説明

はんだ付け方法

【課題】 印刷体積のばらつき、形状の不良、にじみなどの発生、及びスキージの消耗を防ぐために、はんだ付けポイントごとにはんだ体積を制御して、所望のはんだ体積を得ることができるはんだ付け方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 プリント基板2等のランド5上に印刷して形成したクリームはんだ層6上に表面実装部品7と共にはんだペレット8を搭載し、これを溶融してはんだ付けを行う。また、上記はんだペレットはクリームはんだ中のはんだの体積とはんだ付けポイントごとに必要とするはんだ体積との差分の体積で、クリームはんだ中のはんだと同等の組成をもつペレットとして製作される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、プリント基板等に実装部品をはんだ付けする方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図7(a)〜(e)は、従来のプリント基板等に表面実装部品をはんだ付けする方法の工程を示す模式図である。従来の方法は、まず図7(a)に示すように、スクリーン印刷用のマスク1を用意し、このマスク1をプリント基板2等の上に位置決めして載置する第1の工程と、次に図7(b),(c)に示すように、マスク1上に供給したクリームはんだ3を、スキージ4を用いて矢印イの方向に移動し、マスク1のスルーホール1aからクリームはんだ3を印刷して、ランド5上にクリームはんだ層6を形成したところでマスク1を取り外す第2の工程と、その後、図7(d)に示すように、表面実装部品7をクリームはんだ層6の所定の位置に搭載してこれをクリームはんだ層6の粘着力によって保持させる第3の工程と、次に図7(e)に示すように、表面実装部品7をプリント基板2と共にリフロー炉内に挿入してクリームはんだ層6を溶融させて、ランド5と表面実装部品7を接合し、冷却してハンダ9を形成する第4工程とから成り、これらの工程を経て一連のはんだ付け作業を終了する。
【0003】ところで従来、プリント基板2等の上に形状の異なる表面実装部品7を混載し、これをはんだ付けする場合、はんだ付けポイントごとに必要とするはんだ体積が異なるため、これに対応する方法として、スクリーン印刷用マスク1の厚みや、これに設けたスルーホール1aの開口面積をポイントごとに変えることによって、ポイントごとのはんだ体積を制御していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】以上のような従来の方法では、つまり、スクリーン印刷用マスク1の厚みをポイントごとに変えることによってはんだ体積を制御する方法では、スキージ4の追従性に限界があるため、はんだ体積の大幅な増量や減量が不可能である。したがって、小幅な増減によってクリームはんだを印刷する場合には、印圧を高くするなどしてスキージ4の追従性を高める必要があるため、クリームはんだ3の掻き取りによる印刷体積のばらつきや印刷形状不良、及びにじみなどが発生し易くなり、更にスキージ4の消耗を早めるという問題点があった。
【0005】また、スクリーン印刷用マスク1のスルーホール1aの開口面積をはんだ付けポイントごとに変えることによってはんだ体積を制御する方法では、スルーホール1aの開口面積を小さくした場合は、クリームはんだの版抜け性が悪化して所望のはんだ体積が得られないことがあり、又、開口面積を大きくした場合は、ランド5の寸法をそれに応じて大きく決定しなければならず、結局実装面積が拡大して機器の大型化につながるという問題点があった。
【0006】この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、はんだ付けポイントごとのはんだ体積を正確に制御して、所望のはんだ体積を得ることができるはんだ付け方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明の請求項1に係るはんだ付け方法は、スクリーン印刷用マスクを介して供給されるクリームはんだをプリント基板等のランド上に印刷してクリームはんだ層を形成するものにおいて、上記クリームはんだ層上に表面実装部品と共にはんだペレットを搭載し、これをリフロー炉に挿入して溶融し、はんだ付けを行うものである。
【0008】この発明の請求項2に係るはんだ付け方法は、はんだ付けポイントごとに必要とするはんだ体積を求め、スクリーン印刷用マスクを介して供給されるクリームはんだ中のはんだの体積との差分程度の体積で、かつ上記クリームはんだ中のはんだと同等の組成のペレットを供給するものである。
