説明

アクティブマトリクス型表示装置のリペア方法

【課題】効率良く、かつ、高い信頼性でリペアすることが可能なアクティブマトリクス型表示装置、およびそのリペア方法を提供する。
【解決手段】表示装置は、表示素子16と、この表示素子に接続されたトランジスタ26を含み表示素子を駆動する画素回路と、を有し、基板8上にマトリクス状に配設された複数の画素部を備えている。トランジスタは、前記基板上に形成されているとともにリペア領域50bを有した半導体層50を備えている。表示素子は、基板上に層間膜を介して形成されているとともにトランジスタに接続された第1電極62、およびこの第1電極に重ねて形成された第2電極66を有し、第1電極は、トランジスタのリペア領域と重なって位置した開口部63を有している。リペア時、基板側からリペア領域にレーザ光を照射し、半導体層を切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブマトリックス型表示装置のリペア方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型、軽量、低消費電力の特徴を活かして、液晶表示装置に代表される平面表示装置の需要が急速に伸びている。中でも、オン画素とオフ画素とを電気的に分離し、かつオン画素への映像信号を保持する機能を有する画素スイッチを各画素に設けたアクティブマトリクス型表示装置は、隣接画素間でのクロストークのない良好な表示品位が得られることから、携帯情報機器を始め、種々のディスプレイに利用されている。
【0003】
このような平面型のアクティブマトリクス型表示装置として、自己発光素子であるOLED(オーガニック・ライト・エミッティング・ダイオード)を用いた有機エレクトロルミネセンス(EL)表示装置が注目され、盛んに研究開発が行われている。有機EL表示装置は、薄型軽量化の妨げとなるバックライトを必要とせず、高速な応答性から動画再生に適し、さらに低温で輝度低下しないために寒冷地でも使用できるという特徴を備えている。
【0004】
有機EL表示装置はマトリクス状に設けられた複数の画素を備え、各画素は、表示素子としての有機EL素子と、表示素子へ駆動電流を供給する画素回路とを含んでいる。そして、有機EL表示装置は、表示素子の発光輝度を制御することにより表示動作を行なう。画素回路は、例えば、有機EL素子に直列に接続された駆動トランジスタおよび出力スイッチ、映像信号線と画素回路との間に接続され画素回路を選択する画素スイッチ、駆動トランジスタのソース−ゲート間に接続され映像信号に応じたゲート電位を保持する保持容量等を備えている。これらの画素スイッチ、駆動トランジスタ、出力スイッチは、例えば、薄膜トランジスタにより構成されている。
【0005】
このような有機EL表示装置は、製造工程において、配線間ショート、トランジスタのゲートリーク、保持容量のショート等が生じる場合がある。例えば、トランジスタのゲートリークが生じた場合、表示素子に常時電流が流れるため、表示素子が常時発光して輝点となる。また、保持容量のショートが生じた場合、ショートした部分に電流が流れ過ぎてしまい、表示素子に電流が流れず黒点(滅点)となる。保持容量のショートに起因する黒点が生じた場合、この画素と同一の信号線に接続され次行に続く数行の画素もうっすらと暗くなり、黒点から黒い尾を引いた状態となる。
【0006】
このことから、装置完成後の点灯試験により黒点が検出された際、黒点画素を効率的に修復するリペア方法が要求されるようになっている。有機EL表示装置では、輝点、黒点をリペアする場合、発光素子の陰極と陽極との間に電流が流れないようにする必要がある。例えば、特許文献1には、装置完成後、レーザ光を所望の部位に照射してリペアを行う方法が提案されている。
【特許文献1】特開2000−208252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、上記のような保持容量のショートに起因する黒点およびこれに続く尾引きが生じた場合、黒点が生じている画素において、信号線と画素スイッチとの接続部、および表示素子の入力側の接続部をレーザによって切断する方法が取られている。
【0008】
しかしながら、上記のように画素スイッチを信号線から切り離した場合、この画素に書き込む際の信号線の電位は白電位、すなわち、OVに近づくことなる。そのため、この画素と同一の信号線に接続され次行に続く数行の画素の電位も高くなり、所望の輝度よりも明るくなる。これにより、リペア後、黒点から白い尾を引いた状態となる。その結果、表示品位が低下するとい問題がある。
