説明

はんだ接合装置

【課題】はんだ接合中の加熱チャンバ内のカルボン酸含有ガスの濃度を、リアルタイムに継続して観測し、はんだ接合にバラツキが発生するのを防止して、はんだ接合の信頼性を高めることである。
【解決手段】リフロー部のチャンバに接続されたカルボン酸含有ガス濃度を計測する計測部と、計測部の計測キャビティ内に設置された半導体式ガスセンサと、この半導体式ガスセンサで計測された信号に基づきカルボン酸含有ガス濃度を算出する信号処理部と、信号処理部で算出されたカルボン酸含有ガス濃度のデータを表示する表示器を備えたはんだ接合装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ接合装置に関するものであり、特に、半導体装置の製造工程における半導体チップや電子部品と配線基板との接合等に用いられるはんだ接合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置のリフローはんだ接合(はんだ接合と記す)では、はんだ表面や被接合物である半導体装置の表面を清浄化させるために、フラックスが用いられている。しかし、はんだ接合後に、固化して残ったハロゲン成分を含有するフラックス残渣が、半導体装置の配線の、腐食やマイグレーションの原因となるので、はんだ接合後に、フラックス残渣を除去する有機溶剤による洗浄が、不可欠であった。この有機溶剤による洗浄は、半導体装置製造のスループットを長くするとともに、環境に悪影響を与えた。
そのため、フラックスを用いないはんだ接合方法の開発が望まれていた。
【0003】
半導体装置のフラックスを用いないはんだ接合方法の一つに、カルボン酸を用いた接合方法がある。
この方法で用いられるはんだ接合装置は、カルボン酸を供給する装置(カルボン酸供給装置と記す)から、はんだ接合される被接合物(ワークと記す)がセットされた加熱溶融チャンバ内に、蒸気状のカルボン酸を加えるか、または液状のカルボン酸を加えてカルボン酸蒸気を発生させるかして、カルボン酸蒸気により、ワーク表面を被覆している酸化膜を除去する。すなわちカルボン酸含有ガスにより洗浄処理して、はんだ接合する装置である(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3397313号公報(第6頁、第7頁、第4図)
【特許文献2】特許第3404021号公報(第3頁、第4頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなカルボン酸含有ガスにより、ワークを洗浄処理するはんだ接合装置では、リフロー装置の加熱チャンバ内のカルボン酸濃度が、ワークの洗浄処理に大きく影響し、半導体装置のはんだ接合の良否を左右する。
そして、上記特許文献1または特許文献2に記載のはんだ接合装置では、加熱チャンバ内のカルボン酸含有ガスのカルボン酸濃度(カルボン酸含有ガス濃度と記す)は、カルボン酸の供給量や温度および同時に導入される不活性ガスの供給量や温度等、カルボン酸供給装置で設定される条件で決まる。
【0006】
しかし、上記特許文献1または特許文献2に記載のはんだ接合装置では、加熱チャンバ内のカルボン酸含有ガス濃度を計測する手段は用いられておらず、はんだ接合中に、加熱チャンバ内のカルボン酸含有ガス濃度が変化したとしても、その変化を検出できず、カルボン酸供給装置の設定条件を変えて、カルボン酸含有ガス濃度を適正な値に修正することができない。すなわち、はんだ接合中、はんだ接合装置の加熱チャンバ内のカルボン酸含有ガス濃度を、継続して適正な値に維持することができないので、はんだ接合にバラツキを生じるとの問題があった。
【0007】
また、カルボン酸含有ガスによりワークを洗浄処理するはんだ接合装置では、はんだ接合が終了し、ワークである半導体装置を取り出す場合、加熱チャンバ内にカルボン酸含有ガスが残留すると、異臭が発生して作業環境が悪化したり、ワークの表面が再び酸化するので、はんだ接合終了後に加熱チャンバ内のカルボン酸含有ガスを排気する処理が行われる。
