説明

アクリルゴム

【課題】加工性に優れ、常態物性および耐寒性に優れた架橋物を与えるアクリルゴムを提供すること。
【解決手段】式HC=C(R)−CO−O−X(Rは水素原子又はメチル基,Xは炭素数1〜3アルキル基又は炭素数2〜3のアルコキシルアルキル基)で表わされる(メタ)アクリル酸エステル単量体単位10〜40重量%、炭素数4〜8のアルキル基またはアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位55〜89.8重量%、およびジ(メタ)アクリル酸エステル単量体単位0.1〜5重量%を有するアクリルゴム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルゴムに係り、さらに詳しくは、ロール加工性などの加工性に優れ、常態物性および耐寒性に優れた架橋物を与えることのできるアクリルゴムに関する。
【背景技術】
【0002】
アクリルゴムは、耐熱性、耐油性などに優れているため、自動車関連の分野等において、シール、ホース、防振材、チューブ、あるいはベルトなどのゴム部品の材料として広く用いられている。アクリルゴムは、これらの部品として使用できるように架橋させてゴム弾性を付与するが、そのために活性な架橋点を有する架橋性モノマーが通常1〜5重量%程度共重合されている。架橋性モノマーとしては、一般的には、2−クロロエチルビニルエーテル、ビニルクロロアセテートなどの塩素系モノマーや、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ系モノマーが使用されている。
【0003】
また、架橋性モノマーとしては、上記以外のものも検討されており、たとえば、特許文献1では、フマル酸モノシクロヘキシルなどの脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステルを用いたアクリルゴムが開示されている。この特許文献1では、架橋性モノマーとしてブテンジオン酸モノエステルを用いることにより、アクリルゴムのスコーチ安定性を向上させ、これにより架橋物とした場合における耐熱性および圧縮永久ひずみ性の向上を図っている。
【0004】
一方で、自動車関連の分野などに用いられるゴム部品には、耐熱性、耐油性に加えて、耐寒性も求められるようになってきている。しかしながら、上記特許文献1記載のアクリルゴムでは、耐寒性が十分でなく、そのため、耐寒性に優れたアクリルゴムが望まれていた。
【0005】
【特許文献1】特開2004−18567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ロール加工性などの加工性に優れ、常態物性および耐寒性に優れた架橋物を与えることのできるアクリルゴムを提供することを目的とする。また、本発明は、このようなアクリルゴムに架橋剤を添加してなる架橋性ゴム組成物、およびこの架橋性ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、炭素数が少ないアルキル基またはアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A)、炭素数が多いアルキル基またはアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(B)、およびジ(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(C)を、所定割合で含有するアクリルゴムにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、下記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A)10〜40重量%、炭素数4〜8のアルキル基または炭素数4〜8のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(B)55〜89.8重量%、およびジ(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(C)0.1〜5重量%を有するアクリルゴムが提供される。
【化2】

(Rは、水素原子またはメチル基、Xは、炭素数1〜3のアルキル基または炭素数2〜3のアルコキシルアルキル基)
【0009】
本発明のアクリルゴムにおいて、好ましくは、前記単量体単位(A)として、前記式(1)におけるXが炭素数1〜3のアルキル基である(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A1)1〜20重量%、および前記式(1)におけるXが炭素数2〜3のアルコキシルアルキル基である(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A2)1〜39重量%を、前記単量体単位(A1)および前記単量体単位(A2)合計で10〜40重量%の範囲で含有する。
本発明のアクリルゴムにおいて、好ましくは、脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステル単量体単位(D)を有し、前記脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステル単量体単位(D)の含有割合が、0.1〜20重量%である。
【0010】
また、本発明によれば、上記アクリルゴムと架橋剤とを含有してなる架橋性ゴム組成物が提供される。
【0011】
さらに、本発明によれば、上記架橋性ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ロール加工性などの加工性に優れ、常態物性および耐寒性に優れた架橋物を与えることのできるアクリルゴムおよび架橋性ゴム組成物、ならびにこれを架橋して得られ、常態物性および耐寒性に優れたゴム架橋物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