【0009】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、黒引き黒点を確実にリペアすることが可能なアクティブマトリクス型表示装置のリペア方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、この発明の態様に係るアクティブマトリクス型表示装置のリペア方法は、表示素子と、この表示素子を駆動する画素回路と、を含み、基板上にマトリクス状に配設された複数の画素部と、前記画素部の列毎に接続された複数の映像信号線と、前記映像信号線を介して前記画素回路に第1信号電流を供給した後、前記映像信号線を介して前記画素回路へ第2信号電流を供給する信号線駆動回路と、を具備し、
前記各画素回路は、高電位電源と低電位電源との間に前記表示素子と直列に接続され前記表示素子に駆動電流を供給する駆動トランジスタと、前記駆動トランジスタのドレインに接続されたソースと前記表示素子に接続されたドレインとを有する出力スイッチと、前記信号線に接続されたドレインと前記出力スイッチのソースに接続されたソースとを有する画素スイッチと、前記画素スイッチのソースに接続されたドレインと前記駆動トランジスタのゲートに接続された第1スイッチと、前記駆動トランジスタのゲートに接続された電極および駆動トランジスタのソースに接続された電極を有し、駆動トランジスタのゲートとソースとの電位差を保持する保持容量と、を備えたアクティブマトリクス型表示装置のリペア方法であって、
前記保持容量のショートにより黒点が生じた際、前記保持容量の電極と前記駆動トランジスタのゲート電極との接続、および前記保持容量の電極と前記駆動トランジスタのソースとの接続の少なくとも一方を切断し、前記出力トランジスタのソースおよびドレインの少なくとも一方の接続を切断することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
この発明の態様によれば、保持容量のショートに起因して黒引き黒点が生じた場合でも、確実にリペアすることができ、画像品位の低下を防止することが可能なアクティブマトリクス型表示装置のリペア方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図面を参照しながら、この発明の実施形態に係る有機EL表示装置およびそのリペア方法について詳細に説明する。
図1は、有機EL装置全体を概略的に示している。図1に示すように、有機EL表示装置は、例えば、10型以上の大型アクティブマトリクス型表示装置として構成され、有機ELパネル10および有機ELパネル10を制御するコントローラ12を備えている。
【0013】
有機ELパネル10は、ガラス板等の絶縁基板8上にマトリクス状に配列され表示領域11を構成したm×n個の表示画素PX、表示画素の行毎に接続されているとともにそれぞれ独立してm本ずつ設けられた第1走査線Sga(1〜m)、および第2走査線Sgb(1〜m)、表示画素PXの列毎にそれぞれ接続されたn本の映像信号線X(1〜n)、第1、第2走査線Sga(1〜m)、Sgb(1〜m)を表示画素の行毎に順次駆動する走査線駆動回路(YDR)14、および複数の映像信号線X(1〜n)を駆動する信号線駆動回路(XDR)15を備えている。走査線駆動回路14および信号線駆動回路15は、表示領域11の外側で絶縁基板8上に一体的に形成されている。
【0014】
画素部として機能する各表示画素PXは、対向電極間に光活性層を備えた表示素子と、この表示素子に駆動電流を供給する画素回路18とを含んでいる。表示素子は、例えば自己発光素子であり、本実施形態では、光活性層として少なくとも有機発光層を備えた有機EL素子16を用いている。
【0015】
図2に表示画素PXの等価回路を示す。画素回路18は電流信号からなる映像信号に応じて有機EL素子16の発光を制御する電流駆動方式の画素回路であり、画素スイッチ20、駆動トランジスタ22、第1スイッチ24、出力スイッチ26、および保持容量Csを備えている。画素スイッチ20、駆動トランジスタ22、第1スイッチ24、出力スイッチ26は、ここでは同一導電型、例えばPチャネル型の薄膜トランジスタにより構成されている。本実施形態において、画素回路18を構成する薄膜トランジスタは全て同一工程、同一層構造で形成され、半導体層にポリシリコンを用いたトップゲート構造の薄膜トランジスタである。