しかし、上記特許文献1または特許文献2に記載のはんだ接合装置では、加熱チャンバ内のカルボン酸含有ガス濃度を計測する手段は用いられていないので、排気において加熱チャンバ内のカルボン酸含有ガスが残留しているかどうかを判断できず、長時間の排気処理が必要であり、はんだ接合のスループットが長くなるとの問題があった。
【0008】
また、上記特許文献1または特許文献2に記載のはんだ接合装置において、加熱チャンバ内のカルボン酸含有ガス濃度を計測する手段として、例えば、加熱チャンバにカルボン酸含有ガス採取孔(採取孔と記す)を設け、この採取孔に、従来のガスサンプリング器を取り付け、このガスサンプリング器に採取したカルボン酸含有ガスの濃度を検知管で測定することが考えられる。
【0009】
しかし、検知管でカルボン酸含有ガス濃度を計測する方法は、カルボン酸含有ガスを、一旦ガスサンプリング器に採取して測定するバッチ式であり、また検知管の測定濃度の上限が低いので、採取したカルボン酸含有ガスを希釈する必要があり、測定に時間を要する。すなわち、加熱チャンバ内のカルボン酸含有ガス濃度を、リアルタイムに継続して観測することができず、濃度変化があった時に、即変化を検出して、カルボン酸含有ガス濃度を直ちに修正することができないとの問題があった。
【0010】
それと、上記検知管による測定は、手動で行われるので、再現性が良くないとの問題があった。
それと、カルボン酸含有ガスでワークを洗浄処理するはんだ接合装置では、カルボン酸に蟻酸が最も良く用いられるが、蟻酸濃度を直接に計測する検知管がなく、酢酸用で計測し、補正するため、測定精度と再現性が良くないとの問題があった。
【0011】
また、上記特許文献1または特許文献2に記載のはんだ接合装置において、加熱チャンバ内のカルボン酸含有ガス濃度を計測する手段として、加熱チャンバに設けた採取孔にガスクロマトグラフを取り付けて、カルボン酸含有ガス濃度を測定する手段が考えられるが、ガスクロマトグラフは、装置コストが非常に高く、また、カルボン酸含有ガス濃度が大きく変わった場合、カラムを変更する必要があり、その運用にも手間とコストがかかるとの問題があった。
【0012】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、はんだ接合中の加熱チャンバ内のカルボン酸含有ガス濃度を、コストをかけずに継続して、精度良くリアルタイムに測定することにより、カルボン酸含有ガス濃度の変化を即座に検出し、この検出結果に基づきカルボン酸供給装置の設定条件を変えてカルボン酸含有ガス濃度を適正値に修正し、はんだ接合にバラツキが発生するのを防止した信頼性の高いはんだ接合を実現できるとともに、はんだ接合終了後のカルボン酸含有ガスの排気工程において、加熱チャンバ内のカルボン酸含有ガスの消滅をすばやく検出して、排気処理時間を最適化することにより、はんだ接合のスループットを向上できる、はんだ接合装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係わるはんだ接合装置は、ワークを、導入されたカルボン酸含有ガスで洗浄処理するとともに接合処理するリフロー部と、リフロー部に接続され、リフロー部に導入されたカルボン酸含有ガスの濃度を計測する計測部と、計測部で計測された信号を処理する信号処理部とを備えたはんだ接合装置であって、リフロー部が、ワークを収納するチャンバと、チャンバに設けられた、計測部が接続される、第1の接続部と第2の接続部と、第1の接続部と第2の接続部との各々に設けられたガス流通開閉バルブとを備えており、計測部が、一端側の開口をチャンバの第1の接続部に接続し、他端側の開口をチャンバの第2の接続部に接続した計測キャビティと、計測キャビティ内に設置された半導体式ガスセンサとを備えており、半導体式ガスセンサが、カルボン酸ガスが分解して生成する、CO、H、HOおよびCOの内のいずれか1種類の分解生成ガス分子を計測するものであり、信号処理部が、半導体式ガスセンサと、半導体式ガスセンサで計測された信号に基づき算出されたカルボン酸含有ガス濃度のデータを表示する表示器とに