実施形態では、つかみ装置1、30によりワークWをつかんだ後、ワークWの検査のためにワークWの内部に検査流体を供給するものとしたが、検査流体を供給しなくても良い。この場合、検査流体通路13はなくても良い。
さらに前記実施形態では、ワークWは有底筒状に形成されるものとしたが、これに限られるものではなく、上下両方向に開口する筒状であっても良い。また前記被係合部W1は、前記実施形態に示したものに限られない。
【0062】
また前記実施形態では、可動部材6が、ワークWの口部W2に対して径方向の外側に位置した状態で、可動部材6の係合部16が、ワークWの被係合部W1に軸線O方向の下側から係合するものとしたが、これに限られるものではない。
例えば、可動部材がワークの口部内に位置した状態で、係合部が被係合部に係合する構成であっても良い。この場合、例えば固定部材が、可動部材を径方向の外側から囲繞する囲繞筒部を備え、該囲繞筒部に第1チューブ体が内挿されて固定され、第1チューブ体が、径方向の内側に向けて膨出変形したときに、可動部材を径方向の内側に弾性変位させる構成とすることができる。なおこの場合、ワークの被係合部は、例えば径方向の内側に向けて突出するフランジ状に形成すれば良い。
【0063】
また前記実施形態では、第2チューブ体3が、つかみ装置1、30とワークWとを軸線O方向に相対的に接近移動させることでワークWに内挿されるものとしたが、これに限られるものではなく、外挿されても良い。この場合、例えば、固定部材が筒部を備え、該筒部に、第2チューブ体が内挿されて固定された構成とすることができる。なおこの場合、ワークに外挿された第2チューブ体は、径方向の内側に向けて膨出変形することで、ワークの外周面に密接することとなる。
【0064】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1、30 つかみ装置
2 第1チューブ体
3 第2チューブ体
5 固定部材
6 可動部材
9 規制部材(規制部)
16 係合部
O 軸線
W ワーク
W1 被係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のワークをつかむつかみ装置であって、
弾性体からなる第1チューブ体および第2チューブ体と、
これらの各チューブ体の両端がそれぞれ全周にわたって固定され、該チューブ体との間に流体が給排される空間が形成された固定部材と、
該固定部材に連結された弾性変位可能な可動部材と、を備え、
前記第1チューブ体は、膨張変形したときに前記可動部材を押圧して弾性変位させ、
前記第2チューブ体は、当該つかみ装置と前記ワークとを軸線方向に沿って相対的に接近移動させることで前記ワークに内挿または外挿され、
前記可動部材には、前記第2チューブ体が前記ワークに内挿または外挿されるときに、弾性変位した前記可動部材が復元変位することで前記ワークの被係合部に係合し、前記ワークに対する第2チューブ体の内挿または外挿が解除されるのを規制する係合部が設けられていることを特徴とするつかみ装置。
【請求項2】
請求項1記載のつかみ装置であって、
前記可動部材は、前記第2チューブ体が前記ワークに内挿または外挿されるときに、前記係合部が前記被係合部に摺接することにより弾性変位し、かつ軸線方向に沿って当該つかみ装置が前記ワークに対して接近移動する方向に前記係合部が前記被係合部を乗り越えることにより復元変位することを特徴とするつかみ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のつかみ装置であって、
前記可動部材は、前記係合部が前記被係合部に係合した状態で、軸線方向に沿って延在していることを特徴とするつかみ装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のつかみ装置であって、
前記固定部材または前記可動部材には、前記係合部が前記被係合部に係合した状態で、軸線方向に沿った方向のうち、前記被係合部に対して前記係合部が位置する方向の反対側から前記ワークに近接または当接する規制部が設けられていることを特徴とするつかみ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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