【0009】この発明の請求項3に係るはんだ付け方法は、ランド上に印刷されたクリームはんだ層上に搭載された表面実装部品と同じランド上で、しかも他の部品等に接触しない程度で隣接した位置にはんだペレットを供給するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】実施の形態1.以下、この発明の一実施形態を図に基づいて説明する。図1(a)〜(f)は、この発明の実施の形態1によるはんだ付けの方法の工程を示す模式図である。図において、(a)〜(d)に至る工程は、先に説明した従来の工程と同様である。即ち、まず図1(a)に示すように、スクリーン印刷用のマスク1を用意し、このマスク1をプリント基板2等の上に位置決めして載置する第1の工程と、次に図1(b),(c)に示すように、マスク1上に供給したクリームはんだ3を、スキージ4を用いて矢印イの方向に移動し、マスク1のスルーホール1aからクリームはんだ3を印刷して、ランド5上にクリームはんだ層6を形成したところでマスク1を取り外す第2の工程と、その後、図1(d)に示すように、表面実装部品7をクリームはんだ層6の所定の位置に搭載してこれをクリームはんだ層6の粘着力によって保持させる第3の工程を有するのは同様である。ところで、この発明では、スクリーン印刷マスク1を介して供給されたクリームはんだ3だけでは、はんだ付け後のはんだ体積が不足するポイントに対して、所望のはんだ体積が得られるような大きさで製作されたはんだペレット8を図1(e)に示すように、表面実装部品7と同じランド上に搭載し、これをリフロー炉内に挿入してクリームはんだ層6と、はんだペレット8を溶融させて図1(f)に示すように、ランド5と表面実装部品7を接合し冷却してはんだ9を完成し、作業を終了するが、これによってランド5と表面実装部品7の接合を所望のはんだ体積で行なうことができる。
【0011】上記はんだペレット8の製作に際しては、まず、はんだ付けポイントごとに必要なはんだ体積を計算または耐久試験の結果から求め、必要なはんだ体積に対して、スクリーン印刷マスク1を介して供給されるクリームはんだ3中のはんだ体積が小さい場合、その差分の体積と同等程度の体積で、かつクリームはんだ3中のはんだ組成と同等のはんだペレット8を製作する。この時、はんだペレット8の形状は、ランドから著しくはみ出さない大きさで、しかも搭載の容易な直方体又は円柱形等の形状とする。
【0012】上記のように製作されたはんだペレット8を、表面実装部品7と同じクリームはんだ層6上で、しかも表面実装部品7に隣接した位置に搭載し、クリームはんだ層6の粘着力によって保持する。なおこの場合、はんだペレット8がはみ出すことがあっても、隣接する他の表面実装部品等に接触しなければ良く、また場合によっては、はんだペレット8と表面実装部品7の搭載順を換えてもよい。
【0013】実施の形態2.次に、実用化した具体的実施例に基づいて、この発明をさらに詳細に説明する。図2R>2は表面実装部品として大形セラミックコンデンサを例題として、その寸法と、これに対応するランド寸法を示した図であり、(a)はランド5を、(b)は表面実装部品7としての大形セラミックコンデンサを示す。なお、ここで用いるスクリーン印刷用マスク1の寸法は、スルーホール1aの開口幅5.05mm,開口長さ1.89mm,板厚0.25mmのものである。
【0014】図3は、上記図2で示す例において、はんだ付けポイント1点当たりに必要なはんだ体積の計算に用いる図であり、その計算式は下記の通りである。
A部の体積 A=Lf×Lf×W×0.5 =(0.5×2.8+0.06)×(0.5×2.8+0.06)×5×0.5 =5.33mm ※Lf=0.5t+KB部の体積B=L×K×W=0.8×0.06×5=0.24mm必要はんだ体積V=A+B=5.33+0.24=5.57mm以上のようにこの例では、はんだ付けポイント1点あたり5.57mmのはんだが必要である。
【0015】これに対し、スクリーン印刷用マスク1を介して供給されるクリームはんだ3の中のはんだ体積は次の通りである。
クリームはんだ3の中のはんだ体積スルーホール1aの開口幅×開口長さ×板厚×体積%=5.05×1.89×0.25×0.517=1.23mm両者の差が不足しているはんだ体積であるので、5.57−1.23=4.34mmの体積をもつはんだペレット8を製作する。なお、製作に当って、搭載しやすい形状を考慮して、図4に例示するような寸法で長方形のものを選択した。そして、この時のはんだペレット8の体積は図4から3.6×1.2×1.0=4.32mmであり、上記不足しているはんだ体積とほぼ同体積である。
