説明

アクチュエータシステム及びアクチュエータ装置

【課題】複数が同時に駆動される際の振動及び作動音の増大を抑えることができるアクチュエータシステムを提供する。
【解決手段】アクチュエータシステムは、それぞれアドレスが設定される複数のアクチュエータ装置A1,A2を備える。各アクチュエータ装置A1,A2は、共通の通信線を介して入力される制御信号に基づいてそれぞれ独立して駆動される。そして、アクチュエータ装置の内の複数を同時に駆動する際は、それらの駆動速度を低速とする。例えば、アクチュエータ装置A2が高速駆動している状態で、アクチュエータ装置A1を駆動する場合、アクチュエータ装置A1は、低速駆動中信号を出力して駆動せず待機する。アクチュエータ装置A2は、アクチュエータ装置A1からの低速駆動中信号が入力されると、自身を低速駆動して低速駆動中信号を出力する。すると、アクチュエータ装置A1は、低速駆動を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアクチュエータ装置が独立して駆動されるアクチュエータシステム及びアクチュエータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アクチュエータシステムとしては、複数のアクチュエータ装置を備え、それぞれのアクチュエータ装置(その駆動部)を独立して駆動させるもの(例えば車両エアコン装置等)がある。このようなアクチュエータシステムでは、各アクチュエータ装置にそれぞれアドレスを設定して複数のアクチュエータ装置及びマスタコントローラをLAN(Local area network)化することで省線化が図られている。
【0003】
ところで、このようなアクチュエータシステムとしては、アクチュエータ装置の駆動源であるモータへの供給電力を外部から選択的に小さく指定することで、モータ回転数(駆動速度)を低くし作動音(騒音レベル)を低下させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−350460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような(特許文献1参照)アクチュエータシステムでは、アクチュエータ装置の内の複数が同時に駆動される場合については対応できておらず、そのような複数のアクチュエータ装置が同時に駆動される際に振動及び作動音が増大してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、複数が同時に駆動される際の振動及び作動音の増大を抑えることができるアクチュエータシステム及びアクチュエータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、それぞれアドレスが設定される複数のアクチュエータ装置を備え、それらアクチュエータ装置が共通の通信線を介して入力される制御信号のアドレス情報及びコマンド情報に基づいてそれぞれ独立して駆動されるアクチュエータシステムであって、前記アクチュエータ装置の内の複数を同時に駆動する際は、それらの駆動速度を低速とする。
【0007】
同構成によれば、アクチュエータ装置の内の複数が同時に駆動される際は、それらの駆動速度が低速とされるため、複数が同時に駆動される際の振動及び作動音の増大を抑えることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のアクチュエータシステムにおいて、高速駆動時の前記アクチュエータ装置は、他の前記アクチュエータ装置が駆動される際に先立って低速駆動に変速され、駆動される前記アクチュエータ装置は、高速駆動時の前記アクチュエータ装置が低速駆動への変速に要する時間より大きい値の時間の経過後、又は低速駆動への変速に要する移動量より大きい値の移動量の到達後に駆動を開始する。
【0009】
同構成によれば、高速駆動時の前記アクチュエータ装置は、他の前記アクチュエータ装置が駆動される際に先立って低速駆動に変速される。又、駆動される前記アクチュエータ装置は、高速駆動時の前記アクチュエータ装置が低速駆動への変速に要する時間より大きい値の時間の経過後、又は低速駆動への変速に要する移動量より大きい値の移動量の到達後に駆動が開始される。よって、高速駆動から低速駆動に変速されるアクチュエータ装置の実際の速度が低速に達していない状態(変速中)で他のアクチュエータ装置が駆動を開始してしまうといったことが防止される。その結果、アクチュエータ装置の内の複数が同時に駆動される際に一時的に高速駆動の(高速から低速に達していない)アクチュエータ装置が存在してしまうといったことが防止される。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載のアクチュエータシステムにおいて、駆動される前記アクチュエータ装置は、他の前記アクチュエータ装置の全てが駆動していない場合、高速駆動される。
