説明

アクセル装置

【課題】 収容部内部空間への異物の侵入を防止するとともに回転軸が安定して回転可能なアクセル装置を提供する。
【解決手段】 回転軸30の小径部301には、ペダルアーム15の一方の端部152が固定される。回転軸30の一端303は、ハウジング21の第1軸受け部211に支持される。回転軸30の他端304は、カバー22の第2軸受け部221に支持される。アクセル装置1が使用されるとき、小径部301には下向きの力F0が作用する。このとき、一端303および他端304には第1軸受け部211および第2軸受け部221からの上向きの力F1、F2が作用する。これにより、ハウジング22に形成されている貫通孔214と回転軸30の外壁との間に設けられるオイルシール24によりハウジング内部空間201への異物の侵入を防止できるとともに、回転軸30が安定して回転することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者によるペダルの踏込量に応じて車両の加速状態を制御するアクセル装置が知られている。アクセル装置ではペダルが接続するペダルアームの回転角度に対応する回転軸の回転角度が検出される。車両では検出された回転角度に基づいてエンジンが吸入する空気量を調整するスロットルバルブの開度を決定する。回転軸を回転可能に支持するアクセル装置の収容部には、回転軸の回転をアクセル閉方向に付勢する戻り機構部と、アクセルペダルを踏み込むときの踏力をペダルの踏み込みを解除するときの踏力よりも大きくするヒステリシス機構部とが収容されている。特許文献1には、収容部に異なるヒステリシス特性を発生する2つのヒステリシス機構部を収容する操作量入力装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−158992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の操作量入力装置の収容部には、ペダルアームの可動範囲に対応する開口が形成されている。当該開口から収容部の内部空間に異物が侵入すると、戻り機構部での異物の噛み込みなどによりアクセル装置が機能を果たさなくなるおそれがある。そこで、収容部の内部空間に異物が侵入するのを防止する場合、開口にシール部材を設け、開口を通って収容部の内部空間から外部空間に突出する回転軸の一方の端部にペダルアームを接続する構造が考えられる。しかしながら、回転軸の一方の端部にペダルアームを接続すると、回転軸の他端のみが収容部に支持される片持ち構造となるため、アクセル全閉時とアクセル操作時とにおいて回転軸の他端に作用する力の方向が変化し、回転軸が変形するおそれがある。これにより、回転軸が安定して回転できなくなる。
【0005】
本発明の目的は、収容部の内部空間への異物の侵入を防止するとともに回転軸が安定して回転可能なアクセル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明によると、アクセル装置は、運転者が踏込操作するペダル部が固定される回転軸の回転角を検出する。回転軸の一端と両端とは車体に取付可能な収容部に回転可能に両持ち支持される。回転軸はペダル部の一端の端部が固定される。収容部には、収容部に対する回転軸の回転角を検出する回転角検出手段と、回転軸の回転をアクセル閉方向に付勢する戻り機構部とが収容される。収容部の内部空間と外部空間とを連通する隙間には収容部の内部空間に異物が侵入することを防止するシール部材を設ける。
【0007】
請求項1に記載のアクセル装置の回転軸の両端は、収容部に回転可能に両持ち支持される両持ち構造となっている。これにより、ペダル部が回転軸に作用する力を両端に分散することができるため、回転軸に作用する力のバランスが良くなる。したがって、回転軸が安定して回転することができる。
【0008】
また、従来の片持ち構造では、アクセル全閉時にペダル部の自重および回転軸の自重によって回転軸の重力方向下側の面が収容部に摺動するが、アクセル操作時にはペダル部の踏込操作によってペダル部が固定されている回転軸の一方の端部が重力方向下側に下がるかわりに回転軸の他方の端部は重力方向上側に上がるため、回転軸の重力方向上側の面が収容部に摺動する。
請求項1に記載のアクセル装置では、アクセル全閉時に回転軸の重力方向下側の面が収容部に摺動する。また、アクセル操作時にはペダル部の踏込操作によって回転軸に重力方向下側方向の力は作用するものの、回転軸の両端を収容部によって両持ち支持しているため、回転軸の重力方向下側の面が収容部に摺動する。すなわち、アクセル全閉時およびアクセル踏込時のいずれにおいても回転軸の両端の重力方向下側の面が収容部に摺動する。これにより、回転軸が安定して回転することができる。
【0009】
また、シール部材は、収容部の内部空間と外部空間とを連通する隙間に設けられる。これにより、収容部の内部空間に異物が侵入することを防止する。したがって、収容部に収容される回転角検出手段および戻り機構部における異物の噛み込みを防止し、回転角検出手段および戻り機構部を安定して作動させることができる。
【0010】
請求項2に記載のアクセル装置では、収容部と回転軸とにより形成される隙間にシール部材を設ける。車体に取り付けられる収容部と収容部に形成される貫通孔に挿通され収容部に対して回転する回転軸との間には一定の隙間が必要となる。そこで、収容部と回転軸の外壁とにより形成される隙間にシール部材を設けることにより、収容部の内部空間に異物が侵入することを防止し、回転角検出手段および戻り機構部を安定して作動させることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によると、アクセル装置では、回転軸に作用する回転力が増大するとき回転軸の直前の回転角に対応するアクセル開度を維持するように作用し、回転軸に作用する回転力が解除されるとき回転軸の直前の回転角に対応するアクセル開度を維持するように作用するヒステリシス特性を発生するヒステリシス機構部を収容部の内部空間に収容する。密閉空間となっている収容部の内部空間には、シール部材によって外部からの異物が侵入しない。これにより、ヒステリシス機構部における異物の噛み込みを防止し、ヒステリシス機構部を安定して作動させることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明によると、収容部は、回転軸の一端を支持する第一支持部と回転軸の他端を支持する第二支持部とを有している。このとき、ペダル部は、第一支持部と第二支持部との間に形成される外部空間に位置する回転軸の中央に固定される。
