説明

ばね式防振器のカバー装置

【課題】現場施工性に優れた簡易な構造により、ばね式防振器破断時の部品等の飛散を的確に防止することが可能なばね式防振器のカバー装置を提供する。
【解決手段】本発明にかかるばね式防振器のカバー装置は、外管と、外管の一方の端から嵌挿されて溶接された第一の内管と、外管の他方の端から嵌挿されて外管の軸方向に外管と相互に摺動可能な第二の内管と、外管に環装され外管と第二の内管の相対的な摺動に連動して伸縮するばねとを含んで構成されるばね式防振器のカバー装置であって、ばねの外側を囲む外管の軸方向に長いカバー部と、外管の外周面に設けられ、カバー部がそれぞれ接続される一対のプレートと、一対のプレートの外側にそれぞれ接続され、外管の外周面に設けられる一対の取付部と、からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電所や化学プラントなどで使用されている配管、特に高温、高圧の配管において地震などにより生じる振動を減衰させるために設置されているばね式防振器のカバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図10から図12を用いてばね式防振器を説明する。図10は、ばね式防振器の構成を説明する図であり、(a)は軸方向に沿う一部断面図、(b)は(a)を軸の周りに90度回転させたときの平面図(一部省略)である。図11は、ばね式防振器の動作を説明する図である。図12は、十字型のピンを説明するための軸に垂直な断面図である。
【0003】
火力発電所や化学プラントは様々な配管系統から構成されている。地震の発生や系統の運転により、これらの配管系統に生じる振動を減衰させるために、配管にはばね式防振器が設置されている。ばね式防振器はコイルばねを備えており、荷重が加わると伸縮するばねの性質を利用して、配管に加わる振動エネルギーを減少させることにより、配管の振動を減衰させる装置である。
【0004】
火力発電所や化学プラントなどで設置されているばね式防振器には、一般に、コイルばねを1個備えるものと、2個備えるものがある。コイルばねを2個備えるものは、1個備えるものよりも高い防振効果を有するため、系統運転時に配管に生じる振動エネルギーが大きい高温、高圧流体用の大口径の配管に用いられることが多い。
【0005】
図10は、コイルばねを2個備えるばね式防振器の例を示している。図10に示すように、コイルばねを2個備える一般的なばね式防振器10は、第一の内管11、軸方向に長い一対または複数の対をなすスリット16を有する外管12、スリット16を貫通するピン17を有する第二の内管13、リング18、第一のばね14、第二のばね15、第一の調整ナット19、および第二の調整ナット20から構成される。
【0006】
第一の内管11は、外管12の一方の端から嵌挿されて外管12に溶接により固着されている。その溶接箇所を溶接部wとして示す。そして、第一の内管11は、その閉じられた外側の端部が、配管105を覆う配管カバー106に設けられた外部係止部(配管側)101に、ピン(図示せず)により係止されることにより、外部と接続されている。
【0007】
第二の内管13は、外管12の他方の端から嵌挿されて、ピン17がスリット16内を移動可能な範囲で、外管12内を外管12の軸方向に外管12と相互に摺動可能である。そして、第二の内管13は、第二の内管13の閉じられた外側の端部に設けられた係止部103が、係止ピン104により外部係止部(構造物側)102に係止されることにより、外部と接続されている。
【0008】
リング18は、ピン17に固定され、かつ、外管12に環装される。第一のばね14は、リング18から第一の内管11側に、外管12に環装されて設けられる。第二のばね15は、リング18から第二の内管13側に、外管12に環装されて設けられる。第一の調整ナット19は、第一のばね14の第一の内管11側端部の外側かつ外管12の外周面に、例えば、外管12の端部表面に加工されたねじ溝にねじ込まれることにより装着される。第二の調整ナット20は、第二のばね15の第二の内管13側端部の外側かつ外管12の外周面に、第一の調整ナット19と同様に、例えば、外管12の端部表面に加工されたねじ溝にねじ込まれることにより装着される。
【0009】
ばね式防振器10の配管105への接続は以下のように行う。すなわち、はじめ第一の内管11は外管12に溶接されておらず外管12内を軸方向に移動することが可能である。まず、第一の内管11および第二の内管12をそれぞれ外部係止部(配管側)101および外部係止部(構造物側)102への係止により外部と接続する。そして、系統の定格運転時に、配管の熱膨張などによる配管への荷重を考慮して、ピン17がスリット16のほぼ中央部に位置するように、外管12に対する第一の内管11の相対位置が決定される。そして、その位置で第一の内管11は外管12に溶接により固着される。このとき、第一のばね14および第二のばね15は双方とも圧縮されており、双方のばねには圧縮エネルギーが蓄積されている。