アクリルゴム
本発明のアクリルゴムは、下記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A)10〜40重量%、炭素数4〜8のアルキル基または炭素数4〜8のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(B)55〜89.8重量%、およびジ(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(C)0.1〜5重量%を有するゴムである。
【化3】

(Rは、水素原子またはメチル基、Xは、炭素数1〜3のアルキル基または炭素数2〜3のアルコキシルアルキル基)
【0014】
本発明のアクリルゴムを構成する前記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A)(以下、適宜「単量体単位(A)」とする。)としては、前記式(1)におけるXが炭素数の1〜3アルキル基である(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A1)(以下、適宜「単量体単位(A1)」とする。)、または前記式(1)におけるXが炭素数2〜3のアルコキシルアルキル基である(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A2)(以下、適宜「単量体単位(A2)」とする。)のいずれか一方を含むもの、あるいは両方を含むものいずれでも良いが、本発明では、単量体単位(A1)および単量体単位(A2)の両方を含むものが好ましい。
【0015】
前記式(1)におけるXが炭素数1〜3のアルキル基である(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A1)を形成する、炭素数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1)(以下、適宜「単量体(a1)」とする。)としては、たとえば、(メタ)アクリル酸メチル(アクリル酸メチル及びメタクリル酸メチルの意。以下、本発明において「(メタ)」は同様の意味で用いる。)、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピルなどが挙げられ、これらは、複数種を併用してもよい。これらのなかでも、アクリル酸エチルが好ましい。
前記式(1)におけるXが炭素数2〜3のアルコキシルアルキル基である(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A2)を形成する、炭素数2〜3のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2)(以下、適宜「単量体(a2)」とする。)としては、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチルなどが挙げられ、これらは、複数種を併用してもよい。これらのなかでも、アクリル酸メトキシエチルが好ましい。
【0016】
アクリルゴム中における、単量体単位(A)の含有割合は、全単量体単位中、10〜40重量%であり、好ましくは15〜40重量%、より好ましくは20〜38重量%である。単量体単位(A)の含有割合が低すぎると、アクリルゴムの粘着性、特に架橋性ゴム組成物とした場合の粘着性が高くなってしまい、ロール加工性が低下する場合がある。一方、高すぎると、耐寒性が悪化する場合がある。
また、単量体単位(A)として、単量体単位(A1)および単量体単位(A2)の両方を含むものとする場合には、これらの含有割合は、単量体単位(A1)が1〜20重量%、好ましくは2〜10重量%、単量体単位(A2)が1〜39重量%、好ましくは5〜38重量%(ただし、単量体単位(A1)と単量体単位(A2)との合計で10〜40重量%の範囲)とすることが好ましい。
【0017】
炭素数4〜8のアルキル基または炭素数4〜8のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(B)(以下、適宜「単量体単位(B)」とする。)を形成する、炭素数4〜8のアルキル基または炭素数4〜8のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(b)(以下、適宜「単量体(b)」とする。)としては、たとえば、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体;(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシブチルなどの炭素数4〜8のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体;などが挙げられる。これらは、複数種を併用してもよい。これらのなかでも、アクリル酸n−ブチルが好ましい。
【0018】
アクリルゴム中における、単量体単位(B)の含有割合は、全単量体単位中、55〜89.8重量%であり、好ましくは55〜84.4重量%、より好ましくは56〜78.8重量%である。単量体単位(B)の含有割合が低すぎると、得られる架橋物の耐寒性が低下する場合がある。一方、高すぎると、ロール加工性が悪化する場合がある。
【0019】
