説明

アクチュエータ駆動システムと映像機器

【課題】1つのドライブ回路で圧電型と電磁型のどちらでも対応することのできるアクチュエータ駆動システムを提供する。
【解決手段】電磁型アクチュエータを駆動させるための電磁型制御信号を出力する前置回路30と、この前置回路30から出力される電磁型制御信号によって前記電磁型アクチュエータを駆動させるドライブ回路20とを備えたアクチュエータ駆動システムであって、前置回路30は、圧電型アクチュエータを駆動させるための圧電型制御信号に基づいてドライブ回路20を動作させて、ドライブ回路20から圧電型アクチュエータを駆動させる圧電型駆動電圧を出力させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧電型アクチュエータと電磁型アクチュエータのどちらでも駆動させることのできるアクチュエータ駆動システムと、このアクチュエータ駆動システムを備えた映像機器とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧電型アクチュエータと電磁型アクチュエータとが知られている(特許文献1,2参照)。
【0003】
圧電型アクチュエータは、圧電体の一方の端子に正弦波電圧を印加させ、圧電体の他方の端子に反転した正弦波電圧を印加させて、その圧電体を伸縮させるものである。
【0004】
電磁型アクチュエータは、可動板にコイルを設け、このコイルに電流を流すことにより可動板を揺動させるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3804312号公報
【特許文献2】特開2003−270558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、圧電型アクチュエータの場合、圧電素子に掛ける必要な電圧は数10Vから数100Vと比較的高い電圧であり、その高い電圧に耐えられる素子が必要とされるが、電流はそれほど必要としない。これに対して、電磁型アクチュエータの場合、コイルを駆動することになるので、電圧は比較的小さくて済むが、それなりの電流をコイルに供給しなければならない。
【0007】
つまり、ドライブ回路への要求が全く異なっており、圧電型アクチュエータと電磁型アクチュエータとでは別々のドライブ回路を用いなければならないという問題があった。
【0008】
この発明の目的は、1つのドライブ回路で圧電型と電磁型のどちらでも対応することのできるアクチュエータ駆動システムと、このアクチュエータ駆動システムを備えた映像機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、電磁型アクチュエータを駆動させるための電磁型制御信号を出力する前置回路と、この前置回路から出力される電磁型制御信号によって前記電磁型アクチュエータを駆動させるドライブ回路とを備えたアクチュエータ駆動システムであって、
前記前置回路は、圧電型アクチュエータを駆動させるための圧電型制御信号に基づいて前記ドライブ回路を動作させて、該ドライブ回路から圧電型アクチュエータを駆動させる圧電型駆動電圧を出力させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、圧電型と電磁型のどちらのアクチュエータであっても1つのドライブ回路で対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明に係るアクチュエータ駆動システムの構成を示したブロック図である。
【図2】圧電型のアクチュエータの構成を概略的に示した説明図である。
【図3】図2のアクチュエータの圧電素子に印加する駆動電圧を示した説明図である。
【図4】電磁型のアクチュエータの構成を概略的に示した説明図である。
【図5】図4のアクチュエータを駆動させるためのドライブ回路の構成を示した説明図である。
【図6】ドライブ回路を駆動させる電流駆動信号を示した波形である。
【図7】(A)はアクチュエータに流れる電流の向きを示した説明図、(B)は(A)と逆方向に流れる電流の向きを示した説明図である。
【図8】圧電型のアクチュエータを接続したアクチュエータ駆動システムを示した回路図である。
【図9】電磁型のアクチュエータを接続したアクチュエータ駆動システムを示した回路図である。
【図10】映像機器の構成を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明に係るアクチュエータ駆動システムと映像機器の実施の形態である実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0013】
[第1実施例]
