説明

めっき装置及びめっき方法

【課題】表面により高いシート抵抗をもつ基板に対しても、基板の全表面により均一な膜厚のめっき膜を形成できるようにする。
【解決手段】基板Wの表面の周縁部に当接して該周縁部をシールするシール材90と、基板Wの表面に形成した導電層に接触して通電させるカソード接点88と、ハウジング94の内部にアノード98を収納し開口端部に多孔質体110を配置してめっき液室100を区画形成した電極ヘッド28と、基板Wと多孔質体110との間にめっき液を満たしたまま、電極ヘッド28を第1めっき位置から該第1めっき位置よりも基板Wと多孔質体110との距離が離れた第2めっき位置に移動させて停止させる駆動機構136と、基板Wの外周部に対向する位置に該基板Wと離間して配置され、基板Wと多孔質体110との間に満たしためっき液に浸漬される補助カソード部124を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき装置及びめっき方法に係り、特に半導体ウエハなどの基板の表面(被めっき面)に形成された微細な配線用凹部(回路パターン)に銅等の金属(配線材料)を埋込んで配線を形成するのに使用されるめっき装置及びめっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体基板上にLSI配線を形成するための金属材料として、アルミニウムまたはアルミニウム合金に代えて、電気抵抗率が低くエレクトロマイグレーション耐性が高い銅(Cu)を用いる動きが顕著になっている。この種の銅配線は、基板の表面に設けた微細な配線用凹部の内部に銅を埋込むことによって一般に形成される。この銅配線を形成する方法としては、CVD、スパッタリング及びめっきといった手法があるが、いずれにしても、基板のほぼ全表面に銅を成膜して、化学的機械的研磨(CMP)により不要の銅を除去するようにしている。
【0003】
図1は、この種の銅配線基板の製造例を工程順に示す。先ず、図1(a)に示すように、半導体素子を形成した半導体基材1上の導電層1aの上にSiOからなる酸化膜やLow−k材膜等の絶縁膜2を堆積し、この絶縁膜2の内部に、リソグラフィ・エッチング技術により、配線用凹部としてのコンタクトホール3とトレンチ4を形成する。そして、その上にTaNやTiN等からなるバリア層5、更にその上に電解めっきの給電層としてシード層7を形成する。
【0004】
そして、図1(b)に示すように、基板Wのシード層7の表面に銅めっきを施すことで、コンタクトホール3及びトレンチ4内に銅を充填するとともに、絶縁膜2上に銅膜6を堆積する。その後、化学的機械的研磨(CMP)により、絶縁膜2上の銅膜6、シード層7及びバリア層5を除去して、コンタクトホール3及びトレンチ4内に充填させた銅膜6の表面と絶縁膜2の表面とをほぼ同一平面にする。これにより、図1(c)に示すように、絶縁膜2の内部に銅膜6からなる配線が形成される。
【0005】
前記シード層7としては、スパッタリング、CVD、ALDまたは無電解めっき法などによって形成される銅シード層が一般に用いられており、配線サイズの微細化の進行に伴って、銅シード層の厚みが年々薄くなっている。例えば、65nm世代の半導体デバイスを製造する時の銅シード層の厚みは、基板フィールド部において、600オングストローム前後であるが、これが45nm世代になると、500オングストローム以下になると予想されている。次世代、次々世代では、銅シード層の厚みが300オングストローム以下となるか、または銅シード層を設けることなく、例えばルテニウムからなるバリア層の表面に銅をダイレクトでめっきすることになるとも予想されている。
【0006】
これまでの膜厚の銅シード層にあっては、その電気抵抗(シート抵抗)が1Ω/sq以下であるため、カソード接点に接続されてカソードとなる基板とアノードとの間に抵抗体を入れるか、またはめっき液の酸濃度を低くしてめっき液自体の抵抗を高くしたりすることで、シード層のシート抵抗に依存するターミナルエフェクトを低減して、膜厚が基板の中央部で周辺部より薄くなることを防した均一な膜厚の銅膜を基板の表面に成膜することができる。
【0007】
出願人は、基板とアノードとの間に配置される、めっき液の電気抵抗率よりも大きい電気抵抗率を有する多孔質体からなる高抵抗構造体として、その中心部に比べ外周部の電気抵抗が大きくなるようにしたものを使用することを提案した(特許文献1参照)。また、アノードとして、複数に分割した分割アノードを使用し、これらの各分割アノードに個別にめっき電源を接続することで、例えば基板上に初期めっき膜を形成する一定期間だけ、中央部側に位置する分割アノードの電流密度をその周辺より高め、基板外周部にめっき電流が集中することを防止して基板の中央部側にもめっき電流が流れるようにすることで、シート抵抗が高い場合であっても、均一な膜厚のめっき膜を形成することができるようにしたものを提案した(特許文献2参照)。
【0008】
更に、基板の表面全体に均一なめっき膜が得られるようにするため、基板の外周部に対応する位置に、めっき液(電解液)に浸漬させて補助電極を配置することが提案されている(特許文献3参照)。
【0009】
【特許文献1】特開2002−4091号公報
【特許文献2】特開2002−129383号公報
【特許文献3】特開2002−506488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
