説明

はんだ接合用積層体および接合体

【課題】 従来のめっき法や真空成膜法等で成膜する高価なNiバリア層に対し、金属粒子と溶剤を主成分とする金属ペースト等を代わりに用いることで、製造工程を簡便にし、ランニングコストの大幅な改善を行うことができるはんだ接合用積層体、およびこのはんだ接合用積層体を含むLED素子等に使用可能な高信頼性の接合体を提供することを課題とする。
【解決手段】 金属ナノ粒子焼結体層11と、金属粒子または金属酸化物粒子を含むバリア層12と、はんだ接合層13と、をこの順に備えることを特徴とする、はんだ接合用積層体1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ接合用積層体およびこのはんだ接合積層体を含む接合体に関する。このはんだ接合用積層体および接合体は、特に、LED光源等の発光源や太陽電池向けに非常に適している。
【背景技術】
【0002】
近年、LED光源は、高輝度化等に伴い、様々な分野に利用されている。特に、白色LED光源が実現可能となったことにより、照明器具や液晶ディスプレイのバックライト等の用途に使用されている。
【0003】
このLED光源の輝度等をより高くするために、LED素子からの発光を効率よく利用することが検討されており、基板と、支持基板上に搭載されたLED素子と、蛍光剤を含む封止剤を備え、基板とLED素子の間に、LED素子の発光を反射するAgめっき電極膜を備え、Agめっき電極膜上にチタン薄膜を有するLED光源が開示されている(特許文献1)。
【0004】
このLED光源は、基板とLED素子の間に、導電性反射膜層を設けることにより、発光体からの光を効率的に反射させて発光強度を増加させている。ここで、Ag薄膜とチタン薄膜は、めっき法やスパッタ法等の真空成膜法により形成されている。
【0005】
一般に、めっき法は、煩雑な工程や廃液の発生が予想され、真空成膜法は、大型の真空成膜装置を維持・運転するため多大なコストを必要とする。上記LED光源は、Agめっき電極膜のみでは、熱劣化や光劣化が発生するため、チタン薄膜を必要とし、めっき法と真空成膜法の併用が、必要となっている。
【0006】
また、LED光源には、基板とLED素子を接合させる構造が必要であり、一般には金属ペーストやはんだなどを用いて接合することが多いが、特に、Au−Sn合金はんだなどを用いることで良好な放熱特性が得られる(特許文献2)。
【0007】
一方、この方法では、LED素子電極のはんだ食われを防止するために、Ni、Ti等の複数のバリア層を、めっき法や真空成膜法で設ける必要があり、多大な成膜コストが必要になる欠点があった。なお、このはんだ食われを防止するためのバリア層は、Au−Sn合金はんだ以外の鉛フリーはんだ等の場合にも必要である。
【0008】
さらに、LED素子の裏面に、従来のスパッタ法や真空成膜法を用いて、複層の透明膜による増反射構造を有する反射膜を設け、かつ放熱特性の高い金属接合構造を設けた場合、透明膜と金属膜間の接合不良により、密着性を高めることが難しい、という問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−231568号公報
【特許文献2】特開2008−10545号号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来のめっき法や真空成膜法等で成膜する高価なNiバリア層に対し、金属粒子と溶剤を主成分とする金属ペースト等を代わりに用いることで、製造工程を簡便にし、ランニングコストの大幅な改善を行うことができるはんだ接合用積層体、およびこのはんだ接合用積層体を含むLED素子等に使用可能な高信頼性の接合体を提供することを課題とする。このはんだ接合用積層体は、他の用途の接合体にも利用することができ、特に、反射膜を使用する太陽電池として使用する接合体に対しても非常に適している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下に示す構成によって上記課題を解決したはんだ接合用積層体および接合体に関する。
(1)金属ナノ粒子焼結体層と、金属粒子または金属酸化物粒子を含むバリア層と、はんだ接合層と、をこの順に備えることを特徴とする、はんだ接合用積層体。
(2)金属ナノ粒子焼結体層が、バリア層の反対面に、透明層を備える、上記(1)記載のはんだ接合用積層体。
(3)金属ナノ粒子焼結体層と、バリア層との間に、さらに、バインダー層を備える、上記(1)または(2)記載のはんだ接合用積層体。
【0012】
(4)金属ナノ粒子焼結体層が、75質量%以上の銀を含み、かつ、金、銅、錫、亜鉛、モリブデン及びマンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、上記(1)〜(3)のいずれか記載のはんだ接合用積層体。
(5)金属ナノ粒子焼結体層が、バインダーを含む、上記(1)〜(4)のいずれか記載のはんだ接合用積層体。
(6)金属ナノ粒子焼結体層の厚さが、0.01〜0.5μmである、上記(1)〜(5)のいずれか記載のはんだ接合用積層体。
(7)各層が、湿式塗工法で成膜した後、130〜250℃で焼成された、上記(1)〜(6)のいずれか1項記載のはんだ接合用積層体。
【0013】
(8)透明層およびバインダー層が、加熱により硬化するポリマー型バインダーまたはノンポリマー型バインダーの少なくとも1種を含む、上記(3)〜(7)のいずれか1項記載のはんだ接合用積層体。
(9)湿式塗工法が、スプレーコーティング法、ディスペンサーコーティング法、スピンコーティング法、ナイフコーティング法、スリットコーティング法、インクジェットコーティング法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法またはダイコーティング法のいずれかである、上記(7)または(8)記載のはんだ接合用積層体。
【0014】
(10)第1の被接合体と、上記(1)〜(9)のいずれか記載のはんだ接合用積層体と、第2の被接合体を、この順で備えることを特徴とする、接合体。
(11)第1の被接合体が、発光可能または光電変換可能な素子であり、金属ナノ粒子焼結体層が、第1の被接合体からの光を反射可能であり、第2の接合体が、基板である、上記(10)記載の接合体。
(12)第1の被接合体が、発光可能な素子である、上記(11)記載の発光源として使用される接合体。
(13)第1の被接合体が、光電変換可能な素子である、上記(11)記載の太陽電池として使用される接合体。
【発明の効果】
【0015】
本発明(1)によれば、はんだによる高い接合信頼性が得られる。また、成膜層数が少なく、高価な成膜装置が不要であり、大幅な低コスト化を図ることができる。また、本発明(2)の透明層は、めっき法や真空成膜法と比較して、透明層に使用できる材料の自由度が高いため、透明層の屈折率を任意にすることができ、金属ナノ粒子焼結体層による増反射効果を制御することができる。
【0016】
