説明

アクリル化ポリアミノアミド(III)

本発明は、末端アミン基含有ポリアミノアミド(A)とポリオールエステルアクリレート(B)とのマイケル付加により得られる放射線硬化性アクリル化ポリアミノアミドに関する。ポリオールエステルアクリレート(B)中のアクリレート基とポリアミノアミド(A)中のアミノ水素基のモル比は、少なくとも1:1である。本発明は、ポリオールエステルアクリレート(B)がプロピレンオキシドのトリメチロールプロパンへのアクリル化付加生成物であることを特徴とする。前記アクリル化ポリアミノアミドは、被覆組成物を製造するための放射線硬化性化合物として使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のアクリル化ポリアミノアミド、およびその放射線硬化性被覆組成物への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル化アミンは、被覆目的の放射線硬化性化合物として以前から提案されていた。US 3,963,771(Union Carbide, 1976年)は、アクリレートエステルと第一級または第二級有機アミンとの反応生成物を開示している。
【0003】
ポリエステル(メタ)アクリレートと第一級または第二級アミノ基を含有するポリアミンとに基づく被覆組成物(2つの化合物は実質的に化学量論的に互いに反応する)も、EP 231 442 A2(PCI Polymerchemie, 1986年)において20年以上前に提案された。
【0004】
EP 0 002 801 B1は、少なくとも2つの必須成分、即ち(1)ポリマー鎖中の単位に結合する複数の第一級または第二級アミン基を含有するビニル付加ポリマー
および(2)少なくとも2個のアクリルオキシ基を含有する物質からなるバインダーを開示している(Rohm & Haas, 1978年)。
【0005】
US 6,706,821は、アミン末端ポリオレフィンと多官能性アクリレートとのマイケル付加生成物を記載している。
【0006】
DE 103 04 631 A1は、ネガティブ型の感光性樹脂組成物を記載している。該組成物は、特定のポリアミンと(二官能性)ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートとのマイケル付加生成物である。
【0007】
EP 0 002 457 B1(Rohm & Haas, 1978年)は、2つの単位、即ち(1)少なくとも2.5の官能価を有するアクリレートエステルモノマーおよび(2)1,000以下の分子量および100未満のNH当量を有する脂肪族アミンモノマーを含んでなる固体ポリアミノエステルポリマーであって、アクリレート:NH当量比が0.5〜2の範囲であるポリアミノエステルポリマーを記載している。
【0008】
US 4,975,498(Union Camp)は、熱硬化性アミノアミドアクリレートポリマーを記載している。
【0009】
EP 381 354 B1(Union Camp)は、1超〜100未満のアミン価を有する熱可塑性アミノアミドポリマーと複数のアクリレートエステル基を含有するポリオールエステル(ポリオールエステルアクリレート)とのマイケル付加生成物である放射線硬化性アクリレート変性アミノアミド樹脂を用いた結合方法を記載している。ポリオールエステルの最初のアクリレート基の、アミノアミドポリマーの最初のアミノ水素基に対する割合は、0.5超〜8未満である。同文献において、マイケル付加は、NH基のC=C基への付加であると理解されている。EP 381 354 B1の明細書から、前記したアクリレート:NH比がプロダクト・バイ・プロセス定義として理解されることが意図されていることは明らかである(特に、第3頁第2〜8行、第3頁第53〜56行および第4頁第15〜31行を参照)。
【0010】
同一出願人による後のEP 505 031 A2によれば、マイケル付加は、アミノアミドポリマーおよびNH含有反応性希釈剤の混合物とポリオールエステルアクリレートとの反応によって実施される。WO 93/15151(Union Camp)によれば、マイケル付加は水性分散体中で実施される。
【0011】
後の出願であるWO 01/53376 A1(Arizona Chemical Comp.)は、特定の樹脂混合物と多官能性アクリレートエステル(例えばTMPトリアクリレート)とのマイケル付加により得られる、極めて特殊な構造を有するアミノアミドアクリレートポリマーを記載している。
【0012】
US 6,809,127 B2(Cognis Corp.)は、アミン末端ポリアミノアミドとモノアクリレートまたはポリアクリレートとの反応生成物を含有する液状放射線硬化性組成物を記載している。
