説明

アイスドームの構築方法

【課題】 天候に左右されることなく、寒冷地の厳冬期の寒さを大勢のひとが一斉に共有しながら各種のイベントを楽しむことが出来る構築物を提供する。
【解決手段】
天井がドーム型をなす構築物の壁および天井の骨格をパイプ材11を用いて作り、この骨格の上に透水性のある布地14を展張して固定し、この布地に対して水Wを散水し、布地の裏面まで水を浸透させて、布地の表裏の水を外気温をもって氷結させる(請求項1)。大型のドームを構築する場合は、構築物を、構造強度に優れたジオデシックドームとすることがある(請求項2)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパイプ材を用いたドーム型のイベント会場に係り、特にイベント会場の外観および内装が、外見上、氷によって構築されているかの如くにみえるアイスドームの構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
北海道のような寒冷地では、厳冬期の寒さを楽しむための各種のイベントの試みがなされる。とくに、温暖な国や地域からの観光客は厳冬期の寒さを経験することを望む人が多い。
【0003】
このため、ホテル等においては、雪でかまくらを作って情緒を味わってもらったり、厳冬期に野外コンサートを開催する等、さまざまの体験型プランを実施している。
【特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
問題は、寒冷地の厳冬期に、大勢の人々が同時に寒さを共有しながら楽しめるイベント会場を作ることが困難だった点にある。
【0005】
雪で作ったかまくらは、楽しいけれども小さいため、大勢の人が一緒になって音楽を聴いたり、飲食をしたり、踊ったりすることは困難である。また、厳冬期の野外コンサートは、寒さを全員で共有して楽しむ点ではよいが、吹雪の時のように悪天候の時には開催が困難であるため、スケジュールを立てにくい難点があり、イベント主催者やプロモータとしては営業の大きな支障となっていた。
【0006】
そこで、本発明は、天候に左右されることなく、寒冷地の厳冬期の寒さを大勢の人が一斉に共有しながら各種のイベントを楽しむことが出来る構築物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成して、課題を解決するため、本発明に係るアイスドームの構築方法は、天井がドーム型をなす構築物の壁および天井の骨格をパイプ材を用いて作り、この骨格の上に透水性のある布地を展張して固定し、この布地に対して水を散水し、布地の裏面まで水を浸透させて、外気温をもって(寒冷地の厳冬期の外気温を利用して)布地の表裏の水を氷結させる。
【0008】
本発明に係るアイスドームは、布地に水を浸透させ、表裏の水を氷結させるため、氷の内側にあるパイプ材や布地は外部からは見えない。利用者(観客)は、会場全体が外側も内側も氷で作られているかにみえる厳冬期ならではの特殊空間の雰囲気を味わいながら、イベントを楽しむことが出来る。
【0009】
大型のドームを構築する場合は、構築物を、構造強度に優れたジオデシックドームとすることがある(請求項2)。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るアイスドームの構築方法によれば、天候に左右されることなく、寒冷地の厳冬期の寒さを大勢の人が一斉に共有しながら各種のイベントを楽しむ構築物を安価に作ることが出来る。
【0011】
組み立てたパイプ材に布地を展張して天井がドーム型のイベント会場を構築し、布地に水を散水することは作業上の困難性もないため、工期も短く、建設費用も安価に抑えることが出来る。北海道のような寒冷地では、厳冬期には夜間は必ず氷点下の外気温になるので、散水すれば短時間で水は氷結する。氷結した水は融解速度が遅いため、昼間に例外的な摂氏プラスの気温になっても、そのままの状態を保つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1、図2は、本発明に係るアイスドームの構築方法の一実施形態を示すものである。このアイスドームは、パイプ材11を使って多数の正三角形を組み合わせたジオデシックドームを用いる。ジオデシックドームは、例えば、20面体を用いて全体形状が略半球形となる構造を作り、ここに多数の正三角形のトラス構造を組み合わせてドーム骨子を作った上で、組み上げたパイプ材11の上に布地14を展張するものである。17、18は人や荷物等が出入りするためのゲート用開口である。
【0013】
パイプ材11は、例えば、鉄またはアルミニウム等の金属または耐寒性のある樹脂を用いた円筒形または角柱形のものを使用する。パイプ材11同士の連結は、例えば、図3に示すように、パイプ材11の端部に設けた平板状のフランジ12にボルト孔16を設けて、フランジ12同士を重ね合わせ、ボルト孔16にボルト(図示せず)を挿通させてナットを介して締め固定する。
【0014】
通常の場合、構築物の大きさと形状設計図によって決まっているから、湾曲部分に所定の曲率と長さのパイプ材11を用いて結合連結していけば、構築物の骨子を短時間で組み上げることが出来る。
【0015】
パイプ材11の上から展張する布地14は、透水性と可撓性がある肉薄のシートであればよい。例えば、麻布や木綿のような天然繊維を使ったシートでも良いし、生地全体に均等な親水性をもたせた樹脂製のシートでも良い。