本発明(10)によれば、はんだによる高い接合信頼性を有する接合体を、容易に提供することができる。また、本発明(12)によれば、LED素子が発する光の利用効率が高い発光源を提供することが可能であり、本発明(13)によれば、光電変換効率の高い太陽電池を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のはんだ接合用積層体の断面の模式図の一例である。
【図2】本発明の透明層を含むはんだ接合用積層体の断面の模式図の一例である。
【図3】本発明のバリア層を含むはんだ接合用積層体の断面の模式図の一例である。
【図4】本発明の接合体の断面の模式図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。なお、%は特に示さない限り、また数値固有の場合を除いて質量%である。
【0019】
〔はんだ接合用積層体〕
本発明のはんだ接合用積層体は、金属ナノ粒子焼結体層と、金属粒子または金属酸化物粒子を含むバリア層と、はんだ接合層と、をこの順に備えることを特徴とする。以下、金属ナノ粒子焼結体層、バリア層、はんだ接合層の順に、説明する。
【0020】
《金属ナノ粒子焼結層》
金属ナノ粒子焼結体は、接合層に、導電性、反射性及び密着性を付与する。金属ナノ粒子焼結層は、金属ナノ粒子焼結層用組成物を、湿式塗工用により成膜し、乾燥した後、焼成することにより形成することができる。
【0021】
金属ナノ粒子焼結体層が、75質量%以上の銀を含み、かつ、金、白金、パラジウム、ルテニウム、ニッケル、銅、錫、インジウム、亜鉛、鉄、クロム、モリブデン及びマンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むと、導電性、反射性の観点から、好ましく、金、銅、錫、亜鉛、モリブデン及びマンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種であると、より好ましい。
【0022】
金属ナノ粒子焼結体層は、厚さが0.01〜0.5μmである、と導電性の観点から好ましい。
【0023】
金属ナノ粒子焼結体層用組成物は、金属ナノ粒子を含み、金属ナノ粒子は、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上の銀ナノ粒子を含有する。銀ナノ粒子の含有量を、金属ナノ粒子焼結体層:100質量%に対して75質量%以上が好ましいのは、75質量%未満ではこの組成物を用いて形成された電極の導電率、反射率が低下してしまうからである。
【0024】
金属ナノ粒子は、炭素骨格が炭素数:1〜3の有機分子主鎖の保護剤で化学修飾されると、好ましい。金属ナノ粒子焼結層を形成するために、基材上に金属ナノ粒子焼結層用組成物を塗布した後、焼成すると、金属ナノ粒子の表面を保護していた保護剤中の有機分子が脱離もしくは分解し、または離脱しかつ分解することにより、実質的に電極の導電性及び反射率に悪影響を及ぼす有機物残渣を含有しない、金属を主成分とする電極が得られやすいためである。金属ナノ粒子を化学修飾する保護剤の有機分子主鎖の炭素骨格の炭素数を、1〜3の範囲としたのは、炭素数が4以上であると焼成時の熱により保護剤が脱離または分解(分離・燃焼)し難く、金属ナノ粒子焼結層内に、金属ナノ粒子焼結層の導電性および反射率に悪影響を及ぼす有機残渣が多く残り易いからである。
【0025】
さらに、保護剤、すなわち金属ナノ粒子表面に化学修飾している保護分子は、水酸基(−OH)またはカルボニル基(−C=O)のいずれか一方または双方を含有すると、より好ましい。水酸基(−OH)が銀ナノ粒子等の金属ナノ粒子を化学修飾する保護剤に含有されると、組成物の分散安定性に優れ、塗膜の低温焼結にも効果的な作用があり、カルボニル基(−C=O)が銀ナノ粒子等の金属ナノ粒子を化学修飾する保護剤に含有されると、金属ナノ粒子焼結層組成物の分散安定性に優れ、金属ナノ粒子焼結層の低温焼結にも効果的な作用がある。
【0026】
金属ナノ粒子は、一次粒径:10〜50nmの範囲内の金属ナノ粒子を、数平均で好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上含有する。一次粒径:10〜50nmの範囲内の金属ナノ粒子の含有量を、数平均で全ての金属ナノ粒子100%に対して、70%以上が好ましいのは、70%未満では金属ナノ粒子の比表面積が増大して保護剤の占める割合が大きくなり、焼成時の熱により脱離または分解(分離・燃焼)し易い有機分子であっても、この有機分子の占める割合が多いため、電極内に有機残渣が多く残り、この有機残渣が変質もしくは劣化して電極の導電性及び反射率が低下してしまう、または金属ナノ粒子の粒度分布が広くなり、電極の密度が低下し易くなり、電極の導電性および反射率が低下してしまうからである。さらに、上記金属ナノ粒子の一次粒径が、10〜50nmの範囲内であると好ましいのは、経時安定性(経年安定性)が良好であるからである。ここで、一次粒径は、堀場製作所製LB−550による動的光散乱法で測定する。以下、特記した場合を除いて、平均粒径は同様に測定する。
【0027】
上記のように、金属ナノ粒子は75質量%以上の銀ナノ粒子を含有し、かつ、金、白金、パラジウム、ルテニウム、ニッケル、銅、錫、インジウム、亜鉛、鉄、クロム、モリブデンおよびマンガンからなる群より選ばれる1種の粒子又は2種以上の混合組成または合金組成からなる金属ナノ粒子を更に含有することが好ましく、これらの銀ナノ粒子以外の金属ナノ粒子は、全ての金属ナノ粒子:100質量%に対して、0.02質量%以上かつ25質量%未満であると好ましく、0.03質量%〜20質量%であると、より好ましい。銀ナノ粒子以外の粒子の含有量を、全ての金属ナノ粒子100質量%に対して、0.02質量%以上かつ25質量%未満の範囲が好ましいのは、0.02質量%未満では特に大きな問題はないが、0.02質量%以上かつ25質量%未満の範囲内においては、耐候性試験(温度100℃かつ湿度50%の恒温恒湿槽に1000時間保持する試験)後の金属ナノ粒子焼結体層の導電性および反射率が耐候性試験前と比べて悪化しないという特徴があり、25質量%以上では、焼成直後の金属ナノ粒子焼結体層の導電性および反射率が低下し、しかも耐候性試験後の金属ナノ粒子焼結体層の導電性および反射率が、耐候性試験前より低下してしまうからである。
【0028】
また、金属ナノ粒子焼結体層用組成物は、金属酸化物、金属水酸化物、有機金属化合物及びシリコーンオイルからなる群より選ばれた1種または2種以上の添加物を更に含むことができる。金属ナノ粒子焼結体層用組成物に上記種類の添加物を1種又は2種以上更に含ませることで、金属ナノ粒子間の焼結による粒成長の更なる抑制効果を与えるので、目的に応じた表面形状を作成することが可能となる。添加物の添加割合は、金属ナノ粒子焼結体層用組成物:100質量%に対して、0.1〜20質量%の範囲内が好ましい。このうち、1〜5質量%の範囲内が、より好ましい。
【0029】
