説明

めっき被膜付き気密端子の製造方法

【課題】めっき不良や棒状電極端子の曲がり不良の発生を低減でき、そして均一な厚みのめっき被膜を形成することができる、製造工程が簡単で且つ使用材料の選定も容易なめっき被膜付き気密端子の製造方法を提供すること。
【解決手段】金属製のリングの内側に、各々、上側が相対的に短く、下側が相対的に長い二本の棒状電極端子が絶縁材を介して互いに間隔を以て支持固定されてなる気密端子を用意する工程、各棒状電極端子の下側の端部もしくはその近傍に、両端子を互いに接続するように紫外線硬化性樹脂を付着させ、次いで該樹脂を紫外線の照射により硬化させることにより両端子が硬化樹脂塊で連結された気密端子を作製する工程、金属製リング及び各棒状電極端子の表面の露出部分に、バレルめっき法によりめっき被膜を形成する工程、そして両端子の硬化樹脂塊で連結されている部分を硬化樹脂塊と共にそれぞれ切断除去する工程を含むめっき被膜付き気密端子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バレルめっき法を利用してめっき被膜付き気密端子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水晶振動子に代表される電子部品を、環境条件(例、気温や湿度など)の変動に対して安定に動作させるために気密容器に収容することは知られている。
【0003】
このような気密容器は、金属製のリングの内側に、各々、上側が相対的に短く、下側が相対的に長い二本の棒状電極端子が絶縁材を介して互いに間隔を以て支持固定されてなる気密端子、そして気密端子の金属製リングが圧入される開口部を備えた金属製のキャップから構成されている。
【0004】
このような気密端子の金属製リング及び各棒状電極端子の表面には、めっき被膜(例、錫−鉛合金薄膜)が形成される。そして、気密端子の二本の棒状電極端子の上側の端部には、めっき被膜によるはんだ付けにより電子部品が固定され、次いで金属製リングを金属製キャップの開口部に圧入することにより、気密容器に電子部品が収容される。金属製リングのめっき被膜は、圧入された金属製リングと金属製キャップとの気密性を向上させるための封着材として機能する。
【0005】
気密端子の金属製リング及び各棒状電極端子には、所定の厚み(例えば、9〜17μm程度)でめっき被膜を形成する必要がある。一方、携帯型電話機の水晶振動子に代表される小型電子部品用の気密端子には、二本の棒状電極端子の間隔が0.1〜0.2mm程度に設定されているものがある。この場合、棒状電極端子のめっき被膜が厚すぎると、水晶振動子を固定する際に加熱され溶融しためっき被膜が、二本の棒状電極端子を互いに電気的に短絡させる場合がある。また、金属製リングのめっき被膜は、圧入された金属製リングと金属製キャップとの気密性を高める封着材として十分に機能させるためには、ある程度以上の厚みを有していることが必要である。
【0006】
気密端子のめっき被膜は、一般に、バレルめっき法により形成される。バレルめっき法は、多数の透孔が形成されたバレルと呼ばれる中空容器に、めっき被膜を形成する対象物品(例、気密端子)を大量に収容し、これをめっき液中に浸漬して回転させることにより、大量の物品に効率良くめっきを行なう方法である。バレルの内部には、めっき用の電極が設置されており、バレルと共に対象物品が回転移動してめっき用電極に接触した際に、めっき液中の金属イオンが対象物品に付着してめっき被膜が形成される。
【0007】