【0013】
WO 06/067639 A2(Sun Chemical)は、放射線硬化性アクリレート変性アミノアミド樹脂を記載している。該樹脂は、重合不飽和脂肪酸(例えば二量体脂肪酸)に由来する熱可塑性アミノアミドポリマーと、一分子あたり少なくとも3個のアクリレート基を含有するポリオールエステルとのマイケル付加生成物である。対象の文献によれば、アミノアミドポリマーは40〜60のアミン価を有さなければならず、ポリオールエステル中の最初のアクリレート基とアミノアミドポリマー中の最初のアミノ基の比は少なくとも4:1でなければならない。
【0014】
WO 07/030643 A1(Sun Chemical)は、ポリオールエステルアクリレートとポリアミノアミドとのマイケル付加生成物を印刷用インクに使用しており、該ポリアミノアミドはポリアミンと酸成分との反応生成物であり、該酸成分は2つの必須成分、即ち(a)重合不飽和脂肪酸(例えば二量体脂肪酸)および(b)2〜22個の炭素原子を有する脂肪酸を含有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】US 3,963,771
【特許文献2】EP 231 442 A2
【特許文献3】EP 0 002 801 B1
【特許文献4】US 6,706,821
【特許文献5】DE 103 04 631 A1
【特許文献6】EP 0 002 457 B1
【特許文献7】US 4,975,498
【特許文献8】EP 381 354 B1
【特許文献9】EP 505 031 A2
【特許文献10】WO 93/15151
【特許文献11】WO 01/53376 A1
【特許文献12】US 6,809,127 B2
【特許文献13】WO 06/067639 A2
【特許文献14】WO 07/030643 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前記文献が示すように、放射線硬化性アクリル化ポリアミノアミドは、一方ではある程度の伝統を有し、他方では改良に対する絶えることのない要求が存在する。これに関して、本発明が解決しようとする課題は、新規な放射線硬化性アクリル化ポリアミノアミドを提供することである。本発明のポリアミノアミドは、一般に被覆目的に、特に印刷用インク、好ましくはオフセット印刷用インクに適している。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、末端アミン基含有ポリアミノアミド(A)とポリオールエステルアクリレート(B)とのマイケル付加により得られる放射線硬化性アクリル化ポリアミノアミドであって、ポリオールエステルアクリレート(B)中のアクリレート基とポリアミノアミド(A)中のアミノ水素基のモル比が少なくとも1:1であり、ポリオールエステルアクリレート(B)がプロピレンオキシドのトリメチロールプロパンへのアクリル化付加生成物であることを特徴とするアクリル化ポリアミノアミドに関する。本発明では、用語「アクリレート基」がアクリレート基とメタクリレート基の両方を含むことが意図されており、用語の単純化のために「アクリレート基」を使用する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
前述した従来技術と同様、マイケル付加は、アミノ基の(典型的にはエステルの)活性化C=C二重結合への付加反応であると理解される。形式上、これは、以下の反応式によって表すことができる。
NH + C=CC(O) → NC−CHC(O)
このような反応は一般に、穏やかに加熱すると自発的に起こる。しかしながら、マイケル付加を促進するために、触媒を使用することもできる。
【0019】
厳密に言えば、このタイプの反応は「マイケル−類似(Michael-analogous)」反応と記載したほうがよいが、前記特許文献において使用されているより手近な用語「マイケル付加」を本明細書においても使用する。これは、如何なる場合も、先に定義されているこの用語が何を意味するのか、当業者にとって明らかだからである。
【0020】
前述したように、マイケル付加による本発明の放射線硬化性アクリル化ポリアミノアミドの製造に、化合物(A)および(B)を使用する。これらの化合物を、以下でより詳細に記載する。
【0021】
化合物(A)
化合物(A)は、末端アミン基含有ポリアミノアミドである。末端アミン基は、第一級または第二級、即ちNH基またはNH基であってよい。他の点では、ポリアミノアミドの性質について基本的に制限は存在しない。
【0022】
ポリアミノアミド(A)のアミン価は、HCl滴定によって測定される。好ましい態様では、アミン価は40より大きく、特に45〜70の範囲である。好ましい態様では、ポリアミノアミド(A)のアミン価は、40より大きく、特に45〜70の範囲である。
