説明

びらん性多発性関節炎の治療のためのTNFα阻害剤の使用

【課題】びらん性多発性関節炎の治療法の提供。
【解決手段】TNFα抗体又はその抗原結合部分を投与することを含むびらん性多発性関節炎の治療法及び、TNFα抗体又はその抗原結合部分の有効性を検査する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2005年5月16日に出願された米国仮出願60/681645号に対する優先権を主張する。
【0002】
本願は、米国特許第6,090,382号、第6,258,562号及び第6,509,015号に関する。本願は、2001年3月7日に出願された米国特許出願第09/801,185号;2002年6月5日に出願された米国特許出願第10/163657号;及び2002年4月26日に出願された米国特許出願第10/422287号;2002年8月16日に出願された米国特許出願第10/525292号;2003年10月24日に出願された米国特許出願第10/693233号;2003年7月18日に出願された米国特許出願第10/622932号;2003年7月18日に出願された米国特許出願第10/623039号;2003年7月18日に出願された米国特許出願第10/623076号;2003年7月18日に出願された米国特許出願第10/623065号;2003年7月18日に出願された米国特許出願第10/622928号;2003年7月18日に出願された米国特許出願第10/623075号;2003年7月18日に出願された米国特許出願第10/623035号;2003年7月18日に出願された米国特許出願第10/622683号;2003年7月18日に出願された米国特許出願第10/622205号;2003年7月18日に出願された米国特許出願第10/622210号;及び2003年7月18日に出願された米国特許出願第10/623318号にも関連する。本願は、2005年4月11日に出願されたPCT/US05/12007(WO05/110452)及び2005年10月6日に出願された米国出願11/245,254号にも関連する。これらの特許及び特許出願の各々の全内容は、参照により、本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
多発性関節炎は、びらん性又は非びらん性であり得る。びらん性の形態では、基礎を成す疾病過程が軟骨を侵食し、非びらん性形態では、軟骨は冒されない。びらん性多発性関節炎は、罹患した関節内で組織の破壊及び侵食をもたらす関節の炎症性疾患である。びらん性多発性関節炎は、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎などの脊椎関節症及び若年性関節リウマチを含む炎症性疾患を有する多くの患者に発生する。びらん性多発性関節炎が、関節疾患の放射線学的進行が徴候である疾患の現行治療の多くは、関節疾患の放射線学的進行を減少させることに集中できない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
安全で、効果的な様式で、びらん性多発性関節炎を治療する必要が存在する。DMARDの投与など、びらん性多発性関節炎の伝統的治療は、疾病の進行を遅延させ得るが、伝統的治療は有効になるのが遅く、時間とともに効力を喪失し、及び重大な毒性効果を伴う可能性を有し得る。本発明は、びらん性多発性関節炎を治療し、及び関節疾患の進行を遅らせるための安全且つ効果的な手段を提供する。
【0005】
本発明には、TNF阻害剤を投与することを含む、びらん性多発性関節炎を治療する方法が含まれる。本発明は、びらん性多発性関節炎に罹患しているヒト患者を治療する方法であり、びらん性多発性関節炎が治療されるように、前記患者に、抗TNFα抗体を投与することを含む、前記方法も提供する。TNFα阻害剤を含むキット及び製品も、本発明に含まれる。
【0006】
一実施形態において、TNFα阻害剤は、抗TNFα抗体又はその抗原結合部分、TNF融合タンパク質又は組換えTNF結合タンパク質からなる群から選択される。一実施形態において、TNF融合タンパク質は、エタネルセプトである。別の実施形態において、抗TNFα抗体又はその抗原結合部分は、ヒト化抗体、キメラ抗体及び多価抗体からなる群から選択される抗体である。一実施形態において、抗TNFα抗体又はその抗原結合部分は、インフリキシマブ、ゴリムマブ又はアダリムマブである。さらに別の実施形態において、抗TNFα抗体又はその抗原結合部分は、ヒト抗体である。
【0007】
本発明は、びらん性多発性関節炎に罹患しているヒト患者を治療する方法であり、びらん性多発性関節炎が治療されるように、前記患者に、TNFα抗体又はその抗原結合部分を投与することを含む、前記方法を提供する。
【0008】
一実施形態において、TNFα抗体又はその抗原結合部分は、ヒト化抗体、キメラ抗体及び多価抗体からなる群から選択される抗体である。別の実施形態において、TNFα抗体又はその抗原結合部分は、インフリキシマブ又はゴリムマブである。
【0009】
一実施形態において、TNFα抗体又はその抗原結合部分は、ヒト抗体である。一実施形態において、ヒト抗体又はその抗原結合部分は、1×10−8M又はそれ以下のK及び1×10−3−1又はそれ以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し(何れも、表面プラズモン共鳴によって測定される。)、並びに、標準的なインビトロL929アッセイにおいて、1×10−7M又はそれ以下のIC50でヒトTNFα細胞毒性を中和する。別の実施形態において、ヒト抗体又はその抗原結合部分が、以下の特徴を有する。
【0010】
a)表面プラズモン共鳴によって測定した場合に、1×10−3−1又はそれ以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離する;
b)配列番号3のアミノ酸配列又は位置1、4、5、7若しくは8において、単一のアラニン置換によって配列番号3から修飾されたアミノ酸配列又は位置1、3、4、6、7、8及び/又は9において、1個から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号3から修飾されたアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメインを有する;
c)配列番号4のアミノ酸配列又は位置2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11において、単一のアラニン置換によって配列番号4から修飾されたアミノ酸配列又は位置2、3、4、5、6、8、9、10、11及び/又は12において、1個から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号4から修飾されたアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメインを有する。さらに別の実施形態において、ヒト抗体又はその抗原結合部分は、配列番号3のアミノ酸配列又は位置1、4、5、7若しくは8において、単一のアラニン置換によって配列番号3から修飾されたアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する軽鎖可変領域(LCVR)を含み、及び配列番号4のアミノ酸配列又は位置2、3、4、5、6、8、9、10又は11において単一のアラニン置換によって配列番号4から修飾されたアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する重鎖可変領域(HCVR)を含む。さらに別の実施形態において、ヒト抗体又はその抗原結合部分が、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)及び配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)を含む。一実施形態において、ヒト抗体又はその抗原結合部分は、アダリムマブである。
【0011】
一実施形態において、TNFα抗体又はその抗原結合部分は、隔週投薬計画で、患者に投与される。
【0012】
一実施形態において、患者は、TNFα活性が有害である疾患を有する。一実施形態において、TNFα活性が有害である疾患は、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎及び若年性関節リウマチからなる群から選択される。別の実施形態において、TNFα活性が有害である疾患は乾癬性関節炎である。さらに別の実施形態において、TNFα活性が有害である疾患は関節リウマチである。
【0013】
一実施形態において、本発明は、さらなる治療剤を患者に投与することをさらに含む。一実施形態において、さらなる治療剤は、メトトレキサートである。別の実施形態において、さらなる治療剤は、抗リウマチ薬(DMARD;Disease Modifying Anti−Rheumatic Drug)若しくは非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)若しくはステロイド又はこれらのあらゆる組み合わせである。
【0014】
本発明は、びらん性多発性関節炎を伴う関節疾患の放射線学的進行を減少するためのTNFα抗体又はその抗原結合部分の有効性を検査する方法を含む。一実施形態において、TNFα抗体またはその抗原結合部分の有効性を検査する方法は、前記TNFα抗体またはその抗原結合部分の有効性を測定すること、びらん性多発性関節炎を伴う関節疾患を有する患者集団の修正シャープの合計スコア(mTSS)及びTNFα抗体又はその抗原結合部分の投与後における前記患者集団のmTSSを使用することを含み、前記mTSSの無変化又は減少が、TNFα抗体又はその抗原結合部分がびらん性多発性関節炎を伴う関節疾患の放射線学的進行を減少させる上で有効であることを示す。一実施形態において、mTSSの減少は約0.2である。
【0015】
一実施形態において、患者集団は、TNFα活性が有害である疾患も有する。一実施形態において、TNFα活性が有害である疾患は、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎及び若年性関節リウマチからなる群から選択される。
【0016】
一実施形態において、TNFα抗体又はその抗原結合部分は、ヒト化抗体、キメラ抗体及び多価抗体からなる群から選択される抗体である。一実施形態において、TNFα抗体又はその抗原結合部分はインフリキシマブ又はゴリムマブである。別の実施形態において、TNFα抗体又はその抗原結合部分は、ヒト抗体である。一実施形態において、ヒト抗体又はその抗原結合部分は、1×10−8M又はそれ以下のK及び1×10−3−1又はそれ以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し(何れも、表面プラズモン共鳴によって測定される。)、並びに、標準的なインビトロL929アッセイにおいて、1×10−7M又はそれ以下のIC50でヒトTNFα細胞毒性を中和する。
【0017】
別の実施形態において、ヒト抗体又はその抗原結合部分は、以下の特徴を有する。
【0018】
a)表面プラズモン共鳴によって測定した場合に、1×10−3−1又はそれ以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離する;
b)配列番号3のアミノ酸配列又は位置1、4、5、7若しくは8において、単一のアラニン置換によって配列番号3から修飾されたアミノ酸配列又は位置1、3、4、6、7、8及び/又は9において、1個から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号3から修飾されたアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメインを有する;
c)配列番号4のアミノ酸配列又は位置2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11において、単一のアラニン置換によって配列番号4から修飾されたアミノ酸配列又は位置2、3、4、5、6、8、9、10、11及び/又は12において、1個から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号4から修飾されたアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメインを有する。さらに別の実施形態において、ヒト抗体又はその抗原結合部分は、配列番号3のアミノ酸配列又は位置1、4、5、7若しくは8において、単一のアラニン置換によって配列番号3から修飾されたアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する軽鎖可変領域(LCVR)を含み、及び配列番号4のアミノ酸配列又は位置2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11において単一のアラニン置換によって配列番号4から修飾されたアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する重鎖可変領域(HCVR)を含む。
【0019】
別の実施形態において、ヒト抗体又はその抗原結合部分は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)及び配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)を含む。本発明のさらに別の実施形態において、ヒト抗体又はその抗原結合部分は、アダリムマブである。
【0020】
本発明の一実施形態において、TNFα抗体又はその抗原結合部分は、隔週投薬計画で、患者に投与される。一実施形態において、抗体又はその抗原結合部分は、さらなる治療剤(例えば、メトトレキサートなど)と組み合わせて投与される。
【0021】
本発明は、ヒト患者におけるびらん性多発性関節炎の治療に対するTNFα抗体またはその抗原結合部分の有効性をモニターする方法であり、前記TNFα抗体またはその抗原結合部分の有効性を測定すること、びらん性多発性関節炎を有する患者集団のベースライン修正シャープの合計スコア(mTSS)及びTNFα抗体又はその抗原結合部分の投与後における患者集団のmTSSスコアを使用することを含み、前記患者集団の約9から27%におけるmTSSの減少、前記患者集団の約65から73%におけるmTSSの無変化及び前記患者集団の約9から28%におけるmTSSの増加からなる群から選択される結果が、TNFα抗体又はその抗原結合部分がびらん性多発性関節炎を治療する上で有効であることを示す、前記方法を記載する。
【0022】
本発明の一実施形態において、TNFα抗体又はその抗原結合部分は、ヒト化抗体、キメラ抗体及び多価抗体からなる群から選択される抗体である。一実施形態において、TNFα抗体又はその抗原結合部分は、インフリキシマブ又はゴリムマブである。別の実施形態において、TNFα抗体又はその抗原結合部分は、ヒト抗体である。
【0023】
別の実施形態において、ヒト抗体又はその抗原結合部分は、1×10−8M又はそれ以下のK及び1×10−3−1又はそれ以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し(何れも、表面プラズモン共鳴によって測定される。)、並びに、標準的なインビトロL929アッセイにおいて、1×10−7M又はそれ以下のIC50でヒトTNFα細胞毒性を中和する。さらに別の実施形態において、ヒト抗体又はその抗原結合部分は、アダリムマブである。
【0024】
本発明には、乾癬性関節炎を伴うびらん性多発性関節炎を治療するためのTNFα抗体またはその抗原結合部分の有効性を検査する方法であり、前記TNFα抗体またはその抗原結合部分の有効性を測定すること、NFα抗体又はその抗原結合部分の投与後におけるびらん性多発性関節炎を有する患者集団のmTSS及びPASI又はACRスコアの何れかと比較して、びらん性多発性関節炎を有する患者集団のベースライン修正シャープの合計スコア(mTSS)及びベースライン乾癬範囲重度指数(PASI)スコア又はベースラインACRスコアの何れかを使用することを含み、mTSSの無変化又は減少及び前記患者集団の少なくとも約57%において達成されたACR20応答又は前記患者集団の少なくとも約75%において達成されたPASI50応答が、TNFα抗体又はその抗原結合部分が乾癬性関節炎を伴うびらん性多発性関節炎の治療に対して有効であることを示す、前記方法も含まれる。一実施形態において、患者集団の少なくとも約39%において、ACR50応答が達成される。別の実施形態において、患者集団の少なくとも約23%において、ACR70応答が達成される。さらに別の実施形態において、患者集団の少なくとも約59%において、PASI75応答がさらに達成される。さらに別の実施形態において、患者集団の少なくとも約42%において、PASI90応答が達成される。一実施形態において、TNFα抗体又はその抗原結合部分は、アダリムマブである。
【0025】
本発明は、びらん性多発性関節炎を有する患者に、隔週投薬計画でアダリムマブを投与することを含む、びらん性多発性関節炎を治療する方法を記載する。一実施形態において、アダリムマブの用量は約40mgである。
【0026】
本発明には、TNFα抗体又はその抗原結合部分と、及び医薬として許容される担体とを含む医薬組成物と、並びにびらん性多発性関節炎の治療のための前記医薬組成物の投与のための指示書とを含むキットも含まれる。一実施形態において、医薬組成物は、TNFα抗体又はその抗原結合部分は、アダリムマブを含む。一実施形態において、医薬組成物は、アダリムマブ約40mgを含む。別の実施形態において、本キットは、さらに、さらなる治療剤を含む。一実施形態において、さらなる治療剤は、メトトレキサートである。
【0027】
本発明は、梱包材料と、TNFα抗体又はその抗原結合部分と、及びびらん性多発性関節症の治療のためにTNFα抗体又はその抗原結合部分が使用できることを示す、前記梱包材料内に含有されたラベル又は梱包挿入物と、を含む、製品を記載する。本発明には、梱包材料と、TNFα抗体又はその抗原結合部分と、及び関節疾患の放射線学的進行を阻害するためにTNFα抗体又はその抗原結合部分が使用できることを示す、前記梱包材料内に含有されたラベル又は梱包挿入物と、を含む、も含まれる。
【0028】
一実施形態において、製品は、ヒト化抗体、キメラ抗体及び多価抗体からなる群から選択される抗体を含む。
【0029】
一実施形態において、TNFα抗体又はその抗原結合部分がインフリキシマブ又はゴリムマブである。別の実施形態において、TNFα抗体又はその抗原結合部分は、ヒト抗体である。一実施形態において、ヒト抗体又はその抗原結合部分は、1×10−8M又はそれ以下のK及び1×10−3−1又はそれ以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し(何れも、表面プラズモン共鳴によって測定される。)、並びに、標準的なインビトロL929アッセイにおいて、1×10−7M又はそれ以下のIC50でヒトTNFα細胞毒性を中和する。別の実施形態において、ヒト抗体又はその抗原結合部分は、アダリムマブである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1a】図1a及び1bは、修正シャープの合計スコア(mTSS)(図1a)及びPsAに伴う放射線学的知見(図1b)の模式図を示す。
【図1b】図1a及び1bは、修正シャープの合計スコア(mTSS)(図1a)及びPsAに伴う放射線学的知見(図1b)の模式図を示す。
【図2】図2は、修正されたシャープの合計スコア(mTSS)の累積分布関数のプロットを示している。グラフは、ベースライン及び第24週放射線フィルムを有する患者に対するベースラインから第24週の変化を示している。
【図3a】図3a及び3bは、メトトレキサート(mtx)あり(図3a)及びメトトレキサート(mtx)なし(図3b)の患者のmTSSの累積分布関数プロットを示している。
【図3b】図3a及び3bは、メトトレキサート(mtx)あり(図3a)及びメトトレキサート(mtx)なし(図3b)の患者のmTSSの累積分布関数プロットを示している。
【図4】図4は、第48週での、mTSSの平均変化のグラフを示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
I.定義
本発明をさらに容易に理解できるようにするために、まず、幾つかの用語を定義する。
【0032】
本明細書において使用される「ヒトTNFα(本明細書では、hTNFα又は単にhTNFと略称される。)」という用語は、17kDの分泌型及び26Kdの膜会合型として存在し、その生物学的に活性な形態が、非共有結合された17kD分子の三量体から構成されるヒトサイトカインを表すものとする。hTNFαの構造は、例えば、さらに、「Pennica,D.,et al.(1984)Nature 312:724− 729;Davis,J.M.,et al.(1987)Biochemistry 26:1322−1326;and Jones,E. Y.,et al.(1989)Nature 338:225−228」に記載されている。ヒトTNFαという用語には、標準的な組換え発現法によって調製するか、又は商業的に購入する(R & D Systems,Catalog No.210−TA,Minneapolis,MN)ことが可能な組換えヒトTNFα(rhTNFα)が含まれるものとする。TNFαは、TNFとも称される。
【0033】