接続されたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係わるはんだ接合装置は、ワークを、導入されたカルボン酸含有ガスで洗浄処理するとともに接合処理するリフロー部と、リフロー部に接続され、リフロー部に導入されたカルボン酸含有ガスの濃度を計測する計測部と、計測部で計測された信号を処理する信号処理部とを備えたはんだ接合装置であって、リフロー部が、ワークを収納するチャンバと、チャンバに設けられた、計測部が接続される、第1の接続部と第2の接続部と、第1の接続部と第2の接続部との各々に設けられたガス流通開閉バルブとを備えており、計測部が、一端側の開口をチャンバの第1の接続部に接続し、他端側の開口をチャンバの第2の接続部に接続した計測キャビティと、計測キャビティ内に設置された半導体式ガスセンサとを備えており、半導体式ガスセンサが、カルボン酸ガスが分解して生成する、CO、H、HOおよびCOの内のいずれか1種類の分解生成ガス分子を計測するものであり、信号処理部が、半導体式ガスセンサと、半導体式ガスセンサで計測された信号に基づき算出されたカルボン酸含有ガス濃度のデータを表示する表示器とに接続されたものであり、リアルタイムで精度良くカルボン酸含有ガス濃度を測定でき、信頼性の高いはんだ接合を実現できるとともに、はんだ接合終了後にカルボン酸含有ガスが残留していないことを確認でき、チャンバの排気処理時間を最適化でき、はんだ接合のスループットを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1に係わるはんだ接合装置の側面断面模式図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係わるはんだ接合装置の側面断面模式図である。
【図3】本発明の実施の形態3に係わるはんだ接合装置の信号処理部の側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係わるはんだ接合装置の側面断面模式図である。
図1に示すように、本実施の形態のはんだ接合装置100は、半導体装置であるワーク15を、洗浄処理するとともに接合処理するリフロー部12と、リフロー部12内のカルボン酸含有ガス濃度を計測する計測部4と、計測部4で計測したカルボン酸含有ガス濃度に対応した信号を処理する信号処理部7とを備えている。
【0017】
リフロー部12は、ワーク15を収納するチャンバ13と、ワーク13の搬入排出用のゲートバルブ16と、ワークを載置でき、且つ加熱によりはんだを溶融させるホットプレート14と、チャンバ13に設けられた計測部4を接続する第1の接続部31と第2の接続部32とを備えている。そして、第1の接続部31と第2の接続部32とは、各々、ガス流通開閉バルブを有している。
【0018】
そして、チャンバ13には、カルボン酸ガス供給装置(図示せず)からのカルボン酸含有ガスを導入するカルボン酸含有ガス導入管20と、はんだ接合処理後に、チャンバ13内のカルボン酸含有ガスを排気するリフロー部用排気ポート17とが接続されている。
そして、カルボン酸含有ガス導入管20には、カルボン酸含有ガス開閉バルブ21が設けられ、リフロー部用排気ポート17には、排気開閉バルブ18が設けられており、この排気開閉バルブ18は、ガスの流れを止めることとガスの流れを切り替えることができる。さらに、排気開閉バルブ18の排気側には、例えば、真空ポンプのような排気手段19が接続されている。
【0019】
計測部4は、一端側の開口がチャンバ13の第1の接続部31に接続され、他端側の開口がチャンバ13の第2の接続部32に接続された計測キャビティ3と、計測キャビティ3内に設置された半導体式ガスセンサである半導体式COセンサ1とを備えている。
そして、計測キャビティ3には、例えば、窒素ガスのような不活性ガスを導入する不活性ガス導入管10と、カルボン酸含有ガス濃度の計測が終了した後に、計測キャビティ3内の、カルボン酸含有ガスを排気する計測キャビティ用排気ポート27とが接続されている。そして、不活性ガス導入管10には、不活性ガス開閉バルブ5が設けられ、計測キャビティ用排気ポート27は排気開閉バルブ18に接続されている。
