説明

アクティブインダクタ

【課題】アクティブインダクタを提供する。
【解決手段】ソース、ドレイン、及びゲートを含むpMOSトランジスタであって、前記pMOSトランジスタの前記ソースが電源Vddと接続し、抵抗Rの一端が前記pMOSトランジスタの前記ゲートに接続し、前記抵抗Rの他端が前記pMOSトランジスタの前記ドレインに接続している回路において、電源からの直流バイアスの略フルレンジに対して、インダクテイブインピーダンスを生成し、インダクタの特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、一般にアクティブインダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
インダクタは、一般に、それを通過する電流によって作られる磁場のエネルギーを記憶することができる受動的な電気的な構成要素である。磁気エネルギーを記憶するインダクタの能力は、そのインダクタンス(シンボルとしてL)は、ヘンリー「H」(「H」は、アメリカの科学者J・ヘンリーの名をとって名づけられた)を単位として測定される。インダクタンスは電流通過導体周辺で磁場形成から生じる。そして、それは電流の変化に抵抗する性質がある。導体を流れる電流は、電流に比例した磁束を形成する。この電流の変化は磁束の対応する変化を引き起こす。次に、ファラデー法則によって、この電流の変化に対抗する起電力(EMF)を生成する。インダクタンスは、電流の単位変化につき生成される起電力の量の値である。定義上、回路の電流変化のレートが1秒につき1アンペアであり、結果として生じる起電力が1ボルトである場合、回路のインダクタンスは1ヘンリーである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の一側面では、アクティブインダクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一側面では、ソース、ドレイン、及びゲートを含むpMOSトランジスタであって、前記pMOSトランジスタの前記ソースが電源と接続している、pMOSトランジスタと;一端と他端とを含む抵抗であって、前記抵抗の前記一端が前記pMOSトランジスタの前記ゲートに接続し、前記抵抗の前記他端が前記pMOSトランジスタの前記ドレインに接続している、抵抗と;を有する回路が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】ジャイレータに基づく回路としてインプリメントされるいくつかの実施例のアクティブインダクタを示す図である。
【図2】アクティブインダクタの例及びその入力インピーダンスの周波数特性を示す図である。
【図3】インダクティブインピーダンスが実質的に完全な直流(DC)バイアスの範囲を通じて作動することが可能であるいくつかのアクティブインダクタを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
インダクタは、交流電流を遅延させかつ再形成する能力を有するため、電流及び電圧が時間的に変化する基本的部品のうちの1つである。電気回路のインダクタの効果は、回路に対して電流が変化するのを阻止する。これは、回路における電流の変化の割合に比例して、電圧を増加させることによってなされる。インダクタンスLを持つインダクタの両端の時間的に変化する電圧v(t)と、これを通過する時間的に変化する電流i(t)との間の関係は、以下のような微分方程式により表現できる。
【数1】

【実施例】
【0007】
インダクタを構成するための様々なデザインが存在する。例えば、導電性の材料(例えば、銅線)を中空、強磁性材料のコアに巻き付けたコイルとして構成することができる。その他の例としては、集積回路(IC)の要素として導入される場合、インダクタの大きさは比較的小さく、ジャイレータ(gyrator)ベースのものが望ましく、これは、キャパシタ及びその他のアクティブ素子を利用して、キャパシタインピーダンスをインダクティブインピーダンスに変換し、インダクタのように振る舞う。これらの、広い周波数レンジにおいて、インダクティブインピーダンスを生成するアクティブ素子として、このような回路は「アクティブインダクタ」と呼ばれる。
【0008】