添加物として使用する金属酸化物としては、アルミニウム、シリコン、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銀、銅、亜鉛、モリブデン、錫、インジウムおよびアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む酸化物または複合酸化物が好ましい。複合酸化物とは、具体的には、酸化インジウム−酸化錫系複合酸化物(Indium Tin Oxide:ITO)、酸化アンチモン−酸化錫系複合酸化物(Antimony Tin Oxide:ATO)、酸化インジウム−酸化亜鉛系複合酸化物(Indium Zinc Oxide:IZO)等である。
【0030】
添加物として使用する金属水酸化物としては、アルミニウム、シリコン、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銀、銅、亜鉛、モリブデン、錫、インジウムおよびアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む水酸化物が好ましい。
【0031】
添加物として使用する有機金属化合物としては、シリコン、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銀、銅、亜鉛、モリブデン及び錫の金属石鹸、金属錯体または金属アルコキシドが好適である。例えば、金属石鹸は、酢酸クロム、ギ酸マンガン、クエン酸鉄、ギ酸コバルト、酢酸ニッケル、クエン酸銀、酢酸銅、クエン酸銅、酢酸錫、酢酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、酢酸モリブデン等が挙げられる。また、金属錯体としては、アセチルアセトン亜鉛錯体、アセチルアセトンクロム錯体、アセチルアセトンニッケル錯体等が挙げられる。また、金属アルコキシドはチタニウムイソプロポキシド、メチルシリケート、イソアナトプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0032】
添加物として使用するシリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイルおよび変性シリコーンオイルの双方を用いることができる。変性シリコーンオイルは、更にポリシロキサンの側鎖の一部に有機基を導入したもの(側鎖型)、ポリシロキサンの両末端に有機基を導入したもの(両末端型)、ポリシロキサンの両末端のうちのどちらか一方に有機基を導入したもの(片末端型)およびポリシロキサンの側鎖の一部と両末端に有機基を導入したもの(側鎖両末端型)を用いることができる。変性シリコーンオイルには、反応性シリコーンオイルと非反応性シリコーンオイルとがあるが、その双方の種類ともに使用することができる。なお、反応性シリコーンオイルとは、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシ変性、カルビノール変性、メルカプト変性、および異種官能基変性(エポキシ基、アミノ基、ポリエーテル基)を示し、非反応性シリコーンオイルとは、ポリエーテル変性、メチルスチリル基変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、フッ素変性、および親水特殊変性を示す。
【0033】
金属ナノ粒子焼結体層用組成物中の金属ナノ粒子の含有量は、金属ナノ粒子及び分散媒からなる分散体:100質量%に対して、2.5〜95.0質量%含有することが好ましく、3.5〜90.0質量%含有することが、より好ましい。金属ナノ粒子の含有量を、金属ナノ粒子および分散媒からなる分散体:100質量%に対して、2.5〜95.0質量%の範囲が好ましいのは、2.5質量%未満では特に焼成後の電極の特性には影響はないけれども、必要な厚さの電極を得ることが難しく、95.0質量%を越えると組成物の湿式塗工時にインクまたはペーストとしての必要な流動性を失ってしまうからである。
【0034】
また、金属ナノ粒子焼結体層用組成物を構成する分散媒は、全ての分散媒:100質量%に対して、1質量%以上、好ましくは2質量%以上の水と、2質量%以上、好ましくは3質量%以上のアルコール類とを含有することが好適である。例えば、分散媒が、水およびアルコール類のみからなる場合、水を2質量%含有するときはアルコール類を98質量%含有し、アルコール類を2質量%含有するときは水を98質量%含有する。水の含有量を、全ての分散媒100質量%に対して、1質量%以上の範囲が好適であるとしたのは、1質量%未満では、組成物を湿式塗工法により塗工して得られた膜を低温で焼結し難く、また、焼成後の金属ナノ粒子焼結体層の導電性と反射率が低下してしまい、アルコール類の含有量を、全ての分散媒:100質量%に対して、2質量%以上の範囲が好適であるとしたのは、2質量%未満では、上記と同様に組成物を湿式塗工法により塗工して得られた膜を低温で焼結し難く、また、焼成後の電極の導電性と反射率が低下してしまうからである。分散媒に用いるアルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、イソボニルヘキサノールおよびエリトリトールからなる群より選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0035】
アルコール類の添加は、基材との濡れ性の改善のためであり、基材の種類に合わせて水とアルコール類の混合割合を自由に変えることができる。
【0036】
金属ナノ粒子焼結体層用組成物は、所望の成分を、常法により、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドミル、セントリミル、三本ロール等によって混合し、金属ナノ粒子等を分散させ、製造することができる。無論、通常の攪拌操作によって製造こともできる。
【0037】
金属ナノ粒子焼結体層用組成物を成膜する湿式塗工法は、スプレーコーティング法、ディスペンサーコーティング法、スピンコーティング法、ナイフコーティング法、スリットコーティング法、インクジェットコーティング法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法またはダイコーティング法のいずれかであることが好ましいが、これに限られるものではなく、あらゆる方法を利用できる。
【0038】