「TNFα阻害剤」という用語は、TNFα活性を妨害する因子を表す。本用語には、本明細書に記載されている抗TNFαヒト抗体及び抗体部分並びに米国特許第6,090,382号、同第6,258,562号、同第6,509,015号および米国特許出願09/801185号及び10/302356号に記載されている抗TNFαヒト抗体及び抗体部分も含まれる。一実施形態において、本発明で使用されるTNFα阻害剤は、インフリキシマブ(Remicade(R)Johnson and Johnson;米国特許第5,656,272号に記載されている。参照により本明細書に組み込まれる。)、CDP571(ヒト化されたモノクローナル抗TNF−αIgG4抗体)、CDP870(ヒト化されたモノクローナル抗TNF−α抗体断片)、抗TNFdAb(Peptech)、CNTO148(ゴリムマブ;Medarex and Centocor,WO02/12502号を参照。)及びアダリムマブ(Humira(R)、Abbott Laboratories、ヒト抗TNFmAb、米国特許第6,090,382号に、D2E7として記載されている。)などの抗TNFα抗体又はその断片である。本発明で使用可能なさらなるTNF抗体は、米国特許第6,593,458号;同第6,498,237号;同第6,451,983号;及び同第6,448,380号(これらの各々は、参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されている。別の実施形態において、TNFα阻害剤は、TNF融合タンパク質、例えば、エタネルセプト(Enbrel(R)、Amgen;WO91/03553及びWO09/406476(参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されている。)である。別の実施形態において、TNFα阻害剤は、組換えTNF結合タンパク質(r−TBP−I)(Serono)である。
【0034】
本明細書において使用される「抗体」という用語は、4つのポリペプチド鎖(ジスルフィド結合によって相互に接続された2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖)から構成される免疫グロブリン分子を表すものとする。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書において、HCVR又はVHと略称される。)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2及びCH3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書において、LCVR又はVLと略称される。)及び軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLから構成される。VH及びVL領域は、より保存された領域(フレームワーク領域(FR)と称される。)が散在された超可変領域(相補性決定領域(CDR)と称される。)へ、さらに細分割することが可能である。各VH及びVLは、順にFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順で、アミノ末端からカルボキシ末端に配置された3つのCDR及び4つのFRから構成される。本発明の抗体は、米国特許第6,090,382号、同第6,258,562号及び同第6,509,015号(これらの各々は、参照により、本明細書に組み込まれる。)に、さらに詳しく記載されている。
【0035】
本明細書において使用される抗体の「抗原結合部分」(又は単に「抗体部分」)という用語は、抗原(例えば、hTNFα)に特異的に結合する能力を保持する、抗体の1つ又はそれ以上の断片を表す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって実行可能であることは示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例には、(i)Fab断片(VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片)、(ii)F(ab’)断片(ヒンジ領域において、ジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片)、(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al.(1989)Nature 341:544−546)及び(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVL及びVHは別個の遺伝子によってコードされているが、これらは、VL及びVH領域が対合して一価分子(一本鎖Fv(scFv)として知られている。例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423−426;and Huston et al.(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879−5883)を形成している単一のタンパク質鎖として、これらの作製を可能とする合成リンカーによって、組み換え法を用いて連結することが可能である。このような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されるものとする。ダイアボディなどの一本鎖抗体の他の形態も包含される。ダイアボディは、VH及びVLドメインが一本鎖ポリペプチド鎖上に発現されているが、同一鎖上にある2つのドメイン間での対合を可能とするには短すぎるリンカーを使用することにより、両ドメインを別の鎖の相補的ドメインと対合するように強制し、2つの抗原結合部位を作出する二価の二重特異性抗体である(例えば、Holliger et al.(1993)Proc. Natl. Acad. Sd. USA 90:6444−6448;Poljak et al(1994)Structure 2:1121−1123を参照)。本発明の抗体部分は、米国特許第6,090,382号、同第6,258,562号、同第6,509,015号(これらの各々は、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。)に、さらに詳しく記載されている。
【0036】
結合断片は、組換えDNA技術によって、又は完全な状態の免疫グロブリンの酵素的又は化学的切断によって産生される。結合断片には、Fab、Fab’、F(ab’)、Fabc、Fv、一本鎖及び一本鎖抗体が含まれる。「二重特異的」又は「二機能性」免疫グロブリン又は抗体以外の免疫グロブリン又は抗体は、その結合部位の各々が同一であると理解される。「二重特異的」又は「二機能性抗体」は、2つの異なる重/軽鎖対及び2つの異なる結合部位を有する人工のハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合又はFab’断片の連結など、様々な方法によって作製することが可能である。例えば、「Songsivilai & Lachmann,Clin.Exp.Immunol.79:315−321(1990);Kostelny et al.,J.Immunol.148,1547−1553(1992)」を参照されたい。
【0037】
本明細書において使用される「保存的アミノ酸置換」とは、1つのアミノ酸置換が、類似の側鎖を有する別のアミノ酸残基で置換される置換である。塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非帯電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐した側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)など、類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが、本技術分野において定義されている。
【0038】
本明細書において使用される「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を含むものとする。本発明のヒト抗体は、例えば、CDR、特にCDR3中に、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムな突然変異導入若しくは部位特異的突然変異導入によって、又はインビボでの体細胞変異によって導入された変異)を含み得る。しかしながら、本明細書において使用される「ヒト抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植された抗体を含まないものとする。
【0039】
本明細書において使用される「組換えヒト抗体」という用語は、宿主細胞中に形質移入された組換え発現ベクターを用いて発現された抗体(以下で、さらに記載されている。)、組換え、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体(以下で、さらに記載されている。)、ヒト免疫グロブリン遺伝子に対して遺伝子導入される動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylor et al.(1992)Nucl. Acids Res. 20:6287を参照。)など、組換え手段によって、調製され、発現され、作製され、若しくは単離された全てのヒト抗体、又はヒト免疫グロブリン遺伝子配列の、他のDNA配列へのスプライシングを伴う他の何らかの手段によって調製され、発現され、作製され、若しくは単離された抗体を含むものとする。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する。しかしながら、ある種の実施形態において、このような組換えヒト抗体は、インビトロ突然変異導入(又は、ヒトIg配列に対して遺伝子導入された動物が使用される場合には、インビボ体細胞突然変異導入)に供され、従って、組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VH及びVL配列に由来し、及びこれらの配列に関連しつつも、インビボで、ヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然には存在しない場合があり得る配列である。
【0040】
本明細書において使用される「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない(例えば、hTNFαを特異的に結合する単離された抗体は、hTNFα以外の抗原を特異的に結合する抗体を実質的に含まない)抗体を表すものとする。しかしながら、hTNFαを特異的に結合する単離された抗体は、他の種から得られるTNFα分子など、他の抗原への交叉反応性を有し得る(以下に、さらに詳しく論述されている。)。さらに、単離された抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まないことができる。
【0041】
本明細書において使用される「中和抗体」(又は「hTNFα活性を中和した抗体」)は、hTNFαへの結合が、hTNFαの生物学的活性の阻害をもたらす抗体を表すものとする。hTNFαの生物学的活性のこの阻害は、hTNFαによって誘導された細胞毒性(インビトロ又はインビボの何れか)、hTNFαによって誘導された細胞活性化及びhTNFα受容体へのhTNFαの結合など、hTNFα生物活性の1つ又はそれ以上の指標を測定することによって評価することが可能である。hTNFα生物活性のこれらの指標は、本分野で公知の幾つかの標準的なインビトロ又はインビボアッセイの1つ又はそれ以上によって評価することが可能である(米国特許第6,090,382号参照)。好ましくは、抗体がhTNFα活性を中和する抗体の能力は、hTNFαによって誘導されるL929細胞の細胞毒性の阻害によって評価される。hTNFα活性のさらなるパラメータ又は別のパラメータとして、hTNFαによって誘導されたELAM−1のHUVEC上での発現を阻害する抗体の能力を、hTNFαによって誘導された細胞活性化の指標として評価することが可能である。
【0042】
本明細書において使用される「表面プラズモン共鳴」という用語は、例えば、BIAcoreシステム(Pharmacia Biosensor AB,Uppsala,Sweden and Piscataway,NJ)を用いて、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出することによって、リアルタイムな生物特異的相互作用の分析を可能とする光学現象を表す。さらなる記述については、米国特許第6,258,562号の実施例1及び「Jonsson et al(1993)Ann.Biol.Clin.51:19;Jonsson et al.(1991)Biotechniques 11:620−627;Johnsson et al(1995)J. Mol.Recognit.8:125;and Johnnson et al.(1991)Anal.Biochem.198:268」を参照されたい。
【0043】
本明細書において使用される「Koff」という用語は、抗体/抗原複合体からの抗体の解離に対する解離速度定数を表すものとする。
【0044】
本明細書において使用される「K」という用語は、特定の抗体抗原相互作用の解離定数を表すものとする。
【0045】
本明細書において使用される「IC50」という用語は、対象とする生物学的評価項目(例えば、細胞毒性活性の中和)を阻害するのに必要とされる阻害剤の濃度を表すものとする。
【0046】
本明細書において使用される「核酸分子」という用語は、DNA分子及びRNA分子を含むものとする。核酸分子は、一本鎖又は二本鎖であり得るが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0047】
hTNFαを結合する抗体又は抗体部分(例えば、VH、VL、CDR3)をコードする核酸に対して本明細書で使用される「単離された核酸分子」という用語は、抗体又は抗体部分をコードするヌクレオチド配列が、hTNFα以外の抗原を結合する抗体又は抗体部分をコードする他のヌクレオチド配列(この他の配列は、天然の状態で、ヒトゲノムDNA中の核酸に隣接し得る。)を含まない核酸分子を表すものとする。従って、例えば、抗hTNFα抗体のVH領域をコードする本発明の単離された核酸は、hTNFα以外の抗原を結合する他のVH領域をコードする他の配列を含有しない。
【0048】
本明細書において使用される「ベクター」という用語は、核酸分子に連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を表すものとする。ベクターの1つの種類は「プラスミド」であり、これは、その中にさらなるDNAセグメントを連結し得る環状二本鎖DNAループを表す。ベクターの別の種類はウイルスベクターであり、ここにおいて、追加のDNAセグメントはウイルスゲノム中に連結され得る。ある種のベクターは、当該ベクターがその中に導入された宿主細胞中で自律的複製を行うことができる(例えば、細菌の複製起点及びエピソーム哺乳動物ベクターを有するベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞中への導入時に、宿主細胞のゲノム中に組み込まれることが可能であり、これにより、宿主ゲノムとともに複製される。さらに、ある種のベクターは、それらが作用可能に連結されている遺伝子の発現を誘導することが可能である。このようなベクターは、本明細書において、「組換え発現ベクター」(又は単に、「発現ベクター」)と称される。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、しばしば、プラスミドの形態である。プラスミドは、最も一般的に使用されるベクターの形態であるので、本明細書において、「プラスミド」及び「ベクター」は互換的に使用され得る。しかしながら、本発明は、均等な機能を果たす、ウイルスベクターなどの(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)発現ベクターのこのような他の形態を含むものとする。
【0049】
本明細書において使用される「組換え宿主細胞」(又は単に、「宿主細胞」)という用語は、組換え発現ベクターがその中に導入されている細胞を表すものとする。このような用語は、当該細胞を表すのみならず、このような細胞の子孫も表すことを理解すべきである。突然変異又は環境的な影響のために、後続の世代中にある種の修飾が生じ得るので、このような子孫は、実際には、親細胞と同一でないことがあり得るが、本明細書において使用される「宿主細胞」という用語の範囲に、なお含まれる。
【0050】
本明細書において使用される「用量」という用語は、患者に投与されるTNFα阻害剤の量を表す。
【0051】
「複数可変用量」という用語は、治療的処置のために患者に投与されるTNFα阻害剤の異なる用量を含む。「複数可変投薬計画」又は「複数可変投薬療法」は、治療期間を通じて、様々な時点で、TNFα阻害剤の異なる量を投与することに基づく治療スケジュールを記載する。一実施形態において、本発明は、誘導期及び治療期を含むびらん性多発性関節炎の治療の複数可変投薬方法を記載し、ここにおいて、TNFα阻害剤は、治療期より、誘導期の間に、より高用量で投与される。複数可変投薬計画は、PCT出願PCT/US05/12007号に記載されている。
【0052】
本明細書において使用される「投薬」という用語は、治療目的(例えば、びらん性多発性関節炎の治療)を達成するために、物質(例えば、抗TNFα抗体)を投与することを表す。
【0053】
本明細書において使用される「隔週投薬計画」、「隔週投薬」及び「隔週投与」という用語は、治療目的(例えば、びらん性多発性関節炎の治療)を達成するために、物質(例えば、抗TNFα抗体)を患者に投与する時間的経過を表す。隔週投薬計画は、毎週投薬計画を含まないものとする。好ましくは、物質は、9から19日ごとに、より好ましくは、11から17日ごとに、さらに好ましくは、13から15日ごとに、最も好ましくは、14日ごとに投与される。
【0054】
「第二の薬剤と組み合わせた第一の薬剤」という表現におけるような「組み合わせ」という用語には、例えば、医薬として許容される同一の担体中に溶解若しくは混合され得る第一及び第二の薬剤の同時投与又は第一の薬剤の投与に続く第二の薬剤の投与又は第二の薬剤の投与に続く第一の薬剤の投与が含まれる。従って、本発明には、組み合わせ治療的処置法及び組み合わせ医薬組成物が含まれる。一実施形態、本発明は、抗TNF抗体を投与することを含むびらん性多発性関節症を治療するための組み合わせ療法を提供する。
【0055】
「同時治療的処置」という表現におけるような「同時」という用語には、第二の薬剤の存在下で薬剤を投与することを含む。同時治療的処置法には、第一、第二、第三の薬剤又はさらなる薬剤が同時投与される方法が含まれる。同時治療的処置法には、第一の薬剤又はさらなる薬剤が、第二の薬剤又はさらなる薬剤の存在下で投与され、ここにおいて、第二の薬剤又はさらなる薬剤が、例えば、予め投与され得る方法も含まれる。同時治療的処置法は、異なる実施者によって、段階的に実行され得る。例えば、ある実施者が第一の薬剤を患者に投与し得、第二の実施者が第二の薬剤を投与し得、投与工程は、同時に若しくはほぼ同時に実行し得、又は第一の薬剤(及びさらなる薬剤)が第二の薬剤(及びさらなる薬剤)の存在下での投与後である限り、離れた時点で実行され得る。実施者及び患者は、同じ実体(例えば、ヒト)であり得る。
【0056】
本明細書において使用される「組み合わせ療法」という用語は、2つ又はそれ以上の治療物質(例えば、抗TNFα抗体及び別の薬物)の投与を表す。他の薬物は、抗TNFα抗体の投与と同時に、投与前に、又は投与後に投与され得る。
【0057】
本明細書において使用される「キット」という用語は、構成要素を含む、梱包された生産品又は製品を表す。キットは、好ましくは、キットの構成要素を収容する箱又は容器を含む。箱又は容器には、標識又は食品医薬品局によって認可されたプロトコールが添付される。箱又は容器は、プラスチック、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン又はプロピレン容器内に好ましく含有される本発明の構成要素を収容する。容器は、蓋をしたチューブ又は瓶とすることが可能である。キットは、TNFα抗体又はその抗原結合部分を投与するための指示書を含むことも可能である。一実施形態において、本発明のキットは、PCT/IB03/04502及び米国特許出願10/222140号に記載されているヒト抗体D2E7を含む製剤を含む。
【0058】
本発明の様々な態様は、以下でさらに詳しく記載されている。
【0059】
II.TNFα阻害剤
本発明は、TNFα阻害剤、例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分の投与が有益であるびらん性多発性関節炎の治療法を提供する。一実施形態において、これらの方法は、高い親和性及び低い解離速度でヒトTNFαに結合し、並びに高い中和能を有する、単離されたヒト抗体又はその抗原結合部分の投与を含む。好ましくは、本発明のヒト抗体は、組換え、中和ヒト抗hTNFα抗体である。
【0060】
一実施形態において、本発明で使用されるTNFα阻害剤は、インフリキシマブ(Remicade(R)Johnson and Johnson;米国特許第5,656,272号(参照により本明細書に組み込まれる。)、CDP571(ヒト化されたモノクローナル抗TNF−αIgG4抗体)、CDP870(ヒト化されたモノクローナル抗TNF−α抗体断片)、抗TNFdAb(Peptech)、CNTO148(ゴリムマブ;Medarex and Centocor,WO02/12502号を参照。)及びアダリムマブ(Humira(R)、Abbott Laboratories、ヒト抗TNF mAb、米国特許第6,090,382号に、D2E7として記載されている。)などの抗TNFα抗体又はその断片である。本発明で使用可能なさらなるTNF抗体は、米国特許第6,593,458号;同第6,498,237号;同第6,451,983号;及び同第6,448,380号(これらの各々は、参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されている。
