説明

アクチュエータ、羽根駆動装置及び光学機器

【課題】ステータに対するロータの位置精度が向上したアクチュエータ、それを備えた羽根駆動装置及び光学機器を提供する。
【解決手段】アクチュエータ1は、ロータ10と、記ロータ10に装着されてロータ10と共に回転し、外周側面に溝部を有した被装着部40と、被装着部40の溝部と係合し、被装着部40を摺動回転可能に保持する脚部22a、22bを有したステータ20とを備えている。また、脚部22a、22bは、ロータ10に磁力を作用させる磁極部23a、23bをそれぞれ有し、磁極部23a、23bは、被装着部40の溝部と係合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ、羽根駆動装置及び光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ステータと、回転可能に支持されたロータとを備えたアクチュエータが知られている。ロータは、ロータを挟むように配置された2つの板状部材の、それぞれに形成された穴に、ロータの軸が挿入されることによって、ロータを回転可能に支持される(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−277927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、ステータは、2つの板状部材の一方に対して位置決めされて固定されるのが通常である。また、2つの板状部材は、通常互いに組みつけられて両者の位置関係が規定される。このため2つの板状部材間の位置精度が低いと、2つの板状部材に対するロータの位置精度も低下する。これにより、ステータに対するロータの位置精度が低下するおそれがある。
【0005】
また、2つの板上部材間の位置精度が確保されている場合であっても、ステータとステータが固定される板状部材との位置精度が低いと、ステータに対するロータの位置精度が低下するおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、ステータに対するロータの位置精度が向上したアクチュエータ、それを備えた羽根駆動装置及び光学機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、ロータと、前記ロータに装着されて前記ロータと共に回転し、外周側面に溝部を有した被装着部と、前記被装着部の前記溝部と係合し、前記被装着部を摺動回転可能に保持する第1及び第2脚部を有したステータと、を備えたアクチュエータによって達成できる。
【0008】
ステータの第1及び第2脚部が被装着部の溝部と係合し、これにより被装着部はステータに摺動回転可能に保持される。即ち、被装着部はステータに保持される。被装着部はロータに装着されているので、ステータに対するロータの位置精度が向上する。
【0009】
また、上記のアクチュエータと、開口を有した基板と、前記アクチュエータにより駆動され、前記開口に対して進退する羽根と、を備えた羽根駆動装置によっても達成できる。
【0010】
また、上記の羽根駆動装置を備えた光学機器によっても達成できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ステータに対するロータの位置精度が向上したアクチュエータ、それを備えた羽根駆動装置及び光学機器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、複数の実施例について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0013】
以下、実施例に係るアクチュエータ1について説明する。図1は、アクチュエータ1の斜視図である。図2は、アクチュエータ1の一部分を分解した斜視図である。アクチュエータ1は、ロータ10、ステータ20、コイルボビン30、コイル38、被装着部40を含む。
【0014】
ロータ10は、永久磁石からなり、周方向に異なる磁極に着磁されている。ロータ10は、円柱状である。ステータ20は、U字状に形成されている。ステータ20は、脚部22a、22bを含む。脚部22aには、コイルボビン30が挿入されている。コイルボビン30には、コイル38が巻回されている。コイルボビン30には、コイル38の両端部がそれぞれ巻き付けられる端子部32が形成されている。
【0015】
ロータ10には被装着部40が装着されている。被装着部40は合成樹脂製である。被装着部40は、図2に示すように、被装着部品41a、41bを含む。被装着部品41a、41bは、ロータ10を覆うようにしてロータ10のスラスト方向に組み付けられる。被装着部品41a、41bは、それぞれ蓋状に形成されている。被装着部品41bは、ロータ10のラジアル方向の外側に延びたアーム部48b、アーム部48bからスラスト方向の下方に延びた伝達ピン49bを含む。伝達ピン49bは、被装着部40の回転を他の部材へと伝達する機能を有している。詳しくは後述する。
【0016】
被装着部品41a、41bは、ロータ10の外形に対応した収納部42a、42bを有している。被装着部品41a、41bは、収納部42a、42b内にロータ10を嵌合させた状態で接着固定される。
【0017】
また、被装着部品41a、41bの側面には、それぞれ段部43a、43bが形成されている。段部43aは、被装着部品41aの最も径の大きい部分より小さい径を有している。段部43bも同様である。図1に示すように、段部43a、43bは、脚部22a、22bと係合している。詳細には、脚部22a、22bにそれぞれ形成された磁極部23a、23bと、段部43a、43bとが対向している。磁極部23a、23bは、コイル38の通電により互いに異なる極性に励磁される。磁極部23a、23bが互いに異なる極性に励磁されることにより、磁極部23a、23bは、段部43a、43bを介してロータ10との間で磁気的な吸引力、反発力が生じる。この磁力によって、ロータ10及び被装着部40は共に所定範囲を回転する。
【0018】