スプレーコーティング法は、金属ナノ粒子焼結体層用組成物を圧縮エアにより霧状にして基材に塗布する、または分散体自体を加圧し霧状にして基材に塗布する方法であり、ディスペンサーコーティング法は、例えば、金属ナノ粒子焼結体層用組成物を注射器に入れ、この注射器のピストンを押すことにより注射器先端の微細ノズルから分散体を吐出させて、基材に塗布する方法である。スピンコーティング法は、金属ナノ粒子焼結体層用組成物を回転している基材上に滴下し、この滴下した金属ナノ粒子焼結体層用組成物を、その遠心力により基材周縁に拡げる方法であり、ナイフコーティング法は、ナイフの先端と所定の隙間をあけた基材を水平方向に移動可能に設け、このナイフより上流側の基材上に金属ナノ粒子焼結体層用組成物を供給して、基材を下流側に向って水平移動させる方法である。スリットコーティング法は、金属ナノ粒子焼結体層用組成物を狭いスリットから流出させて基材上に塗布する方法であり、インクジェットコーティング法は、市販のインクジェットプリンタのインクカートリッジに金属ナノ粒子焼結体層用組成物を充填し、基材上にインクジェット印刷する方法である。スクリーン印刷法は、パターン指示材として紗を用い、その上に作られた版画像を通して金属ナノ粒子焼結体層用組成物を基材に転移させる方法である。オフセット印刷法は、版に付けた金属ナノ粒子焼結体層用組成物を、直接基材に付着させず、版から一度ゴムシートに転写させ、ゴムシートから改めて基材に転移させる、金属ナノ粒子焼結体層用組成物の撥水性を利用した印刷方法である。ダイコーティング法は、ダイ内に供給された金属ナノ粒子焼結体層用組成物を、マニホールドで分配させてスリットより薄膜上に押し出し、走行する基材の表面を塗工する方法である。ダイコーティング法には、スロットコート方式やスライドコート方式、カーテンコート方式がある。
【0039】
成膜した金属ナノ粒子焼結体層用組成物の塗膜の乾燥温度は、被接合体であるLED素子等に影響を与えない温度以下、例えば、60℃以下が望ましい。
【0040】
乾燥後の塗膜の焼成温度は、130〜250℃の範囲であると好ましい。130℃未満では、金属ナノ粒子焼結体層において、硬化不足の不具合が生じるからである。また、250℃を越えると、低温プロセスという生産上のメリットを生かせない、すなわち、製造コストが増大し、生産性が低下してしまう。また、被接合体としての候補であるLED素子や、アモルファスシリコン、微結晶シリコン、またはこれらを用いたハイブリッド型シリコン太陽電池は、比較的熱に弱く、焼成工程によって変換効率が低下するからである。
【0041】
塗膜の焼成時間は、5〜60分間の範囲であると好ましい。焼成時間が下限値未満では、金属ナノ粒子焼結体層において、焼成が十分でない不具合が生じるからである。焼成時間が上限値を越えると、必要以上に製造コストが増大して生産性が低下してしまい、また、LED素子の発光効率や太陽電池セルの変換効率が低下する不具合を生じるためである。
【0042】
《バリア層》
バリア層は、はんだ層を形成する際、またはエ−ジングでの、金属ナノ粒子焼結体層のはんだ食われを抑制する。このバリア層は、バリア層用組成物を、湿式塗工用により成膜し、乾燥した後、焼成することにより形成することができる。なお、バリア層は、めっき法やスパッタ法等の真空成膜法より形成することもできる。
【0043】
バリア層は、厚さが0.1〜10μmである、と金属ナノ粒子焼結体層のはんだ食われ防止、密着性の観点から好ましい。
【0044】
バリア層用組成物は、金属ナノ粒子ベースのバリア層用組成物または金属化合物ベースのバリア層用組成物のいずれか一方または双方を使用することができる。以下、(A)金属ナノ粒子ベースのバリア層用組成物、(B)金属化合物ベースのバリア層用組成物の順に説明する。
【0045】
(A)金属ナノ粒子ベースのバリア層用組成物
(A)金属ナノ粒子ベースのバリア層用組成物は、金属ナノ粒子を含み、金属としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金等の周期表第8族金属;チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の周期表第4A族金属;バナジウム、ニオブ、タンタル等の周期表第5A族金属;クロム、モリブデン、タングステン等の周期表第6A族金属;マンガン等の周期表第7A族金属;銅、銀、金等の周期表第1B族金属、亜鉛、カドミウム等の周期表第2B族金属、アルミニウム、ガリウム、インジウム等の周期表第3B族金属、ゲルマニウム、スズ、鉛等の周期表第4B族金属、アンチモン、ビスマス等の周期表第5B族金属等が挙げられ、金属ナノ粒子は、これらの金属単体、またはこれらの金属の合金のいずれでもよい。これらの金属または合金の中から、はんだの材質等により、適宜選択することができ、例えば、Au−Snはんだに対しては、ニッケル、銀、金、チタン等が好ましい。金属ナノ粒子は、単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
【0046】
金属ナノ粒子はナノメーターサイズである。例えば、金属ナノ粒子の平均粒子径(平均一次粒子径)は、好ましくは1〜100nm、より好ましくは1.5〜80nm、さらに好ましくは2〜70nm、特に好ましくは3〜50nmであり、通常1〜40nm(例えば、2〜30nm)程度が使用される。
【0047】
金属ナノ粒子は、保護コロイドで被覆されていると、室温での分散性、保存安定性がよいため好ましく、この保護コロイドとしては、有機化合物や、高分子分散剤が挙げられる。
【0048】
保護コロイドとして使用される有機化合物としては、1〜3個のカルボキシル基を有する有機化合物であると好ましく、モノカルボン酸、ポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸等のカルボン酸が、より好ましい。
【0049】
保護コロイドとして使用される高分子分散剤としては、親水性モノマーで構成された親水性ユニット(又は親水性ブロック)を含む樹脂(又は水溶性樹脂、水分散性樹脂)が挙げられる。親水性モノマーとしては、例えば、カルボキシル基又は酸無水物基含有単量体(アクリル酸、メタクリル酸等の(メタ)アクリル系単量体、マレイン酸等の不飽和多価カルボン酸、無水マレイン酸等)、ヒドロキシル基含有単量体(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ビニルフェノール等)等の付加重合系モノマー;アルキレンオキシド(エチレンオキシドなど)などの縮合系モノマー等が挙げられる。
【0050】
金属ナノ粒子ベースのバリア層用組成物は、分散媒を含有すると、湿式塗工法での塗工し易さの観点から好ましい。分散媒としては、金属ナノ粒子や保護コロイドとの組み合わせにより、十分な粘度を生じさせる溶媒であれば特に限定されず、汎用の溶媒が使用できる。溶媒としては、水、アルコール類が挙げられる。分散媒の割合は、湿式塗工法での塗工しやすさ等により、適宜選択すればよい。
【0051】
金属ナノ粒子ベースのバリア層用組成物中の固形分全体に対する金属ナノ粒子の割合は、湿式塗工法での塗工し易さ、金属ナノ粒子の焼結密度等により、適宜選択すればよく、一例としては、好ましくは70〜99質量%、より好ましくは85〜99質量%、さらに好ましくは90〜99質量%である。
【0052】
保護コロイドの割合は、金属ナノ粒子の分散性等により適宜選択すればよく、例えば、金属ナノ粒子:100質量部に対して、0.5〜20質量部が好ましく、1〜15質量部がより好ましい。有機化合物と高分子分散剤との割合も、金属ナノ粒子の分散性等により適宜選択すればよい。
【0053】
