説明

はつり作業車

【課題】高圧水噴射ノズル装置の対地姿勢を、路面条件に応じて修正できるようにし、所期の深さのはつりを行い得るようにすること。
【解決手段】はつり作業車であって、作業車の機体1の前部に、前記高圧水噴射ノズル装置4を保持する保持フレーム3を、機体1の左右方向軸心P1周りに前後傾動自在に搭載し、前記保持フレーム3を前後傾動させる前後傾動用油圧シリンダー5を設け、前記高圧水噴射ノズル装置4の対地姿勢を調節できるように構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面等の表面をはつり作業するところのはつり作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
道路の路面の傷みを補修する場合、例えば、表面の塗装層を剥離して新たな塗装層を敷設したり、或いは、所定の深さに表面を削り、しかる後に、表面補修の工事を行うものである。
このような作業の場合、表面を切削(はつり)することになる。こうしたはつり作業は、大別すると、ロータリーカッターを用いた機械的な切削か、高圧水を噴射する高圧水噴射ノズル装置を用いて行われる。
【0003】
何れの場合であっても、作業車は、はつり作業の反力をうけるもので、これを抑えるために、所定の重量を持つ必要があった。そして、高圧水噴射ノズル装置を用いる場合にあっては、これまでは、高圧水噴射ノズルの横移動(機体の左右方向)を、所定のストロ−クで行うように構成されているだけであった。
上記のはつりの技術として、次の文献を挙げることができる。
【特許文献1】特開2003−253619。
【特許文献2】特開2004−27624。
【特許文献3】特開2001−271310。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、ロータリーカッター或いは高圧水噴射ノズル装置(はつり装置)を、走行機体に搭載するに、それぞれ高さ調節を行うことができるが、はつり装置自体は、機体に一体的に搭載されていた。
そのため、機体の側が路面の凹凸に乗り上げたり、傾斜面にさしかかると、はつり装置の対地高さが変化し、予定された正確な切削深さを得られなくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、高圧水噴射ノズル装置の対地姿勢を、路面条件に応じて修正できるようにし、所期の深さのはつりを行い得るようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかるはつり作業車は、上記目的を達成するために、
自走機能を備え、高圧水噴射ノズル装置4を、機体1の左右方向に移動させて高圧水を噴射し、はつりを行うように構成されたはつり作業車であって、
作業車の機体1の前部に、前記高圧水噴射ノズル装置4を保持する保持フレーム3を、機体1の左右方向軸心P1周りに前後傾動自在に搭載し、
前記保持フレーム3を前後傾動させる前後傾動用油圧シリンダー5を設け、前記高圧水噴射ノズル装置4の対地姿勢を調節できるように構成してある、ことを特徴とする。
【0007】
本発明に言う高圧水噴射ノズル装置は、ノズル装置を作業車に搭載しているが、高圧ポンプは、この作業車に搭載していても、或いは、別途ポンプ車の方に備えるようにしていても良いものである。
本発明に言う機体の前部とは、走行方向を指すものではなく、機体本来の走行方向(運転席からみた前部)という意味であり、はつり作業においては、前、後進何れの方向でも作業を行うことが多々ある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、路面のはつり作業において、高圧水噴射ノズル装置の対地姿勢を、路面条件に応じて修正できるようにし、所期の深さのはつりを行い得る利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、前記高圧水噴射ノズル装置4の機体1の左右端側を上下に変位させるように、両端上下用油圧シリンダー7を設けてあるのが好ましい。
このように、前記高圧水噴射ノズル装置4の機体1の左右端側を上下に変位させることができるので、道路の左右側において凹凸乃至傾斜が存在した場合に、高圧水噴射ノズル装置4の左右端を上下に位置調整することで、所期設定のはつり深さに対応できる。
従って、はつり進行方向において、高圧水噴射ノズル装置4を、前傾度の調整と左右端の上下位置調整とによって、これまでには得られなかった、はつり作用を行い得る。
【0010】
また、前記高圧水噴射ノズル装置4には、機体1の左右方向において作動ストロ−クを調節するリミッタースイッチ6,6が、位置変更自在に設けられていることが好ましい。
このように、高圧水噴射ノズル装置4を、機体1の左右方向において、そのストローク位置を任意に設定できることとなり、はつり所要の幅を容易に設定できて、上記路面条件変化への対応を合せて、より優れたはつり作用を行い得る。
【実施例】
【0011】
本発明にかかるはつり作業車の好適実施例について、図1〜図3に基づいて以下詳述する。
このはつり作業車は、エンジンを搭載し、クローラ型の自走機能を備え、高圧水噴射ノズル装置4を、機体1の左右方向に移動させて高圧水を噴射し、はつりを行うように構成されたものである。このような高圧水噴射型のはつり作業車そのものは公知である。
【0012】
前記作業車の機体1の後部には、操縦者が立ち姿で乗るステップ1Aが設けられ、その前側に、操作パネル1Bと、操縦ハンドル1Cと、油圧シリンダーを操作する操作レバー1Dが設けられている。