回転軸に固定されるペダル部の一方の端部は、回転軸の中央に固定される。これにより、回転軸の両端を支持する収容部の第一支持部および第二支持部には、回転軸に作用するペダル部の自重およびペダル部が回転するときの回転モーメントの半分が均等に作用する。したがって、回転軸の両端には同じ大きさの力が作用するため、回転軸がさらに安定して回転することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明によると、ペダル部の一方の端部は、収容部から突出する回転軸の一端に固定される第一端部と収容部から突出する前記回転軸の他端に固定される第二端部に分岐する。
回転軸に固定されるペダル部の一方の端部は2つに分岐しており、収容部から突出する回転軸の両端にそれぞれ固定される。これにより、ペダル部の自重およびペダル部が回転するときの回転モーメントは、回転軸の両端に均等に作用する。また、収容部は、回転軸を両持ち支持するため、回転軸に対して収容部が回転軸を支持する力も均等に作用する。これにより、回転軸がさらに安定して回転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態によるアクセル装置の全体を示す正面断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるアクセル装置の支持部の正面断面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態によるアクセル装置のヒステリシス機構を説明する説明図である。
【図6】本発明の第2実施形態によるアクセル装置の全体を示す正面断面図である。
【図7】図6のVII−VII線断面図である。
【図8】図6のVIII−VIII線断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態によるアクセル装置の全体を示す正面断面図である。
【図10】図9のX−X線断面図である。
【図11】図9のXI−XI線断面図である。
【図12】本発明の第4実施形態によるアクセル装置の全体を示す正面断面図である。
【図13】本発明の第4実施形態によるアクセル装置の全体を示す側面図である。
【図14】図12のXIV−XIV線断面図である。
【図15】図12のXV−XV線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態によるアクセル装置を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態によるアクセル装置を図1から図5に示す。
アクセル装置1は、図1に示すようにペダル10、ペダルアーム15、収容部20、回転軸30、戻り機構部40、ヒステリシス機構部50、回転角検出部60などを備える。以下、図1から図4までの上側を「上」、図1から図4までの下側を「下」、図1および図2の右側を「右」、図1および図2の左側を「左」として説明する。
なお、運転者のペダル10の踏み込みに伴う踏力の増加により図3に示すようにペダルアーム15が回転軸30を中心として時計回りに回転する方向をペダル開方向といい、その反対方向をペダル閉方向という。
【0016】
ペダル10は、ペダルアーム15の他方の端部151に設けられる。ペダルアーム15の一方の端部152には、図1に示すように回転軸30が水平方向に挿通されている。第1実施形態のアクセル装置1では、ペダルアーム15はアクセル装置1に対して右側にオフセットして設けられている。ペダル10およびペダルアーム15は、特許請求の範囲に記載の「ペダル部」に相当する。
【0017】
収容部20は、ハウジング21、カバー22、ベース部23を備える。収容部20は、後述する戻り機構部40、ヒステリシス機構部50、回転角検出部60をハウジング内部空間201に収容するとともに、車体5に取り付けられる(図3、図4参照)。
【0018】
ハウジング21は、箱状の例えば樹脂から形成される。ハウジング21の下部右側に凹状に形成されるアーム収容部25には、ペダルアーム15の一方の端部152が回転軸30に固定されている状態で収容される。アーム収容部25とハウジング内部空間201とは重力方向に形成される第1隔壁212、水平方向に形成される第2隔壁213によって区画されている。第1隔壁212には、回転軸30が挿通される貫通孔214が形成される。貫通孔214と回転軸30の外壁との間には環状のオイルシール24が設けられる。オイルシール24は、アーム収容部25とハウジング内部空間201との間を遮断する。ハウジング内部空間201は、特許請求の範囲に記載の「収容部の内部空間」に相当する。貫通孔214は、特許請求の範囲に記載の「隙間」に相当する。
【0019】
ハウジング21の下部には図3に示すように全開ストッパ27が形成される。運転者によるペダル10の踏み込み操作において全開ストッパ27にペダルアーム15が当接することにより、ペダル開方向へのペダルアーム15の回転角度が規制される。
【0020】
カバー22は、平板形状の例えば樹脂から形成される。カバー22をハウジング21の左側に形成されている開口に取り付けることにより、密閉状態のハウジング内部空間201が形成される。
【0021】
ベース部23は、収容部20の四隅に設けられる。ベース部23には、それぞれ貫通孔231が1箇所ずつ設けられる。この貫通孔231にボルト等が取り付けられることで収容部20は車体5に取り付けられる。
【0022】
回転軸30は、収容部20の下方にペダルアーム15に対して垂直に設けられる。より具体的には、第1隔壁212に形成されている貫通孔214を水平方向に貫通するように設けられている。回転軸30には、小径部301と大径部302とが形成されている。
【0023】