金属ナノ粒子ベースのバリア層用組成物は、公知の方法で製造した金属ナノ粒子等を、金属ナノ粒子焼結体層用組成物と同様に、分散させ、製造することができる。
【0054】
(B)金属化合物ベースのバリア層用組成物
次に、(B)金属化合物ベースのバリア層用組成物は、金属化合物を含む。金属化合物は、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物等が挙げられる。金属化合物を構成する金属としては、上記(A)金属ナノ粒子ベースの金属の場合と同様である。これらの金属化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。金属化合物を構成する金属は、少なくとも銀などの貴金属(特に周期表第1B族金属)を含む金属(金属単体及び金属合金)、特に貴金属単体(例えば、銀単体など)であると好ましい。以下、銀化合物の場合について説明する。
【0055】
銀化合物としては、酸化第一銀、酸化第二銀、炭酸銀、酢酸銀、アセチルアセトン銀錯体等が挙げられる。これらの銀化合物は、単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。この銀化合物は、市販されたものを用いることができる。
【0056】
銀化合物の平均粒径は、好ましくは0.01〜1μm、より好ましくは0.01〜0.5μmの範囲であり、還元反応条件や加熱温度等に応じて適宜選択することができる。
しい。
【0057】
金属化合物ベースのバリア層用組成物は、分散媒も含む。分散媒としては、水、エタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、イソホロン、テルピネオール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ブチルセロソルブアセテート等の有機溶剤を使用することができる。分散媒の割合は、湿式塗工法での塗工しやすさ等により、適宜選択すればよい。
【0058】
また、銀化合物を分散媒に良好に分散させるために、分散媒を加えることが好ましい。分散媒としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどが用いられ、その含有量は、一般的には、銀化合物:100質量部に対して、0〜300質量とである。
【0059】
また、金属化合物ベースのバリア層用組成物は、湿式塗工法での塗工し易さを向上させるために、バインダー樹脂を含んでもよい。バインダー樹脂としては、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、これらのモノマーでもよい。
【0060】
さらに、金属化合物ベースのバリア層用組成物は、金属化合物を還元可能な還元剤を含んでもよい。還元剤としては、エチレングリコール、ホルマリン、ヒドラジン、アスコルビン酸、各種アルコール等が挙げられる。
【0061】
金属化合物ベースのバリア層用組成物は、市販の金属化合物等を、金属ナノ粒子焼結体層用組成物と同様に、分散させ、製造することができる。
【0062】
(バリア層)
(A)金属ナノ粒子ベースのバリア層用組成物、(B)金属化合物ベースのバリア層用組成物を、湿式塗工用により成膜する方法、乾燥する方法、および焼成する方法は、金属ナノ粒子焼結体層用組成物と同様である。
【0063】
〔はんだ接合層〕
はんだ接合層は、厚さを精密に制御することが可能であるため、はんだペーストを溶融して形成されると好ましい。なお、はんだ接合層が接合体に使用されているときには、はんだ接合層は溶融後の状態であるが、はんだペーストをはんだ接合層として、被接合体との接合時に、はんだペーストを溶融する方が、製造プロセス簡略化の観点から、当然に好ましい。
【0064】
はんだペーストとしては、Au−Sn合金はんだ、錫ベースの鉛フリーはんだ等が挙げられ、良好な放熱特性が得られるAu−Snはんだが好ましい。
【0065】
Au−Sn合金はんだは、Sn:15〜25質量%であると好ましく、共晶組成のSn:20質量%に近い組成(±3質量%)であると、より好ましい。
【0066】
Au−Sn合金はんだを、Au−Sn合金はんだペーストを溶融して形成する場合には、上記組成のAu−Sn合金はんだ粉末に、フラックスを含有させる。このフラックスは、市販のものでよく、フラックスには、一般的に、ロジン、活性剤、溶剤および増粘剤が含まれる。市販のフラックスとしては、RMAタイプのロジン系フラックスが挙げられる。Au−Sn合金はんだの溶融温度は、270〜400℃が好ましく、300〜350℃がより好ましい。
【0067】
《はんだ接合用積層体》
図1に、はんだ接合用積層体の断面の模式図を示す。図1からわかるように、はんだ接合用積層体1は、金属ナノ粒子焼結体層10と、バリア層11と、はんだ接合層12と、をこの順に備える。
【0068】
はんだ接合用積層体は、金属ナノ粒子焼結体層が、バリア層の反対面に、透明層を備えると、金属ナノ粒子焼結体層による増反射効果を制御することができ、好ましい。透明層は、0.01〜0.5μmであると、反射率向上の観点から好ましい。図2に、透明層を含むはんだ接合用積層体の断面の模式図の一例を示す。図2からわかるように、透明層24は、金属ナノ粒子焼結体層21上で、接合層22と反対面に、形成される。
【0069】
また、はんだ接合用積層体は、金属ナノ粒子焼結体層と、バリア層との間に、さらに、バインダー層を備えると、金属ナノ粒子焼結体層のはんだ食われをより確実に抑制することができ、好ましい。バインダー層は、0.001〜1μmであると、密着性向上の観点から好ましい。図3に、バリア層を含むはんだ接合用積層体の断面の模式図の一例を示す。図3からわかるように、バインダー層35は、金属ナノ粒子焼結体層31と、バリア層32との間に、形成される。
【0070】
(透明層およびバインダー層)
透明層およびバインダー層は、バインダー組成物を、湿式塗工用により成膜し、乾燥した後、焼成することにより形成することができる。ここで、透明層およびバインダー層は、バインダーを含有し、加熱により硬化するポリマー型バインダーまたはノンポリマー型バインダーの少なくとも1種を含むと、湿式塗工法により容易に製造することができ、好ましい。
【0071】
ポリマー型バインダーとしては、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、アルキッド樹脂、ポリウレタン、アクリルウレタン、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、セルロース、およびシロキサンポリマーが挙げられる。また、ポリマー型バインダーは、アルミニウム、シリコン、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銀、銅、亜鉛、モリブデンおよび錫の金属石鹸、金属錯体、金属アルコキシドおよび金属アルコキシドの加水分解体からなる群より選択される少なくとも1種を含むと好ましい。
【0072】
