説明

はんだ付け平面噴流波形成装置

【課題】吹き口体の吹き口の開口面積をはんだ槽の開口面積に近づけた場合にも、はんだ酸化物やソルダーボールが発生しにくくし、イニシャルコストやランニングコストを抑えてはんだ付け品質の高いはんだ付けを実現可能とする。
【解決手段】はんだ槽1と、はんだ槽1内の溶融はんだ2を平面形状の噴流波として噴流させて、はんだ槽1内へ還流させる吹き口を上部に有する箱型の吹き口体3とを備え、吹き口体3内には、ポンプ4が停止している状態で吹き口体3内に形成される溶融はんだ液面と、吹き口3aが形成する吹き口端面との間に体積調節部材として棒状部材8を設ける。棒状部材8は、吹き口体3内の空間体積が少なくなるように体積を稼ぐことにより、ポンプ4を作動させて吹き口3aから溶融はんだ2を噴流させた際に発生するはんだ槽1内の溶融はんだ液面の下降分を予め決めた限度内に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融はんだを平面形状の噴流波とし、その噴流波に被はんだ付けワーク、例えば電子部品が搭載されたプリント配線板の被はんだ付け部を一括同時に接触させてはんだ付けを行うはんだ付け平面噴流波形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の被はんだ付け部に溶融はんだを供給してはんだ付けを行う方法として、吹き口から溶融はんだを噴流させて噴流波を形成し、この噴流波とプリント配線板の被はんだ付け部とを接触させる方法が用いられている。
【0003】
噴流波には様々な形状があり、その形状によりはんだ付け方法も異なる。例えば、山状形状の噴流波や平面形状の噴流波、更には多数の突起形状を有する噴流波や多数の段部を有する噴流波等々が知られている。ここで、平面形状の噴流波とは、平面形状を水平に形成している噴流波を指すのが通常である。
【0004】
図4、5は従来のはんだ付け平面噴流波形成装置の構成例を説明する図であり、図4は縦断面を示す図、図5は上方から見た平面図である。なお、図5では、説明をわかり易くするためにモータは図示していない。
【0005】
はんだ槽1内には、図示しないヒータにより加熱されて溶融状態にあるはんだ2が収容されている。溶融はんだ2の温度は、図示しない温度センサそして温度制御装置により予め決められた所定の温度に維持されている。すなわち、温度制御装置によりヒータ供給電力を制御するように構成されている。
【0006】
また、はんだ槽1内には、上部に吹き口3aを有する箱型の吹き口体3が設置されている。吹き口体3の底付近には、外側に突出するようにポンプ収容室3bが形成され、溶融はんだ2を送給するためのポンプ4が収容されている。ポンプ4は、カプラ5により結合されたモータ6により回転駆動し、図4中に矢印Fで示すように、ポンプ収容室3bの底面に形成された吸込口3cから溶融はんだ2を吸い込んで、吹き口体3内に吐出する。
【0007】
吹き口体3は、ポンプ4が停止している状態ではんだ槽1内に形成される溶融はんだ液面よりも上方に吹き口3aを有し、ポンプ4が作動してはんだ槽1から溶融はんだが送給されると、吹き口3aから溶融はんだを平面形状の噴流波として噴流させて、はんだ槽1内へ還流させる。すなわち、吹き口体3は、水平で平面形状の噴流波(平面噴流波と称する)を形成するためのものであり、その吹き口3aが形成する吹き口端面も通常は水平に構成されている。
【0008】
また、吹き口3aの開口面積(吹き口面積)は、被はんだ付けワークであるプリント配線板Wの板面形状よりも大きく構成され、図中点線の矢印に示すように搬送されてくるプリント配線板Wの被はんだ付け部すなわち下面が溶融はんだ2に一括同時に接触できるようになっている。これにより、プリント配線板Wへの単位時間当たりの熱量供給を最大にすることができる。なお、吹き口体3内には、整流手段として例えば多孔板7が設けられ、平面噴流波の形状が安定するように考慮されている。