小径部301は円柱形状をなしており、ペダルアーム15の一方の端部152と固定されている。これにより、ペダルアーム15の回転角度と回転軸30の回転角度とは一対一に対応する。小径部301の一端303は、ハウジング21の第1軸受け部211によって回転可能に支持される。大径部302は、接続する小径部301より径が大きい円柱形状を成しており、戻り機構部40のリターンロータ41に固定されている。これにより、回転軸30の回転角度とリターンロータ41の回転角度とは一対一に対応する。回転軸30の大径部302側の他端304は、大径部302より径が大きくなるように形成されており、カバー22の第2軸受け部221によって回転可能に支持される。第1軸受け部211は、特許請求の範囲に記載の「第一支持部」に相当する。第2軸受け部221は、特許請求の範囲に記載の「第二支持部」に相当する。
【0024】
戻り機構部40は、リターンロータ41、戻りばね45などを備える。戻り機構部40は、ペダルアーム15の回転角度に応じた付勢力を戻りばね45が発生することにより、ペダルアーム15をペダル閉方向に付勢する。
【0025】
リターンロータ41は、図4に示すようにボス部411、第1腕部42、および第2腕部46を備える。図4には、ペダル10を踏み込んでいないときのリターンロータ41およびヒステリシス機構部50の第1ロータ51の回転状態を実線で示すとともに、ペダル10を踏み込んだときのリターンロータ41および第1ロータ51の回転状態を点線で示す。
【0026】
ボス部411は、円柱状をなしており、ボス部411の中心には回転軸30の大径部302が例えば圧入により固定されている。図4に示すように、ボス部411の上部には第1腕部42がボス部411の上部から上方に延びるように形成されている。また、ボス部411の下部には第2腕部46がボス部411の下部から下方に延びるように形成されている。
【0027】
第1腕部42は、戻りばね支持部421および係合部422を有する。戻りばね支持部421は、第1腕部42のボス部411側に形成され、戻りばね45の一端を係止する。係合部422は、第1ロータ51の係合部512に係合する。これにより、図4に示すように、リターンロータ41が回転軸30を中心として時計回りに回転するとき、第1ロータ51はリターンロータ41の回転角度に応じて反時計回りに回転する。
【0028】
第2腕部46は、リターンロータ41が回転軸30を中心として反時計回りに回転するとき、ハウジング21の全閉ストッパ26と当接する。すなわち、第2腕部46は、リターンロータ41の反時計回りの回転角度を規制する。
【0029】
戻りばね45は、他端をヒス部ハウジング53の内壁に係止される。戻りばね45は、リターンロータ41を図4の反時計回りに回転するように付勢する。これにより、ペダル10を踏み込むとき、ペダルアーム15にはペダル閉方向に回転する付勢力が作用する。また、リターンロータ41が反時計回りに回転すると、第2腕部46が全閉ストッパ26に当接する。これにより、ペダル10を踏み込んでいないとき、回転軸30の回転角度は、第2腕部46が全閉ストッパ26に当接する位置において維持される。
【0030】
ヒステリシス機構部50は、ヒス部ハウジング53、ヒス部回転軸54、第1ロータ51、第2ロータ52、ヒス部ばね56などを備える。ヒステリシス機構部50では、運転者がペダル10を踏み込むときに必要な踏力とペダル10の踏み込みを解除するときに必要な踏力とに差を設ける。これにより、運転者によるペダル10の操作性が向上する。
【0031】
ヒス部ハウジング53は、箱状の樹脂から形成されている。ヒス部ハウジング53には、ヒス部回転軸54、第1ロータ51、第2ロータ52、ヒス部ばね56などが収容される。ヒス部ハウジング53の外面は、ハウジング21およびカバー22の内面に当接する。
【0032】
ヒス部回転軸54は、回転軸30に対して平行に設けられる。ヒス部回転軸54の両端は、ヒス部ハウジング53に回転可能に支持される。ヒス部回転軸54には、大径部541と小径部542とが形成されている。小径部542は、第1ロータ51の貫通孔517に挿通されている。大径部541は、第2ロータ52に圧入により固定されている。
【0033】
第1ロータ51は、ボス部511、係合部512を有する。第1ロータ51は、リターンロータ42の上側に設けられる。
【0034】
ボス部511は、円柱状をなしており、ボス部511の左側面513は、ヒス部ハウジング53に設けられる環状の第1摩擦板531と当接している。また、ボス部511の右側面515には、複数のはす歯516が回転方向に設けられる。はす歯516には後述する第2ロータ52のはす歯524の傾斜面に当接する傾斜面が形成されている。
【0035】
係合部512は、図4に示すようにボス部511の下部に下方に延びるように形成されている。第1ロータ51の係合部512がリターンロータ41の係合部422と係合することで、リターンロータ41の回転角度と第1ロータ51の回転角度とが一対一に対応する。例えば、リターンロータ41が回転軸30を中心として時計回りに所定の角度回転するとき、第1ロータ51は反時計回りに当該所定の角度だけ回転する。
【0036】
第2ロータ52は、第1ロータ41の右隣に設けられる。第2ロータ52には、ボス部521、第1腕部522が形成されている。
【0037】
ボス部521は、円柱形状をなしており、ボス部521の左側面523には、回転方向に複数のはす歯524が設けられる。はす歯524には傾斜面が形成されており、当該傾斜面を介して第1ロータ41のはす歯516と噛み合っている。また、ボス部521の右側面525は、ヒス部ハウジング53に設けられる環状の第2摩擦板532と当接している。
【0038】
第1腕部522は、ボス部521の下部から下方に延びるように形成されている。第1腕部522は、図3に示すように皿状のヒス部ばね支持部526に当接する。ヒス部ばね支持部526には、ヒス部ばね56の一端が係止される。
【0039】
ヒス部ばね56は、ヒス部ばね支持部526に係止される一端とは反対側の他端がヒス部ハウジング53の内壁に係止される。ヒス部ばね56は、第2ロータ52を図3の時計回りに回転するように付勢する。
【0040】
