説明

アキュムレータを使用した省エネ多圧回路

【課題】エネルギの無駄使いを防止して、省エネを図る。
【解決手段】アキュムレータは、前記アクチュエータ1A、1Bの負荷が低負荷である時に作動液を該液圧回路5の第1の回路部6Aに吐き出す第1のアキュムレータ9Lと、前記アクチュエータ1A、1Bの負荷が前記低負荷より大きい高負荷である時に作動液を該液圧回路の第2の回路部6Bに吐き出す第2のアキュムレータ9Hと、を備えており、前記第1及び第2の回路部には、前記アクチュエータとの連通を遮断する下流側開閉手段2a、2b、12a、12bが配設され、前記第1の回路部6Aには、前記ポンプ7との連通を遮断する上流側開閉手段13が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械等に用いられる液圧回路に関するものであり、アキュムレータに作動液を蓄えた後にポンプを停止し、前記アキュムレータから該工作機械等の駆動に必要な油等の作動液を供給する、所謂ポンプ停止形の液圧回路に関するものである。更に述べると、設定圧力の異なる複数のアキュムレータを配設し、前記工作機械等の異なる負荷に対応させて作動液を供給できる、アキュムレータを使用した省エネ多圧回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータ、例えば、工作機械のクランプ用油圧シリンダは、電磁切換弁を介して油圧回路等の液圧回路に接続されている。前記液圧回路には、作動液を供給するポンプと蓄圧用のアキュムレータが配置されている。
【0003】
前記液圧回路では、該回路中の液圧は、シリンダがストローク後に必要な推力を得ることのできる圧力αを有している必要があるため、アキュムレータには、更に高い圧力βが蓄積される必要がある。従って、前記液圧回路の液圧は、圧力α〜圧力βの間で変動することになる。
【0004】
一般的な工作機械等においては、シリンダが、無負荷、又は、低負荷(以下、単に、「低負荷」という)でストロークした後に、被削物の保持、又は、待機のために推力が必要になることが殆どである。液圧回路中のエネルギは、液圧P×流量Q、で表されることが知られている。即ち、無負荷状態のシリンダを同じ速度でストロークさせるためには、圧力の低い作動液を供給すれば足りるので、該アキュムレータから圧力の高い作動液を供給することは、エネルギーの無駄使い(ロス)となる。
【0005】
そこで、前記問題を解決するため、次のような液圧回路が開発されている。(例えば、特許文献1、参照)。ポンプを駆動させて作動液をアキュムレータに蓄圧させた後に前記ポンプを停止させ、該アキュムレータからアクチュエータの駆動に必要な作動液を供給する液圧回路であって、前記アキュムレータは、前記アクチュエータの負荷が低負荷である時に作動液を該液圧回路内に吐き出す第1のアキュムレータと、前記アクチュエータの負荷が、前記低負荷より大きい高負荷である時に作動液を該液圧回路内に吐き出す第2のアキュムレータと、を備えている液圧回路。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−048332号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来例では、前記アクチュエータの負荷が低負荷で第1のアキュムレータから液圧回路内に作動液を吐き出している最中に、第2のアキュムレータ側の圧力スイッチが圧力低下を検出すると、ポンプが起動して作動液を液圧回路に供給するが、この作動液は、圧力の低い第1のアキュムレータ側に流れてしまう。そのため、第1のアキュムレータによる省エネ効果が小さくなるとともに、第2のアキュムレータ側の圧力維持もスムーズにできなくなる。
【0008】
