つり式マイクロチャネル検出器の製造およびパッケージング
被分析物に結合するかまたはそれと反応する捕捉リガンドを含む少なくとも1つの微小流体チャネルを含むつりげたを有している、溶液中の被分析物を検出するための装置。この装置には、被分析物の結合または反応の際のけたの変化を測定するための少なくとも1つの検出器もまた含まれる。つり式微小流体チャネルを作成する方法が開示され、さらに、微小流体デバイスをより大きな試料流体チャネルを有している従来の微小流体工学と統合する方法が開示される。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(政府による支援)
本明細書中に記載される研究は、国防総省国防高等研究事業局(DARPA)(MDA972−001−1−003)による助成金によって、一部支援された。米国政府は、本発明において一定の権利を有し得る。
【0002】
(背景)
特異的なタンパク質およびそれらの副生成物の濃度をプロファイルするための二次元ゲル電気泳動に基づく従来の手順は、定量的情報を得るために多大な時間を必要とし、大きな労力を要し、そして高度な技術的専門知識を必要とする。これらの限界を回避するための1つのアプローチは、タンパク質について、DNAマイクロアレイと同等のものを開発することである。タンパク質マイクロアレイは、特定のタンパク質に対して高い結合親和性を示す種々のタイプの捕捉リガンドから構成される。標的タンパク質が蛍光標識で標識されるか、または別の蛍光標識されたタンパク質が、それがアレイ上の特異的な部位に一旦捕捉された標的に選択的に結合するように使用されるかのいずれかである。しばしばサンドイッチ分析と呼ばれる後者のアプローチは、標的タンパク質が捕捉分子と別のタンパク質の両方に結合することは滅多にないので、極めて選択的であるという利点がある。このサンドイッチ分析の欠点は、それについて2つの異なる結合パートナーが存在する標的タンパク質の数が限られていることである。結果として、標的タンパク質の直接的な標識が、細胞溶解物に由来する複数のタンパク質をプロファイルするために最も一般的に適用され得る。しかし、直接的な標識には2つの欠点がある。第1に、溶解物中にあまり多くは存在しないタンパク質に対する蛍光標識のカップリングの効率は、極めて変わりやすい。これは、しばしば、十分な感度と信頼性を得ることを難しくし得る。第2に、タンパク質構造の複雑さにより、タンパク質の機能性を維持しながら、特異的な部位に対して標的を結合させるには非常な難関がある。この課題は、生物物理学者であるS.P.Fordorによって、「蛍光タグに基づく従来の検出技術は、複合体の一方のパートナーが化学的に改変されることが必要である。これらの改変は、結合相互作用の化学的性質を変化することによって分子の相互作用を微妙に変化し得る。」(非特許文献1)に説得力をもってまとめられており、その教示全体が引用により本明細書中に組み入れられる。したがって、標識プロセスを排除することにより、定量的なタンパク質分析の実現可能性、速度、および有用性が改善されるであろう。
【0003】
既存の無標識検出器の主要な限界は、蛍光検出よりもこれらの検出感度が有意に低いことである。2つの最もよく知られているアプローチは、表面に吸収された質量を検出するための水晶マイクロバランス法(QCM)と、金属表面に密接に接近した際の屈折率の変化を検出するための表面プラズモン共振(SPR)技術である。いずれの方法にも、拡張性、低濃度の試料に対する感度、および定量的な情報を提供するそれらの能力に関して、極めて本質的な限界がある。QCMの質量分解能は10−17g/μm2程度であり、これは、約100個のタンパク質/μm2に相当する(分子量100kDaと仮定する)。さらに、QCMセンサー面積は肉眼で見ることができる大きさ(通常は、数mm2)であり、そのため、最小の検出可能質量は、数ナノグラム程度、すなわち、1010個の分子である。この検出レベルは、多くの生物学的分析には不適切である。蛍光では、日常的には、100μm2未満の表面積について1〜10個の分子を解析する。QCMにはまた、捕捉リガンドをセンサー表面にしっかりとカップリングさせることも必要である。これによって、質量検出の効率を増大させる三次元コーティング(例えば、カルボキシメチルデキストラン(CMD)マトリックス)の効率が制限される。
【0004】
QCMと同様の解析を行うSPRでは、数百ナノメートルの厚みのセンサー表面上のCMD層内で生じる屈折指数の変化を測定する。この層の光学特性に対する標的分子の影響は一般的には不明であるので、SPRによっては、通常、間接的な情報が提供される。このことにより、結合した標的分子の量を定量することは困難になり得る。さらに、大規模集積回路のセンサー表面積を小さくする試みによっては、市販されている肉眼で見る計器に匹敵する感度レベルに達することが未だにできていない。この限界は、多くの場合は、マイクロ加工に利用できる材料を使用する一般的な緩衝溶液の屈折指数に対して、集積光学の非常に限られた動作範囲を適合させることの難しさに起因すると考えられる。
【0005】
感度が高く拡張性もある(センサー面積が小さく、なおかつ、センサーの数が多い)無標識検出器の開発はその初期段階にある。光学的方法、ならびにたわみ板波デバイス(FPW)のような音響学的方法の進歩のための継続中の研究に加えて、現在追及されている無標識検出についてはいくつかの新しいアプローチが存在している。分子の検出のための1つのアプローチは、マイクロカンチレバー上での表面結合事象を機械的な屈曲へと変換することである。屈曲は質量の付加によって誘導されるのではなく、むしろ、生体分子の特異的結合によって生じる表面エネルギーの変化によって誘導される。例えば、マイクロカンチレバーの応力センサーによってDNAのハイブリダイゼーションを検出できることが示されている。他の研究では、マイクロカンチレバーの応力センサーによって、ヒトの血清アルブミンおよびヒトのプラスミノーゲンのバックグラウンドにおいて、前立腺特異的抗原(PSA)を検出できることが示されている(非特許文献2、その教示全体が引用により本明細書中に組み入れられる)。この結果は、応力センサーが前立腺ガンについての臨床的に関連する診断技術であり得ることを示唆している。
【0006】
無標識検出のためにマイクロカンチレバーを使用することの利点は、この技術が拡張可能であることである。例えば、IBM Zurichの研究者らは、8個のカンチレバーが同時に検出され得ることを実証した(非特許文献3および非特許文献4、これらの教示全体が引用により本明細書中に組み入れられる)。しかし、マイクロカンチレバーの応力センサーを使用することについては3つの欠点が存在する。第1に、カンチレバーを従来の微小流体工学と統合するための実行可能なやり方が未だにないことである。現在は、カンチレバーを肉眼で見ることができる流体セルの中にパッケージングする前に、個々のカンチレバーに対してマイクロピペットを手作業で整列させることによって表面を機能化させなければならない。第2に、分子の結合によって誘導される表面応力は、それを屈曲させるためにはカンチレバーの一方の側面のみで生じなければならない。これには、センサーの上面と下面について異なる界面化学を生じさせることが必要である。第3に、応力センサーが、SPRのような市販されているセンサーよりも高い解析能力(面積あたりの検出可能な分子の最小数に関して)を有していることは、未だに実証されていない(予想されていない)。これらの制限にもかかわらず、マイクロカンチレバーの応力センサーの開発は、いまだに初期段階にあり、その最大の可能性はまだ実現されていない。
【0007】
最後に、共振カンチレバー質量センサーは、ガス環境での化学センシングには成功しているが、溶液中での生体分子の検出についてはあまり注目されていなかった。これは、質量感度と振動数分解能が、粘性抵抗によって誘導される低い線質係数と大きい有効質量によって大きく失われることが主な原因である。線質係数は、Q−コントロールとして知られている電子のフィードバックを使用することによって高くすることができるが、質量感度は、質量負荷あたりの振動数シフトに関しては、改善されていない。
【非特許文献1】Mazzoila,L.T. and Fordor,S.P.A.、Biophys.J.、1995年、68、p.1653−1660
【非特許文献2】Wu et al.,Nature Biotech.、2001年、19、p.856
【非特許文献3】Arntz et al.,Nanotechnology、2003年、14(1)、p.86
【非特許文献4】Battiston,et al.,Sensors and Actuators B−Chemical、2001年、77(1および2)、p.122−131
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、十分な感度があり、目的の被分析物の修飾を必要としない分析技術が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、被分析物の特性を測定するための無標識検出器である装置に関する。この装置には、2つの機械的に安定している支持体に結び付けられた少なくとも1つのつりげた(suspended beam)が含まれる。つりげたには、1つ以上の微小流体チャネルが含まれ得、個々の微小流体チャネルは、被分析物に結合または被分析物と反応する少なくとも1つの化学種を有している。この装置にはまた、分析物の結合または反応の際の1つ以上のけたの変化を測定するための1つ以上の検出器も含まれる。1つの実施形態においては、つりげたは反響している。
【0010】
カンチレバー微小流体チャネルの1つの欠点は、試料流体を、半導体ウエハーに取り付けられたカンチレバーの末端から微小流体チャネルに入れ、排出しなければならないことである。したがって、微小流体チャネルを有しているカンチレバーは、カンチレバーの取り付けられた末端を通じて排出するためにチャネルを自身の上に二つ折りにする、カンチレバーの遊離端に急な屈曲を有さなければならない。2つの機械的に安定している支持体に結び付けられたつりげたを、けたを通じて流れる微小流体チャネルとともに有している検出器は、多くの場合に、カンチレバー型けたに好ましい。なぜなら、微小流体チャネルには、急ではない屈曲が含まれ、したがって、被分析物以外の試料流体の成分は、おそらく、微小流体チャネル中にはほとんど集められないからである。
【0011】
別の実施形態においては、被分析物を検出するため、または被分析物の特性を測定するための本発明の装置には、1つ以上の微小流体チャネルを含む少なくとも1つのつりげたを有しているスズが含まれる。ここで、各微小流体チャネルは、被分析物に結合するかまたは被分析物と反応する少なくとも1つの化学種;および、少なくとも1つの微小流体チャネルの入口につながれた微小流体チャネルよりも実質的に大きい深さを有している試料流体チャネルを有している。この装置にはまた、被分析物の結合または反応の際のけたの変化を測定するための1つ以上の検出器も含まれ得る。この実施形態においては、つりげたがカンチレバーであり得るか、またはけたが2つの機械的に安定している支持体の間につられ得るかのいずれかである。1つの好ましい実施形態においては、装置は、微小電気機械システム(MEMS)であり、これは、デバイスの領域をカバーするパッケージング構造を有している。1つの実施形態においては、パッケージング構造は、つりげたを制御環境におくように、デバイスの領域に対してシールされる。これにより、デバイスのシグナル対ノイズ比を低下させる可能性のある、湿度の変化、塵粒、静電荷の蓄積などの環境因子からデバイスを保護することができる。1つの実施形態においては、パッケージング構造は、つりげたが低圧環境(すなわち、大気圧よりも低い環境)におかれるように、デバイスの領域に対してシールされる。
【0012】
別の態様においては、本発明は、入口と放水口を有している機能的微小流体チャネルを製造する方法に関する。この方法には、1つ以上の溝を有している半導体ウエハーの上に第1のチャネル層を堆積させることが含まれる。犠牲層が第1の絶縁層の上に堆積させられ、その後、化学機械研磨のような平坦化技術が、第1のチャネル層に達するまで犠牲層を除去するために使用され、それによって、溝の中に犠牲層を有している第1の絶縁層の平坦な表面が露出させられる。第2のチャネル層が平坦な表面上に堆積させられ、1つ以上の穴が第2のチャネル層に形成され、これは1つ以上の溝につなげられる。次いで、犠牲層またはその一部が、エッチング加工によって溝から除去され、それによって微小流体チャネルが形成される。その後、微小流体チャネルの内部は、捕捉リガンドで機能化される。機能化工程は、試料流体チャネルとの接続を含むパッケージング構造が、微小流体チャネルを含むデバイスに加えられる前、またはその後のいずれかに行われ得る。1つの実施形態においては、半導体ウエハーの裏側(すなわち、その上にチャネル層が堆積させられた側とは反対の半導体ウエハーの側)の部分は、微小流体チャネルの下まで除去され、それによって、つり式マイクロチャネルが形成される。好ましくは、微小流体チャネルよりも低い半導体ウエハーの部分は、エッチング加工されて第1のチャネル層に戻される。1つの実施態様においては、半導体ウエハーの裏側は、溝からの犠牲層の除去と同時にエッチング加工される。1つの好ましい実施形態においては、半導体ウエハーはシリコンウエハーであり、第1および第2のチャネル層は、窒化ケイ素または二酸化ケイ素であり、犠牲層はポリシリコンである。この実施形態においては、犠牲層の部分は、p−型またはn−型のいずれかのドーパントでドープされ得る。より重いドープされたポリシリコン(例えば、約5×109cm−3以上のドーパント濃度)は、水酸化カリウムでのエッチング加工に耐える。したがって、犠牲層は、水酸化カリウムでのエッチング加工によっては除去され得、より重いドープされた領域は、微小流体チャネル中に残るであろう。チャネルのより重いドープされたポリシリコンの領域は、導電性である。あるいは、微小流体チャネルは、より重いドープされたポリシリコン製の第1および第2のチャネル層を有することによって、導電性にすることもできる。
【0013】
本発明の方法を使用して、非常に薄い壁を有している非常に薄い微小流体チャネルを、本発明の方法を用いて形成させることができ得る。共振質量検出器の感度は、共振けたの厚みを減少させることによって高められる。さらに、この方法は、窒化ケイ素のような、ウエハー接合しにくい材料から微小流体チャネルを形成させるために使用される場合もある。
【0014】
別の態様においては、本発明は、半導体ウエハー内に形成された1つ以上のつり式微小流体チャネルを含むパッケージされたデバイス、およびそれを作成する方法に関する。この方法には、1つ以上の別々にアドレス可能である電極を用いて基板をパターニングすること(ここで、電極は、デバイスのそれぞれの微小流体チャネルと整列させられ得る);1つ以上の流体チャネルと1つ以上の開口部を有しているポリ(ジメチルシロキサン)ガスケットを準備すること;ガスケットを基板に接着させること;デバイスの表面に共通の電極をパターニングすること(ここで、共通の電極は、それぞれの微小流体チャネル上に形成される);およびデバイスにガスケットを接着させること(ここで、ガスケットの流体チャネルがデバイスの微小流体チャネルの入口と出口と接続され、そしてガスケットのそれぞれの開口部は、1つ以上のつり式微小流体チャネルと整列させられる)が含まれる。
【0015】
別の実施形態においては、本発明は、半導体ウエハーの中に形成された1つ以上のつり式微小流体チャネルを含むデバイスをパッケージングする方法に関する。この方法には、基板の中に1つ以上の流体チャネルと1つ以上の空洞を形成すること(ここで、空洞を、微小流体チャネルと整列させることができる);1つ以上の別々にアドレス可能である電極を用いて基板の空洞をパターニングし、これによって、デバイスのそれぞれの微小流体チャネルと整列させることができる電極を形成すること;デバイスの表面上に共通の電極をパターニングすること(ここで、共通の電極は、それぞれの微小流体チャネルの上に形成される);およびデバイスに基板を接合させること(ここで、基板の流体チャネルがデバイスの微小流体チャネルの入口と出口とつながれ、基板のそれぞれの溝は1つ以上のつり式微小流体チャネルと整列させられる)が含まれる。
【0016】
別の実施形態においては、本発明は、半導体ウエハーの中に形成された1つ以上のつり式微小流体チャネルを含むデバイスをパッケージングする方法に関する。この方法には、1つ以上の別々にアドレス可能である電極を用いて基板の表面をパターニングすること;パターニングした基板の表面上にフォトレジストを形成させること;マスクを通じてフォトレジストに放射線を照射し、それによって、基板の予め決定された領域からフォトレジストを除去すること;フォトレジストが除去された基板の領域に金属を電気メッキし、それによって1つ以上の微小流体チャネルを有している壁と、1つ以上の空洞を有している壁を形成させること;フォトレジストの残りを除去すること;微小流体チャネルのそれぞれについての入口と出口を有しているデバイスの表面上に共通の電極をパターニングすること;ならびに、共通の電極に対して電気メッキした金属を接合させること(ここで、電気メッキした金属壁によって形成された流体チャネルが、デバイスの微小流体チャネルの入口と出口につながれ、そして電気メッキされた壁によって形成されたそれぞれの空洞は、1つ以上のつり式微小流体チャネルと整列させられる)が含まれる。
【0017】
本発明のパッケージング方法により、微小流体チャネルを制御環境下におくことができ、そしてデバイスの微小流体チャネルをより大きな試料流体チャネルにつなぐことができる。さらに、パッケージング方法により、それぞれの微小流体チャネルに共振を生じさせる静電気的な駆動力を提供する、駆動電極と検出器が統合される。したがって、本発明のパッケージング方法により、1つのウエハーから多数のデバイスを製造することができる。
【0018】
本発明は、図中に示される特定の実施形態を参照して記載される。図中の実施形態は例として示され、いかなる様式においても限定するようには意味されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(詳細な説明)
本発明の装置は、生体分子を検出する新規の方法であり、これによれば、つり式微小流体チャネルが、内部チャネル壁上に特異的な標的分子を捕捉するために使用される。結合した標的分子の量は、吸着の間の共振周波数の変化を測定することによって決定される。この検出方法を可能にする重要な特性は3つある:第1に、生体分子の質量密度は、水の密度とは異なる。例えば、タンパク質は1.3〜1.4g/cm3の範囲の質量密度を有する。したがって、流体が充填された共振器の正味の質量は、共振器の内部に含まれる生体分子の総数に応じて変化する。第2に、空気が充填されたマイクロチャネルと流体が充填されたマイクロチャネルの間での共振器のエネルギー損失の差(線質係数Q)は有意ではない。結果として、質量感度、ならびに振動数検出解析能力は、溶液の粘性抵抗によっては低下しない。捕捉リガンドが被分析物を含む溶液中に浸されるけたの外部部分の上にある共振検出器の場合には、そうではない。このタイプの共振検出器は、溶液の粘性抵抗が原因で低い線質係数を有する。第3に、表面に結合した分子の数が、マイクロチャネルの容積の中に含まれる分子の数よりも通常ははるかに多くなるように、マイクロチャネルの表面対容量比は十分に大きくなければならない。したがって、マイクロチャネルの壁に対する標的生体分子の結合は、リアルタイムでモニターすることができる。
【0020】
つり式微小流体チャネル検出器は、水性の環境でのみ生じる高度に選択的である生体分子の認識を維持したまま、減圧下で共振器と組み合わせて、並外れた高度な質量分解が可能である。言い換えると、周期的に振動するマイクロチャネルの内部の捕捉リガンドに結合する標的分子(すなわち、被分析物)は、チャネルの外部が真空であるか、または気体であるかを認識していない。つり式微小流体チャネルもまた拡張可能であり、少量の試料流体(約10pL/検出器)の被分析物を検出することができる。
【0021】
チャネルの厚みと、チャネルの壁の厚みを減少させること、さらには、チャネルの内部に結合させる捕捉リガンドの数を増加させることにより、解析能力は高まるはずである。微小流体チャネル検出器を従来の微小流体工学と統合することにより、このような検出器の有用性が増大し、複数の検出器を1つの半導体ウエハーの上に組み立てることができる。104μm2の表面積を有しているつり式微小チャネルは、約1タンパク質/μm2(100kDaのタンパク質質量と仮定する)を解析できるはずである。
【0022】
内部表面積Aの共振質量センサーは、有効質量m、共振周波数fの調和振動子として形にすることができる。小さい表面質量負荷Δσ=Δm/Aによって生じる相対的な振動数シフトΔf/fは、一次元方程式(1)に入力される:
【0023】
【数1】
方程式(1)は、所定の検出可能な振動数シフトΔfと共振周波数fについて、最小の検出可能な表面質量負荷が、全質量に対する表面積の比によって完全に決定されることを示している。この比は、流体層の厚み、さらには、チャネルの壁の厚みを減少させることによって改善することができる。
【0024】
1つの実施形態においては、被分析物を検出するため、または被分析物の特性を測定するための本発明の装置10(図1を参照のこと)には、2つの機械的に安定である支持体14aと14bに接続された少なくとも1つのつりげた12が含まれる。ここで、けたには、1つ以上の微小流体チャネル16;および1つ以上の検出器(示さない)が含まれる。別の実施形態においては、けたはカンチレバーである場合もある(図2を参照のこと)。微小流体チャネルは、入口と出口を有し、約50nmから約2000nmの間の範囲の深さと高さを有する。1つの実施形態においては、微小流体チャネルは、約100nmから約1200nmの間の範囲の深さを有する。それぞれの微小流体チャネルは、被分析物に結合するかまたは被分析物と反応する少なくとも1つの化学種を有する。1つ以上の検出器によって、被分析物の結合または反応の際の1つ以上のけたの共振周波数の変化が測定される。検出は、吸着された被分析物分子の質量を機械の共振周波数の変化に変換することによって行われる。