ノンポリマー型バインダーとしては、金属石鹸、金属錯体、金属アルコキシド、アルコキシシラン、ハロシラン類、2−アルコキシエタノール、β−ジケトン、およびアルキルアセテートなどが挙げられる。また、金属石鹸、金属錯体、または金属アルコキシドに含まれる金属は、アルミニウム、シリコン、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銀、銅、亜鉛、モリブデン、錫、インジウムまたはアンチモンであると好ましく、シリコン、チタンのアルコキシド(例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、ブトキシランが、より好ましい。ハロシラン類としては、トリクロロシランが挙げられる。これらポリマー型バインダー、ノンポリマー型バインダーが、加熱により硬化することで、高い密着性を有する反射防止膜の形成を可能とする。
【0073】
金属アルコキシドを硬化させるときには、加水分解反応を開始させるための水分とともに、触媒として塩酸、硝酸、リン酸(HPO)、硫酸等の酸、または、アンモニア水、水酸化ナトリウム等のアルカリを含有させると好ましく、加熱硬化後に、触媒が揮発し易く、残存しにくい、ハロゲンが残留しない、耐水性に弱いP等が残存しない、硬化後の密着性等の観点から、硝酸がより好ましい。
【0074】
バインダー組成物中でのバインダーの含有割合は、分散媒を除くバインダー組成物:100質量部に対して、10〜90質量部であると好ましく、30〜80質量部であると、より好ましい。10質量部以上であれば、透明導電膜と接着力が良好であり、90以下であると成膜時の膜ムラが生じにくい。また、バインダーとして、金属アルコキシドを、触媒として硝酸を用いる場合には、金属アルコキシド:100質量部に対して、硝酸が1〜10質量部であると、バインダーの硬化速度、硝酸の残存量の観点から好ましい。
【0075】
さらに、バインダー組成物は、透明酸化物微粒子を含むと、透明層の屈折率を調整でき、金属ナノ粒子焼結体層による増反射効果を制御することができるので、好ましい。この透明酸化物微粒子は、高屈折率であると、透明酸化物微粒子の含有量により、焼成または硬化後の透明膜の屈折率を容易に調整することができるので、より好ましい。透明酸化物微粒子としては、SiO、TiO、ZrO、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)、ZnO、ATO(Antimony Tin Oxide:アンチモンドープ酸化錫)等の微粉末が挙げられ、屈折率の観点からITOやTiOが好ましい。また、透明酸化物微粒子の平均粒径は、分散媒中で安定性を保つため、10〜100nmの範囲内であることが好ましく、このうち、20〜60nmの範囲内であると、より好ましい。ここで、平均粒径は、動的光散乱法で測定する。なお、透明酸化物微粒子は、予め分散媒中に分散させた後、バインダー組成物の他の成分と混合すると、透明酸化物微粒子の均一分散性の観点から好ましい。
【0076】
透明酸化物微粒子は、分散媒を除くバインダー組成物:100質量部に対して、10〜90質量部であると好ましく、20〜70質量部であると、より好ましい。10質量部以上であれば、透明導電膜からの戻り光を透明導電膜側へ返す効果が期待できる、90質量部以下であると、透明層自体の強度、および透明層と金属ナノ粒子焼結体層との接着力、透明層と被接合体との接着力を維持する。
【0077】
また、バインダー組成物は、使用する他の成分に応じてカップリング剤を加えるのが好ましい。透明層の低ヘーズ化、透明層と金属ナノ粒子焼結体層との接着力、透明層と被接合体との接着力を向上し、さらに透明酸化物微粒子を含有する場合には、透明酸化物微粒子と透光性バインダーの密着性も向上するためである。カップリング剤としては、シランカップリング剤、アルミカップリング剤及びチタンカップリング剤などが挙げられる。
【0078】
シランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。アルミカップリング剤としては、式(1):
【0079】
【化1】

【0080】
で示されるアセトアルコキシ基を含有するアルミカップリング剤が挙げられる。また、チタンカップリング剤としては、式(2)〜(4):
【0081】
【化2】

【0082】
【化3】

【0083】
【化4】

【0084】
で示されるジアルキルピロリン酸基を有するチタンカップリング剤、また、式(5):
【0085】
【化5】

【0086】
で示されるジアルキルリン酸基を有するチタンカップリング剤が挙げられる。
【0087】
カップリング剤は、バインダー組成物:100質量部に対して、0.01〜5質量部であると好ましく、0.1〜2質量部であると、より好ましい。0.01質量部以上であれば、透明層と金属ナノ粒子焼結体層との接着力、透明層と被接合体との接着力向上や、著しい粒子分散性の向上効果が見られ、5質量部より多いと、膜ムラが生じやすい。
【0088】
バインダー組成物は、成膜を良好にするために、分散媒を含むと好ましい。分散媒としては、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類;トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類やエチレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ等のグリコールエーテル類等が挙げられる。分散媒の含有量は、良好な成膜性を得るために、バインダー組成物:100質量部に対して、80〜99質量部であると好ましい。
【0089】
また、使用する成分に応じて、水溶性セルロース誘導体を加えることが好ましい。水溶性セルロース誘導体は、非イオン化界面活性剤であるが、他の界面活性剤に比べて少量の添加でも導電性酸化物粉末を分散させる能力が極めて高く、また、水溶性セルロース誘導体の添加により、形成される透明層の透明性も向上する。水溶性セルロース誘導体としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。水溶性セルロース誘導体の添加量は、バインダー組成物:100質量部に対して、0.2〜5質量部が好ましい。
【0090】
さらに、バインダー組成物に、低抵抗化剤を加えることも好ましい。低抵抗化剤としては、Co、Fe、In、Ni、Pb、Sn、Ti、およびZnの鉱酸塩および有機酸塩から選ばれる金属塩を使用することができる。鉱酸塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等が挙げられ、有機酸塩としては、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、オクチル酸塩、アセチル酢酸塩、ナフテン酸塩、安息香酸塩等が挙げられる。低抵抗化剤の添加量は、バインダー組成物:100質量部に対して、0.5〜10質量部が好ましい。
【0091】