【0010】
地震の発生や運転中の系統の過渡変化により、配管105に振動が生じると、その振動エネルギーがばね式防振器10に伝達する。配管105の振動とともに第一の内管11および第一の内管11に溶接された外管12が振動する。第二の内管13は外部と係止部103を介して接続されているため、第一の内管11および外管12は、第二の内管13に対し、相対的に振動する。第一の内管11および外管12を基準にして見ると、第二の内管13が第一の内管11および外管12に対して相対的に振動していることになり、第二の内管13に固定されたピン17が外管12に設けられたスリット16内を移動することになる。
【0011】
ピン17がスリット16内を移動すると、ピン17に固定されたリング18も外管12上を軸方向に移動し、第一のばね14および第二のばね15をそれぞれ伸長または収縮させる。すなわち、第一のばね14および第二のばね15は、外管12と第二の内管13の相対的な摺動に連動して伸縮する。第一のばね14および第二のばね15の伸長や収縮により、配管105からばね式防振器10に伝達された振動エネルギーが消費される。これにより、配管105の振動は減衰する。
【0012】
図11を用いて、ばね式防振器10の動作についてさらに詳しく説明する。図11は、地震の発生などにより配管105に振動が生じ、配管105が白抜き矢印の方向に移動した場合を示している。配管105が白抜き矢印の方向に移動すると、配管105に接続された第一の内管11および外管12も、第二の内管13に対して、白抜き矢印の方向に移動する。これは、第一の内管11および外管12を基準にして見れば、第二の内管13が外管12内を白抜き矢印と反対方向に移動することになる。
【0013】
図11は、第二の内管13に固定されたピン17がスリット16端部まで移動した状態を示している。第二の内管13の移動に伴い、図11に示すように、ピン17に固定されたリング18は、第一のばね14を収縮させ、第二のばね15を伸長させる。第一のばね14および第二のばね15の収縮および伸長により、配管105からばね式防振器10に伝達された振動エネルギーは消費される。
【0014】
配管105が白抜き矢印と反対の方向に移動した場合は、上記と逆の現象が生じる。これを繰り返すことにより、配管105からばね式防振器10に伝達された振動エネルギーは、第一のばね14および第二のばね15の伸長や収縮により消費されて、配管105の振動は減衰する。
【0015】
さて、ばね式防振器10は上述した通りスリット16を有するため、ばね式防振器10が設置されたときにスリット16が外管12上面に開口している場合は、スリット16から雨水が浸入することになる。特に、ばね式防振器10が屋外に設置されている場合は、スリット16から雨水が浸入しやすい。ばね式防振器10は傾斜して設置されていることが多いため、スリット16から浸入した雨水は、第一の内管11または第二の内管13のうち下方にある方の端部に移動する。第一の内管11や第二の内管13には通常、水抜き孔などの排水機構が設けられていないため、第一の内管11や第二の内管13の端部に移動した雨水は、そこに滞留する。
【0016】
そうすると、滞留した雨水により、第一の内管11や第二の内管13の内部で腐食が進み、第一の内管11や第二の内管13の減肉が生じる。さらに、浸入する雨水の量が多くなると滞留した雨水はやがて外管12に達し、外管12の内部においても腐食を進行させ外管12の減肉が生じる。雨水の滞留は雨水がばね式防振器10の外部へ流出し始めるスリット16端部まで達しうる。この減肉により第一の内管11、第二の内管13および外管12の機械的強度が低下する。そして、第一の内管11、第二の内管13または外管12が第一のばね14や第二のばね15の張力に抗しきれなくなると、減肉により強度が低下した部位で、第一の内管11、第二の内管13または外管12が破断するという不具合が生じることにもなる。
【0017】
この破断は、ばね式防振器10の軸方向に直交する断面積が相対的に小さい外管12のスリット16端部にて生じる可能性が高い。なお、この不具合は、ばね式防振器10が、図10や図11に示すように、一対のスリット16とスリット16内を移動する縦長のピン17を有する場合だけでなく、図12に示すように、二対のスリット86と、スリット86内を移動する軸方向に垂直な断面が十字型のピン87を有する場合も同様である。
【0018】
外管12がスリット16端部にて破断するとき、外部と接続されていない部品(破断した部品を含む)が周囲に飛散する。飛散する部品のうち大きなものは、例えば、破断した外管12、第一のばね14および第二のばね15である。これらの部品が飛散すると、近辺の設備や作業者などに危害が及ぶ恐れがある。ばね式防振器10が高所に設置されている場合は、飛散した部品が落下し、下方の設備や作業者などにさらに大きな危害を及ぼす恐れがある。