【0025】
1つの実施形態においては、化学種は、被分析物に結合する捕捉リガンドである。捕捉リガンドは、別の分子または複合体について高い分子認識能力を有しており、そして、分子または複合体に特異的に結合する高い能力を有している分子である。共有結合と明記されない限りは、用語「結合」または「結合した」には、共有的な会合と非共有的な会合の両方が含まれる。「特異的結合」は、本明細書中で使用される場合は、捕捉リガンドが1つ以上の他の分子または複合体(すなわち、標的)に、分子または複合体と、試料の他の成分または混入物質との間を区別するために十分な特異性を有して結合する場合である。1つの実施形態においては、標的についての捕捉リガンドの解離定数は、約1×10−6M未満である。別の実施形態においては、捕捉リガンドは、分子認識システムの1つのメンバーである場合もある。本発明において使用される分子認識システムは従来のものであり、本明細書中では詳細には記載されない。このようなシステムを準備し、利用するための技術は当該分野で周知であり、Tijssen,P.,“Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology Practice and Theories of Enzyme Immunoassays”(1998),eds. Burdon and Knippenberg,New York:Elsevier(その全体が引用により本明細書中に組み入れられる)において説明されている。好ましい分子認識システムとしては、抗原/抗体、抗原/抗体断片、アビジン/ビオチン、ストレプトアビジン/ビオチン、プロテインA/Ig、またはレクチン/炭水化物が挙げられる。分子認識システムのいずれのメンバーも、捕捉リガンドであり得る。分子認識システムの他のメンバーは標的である。1つの実施形態においては、捕捉リガンドの標的は、細胞の表面上の抗原、例えば、細胞表面受容体、インテグリン、膜貫通タンパク質、およびイオンチャネル、または膜輸送タンパク質である。
【0026】
他の捕捉リガンドとしては、核酸(例えば、DNAおよびRNA)、または修飾された核酸(例えば、修飾された塩基または修飾された骨格を有しているDNAまたはRNA)が挙げられる。さらに、核酸は一本鎖である場合も、二本鎖である場合もある。核酸および修飾された核酸は、一般的には、捕捉リガンドの配列に相補的である、少なくとも3個、好ましくは8個の連続している核酸を有する配列を有している標的核酸に結合する。
【0027】
用語「核酸」または「オリゴヌクレオチド」は、本明細書中で使用される場合は、ヌクレオチドの重合体をいう。通常は、核酸には、少なくとも3個のヌクレオチドが含まれる。重合体としては、自然界に存在しているヌクレオシド(すなわち、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、およびデオキシシチジン)、または修飾されたヌクレオシドが挙げられる。修飾されたヌクレオシドの例としては、塩基修飾されたヌクレオシド(例えば、アラシチジン、イノシン、イソグアノシン、ネブラリン、シュードウリジン、2,6−ジアミノプリン、2−アミノプリン、2−チオチミジン、3−デアザ−5−アザシチジン、2’−デオキシウリジン、3−ニトロピロール、4−メチルインドール、4−チオウリジン、4−チオチミジン、2−アミノアデノシン、2−チオチミジン、2−チオウリジン、5−ブロモシチジン、5−ヨードウリジン、イノシン、6−アザウリジン、6−クロロプリン、7−デアザアデノシン、7−デアザグアノシン、8−アザアデノシン、8−アジドアデノシン、ベンズイミダゾール、M1−メチルアデノシン、ピロロ−ピリミジン、2−アミノ−6−クロロプリン、3−メチルアデノシン、5−プロピニルシチジン、5−プロピニルウリジン、5−ブロモウリジン、5−フルオロウリジン、5−メチルシチジン、7−デアザアデノシン、7−デアザグアノシン、8−オキソアデノシン、8−オキソグアノシン、O(6)−メチルグアニン、および2−チオシチジン)、化学的または生物学的に修飾された塩基(例えば、メチル化塩基)、修飾された糖(例えば、2’−フルオロリボース、2’−アミノリボース、2’−アジドリボース、2’−O−メチルリボース、L−エナンチオマーヌクレオシドアラビノース、およびヘキソース)、修飾されたリン酸基(例えば、ホスホロチオエート、および5’−N−ホスホルアミダイト結合)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。核酸の化学合成のための自然界に存在しているヌクレオチドモノマーおよび修飾されたヌクレオチドモノマーは、容易に入手することができる(例えば、www.trilinkbiotech.com,www.appliedbiosystems.com、www.biogenex.com、またはwww.syngendna.comを参照のこと)。
【0028】
捕捉リガンドはまた、アプタマーのような核酸リガンドである場合もある。本明細書中で使用される場合は、「核酸リガンド」は、標的に選択的に結合する自然界には存在しない核酸である。核酸リガンドを形成する核酸は、自然界に存在しているヌクレオシド、修飾されたヌクレオシド、炭化水素リンカー(例えば、アルキレン)またはポリエーテルリンカー(例えば、PEGリンカー)が1つ以上のヌクレオシド、修飾されたヌクレオシドと炭化水素の間に挿入されているか、または、PEGリンカーが1つ以上のヌクレオシドの間に挿入されているか、あるいは、それらが組み合わされている、自然界に存在しているヌクレオシドから構成され得る。1つの実施態様においては、核酸リガンドのヌクレオチドまたは修飾されたヌクレオチドは、核酸リガンドの結合親和性と選択性が置換によって実質的に低下しない(例えば、標的に対する核酸リガンドの解離定数は、約1×10−6Mを超えてはならない)限りにおいて、炭化水素リンカーまたはポリエーテルリンカーで置き換えることができる。核酸リガンドの標的分子は、核酸リガンドに結合する三次元化学構造を有する。しかし、標的が別の核酸である場合は、核酸リガンドは、核酸標的の単なる直鎖状の相補配列ではなく、これには、ヘアピンループのような他の構造が間に挟まっている相補的ワトソンクリック塩基対合によって結合する領域が含まれる場合がある。核酸リガンドの標的としては、低分子、ペプチド、ポリペプチド、炭水化物、および核酸分子が挙げられる。
【0029】
別のタイプの捕捉リガンドは、タンパク質核酸(PNA)である。PNAは、自然界に存在しているまたは自然界には存在しない核酸塩基が各アミノ酸残基に結合させられているペプチド骨格を有している。PNAは、PNAの配列に対する、少なくとも3個の連続している塩基、好ましくは、8個の連続している塩基の相補配列を有する核酸を認識することができる。
【0030】
1つの実施形態においては、捕捉リガンドは、微小流体チャネルの内表面に結合させられる。捕捉リガンドを微小流体チャネルの内表面に結合させる1つの方法は、微小流体チャネルの内表面にリンカーを結合させ、その後、リンカーに捕捉リガンドを結合させることである。リンカーは、微小流体チャネルの表面に結合する1つ以上の基と、捕捉リガンドに結合する1つ以上の基(例えば、第1級アミンまたは第2級アミン、−OH、−SH、あるいは、ハロ)を有していなければならない。例えば、微小流体チャネルの内表面が窒化ケイ素または二酸化ケイ素である場合は、微小流体チャネルの内表面に捕捉リガンドを結合させる1つの方法は、微小流体チャネルの表面をシランリンカーと接触させることである。シランリンカーは、二酸化ケイ素または窒化ケイ素表面に結合することができる少なくとも1つのシリル基と、捕捉リガンドに結合することができる少なくとも1つの他の基を有している分子である。これにより、捕捉リガンドは遊離している官能基と反応し、それによって微小流体チャネルの内表面に捕捉リガンドが結合させられる。1つの実施形態においては、捕捉リガンドは、以下の構造式によって表すことができる:
【0031】
【化2】
式中:
R1、R2、およびR3はそれぞれ独立して、−H、アルキル、またはアリールアルキルであり;
Lは、アルキレン、シクロアルキレン、ヘテロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、糖残基、またはアリールアルキレンであり;そして
Xは、−NHR、−OH、−SH、またはハロであり、ここで、Rは、−H、アルキル、アリールアルキル、またはアリールである。
【0032】
別の実施形態においては、微小流体チャネルの内表面は、金、銀、銅、カドミウム、亜鉛、パラジウム、白金、水銀、鉛、鉄、クロム、マンガン、タングステン、またはそれらの任意の合金であり、リンカーには、これらの表面に結合することができるチオール基と、捕捉リガンドに結合することができる別の基が含まれる。
【0033】
微小流体チャネルの内表面が二酸化ケイ素のような酸化物である場合は、リンカーは、酸化物表面に結合するカルボン酸基と、捕捉リガンドに結合することができる別の基を有する場合がある。
【0034】
微小流体チャネルの内表面が白金、パラジウム、またはその任意の合金である場合は、リンカーは、これらの表面に結合することができるニトリルまたはイソニトリルと、捕捉リガンドに結合することができる別の基を有する場合がある。
【0035】
微小流体チャネルの内表面が銅である場合は、リンカーは、この表面に結合することができるヒドロキサム酸と、捕捉リガンドに結合することができる別の基を有する場合がある。
【0036】
捕捉リガンドを微小流体チャネルの内表面に結合させる別の方法は、微小流体チャネルの内表面に結合する基を有する捕捉リガンドを選択すること、またはそれが微小流体チャネルの内表面に結合する基を含むように捕捉リガンド自体を修飾することである。例えば、捕捉リガンドは、金、銀、銅、カドミウム、亜鉛、パラジウム、白金、水銀、鉛、鉄、クロム、マンガン、タングステン、またはそれらの任意の合金である内表面を有する微小流体チャネルに結合するチオール基を含むように修飾される場合がある。
【0037】
標的を検出することに関する装置の感度は、微小流体チャネルの内部にさらに多くの標的分子を結合させることによって改善される。したがって、微小流体チャネル中の捕捉リガンドの数を増大させることによって、装置の感度を高めることができる。微小流体チャネル中に存在する捕捉リガンドの数を増大させる1つの方法は、チャネルの内表面をザラザラにすることによって表面積を大きくすることである。
【0038】
別の実施形態においては、微小流体チャネル中の捕捉リガンドの数は、ゲルに結合させられた捕捉リガンドを有しているチャネルの中に多孔性のゲルプラグを入れることによって増加させられる。通常は、ゲルは、モノマーユニットを重合させることによって調製される。捕捉リガンドは、モノマーユニットに結合させ、プレポリマー混合物に付加させることができる。プレポリマー混合物を重合させる際には、捕捉リガンドはゲルに直接結合させられる。ゲルに核酸捕捉リガンドを結合させる方法は、米国特許第6,180,770号(その教示全体が引用により本明細書中に組み入れられる)に記載されている。あるいは、捕捉リガンドがゲルの孔よりも大きい場合は、捕捉リガンドはプレポリマー混合物に付加される場合がある。プレポリマー混合物がゲルを形成するように重合させられる場合は、捕捉リガンドはゲルの孔の中に捕らえられる。1つの実施形態においては、重合反応は、例えば、紫外線の照射によって開始させることができる。この実施形態においては、微小流体チャネルの壁が透明または半透明の材料、例えば、窒化ケイ素から作成されることが望ましく、その結果、プレポリマー混合物は、圧力によって微小流体チャネル内に注入することができ、その後、ゲルが重合させられるけたの部分に直接放射線を照射することによって重合させることができる。
【0039】
微小流体チャネルについての1つの有用なアレンジは、重合させられたゲル20を含む領域で合わさり、その後、ゲルよりも下で離れる2つの微小流体チャネル18aと18bを有している、けた12(図3を参照のこと)である。この実施形態においては、被分析物は、流体の流れから圧力によってゲルの中に送り込むことができる。あるいは、被分析物が帯電している場合には、被分析物を、電気泳動法22によってゲルの中に送り込むことができる。
【0040】
1つの実施形態においては、本発明の装置のけたは共振しており、検出器によってけたの共振周波数の変化が測定される。通常は、それぞれのけたの共振は、一対の電極によって駆動される。1つの実施形態においては、けたの表面は、電源に取り付けられた、電極対の1つのメンバーとしての役割を担う金属でパターニングすることができる。電極対の他方のメンバーは、けたの表面上につられる。2つ以上のけたが装置の中に存在する場合は、けたの上にパターニングされた金属電極を、この電極が全てのけたに共通となるように接続することができる。しかし、それぞれのけたの上につられた電極は、別々にアドレス可能である。通常は、電極は、金、ニッケル、白金、アルミニウム、銅、アンチモン、スズ、インジウム、クロム、チタン、およびそれらの合金のような金属である。好ましい実施形態においては、電極は金である。
【0041】
1つの実施形態においては、けたは、金属電極ではパターニングされない。その代わりとして、微小流体チャネル中の溶液が、電源につなげられた電解質溶液である。微小流体チャネル中の電解質溶液は電極として作用し、それぞれの微小流体チャネルが装置の他のけたの中の微小流体チャネルに接続されている場合には、電解質溶液は全てのけたについての共通の電極としての役割を果たすことができる。この実施形態においては、それぞれのけたの上につられた別々にアドレス可能である電極が存在する。
【0042】
代替的な実施形態においては、検出器によってけたの表面応力の変化が測定される。1つの実施形態においては、表面応力の変化は、それらが微小流体チャネル中の捕捉リガンドに結合した際に密に充填された分析物分子によって生じる立体的な応力によって引き起こされ得る。この実施形態においては、微小流体チャネルの反対側よりも微小流体チャネルの一方の側に、実質的に高濃度の捕捉リガンドが結合させられる。捕捉リガンドを被分析物に結合させる場合には、2つの側の表面応力の差によって、チャネルに屈曲が生じる。この実施形態においては、検出器によってけたの変形が測定される。
【0043】
別の実施形態においては、表面応力は、けたを作り上げる材料の様々な膨張によって生じ得る。この実施態様においては、けたの外表面の1つは、熱膨張係数がチャネルの熱膨張係数とは異なる薄膜でコーティングされる。捕捉リガンドはチャネルの内部に含まれる。捕捉リガンドが被分析物に結合すると、熱が放出されるかまたは吸収され、その結果生じる温度変化により、バイモルフ作用によるけたの屈曲が生じる。この実施形態においては、検出器によってけたの変形が測定される。
【0044】
別の実施形態においては、本発明の装置の1つ以上の検出器は1つ以上のコンデンサーである。容量センサーは、平板コンデンサーの電気容量の変化として変位を測定することができる。1つの実施形態においては、駆動電極もまた、容量検出器として使用することができる。カンチレバーが2つのコンデンサー平板の一方である容量センサーは、Blanc et al.,J.Vac.Sci.Technolo.B 14:901(1996)によって開発されている(その教示全体が引用により本明細書中に組み入れられる)。
【0045】
あるいは、検出器は光てこ(ここで、レーザー光はけたの先端から反射される)である場合も、また、レーザー振動計(ここで、けたを照射するためにレーザーを利用し、ドップラーシフトにより振動数応答を測定する)である場合もある(J.Yang et al.,“Mechanical behavior of ultrathin microcantilevers”,Sensors and Actuators(2000)、82:102−107(その教示全体が引用により本明細書中に組み入れられる)を参照のこと)。
【0046】
あるいは、検出器は、ピエゾ抵抗性である場合も、また圧電性である場合もある。この実施形態においては、けたは、それが歪んだ際にその電気伝導率が変化するピエゾ抵抗性材料から作られる。
【0047】
装置のシグナル対ノイズ比は、けたの共振周波数に影響を及ぼす恐れがある湿度の変化、塵粒、および他の要因からけたが保護されるように、保護された環境に装置のけたを閉じ込めることによって改善することができる。さらに、線質係数は、けたがつられている環境によるけたに対する粘性抵抗によって低下させられるので、検出の感度を改善するためには、けたを低圧環境につられることが所望される。
【0048】
本発明の装置の1つの実施形態においては、1つ以上の微小流体チャネルを含む少なくとも1つのつりげた(ここで、個々の微小流体チャネルが、被分析物に結合するかまたは被分析物と反応する少なくとも1つの化学種を有している);微小流体チャネルの少なくとも1つの入口に接続された試料流体チャネル(ここで、試料流体チャネルは、微小流体チャネルよりも実質的に大きい深さを有している);および被分析物の結合または反応の際の1つ以上のつりげたにおける変化を測定するための1つ以上の検出器を有しているスズが含まれる。本発明の装置のこの実施形態は、微小電気機械システム(MEMS)である。好ましい実施形態においては、本発明のMEMSは、デバイス領域をカバーし、デバイスの試料流体チャネルと微小流体チャネルとの間の接続を提供するパッケージング構造を有している。さらに、パッケージング構造は、けたがつられる低圧環境を提供するように構築することができる。
【0049】
通常は、それぞれの微小流体チャネルは、約100nmから約1000nmの間の範囲の深さを有し、それぞれの試料流体チャネルは、約10μmから100μmの間の範囲の深さを有する。
【0050】
装置の検出器によっては、被分析物の結合または反応の際のけたの振動数の変化が測定される場合があり、また、被分析物の結合または反応の際のけたの変形が測定される場合もある。装置が共振けたを有している場合は、それぞれのけたの共振は、上記で議論された一対の駆動電極によって駆動される。1つの実施形態においては、電極対の一方の電極は、全てのけたに共通のものであり、電極対の他方の電極は、けたの上につられ、それぞれのけたについて別々にアドレス可能である。好ましくは、パッケージング構造には、別々にアドレス可能な電極が含まれる。
【0051】
1つの実施形態においては、基板はポリジメチルシロキサンガスケットを介してMEMSに取り付けられる。この実施形態においては、基板は、ガラス、セラミック、プラスチック、回路基板、およびシリコンチップ(さらに別の回路を含む場合も、含まない場合もある)製のものとすることができる。例えば(図4を参照のこと)、微小流体チャネルと試料流体チャネルの間の接続は、ポリジメチルシロキサンガスケット25においてパターニングされる(Duffy,Anal.Chem.(1998),70:4974(その教示全体が引用により本明細書中に組み入れられる)を参照のこと)。ガスケットは、その後、一旦パッケージング構造がデバイスに取り付けられるとそれぞれのけたの上につられる別々にアドレス可能である電極26でパターニングされる基板24に接続される。プラズマ接合の後に基板とガスケットを加熱することが望ましい。なぜなら、これによって、一般的にはガスケットと基板の間の接着が改善されるからである。デバイスの表面は、共通電極28を形成する金属でコーティングすることができ、また、微小流体チャネル中の電解質溶液が共通の電極を形成する場合には、コーティングしないまま残すこともできる。その後、ガスケットがデバイス30にクランプで締め付けられ、そして/またはデバイスに対してプラズマ接合させられる。穴32は、そこを通じて試料流体をデバイスに添加することができるように、基板にエッチング加工され得るか、またはドリルで穴を空けられ得る。共通の電極と別々にアドレス可能な電極を、容量検出器として使用することができる場合もある。あるいは、装置は、レーザーけたが、それがけたを反射するようにけたの共振部分と整列させられる、光てこ検出器を有する場合もある。その後、反射されたレーザーけたの位置が検出器によって検出され、反射されたけたの位置が、けたの共振周波数についての情報に変換される。装置が2つ以上のけたを有している場合には、1つのレーザーはそれぞれのけたと整列させられる。
【0052】
別の実施形態(図5を参照のこと)においては、パッケージング構造は、それぞれのけたについての空洞38、および、試料流体チャネル36と基板内にエッチング加工された微小流体チャネルとの間の接続を有する、ガラスまたはシリコンチップ34基板である。別々にアドレス可能な電極26は、それぞれのけたの上に整列させられる基板の空洞に埋め込まれる。デバイスの表面は、共通の電極28を形成する金属でコーティングすることができ、また、微小流体チャネル中の電解質溶液が共通の電極を形成する場合には、コーティングしないまま残すこともできる。最後に、基板は、陽極接合によってデバイス30に固定され、その結果、別々にアドレス可能な電極がけたの上に整列させられ、試料流体チャネルは微小流体チャネルと接続される。試料流体の導入のための穴32は基板にドリルで空ける、もしくは基板にエッチング加工することができ、また、デバイスにエッチング加工することもできる。共通の電極と別々にアドレス可能な電極は、容量検出器として使用される場合もある。あるいは、装置は、レーザーけたが、それがけたを反射するようにけたの共振部分と整列させられる光てこ検出器を有する場合もある。これによると、反射されたレーザーけたの位置が検出器によって検出され、反射されたけたの位置がけたの共振周波数についての情報に変換される。装置が1つ以上のけたを有している場合は、1つのレーザーはそれぞれのけたと整列させられる。