【0061】
本発明において使用される、最も好ましい組換え中和抗体は、D2E7として本明細書で表記される(HUMIRA(R)及びアダリムマブとも称される(D2E7VL領域のアミノ酸配列は配列番号1に示されており、D2E7VH領域のアミノ酸配列は配列番号2に示されている。)。)。D2E7(HUMIRA(R))の特性は、Salfeldらの米国特許第6,090,382号、第6,258,562号及び第6,509,015号(各々、参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されている。TNFα阻害剤の別の例には、関節リウマチの治療について、臨床試験を受けたキメラ及びヒト化マウス抗hTNFα抗体が含まれる(例えば、Elliott et al.(1994)Lancet 344:1125−1127;Elliot et al.(1994)Lancet 344:1105−1110;Rankin et al.(1995)Br.J.Rheumatol.34:334−342参照。)。別の実施形態において、抗TNFα抗体は多価である。
【0062】
一実施形態において、びらん性多発性関節炎を治療する本発明の方法は、D2E7抗体及び抗体部分、D2E7関連抗体及び抗体部分、並びに低い解離速度と高い中和能でのhTNFαへの高親和性結合のような、D2E7と均等な特性を有するその他のヒト抗体及び抗体部分を投与することを含む。一実施形態において、本発明は、1×10−8M又はそれ以下のK及び1×10−3−1又はそれ以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し(何れも、表面プラズモン共鳴によって測定される。)、並びに、標準的なインビトロL929アッセイにおいて、1×10−7M又はそれ以下のIC50でヒトTNFα細胞毒性を中和する単離されたヒト抗体又はその抗原結合部分を用いて、びらん性多発性関節炎を治療する方法を提供する。より好ましくは、単離されたヒト抗体又はその抗原結合部分は、5×10−4−1又はそれ以下のKoffで、又はより好ましくは、1×10−4−1若しくはそれ以下Koffで、ヒトTNFαから解離する。より好ましくは、単離されたヒト抗体又はその抗原結合部分は、1×10−8M若しくはそれ以下のIC50、より好ましくは、1×10−9M若しくはそれ以下のIC50、さらにより好ましくは、1×10−10M若しくはそれ以下のIC50で、標準的なインビトロL929アッセイにおいて、ヒトTNFα細胞毒性を中和する。好ましい実施形態において、抗体は、単離されたヒト組換え抗体又はその抗原結合部分である。
【0063】
抗体重鎖及び軽鎖CDR3ドメインは、抗原に対する抗体の結合特異性/親和性において重要な役割を果たしていることが本分野で周知である。従って、別の態様において、本発明は、hTNFαとの会合に対して遅い解離速度を有し、並びに、D2E7と構造的に同一又は関連した軽鎖及び重鎖CDR3ドメインを有するヒト抗体を投与することによって、びらん性多発性関節炎を治療する方法に関する。D2E7VLCDR3の9位は、Koffに対して実質的に影響を与えずに、Ala又はThrによって占拠されることが可能である。従って、D2E7VLCDR3に対するコンセンサスモチーフは、アミノ酸配列Q−R−Y−N−R−A−P−Y−(T/A)(配列番号3)を含む。さらに、D2E7VLCDR3の12位は、Koffに対して実質的に影響を与えずに、Tyr又はAsnによって占拠されることが可能である。従って、D2E7VLCDR3に対するコンセンサスモチーフは、アミノ酸配列V−S−Y−L−S−T−A−S−S−L−D−(Y/N)(配列番号4)を含む。さらに、米国特許第6,090,382号の実施例2に示されているように、D2E7重鎖及び軽鎖のCDR3ドメインは、Koffに対して実質的に影響を与えずに、(VLCDR3内の1、4、5、7若しくは8位に、又はVHCDR3内の2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11位に)単一のアラニン残基での置換を行いやすい。さらに、D2E7VL及びVHCDR3ドメインは、アラニンによる置換を行いやすいことに鑑みれば、当業者は、抗体の低い解離速度定数を保持しながら、CDR3ドメイン内に他のアミノ酸置換(特に、保存的アミノ酸での置換)が可能であることを理解する。好ましくは、D2E7VL及び/又はVHCDR3ドメイン内に、1個から5個以下の保存的アミノ酸置換が施される。より好ましくは、D2E7VL及び/又はVHCDR3ドメイン内に、1個から3個以下の保存的アミノ酸置換が施される。さらに、保存的アミノ酸置換は、hTNFαへの結合に対して重要なアミノ酸位置で行われるべきでない。D2E7VLCDR3の2位及び5位並びにD2E7VHCDR3の1位及び7位は、hTNFαとの相互作用について重要であると思われるので、(上記のように、D2E7VLCDR3の5位におけるアラニン置換は許容されるが、)保存的アミノ酸置換は、好ましくは、これらの位置において行われない(米国特許第6,090,382号参照)。
【0064】
従って、別の実施形態において、本発明は、単離されたヒト抗体又はその抗原結合部分の投与により、びらん性多発性関節炎を治療する方法を提供する。抗体又はその抗原結合部分は、好ましくは、以下の特徴を含有する。
【0065】
a)表面プラズモン共鳴によって測定した場合に、1×10−3−1又はそれ以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離する;
b)配列番号3のアミノ酸配列又は位置1、4、5、7若しくは8において、単一のアラニン置換によって配列番号3から修飾されたアミノ酸配列又は位置1、3、4、6、7、8及び/又は9において、1個から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号3から修飾されたアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメインを有する;
c)配列番号4のアミノ酸配列又は位置2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11において、単一のアラニン置換によって配列番号4から修飾されたアミノ酸配列又は位置2、3、4、5、6、8、9、10、11及び/又は12において、1個から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号4から修飾されたアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメインを有する。
【0066】
より好ましくは、抗体又はその抗原結合部分は、5×10−4−1又はそれ以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離する。さらに好ましくは、抗体又はその抗原結合部分は、1×10−4−1又はそれ以下のKoffでヒトTNFαから解離する。
【0067】
さらに別の実施形態において、本発明は、単離されたヒト抗体又はその抗原結合部分の投与により、びらん性多発性関節炎を治療する方法を提供する。抗体又はその抗原結合部分は、好ましくは、配列番号3のアミノ酸配列又は位置1、4、5、7若しくは8において、単一のアラニン置換によって配列番号3から修飾されたアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する軽鎖可変領域(LCVR)を含有し、及び配列番号4のアミノ酸配列又は位置2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11において単一のアラニン置換によって配列番号4から修飾されたアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する重鎖可変領域(HCVR)を含有する。好ましくは、LCVRは、さらに、配列番号5のアミノ酸配列(すなわち、D2E7VLCDR2)を含むCDR2ドメインを有し、HCVRは、さらに、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン(すなわち、D2E7VHCDR2)を有する。さらに好ましくは、LCVRは、さらに、配列番号7のアミノ酸配列(すなわち、D2E7VLCDR1)を含むCDR1ドメインを有し、HCVRは、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン(すなわち、D2E7VHCDR1)を有する。VLに対するフレームワーク領域は、好ましくは、VκIヒト生殖系列ファミリーから、A20ヒト生殖系列Vκ遺伝子から、最も好ましくは、米国特許第6,090,382号の図1A及び1Bに示されているD2E7VLフレームワーク配列から得られる。VHに対するフレームワーク領域は、好ましくは、V3ヒト生殖系列ファミリーから、より好ましくは、DP−31ヒト生殖系列VH遺伝子から、最も好ましくは、米国特許第6,090,382号の図2A及び2Bに示されているD2E7VHフレームワーク配列から得られる。
【0068】
従って、別の実施形態において、本発明は、単離されたヒト抗体又はその抗原結合部分の投与により、びらん性多発性関節炎を治療する方法を提供する。抗体又はその抗原結合部分は、好ましくは、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)(すなわち、D2E7VL)及び配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)(すなわち、D2E7VH)を含有する。ある種の実施形態において、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgD定常領域などの重鎖定常領域を含む。好ましくは、重鎖定常領域は、IgG1重鎖定常領域又はIgG4重鎖定常領域である。さらに、抗体は、軽鎖定常領域(κ軽鎖定常領域又はλ軽鎖定常領域の何れか)を含むことが可能である。好ましくは、抗体は、κ軽鎖定常領域を含む。あるいは、抗体部分は、例えば、Fab断片又は一本鎖Fv断片であり得る。
【0069】
さらに別の実施形態において、本発明は、抗体が単離されたヒト抗体又はその抗原結合部分である抗TNFα抗体の投与、びらん性多発性関節炎を治療する方法を記載する。抗体又はその抗原結合部分は、好ましくは、配列番号3、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25及び配列番号26からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する軽鎖可変領域(LCVR)とともに、又は配列番号4、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34及び配列番号35からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する重鎖可変領域(HCVR)とともに、D2E7関連VL及びVHCDR3ドメイン、例えば、抗体又はその抗原結合部分を含有する。
【0070】
本発明において使用されるTNFα抗体は、修飾することも可能である。幾つかの実施形態において、TNFα抗体又はその抗原結合部分は、所望の効果を提供するために化学的に修飾される。例えば、本発明の抗体及び抗体断片のPEG化は、例えば、以下の参考文献:Focus on Growth Factors 3:4−10(1992);EP 0 154 316;及びEP 0401 384(各々、その全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されているように、本分野で公知のPEG化反応の何れかによって実施され得る。好ましくは、PEG化は、反応性ポリエチレングリコール分子(又は類似の反応性の水溶性ポリマー)とのアシル化反応又はアルキル化反応を介して実施される。本発明の抗体及び抗体断片のPEG化のために好ましい水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)である。本明細書において使用される「ポリエチレングリコール」は、モノ(C1−C10)アルコキシ−又はアリールオキシポリエチレングリコールなどの他のタンパク質を誘導体化するために使用されてきたPEGの形態の全てを包含するものとする。
【0071】
本発明のPEG化された抗体及び抗体断片を調製する方法は、一般的に、(a)抗体又は抗体断片が1つ又はそれ以上のPEG基に付着される条件下で、抗体又は抗体断片を、ポリエチレングリコール(PEGの反応性エステル又はアルデヒド誘導体など)と反応させる工程、及び(b)反応産物を取得する工程を含む。公知のパラメータ及び所望の結果に基づいて、最適な反応条件又はアシル化反応を選択することが、当業者に自明である。
【0072】
PEG化された抗体及び抗体断片は、一般に、本明細書に記載されているTNFα抗体及び抗体断片の投与によって、本発明のびらん性多発性関節炎及びTNFα関連疾患を治療するために使用し得る。一般的に、PEG化された抗体及び抗体断片は、PEG化されていない抗体及び抗体断片に比べて、増加した半減期を有する。PEG化された抗体及び抗体断片は、単独で、一緒に、また他の医薬組成物と組み合わせて使用され得る。
【0073】
本発明のさらに別の実施形態において、TNFα抗体又はその断片は、改変することが可能であり、この場合、非修飾抗体に比べて、定常領域を介した少なくとも1つの生物学的エフェクター機能を低下するように抗体の定常領域が修飾される。本発明の抗体がFc受容体への減少した結合を示すように本発明の抗体を修飾するために、抗体の免疫グロブリン定常領域セグメントは、Fc受容体(FcR)相互作用に必要な領域を変異させることが可能である(例えば、Canfield and Morrison(1991)J. Exp. Med. 173:1483−1491;and Lund et al.(1991)J. of Immunol.147:2657−2662参照)。抗体のFcR結合能の減少は、オプソニン化及び貪食作用及び抗原依存性細胞毒性など、FcR相互作用に依存するその他のエフェクター機能も低下させ得る。
【0074】
本発明の抗体又は抗体部分は、別の機能的分子(例えば、別のペプチド又はタンパク質)へ誘導体化し、又は連結させることが可能である。従って、本発明の抗体及び抗体部分には、免疫接着分子など、本明細書に記載されているヒト抗hTNFα抗体の誘導体化された形態及びその他修飾された形態が含まれるものとする。例えば、本発明の抗体又は抗体部分は、別の抗体(例えば、二重特異的抗体又はダイアボティ)、検出可能な因子、細胞毒性剤、薬剤及び/又は抗体若しくは抗体部分との、別の分子(ストレプトアビジンコア領域又はポリヒスチジンタグなど)との会合を媒介可能なタンパク質若しくはペプチドなの1つ又はそれ以上の他の分子体へ、(化学的カップリング、遺伝的融合、非共有会合又はその他によって)機能的に連結することが可能である。
【0075】
誘導体化された抗体の1つの種類は、(例えば、二重特異的抗体を作製するために、同一の種類の、又は異なる種類の)2つ又はそれ以上の抗体を架橋することによって作製される。適切な架橋剤には、適切なスペーサー(例えば、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)によって隔てられた反応性が異なる2つの基を有するヘテロ二官能性又はホモ二官能性(例えば、ジスクシンイミジルスベラート)である架橋剤が含まれる。このようなリンカーは、Pierce Chemical Company,Rockford,ILから購入可能である。
【0076】
本発明の抗体又は抗体部分を誘導体化し得る有用な検出可能因子には、蛍光化合物が含まれる。典型的な蛍光検出可能因子には、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、5−ジメチルアミン−1−ナフタレンスルホニルクロリド、フィコエリトリンなどが含まれる。抗体は、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼなどの検出可能な酵素でも誘導体化され得る。抗体が検出可能な酵素で誘導体化される場合には、検出可能な反応産物を生成させるために、本酵素が使用するさらなる試薬を添加することによって抗体が検出される。例えば、検出可能因子西洋ワサビペルオキシダーゼが存在する場合には、過酸化水素及びジアミノベンジジンの添加は、検出可能な発色した反応産物をもたらす。抗体は、ビオチンを用いて誘導体化し、アビジン又はストレプトアビジン結合の間接的な測定を通じて検出され得る。
【0077】
本発明の抗体又は抗体部分は、宿主細胞中での、免疫グロブリン軽鎖及び重鎖遺伝子の組換え発現によって調製することが可能である。抗体を組換え的に発現させるために、軽鎖及び重鎖が宿主細胞中で発現されるように、及び、好ましくは、宿主細胞がその中で培養されている培地(抗体は、この培地から回収することが可能である。)中に分泌されるように、抗体の免疫グロブリン軽鎖及び重鎖をコードするDNA断片を担持する1つ又はそれ以上の組換え発現ベクターで、宿主細胞が形質移入される。抗体重鎖及び軽鎖遺伝子を取得し、これらの遺伝子を組換え発現ベクター中に組み込み、ベクターを宿主細胞中に導入させるために、「Sambrook,Fritsch and Maniatis(eds),Molecular Cloning;A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor,N.Y.,(1989),Ausubel et at(eds.)Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates,(1989)及びBossらによる米国特許第4,816,397号」に記載されているものなどの標準的な組換えDNA法が使用される。
【0078】
D2E7又はD2E7関連抗体を発現するために、まず、軽鎖及び重鎖可変領域をコードするDNA断片を取得する。これらのDNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、生殖系列軽鎖及び重鎖可変配列の増殖及び修飾によって取得することが可能である。ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子に対する生殖系列DNA配列は、本分野で公知である(例えば、「Vbase」ヒト生殖系列配列データベースを参照されたい。Kabat et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S. Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242;Tomlinson et al.(1992)“The Repertoire of Human Germline V Sequences Reveals about Fifty Groups of V Segments with Different Hypervariable Loops” J. Mol.Biol.227:776−798;and Cox et al.(1994)“A Directory of Human Germ−line V78 Segments Reveals a Strong Bias in their Usage” Eur.J. Immunol.24:827−836も参照されたい。これらの各々の内容は、参照により、本明細書に明示的に組み込まれる。)。D2E7又はD2E7関連抗体の重鎖可変領域をコードするDNA断片を取得するために、ヒト生殖系列VH遺伝子のV3ファミリーのメンバーは、標準的なPCRによって増幅される。最も好ましくは、DP−31VH生殖系列配列が増幅される。D2E7又はD2E7関連抗体の軽鎖可変領域をコードするDNA断片を取得するために、ヒト生殖系列VL遺伝子のVκIファミリーのメンバーは、標準的なPCRによって増幅される。最も好ましくは、A20VL生殖系列配列が増幅される。DP−31生殖系列VH及びA20生殖系列VL配列を増幅する際に使用するのに適したPCRプライマーは、標準的な方法を使用して、上に引用されている参考文献中に開示されているヌクレオチド配列に基づいて設計することが可能である。
【0079】
生殖系列VH及びVL断片が得られたら、これらの配列は、本明細書に開示されているD2E7又はD2E7関連アミノ酸配列をコードするように変異させることが可能である。生殖系列VH及びVLDNA配列によってコードされるアミノ酸配列は、まず、生殖系列とは異なるD2E7又はD2E7関連配列中のアミノ酸残基を同定するために、D2E7又はD2E7関連VH及びVLアミノ酸配列に対して比較される。次いで、生殖系列DNA配列の適切なヌクレオチドは、変異された生殖系列配列がD2E7又はD2E7関連アミノ酸配列をコードするように、どのヌクレオチド変化を行うべきかを決定するために遺伝コードを用いて変異される。生殖系列配列の突然変異導入は、PCRを介した突然変異導入(PCR産物が変異を含有するように、変異されたヌクレオチドがPCRプライマー中に取り込まれる。)又は部位指定突然変異導入などの標準的な方法によって実施される。
(上述のように、生殖系列VH及びVL遺伝子の増幅及び突然変異導入によって)D2E7又はD2E7関連VH及びVLセグメントをコードするDNA断片が取得されたら、これらのDNA断片は、例えば、可変領域遺伝子を、完全長抗体鎖遺伝子、Fab断片遺伝子又はscFv遺伝子へ変換するために、標準的な組換えDNA技術によってさらに操作することが可能である。これらの操作では、VL又はVHをコードするDNA断片は、抗体定常領域又は柔軟なリンカーなど、別のタンパク質をコードする別のDNA断片に作用可能に連結されている。本明細書において使用される「作用可能に連結された」という用語は、2つのDNA断片によってコードされたアミノ酸配列がインフレームの状態に保たれるように、2つのDNA断片が連結されることを意味するものとする。