【0009】
この種のはんだ付け平面噴流波形成装置は、非特許文献1の第48頁〜第49頁において「(f)フローディップ式」として開示されている。
【0010】
このようなはんだ付け平面噴流波形成装置では、プリント配線板Wが大きくなるに従って大きい吹き口3aが必要になり、そのために容積の大きいはんだ槽1が必要になる。
【0011】
しかしながら、はんだ槽1の容積を大きくすると、はんだ槽1内に投入するはんだ量が多くなり、イニシャルコストが高くなってしまう。また、通常は生産の開始と終了に合わせてはんだ槽1内のはんだ2の溶融と凝固(装置の始動と停止)が繰り返されるので、はんだ量が多くなると、はんだ2を溶融させて目的の温度に昇温するまでに多量のエネルギーが必要となり、ランニングコストが高くなってしまう。
【0012】
そのため、図4、5に示すように、吹き口体3の吹き口3a周囲になるべく余分な領域を形成しないように、すなわち吹き口体3の外表面とはんだ層1の内面との間隔をできるだけ近くして、はんだ槽1の大きさができるだけ小さくなるように構成されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】電子技術 臨時増刊号 1981年6月 Vol.23 No.7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
図4において、実線で示すはんだ槽1内の溶融はんだ2の液面位置h1は、ポンプ4が停止している状態の位置を示す。一方、点線で示すはんだ槽1内の溶融はんだ2の液面位置h2は、ポンプ4が作動している状態の位置を示す。すなわち、ポンプ4を作動させて吹き口体3の吹き口3aに溶融はんだ2が送給されると、はんだ槽1内の溶融はんだ2の液面位置はΔh(=h1−h2)だけ大幅に下降する。
【0015】
ポンプ4が停止している状態において、吹き口体3の吹き口端面と溶融はんだ液面h1との落差をh3とすれば、ポンプ4を作動させて平面噴流波を形成すると、この落差すなわち平面噴流波を形成した溶融はんだ2の還流落差が(h3+Δh+Δhf)に急拡大することになる。ここで、Δhfは、吹き口端面から平面噴流波の表面までの高さである。
【0016】
平面噴流波を形成することによるはんだ槽1内の溶融はんだ液面の下降分Δhは、はんだ槽1の開口面積S1に対して吹き口体3の吹き口面積S2の割合が増大し、1/2すなわち0.5よりも大きくなると急激に大きくなる。
【0017】
吹き口体3の吹き口端面と溶融はんだ液面との落差はh3であり、吹き口体3の吹き口面積はS2であるから、ポンプ4を作動させて吹き口体3の吹き口3aから溶融はんだ2を噴流させた際に、吹き口体3内に新たに送給充填される溶融はんだ2の体積Qfは、概ね、
Qf=(h3+Δhf)・S2
となる。
【0018】
したがって、はんだ槽1内の溶融はんだ液面の下降分Δhは、
Δh=Qf/(S1−S2)
=(h3+Δhf)・S2/(S1−S2)
=(h3+Δhf)・k/(1−k)
となる。但し、k=S2/S1である。そのため、kが0.5よりも大きくなるとΔhは急速に大きくなる。
【0019】
すなわち、イニシャルコストとランニングコストの抑制を図るために、吹き口体3の吹き口面積S2をはんだ槽1の開口面積S1に近づけると、はんだ槽1内の溶融はんだ液面の下降分Δhは急速に大きくなる。吹き口体3内に新たに送給充填される溶融はんだ量は、吹き口体3の周囲から供給しなければならないからである。
【0020】
そして、平面噴流波を形成した際に溶融はんだ2がはんだ槽1内へ還流する際の還流落差(h3+Δh+Δhf)の急拡大は、溶融はんだ2の酸化速度を加速する。また、ソルダーボールが多量発生して飛散し、このソルダーボールがプリント配線板Wに付着したり、周辺を汚したりする等の問題を生じる。
【0021】