【0023】
使用されるポリアミノアミド(A)は、好ましくは、
・一分子あたり2〜54個の炭素原子および一分子あたり2個のCOOH基を有するカルボン酸(即ちジカルボン酸)と
・2〜36個の炭素原子を有するジアミン
との反応により得られる化合物である。
【0024】
1つの態様では、ジカルボン酸は、二量体脂肪酸、2〜22個の炭素原子を有する脂肪族α,ω−ジカルボン酸および8〜22個の炭素原子を有する二塩基性芳香族カルボン酸からなる群から選択される。
【0025】
好ましくは二量体脂肪酸をジカルボン酸として使用する。当業者に知られているように、二量体脂肪酸は、不飽和カルボン酸(一般に、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸などのような脂肪酸)のオリゴマー化により得られるカルボン酸である。オリゴマー化は通常、触媒(例えばクレイ)の存在下、高温で実施される。得られた物質(工業的品質の二量体脂肪酸)は、二量化生成物を主に含む混合物である。しかしながら、生成混合物は、少量のモノマー(二量体脂肪酸の粗混合物中のモノマーの全ては、当業者に単量体脂肪酸と称される。)およびより高級のオリゴマー(特にいわゆる三量体脂肪酸)も含有する。二量体脂肪酸は、市販品であり、様々な組成および品質で(例えば、本出願人の製品であるEmpol(登録商標)の名称で)入手可能である。
【0026】
1つの態様では、使用されるジカルボン酸は、2〜22個の炭素原子を有するα,ω−ジカルボン酸、特にこのタイプの飽和ジカルボン酸である。その例は、以下を包含する:エタンジカルボン酸(シュウ酸)、プロパンジカルボン酸(マロン酸)、ブタンジカルボン酸(コハク酸)、ペンタンジカルボン酸(グルタル酸)、ヘキサンジカルボン酸(アジピン酸)、ヘプタンジカルボン酸(ピメリン酸)、オクタンジカルボン酸(スベリン酸)、ノナンジカルボン酸(アゼライン酸)、デカンジカルボン酸(セバシン酸)、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、トリデカンジカルボン酸(ブラシル酸)、テトラデカンジカルボン酸、ペンタデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸(タプス酸)、ヘプタデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、ノナデカンジカルボン酸、エイコサンジカルボン酸。
【0027】
別の態様では、使用されるジカルボン酸は、8〜22個の炭素原子を有する二塩基性芳香族カルボン酸、例えばイソフタル酸である。
【0028】
別の態様は、様々なジカルボン酸の混合物、例えば2〜22個の炭素原子を有するα,ω−ジカルボン酸の群からの少なくとも1種の酸と混合した二量体脂肪酸を使用することを特徴とする。
【0029】
既に記載したように、ポリアミノアミド(A)のもとになるジアミンは、特に、2〜36個の炭素原子を有するジアミンの群から選択される。適当なジアミンの例は、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノプロパン、ピペラジン、アミノエチルピペラジン、4,4’−ジピペリジン、トルエンジアミン、メチレンジアニリン、キシレンジアミン、メチルペンタメチレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ポリエーテルジアミン、および二量体酸から調製されたジアミンである。ジアミンは、特に、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノプロパン、ピペラジンおよびアミノエチルピペラジンからなる群から選択される。ピペラジンおよびアミノエチルピペラジンが最も好ましい。
【0030】
ジカルボン酸およびジアミンからの化合物(A)の調製において、ジカルボン酸とジアミンとの反応を少量のC2〜22モノカルボン酸の存在下で実施することが望ましい場合もある。この場合、モノカルボン酸を、ジ以上のカルボン酸(ex dicarboxylic acid)およびモノカルボン酸の酸基の総数に基づいて1〜25%の酸基の量で使用する。
【0031】
化合物(B)
化合物(B)は、プロピレンオキシドのトリメチロールプロパンへのアクリル化付加生成物である。該化合物は、プロピレンオキシドのトリメチロールプロパンへの付加生成物を、アクリル酸および/またはメタクリル酸でエステル化することによって得られ、完全エステルが好ましい。
【0032】