配線サイズの微細化が更に進む、次世代、次々世代の半導体デバイスにあっては、銅シード層の厚みが益々薄くなって、銅シード層のシート抵抗が1Ω/sq以上となったり、銅シード層を設けることなく、ルテニウム等からなるバリア層の表面に銅をダイレクトでめっきする場合には、そのシート抵抗が10Ω/sq以上となったりすると予想される。このような場合にあっては、これまでの基板とアノードとの間への抵抗体の挿入やめっき液自体の高抵抗化だけでは、シート抵抗に依存するターミナルエフェクトに対する対策が不十分となって、基板の全表面に亘って均一な膜厚の銅膜を形成することが困難となると考えられる。
【0011】
例えば、中心部に比べ外周部の電気抵抗が大きくなるように電気抵抗を調整した多孔質体を基板とアノードとの間に配置してめっきを行うと、基板のシード層上にめっき膜が堆積してめっき膜のシート抵抗が減少するに従い、基板の外周部に比べて基板の中心部にめっき膜が付き易くなる。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、表面により高いシート抵抗をもつ基板に対しても、基板の全表面により均一な膜厚のめっき膜を形成できるようにしためっき装置及びめっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部で保持した基板表面の周縁部に当接して該周縁部をシールするシール材と、前記基板保持部で保持した基板の表面に形成した導電層に接触して通電させるカソード接点と、ハウジングの内部にアノードを収納し該ハウジングの前記基板保持部で保持した基板と対向する開口端部に多孔質体を配置してめっき液室を区画形成した電極ヘッドと、前記基板保持部で保持した基板と前記多孔質体との間にめっき液を満たしたまま、前記電極ヘッドを第1めっき位置から該第1めっき位置よりも基板と多孔質体との距離が離れた第2めっき位置に移動させて停止させる駆動機構と、前記基板保持部で保持した基板の外周部に対向する位置に該基板と離間して配置され、前記基板保持部で保持した基板と前記多孔質体との間に満たしためっき液に浸漬される補助カソード部を有することを特徴とするめっき装置である。
【0014】
ターミナルエフェクト対策として、基板とアノードとの間に、例えば中心部に比べ外周部の電気抵抗が大きくなるように調整した多孔質体を配置して、シート抵抗の高いシード層等の表面にめっきを行うと、基板中心部にめっきが付き易いため、めっき初期から基板外周部から基板中心部まで均一なめっきを行うことができる反面、めっき膜が成長してめっき膜のシート抵抗が低くなるにつれて、基板中心部にめっきが付き過ぎて該中心部が盛り上がっためっき膜の膜厚分布になる。本発明によれば、内部にアノードを収容した電極ヘッドを第1めっき位置から該第1めっき位置よりも基板と多孔質体との距離が離れた第2めっき位置に移動させて停止させた状態で後期めっきを行うことで、基板の中心付近でのめっき膜の成長を適度に抑え、更に、補助カソード部を併用することにより、基板外周部に成膜されるめっき膜の膜厚をコントロールすることで、基板全面に均一な膜厚のめっき膜を成膜することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、前記多孔質体は、中心部と比べて外周部の電気抵抗が高くなるように調整してあることを特徴とする請求項1記載のめっき装置である。
多孔質体の外形状、内部構造、または電気伝導率の異なる部材の装着の内の少なくとも一つの調整により、中心部と比べて外周部の電気抵抗が高くなるように多孔質体を調整することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、前記カソード接点と前記補助カソード部にそれぞれ接続される電源を有することを特徴とする請求項1または2記載のめっき装置である。
【0017】
請求項4に記載の発明は、カソード接点を接触させた基板表面の導電層と該導電層に対面する位置に配置させたアノードとの間にめっき液を満たし、前記めっき液中の前記基板の中央部に対向する位置に多孔質体を、外周部に対向する位置に補助カソード部をそれぞれ基板と離間させて配置し、前記アノードと前記カソード接点との間に電圧を印加して初期めっきを行い、前記アノードと前記カソード接点との間及び前記アノードと前記補助カソードとの間に電圧を印加しながら前記多孔質体を前記基板から離れる位置に移動させ停止させて後期めっきを行うことを特徴とするめっき方法である。
【0018】
本発明によれば、初期めっき後、アノードとカソード接点との間及びアノードと補助カソード部との間に電圧を印加しながら多孔質体を基板から離れる位置に移動させ停止させて後期めっきを行うことにより、基板中心部に集中した電場をエッジ効果により分散させて基板中心部のめっき成長を適度に抑え、さらに補助カソード部を併用して基板外周部の膜厚をコントロールすることによって、目標めっき膜厚に関わらず、基板全面に均一な膜厚のめっき膜を成膜することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、前記基板の導電層は、少なくともCu、Ru、Ta、TaN、W、WNC、WC、Pt、ITO、Ti、TiWまたはTNのいずれかを有することを特徴とする請求項4記載のめっき方法である。