図6は溶融はんだ2の酸化速度の加速とソルダーボールの多量発生を説明する図であり、平面噴流波を形成して吹き口3aから溢流した溶融はんだ2がはんだ槽1内へ還流落下する部分を拡大して示す図である。還流落差(h3+Δh+Δhf)の急拡大は、平面噴流波を形成した溶融はんだ2のはんだ槽1内への還流速度ひいては落下速度Vdを急速に大きくする。その結果、周辺雰囲気(大気)が溶融はんだ2に大量に巻き込まれることになり、溶融はんだ2の酸化速度を加速させて微細なはんだ酸化物を多量に発生し、これらが集まって溶融はんだ液面にドロスを形成し、その大量発生が生じるようになる。
【0022】
そして、はんだ酸化物の大量発生は、はんだ2の無駄な消費を拡大し、また、溶融はんだ2中ひいては噴流波中にはんだ酸化物が混入して汚染し、それがはんだ付けを行ったプリント配線板Wに付着して回路の電気的特性を悪化させたり、甚だしくは回路を短絡したりする。
【0023】
また、溶融はんだ2の落下速度Vdの増大は、はんだ槽1内の溶融はんだ液面への還流落下の際の飛散を増大させ、多量のソルダーボールが飛散するようになる。はんだ付けを行うために搬送中のプリント配線板Wにこのソルダーボールが付着すると、回路を短絡したり、当該プリント配線板Wが組み込まれた装置内で離脱・落下してメカトロ機構部に入り込み、その作動障害を生じたりするおそれがある。
【0024】
本発明は以上のような状況に鑑みてなされたものであり、吹き口体の吹き口の開口面積をはんだ槽の開口面積に近づけた場合にも、はんだ酸化物やソルダーボールが発生しにくくし、イニシャルコストやランニングコストを抑えてはんだ付け品質の高いはんだ付けを実現可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明のはんだ付け平面噴流波形成装置は、加熱されて溶融状態にあるはんだを収容するはんだ槽と、前記はんだ槽内に設置された吹き口体と、前記はんだ槽内の溶融はんだを前記吹き口体内に送給するポンプとを備え、前記吹き口体は、前記ポンプが停止している状態で前記はんだ槽内に形成される溶融はんだ液面よりも上方に吹き口を有し、前記ポンプが作動して前記はんだ槽から溶融はんだが送給されると、前記吹き口から溶融はんだを平面形状の噴流波として噴流させて、前記はんだ槽内へ還流させる構成とされ、前記吹き口の開口面積が板状の被はんだ付けワークの板面形状よりも大きく、かつ、前記はんだ槽の開口面積の1/2よりも大きいはんだ付け平面噴流波形成装置であって、前記吹き口体内には、前記ポンプが停止している状態で前記吹き口体内に形成される溶融はんだ液面と、前記吹き口が形成する吹き口端面との間に体積調節部材を設け、前記ポンプを作動させて前記吹き口から溶融はんだを噴流させた際に発生する前記はんだ槽内の溶融はんだ液面の下降分を予め決めた限度内に維持することを特徴とする。
上記のように構成した本発明は、吹き口体内の空間部分、詳細にはポンプが停止している状態で吹き口体内に形成される溶融はんだ液面と、吹き口が形成する吹き口端面との間に体積調節部材を設けることにより、吹き口体に溶融はんだを送給した際に、吹き口体に新たに充填される溶融はんだ量が少なくなるように構成したところに特徴がある。
【0026】
また、本発明のはんだ付け平面噴流波形成装置の他の特徴とするところは、前記体積調節部材は、前記平面形状の噴流波の表層における水平流れの厚み分布を調節する部分開口率調節部材としても機能する点にある。なお、ここで言う部分開口率とは、ある領域、例えば吹き口の中央部や端部における単位面積当たりに占める開口面積の割合のことを言う。
