説明

アイドリングストップ支援装置

【課題】商用車において車線逸脱警報装置(LDWS)等で普及が見込まれる車載カメラを利用して、信号機による信号待ちが一定時間以上継続すると予測されるときにアイドリングストップを自動的に開始することができるアイドリングストップ支援装置を提供する。
【解決手段】信号機の灯火の遷移からその信号機による信号待ちが一定時間以上継続すると予測されるときにアイドリングストップを開始するアイドリングストップ支援装置であって、車載カメラで撮影した前方画像に基づいて、信号機が赤灯に遷移してからその赤灯により自車が停車するまでの経過時間を計測し、その経過時間が閾値未満のとき、信号待ちが一定時間以上継続すると予測し、アイドリングストップを開始するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号待ちによる停車時に、必要に応じてアイドリングストップを自動的に開始するアイドリングストップ支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の燃費向上のために様々な技術が活用されているが、有効な手段の一つとして無用なアイドリングを行わないアイドリングストップが挙げられる。アイドリングストップを支援する装置としては、停車を検知してエンジンを停止させるものがある。
【0003】
ところが、アイドリングストップを行う時間が短いと、エンジンを停止させることで節約できる燃料の量よりもエンジンの再始動にかかる燃料の量の方が多くなってしまい、節約どころか燃料消費量を増加させてしまうことになる。
【0004】
そのため、アイドリングストップが求められる状況としては、例えば、信号待ちによる停車時が考えられるが、まもなく青灯に遷移する信号機による信号待ちで短時間だけ停車した場合には、燃料消費量を効果的に節約することができない。
【0005】
特許文献1では、より高機能化した装置として、信号機から灯火情報を送信させ、これを車両側で受信してアイドリングストップを自動的に制御する装置が提案されている。
【0006】
この装置によれば、信号待ちによる停車時に、信号機から送信された灯火情報に基づいて信号機が青灯に遷移する直前にエンジンの再始動を行い、運転者が信号機の青灯を確認してから直ちに車両を発進させることが可能となり、発進遅れによる運転性の悪化を防止することができる。また、自車が停車してから信号機が青灯に遷移するまでの残り時間が少ない場合には、燃料消費量の節約が望めないため、アイドリングストップを行わないようにすることも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−4909号公報
【特許文献2】特開2007−58777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、インフラ整備が進まないことや、商用車の多くがカーナビゲーションシステムを装着しないため、結果的に信号機との情報の送受信に利用する光ビーコンを車載しないといった実情もあり、前述したような装置の普及が困難という問題があった。
【0009】
また、一部、自律センサのみで運転者に情報を提供する提案もあるが(特許文献2参照)、情報提供のみでは運転者がその都度アイドリングストップを行うか否かの判断をすることになり、利便性に欠けるところがある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、商用車において車線逸脱警報装置(LDWS)等で普及が見込まれる車載カメラを利用して、信号機による信号待ちが一定時間以上継続すると予測されるときにアイドリングストップを自動的に開始することができるアイドリングストップ支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために創案された本発明は、信号機の灯火の遷移からその信号機による信号待ちが一定時間以上継続すると予測されるときにアイドリングストップを開始するアイドリングストップ支援装置であって、車載カメラで撮影した前方画像に基づいて、信号機が赤灯に遷移してからその赤灯により自車が停車するまでの経過時間を計測し、その経過時間が閾値未満のとき、信号待ちが一定時間以上継続すると予測し、アイドリングストップを開始することを特徴とするアイドリングストップ支援装置である。
【0012】
また、本発明は、信号機の灯火の遷移からその信号機による信号待ちが一定時間以上継続すると判断されるときにアイドリングストップを開始するアイドリングストップ支援装置であって、車載カメラで撮影した前方画像に基づいて、信号機が赤灯に遷移してから青灯に遷移するまでの赤灯の灯火時間を計測しておくと共に信号機が赤灯に遷移してからその赤灯により自車が停車するまでの経過時間を計測し、その灯火時間と経過時間の差が閾値以上のとき、信号待ちが一定時間以上継続すると判断し、アイドリングストップを開始することを特徴とするアイドリングストップ支援装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、商用車において広く普及している車載カメラを利用して、信号機による信号待ちが一定時間以上継続すると予測されるときにアイドリングストップを自動的に開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るアイドリングストップ支援装置における信号の入出力関係の一例を示す図である。
【図2】本発明に係るアイドリングストップ支援装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態を説明する。
【0016】
本実施の形態に係るアイドリングストップ支援装置は、商用車において車線逸脱警報装置(LDWS)等で普及が見込まれる車載カメラを利用して、新たなデバイスを追加することなく、信号機の灯火の遷移からその信号機による信号待ちが一定時間以上継続すると予測又は判断されるときにアイドリングストップを開始するものである。
【0017】
このアイドリングストップ支援装置は、1つの信号機で信号待ちを1回だけする場合(通常時)と1つの信号機で信号待ちを複数回する場合(渋滞時など)とでその振る舞いが異なる。
【0018】