【0053】
別の実施形態においては、基板は別々にアドレス可能な電極26でパターニングされ(図6A)、フォトレジスト層40が、パターニングされた電極を有している基板の表面に付加される(図6B)。フォトレジストに層は、マスクを通じて放射線が照射され、これによって、試料流体チャネルと、微小流体チャネル42aおよび42bの間の接続の壁を形成する領域と、けたがつられる、空洞44の壁を定義する領域から除去される。その後、金、ニッケル、白金、アルミニウム、銅、アンチモン、スズ、インジウム、クロム、チタン、およびそれらの合金のような金属が、フォトレジストの開口部分に付加される(図6C)。次いで、フォトレジストが除去されて、試料流体チャネルと、微小流体チャネルの間の接続の壁を形成する金属壁、およびけたがつられる空洞の壁を定義する領域が残される(図6D)。デバイスの表面は、共通の電極28を形成する金属でコーティングすることができ、また、微小流体チャネル中の電解質溶液が共通の電極を形成する場合には、コーティングされないまま残すこともできる。最後に、基板は、例えば、デバイスの表面上の共通の電極に対して金属の壁をはんだ付けすることによって、デバイス30に固定され、その結果、別々にアドレス可能な電極がけたの上に整列させられ、試料流体チャネルが微小流体チャネルと接続される(図6E)。試料流体の導入のための穴は、基板にドリルで空ける、もしくは基板にエッチング加工することができ、また、デバイスにエッチング加工することもできる(示さない)。共通の電極と別々にアドレス可能な電極は、容量検出器として使用される場合もある。あるいは、装置は、レーザーけたがそれがけたを反射するようにけたの共振部分と整列させられる光てこ検出器を有する場合もある。これによると、反射されたレーザーけたの位置は検出器によって検出され、反射されたけたの位置はけたの共振周波数についての情報に変換される。装置が2つ以上のけたを有している場合は、1つのレーザーはそれぞれのけたと整列させられる。
【0054】
今日までには、微小流体チャネル検出器は従来の微小流体工学とは統合されていない。チャネルの厚み、およびチャネルの壁の厚みを減少させること、ならびに、チャネルの内部に結合させられた捕捉リガンドの数を増加させることによって、解析能力が高まるはずである。微小流体チャネル検出器を従来の微小流体工学と統合することによって、そのような検出器の有用性は高まり、同時に、1つの半導体ウエハーの上に多数の検出器を製造することができる(図7)。
【0055】
本発明の微小流体チャネルは、1つ以上の溝を有している半導体ウエハー46の上に微小流体チャネルの壁の一方の側を製造する、材料の第1層48を堆積させることによって製造することができる(図8A,8B、および8C)。1つの実施形態においては、半導体ウエハーはシリコンウエハーであり、チャネルの壁の材料は窒化ケイ素または二酸化ケイ素である。次いで、犠牲層50(例えば、ポリシリコン層)が第1の絶縁層の上に堆積させられる(図8D)。その後、犠牲層は、化学機械研磨のような平坦化技術によって、第1のチャネル層48に達するまで除去され、それによって、溝の中に犠牲層を有している第1のチャネルの平坦な表面が露出させられる(図8E)。第2のチャネル層52(例えば、窒化ケイ素の層、または二酸化ケイ素の層)が平坦な表面上に堆積させられて、マイクロチャネルの他方の側が形成される(図8F)。その後、1つ以上の穴54が第2のチャネル層にエッチング加工され、これは1つ以上の溝に繋がる(図8G)。犠牲層が、エッチング加工によって溝から除去され、それによって微小流体チャネルが形成される(図8H)。犠牲層がポリシリコンである場合は、水酸化カリウムの溶液でこれを処理することによって、これをエッチング加工することができる。半導体ウエハーの裏側の部分は、微小流体チャネルの下まで、例えば、エッチング加工によって除去され、それによって、つりげたを含む微小流体チャネルが形成される(図8H)。この工程は、微小流体チャネルを形成させるための犠牲層のエッチング加工による除去と同時に行うことができる。その後、微小流体チャネルの内部を、デバイスがパッケージング構造に取り付けられる前、またはその後に、上記のように機能化することができる。
【0056】
1つの実施形態においては、微小流体チャネルが導電性であることが望ましい。導電性の微小流体チャネルを形成する1つの方法は、p−型ドーパントおよび/またはn−型ドーパントでポリシリコンの犠牲層の一部をドープすることである。より重いドープされたポリシリコン(例えば、約5×1019cm−3以上のドーパント濃度を有しているポリシリコン)は、水酸化カリウムでのエッチングに耐えるので、犠牲層が、水酸化カリウムでのエッチングによっては除去される場合は、ポリシリコン層のドープされた部分は微小流体チャネル内に残る。導電性微小流体チャネルを形成させる別の方法は、ドープされたポリシリコンから第1および/または第2のチャネル壁を形成させることである。
【0057】
本発明の方法により、約50nmから約2000nmの間の範囲の深さを有する微小流体チャネルを形成することができる。1つの実施形態においては、約100nmから約1000nmの間の範囲の微小流体チャネルの深さである。さらに、本発明の方法を用いて、非常に薄い壁を有している微小流体チャネルを製造することができる。例えば、約100nmから約1200nmの間の範囲の壁の厚みを有している微小流体チャネルを製造することができる。したがって、本発明の方法は、つりげた検出器が、より感度の高い、より薄い微小流体チャネル、および微小流体チャネルの壁であるので、有利である。
【0058】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の実施例を考慮するとさらに明らかになるであろう。以下の実施例は、本発明に特定の実施形態を説明するために意図されるが、特許請求の範囲によって定義されるようなその範囲を限定するようには意図されない。
【実施例】
【0059】
上記のように、分子の検出のためのつり式微小チャネルは、十分に薄くなければならず、さらにこれらは、リアルタイム測定のために持続的に流体を供給するように設計されなければならない。これらの要件の両方を満たすために、本発明者らは、800nmの壁の厚みと1.2μmの流体層の厚みを有しているつり式微小チャネルを製造するために、ポリシリコンダマシンプロセス、熱い水酸化カリウム中での犠牲層のエッチング加工、およびバルクマイクロマシニング技術を組み合わせた。最初に、本発明者らは、露光装置と反応性イオンエッチング(RIE)を使用して、標準的な<100>シリコンウエハーの中に微小流体溝をエッチング加工した。続いて、ウエハーを800nmの低応力−低圧で化学気相堆積させた窒化ケイ素でコーティングし、その後、1.5μmのポリシリコン層でコーティングした。ポリシリコン層を化学機械研磨(CMP)によって平坦化した。CMPプロセスを、溝にポリシリコンが充填されたままになるように、それが窒化ケイ素層に達すると直ちに停止させた。CMPの後、第1層と同じ厚みの低応力窒化ケイ素の第2層を堆積させた。この層によって、ポリシリコンを充填した微小流体チャネルを閉じた。再び、標準的な露光装置とRIEを使用して窒化ケイ素層に開口部を作成し、これによって、ポリシリコンを充填した微小流体チャネルに対してアクセス口を提供し、そしてつり式チャネルを形成させるために窒化ケイ素層に向かって上にウエハーの裏側部分を除去した。ウエハーの裏側をまた、チャネルのつられた部分の下の貫通穴の位置を定義するために、同じ工程においてパターニングした。最後に、犠牲ポリシリコンとウエハーの貫通穴を、80℃の6Mの水酸化カリウム水溶液中でエッチング加工した。本発明者らは、この温度では、拡散によって犠牲層についてのエッチング速度が厳しく制限されることがないことを見出した。本発明者らは、80%の収率で、20時間未満に1mmまでのチャネルを完全に開放することができた(この方法のフローチャートについては図8を参照のこと)。
【0060】
3個のつり式微小チャネルの電子顕微鏡写真を図9aに示し、位相差視像を図9bに示す。つり式チャネルに対する持続的な流体の供給を得るために、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)製の微小流体ネットワークをチップの表面に結合させた。溶液を低容量のマイクロチャネルに対して低い粘性で供給することができるように、PDMS中のU型チャネル内に窒化物チャネルに対する入口を配置した。デバイスは実際に帯電しており、偏差を光てこ法で測定した。高い電気伝導率、および高い光反射率は、100nmのアルミニウムの薄膜でつり式チャネルをコーティングすることによってもたらされた。アルミニウムを接地し、駆動電極を、マイクロメートルステージによってデバイスの50μm以内になるようにした。
【0061】
振動数応答を、振動数掃引モードの関数発生器と、ロックイン(lock−in)増幅器を使用して記録した。共振周波数の時間プロットを得るために、±5Vの出力スイングの飽和電圧増幅器を介して駆動電極に直接接続した偏差センサーの出力とともに、デバイスをフィードバックループにいれた。駆動シグナルを、基準値に対して+60Vによってオフセットし、振動数を、振動数カウンターによって測定した。この構成において、本発明者らは、4mHzから4Hzの測定帯域幅において80mHzの振動数ノイズレベルを観察した。
【0062】
質量分解能を評価するために、本発明者らは、充填していない状態の300μmのカンチレバーについて、ならびに、イソプロピルアルコールを充填したカンチレバー、および水を充填したカンチレバーについて、振動数応答を測定した。得られたスペクトルを図10に示す。それぞれの線質係数は同じままであり、このことが、流体を充填したマイクロチャネルのエネルギー損失が微小流体チャネルに封入された溶液の粘性抵抗によっては大きくならないことを示していることに注目する。これは、小さい容量のマイクロチャネル(約27pL)と、小さい振幅(<<1μm)によっては、ごく少量の水分子しか、それぞれの振動サイクルの間に移動させられないことが原因である。
【0063】
種々の媒体の既知の質量密度と、27pLの設計容量を考慮して、本発明者らは、水を充填したマイクロチャネルの小さいローディングについて107mHz/pgの質量感度を明らかにした。この感度を、80mHzのノイズレベルと53000μm2の表面積と一緒に考慮すると、本発明者らによる電流検出限界は、4mHzから4Hzの帯域幅全体についておよそ1.4×10−17g/μm2である。
【0064】
本発明者らは、ビオチニル化されたウシ血清アルブミン(bBSA)でチャネル内壁を機能化し、その後、アビジンとbBSAの結合を検出するためにいくつかの実験を行うことにより、生体分子の検出を明らかにした。試薬を交換する際をのぞいて、流体の圧力を、常時一定に保った。アビジンとbBSAを、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中に、それぞれ、500μg/mLおよび1mg/mLで溶解させた。これらの実験の結果を、図11にまとめる。それぞれのセクションは、流体を交換した時点をゼロとした経時的な相対的な振動数シフトを示す。図11Aは、緩衝液を切断し、そして再度接続した後のベースラインシグナルを示す。図11Bは、緩衝液からアビジン溶液への交換の結果である。共振振動数は、流体の交換の数秒後に、急に2Hzより多く落ちた。この遅延は、液体が、スイッチ点からつられ得たチャネルの開始点まで流れるために要する時間が原因であると予想される。本発明者らが緩衝液に戻すと、共振周波数は変化しないままであったが、これは、流体の密度の差によってシグナルが引き起こされるのではないことを示している。次に、本発明者らは、緩衝液を充填したマイクロチャネルに再度アビジンを注入した場合にもまた、振動数は変化しないままであったことを確認した。このことは、アビジンについての全ての利用可能な結合部位が、すでに占められていることを示唆している。次に、本発明者らは、bBSAに交換し、その後再び、アビジンに交換した。いずれの場合にも、共振周波数の急激な低下を観察することができた(図11Cおよび11D)。bBSAの注入によって共振しているマイクロチャネル中のアビジンを検出する能力を回復することができるという事実は、図11に模式的に示すbBSA−アビジン多層の形成によって説明することができる。いくつかのビオチンはそれぞれBSA分子に結合しているので、新しいbBSA層によって、その後にアビジンを吸着させるための多くの結合部位を提供することができる。
【0065】
上記の結合実験および対照実験のいずれによっても、緩衝液とbBSAまたはアビジンとの間の容積密度の変化による振動数シフトは明らかにならなかった。本発明者らは、これらの溶液が数百mHz振動数をシフトさせるはずであると予想したが、つり式微小チャネルの内部の流体の完全な交換は、多くの場合、数分を要することを見出した。このタイムスケールについて、約1Hz以下の振動数シフトは、多くの場合に存在するドリフトによって隠されている。対照的に、ビオチン−アビジンの高い結合親和性により、本発明者が注入した容積濃度の何分の一かであっても、表面濃度の迅速な飽和が生じる。
【0066】
本発明者らの結果は、比較的大きいマイクロチャネルの表面積対容量比が、質量検出に有利であることを示している。一旦、低濃度の試料がマイクロチャネルに入れられると、分子は、それらが固定された捕捉リガンドに結合するので直ちに使い尽くされる。さらに分子が入れられると、表面は直ちに、周辺の溶液中に存在するよりもはるかに多くの分子を回収する。結果として、高いチャネル濃度によって、共振周波数についての測定可能な変化がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、2つの機械的に安定である支持体に接続されたつりげたを有する、本発明の装置の1つの実施形態の模式図である。
【図2】図2は、カンチレバーのつりげたを有している、本発明の装置の1つの実施形態の模式図である。
【図3】図3は、ゲルによって塞がれた点でけた内に集中し、その後、分岐する2つの微小流体チャネルを有しているつりげたの模式図である。
【図4】図4は、ポリジメチルシロキサンガスケットを使用してパッケージされている、本発明の装置の1つの実施形態の模式図である。
【図5】図5は、陽極接合によってデバイスに直接接合させられた基板を有している、本発明の装置の1つの実施形態の模式図である。
【図6】図6A〜Eは、フリップチップ構造のパッケージング構造を有している、本発明の装置の1つの実施形態の製造プロセスの模式図である。図6Fは、パッケージされた装置の模式図である。
【図7】図7は、1つのシリコンウエハー上に製造された複数のデバイスを示す。
【図8】図8A〜Hは、微小流体チャネルを製造するための本発明の方法の1つの実施形態の模式図である。
【図9A】図9Aは、3個のつり式微小流体チャネルの電子顕微鏡写真である。
【図9B】図9Bは、3個のつり式微小流体チャネルの位相差視像である。
【図10】図10は、空気、2−プロパノール、および水を充填した300μmの長さのカンチレバーの較正された振動数応答曲線である。
【図11】図11A〜Dは、(A)緩衝液、(B)アビジン、(C)bBSA、および(D)アビジンの注入後の、40kHz共振微小流体チャネルについての相対的な振動数シフトである。
【背景技術】
【0001】
(政府による支援)
本明細書中に記載される研究は、国防総省国防高等研究事業局(DARPA)(MDA972−001−1−003)による助成金によって、一部支援された。米国政府は、本発明において一定の権利を有し得る。
【0002】
(背景)
特異的なタンパク質およびそれらの副生成物の濃度をプロファイルするための二次元ゲル電気泳動に基づく従来の手順は、定量的情報を得るために多大な時間を必要とし、大きな労力を要し、そして高度な技術的専門知識を必要とする。これらの限界を回避するための1つのアプローチは、タンパク質について、DNAマイクロアレイと同等のものを開発することである。タンパク質マイクロアレイは、特定のタンパク質に対して高い結合親和性を示す種々のタイプの捕捉リガンドから構成される。標的タンパク質が蛍光標識で標識されるか、または別の蛍光標識されたタンパク質が、それがアレイ上の特異的な部位に一旦捕捉された標的に選択的に結合するように使用されるかのいずれかである。しばしばサンドイッチ分析と呼ばれる後者のアプローチは、標的タンパク質が捕捉分子と別のタンパク質の両方に結合することは滅多にないので、極めて選択的であるという利点がある。このサンドイッチ分析の欠点は、それについて2つの異なる結合パートナーが存在する標的タンパク質の数が限られていることである。結果として、標的タンパク質の直接的な標識が、細胞溶解物に由来する複数のタンパク質をプロファイルするために最も一般的に適用され得る。しかし、直接的な標識には2つの欠点がある。第1に、溶解物中にあまり多くは存在しないタンパク質に対する蛍光標識のカップリングの効率は、極めて変わりやすい。これは、しばしば、十分な感度と信頼性を得ることを難しくし得る。第2に、タンパク質構造の複雑さにより、タンパク質の機能性を維持しながら、特異的な部位に対して標的を結合させるには非常な難関がある。この課題は、生物物理学者であるS.P.Fordorによって、「蛍光タグに基づく従来の検出技術は、複合体の一方のパートナーが化学的に改変されることが必要である。これらの改変は、結合相互作用の化学的性質を変化することによって分子の相互作用を微妙に変化し得る。」(非特許文献1)に説得力をもってまとめられており、その教示全体が引用により本明細書中に組み入れられる。したがって、標識プロセスを排除することにより、定量的なタンパク質分析の実現可能性、速度、および有用性が改善されるであろう。
【0003】
既存の無標識検出器の主要な限界は、蛍光検出よりもこれらの検出感度が有意に低いことである。2つの最もよく知られているアプローチは、表面に吸収された質量を検出するための水晶マイクロバランス法(QCM)と、金属表面に密接に接近した際の屈折率の変化を検出するための表面プラズモン共振(SPR)技術である。いずれの方法にも、拡張性、低濃度の試料に対する感度、および定量的な情報を提供するそれらの能力に関して、極めて本質的な限界がある。QCMの質量分解能は10−17g/μm2程度であり、これは、約100個のタンパク質/μm2に相当する(分子量100kDaと仮定する)。さらに、QCMセンサー面積は肉眼で見ることができる大きさ(通常は、数mm2)であり、そのため、最小の検出可能質量は、数ナノグラム程度、すなわち、1010個の分子である。この検出レベルは、多くの生物学的分析には不適切である。蛍光では、日常的には、100μm2未満の表面積について1〜10個の分子を解析する。QCMにはまた、捕捉リガンドをセンサー表面にしっかりとカップリングさせることも必要である。これによって、質量検出の効率を増大させる三次元コーティング(例えば、カルボキシメチルデキストラン(CMD)マトリックス)の効率が制限される。
【0004】
QCMと同様の解析を行うSPRでは、数百ナノメートルの厚みのセンサー表面上のCMD層内で生じる屈折指数の変化を測定する。この層の光学特性に対する標的分子の影響は一般的には不明であるので、SPRによっては、通常、間接的な情報が提供される。このことにより、結合した標的分子の量を定量することは困難になり得る。さらに、大規模集積回路のセンサー表面積を小さくする試みによっては、市販されている肉眼で見る計器に匹敵する感度レベルに達することが未だにできていない。この限界は、多くの場合は、マイクロ加工に利用できる材料を使用する一般的な緩衝溶液の屈折指数に対して、集積光学の非常に限られた動作範囲を適合させることの難しさに起因すると考えられる。
【0005】
感度が高く拡張性もある(センサー面積が小さく、なおかつ、センサーの数が多い)無標識検出器の開発はその初期段階にある。光学的方法、ならびにたわみ板波デバイス(FPW)のような音響学的方法の進歩のための継続中の研究に加えて、現在追及されている無標識検出についてはいくつかの新しいアプローチが存在している。分子の検出のための1つのアプローチは、マイクロカンチレバー上での表面結合事象を機械的な屈曲へと変換することである。屈曲は質量の付加によって誘導されるのではなく、むしろ、生体分子の特異的結合によって生じる表面エネルギーの変化によって誘導される。例えば、マイクロカンチレバーの応力センサーによってDNAのハイブリダイゼーションを検出できることが示されている。他の研究では、マイクロカンチレバーの応力センサーによって、ヒトの血清アルブミンおよびヒトのプラスミノーゲンのバックグラウンドにおいて、前立腺特異的抗原(PSA)を検出できることが示されている(非特許文献2、その教示全体が引用により本明細書中に組み入れられる)。この結果は、応力センサーが前立腺ガンについての臨床的に関連する診断技術であり得ることを示唆している。
【0006】