ジ(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(C)(以下、適宜「単量体単位(C)」とする。)を形成する、ジ(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)(以下、適宜「単量体(c)」とする。)としては、分子内に(メタ)アクリル酸エステル構造を2個有する化合物であれば特に限定されないが、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどの、ジオールと(メタ)アクリル酸とのジエステル;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体のジ(メタ)アクリレートなどの、水酸基を2つ以上含むポリエーテルと(メタ)アクリル酸とのジエステル;などが挙げられる。これらのなかでも、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び水酸基を2つ以上含むポリエーテルと(メタ)アクリル酸とのジエステルが好ましく、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び、標準ポリスチレンを用いてGPCで測定した重量平均分子量が200〜1,000の、水酸基を2つ以上含むポリエーテルと(メタ)アクリル酸とのジエステルがより好ましく、重量平均分子量が300〜500の、水酸基を2つ以上含むポリエーテルと(メタ)アクリル酸とのジエステルがさらに好ましい。なお、上記ポリエーテルと(メタ)アクリル酸とのジエステルとしては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。単量体(c)は、重合中に架橋構造を生じる、内部架橋性単量体として作用する。
【0020】
アクリルゴム中における、単量体単位(C)の含有割合は、全単量体単位中、0.1〜5重量%であり、好ましくは0.1〜3重量%、より好ましくは0.2〜2重量%である。単量体単位(C)の含有割合を上記範囲とすることにより、ゴム架橋物とした場合における耐寒性を優れたものとしながら、アクリルゴムの粘着性、特に架橋性ゴム組成物とした場合の粘着性を低くすることができ、その結果、ロール加工性の向上が可能となる。単量体単位(C)の含有割合が低すぎると、ロール加工性の向上効果が得難くなる。一方、含有割合が高すぎると、伸びの低下などゴム架橋物の物性が悪化するおそれがある。
【0021】
本発明のアクリルゴムは、上記単量体単位(A)〜(C)以外に、脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステル単量体単位(D)(以下、適宜「単量体単位(D)」とする。)を含有することが好ましい。単量体単位(D)を含有することにより、アクリルゴムのスコーチ安定性の向上が可能となる。
【0022】
単量体単位(D)を形成する、脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステル単量体(d)(以下、適宜「単量体(d)」とする。)としては、フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘプチル、フマル酸モノシクロオクチル、フマル酸モノメチルシクロヘキシル、フマル酸モノ−3,5−ジメチルシクロヘキシル、フマル酸モノジシクロペンタニル、フマル酸モノイソボニルなどのフマル酸モノシクロアルキルエステル単量体;フマル酸モノシクロペンテニル、フマル酸モノシクロヘキセニル、フマル酸モノシクロヘプテニル、フマル酸モノシクロオクテニル、フマル酸モノジシクロペンタジエニルなどのフマル酸モノシクロアルケニルエステル単量体;マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘプチル、マレイン酸モノシクロオクチル、マレイン酸モノメチルシクロヘキシル、マレイン酸モノ−3,5−ジメチルシクロヘキシル、マレイン酸モノジシクロペンタニル、マレイン酸モノイソボニルなどのマレイン酸モノシクロアルキルエステル単量体;マレイン酸モノシクロペンテニル、マレイン酸モノシクロヘキセニル、マレイン酸モノシクロヘプテニル、マレイン酸モノシクロオクテニル、マレイン酸ジシクロペンタジエニルなどのマレイン酸モノシクロアルケニルエステル単量体;などが挙げられるが、フマル酸モノシクロアルキルエステル単量体が好ましく、フマル酸モノシクロヘキシルが特に好ましい。これらは、複数種を併用してもよい。単量体(d)は、重合後、架橋剤や加硫剤と反応して架橋構造を生じる、外部架橋性単量体として作用する。
【0023】
単量体単位(D)を含有させる場合における、アクリルゴム中の単量体単位(D)の含有割合は、全単量体単位中、好ましくは0.1〜20重量%であり、より好ましくは0.5〜10重量%、さらに好ましくは1〜5重量%である。単量体単位(D)の含有割合が低すぎると、得られるゴム架橋物の架橋密度が十分でなく良好な加硫物性が得られなくなる場合がある。一方、含有割合が高すぎると、得られるゴム架橋物の伸びが低下する場合がある。
【0024】
さらに、本発明のアクリルゴムは、上記単量体単位(A)〜(D)以外に、これらを形成する単量体(a)〜(d)と共重合可能なその他の単量体の単位を含有していても良い。その他の単量体としては、上記した単量体単位(D)を形成する単量体(d)以外のカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体、共役ジエン単量体、非共役ジエン単量体、芳香族ビニル単量体、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、アクリルアミド系単量体、その他のオレフィン系単量体などが挙げられる。
【0025】
単量体(d)以外のカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノ−n−ブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノ−n−ブチルなどのブテンジオン酸モノ低級アルキルエステル単量体;アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸などのカルボン酸単量体;などが挙げられ、カルボキシル基は無水カルボン酸基であってもよく、無水マレイン酸、無水シトラコン酸などの無水カルボン酸単量体も用いることができる。
【0026】