【0019】
破断時の部品などの飛散防止装置として、例えば、特許文献1や特許文献2に開示される技術がある。特許文献1の技術は、物体の周囲に設けられる飛散防止装置であり、筒状に形成され物体を内部に収容する内側壁部や、物体が破断したときに生ずる衝撃力を吸収する衝撃吸収部等を備える。かかる構成により、試験部材が破断した際の周囲への飛散を安定して防止することができるとしている。
【0020】
特許文献2の技術は、試験片に引張試験を行うに際し、試験片の終局破断時に発生する破砕物の飛散を防止する飛散防止部材であり、引張試験時に試験片の周囲を覆うように筒状に形成された被覆部材を備えている。これにより、試験片が破断する際発生する粉塵の飛散を防止することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2001−324421号公報
【特許文献2】特開2002−221475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかし、特許文献1の技術は、ガスタービンエンジンの翼やロータが、試験中や通常状態での稼働中に破断したときの飛散を防止するための装置であるため、衝撃吸収性を高めるために装置が大がかりになる。従って、配管を含む構造物が錯綜している場所や作業性の悪い高所などに設置されるばね式防振器に適用するには、現場施工性が著しく悪い。
【0023】
特許文献2の技術は、主に連続繊維補強材の引張試験に用いられる部材であるため、ばね式防振器に適用した場合、破断したばね式防振器の飛散を防止するのに十分な機械的強度を確保することができない。例えば、特許文献2の飛散防止部材の端部被覆部材は、可撓性を有し伸縮性のあるゴム製の面部材であるが、ばね式防振器の破断により飛散した部品が衝突することにより、この端部被覆部材も破損してしまう。
【0024】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、現場施工性に優れた簡易な構造により、ばね式防振器破断時の部品等の飛散を的確に防止することが可能なばね式防振器のカバー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決するために、本発明にかかるばね式防振器のカバー装置の代表的な構成は、外管と、外管の一方の端から嵌挿されて溶接された第一の内管と、外管の他方の端から嵌挿されて外管の軸方向に外管と相互に摺動可能な第二の内管と、外管に環装され外管と第二の内管の相対的な摺動に連動して伸縮するばねとを含んで構成されるばね式防振器のカバー装置であって、ばねの外側を囲む外管の軸方向に長いカバー部と、外管の外周面に設けられ、カバー部がそれぞれ接続される一対のプレートと、一対のプレートの外側にそれぞれ接続され、外管の外周面に設けられる一対の取付部と、からなることを特徴とする。
【0026】
かかる構成によれば、ばね式防振器のカバー装置は、カバー部と、一対のプレートと、一対の取付部とからなるため、現場施工性に優れた簡易な構造により、ばね式防振器破断時の部品等の飛散を的確に防止することができる。
【0027】
上記の一対の取付部は、外管の外周面に固定されているとよい。一対の取付部は、外管の外周面に設けられているが、一対の取付部が外管の外周面に例えば溶接やボルト、ナットを用いた固定部材により固定されることにより、外管が破断した場合でも、カバー装置により外管の形状が確保されるため、外管の機能を維持することができる。
【0028】
本発明にかかるばね式防振器のカバー装置の他の代表的な構成は、外管と、外管の一方の端から嵌挿されて溶接された第一の内管と、外管の他方の端から嵌挿されて外管の軸方向に外管と相互に摺動可能な第二の内管と、外管に環装され外管と第二の内管の相対的な摺動に連動して伸縮するばねとを含んで構成されるばね式防振器のカバー装置であって、ばねの外側を囲む外管の軸方向に長いカバー部と、一方が第一の内管の外周面に、他方が第二の内管の外周面に設けられ、カバー部がそれぞれ接続される一対のプレートと、一対のプレートの外側にそれぞれ接続され、一方が第一の内管の外周面に、他方が第二の内管の外周面に設けられる一対の取付部と、からなることを特徴とする。
【0029】
かかる構成によれば、ばね式防振器のカバー装置は、カバー部と、一対のプレートと、一対の取付部とからなるため、現場施工性に優れた簡易な構造により、ばね式防振器破断時の部品等の飛散を的確に防止することができる。
【0030】
