説明

アイオノマー樹脂組成物、この組成物を用いたチューブ状成形品、及び熱収縮チューブ

【課題】難燃性を有しながらも、優れた薄肉成形性と高い剛性をあわせもつ高剛性難燃材料、この高剛性難燃材料を用いたチューブ状成形品、及びこのチューブ状成形品を用いて得られる熱収縮チューブを提供する。
【解決手段】エチレン系アイオノマー樹脂(A)を含有する樹脂a、臭素系難燃剤(B)を主成分とする難燃剤b、及び有機化クレー(C)を含有し、前記樹脂aの100重量部に対し、前記難燃剤bの含有量が10重量部以上、100重量部以下であり、有機化クレー(C)の含有量が2重量部以上、60重量部以下であることを特徴とするアイオノマー樹脂組成物、このアイオノマー樹脂組成物を用いた押出成形品、チューブ状成形品、及びこのチューブ状成形品を用いて得られる熱収縮チューブ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性を有しながらも薄肉成形性と高い剛性を合わせ持つ高剛性難燃材料である、新規なアイオノマー樹脂組成物に関する。さらに本発明は、このアイオノマー樹脂組成物を用いたチューブ状成形品、及びこのチューブ状成形品を用いてなる熱収縮チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器、OA機器、FPD、DVD、コンデンサー、二次電池等の民生用電子機器、電子機器部材や、車両、船舶等の分野に使用されている各種部品には難燃性を有するチューブ(難燃性チューブ)が広く要求されている。従来は、難燃性チューブとして、安価で加工性もよいPVCチューブが広く用いられていた。しかし、近年の環境対応のための脱PVCの流れから、PVCを使用しない難燃化材料(脱PVC難燃化材料)からなる難燃性チューブが求められている。
【0003】
脱PVC難燃化材料としては、ポリオレフィン系樹脂にハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤等を添加した材料が特許文献1(請求項1)等に記載されており、チューブとしての用途も開示されている。例えば、特許文献1では、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン系樹脂に臭素系難燃剤/三酸化アンチモンを添加した難燃化材料からなる難燃性ポリオレフィン系チューブが開示されている。
【0004】
電子機器部材や車両等の各種部品に使用される難燃性チューブには、もうひとつの流れとして、電子機器の省スペース化や車両の軽量化等の観点から、チューブ肉厚の薄肉化が要求されるようになりつつある。しかし、上記の難燃チューブ、例えば、EVAに臭素系難燃剤/三酸化アンチモンを添加したチューブでは、難燃性は得られても薄肉成形性(薄肉成形加工を可能にする性質)が悪く薄肉化は困難である。さらに、このチューブには、剛性が低く自立しての形状維持が不可能であるとの問題もある。
【0005】
薄肉化や自立しての形状維持の要請に応えるために、高剛性のチューブの開発は行われており、例えば特許文献2等で開示されている。しかし、特許文献2に開示されている高剛性のチューブは、難燃剤をまったく添加しておらず、チューブサイズによってはUL224で規定されるオールチュービング試験に合格はするものの、より難燃性が高いとされるVW−1試験での合格は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−138732号公報
【特許文献2】特開2007−204729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、難燃性を有しながらも、優れた薄肉成形性と高い剛性をあわせもつ高剛性難燃材料、この高剛性難燃材料を用いたチューブ状成形品、及びこのチューブ状成形品を用いて得られる熱収縮チューブを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の問題について鋭意検討した結果、エチレン系アイオノマー樹脂又はエチレン系アイオノマー樹脂を所定比率以上含む樹脂に、臭素系難燃剤を主体とする難燃剤、及び有機化クレーを分散させたアイオノマー樹脂組成物が、難燃性とともに、薄肉成形性(薄肉押出成形性)と高い剛性を達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明者は、請求項1として、エチレン系アイオノマー樹脂(A)を含有する樹脂a、臭素系難燃剤(B)を主成分とする難燃剤b、及び有機化クレー(C)を含有し、前記樹脂aの100重量部に対し、前記難燃剤bの含有量が10重量部以上、100重量部以下であり、有機化クレー(C)の含有量が2重量部以上、60重量部以下であることを特徴とするアイオノマー樹脂組成物を提供する。
【0010】
本発明に使用するエチレン系アイオノマー樹脂(A)とは、エチレン−メタクリル酸共重合体あるいはエチレン−アクリル酸共重合体等の分子内にカルボキシル基を有するエチレン共重合体の分子間を、亜鉛イオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン等の金属イオンで疑似架橋した樹脂を言い、例えば特許文献2に開示されている。樹脂aは、好ましくは、エチレン系アイオノマー樹脂(A)をその全量中の40重量%以上含有する。樹脂aは、全量がエチレン系アイオノマー樹脂(A)からなっていてもよい。