【0011】
同構成によれば、アクチュエータ装置は、他の前記アクチュエータ装置の全てが駆動していない(と判断された)場合、高速駆動されるため、その場合の移動時間を短くすることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアクチュエータシステムにおいて、前記アクチュエータ装置は、駆動する旨のコマンド情報を含む前記制御信号が入力されると、その状態を示す旨の状態信号の1つである駆動開始信号を前記他のアクチュエータ装置に対して出力し、更に他の前記アクチュエータ装置が出力することで入力された状態信号を確認して、入力された状態信号の少なくとも1つが高速駆動中である可能性のある旨の高速駆動中信号の場合では駆動せず待機し、入力された状態信号の少なくとも1つが高速駆動中ではなく低速駆動中である可能性のある旨の低速駆動中信号の場合では低速駆動して前記低速駆動中信号を他の前記アクチュエータ装置に対して出力し、入力された状態信号の全てが高速及び低速駆動中でない旨の非駆動中信号の場合では前記コマンド情報どおりに駆動してその状態を示す旨の前記状態信号を他の前記アクチュエータ装置に対して出力し、高速駆動時に前記駆動開始信号が入力されると自身を低速駆動して前記低速駆動中信号を他の前記アクチュエータ装置に対して出力する。
【0013】
同構成によれば、アクチュエータ装置に駆動する旨のコマンド情報を含む前記制御信号が入力されると、その状態を示す旨の状態信号の1つである駆動開始信号が他のアクチュエータ装置に対して出力される。更に、他のアクチュエータ装置が出力することで入力された状態信号が確認されて、入力された状態信号の少なくとも1つが高速駆動中である可能性のある旨の高速駆動中信号の場合では駆動せず待機状態となる。又、入力された状態信号の少なくとも1つが高速駆動中ではなく低速駆動中である可能性のある旨の低速駆動中信号の場合では低速駆動されて前記低速駆動中信号が他のアクチュエータ装置に対して出力される。又、入力された状態信号の全てが高速及び低速駆動中でない旨の非駆動中信号の場合では前記コマンド情報どおりに駆動されてその状態を示す旨の前記状態信号が他のアクチュエータ装置に対して出力される。そして、高速駆動時に前記駆動開始信号が入力されると速度が低速駆動に変速されて前記低速駆動中信号が他のアクチュエータ装置に対して出力される。このようにすると、各アクチュエータ装置から出力される自身の状態を示す旨の状態信号によって、各アクチュエータ装置が実際の駆動状態に近い情報を得ることができる。よって、高精度な制御を行うことができる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、入力される制御信号のアドレス情報及びコマンド情報に基づいて自身の駆動部を駆動制御するアクチュエータ装置であって、駆動する旨のコマンド情報を含む前記制御信号が入力されると、その状態を示す旨の状態信号の1つである駆動開始信号を出力し、更に入力された状態信号を確認して、入力された状態信号の少なくとも1つが高速駆動中である可能性のある旨の高速駆動中信号の場合では駆動せず待機し、入力された状態信号の少なくとも1つが高速駆動中ではなく低速駆動中である可能性のある旨の低速駆動中信号の場合では低速駆動して前記低速駆動中信号を出力し、入力された状態信号の全てが高速及び低速駆動中でない旨の非駆動中信号の場合では前記コマンド情報どおりに駆動してその状態を示す旨の前記状態信号を出力し、高速駆動時に前記駆動開始信号が入力されると自身を低速駆動して前記低速駆動中信号を出力する。
【0015】
同構成によれば、請求項4に記載の発明の効果と同様の効果を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数が同時に駆動される際の振動及び作動音の増大を抑えることができるアクチュエータシステム及びアクチュエータ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図1〜図6に従って説明する。