【0020】
信号処理部7は、半導体式COセンサ1と、半導体式COセンサ1からの信号を伝送する信号ケーブル6で接続されている。
そして、信号処理部7には、信号処理部7からのデータによりカルボン酸含有ガス濃度を示す表示器8が接続されている。この表示器8に換えて、信号処理部7からのデータによりカルボン酸含有ガス濃度を記録するデーターロガーであっても良い。
【0021】
次に、本実施の形態のはんだ接合装置100の、動作について説明する。
本実施の形態のはんだ接合装置は、まず、カルボン酸含有ガス開閉バルブ21が開かれ、カルボン酸含有ガス導入管20から、カルボン酸含有ガスが、リフロー装置12のチャンバ13内に導入される。この導入されたカルボン酸含有ガスにより、ホットプレート14で加熱されたワーク15が、それを形成する各部品表面の酸化膜や異物コンタミ等が洗浄されるとともに、はんだ接合される。
【0022】
本実施の形態のはんだ接合装置100は、はんだ接合工程中に、チャンバ13に設けられた、第1の接続部31と第2の接続部32との両ガス流通開閉バルブが開かれ、カルボン酸含有ガスが計測キャビティ3内にも導入され、カルボン酸含有ガス濃度に対応したCO濃度が、半導体式COセンサ1により計測される。そして、半導体式COセンサ1で計測されたCO濃度の信号が、信号ケーブル6により、信号処理部7に伝送される。
信号処理部7では、半導体式COセンサ1で計測された信号を、予め検量された半導体式COセンサ1の出力値とカルボン酸濃度との相関データと比較することにより、カルボン酸含有ガス濃度を算出する。算出されたカルボン酸含有ガス濃度のデータは、表示器8あるいはデーターロガーに伝送される。
【0023】
本実施の形態のはんだ接合装置100では、はんだ接合工程の終了後、カルボン酸含有ガス開閉バルブ21が閉じられ、カルボン酸含有ガスの導入が停止される。
次に、第1の接続部31と第2の接続部32との両ガス流通開閉バルブが閉じられ、計測キャビティ3の空間とチャンバ13の空間とが遮断される。
そして、チャンバ13内部は、排気手段によりリフロー部用排気ポート17から排気され、真空状態となった後に、置換ガス(図示せず)が導入され、カルボン酸含有ガスが排出パージされる。次に、カルボン酸含有ガスの排出パージ後、ゲートバルブ16が開かれ、ワーク15が搬出される。
また、計測キャビティ3内部は、計測キャビティ用排気ポート27からカルボン酸含有ガスを排気しながら、不活性ガス導入管10から不活性ガスを導入し、半導体式COセンサが真空雰囲気に曝されることなく、大気圧雰囲気中でカルボン酸含有ガスがパージされる。
【0024】
本実施の形態のはんだ接合装置100は、リフロー部12と、リフロー部12のチャンバ13内のカルボン酸含有ガス濃度を計測する計測部4とを備えている。
具体的には、チャンバ13に設けられた両接続部31,32に、内部に半導体式COセンサ1を設けた計測キャビティ3が接続されているので、半導体式COセンサ1が設置された計測キャビティ3のカルボン酸含有ガス濃度を、チャンバ13内と同様にすることができる。
【0025】
そして、半導体式COセンサ1は、信号ケーブル6を介して信号処理部7に接続されているので、はんだ接合中のカルボン酸含有ガス濃度を、自動的に、精度良く、リアルタイムに算出できる。算出されたカルボン酸含有ガス濃度のデータは、表示器8に伝送することにより、表示することができる。また、算出されたカルボン酸含有ガス濃度のデータは、データーロガーに伝送することにより、記録することもできる。
【0026】
本実施の形態のはんだ接合装置100は、リアルタイムに、チャンバ13内のカルボン酸含有ガス濃度を計測できるので、例えば、カルボン酸含有ガス濃度の大きな変化を検出して、カルボン酸ガス供給装置の故障を即座に見つけることができ、はんだ接合装置の信頼性が高い。