無標識検出のためにマイクロカンチレバーを使用することの利点は、この技術が拡張可能であることである。例えば、IBM Zurichの研究者らは、8個のカンチレバーが同時に検出され得ることを実証した(非特許文献3および非特許文献4、これらの教示全体が引用により本明細書中に組み入れられる)。しかし、マイクロカンチレバーの応力センサーを使用することについては3つの欠点が存在する。第1に、カンチレバーを従来の微小流体工学と統合するための実行可能なやり方が未だにないことである。現在は、カンチレバーを肉眼で見ることができる流体セルの中にパッケージングする前に、個々のカンチレバーに対してマイクロピペットを手作業で整列させることによって表面を機能化させなければならない。第2に、分子の結合によって誘導される表面応力は、それを屈曲させるためにはカンチレバーの一方の側面のみで生じなければならない。これには、センサーの上面と下面について異なる界面化学を生じさせることが必要である。第3に、応力センサーが、SPRのような市販されているセンサーよりも高い解析能力(面積あたりの検出可能な分子の最小数に関して)を有していることは、未だに実証されていない(予想されていない)。これらの制限にもかかわらず、マイクロカンチレバーの応力センサーの開発は、いまだに初期段階にあり、その最大の可能性はまだ実現されていない。
【0007】
最後に、共振カンチレバー質量センサーは、ガス環境での化学センシングには成功しているが、溶液中での生体分子の検出についてはあまり注目されていなかった。これは、質量感度と振動数分解能が、粘性抵抗によって誘導される低い線質係数と大きい有効質量によって大きく失われることが主な原因である。線質係数は、Q−コントロールとして知られている電子のフィードバックを使用することによって高くすることができるが、質量感度は、質量負荷あたりの振動数シフトに関しては、改善されていない。
【非特許文献1】Mazzoila,L.T. and Fordor,S.P.A.、Biophys.J.、1995年、68、p.1653−1660
【非特許文献2】Wu et al.,Nature Biotech.、2001年、19、p.856
【非特許文献3】Arntz et al.,Nanotechnology、2003年、14(1)、p.86
【非特許文献4】Battiston,et al.,Sensors and Actuators B−Chemical、2001年、77(1および2)、p.122−131
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、十分な感度があり、目的の被分析物の修飾を必要としない分析技術が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、被分析物の特性を測定するための無標識検出器である装置に関する。この装置には、2つの機械的に安定している支持体に結び付けられた少なくとも1つのつりげた(suspended beam)が含まれる。つりげたには、1つ以上の微小流体チャネルが含まれ得、個々の微小流体チャネルは、被分析物に結合または被分析物と反応する少なくとも1つの化学種を有している。この装置にはまた、分析物の結合または反応の際の1つ以上のけたの変化を測定するための1つ以上の検出器も含まれる。1つの実施形態においては、つりげたは反響している。
【0010】
カンチレバー微小流体チャネルの1つの欠点は、試料流体を、半導体ウエハーに取り付けられたカンチレバーの末端から微小流体チャネルに入れ、排出しなければならないことである。したがって、微小流体チャネルを有しているカンチレバーは、カンチレバーの取り付けられた末端を通じて排出するためにチャネルを自身の上に二つ折りにする、カンチレバーの遊離端に急な屈曲を有さなければならない。2つの機械的に安定している支持体に結び付けられたつりげたを、けたを通じて流れる微小流体チャネルとともに有している検出器は、多くの場合に、カンチレバー型けたに好ましい。なぜなら、微小流体チャネルには、急ではない屈曲が含まれ、したがって、被分析物以外の試料流体の成分は、おそらく、微小流体チャネル中にはほとんど集められないからである。
【0011】
別の実施形態においては、被分析物を検出するため、または被分析物の特性を測定するための本発明の装置には、1つ以上の微小流体チャネルを含む少なくとも1つのつりげたを有しているスズが含まれる。ここで、各微小流体チャネルは、被分析物に結合するかまたは被分析物と反応する少なくとも1つの化学種;および、少なくとも1つの微小流体チャネルの入口につながれた微小流体チャネルよりも実質的に大きい深さを有している試料流体チャネルを有している。この装置にはまた、被分析物の結合または反応の際のけたの変化を測定するための1つ以上の検出器も含まれ得る。この実施形態においては、つりげたがカンチレバーであり得るか、またはけたが2つの機械的に安定している支持体の間につられ得るかのいずれかである。1つの好ましい実施形態においては、装置は、微小電気機械システム(MEMS)であり、これは、デバイスの領域をカバーするパッケージング構造を有している。1つの実施形態においては、パッケージング構造は、つりげたを制御環境におくように、デバイスの領域に対してシールされる。これにより、デバイスのシグナル対ノイズ比を低下させる可能性のある、湿度の変化、塵粒、静電荷の蓄積などの環境因子からデバイスを保護することができる。1つの実施形態においては、パッケージング構造は、つりげたが低圧環境(すなわち、大気圧よりも低い環境)におかれるように、デバイスの領域に対してシールされる。
【0012】
別の態様においては、本発明は、入口と放水口を有している機能的微小流体チャネルを製造する方法に関する。この方法には、1つ以上の溝を有している半導体ウエハーの上に第1のチャネル層を堆積させることが含まれる。犠牲層が第1の絶縁層の上に堆積させられ、その後、化学機械研磨のような平坦化技術が、第1のチャネル層に達するまで犠牲層を除去するために使用され、それによって、溝の中に犠牲層を有している第1の絶縁層の平坦な表面が露出させられる。第2のチャネル層が平坦な表面上に堆積させられ、1つ以上の穴が第2のチャネル層に形成され、これは1つ以上の溝につなげられる。次いで、犠牲層またはその一部が、エッチング加工によって溝から除去され、それによって微小流体チャネルが形成される。その後、微小流体チャネルの内部は、捕捉リガンドで機能化される。機能化工程は、試料流体チャネルとの接続を含むパッケージング構造が、微小流体チャネルを含むデバイスに加えられる前、またはその後のいずれかに行われ得る。1つの実施形態においては、半導体ウエハーの裏側(すなわち、その上にチャネル層が堆積させられた側とは反対の半導体ウエハーの側)の部分は、微小流体チャネルの下まで除去され、それによって、つり式マイクロチャネルが形成される。好ましくは、微小流体チャネルよりも低い半導体ウエハーの部分は、エッチング加工されて第1のチャネル層に戻される。1つの実施態様においては、半導体ウエハーの裏側は、溝からの犠牲層の除去と同時にエッチング加工される。1つの好ましい実施形態においては、半導体ウエハーはシリコンウエハーであり、第1および第2のチャネル層は、窒化ケイ素または二酸化ケイ素であり、犠牲層はポリシリコンである。この実施形態においては、犠牲層の部分は、p−型またはn−型のいずれかのドーパントでドープされ得る。より重いドープされたポリシリコン(例えば、約5×109cm−3以上のドーパント濃度)は、水酸化カリウムでのエッチング加工に耐える。したがって、犠牲層は、水酸化カリウムでのエッチング加工によっては除去され得、より重いドープされた領域は、微小流体チャネル中に残るであろう。チャネルのより重いドープされたポリシリコンの領域は、導電性である。あるいは、微小流体チャネルは、より重いドープされたポリシリコン製の第1および第2のチャネル層を有することによって、導電性にすることもできる。
【0013】
本発明の方法を使用して、非常に薄い壁を有している非常に薄い微小流体チャネルを、本発明の方法を用いて形成させることができ得る。共振質量検出器の感度は、共振けたの厚みを減少させることによって高められる。さらに、この方法は、窒化ケイ素のような、ウエハー接合しにくい材料から微小流体チャネルを形成させるために使用される場合もある。
【0014】
別の態様においては、本発明は、半導体ウエハー内に形成された1つ以上のつり式微小流体チャネルを含むパッケージされたデバイス、およびそれを作成する方法に関する。この方法には、1つ以上の別々にアドレス可能である電極を用いて基板をパターニングすること(ここで、電極は、デバイスのそれぞれの微小流体チャネルと整列させられ得る);1つ以上の流体チャネルと1つ以上の開口部を有しているポリ(ジメチルシロキサン)ガスケットを準備すること;ガスケットを基板に接着させること;デバイスの表面に共通の電極をパターニングすること(ここで、共通の電極は、それぞれの微小流体チャネル上に形成される);およびデバイスにガスケットを接着させること(ここで、ガスケットの流体チャネルがデバイスの微小流体チャネルの入口と出口と接続され、そしてガスケットのそれぞれの開口部は、1つ以上のつり式微小流体チャネルと整列させられる)が含まれる。
【0015】
別の実施形態においては、本発明は、半導体ウエハーの中に形成された1つ以上のつり式微小流体チャネルを含むデバイスをパッケージングする方法に関する。この方法には、基板の中に1つ以上の流体チャネルと1つ以上の空洞を形成すること(ここで、空洞を、微小流体チャネルと整列させることができる);1つ以上の別々にアドレス可能である電極を用いて基板の空洞をパターニングし、これによって、デバイスのそれぞれの微小流体チャネルと整列させることができる電極を形成すること;デバイスの表面上に共通の電極をパターニングすること(ここで、共通の電極は、それぞれの微小流体チャネルの上に形成される);およびデバイスに基板を接合させること(ここで、基板の流体チャネルがデバイスの微小流体チャネルの入口と出口とつながれ、基板のそれぞれの溝は1つ以上のつり式微小流体チャネルと整列させられる)が含まれる。
【0016】
別の実施形態においては、本発明は、半導体ウエハーの中に形成された1つ以上のつり式微小流体チャネルを含むデバイスをパッケージングする方法に関する。この方法には、1つ以上の別々にアドレス可能である電極を用いて基板の表面をパターニングすること;パターニングした基板の表面上にフォトレジストを形成させること;マスクを通じてフォトレジストに放射線を照射し、それによって、基板の予め決定された領域からフォトレジストを除去すること;フォトレジストが除去された基板の領域に金属を電気メッキし、それによって1つ以上の微小流体チャネルを有している壁と、1つ以上の空洞を有している壁を形成させること;フォトレジストの残りを除去すること;微小流体チャネルのそれぞれについての入口と出口を有しているデバイスの表面上に共通の電極をパターニングすること;ならびに、共通の電極に対して電気メッキした金属を接合させること(ここで、電気メッキした金属壁によって形成された流体チャネルが、デバイスの微小流体チャネルの入口と出口につながれ、そして電気メッキされた壁によって形成されたそれぞれの空洞は、1つ以上のつり式微小流体チャネルと整列させられる)が含まれる。
【0017】
本発明のパッケージング方法により、微小流体チャネルを制御環境下におくことができ、そしてデバイスの微小流体チャネルをより大きな試料流体チャネルにつなぐことができる。さらに、パッケージング方法により、それぞれの微小流体チャネルに共振を生じさせる静電気的な駆動力を提供する、駆動電極と検出器が統合される。したがって、本発明のパッケージング方法により、1つのウエハーから多数のデバイスを製造することができる。
【0018】
本発明は、図中に示される特定の実施形態を参照して記載される。図中の実施形態は例として示され、いかなる様式においても限定するようには意味されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(詳細な説明)
本発明の装置は、生体分子を検出する新規の方法であり、これによれば、つり式微小流体チャネルが、内部チャネル壁上に特異的な標的分子を捕捉するために使用される。結合した標的分子の量は、吸着の間の共振周波数の変化を測定することによって決定される。この検出方法を可能にする重要な特性は3つある:第1に、生体分子の質量密度は、水の密度とは異なる。例えば、タンパク質は1.3〜1.4g/cm3の範囲の質量密度を有する。したがって、流体が充填された共振器の正味の質量は、共振器の内部に含まれる生体分子の総数に応じて変化する。第2に、空気が充填されたマイクロチャネルと流体が充填されたマイクロチャネルの間での共振器のエネルギー損失の差(線質係数Q)は有意ではない。結果として、質量感度、ならびに振動数検出解析能力は、溶液の粘性抵抗によっては低下しない。捕捉リガンドが被分析物を含む溶液中に浸されるけたの外部部分の上にある共振検出器の場合には、そうではない。このタイプの共振検出器は、溶液の粘性抵抗が原因で低い線質係数を有する。第3に、表面に結合した分子の数が、マイクロチャネルの容積の中に含まれる分子の数よりも通常ははるかに多くなるように、マイクロチャネルの表面対容量比は十分に大きくなければならない。したがって、マイクロチャネルの壁に対する標的生体分子の結合は、リアルタイムでモニターすることができる。
【0020】
つり式微小流体チャネル検出器は、水性の環境でのみ生じる高度に選択的である生体分子の認識を維持したまま、減圧下で共振器と組み合わせて、並外れた高度な質量分解が可能である。言い換えると、周期的に振動するマイクロチャネルの内部の捕捉リガンドに結合する標的分子(すなわち、被分析物)は、チャネルの外部が真空であるか、または気体であるかを認識していない。つり式微小流体チャネルもまた拡張可能であり、少量の試料流体(約10pL/検出器)の被分析物を検出することができる。
【0021】
チャネルの厚みと、チャネルの壁の厚みを減少させること、さらには、チャネルの内部に結合させる捕捉リガンドの数を増加させることにより、解析能力は高まるはずである。微小流体チャネル検出器を従来の微小流体工学と統合することにより、このような検出器の有用性が増大し、複数の検出器を1つの半導体ウエハーの上に組み立てることができる。104μm2の表面積を有しているつり式微小チャネルは、約1タンパク質/μm2(100kDaのタンパク質質量と仮定する)を解析できるはずである。
【0022】
内部表面積Aの共振質量センサーは、有効質量m、共振周波数fの調和振動子として形にすることができる。小さい表面質量負荷Δσ=Δm/Aによって生じる相対的な振動数シフトΔf/fは、一次元方程式(1)に入力される:
【0023】
【数1】
方程式(1)は、所定の検出可能な振動数シフトΔfと共振周波数fについて、最小の検出可能な表面質量負荷が、全質量に対する表面積の比によって完全に決定されることを示している。この比は、流体層の厚み、さらには、チャネルの壁の厚みを減少させることによって改善することができる。
【0024】
1つの実施形態においては、被分析物を検出するため、または被分析物の特性を測定するための本発明の装置10(図1を参照のこと)には、2つの機械的に安定である支持体14aと14bに接続された少なくとも1つのつりげた12が含まれる。ここで、けたには、1つ以上の微小流体チャネル16;および1つ以上の検出器(示さない)が含まれる。別の実施形態においては、けたはカンチレバーである場合もある(図2を参照のこと)。微小流体チャネルは、入口と出口を有し、約50nmから約2000nmの間の範囲の深さと高さを有する。1つの実施形態においては、微小流体チャネルは、約100nmから約1200nmの間の範囲の深さを有する。それぞれの微小流体チャネルは、被分析物に結合するかまたは被分析物と反応する少なくとも1つの化学種を有する。1つ以上の検出器によって、被分析物の結合または反応の際の1つ以上のけたの共振周波数の変化が測定される。検出は、吸着された被分析物分子の質量を機械の共振周波数の変化に変換することによって行われる。
【0025】
1つの実施形態においては、化学種は、被分析物に結合する捕捉リガンドである。捕捉リガンドは、別の分子または複合体について高い分子認識能力を有しており、そして、分子または複合体に特異的に結合する高い能力を有している分子である。共有結合と明記されない限りは、用語「結合」または「結合した」には、共有的な会合と非共有的な会合の両方が含まれる。「特異的結合」は、本明細書中で使用される場合は、捕捉リガンドが1つ以上の他の分子または複合体(すなわち、標的)に、分子または複合体と、試料の他の成分または混入物質との間を区別するために十分な特異性を有して結合する場合である。1つの実施形態においては、標的についての捕捉リガンドの解離定数は、約1×10−6M未満である。別の実施形態においては、捕捉リガンドは、分子認識システムの1つのメンバーである場合もある。本発明において使用される分子認識システムは従来のものであり、本明細書中では詳細には記載されない。このようなシステムを準備し、利用するための技術は当該分野で周知であり、Tijssen,P.,“Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology Practice and Theories of Enzyme Immunoassays”(1998),eds. Burdon and Knippenberg,New York:Elsevier(その全体が引用により本明細書中に組み入れられる)において説明されている。好ましい分子認識システムとしては、抗原/抗体、抗原/抗体断片、アビジン/ビオチン、ストレプトアビジン/ビオチン、プロテインA/Ig、またはレクチン/炭水化物が挙げられる。分子認識システムのいずれのメンバーも、捕捉リガンドであり得る。分子認識システムの他のメンバーは標的である。1つの実施形態においては、捕捉リガンドの標的は、細胞の表面上の抗原、例えば、細胞表面受容体、インテグリン、膜貫通タンパク質、およびイオンチャネル、または膜輸送タンパク質である。
【0026】
他の捕捉リガンドとしては、核酸(例えば、DNAおよびRNA)、または修飾された核酸(例えば、修飾された塩基または修飾された骨格を有しているDNAまたはRNA)が挙げられる。さらに、核酸は一本鎖である場合も、二本鎖である場合もある。核酸および修飾された核酸は、一般的には、捕捉リガンドの配列に相補的である、少なくとも3個、好ましくは8個の連続している核酸を有する配列を有している標的核酸に結合する。
【0027】
用語「核酸」または「オリゴヌクレオチド」は、本明細書中で使用される場合は、ヌクレオチドの重合体をいう。通常は、核酸には、少なくとも3個のヌクレオチドが含まれる。重合体としては、自然界に存在しているヌクレオシド(すなわち、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、およびデオキシシチジン)、または修飾されたヌクレオシドが挙げられる。修飾されたヌクレオシドの例としては、塩基修飾されたヌクレオシド(例えば、アラシチジン、イノシン、イソグアノシン、ネブラリン、シュードウリジン、2,6−ジアミノプリン、2−アミノプリン、2−チオチミジン、3−デアザ−5−アザシチジン、2’−デオキシウリジン、3−ニトロピロール、4−メチルインドール、4−チオウリジン、4−チオチミジン、2−アミノアデノシン、2−チオチミジン、2−チオウリジン、5−ブロモシチジン、5−ヨードウリジン、イノシン、6−アザウリジン、6−クロロプリン、7−デアザアデノシン、7−デアザグアノシン、8−アザアデノシン、8−アジドアデノシン、ベンズイミダゾール、M1−メチルアデノシン、ピロロ−ピリミジン、2−アミノ−6−クロロプリン、3−メチルアデノシン、5−プロピニルシチジン、5−プロピニルウリジン、5−ブロモウリジン、5−フルオロウリジン、5−メチルシチジン、7−デアザアデノシン、7−デアザグアノシン、8−オキソアデノシン、8−オキソグアノシン、O(6)−メチルグアニン、および2−チオシチジン)、化学的または生物学的に修飾された塩基(例えば、メチル化塩基)、修飾された糖(例えば、2’−フルオロリボース、2’−アミノリボース、2’−アジドリボース、2’−O−メチルリボース、L−エナンチオマーヌクレオシドアラビノース、およびヘキソース)、修飾されたリン酸基(例えば、ホスホロチオエート、および5’−N−ホスホルアミダイト結合)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。核酸の化学合成のための自然界に存在しているヌクレオチドモノマーおよび修飾されたヌクレオチドモノマーは、容易に入手することができる(例えば、www.trilinkbiotech.com,www.appliedbiosystems.com、www.biogenex.com、またはwww.syngendna.comを参照のこと)。
【0028】
捕捉リガンドはまた、アプタマーのような核酸リガンドである場合もある。本明細書中で使用される場合は、「核酸リガンド」は、標的に選択的に結合する自然界には存在しない核酸である。核酸リガンドを形成する核酸は、自然界に存在しているヌクレオシド、修飾されたヌクレオシド、炭化水素リンカー(例えば、アルキレン)またはポリエーテルリンカー(例えば、PEGリンカー)が1つ以上のヌクレオシド、修飾されたヌクレオシドと炭化水素の間に挿入されているか、または、PEGリンカーが1つ以上のヌクレオシドの間に挿入されているか、あるいは、それらが組み合わされている、自然界に存在しているヌクレオシドから構成され得る。1つの実施態様においては、核酸リガンドのヌクレオチドまたは修飾されたヌクレオチドは、核酸リガンドの結合親和性と選択性が置換によって実質的に低下しない(例えば、標的に対する核酸リガンドの解離定数は、約1×10−6Mを超えてはならない)限りにおいて、炭化水素リンカーまたはポリエーテルリンカーで置き換えることができる。核酸リガンドの標的分子は、核酸リガンドに結合する三次元化学構造を有する。しかし、標的が別の核酸である場合は、核酸リガンドは、核酸標的の単なる直鎖状の相補配列ではなく、これには、ヘアピンループのような他の構造が間に挟まっている相補的ワトソンクリック塩基対合によって結合する領域が含まれる場合がある。核酸リガンドの標的としては、低分子、ペプチド、ポリペプチド、炭水化物、および核酸分子が挙げられる。
【0029】