特許文献1には、二本の棒状電極端子(リード)を備える気密端子(電子部品)の製造方法が開示されている。この製造方法においては、二本の棒状電極端子を導電材で互いに固着短絡した気密端子を用いることにより、バレル内部にて回転する気密端子の棒状電極端子が別の気密端子の二本の棒状電極端子の間に侵入し難くなるため、棒状電極端子同士が絡まることで生じるめっき不良や棒状電極の曲がり発生(不良)の発生率を低減できるとされている。また、二本の棒状電極端子が導電材によって互いに電気的に短絡されているため、各々の棒状電極端子に互いに均一な厚みのめっき被膜を形成できるとされている。導電材としては、例えば、錫−鉛合金などの低融点金属が用いられている。そして、バレルめっき法によりめっき被膜を形成する際にめっき液は加熱されるため、上記の低融点金属としては、めっき液の加熱温度よりも高い融点を持つものが望ましいとされている。
【特許文献1】特開2001−267190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1の製造方法を用いることにより、バレルめっき法で気密端子にめっき被膜を形成する際のめっき不良や棒状電極端子の曲がり不良の発生率を低減することができ、そして各棒状電極端子に互いに均一な厚みのめっき被膜を形成することができる。
【0009】
しかしながら、この製造方法は、気密端子の二本の棒状電極端子に、導電材として用いる低融点金属を加熱溶融させ付着させるという、熱処理を伴う手間のかかる工程が必要である。また、めっき液(あるいはめっき後の加熱乾燥)の設定温度を変更した際には、導電材として用いる低融点金属を、適当な融点を持つものに変更する必要が生じる場合もある。
【0010】
本発明の課題は、めっき不良や棒状電極端子の曲がり不良の発生を抑制することができ、そして金属製リング及び各棒状電極端子に各々互いに均一な厚みのめっき被膜を形成することができる、製造工程が簡単で且つ使用材料の選定も容易なめっき被膜付き気密端子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記の工程を含むめっき被膜付き気密端子の製造方法にある。
(1)金属製のリングの内側に、各々、上側が相対的に短く、下側が相対的に長い二本の棒状電極端子が絶縁材を介して互いに間隔を以て支持固定されてなる気密端子を用意する工程、
(2)それぞれの棒状電極端子の下側の端部もしくはその近傍に、両端子を互いに接続するように紫外線硬化性樹脂を付着させ、次いでこの樹脂を紫外線の照射により硬化させることにより両端子が硬化樹脂塊で連結された硬化樹脂塊付き気密端子を作製する工程、
(3)硬化樹脂塊付き気密端子の金属製リング及び各棒状電極端子の表面の露出部分に、バレルめっき法によりめっき被膜を形成する工程、および
(4)二本の棒状電極端子の硬化樹脂塊で連結されている部分を硬化樹脂塊と共にそれぞれ切断除去する工程。
【0012】
本発明の製造方法においては、硬化樹脂塊の上記二本の棒状電極端子を含む平面に垂直な方向の厚みが、両端子の下側部分の間隔よりも大きいことが好ましい。
【0013】
本発明はまた、金属製のリングの内側に、各々上側が相対的に短く、下側が相対的に長い二本の棒状電極端子が絶縁材を介して互いに間隔を以て支持固定されている気密端子と、それぞれの棒状電極端子の下側の端部もしくはその近傍を互いに連結している、紫外線硬化性樹脂を硬化させて形成された硬化樹脂塊とからなる硬化樹脂塊付き気密端子にもある。
【0014】
本発明の硬化樹脂塊付き気密端子においては、硬化樹脂塊の上記二本の棒状電極端子を含む平面に垂直な方向の厚みが、両端子の下側部分の間隔よりも大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造方法においては、二本の棒状電極端子が硬化樹脂塊で互いに連結された気密端子(硬化樹脂塊付き気密端子)の表面に、バレルめっき法でめっき被膜を形成することにより、めっき被膜付き気密端子が製造される。このように硬化樹脂塊で二本の棒状電極端子を互いに連結することにより、めっき液中にて各気密端子の二本の棒状電極端子の間に別の気密端子の棒状電極端子が侵入し難くなり(すなわち、棒状電極端子同士が絡まり難くなり)、また硬化樹脂塊で連結されることで二本の棒状電極端子の固定が補強されるため、めっき不良や棒状電極端子の曲がり不良の発生が抑制される。