めっき下地のシート抵抗値が高くなってターミナルエフェクト効果が強くなっても、多孔質体の内外の電気抵抗を調節すれば対応可能なため、ルテニウムなどの銅以上に抵抗の高いシード層を有する基板にも適応できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ターミナルエフェクト対策で、特に基板中央部に電場を集中させる多孔質体を使用してめっきを行うとき、めっき中に多孔質体と基板の距離を広げ、更に補助カソード部を併用することにより、めっき膜が所定の膜厚に達した後、逆に基板の中央部に特化する電場を均一化して、基板の全面に均一な膜厚のめっき膜を成膜することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。この例は、図1(a)に示すように、銅と同等以上の抵抗率を持つ、例えばCu、Ru、Ta、TaN、W、WNC、WC、Pt、ITO、Ti、TiWまたはTNのいずれかを有するシード層(導電層)7を有する半導体ウエハ等の基板Wを用意し、この基板Wの表面に電解銅めっきを施して、図1(b)〜(c)に示すように、基板表面に設けた微細な配線用凹部に銅膜6からなる配線を形成するようにした例を示している。
【0022】
図2は、本発明の実施の形態のめっき装置を備えた基板処理装置の全体配置図を示す。図2に示すように、この基板処理装置には、同一設備内に位置して、内部に複数の基板Wを収納する2基のロード・アンロード部10と、めっき処理を行う2基のめっき装置12と、ロード・アンロード部10とめっき装置12との間で基板Wの受渡しを行う搬送ロボット14と、めっき液タンク16を有するめっき液供給設備18が備えられている。
【0023】
めっき装置12には、図3に示すように、めっき処理及びその付帯処理を行う基板処理部20が備えられ、この基板処理部20に隣接して、めっき液を溜めるめっき液トレー22が配置されている。また、回転軸24を中心に揺動する揺動アーム26の先端に保持されて基板処理部20とめっき液トレー22との間を揺動する電極ヘッド28を有する電極アーム部30が備えられている。更に、基板処理部20の側方に位置して、プレコート・回収アーム32と、純水やイオン水等の薬液、更には気体等を基板に向けて噴射する固定ノズル34が配置されている。この例にあっては、3個の固定ノズル34が備えられ、その内の1個を純水の供給用に用いている。
【0024】
基板処理部20には、図4に示すように、基板の表面(被めっき面)を上向きにして基板Wを保持する基板ホルダ36と、この基板ホルダ36の上方に該基板ホルダ36の周縁部を囲繞するように配置されたカソード部38が備えられている。更に、基板ホルダ36の周囲を囲繞して処理中に用いる各種薬液の飛散を防止する有底略円筒状の飛散防止カップ40が、エアシリンダ(図示せず)を介して上下動自在に配置されている。
【0025】
ここで、基板ホルダ36は、エアシリンダ44によって、下方の基板受渡し位置Aと、上方のめっき位置Bと、これらの中間の前処理・洗浄位置Cとの間を昇降し、図示しない回転モータ及びベルトを介して、任意の加速度及び速度でカソード部38と一体に回転するように構成されている。この基板受渡し位置Aに対向して、めっき装置12のフレーム側面の搬送ロボット14側には、基板搬出入口(図示せず)が設けられ、また基板ホルダ36がめっき位置Bまで上昇した時に、基板ホルダ36で保持された基板Wの周縁部に下記のカソード部38のシール材90とカソード接点88が当接するようになっている。一方、飛散防止カップ40は、その上端が基板搬出入口の下方に位置し、図4に仮想線で示すように、上昇した時に基板搬出入口を塞いでカソード部38の上方に達するようになっている。
【0026】
めっき液トレー22は、めっき処理を実施していない時に、電極アーム部30の下記の多孔質体110及びアノード98をめっき液で湿潤させるためのもので、この多孔質体110が収容できる大きさに設定され、図示しないめっき液供給口とめっき液排水口を有している。また、フォトセンサがめっき液トレー22に取付けられており、めっき液トレー22内のめっき液の満水、即ちオーバーフローと排水の検出が可能になっている。
【0027】
電極アーム部30は、下記のように、サーボモータからなる上下動モータ132とボールねじ134とを有する駆動機構136を介して上下動し、旋回モータを介して、めっき液トレー22と基板処理部20との間を旋回(揺動)するようになっている。モータの代わりに、空気圧アクチュエータを使用しても良い。
【0028】
プレコート・回収アーム32は、図5に示すように、上下方向に延びる支持軸58の上端に連結されて、ロータリアクチュエータ60を介して旋回(揺動)し、エアシリンダ(図示せず)を介して上下動するよう構成されている。このプレコート・回収アーム32には、その自由端側にプレコート液吐出用のプレコートノズル64が、基端側にめっき液回収用のめっき液回収ノズル66がそれぞれ保持されている。そして、プレコートノズル64は、例えばエアシリンダによって駆動するシリンジに接続されて、プレコート液がプレコートノズル64から間欠的に吐出され、また、めっき液回収ノズル66は、例えばシリンダポンプまたはアスピレータに接続されて、基板上のめっき液がめっき液回収ノズル66から吸引される。
【0029】
前記基板ホルダ36は、図6乃至図8に示すように、円板状の基板ステージ68を備え、この基板ステージ68の周縁部の円周方向に沿った6カ所に、上面に基板Wを水平に載置して保持する支持腕70が立設されている。この支持腕70の1つの上端には、基板Wの端面に当接して位置決めする位置決め板72が固着され、この位置決め板72を固着した支持腕70に対向する支持腕70の上端には、基板Wの端面に当接し回動して基板Wを位置決め板72側に押付ける押付け片74が回動自在に支承されている。また、他の4個の支持腕70の上端には、回動して基板Wをこの上方から下方に押付けるチャック爪76が回動自在に支承されている。