【0011】
臭素系難燃剤(B)とは、臭素を含有する難燃剤を言い、例えばエチレンビス(ペンタブロモフェニル)等が挙げられる。臭素系難燃剤(B)を主成分とするとは、臭素系難燃剤(B)を難燃剤bの全量中の50重量%以上を含むことを言う。難燃剤bは、全量が臭素系難燃剤(B)からなっていてもよい。
【0012】
有機化クレー(C)とは、モンモリロナイト等の層状珪酸塩(クレー)において、層状に積層した珪酸塩平面の層間に有機化合物が導入(インターカレーション)されたものである。
【0013】
難燃剤bの含有量は、エチレン系アイオノマー樹脂(A)を含む樹脂aの100重量部に対し、10重量部以上、100重量部以下である。添加量が10重量部未満では難燃性が得られず、100重量部より多ければ剛性向上効果が低下し、高い剛性を得るためには有機化クレー(C)の増量が必要となる。より好ましくは20重量部以上、70重量部以下である。
【0014】
又、有機化クレー(C)の含有量は、エチレン系アイオノマー樹脂(A)を含む樹脂aの100重量部に対し、2重量部以上、60重量部以下である。有機化クレー(C)の含有量が2重量部未満では、優れた薄肉成形性や高い剛性が得られない。一方、有機化クレー(C)の含有量が60重量部を超えると、加工性が低下する等生産性が悪くなる。より好ましくは、10重量部以上、50重量部以下である。
【0015】
樹脂a、難燃剤b、及び有機化クレー(C)を上記の範囲内の組成で含有することを特徴とする請求項1に記載のアイオノマー樹脂組成物は、難燃性を有しながらも、優れた薄肉成形性と高い剛性をあわせもつ高剛性難燃材料である。
【0016】
請求項3の発明は、樹脂aが、前記エチレン系アイオノマー樹脂(A)とアイオノマー以外の樹脂(D)からなり、(A)と(D)の重量比が、(A):(D)=100:0〜40:60の範囲内であることを特徴とする請求項2に記載のアイオノマー樹脂組成物である。
【0017】
本発明のアイオノマー樹脂組成物においては、樹脂aの全量をエチレン系アイオノマー樹脂(A)としてもよいし、又エチレン系アイオノマー樹脂(A)の一部を他の樹脂で置き換えてもよいが、この他の樹脂をアイオノマー以外の樹脂(D)とし、(A)と(D)の配合割合を、(A)/(D)=100:0〜40:60の範囲内とすれば、自立しての形状維持を可能とする剛性を保ちながら、薄肉成形性も悪化させずに、アイオノマー樹脂組成物を作製する際の溶融混練が容易となるため、好ましい。
【0018】
特に、難燃剤に三酸化アンチモンを配合する場合は、樹脂にアイオノマー以外の樹脂(D)を、(A)/(D)=95/5〜65/35(重量比)の範囲で配合することが好ましい。即ち、溶融混練により、三酸化アンチモンとアイオノマーのカルボン酸官能基が脱水反応してイオン結合が形成されることが知られているが、アイオノマー以外の樹脂を上記比率で添加することで容易にこの反応を抑制できる。なお、溶融混練の混合温度を低くしたり、熱履歴を短くすることによってもこの反応を抑制できる。
【0019】
請求項2の発明は、前記アイオノマー以外の樹脂(D)が、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、及びポリエステルから選ばれる樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のアイオノマー樹脂組成物である。
【0020】
エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリエステル等は、エチレン系アイオノマーとのブレンドが容易である。従って、前記アイオノマー以外の樹脂として好ましく選択される。
【0021】
請求項4の発明は、前記難燃剤bが、臭素系難燃剤(B)と三酸化アンチモン(E)からなり、(B)と(E)の重量比が(B):(E)=100:0〜50:50の範囲内であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のアイオノマー樹脂組成物である。
【0022】
前記難燃剤としては、その全量が臭素系難燃剤(B)であってもよいが、その一部を三酸化アンチモン(E)に置き換えることも可能である。前記のように、溶融混練により、三酸化アンチモンとアイオノマーのカルボン酸官能基が脱水反応してイオン結合が形成されることが知られており、従来技術では、アイオノマーへの三酸化アンチモンの使用は困難であった。しかし、本発明においては、有機化クレー(C)を含有している結果、この反応が抑制されアイオノマーへの三酸化アンチモンの配合が可能となった。
【0023】
又、アイオノマー以外の樹脂Dを配合する場合は、アイオノマー/三酸化アンチモンの配合が更に容易になり、生産性の面からより好ましくなる。なお、臭素系難燃剤(B)の一部を三酸化アンチモン(E)に置き換えた場合でも、(B)と(E)の合計は、樹脂aの100重量部に対し、10重量部以上、100重量部以下である。
【0024】