上記の一対の取付部と、少なくとも第一の内管または第二の内管との間には、摺動抵抗の小さい低摩擦抵抗部が介装されているとよい。一対の取付部は一方が第一の内管の外周面に、他方が第二の内管の外周面に設けられており、外管と第二の内管の摺動に伴い、一方の取付部と第一の内管の間や、他方の取付部と第二の内管の間で摺動が生じる。従って、これらの摺動を生じる部材の間に低摩擦抵抗部が介装されることにより、摺動を円滑にし、部材間の直の摺動により生じうる摩耗減肉を防止することができる。このとき、低摩擦抵抗部を介装しない部材間は、例えば溶接やボルト、ナットを用いた固定部材により、固定されていてもよい。
【0031】
上記のカバー部、一対のプレートおよび一対の取付部は、それぞれ外管の軸方向に対して対称形状の複数分割体であるとよい。かかる構成により、カバー装置のばね式防振器への取付を容易にすることができるため、現場施工性に優れた構造にすることができる。
【0032】
本発明にかかるばね式防振器のカバー装置の他の代表的な構成は、一対のプレート間で挟まれるカバー部の長さを調節可能な調節部を更に備えることを特徴とする。かかる構成により、カバー部の長さを現場のばね式防振器の長さにあわせて容易に調節することができるため、現場施工性に優れた構造にすることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、現場施工性に優れた簡易な構造により、ばね式防振器破断時の部品等の飛散を的確に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第一の実施形態にかかるばね式防振器のカバー装置を説明する図である。
【図2】第一の実施形態にかかるカバー装置のばね式防振器への取付を説明する図である。
【図3】第二の実施形態にかかるばね式防振器のカバー装置を説明する図である。
【図4】低摩擦抵抗部を説明する図である。
【図5】カバー部の形状を説明する図である。
【図6】補強部を説明する図である。
【図7】調節部を備えるカバー装置を説明する図である。
【図8】連結部を説明する図である。
【図9】十字型のピンを有するばね式防振器へのカバー装置の取付を説明する図である。
【図10】ばね式防振器の構成を説明する図である。
【図11】ばね式防振器の動作を説明する図である。
【図12】十字型のピンを説明するための軸に垂直な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に添付図面を参照しながら、本発明にかかるばね式防振器のカバー装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0036】
図1は、第一の実施形態にかかるばね式防振器のカバー装置を説明する図である。ばね式防振器のカバー装置30は、図1に示すように、カバー部41と、一対のプレート31、32と、一対の取付部36、37とを含んで構成される。カバー部41と、一対のプレート31、32と、一対の取付部36、37は、例えばSTPG(圧力配管用炭素鋼鋼管)で作製することができる。
【0037】
カバー部41は、本実施形態では、4つの板状の分割カバー部411a、411b、412a、412bから構成される。
【0038】
プレート31は、分割プレート31a、31bから構成され、プレート32は、分割プレート32a、32bから構成される。分割プレート31a、31b、32a、32bのそれぞれは、斜辺の略中央部に半円の切り欠きを有する略三角形の板状部材である。プレート31、32の内側において、カバー部41の端部がそれぞれ接続される。すなわち、プレート31aの内側において、分割プレート411a、412aの一方の端部が接続され、プレート32aの内側において、分割プレート411a、412aの他方の端部が接続される。プレート31b、32bの内側へは、分割プレート411b、412bが同様に接続される。プレート31、32へのカバー部41の接続は、溶接により行われてもよいし、例えば、ボルト、ナットを用いた接続部材(図示せず)を介して行われてもよい。
【0039】
取付部36は、分割取付部36a、36bから構成され、取付部37は、分割取付部37a、37bから構成される。分割取付部36a、36b、37a、37bのそれぞれは、中央部が半円筒形状に形成されている。取付部36、37はそれぞれプレート31、32の外側に接続される。すなわち、分割取付部36aは、分割プレート31aの外側に、分割取付部36aの半円筒形状の内周面が分割プレート31aの半円の切り欠きの周面に連続するように接続される。分割取付部36bも、同様に分割プレート31bの外側に接続される。
【0040】
分割取付部37a、37bも、分割プレート32a、32bの外側に同様に接続される。取付部36、37のプレート31、32への接続は、溶接により行われてもよいし、例えば、ボルト、ナットを用いた接続部材(図示せず)を介して行われてもよい。分割取付部36aは、分割取付部36bと、ボルト51およびナット56により接続される。同様に、分割取付部37aは、分割取付部37bと、ボルト51およびナット56により接続される。
