説明

ろ過膜破損検出システム

【課題】
ろ過装置の、どの膜ろ過モジュールでリークが発生したかを、遅滞なく決定・検出する。
【解決手段】
ろ過膜の破損によるリークによりろ過水中に漏洩する不純物質を、複数のろ過フィルタで捕捉する。ろ過フィルタは適切な透過粒径を持ち、光透過性を有するものを用いる。また、複数(Nヶ)のろ過フィルタは線上に配置され、一端から他端に光が透過伝搬する構造としてある。リークにより、不純物質がろ過フィルタに捕捉され始めると、この捕捉不純物質により光は遮光されるため、通過光は減少する。光を透過するフィルタがN個の場合、透過減衰量は、1個のフィルタの場合のN乗となり、大幅な感度向上となる。この通過光減少の時間的変化を観測することにより、ろ過膜破損によるリークを検出し、破損を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はろ過膜破損検出システムに係り、特に、河川などから取水した水を膜によりろ過してろ過水を得る膜式ろ過装置におけるろ過膜の破損を検知するものに好適なろ過膜破損検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ろ過膜により原水をろ過して不純物質含有率の低いろ過水を得る方法は、比較的簡単な構成の設備で清澄な水を得ることができる。ろ過膜をひとつのモジュールとして構成し、これを複数使って所定のろ過水量を得るシステム構成となる。しかし、ろ過膜の破損や損傷により原水がろ過水側にリークし、本来除去されるべき不純物質がろ過水中に混入する場合がある。ろ過膜の破損・損傷としては、例えば膜の切断,部分的な裂傷,孔食等があり、また、ろ過膜の支持機構等の接続部分での漏洩等もある。また、不純物質は、固形物,細菌,バクテリアやそれらの死骸等、原水中に懸濁ないし浮遊する微細な粒子である。膜のリークにより、透過水中にこれらの不純物質が混入するとろ過水質の低下となり、膜の破損を早期に発見して膜を交換あるいは補修することが必要になる。
【0003】
ろ過膜がリークなく完全なろ過機能を保持しているかの試験方法に関しては、膜分離技術振興会・膜浄水委員会監修、浄水膜編集委員会編集で、技報堂出版から発刊されている冊子「浄水膜」の第7章に詳しく述べられている。
【0004】
大別すると、1.ろ過水側にリークして来る不純物質を検出するもの(第1の方法)、2.ろ過水の濁度を監視するもの(第2の方法)、3.原水側またはろ過側に圧力を印加し保持圧力の時間変化、加圧気体の噴出を検出するもの(第3の方法)、となる。また、上記の方法と異なる第4の方法として、特開平8−252440号公報に記載の「膜破損検出方法及び装置」がある。その膜破損検出方法は、原水を膜によりろ過してろ過水を得る膜式ろ過装置から流出した透過水の一部ないし全量を、更に膜でろ過して膜を透過する2次透過水と膜を透過することなく流出する濃縮水とに分離し、この分離した濃縮水を試料として用い、該試料の単位体積当たりの混入微粒子数を微粒子計により計数し、計数した微粒子数に基づいて膜式ろ過装置の膜が破損したか否かを判定するものである。微粒子計は第1の方法と同様、光学的な手段を用いる。具体的なリークの判定は、計数した微粒子数の時間的変化が予定する時間的変動より急激である時、又は計数した微粒子数が設定値を越えた時のいずれかの時に、膜式ろ過装置の膜が破損したと判定する。
【0005】
【特許文献1】特開平8−252440号公報
【非特許文献1】「浄水膜」 技報堂出版
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した第1の方法は、光学的に粒子の存在を検出するものであり、光源,受光センサ,光学系の軸合わせ,調整が難しい。さらに、構成部品が高価のため装置の価格が相対的に高くなり、測定器の数を多くできない。このため、多数あるろ過膜モジュールに個別にセンサを設置することは難しく、リークが発生したモジュールの同定には、検出位置を変えて探索し、ろ過水の採取位置を切り替えて計測する必要があり、破損ろ過膜モジュールを決定し、補修するまでに多大の時間が必要である。第2の方法は、やはり光学的に粒子の散乱・透過を観測するものであり、第1の方法と同じ状況である。第3の方法は、ろ過流路に圧力を印加する必要があり、その検査の間ろ過が不可能となり、ろ過システムの作動効率が低下する問題となる。第4の方法は新たに追加したフィルタでリークによる微少物質を濃縮し、リーク検出の迅速性を図るものであるが、第1の方法と同じように光学的に物質の存在を検出する場合、装置が高価となる問題がある。また、濃縮用のフィルタの詰まりをその差圧で検出する方法もあるが、フィルタが詰まるまでの時間を必要とし、リーク検出の迅速性が損なわれる問題がある。