この発明は、上記事情に鑑み、エネルギの無駄使いを防止して、省エネ効果の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、ポンプを駆動させて作動液をアキュムレータに蓄圧させた後に前記ポンプを停止させ、該アキュムレータからアクチュエータの駆動に必要な作動液を供給する液圧回路であって、前記アキュムレータは、前記アクチュエータの負荷が低負荷である時に作動液を該液圧回路の第1の回路部に吐き出す第1のアキュムレータと、前記アクチュエータの負荷が前記低負荷より大きい高負荷である時に作動液を該液圧回路の第2の回路部に吐き出す第2のアキュムレータと、を備えており、前記第1及び第2の回路部には、前記アクチュエータとの連通を遮断する下流側開閉手段が配設され、前記第1の回路部には、前記ポンプとの連通を遮断する上流側開閉手段が設けられていることを特徴とする。
【0010】
この発明は、前記アクチュエータの負荷が前記低負荷と前記高負荷との間の中負荷である時に、作動液を該液圧回路の第3の回路部に吐き出す、第3のアキュムレータが設けられていることを特徴とする。この発明の前記第3の回路部には、前記アクチュエータとの連通を遮断する下流側開閉手段と、前記ポンプとの連通を遮断する上流側開閉手段が配設されていることを特徴とする。
【0011】
この発明の前記アクチュエータは、複数配設されていることを特徴とする。この発明の前記上流側及び下流側開閉手段は、電磁遮断弁であり、前記液圧回路の各回路部に設けた圧力スイッチの圧力検出に基き制御されることを特徴とする。この発明の前記液圧回路の第2の回路部の上御流側には、逆止弁が配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、以上のように、第1の回路部には、前記ポンプからの作動液の流入を阻止する開閉手段が設けられているので、この開閉手段を閉にしてポンプを起動すると、作動液は第2の回路部に流入し、第1の回路部に流れこむことはない。従って、第1のアキュムレータの作動液の吐き出しによってのみアクチュエータが駆動されるので、従来例より更に効果的に省エネを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態を示す正面図である。
【図2】フローチャートを示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態を示す正面図である。
【図4A】フローチャートの前半部を示す図である。
【図4B】フローチャートの後半部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の第1の実施形態を図1、図2により説明する。油圧回路(液圧回路)5には、2個のアクチュエータ、例えば、工作機等のクランプ用油圧シリンダ1A、1Bが配設されているが、この両シリンダ1A、1Bは同一構造、機能なので、前記シリンダ1Aについて説明し、前記シリンダ1Bについてはその説明を省略する。
【0015】
前記シリンダ1Aは、ピストン1aとピストンロッド1bを備え、前記シリンダの切換手段、例えば、電磁切換弁3を介して液圧回路5の管路Rに連結されている。又、前記シリンダ1Aの両端部には、前進位置を検出する手段、例えば、リミットスイッチLM0、LM1が設けられている。前記電磁切換弁3A及びリミットスイッチLM0、LM1は、制御手段である制御盤に接続されている(図示省略)。
【0016】
前記油圧回路5の管路Rには、ポンプ7と第1及び第2アキュムレータ9L、9Hとが配置されている。前記ポンプ7は、電動モータMの駆動により油タンク11内の作動液、例えば、油、を前記油圧回路5の管路R内に供給するが、前記制御盤の指示に従って駆動する。
【0017】
前記第1のアキュムレータ9Lは、低圧用アキュムレータであり、最大使用圧力は低圧であり、例えば、1MPa以下である。このアキュムレータ9Lは、上流側開閉手段、例えば、ポンプ7近傍に配設された電磁開閉弁13を介して液圧回路5の連結管部R1に連結されている。前記連結管部R1は、前記ポンプ7とリリーフ弁8とを連結している。
【0018】