(B)と(E)の重量比は、(B):(E)=100:0〜50:50の範囲内が好ましい。(B)と(E)の重量比を前記範囲内とすることにより、難燃性を保ちながら、溶融混練時の難燃剤の分散性悪化を防ぐことができ、特性を両立できるので好ましい。より好ましくは(B):(E)=90:10〜60:40の範囲である。
【0025】
本発明のアイオノマー樹脂組成物は、難燃性を有しながら優れた押出成形性を有する。即ち、本発明のアイオノマー樹脂組成物を用いて押出成形品を作製する際に、本発明の効果が顕著に現れる。そこで、請求項5として、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のアイオノマー樹脂組成物を押出成形してなることを特徴とする押出成形品を提供する。この押出成形品としては、後述のチューブ状成形品以外にも、電線の被覆、フラットケーブル、異形押出成型品、ブロー成型品、フィルム等を挙げることができる。
【0026】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のアイオノマー樹脂組成物をチューブ状に押出成形してなることを特徴とするチューブ状成形品である。本発明のアイオノマー樹脂組成物は、優れた押出成形性を有するが、特に薄肉成形性に優れている。従って、押出成形にてチューブ状成形品を作成する際、本発明の効果が特に顕著になる。
【0027】
請求項7の発明は、請求項6に記載のチューブ状成形品を加熱条件下で径方向に膨張し(拡径)、その形状を冷却固定してなることを特徴とする熱収縮チューブである。
【0028】
前記本発明のチューブ状成形品を加熱条件下で径方向に膨張させることにより、熱収縮チューブを作製することができる。本発明のチューブ状成形品は、エチレン系アイオノマー樹脂がベース材料であるため、前記チューブ状成形品より作成された熱収縮チューブは低温での収縮が可能であり、熱履歴を好まない機器内等での使用に適している。
【0029】
請求項8の発明は、請求項6に記載のチューブ状成形品に電離放射線を照射して、前記アイオノマー樹脂組成物を架橋した後、加熱条件下で径方向に膨張し、その形状を冷却固定したことを特徴とする熱収縮チューブである。
【0030】
本発明のチューブ状成形品に電離放射線を照射した後に、加熱条件下で径方向に膨張(拡径)させて熱収縮チューブを作製することも可能である。この熱収縮チューブも、エチレン系アイオノマー樹脂がベース材料であるため、低温での収縮が可能であり、熱履歴を好まない機器内等での使用に適している。又、電離放射線による照射架橋を施すことにより、自動車のトランスミッション用のワイヤーハーネス等に使用される熱収縮チューブに求められる優れた耐摩耗性、耐熱性を満足することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明のアイオノマー樹脂組成物は、難燃性を有しながらも、優れた薄肉成形性と高い剛性をあわせもつ高剛性難燃材料である。本発明のチューブ状成形品は、この高剛性難燃材料を用いているので、難燃性と高い剛性をあわせもつものである。本発明の熱収縮チューブは、このチューブ状成形品を用いて得られるので、難燃性と高い剛性をあわせもつとともに、低温での収縮が可能であり、熱履歴を好まない機器内等での使用に適している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に本発明を実施するための形態を説明する。なお、本発明の範囲はこの形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々の変更が可能である。
【0033】
本発明のアイオノマー樹脂組成物は、上記の樹脂a、有機化クレー(C)及び難燃剤bを混合して得られるもののみでなく、分子内にカルボキシル基を有するエチレン共重合体と金属塩、有機化クレー(C)及び難燃剤b(及び必要により(D)等の他の成分)を混合して得られる樹脂組成物も含まれる。カルボキシル基を有するエチレン共重合体と金属塩とを混合すると、カルボキシル基は金属イオンによって中和されてカルボン酸イオンとなり、金属イオンとの塩を形成する。複数のカルボン酸イオンが金属イオンと会合することでエチレン共重合体同士が疑似架橋し、アイオノマー樹脂となる。
【0034】
本発明に使用するエチレン系アイオノマー樹脂としては、サーリン、ハイミラン等の商品名で市販されているものを使用することができる。
【0035】
分子内にカルボキシル基を有するエチレン共重合体としては、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基を有するアクリル系モノマーとエチレンとの共重合体、無水マレイン酸等の酸無水物モノマーとエチレンとの共重合体が例示される。これらの共重合体の製造は共重合法、グラフト重合法等の既知の方法で行うことができ、各種の特性を向上させる目的で、更に他のモノマーを適宜共重合させることも可能である。
【0036】
前記分子内にカルボキシル基を有するエチレン共重合体において、カルボキシル基含量の好ましい範囲は0.5〜50mol%、より好ましくは1〜30mol%である。0.5mol%未満では樹脂組成物の剛性や押出加工性が低下する場合があり、50mol%を超えると耐電解液性が低下する場合がある。