完全エステルの場合、化合物(B)のアクリレート官能価は3であり、従って、(A)と(B)とのマイケル付加で生じた化合物が放射線硬化に利用できる遊離C=C二重結合をなお含有することを確実にするのに十分大きい。用語「放射線硬化性」はこのようなC=C二重結合が存在しなければならないことを含意するので、該化合物を用語「放射線硬化性アクリル化ポリアミノアミド」と表す。
【0033】
本明細書において、用語「アクリレート基」がアクリレート基とメタクリレート基の両方を包含することは明示されている。加えて、用語「アクリル酸」も用語「メタクリル酸」を包含する。
【0034】
トリメチロールプロパン1molあたり1〜30molプロピレンオキシド付加生成物、特にトリメチロールプロパン1molあたり2〜10molプロピレンオキシド付加生成物が、好ましくは化合物(B)の調製に使用される。トリメチロールプロパン1molあたり3〜6molの範囲のプロピレンオキシドが特に好ましい。
【0035】
これらプロポキシレートの全ては、好ましくは、対応する化合物(B)に完全にエステル化され、アクリル酸エステルが好ましい。
【0036】
マイケル付加
既に記載したように、本発明の放射線硬化性アクリル化ポリアミノアミドは、前記ポリアミノアミド(A)とポリオールエステルアクリレート(B)とのマイケル付加により得られる。ポリオールエステルアクリレート(B)中のアクリレート基とポリアミノアミド(A)中のアミノ水素基のモル比が少なくとも1:1であることも記載した。
【0037】
基本的に、マイケル付加は、当業者に知られている如何なる方法によっても実施され得る。
1つの態様では、溶媒を使用する。別の態様では、溶媒を使用しない。
別の態様では、マイケル付加を促進するために触媒を使用する。しかしながら、触媒を使用しなくてもよい。
マイケル付加は、バッチまたは連続で実施され得るが、バッチ法が好ましい。
【0038】
好ましい態様では、マイケル付加は、溶媒および触媒の不存在下、60〜90℃の範囲の温度で、化合物(A)と(B)とを一緒に数時間、一般に1〜5時間反応させることによって実施される。化合物(B)と(A)とを、好ましくは1:1〜3:1のモル比で使用する。(B)と(A)のモル比が3:1であることが好ましい。このように、マイケル付加によって、化合物(A)の統計的平均で1個のNH官能基が、化合物(B)の各アクリレート官能基に結合される。
【0039】
それにもかかわらず、定量的反応には理論的に十分である3:1の値を超えて、(B)と(A)のモル比を大きくすることが望ましい場合がある。一方では、このように複合生成混合物の「細かい構成」を変えることが可能であり、他方では、マイケル付加生成物とアクリレート(B)との混合物が後に(=マイケル反応後)存在し、この状態で放射線硬化性組成物として使用され得る。生成混合物の「細かい構成」は、特に、マイケル付加生成物の分子量の制御であると理解される。これに関して、ポリオールエステルアクリレートの過剰量が増えるのに伴って、即ち(B)と(A)のモル比が3:1を超えて大きくなるのに伴って、得られるマイケル付加生成物の分子量が小さくなる傾向があると言える。
【0040】
従って好ましい態様では、マイケル反応は、3:1より大きい(B)と(A)のモル比で実施される。約4:1またはより大きい値が好ましい。
【0041】
被覆組成物
本発明はまた、架橋性化合物および光開始剤を含有する放射線硬化性被覆組成物に関し、該架橋性化合物は少なくとも1種のアクリル化ポリアミノアミドを含有する。先の知見の全てが、該アクリル化ポリアミノアミドにあてはまる。好ましい態様では、該組成物は、顔料を更に含有し、従って印刷用インクである、組成物である。対応する組成物は、好ましくはオフセット印刷に使用する。
【実施例】
【0042】
1.試験方法
アミン価:ポリアミノアミド樹脂のアミン価を、DIN 53176に従って塩酸で電位差滴定することにより測定した。結果は、「(KOHのmg)/(試験物質のg)」で表す。
粘度:UVオフセットインクの粘度を、100秒−1の剪断速度および25℃の温度で、Bohlin C-VOR 120レオメーター(Malvern Instruments)を用いて測定した。
降伏点:UVオフセットインクの降伏点を、Bohlin C-VOR 120レオメーター(Malvern Instruments)のレオロジーソフトウェアを用いて測定した。
吸水性:UVオフセットインクの吸水性を、定評のある測定プログラムとともに、コンピューター制御されたLithotronic II試験器(Novomatics GmbH)を用いて測定した。
耐溶剤性:アセトンをしみ込ませた脱脂綿パッドを、1000gの重量下に置き、UVオフセットインクおよびUVオーバープリントワニス表面の上をダブルストロークで移動させた。耐溶剤性を、UVオフセットインクおよびUVオーバープリントワニス表面への損傷が認識される直前に完了したダブルストローク回数として表す。