このように体積調節部材を部分開口率調節部材としても機能させることにより、例えば目的とする箇所部分に水平流れの厚い平面噴流波を形成したり、平面噴流波の中央部が薄く端部が厚い平面噴流波を形成したりすることができる。すなわち、平面噴流波の水平流れの厚い部分と薄い部分とを選択的に形成することができるようになり、被はんだ付けワークの実装状態に合わせて最適な噴流波を形成することができるようになる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、体積調節部材を設けたことにより、はんだ槽内の溶融はんだ液面の下降分を小さくし、溶融はんだがはんだ槽内へ還流する際の還流落差を小さくすることができる。したがって、吹き口体の吹き口の開口面積をはんだ槽の開口面積に近づけた場合にも、はんだ酸化物やソルダーボールが発生しにくくし、イニシャルコストやランニングコストを抑えてはんだ付け品質の高いはんだ付けを実現可能とすることにある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係るはんだ付け平面噴流波形成装置の縦断面を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るはんだ付け平面噴流波形成装置の上方から見た平面図である。
【図3】平面噴流波の水平流れの厚み分布を説明する図であり、(a)は横断面が円形の棒状部材を等間隔に並べた例を説明する図、(b)は横断面が縦長の楕円形の棒状部材を間隔に粗密にして並べた例を説明する図である。
【図4】従来のはんだ付け平面噴流波形成装置の縦断面を示す図である。
【図5】従来のはんだ付け平面噴流波形成装置の上方から見た平面図である。
【図6】溶融はんだの酸化速度の加速とソルダーボールの多量発生を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
(1)構成
図1、2は本発明を適用した実施形態に係るはんだ付け平面噴流波形成装置の構成を説明する図であり、図1はポンプ4の回転軸を通る縦断面で示した図、図2は上方から見た平面図である。また、図3は平面噴流波の水平流れの厚み分布を説明する図であり、(a)は横断面が円形の棒状部材8を等間隔に並べた例を説明する図、(b)は横断面が縦長の楕円形の棒状部材8を間隔を粗密にして並べた例を説明する図である。なお、図4、5で説明した従来のはんだ付け平面噴流波形成装置と同様の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0030】
吹き口体3内には、ポンプ4が停止している状態でのはんだ槽1内の溶融はんだ2の液面、すなわち吹き口体3内に形成される溶融はんだ2の液面と、吹き口3aが形成する吹き口端面との間に体積調節部材として複数の棒状部材(柱状部材)8を並べて設けている。
【0031】
棒状部材8は、吹き口体3内の空間体積が少なくなるように体積を稼ぐことにより、ポンプ4を作動させて吹き口3aから溶融はんだ2を噴流させた際に発生するはんだ槽1内の溶融はんだ液面の下降分を予め決めた限度内に維持する体積調節部材として機能する。
【0032】
また、棒状部材8は、平面噴流波の表層における水平流れの厚み分布を調節する、換言すれば平面噴流波の水平流れの厚い部分と薄い部分とを自在に調節できる部分開口率調節部材としても機能する。
【0033】
図1、2の例では、図3(a)に示すように、横断面が円形の棒状部材8を等間隔に並べているが、図3(b)に示すように、横断面が縦長の楕円形の棒状部材8を間隔を粗密に並べても良い。図3(b)では、棒状部材8の間隔を、吹き口3aの中央部で広く、水平方向端部側で狭くしている。
【0034】
本実施形態では、吹き口体3の吹き口3a内に枠体9が交換可能に装着され、この枠体9の対向面間に複数の棒状部材8を架設している。例えば、図3(a)、(b)に示すように、吹き口体3の内面に突起部3dを設けておき、その突起部3d上に枠体9を載置するような構成とすればよい。
【0035】
(2)作動
図1において、点線で示すはんだ槽1内の溶融はんだ2の液面位置h1は、ポンプ4が停止している状態の位置を示す。一方、実線で示すはんだ槽1内の溶融はんだ2の液面位置h2aは、ポンプ4が作動している状態の位置を示す。すなわち、ポンプ4を作動させて吹き口体3の吹き口3aに溶融はんだ2が送給されると、はんだ槽1内の溶融はんだ2の液面位置はΔha(=h1−h2a)だけ下降する。