【0041】
本実施形態では、カバー部41、一対のプレート31、32および一対の取付部36、37は、それぞれカバー装置30がばね式防振器10に取り付けられたとき外管12の軸方向に対して対称形状の2分割体である。そして、分割カバー部411a、412a、分割プレート31a、32a、分割取付部36a、37aは、溶接または例えば、ボルト、ナットを用いた接続部材(図示せず)により一体となって構成されている。分割カバー部411b、412b、分割プレート31b、32b、分割取付部36b、37bも、同様に一体となって構成されている。
【0042】
これにより、カバー装置30のばね式防振器10への取付は、一体となった分割カバー部411a、412a、分割プレート31a、32a、分割取付部36a、37aと、同様に一体となった分割カバー部411b、412b、分割プレート31b、32b、分割取付部36b、37bをばね式防振器10の外側から被せて、取付部36、37においてボルト51をナット56に螺合することにより行うことができるため、取付が容易になり、現場施工性に優れたものにすることができる。
【0043】
なお、カバー装置30は、2分割体でなくてもよく、例えば、カバー部41は、その断面が略くの字状の一対の部材とし、プレート31、32は、中央部に円状の孔を有する略四角形の板状部材とし、取付部36、37は中央部に円筒状部を有する部材として、カバー装置30のばね式防振器10への取付時に、これらの部材を順次溶接や例えば、ボルト、ナットを用いた接続部材(図示せず)により接続することにより、カバー装置30として一体に構成してもよい。また、カバー装置30は、3分割体等の複数分割体にすることもできる。
【0044】
図2は、第一の実施形態にかかるカバー装置のばね式防振器への取付を説明する図である。図2(a)は第一の実施形態にかかるカバー装置を現場でばね式防振器に適用したときの側面図、(b)は(a)を軸の周りに90度回転させたときの平面図(一部省略)である。(c)は(a)におけるA−A矢視断面図、(d)は(a)におけるB−B矢視断面図である。
【0045】
上述の通り、ばね式防振器10は、外管12と、外管12の一方の端から嵌挿されて溶接された第一の内管11と、外管12の他方の端から嵌挿されて外管12の軸方向に外管12と相互に摺動可能な第二の内管13と、外管12に環装され外管12と第二の内管13の相対的な摺動に連動して伸縮するばね(第一のばね14および第二のばね15)とを含んで構成される。
【0046】
カバー部41は、図2(a)、(b)に示すように、外管12の軸方向に長く、ばね14、15の外側を囲んでいる。分割カバー部411aと411b、412aと412bは、図1(d)に示すように、それぞれ所定の角度で対向して配置されている。分割カバー部411a、411bのばね式防振器10に近い方の長辺間の距離と、分割カバー部411a、412aのばね式防振器10に近い方の長辺間の距離は、双方とも、ばね式防振器10の外径よりも短い。このため、カバー装置30は、ばね式防振器10が破断したときに、破断した外管12やばね14、15などの部品等が周囲に飛散することを的確に防止することができる。
【0047】
プレート31は、プレート31を構成する分割プレート31aと31bのそれぞれの斜辺の直線部が互いに接面し、斜辺の略中央部の半円の切り欠き同士により形成された円により外管12を挟むように、第一の調整ナット19の外側において外管12の外周面に設けられる。外管12を挟む方法は、上述の半円の切り欠き同士により形成された円の円周面に外管12の外周面が接面するようにして挟んでもよい。プレート32も、同様に、第二の調整ナット20の外側において外管12の外周面に設けられる。
【0048】
取付部36は、取付部36を構成する分割取付部36aと36bのそれぞれの端部の直線部が互いに接面し、中央部の半円筒形状部同士により形成された円筒状部により外管12を挟むように、外管12の外周面に設けられる。取付部37も、同様に外管12の外周面に設けられる。
【0049】
取付部36、37は、外管12の外周面に固定されていてもよい。固定の方法は、例えば、溶接やボルト、ナットを用いた固定部材により行うことができる。これにより、外管12が破断した場合でも、カバー装置30により外管12の形状が確保されるため、外管12の機能を維持することができる。機能維持により、現場での応急対策とすることができ、ばね式防振器10の取替作業時期を延長できる。また、通常の取替作業時には、ばねを固定する必要があるが、取付部36、37が外管12の外周面に固定されていることにより、ばねの固定作業が不要になるため、安全かつ迅速に取替作業を行うことができる。
【0050】