図1に示すように、アクチュエータシステムは、マスタコントローラ1と、複数(n個であって、nは2以上の自然数)のアクチュエータ装置A1〜Anとを備える。尚、本実施の形態のアクチュエータシステムは、車両用エアコンシステムであって、アクチュエータ装置A1〜Anは、図示しないエアコン用通路に設けられる空路ドアにそれぞれ設けられ該空路ドアを開閉駆動するためのものである。即ち、マスタコントローラ1は、例えば、空路ドアを駆動するための図示しないスイッチが操作された場合等、前記操作に応じた制御信号をアクチュエータ装置A1〜Anに対して出力するものである。
【0018】
アクチュエータ装置A1〜Anは、通信線11によりマスタコントローラ1に接続されている。又、アクチュエータ装置A1〜Anは、高電位側電源線12及び低電位側電源線(GND)13によりマスタコントローラ1を介してバッテリに接続されている。
【0019】
各アクチュエータ装置A1〜Anは、図2に示すように、通信回路21、定電圧回路22、制御回路23、駆動回路24、駆動部(駆動源)としてのモータM、及び位置センサ25を備える。尚、通信回路21、定電圧回路22、制御回路23、及び駆動回路24は、カスタム品である1つの制御ICに設けられている。
【0020】
通信回路21は、通信線11及び制御回路23に接続され、該通信線11を介して入力される制御信号(後述する状態信号を含む)を制御回路23に出力する。
定電圧回路22は、高電位側電源線12及び制御回路23に接続され、高電位側電源線12を介して供給される電圧に基づいて生成した定電圧を制御回路23に供給する。
【0021】
制御回路23は、低電位側電源線13、駆動回路24、及び位置センサ25に接続され、予め設定されたアドレスと前記制御信号のアドレス情報が一致すると、前記制御信号(そのコマンド情報)、及び位置センサ25から出力されるモータMの回転角度に応じた位置信号(パルス信号)等に基づいて駆動回路24に指令信号を出力する。又、制御回路23は、自身(アクチュエータ装置A1〜An)の状態を示す状態信号を、通信回路21を介して外部に出力することになる。
【0022】
駆動回路24は、高電位側電源線12、低電位側電源線13及びモータMに接続され、高電位側電源線12を介して供給される電圧及び前記指令信号に基づいて正回転させるための駆動電圧又は逆回転させるための駆動電圧であって、複数段階(本実施の形態では高速と低速の2段階)の速度で駆動するための駆動電圧をモータMに供給する。よって、各アクチュエータ装置A1〜Anは、制御信号のアドレス情報及びコマンド情報に基づいて自身のモータMを駆動し、ひいては空路ドアを駆動する。
【0023】
次に、本実施の形態におけるアクチュエータシステムの特徴的な動作について詳述する。
アクチュエータシステムでは、アクチュエータ装置A1〜Anの内の複数を同時に駆動する際は、それらの駆動速度を低速とする。
【0024】
詳しくは、高速駆動時のアクチュエータ装置A1〜Anは、他のアクチュエータ装置A1〜Anが駆動される際に先立って低速駆動に変更(変速)される。又、駆動されるアクチュエータ装置A1〜Anは、高速駆動時のアクチュエータ装置A1〜Anが低速駆動への変速に要する時間より大きい値の時間の経過後、又は低速駆動への変速に要する移動量より大きい値の移動量の到達後に駆動を開始する。又、駆動されるアクチュエータ装置A1〜Anは、他のアクチュエータ装置A1〜Anの全てが駆動していないと判断された場合(駆動中から停止とされたと判断された場合も含む)高速駆動される。又、その際、駆動されるアクチュエータ装置A1〜Anは、まず停止状態から低速駆動に変速され、その変速に要する時間より大きい値の時間の経過後、又は変速に要する移動量より大きい値の移動量の到達後に高速駆動に変速される。又、アクチュエータ装置A1〜Anは、高速駆動から停止する際、まず低速駆動に変速され、その変速に要する時間より大きい値の時間の経過後、又は変速に要する移動量より大きい値の移動量の到達後に停止動作を開始する。
【0025】
より詳しくは、各アクチュエータ装置A1〜Anは、常に(極短い時間間隔で)自身の状態を示す状態信号を出力し、逆に、入力される他のアクチュエータ装置A1〜Anの状態を示す状態信号に基づいて自身のモータMを駆動制御する。
【0026】
即ち、各アクチュエータ装置A1〜Anは、駆動する旨のコマンド情報を含む前記制御信号が入力されると、まず、その状態(今から駆動開始しようとしている状態)を示す旨の状態信号の1つである駆動開始信号としての低速駆動中信号を(他のアクチュエータ装置A1〜Anに対して)出力する。
【0027】
次に、駆動開始信号としての低速駆動中信号を出力したアクチュエータ装置A1〜Anは、(他のアクチュエータ装置A1〜Anが出力することで)入力された状態信号を確認して、入力された状態信号の少なくとも1つが高速駆動中である可能性のある旨の高速駆動中信号の場合では自身のモータMを駆動せず待機する。