【0037】
アイオノマー樹脂組成物中のカルボン酸の一部又は全部は、金属塩又は有機化クレー中の金属イオンによって中和される。アイオノマー樹脂組成物中のカルボキシル基の55%以上が中和されていると、剛性が高くなり好ましい。なおカルボキシル基の中和度は、アイオノマー樹脂組成物中のカルボキシル基の総量に対するイオン化したカルボキシル基(カルボン酸イオン)量の割合であり、特許文献2等に記載のように、赤外吸収スペクトル(IR)測定で求めることができる。
【0038】
臭素系難燃剤(B)としては、エチレンビス−テトラブロモフタルイミド(アルベマール社製、商品名SAYTEXBT−93)、あるいはアルベマール社製の商品名SAYTEX402、SAYTEX8010などを挙げることができる。臭素系難燃剤(B)としては、臭素含有量が多いほうが難燃性の付与に効果がある。臭素系難燃剤(B)は、使用するエチレン系アイオノマー樹脂やアイオノマー以外の樹脂との混ざり性を考慮して、適宜選定し添加すればよいが、環境規制に定められていないものを選定することが好ましい。
【0039】
本発明で使用する有機化クレー(C)とは、モンモリロナイト等の層状珪酸塩(クレー)において、珪酸塩平面の層間に有機化合物が導入(インターカレーション)されたものである。層状珪酸塩では、層状に積層した珪酸塩平面の間に、ナトリウムイオンやカルシウムイオンのような中間層カチオンが存在して層状の結晶構造を保っているが、この中間層カチオンを有機カチオンとイオン交換することで、有機化合物が珪酸塩平面の表面に化学的に結合した有機化クレー(C)が得られる。
【0040】
有機化クレー(C)は、層間に有機化合物がインターカレーションすることにより珪酸塩平面間の層間距離が大きくなり、有機物への分散性が向上する。又未処理のクレーでは、有機溶剤中で層間距離が変化することはないが、有機化クレー(C)は有機溶剤中で層間距離がさらに広がり膨潤する性質を持つため、更に分散性が向上する。このような有機化クレー(C)としては、Nanofil、エスベン等の商品名で市販されているものを使用することができる。
【0041】
有機化クレー(C)の原料となる層状珪酸塩は、一般的には粘土、クレーとして知られているものであり、モンモリロナイト、バイデライト、へクトライト、サポナイト、スチブンサイト、ソーコナイト、ノントロナイト等のスメクタイト系粘土のほか、バーミキュライト、ハロイサイト、膨潤性マイカ等、天然及び合成粘土及びこれらの混合物が挙げられる。
【0042】
有機化クレー(C)の生成に用いられる有機化合物、即ち層間にインターカレーションされる有機化合物としては、第4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、及びそれらの混合物からなる有機カチオンが挙げられる。さらに詳しくは第4級アンモニウム塩としては、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、ベンジルジメチルステアリルアンモニウム、ジメチルジステアリルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム、ベンサルコニウム等のベンジルトリアルキルアンモニウムイオンやトリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウムイオン、さらにジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジドデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム等のジメチルジアルキルアンモニウムイオン、さらにトリオクチルメチルアンモニウム、トリドデシルメチルアンモニウム等のトリアルキルメチルアンモニウムイオン、ベンゼン環を2個有するベンゼトニウムイオンが挙げられる。
【0043】
有機化クレー(C)のより具体的な製造方法としては、層状珪酸塩を水中で十分に剥離、分散させ、その後、水又はアルコールに溶解した有機カチオンを、層状珪酸塩のカチオン交換容量に対して0.5〜2.0倍量添加し、層状珪酸塩の珪酸塩平面に吸着しているナトリウムイオンと有機カチオンイオンをイオン交換する方法を挙げることができる。
【0044】
アイオノマー以外の樹脂(D)としては、ポリエチレン、ポリプロピレンや、エチレンの2元系、3元系の共重合体、又それらポリマーのグラフト系樹脂、スチレン系樹脂、又それらポリマーのグラフト系樹脂、脂環式ポリマー、熱可塑性エラストマー、植物由来樹脂、生分解性樹脂、エンジニアリングプラスチックやポリエステル、ポリアミド等が挙げられる。
【0045】
アイオノマー以外の樹脂(D)としては、エチレン部位を有する樹脂や高い極性を有する樹脂が好ましく、エチレン系コポリマー、グリシジル基含有3元系、無水マレイン酸含有3元系、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、無水マレイン酸グラフトEVA、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリブチレンサクシネート、低融点ポリブチレン−テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、非晶性ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン等を挙げることができる。