また、リアルタイムに精度良く、必要な濃度のカルボン酸含有ガスが供給されているかどうかを、モニターできるので、ワーク15の酸化皮膜量に対して必要量のカルボン酸が供給されず、すなわち必要な濃度のカルボン酸含有ガスが供給されず、ワーク15に酸化皮膜が残ることによりはんだ接合不良が発生するのを防止でき、はんだ接合の安定化と信頼性向上とを実現でき、半導体装置の不良率を低減できる。
【0027】
また、本実施の形態のはんだ接合装置100は、はんだ接合中のカルボン酸含有ガス濃度を、自動的に計測できるので、カルボン酸含有ガス濃度測定の手間を省くことができ、半導体装置の製造コストを低減できる。
また、自動で計測したカルボン酸含有ガス濃度のデータは、データーロガーで記録することもできるので、カルボン酸含有ガス濃度の異常を確認でき、後工程で接合の良否を判定することなしに不良品を除くことができ、半導体装置の製造工程を短縮でき、生産性向上が図れる。
【0028】
また、ワークの量や大きさに応じて必要十分なカルボン酸量は異なるが、ワークの量や大きさに対応した、適正量のカルボン酸を供給するカルボン酸含有ガス濃度を見出すことができるので、必要以上のカルボン酸を投入することがなく、カルボン酸の使用量を抑制でき、半導体装置の製造コストを低減できる。
【0029】
また、本実施の形態のはんだ接合装置100は、チャンバ13内部と計測キャビティ3内部とのカルボン酸含有ガスが排出パージされた後に、再び、第1の接続部31と第2の接続部32との両ガス流通開閉バルブを開くことにより、チャンバ13内部のカルボン酸含有ガス濃度を測定できるので、チャンバ13内に、カルボン酸含有ガスが残留していないことを確認できる。それ故、ワーク15を取出した時に、外部に残留カルボン酸含有ガスが漏れて、異臭が発生したり、ワーク表面が再酸化するのを防止できる。それと、排気処理時間を最適化でき、はんだ接合のスループットを向上できる、
また、半導体式COセンサ1が真空雰囲気に曝されることがないので、半導体式COセンサ1の、寿命の低下や性能低下が防止できる。
【0030】
通常、カルボン酸ガスは温度如何に関わらず一定の割合で分解と再結合とを繰り返しており、その過程で、カルボン酸ガスの分解により、CO、H、HO、CO等のガス分子(分解生成ガス分子と記す)を生じ、これらの分解生成ガス分子の濃度は、カルボン酸ガス濃度と対応している。
そこで、本実施の形態のはんだ接合装置100では、計測キャビティ3内に設置した半導体式ガスセンサとして、半導体式COセンサ1を用いたが、CO、H、HOおよびCOの内のいずれか1種類の分解生成ガス分子を計測する、半導体式ガスセンサを用いれば良い。
この場合は、選択された半導体式ガスセンサで計測された信号を、予め検量された選択された半導体式ガスセンサの出力値とカルボン酸含有ガス濃度との相関データと比較することにより、カルボン酸含有ガス濃度を算出できる。
【0031】
本実施の形態のはんだ接合装置100では、計測キャビティ3に、不活性ガスを導入する不活性ガス導入管10と、カルボン酸含有ガスを排出する計測キャビティ用排気ポート27とが接続されている。
しかし、はんだ接合工程終了後に、チャンバ13内を真空状態にする必要がない場合は、第1の接続部31と第2の接続部32との両ガス流通開閉バルブを開放した状態で、チャンバ13内に、排気手段によりリフロー部用排気ポート17から排気しながら、不活性ガスを導入することにより、チャンバ13内と計測キャビティ3内とのカルボン酸含有ガスを排出パージできるので、計測キャビティ3に、不活性ガスを導入する不活性ガス導入管10と、カルボン酸含有ガスを排出する計測キャビティ用排気ポート27とが、接続されていなくても良い。
【0032】
本実施の形態のはんだ接合装置100では、計測キャビティ3内に、計測キャビティ3とチャンバ13との間で気体を循環させるファン等の循環手段を設けても良く、そうすると、カルボン酸含有ガス濃度の測定精度がさらに向上するので、好ましい。
また、計測キャビティ3内に、吸着したカルボン酸を蒸発させるような加熱手段を設けても良く、そうすると、メンテナンス性がさらに向上する。
【0033】
実施の形態2.