【0016】
また、本発明の製造方法においては、気密端子の二本の棒状電極端子が硬化樹脂塊によって互いに電気的に絶縁された状態にて連結されており、金属製リング及び各棒状電極端子の表面には、各々がめっき用電極に接触した際に互いに独立にめっき被膜が形成されるため、気密端子の金属製リング及び各棒状電極端子には各々互いに均一な厚みのめっき被膜が形成される。
【0017】
本発明の硬化樹脂塊付き気密端子は、紫外線硬化性樹脂を利用した、熱処理を伴わない簡単な操作によって短時間に作製することができる。また、硬化樹脂塊付き気密端子が備える硬化樹脂塊の材料は、めっき液(あるいはめっき後の加熱乾燥)の設定温度を特に意識することなく公知の紫外線硬化性樹脂の中から容易に選定することができる。このように、本発明の製造方法は、その製造工程が簡単で、且つ使用材料の選定も容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
先ず、本発明の製造方法に用いる気密端子を、携帯型電話機の水晶振動子に代表される小型電子部品用の気密端子を例として説明する。
【0019】
図1は、本発明の製造方法に用いる気密端子の構成例を示す平面図であり、そして図2は、図1に記入した切断線II−II線に沿って切断した気密端子10の断面図である。
【0020】
図1及び図2に示す気密端子10は、金属製のリング21の内側に、各々、上側(金属製リングの上方に突き出された部分)が相対的に短く、下側(金属製リングの下方に突き出された部分)が相対的に長い二本の棒状電極端子22、22が、絶縁材23を介して互いに間隔を以て支持固定された構成を有している。
【0021】
金属製リング21は、例えば、その外径が0.92mmに、上側の端部の内径(開口径)が0.69mmに、そして高さが0.8mmに設定される。
【0022】
金属製リング21は、例えば、鉄−ニッケル合金、鉄−ニッケル−コバルト合金(コバール)、あるいは鉄などの金属材料から形成される。
【0023】
棒状電極端子22は、例えば、その直径が0.15mmに設定される。そして二本の棒状電極端子22、22の間隔は、例えば、0.15mmに設定される。
【0024】
棒状電極端子22は、例えば、鉄−ニッケル合金、あるいは鉄−ニッケル−コバルト合金などの金属材料から形成される。
【0025】
絶縁材23の例としは、ソーダライムガラス、ソーダバリウムガラス、およびホウケイ酸ガラスなどの無機ガラス材料が挙げられる。
【0026】
次に、本発明のめっき被膜付き気密端子の製造方法について説明する。本発明のめっき被膜付き気密端子の製造方法は、下記の(1)〜(4)の工程を順に実施することからなる。
【0027】
(1)まず、図1及び図2に示すように、金属製のリング21の内側に、各々、上側が相対的に短く、下側が相対的に長い二本の棒状電極端子22、22が、絶縁材23を介して互いに間隔を以て支持固定されてなる気密端子10を用意する。
気密端子としては、公知の各種サイズの気密端子(二本以上の棒状電極端子を持つものも含む)を用いることができる。気密端子の製造方法については、例えば、上記の特許文献1に詳しく記載されている。
【0028】
(2)次に、それぞれの棒状電極端子22の下側の端部に、両端子を互いに接続するように紫外線硬化性樹脂を付着させ、次いで該樹脂を紫外線の照射により硬化させることにより、図3(a)の断面図及び図4の側面図に示すように、両端子が硬化樹脂塊24で連結された硬化樹脂塊付き気密端子11を作製する。
【0029】
硬化樹脂塊付き気密端子11は、例えば、次のような装置を用いて作製される。
【0030】