【0036】
このとき、はんだ槽1内の溶融はんだ液面の下降分Δhaは、図4に示した下降分Δhと比較して、棒状部材8の体積分だけ大幅に小さくなる。その結果、平面噴流波を形成したときに、溶融はんだ2のはんだ槽1内への還流落差は(h3+Δha+Δhf)に小さくなる。ここで、Δhfは、吹き口端面から平面噴流波の表面までの高さである。
【0037】
すなわち、棒状部材8の全体積をQvとすると、ポンプ4を作動させて吹き口体3の吹き口3aから溶融はんだ2を噴流させた際に、吹き口体3に新たに送給充填される溶融はんだ2の体積はQf−Qvに減少する。
【0038】
したがって、はんだ槽1内の溶融はんだ液面の下降分Δhaは、
Δha=(Qf−Qv)/(S1−S2)
={(h3+Δhf)・S2−Qv}/(S1−S2)
となり、Qv/(S1−S2)だけ小さくすることができる。
【0039】
吹き口体3の吹き口3a近くの空間体積(h3・S2)と、棒状部材8の全体積Qvとを近づければ近づける程、溶融はんだ液面の下降分Δhaを小さくすることが可能である。換言すれば、棒状部材8の全体積Qvを調節することにより、溶融はんだ液面の下降分Δha所望の値(予め決めた限度内)にすることができるようになる。
【0040】
そして、はんだ酸化物の発生量を急速に増大させないためとソルダーボールの大量飛散を生じないようにするためには、この還流落差(h3+Δha+Δhf)を40mm以下、好ましく30mm以下にすることが必要である。この還流落差を越えると急激にソルダーボールが大量飛散するようになり、また大量の大気(雰囲気)をはんだ槽1内の溶融はんだ2中に巻き込むようになり、大量のはんだ酸化物を発生するようになる。
【0041】
また、図3(a)に示すように棒状部材8が等間隔に配置されている場合には、吹き口体3の吹き口3aに送給される溶融はんだ2の単位面積当たりかつ単位時間当たりの流量を、概ね均一に分布させることができる。したがって、平面噴流波の表層部分において発生する水平流れ(矢印f)は、図中で実線と点線で示すように、中央部は薄く、溶融はんだ2が溢流する吹き口3aの水平方向端部へ近づく程厚くなる。
【0042】
一方、図3(b)に示すように棒状部材8の間隔が中央部で広く、吹き口3aの水平方向端部側で狭い場合には、吹き口体3の吹き口3aに送給される溶融はんだ2の単位面積当たりかつ単位時間当たりの流量は、中央部で多く、溶融はんだ2が溢流する吹き口3aの水平方向端部側で少なくなる。したがって、平面噴流波の表層部分において発生する水平流れ(矢印f)は、図中で実線と点線で示すように、中央部が極わずかに薄くなるが、概ね同じ厚さにすることができる。
【0043】
この平面噴流波の表層部において水平方向へ流れる溶融はんだ2の厚さは、プリント配線板Wに搭載された電子部品のリード端子等の被はんだ付け部への熱量供給速度を規定する。一般的に、その厚さが厚い程熱量供給速度が速まるので、電子部品の大きさ等で決まる被はんだ付け部の熱容量が大きい所程、水平方向に流れる溶融はんだ2の厚さが大きくなるようにすると良い。すなわち、プリント配線板Wの実装状態に合わせて、平面噴流波の表層部において水平方向に流れる溶融はんだ2の厚さを制御するように棒状部材8を設ければ良い。
【0044】
棒状部材8は、吹き口体3の吹き口3aに嵌合する枠体9に設けて交換可能となっているので、目的に応じて棒状部材8を所望に配列した枠体9を用意しておいて、それを交換することによって、板状の被はんだ付けワークすなわちプリント配線板Wの実装状態に最適な平面噴流波の水平流れの厚み分布状態を得ることができる。
【0045】
なお、棒状部材8の断面形状は、溶融はんだ2の流動を妨げないという点で流線型の形状が好ましいが、六角形や八角形等の多角形であっても良い。また、まっすぐな棒状部材8を枠体9の枠に沿って平行に設けているが、斜めに設けても良い。また、円弧状に曲がった棒状部材を適宜並べても良い。また、例えば吹き口2の中央部と端部とで、棒状部材の太さや形状を異ならせる等しても良い。