【0028】
又、アクチュエータ装置A1〜An(前記待機していたアクチュエータ装置A1〜An含む)は、入力された状態信号の少なくとも1つが高速駆動中ではなく低速駆動中である可能性のある旨の低速駆動中信号の場合では自身のモータMを低速駆動して前記低速駆動中信号を他のアクチュエータ装置A1〜Anに対して出力する。尚、本実施の形態では、今から駆動開始しようとしている状態を示す旨の状態信号の1つである駆動開始信号を、低速駆動中の際に出力する低速駆動中信号と同じ(共用)としたため、駆動開始しようとしている状態から低速駆動された場合、低速駆動中信号を出力し続けることになる。
【0029】
又、アクチュエータ装置A1〜Anは、入力された状態信号の全てが高速及び低速駆動中でない旨の非駆動中信号の場合では前記コマンド情報どおりに自身のモータMを駆動してその状態を示す旨の前記状態信号(低速駆動中信号又は高速駆動中信号)を他のアクチュエータ装置A1〜Anに対して出力する。尚、本実施の形態のアクチュエータ装置A1〜Anは、入力された状態信号の全てが高速及び低速駆動中でない旨の非駆動中信号の場合では、前述したようにまず停止状態から低速駆動に変速され、その後、高速駆動して高速駆動中信号を出力する。又、この際、高速駆動中信号は、高速駆動が開始されるのに先立って、言い換えると高速へと変速していく直前の低速駆動中の状態で出力される。
【0030】
又、高速駆動時のアクチュエータ装置A1〜Anは、コマンド情報に含まれる停止位置に達するより第1の所定の時間前、又は第1の所定の移動量前に達すると、又は前記低速駆動中信号(駆動開始信号)が入力されると、自身(モータM)を低速駆動して前記低速駆動中信号を他のアクチュエータ装置A1〜Anに対して出力する。尚、第1の所定の時間は、高速駆動から低速駆動への変速に要する時間と低速駆動から停止状態への変速に要する時間とを足し算した時間より大きい値の時間に設定され、第1の所定の移動量は、高速駆動から低速駆動への変速に要する移動量と低速駆動から停止状態への変速に要する移動量とを足し算した移動量より大きい値の移動量に設定される。又、この際、低速駆動中信号は、高速駆動から低速駆動への変速に要する時間より大きい値の時間の経過後、又は高速駆動から低速駆動への変速に要する移動量より大きい値の移動量の到達後に出力される。
【0031】
又、低速駆動時のアクチュエータ装置A1〜Anは、コマンド情報に含まれる停止位置に達するより第2の所定の時間前、又は第2の所定の移動量前に達すると、自身の停止動作を行って前記非駆動中信号を他のアクチュエータ装置A1〜Anに対して出力する。尚、第2の所定の時間は、低速駆動から停止状態への変速に要する時間と同じに設定され、前記第2の所定の移動量は、低速駆動から停止状態への変速に要する移動量と同じに設定される。又、この際、非駆動中信号は、低速駆動から停止状態への変速に要する時間より大きい値の時間の経過後に出力される。
【0032】
次に、本実施の形態におけるアクチュエータシステムの動作の具体例を図3〜図6に従って説明する。
まず、1つのアクチュエータ装置A1のみを停止位置PAまで駆動する場合を図3に従って説明する。
【0033】
入力された状態信号の全てが非駆動中信号であるタイミングT1でアクチュエータ装置A1に停止位置PAまで駆動する旨のコマンド情報を含む制御信号が入力されると、アクチュエータ装置A1は、その状態(今から駆動開始しようとしている状態)を示す旨の状態信号の1つである駆動開始信号としての低速駆動中信号を出力する。
【0034】
次に、アクチュエータ装置A1は、(他のアクチュエータ装置A2〜Anが出力することで)入力された状態信号の全てが非駆動中信号であることを確認して、低速駆動を開始する。尚、図3では、他のアクチュエータ装置A2〜Anの内のアクチュエータ装置A2のみについての状態信号及び動作状態を図示している。
【0035】
次に、アクチュエータ装置A1は、停止状態から低速駆動への変速に要する時間より大きい値の時間の経過後又は変速に要する移動量より大きい値の移動量の到達後であるタイミングT2で、高速駆動中信号を出力して高速駆動に変速する。尚、勿論、この際も入力された状態信号の全てが非駆動中信号であることを確認している。
【0036】
次に、アクチュエータ装置A1は、コマンド情報に含まれる停止位置PAに達するより前記第1の所定の時間前、又は前記第1の所定の移動量前に達するタイミングT3で、低速駆動に変速して前記低速駆動中信号を出力する。尚、この際、低速駆動中信号は、高速駆動から低速駆動への変速に要する時間より大きい値の時間の経過後、又は高速駆動から低速駆動への変速に要する移動量より大きい値の移動量の到達後のタイミングT4で出力される。