共役ジエン単量体としては、1,3−ブタジエン、クロロプレン、ピペリレンなどが挙げられる。
非共役ジエン単量体としては、1,4−ペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、ノルボルナジエンなどが挙げられる。
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
【0027】
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
アクリルアミド系単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミドなどが挙げられる。
その他のオレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0028】
これらの共重合可能なその他の単量体の単位を含有させる場合における、全単量体中の含有割合は、好ましくは0〜49.9重量%、より好ましくは0〜20重量%である。
【0029】
アクリルゴムの製造方法
本発明のアクリルゴムは、上記各単量体(a)、単量体(b)、および単量体(c)、ならびに、必要に応じて用いられる単量体(d)およびこれらと共重合可能な上記単量体を含んでなる単量体混合物をラジカル重合することにより得ることができる。重合反応の形態としては、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法および溶液重合法のいずれも用いることができるが、重合反応の制御の容易性等から、従来公知のアクリルゴムの製造法として一般的に用いられている常圧下での乳化重合法によるのが好ましい。
【0030】
乳化重合法による重合の場合には、通常の方法を用いればよく、重合開始剤、重合停止剤、乳化剤等は一般的に用いられる従来公知のものを使用できる。
【0031】
重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物;過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物;などを挙げることができる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.001〜1.0重量部である。
【0032】
また、重合開始剤としての有機過酸化物および無機過酸化物は、還元剤と組み合わせることにより、レドックス系重合開始剤として使用することができる。組み合わせて用いる還元剤としては、特に限定されないが、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;メタンスルホン酸ナトリウム等のメタン化合物;ジメチルアニリン等のアミン化合物;などが挙げられる。これらの還元剤は単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。還元剤の使用量は、過酸化物100重量部に対して、好ましくは0.0003〜0.1重量部である。
【0033】
重合停止剤としては、例えば、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウムなどが挙げられる。重合停止剤の使用量は、特に限定されないが、通常、全単量体100重量部に対して、0.1〜2重量部である。
【0034】
乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の非イオン性乳化剤;ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノレン酸などの脂肪酸の塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウムなどの高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、ベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン性乳化剤;などを挙げることができる。なかでも、アニオン性乳化剤が好適に用いられる。これらの乳化剤は単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。乳化剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0035】
水の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは80〜500重量部、より好ましくは100〜300重量部である。
【0036】
乳化重合に際しては、必要に応じて、分子量調整剤、粒径調整剤、キレート化剤、酸素捕捉剤等の重合副資材を使用することができる。
【0037】
乳化重合は、回分式、半回分式、連続式のいずれでもよい。重合は通常0〜70℃、好ましくは5〜50℃の温度範囲で行なわれる。
【0038】
このようにして製造される本発明のアクリルゴムのムーニー粘度〔ML1+4、100℃〕(ポリマームーニー)は、好ましくは10〜80、より好ましくは20〜70、特に好ましくは25〜60である。
【0039】
架橋性ゴム組成物
本発明の架橋性ゴム組成物は、上記アクリルゴムに、架橋剤を配合してなるものである。
【0040】
本発明の架橋性ゴム組成物に用いる架橋剤としては、多価アミン化合物、多価エポキシ化合物、多価イソシアナート化合物、アジリジン化合物、硫黄化合物、塩基性金属酸化物および有機金属ハロゲン化物などのゴムの架橋に通常用いられる従来公知の架橋剤を用いることができる。これらのなかでも、多価アミン化合物が好ましく用いられる。
【0041】