図2は、本発明の実施の形態2に係わるはんだ接合装置の側面断面模式図である。
図2に示すように、本実施の形態のはんだ接合装置200は、計測部4の計測キャビティ3内に第1の半導体式ガスセンサである半導体式COセンサ1と、第2の半導体式ガスセンサである半導体式Hセンサ2とを備え、第1の半導体式ガスセンサである半導体式COセンサ1からの信号を伝送する信号ケーブル6aと、第2の半導体式ガスセンサである半導体式Hセンサ2からの信号を伝送する信号ケーブル6bとが、信号処理部7に接続されており、信号処理部7が、CO濃度の信号とH濃度の信号との比を演算する機能も有している以外、実施の形態1のはんだ接合装置100と同様であり、実施の形態1のはんだ接合装置100と同様な効果を有する。
【0034】
さらに、本実施の形態のはんだ接合装置200では、半導体式COセンサ1で計測されたCO濃度の信号と半導体式Hセンサ2で計測されたH濃度の信号とが、各々の信号ケーブル6a,6bにより、信号処理部7に伝送され、信号処理部7で、CO濃度の信号とH濃度の信号との比を算定できる。
通常、カルボン酸ガスは温度如何に関わらず一定の割合で分解と再結合とを繰り返しており、その過程で、CO、H、HO、CO等の分解生成ガス分子を生じる。そして、同一条件の雰囲気空間では、COとHとの濃度比も含め、各分解生成ガス分子の濃度比は、大略一定となる。
【0035】
すなわち、本実施の形態のはんだ接合装置200は、信号処理部7で算定されたCO濃度の信号とH濃度の信号との比を、モニタリングすることにより、半導体式ガスセンサの故障や不具合を検出できるので、はんだ接合装置における計測部4の信頼性が優れている。
半導体式ガスセンサの故障や不具合の検出は、半導体式COセンサ1または半導体式Hセンサ2のいずれか一方、あるいは、半導体式COセンサ1と半導体式Hセンサ2との両方に、故障や不具合が発生すると、信号比が大きく変化するので、この変化を検出した時に、例えは、警告ブザーや警告表示灯や警告表示画面で知らせることにより、行われる。
【0036】
本実施の形態では、信号比を算定するのに用いられた、第1の半導体式ガスセンサは半導体式COセンサ1であり、第2の半導体式ガスセンサは半導体式Hセンサ2であるが、各分解生成ガス分子の濃度比は一定であるので、第1の半導体式ガスセンサを、特定の1種類の分解生成ガス分子を検出するものとし、第2の半導体式ガスセンサを、第1の半導体式ガスセンサが検出する種類の分解生成ガス分子とは異なる種類の分解生成ガス分子を検出するものとすれば良い。すなわち、異なる2種類の分解生成ガス分子を検出する半導体式ガスセンサを組み合わせれば良く、同様な効果が得られる。
【0037】
実施の形態3.