前記第1のアキュムレータ9Lは、下流側開閉手段、例えば、電磁開閉弁2aを介して油圧シリンダ1Aの電磁切替弁3Aに連通しているとともに、下流側開閉手段、例えば、電磁開閉弁2bを介して油圧シリンダ1Bの電磁切替弁3Bに連通している。又、前記連結管部R1の第1のアキュムレータ9L側の管路は、所謂液圧回路5の「第1の回路部6A」を構成しているが、この回路部6Aには、圧力スイッチ10Aが設けられている。前記電磁開閉弁2a、2b、13と圧力スイッチ10Aは、前記制御盤により操作される。
【0019】
前記第2のアキュムレータ9Hは、高圧用アキュムレータであり、最大使用圧力が高圧であり、例えば、3.0〜3.3MPaである。このアキュムレータ9Hは、逆止弁15を介して前記連結管路R1に連通している。
【0020】
前記第2のアキュムレータ9Hは、下流側開閉手段、例えば、電磁開閉弁12aを介して油圧シリンダ1Aの電磁切替弁3Aに連通しているとともに、下流側開閉手段、例えば、電磁開閉弁12bを介して油圧シリンダ1Bの電磁切替弁3Bに連通している。前記連結管部R1の第2のアキュムレータ9H側の管路は、所謂液圧回路5の「第2の回路部6B」を構成している。前記管路部6Bには、圧力スイッチ10Bが設けられている。前記電磁開閉弁12a、12bと圧力スイッチ10Bは、前記制御盤により操作される。
【0021】
前述のように、前記第1の回路部6Aと第2の回路部6Bは、連結管部R1に連結されており、それぞれ異なった回路圧(低圧回路部・高圧回路部)となるので、本件油圧回路は、所謂多圧回路と言うこともできる。
【0022】
前記第2(高圧用)のアキュムレータ9Hの最大使用圧力は、前記第1(低圧用)のアキュムレータ9Lより圧力が高く設定されている。前記高圧用アキュムレータ9Hの使用圧力は、シリンダ1A、1Bが前進した後に圧力保持又は待機できる値であり、又、前記低圧用アキュムレータ9Lのそれは、シリンダ1A、1Bが前進できる圧力であり、例えば、前記高圧用アキュムレータ9Hは、3.0〜3.3MPaであり、前記低圧用アキュムレータ9Lは、1.0〜1.1MPaが選択される。
【0023】
なお、図1において、15、17a、17b、17cは、逆流を防止するための逆止弁を示す。
【0024】
次に、本実施形態の作動について説明する。
各アキュムレータ9L、9Hは、所定圧、例えば、低圧用アキュムレータ9Lは1.0〜1.1MPa、高圧用アキュムレータ9Hは、3.0〜3.3MPa、に調圧されている。前記制御盤は、電磁開閉弁2a、2b、12a、12b、13を閉にした後(S)、シリンダ1A、1Bの電磁切替弁3A、3Bを切り替える(S)。
【0025】
前記制御盤は、前記電磁切替弁3A、3Bの切り替えが完了すると、前記電磁開閉弁2a、2bを開にする(S)。これにより、第1のアキュムレータ9Lとシリンダ1A、1Bが連通状態となるので、第1のアキュムレータ9Lに蓄積された作動油は、第1の回路部6Aに供給され、前記シリダ1A、1Bを駆動させる。この時、前記電磁開閉弁12a、12bは、閉弁状態なので、第2のアキュムレータ9Hとシリンダ1A、1Bは連通していない。
【0026】
前記制御盤は、圧力スイッチ10Aの検出信号に基いて第1の回路部6Aの回路圧P検知し、前記回路圧Pが低圧設定圧力の最低値PL1より高いか否かを判断する(S)。
前記回路圧Pが前記最低値PL1より低い(P<PL1)場合(NO)は、ポンプ7を起動し(Sの1)、電磁開閉弁13を開にする(Sの2)。
【0027】
そうすると、作動液が第1の回路部6Aに供給され、圧力が上昇する。この時、第2の回路部6Bの回路圧は、第1の回路部6Aの回路圧より高圧なので、ポンプ7から吐き出される作動液が、前記第2の回路部6B側に流れ込むことはない。なお、逆止弁15が設けられているので、第2の回路部6B側の作動液が、第1の回路部6A側に流れ込むことはない。
【0028】
前記制御盤は、圧力スイッチ10Aの検出圧力に基づき、第1の回路部6Aの回路圧Pが前記低圧設定圧最高値PL2であるか否かを判断し(Sの3)、該設定最高値PL2に到達したら(YES)、ポンプ7を止める(Sの4)とともに、電磁開閉弁13を閉にする(Sの5)。これにより第1の回路部6Aの回路圧Pは、低圧設定圧最低値PL1より高い圧力となる。