多価アミン化合物としては、(1)2つ以上のアミノ基を有する化合物、または(2)架橋時に2つ以上のアミノ基を有する化合物の形態になるもの、であれば特に限定されないが、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素の複数の水素原子が、アミノ基またはヒドラジド構造(−CONHNHで表される構造、COはカルボニル基を表す。)で置換された化合物が好ましい。具体的には脂肪族多価アミン架橋剤、芳香族多価アミン架橋剤などが挙げられる。
脂肪族多価アミン架橋剤としては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメイト、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミンなどが挙げられる。
芳香族多価アミン架橋剤としては、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3,5−ベンゼントリアミン、1,3,5−ベンゼントリアミノメチル、イソフタル酸ジヒドラジド;などが挙げられる。
【0042】
架橋剤の配合量は、アクリルゴム100重量部に対し、好ましくは0.05〜20重量部、より好ましくは0.1〜10重量部である。架橋剤の配合量が少なすぎると架橋が十分に行われないため、得られるゴム架橋物の形状維持が困難になり、多すぎると得られるゴム架橋物が硬くなりすぎ、架橋ゴムとしての弾性などが損なわれる。
【0043】
本発明の架橋性ゴム組成物には、アクリルゴムおよび架橋剤以外に、ゴム加工分野において通常使用される配合剤を配合することができる。このような配合剤としては、たとえば、カーボンブラック、シリカなどの補強性充填剤;炭酸カルシウムやクレーなどの非補強性充填材、酸化防止剤、光安定剤、一価一級アミンなどのスコーチ防止剤、可塑剤、加工助剤、滑剤、粘着剤、潤滑剤、難燃剤、防黴剤、帯電防止剤、着色剤、シランカップリング剤、架橋促進剤、架橋助剤、架橋遅延剤などが挙げられる。これらの配合剤の配合量は、本発明の目的や効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、配合目的に応じた量を適宜配合することができる。
【0044】
また、本発明の架橋性ゴム組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明のアクリルゴム以外のゴム、エラストマー、樹脂などをさらに配合してもよい。たとえば、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、上記本発明のアクリルゴム以外のアクリルゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムなどのゴム;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリシロキサン系エラストマーなどのエラストマー;ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド樹脂などの樹脂;などを配合することができる。なお、上記ゴム、エラストマー及び樹脂の合計配合量は、本発明のアクリルゴム100重量部に対して、好ましくは50重量部以下、より好ましくは10重量部以下、特に好ましくは1重量部以下である。
【0045】
本発明の架橋性ゴム組成物の調製にあたっては、上記アクリルゴムと架橋剤およびその他の配合剤とをバンバリーミキサーやニーダー等で混合・混練し、次いで、混練ロールを用いて、さらに混練することが好ましい。本発明の架橋性ゴム組成物は、上記アクリルゴムを用いて製造されるものであるため、ロール粘着性を低くすることができ、その結果、混練ロールによる混練に際して、組成物が金属に粘着し難く、ロール加工性に優れるものである。
【0046】
なお、各成分の配合順序は特に限定されないが、熱で反応や分解しにくい成分を充分に混合した後、熱で反応や分解しやすい成分である架橋剤などを、反応や分解が起こらない温度で短時間に混合することが好ましい。
【0047】
本発明の架橋性ゴム組成物のムーニー粘度〔ML1+4、100℃〕(コンパウンドムーニー)は、好ましくは20〜100、より好ましくは25〜80、特に好ましくは30〜70である。架橋性ゴム組成物のムーニー粘度を上記範囲とすることにより、ロール粘着性を低くすることができ、その結果、架橋性ゴム組成物をロール加工性に優れたものとすることができる。
【0048】
ゴム架橋物
本発明のゴム架橋物は、上記の架橋性ゴム組成物を架橋してなるものであり、所望の形状に対応した成形機、例えば押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、架橋反応によりゴム架橋物としての形状を固定化することにより得ることができる。その際には、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10〜200℃、好ましくは25〜120℃である。架橋温度は、通常、130〜220℃、好ましくは150〜190℃であり、架橋時間は、通常、2分〜2時間、好ましくは3分〜1時間である。加熱方法としては、プレス加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる方法を適宜選択すればよい。
【0049】
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。二次架橋は、加熱方法、架橋温度、形状などにより異なるが、好ましくは1〜48時間行う。加熱方法、加熱温度は適宜選択すればよい。
【0050】
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、上記本発明のアクリルゴムを用いて得られるものであるため、加工時においては、ロール加工性に優れ、かつ、架橋物とした場合における、常態物性および耐寒性に優れるものである。
【0051】