図3は、被装着部40周辺の断面図である。段部43a、43bは、脚部22a、22bによって挟まれるようにして保持されている。また、段部43a、43bと、磁極部23a、23bとの間には一定のクリアランスがある。これにより、被装着部40は、脚部22a、22bに対して摺動回転可能に保持される。段部43a、43bは、被装着部40の外周面に形成された溝部を画定している。溝部は40の周方向に延びている。溝部を画定する段部43a、43bと、脚部22a、22bとが係合することにより、ロータ10及び被装着部40は、スラスト方向、及びラジアル方向の位置が規定される。換言すれば、ロータ10は、被装着部40を介してステータ20に回転可能に保持されている。
【0019】
これにより、ステータ20に対するロータ10の位置精度は、被装着部40のみにより依存する。即ち、被装着部40の設計精度さえ向上させれば、ステータ20に対するロータ10の位置精度は向上する。この位置精度の向上により、ロータ10の回転速度やトルクのばらつきが防止できる。この理由は、ロータ10と磁極部23a、23bとの間に生じる磁力のばらつきが抑制されるからである。
【0020】
また、従来のように、ロータの軸を支持する2つの板上部材を設ける必要がない。このため、アクチュエータ1はスラスト方向の小型化が促進されている。
【0021】
また、アクチュエータ1全体をユニットとして取り扱うことができる。即ち、ロータ10、ステータ20、コイルボビン30、コイル38、被装着部40、が一体化されたユニットとして取り扱うことができ、他の装置へのアクチュエータ1の組み付け作業が容易となる。
【0022】
また、図2に例示するように、被装着部品41a、41bは、ロータ10をスラスト方向から挟み込むようにして互いに接着される。このように簡単な作業でロータ10に被装着部40を装着でき、ロータ10をステータ20に保持させることができる。
【0023】
次に、アクチュエータ1を羽根駆動装置に搭載した状態について説明する。尚、羽根駆動装置はカメラなどの光学機器に搭載される。図4は、羽根駆動装置の斜視図である。支持板50には、脚部22aの外面と当接する壁部52a、脚部22bの外面と当接する壁部52bが形成されている。また、支持板50には、ステータ20を支持板50側に抑えつける複数の係止片51が設けられている。係止片51は、先端部が爪状に形成されている。係止片51は、弾性変形可能に形成されている。これらの構造により、アクチュエータ1は支持板50に対して位置決めされる。尚、支持板50には、被装着部40の回転に伴う、伝達ピン49bの移動を逃す逃げ孔59が円弧状に形成されている。
【0024】
図5は、羽根駆動装置の側面図である。支持板50よりも下方には、薄板状の羽根70が配置されている。羽根70よりも下方には、基板60が配置されている。尚、図4においては、基板60、羽根70は図示を省略してある。伝達ピン49bは、羽根70と係合している。詳細には、羽根70に形成されたカム溝(不図示)と伝達ピン49bとが係合している。基板60には、開口61が形成されている。開口61は、不図示の撮像素子へ入射する入射光の光路を確定する。羽根70は、基板60に形成された支軸67に回転可能に嵌合している。被装着部40が回転することにより、伝達ピン49bが羽根70のカム溝内を移動する。これにより、羽根70は、支軸67回りに揺動する。これにより、羽根70は、開口61に対して進退自在に移動し、開口61を開口状態、もしくは、閉口状態とする。
【0025】
このようにアクチュエータ1を搭載した羽根駆動装置についても、装置全体の小型化、特にスラスト方向での小型化を図ることができる。また、この羽根駆動装置を光学機器に採用することにより、光学機器を小型化することができる。
【0026】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。
【0027】
アクチュエータを搭載する羽根駆動装置としては、基板に形成された開口を通過する光量を絞る絞り装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】アクチュエータの斜視図である。
【図2】アクチュエータの一部分を分解した斜視図である。
【図3】被装着部周辺の断面図である。
【図4】羽根駆動装置の斜視図である。
【図5】羽根駆動装置の側面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 アクチュエータ
10 ロータ
20 ステータ
22a、22b 脚部
23a、23b 磁極部
40 被装着部
41a、41b 被装着部品
43a、43b 段部
48b アーム部
49b 伝達ピン
50 支持板
60 基板
61 開口
70 羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、
前記ロータに装着されて前記ロータと共に回転し、外周側面に溝部を有した被装着部と、
前記被装着部の前記溝部と係合し、前記被装着部を摺動回転可能に保持する第1及び第2脚部を有したステータと、を備えたアクチュエータ。
【請求項2】
前記第1及び第2脚部は、前記ロータに磁力を作用させる第1及び第2磁極部をそれぞれ有し、
前記第1及び第2磁極部は、前記被装着部の前記溝部と係合している、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記被装着部は、第1及び第2被装着部品を含み、
前記第1及び第2被装着部品は、前記ロータをスラスト方向から挟んだ状態で互いに接着されている、請求項1又は2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記被装着部は、該被装着部の回転を他の部材へと伝達する伝達部を有している、請求項1乃至3の何れかに記載のアクチュエータ。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載のアクチュエータと、
開口を有した基板と、
前記アクチュエータにより駆動され、前記開口に対して進退する羽根と、を備えた羽根駆動装置。
【請求項6】
請求項5の羽根駆動装置を備えた光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−113092(P2010−113092A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284689(P2008−284689)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】