【0029】
前記シリンダ1A、1Bに第1のアキュムレータ9Lの作動油が圧送されると、ピストン1aが摺動し、前進が開始するが、前記ピストン1aがシリンダ1A、1Bの後端(前進位置)に到達すると、リミットスイッチLM1、LM2のスイッチがオンになり、到達信号を前記制御盤に送信する(S)(往路行程)。
【0030】
そうすると、前記制御盤は、電磁開閉弁12a、12bを開にした後(S)、電磁開閉弁2a、2bを閉にする(S)。これにより、第2のアキュムレータ9Hとシリンダ1A、1Bが連通状態となるので、第2のアキュムレータ9Hに蓄積された作動油は、第2の回路部6Bに供給され、前記シリンダ1A、1Bを駆動させる。この時、前記チェック弁17a、17bで油圧回路は、閉弁状態なので、第1のアキュムレータ9Lとシリンダ1A、1Bは連通していない。
【0031】
前記制御盤は、圧力スイッチ10Bから出力される検出圧力値に基づいて、回路圧Pが高圧設定圧力の最低値PH1より高いか否かを判断する(S)。ここで前記最低値PH1は、シリンダ1A、1Bの保持又は待機行程に必要な大きさの圧力である。
【0032】
前記制御盤は、第2の回路部6Bが、前記高圧設定圧力の最低値PH1より高くない場合(NO)には、ポンプ7を起動させ、昇圧させる(S)。その後、第2の回路部6Bの回路圧Pが高圧設定圧力の最高値PH2であるか否かを判断し(Sの1)、その値が最高値PH2に達したら(YES)、ポンプ7の駆動を停止する(Sの2)。
【0033】
この様にして、前記第2の回路部6Bの回路圧Pは、高圧設定圧力最低値PM1より高い値を維持する(S10)(往路待機行程)。前記ステップS〜S10の行程を繰り返す(S11)。
【0034】
この実施形態では、前記ステップS〜S10を順次繰り返すことにより、往路行程、往路待機行程、復路行程、復路待機行程が順次繰り返され、シリンダ1A、1Bが駆動される。前記往路行程は復路行程と同様であり、又、前記往路保持行程と復路待機行程とは、同様であるので、復路行程、復路待機行程についての説明は、省略する。
【0035】
前記往路行程、復路行程は、例えば、NC旋盤のチャックを閉じながら被削物を掴むまでの行程であり、シリンダ1A、1Bには殆ど負荷がかからない(低負荷状態)。この低負荷状態においては、高圧の作動液を必要としないので、高圧用アキュムレータ9Hと管路Rとの連通を断ち、低圧用アキュムレータ9Lからのみ作動液をシリンダ1A、1Bに供給する。
【0036】
更に、前記往路待機行程、復路待機行程は、例えば、NC旋盤のチャックを閉じて被削物を強く掴み固持する行程であり、シリンダ1A、1Bには大きな負荷(高負荷)がかかる。この高負荷状態においては、高圧の作動液を必要とするので、高圧用アキュムレータ9Hから作動液をシリンダ1A、1Bに供給するように制御している。
【0037】
又、第1の回路部6Aの第1のアキュムレータ9Lが作動中に、第2の回路部6Bを昇圧させるためにポンプ7を起動させる合には、電磁開閉弁(上流側開閉手段)13が閉じられているので、第1の回路部6Aに作動液が流入することはない。そのため、前記シリンダ1A、1Bは、第1の回路部6Aの第1のアキュムレータ9Lから吐き出される作動液のみにより駆動するので、前記ポンプ7から吐き出される作動液に影響されことなはない。
【0038】
この発明の第2実施形態を図3、図4に基づいて説明するが、図1、図2と同一図面符号は、その名称も機能も同一である。この実施形態では、前記シリンダ及びアキュムレータが、夫々3台配設されているが、前記シリンダ1A、1B、1Cは、同一構造、同一機能である。
【0039】
前記アキュムレータ9L、9B、9Cは、それぞれ蓄圧力が相違しており、第1及び第2のアキュムレータ9L、9Hは前記実施形態と同様であるが、第3のアキュムレータ9Mは、中圧用アキュムレータであり、その最高使用圧力は、前記両アキュムレータ9L、9Hの中間の値であり、例えば、2.0〜2.2MPaである。