前記機体1の中央には、動力源としてエンジンが搭載されている。そして、機体1の前部に、高圧水噴射ノズル装置4を保持する保持フレーム3を、機体1の左右方向軸心(横軸)P1周りに前後傾動自在に搭載してある。
【0013】
更に、前記保持フレーム3を前後傾動させる前後傾動用油圧シリンダー5が、機体1と該保持フレーム3との間に設けられ、該前後傾動用油圧シリンダー5の伸縮によって、前記高圧水噴射ノズル装置4を前後傾動させ、以って、高圧水噴射ノズル装置4の対地姿勢を調節できるように構成してある。前記前後傾動用油圧シリンダー5への油圧ポンプは、機体1に備えられている。
【0014】
また、前記高圧水噴射ノズル装置4の機体1の左右端側を上下に変位させるように、一対の両端上下用油圧シリンダー7を設けてある。その一方の両端上下用油圧シリンダー7が操作(伸縮)されれば、前記高圧水噴射ノズル装置4の一端が上昇又は下降し、他方の両端上下用油圧シリンダー7が操作されれば、前記高圧水噴射ノズル装置4の一端が上昇又は下降するように、保持フレーム3と、高圧水噴射ノズル装置4とを、機体1の左右方向で間隔を隔てて、一対の両端上下用油圧シリンダー7で夫々連結支持している。この際、両者の連結は、一対の両端上下用油圧シリンダー7の各上下端部において、機体1の前後方向の軸心P2の周りに回動可能とした連結である。この連結によって、一対の両端上下用油圧シリンダー7が夫々伸縮すると、その各連結軸を中心として高圧水噴射ノズル装置4の両端側が上下に変位する。
【0015】
また、前記高圧水噴射ノズル装置4には、路面に向けて高圧水を噴射するノズル部材4Aが、機体1の左右方向にスライド自在に設けられており、このノズル部材4Aの機体1の左右方向における作動範囲、即ち、作動ストロ−クは、この高圧水噴射ノズル装置4に設けたリミッタースイッチ6,6により決定される。これらのリミッタースイッチ6,6は、その位置を機体1の左右方向において変更自在とされている。この実施例では、因みに、図中3に仮想線で示す最大の作動ストロ−ク幅Lは、1720mmに設定されており、また、この高圧水噴射ノズル装置4の幅は、2200mmである。また、前の高圧水噴射ノズル装置4の先端から、後部のステップ1Aまでは、3500mmとしている。
【0016】
前記高圧水噴射ノズル装置4には、前記ノズル部材4Aを下向きに通過させ、機体1の左右方向への移動を許容しながら、噴射水が跳ね返らないようにするゴムシート4B(機体の左右方向への1本の長いスリットと、前後方向への多数の短いスリットを備える)が張設されている。また、前記ノズル部材4Aの左右方向の移動軌跡に対応して、その前後位置に、カバー4Cが設けられている。
前記ノズル部材4Aには、高圧水を導くホース4Dが接続されているが、このホース4Dへ高圧水を供給するポンプは、ここでは、図外のポンプ車に設けられている。しかし、前記機体1にポンプを搭載するようにしてもよい。
【0017】
従って、はつり作業においては、高圧水噴射ノズル装置4の対地高さを初期設定した状態で作業進行するが、路面条件の変化に応じて、操縦者が操作レバー1Dを操作して、保持フレーム3を前傾或いは後傾させ、高圧水噴射ノズル装置4の対地高さを修正しながら所期のはつり深さを得るように出来る。また、同様に、操作レバー1Dの操作によって、高圧水噴射ノズル装置4の左右端の対地高さを調節することもできるのである。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、路面のはつり作業として、種々の路面条件変化に応じて、はつりの所期深さを得ることが可能であり、その応用範囲は広いものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るはつり作業車の側面図である。
【図2】本発明に係るはつり作業車の平面図である。
【図3】本発明に係るはつり作業車の正面図である。
【符号の説明】
【0020】
1:機体
3:保持フレーム
4:高圧水噴射ノズル装置
5:前後傾動用油圧シリンダー
6:リミットスイッチ
7:両端上下用油圧シリンダー
P1:左右方向軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走機能を備え、高圧水噴射ノズル装置4を、機体1の左右方向に移動させて高圧水を噴射し、はつりを行うように構成されたはつり作業車であって、
作業車の機体1の前部に、前記高圧水噴射ノズル装置4を保持する保持フレーム3を、機体1の左右方向軸心P1周りに前後傾動自在に搭載し、
前記保持フレーム3を前後傾動させる前後傾動用油圧シリンダー5を設け、前記高圧水噴射ノズル装置4の対地姿勢を調節できるように構成してある、
ことを特徴とするはつり作業車。
【請求項2】
前記高圧水噴射ノズル装置4の機体1の左右端側を上下に変位させるように、両端上下用油圧シリンダー7を設けてあることを特徴とする請求項1のはつり作業車。
【請求項3】
前記高圧水噴射ノズル装置4には、機体1の左右方向において作動ストロ−クを調節するリミッタースイッチ6,6が、位置変更自在に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2のはつり作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−111326(P2008−111326A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−322564(P2006−322564)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(305006048)
【Fターム(参考)】