【0007】
本発明は上記した従来の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、ろ過水中の不純物質を感度良く検出できることは勿論、リークが発生したモジュールを同定して該当モジュールの動作停止や交換など、迅速な安全措置を可能とするろ過膜破損検出システムの提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のろ過膜破損検出システムは、上記目的を達成するために、原水をろ過膜によりろ過してろ過水を得る膜式ろ過装置を複数個備え、前記ろ過水に含まれる原水含有物質を検出してろ過膜の破損を検出するろ過膜破損検出システムにおいて、光透過特性を有し、かつろ過水中の含有物質を捕捉する複数のろ過フィルタと、該複数のろ過フィルタに光を透過させる発光素子及び複数のろ過フィルタを透過した透過光の光量を検出する受光素子で構成し、前記膜式ろ過装置の後段に接続されたろ過膜破損検出用センサと、該ろ過膜破損検出用センサで検出された複数のろ過フィルタを透過した透過光の光量に基づく検出信号の時間変化、および/又は検出信号の大きさ、および/又は他の膜式ろ過装置にあるろ過膜破損検出用センサの変化傾向の比較値が、あらかじめ設定した範囲にあるか否かを判定することにより、前記ろ過膜に破損があるか否かを判定する計算機とを備えていることを特徴とするか、或いは原水を送水するポンプと接続される複数の膜式ろ過モジュールと、該膜式ろ過モジュールの後段に接続され、光透過性を有し、かつろ過水中の含有物質を捕捉する複数のろ過フィルタと、該複数のろ過フィルタに光を透過させる発光素子及び複数のろ過フィルタを透過した透過光の光量を検出する受光素子から成るろ過膜破損検出用センサと、該ろ過膜破損検出用センサで検出された複数のろ過フィルタを透過した透過光の光量に基づく検出信号の時間変化、および/又は検出信号の大きさ、および/又は他の膜式ろ過装置にあるろ過膜破損検出用センサの変化傾向の比較値が、あらかじめ設定した範囲にあるか否かを判定することにより、前記ろ過膜に破損があるか否かを判定する計算機とを備えていることを特徴とする。
【0009】
即ち、本発明では、光透過型のろ過フィルタにろ過膜の破損によるリーク不純物質が捕捉され、ろ過フィルタを複数設けてそれらを光透過させることにより、捕捉物質によって透過光が減少するという極めて単純な原理により、リーク発生,ろ過膜破損の検出感度を大幅に向上させることができる。各センサを通信ネットワークで連結することにより、各ろ過モジュールの破損の有無を検知でき、これにより、破損ろ過膜モジュールを同定することが可能となる。また、各センサのセンシング間隔,センシングタイミングは、あらかじめ設定したり、必要に応じて変更したりする柔軟なセンシング動作が可能となる。
【0010】
本発明により、リークが発生したろ過モジュールを遅滞なく検知できるほか、必要に応じて破損ろ過モジュールへの原水供給停止など、水質確保に向けた対策を可能とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ろ過水中の不純物質を感度良く検出できることは勿論、リークが発生したモジュールを同定して該当モジュールの動作停止や交換など、迅速な安全措置を可能とするろ過膜破損検出システムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明では、原水側からろ過水側にろ過膜の損傷によりリークした不純物質を複数のフィルタでトラップし、この複数のフィルタを透過する光がトラップした不純物質で遮光されて検出光が減光する現象を用いる。つまり、ろ過された水をセンサで監視し、リークを検出する。
【0013】