図3は、本発明の実施の形態3に係わるはんだ接合装置の信号処理部の側面模式図である。
図3に示すように、本実施の形態のはんだ接合装置は、信号処理部7に、カルボン酸ガス供給装置を制御する制御部9が接続されている以外、実施の形態1のはんだ接合装置100と同様であり、実施の形態1のはんだ接合装置100と同様な効果を有する。
【0038】
本実施の形態のはんだ接合装置は、信号処理部7から、制御信号がカルボン酸ガス供給装置を制御する制御部9に伝送され、はんだ接合工程をコントロールすることができる。
すなわち、はんだ接合工程中に、リフロー部12のチャンバ13内のカルボン酸含有ガス濃度が変化しても、自動的にカルボン酸含有ガス濃度を調整できるので、はんだ接合の信頼性向上と、自動化とを実現できる。
本実施の形態の制御部9を設けることは、実施の形態2のはんだ接合装置にも適用でき、同様な効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係わるはんだ接合装置は、リフロー部のチャンバに、半導体式ガスセンサが設置された計測キャビティが接続されており、リアルタイムで精度良くカルボン酸含有ガス濃度を測定できるものであり、高信頼性と製造コストの低減とが要求される、半導体装置のはんだ接合に用いられる。
【符号の説明】
【0040】
1 半導体式COセンサ、2 半導体式Hセンサ、3 計測キャビティ、
4 計測部、5 不活性ガス開閉バルブ、6 信号ケーブル、7 信号処理部、
8 表示器、9 制御部、10 不活性ガス導入管、12 リフロー部、
13 チャンバ、14 ホットプレート、15 ワーク、16 ゲートバルブ、
17 リフロー部用排気ポート、18 排気開閉バルブ、19 排気手段、
20 カルボン酸含有ガス導入管、21 カルボン酸含有ガス開閉バルブ、
27 計測部用排気ポート、31 第1の接続部、32 第2の接続部、
100,200 はんだ接合装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを、導入されたカルボン酸含有ガスで洗浄処理するとともに接合処理するリフロー部と、上記リフロー部に接続され、上記リフロー部に導入されたカルボン酸含有ガスの濃度を計測する計測部と、上記計測部で計測された信号を処理する信号処理部とを備えたはんだ接合装置であって、
上記リフロー部が、上記ワークを収納するチャンバと、上記チャンバに設けられた、上記計測部が接続される、第1の接続部と第2の接続部と、上記第1の接続部と上記第2の接続部との各々に設けられたガス流通開閉バルブとを備えており、
上記計測部が、一端側の開口を上記チャンバの第1の接続部に接続し、他端側の開口を上記チャンバの第2の接続部に接続した計測キャビティと、上記計測キャビティ内に設置された半導体式ガスセンサとを備えており、上記半導体式ガスセンサが、カルボン酸ガスが分解して生成する、CO、H、HOおよびCOの内のいずれか1種類の分解生成ガス分子を計測するものであり、
上記信号処理部が、上記半導体式ガスセンサと、上記半導体式ガスセンサで計測された信号に基づき算出された上記カルボン酸含有ガス濃度のデータを表示する表示器とに接続されたはんだ接合装置。
【請求項2】
上記計測キャビティ内に設置された半導体式ガスセンサが、第1の半導体式ガスセンサと第2の半導体式ガスセンサとからなり、上記第1の半導体式ガスセンサが、CO、H、HOおよびCOの内のいずれか1種類のカルボン酸ガスの分解生成ガス分子を計測するものであり、上記第2の半導体式ガスセンサが、上記第1の半導体式ガスセンサが計測する分解生成ガス分子とは異なる1種類の分解生成ガス分子を計測するものであり、
上記信号処理部が、上記第1の半導体式ガスセンサの信号と上記第2の半導体式ガスセンサの信号との比を演算する機能も有していることを特徴とする請求項1に記載のはんだ接合装置。
【請求項3】
上記計測キャビティに、不活性ガスを導入する不活性ガス導入管とカルボン酸含有ガスを排出する計測キャビティ用排気ポートとが接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のはんだ接合装置。
【請求項4】
上記計測キャビティ内に、上記計測キャビティとチャンバとの間で気体を循環させる循環手段が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のはんだ接合装置。
【請求項5】
上記計測キャビティ内に、吸着したカルボン酸を蒸発させる加熱手段が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のはんだ接合装置。
【請求項6】
上記信号処理部が、半導体式ガスセンサと、上記半導体式ガスセンサで計測された信号に基づき算出されたカルボン酸含有ガス濃度のデータを記録するデーターロガーとに接続されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のはんだ接合装置。
【請求項7】
上記信号処理部に、カルボン酸ガス供給装置を制御する制御部が接続されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のはんだ接合装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−121102(P2011−121102A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282347(P2009−282347)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】