【0046】
更には、体積調節部材(部分開口率調節部材)は、棒状部材を並べて構成する以外にも、例えば格子状(網状)の部材や、上下に貫通する多数の流路を形成したブロック体等を用いても良い。
【0047】
要は、吹き口体3の吹き口3a直近に設けた部分開口率調節部材の形状や並べ方は、平面噴流波の表層における溶融はんだ2の流れ方向と流れの厚みとその分布状態を制御するように設計すれば良く、これにより平面噴流波に接触させるプリント配線板Wのはんだ付け性を制御することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のはんだ付け平面噴流波形成装置では、板面形状が大きい板状の被はんだ付けワークのはんだ付けを行う際に、はんだ酸化物やソルダーボールによる汚染が少なくかつ電子部品の実装状態に合わせて均一なはんだ付けを行うことができる。したがって、マザーボードのような大型プリント配線板のはんだ付け実装を行うはんだ付け装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 はんだ槽
2 溶融はんだ
3 吹き口体
3a 吹き口
3b ポンプ収容室
3c 吸込口
3d 突起部
4 ポンプ
5 カプラ
6 モータ
7 多孔板
8 棒状部材
9 枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱されて溶融状態にあるはんだを収容するはんだ槽と、
前記はんだ槽内に設置された吹き口体と、
前記はんだ槽内の溶融はんだを前記吹き口体内に送給するポンプとを備え、
前記吹き口体は、前記ポンプが停止している状態で前記はんだ槽内に形成される溶融はんだ液面よりも上方に吹き口を有し、前記ポンプが作動して前記はんだ槽から溶融はんだが送給されると、前記吹き口から溶融はんだを平面形状の噴流波として噴流させて、前記はんだ槽内へ還流させる構成とされ、
前記吹き口の開口面積が板状の被はんだ付けワークの板面形状よりも大きく、かつ、前記はんだ槽の開口面積の1/2よりも大きいはんだ付け平面噴流波形成装置であって、
前記吹き口体内には、前記ポンプが停止している状態で前記吹き口体内に形成される溶融はんだ液面と、前記吹き口が形成する吹き口端面との間に体積調節部材を設け、
前記ポンプを作動させて前記吹き口から溶融はんだを噴流させた際に発生する前記はんだ槽内の溶融はんだ液面の下降分を予め決めた限度内に維持することを特徴とするはんだ付け平面噴流波形成装置。
【請求項2】
前記体積調節部材は、前記平面形状の噴流波の表層における水平流れの厚み分布を調節する部分開口率調節部材としても機能することを特徴とする請求項1に記載のはんだ付け平面噴流波形成装置。
【請求項3】
前記体積調節部材は、複数の棒状部材を並べて構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のはんだ付け平面噴流波形成装置。
【請求項4】
前記体積調節部材は、複数の棒状部材を並べて構成され、これら複数の棒状部材の間隔を粗密にしてなることを特徴とする請求項2に記載のはんだ付け平面噴流波形成装置。
【請求項5】
前記体積調節部材は前記吹き口体内に交換可能に装着されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のはんだ付け平面噴流波形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−184251(P2010−184251A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28819(P2009−28819)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(390008497)日本電熱株式会社 (32)
【Fターム(参考)】