別のタイプの捕捉リガンドは、タンパク質核酸(PNA)である。PNAは、自然界に存在しているまたは自然界には存在しない核酸塩基が各アミノ酸残基に結合させられているペプチド骨格を有している。PNAは、PNAの配列に対する、少なくとも3個の連続している塩基、好ましくは、8個の連続している塩基の相補配列を有する核酸を認識することができる。
【0030】
1つの実施形態においては、捕捉リガンドは、微小流体チャネルの内表面に結合させられる。捕捉リガンドを微小流体チャネルの内表面に結合させる1つの方法は、微小流体チャネルの内表面にリンカーを結合させ、その後、リンカーに捕捉リガンドを結合させることである。リンカーは、微小流体チャネルの表面に結合する1つ以上の基と、捕捉リガンドに結合する1つ以上の基(例えば、第1級アミンまたは第2級アミン、−OH、−SH、あるいは、ハロ)を有していなければならない。例えば、微小流体チャネルの内表面が窒化ケイ素または二酸化ケイ素である場合は、微小流体チャネルの内表面に捕捉リガンドを結合させる1つの方法は、微小流体チャネルの表面をシランリンカーと接触させることである。シランリンカーは、二酸化ケイ素または窒化ケイ素表面に結合することができる少なくとも1つのシリル基と、捕捉リガンドに結合することができる少なくとも1つの他の基を有している分子である。これにより、捕捉リガンドは遊離している官能基と反応し、それによって微小流体チャネルの内表面に捕捉リガンドが結合させられる。1つの実施形態においては、捕捉リガンドは、以下の構造式によって表すことができる:
【0031】
【化2】
式中:
R1、R2、およびR3はそれぞれ独立して、−H、アルキル、またはアリールアルキルであり;
Lは、アルキレン、シクロアルキレン、ヘテロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、糖残基、またはアリールアルキレンであり;そして
Xは、−NHR、−OH、−SH、またはハロであり、ここで、Rは、−H、アルキル、アリールアルキル、またはアリールである。
【0032】
別の実施形態においては、微小流体チャネルの内表面は、金、銀、銅、カドミウム、亜鉛、パラジウム、白金、水銀、鉛、鉄、クロム、マンガン、タングステン、またはそれらの任意の合金であり、リンカーには、これらの表面に結合することができるチオール基と、捕捉リガンドに結合することができる別の基が含まれる。
【0033】
微小流体チャネルの内表面が二酸化ケイ素のような酸化物である場合は、リンカーは、酸化物表面に結合するカルボン酸基と、捕捉リガンドに結合することができる別の基を有する場合がある。
【0034】
微小流体チャネルの内表面が白金、パラジウム、またはその任意の合金である場合は、リンカーは、これらの表面に結合することができるニトリルまたはイソニトリルと、捕捉リガンドに結合することができる別の基を有する場合がある。
【0035】
微小流体チャネルの内表面が銅である場合は、リンカーは、この表面に結合することができるヒドロキサム酸と、捕捉リガンドに結合することができる別の基を有する場合がある。
【0036】
捕捉リガンドを微小流体チャネルの内表面に結合させる別の方法は、微小流体チャネルの内表面に結合する基を有する捕捉リガンドを選択すること、またはそれが微小流体チャネルの内表面に結合する基を含むように捕捉リガンド自体を修飾することである。例えば、捕捉リガンドは、金、銀、銅、カドミウム、亜鉛、パラジウム、白金、水銀、鉛、鉄、クロム、マンガン、タングステン、またはそれらの任意の合金である内表面を有する微小流体チャネルに結合するチオール基を含むように修飾される場合がある。
【0037】
標的を検出することに関する装置の感度は、微小流体チャネルの内部にさらに多くの標的分子を結合させることによって改善される。したがって、微小流体チャネル中の捕捉リガンドの数を増大させることによって、装置の感度を高めることができる。微小流体チャネル中に存在する捕捉リガンドの数を増大させる1つの方法は、チャネルの内表面をザラザラにすることによって表面積を大きくすることである。
【0038】
別の実施形態においては、微小流体チャネル中の捕捉リガンドの数は、ゲルに結合させられた捕捉リガンドを有しているチャネルの中に多孔性のゲルプラグを入れることによって増加させられる。通常は、ゲルは、モノマーユニットを重合させることによって調製される。捕捉リガンドは、モノマーユニットに結合させ、プレポリマー混合物に付加させることができる。プレポリマー混合物を重合させる際には、捕捉リガンドはゲルに直接結合させられる。ゲルに核酸捕捉リガンドを結合させる方法は、米国特許第6,180,770号(その教示全体が引用により本明細書中に組み入れられる)に記載されている。あるいは、捕捉リガンドがゲルの孔よりも大きい場合は、捕捉リガンドはプレポリマー混合物に付加される場合がある。プレポリマー混合物がゲルを形成するように重合させられる場合は、捕捉リガンドはゲルの孔の中に捕らえられる。1つの実施形態においては、重合反応は、例えば、紫外線の照射によって開始させることができる。この実施形態においては、微小流体チャネルの壁が透明または半透明の材料、例えば、窒化ケイ素から作成されることが望ましく、その結果、プレポリマー混合物は、圧力によって微小流体チャネル内に注入することができ、その後、ゲルが重合させられるけたの部分に直接放射線を照射することによって重合させることができる。
【0039】
微小流体チャネルについての1つの有用なアレンジは、重合させられたゲル20を含む領域で合わさり、その後、ゲルよりも下で離れる2つの微小流体チャネル18aと18bを有している、けた12(図3を参照のこと)である。この実施形態においては、被分析物は、流体の流れから圧力によってゲルの中に送り込むことができる。あるいは、被分析物が帯電している場合には、被分析物を、電気泳動法22によってゲルの中に送り込むことができる。
【0040】
1つの実施形態においては、本発明の装置のけたは共振しており、検出器によってけたの共振周波数の変化が測定される。通常は、それぞれのけたの共振は、一対の電極によって駆動される。1つの実施形態においては、けたの表面は、電源に取り付けられた、電極対の1つのメンバーとしての役割を担う金属でパターニングすることができる。電極対の他方のメンバーは、けたの表面上につられる。2つ以上のけたが装置の中に存在する場合は、けたの上にパターニングされた金属電極を、この電極が全てのけたに共通となるように接続することができる。しかし、それぞれのけたの上につられた電極は、別々にアドレス可能である。通常は、電極は、金、ニッケル、白金、アルミニウム、銅、アンチモン、スズ、インジウム、クロム、チタン、およびそれらの合金のような金属である。好ましい実施形態においては、電極は金である。
【0041】
1つの実施形態においては、けたは、金属電極ではパターニングされない。その代わりとして、微小流体チャネル中の溶液が、電源につなげられた電解質溶液である。微小流体チャネル中の電解質溶液は電極として作用し、それぞれの微小流体チャネルが装置の他のけたの中の微小流体チャネルに接続されている場合には、電解質溶液は全てのけたについての共通の電極としての役割を果たすことができる。この実施形態においては、それぞれのけたの上につられた別々にアドレス可能である電極が存在する。
【0042】
代替的な実施形態においては、検出器によってけたの表面応力の変化が測定される。1つの実施形態においては、表面応力の変化は、それらが微小流体チャネル中の捕捉リガンドに結合した際に密に充填された分析物分子によって生じる立体的な応力によって引き起こされ得る。この実施形態においては、微小流体チャネルの反対側よりも微小流体チャネルの一方の側に、実質的に高濃度の捕捉リガンドが結合させられる。捕捉リガンドを被分析物に結合させる場合には、2つの側の表面応力の差によって、チャネルに屈曲が生じる。この実施形態においては、検出器によってけたの変形が測定される。
【0043】
別の実施形態においては、表面応力は、けたを作り上げる材料の様々な膨張によって生じ得る。この実施態様においては、けたの外表面の1つは、熱膨張係数がチャネルの熱膨張係数とは異なる薄膜でコーティングされる。捕捉リガンドはチャネルの内部に含まれる。捕捉リガンドが被分析物に結合すると、熱が放出されるかまたは吸収され、その結果生じる温度変化により、バイモルフ作用によるけたの屈曲が生じる。この実施形態においては、検出器によってけたの変形が測定される。
【0044】
別の実施形態においては、本発明の装置の1つ以上の検出器は1つ以上のコンデンサーである。容量センサーは、平板コンデンサーの電気容量の変化として変位を測定することができる。1つの実施形態においては、駆動電極もまた、容量検出器として使用することができる。カンチレバーが2つのコンデンサー平板の一方である容量センサーは、Blanc et al.,J.Vac.Sci.Technolo.B 14:901(1996)によって開発されている(その教示全体が引用により本明細書中に組み入れられる)。
【0045】
あるいは、検出器は光てこ(ここで、レーザー光はけたの先端から反射される)である場合も、また、レーザー振動計(ここで、けたを照射するためにレーザーを利用し、ドップラーシフトにより振動数応答を測定する)である場合もある(J.Yang et al.,“Mechanical behavior of ultrathin microcantilevers”,Sensors and Actuators(2000)、82:102−107(その教示全体が引用により本明細書中に組み入れられる)を参照のこと)。
【0046】
あるいは、検出器は、ピエゾ抵抗性である場合も、また圧電性である場合もある。この実施形態においては、けたは、それが歪んだ際にその電気伝導率が変化するピエゾ抵抗性材料から作られる。
【0047】
装置のシグナル対ノイズ比は、けたの共振周波数に影響を及ぼす恐れがある湿度の変化、塵粒、および他の要因からけたが保護されるように、保護された環境に装置のけたを閉じ込めることによって改善することができる。さらに、線質係数は、けたがつられている環境によるけたに対する粘性抵抗によって低下させられるので、検出の感度を改善するためには、けたを低圧環境につられることが所望される。
【0048】
本発明の装置の1つの実施形態においては、1つ以上の微小流体チャネルを含む少なくとも1つのつりげた(ここで、個々の微小流体チャネルが、被分析物に結合するかまたは被分析物と反応する少なくとも1つの化学種を有している);微小流体チャネルの少なくとも1つの入口に接続された試料流体チャネル(ここで、試料流体チャネルは、微小流体チャネルよりも実質的に大きい深さを有している);および被分析物の結合または反応の際の1つ以上のつりげたにおける変化を測定するための1つ以上の検出器を有しているスズが含まれる。本発明の装置のこの実施形態は、微小電気機械システム(MEMS)である。好ましい実施形態においては、本発明のMEMSは、デバイス領域をカバーし、デバイスの試料流体チャネルと微小流体チャネルとの間の接続を提供するパッケージング構造を有している。さらに、パッケージング構造は、けたがつられる低圧環境を提供するように構築することができる。
【0049】
通常は、それぞれの微小流体チャネルは、約100nmから約1000nmの間の範囲の深さを有し、それぞれの試料流体チャネルは、約10μmから100μmの間の範囲の深さを有する。
【0050】
装置の検出器によっては、被分析物の結合または反応の際のけたの振動数の変化が測定される場合があり、また、被分析物の結合または反応の際のけたの変形が測定される場合もある。装置が共振けたを有している場合は、それぞれのけたの共振は、上記で議論された一対の駆動電極によって駆動される。1つの実施形態においては、電極対の一方の電極は、全てのけたに共通のものであり、電極対の他方の電極は、けたの上につられ、それぞれのけたについて別々にアドレス可能である。好ましくは、パッケージング構造には、別々にアドレス可能な電極が含まれる。
【0051】
1つの実施形態においては、基板はポリジメチルシロキサンガスケットを介してMEMSに取り付けられる。この実施形態においては、基板は、ガラス、セラミック、プラスチック、回路基板、およびシリコンチップ(さらに別の回路を含む場合も、含まない場合もある)製のものとすることができる。例えば(図4を参照のこと)、微小流体チャネルと試料流体チャネルの間の接続は、ポリジメチルシロキサンガスケット25においてパターニングされる(Duffy,Anal.Chem.(1998),70:4974(その教示全体が引用により本明細書中に組み入れられる)を参照のこと)。ガスケットは、その後、一旦パッケージング構造がデバイスに取り付けられるとそれぞれのけたの上につられる別々にアドレス可能である電極26でパターニングされる基板24に接続される。プラズマ接合の後に基板とガスケットを加熱することが望ましい。なぜなら、これによって、一般的にはガスケットと基板の間の接着が改善されるからである。デバイスの表面は、共通電極28を形成する金属でコーティングすることができ、また、微小流体チャネル中の電解質溶液が共通の電極を形成する場合には、コーティングしないまま残すこともできる。その後、ガスケットがデバイス30にクランプで締め付けられ、そして/またはデバイスに対してプラズマ接合させられる。穴32は、そこを通じて試料流体をデバイスに添加することができるように、基板にエッチング加工され得るか、またはドリルで穴を空けられ得る。共通の電極と別々にアドレス可能な電極を、容量検出器として使用することができる場合もある。あるいは、装置は、レーザーけたが、それがけたを反射するようにけたの共振部分と整列させられる、光てこ検出器を有する場合もある。その後、反射されたレーザーけたの位置が検出器によって検出され、反射されたけたの位置が、けたの共振周波数についての情報に変換される。装置が2つ以上のけたを有している場合には、1つのレーザーはそれぞれのけたと整列させられる。
【0052】
別の実施形態(図5を参照のこと)においては、パッケージング構造は、それぞれのけたについての空洞38、および、試料流体チャネル36と基板内にエッチング加工された微小流体チャネルとの間の接続を有する、ガラスまたはシリコンチップ34基板である。別々にアドレス可能な電極26は、それぞれのけたの上に整列させられる基板の空洞に埋め込まれる。デバイスの表面は、共通の電極28を形成する金属でコーティングすることができ、また、微小流体チャネル中の電解質溶液が共通の電極を形成する場合には、コーティングしないまま残すこともできる。最後に、基板は、陽極接合によってデバイス30に固定され、その結果、別々にアドレス可能な電極がけたの上に整列させられ、試料流体チャネルは微小流体チャネルと接続される。試料流体の導入のための穴32は基板にドリルで空ける、もしくは基板にエッチング加工することができ、また、デバイスにエッチング加工することもできる。共通の電極と別々にアドレス可能な電極は、容量検出器として使用される場合もある。あるいは、装置は、レーザーけたが、それがけたを反射するようにけたの共振部分と整列させられる光てこ検出器を有する場合もある。これによると、反射されたレーザーけたの位置が検出器によって検出され、反射されたけたの位置がけたの共振周波数についての情報に変換される。装置が1つ以上のけたを有している場合は、1つのレーザーはそれぞれのけたと整列させられる。
【0053】
別の実施形態においては、基板は別々にアドレス可能な電極26でパターニングされ(図6A)、フォトレジスト層40が、パターニングされた電極を有している基板の表面に付加される(図6B)。フォトレジストに層は、マスクを通じて放射線が照射され、これによって、試料流体チャネルと、微小流体チャネル42aおよび42bの間の接続の壁を形成する領域と、けたがつられる、空洞44の壁を定義する領域から除去される。その後、金、ニッケル、白金、アルミニウム、銅、アンチモン、スズ、インジウム、クロム、チタン、およびそれらの合金のような金属が、フォトレジストの開口部分に付加される(図6C)。次いで、フォトレジストが除去されて、試料流体チャネルと、微小流体チャネルの間の接続の壁を形成する金属壁、およびけたがつられる空洞の壁を定義する領域が残される(図6D)。デバイスの表面は、共通の電極28を形成する金属でコーティングすることができ、また、微小流体チャネル中の電解質溶液が共通の電極を形成する場合には、コーティングされないまま残すこともできる。最後に、基板は、例えば、デバイスの表面上の共通の電極に対して金属の壁をはんだ付けすることによって、デバイス30に固定され、その結果、別々にアドレス可能な電極がけたの上に整列させられ、試料流体チャネルが微小流体チャネルと接続される(図6E)。試料流体の導入のための穴は、基板にドリルで空ける、もしくは基板にエッチング加工することができ、また、デバイスにエッチング加工することもできる(示さない)。共通の電極と別々にアドレス可能な電極は、容量検出器として使用される場合もある。あるいは、装置は、レーザーけたがそれがけたを反射するようにけたの共振部分と整列させられる光てこ検出器を有する場合もある。これによると、反射されたレーザーけたの位置は検出器によって検出され、反射されたけたの位置はけたの共振周波数についての情報に変換される。装置が2つ以上のけたを有している場合は、1つのレーザーはそれぞれのけたと整列させられる。
【0054】
今日までには、微小流体チャネル検出器は従来の微小流体工学とは統合されていない。チャネルの厚み、およびチャネルの壁の厚みを減少させること、ならびに、チャネルの内部に結合させられた捕捉リガンドの数を増加させることによって、解析能力が高まるはずである。微小流体チャネル検出器を従来の微小流体工学と統合することによって、そのような検出器の有用性は高まり、同時に、1つの半導体ウエハーの上に多数の検出器を製造することができる(図7)。
【0055】
本発明の微小流体チャネルは、1つ以上の溝を有している半導体ウエハー46の上に微小流体チャネルの壁の一方の側を製造する、材料の第1層48を堆積させることによって製造することができる(図8A,8B、および8C)。1つの実施形態においては、半導体ウエハーはシリコンウエハーであり、チャネルの壁の材料は窒化ケイ素または二酸化ケイ素である。次いで、犠牲層50(例えば、ポリシリコン層)が第1の絶縁層の上に堆積させられる(図8D)。その後、犠牲層は、化学機械研磨のような平坦化技術によって、第1のチャネル層48に達するまで除去され、それによって、溝の中に犠牲層を有している第1のチャネルの平坦な表面が露出させられる(図8E)。第2のチャネル層52(例えば、窒化ケイ素の層、または二酸化ケイ素の層)が平坦な表面上に堆積させられて、マイクロチャネルの他方の側が形成される(図8F)。その後、1つ以上の穴54が第2のチャネル層にエッチング加工され、これは1つ以上の溝に繋がる(図8G)。犠牲層が、エッチング加工によって溝から除去され、それによって微小流体チャネルが形成される(図8H)。犠牲層がポリシリコンである場合は、水酸化カリウムの溶液でこれを処理することによって、これをエッチング加工することができる。半導体ウエハーの裏側の部分は、微小流体チャネルの下まで、例えば、エッチング加工によって除去され、それによって、つりげたを含む微小流体チャネルが形成される(図8H)。この工程は、微小流体チャネルを形成させるための犠牲層のエッチング加工による除去と同時に行うことができる。その後、微小流体チャネルの内部を、デバイスがパッケージング構造に取り付けられる前、またはその後に、上記のように機能化することができる。
【0056】
1つの実施形態においては、微小流体チャネルが導電性であることが望ましい。導電性の微小流体チャネルを形成する1つの方法は、p−型ドーパントおよび/またはn−型ドーパントでポリシリコンの犠牲層の一部をドープすることである。より重いドープされたポリシリコン(例えば、約5×1019cm−3以上のドーパント濃度を有しているポリシリコン)は、水酸化カリウムでのエッチングに耐えるので、犠牲層が、水酸化カリウムでのエッチングによっては除去される場合は、ポリシリコン層のドープされた部分は微小流体チャネル内に残る。導電性微小流体チャネルを形成させる別の方法は、ドープされたポリシリコンから第1および/または第2のチャネル壁を形成させることである。
【0057】
本発明の方法により、約50nmから約2000nmの間の範囲の深さを有する微小流体チャネルを形成することができる。1つの実施形態においては、約100nmから約1000nmの間の範囲の微小流体チャネルの深さである。さらに、本発明の方法を用いて、非常に薄い壁を有している微小流体チャネルを製造することができる。例えば、約100nmから約1200nmの間の範囲の壁の厚みを有している微小流体チャネルを製造することができる。したがって、本発明の方法は、つりげた検出器が、より感度の高い、より薄い微小流体チャネル、および微小流体チャネルの壁であるので、有利である。
【0058】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の実施例を考慮するとさらに明らかになるであろう。以下の実施例は、本発明に特定の実施形態を説明するために意図されるが、特許請求の範囲によって定義されるようなその範囲を限定するようには意図されない。
【実施例】
【0059】