このため、ろ過水をセンサに導入する機構,導入したろ過水をフィルタリングする機構,複数フィルタの光透過割合を求めるため複数フィルタを光が透過するように発光・受光器を配置し、受光器の受光レベルを検出する。これらのセンサは、各ろ過モジュールに設置しており、各センサの受光レベルデータは、通信装置で計算機に送信され一括管理される。各センサで検出した受光信号の時間的変化などと、各モジュールの検出値を比較することによりリークの発生したろ過モジュールを検知し、ろ過停止などの必要な対策をたてる。また、計算機側からセンサ側に対し、測定間隔・測定タイミングや、データ送信要求などの制御情報を送信する。
【実施例1】
【0014】
本発明を実施例によって詳細に説明する。図1は、本発明によるろ過膜破損検出システムの基本構成を示す図である。図1では、ろ過装置の構成は本発明の説明に必要な部分のみを示してある。
【0015】
図1において、1は原水タンク、2は原水を複数の膜式ろ過モジュール3−1,3−2,・・・3−Nに送水する送水ポンプである。膜式ろ過装置は、3−1,3−2,・・・3−Nまでの多数のろ過モジュールで構成されている。4−1,4−2,・・・4−Nは、膜式ろ過モジュール3−1,3−2,・・・3−Nのろ過水側などの配管5−1,5−2,・・・5−Nに設置されたろ過膜破損検出用センサである。6−1,6−2,・・・6−Nは、センサ4−1,4−2,・・・4−Nの検出データを通信装置8を介して計算機9に送信する通信モジュールである。
【0016】
また、通信モジュール6−1,6−2,・・・6−Nは、計算機9から通信装置8を通して、センサ4−1,4−2,・・・4−Nに計測パラメータなどを送信する。計算機9には、ろ過プラントの状態を示すプラントデータも入力される。7−1,7−2,・・・7−Nはバルブである。膜式ろ過モジュール3−1,3−2,・・・3−Nのろ過膜の破断・破損をろ過膜破損検出センサ4−1,4−2,・・・4−Nで検出した場合、その程度に応じて計算機9の制御信号、または、直接バルブ7−1,7−2,・・・7−Nを操作することにより送水を制御する。
【0017】
本発明で最も重要な部分は、ろ過膜破損検出用センサ4−1,4−2,・・・4−N、および通信モジュール6−1,6−2,・・・6−N,通信装置8,計算機9からなる検出装置全般の部分であるので、以下、両者の詳細を別個に説明する。
【0018】
まず、図2を用いて、ろ過膜破損検出用センサの構成を説明する。図2においては、各ろ過モジュールの出口配管であり、ろ過モジュールでろ過された水が流出する配管である。図2では、ろ過水は左から右に流れる。ろ過膜の破損がない場合ろ過は正常に行われ、ろ過水の中に不純物質の混入はない。しかし、ろ過膜の破損があると、原水の一部がろ過されずに直接ろ過水側にリークし、原水中の不純物質51の量が増大する。ろ過膜破損検出用センサ4では、流路を形成する筒状の導水路41を配管5の内部に設けてある。導水路41には、光を透過する不純物質の捕捉用フィルタ42を複数個(図2では4個)備える。捕捉用フィルタ42は、支持機構46により支持され、また、複数のフィルタとともに導水路41に固定される。支持機構46は、ろ過水を通さず、また、光を通さない不透明材質である。ろ過水は、図2の波線で示すように複数のフィルタを通過し、不純物質
51があれば各フィルタで捕捉する。複数の捕捉用フィルタ42をはさんで、対向させるように発光素子43と受光素子44を設置してある。発光素子43からの光は、光を透過する不純物質の捕捉用フィルタ42を複数個(図2では4個)通過し、受光素子44で検出される。捕捉用フィルタ42は圧力などで変形しないように、硬質フィルタの使用や光透過を大きく妨げない補強剤で挟むなどの処置を施してもよい。45は、発光素子43と受光素子44に電源を供給する電源回路である。図2において、通信モジュール6は受光素子44からの受光量の信号を例えば電波を使って通信装置8と通信する。
【0019】
電源回路45と通信モジュール6の詳細を図3に示す。電源回路45は、電池などの電源451と、電源の切り替え器452から構成される。通信モジュール6は、マイクロプロセッサ61と通信回路62で構成してある。マイクロプロセッサ61の制御により、切り替え器452は発光素子43,受光素子44に電源を供給する。また、マイクロプロセッサ61,通信回路62には常時電源451から電源が供給される。マイクロプロセッサ61は、アナログ−デジタル変換器(以下ADC)を備え、受光素子44からの検出電流信号を取り込み、通信回路62を使って外部の通信装置8との通信を行う。マイクロプロセッサ61の制御情報(データ採取間隔,電源制御情報)は、通信回路62を介して通信装置8から受信する。これらの動作の詳細は後で詳しく説明する。