1つの信号機で信号待ちを1回だけする場合には、アイドリングストップ支援装置は、車載カメラで撮影した前方画像に基づいて、信号機が赤灯に遷移してからその赤灯により自車が停車するまでの経過時間を計測し、その経過時間が閾値未満のとき、信号待ちが一定時間以上継続すると予測し、アイドリングストップを開始する。
【0019】
一方、1つの信号機で信号待ちを複数回する場合には、アイドリングストップ支援装置は、車載カメラで撮影した前方画像に基づいて、信号機が赤灯に遷移してから青灯に遷移するまでの赤灯の灯火時間を計測しておくと共に信号機が赤灯に遷移してからその赤灯により自車が停車するまでの経過時間を計測し、その灯火時間と経過時間の差が閾値以上のとき、信号待ちが一定時間以上継続すると判断し、アイドリングストップを開始する。
【0020】
以下、本発明のアイドリングストップ支援装置の構成の一例を図1を用いて説明する。
【0021】
図1に示すように、アイドリングストップ支援装置10は、自律センサ11〜15からの情報を処理する車両情報処理部16と、車載カメラ17で撮影した前方画像に基づいて、信号機が赤灯に遷移してから青灯に遷移するまでの赤灯の灯火時間を計測し、また信号機が赤灯に遷移してからその赤灯により自車が停車するまでの経過時間を計測する画像処理部18とを有する判断部19を備える。
【0022】
システム構成としては、自律センサ11〜15及びデバイスは、被害軽減ブレーキ装置、車線逸脱警報装置、車間距離警報装置といった安全装置と共有化され、新たに判断部19が追加された構成となっている。
【0023】
自律センサ11〜15は、車速センサ11、操舵角センサ12、ヨーレートセンサ13、加速度センサ14、車間距離センサ15からなる。これら各種センサは、一般に車載されているものであり、本発明によって新たに付加する構成ではない。
【0024】
アイドリングストップを開始するときは、判断部19がECU20にアイドリングストップの制御を実行させ、ECU20によって車両21が制御される。
【0025】
このアイドリングストップ支援装置10の動作の一例を図2を用いて説明する。
【0026】
先ず、画像処理部18が車載カメラ17で撮影した前方画像を取得すると共に(S1)、車両情報処理部16が各種車両信号を取得する(S2)。
【0027】
次いで、取得した各種車両信号から自律航法による自車位置推定を行い(S3)、取得した前方画像から信号機の灯火部に相当する特徴点を抽出し、カメラ移動量を推定するなどして、車両挙動による映像のブレと灯火の遷移とを精度良く判別し、青灯から黄灯、或いは黄灯から赤灯といった灯火部の遷移状態を認識し、灯火色ごとに灯火時間を算出する(S4,S5,S6)。
【0028】
その後、自車位置推定、車載カメラ17から判断できる自車方位、及び車間距離センサ15の情報から、灯火時間を算出した信号機が自車の進行方向にあるものか否かを判断する(S7)。
【0029】
このとき、灯火時間を算出した信号機が自車の進行方向にない場合はリセットする(S8)。一方、灯火時間を算出した信号機が自車の進行方向にある場合には、信号機が赤灯に遷移してからの経過時間を測定する(S9)。
【0030】
そして、車速センサ11や車間距離センサ15の情報から自車が停車して信号待ちに入ったと判断されるまで、S7,S9の処理を繰り返し(S10)、車両が停止して信号待ちに入ったと判断されたら、アイドリングストップを開始するか否かの判断を行う(S11)。
【0031】
このとき、前述した条件を満たしているならば、アイドリングストップを開始し(S12)、条件を満たしていないならば、そのまま処理を終了する。このとき、条件を満たしていない場合には、モニタや警告ランプなどを介してアイドリングストップの開始を運転者に判断させるようにしても良い。
【0032】
以上のようにして本発明によれば、商用車において車線逸脱警報装置(LDWS)等で普及が見込まれる車載カメラを利用して、信号機による信号待ちが一定時間以上継続すると予測されるときにアイドリングストップを自動的に開始することができる。つまり、インフラ設備に依存することなく、車載デバイスのみで信号待ちにおけるアイドリングストップの効果を向上させると共に運転者の利便性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0033】
10 アイドリングストップ支援装置
11 車速センサ
12 操舵角センサ
13 ヨーレートセンサ
14 加速度センサ
15 車間距離センサ
16 車両情報処理部
17 車載カメラ
18 画像処理部
19 判断部
20 ECU
21 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号機の灯火の遷移からその信号機による信号待ちが一定時間以上継続すると予測されるときにアイドリングストップを開始するアイドリングストップ支援装置であって、
車載カメラで撮影した前方画像に基づいて、信号機が赤灯に遷移してからその赤灯により自車が停車するまでの経過時間を計測し、その経過時間が閾値未満のとき、信号待ちが一定時間以上継続すると予測し、アイドリングストップを開始することを特徴とするアイドリングストップ支援装置。
【請求項2】
信号機の灯火の遷移からその信号機による信号待ちが一定時間以上継続すると判断されるときにアイドリングストップを開始するアイドリングストップ支援装置であって、
車載カメラで撮影した前方画像に基づいて、信号機が赤灯に遷移してから青灯に遷移するまでの赤灯の灯火時間を計測しておくと共に信号機が赤灯に遷移してからその赤灯により自車が停車するまでの経過時間を計測し、その灯火時間と経過時間の差が閾値以上のとき、信号待ちが一定時間以上継続すると判断し、アイドリングストップを開始することを特徴とするアイドリングストップ支援装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−246828(P2012−246828A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119003(P2011−119003)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】