上記のように、分子の検出のためのつり式微小チャネルは、十分に薄くなければならず、さらにこれらは、リアルタイム測定のために持続的に流体を供給するように設計されなければならない。これらの要件の両方を満たすために、本発明者らは、800nmの壁の厚みと1.2μmの流体層の厚みを有しているつり式微小チャネルを製造するために、ポリシリコンダマシンプロセス、熱い水酸化カリウム中での犠牲層のエッチング加工、およびバルクマイクロマシニング技術を組み合わせた。最初に、本発明者らは、露光装置と反応性イオンエッチング(RIE)を使用して、標準的な<100>シリコンウエハーの中に微小流体溝をエッチング加工した。続いて、ウエハーを800nmの低応力−低圧で化学気相堆積させた窒化ケイ素でコーティングし、その後、1.5μmのポリシリコン層でコーティングした。ポリシリコン層を化学機械研磨(CMP)によって平坦化した。CMPプロセスを、溝にポリシリコンが充填されたままになるように、それが窒化ケイ素層に達すると直ちに停止させた。CMPの後、第1層と同じ厚みの低応力窒化ケイ素の第2層を堆積させた。この層によって、ポリシリコンを充填した微小流体チャネルを閉じた。再び、標準的な露光装置とRIEを使用して窒化ケイ素層に開口部を作成し、これによって、ポリシリコンを充填した微小流体チャネルに対してアクセス口を提供し、そしてつり式チャネルを形成させるために窒化ケイ素層に向かって上にウエハーの裏側部分を除去した。ウエハーの裏側をまた、チャネルのつられた部分の下の貫通穴の位置を定義するために、同じ工程においてパターニングした。最後に、犠牲ポリシリコンとウエハーの貫通穴を、80℃の6Mの水酸化カリウム水溶液中でエッチング加工した。本発明者らは、この温度では、拡散によって犠牲層についてのエッチング速度が厳しく制限されることがないことを見出した。本発明者らは、80%の収率で、20時間未満に1mmまでのチャネルを完全に開放することができた(この方法のフローチャートについては図8を参照のこと)。
【0060】
3個のつり式微小チャネルの電子顕微鏡写真を図9aに示し、位相差視像を図9bに示す。つり式チャネルに対する持続的な流体の供給を得るために、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)製の微小流体ネットワークをチップの表面に結合させた。溶液を低容量のマイクロチャネルに対して低い粘性で供給することができるように、PDMS中のU型チャネル内に窒化物チャネルに対する入口を配置した。デバイスは実際に帯電しており、偏差を光てこ法で測定した。高い電気伝導率、および高い光反射率は、100nmのアルミニウムの薄膜でつり式チャネルをコーティングすることによってもたらされた。アルミニウムを接地し、駆動電極を、マイクロメートルステージによってデバイスの50μm以内になるようにした。
【0061】
振動数応答を、振動数掃引モードの関数発生器と、ロックイン(lock−in)増幅器を使用して記録した。共振周波数の時間プロットを得るために、±5Vの出力スイングの飽和電圧増幅器を介して駆動電極に直接接続した偏差センサーの出力とともに、デバイスをフィードバックループにいれた。駆動シグナルを、基準値に対して+60Vによってオフセットし、振動数を、振動数カウンターによって測定した。この構成において、本発明者らは、4mHzから4Hzの測定帯域幅において80mHzの振動数ノイズレベルを観察した。
【0062】
質量分解能を評価するために、本発明者らは、充填していない状態の300μmのカンチレバーについて、ならびに、イソプロピルアルコールを充填したカンチレバー、および水を充填したカンチレバーについて、振動数応答を測定した。得られたスペクトルを図10に示す。それぞれの線質係数は同じままであり、このことが、流体を充填したマイクロチャネルのエネルギー損失が微小流体チャネルに封入された溶液の粘性抵抗によっては大きくならないことを示していることに注目する。これは、小さい容量のマイクロチャネル(約27pL)と、小さい振幅(<<1μm)によっては、ごく少量の水分子しか、それぞれの振動サイクルの間に移動させられないことが原因である。
【0063】
種々の媒体の既知の質量密度と、27pLの設計容量を考慮して、本発明者らは、水を充填したマイクロチャネルの小さいローディングについて107mHz/pgの質量感度を明らかにした。この感度を、80mHzのノイズレベルと53000μm2の表面積と一緒に考慮すると、本発明者らによる電流検出限界は、4mHzから4Hzの帯域幅全体についておよそ1.4×10−17g/μm2である。
【0064】
本発明者らは、ビオチニル化されたウシ血清アルブミン(bBSA)でチャネル内壁を機能化し、その後、アビジンとbBSAの結合を検出するためにいくつかの実験を行うことにより、生体分子の検出を明らかにした。試薬を交換する際をのぞいて、流体の圧力を、常時一定に保った。アビジンとbBSAを、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中に、それぞれ、500μg/mLおよび1mg/mLで溶解させた。これらの実験の結果を、図11にまとめる。それぞれのセクションは、流体を交換した時点をゼロとした経時的な相対的な振動数シフトを示す。図11Aは、緩衝液を切断し、そして再度接続した後のベースラインシグナルを示す。図11Bは、緩衝液からアビジン溶液への交換の結果である。共振振動数は、流体の交換の数秒後に、急に2Hzより多く落ちた。この遅延は、液体が、スイッチ点からつられ得たチャネルの開始点まで流れるために要する時間が原因であると予想される。本発明者らが緩衝液に戻すと、共振周波数は変化しないままであったが、これは、流体の密度の差によってシグナルが引き起こされるのではないことを示している。次に、本発明者らは、緩衝液を充填したマイクロチャネルに再度アビジンを注入した場合にもまた、振動数は変化しないままであったことを確認した。このことは、アビジンについての全ての利用可能な結合部位が、すでに占められていることを示唆している。次に、本発明者らは、bBSAに交換し、その後再び、アビジンに交換した。いずれの場合にも、共振周波数の急激な低下を観察することができた(図11Cおよび11D)。bBSAの注入によって共振しているマイクロチャネル中のアビジンを検出する能力を回復することができるという事実は、図11に模式的に示すbBSA−アビジン多層の形成によって説明することができる。いくつかのビオチンはそれぞれBSA分子に結合しているので、新しいbBSA層によって、その後にアビジンを吸着させるための多くの結合部位を提供することができる。
【0065】
上記の結合実験および対照実験のいずれによっても、緩衝液とbBSAまたはアビジンとの間の容積密度の変化による振動数シフトは明らかにならなかった。本発明者らは、これらの溶液が数百mHz振動数をシフトさせるはずであると予想したが、つり式微小チャネルの内部の流体の完全な交換は、多くの場合、数分を要することを見出した。このタイムスケールについて、約1Hz以下の振動数シフトは、多くの場合に存在するドリフトによって隠されている。対照的に、ビオチン−アビジンの高い結合親和性により、本発明者が注入した容積濃度の何分の一かであっても、表面濃度の迅速な飽和が生じる。
【0066】
本発明者らの結果は、比較的大きいマイクロチャネルの表面積対容量比が、質量検出に有利であることを示している。一旦、低濃度の試料がマイクロチャネルに入れられると、分子は、それらが固定された捕捉リガンドに結合するので直ちに使い尽くされる。さらに分子が入れられると、表面は直ちに、周辺の溶液中に存在するよりもはるかに多くの分子を回収する。結果として、高いチャネル濃度によって、共振周波数についての測定可能な変化がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、2つの機械的に安定である支持体に接続されたつりげたを有する、本発明の装置の1つの実施形態の模式図である。
【図2】図2は、カンチレバーのつりげたを有している、本発明の装置の1つの実施形態の模式図である。
【図3】図3は、ゲルによって塞がれた点でけた内に集中し、その後、分岐する2つの微小流体チャネルを有しているつりげたの模式図である。
【図4】図4は、ポリジメチルシロキサンガスケットを使用してパッケージされている、本発明の装置の1つの実施形態の模式図である。
【図5】図5は、陽極接合によってデバイスに直接接合させられた基板を有している、本発明の装置の1つの実施形態の模式図である。
【図6】図6A〜Eは、フリップチップ構造のパッケージング構造を有している、本発明の装置の1つの実施形態の製造プロセスの模式図である。図6Fは、パッケージされた装置の模式図である。
【図7】図7は、1つのシリコンウエハー上に製造された複数のデバイスを示す。
【図8】図8A〜Hは、微小流体チャネルを製造するための本発明の方法の1つの実施形態の模式図である。
【図9A】図9Aは、3個のつり式微小流体チャネルの電子顕微鏡写真である。
【図9B】図9Bは、3個のつり式微小流体チャネルの位相差視像である。
【図10】図10は、空気、2−プロパノール、および水を充填した300μmの長さのカンチレバーの較正された振動数応答曲線である。
【図11】図11A〜Dは、(A)緩衝液、(B)アビジン、(C)bBSA、および(D)アビジンの注入後の、40kHz共振微小流体チャネルについての相対的な振動数シフトである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被分析物を検出するか、または被分析物の特性を測定するための装置であって、以下:
a)2つの機械的に安定である支持体に接続された少なくとも1つのつりげたであって、ここで、該けたは、1つ以上の微小流体チャネルを含み、そしてそれぞれの微小流体チャネルは、該被分析物に結合するかまたは該被分析物と反応する少なくとも1つの化学種を有する、つりげた;および
b)該被分析物の結合または反応の際の1つ以上のけたの変化を測定するための1つ以上の検出器
を備える、装置。
【請求項2】
前記化学種が、前記被分析物に結合する捕捉リガンドである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記1つ以上のけたが共振しており、前記検出器が該けたの共振周波数の変化を測定する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記捕捉リガンドが、前記微小流体チャネルの内表面に結合される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記微小流体チャネル中にゲルをさらに含み、前記捕捉リガンドが該ゲルに結合される、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記けたが2つの微小流体チャネルを有し、これらが、重合されたゲルを含む領域で一緒になり、その後、該ゲルから下流に分かれる、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記被分析物が、流体の流れから圧力によって前記ゲルに運ばれる、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記被分析物が、電気泳動によって前記ゲルに運ばれる、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
それぞれのけたの共振が一対の電極によって駆動される、請求項3に記載の装置。
【請求項10】
前記電極対の電極の一方が全てのけたに共通であり、該電極対の他方の電極が、それぞれのけたについて別々にアドレス可能である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記電極が金属であり、金、ニッケル、白金、アルミニウム、銅、アンチモン、スズ、インジウム、クロム、チタン、およびそれらの合金からなる群より独立して選択される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記電極が金である、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記共通の電極が前記それぞれのけたと接触している、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
微小流体チャネル中の溶液が電解質溶液であり、該電解質溶液が共通の電極である、請求項10に記載の装置。
【請求項15】
1つ以上の検出器が1つ以上のコンデンサーである、請求項3に記載の装置。
【請求項16】
駆動電極もまた容量検出器として使用される、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
それぞれの容量検出器の2つのコンデンサー平板の一方が、前記けたの表面と接触している、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記検出器が光てこまたはレーザー振動計である、請求項3に記載の装置。
【請求項19】
前記捕捉リガンドが核酸である、請求項3に記載の装置。
【請求項20】
前記捕捉リガンドが一本鎖DNAである、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記捕捉リガンドが二本鎖DNAである、請求項19に記載の装置。
【請求項22】
前記捕捉リガンドがタンパク質、ペプチド、またはタンパク質核酸(PNA)である、請求項3に記載の装置。
【請求項23】
前記捕捉リガンドが抗体または抗体断片である、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記捕捉リガンドが抗原である、請求項3に記載の装置。
【請求項25】
前記捕捉リガンドがレクチンである、請求項22に記載の装置。
【請求項26】
前記捕捉リガンドが炭水化物である、請求項3に記載の装置。
【請求項27】
前記捕捉リガンドが糖残基である、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記検出器が微小流体チャネルの伝導率を測定する、請求項2に記載の装置。
【請求項29】
前記検出器が前記けたの変形を測定する、請求項2に記載の装置。
【請求項30】
前記捕捉リガンドが前記微小流体チャネルの内表面に結合され、該微小流体チャネルの一方の側で、反対側よりも捕捉リガンドの濃度が実質的に高い、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記1つ以上の検出器が1つ以上のコンデンサーである、請求項29に記載の装置。
【請求項32】
それぞれの容量検出器の2つのコンデンサー平板の一方が、前記けたの表面と接触している、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記検出器が光てこである、請求項29に記載の装置。
【請求項34】
前記捕捉リガンドが核酸である、請求項29に記載の装置。
【請求項35】
前記捕捉リガンドが一本鎖DNAである、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
前記捕捉リガンドが二本鎖DNAである、請求項34に記載の装置。
【請求項37】
前記捕捉リガンドがタンパク質、ペプチド、またはタンパク質核酸(PNA)である、請求項29に記載の装置。
【請求項38】
前記捕捉リガンドが抗体または抗体断片である、請求項37に記載の装置。
【請求項39】
前記捕捉リガンドが抗原である、請求項29に記載の装置。
【請求項40】
前記捕捉リガンドがレクチンである、請求項29に記載の装置。
【請求項41】
前記捕捉リガンドが炭水化物である、請求項40に記載の装置。
【請求項42】
前記捕捉リガンドが糖残基である、請求項41に記載の装置。
【請求項43】
前記1つ以上の微小流体チャネルの深さが、約100nmと約3000nmとの間の範囲にある、請求項1に記載の装置。
【請求項44】
前記微小流体チャネルの壁が、約100nmと約1200nmとの間の範囲の厚みを有する、請求項43に記載の装置。
【請求項45】
前記微小流体チャネルへの入口が、約10μmと約100μmとの間の範囲の深さを有する試料流体チャネルに接続される、請求項44に記載の装置。
【請求項46】
前記けたが低圧環境でつられる、請求項1に記載の装置。
【請求項47】
被分析物を検出するか、または被分析物の特性を測定するための装置であって、以下:
a)1つ以上の微小流体チャネルを含む少なくとも1つのつりげたを有するデバイス構造であって、ここで、それぞれの微小流体チャネルが、該被分析物に結合するかまたは該被分析物と反応する少なくとも1つの化学種を有する、デバイス構造;および
b)少なくとも1つの該微小流体チャネルの入口に接続された試料流体チャネルであって、ここで、該試料流体チャネルは、該微小流体チャネルよりも実質的に大きい深さを有する、試料流体チャネル
を備える、装置。
【請求項48】
前記装置が、デバイス領域をカバーするパッケージング構造を有する微小電気機械システム(MEMS)である、請求項47に記載の装置。
【請求項49】
前記微小流体チャネルのそれぞれが、約100nmと約3000nmとの間の範囲の深さを有し、前記試料流体チャネルのそれぞれが、約10μmと100μmとの間の範囲の深さを有する、請求項48に記載の装置。
【請求項50】
前記微小流体チャネルの壁が、約100nmと約1200nmとの間の範囲の厚みを有する、請求項49に記載の装置。
【請求項51】
前記試料流体チャネルが、パッケージング構造の中でパターニングされている、請求項49に記載の装置。
【請求項52】
前記化学種が、前記被分析物に結合する捕捉リガンドである、請求項51に記載の装置。
【請求項53】
1つ以上の検出器をさらに含む、請求項52に記載の装置。
【請求項54】
前記1つ以上のけたが共振しており、前記検出器がけたの共振周波数の変化を測定する、請求項53に記載の装置。
【請求項55】
前記つりげたがカンチレバーである、請求項54に記載の装置。
【請求項56】
前記つりげたが機械的に安定である2つの支持体に接続される、請求項54に記載の装置。
【請求項57】
前記捕捉リガンドが微小流体チャネルの内表面に結合される、請求項54に記載の装置。
【請求項58】
前記微小流体チャネル中にゲルをさらに含み、前記捕捉リガンドが該ゲルに結合される、請求項54に記載の装置。
【請求項59】
前記けたが2つの微小流体チャネルを有し、これらが、重合されたゲルを含む領域で一緒になり、その後、該ゲルから下流に分かれ、該ゲルが捕捉リガンドを含む、請求項56に記載の装置。
【請求項60】
前記被分析物が、流体の流れから圧力によって前記ゲルに運ばれる、請求項59に記載の装置。
【請求項61】
前記被分析物が、電気泳動によって前記ゲルに運ばれる、請求項59に記載の装置。
【請求項62】
それぞれのけたの共振が一対の電極によって駆動される、請求項54に記載の装置。
【請求項63】
前記電極対の電極の一方が全てのけたに共通であり、該電極対の他方の電極が、それぞれのけたについて別々にアドレス可能である、請求項62に記載の装置。
【請求項64】
前記電極が金属であり、金、ニッケル、白金、アルミニウム、銅、アンチモン、スズ、インジウム、クロム、チタン、およびそれらの合金からなる群より別々に選択される、請求項63に記載の装置。
【請求項65】
前記電極が金である、請求項64に記載の装置。
【請求項66】
前記パッケージング構造が前記別々にアドレス可能な電極を含む、請求項63に記載の装置。
【請求項67】
前記共通の電極がそれぞれのけたと接触している、請求項66に記載の装置。
【請求項68】
前記微小流体チャネル中の溶液が電解質溶液であり、該電解質溶液が共通の電極である、請求項66に記載の装置。
【請求項69】
前記1つ以上の検出器が1つ以上のコンデンサーである、請求項54に記載の装置。
【請求項70】
駆動電極もまた容量検出器として使用される、請求項69に記載の装置。
【請求項71】
前記2つのコンデンサー平板の一方が、前記けたの表面と接触している、請求項70に記載の装置。
【請求項72】
前記パッケージング構造が、ガラス、セラミック、プラスチック、または回路基板、およびシリコンチップからなる群より選択される材料から作られた基板を含む、請求項71に記載の装置。
【請求項73】
前記1つ以上の検出器が光てこ検出器またはレーザー振動計である、請求項54に記載の装置。
【請求項74】
前記基板が、ポリジメチルシロキサンガスケットを介してMEMSに接合される、請求項72または73に記載の装置。
【請求項75】
前記微小流体チャネルと前記試料流体チャネルとの間の接続が、ポリジメチルシロキサンガスケットにパターニングされる、請求項74に記載の装置。
【請求項76】
前記共通の電極が、ガスケットに結合されるMEMSの表面上のパターニングされた金属層である、請求項77に記載の装置。
【請求項77】
前記基板がガラスまたはシリコンチップであり、陽極接合によってMEMSに接合される、請求項72または73に記載の装置。
【請求項78】
前記微小流体チャネルと前記試料流体チャネルとの間の接続が、基板にパターニングされる、請求項77に記載の装置。
【請求項79】
前記共通の電極が、基板に接合されるMEMSの表面上のパターニングされた金属層である、請求項78に記載の装置。
【請求項80】
前記基板が、パターニングされた金属層を介してMEMSに接合される、請求項72または73に記載の装置。
【請求項81】
前記微小流体チャネルと前記試料流体チャネルとの間の接続が、前記金属層にパターニングされる、請求項80に記載の装置。
【請求項82】
前記捕捉リガンドが核酸である、請求項53に記載の装置。
【請求項83】
前記捕捉リガンドが一本鎖DNAである、請求項82に記載の装置。
【請求項84】
前記捕捉リガンドが二本鎖DNAである、請求項82に記載の装置。
【請求項85】
前記捕捉リガンドがタンパク質、ペプチド、またはタンパク質核酸(PNA)である、請求項53に記載の装置。
【請求項86】
前記捕捉リガンドが抗体または抗体断片である、請求項85に記載の装置。
【請求項87】
前記捕捉リガンドが抗原である、請求項53に記載の装置。
【請求項88】
前記捕捉リガンドがレクチンである、請求項53に記載の装置。
【請求項89】
前記捕捉リガンドが炭水化物である、請求項53に記載の装置。
【請求項90】
前記捕捉リガンドが糖残基である、請求項89に記載の装置。