表面硬化:表面硬化を、指爪試験における耐引掻き性UVオフセットインク表面を得るために必要である、一定速度で移動するM-40-2x1-R-TR-SLC-SO-INERT型(IST Metz)UVベルト乾燥機のパス回数として表す。
反応性:UVオーバープリントワニスの反応性を、硬化UVオーバープリントワニスフィルム表面が指爪試験後になおちょうど耐引掻き性である、M-40-2x1-R-TR-SLC-SO-INERT型(IST Metz)UVベルト乾燥機の最大ベルト速度によって測定した。
Persoz振子硬度:UVオーバープリントワニス表面のPersoz振子硬度を、DIN 53157に従って測定した。12°から4°までの振り子の振幅の低下に要した時間を、秒単位で測定した。
鉛筆硬度:UVオーバープリントワニス表面の鉛筆硬度を、9B(軟らかい)〜9H(非常に硬い)の硬度スケールでISO 15184に従って測定した。試験されるUVオーバープリントワニス表面上に認識できる掻き跡が生じた鉛筆硬度を測定した。
粘着性:Tesa No. 4104接着テープを、気泡が入らないように、試験されるUVオーバープリントワニス表面にしっかりとプレスした。次いで、テープを一定速度で取り除き、UVオーバープリントワニス表面の一部が存在するかを調べた。
【0043】
2.製造例
実施例1(本発明に従ったマイケル付加生成物B1)
a)アミン末端ポリアミノアミド樹脂の調製
76.23重量部のEmpol 1062(水素化二量体脂肪酸;Cognisの製品)と23.77重量部のN−アミノエチルピペラジンの混合物を、樹脂反応器に導入した。この混合物を還流下で1時間沸騰させ、次いで210℃まで加熱し、アミン価50に達するまでこの温度を維持した。その後、樹脂反応器を90℃まで冷却した。
【0044】
b)アクリル化樹脂(マイケル付加生成物B1)の調製
プロピレンオキシド3molのトリメチロールプロパン1molへの付加生成物のトリアクリレート63.38重量部を樹脂反応器に導入し、0.1重量部の禁止剤2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを添加後、60℃まで加熱した。先のa)で記載したように調製されたアミン末端ポリアミノアミド樹脂36.52重量部を、90℃の温度で撹拌しながら添加した。反応混合物を90℃で2時間維持し、その後、マイケル付加が停止した。得られた生成物は、以下においてB1と称する。B1はアクリル化ポリアミノアミドである。ポリアミドアクリレートと称してもよい。
【0045】
実施例2(比較のマイケル付加生成物C1)
マイケル付加生成物を、WO 2006/067639 A2の実施例1(第8〜9頁の段落を参照)に正確に従って調製した。この実施例から分かるように、ポリアミノアミドは、二量体脂肪酸およびピペラジンに基づき、50のアミン価を有する。グリセロールプロポキシレートトリアクリレートをポリオールエステルアクリレートとして使用した。得られたマイケル付加生成物は、以下においてC1と称する。
【0046】
実施例3(比較のアクリレートV2)
市販のポリエステルアクリレート、即ち「Photomer 5432」(Cognis)を使用した。このポリエステルアクリレートは、以下においてV2と称する。
【0047】
3.応用例
a)UVオフセットインクの製造
UVオフセットインクを、表1に挙げた成分から製造した。
【0048】
【表1】

【0049】
・Clariant and Cibaから商業的に入手可能な顔料を、UVオフセットスケールカラー黄、マゼンタ、シアンおよび黒のための顔料として使用した。前記した化合物V1、C1およびC2をオリゴマーアクリレートとして使用した。
・Photomer 3016(Cognis)を、エポキシアクリレートとして使用した。
・Photomer 4094(プロポキシル化グリセロールトリアクリレート、Cognis)を、モノマーアクリレートとして使用した。
・Florstab UV-1(Kromachem)を、UV安定剤として使用した。
・Irgacure 369とIrgacure 184(ともにCibaの製品)との混合物を、光開始剤として使用した。
【0050】
b)UVオーバープリントワニスの製造
UVオーバープリントワニスを、表2に挙げた成分から製造した。
【0051】
【表2】

【0052】
・前記した化合物B1、C1およびC2を、オリゴマーアクリレートとして使用した。
・Photomer 4017 F(ヘキサン−1,6−ジオールジアクリレート、Cognis)を、モノマーアクリレートとして使用した。