回転角検出部60は、回転軸30の他端304の内部に固定される回転角ロータ61、回転角ロータ61内に突出する突出部62を有する。突出部62には、図示しないホールICが突出部62の対角上に1個ずつ合計2個設けられる。回転角検出部60は、2つのホールICを用いて回転角ロータ61の回転角度を検出する。具体的には、運転者のペダル10の踏み込みによりペダルアーム15が回転軸30を中心として回転する場合、ペダル10の回転角度と同じ角度だけ回転軸30および回転軸30に固定されている回転角ロータ61が回転する。このとき、回転角ロータ61の内壁に設けられる磁石63も同じ角度回転する。これにより、突出部62周辺の磁界が変化する。回転角検出部60のホールICは、磁界の変化を電気信号に変換する。当該電気信号は、ターミナル65を経由して車両に搭載されている電子制御装置(以下、「ECU」という)に伝達される。これにより、ECUは、ペダル10の回転位置を検出する。
【0041】
(作用)
次にアクセル装置1の作用について図5を用いて説明する。図5(a)は、ヒステリシス機構部50におけるペダルアーム15の回転角度θに対する回転角度θを維持するために必要な荷重Fを示したグラフである。荷重Fは運転者がペダルアーム15の回転角度θを維持するために必要な踏力となる。また、図5(b)は、戻り機構部40におけるペダルアーム15の回転角度θに対する回転角度θを維持するために必要な荷重Fを示したグラフである。また、図5(c)は、図5(a)および(b)で示した荷重Fの合計を表したグラフである。
【0042】
運転者がペダル10を踏み込んでいない場合、ペダル10は所定の位置にある。このとき、ペダルアーム15は、戻り機構部40の第2腕部46が当接している全閉ストッパ26により回転が規制される。この位置をペダルアーム15の回転角度θ=0度とする(図5(a)〜(c)の横軸の原点に相当)。
【0043】
運転者がペダル10を踏み込むと、ペダルアーム15の回転角度θは大きくなる、すなわち、図5のグラフにおいて横軸の値が大きくなる。このとき、ヒステリシス機構部50では、ヒス部ばね56のばね定数とペダルアーム15の回転角度θxに対応するヒス部ばね56の付勢力発生角度とから算出される荷重に、第1摩擦板531と第1ロータ51の左側面513との摩擦力、および第2摩擦板532と第2ロータ52の右側面525との摩擦力を加えた荷重Fxが必要となる。ヒステリシス機構部50において、第1ロータ51のはす歯516と第2ロータ52のはす歯524とが傾斜面同士で当接しながら噛み合っている。運転者がペダル10を踏み込むことで、当該傾斜面が摺動しながら第1ロータ51および第2ロータ52は回転するため、第1ロータ51と第2ロータ52との間隔が大きくなり、第1摩擦板531と第1ロータ51の左側面513との摩擦力および第2摩擦板532と第2ロータ52の右側面525との摩擦力が増加する。したがって、ヒステリシス機構部50では、ペダル10を踏み込む場合、ヒステリシスばね56単体の付勢力より大きい荷重Fxが発生する(図5(a)参照)。一方、戻り機構部40では、ペダルアーム15の回転角度θxに対応した付勢力が発生する(図5(b)参照)。
【0044】
運転者がペダル10の踏み込みを解除すると、ペダルアーム15の回転角度θは小さくなる。このとき、図5(a)に示すように、ヒステリシス機構部50では、ペダルアーム15の回転角度θが小さくなる場合、ペダルアーム15の回転角度が大きくなる場合に比べて、ペダルアーム15の回転角度θxを維持するために必要な荷重Fは小さくなる。これは、前述の第1摩擦板531と第1ロータ51の左側面513との摩擦力および第2摩擦板532と第2ロータ52の右側面525との摩擦力により、ヒス部ばね56の復元力が相対的に弱められるためである。一方、戻り機構部40では、ペダルアーム15の回転角度θxに対応した付勢力が発生する(図5(b)参照)。
【0045】
上述したヒステリシス機構部50および戻り機構部40におけるペダルアーム15の回転角度θに対応する荷重Fを合計したグラフが図5(c)である。運転者によるペダル10の踏み込みによりペダルアーム15の回転角度θが増加する場合、回転角度θxの大きさに応じてペダルアーム15の回転角度θxを維持するための荷重Fは増加する。また、運転者がペダル10の踏み込みを解除する場合、同様に回転角度θxの大きさに応じてペダルアーム15の回転角度θxを維持するための荷重Fが必要となる。しかしながら、ペダルアーム15の回転角度θが増加する場合と減少する場合とを比較すると、同じ回転角度θxであっても回転角度θxを維持するために必要とする荷重Fは異なる。すなわち、回転角度θxにおいて、荷重Fは回転角度θが増加する場合に比べて回転角度θが減少する場合の方が小さい。これにより、運転者がペダル10を踏み込んだとき、急激にペダルアーム15の回転角度θが大きくならないため、車両が急激に加速することを防止する。また、運転者がペダル10の踏み込みを解除した場合、急激にペダルアーム15の回転角度θが小さくなることはなくなるため、車両が急激に減速することを防止する。
【0046】
(効果)
(A)第1実施形態によるアクセル装置1では、回転軸30の一端303および他端304が第1軸受け部211および第2軸受け部221により軸受けされている。図2に示すように、回転軸30にはペダルアーム15と接続する小径部301において下向きの力F0が作用する。一方、回転軸30の一端303および他端304は、第1軸受け部211および第2軸受け部221が当接しており、これにより回転軸30は回転可能に支持されている。このとき、第1軸受け部211および第2軸受け部221では下向きの力F0に対応する上向きの力F1、F2が回転軸30に作用する。すなわち、回転軸30では、小径部301において下向きの力F0が作用する一方、小径部301の一端303および大径部302の他端304において上向きの力F1、F2が作用する。これにより、従来のアクセル装置と異なり、回転軸30の両端には同じ方向に力が作用するため、回転軸30の回転が安定する。したがって、運転者のペダル10の操作における踏力が回転軸30に作用したとき、回転軸30は変形しない。すなわち、アクセル装置1では、ハウジング内部空間201とアーム収容部25とを遮断してハウジング内部空間201に異物が侵入することを防止するとともに回転軸30が安定して回転することができる。