【0046】
より好ましくは、EVA、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリエステル類である。これらの樹脂をブレンドすることで、アイオノマーの溶融混練が容易になり、難燃剤として添加する三酸化アンチモンとアイオノマー樹脂の反応による溶融混練時の高トルク化、発泡等を抑制することができる。
【0047】
本発明で使用する三酸化アンチモンは一般的な市販品を使用することができる。
【0048】
本発明のアイオノマー樹脂組成物には、本発明の趣旨を損ねない範囲で他の成分、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレートやトリアリルイソシアヌレート等の多官能性モノマーや、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、滑剤、着色剤等の各種添加剤を混合することができる。
【0049】
本発明のアイオノマー樹脂組成物は、上記の材料を、溶融混練して製造することができる。溶融混練では、オープンロール、加圧ニーダー、単軸混合機、2軸混合機等の既知の混合装置を用いて混合することができ、使用するエチレン系アイオノマー樹脂の融点以上の温度で溶融混合することが好ましい。
【0050】
本発明の熱収縮チューブを作製する際に行われる拡径は、公知の熱収縮チューブの製造で通常行われている方法、例えば、チューブ内部を加圧してふくらませる方法、チューブを、減圧ゾーンを設けたラインに通す方法で行うことができる。拡径の程度としては、元の内径の1.5〜4倍程度が好ましい。本発明のチューブはエチレン系アイオノマーであるため、拡径時の加熱温度としては60℃以上100℃以下が望ましい。ただし、電離放射線でチューブ状成形品が照射され樹脂の架橋が行われた場合は、チューブの耐熱性が向上しているので、140℃以上、200℃以下が望ましい。
【0051】
電離放射線源としては、加速電子線やガンマ線、X線、α線、紫外線等が例示できるが、線源利用の簡便さや電離放射線の透過厚み、架橋処理の速度等工業的利用の観点から加速電子線が最も好ましい。
【0052】
加速電子線の加速電圧は、成形品の肉厚や形状によって適宜設定すればよい。例えば厚み100μmサイズの成形品であれば、加速電圧は200〜10,000kVの間で選定される。照射線量としては30〜500kGyで充分な架橋度が得られる。
【実施例】
【0053】
次に発明を実施例により説明する。実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0054】
先ず、下記の実施例、比較例で行った、樹脂ペレットの作製、チューブ状成形品の作製、薄肉成形性の評価、熱収縮チューブの作製、熱収縮チューブの評価について説明する。
【0055】
(樹脂ペレットの作製)
表1〜5に示す配合処方で、エチレンアイオノマー樹脂(A)、臭素系難燃剤(B)、有機化クレー(C)、アイオノマー以外の樹脂(D)、三酸化アンチモン(E)、及び酸化防止剤等の材料を、二軸混合機(26mmΦ、L/D=48.5)を使用し、バレル温度160〜180℃、スクリュー回転数200rpmで溶融混合した後、ストランドカットペレダイザでペレット化し、アイオノマー樹脂組成物のペレットを作製した。
【0056】
(チューブ状成形品の作製)
上記樹脂ペレットの作製で得られたアイオノマー樹脂組成物を、単軸溶融押出機(45mmΦ、L/D=24)を用いてチューブ状に押出成形し、内径10mmΦ、肉厚160μmのチューブ状成形品(表1〜5中では、160μmと表す。)及び内径10mmΦ、肉厚80μmのチューブ状成形品(表1〜5中では、80μmと表す。)を得た。押出にはDDR(Draw Down Ratio)引落率が1〜15のチュービングダイを用い、押出線速は40m/分とした。なお、DDR引落率は以下の式により計算する。
【0057】
DDR引落率=(D−D)/(d−d
(D:ダイス外径、D:ポイント外径、d:被覆外径、d:被覆内径)
【0058】
(薄肉成形性の評価)
上記肉厚80μmのチューブ状成形品の作製の際に、薄肉成形性を評価した。薄肉成形性は、80μmのチューブを連続して成形できるものを良好、外径変動やチューブ切れ、外観荒れが発生したものを不良と判定した。各実施例、比較例での評価結果は、表1〜5中の「成形性」の行に示す。
【0059】
(熱収縮チューブの作製)
上記チューブ状成形品の作製により得られたチューブ状成型品を加熱下で拡径後、冷却固定して熱収縮チューブを得た。拡径処理は、上記チューブ状成型品をベースポリマーの軟化点以上の温度に加熱した状態で、チューブ内に圧縮空気を導入する方法により、所定の外径に膨張した後、冷却して形状を固定することにより行った。
【0060】