【0020】
ここで、ろ過膜破損検出用センサ4のうち、ろ過水の配管5内部に設置した部分の計測内容について述べる。発光素子43を一定の光量で発光させると、原水のリークがない正常時では複数ヶの捕捉用フィルタ42の材質に応じてある程度減衰した光量が受光素子
44で検出される。ろ過膜が破損し、原水がろ過水側にリークすると、原水中の不純物質の一部は複数ヶの捕捉用フィルタ42全体に堆積し、発光素子43の光を遮光することになる。このため、リークにより受光素子44で検出される光量は減少し、逆に、受光素子44で検出される光量の減少からリークの発生、しいてはろ過膜の破損を検出できる。
【0021】
ここまで、ろ過膜破損検出用センサ4の内容を述べた。ろ過膜の破損によってフィルタ透過光の減衰が大きくなり、これによりろ過膜の破損を検出できることを示した。
【0022】
次に、検出信号をもとに、ろ過プラント全体を監視する部分について述べる。この監視ネットワークは、プラント全体の監視のため、ろ過膜破損検出用センサ4のデータ収集と共に、各センサの計測タイミングなどの制御も考慮した機能を有する。このため、先に図1で構成を説明した要素に関し、電源回路45,通信モジュール6の動作も含め詳しく説明する。
【0023】
図4は、計算機9の動作をフローチャートとしてまとめた図である。
【0024】
処理を開始すると、901で処理パラメータを設定する。これは、監視するろ過モジュール数や、そのモジュールとパラメータ,データの対応付けなど監視に必要な計算機9の設定を行うものである。また、後述のリーク発生の判断パラメータも含まれる。次に、
902で各ろ過モジュールのセンサに対し、その測定条件を設定する。センシングの間隔,センシング時間,1回のセンシングに対するデータ採取回数,データの通信条件、など監視に必要なろ過膜破損検出用センサ4のセンシングパラメータを通信装置8を通してろ過膜破損検出用センサ4に送る。901,902により、計算機9の監視に必要なパラメータ設定が終了し、903以降、監視のためのループ処理に移行する。まず、903でろ過プラントの運転状態を示すプラント信号を得る。プラント信号は、圧力,流量などの動作状況である。904でろ過膜破損検出用センサ4からの信号を受信しているかを判定する。ろ過膜破損検出用センサ4はNヶあり、そのいずれかからの信号を受信すれば905以降の処理に進むが、なければ903のプラント信号を入力し、プラント動作条件を常に更新する。904でセンサからの信号受信があると、受信データ(計測時刻,計測値)を該当するセンサ番号の記憶領域に記憶する(905)。計測値は、前述のようにフィルタを透過した光量であるので、その時間的な変化を計算する(906)。計測時刻,計測値のデータを既に獲得しているため、この計算は容易である。計測値である光量変化の時間変化率が、あらかじめ設定した範囲内にあるかを判定する(907)。設定範囲内であれば、光量変化が少ない、あるいは外乱によって変化したと判定するが、他のセンサの変化傾向と比較し(908)、変化差が設定範囲であれば、監視の最初に戻る。光量の時間的変化が設定値範囲を超え、他のセンサと変化の状況が異なる場合、リーク発生の可能性があり、光量変化の継続する時間が設定範囲であるかを判定する(909)。設定範囲からはずれると、そのろ過モジュールにリークが発生したと判定し、当該ろ過モジュールでリークが発生したことを警報などで表示する(910)。909の光量変化の継続する時間が設定範囲内であれば、当該ろ過モジュールにリークが発生している可能性があるものの、まだ、確定ではない状況と判断できる。このため、必要に応じて計測間隔をより短くするなど、当該モジュールのセンサパラメータを変更するかを判定し(912)、判定結果に応じてパラメータを送信する(913)。これら一連の動作によって、各モジュールの監視を実行し、リークが発生した場合、ただちに破損ろ過モジュールを決定する。
【0025】
尚、上記の計算機9の動作において、リーク発生の判定に計測された光量の大きさを使用してもよく、光量、および/又は光量の時間的変化、および/又は他のセンサの変化傾向との比較により、リーク発生の判定を行うようにしてもよい。
【0026】