【0016】
駆動トランジスタ22、出力スイッチ26、および有機EL素子16は、高電位電源としての電圧電源線Vddと、低電位電源としての基準電圧電源線Vssとの間でこの順で直列に接続されている。基準電圧電源線Vssおよび電圧電源線Vddは、例えば、−9Vおよび+6Vの電位にそれぞれ設定される。駆動トランジスタ22は、その第1端子、ここではソースが電圧電源線Vddに接続されている。有機EL素子16は、一方の電極、ここではカソードが基準電圧電源線Vssに接続されている。出力スイッチ26は、そのソースが駆動トランジスタ22の第2端子、ここではドレインに接続されている。出力スイッチ26は、そのドレインが有機EL素子16のアノードに接続され、更に、ゲートが対応する第2走査線Sgbに接続されている。
【0017】
駆動トランジスタ22は、映像信号に応じた電流量の発光電流を有機EL素子16に出力する。出力スイッチ26は、第2走査線Sgbからの制御信号Sb(1〜m)によりオン(導通状態)、オフ(非導通状態)が制御され、駆動トランジスタ22と有機EL素子16との接続、非接続を制御する。
【0018】
保持容量Csは、駆動トランジスタ22の第1端子、制御端子間、ここではソース、ゲート間に接続され、映像信号により決定される駆動トランジスタ22のゲート制御電位を保持する。すなわち、保持容量Csは、絶縁層を挟んで対向配置された一対の電極を有し、一方の電極は、駆動トランジスタ22のゲートに接続され、他方の電極は駆動トランジスタ22のソースに接続されている。
【0019】
画素スイッチ20は、対応する映像信号線X(1〜n)と駆動トランジスタ22のドレインとの間に接続され、そのゲートは対応する第1走査線Sgaに接続されている。すなわち、画素スイッチ20は、映像信号線に接続されたドレインと駆動トランジスタのドレインに接続されたソースとを有している。画素スイッチ20は、第1走査線Sgaから供給される制御信号Sa(1〜m)に応答して対応の映像信号線X(1〜n)から階調電流としての信号電流を取り込む。
【0020】
第1スイッチ24は、駆動トランジスタ22のドレイン、ゲート間に接続され、そのゲートが第1走査線Sgaに接続されている。第1スイッチ24のドレインは、駆動トランジスタ22のドレインと画素スイッチ20のソースとの間に接続されている。第1スイッチ24は、第1走査線Sgaからの制御信号Sa(1〜m)に応じてオン、オフ制御され、駆動トランジスタ22のゲート、ドレイン間の接続、非接続を制御するとともに、保持容量Csからの電流リークを規制する。
【0021】
次に図3を参照して、駆動トランジスタ22および有機EL素子16の構成を詳細に説明する。図3は、有機EL素子16を含む表示画素Pxの断面を示している。
第1駆動トランジスタ22aを構成したPチャネル型の薄膜トランジスタは、絶縁基板8上に形成されたポリシリコンからなる半導体層50を備え、この半導体層はソース領域50a、ドレイン領域50b、およびソース、ドレイン領域間に位置したチャネル領域50cを有している。半導体層50に重ねてゲート絶縁膜52が形成され、このゲート絶縁膜上にゲート電極Gが設けられチャネル領域50cと対向している。ゲート電極Gに重ねて層間絶縁膜54が形成され、この層間絶縁膜上にソース電極(ソース)Sおよびドレイン電極(ドレイン)Dが設けられている。ソース電極Sおよびドレイン電極Dは、それぞれ層間絶縁膜54およびゲート絶縁膜52に貫通形成されたコンタクトを介して半導体層50のソース領域50aおよびドレイン領域50bにそれぞれ接続されている。第1駆動トランジスタ22aのドレイン電極Dは、層間絶縁膜54上に形成された配線および第1スイッチ24aを介して出力スイッチ26に接続されている。なお、画素スイッチ20、第1保持スイッチ23a、第2保持スイッチ23b、第1スイッチ24a、第2スイッチ24b、出力スイッチ26を構成する各薄膜トランジスタも上記と同一の構造に形成されている。第2駆動トランジスタ22bも上記と同一の構造に形成されるが、さらにLDD領域を追加してもよい。
【0022】
層間絶縁膜54上には映像信号線X(1〜n)を含む複数の配線が設けられている。また、層間絶縁膜54上にはソース電極S、ドレイン電極D、配線を覆って保護膜56が形成されている。保護膜56上には、親水膜58、隔壁膜60が順に積層されている。
【0023】