【0080】
VH領域をコードする単離されたDNAは、VHをコードするDNAを重鎖定常領域をコードする別のDNA分子(CH1、CH2及びCH3)に作用可能に連結することによって、完全長重鎖遺伝子へと変換することが可能である。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、本分野において公知であり(例えば、Kabat,et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S. Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242を参照)、これらの領域を包含するDNA断片は、標準的なPCR増幅によって取得することが可能である。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgD定常領域であり得るが、最も好ましくは、IgG1又はIgG4定常領域である。Fab断片重鎖遺伝子の場合、VHをコードするDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子へ作用可能に連結することが可能である。
【0081】
VL領域をコードする単離されたDNAは、VLをコードするDNAを、軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子に作用可能に連結することによって、完全長軽鎖遺伝子(及びFab軽鎖遺伝子)へと変換することが可能である。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、本分野において公知であり(例えば、Kabat,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S. Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242を参照)、これらの領域を包含するDNA断片は、標準的なPCR増幅によって取得することが可能である。軽鎖定常領域は、κ又はλ定常領域とすることが可能であるが、最も好ましくは、κ定常領域である。
【0082】
scFv遺伝子を作製するために、VH及びVL配列が連続する一本鎖タンパク質として発現されることができ、VL及びVH領域が柔軟なリンカーによって連結されるように、VHをコードするDNA断片及びVLをコードするDNA断片は、柔軟なリンカーをコードする、例えば、アミノ酸配列(Gly−Ser)をコードする別の断片へ、作用可能に連結される(例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423−426;Huston et al.(1988)Proc. Natl. Acad. Sd. USA 85:5879−5883;McCafferty et al,Nature(1990)348:552−554参照)。
【0083】
本発明の抗体又は抗体部分を発現させるために、遺伝子が転写調節配列及び翻訳調節配列へ作用可能に連結されるように、部分又は完全長軽鎖及び重鎖をコードするDNA(上述のようにして得られる。)は発現ベクター中に挿入される。この文脈において、「作用可能に連結された」という用語は、ベクター内の転写調節配列及び翻訳調節配列が、抗体遺伝子の転写及び翻訳を制御するという所期の機能を果たすように、抗体遺伝子がベクター中に連結されていることを意味するものとする。発現ベクター及び発現調節配列は、使用される発現宿主細胞と適合的であるように選択される。抗体軽鎖遺伝子及び抗体重鎖遺伝子は、別個のベクター中に挿入することが可能であり、又は、より典型的には、両遺伝子は同一の発現ベクター中に挿入される。抗体遺伝子は、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子断片及びベクター上の相補的制限部位の連結、又は制限部位が存在しなければ、平滑末端連結)によって発現ベクター中に挿入される。D2E7又はD2E7関連軽鎖又は重鎖配列の挿入の前に、発現ベクターは、既に、抗体定常領域配列を担持し得る。例えば、D2E7又はD2E7関連VH及びVL配列を完全長抗体遺伝子へと変換するための1つのアプローチは、VHセグメントが、ベクター内のCHセグメントへ、作用可能に連結され、及びVLセグメントが、ベクター内のCLセグメントへ、作用可能に連結されるように、それぞれ、既に重鎖定常領域及び軽鎖定常領域をコードする発現ベクター中にそれらを挿入することである。これに加えて又はこれに代えて、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることが可能である。シグナルペプチドが、抗体鎖遺伝子のアミノ末端へ、インフレームに連結されるように、抗体鎖遺伝子はベクター中にクローニングすることが可能である。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド又は異種のシグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)とすることが可能である。
【0084】
抗体鎖遺伝子に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞中の抗体鎖遺伝子の発現を調節する制御配列を担持する。「制御配列」という用語は、プロモーター、エンハンサー及び抗体鎖遺伝子の転写又は翻訳を調節する他の発現調節要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むものとする。このような制御配列は、例えば、「Goeddel,Gene Expression Technology Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,CA(1990)」に記載されている。制御配列の選択など、発現ベクターの設計は、形質転換されるべき宿主細胞の選択、所望されるタンパク質の発現レベルなどの要因に依存し得ることが、当業者によって理解される。哺乳動物の宿主細胞発現のために好ましい制御配列には、サイトメガロウイルス(CMV)(CMVプロモーター/エンハンサーなど)、サルウイルス40(SV40)(SV40プロモーター/エンハンサーなど)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))及びポリオーマに由来するプロモーター及び/又はエンハンサーなど、哺乳動物細胞中でタンパク質発現の高いレベルを誘導するウイルス要素が含まれる。ウイルス制御要素及びその配列のさらなる記述については、例えば、Stinskiによる米国特許第5,168,062号、Bellらによる米国特許4,510,245号及びSchaffnerらによる米国特許第4,968,615号を参照されたい。
【0085】
抗体鎖遺伝子及び制御配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞中でのベクターの複製を制御する配列(例えば、複製起点)及び選択可能なマーカー遺伝子など、さらなる配列を担持し得る。選択可能なマーカー遺伝子は、その中にベクターが導入される宿主細胞の選択を容易にする(例えば、全てAxelらによる米国特許第4,399,216号、米国特許第4,634,665号及び米国特許第5,179,017号を参照されたい。)。例えば、典型的には、選択可能なマーカー遺伝子は、その中にベクターが導入される宿主細胞に対して、G418、ハイグロマイシン又はメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を付与する。好ましい選択可能なマーカー遺伝子には、(メトトレキサート選択/増幅とともに、dhfr宿主細胞中で使用するための)ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子及びneo遺伝子(G418選択用)が含まれる。
【0086】
軽鎖及び重鎖を発現させるために、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターは、標準的な技術によって、宿主細胞中に形質移入される。「形質移入」という用語の様々な形態は、原核又は真核宿主細胞中への外来DNAの導入のために一般に使用される多様な技術、例えば、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラン形質移入などを包含するものとする。原核又は真核宿主細胞の何れの中でも、本発明の抗体を発現することは理論的に可能であるが、真核細胞、特に、哺乳動物細胞は、原核細胞に比べて、適切に折りたたまれ、免疫学的に活性な抗体を集合及び分泌する傾向がより大きいので、真核細胞中での抗体の発現、最も好ましくは哺乳動物宿主細胞中での抗体発現が最も好ましい。抗体遺伝子の原核発現は、活性な抗体の高い収率の産生には有効でないことが報告されている(Boss and Wood(1985)Immunology Today 6:12−13)。
【0087】
本発明の組換え抗体を発現するための好ましい哺乳動物宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(Urlaub and Chasin,(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216−4220に記載されており、例えば、Kaufman and Sharp(1982)Mol.Biol.159:601−621に記載されているようにDHFR選択可能マーカーとともに使用されるdhfrCHO細胞を含む。)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2細胞が含まれる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞中に導入されると、宿主細胞中で抗体の発現を可能とするのに十分な期間にわたって、又は、より好ましくは、宿主細胞がその中で増殖されている培地中への抗体の分泌を可能とするのに十分な期間にわたって、宿主細胞を培養することによって抗体が産生される。抗体は、標準的なタンパク質精製方法を用いて、培地から回収することが可能である。
【0088】
Fab断片又はscFv分子など、完全な状態の抗体の部分を作製するために、宿主細胞を使用することも可能である。上記手技に対する改変は、本発明の範囲に属することが理解される。例えば、本発明の抗体の軽鎖又は重鎖の何れか(両鎖ではない。)をコードするDNAで宿主細胞を形質移入することが望ましい場合があり得る。hTNFαへの結合に必要でない軽鎖及び重鎖の一方又は両方をコードするDNAの一部又は全部を除去するために、組換えDNA技術も使用し得る。このような末端切断されたDNA分子から発現された分子も、本発明の抗体によって包含される。さらに、1つの重鎖及び1つの軽鎖が本発明の抗体であり、並びに他の重鎖及び軽鎖がhTNFα以外の抗原に対して特異的である二機能性抗体は、標準的な化学架橋法によって、本発明の抗体を第二の抗体に架橋することによって作製し得る。
【0089】
本発明の抗体又はその抗原結合部分の組換え発現用の好ましいシステムでは、リン酸カルシウムによって媒介された形質移入によって、抗体重鎖及び抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターが、dhfrCHO細胞中に導入される。組換え発現ベクター内で、抗体重鎖及び軽鎖遺伝子は、遺伝子の転写の高いレベルを誘導するために、各々、CMVエンハンサー/AdMPLプロモーター制御要素へ作用可能に連結されている。組換え発現ベクターは、メトトレキサート選択/増幅を用いて、ベクターで形質移入されたCHO細胞の選択を可能とするDHFR遺伝子も担持する。選択された形質転換体宿主細胞は、抗体重鎖及び軽鎖の発現を可能とするために培養され、完全な状態の抗体が培地から回収される。組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞を形質移入し、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養し、培地から抗体を回収するために、標準的な分子生物学的技術が使用される。
【0090】
D2E7若しくはその抗原結合部分又は本明細書に開示されているD2E7関連抗体の他に、本発明の組換えヒト抗体は、ヒトリンパ球から得られたmRNAから調製されたヒトVL及びVHcDNAを用いて調製された組換えコンビナトリアル抗体ライブラリー、好ましくはscFvファージディスプレイライブラリーのスクリーニングによって単離することが可能である。このようなライブラリーを調製及びスクリーニングする方法は、本分野において公知である。ファージディスプレイライブラリーを作製するための市販のキット(例えば、the Pharmacia Recombinant Phage Antibody System,catalog No.27−9400−01;及びthe Stratagene SurfZAPTM−phage display kit,catalog No.240612)の他に、抗体ディスプレイライブラリーを作製及びスクリーニングする上での使用に特に好ましい方法及び試薬の例は、例えば、Ladner et al.米国特許第5,223,409号;Kang et al.PCT公開番号WO92/18619;Dower et al.PCT公開番号WO91/17271;Winter et al.PCT公開番号WO92/20791;Markland et al PCT公開番号WO92/15679;Breitling et al.PCT公開番号WO93/01288;McCafferty et al.PCT公開番号WO92/01047;Garrard et al PCT公開番号WO92/09690;Fuchs et al.(1991)Bio/Technology 9:1370−1372;Hay et al.(1992)Hum Antibod Hybridomas 3:81−85;Huse et al.(1989)Science 246:1275−1281;McCafferty et al,Nature(1990)348:552−554;Griffiths et al.(1993)EMBO J 12:725−734;Hawkins et al(1992)J Mol Biol 226:889−896;Clackson et al.(1991)Nature 352:624−628;Gram et al(1992)PNAS 89:3576−3580;Garrard et al.(1991)Bio/Technology 9:1373−1377;Hoogenboom et al.(1991)Nuc Acid Res 19:4133−4137;及びBarbas et al(1991)PNAS 88:7978−7982に見出される。
【0091】
好ましい実施形態において、HoogenboomらのPCT公開番号WO93/06213に記載されているエピトープインプリンティング法を用いて、hTNFαに対して類似の結合活性を有するヒト重鎖及び軽鎖配列を選択するために、hTNFαに対して高い親和性と低い解離速度定数を有するヒト抗体を単離するために、hTNFαに対して高い親和性及び低い解離速度定数を有するマウス抗hTNFα抗体(例えば、MAK195、寄託番号ECACC87 050801を有するハイブリドーマ)が、まず使用される。本方法で使用される抗体ライブラリーは、好ましくは、McCaffertyらのPCT公開番号WO92/01047、「McCaffertyらのNature(1990)348:552−554」及び「Griffithsらの(1993)EMBOJ 22:725−734」に記載されているように、調製及びスクリーニングされたscFvライブラリーである。scFv抗体ライブラリーは、好ましくは、組換えヒトTNFαを抗原として使用してスクリーニングされる。
【0092】
最初のヒトVL及びVHセグメントが選択されたら、好ましいVL/VH対の組み合わせを選択するために、最初に選択されたVL及びVHセグメントの異なる対をhTNFα結合についてスクリーニングする「ミックス&マッチ」実験が行われる。さらに、hTNFα結合に対する親和性をさらに向上させ、及び/又はhTNF結合に対する解離速度定数をさらに低下させるために、天然の免疫応答の間に、抗体の親和性成熟のために必要とされるインビボ体細胞変異プロセスと類似のプロセスにおいて、好ましくはVH及び/又はVLのCDR3領域内で、好ましいVL/VH対のVL及びVHセグメントをランダムに変異させることが可能である。このインビトロ親和性成熟は、それぞれ、VHCDR3又はVLCDR3に対して相補的なPCRプライマーを用いてVH及びVL領域を増幅することによって達成することが可能であり、得られるPCR産物が、VH及び/又はVLCDR3領域中にランダムな変異が導入されたVH及びVLセグメントをコードするように、前記プライマーは、ある位置において、4つのヌクレオチド塩基のランダムな混合物で「スパイク」されている。これらのランダムに変異されたVH及びVLセグメントは、hTNFαへの結合について再スクリーニングすることが可能であり、hTNFα結合に対して高い親和性と低い解離速度を示す配列を選択することが可能である。
【0093】
組換え免疫グロブリンディスプレイライブラリーから得られた本発明の抗hTFNα抗体のスクリーニング及び単離に続いて、選択された抗体をコードする核酸を、ディスプレイパッケージから(例えば、ファージゲノムから)回収し、標準的な組換えDNA技術によって、他の発現ベクター中にサブクローニングすることが可能である。所望であれば、本発明の他の抗体形態を作製するために、核酸にさらに操作(例えば、さらなる定常領域などの、さらなる免疫グロブリンドメインをコードする核酸への連結)を施すことが可能である。コンビナトリアルライブラリーのスクリーニングによって単離された組換えヒト抗体を発現させるために、上でさらに詳しく記載されているように、組換え発現ベクター中に、抗体をコードするDNAをクローニングし、哺乳動物宿主細胞中に導入する。
【0094】
hTNFαに対して高い親和性と低い解離速度定数を有するヒト抗体を単離する方法は、米国特許第6,090,382号、同第6,258,562号及び同第6,509,015号にも記載されており、これらの各々は、参照により、本明細書に組み込まれる。
【0095】
TNFα阻害剤は、TNF融合タンパク質(例えば、エタネルセプト(Enbrel(R)、Amgen;WO91/03553及びWO09/406476(参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されている。別の実施形態において、TNFα阻害剤は、組換えTNF結合タンパク質(r−TBP−I)(Serono)である。
【0096】
III.びらん性多発性関節炎の治療
本発明は、びらん性多発性関節炎を有する患者にTNFα阻害剤(例えば、TNF抗体など)を投与することを含む、びらん性多発性関節炎を治療する方法を提供する。本発明は、びらん性多発性関節炎の治療に対する、TNFα阻害剤の有効性を測定する方法も記載する。好ましくは、TNFαはヒトTNFαであり、患者はヒト患者である。一実施形態において、TNFα阻害剤はアダリムマブであり、HUMIRA(R)又はD2E7とも称される。びらん性多発性関節炎の治療におけるTNFα阻害剤(抗体及び抗体部分など)の使用及びびらん性多発性関節炎の治療に対するTNFα阻害剤の有効性を決定するための方法は、以下でさらに詳しく論述されている。
【0097】
「多発性関節炎」という用語は、一般的には、患者の2つ又はそれ以上の関節における炎症、すなわち、膨張、圧痛又は温感を表す。
【0098】
本明細書において使用される「びらん性多発性関節炎」という用語は、関節への損傷を与える多発性関節炎を有する患者を表す。
【0099】
本発明は、TNFα阻害剤(例えば、TNF抗体をなど)の投与を含む、びらん性多発性関節炎を治療する方法を提供する。本発明は、びらん性多発性関節炎を伴う関節疾患の放射線学的進行を阻害するための方法も提供する。びらん性多発性関節炎の治療のために、TNFα抗体又はその抗原結合部分を投与するための方法は、以下でさらに詳しく記載されている。
【0100】
本発明は、びらん性多発性関節炎に対する抗TNFα治療の有効性を決定する方法を提供する。このような有効性を決定する措置には、関節の破壊又は侵食が治療後に改善されているかどうかを決定する検査が含まれる。例えば、患者のびらん性多発性関節炎の改善を測定するために患者の修正シャープの合計スコア(mTSS)を使用し得る。mTSSは、びらん性多発性関節炎に対する治療の有効性を測定するためのアッセイとしても使用し得る。
【0101】
シャープのスコアは、骨の侵食及び関節腔の狭窄によって評価される総合的な関節損傷の変化のX線測定である(Sharp et al.(1971)Arthritis & Rheumatism 14:706;Sharp et al.(1985)Arthritis & Rheumatism 28:16)。mTSSは、患者の手及び足のX線の評価に基づく、関節損傷の程度及び重度の指標である。関節の侵食及び関節腔の狭窄の両者に対して、関節をスコア付けする。mTSSは、侵食スコア(ES;erosion score)と関節腔の狭窄(JSN;joint space narrowing)スコアの合計であり、例えば、約0から約398の範囲(0=損傷なし)を有する。ESは、46の関節に対して収集される関節スコアの合計であり、例えば、約0から約230の範囲を有する。JSNは、42の関節に対して収集される関節スコアの合計であり、例えば、約0から約168の範囲を有する。0のスコアは、無変化を示す。本発明の一実施形態において、mTSSは、約0から192の範囲を有する関節腔狭窄スコアと約0から378の範囲を有する侵食スコアを合わせることによって求められる。