【0030】
ここで、押付け片74及びチャック爪76の下端は、コイルばね78を介して下方に付勢した押圧棒80の上端に連結されて、この押圧棒80の下動に伴って押付け片74及びチャック爪76が内方に回動して閉じるようになっており、基板ステージ68の下方には、押圧棒80に下面に当接してこれを上方に押上げる支持板82が配置されている。
【0031】
これにより、基板ホルダ36が図4に示す基板受渡し位置Aに位置する時、押圧棒80は支持板82に当接し上方に押上げられて、押付け片74及びチャック爪76が外方に回動して開き、基板ステージ68を上昇させると、押圧棒80がコイルばね78の弾性力で下降して、押付け片74及びチャック爪76が内方に回転して閉じる。
【0032】
カソード部38は、図9及び図10に示すように、支持板82(図8等参照)の周縁部に立設した支柱84の上端に固着した環状の枠体86と、この枠体86の下面に内方に突出させて取付けた、この例では6分割されたカソード接点88と、このカソード接点88の上方を覆うように枠体86の上面に取付けた環状のシール材90とを有している。シール材90は、その内周縁部が内方に向け下方に傾斜し、かつ徐々に薄肉となって、内周端部が下方に垂下するように構成されている。
【0033】
これにより、図4に示すように、基板ホルダ36がめっき位置Bまで上昇した時に、この基板ホルダ36で保持した基板Wの周縁部にカソード接点88が押付けられて通電し、同時にシール材90の内周端部が基板Wの周縁部上面に圧接し、ここを水密的にシールして、基板の上面(被めっき面)に供給されためっき液が基板Wの端部から染み出すのを防止するとともに、めっき液がカソード接点88を汚染することを防止するようになっている。
なお、この例において、カソード部38は、上下動不能で基板ホルダ36と一体に回転するようになっているが、上下動自在で、下降した時にシール材90が基板Wの被めっき面に圧接するように構成しても良い。
【0034】
電極アーム部30の電極ヘッド28は、図11及び図12に示すように、揺動アーム26の自由端に垂設したハウジング94と、このハウジング94の下端開口部を塞ぐように配置された多孔質体110とを有している。すなわち、このハウジング94の下部には、内方に突出した内方突出部94aが、多孔質体110の上部にはフランジ部110aがそれぞれ設けられ、このフランジ部110aを内方突出部94aに引っ掛けることで、ハウジング94に多孔質体110が保持されている。これによって、ハウジング94の内部に中空のめっき液室100が区画形成されている。
【0035】
多孔質体110は、例えばアルミナ,SiC,ムライト,ジルコニア,チタニア,コージライト等の多孔質セラミックスまたはポリプロピレンやポリエチレンの焼結体等の硬質多孔質体、あるいはこれらの複合体で構成される。例えば、アルミナ系セラミックスにあっては、ポア径30〜200μm、SiCにあっては、ポア径30μm以下、気孔率20〜95%、厚み1〜20mm、好ましくは5〜20mm、更に好ましくは8〜15mm程度のものが使用される。この例では、多孔質体110は、アルミナ製の多孔質セラミックス板から構成されている。そして、この内部にめっき液を含有させることで、つまり多孔質セラミックス板自体は絶縁体であるが、この内部にめっき液を複雑に入り込ませ、厚さ方向にかなり長い経路を辿らせることで、めっき液の電気伝導率より小さい電気伝導率を有するように構成されている。
【0036】
この多孔質体110は、中心部に比べ外周部の電気抵抗が高くなるように調整されている。この例では、図13(a)に示す多孔質体110の中心部Eおける気孔110bの割合の方が、図13(b)に示す多孔質体110の外周部Eにおける気孔110bの割合よりも高くなって、多孔質体110の中心部から外周部に向けて気孔率が連続的に徐々に低くなるような気孔率分布を有するように構成されている。
【0037】
このように多孔質体110をめっき液室100内に配置し、この多孔質体110によって大きな抵抗を発生させることで、図1(a)に示す、シード層(導電層)7等のシート抵抗の影響を無視できる程度となし、基板Wの表面のシート抵抗による電流密度の面内差を小さくして、めっき膜の面内均一性を向上させることができる。特に、中心部に比べ外周部の電気抵抗が大きくなるように調整した多孔質体110を使用することで、シート抵抗の高いシード層(導電層)の表面に、基板中心部にめっきが付き易い条件でのめっきを行うことができる。
【0038】
多孔質体110の外周面には、これを囲むようにバンド状の絶縁体112が巻き付けされている。この絶縁体112は、例えばふっ素ゴムのような伸縮性材料からなる。このように、多孔質体110の外周面に絶縁体112を巻き付けることで、基板Wの外周部近傍に電流が集中するのを防止することができる。
【0039】
めっき液室100内には、アノード98が配置されている。アノード98は、スライムの生成を抑制するため、一般に、含有量が0.03〜0.05%のリンを含む銅(含リン銅)で構成される。この例では、アノード98として、例えば、白金、チタン等の不溶解性金属あるいは金属上に白金等をめっきした不溶解性電極からなる不溶解アノードが使用されている。このように、アノード98として、不溶解アノードを用いることで、アノード98の溶解による形状変化を防止して、アノード98を交換することなく、常に一定の放電状態を維持することができる。
【0040】