[アクチュエータ駆動システム]
図1に示すアクチュエータ駆動システム10は、アクチュエータ11(図2参照)を駆動させるドライブ回路(駆動回路)20と、このドライブ回路20を動作させる前置回路30とを備えている。
[アクチュエータ]
アクチュエータ11は、例えば圧電型アクチュエータの場合、図2に示すように、レーザ光を偏向するためのミラーである振動子12と、この振動子12を軸12a回りに回動させる圧電素子13a〜13dとを有している。圧電素子13a,13bは駆動電圧V1で駆動され、圧電素子13c,13dは駆動電圧V2で駆動される。なお、圧電素子13a〜13dの裏面は共通電極となっており、一定の固定電圧が印加されるようになっている。
【0014】
駆動電圧V1,V2は、図3に示すように、互いに180度位相がずれており、この駆動電圧V1,V2によって振動子12を軸12aを中心にして左右に回動させていくものである。振動子12の回動の説明は、特開2011−4339号公報に記載されているので、ここでは省略する。
【0015】
アクチュエータ11は、電磁型アクチュエータの場合、図4に示すようにヨーク14に取り付けた磁石15と、トーションバー16aに支持されるとともにレーザ光を偏向させるためのミラー16と、ミラー16の裏面に設けたコイル17とを有している。コイル17に電流を流すことによってミラー16をトーションバー16a回りに回動させるものであり、電流の向きによって回動方向を変えるものである。
[ドライブ回路]
ドライブ回路20は、図5に示すように、P−チャンネルFETであるスイッチ素子Q1,Q4と、N−チャンネルFETであるスイッチ素子Q2,Q3とを有し、スイッチ素子Q1,Q4のゲートに図6に示すLレベルの電流駆動信号G3(電圧V−)が入力するとスイッチ素子Q1,Q4がオンして図7(A)に示すように駆動電流I1が流れ、スイッチ素子Q2,Q3のゲートに図6に示すHレベルの電流駆動信号G4(電圧V+)が入力するとスイッチ素子Q2,Q3がオンして図7(B)に示すように駆動電流I2が流れるようになっている。駆動電流I1と駆動電流I2は大きさが同じでコイル17に流れる電流の向きが異なるだけである。
[前置回路]
前置回路30は、図1に示すように圧電型アクチュエータ駆動用の電圧駆動信号Vin−A(Vp,Vn)を入力するアンプ回路40と、電磁型アクチュエータ駆動用の電流駆動信号Vin−Dを入力する制御回路50と、アンプ回路40と制御回路50から出力される信号を選択するスイッチ回路60とを有している。駆動信号Vin−A,Vin−Dは図示しない制御部から出力されるものであり、この制御部は、中央制御ユニット(図示せず)からの走査信号が入力されると電流駆動信号Vin−Aまたは電圧駆動信号Vin−Dを出力するもので、電磁型アクチュエータを駆動する場合、電流駆動信号Vin−Aを出力するように、また、圧電型アクチュエータを駆動する場合、電圧駆動信号Vin−Dを出力するように予め設定しておく。
【0016】
アンプ回路40は、図8に示すようにオペアンプ41,42とバイアス回路43,44とを有している。
【0017】
バイアス回路43は、直列接続された4つの抵抗R1a〜R1dから構成されており、抵抗R1dの一方の端子は接地されている。また、抵抗R1bと抵抗R1cとの接続点がオペアンプ41の出力端子に接続されている。
【0018】
バイアス回路44は、直列接続された4つの抵抗R2a〜R2dから構成されており、抵抗R2dの一方の端子は接地されている。また、抵抗R2bと抵抗R2cとの接続点がオペアンプ42の出力端子に接続されている。
【0019】
スイッチ回路60は、4つのスイッチS1〜S4から構成されている。スイッチS1の切片S1aは端子Aに接続され、接点S1bは抵抗R1aと抵抗R1bとの接続点に接続され、接点S1cは制御回路50の出力端子50aに接続されている。端子Aはドライブ回路20のスイッチ素子Q1のゲートに接続されている。
【0020】
スイッチS2の切片S2aは端子Bに接続され、スイッチS2の接点S2bは抵抗R1cと抵抗R1dとの接続点に接続され、接点S2cは制御回路50の出力端子50bに接続されている。端子Bはドライブ回路20のスイッチ素子Q2のゲートに接続されている。
【0021】
スイッチS3の切片S3aは端子Cに接続され、スイッチS3の接点S3bは抵抗R2aと抵抗R2bとの接続点に接続され、接点S3cは制御回路50の出力端子50cに接続されている。端子Cはドライブ回路20のスイッチ素子Q3のゲートに接続されている。
【0022】
スイッチS4の切片S4aは端子Dに接続され、スイッチS4の接点S4bは抵抗R2cと抵抗R2dとの接続点に接続され、接点S4cは制御回路50の出力端子50dに接続されている。端子Dはドライブ回路20のスイッチ素子Q4のゲートに接続されている。