【0016】図5は上記のはんだペレット8を搭載した状態を示す平面図であり、この場合、はんだペレット8と表面実装部品7との間隙lを0.5mmとした。ここで、これをリフロー炉に挿入することによって、クリームはんだ層6とはんだペレット8が溶融し、図6に示すように、表面実装部品7とランド5との接合を、所望のはんだ体積で得ることが可能となる。
【0017】
【発明の効果】この発明の請求項1に係るはんだ付け方法によれば、スクリーン印刷用マスクを介して供給されるクリームはんだをプリント基板等のランド上に印刷してクリームはんだ層を形成するものにおいて、上記クリームはんだ層上に表面実装部品と共にはんだペレットを搭載し、溶融してはんだ付けを行うもので、印刷体積のばらつきや形状の不良、また、にじみの発生を防ぎ、はんだ付け品質を著しく向上することができる。
【0018】この発明の請求項2に係るはんだ付け方法によれば、はんだ付けポイントごとに必要とするはんだ体積を求め、スクリーン印刷用マスクを介して供給されるクリームはんだ中のはんだの体積との差分程度の体積で、かつ上記クリームはんだ中のはんだ組成と同等の組成のペレットを供給するもので、はんだポイントごとに必要とするはんだ体積を確定し制御することが可能となり、はんだ供給量の過不足を防いでコストの低減をはかると共に品質を向上させることができる。
【0019】この発明の請求項3に係るはんだ付け方法によれば、ランド上に印刷されたクリームはんだ層上に供給されるはんだペレットは、表面実装部品と同じランド上で、しかも他の部品等に接触しない程度で隣接した位置に搭載されるので、クリームはんだ層とはんだペレットの溶融が適正に進行し、リフロー後のはんだ付けが均等にしかも強固に達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1によるはんだ付け方法の工程を示す模式図である。
【図2】 この発明の実施の形態2によるはんだ付け方法の表面実装部品とこれに対応するランドの寸法を示した図である。
【図3】 この発明の実施の形態2において、はんだ付けポイント1点当たりに必要なはんだ体積の計算に用いる図である。
【図4】 この発明の実施の形態2によるはんだ付け方法に適用するはんだペレットの形状寸法を示す図である。
【図5】 この発明の実施の形態2によるはんだ付け方法によるはんだペレットの搭載状態を示す平面図である。
【図6】 この発明のはんだ付け方法によるはんだ付け状態と、従来のものとの比較断面図である。
【図7】 従来のはんだ付け方法の工程を示す模式図である。
【符号の説明】
1 スクリーン印刷マスク、2 プリント基板、3 クリームはんだ、4 スキージ、5 ランド、6 クリームはんだ層、7 表面実装部品、8 はんだペレット、9 はんだ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 スクリーン印刷用マスクを介して供給されるクリームはんだをプリント基板等のランド上に印刷してクリームはんだ層を形成するものにおいて、上記クリームはんだ層上に表面実装部品と共にはんだペレットを搭載し、これをリフロー炉に挿入して溶融し、はんだ付けを行うことを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項2】 はんだ付けポイントごとに必要とするはんだ体積を求め、スクリーン印刷用マスクを介して供給されるクリームはんだ中のはんだの体積との差分程度の体積で、かつ上記クリームはんだ中のはんだと同等の組成のペレットを供給することを特徴とする請求項1記載のはんだ付け方法。
【請求項3】 プリント基板等のランド上に印刷されたクリームはんだ層上に搭載された表面実装部品と同じランド上で、しかも他の部品等に接触しない程度で隣接した位置にはんだペレットを供給することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のはんだ付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2003−324271(P2003−324271A)
【公開日】平成15年11月14日(2003.11.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−129636(P2002−129636)
【出願日】平成14年5月1日(2002.5.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】