ジャイレータは、パッシブであり、線形であり、ロスレスであり、2ポートを有し、不可逆のネットワーク素子である。ジャイレータの重要な性質は、電気的な構成要素又はネットワークの電圧電流特性を逆にするということである。線形要素の場合には、インピーダンスも逆(inverted)となる。換言すれば、キャパシティブ回路をインダクティブとして振る舞うようにさせることができる。図1は、インダクタをインプリメントする幾つかの例示的回路を示している。より具体的には、図1(a)は、ジャイレータベースの回路の例を示している。図1(b)は、シングルエンド、シングルサイドの図1(a)に示したジャイレータベースの回路のバリエーションを示している。図1(c)及び図1(d)は、ジャイレータベースの回路の2つのバリエーションを示している。このクラスの回路の原理は、キャパシタ(明示的なキャパシタ又はトランジスタゲートキャパシタ)の電流をダンプ(dump)するトランスインピーダンス増幅器によって、入力電圧を集積し、得られた電圧を他のトランスインピーダンス増幅器を介して入力に転送することである。したがって、入力電圧の積分となる入力電流(すなわちインダクティブの振る舞い)を達成する。
【0009】
図1に示したこれらの回路のバリエーションの各々において、Zinは、矢印で示す方向で示される回路への入力インピーダンスを示し、Vddは、電源を示す。例えば、図1(a)及び図1(b)に示される回路においては、入力インピーダンスは以下のように示される。
【数2】

【0010】
図2(a)は、低Q増幅器に一般に利用されるアクティブインダクタ回路を示している。そして、図2(b)は、図2(a)に示された回路の入力インピーダンスの周波数特性を示している。図2(a)に示された回路では、nMOS(nタイプMOS)トランジスタのゲートに抵抗が接続されている。電源は、nMOSトランジスタのソースに接続されている。この場合、入力インピーダンスは、以下の式によって算出される。
【数3】

【0011】
式(3)において、Rは抵抗の抵抗値であり、Cgsは、nMOSトランジスタのゲート・ソース間のキャパシタンスであり、gは、nMOSトランジスタの相互コンダクタンスである。
【0012】
図2(a)における回路は、図1のジャイレータベースのトポロジよりも、よりシンプルである。更に、図2(b)に示されるそのインピーダンスの特性から、R>1/gである場合、回路は周波数がゼロより高く、トランジスタのユニティゲイン周波数(unity gain frequency)までの場合に、インダクタとして振る舞う。
【0013】
図1及び図2に示すアクティブインダクタの共通の課題は、ゲート・ソース間電圧が、閾値Vより高くなければならない点である。これは、名目上の(nominal)電源Vddよりも高いゲートサプライ電圧Vであるか、又は、Vdd−Vより低いアクティブインダクタの動作電圧に制限される。何れの場合においても、実際の回路の利用性を大きく低下させる。例を用いて、この課題を更に説明する。図2(a)の回路を取り上げる。位置201の電圧がVであり、位置203の電圧がVであるとする。回路がインダクタとして振る舞うために十分な電流が存在するためには、V−VはVより大きいことが必要である。
【0014】
この課題を克服するための、インダクタの特性を持つ回路の例を図3に示す。例示されている回路は、式(1)に定義したように、インダクタの振る舞いをシミュレートする。入力インピーダンスZinは、式(2)を用いて算出される。これらの実施例の各々において、追加的な電源を用いること無く、直流(DC)バイアス(すなわち、0からVdd)の略フルレンジに対して、インダクティブインピーダンスが動作し得る。
【0015】
図3(a)に示す実施例において、抵抗が、pMOS(pタイプMOS)トランジスタのドレインとゲートとにそれぞれ接続されている。電源は、pMOSトランジスタのソースに接続されている。図3(b)に示す実施例においては、図3(a)の回路に電流源が接続されている。これは、その一端がpMOSトランジスタのゲート及び抵抗に接続されており、他端がグラウンドに接続されている。
【0016】
図3(c)に示す実施例においては、pMOS回路と相互補完的なnMOS回路であり、図3(a)に示す回路と同様の特性を有する。この場合、抵抗は、nMOSトランジスタのソースとゲートにそれぞれ接続されている。nMOSトランジスタのドレインは、グラウンドに接続されている。図3(d)に示される実施例において、図3(c)に示される回路に電流源が追加されている。電流源の一端がnMOSトランジスタのゲートと抵抗に接続され、他端がグラウンドに接続されている。