【0023】
制御回路50は、電流駆動信号Vin−Dを入力すると、出力端子50a,50dから図6に示す電流駆動信号G3を出力し、出力端子50b,50cから電流駆動信号G4を出力する。
[動 作]
次に、上記のように構成されるアクチュエータ駆動システム10の動作について説明する。
[電磁型アクチュエータ]
最初に電磁型のアクチュエータを駆動する場合について説明する。
【0024】
先ず、図9に示すように、電磁型のアクチュエータ(図4参照)をドライブ回路20の出力端子20a,20bに接続する。ドライブ回路20の電源には前置回路30の電源V+,V−を利用する。
【0025】
次に、制御回路50によってスイッチS1〜S4の切片S1a〜S4aを接点S1c〜S4cに接続させる。
【0026】
また、前置回路30のオペアンプ41,42の入力端子(反転端子,非反転端子)を接地する。
【0027】
図示しない制御部は、中央制御ユニット(図示せず)からの走査信号が入力されると電流駆動信号Vin−Dを出力し、前置回路30の制御回路50が電流駆動信号Vin−Dを入力すると、図6に示す電流駆動信号(電磁型制御信号)G3を制御回路50の出力端子50a,50dから出力し、電流駆動信号(電磁型制御信号)G4を制御回路50の出力端子50b,50cから出力する。
【0028】
出力端子50a,50dから出力された電流駆動信号G3はスイッチS1,S4を介してドライブ回路20のスイッチ素子Q1,Q4のゲートに入力し、出力端子50b,50cから出力された電流駆動信号G4はスイッチS2,S3を介してドライブ回路20のスイッチ素子Q2,Q3のゲートに入力する。
【0029】
スイッチ素子Q1,Q4のゲートに電流駆動信号G3のLレベルが入力されるとスイッチ素子Q1,Q4がオンし、スイッチ素子Q2,Q3のゲートに電流駆動信号G4のLレベルが入力されるとスイッチ素子Q2,Q3がオフする。スイッチ素子Q2,Q3がオフし、スイッチ素子Q1,Q4がオンすることにより、図7(A)に示すように駆動電流I1が流れる。この駆動電流I1は図4に示すアクチュエータのコイル17に流れ、ミラー16がトーションバー16aを中心にして例えば上方に回動していく。
【0030】
次に、スイッチ素子Q1,Q4のゲートに電流駆動信号G3のHレベルが入力されるとスイッチ素子Q1,Q4がオフし、スイッチ素子Q2,Q3のゲートに電流駆動信号G4のHレベルが入力されるとスイッチ素子Q2,Q3がオンする。スイッチ素子Q2,Q3がオンし、スイッチ素子Q1,Q4がオフすることにより、図7(B)に示すように駆動電流I2が流れ、この駆動電流I2が図4に示すアクチュエータのコイル17に流れ、ミラー16がトーションバー16aを中心にして下方に回動していく。このようにミラー16が上下に回動してレーザ光を走査していくことになる。
[圧電型アクチュエータ]
次に、電磁型のアクチュエータから圧電型のアクチュエータに変更して駆動する場合について説明する。
【0031】
先ず、図8に示すようにドライブ回路20の出力端子20a,20bに圧電型のアクチュエータ11(図2参照)を接続する。また、前置回路30のオペアンプ41,42の反転入力端子を抵抗Rsを介してそれぞれ接地し、ドライブ回路20の出力端子20a,20bを抵抗Rfを介してオペアンプ41,42の反転入力端子に接続する。ドライブ回路20の電源は、高電圧Vd+,Vd−を出力する別な高電圧源(図示せず)を使用する。
【0032】
次に、制御回路50によってスイッチS1〜S4の切片S1a〜S4aを接点S1b〜S4bに接続させる。
【0033】
これらスイッチS1〜S4の接続や抵抗Rf,Rsの接続によって、ドライブ回路20のスイッチ素子Q1〜Q4は、オン・オフ動作させるものではなくリニア(アナログ的)に動作させるようにし、オペアンプ41からスイッチ素子Q1,Q2までを1個のオペアンプを構成し、オペアンプ42からスイッチ素子Q3,Q4までを1個のオペアンプを構成するようにしたものである。これら1個のオペアンプの増幅率は(1+Rs/Rf)となる。
【0034】
いま、中央制御ユニット(図示せず)からの走査信号が入力されると、図示しない制御部は、前置回路30のオペアンプ41,42の非反転入力端子へ電圧駆動信号(圧電型制御信号)Vp+,Vn+を出力する。
【0035】
電圧駆動信号Vp+,Vn+は図8に示すように正弦波状の駆動信号であり、電圧駆動信号Vp+と電圧駆動信号Vn+とは位相が180°ずれている。
【0036】