図1などには表示していないが、この時、通信などによって当該ろ過モジュールのバルブ7を閉じ、ろ過動作の停止を行うことも可能である。監視時間の終了や、操作員の監視終了動作などでプログラムは終了する。このプログラム動作とは別個に、各センサやセンサ全体のデータの表示,トレンド表示のほか、プラントデータの表示なども行うが、通常の計算機処理であるのでその処理フローは割愛する。また、計算機9をろ過プラント内の通信ネットワークや、インターネットに接続し、プラント情報,ろ過膜破損情報を操作員が共有することもあるが、その技術は公知のネットワーク技術の範囲内である。
【0027】
図5は、各ろ過モジュールに設置した通信モジュール6のマイクロプロセッサ61の動作を示すフローチャートである。動作を開始すると、マイクロプロセッサ自体のパラメータ設定、例えば、使用メモリ領域,動作のための設定情報エリアなどの設定を行い(5101)、通信装置8から通信回路62を介して計算機9からのセンシング設定パラメータの受信を待つ(5102)。パラメータを受信,設定後(5103)、タイマーで計測時刻となるのを待ち(5104)、計測を開始する。フィルタの透過光の計測では、まず、計測を実施していない状況では電源を断としている、発光素子43,受光素子44に電源を供給し(5105)、ろ過膜破損検出用センサ4から受光素子の検出光量を求める(5106)。計測データは、光量値をADCでアナログ−デジタル変換したデータであり、データを採取後、発光素子,受光素子の電源供給を停止する(5107)。その後、計測した時刻と、計測データを通信回路62から通信装置8を介して計算機9に送信する(5108)。終了判定(5109)を待って、終了する。図4の912で述べたように、該当するセンサのパラメータを変更する場合もあり、これは割り込み動作として図5の(5110)でマイクロプロセッサ61のパラメータ変更を実行する。
【0028】
以上、本発明の第1の実施例について詳細に説明した。本実施例によれば、光透過型のフィルタでトラップされた不純物質による透過光の減光で、ろ過膜の破断・損傷により原水がろ過水側にリークしたことを迅速に検知しうる。また、各センサのデータを一括管理して膜ろ過プラントを監視できる。これより、不純物質のリークを介して、どのろ過膜モジュールの膜に損傷が発生したかを検知することができ、ろ過水の水質確保の観点、および、迅速なろ過膜モジュールの補修の観点から実用的な測定装置を提供できる。
【実施例2】
【0029】
本発明の第二の実施例は、第一の実施例におけるセンサモジュール4を各ろ過モジュールに複数使用することに特徴がある。図6に示すようにろ過水側配管5にセンサモジュールを4−(1)・・・4−(K)までのK個設置する。K個の各センサモジュールは、通信モジュール6に接続される。通信モジュール6の電源は、任意のセンサモジュールから供給する。通信モジュール6内のマイクロプロセッサ61には、各々のセンサモジュールに接続されるK個の電源の切り替え器452と受光素子44が結線される。マイクロプロセッサ61では、K個の電源の切り替え器452を順次切り替え、受光素子44からの光強度信号を得る。検出した光強度信号値を相互に比較し、光強度信号が他の強度信号と設定値以上異なるとき、そのセンサ出力値が異常と判定する。また、正常なセンサ出力値の積を算出するなどして、等価的に使用した複数センサの出力値をセンサ数乗した値とできる。この値は、通信回路62を介して送信されることは第一の実施例と同じである。また、マイクロプロセッサ61の処理内容も、複数センサ出力値の判定,積演算、および、電源の順次切り替えであり、処理内容は簡単であるのでフローチャートは省略する。本実施例では、ひとつのろ過モジュールに対し、複数のセンサを用いることにより、異常なセンサ出力値を排除し、検出の信頼性を向上させることが出来る。また、各センサの出力の積演算により、等価的に感度を高めるメリットがある。
【実施例3】
【0030】
本発明の第三の実施例は、第二の実施例と類似しており、一つのろ過モジュールに複数のセンサを設置する。第二の実施例と異なる点は、各発光素子に流す電流を制御して発光量を変化させる点にある。図7に、あるi番目のセンサモジュールの電源回路45−(i)を示した。電源451−(i)から通信モジュール6に電源を供給している例である。電源の切り替え器452の代わりに、電流制御器453を使用する。マイクロプロセッサ