なお、実施例1〜10及び比較例1〜5では、チューブ状成型品に電離放射線の照射を行わずに加熱して拡径を行った。実施例11〜15及び比較例6〜10では、チューブ状成型品に加速電圧2.0MeVの電子線200kGyを照射した後に加熱下で拡径した。実施例、比較例における拡径は、元の内径の2.5倍程度とした。又、実施例1〜10及び比較例1〜5では、拡径時の加熱温度は70℃とした。実施例11〜15及び比較例6〜10では、電子線で処理されており耐熱性が向上しているため、拡径時の加熱温度は140℃以上200℃以下とした。
【0061】
(熱収縮チューブの評価:収縮温度)
上記熱収縮チューブの作製で得られた熱収縮チューブを、50℃のギヤオーブン中に3分間放置してチューブ内径を測定する。その後10℃ずつ温度を上昇させて3分間放置し、内径(A)を測定し、以下に示す式により収縮率(%)を求めた。収縮率が80%以上になる温度を収縮温度とした。各実施例、比較例での結果は、表1〜5中の「収縮温度」の行に示す。
【0062】
収縮率(%)=100×(1−(A−B)/(C−B))
A:加熱後の内径(mm)
B:押出チューブの内径(mm)
C:膨張後の押出チューブの内径(mm)
【0063】
(熱収縮チューブの評価:剛性試験)
上記熱収縮チューブの作製で得られた熱収縮チューブを100mmの長さに切断し、チューブが水平になるように片端を支持した状態にした。この時、剛性が低いチューブでは、支持していない他端の口が閉じたり、チューブが水平を保てず垂れ下がる場合があるが、この場合を不合格と判定した。このような形状とならず、チューブが口開きした状態で自立している(水平を保っている)場合を合格と判定した。各実施例、比較例での評価結果は、表1〜5中の「剛性試験」の行に示す。
【0064】
(熱収縮チューブの評価:弾性率)
熱収縮チューブを10cm長さに切断し、引張速度=100mm/分、標線間距離=20mmで引張試験を行い、応力−伸び曲線から弾性率(MPa)を求めた。各実施例、比較例での評価結果は、表1〜5中の「弾性率」の行に示す。
【0065】
(熱収縮チューブの評価:難燃試験)
UL規格224に記載のVW−1垂直燃焼試験を5点の試料について行った。試験は、各試料に15秒着火を5回繰り返した場合に、60秒以内に消火し、下部に敷いた脱脂綿が燃焼落下物によって類焼せず、試料の上部に取り付けたクラフト紙が燃えたり、焦げたりしないものを合格レベルとし、5点全てが合格レベルに達したものを「合格」とした。5点中、1点でも合格レベルに達しなかった場合は「不合格」とした。各実施例、比較例での評価結果は、表1〜5中の「難燃試験」の行に示す。
【0066】
次に、下記の実施例、比較例で使用した材料を以下に示す。
1. エチレンアイオノマー樹脂(A): 商品名ハイミラン1706(三井デュポンポリケミカル社製、MFR=0.9)(表中では「アイオノマー」と示す。)
2. アイオノマー以外の樹脂(D):
・酢酸ビニル含量46重量%、MFR=2.5のエチレン−酢酸ビニル共重合体(表中では「EVA1」と示す。)
・酢酸ビニル含量15重量%、MFR=1.5のエチレン−酢酸ビニル共重合体(表中では「EVA2」と示す。)
・エチルアクリレート含量23重量%、MFR=0.5のエチレンエチルアクリレートコポリマー(表中では「EEA」と示す。)
・MFR=0.6のLLDPE(表中では「LLDPE」と示す。)
3. 臭素系難燃剤(B):
エチレンビス(ペンタブロモフェニル)(融点350℃、臭素含有量82%)(商品名:Saytex8010)
4. 有機化クレー(C):
ROCK WOOD社製、商品名:Nanofil 15(層間有機処理剤としてジメチルジステアリルアンモニウム塩を用いたもの)
5. 三酸化アンチモン(E):平均粒径1μm品
6. 酸化防止剤:ヒンダードアミン系安定剤(商品名:ナウガード445、クロンプトン社製)
【0067】
[実施例1〜3]
エチレン系アイオノマー樹脂(A)、臭素系難燃剤(B)、有機化クレー(C)、及び酸化防止剤を、表1に示す処方で配合し、上記の「樹脂ペレットの作製」の方法(バレル温度180℃)に従って樹脂ペレットを作製し、その後、「チューブ状成形品の作製」の方法に従って肉厚80μmと160μmのチューブ状成型品を作製した。又、「薄肉成形性の評価」に従って成形性を評価した。更に、得られたチューブ状成型品を用い「熱収縮チューブの作製」の電離放射線の照射を行わない場合の方法に従って熱収縮チューブを作製し、その収縮性、剛性、弾性率、難燃性に関して上記「熱収縮チューブの評価」の方法で評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0068】
表1に示す結果より、実施例1〜3は、成形性、収縮温度(110℃未満であれば、良好と解釈できる。)、剛性試験、弾性率(300MPa以上であれば、良好と解釈できる。)、難燃試験の全ての評価に良好な結果を示すことが確認された。
【0069】
[実施例4]
三酸化アンチモン(E)を添加し、樹脂ペレット作製時のバレル温度を160℃とした事以外は、実施例1と同様にして、チューブ状成型品、熱収縮チューブの作製、評価を実施した。その結果を表1に示す。表1に示す結果より、実施例4は、成形性、収縮温度、剛性試験、弾性率、難燃試験の全ての評価に良好な結果を示すことが確認された。