【0037】
次に、アクチュエータ装置A1は、コマンド情報に含まれる停止位置PAに達するより前記第2の所定の時間前、又は前記第2の所定の移動量前に達するタイミングT5で、停止動作を行って前記非駆動中信号を出力する。尚、この際、非駆動中信号は、低速駆動から停止状態への変速に要する時間より大きい値の時間の経過後のタイミングT6で出力される。
【0038】
又、他のアクチュエータ装置A2が低速駆動している状態で、アクチュエータ装置A1を駆動する場合を図4に従って説明する。
入力された状態信号の1つが低速駆動中信号であるタイミングT1でアクチュエータ装置A1に駆動する旨のコマンド情報を含む制御信号が入力されると、アクチュエータ装置A1は、その状態(今から駆動開始しようとしている状態)を示す旨の状態信号の1つである駆動開始信号としての低速駆動中信号を出力する。
【0039】
次に、アクチュエータ装置A1は、入力された状態信号の1つが低速駆動中信号である(他の状態信号は非駆動中信号である)ことを確認して、低速駆動を開始する。
次に、アクチュエータ装置A1は、停止状態から低速駆動への変速に要する時間より大きい値の時間の経過後又は変速に要する移動量より大きい値の移動量の到達後であるタイミングT2でも、入力された状態信号の1つが低速駆動中信号であることを確認すると、高速駆動(高速駆動中信号)に変速せず、低速駆動(低速駆動中信号)を継続する。尚、勿論、アクチュエータ装置A2においても、同様に高速駆動(高速駆動中信号)に変速せず、低速駆動(低速駆動中信号)を継続することになる。又、図4では、入力される状態信号の全てが非駆動中信号であった場合の状態信号及び動作状態を2点鎖線で図示している。
【0040】
又、他のアクチュエータ装置A2が高速駆動している状態で、アクチュエータ装置A1を駆動する場合を図5に従って説明する。
入力された状態信号の1つが高速駆動中信号であるタイミングT1でアクチュエータ装置A1に駆動する旨のコマンド情報を含む制御信号が入力されると、アクチュエータ装置A1は、その状態(今から駆動開始しようとしている状態)を示す旨の状態信号の1つである駆動開始信号としての低速駆動中信号を出力する。
【0041】
次に、アクチュエータ装置A1は、入力された状態信号の1つが高速駆動中信号であることを確認して、駆動せず待機する。
一方、アクチュエータ装置A2は、低速駆動中信号(駆動開始信号)が入力されると、自身(モータM)を低速駆動して低速駆動中信号を出力する。尚、この際、低速駆動中信号は、高速駆動から低速駆動への変速に要する時間より大きい値の時間の経過後、又は高速駆動から低速駆動への変速に要する移動量より大きい値の移動量の到達後のタイミングT2で出力される。
【0042】
次に、アクチュエータ装置A1は、入力された状態信号の1つが低速駆動中信号である(他の状態信号は非駆動中信号である)ことを確認して、低速駆動を開始する。
又、アクチュエータ装置A1,A2が同時に低速駆動している状態で、アクチュエータ装置A2が停止した場合を図6に従って説明する。
【0043】
アクチュエータ装置A2がタイミングT1で停止動作を開始し、低速駆動から停止状態への変速に要する時間より大きい値の時間の経過後であるタイミングT2で前記非駆動中信号を出力すると、アクチュエータ装置A1は、入力された状態信号の全てが非駆動中信号であることを確認して、高速駆動中信号を出力して高速駆動に変速する。
【0044】
次に、上記実施の形態の特徴的な作用効果を以下に記載する。
(1)アクチュエータ装置A1〜Anの内の複数が同時に駆動される際は、それらの駆動速度が低速とされる(高速とされるアクチュエータ装置A1〜Anがない)ため、複数が同時に駆動される際の振動及び作動音の増大を抑えることができる。その結果、このアクチュエータシステム(車両用エアコンシステム)が搭載された車両(特に運転席)における振動及び作動音の増大を抑えることができる。
【0045】
(2)高速駆動時のアクチュエータ装置A1〜Anは、他のアクチュエータ装置A1〜Anが駆動される際に先立って低速駆動に変速される。又、駆動されるアクチュエータ装置A1〜Anは、高速駆動時のアクチュエータ装置A1〜Anが低速駆動への変速に要する時間より大きい値の時間の経過後、又は低速駆動への変速に要する移動量より大きい値の移動量の到達後に駆動が開始される。よって、高速駆動から低速駆動に変速されるアクチュエータ装置A1〜Anの実際の速度が低速に達していない状態(変速中)で他のアクチュエータ装置A1〜Anが駆動を開始してしまうといったことが防止される。その結果、アクチュエータ装置A1〜Anの内の複数が同時に駆動される際に一時的に高速駆動の(高速から低速に達していない)アクチュエータ装置A1〜Anが存在してしまうといったことが防止される。