61から電流の制御信号を与え、これにより発光量を制御する。発光量の制御法を、以下に説明する。一番目の発光素子の発光量を100%に設定する。一番目の発光素子の80〜100%の受光量に対応させて、二番目の発光素子の発光量を0〜100%に設定する。この段階で、もし一番目の発光素子(光量100%)から出た光が、トラップされた不純物質により1%減少したとすると、二番目の発光素子の変化量は一番目の5倍に設定されているから、二番目の発光素子の発光量は5%減少した95%になる。トラップされた不純物質によりさらに1%減少するため、二番目の受光素子の検出光量は0.95×(1−0.01)である約94%となり、6%の変化となる。このように、センサの受光量で次のセンサの発光量を制御することにより、トラップされた不純物質による検出光量の変化を大きくすることが可能となる。センサの個数を増やすと、この変化量は増大する。この結果、トラップ不純物質の総量に対して検出感度が増加する効果がある。
【0031】
以上説明した本発明の各実施例おける計測法は、ろ過膜の破断・損傷による原水側からろ過水側にリークした不純物質を、複数のろ過フィルタで捕捉し、その捕捉不純物質によって複数のろ過フィルタを通過する光の強度が低下することを利用する。さらに、そのセンサ検出情報を通信によって管理用の計算機に伝送し、データの一括管理を行う。
【0032】
フィルタを透過させる光の光源にはLED(Light Emitting Diode)、また、受光素子としてはPD(Photo Diode) が使用でき、いずれも極めて安価な素子である。また、フィルタも安価であり、これらの素子を各ろ過モジュールに設置しても経済的なデメリットは小さい。各センサでリークを検出すれば、そのセンサを設置したモジュールが破損したことが判明する。つまり、破損モジュールの同定が可能となる。
【0033】
各ろ過モジュールに設置したセンサの情報は、各モジュールにある通信モジュールを使って管理・計測用の計算機に伝送され、各ろ過モジュールの健全性を監視する。また、ろ過モジュールの破損の兆候が検出されると、センサの計測間隔の短縮による破損兆候の詳細確認、その他の検出パラメータの変更などろ過プラントの特性に応じたセンシング環境を構築できるメリットがある。
【0034】
本発明により、原水側からリークした不純物質を検知し、これによりセンサを設置したろ過モジュールのろ過膜の破断・損傷を遅滞なく検出でき、水質を大きく損ねることなく必要な対策を迅速に行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明では、原水側からろ過水側にろ過膜の損傷によりリークした不純物質を複数のフィルタでトラップし、このフィルタの透過光がトラップした不純物質で遮光されて検出光が減光する現象を用いる。つまり、ろ過された水をセンサで監視し、リークを検出する。これらのセンサは、各ろ過モジュールに設置しており、各センサの受光レベルデータは、通信装置で計算機に送信され一括管理される。各センサで検出した受光信号の時間的変化などからリークの発生したろ過モジュールを検知し、ろ過停止などの必要な対策をたてる。このため、ろ過水の水質確保の観点から産業上極めて有効であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明によるろ過膜破損検出システムの基本構成を示す図である。
【図2】本発明によるろ過膜破損検出用センサ4の構成を示す図である。
【図3】本発明による電源回路45と通信モジュール6の詳細構成を示す図である。
【図4】本発明による計算機9の動作をフローチャートとしてまとめた図である。
【図5】本発明によるマイクロプロセッサ61の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明による第2の実施例の構成を示す図である。
【図7】本発明による第3の実施例で電源回路45の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 原水タンク
2 送水ポンプ
3 膜式ろ過装置
3−i ろ過モジュール
4 ろ過膜破損検出用センサ
5 配管
6 通信モジュール
7 バルブ
8 通信装置
9 計算機
41 導水路
42 捕捉用フィルタ
43 発光素子
44 受光素子
45 電源回路
46 支持機構