ハウジング94の上面には、この内部にめっき液を導入するめっき液導入口104が設けられ、このめっき液導入口104にめっき液供給設備18(図2参照)から延びるめっき液供給管102が接続されている。更に、ハウジング94の上面に設けられためっき液排出口108にめっき液供給設備18から延びるめっき液排出管106が接続されている。
【0041】
前記シール材90の上面の電極ヘッド28のハウジング94の周囲を囲繞する位置には、めっき液を堰き止めて外部への流出を防止するリング状のめっき液堰120が取付けられている。そして、ハウジング94とめっき液堰120との間に位置して、めっき液注入部122が設けられている。このめっき液注入部122は、基板保持部36がめっき位置B(図4参照)にある時に、基板保持部36で保持した基板Wと多孔質体110の隙間が、例えば0.5〜3mm程度となるまで電極ヘッド28を下降させ、この状態で、ハウジング94の側方から、基板Wと多孔質体110との間のシール材90で囲まれた領域にめっき液を注入するためのもので、ハウジング94とめっき液堰120に挟まれた領域で下端のノズル部が開口するようになっている。この時、シール材90の上方に達するまでめっき液が注入され、このシール材90の上方に達するめっき液の外部への流出がめっき液堰120で堰き止められる。
【0042】
めっき液堰120の内方に位置して、シール材90の傾斜部上面には、リング状の補助カソード部124が取付けられている。この補助カソード部124は、基板保持部36で保持した基板Wの周縁部に対応する位置に位置し、前述のように、基板Wと多孔質体110との間のシール材90で囲まれた領域にめっき液を注入した時に、この注入されためっき液に浸漬されるようになっている。
【0043】
カソード接点88はめっき電源126の陰極に、アノード98はめっき電源126の陽極にそれぞれ電気的に接続され、補助カソード部124は補助電源128の陰極に、アノード98は補助電源128の陽極にそれぞれ電気的に接続される。
【0044】
電極ヘッド28は、揺動アーム26に吊下げ保持されており、揺動アーム26は、サーボモータからなる上下動モータ132とボールねじ134を有する駆動機構136を介して上下動するように構成されている。駆動機構136は、初期めっき後、基板保持部36で保持した基板Wと多孔質体110との間にめっき液を満たしたまま、電極ヘッド28を第1めっき位置から該第1めっき位置よりも基板Wと多孔質体110との距離が離れた第2めっき位置に移動させて停止させる。
【0045】
つまり、電解めっきを行うときには、基板ホルダ36がめっき位置B(図3参照)にある時に、図12に2点鎖線で示すように、基板ホルダ36で保持した基板Wと多孔質体110との距離Dが、例えば0.1〜3mm程度となる第1めっき位置まで電極ヘッド28を下降させ、この状態で、めっき液注入部122から基板Wと多孔質体110との隙間のシール材90で囲まれた領域にめっき液を注入する。この時、めっき液がシール材90の上方まで達して、補助カソード部124がめっき液に浸漬されるまでめっき液を注入し、シール材90の上方に達しためっき液をめっき液堰120で堰き止める。そして、めっき電源126を介して、カソード接点88とアノード98と間に所定の電圧を印加して初期めっきを行う。
【0046】
そして、所定時間めっきを行った後、めっき電源126を介して、カソード接点88とアノード98と間に所定の電圧を印加したまま、更に、補助電源128を介して、補助カソード部124とアノード98と間に所定の補助電圧を印加しながら、基板ホルダ36で保持した基板Wと多孔質体110との距離Dが、例えば3〜50mm程度となる第2めっき位置まで電極ヘッド28を上昇させて停止させ、これによって後期めっきを行う。
【0047】
ここで、多孔質体110として、その中心部と外周部との電気抵抗の差が大きいものを使用するほど、第2めっき位置における多孔質体110と基板Wの距離Dを広げることが望ましい。しかし、第2めっき位置における多孔質体110と基板Wの距離Dを必要以上に広げると電場が基板Wの外周部に集中し過ぎてしまい、基板Wの中心部が盛り下がっためっき膜の膜厚分布になる。このため、第2めっき位置における多孔質体110と基板Wの距離Dは、50mm以下であることが好ましい。
【0048】
また、補助カソード部124に流す電流は、基板の抵抗値や装置構成によって様々であるが、基本的には基板に流す電流よりも小さい。なお、多孔質体110と基板Wの距離を離し始めるタイミング、つまり電極ヘッド28を第1めっき位置から第2めっき位置に上昇させるタイミングは、多孔質体110の中心部と外周部の電気抵抗の違いや、例えば図1(a)に示す、シード層(導電膜)7のシート抵抗などの条件によって任意に決めることができる。例えば、電極ヘッド28を第1めっき位置に維持したまま、また補助電源128を印加することなくめっきを行って、例えばシード層7の表面に成膜されるめっき膜が均一になるまでのめっき時間をまず見極め、それ以降の時間において、多孔質体110と基板Wとの距離を離したり、補助電源を印加したりするようにして決めることができる。
【0049】
このように、電極ヘッド28を第1めっき位置から該第1めっき位置よりも基板Wと多孔質体110との距離が離れた第2めっき位置に移動させて停止させた状態で後期めっきを行うことで、基板Wの中心付近でのめっき膜の成長を適度に抑え、更に、補助カソード部124を併用することにより、基板Wの外周部に成膜されるめっき膜の膜厚をコントロールすることで、基板全面に均一な膜厚のめっき膜を成膜することができる。特に、基板の中心部に電場を集中させながら全面均一なめっき行えるため、よりターミナルエフェクト効果が強くなる450mmの大口径ウエハにも対応が可能となる。