【0102】
改善されたmTSS又は一定したTSSは、TNFα阻害剤が、びらん性多発性関節炎の治療に対して有効であることを示す。一実施形態において、びらん性多発性関節炎の治療に対するTNFα阻害剤の有効性は、関節疾患の進行の欠如(例えば、びらん性多発性関節炎を有する患者における、経時的なシャープのスコアの無変化、mTSSの無変化)によって証明される。別の実施形態において、びらん性多発性関節炎の治療に対するTNFα阻害剤の有効性は、関節疾患の放射線学的進行の減少(例えば、びらん性多発性関節炎を有する患者における、経時的なシャープのスコアの無変化、mTSSの減少)によって証明される。
【0103】
一実施形態において、ベースラインとTNFα阻害剤での処理後の期間との間のmTSSの総合的変化は、約0.9と約−0.2の間である。別の実施形態において、ベースラインとTNFα阻害剤での処理後の期間との間のmTSSの総合的変化は、約0.5と約−0.2の間である。さらに別の実施形態において、ベースラインとTNFα阻害剤での処理後の期間との間のmTSSの総合的変化は、約0.2と約−0.2の間である。
【0104】
上記スコアの中間に位置する範囲、例えば、約―0.1から約0.3も、本発明の一部であることに注意しなければならない。例えば、上記値の何れかの組み合わせを、上限及び/又は下限として用いる値の範囲も含まれるものとする。
【0105】
抗炎症剤による炎症疾患の治療は治療後の臨床的な改善をもたらし得るが、びらん性多発性関節炎から生じる進行性の関節損傷がなお存在する場合があり得る(Gladman et al.(1990)J Rheumatol 17:809;Hanly et al.(1988)Ann Rheum Dis 47:386)。したがって、別の疾患を伴い得るびらん性多発性関節炎を治療する方法を提供することが本発明の特徴である。好ましい実施形態において、本発明には、TNFα活性が有害である疾患(関節リウマチ(若年性関節リウマチを含む。)、クローン病、乾癬、乾癬性関節炎及び強直性脊椎炎を含むが、これらに限定されない。)を伴うびらん性多発性関節炎の治療が含まれる。びらん性多発性関節炎は、多中心性細網組織球症(MRH)も伴い得る(Santilli et al.(2002)Ann Rehum Dis 61 485)。
【0106】
本明細書において使用される「TNFα活性が有害である疾患」という用語は、本疾患に罹患している患者中でのTNFαの存在が、疾患の病態生理の原因であるか、又は疾患の悪化に寄与している因子であることが示されており、又は疑われている疾病及びその他の疾患を含むものとする。したがって、TNFα活性が有害である疾患は、TNFα活性の阻害が疾患の症候及び/又は進行を緩和することが予測される疾患である。このような疾患は、例えば、本疾患に罹患する患者の生体液中のTNFα濃度の増加(例えば、患者の血清、血漿、滑液中などのTNFα濃度の増加)によって明らかとされ得、生体液中のTNFα濃度の増加は、例えば、上記抗TNFα抗体を用いて検出することが可能である。TNFα活性が有害である疾患の多数の例が存在する。特異的な疾患を伴うびらん性多発性関節炎の治療のためのTNFα阻害剤の使用は、以下でさらに論述されている。
【0107】
A.自己免疫疾患
一実施形態において、本発明は、自己免疫疾患を伴うびらん性多発性関節炎の治療を含む。びらん性多発性関節炎は、関節リウマチ及び若年性関節リウマチなどの関節炎の形態を含む自己免疫疾患に罹患している患者に見出し得る(Verloes(1998)Med Genet 35:943)。アダリムマブなどのTNFα抗体は、自己免疫疾患、特に、びらん性多発性関節炎を伴う自己免疫疾患を治療するために使用し得る。このような自己免疫症状の例には、関節リウマチ、リウマチ様脊椎炎、骨関節炎及び通風性関節炎、アレルギー、多発性硬化症、自己免疫性糖尿病、自己免疫性ブドウ膜炎及びネフローゼ症候群が含まれる。自己免疫症状の他の例には、多臓器自己免疫疾患及び自己免疫性難聴が含まれる。自己免疫疾患の他の例は、米国特許出願10/622932号(参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されている。
【0108】
若年性関節リウマチ
腫瘍壊死因子は、若年性関節リウマチなど、若年性関節炎の病態生理に関与すると推定されている(Grom et al.(1996)Arthritis Rheum39:1703;Mangge et al.(1995)Arthritis Rheum.8:211)。一実施形態において、本発明のTNFα抗体は、若年性関節リウマチを治療するために使用される。
【0109】
本明細書において使用される「若年性関節リウマチ」又は「JRA」という用語は、関節又は結合組織の損傷を引き起こし得る、16歳より前に発症する慢性の炎症性疾患を表す。JRAは、若年性慢性多発性関節炎及びスチル病とも称される。
【0110】
JRAは、16歳又はそれ以下の年齢の子供に、6週間を超えて、関節の炎症及び剛直を引き起こす。炎症は、関節中に充血、膨張、温感及び痛みを引き起こす。あらゆる関節が冒されることができ、炎症は、冒された関節の運動性を制約し得る。JRAの1つの種類は、内臓にも影響を与え得る。
【0111】
JRAは、しばしば、関与する関節の数、症候並びに血液検査によって見出されるある種の抗体の存在又は不存在によって、3つの種類に分類される。これらの分類は、疾病がどのように進行し、内臓又は皮膚が冒されるかどうかを医師が決定するのに役立つ。JRAの分類には、以下のものが含まれる。
【0112】
a.少関節型JRA、患者の4つ又はそれ以下の関節が冒される。少関節型は、JRAの最も一般的な形態であり、典型的には、膝などの大きな関節が冒される。
【0113】
b.多関節型HRA、5つ又はそれ以上の関節が冒される。最も一般的には、手及び足の関節などの小さな関節が冒されるが、本疾病は大きな関節も冒し得る。
【0114】
c.全身型JRAは、関節の膨張、発熱、軽度の皮膚発疹を特徴とし、心臓、肝臓、脾臓及びリンパ節などの内臓も冒し得る。全身型JRAは、スチル病とも称される。これらの子供の若干のパーセントが、多くの関節中に関節炎を発症し、成人期まで続く重度の関節炎を有し得る。
【0115】
B.脊椎関節症
一実施形態において、本発明は、脊椎関節症を伴うびらん性多発性関節炎の治療を含む。びらん性多発性関節炎は、有害なTNFα活性を伴う脊椎関節症などの炎症性疾患に罹患した患者中に見出され得る(例えば、Moeller et al.(1990)Cytokine 2:162;米国特許第5,231,024号;欧州特許公開260610号参照)。
【0116】
本明細書において使用される「脊椎関節症」という用語は、脊椎の関節を冒す幾つかの疾病の何れもの1つを表すために使用され、このような疾病は、共通の臨床的、放射線学的及び組織学的特徴を共有する。多数の脊椎関節症が遺伝的特徴を共有している。すなわち、それらは、HLA−B27対立遺伝子と関連している。一実施形態において、脊椎関節症という用語は、強直性脊椎炎を除く、脊椎の関節を冒す幾つかの疾病の何れもの1つを表すために使用され、このような疾病は、共通の臨床的、放射線学的及び組織学的特徴を共有する。脊椎関節症の例には、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎/脊椎炎、腸疾患性関節炎、反応性関節炎又はライター症候群及び未分化型脊椎関節症が含まれる。脊椎関節症を研究するために使用される動物モデルの例には、ank/ankトランスジェニックマウス、HLA−B27トランスジェニックラットが含まれる(Taurog et al.(1998)The Spondylarthritides Oxford:Oxford University Pressを参照)。
【0117】
脊椎関節炎を有するリスクがある患者の例には、関節炎に罹患しているヒトが含まれる。脊椎関節症は、関節リウマチなどの関節炎の形態を伴い得る。本発明の一実施形態において、TNFα阻害剤は、びらん性多発性関節炎を伴う脊椎関節症に罹患する患者を治療するために使用される。TNFα阻害剤で治療可能な脊椎関節症の例は、以下に記載されている。
【0118】
強直性脊椎炎(AS)
一実施形態において、本発明は、TNFα抗体又はその抗原結合部位を使用する、強直性脊椎炎を伴うびらん性多発性関節炎の治療を含む。腫瘍壊死因子は、強直性脊椎炎の病態生理に関与すると推定されている(Verjans et al.(1991)Arthritis Rheum.34:486;Verjans et al.(1994)Clin Exp Immunol.97:45;Kaijtzel et al(1999)Hum Immunol.60:140参照)。強直性脊椎炎(AS)は、1つ又はそれ以上の脊椎の炎症を伴う炎症性疾患である。ASは、軸骨格及び/又は末梢関節(脊椎の脊骨と仙腸関節の間の関節及び脊椎と骨盤の間の関節など)に影響を与える慢性の炎症性疾患である。ASは、最終的には、罹患した脊骨の融合又結合を引き起こす。ASなどの脊椎関節症は、乾癬性関節炎(PsA)及び/又は潰瘍性大腸炎及びクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)を伴い得る。
【0119】
ASの初期の徴候は、CTスキャン及びMRIスキャンを含む放射線学的検査によって測定することが可能である。ASの初期の症候には、しばしば、軟骨下骨(subchrondral bone)の皮質端のぼやけ、これに続く、侵食及び硬化によって明らかとなる、仙腸関節炎(scroillitis)及び仙腸関節の変化が含まれる。疲労も、ASの一般的症候として認められる(Duffy et al.(2002)ACR 66th Annual Scientific Meeting Abstract)。
【0120】
乾癬性関節炎
一実施形態において、本発明は、TNFα抗体又はその抗原結合部位を使用する、乾癬性関節炎を伴うびらん性多発性関節炎の治療を含む。腫瘍壊死因子は、乾癬性関節炎(PsA)の病態生理に関与すると推定されている(Partsch et al.(1998)Ann Rheum Dis.57:691;Ritchlin et al.(1998)J Rheumatol.25:1544)。本明細書に記されているように、乾癬性TNFαは、組織炎症を活性化し、関節リウマチにおける関節破壊を引き起こすことに関与していると推定されている(例えば、Moeller,A.,et al.(1990)Cytokine 2:162−169;Moellerらに対する米国特許第5,231,024号;Moeller,A.による欧州特許公開260 610 B1;Tracey and Cerami,上記;Arend,W.P and Dayer,J−M.(1995)Arth. Rheum.38:151−160;Fava,R.A.,et al.(1993)Clin.Exp.Immunol.94:261−266)。TNFαは、膵島細胞の死を促進すること、及び糖尿病におけるインシュリン抵抗性を媒介することにも関与していると推定されている(例えば、Tracey and Cerami、上記;PCT 公開WO94/08609号を参照。)。TNFαは、乏突起膠細胞への細胞毒性の媒介及び多発性硬化症における炎症性斑の誘導にも関与していると推定されている(例えば、Tracey and Ceram、上記を参照。)。キメラ及びヒト化マウス抗TNFα抗体は、関節リウマチの治療について、臨床試験が行われた(例えば、Elliott M.J.,et al(1994)Lancet 344:1125−1127;Elliot M.J.,et al(1994)Lancet 344:1105−1110;Rankin,E.G.,et al.(1995)Br.J.Rheumatol.34:334−342参照。)。
【0121】
乾癬性関節炎は、身体上に赤い斑点を生じる一般的な慢性皮膚症状である乾癬を伴う慢性炎症性関節炎を表す。乾癬を有する個体20人のうち約1人が皮膚症状とともに関節炎を発症し、症例の約75%において、乾癬が関節炎に先行する。PsAは、軽度から重度の関節炎に至るまで、それ自体、様々な態様で発症し、関節炎は、通常、指及び脊椎を冒す。脊椎が冒される場合、症候は、上記されているような、強直性脊椎炎の症候と類似している。TNFα抗体又はその抗原結合断片は、PsAを伴うびらん性多発性関節炎の治療のために使用することが可能である。
【0122】
PsAは、時々、破壊性関節炎を伴う。破壊性関節炎は、関節を破壊する全般的なびらん性の変形をもたらす過度な骨侵食によって特徴付けられる疾患を表す。
【0123】
PsAの特徴的な放射線学的特徴には、関節の侵食、関節腔の狭窄、関節周囲及び骨幹骨膜炎を含む骨増殖、「ペンシルインカップ」変形及び先端骨溶解を含む骨溶解、強直、骨棘形成及び脊椎炎が含まれる(Wassenberg et al.(2001)Z Rheumatol 60:156)。関節リウマチ(RA)と異なり、PsAにおける関節の関与は、しばしば、非対称的であり、少関節型であり得、骨粗鬆症は、非典型的である。初期のPsAにおけるびらん性の変化は、RAと同様に末端性であるが、びらんに隣接する骨膜の骨形成のために、疾病の進行とともに、不規則で、境界が不明瞭となる。重度の症例では、びらん性の変化は、ペンシルインカップ変形又は全体的な骨溶解の発症にまで進行し得る(Gold et al.(1988)Radiol Clin North Am 26:1195;Resnick et al.(1977))J Can Assoc Radiol 28:187)。非対称的なびらんは、手根骨中に、並びに中手指節(MCP)、手の近位指節間(PIP)及び遠位指節間(DIP)関節中に、放射線学的に見ることが可能であり得るが、DIP関節が、しばしば、最初に冒される。指骨粗面(phalangeal tuft)中に、並びに腱及び靭帯の骨への付着部位に異常が見られる。DIPびらん性変化の存在は、PsAの診断を裏付けるための精密且つ特異的な放射線学的知見を与え得る。また、手は、ほぼ2:1の比で、足より、ずっとしばしば冒される傾向がある。
【0124】
脊椎関節症の他の例は、米国特許出願10/622932号(参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されている。
【0125】
C.皮膚及び爪の疾患
一実施形態において、本発明は、皮膚及び爪の疾患を伴うびらん性多発性関節炎の治療を含む。本明細書において使用される「TNFα活性が有害である皮膚及び爪の疾患」という用語は、本疾患に罹患している患者中でのTNFαの存在が、疾患(例えば、乾癬)の病態生理の原因であるか、又は疾患の悪化に寄与している因子であることが示されており、又は疑われている皮膚及び爪の疾患並びにその他の疾患を含むものとする。したがって、TNFα活性が有害である皮膚及び爪の疾患は、TNFα活性の阻害が疾患の症候及び/又は進行を緩和することが予測される疾患である。特異的な皮膚及び爪の疾患の治療のための抗体、抗体部分及び他のTNFα阻害剤の使用は、以下でさらに論述されている。ある種の実施形態において、本発明の抗体、抗体部分又は他のTNFα阻害剤は、以下に記載されているように、別の治療剤と組み合わせて患者に投与される。一実施形態において、TNFα抗体は、乾癬を伴うびらん性多発性関節炎の治療及び関節炎を伴う乾癬の治療のための別の治療剤と組み合わせて患者に投与される。
【0126】
乾癬
腫瘍壊死因子は、乾癬の病態生理に関与すると推定されている(Takematsu et al.(1989)Arch Dermatol Res.281:398;Victor and Gottlieb(2002;J Drugs Dermatol.1(3):264)。乾癬は、発赤、かゆみ及び皮膚上の厚く、乾燥した銀色の鱗屑の頻繁な発症を特徴とする皮膚の炎症(過敏及び発赤)として記載される。特に、表皮の増殖の一次及び二次的変化、皮膚の炎症性反応並びにリンホカイン及び炎症性因子などの制御分子の発現を伴う病変が形成される。乾癬性皮膚は、表皮細胞の増加した代謝回転、肥厚した表皮、異常な角質化、基底細胞周期の増加をもたらす、表皮中への炎症細胞の浸潤並びに多形核白血球及びリンパ球の表皮層中への浸潤によって、形態学的に特徴付けられる。乾癬は、しばしば、陥凹、爪の分離、肥厚及び脱色を示す爪を伴う。乾癬は、しばしば、他の炎症性疾患、例えば、関節リウマチ、炎症性腸疾患(IBD)及びクローン病を含む関節炎を伴う。
【0127】
乾癬の徴候は、胴、肘、膝、頭皮、皮膚のひだ又は指の爪に最も一般的に見られるが、皮膚のあらゆる又は全ての部分を冒し得る。通常、新しい皮膚細胞が下部層から表面に移動するのに、約1ヶ月を要する。乾癬では、このプロセスに、数日を要するに過ぎず、死滅した皮膚細胞の蓄積及び厚い鱗屑の形成をもたらす。乾癬の症候には、銀色の鱗屑で覆われた、乾燥した又は赤い皮膚の斑点、ひび割れ及び痛みを伴い得、並びに肘、膝、胴、頭皮及び手の上に通常位置する赤い境界を伴う皮膚の隆起した斑;吹き出物、皮膚のひび割れ及び皮膚の発赤を含む、皮膚の病変;関節炎、例えば乾癬性関節炎を伴い得る関節痛又は痛みが含まれる。
【0128】
乾癬の治療には、しばしば、局所的なコルチコステロイド、ビタミンD類縁体及び局所若しくは経口レチノイド又はこれらの組み合わせが含まれる。一実施形態において、本発明のTNFα阻害剤は、これらの一般的な治療の1つの組み合わせて、又はこれらの一般的な治療の存在下で投与される。乾癬治療用のTNFα阻害剤とも組み合わせることが可能なさらなる治療剤は、以下でさらに詳しく記載されている。
【0129】
乾癬の診断は、通常、皮膚の外観に基づく。さらに、他の皮膚疾患を除外するために、皮膚の生検又は皮膚斑の掻き取り及び培養が必要であり得る。関節痛が存在し、持続的である場合には、乾癬性関節炎をチェックするために、X線を使用し得る。
【0130】
本発明の一実施形態において、TNFα阻害剤は、乾癬(慢性尋常性乾癬(chronic plaque psoriasis)、滴状乾癬、逆乾癬、膿疱性乾癬、尋常性天疱瘡、乾癬性紅皮症、炎症性腸疾患(IBD)を伴う乾癬及び関節リウマチ(RA)を伴う乾癬を含む。)を治療するために使用される。本発明の治療方法に含まれる乾癬の具体的な種類には、慢性尋常性乾癬、滴状乾癬、逆乾癬及び膿疱性乾癬が含まれる。乾癬並びに皮膚及び爪の疾患の他の種類の他の例は、米国特許出願10/622932号(参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されている。
【0131】
TNFα活性が有害である疾患を伴うびらん性多発性関節炎の治療に対するTNFα阻害剤の有効性を決定するための方法には、関節破壊(関節腔狭窄及び/又は関節のびらんを含む。)の程度を測定する全てのアッセイが含まれる。一実施形態において、関節の破壊は、放射線学を用いて測定される。このようなアッセイは、TNFα阻害剤で治療された患者または患者集団において改善が起こるかどうかを決定することによって、TNFα阻害剤の効力を調べるために使用し得る。一般的に、治療前に測定されたベースラインスコアと、TNFα阻害剤での治療後の時点で測定されたスコアを比較することによって改善が決定される。
【0132】
Ra、PsA及びJRAなどの関節炎症状のさらなる改善は、ACR応答を測定することによって決定し得る。ACR閾値、例えば、ACFR20、ACR50、ACR70は、RA及びPsAの改善を定義するために使用することができ、7つの疾病活性指標におけるパーセント改善を示す。基準には、圧痛性関節及び膨張関節数のパーセント改善、及び以下の基準:患者による痛みの評価、患者による全体的な評価、医師による全体的な評価、患者自身で評価した身体障害又は疾病活性の研究室指標(すなわち、赤血球の沈降速度又はC反応性タンパク質レベル(Felson et al.(1993)Arthritis Rheum.36(6):729)の少なくとも3つの改善が含まれる。
【0133】
RA、JRA及びPsAの治療のための療法に対する改善を決定するために使用される他のアッセイには、EULAR応答、DASスコア、FACIT−F、HAQスコア及びSJC及び/又はTJCカウントが含まれる。
【0134】
EULAR基準は、応答を定義するためにDASを使用する。応答は、(a)ベースラインからの疾病活性の変化及び(b)追跡中に到達した疾病活性のレベルの両者として定義される。DASを定義するために使用される基準には、リッチー関節指数、膨張した関節数(44関節のカウント)、赤血球沈降速度及び健康評価質問票が含まれる。DAS基準の修正されたバージョンであるDAS28は、膨張及び圧痛性関節に対して28関節のカウントを使用する。応答は、ベースラインと達成された疾病活性のレベルからの有意な変化の組み合わせとして定義される。良好な応答は、DASの有意な減少(>1.2)及び疾病活性の低いレベル(2.4又はそれ以下)として定義される。非応答は、0.6若しくはそれ以下の減少、又は、達成されたDASが3.7を超える0.6超若しくは1.2以下の減少として定義される。あらゆるその他のスコアは、中度の応答と認められる。
【0135】
DASは、リッチー関節指数、44膨張関節カウント、ESR及びVASに対する全般的な健康評価に基づくスコアである。範囲は、1から9までを変動する。DAS及びDAS28の連続的な測定は、身体的障害及び放射線学的進行の強力な予測因子であり、両指数は、高い疾病活性と低い疾病活性を有する患者間、及び活性な患者群とプラセボ処置患者群間の感度の高い識別因子である。
【0136】
FACIT−F(慢性疾患治療の機能的評価−疲労)は、慢性疾患における疲労関連因子の患者による評価を測定するために設計された、妥当性が確認された質問票である(Cella and Webster(1997)Oncology(Huntingt).11 :232 and Lai et al.(2003)Qual Life Res.12(5):485を参照されたい。)。