そして、電圧駆動信号Vp+(Vn+)は、オペアンプ41(42)からスイッチ素子Q1,Q2(Q3,Q4)までの1個のオペアンプによって上記増幅率で増幅された図3に示す正弦波状の駆動電圧(圧電型駆動電圧)となって、図2に示す圧電型のアクチュエータ11の圧電素子13a,13b(13c,13d)に印加する。この印加により、振動子12は軸12aを中心にして左右に回動してレーザ光を走査していく。
【0037】
このように、アクチュエータ11を電磁型から圧電型に変更する場合や逆に圧電型から電磁型に変更する場合、ドライブ回路20の出力端子20a,20bに変更するアクチュエータを接続し、オペアンプ41,42の入力端子の接続を図7または図8に示すように変えるだけでよく、ドライブ回路20を変更する必要がなく、その交換作業もいたって簡単に行えることになる。
【0038】
すなわち、圧電型と電磁型のどちらのアクチュエータであっても1つのドライブ回路20で対応することができる。
[映像機器]
図10はアクチュエータ駆動システム10を適用した映像機器200を示したものである。この映像機器200は、スクリーン201にレーザ光を走査させる圧電型の二次元アクチュエータ202と、二次元アクチュエータ202のミラー(図示せず)に向けてレーザ光を射出するレーザ光源203と、二次元アクチュエータ202のミラーを垂直軸回りに回動させるアクチュエータ駆動システム10と、そのミラーを水平軸回りに回動させるアクチュエータ駆動システム10Aと、映像信号を出力するビデオコーダ204と、このビデオコーダ204から出力される少なくとも1画面分の映像信号を記憶するフレームメモリ(図示せず)を有する制御装置205とを備えている。
【0039】
制御装置205は、フレームメモリに記憶された映像信号に基づいてレーザ光源203やアクチュエータ駆動システム10,10Aを制御して、スクリーン201に映像信号に基づいた画像を表示させるものである。
【0040】
アクチュエータ駆動システム10はレーザ光を水平走査させ、アクチュエータ駆動システム10Aはレーザ光を垂直方向へ走査させるものであり、アクチュエータ駆動システム10とアクチュエータ駆動システム10Aとは同じ構成となっている。
【0041】
二次元アクチュエータ202を電磁型のアクチュエータに交換する場合、第1実施例と同様に、図8に示すオペアンプ41,42の入力端子の接続状態から図7に示す接続状態に変え、ドライブ回路20の電源を変えればよいだけである。電磁型から圧電型に変更する場合も同様である。
【0042】
この発明は、上記実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【符号の説明】
【0043】
10 アクチュエータ駆動システム
20 ドライブ回路
30 前置回路
40 アンプ回路
50 制御回路
60 スイッチ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁型アクチュエータを駆動させるための電磁型制御信号を出力する前置回路と、この前置回路から出力される電磁型制御信号によって前記電磁型アクチュエータを駆動させるドライブ回路とを備えたアクチュエータ駆動システムであって、
前記前置回路は、圧電型アクチュエータを駆動させるための圧電型制御信号に基づいて前記ドライブ回路を動作させて、該ドライブ回路から圧電型アクチュエータを駆動させる圧電型駆動電圧を出力させることを特徴とするアクチュエータ駆動システム。
【請求項2】
前記前置回路は、前記電磁型制御信号を出力する制御回路と、前記圧電型制御信号に基づいて前記ドライブ回路を圧電型駆動回路として動作させるアンプ回路と、前記制御回路とアンプ回路のどちらか一方を選択して前記ドライブ回路に接続するスイッチ回路とを有し、
前記スイッチ回路は、電磁型アクチュエータを駆動させる場合、前記制御回路とドライブ回路とを接続して該ドライブ回路を制御回路の電磁型制御信号で動作させ、圧電型アクチュエータを駆動させる場合、前記アンプ回路とドライブ回路とを接続して該ドライブ回路を圧電型駆動回路として動作させることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ駆動システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のアクチュエータ駆動システムを備えたことを特徴とする映像機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−92672(P2013−92672A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235011(P2011−235011)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】