図3は、第二の実施形態にかかるばね式防振器のカバー装置を説明する図である。具体的には、第二の実施形態にかかるカバー装置40を適用したばね式防振器10の平面図である。ばね式防振器のカバー装置40が、第一の実施形態にかかるカバー装置30と主に相違する点は、一対のプレート31、32および一対の取付部36、37が、外管12の外周面ではなく、第一の内管11および第二の内管13の外周面に設けられていることである。
【0051】
すなわち、プレート31は、分割プレート31aと31bのそれぞれの斜辺の略中央部の半円の切り欠き同士により形成された円により第一の内管11を挟むように、第一の内管11の外周面に設けられる。第一の内管11を挟む方法は、上述の半円の切り欠き同士により形成された円の円周面に第一の内管11の外周面が接面するようにして挟んでもよい。プレート32も、同様に、第二の内管13の外周面に設けられる。
【0052】
また、取付部36は、分割取付部36aと36bのそれぞれの中央部の半円筒形状部同士により形成された円筒状部により第一の内管11を挟むように、第一の内管11の外周面に設けられる。取付部37も、同様に第二の内管13の外周面に設けられる。
【0053】
取付部36、37は、第一の実施形態と異なり、第一の内管11や第二の内管13の外周面に溶接されない。第一の内管11と第二の内管13は互いに相対的に移動するため、取付部36の中央部の円筒状部の内周面と第一の内管11の外周面との間、および取付部37の中央部の円筒状部の内周面と第二の内管13の外周面との間において摺動性を確保する必要があるからである。
【0054】
図4は、低摩擦抵抗部を説明する図である。具体的には、低摩擦抵抗部62を備えたカバー装置40の正面図である。カバー装置40においては、取付部36、37がそれぞれ第一の内管11、第二の内管13の外周面に設けられるため、上述の摺動性を確保するために、取付部36、37と、少なくとも第一の内管11または第二の内管13との間には、摺動抵抗の小さい低摩擦抵抗部62が介装されているとよい。低摩擦抵抗部62として、例えば、ゴムパッキンや、テフロン(登録商標)などのフッ素系樹脂を被覆した金属板を使用することができる。
【0055】
これにより、取付部36と第一の内管11の間、および取付部37と第二の内管13の間の摺動を円滑にし、これらの部材間の直の摺動により生じうる摩耗減肉を防止することができる。なお、低摩擦抵抗部62は、プレート31と第一の内管11の間や、プレート32と第二の内管13の間にも介装されていてもよい。この場合も、部材間の摺動性を高めることにより、部材間に生じうる摩耗減肉を防止することができる。このとき、低摩擦抵抗部を介装しない部材間は、例えば溶接やボルト、ナットを用いた固定部材により、固定されていてもよい。これにより、低摩擦抵抗部を介装している部材間は摺動性を高め、低摩擦抵抗部を介装しない部材間は部材間の摩耗減肉を防止することができる。
【0056】
第二の実施形態にかかるカバー装置40においては、プレート31、32および取付部36、37は、第一の内管11および第二の内管13の外周面に設けられているが、取付部36、37は第一の内管11および第二の内管13の外周面に設けたまま、プレート31、32は、外管12の外周面に設けることもできる。
【0057】
図5は、カバー部の形状を説明する図である。図5(a)〜(c)は、カバー部42、43、44を備えたカバー装置を適用したばね式防振器10の軸方向に垂直な断面図である。カバー部42は、図5(a)に示すように、その断面が略円弧状の部材が対向して配置されている。カバー部43は、図5(b)に示すように、その断面がコの字状の部材が対向して配置されている。
【0058】
カバー部42、43は、カバー部41と同様に、各部材のばね式防振器10に近い長辺間の距離と、対向して配置される部材間において対応する長辺間の距離は、いずれもばね式防振器10の外径よりも短い。このため、カバー部41と同様に、ばね式防振器10が破断したときに、破断した外管12やばね14、15などの部品等が周囲に飛散することを的確に防止することができる。
【0059】
カバー部44は、図5(c)に示すように、断面が円状の複数の棒状部材から構成されていてもよい。図5(c)では、8本の棒状部材が4本ずつ対向して配置されている。図5(c)において、それぞれの4本において、4本のうち最も離れた棒状部材間の距離と、対向して配置される8本において、対応する棒状部材間の最も近い距離は、カバー部41、42、43と同様に、いずれもばね式防振器10の外径よりも短い。このため、カバー部41〜43と同様に、ばね式防振器10が破断したときに、破断した外管12やばね14、15などの部品等が周囲に飛散することを的確に防止することができる。なお、カバー部42、43、44は、いずれも外管12の軸方向に長く、ばね14、15の外側を囲む。
【0060】
図6は、補強部を説明する図である。図6(a)は補強部を備えたカバー装置を現場で適用したばね式防振器の側面図、(b)は(a)を軸の周りに90度回転させたときの平面図(一部省略)である。(c)は(a)におけるC−C矢視断面図である。