【0137】
健康評価質問票(HAQ;Health Assessment Questionnaire)は、患者、特に、成人の関節炎患者が日常生活の活動を行う能力を評価するために設計された、妥当性が確認された質問票である。文書は、身体障害/身体機能及び生活の質を測定する、HAQ身体障害指数(20項目)、痛みの大きさ(1項目)及び全般的な健康状態(1項目)からなる(Fries et al.(1982)J Rheumatol.9(5):789)。
【0138】
膨張した関節及び圧痛性関節(SJC及びTJC)は、RAの最も特徴的な特徴であり、疾病の重度は、膨張した関節及び圧痛性関節の数と直接関連している。膨張した関節及び圧痛性関節を計数することは、RAの臨床的評価の中心的な要素である。
【0139】
PsA及び乾癬の改善は、PASI応答、DLQI及びBSAスコアを用いても決定され得る。DLQI(皮膚科学生活の質指数)は、PsA及び乾癬を含む様々な皮膚病に対して広く使用されている、健康に関連した生活の質の指標である。身体表面積(BSA;body Surface Area)スコアは、身長及び体重に基づく表面積の測定を与え、mで表される。PASI(乾癬面積及び重度指数)は、特定の患者に対する、紅斑、硬化、落屑及び乾癬によって冒された身体表面積の総合的な指標である。患者は、頭、胴、上肢及び下肢の発症について評価される。スコアは、0(きれいな状態)から72(最大の重度)にまでわたる。
【0140】
PsAに対する治療の改善は、PsARC(乾癬性関節炎反応基準)を用いて測定することもでき、これは、疾病活性の一連の全般的な評価とともに、圧痛性関節及び膨張性関節スコアにおける変化の臨床的指標を与える。
【0141】
ASの関与は、様々なAS症候を評価するための機器のあらゆる数を使用することによって測定し得る。一般的に使用されるスケールの幾つかには、強直性脊椎炎の評価(ASAS;Assessment in Ankylosing Spondylitis)、バスの強直性脊椎炎疾患活性指数(BASDAI;Bath Ankylosing Spondylitis Disease Activity Index)(Garrett et al.(1994)J Rheumatol 21 :2286)、バスの強直性脊椎炎計測指数(BASMI;Bath Ankylosing Spondylitis Metrology Index)(Jenkinson et al.(1994)J Rheumatol 21:1694)及びバスの強直性脊椎炎機能指数(BASFI;Bath Ankylosing Spondylitis Functional Index)(Calin et al.(1994)J Rheumatol 21 :2281)が含まれる。これらの指数は、患者を経時的にモニターし、改善を測定するために使用することが可能である。ASの改善を評価するための測定に関するさらなる記述は、米国特許出願10/622932号(参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されている。
【0142】
IV.医薬組成物及び医薬の投与
A.組成物及び投与
本発明の方法で使用するための抗体、抗体部分及びその他のTNFα阻害剤は、びらん性多発性関節炎を有する患者への投与に適した医薬組成物中に取り込まれ得る。典型的には、医薬組成物は、本発明の抗体、抗体部分又はその他のTNFα阻害剤と、及び医薬として許容される担体とを含む。本明細書において使用される「医薬として許容される担体」には、生理的に適合性がある、全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれる。医薬として許容される担体の例には、水、生理的食塩水、リン酸緩衝化された生理的食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどの1つ又はそれ以上及びこれらの組み合わせが含まれる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、マニトール、ソルビトールなどの多価アルコール又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい。医薬として許容される担体は、抗体、抗体部分又は他のTNFα阻害剤の保存期間又は有効性を増強する、湿潤剤又は乳化剤、防腐剤又は緩衝剤などの補助物質の微量をさらに含み得る。
【0143】
本発明の方法において使用するための組成物は、様々な形態であり得る。これらには、例えば、液体溶液(例えば、注射可能及び注入可能な溶液)、分散液又は懸濁液、錠剤、丸薬、粉末、リポソーム及び坐剤などの液体、半固体及び固体剤形が含まれる。好ましい形態は、予定される投与の様式及び治療用途に依存する。典型的な好ましい組成物は、他の抗体又は他のTNFα阻害剤を用いたヒトの受動免疫に対して使用される組成物と同様の組成物など、注射可能溶液又は注入可能溶液の形態である。投与の好ましい様式は、非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。一実施形態において、抗体又は他のTNFα阻害剤は、静脈内注入又は注射によって投与される。別の実施形態において、抗体又は他のTNFα阻害剤は、筋肉内又は皮下注射によって投与される。
【0144】
治療組成物は、典型的には、製造及び保存の条件下で、無菌及び安定でなければならない。組成物は、溶液、ミクロエマルジョン、分散液、リポソーム又は高薬物濃度に適したその他の秩序化された構造として製剤化することが可能である。無菌注射可能溶液は、上に列記されている成分の1つ又は組み合わせを加えた適切な溶媒中に、必要な量で活性化合物(すなわち、抗体、抗体部分又はその他のTNFα阻害剤)を取り込ませた後、必要に応じて、ろ過滅菌によって調製することが可能である。一般的に、分散液は、塩基性分散溶媒及び上に列記されたものから得られる必要なその他の成分を含有する無菌ビヒクル中に活性化合物を取り込ませることによって調製される。無菌注射可能溶液の調製のための無菌粉末の場合には、調製の好ましい方法は、予め滅菌ろ過されたその溶液から、全ての所望される追加成分を加えた活性成分の粉末を与える真空乾燥及び凍結乾燥である。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、分散液の場合に必要な粒径を維持することによって、及び界面活性剤を使用することによって維持することができる。注射可能組成物の延長された吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチを組成物中に含めることによって実現することができる。
【0145】
補充的活性化合物も、組成物中に取り込ませることが可能である。ある実施形態において、本発明の方法で使用するための抗体又は抗体部分は、びらん性多発性関節炎阻害剤又はアンタゴニストなど、1つ又はそれ以上のさらなる治療剤とともに共製剤化され、及び/又は同時投与される。例えば、本発明の抗hTNFα抗体又は抗体部分は、びらん性多発性関節炎と関連する他の標的を結合する1つ若しくはそれ以上の追加の抗体(例えば、他のサイトカインを結合し、又は細胞表面分子を結合する抗体)、1つ若しくはそれ以上のサイトカイン、可溶性TNFα受容体(例えば、PCT公開WO94/06476を参照)及び/又はhTNFα産生若しくは活性を阻害する1つ若しくはそれ以上の化学的因子(PCT公開WO93/19751に記載されているシクロヘキサン−イリデン誘導体など)又はこれらのあらゆる組み合わせとともに共製剤化され、及び/又は同時投与され得る。
【0146】
さらに、本発明の1つ又はそれ以上の抗体は、先述の治療剤の2つ又はそれ以上と組み合わせて使用され得る。このような組み合わせ療法は、投与される治療剤のより低い投薬量を有利に使用し得るので、様々な単独療法に伴って生じ得る副作用、合併症又は患者による応答の低いレベルが回避される。
【0147】
一実施形態において、本発明は、TNFα阻害剤の有効量及び医薬として許容される担体を含む医薬組成物を含み、TNFα阻害剤の有効量は、びらん性多発性関節炎を治療するために有効であり得る。一実施形態において、本発明の方法において使用するための抗体又は抗体部分は、は、PCT/IB03/04502及び米国特許出願10/222140号(参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されている医薬製剤中に取り込まれる。本製剤は、抗体D2E7の濃度50mg/mLを含み、ここにおいて、予め充填された1つの注射器は、皮下注射のための抗体40mgを含有する。別の実施形態において、本発明の製剤は、D2E7を含む。
【0148】
多くの治療用途において、好ましい投与経路/様式は皮下注射であるが、本発明の抗体、抗体部分及び他のTNFα阻害剤は、本分野で公知の様々な方法によって投与することが可能である。別の実施形態において、投与は、静脈内注射又は注入を介する。当業者によって理解されるように、投与の経路及び/又は様式は、所望される結果に応じて変動する。ある種の実施形態において、活性化合物は、インプラント、経皮パッチ及び微小封入された送達系を含む徐放製剤など、迅速な放出に対して化合物を保護する担体とともに調製され得る。エチレン酢酸ビニル、ポリアンヒドリド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸などの生物分解可能な生体適合性ポリマーを使用することが可能である。このような製剤の多くの調製方法は、特許が付与されているか、又は、一般的に当業者に公知である。例えば、「Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,Robinson,ed.,Dekker,Inc.,New York,1978」を参照されたい。
【0149】
TNFα抗体は、被覆された粒子を形成するためにポリマー性担体内に封入されたタンパク質結晶の組み合わせを含むタンパク質結晶製剤の形態でも投与され得る。タンパク質結晶製剤の被覆された粒子は、球状形態を有し、及び最大500μmの直径の小球体であり得、又はそれらは、他の何らかの形態を有し、及び微粒子であり得る。タンパク質結晶の増加された濃度は、本発明の抗体を皮下送達することを可能とする。一実施形態において、本発明のTNFα抗体は、タンパク質送達系を介して送達され、タンパク質結晶製剤又は組成物の1つ又はそれ以上が、TNFα関連疾患を有する患者に投与される。完全な抗体結晶又は抗体断片結晶の組成物及びこれらの安定化された製剤を調製する方法は、WO02/72636号(参照により、本明細書に組み込まれる。)にも記載されている。一実施形態において、PCT/IB03/04502及び米国特許出願10/222140号(参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されている結晶化された抗体断片を含む製剤は、本発明の治療法を使用してびらん性多発性関節炎を治療するために使用される。
【0150】
ある種の実施形態において、本発明の抗体、抗体部分又は他のTNFα阻害剤は、例えば、不活性希釈剤又は同化可能な食用担体とともに、経口投与され得る。また、化合物(及び、所望であれば、その他の成分)は、硬若しくは軟ゼラチンカプセル中に封入され、錠剤へと圧縮され、又は患者の食事中に直接取り込ませ得る。経口治療的投与の場合、化合物は、賦形剤とともに取り込ませることができ、摂取可能な錠剤、口腔錠、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウエハースなどの形態で使用され得る。非経口投与以外によって本発明の化合物を投与するために、その不活化を妨げるための物質で化合物を被覆し、又はその不活化を妨げるための物質とともに化合物を同時投与することが必要であり得る。
【0151】
本発明の医薬組成物は、本発明の抗体又は抗体部分の「治療的有効量」又は「予防的有効量」を含み得る。「治療的有効量」は、必要な投薬量及び期間で、所望の治療的結果を達成するのに有効な量を表す。抗体、抗体部分又は他のTNFα阻害剤の治療的有効量は、病状、年齢、性別及び個体の体重並びに抗体、抗体部分、他のTNFα阻害剤が、個体内で所望の応答を惹起する能力などの因子に従って変動し得る。治療的有効量は、抗体、抗体部分又は他のTNFα阻害剤のあらゆる毒性効果又は有害効果が、治療的に有効な効果によって凌駕される量でもある。「予防的有効量」は、必要な投薬量及び期間で、所望の予防的結果を達成するのに有効な量を表す。疾病のより初期段階の前に又は疾病のより初期段階において、予防的投薬が患者に使用されるので、通例、予防的有効量は、治療的有効量を下回る。
【0152】
投薬計画は、最適な所望の応答(例えば、治療的応答又は予防的応答)を与えるように調整され得る。例えば、単一のボーラスを投与することができ、複数の分割された用量を経時的に投与することができ、又は、治療状況の緊急性によって示されるように、用量を比例的に減少若しくは増加させ得る。投与の容易さ及び投薬量の均一性のために、投薬単位形態で非経口組成物を製剤化することが特に有利である。本明細書において使用される投薬単位形態は、治療されるべき哺乳動物患者に対する統一された投薬として適した、物理的に分離された単位を表し、各単位は、必要とされる医薬担体とともに、所望される治療効果を生じるように計算された活性化合物の所定量を含有する。本発明の投薬単位形態に対する規格は、(a)活性化合物の特有の特徴及び達成されるべき具体的な治療効果又は予防効果並びに(b)個体における過敏症の治療用のこのような活性化合物を配合する分野に固有の制約によって規定され、これらに直接依存する。
【0153】
一実施形態において、本発明は、ヒト抗体などのTNFα阻害剤の単回用量を、びらん性多発性関節炎の治療を必要としている患者に投与することを含む、びらん性多発性関節炎を治療するための単回投薬法を提供する。一実施形態において、TNFα阻害剤は、抗TNFα抗体アダリムマブである。TNFα阻害剤の単回投薬は、あらゆる治療的又は予防的有効量であり得る。一実施形態において、患者は、アダリムマブ(D2E7とも称される。)の20mg、40mg又は80mg単回用量を投与される。単回用量は、例えば、皮下投与などのあらゆる経路を通じて投与され得る。隔週投薬計画は、びらん性多発性関節炎を治療するために使用することが可能であり、米国特許出願10/163657号にさらに記載されている。びらん性多発性関節炎を治療するために、複数可変用量治療法及び予防法を使用することも可能であり、PCT出願/US05/012007号にさらに記載されている。
【0154】
緩和されるべき症状の種類及び重度に応じて、投薬量の値が変動し得ることに注意すべきである。何れの患者についても、個体の要求に従って、及び組成物の投与を行い又は監督している者の専門的判断に従って、具体的な投薬計画を経時的に調整すべきこと、及び、本明細書に記載されている投薬量の範囲は典型的なものに過ぎず、特許請求の範囲に記載されている組成物の範囲又は実施に限定することを意図したものではないことをさらに理解すべきである。本発明は、疾病の急性管理及び慢性管理を含む、びらん性多発性関節炎の治療の方法に関することも注意すべきである。
【0155】
本発明は、びらん性多発性関節炎の治療のために、本発明の抗TNF抗体を投与するための梱包された医薬組成物又はキットにも関する。本発明の一実施形態において、キットは、抗体などのTNFα阻害剤と、さらなる治療剤を含む第二の医薬組成物と、及びびらん性多発性関節炎の治療のための投与に対する指示書とを含む。しかしながら、指示書は、TNFα阻害剤及び/又はさらなる治療剤の異なる用量を、治療のために、患者にどのように投与すべきか(例えば、皮下に)、及びいつ投与すべきか(例えば0週目及び2週目に)記載し得る。
【0156】
本発明の別の態様は、抗TNFα抗体及び医薬として許容される担体を含む医薬組成物と、各々、びらん性多発性関節炎を治療するのに有用な薬物及び医薬として許容される担体を含む1つ又はそれ以上の医薬組成物とを含有するキットに関する。あるいは、キットは、抗TNFα抗体と、びらん性多発性関節炎を治療するのに有用な1つ又はそれ以上の薬物と、及び医薬として許容される担体とを含む単一の医薬組成物を含む。キットは、びらん性多発性関節炎の治療用医薬組成物の投薬に対する指示書を含有する。
【0157】
あるいは、パッケージ又はキットは、TNFα阻害剤を含有することができ、パッケージ内に又は添付の情報を通じて、本明細書に記載されている用途又は疾患の治療について広告することが可能である。さらに、梱包された医薬又はキットは、(本明細書に記載されているような)第一の薬剤とともに第二の薬剤を使用するための指示書とともに梱包され、又は同時広告された(本明細書に記載されているような)第二の薬剤を含むことが可能である。
【0158】
B.さらなる治療剤
本発明は、さらなる治療剤と組み合わせて、TNFα阻害剤を投与することを含む、びらん性多発性関節炎を治療する方法も記載する。本発明は、さらなる治療剤と組み合わせて、びらん性多発性関節炎を治療するための医薬組成物及びその使用方法にも関する。医薬組成物は、びらん性多発性関節炎を治療する第一の薬剤を含む。医薬組成物は、活性な医薬成分である第二の薬剤も含むことができる。すなわち、第二の薬剤は治療的であり、その機能は、医薬担体、防腐剤、希釈剤又は緩衝剤などの不活性成分の機能を超える。一実施形態において、第二の薬剤は、びらん性多発性関節炎を治療又は予防する上で有用であり得る。別の実施形態において、第二の薬剤は、びらん性多発性関節炎を伴う疾患を伴う少なくとも1つの症候、例えば、乾癬性関節炎を軽減又は治療し得る。さらに別の実施形態において、さらなる薬剤は、びらん性多発性関節炎及びさらなる疾患の治療のために有用である。第一及び第二の薬剤は、類似若しくは無関係な作用機序によって、それらの生物学的効果を発揮し得、又は第一及び第二の薬剤の一方又は双方は、複数の作用機序によってそれらの生物学的効果を発揮し得る。医薬組成物は、第三の化合物も含み得、又は、さらに、第三(及び第四など)の化合物は、第二の薬剤と同一の特徴を有する。
【0159】
本明細書に記載されている医薬組成物は、医薬として許容される同一の担体中に、又は記載されている各実施形態に対する医薬として許容される異なる担体中に、第一及び第二、第三又は追加の薬剤を有し得ることを理解すべきである。第一、第二、第三及びさらなる薬剤が、記載されている実施形態内で、同時に又は順次に投与され得ることをさらに理解すべきである。あるいは、第一及び第二の薬剤は、同時に投与することができ、及び第三又はさらなる薬剤は、最初の2つの薬剤の前又は後に投与され得る。
【0160】
本明細書に記載されている方法及び医薬組成物内で使用される薬剤の組み合わせは、治療の目標とされる症状又は疾病に対して、治療的な加算的効果又は相乗的効果を有し得る。本明細書に記載されている方法又は医薬組成物内で使用される薬剤の組み合わせは、単独で投与されたときに、又は特定の医薬組成物の他の薬剤なしに投与されたときに、本薬剤の少なくとも1つに伴う有害な効果も低下させ得る。例えば、ある薬剤の副作用の毒性は、組成物の別の薬剤によって減弱され得るので、より高い投薬量を可能とし、患者の服用遵守を改善し、及び治療的転帰を改善する。組成物の加算的又は相乗的効果、有益性及び利点は、治療剤のクラス(構造的クラス又は機能的クラスの何れか)に対して当てはまり、又は各化合物自体に当てはまる。
【0161】
補充的活性化合物も、組成物中に取り込ませることが可能である。ある実施形態において、本発明の抗体又は抗体部分は、びらん性多発性関節炎阻害剤を治療するのに有用である、1つ又はそれ以上のさらなる治療剤とともに共製剤化され、及び/又は同時投与される。例えば、本発明の抗hTNFα抗体、抗体部分又はその他のTNFα阻害剤は、他の標的を結合する1つ若しくはそれ以上の追加の抗体(例えば、他のサイトカインを結合し、又は細胞表面分子を結合する抗体)、1つ若しくはそれ以上のサイトカイン、可溶性TNFα受容体(例えば、PCT公開WO94/06476を参照)及び/又はhTNFα産生若しくは活性を阻害する1つ若しくはそれ以上の化学的因子(PCT公開WO03/19751に記載されているシクロヘキサン−イリデン誘導体など)とともに共製剤化され、及び/又は同時投与され得る。さらに、本発明の1つ又はそれ以上の抗体又は他のTNFα阻害剤は、先述の治療剤の2つ又はそれ以上と組み合わせて使用され得る。このような組み合わせ療法は、投与される治療剤のより低い投薬量を有利に使用し得るので、様々な単独療法に伴って生じ得る毒性又は合併症が回避される。
【0162】
本明細書に記載されているTNFα阻害剤(例えば、TNFα抗体又はその抗原結合部分)は、びらん性多発性関節炎を治療するためのさらなる治療剤と組み合わせて使用され得る。好ましくは、他の薬物は、抗リウマチ薬(DMARD;Disease Modifying Anti−Rheumatic Drug)若しくは非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)若しくはステロイド又はこれらのあらゆる組み合わせである。DMARDの好ましい例は、ヒドロキシクロロキン、レフノミド、メトトレキサート、非経口用の金、経口用の金及びスルファサラジンである。
【0163】