【0047】
(B)また、従来のアクセル装置では、回転軸の他端のみを支持することによって回転軸を回転する片持ち構造となっていた。このため、アクセル全閉時に回転軸の他端が収容部に摺動する面とアクセル操作時に回転軸の他端が収容部に摺動する面とが異なっていた。すなわち、アクセル全閉時には他端の重力方向下側の面が摺動するが、アクセル操作時には回転軸の一端に重力方向下側向きの力が作用するため、他端は重力方向上側方向に移動し、重力方向上側の面が摺動する。したがって、アクセル全閉時とアクセル操作時とでは、回転軸の他端において摺動する面が異なっていた。第1実施形態のアクセル装置1では、小径部301を挟んで両側に設けられている一端303および他端304を第1軸受け部211および第2軸受け部221により支持している。これにより、図2に示すようにアクセル全閉時およびアクセル操作時のいずれにおいても、一端303および他端304の重力方向下側の面が第1軸受け部211および第2軸受け部221の内面に摺動する。したがって、アクセル全閉時に回転軸30に作用する力の方向とアクセル操作時に回転軸30に作用する力の方向とが同じとなり、回転軸30が安定して回転することができる。
【0048】
(C)オイルシール24は、ハウジング21の外部からハウジング内部空間201に異物が侵入することを防止する。これにより、ハウジング21に収容されている戻り機構部40、ヒステリシス機構部50、回転角検出部60に異物が入り込むことがなくなる。したがって、アクセル装置1が安定して作動することができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態によるアクセル装置を図6から図8に基づいて説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対して、ヒステリシス機構部を設ける位置および数が異なる。なお、第1実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。以下、図6から図8までの上側を「上」、図6から図8までの下側を「下」、図6の右側を「右」、図6の左側を「左」として説明する。
【0050】
第2実施形態のアクセル装置2は、図6に示すように、収容部20、戻り機構部90、第1ヒステリシス機構部70、第2ヒステリシス機構部80、回転角検出部60などを備える。戻り機構部90はアクセル装置2の収容部20の中央に設けられる。第1ヒステリシス機構部70は、戻り機構部90の右側に設けられる。第2ヒステリシス機構部80は、戻り機構部90の左側に設けられる。回転角検出部60により回転角度を検出される回転軸30は、収容部20の下方に水平方向に設けられ、回転角検出部60側から順に第2ヒステリシス機構部80の第2ヒス部ロータ81、リターンロータ91、第1ヒステリシス機構部70の第1ヒス部ロータ71に挿通されている。ペダルアーム15は、リターンロータ91の中央に設けられている接続部916に固定されている。リターンロータ91は、特許請求の範囲に記載の「回転軸」に相当する。
【0051】
収容部20は、ハウジング21、カバー22およびベース部23を備える。アクセル装置2はベース部23により車体5に取り付けられる。ベース部23には、車体5側とは反対方向に突出する全閉ストッパ26、半円状の第1隔壁281および半円筒状の第2隔壁282が形成されている。一方、ベース部23に対して車体5と反対側に設けられるハウジング21には、半円状の第3隔壁283および半円筒状の第4隔壁284が形成されている。第2実施形態のアクセル装置2では、アクセル装置2の上側に取り付けられるカバー22、ハウジング21およびベース部23により密閉空間のハウジング内部空間201を形成する。また、第1隔壁281、第2隔壁282、第3隔壁283および第4隔壁284によりリターンロータ91を収容するロータ収容部28を形成する。ロータ収容部28は、中心軸を水平方向に設ける円柱状をなしている。第1隔壁281および第3隔壁283にはリターンロータ91が挿通される貫通孔285、286が形成されている。貫通孔285、286とリターンロータ91の外壁との間には環状のオイルシール24がリターンロータ91の両端にそれぞれ設けられている。オイルシール24は、ロータ収容部28とハウジング内部空間201との間を遮断する。また、ベース部23およびハウジング21には、回転軸30の一端303および他端304を回転可能に支持する第1軸受け部100および第2軸受け部200が設けられる。
【0052】
リターンロータ91は、中心に回転軸30を、例えば圧入により固定している。リターンロータ91の接続部916には前述したようにペダルアーム15が固定されているため、ペダルアーム15の回転角度とリターンロータ91の回転角度とは一対一に対応する。リターンロータ91の右側面911には、第1はす歯912が形成されている。第1はす歯912には傾斜面が形成されており、第1ヒステリシス機構部70の第1ヒス部ロータ71に形成されているはす歯714の傾斜面と当接している。また、リターンロータ91の右側端部913には戻り機構部90の腕部92が接続している。リターンロータ91の左側面914には、第2はす歯915が形成されている。第2はす歯915には傾斜面が形成されており、第2ヒステリシス機構部80の第2ヒス部ロータ81に形成されているはす歯812の傾斜面と当接している。
【0053】
戻り機構部90は、リターンロータ91に接続する腕部92、戻りばね95を備える。
腕部92は、図6に示すようにリターンロータ91の右側端部913から一端上方に延びてリターンロータ91の上方をリターンロータ91に平行に延びてからさらにリターンロータ91の上方に延びる形状をしている。腕部92の上端部93には戻りばね支持部931が形成されている。戻りばね支持部931には戻りばね95の一端が係止される。戻りばね95の他端は、図7に示すようにハウジング21の内壁に係止されている。戻りばね95は、リターンロータ91を図7の反時計回りに回転するように付勢する。また、上端部93の戻りばね支持部931の反対側には規制部96が形成されている。アクセル装置2が全閉状態のとき、規制部96はベース部23の全閉ストッパ26と当接する。これにより、リターンロータ91の反時計周りの回転角度を規制する。