図5は、硬化樹脂塊付き気密端子11の作製に用いる装置の一例を示す図である。図5に示す装置は、紫外線硬化性樹脂26を入れたトレー51、トレー51に紫外線硬化性樹脂26を補給するポンプ52、そして多数の透孔を備え、各透孔の内部に気密端子10を収容して支持する支持具53から構成されている。
【0031】
トレー51には、紫外線硬化性樹脂26が、例えば、各電極端子22の紫外線硬化性樹脂を付着させる部分の長さ(図3(a):h)とほぼ等しい深さになるまで入れられる。
【0032】
そして、先ず図5の装置の支持具53の透孔の各々に気密端子10を収容保持させ、次いで各気密端子10のそれぞれの棒状電極端子22の下側の端部及びその近傍を、支持具53を下降させて紫外線硬化性樹脂26に浸漬し、次いで支持具53を上昇させて取り出す。これにより、各気密端子10のそれぞれの棒状電極端子22の下側の端部(及びその近傍)には、紫外線硬化性樹脂26が両端子を互いに接続するように付着する。この支持具53を紫外線硬化性樹脂を付着させた気密端子と共に別の場所に移動して、支持具の下方から各気密端子に付着させた紫外線硬化性樹脂に紫外線を照射する。
【0033】
このようにして、金属製のリング21の内側に、各々上側が相対的に短く、下側が相対的に長い二本の棒状電極端子22、22が、絶縁材23を介して互いに間隔を以て支持固定されている気密端子10と、それぞれの棒状電極端子22の下側の端部(及びその近傍)を互いに連結している、紫外線硬化性樹脂を硬化させて形成された硬化樹脂塊24とからなる硬化樹脂塊付き気密端子11を作製することができる。
【0034】
照射する紫外線の波長や強度にも依るが、気密端子の各棒状電極端子に付着させた紫外線硬化性樹脂に紫外線を照射することで、この紫外線硬化性樹脂を概ね5〜60秒という短時間にて硬化させて硬化樹脂塊を形成することができる。また、紫外線の照射を不活性ガス(例、窒素ガス、アルゴンガス)中で行なうと、紫外線硬化性樹脂とその硬化を妨げる原因となる酸素との接触が防止されるため、硬化樹脂塊の形成を上記の時間の概ね半分程度の時間にて行なうことができる。また、硬化樹脂塊の材料となる紫外線硬化性樹脂は、めっき液(あるいはめっき後の加熱乾燥)の設定温度を特に意識することなく公知の紫外線硬化性樹脂の中から容易に選定することができる。
【0035】
なお、気密端子の二本の棒状電極を互いに連結させるために加熱硬化型の樹脂を用いた場合には、加熱温度にも依るが、両端子に付着させた樹脂を硬化させるために概ね5〜30分という長時間の加熱処理を必要とするため、めっき被膜付き気密端子の実用的な生産性を得ることが難しい。
【0036】
図6は、硬化樹脂塊付き気密端子11の作製に用いる装置の別の一例を示す図である。図6に示す装置は、紫外線硬化性樹脂26を入れた容器62、容器62の上方に設置されたトレー61、容器62に入れた紫外線硬化性樹脂26をトレー61に供給するポンプ52、トレー61の上方に配置されている、多数の透孔を備え、各透孔の内部に気密端子10を収容して支持する長尺状の支持搬送具63、そして紫外線ランプ64から構成されている。
【0037】
そして、先ず図6の装置の支持搬送具63により、気密端子10を図に記入した矢印が示す方向へ搬送すると、各気密端子10の各棒状電極端子22の下側の端部及びその近傍が、トレー61に供給された紫外線硬化性樹脂26に浸漬された後に取り出され、それぞれの棒状電極端子22の下側の端部(及びその近傍)に両端子を互いに接続するように紫外線硬化性樹脂26が付着した気密端子13が作製される。この気密端子13は、支持搬送具63によって紫外線ランプ64の上方に搬送され、そして各棒状電極端子に付着した紫外線硬化性樹脂に紫外線が照射される。このようにして、各々の棒状電極端子22が硬化樹脂塊24で互いに連結された硬化樹脂塊付き気密端子11が作製される。図6に示す装置は、硬化樹脂塊付き気密端子を大量に生産する場合に有利に用いることができる。
【0038】