【0040】
この実施形態では、第1、第2及び第3のアキュムレータ9L、9M、9Hは、下流側開閉手段、例えば、電磁開閉弁2a、2b、2c、12c、12a、12b、22a、22b、22cを介して第1、第2のシリンダ1A、1B、1Cの電磁切替弁3A、3B、3Cに接続している。又、前記連結管部R1の第3のアキュムレータ9M側の管路は、所謂液圧回路5の「第3の管路部6C」を構成しているが、この管路部6Cには、圧力スイッチ10Cが設けられている。この第3の回路部6Cの上流側(連結管部R1近傍)には、ポンプ7との連通を遮断する上流側開閉弁23が配設されている。
【0041】
なお、図3において、27a、27b、27c、27d、27eは、逆流を防止するための逆止弁を示す。
【0042】
次に、本実施形態の作動について説明する。各アキュムレータ9L、9H、9Mは、所定圧、例えば、第1のアキュムレータ(低圧用アキュムレータ)9Lは1.0〜1.1MPa、第2のアキュムレータ(高圧用アキュムレータ)9Hは3.0〜3.3MPa、第3のアキュムレータ(中圧用アキュムレータ)9Mは2.0〜2.2MPaに調圧されている。前記制御盤は、電磁開閉弁2a、2b、2c、12a、12b、12c、13、23を閉にした後(S)、シリンダ1A、1Bの電磁切替弁(進行方向弁)3A、3B、3Cを切り替える(S)。
【0043】
前記制御盤は、前記電磁切替弁(進行方向弁)3A、3B、3Cの切り替えが完了すると、前記電磁開閉弁2a、2b、2cを開にする(S)。これにより、第1のアキュムレータ9Lとシリンダ1A、1B、1Cが連通状態となるので、第1のアキュムレータ9Lに蓄積された作動油は、第1の回路部6Aに供給され、前記シリダ1A、1B、1Cを駆動させる。
【0044】
この時、前記電磁開閉弁12a、12b、12cは、閉弁状態なので、第2のアキュムレータ9Hとシリンダ1A、1B、1Cの電磁切替弁3A、3B、3Cは連通しておらず、又、前記電磁開閉弁22a、22b、22cも閉弁状態なので、第3のアキュムレータ9Mとシリンダ1A、1B、1Cの電磁切替弁3A、3B、3Cは連通していない。
【0045】
前記制御盤は、圧力スイッチ10Aの検出信号に基いて第1の回路部の回路圧Pが、低圧設定圧力の最低値PL1より高いか否かを判断する(S)。前記回路圧Pが前記最低値PL1より低い(P<PL1)場合(NO)は、ポンプ7を起動し(Sの1)、上流側開閉弁13を開にする(Sの2)。そうすると、作動御液が第1の回路部6Aに供給され、圧力が上昇する。
【0046】
この時、第2の回路部6Bの回路圧は、第1の回路部6Aの回路圧より高圧なので、ポンプ7から吐き出される作動液が、前記第2の回路部6B側に流れ込むことはない。又、第3の回路部6Cの上流側開閉弁23は閉なので、第3の回路部6Cに前記ポンプ7の作動液が流入することはない。
【0047】
前記制御盤は、圧力スイッチ10Aの検出圧力に基づき、第1の回路部の回路圧Pが前記低圧設定圧最高値PL2であるか否かを判断し(Sの3)、該設定最高値PL2に到達したら(YES)、ポンプ7を止める(Sの4)とともに、電磁開閉弁13を閉にする(Sの5)。これにより第1の回路部6Aの回路圧Pは、低圧設定圧最低値PL1より高い圧力となる。
【0048】
前記シリンダ1A、1B、1Cに第1のアキュムレータ9Lの作動油が圧送されると、ピストン1aが摺動し、前進が開始するが、前記ピストン1aがシリンダ1A、1B、1Cの後端(前進位置)に到達すると、リミットスイッチLM1のスイッチがオンになり、到達信号を前記制御盤に送信する(S)(往路行程)。
【0049】
そうすると、前記制御盤は、保持圧力が中圧(前記低圧と高圧と間の圧力)か否かを判断する(S)。このステップS5の判断は、中圧が必要な場合には「YES」、高圧が必要な場合には、「NO」となるが、最初に「YES」の場合について説明する。
【0050】