有機EL素子16は、ルミネセンス性有機化合物を含む有機発光層64を陽極62および陰極66間に挟持した構造を有している。陽極62は、ITO(インジウム・ティン・オキサイド)等の透明電極材料から形成され、保護膜56上に設けられている。親水膜58および隔壁膜60の内、陽極62と対向した部分はエッチングにより除去されている。そして、陽極62上に陽極バッファ層63および有機発光層64が形成され、更に、有機発光層64および隔壁膜60に重ねて銀・アルミ合金から成る陰極66が積層されている。
【0024】
このような構造の有機EL素子16では、陽極62から注入されたホールと、陰極66から注入された電子とが有機発光層64の内部で再結合したときに、有機発光層を構成する有機分子を励起して励起子を発生させる。この励起子が放射失活する過程で発光し、この光が有機発光層64から透明な陽極62および絶縁基板8を介して外部へ放出される。
【0025】
出力スイッチ26を介してアノード電極62を駆動トランジスタ22のドレインに接続し、カソード電極66を基準電圧電源線Vssに接続する場合について説明したが、カソード電極66を駆動トランジスタ22のドレインに、アノード電極62を基準電圧電源線Vssに接続してもよい。
【0026】
陰極66に光透過性をもたせ、絶縁基板8と対向する面から光を外部に取り出してもよい。また、陽極62を陰極66に対して絶縁基板8側に配置した逆積層型を採用してもよい。いずれの場合も光出射面側を透明導電材料で形成する必要があり、例えば陰極66を光出射面側に配置する場合には、アルカリ土類金属、希土類金属を光透過性を有する程度に薄く形成することで達成できる。
【0027】
一方、図1に示すコントローラ12は有機ELパネル10の外部に配置されたプリント回路基板上に形成され、走査線駆動回路14および信号線駆動回路15を制御する。コントローラ12は外部から供給されるデジタル映像信号および同期信号を受け取り、垂直走査タイミングを制御する垂直走査制御信号、および水平走査タイミングを制御する水平走査制御信号を同期信号に基づいて発生する。コントローラ12は、これら垂直走査制御信号および水平走査制御信号をそれぞれ走査線駆動回路14および信号線駆動回路15に供給すると共に、水平および垂直走査タイミングに同期してデジタル映像信号を信号線駆動回路15に供給する。
【0028】
走査線駆動回路14は、シフトレジスタ、出力バッファ等を含み、外部から供給される水平走査スタートパルスを順次次段に転送し、出力バッファを介して各行の表示画素PXに制御信号、すなわち、制御信号Sa(1〜m)、Sb(1〜m)を供給する。これにより、各第1、第2走査線Sga(1〜m)、Sgb(1〜m)は、互いに異なる1水平走査期間において、それぞれ制御信号Sa(1〜m)、制御信号Sb(1〜m)により駆動される。
【0029】
信号線駆動回路15は水平走査制御信号の制御により各水平走査期間において順次得られる映像信号をアナログ形式に変換して信号電流Idataとし、複数の映像信号線X(1〜n)に並列的に供給する。
【0030】
画素回路18の動作は、映像信号書込み動作および発光動作に分けられる。図2に示すように、映像信号書込み動作において、画素スイッチ20および第1スイッチ24がオン(導通状態)、出力スイッチ26がオフ(非導通状態)となるような制御信号Sa1、Sb1、ここでは、制御信号Sa1がローレベル、制御信号Sb1がハイレベル、が出力される。これにより、画素スイッチ20および第1スイッチ24がオン(導通状態)、出力スイッチ26がオフ(非導通状態)に切換えられ、映像信号書込み動作が開始される。
【0031】
映像信号書込み期間において、信号線駆動回路15から対応する映像信号線X(1〜n)に供給された映像信号電流Idataは画素スイッチ20を介して、選択された表示画素PXに供給される。表示画素PXにおいて、画素スイッチ20および第1スイッチ24はオン状態にあり、取り込まれた映像信号電流Idataは駆動トランジスタ22に供給され駆動トランジスタ22を書き込み状態とする。これにより、電圧電源線Vddから駆動トランジスタ22を通して映像信号線X1に書き込み電流が流れ、映像信号電流Idataの電流量に対応した駆動トランジスタ22のゲート、ソース間電位が保持容量Csに書き込まれる。
【0032】