【0017】
図3(e)に示された実施例においては、pMOSトランジスタ及びnMOSトランジスタの両者が利用されている。この回路は、基本的に、図3(a)及び図3(c)に示された二つの回路のコンビネーションである。抵抗は、pMOSトランジスタのドレイン及びゲートにそれぞれ接続される。抵抗は、また、nMOSトランジスタのソース及びゲートにそれぞれ接続される。加えて、pMOSトランジスタのドレインとnMOSトランジスタのソースとが接続される。pMOSトランジスタのゲートとnMOSトランジスタのゲートとが接続される。電源は、pMOSトランジスタのソースへ接続されている。nMOSトランジスタのドレインは、グラウンドへ接続されている。
【0018】
本明細書において、コンピュータ可読の媒体は、1つ以上の非一時的で、有形の、構造を有するコンピュータ可読のストレージを意味する。コンピュータ可読の媒体の例としては、非制限的に、半導体ベースの又はその他の集積回路(IC)(例えば、FPGA、ASIC、ハードディスク、HDD、ハイブリッドハードドライブ(HHD)、光ディスク、光ディスクドライブ(ODD)、RAMドライブ、セキュアデジタルカード、セキュアデジタルドライブ、その他の適切なコンピュータ可読のストレージ媒体、又は、必要に応じてこれらの2つ以上の組合せを含む。本明細書において、コンピュータ可読の媒体として、米国特許法101条において保護適格性のない媒体は排除される。本明細書において、コンピュータ可読の媒体として排除されるものとしては、米国特許法101条の保護適格性のない、信号伝送の一時的形態(例えば、電子的又は電磁的信号の伝搬そのもの)が挙げられる。コンピュータ可読の非一時的ストレージ媒体としては、揮発性、不揮発性、必要に応じて揮発性及び不揮発性の組合せの媒体が挙げられる。
【0019】
本明細書の開示は、1つ以上のコンピュータ可読の記憶媒体を意図しており、適切な媒体にインプリメントすることができる。特定の実施例において、コンピュータ可読の記憶媒体は、1つ以上のプロセッサの一部分(例えば、1つ以上の内部レジスタ又はキャッシュ)、1つ以上のメモリの一部分、1つ以上のストレージの部分、又は適切な場合にはこれらの組合せとして、インプリメントすることができる。特定の実施例において、コンピュータ可読の記憶媒体としては、RAM及びROMが挙げられる。特定の実施例において、コンピュータ可読の媒体としては、揮発性、又は不揮発性メモリが挙げられる。特定の実施例において、1つ以上のコンピュータ可読の記憶媒体は、ソフトウエアを記憶できる。ソフトウエアとしては、1つ以上のアプリケーション、ブートコード、1つ以上のコンピュータプログラム、1つ以上の実行可能形式、1つ以上の命令、ロジック、機械コード、1つ以上のスクリプト、又はソースコード等が挙げられる。特定の実施例において、ソフトウエアは、1つ以上のアプリケーションプログラミングインタフェース(API)を含んでもよい。本明細書の開示は、あらゆる適切なソフトウエア、又はそれ以外の適切なプログラミング言語又はプログラミング言語の組合せによって記述又は表現されてもよい。特定の実施例において、ソフトウエアは、ソースコード又はオブジェクトコードとして表現されてもよい。特定の実施例において、ソフトウエアは高級プログラミング言語、例えば、C、Perl、又は適切なその拡張によって表現される。特定の実施例において、ソフトウエアは低レベルプログラミング言語、例えば、アセンブラ言語(又は機械語コード)によって表現される。特定の実施例において、ソフトウエアはJAVA(登録商標)、C、又はC++によって表現される。特定の実施例において、ソフトウエアは、ハイパーテキストマークアップ言語(HTML)、拡張マークアップ言語(XML)、又はその他の適切なマークアップ言語で表現される。
【0020】
本明細書において、「又は」は、文脈において明示的に指定されない限り、包括的(inclusive)であり、非包括的(exclusive)ではない。したがって、「A又はB」は、文脈において明示的に指定されない限り「A、B、又は、その両者」を意味する。更に、「及び」は、結合およびそれぞれの併存を意味する。したがって、「A及びB」は、「結合(jointly)又は併存(severally)したA及びB」を意味する。