【0046】
(3)アクチュエータ装置A1〜Anは、他のアクチュエータ装置A1〜Anの全てが駆動していない場合(駆動中から停止状態とされた場合も含む)、高速駆動されるため、その場合の移動時間(駆動時間)を短くすることができる。その結果、空路ドアを高速で駆動させることができる。
【0047】
又、例えば、アクチュエータ装置A1,A2が同時に低速駆動している状態で、アクチュエータ装置A2が停止する場合では、アクチュエータ装置A2が低速駆動から停止状態への変速に要する時間より大きい値の時間の経過後(図6中、タイミングT2参照)にアクチュエータ装置A2から非駆動中信号が出力される。よって、低速駆動から停止状態に変速されるアクチュエータ装置A2が実際に停止状態に達していない状態(変速中)でアクチュエータ装置A1〜Anが高速駆動へと変速してしまうといったことが防止される。
【0048】
(4)アクチュエータ装置A1〜Anは、高速駆動から停止する際、まず低速駆動に変速され、その変速に要する時間より大きい値の時間の経過後、又は変速に要する移動量より大きい値の移動量の到達後に(即ち一度安定した低速駆動を介して)停止動作が開始される。よって、高速駆動から直接(低速駆動を介さず)停止動作が開始される場合に比べて、停止位置の精度が向上される。
【0049】
(5)今から駆動開始しようとしている状態を示す旨の状態信号の1つである駆動開始信号を、低速駆動中の際に出力する低速駆動中信号と同じ(共用)としたため、信号の種類の増大を抑えることができる。
【0050】
(6)各アクチュエータ装置A1〜Anから出力される自身の状態を示す旨の状態信号によって、各アクチュエータ装置A1〜Anが実際の駆動状態に近い情報を得ることができる。よって、高精度な制御を行うことができる。
【0051】
上記実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、アクチュエータ装置A1〜Anは、高速と低速の2段階の速度で駆動されるものとしたが、3段階以上の複数段階の速度で駆動されるものとしてもよい。この場合、上記実施の形態で述べた前記高速が、少なくとも最も速い速度を含むように設定する。例えば、速度が最も速い、2番目に速い、最も遅い、の3段階ある場合は、その内の最も速い速度を前記高速としそれ以外を前記低速として設定してもよく、例えば複数が同時に駆動される際は、それらの駆動速度を2番目に速い速度としてもよい。又、例えば速度が最も速い、2番目に速い、3番目に速い、最も遅い、の4段階ある場合は、その内の最も速い及び2番目に速い速度を前記高速としそれ以外を低速として設定してもよく、例えば複数が同時に駆動される際は、それらの駆動速度を3番目に速い速度としてもよい。又、これらのような場合では、速度を1段階ずつ速くしたり、1段階ずつ遅くする等、他の種々の制御が可能となる。
【0052】
・上記実施の形態では、高速駆動から低速駆動に変速されるアクチュエータ装置A1〜Anは、高速駆動から低速駆動への変速に要する時間より大きい値の時間の経過後、又は高速駆動から低速駆動への変速に要する移動量より大きい値の移動量の到達後に低速駆動中信号を出力するとしたが、これに限定されず、低速駆動への変速中に出力してもよい。言い換えると、駆動されるアクチュエータ装置A1〜Anは、高速駆動時のアクチュエータ装置A1〜Anが低速駆動への変速に要する時間より大きい値の時間の経過後、又は低速駆動への変速に要する移動量より大きい値の移動量の到達後に駆動が開始されるとしたが、これに限定されず、低速駆動への変速中に駆動を開始してもよい。このようにしても、アクチュエータ装置の内の複数が同時に駆動する際は、それらの駆動速度に高速(予め設定された一定の速度である高速)が含まれないため、複数が同時に駆動される際の振動及び作動音の増大を抑えることができる。
【0053】
・上記実施の形態では、アクチュエータ装置A1〜Anは、他のアクチュエータ装置A1〜Anの全てが駆動していない場合(駆動中から停止状態とされた場合も含む)、高速駆動されるとしたが、これに限定されず、例えば、マスタコントローラ1から出力される制御信号のコマンド情報に応じて高速駆動するか否かを決定してもよい。例えば、マスタコントローラ1は、高速駆動を必要としない状況にあるアクチュエータ装置には、低速駆動する(高速駆動しない)旨のコマンド情報を含む制御信号を出力するようにしてもよい。このようにすると、高速駆動を必要としない状況にあるアクチュエータ装置は常に低速駆動となるため、その低速駆動中に他のアクチュエータ装置が駆動される場合、その駆動開始が速やかに(高速駆動から低速駆動への変速に要する時間を待つことなく)行われる。