【0061】
図6に示すように、カバー装置30は、補強部61をさらに備えることができる。補強部61は、図6(a)〜(c)に示すように、例えば軸に垂直な断面が略四角形であり、軸方向に所定の幅を有する薄肉の部材である。補強部61は、カバー部41、プレート31、32、取付部36、37と同じ材料でもよいし、これより機械的強度の高い材料を使用してもよい。
【0062】
補強部61は、例えば、カバー部41の略中央部において、カバー部の内側と溶接や例えば、ボルト、ナットを用いた接続部材(図示せず)による接続により、ばね式防振器10の外側を囲むように設けられる。補強部61を備えることにより、カバー装置30の機械的強度を高めることができるため、ばね式防振器10が破断したときに、解放されるばね14、15の圧縮エネルギーや、破断した外管12、ばね14、15などの部品等によりカバー装置30が破損されるのを防止し、これらの部品等が周囲に飛散することを的確に防止することができる。
【0063】
なお、図6においては、補強部61は一つのみを示したが、カバー装置30が確保すべき機械的強度に応じて、カバー装置30は、必要な数の補強部61をカバー装置30の必要な位置に備えることができる。
【0064】
図7は、調節部を備えるカバー装置を説明する図である。図7(a)は、調節部を備えるカバー装置を適用したばね式防振器の平面図であり、(b)は、(a)におけるD−D矢視図である。調節部は、カバー部45の余長部、カバー部45に設けられた調節孔63、プレート34に設けられた貫通孔65、ボルト52、およびナット57から構成される。
【0065】
カバー部45の余長部とは、カバー部45がプレート33とプレート34の間の距離を超えて延びる部分である。貫通孔65は、例えばプレート34をばね式防振器10の軸方向に貫通する略四角形の孔である。カバー部45の余長部は、貫通孔65に挿通される。調節孔63は、カバー部45の余長部を含むプレート34周辺において、カバー部45を板厚方向に貫通する孔であり、必要に応じた数だけ軸方向に所定の間隔で設けられている。ボルト52およびナット57は、調節孔63を挟んで螺合される。
【0066】
カバー部45の一方の端部は、プレート33の内側に接続されている。カバー部45は、カバー部45の他方の端部から貫通孔65に挿通され、余長部を有したまま、ボルト52およびナット57によりプレート34に固定される。これにより、カバー装置50は、一対のプレート33、34間で挟まれるカバー部45の長さを調節することができる。従って、あらかじめカバー部45の長さを正確に決定せずとも現場のばね式防振器10の長さにあわせてカバー部45の長さを容易に調節することができるため、現場施工性に優れた構造にすることができる。また、種々の長さのばね式防振器10に対応可能となるため、カバー装置50の汎用性を高めることができる。
【0067】
図8は、連結部を説明する図である。図8(a)は、カバー部における連結部周辺の側面図であり、(b)は(a)におけるE−E矢視断面図である。連結部64は、例えば、両端部に板厚方向に貫通する貫通孔66を有する板状部材である。連結部64は、連結部64に設けられた貫通孔66を、カバー部46a、47aに板厚方向に貫通して設けられた貫通孔67に合わせて、連結部64とカバー部46a、46bをそれぞれボルト53とナット58を螺合することにより、連結部64を介してカバー部46aと46bを連結する。
【0068】
これにより、カバー装置は、複数のカバー部を軸方向に連結して、一対のプレート間で挟まれるカバー部の長さを調節することができる。従って、あらかじめカバー部の長さを正確に決定せずとも現場のばね式防振器10の長さにあわせてカバー部の長さを容易に調節することができるため、現場施工性に優れた構造にすることができる。また、種々の長さのばね式防振器10に対応可能となるため、カバー装置の汎用性を高めることができる。
【0069】
図9は、十字型のピンを有するばね式防振器へのカバー装置の取付を説明する図である。具体的には、カバー装置30が適用された十字型のピン87を有するばね式防振器80を、十字型のピン87を含む軸に垂直な平面により切った断面図である。図9に示すばね式防振器80は、ばね式防振器10と異なり、第二の内管83は外部と接続されておらず、代わりに、十字型のピン87が外部に設けられた外部係止部(中間側)107に係止されることにより、外部と接続されている。このため、第一の実施形態にかかるカバー装置30をばね式防振器80に取り付けようとすると、外部係止部107が障害となって、適切に取り付けられない場合がある。
【0070】
このような場合は、図9に示すように、カバー部41を、外部係止部107とばね式防振器80との間で構成される空間を挿通させて配置することにより、外部係止部107を障害とせずに、カバー装置30をばね式防振器80に取り付けることができる。