【0070】
[実施例5〜10]
実施例5〜6、8〜10では、アイオノマー以外の樹脂(D)を、表1又は表2に示す種類、処方で添加した以外は、実施例4と同様にして、チューブ状成型品、熱収縮チューブの作製、評価を実施した。又、実施例7では、アイオノマー以外の樹脂(D)を、表2に示す処方で添加し、更に臭素系難燃剤(B)及び三酸化アンチモン(E)の添加量を変えた以外は、実施例4と同様にして、チューブ状成型品、熱収縮チューブにての評価を実施した。それらの結果を表1又は表2に示す。表1又は表2に示す結果より、実施例5〜10は、成形性、収縮温度、剛性試験、弾性率、難燃試験の全ての評価に良好な結果を示すことが確認された。
【0071】
なお、アイオノマー以外の樹脂(D)の比率が増加すると弾性率の低下が見られるが(実施例4〜6間の比較)、いずれも剛性試験に合格しており自立する剛性は有している。又、実施例5〜10の間では、アイオノマー以外の樹脂(D)の種類や比率を変えているが、評価結果に特に大幅な差異は見られておらず、エチレン系アイオノマー樹脂と溶融混練でブレンドできる樹脂であれば特に問題は見られないと考えられる。
【0072】
[比較例1]
臭素系難燃剤(B)を添加しないこと以外は実施例2と同様にして、チューブ状成型品、熱収縮チューブの作製、評価を実施した。その結果を表3に示す。比較例1では、難燃剤が添加されていないため、難燃試験に合格しなかった。
【0073】
[比較例2]
有機化クレー(C)を添加しないこと以外は実施例1と同様にして、チューブ状成型品、熱収縮チューブの作製、評価を実施した。その結果を表3に示す。比較例2では、有機化クレー(C)が添加されていないため、難燃試験に合格するものの、薄肉加工性が悪化し、肉厚80μmのチューブを安定して作成することができなかった。又、肉厚160μmのチューブでも弾性率が低い結果となった。
【0074】
[比較例3]
有機化クレー(C)を添加しないこと以外は実施例4と同様にして、チューブ状成型品、熱収縮チューブの作製、評価を実施した。その結果を表3に示す。比較例3では、有機化クレー(C)が添加されていないため、難燃試験に合格するものの、薄肉加工性が悪化し、肉厚80μmのチューブを安定して作成することができなかった。又、肉厚160μmのチューブでも弾性率が低い結果となった。
【0075】
[比較例4]
エチレン系アイオノマー樹脂(A)/アイオノマー以外の樹脂(D)の比率(重量比)を30/70としたこと以外は、実施例5と同様にして、チューブ状成型品、熱収縮チューブの作製、評価を実施した。その結果を表3に示す。比較例4では、エチレン系アイオノマーの比率が低いため、肉厚80μmのチューブを作成できるものの、肉厚が安定せず、加工性が低かった。又、弾性率が大幅に低下しており自立剛性も得られなくなっていた。
【0076】
[比較例5]
エチレン系アイオノマー樹脂(A)を用いずに、かわりにアイオノマー以外の樹脂(D)であるEVA1を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、チューブ状成型品、熱収縮チューブの作製、評価を実施した。その結果を表3に示す。比較例5では、エチレン系アイオノマー樹脂(A)を用いなかったため、押出成形性、剛性が低い結果となった。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【0080】
[実施例11]
エチレン系アイオノマー樹脂(A)、臭素系難燃剤(B)、有機化クレー(C)、及び酸化防止剤を、表4に示す処方で配合し、上記の「樹脂ペレットの作製」の方法(バレル温度180℃)に従って樹脂ペレットを作製し、その後「チューブ状成形品の作製」の方法に従って肉厚80μmと160μmのチューブ状成型品を作製した。又、「薄肉成形性の評価」に従って成形性を評価した。更に、得られたチューブ状成型品に、加速電圧2.0MeVの電離放射線を200kGy照射し「熱収縮チューブの作製」の方法に従って熱収縮チューブを作製し、その収縮性、剛性、弾性率、難燃性に関して上記「熱収縮チューブの評価」の方法で評価を行なった。その結果を表4に示す。表4に示す結果より、実施例11は、成形性、収縮温度、剛性試験、弾性率、難燃試験の全ての評価に良好な結果を示すことが確認された。
【0081】
[実施例12]
三酸化アンチモン(E)を添加し、樹脂ペレット作製時のバレル温度を160℃とした事以外は、実施例11と同様にして、チューブ状成型品、熱収縮チューブの作製、評価を実施した。その結果を表4に示す。表4に示す結果より、実施例12は、成形性、収縮温度、剛性試験、弾性率、難燃試験の全ての評価に良好な結果を示すことが確認された。
【0082】
[実施例13〜15]
実施例13〜15では、アイオノマー以外の樹脂(D)を、表4に示す種類、処方で添加した以外は、実施例12と同様にして、チューブ状成型品、熱収縮チューブの作製、評価を実施した。それらの結果を表4に示す。表4に示す結果より、実施例13〜15は、成形性、収縮温度、剛性試験、弾性率、難燃試験の全ての評価に良好な結果を示すことが確認された。
【0083】