【0054】
・上記実施の形態では、低速駆動から停止状態に変速されるアクチュエータ装置A1〜Anは、低速駆動から停止状態への変速に要する時間より大きい値の時間の経過後に非駆動中信号を出力するとしたが、これに限定されず、停止状態への変速中に出力してもよい。このようにしても、高速駆動中のアクチュエータ装置と低速(予め設定された一定の速度である低速)駆動中のアクチュエータ装置とが同時に存在してしまうことはなく、複数が同時に駆動される際の振動及び作動音の増大を抑えることができる。
【0055】
・上記実施の形態では、アクチュエータ装置A1〜Anは、高速駆動から停止する際、まず低速駆動に変速され、その変速に要する時間より大きい値の時間の経過後、又は変速に要する移動量より大きい値の移動量の到達後に(即ち一度安定した低速駆動を介して)停止動作が開始されるとしたが、高速駆動から直接(低速駆動を介さず)停止動作を開始してもよい。又、駆動されるアクチュエータ装置A1〜Anは、まず停止状態から低速駆動に変速され、その変速に要する時間より大きい値の時間の経過後、又は変速に要する移動量より大きい値の移動量の到達後に(即ち一度安定した低速駆動を介して)高速駆動に変速されるとしたが、停止状態から直接(低速駆動を介さず)高速駆動に変速してもよい。
【0056】
・上記実施の形態では、今から駆動開始しようとしている状態を示す旨の状態信号の1つである駆動開始信号を、低速駆動中の際に出力する低速駆動中信号と同じ(共用)としたが、これに限定されず、駆動開始信号を低速駆動中信号と異なる信号に変更してもよい。
【0057】
・上記実施の形態では、速度の変速に要する時間や速度の変速に要する移動量を利用して制御を行うとしたが、これに限定されず、例えば、位置センサ25から出力されるモータMの回転角度に応じた位置信号(パルス信号)を利用して制御を行うようにしてもよい。例えば、高速駆動から低速駆動に変速されるアクチュエータ装置A1〜Anは、位置センサ25からの位置信号(パルス信号)に基づいて速度が低速(予め設定された一定の速度である低速)になったと判断すると低速駆動中信号を出力するようにしてもよい。
【0058】
・上記実施の形態では、各アクチュエータ装置A1〜Anは、常に(極短い時間間隔で)自身の状態を示す状態信号を出力し、逆に、入力される他のアクチュエータ装置A1〜Anの状態を示す状態信号に基づいて自身を駆動制御するとしたが、マスタコントローラ1が上記のような制御を行う制御信号を出力するようにしてもよい。即ち、マスタコントローラ1が、アクチュエータ装置の内の複数を同時に駆動する際は、それらの駆動速度を低速とするように制御信号を出力してもよい。
【0059】
・上記実施の形態では、車両用エアコンシステムに具体化したが、例えば複数のドアウインドウを開閉駆動するためのパワーウインドウシステム等の他のシステムに具体化してもよい。
【0060】
上記各実施の形態から把握できる技術的思想について、以下にその効果とともに記載する。
(イ)請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアクチュエータシステムにおいて、前記アクチュエータ装置は、高速駆動から停止する際、まず低速駆動に変速され、その変速に要する時間より大きい値の時間の経過後、又は変速に要する移動量より大きい値の移動量の到達後に停止動作を開始することを特徴とするアクチュエータシステム。
【0061】
同構成によれば、アクチュエータ装置が高速駆動から停止する際、まず低速駆動に変速され、その変速に要する時間より大きい値の時間の経過後、又は変速に要する移動量より大きい値の移動量の到達後に(即ち一度安定した低速駆動を介して)停止動作が開始される。よって、高速駆動から直接(低速駆動を介さず)停止動作が開始される場合に比べて、停止位置の精度が向上される。
【0062】
(ロ)請求項1乃至4及び上記(イ)のいずれか1つに記載のアクチュエータシステムは、車両用エアコンシステムであって、前記アクチュエータ装置は、エアコン用通路の各空路ドアを開閉するためのものであることを特徴とする車両用エアコンシステム。
【0063】