そのため、本発明のゴム架橋物は、上記特性を活かして、O−リング、パッキン、ダイアフラム、オイルシール、シャフトシール、ベアリングシール、メカニカルシール、ウェルヘッドシール、電気・電子機器用シール、空気圧機器用シール、シリンダブロックとシリンダヘッドとの連接部に装着されるシリンダヘッドガスケット、ロッカーカバーとシリンダヘッドとの連接部に装着されるロッカーカバーガスケット、オイルパンとシリンダブロックあるいはトランスミッションケースとの連接部に装着されるオイルパンガスケット、正極、電解質板および負極を備えた単位セルを挟み込む一対のハウジング間に装着される燃料電池セパレーター用ガスケット、ハードディスクドライブのトップカバー用ガスケットなどの各種ガスケット;として好適に用いられる。
【0052】
また、本発明のゴム架橋物は、印刷用ロール、工業用ロール、事務機用ロールなどの各種ロール;各種ベルト;燃料ホース、ターボエアーホース、オイルホース、ラジェターホース、ヒーターホース、ウォーターホース、バキュームブレーキホース、コントロールホース、エアコンホース、ブレーキホース、パワーステアリングホース、エアーホース、マリンホース、ライザー、フローラインなどの各種ホース;CVJブーツ、プロペラシャフトブーツ、等速ジョイントブーツ、ラックアンドピニオンブーツなどの各種ブーツ;クッション材、ダイナミックダンパ、ゴムカップリング、空気バネ、防振材などの減衰材ゴム部品;ダストカバー、自動車内装部材、タイヤ、被覆ケーブル、靴底、電磁波シールド、フレキシブルプリント基板用接着剤等の接着剤、燃料電池セパレーターの他、化粧品、および医薬品の分野、食品と接触する分野、エレクトロニクス分野など幅広い用途に使用することもできる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」、「%」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験、評価は下記によった。
【0054】
ムーニー粘度〔ML1+4(100℃)〕
アクリルゴムのムーニー粘度(ポリマームーニー)および架橋性ゴム組成物のムーニー粘度(コンパウンドムーニー)をJIS K6300に従って測定した。
【0055】
ロール加工性
下記方法に従って架橋性ゴム組成物を調製する際に、金属製の混練用ロールを用い、温度50℃で2分間混練した後、さらにロールの回転を続けながら、架橋性ゴム組成物のロール加工性を下記のように3段階評価した。
○:ロールの切り替えしが容易
△:ロール粘着があり、切り替えし困難
×:ロール粘着が酷く、切り替えし不可能
【0056】
スコーチ安定性
架橋性ゴム組成物について、ムーニースコーチ時間(t5)を、JIS K6300に従って125℃で測定した。ムーニースコーチ時間(t5)の値が大きいほど、スコーチ安定性に優れる。
【0057】
常態物性(引張強さ、伸び、100%引張応力、硬さ)
架橋性ゴム組成物を、金型を用いて、加圧しながら170℃で20分間プレス成形して、縦15cm、横15cm、厚さ0.2cmのシート状の架橋物を得た。そして得られた架橋物をJIS3号形ダンベルで打ち抜き、試験片を作製した。そして、得られた試験片を用いてJIS K6251に従い、ゴム架橋物の引張強さ、伸びおよび100%引張応力を、また、JIS K6253に従い、デュロメータ硬さ試験機タイプAを用いてゴム架橋物の硬さを、それぞれ測定した。
【0058】
脆化温度
上記常態物性の評価に用いたシート状のゴム架橋物と同様のものを用い、JIS K6301に従い、脆化温度を測定した。
【0059】
実施例1
温度計、攪拌装置、窒素導入管及び減圧装置を備えた重合反応器に、水200部、ラウリル硫酸ナトリウム3部、アクリル酸エチル6部、アクリル酸メトキシエチル30部、アクリル酸n−ブチル60部、重量平均分子量336のポリエチレングリコールジメタクリレート1部、およびフマル酸モノシクロヘキシル3部を仕込み、減圧による脱気および窒素置換を繰り返して酸素を十分除去した後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.002部およびクメンハイドロパーオキシド0.005部を加えて常圧、常温下で乳化重合反応を開始させ、重合転化率が95%に達するまで反応を継続し、重合停止剤を添加して重合を停止した。得られた乳化重合液を塩化カルシウム水溶液で凝固させ、水洗、乾燥してアクリルゴムAを得た。
【0060】
上記反応で得られたアクリルゴムA(H−NMRによる分析結果:アクリル酸エチル単位6%、アクリル酸メトキシエチル単位30%、アクリル酸ブチル単位60%、重量平均分子量336のポリエチレングリコールジメタクリレート単位1%、およびフマル酸モノシクロヘキシル単位3%)100部、カーボンブラック(ASTM D1765による分類;N550)60部、ステアリン酸(カーボンブラックの分散剤、軟化剤)2部および4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(老化防止剤)2部を50℃にてバンバリーで混練し、その後、ヘキサメチレンジアミンカーバメイト(脂肪族ジアミン架橋剤)0.5部、ジ−o−トリルグアニジン(架橋促進剤)2部を加えて、50℃にて混練用ロールで混練して、架橋性ゴム組成物を調製した。また、この際に、さらに混練を続けることにより、上記方法に従いロール加工性の評価も行った。
【0061】
そして、得られた架橋性ゴム組成物を用いて、スコーチ安定性の各評価を行った。さらに、得られた架橋性ゴム組成物を上記条件により架橋物とし、得られた架橋物の常態物性(引張強さ、伸び、100%引張応力、硬さ)および脆化温度の各評価を行った。結果を表1に示す。
【0062】
実施例2
アクリル酸ブチルの使用量を58部に、重量平均分子量336のポリエチレングリコールジメタクリレートの使用量を3部にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、アクリルゴムB(各単量体単位の比率を表1に示す。)を製造し、実施例1と同様に各評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