【0016】
布地14を展張するに際しては、例えば、多数の正三角形を用いたジオデシック構造の特徴を利用して、正三角形に成形した布地14を用意して、各布地14の少なくとも三頂点をパイプ材11に係止する。
【0017】
次に、図4に示すように、布地14の上から水Wを散水する。表面積の大きな大型ドームに水Wを散水するため、散水ポンプ15を利用することが望ましい。また、散水ポンプ15に接続させたホースHの先端部には、シャワー散水ノズル19を設けて、布地14の全体に均一に水Wを散水できるようにすることが望ましい。
【0018】
水Wの散水は、外気温が摂氏マイナス0℃以下の時に行い、布地14に付着した水Wを即時氷結させることが望ましい。ドームの表面積は広いので、布地14に水Wをかけながら散水ポイントを移動させてゆけば、布地14に付着した水Wは長い時間をかけずに次々と氷結してゆく。図5に、布地14の表面に形成される氷を符号Cで示す。
【0019】
布地14に散水した水Wが氷結した後にも、繰り返し水Wを散水すれば、布地14の表面側の氷Cの厚みが増してゆく。布地14の裏面にも氷の層ができるが、裏面の氷の層は水Wの散水によっても厚みは成長しない。布地14の裏面に形成された氷の層が、水Wの侵入を防ぐからである。
【0020】
水Wを繰り返して散水することにより、ドームの基端部まわりには厚い氷Cの層ができる。ただし、ゲート用開口17、18のまわりには、水Wを散水しないし、布地14がないため、氷Cは存在しない。
【0021】
かかる方法によれば、パイプ材11を用いてジオデシック構造のドームを作り、布地14を張った上から水Wを散水するだけで良いから、少ない建築コストで、大型のアイスドームを作ることができる。工期も短く、撤収も容易である。ジオデシック構造のドームは全体がトラス構造であるから、氷Cの重量にも十分に耐え、安全性も保証できる。
【0022】
本願発明に係るアイスドームは、以上の実施形態のものに限定されない。例えば、本発明に係るアイスドームは、ジオデシックドームに限らず、例えば図6に示すような非ジオデシック構造のものであってもよい。
【0023】
ドームの上に展張する布地14は、三角形のものに限らない。作業効率を高めるため、大きな面積をもったものを使用してもよい。例えば、半球形を呈するドーム骨子の領域を、天頂部、中間部、基底部の三つにグループ分けし、それぞれの対応箇所に合わせて成形した布地14を張ってゆく等である。ドームの規模が大きくなる場合は、布地14の数と形状を調整して、例えば4分割、5分割、6分割のように、布地14の大きさを調整してもよい。
【0024】
布地14をパイプ材11に固定するに際しては、ジオデシック構造のドームの場合は、例えば三頂点をボルト締めする等によって行えるが、これに限らず、例えば、両者に係止リングと係着フックを設け、それらの係合によって止め固定してもよい。布地14の表裏は氷に覆われるため、布地14を軽く係止させるだけでも、風によって布地14が吹き飛ばされる等の事態は生じない。
【0025】
構築物の骨子を作るパイプ材11同士の連結は、フランジに設けたボルト孔を利用する旨説明したが、フランジを設けなくてもパイプ材11同士の連結は可能である。例えば、パイプ材11の交点を被覆するジョイントを用いて、このジョイントとパイプ材11とにボルト等の係止金具を挿通させれば良いからである。
【0026】
アイスドームの内壁(布地14の裏面側)に、ドーム内部から映像を投影すれば、全天周型の幻想的な映像表現を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態に係るジオデシック構造のドーム骨格を例示する図である。
【図2】図1のドーム骨子に布地を展張する段階を例示する図である。
【図3】実施形態に係るパイプ材の連結構造を例示する図である。
【図4】図2の布地に水を散水する段階を例示する図である。
【図5】図4の布地表面に氷が張った段階を例示する図である。
【図6】実施形態に係る他のドーム骨子を例示する図である。
【符号の説明】
【0028】
11 パイプ材
12 フランジ
14 布地
15 散水ポンプ
16 ボルト孔
17、18 ゲート用開口
19 シャワー散水ノズル
C 氷
H ホース
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井がドーム型をなす構築物の壁および天井の骨格をパイプ材を用いて作り、
この骨格の上に透水性のある布地を展張して固定し、
この布地に対して水を散水し、
布地の裏面まで水を浸透させて、布地の表裏の水を外気温をもって氷結させることを特徴とするアイスドームの構築方法。
【請求項2】
天井がドーム型をなす構築物はジオデシックドームであることを特徴とする請求項1記載のアイスドームの構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−31486(P2010−31486A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−192732(P2008−192732)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(508226344)株式会社プリズム (1)
【Fターム(参考)】