51 不純物質
61 マイクロプロセッサ
62 通信回路
451 電源
452 切り替え器
453 電流制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水をろ過膜によりろ過してろ過水を得る膜式ろ過装置を複数個備え、前記ろ過水に含まれる原水含有物質を検出してろ過膜の破損を検出するろ過膜破損検出システムにおいて、
光透過特性を有し、かつろ過水中の含有物質を捕捉する複数のろ過フィルタと、該複数のろ過フィルタに光を透過させる発光素子及び複数のろ過フィルタを透過した透過光の光量を検出する受光素子で構成し、前記膜式ろ過装置の後段に接続されたろ過膜破損検出用センサと、該ろ過膜破損検出用センサで検出された複数のろ過フィルタを透過した透過光の光量に基づく検出信号の時間変化、および/又は検出信号の大きさ、および/又は他の膜式ろ過装置にあるろ過膜破損検出用センサの変化傾向の比較値が、あらかじめ設定した範囲にあるか否かを判定することにより、前記ろ過膜に破損があるか否かを判定する計算機とを備えていることを特徴とするろ過膜破損検出システム。
【請求項2】
請求項1に記載のろ過膜破損検出システムにおいて、
前記ろ過膜に破損があるか否かを判定する際、前記検出信号の時間変化の継続する時間が、あらかじめ設定した範囲からはずれた場合に、前記ろ過膜に破損があると判定することを特徴とするろ過膜破損検出システム。
【請求項3】
請求項1に記載のろ過膜破損検出システムにおいて、前記ろ過膜破損検出用センサに接続された通信モジュールをさらに備えていることを特徴とするろ過膜破損検出システム。
【請求項4】
請求項1に記載のろ過膜破損検出システムにおいて、
前記複数の膜式ろ過装置ごとに前記ろ過膜破損検出用センサを複数設置すると共に、該各ろ過膜破損検出用センサの出力値を相互に比較し、比較した出力値が予め設定した設定値以上異なる場合には、そのろ過膜破損検出用センサが異常であると判定することを特徴とするろ過膜破損検出システム。
【請求項5】
請求項1に記載のろ過膜破損検出システムにおいて、
前記複数の膜式ろ過装置ごとに前記ろ過膜破損検出用センサを複数設置すると共に、該各ろ過膜破損検出用センサごとの各出力値の積を算出することを特徴とするろ過膜破損検出システム。
【請求項6】
請求項1に記載のろ過膜破損検出システムにおいて、
前記複数の膜式ろ過装置ごとに前記ろ過膜破損検出用センサを複数設置すると共に、前段の該ろ過膜破損検出用センサの出力値により、次段のろ過膜破損検出用センサの発光量を制御することを特徴とするろ過膜破損検出システム。
【請求項7】
原水を送水するポンプと、該ポンプから送水された原水をろ過膜によりろ過してろ過水を得るろ過装置と、該ろ過装置の後段に接続されたろ過膜破損検出用センサとを備え、前記ろ過膜破損検出用センサは、光透過特性を有し、かつろ過水中の含有物質を捕捉する複数のろ過フィルタと、該複数のろ過フィルタに光を透過させる発光素子及び複数のろ過フィルタを透過した透過光の光量を検出する受光素子と、該発光素子と受光素子に電力を供給する電源部とで構成されていることを特徴とする膜式ろ過装置。
【請求項8】
原水を送水するポンプと接続される複数の膜式ろ過モジュールと、該膜式ろ過モジュールの後段に接続され、光透過性を有し、かつろ過水中の含有物質を捕捉する複数のろ過フィルタと、該複数のろ過フィルタに光を透過させる発光素子及び複数のろ過フィルタを透過した透過光の光量を検出する受光素子から成るろ過膜破損検出用センサと、該ろ過膜破損検出用センサで検出された複数のろ過フィルタを透過した透過光の光量に基づく検出信号の時間変化、および/又は検出信号の大きさ、および/又は他の膜式ろ過装置にあるろ過膜破損検出用センサの変化傾向の比較値が、あらかじめ設定した範囲にあるか否かを判定することにより、前記ろ過膜に破損があるか否かを判定する計算機とを備えていることを特徴とするろ過膜破損検出システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−253894(P2008−253894A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96992(P2007−96992)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】