なお、実施例13〜15の間では、アイオノマー以外の樹脂(D)の種類や比率を変えているが、評価結果に、特に大幅な差異は見られておらず、エチレン系アイオノマー樹脂と溶融混練でブレンドできる樹脂であれば特に問題は見られないと考えられる。
【0084】
[比較例6]
臭素系難燃剤(B)を添加せず、有機化クレー(C)の添加量を60重量部とした以外は実施例11と同様にして、チューブ状成型品、熱収縮チューブの作製、評価を実施した。その結果を表5に示す。比較例6では、難燃剤が添加されていないため、難燃試験に合格しなかった。
【0085】
[比較例7]
有機化クレー(C)を添加せず、臭素系難燃剤(B)の添加量を30重量部とした以外は実施例11と同様にして、チューブ状成型品、熱収縮チューブの作製、評価を実施した。その結果を表5に示す。比較例7では、有機化クレー(C)が添加されていないため、難燃試験に合格するものの、薄肉加工性が悪化し、肉厚80μmのチューブを安定して作成することができなかった。又、肉厚160μmのチューブでも弾性率が低い結果となった。
【0086】
[比較例8]
有機化クレー(C)を添加しないこと以外は実施例12と同様にして、チューブ状成型品、熱収縮チューブの作製、評価を実施した。その結果を表5に示す。比較例8では、有機化クレー(C)が添加されていないため、難燃試験に合格するものの、薄肉加工性が悪化し、肉厚80μmのチューブを安定して作成することができなかった。又、肉厚160μmのチューブでも弾性率が低い結果となった。
【0087】
[比較例9]
エチレン系アイオノマー樹脂(A)/アイオノマー以外の樹脂(D)の比率(重量比)を30/70としたこと以外は、実施例13と同様にして、チューブ状成型品、熱収縮チューブの作製、評価を実施した。その結果を表5に示す。比較例9では、エチレン系アイオノマーの比率が低いため、肉厚80μmのチューブを作成できるものの、肉厚が安定せず、成形性が低かった。又、弾性率が大幅に低下しており自立剛性も得られなくなっていた。
【0088】
[比較例10]
エチレン系アイオノマー樹脂(A)を用いずに、かわりにアイオノマー以外の樹脂(D)であるEVA1を用いたこと以外は、実施例12と同様にして、チューブ状成型品、熱収縮チューブの作製、評価を実施した。その結果を表5に示す。比較例10では、エチレン系アイオノマー樹脂(A)を用いなかったため、押出成形性、剛性が低い結果となった。
【0089】
【表4】

【0090】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン系アイオノマー樹脂(A)を含有する樹脂a、臭素系難燃剤(B)を主成分とする難燃剤b、及び有機化クレー(C)を含有し、前記樹脂aの100重量部に対し、前記難燃剤bの含有量が10重量部以上、100重量部以下であり、有機化クレー(C)の含有量が2重量部以上、60重量部以下であることを特徴とするアイオノマー樹脂組成物。
【請求項2】
前記アイオノマー以外の樹脂(D)が、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、及びポリエステルから選ばれる樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のアイオノマー樹脂組成物。
【請求項3】
エチレン系アイオノマー樹脂(A)を含有する樹脂aが、前記エチレン系アイオノマー樹脂(A)とアイオノマー以外の樹脂(D)からなり、(A)と(D)の重量比が、(A):(D)=100:0〜40:60の範囲内であることを特徴とする請求項2に記載のアイオノマー樹脂組成物。
【請求項4】
臭素系難燃剤(B)を主成分とする難燃剤bが、臭素系難燃剤(B)と三酸化アンチモン(E)からなり、(B)と(E)の重量比が、(B):(E)=100:0〜50:50の範囲内であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のアイオノマー樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のアイオノマー樹脂組成物を押出成形してなることを特徴とする押出成形品。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のアイオノマー樹脂組成物をチューブ状に押出成形してなることを特徴とするチューブ状成形品。
【請求項7】
請求項6に記載のチューブ状成形品を加熱条件下で径方向に膨張し、その形状を冷却固定してなることを特徴とする熱収縮チューブ。
【請求項8】
請求項6に記載のチューブ状成形品に電離放射線を照射して、前記アイオノマー樹脂組成物を架橋した後、加熱条件下で径方向に膨張し、その形状を冷却固定したことを特徴とする熱収縮チューブ。

【公開番号】特開2010−185056(P2010−185056A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31824(P2009−31824)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(599109906)住友電工ファインポリマー株式会社 (203)
【Fターム(参考)】