【請求項91】
前記検出器がけたの変形が測定する、請求項53に記載の装置。
【請求項92】
前記捕捉リガンドが微小流体チャネルの内表面に結合される、請求項53に記載の装置。
【請求項93】
微小流体チャネルの一方の側で、反対側よりも捕捉リガンドの濃度が実質的に高い、請求項92に記載の装置。
【請求項94】
前記けたの表面が、該けたの熱膨張係数とは異なる熱膨張係数を有する物質でコーティングされる、請求項92に記載の装置。
【請求項95】
前記1つ以上の検出器が1つ以上のコンデンサーである、請求項93または94に記載の装置。
【請求項96】
前記パッケージング構造が、それぞれのコンデンサーのコンデンサー平板の一方を含み、他方のコンデンサー平板は前記つりげたの表面と接触している、請求項95に記載の装置。
【請求項97】
前記1つ以上の検出器が光てこ検出器である、請求項9に記載の装置。
【請求項98】
前記捕捉リガンドが核酸である、請求項92に記載の装置。
【請求項99】
前記捕捉リガンドが一本鎖DNAである、請求項98に記載の装置。
【請求項100】
前記捕捉リガンドが二本鎖DNAである、請求項98に記載の装置。
【請求項101】
前記捕捉リガンドがタンパク質またはペプチドである、請求項92に記載の装置。
【請求項102】
前記捕捉リガンドが抗体または抗体断片である、請求項101に記載の装置。
【請求項103】
前記捕捉リガンドが抗原である、請求項92に記載の装置。
【請求項104】
前記捕捉リガンドがレクチンである、請求項92に記載の装置。
【請求項105】
前記捕捉リガンドが炭水化物である、請求項92に記載の装置。
【請求項106】
前記捕捉リガンドが糖残基である、請求項105に記載の装置。
【請求項107】
1つより多くの請求項48に記載の装置を含む、半導体ウエハー。
【請求項108】
入口と出口を有する機能的微小流体チャネルを製造する方法であって、以下の工程:
a)1つ以上の溝を有する半導体ウエハーに第1のチャネル層を堆積させる工程;
b)該第1のチャネル層に犠牲層を堆積させる工程;
c)該第1のチャネル層まで平坦化によって犠牲層を除去し、それによって、溝の中に犠牲層を有する第1のチャネル層の平坦な表面を露出させる工程;
d)該平坦な表面に第2のチャネル層を堆積させる工程;
e)1つ以上の溝に接続された第2のチャネル層に1つ以上の穴を形成させる工程;
f)エッチング加工によって溝から犠牲層またはその一部を除去し、それによって微小流体チャネルを形成させる工程;ならびに、
g)該微小流体チャネルの内部を捕捉リガンドで機能化させる工程、
を包含する、方法。
【請求項109】
前記半導体ウエハーの一部が、微小流体チャネルの下まで除去され、それによって、該微小流体チャネルを含むつりげたが形成される、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記半導体ウエハーの一部が、前記第1のチャネル層に達するまで前記微小流体チャネルの下方の裏側から該ウエハーをエッチング加工することによって除去される、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
前記半導体ウエハーの裏側の一部が、溝からの犠牲層の除去と同時に除去される、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
a)半導体ウエハーがシリコンウエハーであり;
b)前記第1および第2のチャネル層が窒化ケイ素または二酸化ケイ素であり;そして
c)前記犠牲層がポリシリコンである、
請求項108に記載の方法。
【請求項113】
前記犠牲層の一部をドープする工程をさらに包含し、該犠牲層のドープされた部分がエッチング加工後にチャネルの中に残る、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記第1および第2のチャネル層がドープされたポリシリコンである、請求項108に記載の方法。
【請求項115】
前記微小流体チャネルが約100nmと約3000nmとの間の範囲の深さを有する、請求項108に記載の方法。
【請求項116】
前記第1および第2のチャネル層が、約100nmと約1200nmとの間の範囲の厚みを有する、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
前記微小流体チャネルの内部を機能化させる工程が、捕捉リガンドを該微小流体チャネルの内表面に結合させる工程を包含する、請求項108に記載の方法。
【請求項118】
前記微小流体チャネルの内部を捕捉リガンドで機能化させる工程が、以下の工程:
a)該微小流体チャネルの表面をシランリンカーと接触させ、それによって、該シランリンカーを該微小流体チャネルの内表面に結合させる工程;および
b)該捕捉リガンドを該シランリンカーと反応させ、それによって、該捕捉リガンドを該微小流体チャネルの内表面に結合させる工程
を包含する、請求項112または114に記載の方法。
【請求項119】
前記シランリンカーが以下の構造式:
【化1】
式中:
R1、R2、およびR3はそれぞれ独立して、−H、アルキル、またはアリールアルキルであり;
Lは、アルキレン、シクロアルキレン、ヘテロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、糖残基、またはアリールアルキレンであり;そして
Xは、−NHR、−OH、−SH、ハロであり、ここで、Rは、−H、アルキル、アリールアルキル、またはアリールである、
によって表され得る、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記捕捉リガンドが、核酸、一本鎖DNA、二本鎖DNA、タンパク質核酸(PNA)、タンパク質、ペプチド、抗体、抗体断片、抗原、レクチン、炭水化物、および糖残基からなる群より選択される、請求項118に記載の方法。
【請求項121】
前記微小流体チャネルの内部を機能化させる工程が、該微小流体チャネルの内部にゲルを重合させる工程を包含し、該ゲルが1つ以上の捕捉リガンドを含む、請求項108に記載の方法。
【請求項122】
前記ゲルの重合が放射線照射によって開始される、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
前記捕捉リガンドが、核酸、一本鎖DNA、二本鎖DNA、タンパク質核酸(PNA)、タンパク質、ペプチド、抗体、抗体断片、抗原、レクチン、炭水化物、および糖残基からなる群より選択される、請求項121に記載の方法。
【請求項124】
前記ポリシリコンが、KOHの水溶液でのエッチング加工によって溝から除去される、請求項108に記載の方法。
【請求項125】
前記ポリシリコン層が、化学機械研磨技術によって平坦化される、請求項108に記載の方法。
【請求項126】
前記第1および第2の窒化ケイ素層が低応力層であり、低圧化学蒸着法を使用して堆積される、請求項108に記載の方法。
【請求項127】
前記第1および第2の窒化ケイ素層が、約100nmと約1200nmとの間の範囲の厚みを有する、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
半導体ウエハーに形成された1つ以上のつり式微小流体チャネルを含むデバイスをパッケージングする方法であって、以下の工程:
a)1つ以上の別々にアドレス可能な電極で基板をパターニングする工程であって、該電極が該デバイスのそれぞれの微小流体チャネルと整列され得る、工程;
b)1つ以上の流体チャネルと、1つ以上の開口部を有するポリ(ジメチルシロキサン)ガスケットを準備する工程;
c)基板にガスケットを接合させる工程;
d)該デバイスの表面に共通の電極をパターニングする工程であって、該共通の電極がそれぞれの微小流体チャネルに形成される、工程;
e)該ガスケットを該デバイスに接合させる工程であって、該ガスケットの流体チャネルが該デバイスの微小流体チャネルの入口および出口に接続され、該ガスケットのそれぞれの開口部が1つ以上のつり式微小流体チャネルと整列される工程
を包含する、方法。
【請求項129】
前記ガスケットの流体チャネルに接続された基板に1つ以上の穴を形成する工程をさらに包含する、請求項128に記載の方法。
【請求項130】
前記ガスケットがプラズマ接合によって前記基板に接合される、請求項128に記載の方法。
【請求項131】
前記ガスケットがプラズマ接合によって前記デバイスに接合される、請求項130に記載の方法。
【請求項132】
前記ガスケットが約10μmと100μmとの間の範囲の厚みを有する、請求項128に記載の方法。
【請求項133】
前記デバイスの微小流体チャネルが約100nmと約3000nmとの間の範囲の深さを有する、請求項128に記載の方法。
【請求項134】
前記微小流体チャネルの壁が、約100nmと約1200nmとの間の範囲の厚みを有する、請求項133に記載の方法。
【請求項135】
前記ガスケットの流体チャネルが、約10μmと約100μmとの間の範囲の深さを有する、請求項134に記載の方法。
【請求項136】
前記共通の電極および前記別々にアドレス可能な電極が、金、ニッケル、白金、アルミニウム、銅、アンチモン、スズ、インジウム、クロム、チタン、およびそれらの合金からなる群より別々に選択される材料から作られる、請求項128に記載の方法。
【請求項137】
前記共通の電極および前記別々にアドレス可能な電極の両方が金から作られる、請求項136に記載の方法。
【請求項138】
前記基板が、セラミック、ガラス、プラスチック、回路基板、およびシリコンチップからなる群より選択される材料から作られる、請求項128に記載の方法。
【請求項139】
前記基板がガラスである、請求項138に記載の方法。
【請求項140】
半導体ウエハーに形成された1つ以上のつり式微小流体チャネルを含むデバイスをパッケージングする方法であって、以下の工程:
a)基板に1つ以上の流体チャネルと、1つ以上の空洞とを形成させる工程であって、ここで、該空洞は該微小流体チャネルと整列され得る、工程;
b)1つ以上の別々にアドレス可能な電極で該基板の空洞をパターニングし、それによって、該デバイスのそれぞれの微小流体チャネルと整列され得る電極を形成させる工程;
c)該デバイスの表面に共通の電極をパターニングする工程であって、ここで、該共通の電極がそれぞれの微小流体チャネルに形成される、工程;
d)該基板を該デバイスに接合させる工程であって、ここで、該基板の流体チャネルが該デバイスの微小流体チャネルの入口および出口と接続され、該基板のそれぞれの溝が1つ以上のつり式微小流体チャネルと整列される、工程
を包含する、方法。
【請求項141】
前記基板の流体チャネルに接続される1つ以上の穴を基板に形成する工程をさらに包含する、請求項140に記載の方法。
【請求項142】
前記基板の流体チャネルに接続される1つ以上の開口部を半導体ウエハーにエッチング加工する工程をさらに包含する、請求項140に記載の方法。
【請求項143】
前記基板が、セラミック、ガラス、プラスチック、およびシリコンチップからなる群より選択される材料から作られる、請求項140に記載の方法。
【請求項144】
前記基板がガラスまたはシリコンチップであり、前記流体チャネルおよび1つ以上の空洞が基板にエッチング加工される、請求項143に記載の方法。
【請求項145】
前記基板がガラスまたはシリコンチップであり、前記デバイスに陽極接合される、請求項144に記載の方法。
【請求項146】
前記デバイスの微小流体チャネルが、約100nmと約3000nmとの間の深さを有する、請求項140に記載の方法。
【請求項147】
前記微小流体チャネルの壁が、約100nmと約1200nmとの間の範囲の厚みを有する、請求項146に記載の方法。
【請求項148】
前記基板の流体チャネルが、約10μmと約100μmとの間の深さを有する、請求項147に記載の方法。
【請求項149】
前記共通の電極および前記別々にアドレス可能な電極が、金、ニッケル、白金、アルミニウム、銅、アンチモン、スズ、インジウム、クロム、チタン、およびそれらの合金からなる群より別々に選択される材料から作られる、請求項140に記載の方法。
【請求項150】
前記共通の電極および前記別々にアドレス可能な電極の両方が金から作られる、請求項149に記載の方法。
【請求項151】
半導体ウエハーに形成された1つ以上のつり式微小流体チャネルを含むデバイスをパッケージングする方法であって、以下の工程:
a)基板の表面に1つ以上の別々にアドレス可能な電極をパターニングする工程;
b)該パターニングされた基板の表面にフォトレジストを形成させる工程;
c)マスクを通じて該フォトレジストに放射線を照射し、それによって、該基板の予め決定された領域からフォトレジストを除去する工程;
d)フォトレジストが除去された該基板の領域に金属を電気メッキし、それによって、1つ以上の微小流体チャネルを有する壁、および1つ以上の空洞を有する壁を形成させる工程;
e)該フォトレジストの残りを除去する工程;
f)該微小流体チャネルのそれぞれについての入口と出口を有する該デバイスの表面に共通の電極をパターニングする工程;
g)該共通の電極に対して電気メッキした金属を接合させる工程であって、ここで、該電気メッキされた金属壁によって形成された流体チャネルが、該デバイスの微小流体チャネルの入口と出口とに接続され、そして該電気メッキされた金属壁によって形成されたそれぞれの空洞は、1つ以上のつり式微小流体チャネルと整列される、工程
を包含する、方法。
【請求項152】
前記流体チャネルに接続する1つ以上の穴を基板に形成する工程をさらに包含する、請求項151に記載の方法。
【請求項153】
前記流体チャネルに接続する1つ以上の開口部を半導体ウエハーにエッチング加工する工程をさらに包含する、請求項151に記載の方法。
【請求項154】
前記基板が、セラミック、ガラス、プラスチック、およびシリコンチップからなる群より選択される材料から作られる、請求項151に記載の方法。
【請求項155】
前記基板がガラスである、請求項154に記載の方法。
【請求項156】
前記電気メッキされた金属が共通の電極にはんだ付けされる、請求項151に記載の方法。
【請求項157】
使用されるはんだ付け物質が、スズ、鉛、金、またはそれらの合金である、請求項156に記載の方法。
【請求項158】
前記デバイスの微小流体チャネルが、約100nmと約3000nmとの間の深さを有する、請求項151に記載の方法。
【請求項159】
前記微小流体チャネルの壁が、約100nmと約1200nmとの間の範囲の厚みを有する、請求項158に記載の方法。
【請求項160】
前記流体チャネルが、約10μmと約100μmとの間の深さを有する、請求項151に記載の方法。
【請求項1】
被分析物を検出するか、または被分析物の特性を測定するための装置であって、以下:
a)2つの機械的に安定である支持体に接続された少なくとも1つのつりげたであって、ここで、該けたは、1つ以上の微小流体チャネルを含み、そしてそれぞれの微小流体チャネルは、該被分析物に結合するかまたは該被分析物と反応する少なくとも1つの化学種を有する、つりげた;および
b)該被分析物の結合または反応の際の1つ以上のけたの変化を測定するための1つ以上の検出器
を備える、装置。
【請求項2】
前記化学種が、前記被分析物に結合する捕捉リガンドである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記1つ以上のけたが共振しており、前記検出器が該けたの共振周波数の変化を測定する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記捕捉リガンドが、前記微小流体チャネルの内表面に結合される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記微小流体チャネル中にゲルをさらに含み、前記捕捉リガンドが該ゲルに結合される、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記けたが2つの微小流体チャネルを有し、これらが、重合されたゲルを含む領域で一緒になり、その後、該ゲルから下流に分かれる、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記被分析物が、流体の流れから圧力によって前記ゲルに運ばれる、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記被分析物が、電気泳動によって前記ゲルに運ばれる、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
それぞれのけたの共振が一対の電極によって駆動される、請求項3に記載の装置。
【請求項10】
前記電極対の電極の一方が全てのけたに共通であり、該電極対の他方の電極が、それぞれのけたについて別々にアドレス可能である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記電極が金属であり、金、ニッケル、白金、アルミニウム、銅、アンチモン、スズ、インジウム、クロム、チタン、およびそれらの合金からなる群より独立して選択される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記電極が金である、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記共通の電極が前記それぞれのけたと接触している、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
微小流体チャネル中の溶液が電解質溶液であり、該電解質溶液が共通の電極である、請求項10に記載の装置。
【請求項15】
1つ以上の検出器が1つ以上のコンデンサーである、請求項3に記載の装置。
【請求項16】
駆動電極もまた容量検出器として使用される、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
それぞれの容量検出器の2つのコンデンサー平板の一方が、前記けたの表面と接触している、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記検出器が光てこまたはレーザー振動計である、請求項3に記載の装置。
【請求項19】
前記捕捉リガンドが核酸である、請求項3に記載の装置。
【請求項20】
前記捕捉リガンドが一本鎖DNAである、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記捕捉リガンドが二本鎖DNAである、請求項19に記載の装置。
【請求項22】
前記捕捉リガンドがタンパク質、ペプチド、またはタンパク質核酸(PNA)である、請求項3に記載の装置。
【請求項23】
前記捕捉リガンドが抗体または抗体断片である、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記捕捉リガンドが抗原である、請求項3に記載の装置。
【請求項25】
前記捕捉リガンドがレクチンである、請求項22に記載の装置。
【請求項26】
前記捕捉リガンドが炭水化物である、請求項3に記載の装置。
【請求項27】
前記捕捉リガンドが糖残基である、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記検出器が微小流体チャネルの伝導率を測定する、請求項2に記載の装置。
【請求項29】
前記検出器が前記けたの変形を測定する、請求項2に記載の装置。
【請求項30】
前記捕捉リガンドが前記微小流体チャネルの内表面に結合され、該微小流体チャネルの一方の側で、反対側よりも捕捉リガンドの濃度が実質的に高い、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記1つ以上の検出器が1つ以上のコンデンサーである、請求項29に記載の装置。
【請求項32】
それぞれの容量検出器の2つのコンデンサー平板の一方が、前記けたの表面と接触している、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記検出器が光てこである、請求項29に記載の装置。
【請求項34】
前記捕捉リガンドが核酸である、請求項29に記載の装置。
【請求項35】
前記捕捉リガンドが一本鎖DNAである、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
前記捕捉リガンドが二本鎖DNAである、請求項34に記載の装置。
【請求項37】
前記捕捉リガンドがタンパク質、ペプチド、またはタンパク質核酸(PNA)である、請求項29に記載の装置。
【請求項38】
前記捕捉リガンドが抗体または抗体断片である、請求項37に記載の装置。
【請求項39】
前記捕捉リガンドが抗原である、請求項29に記載の装置。
【請求項40】
前記捕捉リガンドがレクチンである、請求項29に記載の装置。
【請求項41】
前記捕捉リガンドが炭水化物である、請求項40に記載の装置。
【請求項42】
前記捕捉リガンドが糖残基である、請求項41に記載の装置。
【請求項43】
前記1つ以上の微小流体チャネルの深さが、約100nmと約3000nmとの間の範囲にある、請求項1に記載の装置。
【請求項44】
前記微小流体チャネルの壁が、約100nmと約1200nmとの間の範囲の厚みを有する、請求項43に記載の装置。
【請求項45】
前記微小流体チャネルへの入口が、約10μmと約100μmとの間の範囲の深さを有する試料流体チャネルに接続される、請求項44に記載の装置。
【請求項46】
前記けたが低圧環境でつられる、請求項1に記載の装置。
【請求項47】
被分析物を検出するか、または被分析物の特性を測定するための装置であって、以下:
a)1つ以上の微小流体チャネルを含む少なくとも1つのつりげたを有するデバイス構造であって、ここで、それぞれの微小流体チャネルが、該被分析物に結合するかまたは該被分析物と反応する少なくとも1つの化学種を有する、デバイス構造;および
b)少なくとも1つの該微小流体チャネルの入口に接続された試料流体チャネルであって、ここで、該試料流体チャネルは、該微小流体チャネルよりも実質的に大きい深さを有する、試料流体チャネル
を備える、装置。
【請求項48】
前記装置が、デバイス領域をカバーするパッケージング構造を有する微小電気機械システム(MEMS)である、請求項47に記載の装置。
【請求項49】
前記微小流体チャネルのそれぞれが、約100nmと約3000nmとの間の範囲の深さを有し、前記試料流体チャネルのそれぞれが、約10μmと100μmとの間の範囲の深さを有する、請求項48に記載の装置。
【請求項50】
前記微小流体チャネルの壁が、約100nmと約1200nmとの間の範囲の厚みを有する、請求項49に記載の装置。
【請求項51】
前記試料流体チャネルが、パッケージング構造の中でパターニングされている、請求項49に記載の装置。
【請求項52】
前記化学種が、前記被分析物に結合する捕捉リガンドである、請求項51に記載の装置。
【請求項53】
1つ以上の検出器をさらに含む、請求項52に記載の装置。
【請求項54】
前記1つ以上のけたが共振しており、前記検出器がけたの共振周波数の変化を測定する、請求項53に記載の装置。
【請求項55】
前記つりげたがカンチレバーである、請求項54に記載の装置。
【請求項56】
前記つりげたが機械的に安定である2つの支持体に接続される、請求項54に記載の装置。
【請求項57】
前記捕捉リガンドが微小流体チャネルの内表面に結合される、請求項54に記載の装置。
【請求項58】
前記微小流体チャネル中にゲルをさらに含み、前記捕捉リガンドが該ゲルに結合される、請求項54に記載の装置。
【請求項59】
前記けたが2つの微小流体チャネルを有し、これらが、重合されたゲルを含む領域で一緒になり、その後、該ゲルから下流に分かれ、該ゲルが捕捉リガンドを含む、請求項56に記載の装置。
【請求項60】
前記被分析物が、流体の流れから圧力によって前記ゲルに運ばれる、請求項59に記載の装置。
【請求項61】
前記被分析物が、電気泳動によって前記ゲルに運ばれる、請求項59に記載の装置。
【請求項62】
それぞれのけたの共振が一対の電極によって駆動される、請求項54に記載の装置。
【請求項63】
前記電極対の電極の一方が全てのけたに共通であり、該電極対の他方の電極が、それぞれのけたについて別々にアドレス可能である、請求項62に記載の装置。
【請求項64】
前記電極が金属であり、金、ニッケル、白金、アルミニウム、銅、アンチモン、スズ、インジウム、クロム、チタン、およびそれらの合金からなる群より別々に選択される、請求項63に記載の装置。
【請求項65】
前記電極が金である、請求項64に記載の装置。
【請求項66】
前記パッケージング構造が前記別々にアドレス可能な電極を含む、請求項63に記載の装置。
【請求項67】
前記共通の電極がそれぞれのけたと接触している、請求項66に記載の装置。
【請求項68】
前記微小流体チャネル中の溶液が電解質溶液であり、該電解質溶液が共通の電極である、請求項66に記載の装置。
【請求項69】
前記1つ以上の検出器が1つ以上のコンデンサーである、請求項54に記載の装置。
【請求項70】
駆動電極もまた容量検出器として使用される、請求項69に記載の装置。
【請求項71】
前記2つのコンデンサー平板の一方が、前記けたの表面と接触している、請求項70に記載の装置。
【請求項72】
前記パッケージング構造が、ガラス、セラミック、プラスチック、または回路基板、およびシリコンチップからなる群より選択される材料から作られた基板を含む、請求項71に記載の装置。
【請求項73】
前記1つ以上の検出器が光てこ検出器またはレーザー振動計である、請求項54に記載の装置。
【請求項74】
前記基板が、ポリジメチルシロキサンガスケットを介してMEMSに接合される、請求項72または73に記載の装置。
【請求項75】
前記微小流体チャネルと前記試料流体チャネルとの間の接続が、ポリジメチルシロキサンガスケットにパターニングされる、請求項74に記載の装置。
【請求項76】
前記共通の電極が、ガスケットに結合されるMEMSの表面上のパターニングされた金属層である、請求項77に記載の装置。
【請求項77】
前記基板がガラスまたはシリコンチップであり、陽極接合によってMEMSに接合される、請求項72または73に記載の装置。
【請求項78】
前記微小流体チャネルと前記試料流体チャネルとの間の接続が、基板にパターニングされる、請求項77に記載の装置。
【請求項79】
前記共通の電極が、基板に接合されるMEMSの表面上のパターニングされた金属層である、請求項78に記載の装置。
【請求項80】
前記基板が、パターニングされた金属層を介してMEMSに接合される、請求項72または73に記載の装置。
【請求項81】
前記微小流体チャネルと前記試料流体チャネルとの間の接続が、前記金属層にパターニングされる、請求項80に記載の装置。
【請求項82】
前記捕捉リガンドが核酸である、請求項53に記載の装置。
【請求項83】
前記捕捉リガンドが一本鎖DNAである、請求項82に記載の装置。
【請求項84】
前記捕捉リガンドが二本鎖DNAである、請求項82に記載の装置。
【請求項85】
前記捕捉リガンドがタンパク質、ペプチド、またはタンパク質核酸(PNA)である、請求項53に記載の装置。
【請求項86】
前記捕捉リガンドが抗体または抗体断片である、請求項85に記載の装置。
【請求項87】
前記捕捉リガンドが抗原である、請求項53に記載の装置。
【請求項88】
前記捕捉リガンドがレクチンである、請求項53に記載の装置。
【請求項89】
前記捕捉リガンドが炭水化物である、請求項53に記載の装置。
【請求項90】
前記捕捉リガンドが糖残基である、請求項89に記載の装置。
【請求項91】
前記検出器がけたの変形が測定する、請求項53に記載の装置。
【請求項92】
前記捕捉リガンドが微小流体チャネルの内表面に結合される、請求項53に記載の装置。
【請求項93】
微小流体チャネルの一方の側で、反対側よりも捕捉リガンドの濃度が実質的に高い、請求項92に記載の装置。
【請求項94】
前記けたの表面が、該けたの熱膨張係数とは異なる熱膨張係数を有する物質でコーティングされる、請求項92に記載の装置。
【請求項95】
前記1つ以上の検出器が1つ以上のコンデンサーである、請求項93または94に記載の装置。
【請求項96】
前記パッケージング構造が、それぞれのコンデンサーのコンデンサー平板の一方を含み、他方のコンデンサー平板は前記つりげたの表面と接触している、請求項95に記載の装置。
【請求項97】
前記1つ以上の検出器が光てこ検出器である、請求項9に記載の装置。
【請求項98】
前記捕捉リガンドが核酸である、請求項92に記載の装置。
【請求項99】
前記捕捉リガンドが一本鎖DNAである、請求項98に記載の装置。
【請求項100】
前記捕捉リガンドが二本鎖DNAである、請求項98に記載の装置。
【請求項101】
前記捕捉リガンドがタンパク質またはペプチドである、請求項92に記載の装置。
【請求項102】
前記捕捉リガンドが抗体または抗体断片である、請求項101に記載の装置。
【請求項103】
前記捕捉リガンドが抗原である、請求項92に記載の装置。
【請求項104】
前記捕捉リガンドがレクチンである、請求項92に記載の装置。
【請求項105】
前記捕捉リガンドが炭水化物である、請求項92に記載の装置。
【請求項106】
前記捕捉リガンドが糖残基である、請求項105に記載の装置。
【請求項107】
1つより多くの請求項48に記載の装置を含む、半導体ウエハー。
【請求項108】
入口と出口を有する機能的微小流体チャネルを製造する方法であって、以下の工程:
a)1つ以上の溝を有する半導体ウエハーに第1のチャネル層を堆積させる工程;
b)該第1のチャネル層に犠牲層を堆積させる工程;
c)該第1のチャネル層まで平坦化によって犠牲層を除去し、それによって、溝の中に犠牲層を有する第1のチャネル層の平坦な表面を露出させる工程;
d)該平坦な表面に第2のチャネル層を堆積させる工程;
e)1つ以上の溝に接続された第2のチャネル層に1つ以上の穴を形成させる工程;
f)エッチング加工によって溝から犠牲層またはその一部を除去し、それによって微小流体チャネルを形成させる工程;ならびに、
g)該微小流体チャネルの内部を捕捉リガンドで機能化させる工程、
を包含する、方法。
【請求項109】
前記半導体ウエハーの一部が、微小流体チャネルの下まで除去され、それによって、該微小流体チャネルを含むつりげたが形成される、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記半導体ウエハーの一部が、前記第1のチャネル層に達するまで前記微小流体チャネルの下方の裏側から該ウエハーをエッチング加工することによって除去される、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
前記半導体ウエハーの裏側の一部が、溝からの犠牲層の除去と同時に除去される、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
a)半導体ウエハーがシリコンウエハーであり;
b)前記第1および第2のチャネル層が窒化ケイ素または二酸化ケイ素であり;そして
c)前記犠牲層がポリシリコンである、
請求項108に記載の方法。
【請求項113】
前記犠牲層の一部をドープする工程をさらに包含し、該犠牲層のドープされた部分がエッチング加工後にチャネルの中に残る、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記第1および第2のチャネル層がドープされたポリシリコンである、請求項108に記載の方法。
【請求項115】
前記微小流体チャネルが約100nmと約3000nmとの間の範囲の深さを有する、請求項108に記載の方法。
【請求項116】
前記第1および第2のチャネル層が、約100nmと約1200nmとの間の範囲の厚みを有する、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
前記微小流体チャネルの内部を機能化させる工程が、捕捉リガンドを該微小流体チャネルの内表面に結合させる工程を包含する、請求項108に記載の方法。
【請求項118】
前記微小流体チャネルの内部を捕捉リガンドで機能化させる工程が、以下の工程:
a)該微小流体チャネルの表面をシランリンカーと接触させ、それによって、該シランリンカーを該微小流体チャネルの内表面に結合させる工程;および
b)該捕捉リガンドを該シランリンカーと反応させ、それによって、該捕捉リガンドを該微小流体チャネルの内表面に結合させる工程
を包含する、請求項112または114に記載の方法。
【請求項119】
前記シランリンカーが以下の構造式:
【化1】
式中:
R1、R2、およびR3はそれぞれ独立して、−H、アルキル、またはアリールアルキルであり;
Lは、アルキレン、シクロアルキレン、ヘテロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、糖残基、またはアリールアルキレンであり;そして
Xは、−NHR、−OH、−SH、ハロであり、ここで、Rは、−H、アルキル、アリールアルキル、またはアリールである、
によって表され得る、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記捕捉リガンドが、核酸、一本鎖DNA、二本鎖DNA、タンパク質核酸(PNA)、タンパク質、ペプチド、抗体、抗体断片、抗原、レクチン、炭水化物、および糖残基からなる群より選択される、請求項118に記載の方法。
【請求項121】
前記微小流体チャネルの内部を機能化させる工程が、該微小流体チャネルの内部にゲルを重合させる工程を包含し、該ゲルが1つ以上の捕捉リガンドを含む、請求項108に記載の方法。
【請求項122】
前記ゲルの重合が放射線照射によって開始される、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
前記捕捉リガンドが、核酸、一本鎖DNA、二本鎖DNA、タンパク質核酸(PNA)、タンパク質、ペプチド、抗体、抗体断片、抗原、レクチン、炭水化物、および糖残基からなる群より選択される、請求項121に記載の方法。
【請求項124】
前記ポリシリコンが、KOHの水溶液でのエッチング加工によって溝から除去される、請求項108に記載の方法。
【請求項125】
前記ポリシリコン層が、化学機械研磨技術によって平坦化される、請求項108に記載の方法。
【請求項126】
前記第1および第2の窒化ケイ素層が低応力層であり、低圧化学蒸着法を使用して堆積される、請求項108に記載の方法。
【請求項127】
前記第1および第2の窒化ケイ素層が、約100nmと約1200nmとの間の範囲の厚みを有する、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
半導体ウエハーに形成された1つ以上のつり式微小流体チャネルを含むデバイスをパッケージングする方法であって、以下の工程:
a)1つ以上の別々にアドレス可能な電極で基板をパターニングする工程であって、該電極が該デバイスのそれぞれの微小流体チャネルと整列され得る、工程;
b)1つ以上の流体チャネルと、1つ以上の開口部を有するポリ(ジメチルシロキサン)ガスケットを準備する工程;
c)基板にガスケットを接合させる工程;
d)該デバイスの表面に共通の電極をパターニングする工程であって、該共通の電極がそれぞれの微小流体チャネルに形成される、工程;
e)該ガスケットを該デバイスに接合させる工程であって、該ガスケットの流体チャネルが該デバイスの微小流体チャネルの入口および出口に接続され、該ガスケットのそれぞれの開口部が1つ以上のつり式微小流体チャネルと整列される工程
を包含する、方法。
【請求項129】
前記ガスケットの流体チャネルに接続された基板に1つ以上の穴を形成する工程をさらに包含する、請求項128に記載の方法。
【請求項130】
前記ガスケットがプラズマ接合によって前記基板に接合される、請求項128に記載の方法。
【請求項131】
前記ガスケットがプラズマ接合によって前記デバイスに接合される、請求項130に記載の方法。
【請求項132】
前記ガスケットが約10μmと100μmとの間の範囲の厚みを有する、請求項128に記載の方法。
【請求項133】
前記デバイスの微小流体チャネルが約100nmと約3000nmとの間の範囲の深さを有する、請求項128に記載の方法。
【請求項134】
前記微小流体チャネルの壁が、約100nmと約1200nmとの間の範囲の厚みを有する、請求項133に記載の方法。
【請求項135】
前記ガスケットの流体チャネルが、約10μmと約100μmとの間の範囲の深さを有する、請求項134に記載の方法。
【請求項136】
前記共通の電極および前記別々にアドレス可能な電極が、金、ニッケル、白金、アルミニウム、銅、アンチモン、スズ、インジウム、クロム、チタン、およびそれらの合金からなる群より別々に選択される材料から作られる、請求項128に記載の方法。
【請求項137】
前記共通の電極および前記別々にアドレス可能な電極の両方が金から作られる、請求項136に記載の方法。
【請求項138】
前記基板が、セラミック、ガラス、プラスチック、回路基板、およびシリコンチップからなる群より選択される材料から作られる、請求項128に記載の方法。
【請求項139】
前記基板がガラスである、請求項138に記載の方法。
【請求項140】
半導体ウエハーに形成された1つ以上のつり式微小流体チャネルを含むデバイスをパッケージングする方法であって、以下の工程:
a)基板に1つ以上の流体チャネルと、1つ以上の空洞とを形成させる工程であって、ここで、該空洞は該微小流体チャネルと整列され得る、工程;
b)1つ以上の別々にアドレス可能な電極で該基板の空洞をパターニングし、それによって、該デバイスのそれぞれの微小流体チャネルと整列され得る電極を形成させる工程;
c)該デバイスの表面に共通の電極をパターニングする工程であって、ここで、該共通の電極がそれぞれの微小流体チャネルに形成される、工程;
d)該基板を該デバイスに接合させる工程であって、ここで、該基板の流体チャネルが該デバイスの微小流体チャネルの入口および出口と接続され、該基板のそれぞれの溝が1つ以上のつり式微小流体チャネルと整列される、工程
を包含する、方法。
【請求項141】
前記基板の流体チャネルに接続される1つ以上の穴を基板に形成する工程をさらに包含する、請求項140に記載の方法。
【請求項142】
前記基板の流体チャネルに接続される1つ以上の開口部を半導体ウエハーにエッチング加工する工程をさらに包含する、請求項140に記載の方法。
【請求項143】
前記基板が、セラミック、ガラス、プラスチック、およびシリコンチップからなる群より選択される材料から作られる、請求項140に記載の方法。
【請求項144】
前記基板がガラスまたはシリコンチップであり、前記流体チャネルおよび1つ以上の空洞が基板にエッチング加工される、請求項143に記載の方法。
【請求項145】
前記基板がガラスまたはシリコンチップであり、前記デバイスに陽極接合される、請求項144に記載の方法。
【請求項146】
前記デバイスの微小流体チャネルが、約100nmと約3000nmとの間の深さを有する、請求項140に記載の方法。
【請求項147】
前記微小流体チャネルの壁が、約100nmと約1200nmとの間の範囲の厚みを有する、請求項146に記載の方法。
【請求項148】
前記基板の流体チャネルが、約10μmと約100μmとの間の深さを有する、請求項147に記載の方法。
【請求項149】
前記共通の電極および前記別々にアドレス可能な電極が、金、ニッケル、白金、アルミニウム、銅、アンチモン、スズ、インジウム、クロム、チタン、およびそれらの合金からなる群より別々に選択される材料から作られる、請求項140に記載の方法。
【請求項150】
前記共通の電極および前記別々にアドレス可能な電極の両方が金から作られる、請求項149に記載の方法。
【請求項151】
半導体ウエハーに形成された1つ以上のつり式微小流体チャネルを含むデバイスをパッケージングする方法であって、以下の工程:
a)基板の表面に1つ以上の別々にアドレス可能な電極をパターニングする工程;
b)該パターニングされた基板の表面にフォトレジストを形成させる工程;
c)マスクを通じて該フォトレジストに放射線を照射し、それによって、該基板の予め決定された領域からフォトレジストを除去する工程;
d)フォトレジストが除去された該基板の領域に金属を電気メッキし、それによって、1つ以上の微小流体チャネルを有する壁、および1つ以上の空洞を有する壁を形成させる工程;
e)該フォトレジストの残りを除去する工程;
f)該微小流体チャネルのそれぞれについての入口と出口を有する該デバイスの表面に共通の電極をパターニングする工程;
g)該共通の電極に対して電気メッキした金属を接合させる工程であって、ここで、該電気メッキされた金属壁によって形成された流体チャネルが、該デバイスの微小流体チャネルの入口と出口とに接続され、そして該電気メッキされた金属壁によって形成されたそれぞれの空洞は、1つ以上のつり式微小流体チャネルと整列される、工程
を包含する、方法。
【請求項152】
前記流体チャネルに接続する1つ以上の穴を基板に形成する工程をさらに包含する、請求項151に記載の方法。
【請求項153】
前記流体チャネルに接続する1つ以上の開口部を半導体ウエハーにエッチング加工する工程をさらに包含する、請求項151に記載の方法。
【請求項154】
前記基板が、セラミック、ガラス、プラスチック、およびシリコンチップからなる群より選択される材料から作られる、請求項151に記載の方法。
【請求項155】
前記基板がガラスである、請求項154に記載の方法。
【請求項156】
前記電気メッキされた金属が共通の電極にはんだ付けされる、請求項151に記載の方法。
【請求項157】
使用されるはんだ付け物質が、スズ、鉛、金、またはそれらの合金である、請求項156に記載の方法。
【請求項158】
前記デバイスの微小流体チャネルが、約100nmと約3000nmとの間の深さを有する、請求項151に記載の方法。
【請求項159】
前記微小流体チャネルの壁が、約100nmと約1200nmとの間の範囲の厚みを有する、請求項158に記載の方法。
【請求項160】
前記流体チャネルが、約10μmと約100μmとの間の深さを有する、請求項151に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図8】
【公表番号】特表2007−506977(P2007−506977A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528106(P2006−528106)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/030927
【国際公開番号】WO2005/029042
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(504350142)マサチューセッツ インスティチュート オブ テクノロジー (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/030927
【国際公開番号】WO2005/029042
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(504350142)マサチューセッツ インスティチュート オブ テクノロジー (8)
【Fターム(参考)】
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