次に、制御信号Sa1がハイレベル(オフ電位)となり、画素スイッチ20および第1スイッチ24がオフとなる。これにより、映像信号書込み動作が終了する。続いて、制御信号Sb1がローレベルとなり、出力スイッチ26がオンとなる。これにより、発光動作が開始する。図4に示すように、発光期間において、駆動トランジスタ22は、保持容量Csに書き込まれたゲート制御電圧により導通状態に維持され、電圧電源線Vddから映像信号電流Idataに対応した電流量の発光電流を出力スイッチ26側へ供給する。この発光電流は、出力スイッチ26を通った後、有機EL素子16に供給される。これにより有機EL素子16が発光し、発光動作が開始される。そして、有機EL素子16は、1フレーム期間後に、再び制御信号Sb1がオフ電位となるまで発光状態を維持する。
【0033】
次に、上記のように構成された有機EL表示装置に欠点、例えば、黒点が生じた場合のリペア方法について説明する。
まず、有機EL表示装置の完成後、点灯試験を行う。この点灯試験により点欠と判定された画素の内、保持容量Csの電極間のショートが生じた画素は、有機EL素子に電流が流れなくなり黒点となる。この場合、図5に示すように、黒点が生じた画素と同一の映像信号線に接続され次行に続く数行の画素もうっすらと暗くなり、黒点から黒い尾を引いた状態となり、黒お引き黒点となる。
【0034】
この場合、図6に示すように、電源電圧線Vddと映像信号線X1との間で駆動トランジスタ22および画素スイッチ20を通る回路を維持した状態で、ショートが生じた保持容量Csの少なくとも一方の電極の接続、および出力トランジスタ16のソースおよびドレインの少なくとも一方の接続を切断する。すなわち、保持容量Csの電極と駆動トランジスタ22のゲート電極との接続、および保持容量の他方の電極と駆動トランジスタのソースとの接続の少なくとも一方を切断する。また、出力トランジスタ16のドレインと有機EL素子16との間の接続、および出力トランジスタのソースと駆動トランジスタ22のドレインとの接続の少なくとも一方の接続を切断する。有機EL素子をフローティングする。
【0035】
上記接続の切断は、絶縁基板8の発光面側からレーザ光を照射し、配線あるいはトランジスタの半導体層をレーザカットすることにより行う。レーザ光としては、グリーンレーザ、例えば、波長500〜560nmのYAGレーザ、YLFレーザを用いる。グリーンレーザを用いる理由としては、赤外レーザでは、ポリシリコンからなる半導体層50を透過し易く、熱加工による下層膜への損傷が大きいこと、また、紫外領域レーザでは、ガラス基板やアンダーコートへの吸収が大きく、半導体層を切断するためには高エネルギのレーザが必要であることが挙げられる。レーザ光を照射して切断する半導体層を切断する場合、発光層は金属配線と重ならない配置が望ましく、酸化膜や窒化膜等によって覆われた断面構造が望ましい。
【0036】
上記リペアによって、保持容量Csの電極の接続を切断し、有機EL素子をフローティングすることにより、図7に示すように、黒点画素に続く黒お引きを無くし、単独の黒点とすることができる。この際、電源電圧線Vddと映像信号線X1との間で駆動トランジスタ22および画素スイッチ20を通る回路を維持した状態とすることにより、リペアされた画素の電位を白電位よりも低く維持することができる。そのため、黒点画素と同一の映像信号線に接続され次行に続く数行の画素の電位がOVに近づくことがなく、黒点に続く白い尾の発生を防止し、単独の黒点とすることができる。従って、表示品位が低下することなく、黒点を確実にリペアすることが可能となる。
【0037】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0038】
例えば、保持容量のショートが生じた場合、保持容量の一方の電極に限らず、両方の電極の接続を切断してもよい。また、使用するレーザは、波長400nm以下の短波長レーザを用いてもよい。
【0039】
リペアの対象となる表示装置において、薄膜トランジスタの半導体層は、ポリシリコンに限らず、アモルファスシリコンで構成することも可能である。表示画素を構成する自己発光素子は、有機EL素子に限定されず自己発光可能な様々な表示素子を適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る有機EL表示装置を概略的に示す平面図である。
【図2】図2は、前記有機EL表示装置における表示画素の等価回路を示す平面図である。
【図3】図3は、表示画素を示す断面図である。
【図4】図4は、発光期間における表示画素の等価回路を示す平面図である。
【図5】図5は、保持容量のショートにより黒お引き黒点が発生した表示状態を模式的に示す平面図である。