(3)次いで、硬化樹脂塊付き気密端子の金属製リング及び各棒状電極端子の表面の露出部分に、バレルめっき法によりめっき被膜を形成する。
図3(b)は、めっき被膜25が形成された硬化樹脂塊付き気密端子の断面図である。このように、硬化樹脂塊付き気密端子の金属製リング21及び各棒状電極端子22の表面の露出部分にはめっき被膜(代表例、錫−鉛合金被膜)25が形成される。
【0039】
バレルめっき法は、前述のように、多数の透孔が形成されたバレルと呼ばれる中空容器に、めっき被膜を形成する対象物品を大量に(例えば、気密端子を数千個〜数十万個程度)収容し、これをめっき液中に浸漬して回転させることにより、大量の物品に効率良くめっきを行なう方法である。バレルの内部には、めっき用の電極が設置されており、バレルと共に対象物品が回転移動してめっき用電極に接触した際に、めっき液中の金属イオンが対象物品に付着してめっき被膜が形成される。バレルめっき法は、小サイズのめっき被膜付きの物品の大量生産に適した方法として広く知られた技術であり、詳細な説明は省略する。
【0040】
本発明の製造方法に従い、バレルめっき法によって硬化樹脂塊付き気密端子の表面にめっき被膜(代表例、錫−鉛合金被膜)を形成すると、気密端子の二本の棒状電極端子が硬化樹脂塊で互いに連結されており、めっき液中にて各気密端子の二本の棒状電極端子の間に別の気密端子の棒状電極端子が侵入し難くなり(棒状電極端子同士が絡まり難くなり)、また硬化樹脂塊で連結されることで二本の棒状電極端子が補強されるため、めっき不良や棒状電極端子の曲がり不良の発生を低減することができる。
【0041】
図3(a)及び図4に示すように、上記の硬化樹脂塊付き気密端子11において、硬化樹脂塊24の上記二本の棒状電極端子22、22を含む平面に垂直な方向の厚み(t)は、両電極端子の下側部分の間隔(w)よりも大きいことが好ましい。これにより、めっき液中にて各気密端子の二本の棒状電極端子の間に別の気密端子の棒状電極端子が更に侵入し難くなるからである。
【0042】
硬化樹脂塊の厚み(t)は、例えば、硬化樹脂塊付き気密端子を作製する際に用いる紫外線硬化性樹脂の選定(例えば、表面張力や粘度の異なるものを選定)、あるいは上記のように棒状電極端子の下側の端部及びその近傍を紫外線硬化性樹脂に浸漬した後に取り出す際の速度などにより容易に調節することができる。
【0043】
さらに、本発明の製造方法を用いることにより、気密端子の金属製リング及び各棒状電極端子に各々互いに均一な厚みのめっき被膜を形成することができる。
【0044】
例えば、上記の特許文献1に記載されているように、二本の棒状電極端子を導電材で互いに連結すると、バレルめっき法でめっき被膜を形成する際に、めっき用の電極にいずれの棒状電極端子が接触した場合であっても両端子の表面にめっき被膜が形成される。このため、各棒状電極端子には互いに均一な厚みのめっき被膜が形成されるものの、各棒状電極端子には金属製リングよりも厚い厚みでめっき被膜が形成される傾向にある。
【0045】
一方、本発明の製造方法においては、二本の棒状電極端子が硬化樹脂塊によって互いに電気的に絶縁された状態にて連結された硬化樹脂塊付き気密端子が用いられているため、金属製リング及び各棒状電極端子の表面には、各々がめっき用電極に接触した際に互いに独立にめっき被膜が形成される。このため、金属製リング及び各棒状電極端子に各々互いに均一な厚みのめっき被膜を形成することができる。
【0046】
気密端子に形成するめっき被膜の例としては、上記の錫−鉛合金被膜の他に、ニッケル被膜及び金被膜などの金属被膜が挙げられる。ニッケル被膜や金被膜は、気密端子の防錆用の被膜として用いられる。
(4)最後に、二本の棒状電極端子の硬化樹脂塊で連結されている部分を硬化樹脂塊と共にそれぞれ切断除去する。
このようにして、図3(c)に示すめっき被膜付き気密端子12を作製することができる。