バインダー組成物を製造する方法、バインダー組成物を湿式塗工用により成膜する方法、乾燥する方法、および焼成する方法は、金属ナノ粒子焼結体層用組成物と同様である。
【0092】
なお、金属ナノ粒子焼結体層が、空孔を有する場合には、金属ナノ粒子焼結体層上に、バインダー組成物を塗布するときに、金属ナノ粒子焼結体層の空孔にバインダー組成物が浸透し、バインダー組成物が硬化した後、金属ナノ粒子焼結体層がバインダーを含む。このバインダーを含む金属ナノ粒子焼結体層は、金属ナノ粒子焼結体層のはんだ食われを抑制するため、好ましい。
【0093】
〔接合体〕
本発明の接合体は、第1の被接合体と、上記のはんだ接合用積層体と、第2の被接合体を、この順で備えることを特徴とする。
【0094】
図4に、本発明の接合体の断面の模式図の一例を示す。なお、図4は、透明層およびバインダー層を備える例である。図4からわかるように、接合体4は、第1の被接合体46と、はんだ接合用積層体40と、第2の被接合体47を、この順で備える。はんだ接合用積層体40は、金属ナノ粒子焼結体層41と、バリア層42と、はんだ接合層43と、をこの順に備え、金属ナノ粒子焼結体層41が、バリア層42の反対面に、透明層44を備え、さらに、金属ナノ粒子焼結体層41と、バリア層42との間に、さらに、バインダー層45を備える。
【0095】
ここで、第1の被接合体が、発光可能または光電変換可能な素子であり、金属ナノ粒子焼結体層が、第1の被接合体からの光を反射可能であり、第2の接合体が、基板であると、接合体を光学用途に使用するために、適している。具体的には、第1の被接合体が、発光可能な素子であると、LED等の発光源として使用される接合体として適しており、第1の被接合体が、光電変換可能な素子であると、太陽電池として使用される接合体として適している。
【実施例】
【0096】
以下に、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0097】
〔材料1−1の調製〕
バインダーとしてノンポリマー型バインダーの2−n−ブトキシエタノールと3−イソプロピル−2,4ペンタンジオンの混合液(質量比5:5)を10質量部と、分散媒としてイソプロパノール:90質量部とを混合し、室温で1時間、回転速度200rpmで攪拌することにより、材料1−1:10gを調製した。
【0098】
〔材料1−2の調製〕
バインダーとしてノンポリマー型バインダーの2−n−プロポキシエタノールを10質量部と、分散媒としてイソプロパノールとブタノールの混合液(質量比40:60):90質量部とを混合し、室温で1時間、回転速度200rpmで攪拌することにより、材料1−2:10gを作製した。
【0099】
〔材料1−3の調製〕
バインダーとしてSiO結合剤:10質量部と、分散媒としてエタノールとブタノールの混合液(質量比98:2):90質量部とを混合することにより、材料1−3:10gを調製した。なお、バインダーとして用いたSiO結合剤は500cmのガラス製の4ツ口フラスコを用い、テトラエトキシシランを140g、エチルアルコール240gを加え、攪拌しながら12N−HC11.0gを25gの純粋に溶解して一度に加え、その後80℃で6時間反応させた。
【0100】
〔材料1−4の調製〕
バインダーとしてゼラチンを5質量部、水溶性セルロース誘導体としてヒドロキシプロピルセルロースを1質量部、分散媒として水を94質量部の割合で混合し、30℃の温度で1時間、回転速度200rpmで攪拌することにより、材料1−4:10gを調製した。
【0101】
〔材料4−1の調製〕
(A)金属ナノ粒子ベースのバリア層用組成物として、Ag80%,Au20%の混合金属ナノ粒子分散液を混合した後、金属ナノ粒子分散液を遠心分離した。遠心分離後の沈殿物に、金属ナノ粒子:95質量部に対して、ポリエチレングリコール:5質量部となるように加え、遊星撹拌型混合機でバリア層用組成物を調整した。ここで、Ag80%,Au20%の混合金属ナノ粒子分散液は、以下のように作製した。
【0102】
《銀ナノ粒子分散液の作製》
硝酸銀を脱イオン水に溶解して、濃度が25質量%の金属塩水溶液を調製した。また、クエン酸ナトリウムを脱イオン水に溶解して、濃度が26質量%のクエン酸ナトリウム水溶液を調製した。このクエン酸ナトリウム水溶液に、35℃に保持された窒素ガス気流中で、粒状の硫酸第1鉄を直接加えて溶解させ、クエン酸イオンと第1鉄イオンを3:2のモル比で含有する還元剤水溶液を調製した。
【0103】
次に、上記窒素ガス気流を35℃に保持しながら、還元剤水溶液中に、マグネチックスターラーの攪拌子を入れ、攪拌子の回転速度:100rpmで攪拌しながら、この還元剤水溶液に、上記金属塩水溶液を滴下して、混合した。ここで、還元剤水溶液への金属塩水溶液の添加量は、還元剤水溶液の量の1/10以下になるように、各溶液の濃度を調整して、室温の金属塩水溶液を滴下しても反応温度が40℃に保持されるようにした。また、還元剤水溶液と金属塩水溶液との混合比は、金属塩水溶液中の金属イオンの総原子価数に対する、還元剤水溶液のクエン酸イオンと第1鉄イオンとのモル比が、いずれも3倍モルとなるようにした。還元剤水溶液への金属塩水溶液の滴下が終了した後、さらに、混合液の攪拌を15分間続けることにより、混合液内部に銀ナノ粒子を生じさせ、銀ナノ粒子が分散した銀ナノ粒子分散液:100cmを得た。銀ナノ粒子分散液のpHは5.5であり、分散液中の銀ナノ粒子の化学量論的生成量は5g/リットルであった。
【0104】
得られた銀ナノ粒子分散液を、室温で放置することにより、分散液中の銀ナノ粒子を沈降させ、沈降した銀ナノ粒子の凝集物をデカンテーションにより分離した。分離した銀ナノ粒子凝集物に、脱イオン水を加えて分散体とし、限外濾過により脱塩処理した後、さらにメタノールで置換洗浄して、銀の含有量を50質量%にした。その後、遠心分離機を用い、この遠心分離機の遠心力を調整して、粒径が100nmを越える比較的大きな銀粒子を分離することにより、一次粒径10〜50nmの範囲内の銀ナノ粒子を数平均で71%含有するように調整した。即ち、数平均で全ての銀ナノ粒子100%に対する一次粒径10〜50nmの範囲内の銀ナノ粒子の占める割合が71%になるように調整し、銀ナノ粒子分散を得た。得られた銀ナノ粒子は、クエン酸ナトリウムの保護剤が化学修飾されていた。
【0105】
《金ナノ粒子分散液の作製》
硝酸銀の代わりに塩化金酸を用いたこと以外は、銀ナノ粒子の作製と同様にして、平均粒径が10nmの金ナノ粒子を5質量%含む銀ナノ粒子分散液:100cmを得た。
【0106】
《混合金属ナノ粒子分散液の作製》
得られた銀ナノ粒子分散液と金ナノ粒子分散液を質量比でAg80%,Au20%となるように混合し、混合金属ナノ粒子分散液:100cmを得た。
【0107】
〔材料4−2の作製〕
(B)金属化合物ベースのバリア層用組成物として、Ag粒子(平均粒径:0.1μm)70重量部、酸化第一銀(平均粒径:0.1μm):5重量部、炭酸銀(平均粒径:0.4μm):5重量部、テルピネオール:20重量部を混合した。各原料を予備混合後、遊星撹拌型混合機でペーストを調整した。