【0021】
この開示は、当業者が理解できる範囲での、本明細書に開示された実施例の、全ての変更、置き換え、変形、変換、修正を意図している。同様に、適切な場合には、添付の請求項は、当業者が理解できる範囲での、本明細書に開示された実施例の、全ての変更、置き換え、変形、変換、修正を意図している。更に、装置又はシステム、又は装置又はシステムの部分に係る添付の請求項は、装置又はシステムの特定の機能に適合し、これらを構成し、可能化し、実行させる。このことは、この特定の機能が適切に適合し、動作するようにされている限り、この特定の機能が、達成され、動作状態とされ、又はアンロックされるか否かに関わらない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソース、ドレイン、及びゲートを含むpMOSトランジスタであって、前記pMOSトランジスタの前記ソースが電源と接続している、pMOSトランジスタと;
一端と他端とを含む抵抗であって、前記抵抗の前記一端が前記pMOSトランジスタの前記ゲートに接続し、前記抵抗の前記他端が前記pMOSトランジスタの前記ドレインに接続している、抵抗と;
を有する回路。
【請求項2】
前記回路は、インダクタの特性を有し、かつインダクティブインピーダンスを生成する、請求項1記載の回路。
【請求項3】
一端と他端とを含む電流源であって、前記電流源の前記一端が前記pMOSトランジスタの前記ゲート及び前記抵抗の前記一端に接続し、かつ前記電流源の前記他端がグラウンドに接続している、電流源、を更に有する請求項1記載の回路。
【請求項4】
前記回路は、直流バイアスの略フルレンジに渡って動作するインダクティブインピーダンスを生成する、請求項3記載の回路。
【請求項5】
前記直流バイアスは、0ボルトと前記電源の電圧との間である、請求項4記載の回路。
【請求項6】
ソース、ドレイン、及びゲートを含むnMOSトランジスタであって、前記nMOSトランジスタの前記ドレインがグラウンドに接続している、nMOSトランジスタと;
一端と他端とを含む抵抗であって、前記抵抗の前記一端が前記nMOSトランジスタの前記ゲートに接続し、前記抵抗の前記他端が前記nMOSトランジスタの前記ソースに接続している、抵抗と;
一端と他端とを含む電流源であって、前記電流源の前記一端が前記nMOSトランジスタの前記ゲート及び前記抵抗の前記一端に接続している、電流源と;
を有する回路。
【請求項7】
前記回路は、インダクタの特性を有し、かつインダクティブインピーダンスを生成する、請求項6記載の回路。
【請求項8】
前記回路は、直流バイアスの略フルレンジに渡って動作するインダクティブインピーダンスを生成する、請求項6記載の回路。
【請求項9】
ソース、ドレイン、及びゲートを含むpMOSトランジスタであって、前記pMOSトランジスタの前記ソースが電源と接続している、pMOSトランジスタと;
ソース、ドレイン、及びゲートを含むnMOSトランジスタであって、前記nMOSトランジスタの前記ソースが、前記pMOSトランジスタの前記ドレインと接続し、前記nMOSトランジスタの前記ゲートが、前記pMOSトランジスタの前記ゲートと接続し、かつ前記nMOSトランジスタの前記ドレインがグラウンドに接続している、nMOSトランジスタと;
一端と他端とを含む抵抗であって、前記抵抗の前記一端が前記pMOSトランジスタの前記ゲート及び前記nMOSトランジスタの前記ゲートと接続し、かつ前記抵抗の前記他端が前記pMOSトランジスタの前記ドレイン及び前記nMOSトランジスタの前記ソースに接続している、抵抗と;
を有する回路。
【請求項10】
前記回路は、インダクタの特性を有し、かつインダクティブインピーダンスを生成する、請求項9記載の回路。
【請求項11】
前記回路は、直流バイアスの略フルレンジに渡って動作するインダクティブインピーダンスを生成する、請求項9記載の回路。
【請求項12】
前記直流バイアスは、0ボルトと前記電源の電圧との間である、請求項11記載の回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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