【0054】
第1ヒステリシス機構部70は、第1ヒス部ロータ71、第1ヒス部ロータ71に接続する腕部72、第1ヒス部ばね76を備える。第1ヒス部ロータ71の中心には貫通孔73が形成されており、回転軸30が挿通される。第1ヒス部ロータ71は、回転軸30には固定されていない。
【0055】
第1ヒス部ロータ71の右側面711には、環状の摩擦板712が設けられている。摩擦板712は、第1ヒス部ロータ71が回転するとき、ベース部23およびハウジング21の内壁に摺動する。第1ヒス部ロータ71の左側面713には、はす歯714が形成されている。はす歯714には傾斜面が形成されており、リターンロータ91の第1はす歯912の傾斜面と当接している。
【0056】
腕部72は、第1ヒス部ロータ71の上方に延びて形成されている。腕部72の上端には第1ヒス部ばね76の一端を係止する第1ヒス部ばね支持部74が形成されている。第1ヒス部ばね76の他端は、図8に示すようにハウジング21の内壁に係止される。第1ヒス部ばね76は、第1ヒス部ロータ71を反時計回りに回転するように付勢する。
【0057】
第2ヒステリシス機構部80は、第2ヒス部ロータ81、第2ヒス部ロータ81に接続する腕部82、図示しない第2ヒス部ばねを備える。第2ヒス部ロータ81の中心には貫通孔83が形成されており、回転軸30が挿通される。第2ヒス部ロータ81は、回転軸30には固定されていない。
【0058】
第2ヒス部ロータ81の右側面811には、はす歯812が形成されている。はす歯812には傾斜面が形成されており、リターンロータ91の第2はす歯915の傾斜面と当接している。第2ヒス部ロータ81の左側面813には、環状の摩擦板814が設けられている。摩擦板814は、第2ヒス部ロータ81が回転するとき、ベース部23およびハウジング21の内壁に摺動する。
【0059】
腕部82は、第2ヒス部ロータ81の上方に延びるように形成されている。腕部82の上端には第2ヒス部ばねの一端を係止する第2ヒス部ばね支持部84が形成されている。第2ヒス部ばねの他端はハウジング21の内壁に係止される。第2ヒス部ばねは、第1ヒス部ロータ71と同様に第2ヒス部ロータ81を反時計回りに回転するように付勢する。
【0060】
第2実施形態によるアクセル装置2において、運転者がペダル10を踏み込んだとき、ペダルアーム15が接続するリターンロータ91と回転軸30とは図7に示すペダル開方向に回転する。すなわち、リターンロータ91が時計回りに回転する。戻り機構部90の腕部92では、戻りばね95が圧縮されることによりリターンロータ91を反時計回りに回転するように付勢する。また、リターンロータ91の右側面911の第1はす歯912および左側面914の第2はす歯915と噛み合っている第1ヒス部ロータ71、第2ヒス部ロータ81は、リターンロータ91の時計回りの回転に合わせて時計回りの方向に回転する。このとき、第1はす歯912と第1ヒス部ロータ71のはす歯714、第2はす歯915と第2ヒス部ロータ81のはす歯812とが傾斜面で噛み合っていることにより、第1ヒス部ロータ71および第2ヒス部ロータ81は、リターンロータ91より離れる方向に移動する。これにより、ベース部23およびハウジング21の内壁と摩擦板712、814との間で発生する摩擦力は大きくなる。
【0061】
また、運転者がペダル10の踏み込みを解除するとき、リターンロータ91と回転軸30は図7に示すペダル閉方向に回転する。リターンロータ91がペダル閉方向に回転することにより、第1ヒス部ロータ71および第2ヒス部ロータ81は、リターンロータ91に近づく方向に移動する。これにより、ベース部23およびハウジング21の内壁と摩擦板712、814との間で発生する摩擦力は小さくなる。
【0062】
第2実施形態によるアクセル装置2では、第1隔壁281および第3隔壁283により形成される貫通孔285、286とリターンロータ91の外壁との間には環状のオイルシール24が設けられている。これにより、ハウジング内部空間201への異物の侵入を防止する。さらに、回転軸30は、一端303および他端304を第1軸受け部100および第2軸受け部200によって回転可能に支持されている。第2実施形態によるアクセル装置2では、ペダル10の操作により回転軸30に作用する下向きの力F0に対して、第1軸受け部100および第2軸受け部200が回転軸30の一端303および他端304に上向きの力F1、F2を作用させる(図6参照)。これにより、第1実施形態の効果(A)〜(C)を奏することができる。
【0063】
また、第2実施形態によるアクセル装置2では、ペダルアーム15はリターンロータ91の中央に設けられている接続部916に固定されている。これにより、回転軸30に作用する下向きの力F0は回転軸30の一端303および他端304に均等に分散され、上向きの力F1、F2によって回転軸30は支持される。一端303および他端304に同じ大きさの力が作用するため、回転軸30がさらに安定して回転することができる。
【0064】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態によるアクセル装置を図9から図11に基づいて説明する。第3実施形態は、第2実施形態に対して、戻り機構部およびヒステリシス機構部とペダルロータとの位置関係が異なる。なお、第2実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。以下、図9から図11までの上側を「上」、図9から図11までの下側を「下」、図9の右側を「右」、図9の左側を「左」として説明する。
【0065】
第3実施形態によるアクセル装置3では、戻り機構部90、第1ヒステリシス機構部70、第2ヒステリシス機構部80が収容部20に対してハウジング内部空間201の左側にオフセットして設けられている。一方、ペダルアーム15は、収容部20に対して右側にオフセットして設けられているペダルロータ98に接続する。第3実施形態のアクセル装置3の回転軸30には、図9に示すように、回転角検出部60側から順に、第2ヒステリシス機構部80、戻り機構部90、第1ヒステリシス機構部70、ペダルロータ98が設けられる。ペダルロータ98は、特許請求の範囲に記載の「回転軸」に相当する。