【0050】
次に、前記のめっき装置を備えた基板処理装置の操作について説明する。
先ず、ロード・アンロード部10からめっき処理前の基板Wを搬送ロボット14で取出し、表面(被めっき面)を上向きにした状態で、フレームの側面に設けられた基板搬出入口から一方のめっき装置12の内部に搬送する。この時、基板ホルダ36は、下方の基板受渡し位置Aにあり、搬送ロボット14は、そのハンドが基板ステージ68の真上に到達した後に、ハンドを下降させることで、基板Wを支持腕70上に載置する。そして、搬送ロボット14のハンドを、前記基板搬出入口を通って退去させる。
【0051】
搬送ロボット14のハンドの退去が完了した後、飛散防止カップ40を上昇させ、同時に基板受渡し位置Aにあった基板ホルダ36を前処理・洗浄位置Cに上昇させる。この時、この上昇に伴って、支持腕70上に載置された基板は、位置決め板72と押付け片74で位置決めされ、チャック爪76で確実に把持される。
【0052】
一方、電極アーム部30の電極ヘッド28は、この時点ではめっき液トレー22上の通常位置にあって、多孔質体110あるいはアノード98がめっき液トレー22内に位置しており、この状態で飛散防止カップ40の上昇と同時に、めっき液トレー22及び電極ヘッド28にめっき液の供給を開始する。そして、基板のめっき工程に移るまで、新しいめっき液を供給し、併せてめっき液排出管106を通じた吸引を行って、多孔質体110に含まれるめっき液の交換と泡抜きを行う。なお、飛散防止カップ40の上昇が完了すると、フレーム側面の基板搬出入口は飛散防止カップ40で塞がれて閉じ、フレーム内外の雰囲気が遮断状態となる。
【0053】
飛散防止カップ40が上昇するとプレコート処理に移る。即ち、基板Wを受取った基板ホルダ36を回転させ、待避位置にあったプレコート・回収アーム32を基板と対峙する位置へ移動させる。そして、基板ホルダ36の回転速度が設定値に到達したところで、プレコート・回収アーム32の先端に設けられたプレコートノズル64から、例えば界面活性剤からなるプレコート液を基板の被めっき面に間欠的に吐出する。この時、基板ホルダ36が回転しているため、プレコート液は基板Wの被めっき面の全面に行き渡る。次に、プレコート・回収アーム32を待避位置へ戻し、基板ホルダ36の回転速度を増して、遠心力により基板Wの被めっき面のプレコート液を振り切って乾燥させる。
【0054】
プレコート完了後にめっき処理に移る。先ず、基板ホルダ36を、この回転を停止、若しくは回転速度をめっき時速度まで低下させた状態で、めっきを施すめっき位置Bまで上昇させる。すると、基板Wの周縁部は、カソード接点88に接触して通電可能な状態となり、同時に基板Wの周縁部上面にシール材90が圧接して、基板Wの周縁部が水密的にシールされる。
【0055】
一方、搬入された基板Wのプレコート処理が完了したという信号に基づいて、電極アーム部30をめっき液トレー22上方から電解処理を施す位置の上方に電極ヘッド28が位置するように水平方向に旋回させ、この位置に到達した後に、電極ヘッド28をカソード部38に向かって下降させ、多孔質体110が基板Wの被めっき面に接触することなく、多孔質体110と基板Wとの距離Dが0.1mm〜3mm程度に近接した第1めっき位置に達した時点で電極ヘッド28の下降を停止させる。
【0056】
この状態で、めっき液注入部122から基板Wと多孔質体110との隙間のシール材90で囲まれた領域に、めっき液がシール材90の上方まで達して、補助カソード部124がめっき液に浸漬されるまでめっき液を注入し、シール材90の上方に達しためっき液をめっき液堰120で堰き止める。そして、めっき電源126を介して、カソード接点88とアノード98と間に所定の電圧を印加して初期めっきを行う。
【0057】
そして、所定時間めっきを行った後、めっき電源126を介して、カソード接点88とアノード98と間に所定の電圧を印加したまま、更に、補助電源128を介して、補助カソード部124とアノード98と間に所定の補助電圧を印加しながら、基板ホルダ36で保持した基板Wと多孔質体110との距離Dが、例えば3〜50mm程度となる第2めっき位置まで電極ヘッド28を上昇させて停止させ、これによって後期めっきを行う。
【0058】
これにより、高いシート抵抗をもつ基板Wに対しても、シード層7等の導電膜の全面により均一な膜厚のめっき膜を形成して、めっき金属をコンタクトホール3やトレンチ4からなる微細凹部(図1参照)の内部にボイドを生じさせることなく確実に埋込むことができる。
【0059】
そして、めっき処理が完了すると、電極アーム部30を上昇させ旋回させて電極ヘッド28をめっき液トレー22上方へ戻し、通常位置へ下降させる。次に、プレコート・回収アーム32を待避位置から基板Wに対峙する位置へ移動させて下降させ、めっき液回収ノズル66から基板W上のめっき液の残液を回収する。この残液の回収が終了した後、プレコート・回収アーム32を待避位置へ戻し、基板のめっき面のリンスのために、純水用の固定ノズル34から基板Wの中央部に純水を吐出し、同時に基板ホルダ36をスピードを増して回転させて基板Wの表面のめっき液を純水に置換する。このように、基板Wのリンスを行うことで、基板ホルダ36をめっき位置Bから下降させる際に、めっき液が跳ねて、カソード部38のカソード接点88が汚染されることが防止される。