第3の回路部6Cの電磁開閉弁22a、22b、22cを開にするとともに(S)、第1の回路部6Aの電磁開閉弁2a、2b、2cを閉にする(S)。これにより、第3のアキュムレータ9Mとシリンダ1A、1B、1Cが連通状態となるので、第3のアキュムレータ9Mに蓄積された作動油は、第3の回路部6Cに供給され、前記シリンダ1A、1B、1Cを駆動させる。この時、前記電磁開閉弁2a、2b、2c、12a、12b、12cは、閉弁状態なので、第1及び第2のアキュムレータ9L、9Hとシリンダ1A、1B、1Cは連通していない。
【0051】
前記制御盤は、圧力スイッチ10Cから出力される検出圧力値に基づいて、回路圧(保持圧力)Pが中圧設定圧力の最低値PM1より高いか否かを判断する(S)。ここで前記最低値PM1は、シリンダ1A、1B、1Cの保持又は待機行程に必要な大きさの圧力である。
【0052】
前記制御盤は、第3の回路部6Cが、前記設定圧力の最低値PM1より高くない場合(NO)には、ポンプ7を起動させるとともに(Sの1)、電磁開閉弁23を開にして第2の管路部6Cに作動液を供給させて昇圧させる。その後、第3の回路部6Cの回路圧Pが中圧設定圧力の最高値PM2であるか否かを判断し(Sの2)、その値が最高値PM2に達したら(YES)、ポンプ7の駆動を停止する(Sの3)とともに、前記電磁開閉弁23を閉にする(Sの4)。
【0053】
この様にして、前記第3の回路部6Cの回路圧Pは、中圧設定圧力最低値PM1より高い値を維持する(S10)(往路待機行程)。前記ステップS〜S10の行程を繰り返す(S11)。
【0054】
次に、ステップS5が、「NO」の場合、即ち、高圧が必要な場合、について説明する。第2の管路部6Bの電磁開閉弁12a、12b、12cを開にするとともに(S9a)、第1の回路部6Aの電磁開閉弁2a、2b、2cを閉にする(S9b)。これにより第2のアキュムレータ9Hは、各アキュムレータの電磁切替弁3A、3B、3Cと連通する。この時、上流側電磁開閉弁23、下流側電磁開閉弁22a、22b、22cは、閉弁状態なので、第3のアキュムレータ9Mはシリンダ1A、1B、1Cに連通していない。
【0055】
前記制御盤は、回路圧Pが高圧設定圧力の最低値PH1より高いか否かを判断する(S9c)が、第2の回路部6Bが、前記設定圧力の最低値PH1より高くない場合(NO)には、ポンプ7を起動させる(S9cの1)。
【0056】
その後、第2の回路部6Bの回路圧Pが高圧設定圧力の最高値PH2であるか否かを判断し(S9cの2)、その値が最高値PH2に達したら(YES)、ポンプ7の駆動を停止する(S9cの3)。これにより第2の回路部6Bの回路圧Pは最高設定圧力を維持することができるので、所定の保持力を維持することができる(S10a)。
前記ステップが繰り返される(S11a)。
【0057】
この実施形態では、第1の回路部6Aの第1のアキュムレータ9Lが作動中に、第2の回路部6Bの回路圧を上昇させるためにポンプ7を起動さても、上流側開閉手段(電磁開閉弁)13、23が閉じられているので、第1及び第3の回路部6A、6Cに前記作動液が流入することはない。そのため、前記シリンダ1A、1B、1Cは、第1の回路部6Aの第1のアキュムレータ9Lから吐き出される作動液のみにより駆動するので、前記ポンプ7から吐き出される作動液に影響されことはない。
【0058】
この発明の実施形態は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、次のようにしてもよい。
(1)アクチュエータの数は、必ずしも複数である必要はなく、単数(1本)であってもよい。
(2)第1実施形態では、第1のアキュムレータを第1及び第2のアクチュエータに連通させて往路行程又は復路行程を行い、次に、電磁開閉弁を切替えて第2のアキュムレータを前記第1及び第2アクチュエータに連通させて保持待機行程を行っているが、この代わりに、前記両アクチュエータが互いに異なる行程を行うようにしてもよい。
【0059】
例えば、上流側及び下流側開閉手段を操作し、前記第1のアキュムレータを第1のアクチュエータに連通させて往路行程又は復路行程を行わせると同時に、第2のアキュムレータを第2のアクチュエータに連通させて保持待機行程を行わせるようにしても良い。