【0066】
ハウジング21には、ペダルロータ98を収容するペダルロータ収容部99が形成されている。ペダルロータ収容部99は、重力方向に形成される第1隔壁991と水平方向に形成される第2隔壁992とにより形成され、中心軸を水平方向に有する円柱状をなしている。第1隔壁991には、回転軸30を挿通可能な貫通孔993が形成されている。貫通孔993と回転軸30の外壁との間にはオイルシール24が設けられる。オイルシール24は、外部と連通しているペダルロータ収容部99とハウジング内部空間201との連通を遮断する。また、ハウジング21には、回転軸30の一端303および他端304を回転可能に支持する第1軸受け部100および第2軸受け部200が形成されている。
【0067】
戻り機構部90のリターンロータ97の右側面971には、第1はす歯972が形成されている。第1はす歯972には傾斜面が形成されており、第1ヒステリシス機構部70の第1ヒス部ロータ71に形成されているはす歯714の傾斜面と当接している。リターンロータ97の左側面974には、第2はす歯975が形成されている。第2はす歯975には傾斜面が形成されており、第2ヒステリシス機構部80の第2ヒス部ロータ81に形成されているはす歯812の傾斜面と当接している。
【0068】
第3実施形態のアクセル装置3では、第1隔壁991の貫通孔993とペダルロータ98の外壁との間には環状のオイルシール24が設けられている。これにより、ハウジング内部空間201への異物の侵入を防止する。さらに、回転軸30は、一端303および他端304を第1軸受け部100および第2軸受け部200によって回転可能に支持されている。第3実施形態によるアクセル装置3では、ペダル10の操作により回転軸30に作用する下向きの力F0に対して、第1軸受け部100および第2軸受け部200が回転軸30の一端303および他端304に上向きの力F1、F2を作用させる(図9参照)。これにより、第1実施形態の効果(A)〜(C)を奏することができる。
【0069】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態によるアクセル装置を図12から図15に基づいて説明する。第4実施形態は、第2実施形態に対して、回転軸に対するペダルアームが固定される位置が異なる。なお、第2実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。以下、図12から図15までの上側を「上」、図12から図15までの下側を「下」、図12の右側を「右」、図12の左側を「左」として説明する。
【0070】
第4実施形態によるアクセル装置4では、ペダルアーム15の一方の端部が、2つに分岐している。図12に示すように、「第一端部」としての右側の端部153は、ハウジング21の側壁215より突出する回転軸30の一端303に固定されている。一方、「第二端部」としての左側の端部154は、ハウジング21の側壁216より突出する回転軸30の他端304に固定されている。これにより、ペダルアーム15の回転角度と回転軸30の回転角度とは一対一に対応する。
【0071】
回転軸30は、ハウジング21に両持ち支持されている。具体的には、ハウジング21の側壁215、216に形成されている貫通孔217、218に回転軸30が挿通されるとき、回転軸30の一端303は側壁215の第1軸受け部100によって回転可能に支持される。また、回転軸30の他端304は側壁216の第2軸受け部200によって回転可能に支持される。
【0072】
また、貫通孔217、218と回転軸30の外壁との間には環状のオイルシール24が設けられる。オイルシール24は、アクセル装置4の外部とハウジング内部空間201との間を遮断する。
【0073】
戻り機構部90は、図14に示すように、回転軸30に圧入固定されるリターンロータ91から上方に延びる腕部92、戻りばね95などを備える。腕部92には、リターンロータ91の近い側に戻りばね支持部931、戻りばね支持部931を挟んでリターンロータ91の反対側に規制部96、規制部96の右側方に延びる第1ヒス部ばね受け部961、および規制部96の左側方に延びる第2ヒス部ばね受け部962が形成されている。
【0074】
戻りばね支持部931は、ベース部23の方向とは反対側に突出する凸形状をなしている。戻りばね支持部931には戻りばね95の一端が係止される。戻りばね95の他端は、図14に示すようにハウジング21の内壁に係止されている。戻りばね95は、図13に示すようにペダルアーム15がペダル開方向に回転するとき、リターンロータ91を図14の反時計回りに回転するように付勢する。
【0075】
規制部96は、ベース部23の方向に突出する凸形状をなしている。規制部96は、アクセル全閉時にベース部23のハウジング内部空間201側の内壁に当接するように形成されている。これにより、リターンロータ91の反時計周りの回転角度を規制する。
【0076】
第1ヒス部ばね受け部961は、図15に示すように第1ヒステリシス機構部70の腕部72とベース部23との間に形成されている。戻りばね95および腕部72が折損し、第1ヒス部ばね76の付勢力が第1ヒス部ロータ71に作用しなくなった場合、第1ヒス部ばね受け部962には、第1ヒス部ばね76の付勢力が作用する。これにより、リターンロータ91をペダル閉方向に回転する。第2ヒス部ばね受け部962も第2ヒステリシス機構部80に対して同様である。
【0077】
第4実施形態によるアクセル装置4では、第1実施形態の効果(A)〜(C)に加えて、以下の効果を奏する。
アクセル装置4のペダルアーム15の自重およびペダルアーム15の回転による回転モーメントは、右側の端部153および左側の端部154によって回転軸30の一端303および他端304に同じ力F0として作用する。2つの力F0は、回転軸30を回転可能に支持する第1軸受け部100および第2軸受け部200に均等に分散され、上向きの力F1、F2によって回転軸30は回転可能に支持される。したがって、回転軸30には左右対称に同じ大きさの力が作用するため、第1実施形態のアクセル装置1に比べて、さらに安定して回転することができる。