同構成によれば、車両用エアコンシステムにおいて、請求項1乃至4及び上記(イ)のいずれか1つに記載の発明の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本実施の形態におけるアクチュエータシステムの概略図。
【図2】本実施の形態におけるアクチュエータ装置の概略図。
【図3】本実施の形態のアクチュエータシステムの動作を説明するための説明図。
【図4】本実施の形態のアクチュエータシステムの動作を説明するための説明図。
【図5】本実施の形態のアクチュエータシステムの動作を説明するための説明図。
【図6】本実施の形態のアクチュエータシステムの動作を説明するための説明図。
【符号の説明】
【0065】
11…通信線、A1〜An…アクチュエータ装置、M…モータ(駆動部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれアドレスが設定される複数のアクチュエータ装置を備え、
それらアクチュエータ装置が共通の通信線を介して入力される制御信号のアドレス情報及びコマンド情報に基づいてそれぞれ独立して駆動されるアクチュエータシステムであって、
前記アクチュエータ装置の内の複数を同時に駆動する際は、それらの駆動速度を低速とすることを特徴とするアクチュエータシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のアクチュエータシステムにおいて、
高速駆動時の前記アクチュエータ装置は、他の前記アクチュエータ装置が駆動される際に先立って低速駆動に変速され、
駆動される前記アクチュエータ装置は、高速駆動時の前記アクチュエータ装置が低速駆動への変速に要する時間より大きい値の時間の経過後、又は低速駆動への変速に要する移動量より大きい値の移動量の到達後に駆動を開始することを特徴とするアクチュエータシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアクチュエータシステムにおいて、
駆動される前記アクチュエータ装置は、他の前記アクチュエータ装置の全てが駆動していない場合、高速駆動されることを特徴とするアクチュエータシステム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアクチュエータシステムにおいて、
前記アクチュエータ装置は、駆動する旨のコマンド情報を含む前記制御信号が入力されると、その状態を示す旨の状態信号の1つである駆動開始信号を前記他のアクチュエータ装置に対して出力し、
更に他の前記アクチュエータ装置が出力することで入力された状態信号を確認して、
入力された状態信号の少なくとも1つが高速駆動中である可能性のある旨の高速駆動中信号の場合では駆動せず待機し、
入力された状態信号の少なくとも1つが高速駆動中ではなく低速駆動中である可能性のある旨の低速駆動中信号の場合では低速駆動して前記低速駆動中信号を他の前記アクチュエータ装置に対して出力し、
入力された状態信号の全てが高速及び低速駆動中でない旨の非駆動中信号の場合では前記コマンド情報どおりに駆動してその状態を示す旨の前記状態信号を他の前記アクチュエータ装置に対して出力し、
高速駆動時に前記駆動開始信号が入力されると自身を低速駆動して前記低速駆動中信号を他の前記アクチュエータ装置に対して出力することを特徴とするアクチュエータシステム。
【請求項5】
入力される制御信号のアドレス情報及びコマンド情報に基づいて自身の駆動部を駆動制御するアクチュエータ装置であって、
駆動する旨のコマンド情報を含む前記制御信号が入力されると、その状態を示す旨の状態信号の1つである駆動開始信号を出力し、
更に入力された状態信号を確認して、
入力された状態信号の少なくとも1つが高速駆動中である可能性のある旨の高速駆動中信号の場合では駆動せず待機し、
入力された状態信号の少なくとも1つが高速駆動中ではなく低速駆動中である可能性のある旨の低速駆動中信号の場合では低速駆動して前記低速駆動中信号を出力し、
入力された状態信号の全てが高速及び低速駆動中でない旨の非駆動中信号の場合では前記コマンド情報どおりに駆動してその状態を示す旨の前記状態信号を出力し、
高速駆動時に前記駆動開始信号が入力されると自身を低速駆動して前記低速駆動中信号を出力することを特徴とするアクチュエータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−203838(P2007−203838A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23679(P2006−23679)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】