【0060】
リンス終了後に水洗工程に入る。即ち、基板ホルダ36をめっき位置Bから前処理・洗浄位置Cへ下降させ、純水用の固定ノズル34から純水を供給しつつ基板ホルダ36及びカソード部38を回転させて水洗を実施する。この時、カソード部38に直接供給した純水、または基板Wの面から飛散した純水によってシール材90及びカソード接点88も基板と同時に洗浄することができる。
【0061】
水洗完了後にドライ工程に入る。即ち、固定ノズル34からの純水の供給を停止し、更に基板ホルダ36及びカソード部38の回転スピードを増して、遠心力により基板表面の純水を振り切って乾燥させる。併せて、シール材90及びカソード接点88も乾燥される。ドライ工程が完了すると基板ホルダ36及びカソード部38の回転を停止させ、基板ホルダ36を基板受渡し位置Aまで下降させる。すると、チャック爪76による基板Wの把持が解かれ、基板Wは、支持腕70の上面に載置された状態となる。これと同時に、飛散防止カップ40も下降させる。
【0062】
以上でめっき処理及びそれに付帯する前処理や洗浄・乾燥工程の全ての工程を終了し、搬送ロボット14は、そのハンドを基板搬出入口から基板Wの下方に挿入し、そのまま上昇させることで、基板ホルダ36から処理後の基板Wを受取る。そして、搬送ロボット14は、この基板ホルダ36から受取った処理後の基板Wをロード・アンロード部10に戻す。
【0063】
なお、上記の例では、多孔質体110として、中心部おける気孔の割合の方が外周部における気孔の割合よりも高くなって、中心部から外周部に向けて気孔率が徐々に連続して低くなるような気孔率分布を有するように構成したものを使用しているが、図14に示すように、気孔率を段階的に変化させた複数の多孔質体140a〜140dを同心状に組合せて、中心部に比べ外周部の電気抵抗が高くなるように調整された多孔質体140を構成するようにしてもよい。
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されないことは勿論である。
【0064】
(実施例)
導電層として300Ω/sqのシート抵抗を持つルテニウムを有した300mm基板Wを用意し、前述のめっき装置を使用して、ルテニウム膜の表面に500nmの銅めっき膜を成長させた。
【0065】
先ず、比較例1として、基板ホルダ36で保持した基板Wと多孔質体110との距離D(図12参照)が0.5mmとなるまで電極ヘッド28を下降させ、この状態で、めっき液注入部122から基板Wと多孔質体110との隙間のシール材90で囲まれた領域にめっき液を注入し、アノード98と基板のルテニウム膜との間に6.8Aのめっき電流を流して、150秒間のめっきを行い、これによって、ルテニウム膜の表面に500nmの銅めっき膜を成長させた。この時の初期めっき膜Pと最終めっき膜Pにおける基板位置とめっき膜の膜厚との関係を図15に示す。この図15により、初期めっき膜Pとして平坦なめっき膜を形成したとしても、最終めっき膜Pは、基板の中央部で盛り上がった膜厚分布となることが判る。
【0066】
次に、比較例2として、基板ホルダ36で保持した基板Wと多孔質体110との距離D(図12参照)が0.5mmとなる第1めっき位置まで電極ヘッド28を下降させ、この状態で、めっき液注入部122から基板Wと多孔質体110との隙間のシール材90で囲まれた領域にめっき液を注入し、アノード98と基板のルテニウム膜との間に6.8Aのめっき電流を流して、14秒間の初期めっきを行った。しかる後、アノード98と基板のルテニウム膜との間に6.8Aの電流を流したまま、基板ホルダ36で保持した基板Wと多孔質体110との距離Dが30mmとなる第2めっき位置まで電極ヘッド28を上昇させて停止させ、これにより、合計150秒間のめっきを行って、ルテニウム膜の表面に500nmの銅めっき膜を成長させた。この時の最終めっき膜Pにおける基板位置とめっき膜の膜厚との関係を比較例1の最終めっき膜Pにおける基板位置とめっき膜の膜厚との関係とともに図16に示す。この図16により、初期めっき膜形成後、多孔質体110と基板Wの距離を30mmに広げてめっきを行うことにより、電場を分散させて基板中央部のめっき膜の膜厚を減少させることができることが判る。
【0067】
次に、本発明の実施例1について説明する。図18(a)は、実施例1におけるめっき時間とめっき電流及び補助電流のとの関係を示し、図18(b)は、めっき時間と多孔質体110と基板Wとの距離との関係を示す。図18に示すように、実施例1にあっては、基板ホルダ36で保持した基板Wと多孔質体110との距離D(図12参照)が0.5mmとなる第1めっき位置まで電極ヘッド28を下降させ、この状態で、めっき液注入部122から基板Wと多孔質体110との隙間のシール材90で囲まれた領域にめっき液を注入し、アノード98と基板のルテニウム膜との間に6.8Aのめっき電流を流して、14秒間の初期めっきを行った。しかる後、アノード98と基板のルテニウム膜との間に6.8Aのめっき電流を流したまま、更に、補助電源128を介して、補助カソード部124とアノード98と間に1.0Aの電流を流しながら、基板ホルダ36で保持した基板Wと多孔質体110との距離Dが30mmとなる第2めっき位置まで電極ヘッド28を上昇させて停止させ、これにより、合計150秒間のめっきを行って、ルテニウム膜の表面に500nmの銅めっき膜を成長させた。この時の最終めっき膜Pにおける基板位置とめっき膜の膜厚との関係を比較例2の最終めっき膜Pにおける基板位置とめっき膜の膜厚との関係とともに図17に示す。この図17により、初期めっき膜形成後、補助カソード部124とアノード98と間に1.0Aの電流(補助電流)を流しながら、多孔質体110と基板Wの距離を30mmに広げて更にめっき膜を成長させることにより、基板の外周部に集中した電場をコントロールして、基板全面に良好なめっきを行うことができることが判る。