実施例3
重量平均分子量336のポリエチレングリコールジメタクリレートの代わりに、同量のエチレングリコールジメタクリレートを使用した以外は、実施例1と同様にして、アクリルゴムC(各単量体単位の比率を表1に示す。)を製造し、実施例1と同様に各評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
実施例4
アクリル酸メトキシエチルの使用量を20部に、アクリル酸n−ブチルの使用量を70部にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、アクリルゴムD(各単量体単位の比率を表1に示す。)を製造し、実施例1と同様に各評価を行った。結果を表1に示す。
【0065】
比較例1
アクリル酸n−ブチルの使用量を61部とし、重量平均分子量336のポリエチレングリコールジメタクリレートを使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、アクリルゴムE(各単量体単位の比率を表1に示す。)を製造し、実施例1と同様に各評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
比較例2
重量平均分子量336のポリエチレングリコールジメタクリレートの代わりに、同量のトリメチロールプロパントリメタクリレートを使用した以外は、実施例1と同様にして、アクリルゴムF(各単量体単位の比率を表1に示す。)を製造し、実施例1と同様に各評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
比較例3
アクリル酸メトキシエチルの使用量を25部に、アクリル酸n−ブチルの使用量を58部に、重量平均分子量336のポリエチレングリコールジメタクリレートの使用量を8部にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、アクリルゴムG(各単量体単位の比率を表1に示す。)を製造し、実施例1と同様に各評価を行った。結果を表1に示す。
【0068】
比較例4
アクリル酸エチルの使用量を16部に、アクリル酸メトキシエチルの使用量を30部に、アクリル酸n−ブチルの使用量を50部にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、アクリルゴムH(各単量体単位の比率を表1に示す。)を製造し、実施例1と同様に各評価を行った。結果を表1に示す。
【0069】
【表1】

表1中、ポリエチレングリコールジメタクリレート単位(#336)は、重量平均分子量336のポリエチレングリコールジメタクリレート単位を意味する。
【0070】
表1より、本発明所定のアクリルゴムを用いて得られた架橋性ゴム組成物は、ロール加工性が良好であり、また、これを架橋して得られるゴム架橋物は、常態物性(引張強さ、伸び、100%引張応力、硬さ)および耐寒性に優れる結果となった(実施例1〜4)。
【0071】
一方、ジ(メタ)アクリル酸エステルを含有しないアクリルゴムを用いた場合にはロール粘着性が高くなってしまいロール加工性に劣る結果となった(比較例1)。
また、ジ(メタ)アクリル酸エステルの代わりに、トリ(メタ)アクリル酸エステルを含有するアクリルゴムを用いた場合、およびジ(メタ)アクリル酸エステルの含有割合が多すぎる場合には、伸びが低下する結果となった(比較例2、3)。
さらに、アクリル酸n−ブチル単位の含有割合が少なすぎる場合には、耐寒性に劣る結果となった(比較例4)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A)10〜40重量%、炭素数4〜8のアルキル基または炭素数4〜8のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(B)55〜89.8重量%、およびジ(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(C)0.1〜5重量%を有するアクリルゴム。
【化1】

(Rは、水素原子またはメチル基、Xは、炭素数1〜3のアルキル基または炭素数2〜3のアルコキシルアルキル基)
【請求項2】
前記単量体単位(A)として、前記式(1)におけるXが炭素数1〜3のアルキル基である(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A1)1〜20重量%、および前記式(1)におけるXが炭素数2〜3のアルコキシルアルキル基である(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A2)1〜39重量%を、前記単量体単位(A1)および前記単量体単位(A2)合計で10〜40重量%の範囲で含有する請求項1に記載のアクリルゴム。
【請求項3】
脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステル単量体単位(D)を有し、
前記脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステル単量体単位(D)の含有割合が、0.1〜20重量%である請求項1または2に記載のアクリルゴム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のアクリルゴムと架橋剤とを含有してなる架橋性ゴム組成物。
【請求項5】
請求項4に記載のアクリルゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。

【公開番号】特開2010−70713(P2010−70713A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242272(P2008−242272)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】