びらん性多発性関節炎を治療するために、TNFα阻害剤(例えば、TNFα抗体又はその抗原結合部分)と組み合わせて使用することも可能な非限定的なさらなる薬剤には、以下の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs);サイトカイン抑制性抗炎症薬(CSAIDs);CDP−571/BAY−10−3356(ヒト化された抗TNFα抗体;Celltech/Bayer);cA2/インフリキシマブ(キメラ抗TNFα抗体;Centocor);75kdTNFα−IgG/エタネルセプト(75kDTNF受容体−IgG融合タンパク質;イムネックス;例えば、Arthritis & Rheumatism(1994)Vol.37,S295;J.Invest.Med.(1996)Vol.44,235Aを参照);55kdTNF−IgG(55kDTNF受容体−IgG融合タンパク質;Hoffmann−LaRoche);IDEC−CE9.1/SB210396(非枯渇化プライマタイズ(primatized)抗CD4抗体;IDEC/SmithKline;例えば、Arthritis & Rheumatism(1995)Vol.38,S185を参照);DAB486−IL−2及び/又はDAB389−IL−2(IL−2融合タンパク質;Seragen;例えば、Arthritis & Rheumatism(1993)Vol.36,1223参照);抗Tac(ヒト化抗IL−2Rα;Protein Design Labs/Roche);IL−4(抗炎症性サイトカイン;DNAX/Schering);IL−10(SCH 52000;組換えIL−10、抗炎症性サイトカイン;DNAX/Schering);IL−4;IL−10及び/又はIL−4アゴニスト(例えば、アゴニスト抗体);IL−IRA(IL−1受容体アンタゴニスト;Synergen/Amgen);アナキンラ(Kineret(R)/Amgen);TNF−bp/s−TNF(可溶性TNF結合タンパク質;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S284;Amer.J.Physiol.− Heart and Circulatory Physiology(1995)Vol.268,pp.37−42参照);R973401(ホスホジエステラーゼIV型阻害剤;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S282参照);MK−966(COX−2阻害剤;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S81参照);イロプロスト(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S82参照);メトトレキサート;サリドマイド(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S282参照)及びサリドマイド関連薬(例えば、Celgen);レフノミド(抗炎症性及びサイトカイン阻害剤;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S131;Inflammation Research(1996)Vol.45,pp.103−107参照);トラネキサム酸(プラスミノーゲン活性化の阻害剤;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S284参照);T−614(サイトカイン阻害剤;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S282参照);プロスタグランジンE1(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S282参照);テニダップ(非ステロイド性抗炎症薬;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S280参照);ナプロキセン(非ステロイド性抗炎症薬;例えば、Neuro Report(1996)Vol.7,pp.1209−1213参照);メロキシカム(非ステロイド性抗炎症薬);イブプロフェン(非ステロイド性抗炎症薬);ピロキシカム(非ステロイド性抗炎症薬);ジクロフェナク(非ステロイド性抗炎症薬);インドメタシン(非ステロイド性抗炎症薬);スルファサラジン(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S281参照);アザチオプリン(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S281参照);ICE阻害剤(酵素インターロイキン1β変換酵素の阻害剤);zap−70及び/又はlck阻害剤(チロシンキナーゼzap−70又はlckの阻害剤);VEGF阻害剤及び/又はVEGF−R阻害剤(血管内皮細胞増殖因子又は血管内皮細胞増殖因子受容体の阻害剤;血管新生の阻害剤);コルチコステロイド抗炎症薬(例えば、SB203580);TNF−コンベルターゼ阻害剤;抗IL−12抗体;抗IL−18抗体;インターロイキン−11(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S296参照);インターロイキン−13(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S308参照);インターロイキン−17阻害剤(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S120参照);金;ペニシラミン;クロロキン;クロラムブシル;ヒドロキシクロロキン;シクロスポリン;シクロホスファミド;全リンパ系照射;抗胸腺細胞グロブリン;抗体CD4抗体;CD5トキシン;経口投与されたペプチド及びコラーゲン;ロベンザリト二ナトリウム;サイトカイン制御因子(CRAs)HP228及びHP466(Houghten Pharmaceuticals,Inc.);ICAM−Iアンチセンスホスホロチオアートオリゴデオキシヌクレオチド(ISIS 2302;Isis Pharmaceuticals,Inc.);可溶性補体受容体1(TP10;T Cell Sciences,Inc.);プレドニゾン;オルゴテイン;グリコサミノグリカンポリサルファート;ミノサイクリン;抗IL2R抗体;海洋生物及び植物脂質(魚及び植物種子脂肪酸;例えば、DeLuca et al.(1995)Rheum.Dis.Clin.North Am.J,21:759−777参照);アウラノフィン;フェニルブタゾン;メクロフェナミン酸;フルフェナミン酸;静脈内免疫グロブリン;ジレウトン;アザリビジン;ミコフェノール酸(RS−61443);タクロリムス(FK−506);シロリムス(ラパマイシン);アミプリロース(テラフェクチン);クラドリビン(2−クロロデオキシアデノシン);メトトレキサート;抗ウイルス剤;及び免疫調節剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。上記薬剤の何れも、びらん性多発性関節炎を治療するために、又は関節疾患の放射線学的進行を阻害するために、TNFα抗体などのTNFα阻害剤と組み合わせて投与することが可能である。
【0164】
一実施形態において、TNFα阻害剤、例えば、TNFα抗体又はその抗原結合部分は、関節リウマチを治療するための以下の薬剤のうちの1つと組み合わせて投与される。KDR(ABT−123)の小分子阻害剤;Tie−2の小分子阻害剤;メトトレキサート;プレドニソン;セレコキシブ;葉酸;ヒドロキシクロロキンサルファート;ロフェコキシブ;エタネルセプト;インフリキシマブ;レフノミド;ナプロキセン;バレデコキシブ;スルファサラジン;メチルプレドニゾロン;イブプロフェン;メロキシカム;酢酸メチルプレドニゾロン;金チオリンゴ酸ナトリウム;アスピリン;アザチオプリン;トリアムシノロンアセトニド;プロポキシフェンナプシラート/apap;フォラート;ナブメトン;ジクロフェナク;ピロキシカム;エトドラク;ジクロフェナクナトリウム;オキサプロジン;塩酸オキシコドン;重酒石酸ヒドロコドン/apap;ジクロフェナクナトリウム/ミソプロストール;フェンタニル;アナキンラ、ヒト組換え体;塩酸トラマドール;サルサラート;スリンダク;シアノコバラミン/fa/ピリドキシン;アセトアミノフェン;アレンドロネートナトリウム;プレドニゾロン;硫酸モルヒネ;塩酸リドカイン;インドメタシン;グルコサミンサルファート/コンドロイチン;シクロスポリン;塩酸アミトリプチリン;スルファジアジン;塩酸オキシコドン/アセトアミノフェン;塩酸オロパタジン;ミソプロストール;ナプロキセンナトリウム;オメプラゾール;ミコフェノラートモフェチル;シクロホスファミド;リツキシマブ;IL−1TRAP;MRA;CTLA4−IG;IL−18BP;ABT−874;ABT−325(抗IL18);抗体IL15;BIRB−796;SCIO−469;VX−702;AMG−548;VX−740;ロフルミラスト;IC−485;CDC−801;及びメソプラム。別の実施形態において、本発明のTNFα抗体は、関節リウマチを治療するための上記薬剤の1つと組み合わせて、TNFα関連疾患の治療のために投与される。
【0165】
一実施形態において、TNFα阻害剤、例えば、TNFα抗体又はその抗原結合部分は、クローン病又はクローン病関連疾患を治療するために使用される薬物と組み合わせて使用される。クローン病を治療するために使用することが可能な治療剤の例には、メサラミン、プレドニゾン、アザチオプリン、メルカプトプリン、インフリキシマブ、ブデソニド、スルファサラジン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、ジフェノキシラート/硫酸アトロピン、塩酸ロペラミド、メトトレキサート、オメプラゾール、フォラート、シプロフロキサシン/デキストロース−水、重酒石酸ヒドロコドン/apap、塩酸テトラサイクリン、フルオシノニド、メトロニダゾール、チメロサール/ホウ酸、コレスチラミン/スクロース、塩酸シプロフロキサシン、硫酸ヒヨスチアミン、塩酸メペリジン、塩酸ミダゾラム、塩酸オキシコドン/アセトアミノフェン、塩酸プロメタジン、リン酸ナトリウム、スルファメトキサゾール/トリメトプリム、セレコキシブ、ポリカルボフィル、ナプシル酸プロポキシフェン、ヒドロコルチゾン、マルチビタミン、バルサラジド二ナトリウム、リン酸コデイン/アセトアミノフェン(apap)、塩酸コレセベラム、シアノコバラミン、葉酸、レボフロキサシン、メチルプレドニゾロン、ナタリズマブ及びインターフェロンγが含まれる。
【0166】
一実施形態において、TNFα阻害剤、例えば、TNFα抗体又はその抗原結合部分は、ASなどの脊椎関節症を治療するために一般的に使用される薬物と組み合わせて投与される。このような薬剤の例には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、Celebrex(R)、Vioxx(R)及びBextra(R)及びエトリコキシブなどのCOX2阻害剤が含まれる。理学療法も、通常、非ステロイド性炎症薬と組み合わせて、脊椎関節症を治療するために一般的に使用されている。
【0167】
一実施形態において、TNFα阻害剤、例えば、TNFα抗体又はその抗原結合部分は、強直性脊椎炎を治療するためのさらなる治療剤と組み合わせて投与される。強直性脊椎炎の症候を軽減又は阻害するために使用することが可能な薬剤の例には、イブプロフェン、ジクロフェナク及びミソプロストール、ナプロキセン、メロキシカム、インドメタシン、ジクロフェナク、セレコキシブ、ロフェコキシブ、スルファサラジン、プレドニゾン、メトトレキサート、アザチオプリン、ミノサイクリン、プレドニゾン、エタネルセプト及びインフリキシマブが含まれる。
【0168】
一実施形態において、TNFα阻害剤、例えば、TNFα抗体又はその抗原結合部分は、乾癬性関節炎を治療するためのさらなる治療剤と組み合わせて投与される。乾癬性関節炎の症候を軽減又は阻害するために使用することができる薬剤の例には、メトトレキサート;エタネルセプト;ロフェコキシブ;セレコキシブ;葉酸;スルファサラジン;ナプロキセン;レフルノミド;酢酸メチルプレドニゾロン;インドメタシン;硫酸ヒドロキシクロロキン;スリンダク;プレドニゾン;強化されたベタメタゾンジプロピオン酸エステル;インフリキシマブ;メトトレキサート;フォラート;トリアムシノロンアセトニド;ジクロフェナク;ジメチルスルホキシド;ピロキシカム;ジクロフェナクナトリウム;ケトプロフェン;メロキシカム;プレドニゾン;メチルプレドニゾロン;ナブメトン;トルメチンナトリウム;カルシポトリエン;シクロスポリン;ジクロフェナク;ナトリウム/ミソプロストール;フルオシノニド;硫酸グルコサミン;金チオリンゴ酸ナトリウム;ヒドロコドン;バイタートラート/アセトアミノフェン;イブプロフェン;リセドロン酸ナトリウム;スルファジアジン;チオグアニン;バルデコキシブ;アレファセプト及びエファリズマブが含まれる。
【0169】
一実施形態において、TNFα阻害剤、例えば、TNFα抗体又はその抗原結合部分は、乾癬を治療するための、局所コルチコステロイド、ビタミンD類縁体及び局所若しくは経口レチノイド又はこれらの組み合わせと組み合わせて投与される。さらに、本発明のTNFα抗体は、乾癬の治療のための以下の薬剤の1つと組み合わせて投与される。KDRの小分子阻害剤(ABT−123)、Tie−2の小分子阻害剤、カルシポトリエン、プロピオン酸クロベタゾール、トリアムシノロンアセトニド、プロピオン酸ハロベタゾール、タザロテン、メトトレキサート、フルオシノニド、強化されたベタメタゾンジプロピオン酸エステル、フルオシノロン、アセトニド、アシトレチン、タールシャンプー、吉草酸ベタメタゾン、フロン酸モメタゾン、ケトコナゾール、プラモキシン/フルオシノロン、吉草酸ヒドロコルチゾン、フルランドレノリド、尿素、ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール/emoll、プロピオン酸フルチカゾン、アジトロマイシン、ヒドロコルチゾン、保湿処方、葉酸、デソニド、コールタール、二酢酸ジフロラゾン、エタネルセプト、フォラート、乳酸、メトキサレン、hc/ビスマスsubgal/znox/resor、酢酸メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、日焼け止め、サリチル酸、ハルシノニド、アンスラリン、ピバル酸クロコルトロン、石炭抽出物、コールタール/サリチル酸、コールタール/サリチル酸/硫黄、デスオキシメタゾン、ジアゼパム、皮膚軟化剤、ピメクロリムス皮膚軟化剤、フルオシノニド/皮膚軟化剤、鉱物油/ひまし油/na lact、鉱物油/落花生油、石油/ミリスチン酸イスプロピル、ソラーレン、サリチル酸、石鹸/トリブロムサラン、チメロサール/ホウ酸、セレコキシブ、インフリキシマブ、アレファセプト、エファリズマブ、タクロリムス、ピペクロリムス、PUVA、UVB及びスルファサラジン。
【0170】
抗体、抗体部分又はその他のTNFα阻害剤、例えば、TNFα抗体又はその抗原結合部分は、皮膚症状を治療するための他の薬剤と組み合わせて使用され得る。例えば、本発明の抗体、抗体部分又はその他のTNFα阻害剤は、PUVA療法と組み合わされる。PUVAは、多くの様々な皮膚症状を治療するために使用されるソラーレン(P)と長波紫外線放射(UVA)の組み合わせである。本発明の抗体、抗体部分又はその他のTNFα阻害剤は、ピメクロリムスと組み合わせることも可能である。別の実施形態において、本発明の抗体は、乾癬を治療するために使用され、抗体は、タクロリムスと組み合わせて投与される。さらなる実施形態において、タクロリムスとTNFα阻害剤は、メトトレキサート及び/又はシクロスポリンと組み合わせて投与される。さらに別の実施形態において、本発明のTNFα阻害剤は、乾癬を治療するためのエキシマレーザー治療とともに投与される。
【0171】
皮膚又は爪の疾患を治療するために、TNFα阻害剤、例えば、TNFα抗体又はその抗原結合部位とともに組み合わせることが可能な他の治療剤の非限定的な例には、UVA及びUVB光治療が含まれる。TNFα阻害剤と組み合わせて使用することが可能な他の非限定的な例には、抗体を含む抗IL−12及び抗IL−18治療剤が含まれる。
【0172】
上記治療剤の何れの1つも、単独で、又は組み合わせて、びらん性多発性関節炎を罹患する患者に、TNFα抗体又はその抗原結合部分を含むTNFαα阻害剤と組み合わせて投与することが可能である。TNFα抗体又はその抗原結合部分は、びらん性多発性関節炎を有する患者の急性管理に有効であることが知られたさらなる治療剤と組み合わせて使用され得る。TNFα抗体又はその抗原結合部分は、びらん性多発性関節炎を有する患者の管理に有効であることが知られたさらなる治療剤と組み合わせても使用され得る。
【0173】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示されが、以下の実施例は限定するもの解釈してはならない。本願を通じて引用される全ての参考文献、特許及び公開された特許出願の内容は、参照により、本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0174】
TNF阻害剤を用いた、乾癬性関節炎を有する患者におけるびらん性多発性関節炎の治療
びらん性多発性関節炎は、乾癬性関節炎(PsA)を有する患者のかなりの割合に発生する。伝統的な非生物学的DMARDは、本疾患における関節損傷の放射線学的進行を有効に阻害することが示されていない。
【0175】
以下の研究は、びらん性多発性関節炎の治療に対するTNF阻害剤、より具体的には抗TNF抗体アダリムマブの有効性を評価するために行った。本研究は、中度から重度のPsAを有する患者におけるびらん性多発性関節炎を伴う関節疾患の放射線学的進行を阻害する上で、アダリムマブが有効であるかどうかを評価するために行った。
【0176】
NSAID療法が奏功しなかった中度から重度に活性なPsA(3膨張性関節及び圧痛性関節3)を有する成人患者の24週の二重盲検、無作為化プラセボ対照化試験を行った。メトトレキサート(MTX)の使用(使用/無使用)及び乾癬の程度(3%未満又は3%以下の体表面積[BSA])に従って、患者を階層化した。3以上の膨張性関節及び3以上の圧痛性関節を有することに加えて、試験に含める基準には、NSAID療法への不十分な応答、乾癬の既往歴及び18歳を超える年齢が含まれた。除外基準には、以下のもの、すなわち、以前に行った以下の抗TNF療法:研究参加前12週以内のアレファセプト、研究参加前6週以内のその他の生物薬、研究参加前4週以内の乾癬に対する全身療法並びに研究参加前2週以内の光療法及び局所薬が含まれた。
【0177】
患者は、24週間、隔週に(eow)、40mgアダリムマブ又はプラセボを皮下投与するように無作為化された。24週の試験を完了した患者は、全ての患者が隔週にアダリムマブを服用した非盲検(OLE)試験に参加する資格を有した。非盲検療法による治療の12週後に、予め指定された基準を満たさない患者は、40mgを毎週服用する資格を有した。
【0178】
放射線学的評価は、盲検化された部分(0及び24週)及び非盲検化された部分(48週)の両方の間に行った。修正されたシャープの合計スコア(mTSS)(PsAに典型的に関与するさらなる関節を加算し、PsAに生じる顕著な骨溶解をよりよく定量するために、数値のスケールが拡張されている。)によって、手および足のレントゲン写真を評価した。mTSSは、図1aに示されているように、関節腔狭窄スコア(0−192)及びびらんスコア(0−378)を組み合わせることによって求めた。PsAを伴う臨床的知見(例えば、ペンシルインカップ変化)も評価した。本研究で使用されたmTSSの模式図及びPsAを伴う放射線学的知見は、それぞれ、図1a及び1bに示されている。
【0179】
レントゲン写真の読み取り操作には、以下のものが含まれた。全てのフィルムは、治療及びフィルム順序に対して盲検化された2人の独立した読み取り者によって読み取られた。読み取り番号1は、ベースライン及び24週フィルムの評価であった。読み取り番号2は、ベースライン、24週及び48週のフィルムの評価であった。
【0180】
欠落したレントゲン写真の影響を評価するために、幾つかの感受性分析を使用した(ゼロ変化の補完、最悪の順位変化、類似のベースラインスコアを有する患者に基づく50/75パーセンタイル変化及び複数のレントゲン写真が入手可能である場合には、直線外挿)。
【0181】
24週の分析には、以下のものが含まれた。24週の分析に含めるには、ベースライン及び24週のフィルムがともに必要であり、ここでは、関節の少なくとも50%が評価可能であった。48週の分析には、以下のものが含まれた。24週分析からの全ての患者を、48週の分析に含めた。48週のフィルムを入手できなかった(又は評価可能な関節が50%未満)場合には、以下の補完を行った。当初、プラセボへ無作為に割り振られた場合には、0の変化を補完した。当初、アダリムマブへ無作為に割り振られた場合には、最初の2つのフィルムを用いて線形外挿を実施した。
【0182】
ベースラインの人口的データ及び疾病重度特性は中度から重度PSAと合致しており、治療群(アダリムマブN=151、プラセボN−162;平均±標準偏差)間で十分にマッチしていた:年齢49.0±11.8歳;PsAの期間9.5±8.5年;SJC(76)14±12;TJC(78)25±18;HAQ1.0±0.6;mTSS20.8±40.9;51%が、同時にメトトレキサートを服用していた。全体のうち、296人の患者がベースライン及び24週にX線を有し、265人の患者は、48週にもX線を有した。
【0183】
以前の研究で報告されているように、24週でのアダリムマブ処理された患者に対するACR20、50及び70応答並びにPASI50、75及び90応答は、プラセボに比べて、有意に優れていた。24週でのACR及びPASI応答は、以下の表1及び2に示されている(全ての結果は、プラセボvs.アダリムマブで、p<0.001):
【0184】
【表1】

【0185】
【表2】

【0186】
盲検化された研究期間(24週)、アダリムマブ患者は、プラセボ患者に比べて、有意に低いmTSSの進行を有していた(mTSSの平均変化−0.2vs.1.0、p<0.001、順位付けされたANCOVA)。統計的な有意性は、全ての感受性分析において維持された。図2は、アダリムマブで治療された患者は、プラセボに比べて、治療の24週の間に、構造的損傷の増加を有する数がより少ないことを示すmTSSスコアの分布を示している。分布の差は、24週における平均スコア並びに研究中に、シャープのスコアの増加を有していた患者の数及びパーセントを見ることによって観察された(表3参照)。治療の最初の24週中に、アダリムマブで治療された患者に比べて、約3倍のプラセボ治療患者がmTSSの増加(>0.5単位)を有していた。