【0078】
(他の実施形態)
(ア)上述の第1実施形態では、ペダルアームはアクセル装置の右側にオフセットして配置されるとした。しかしながら、ペダルアームのアクセル装置に対する設置位置はこれに限定されない。アクセル装置の左側にオフセットして配置されてもよい。第3実施形態も同様にペダルロータをアクセル装置の左側にオフセットして配置されてもよい。
【0079】
(イ)上述の第1実施形態では、回転軸の一端側から順にペダルロータ、オイルシール、リターンロータ、第2軸受け部に支持される他端、と配置されるとした。しかしながら、回転軸上の配置順はこれに限定されない。第2軸受け部に支持される他端がリターンロータとオイルシールとの間に設けられてもよい。この場合、回転軸の他端側にはリターンロータが固定される異なる回転軸が設けられる。
【0080】
(ウ)上述の実施形態では、回転軸の軸受け部はハウジングまたはカバーに形成されるとした。しかしながら、軸受け部が形成される部位はこれに限定されない。ハウジングまたはカバーにハウジング内部空間側に突出する軸を設け、回転軸の一端または他端がハウジングから突出する軸を囲むように形成されてもよい。すなわち、軸受け部が回転軸側に形成されてもよい。
【0081】
(エ)上述の実施形態では、オイルシールによりハウジング内部空間と外部空間とを遮断するとした。しかしながら、ハウジング内部空間と外部空間とを遮断する部材はこれに限定されない。メカニカルシール、パッキンでもよく、また、戻り機構部や回転角検出部を収容する収容部に形成されている隙間に設けられ、収容部の内部空間と外部空間との連通を遮断する部材であればよい。
【0082】
(オ)上述の第1実施形態では、戻りばねおよびヒス部ばねは、アクセル装置正面側の内壁に係止されるとした。また、第2実施形態、第3実施形態では、戻りばね、第1ヒス部ばね、第2ヒス部ばねは、アクセル装置正面側の内壁に係止されるとした。しかしながら、戻りばねおよびヒス部ばねが係止される場所はこれに限定されない。アクセル装置背面側、すなわち、ベース部側の内壁であってもよい。この場合、戻りばねおよびヒス部ばねは、ばね本体を圧縮する方向に付勢力を発生するように設けられる。
【0083】
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0084】
1、2、3、4 ・・・アクセル装置、
5 ・・・車体、
10 ・・・ペダル(ペダル部)、
15 ・・・ペダルアーム(ペダル部)、
152 ・・・一方の端部(ペダル部の一方の端部)、
153 ・・・右側の端部(第一端部)、
154 ・・・左側の端部(第二端部)、
20 ・・・収容部、
201 ・・・ハウジング内部空間(収容部の内部空間)、
211 ・・・第1軸受け部(第一支持部)、
214 ・・・貫通孔(隙間)、
221 ・・・第2軸受け部(第二支持部)、
24 ・・・オイルシール(シール部材)、
30 ・・・回転軸、
303 ・・・一端、
304 ・・・他端、
40、90 ・・・戻り機構部、
50 ・・・ヒステリシス機構部、
60 ・・・回転角検出部(回転角検出手段)、
70 ・・・第1ヒステリシス機構部(ヒステリシス機構部)、
80 ・・・第2ヒステリシス機構部(ヒステリシス機構部)、
91 ・・・リターンロータ(回転軸)、
98 ・・・ペダルロータ(回転軸)、
100 ・・・第1軸受け部(第一支持部)、
200 ・・・第2軸受け部(第二支持部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取付可能な収容部と、
一端と他端とが前記収容部に回転可能に両持ち支持される回転軸と、
一方の端部が前記回転軸に固定され、他方の端部が運転者の踏込操作で踏み込み可能なペダル部と、
前記収容部の内部空間に収容され、前記収容部に対する前記回転軸の回転角を検出する回転角検出手段と、
前記収容部の内部空間に収容され、前記回転軸の回転をアクセル閉方向に付勢する戻り機構部と、
前記収容部の内部空間と外部空間とを連通する隙間に設けられ、前記収容部の内部空間への異物の侵入を防止するシール部材と、
を備えることを特徴とするアクセル装置。
【請求項2】
前記シール部材は、前記収容部と前記回転軸の外壁とにより形成される隙間に設けられることを特徴とする請求項1に記載のアクセル装置。
【請求項3】
前記回転軸に作用する回転力が増大するとき前記回転軸の直前の回転角に対応するアクセル開度を維持するように作用し、前記回転軸に作用する回転力が解除されるとき前記回転軸の直前の回転角に対応するアクセル開度を維持するように作用するヒステリシス特性を発生するヒステリシス機構部をさらに備え、
前記ヒステリシス機構部を前記収容部の内部空間に収容することを特徴とする請求項1または2に記載のアクセル装置。
【請求項4】
前記収容部は、前記回転軸の一端を支持する第一支持部と前記回転軸の他端を支持する第二支持部とを有し、
前記ペダル部は、前記第一支持部と前記第二支持部との間に形成される外部空間に位置する前記回転軸の中央に固定されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のアクセル装置。
【請求項5】
前記ペダル部の一方の端部は、前記収容部から突出する前記回転軸の一端に固定される第一端部と、前記収容部から突出する前記回転軸の他端に固定される第二端部とに分岐することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のアクセル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−82417(P2013−82417A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261746(P2011−261746)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】