【0047】
このように、本発明の製造方法を用いることにより、めっき不良や棒状電極端子の曲がり不良の発生を抑制することができ、そして金属製リング及び各棒状電極端子に各々互いに均一な厚みのめっき被膜を形成することができる。また、本発明の製造方法は、その製造工程が簡単で且つ使用材料の選定も容易であるという利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の製造方法に用いる気密端子の構成例を示す平面図である。
【図2】図1に記入した切断線II−II線に沿って切断した気密端子10の断面図である。
【図3】本発明の製造方法の各工程を説明するために用いる図である。(a)は、硬化樹脂塊付き気密端子の断面図、(b)は、めっき被膜が形成された硬化樹脂塊付き気密端子の断面図、そして(c)は、めっき被膜付き気密端子の断面図である。
【図4】図3(a)に示す硬化樹脂塊付き気密端子を図の右側から見た側面図である。
【図5】本発明の製造方法において用いる硬化樹脂塊付き気密端子の作製に用いる装置の一例を示す図である。
【図6】本発明の製造方法において用いる硬化樹脂塊付き気密端子の作製に用いる装置の別の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
10 気密端子
11 硬化樹脂塊付き気密端子
12 めっき被膜付き気密端子
13 紫外線硬化性樹脂が付着した気密端子
21 金属製のリング
22 棒状電極端子
23 絶縁材
24 硬化樹脂塊
25 めっき被膜
26 紫外線硬化性樹脂
51 トレー
52 ポンプ
53 支持具
61 トレー
62 容器
63 支持搬送具
64 紫外線ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程を含むめっき被膜付き気密端子の製造方法:
(1)金属製のリングの内側に、各々、上側が相対的に短く、下側が相対的に長い二本の棒状電極端子が絶縁材を介して互いに間隔を以て支持固定されてなる気密端子を用意する工程;
(2)それぞれの棒状電極端子の下側の端部もしくはその近傍に、両端子を互いに接続するように紫外線硬化性樹脂を付着させ、次いで該樹脂を紫外線の照射により硬化させることにより両端子が硬化樹脂塊で連結された硬化樹脂塊付き気密端子を作製する工程;
(3)硬化樹脂塊付き気密端子の金属製リング及び各棒状電極端子の表面の露出部分に、バレルめっき法によりめっき被膜を形成する工程;および
(4)二本の棒状電極端子の硬化樹脂塊で連結されている部分を硬化樹脂塊と共にそれぞれ切断除去する工程。
【請求項2】
硬化樹脂塊の上記二本の棒状電極端子を含む平面に垂直な方向の厚みが、両端子の下側部分の間隔よりも大きい請求項1に記載のめっき被膜付き気密端子の製造方法。
【請求項3】
金属製のリングの内側に、各々上側が相対的に短く、下側が相対的に長い二本の棒状電極端子が絶縁材を介して互いに間隔を以て支持固定されている気密端子と、それぞれの棒状電極端子の下側の端部もしくはその近傍を互いに連結している、紫外線硬化性樹脂を硬化させて形成された硬化樹脂塊とからなる硬化樹脂塊付き気密端子。
【請求項4】
硬化樹脂塊の上記二本の棒状電極端子を含む平面に垂直な方向の厚みが、両端子の下側部分の間隔よりも大きい請求項3に記載の硬化樹脂塊付き気密端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−328941(P2007−328941A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157159(P2006−157159)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(000168078)江東電気株式会社 (11)
【Fターム(参考)】