【0068】
これまで本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】めっき処理によって銅配線を形成する例を工程順に示す図である。
【図2】本発明の実施の形態のめっき装置を備えた基板処理装置の全体を示す平面図である。
【図3】図2に示すめっき装置を示す平面図である。
【図4】図2に示すめっき装置の基板ホルダ及び電極部の拡大断面図(図3のA−A線断面図)である。
【図5】図2に示すめっき装置のプレコート・回収アームを示す正面図である。
【図6】図2に示すめっき装置の基板ホルダの平面図である。
【図7】図6のB−B線断面図である。
【図8】図6のC−C線断面図である。
【図9】図2に示すめっき装置の電極部の平面図である。
【図10】図9のD−D線断面図である。
【図11】図2に示すめっき装置の電極アーム部の平面図である。
【図12】図2に示すめっき装置の電極ヘッド、カソード部及び基板ホルダを概略的に示す電解ヘッドが第2めっき位置に位置する時の断面図である。
【図13】図13(a)は、多孔質体の中心部おける気孔分布を示し図で、図13(b)は多孔質体の外周部における気孔分布を示す図である。
【図14】アノードの他の例を示す断面図である。
【図15】比較例1の初期めっき膜と最終めっき膜における基板位置とめっき膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【図16】比較例2の最終めっき膜における基板位置とめっき膜の膜厚との関係を比較例1の最終めっき膜における基板位置とめっき膜の膜厚との関係とともに示すグラフである。
【図17】実施例1の最終めっき膜における基板位置とめっき膜の膜厚との関係を比較例2の最終めっき膜における基板位置とめっき膜の膜厚との関係とともに示すグラフである。
【図18】図18(a)は、実施例1におけるめっき時間とめっき電流及び補助電流のとの関係を示すグラフで、図18(b)は、めっき時間と多孔質体と基板との距離との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0070】
7 シード層(導電層)
10 ロード・アンロード部
12 めっき装置
20 基板処理部
22 めっき液トレー
26 揺動アーム
28 電極ヘッド
30 電極アーム部
36 基板ホルダ
38 カソード部
40 飛散防止カップ
68 基板ステージ
88 カソード接点
90 シール材
94 ハウジング
98 アノード
100 めっき液室
110,140 多孔質体
110b 気孔
120 めっき液堰
122 めっき液注入部
124 補助カソード部
126 めっき電源
136 駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部で保持した基板表面の周縁部に当接して該周縁部をシールするシール材と、
前記基板保持部で保持した基板の表面に形成した導電層に接触して通電させるカソード接点と、
ハウジングの内部にアノードを収納し該ハウジングの前記基板保持部で保持した基板と対向する開口端部に多孔質体を配置してめっき液室を区画形成した電極ヘッドと、
前記基板保持部で保持した基板と前記多孔質体との間にめっき液を満たしたまま、前記電極ヘッドを第1めっき位置から該第1めっき位置よりも基板と多孔質体との距離が離れた第2めっき位置に移動させて停止させる駆動機構と、
前記基板保持部で保持した基板の外周部に対向する位置に該基板と離間して配置され、前記基板保持部で保持した基板と前記多孔質体との間に満たしためっき液に浸漬される補助カソード部を有することを特徴とするめっき装置。
【請求項2】
前記多孔質体は、中心部と比べて外周部の電気抵抗が高くなるように調整してあることを特徴とする請求項1記載のめっき装置。
【請求項3】
前記カソード接点と前記補助カソード部にそれぞれ接続される電源を有することを特徴とする請求項1または2記載のめっき装置。
【請求項4】
カソード接点を接触させた基板表面の導電層と該導電層に対面する位置に配置させたアノードとの間にめっき液を満たし、
前記めっき液中の前記基板の中央部に対向する位置に多孔質体を、外周部に対向する位置に補助カソード部をそれぞれ基板と離間させて配置し、
前記アノードと前記カソード接点との間に電圧を印加して初期めっきを行い、
前記アノードと前記カソード接点との間及び前記アノードと前記補助カソードとの間に電圧を印加しながら前記多孔質体を前記基板から離れる位置に移動させ停止させて後期めっきを行うことを特徴とするめっき方法。
【請求項5】
前記基板の導電層は、少なくともCu、Ru、Ta、TaN、W、WNC、WC、Pt、ITO、Ti、TiWまたはTNのいずれかを有することを特徴とする請求項4記載のめっき方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−7153(P2010−7153A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170461(P2008−170461)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】