【0108】
〔材料5−1の作製〕
三菱マテリアル製Au−Sn合金はんだ(ピン転写用)を使用した。組成はAu78/Sn22(質量比)である。この材料5−1は、ピン転写法によって素子へ成膜した後、310℃まで加熱して接合させた。
【0109】
〔材料5−2の作製〕
三菱マテリアル製Au−Sn合金はんだ(ピン転写用)を使用した。組成はAu78/Sn22(質量比)である。この材料5−2は、ピン転写法によって素子へ成膜した後、350℃まで加熱して接合させた。
【0110】
〔金属ナノ粒子焼結体層用組成物〕
表1に記載した組成で混合し、金属ナノ粒子焼結体層用組成物を調製した。ここで、銀ナノ粒子および金ナノ粒子は、材料4−1と同様に作製し、Auの原料としては塩化金酸を、Agの原料としては硝酸銀を使用した。
【0111】
〔実施例1〕
長さ:5mm、幅:5mm、厚さ:5mmのサファイア基板上に発光層を成膜した素子を用意した。支持基板には、長さ:20mm、幅:20mm、厚さ:0.5mmで、表面にNi/AuめっきをしたSi製基板を準備した。まず、素子の接合処理面上に、金属ナノ粒子焼結体層用組成物をスピンコート法で塗布し、130℃で10分焼成し、厚さ:0.3μmの金属ナノ粒子焼結体層を形成した。この金属ナノ粒子焼結体層上に、材料4−1をスピンコート法で塗布し、200℃で20分焼成し、厚さ:1μmのバリア層を形成した。このバリア層上に、材料5−1をピン転写法で成膜した後、この成膜面と基板のNi面を貼り合わせた後、310℃で10分加熱して、素子と基板を接合した。
【0112】
〔実施例2、比較例1、2〕
表1に記載した条件で、実施例1と同様にして、実施例2、比較例1、2を作製した。表1からわかるように、比較例1は、バリア層とバインダー層が形成されておらず、比較例2は、金属ナノ粒子焼結体層とバインダー層が形成されていない。
【0113】
〔実施例3〕
実施例1と同じ素子、基板を用い、まず、素子の接合面上に、金属ナノ粒子焼結体層用組成物をスクリーン印刷法で塗布し、150℃で5分焼成し、厚さ:0.1μmの金属ナノ粒子焼結体層を形成した。この金属ナノ粒子焼結体層上に、材料1−4をディップコーター法で塗布した後、乾燥し、厚さ:0.1μmのバインダー層を形成した。このバインダー層上に、材料4−1をインクジェット法で塗布し、200℃で20分焼成し、厚さ:1μmのバリア層を形成した。このバリア層上に、材料5−1をピン転写法で成膜した後、この成膜面と基板のNi面を貼り合わせた後、310℃で10分加熱して、素子と基板を接合した。
【0114】
〔実施例4、5〕
表1に記載した条件で、実施例3と同様にして実施例4、5を作製した。
【0115】
〔接合強度の評価〕
実施例1〜5、比較例1、2の接合強度(シェア強度)を、精密万能試験機オートグラフ AG−Xplusで測定した。測定条件は、JIS Z3198−5に準拠して行った。
【0116】
〔発光強度の評価〕
実施例1〜5、比較例1、2の発光強度(相対強度)を、Labsphere社LSA−3000装置で測定した。
【0117】
【表1】

【0118】
表1から明らかなように、実施例1〜5のすべてで、接合強度および発光強度が高かった。これに対して、バリア層を形成していない比較例1では、接合強度が低く、ハンダ食われにより発光強度は測定できなかった。また、比較例2では、接合強度および発光強度がやや低かった。
【0119】
本発明のはんだ接合用積層体は、従来の高価なNiバリア層に対し、金属粒子と溶剤を主成分とする金属ペースト等を代わりに用いることで、製造工程を簡便にし、ランニングコストの大幅な改善を行うことができ、このはんだ接合用積層体を含むLED素子等に使用可能な高信頼性の接合体を提供することができる。
【符号の説明】
【0120】
1、2、3 はんだ接合用積層体
4 接合体
11、21、31、41 金属ナノ粒子焼結体層
12、22、32、42 バリア層
13、23、33、43 はんだ接合層
24、44 透明層
35、45 バインダー層
46 第1の被接合体
47 第2の被接合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ナノ粒子焼結体層と、金属粒子または金属酸化物粒子を含むバリア層と、はんだ接合層と、をこの順に備えることを特徴とする、はんだ接合用積層体。
【請求項2】
金属ナノ粒子焼結体層が、バリア層の反対面に、透明層を備える、請求項1記載のはんだ接合用積層体。
【請求項3】
金属ナノ粒子焼結体層と、バリア層との間に、さらに、バインダー層を備える、請求項1または2記載のはんだ接合用積層体。
【請求項4】
金属ナノ粒子焼結体層が、75質量%以上の銀を含み、かつ、金、銅、錫、亜鉛、モリブデン及びマンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載のはんだ接合用積層体。
【請求項5】
金属ナノ粒子焼結体層が、バインダーを含む、請求項1〜4のいずれか1項記載のはんだ接合用積層体。
【請求項6】
金属ナノ粒子焼結体層の厚さが、0.01〜0.5μmである、請求項1〜5のいずれか1項記載のはんだ接合用積層体。
【請求項7】
各層が、湿式塗工法で成膜した後、130〜250℃で焼成された、請求項1〜6のいずれか1項記載のはんだ接合用積層体。
【請求項8】
透明層およびバインダー層が、加熱により硬化するポリマー型バインダーまたはノンポリマー型バインダーの少なくとも1種を含む、請求項3〜7のいずれか1項記載のはんだ接合用積層体。
【請求項9】
湿式塗工法が、スプレーコーティング法、ディスペンサーコーティング法、スピンコーティング法、ナイフコーティング法、スリットコーティング法、インクジェットコーティング法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法またはダイコーティング法のいずれかである、請求項7または8記載のはんだ接合用積層体。
【請求項10】
第1の被接合体と、請求項1〜9のいずれか1項記載のはんだ接合用積層体と、第2の被接合体を、この順で備えることを特徴とする、接合体。
【請求項11】
第1の被接合体が、発光可能または光電変換可能な素子であり、金属ナノ粒子焼結体層が、第1の被接合体からの光を反射可能であり、第2の接合体が、基板である、請求項10記載の接合体。
【請求項12】
第1の被接合体が、発光可能な素子である、請求項11記載の発光源として使用される接合体。
【請求項13】
第1の被接合体が、光電変換可能な素子である、請求項11記載の太陽電池として使用される接合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−169355(P2012−169355A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27502(P2011−27502)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】