【図6】図6は、リペア時における前記表示画素の切断位置を示す平面図である。
【図7】図7は、リペア後の表示状態を模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0041】
8…絶縁基板、 10…有機ELパネル、12…コントローラ、
14…走査線駆動回路、 15…信号線駆動回路、 16…有機EL素子、
18…画素回路、 20…画素スイッチ、 22…駆動トランジスタ、
24…第1スイッチ、 26…出力スイッチ、 50…半導体層、
50a…ソース領域、 50b…ドレイン領域、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示素子と、この表示素子を駆動する画素回路と、を含み、基板上にマトリクス状に配設された複数の画素部と、前記画素部の列毎に接続された複数の映像信号線と、前記映像信号線を介して前記画素回路に第1信号電流を供給した後、前記映像信号線を介して前記画素回路へ第2信号電流を供給する信号線駆動回路と、を具備し、
前記各画素回路は、高電位電源と低電位電源との間に前記表示素子と直列に接続され前記表示素子に駆動電流を供給する駆動トランジスタと、前記駆動トランジスタのドレインに接続されたソースと前記表示素子に接続されたドレインとを有する出力スイッチと、前記信号線に接続されたドレインと前記出力スイッチのソースに接続されたソースとを有する画素スイッチと、前記画素スイッチのソースに接続されたドレインと前記駆動トランジスタのゲートに接続された第1スイッチと、前記駆動トランジスタのゲートに接続された電極および駆動トランジスタのソースに接続された電極を有し、駆動トランジスタのゲートとソースとの電位差を保持する保持容量と、を備えたアクティブマトリクス型表示装置のリペア方法であって、
前記保持容量のショートにより黒点が生じた際、前記保持容量の電極と前記駆動トランジスタのゲート電極との接続、および前記保持容量の電極と前記駆動トランジスタのソースとの接続の少なくとも一方を切断し、
前記出力トランジスタのソースおよびドレインの少なくとも一方の接続を切断するアクティブマトリクス型表示装置のリペア方法。
【請求項2】
電極間に配設された有機発光層を有した表示素子と、この表示素子を駆動する画素回路と、を含み、基板上にマトリクス状に配設された複数の画素部と、前記画素部の列毎に接続された複数の映像信号線と、前記映像信号線を介して前記画素回路に第1信号電流を供給した後、前記映像信号線を介して前記画素回路へ第2信号電流を供給する信号線駆動回路と、を具備し、
前記各画素回路は、高電位電源と低電位電源との間に前記表示素子と直列に接続され前記表示素子に駆動電流を供給する駆動トランジスタと、前記駆動トランジスタのドレインに接続されたソースと前記表示素子に接続されたドレインとを有する出力スイッチと、前記信号線に接続されたドレインと前記出力スイッチのソースに接続されたソースとを有する画素スイッチと、前記画素スイッチのソースに接続されたドレインと前記駆動トランジスタのゲートに接続された第1スイッチと、前記駆動トランジスタのゲートに接続された電極および駆動トランジスタのソースに接続された電極を有し、駆動トランジスタのゲートとソースとの電位差を保持する保持容量と、を備えたアクティブマトリクス型表示装置のリペア方法であって、
前記保持容量のショートにより黒点が生じた際、前記高電位電源と信号線との間で前記駆動トランジスタおよび画素スイッチを通る回路を維持した状態で、前記保持容量の少なくとも一方の電極の接続、および前記出力トランジスタのソースおよびドレインの少なくとも一方の接続を切断するアクティブマトリクス型表示装置のリペア方法。
【請求項3】
波長が500〜560nmのレーサ光を照射し上記接続を切断する請求項1又は2に記載のアクティブマトリクス型表示装置のリペア方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−134345(P2008−134345A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−319078(P2006−319078)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(302020207)東芝松下ディスプレイテクノロジー株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】