【0071】
上記説明した如く、本実施形態にかかるばね式防振器のカバー装置は、カバー部と、一対のプレートと、一対の取付部とからなる現場施工性に優れた簡易な構造を有し、ばね式防振器に取り付けられることにより、ばね式防振器が破断したときでも、破断した外管やばねなどの部品等が周囲に飛散することを的確に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、火力発電所や化学プラントなどで使用されている配管、特に高温、高圧の配管において地震などにより生じる振動を減衰させるために設置されているばね式防振器に利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
10、80 …ばね式防振器
11 …第一の内管
12、82 …外管
13、83 …第二の内管
14 …第一のばね
15 …第二のばね
16、86 …スリット
17、87 …ピン
18、88 …リング
19 …第一の調整ナット
20 …第二の調整ナット
30、40、50 …カバー装置
31、32、33、34 …プレート
31a、31b、32a、32b …分割プレート
36、37 …取付部
36a、36b、37a、37b …分割取付部
41、42、43、44、45、46a、46b …カバー部
411a、411b、412a、412b …分割カバー部
51、52、53 …ボルト
56、57、58 …ナット
61 …補強部
62 …低摩擦抵抗部
63 …調節孔
64 …連結部
65、66、67 …貫通孔
101 …外部係止部(配管側)
102 …外部係止部(構造物側)
103 …係止部
104 …係止ピン
105 …配管
106 …配管カバー
107 …外部係止部(中間側)
w …溶接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外管と、該外管の一方の端から嵌挿されて溶接された第一の内管と、前記外管の他方の端から嵌挿されて前記外管の軸方向に前記外管と相互に摺動可能な第二の内管と、前記外管に環装され前記外管と前記第二の内管の相対的な摺動に連動して伸縮するばねとを含んで構成されるばね式防振器のカバー装置であって、
前記ばねの外側を囲む前記外管の軸方向に長いカバー部と、
前記外管の外周面に設けられ、前記カバー部がそれぞれ接続される一対のプレートと、
前記一対のプレートの外側にそれぞれ接続され、前記外管の外周面に設けられる一対の取付部と、
からなることを特徴とするばね式防振器のカバー装置。
【請求項2】
前記一対の取付部は、前記外管の外周面に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のばね式防振器のカバー装置。
【請求項3】
外管と、該外管の一方の端から嵌挿されて溶接された第一の内管と、前記外管の他方の端から嵌挿されて前記外管の軸方向に前記外管と相互に摺動可能な第二の内管と、前記外管に環装され前記外管と前記第二の内管の相対的な摺動に連動して伸縮するばねとを含んで構成されるばね式防振器のカバー装置であって、
前記ばねの外側を囲む前記外管の軸方向に長いカバー部と、
一方が前記第一の内管の外周面に、他方が前記第二の内管の外周面に設けられ、前記カバー部がそれぞれ接続される一対のプレートと、
前記一対のプレートの外側にそれぞれ接続され、一方が前記第一の内管の外周面に、他方が前記第二の内管の外周面に設けられる一対の取付部と、
からなることを特徴とするばね式防振器のカバー装置。
【請求項4】
前記一対の取付部と、少なくとも前記第一の内管または前記第二の内管との間には、摺動抵抗の小さい低摩擦抵抗部が介装されていることを特徴とする請求項3に記載のばね式防振器のカバー装置。
【請求項5】
前記カバー部、一対のプレートおよび一対の取付部は、それぞれ前記外管の軸方向に対して対称形状の複数分割体であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のばね式防振器のカバー装置。
【請求項6】
当該ばね式防振器のカバー装置は、前記一対のプレート間で挟まれる前記カバー部の長さを調節可能な調節部を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のばね式防振器のカバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−140964(P2011−140964A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−404(P2010−404)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(391037814)株式会社東京エネシス (24)
【Fターム(参考)】