(3)第2実施形態では、第1のアキュムレータを第1、第2及び第3のアクチュエータに連通させて往路行程又は復路行程を行い、次に、第2のアキュムレータ、又は、第3のアキュムレータを第1、第2及び第3アクチュエータに連通させて保持待機行程を行っているが、この代わりに、前記全アクチュエータが、同時に同一行程を行わないようにしてもよい。
【0060】
例えば、前記第1のアキュムレータを第1及び第2のアクチュエータに連通させて往路行程又は復路行程を行わせると同時に、第2のアキュムレータ又は第3のアキュムレータを第3のアクチュエータに連通させて保持待機行程を行わせてもよい。
(4)前記第2実施形態では、使用圧力の異なる3本のアキュムレータ(低圧・中圧・高圧)を配設して、第1の回路部、第2の回路部及び第3の回路部を形成したが、前記アキュムレータの数を4本以上に増やし、第1の回路部、第2の回路部、第3の回路部、第4の回路部、・・・・・第nの回路部、を形成しても良い。
【0061】
1A シリンダ
1B シリンダ
2a 下流側電磁開閉弁
2b 下流側電磁開閉弁
3a 下流側電磁切替弁
3b 下流側電磁切替弁
5 油圧回路
6A 第1の回路部
6B 第1の回路部
7 ポンプ
9L 第1のアキュムレータ
9H 第2のアキュムレータ
10A 圧力スイッチ
10B 圧力スイッチ
13 上流側電磁開閉弁
15 逆止弁
R 管路
R1 連結管部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプを駆動させて作動液をアキュムレータに蓄圧させた後に前記ポンプを停止させ、該アキュムレータからアクチュエータの駆動に必要な作動液を供給する液圧回路であって、
前記アキュムレータは、前記アクチュエータの負荷が低負荷である時に作動液を該液圧回路の第1の回路部に吐き出す第1のアキュムレータと、前記アクチュエータの負荷が前記低負荷より大きい高負荷である時に作動液を該液圧回路の第2の回路部に吐き出す第2のアキュムレータと、を備えており、
前記第1及び第2の回路部には、前記アクチュエータとの連通を遮断する下流側開閉手段が配設され、
前記第1の回路部には、前記ポンプとの連通を遮断する上流側開閉手段が設けられていることを特徴とするアキュムレータを使用した省エネ多圧回路。
【請求項2】
前記アクチュエータの負荷が前記低負荷と前記高負荷との間の中負荷である時に、作動液を該液圧回路の第3の回路部に吐き出す、第3のアキュムレータが設けられていることを特徴とする請求項1記載のアキュムレータを使用した省エネ多圧回路。
【請求項3】
前記第3の回路部には、前記アクチュエータとの連通を遮断する下流側開閉手段と、前記ポンプとの連通を遮断する上流側開閉手段が配設されていることを特徴とする請求項2記載のアキュムレータを使用した省エネ多圧回路。
【請求項4】
前記アクチュエータは、複数配設されていることを特徴とする請求項1、2、又は、3記載のアキュムレータを使用した省エネ多圧回路。
【請求項5】
前記上流側及び下流側開閉手段は、電磁開閉弁であり、前記液圧回路の各回路部に設けた圧力スイッチの圧力検出に基き制御されることを特徴とする請求項1、2、3、又は、4記載のキュムレータを使用した省エネ多圧回路。
【請求項6】
前記液圧回路の第2の回路部の上御流側には、逆止弁が配設されていることを特徴とする請求項1、2、3、4、又は、5記載のキュムレータを使用した省エネ多圧回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2012−197823(P2012−197823A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60984(P2011−60984)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000193999)
【出願人】(390034625)
【Fターム(参考)】