【0187】
【表3】

【0188】
びらんスコア及び関節狭窄スコアの両方に対して、アダリムマブとプラセボ治療患者間で統計的に有意な差が観察された(順位付けしたANACOVAを用いてp0.001)。24週目に、びらんスコアの変化(ベースラインからの変化)は、プラセボ患者については0.6、アダリムマブ患者については0.0であり(p<0.001、順位付けしたANACOVA)、関節腔狭窄スコアの変化(ベースラインからの変化)は、プラセボ患者については0.4、アダリムマブ患者については−0.2であった(p<0.001、順位付けしたANACOVA)。
【0189】
欠落した患者フィルムを説明するための感受性分析を行い、結果は、全ての分析で、統計学的な有意性を維持した。足及びDIPを除く事後感受性分析は、以下のとおりであった。1つの分析は、足及びDIPを除いて行い、第二の分析は全てのDIP関節を除いて行った。統計的な有意性は、両分析において維持された。
【0190】
同時にMTXが使用されているか否かに関わらず、アダリムマブ処理患者とプラセボ処理患者との間に統計的に有意な差が観察された。平均差は、同時にMTXを服用している患者において、僅かにより高かった。単独療法の患者は、アダリムマブ(n=68)ではー0.1に対して、プラセボ(n=74)では0.9のベースラインからの変化を示した(順位付けしたANACOVAを用いて、p0.001)。同時MTX患者は、アダリムマブ(n=76)では−0.3に対して、プラセボ(n=78)では1.2のベースラインからの変化を示した(順位付けしたANACOVAを用いて、p0.001)。図3a及び3bは、MTXあり及びなしの患者のmTSSの累積分布関数プロットを示している。
【0191】
48週のレントゲン写真の分析は、アダリムマブ患者において、24週に観察された進行の欠如(mTSSの変化の欠如)が、48週まで維持されたことを示した(図4参照)。24週間、プラセボで処理された患者は、非盲検期間中、疾病の放射線学的進行を有さなかった。何れの治療群も、PsAに関連する特徴の有意な進行を示さなかった。PsAに関連する知見の割合は、表4に示されている。ベースラインでの群間で、有意差は見られず、24週の研究中に、何れの群でも、有意な進行は認められなかった。
【0192】
【表4】

【0193】
さらに、アダリムマブは、一般的に、以前に報告されたように、良好に耐容された。アダリムマブは、プラセボに比べて、24週にわたり、放射線学的な疾病の進行を阻害する上でより有効であった。アダリムマブは、同時にメトトレキサートを服用する患者及び単独療法としてアダリムマブを服用する患者の両方で、プラセボに対して差を示した。24週に、アダリムマブで処理された患者に観察された構造的損傷の進行の阻害は、1年の時点で維持された。結論として、本研究は、中度から重度に活性なPsAも有する患者において、アダリムマブが、1年にわたって、びらん性多発性関節炎及び放射線学的な疾病進行を治療する上で有効であることを示した。
【0194】
均等物
当業者は、本明細書に記載されている本発明の具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識し、定型的な実験操作のみを用いて均等物を究明することが可能である。このような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されるものとする。本願を通じて引用される全ての参考文献、特許及び公開された特許出願の内容は、参照により、本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
びらん性多発性関節炎に罹患しているヒト患者を治療する方法であり、びらん性多発性関節炎が治療されるように、前記患者に、TNFα抗体又はその抗原結合部分を投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
TNFα抗体又はその抗原結合部分が、ヒト化抗体、キメラ抗体及び多価抗体からなる群から選択される抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
TNFα抗体又はその抗原結合部分がインフリキシマブ又はゴリムマブである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
TNFα抗体又はその抗原結合部分がヒト抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ヒト抗体又はその抗原結合部分が、1×10−8M又はそれ以下のK及び1×10−3−1又はそれ以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し(何れも、表面プラズモン共鳴によって測定される。)、並びに、標準的なインビトロL929アッセイにおいて、1×10−7M又はそれ以下のIC50でヒトTNFα細胞毒性を中和する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ヒト抗体又はその抗原結合部分が、以下の特徴:
a)表面プラズモン共鳴によって測定した場合に、1×10−3−1又はそれ以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離する;
b)配列番号3のアミノ酸配列又は位置1、4、5、7若しくは8において、単一のアラニン置換によって配列番号3から修飾されたアミノ酸配列又は位置1、3、4、6、7、8及び/又は9において、1個から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号3から修飾されたアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメインを有する;
c)配列番号4のアミノ酸配列又は位置2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11において、単一のアラニン置換によって配列番号4から修飾されたアミノ酸配列又は位置2、3、4、5、6、8、9、10、11及び/又は12において、1個から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号4から修飾されたアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメインを有する;
を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
ヒト抗体又はその抗原結合部分が、配列番号3のアミノ酸配列又は位置1、4、5、7若しくは8において、単一のアラニン置換によって配列番号3から修飾されたアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する軽鎖可変領域(LCVR)を含み、及び配列番号4のアミノ酸配列又は位置2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11において単一のアラニン置換によって配列番号4から修飾されたアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する重鎖可変領域(HCVR)を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
ヒト抗体又はその抗原結合部分が、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)及び配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
ヒト抗体又はその抗原結合部分がアダリムマブである、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
TNFα抗体又はその抗原結合部分が隔週投薬計画で患者に投与される、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
患者が、TNRα活性が有害である疾患を有する、請求項1から9の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
TNFα活性が有害である疾患が、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎及び若年性関節リウマチからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
TNFα活性が有害である疾患が乾癬性関節炎である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
さらなる治療剤を患者に投与することをさらに含む、請求項1から9の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
さらなる治療剤がメトトレキサートである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
TNFα抗体またはその抗原結合部分がびらん性多発性関節炎を関節疾患の放射線学的進行を減少させる有効性を検査する方法であり、前記TNFα抗体またはその抗原結合部分の有効性を測定すること、びらん性多発性関節炎を伴う関節疾患を有する患者集団の修正シャープの合計スコア(mTSS)及びTNFα抗体又はその抗原結合部分の投与後における前記患者集団のmTSSを使用することを含み、前記mTSSの無変化又は減少が、TNFα抗体又はその抗原結合部分が、びらん性多発性関節炎を伴う関節疾患の放射線学的進行を減少させる上で有効であることを示す、前記方法。
【請求項17】
患者集団が、TNRαが有害である疾患をさらに有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
TNFα活性が有害である疾患が、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎及び若年性関節リウマチからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
mTSSの減少が約−0.2である、請求項16から18の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
TNFα抗体又はその抗原結合部分が、ヒト化抗体、キメラ抗体及び多価抗体からなる群から選択される抗体である、請求項16から18の何れか1項に記載の方法。
【請求項21】
TNFα抗体又はその抗原結合部分がインフリキシマブ又はゴリムマブである、請求項16から18に記載の何れか1項に記載の方法。
【請求項22】
TNFα抗体又はその抗原結合部分がヒト抗体である、請求項16から18に記載の何れか1項に記載の方法。
【請求項23】
ヒト抗体又はその抗原結合部分が、1×10−8M又はそれ以下のK及び1×10−3−1又はそれ以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し(何れも、表面プラズモン共鳴によって測定される。)、並びに、標準的なインビトロL929アッセイにおいて、1×10−7M又はそれ以下のIC50でヒトTNFα細胞毒性を中和する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ヒト抗体又はその抗原結合部分が、以下の特徴:
a)表面プラズモン共鳴によって測定された場合に、1×10−3−1又はそれ以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離する;
b)配列番号3のアミノ酸配列又は位置1、4、5、7若しくは8において、単一のアラニン置換によって配列番号3から修飾されたアミノ酸配列又は位置1、3、4、6、7、8及び/又は9において、1個から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号3から修飾されたアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメインを有する;
c)配列番号4のアミノ酸配列又は位置2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11において、単一のアラニン置換によって配列番号4から修飾されたアミノ酸配列又は位置2、3、4、5、6、8、9、10、11及び/又は12において、1個から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号4から修飾されたアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメインを有する;
請求項22に記載の方法。
【請求項25】
ヒト抗体又はその抗原結合部分が、配列番号3のアミノ酸配列又は位置1、4、5、7若しくは8において、単一のアラニン置換によって配列番号3から修飾されたアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する軽鎖可変領域(LCVR)を含み、及び配列番号4のアミノ酸配列又は位置2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11において単一のアラニン置換によって配列番号4から修飾されたアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する重鎖可変領域(HCVR)を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
ヒト抗体又はその抗原結合部分が、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)及び配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
ヒト抗体又はその抗原結合部分がアダリムマブである、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
TNFα抗体又はその抗原結合部分が隔週投薬計画で患者に投与される、請求項16から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
抗体又はその抗原結合部分がさらなる治療剤と組み合わせて投与される、請求項16から18に記載の何れか1項に記載の方法。
【請求項30】
さらなる治療剤がメトトレキサートである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ヒト患者におけるびらん性多発性関節炎の治療に対するTNFα抗体またはその抗原結合部分の有効性をモニターする方法であり、前記TNFα抗体またはその抗原結合部分の有効性を測定すること、びらん性多発性関節炎を有する患者集団のベースライン修正シャープの合計スコア(mTSS)及びTNFα抗体又はその抗原結合部分の投与後における患者集団のmTSSスコアを使用することを含み、
i)前記患者集団の約9から27%におけるmTSSの減少、
ii)前記患者集団の約65から73%におけるmTSSの無変化及び、
iii)前記患者集団の約9から28%におけるmTSSの増加、
からなる群から選択される結果が、TNFα抗体又はその抗原結合部分がびらん性多発性関節炎を治療する上で有効であることを示す、前記方法。
【請求項32】
TNFα抗体又はその抗原結合部分が、ヒト化抗体、キメラ抗体及び多価抗体からなる群から選択される抗体である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
TNFα抗体又はその抗原結合部分がインフリキシマブ又はゴリムマブである、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
TNFα抗体又はその抗原結合部分がヒト抗体である、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
ヒト抗体又はその抗原結合部分が、1×10−8M又はそれ以下のK及び1×10−3−1又はそれ以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し(何れも、表面プラズモン共鳴によって測定される。)、並びに、標準的なインビトロL929アッセイにおいて、1×10−7M又はそれ以下のIC50でヒトTNFα細胞毒性を中和する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ヒト抗体又はその抗原結合部分がアダリムマブである、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
乾癬性関節炎を伴うびらん性多発性関節炎を治療するためのTNFα抗体またはその抗原結合部分の有効性を検査する方法であり、前記TNFα抗体またはその抗原結合部分の有効性を測定すること、NFα抗体又はその抗原結合部分の投与後におけるびらん性多発性関節炎を有する患者集団のmTSS及びPASI又はACRスコアの何れかと比較して、前記患者集団のベースライン修正シャープの合計スコア(mTSS)及びベースライン乾癬範囲重度指数(PASI)スコア又はベースラインACRスコアの何れかを使用することを含み、mTSSの無変化又は減少及び前記患者集団の少なくとも約57%において達成されたACR20応答又は前記患者集団の少なくとも約75%において達成されたPASI50応答が、TNFα抗体又はその抗原結合部分が乾癬性関節炎を伴うびらん性多発性関節炎の治療に対して有効であることを示す、前記方法。
【請求項38】
患者集団の少なくとも約39%においてACR50応答をさらに達成する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
患者集団の少なくとも約23%においてACR70応答をさらに達成する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
患者集団の少なくとも約59%においてPASI75応答をさらに達成する、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
患者集団の少なくとも約42%においてPASI90応答をさらに達成する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
TNFα抗体又はその抗原結合部分がアダリムマブである、請求項37から41の何れか1項に記載の方法。
【請求項43】
びらん性多発性関節炎を有する患者に、隔週投薬計画でアダリムマブを投与することを含む、びらん性多発性関節炎を治療する方法。
【請求項44】
アダリムマブの用量が約40mgである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
TNFα抗体又はその抗原結合部分と、及び医薬として許容される担体とを含む医薬組成物と、並びに
びらん性多発性関節炎の治療のための前記医薬組成物の投与のための指示書と、
を含むキット。
【請求項46】
医薬組成物がTNFα抗体又はその抗原結合部分、アダリムマブを含む、請求項45に記載のキット。
【請求項47】
医薬組成物がアダリムマブ約40mgを含む、請求項46に記載のキット。
【請求項48】
追加の治療剤をさらに含む、請求項45から47の何れか1項に記載のキット。
【請求項49】
追加の治療剤がメトトレキサートである、請求項48に記載のキット。
【請求項50】
a)梱包材料;
b)TNFα抗体又はその抗原結合部分;及び
c)びらん性多発性関節症の治療のためにTNFα抗体又はその抗原結合部分が使用できることを示す、前記梱包材料内に含有されたラベル又は梱包挿入物;
を含む、製品。
【請求項51】
a)梱包材料;
b)TNFα抗体又はその抗原結合部分;及び
c)関節疾患の放射線学的進行を阻害するためにTNFα抗体又はその抗原結合部分が使用できることを示す、前記梱包材料内に含有されたラベル又は梱包挿入物;
を含む、製品。
【請求項52】
抗TNFα抗体又はその抗原結合部分が、ヒト化抗体、キメラ抗体及び多価抗体からなる群から選択される抗体である、請求項50又は51の何れかに記載の製品。
【請求項53】
TNFα抗体又はその抗原結合部分がインフリキシマブ又はゴリムマブである、請求項50又は51に記載の製品。
【請求項54】
TNFα抗体又はその抗原結合部分がヒト抗体である、請求項50又は51に記載の製品。
【請求項55】
ヒト抗体又はその抗原結合部分が、1×10−8M又はそれ以下のK及び1×10−3−1又はそれ以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し(何れも、表面プラズモン共鳴によって測定される。)、並びに、標準的なインビトロL929アッセイにおいて、1×10−7M又はそれ以下のIC50でヒトTNFα細胞毒性を中和する、請求項54に記載の製品。
【請求項56】
ヒト抗体又はその抗原結合部分がアダリムマブである、請求項54に記載の製品。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−211138(P2012−211138A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−116707(P2012−116707)
【出願日】平成24年5月22日(2012.5.22)
【分割の表示】特願2008−512613(P2008−512613)の分割
【原出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(503448572)アボツト・バイオテクノロジー・リミテツド (30)
【Fターム(参考)】