・Darocur 1173(Ciba)を、光開始剤として使用した。
【0053】
c)比較化合物C1およびC2と比べたポリアミドアクリレートB1の特性プロフィル
UVオフセットインクの印刷試験
Lithotronic II試験器(Novomatics GmbH)およびBohlinレオメーター(Malvern Instruments)を用いて、UVオフセットインクの全てをオフセット適性について試験した。
【0054】
この目的を達成するために、UVオフセットインクの全てを、Mikle Proofer(Labomat Essor)およびLittle Joe Proofing Press(Little Joe Industries)を用いてForm 2A型(Leneta)被覆カードにプルーフし、次いで、20m/分のベルト速度で180W/cmの水銀灯に暴露することによって硬化させた。インク膜は各々6μm厚さであった。
試験結果を表3に示す。
【0055】
【表3】

【0056】
本発明に従ったポリアミドアクリレートB1に基づくUVオフセットインクマゼンタは、良好なオフセット特性およびオフセット印刷に適したインクレオロジーを示す。耐溶剤性に関して、本発明に従ったポリアミドアクリレートB1に基づくUVオフセットインクマゼンタは、比較化合物C1含有UVオフセットインクマゼンタより優れている。
【0057】
UVワニスの特性試験
UVオーバープリントワニスの全てを、RK Print Coat Instruments Ltd.からのNo.3 Kコーティングバーを用いて、QD35型鋼板(Q-Panel)およびInvercote G型コロナ処理済みPE被覆カード(20g/mLDPEで被覆された280g/m;Iggesund)に適用し(湿潤フィルム厚さ:24μm)、次いで、180W/cmの水銀灯に暴露することによって硬化させた。
【0058】
【表4】

【0059】
結果は、本発明に従ったポリアミドアクリレートB1に基づくUVオーバープリントワニスが、同程度のPersoz硬度を有する比較化合物C1含有UVオーバープリントワニスより、良好なポリエチレンフィルムに対する接着性および高い反応性を有することを示す。
【0060】
本発明に従ったポリアミドアクリレートB1を用いて製造されたUVオーバープリントワニスは、その特性プロフィルを踏まえて、グラフィック用途、並びにプラスチック表面、金属表面および木材表面への工業用被覆に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端アミン基含有ポリアミノアミド(A)とポリオールエステルアクリレート(B)とのマイケル付加により得られる放射線硬化性アクリル化ポリアミノアミドであって、ポリオールエステルアクリレート(B)中のアクリレート基とポリアミノアミド(A)中のアミノ水素基のモル比が少なくとも1:1であり、ポリオールエステルアクリレート(B)がプロピレンオキシドのトリメチロールプロパンへのアクリル化付加生成物であることを特徴とするアクリル化ポリアミノアミド。
【請求項2】
使用されるポリアミノアミド(A)がジカルボン酸とジアミンとの反応により得られる化合物であり、ジカルボン酸が二量体脂肪酸、2〜22個の炭素原子を有するα,ω−ジカルボン酸および8〜22個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸からなる群から選択され、ジアミンが2〜36個の炭素原子を有するジアミンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のアクリル化ポリアミノアミド。
【請求項3】
ポリアミノアミド(A)が40を超えるアミン価を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のアクリル化ポリアミノアミド。
【請求項4】
ポリアミノアミド(A)のもとになるジアミンが、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノプロパン、ピペラジンおよびアミノエチルピペラジンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のアクリル化ポリアミノアミド。
【請求項5】
ポリアミノアミド(A)のもとになるジアミンがアミノエチルピペラジンであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のアクリル化ポリアミノアミド。
【請求項6】
ポリアミノアミド(A)のもとになるジカルボン酸が二量体脂肪酸からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のアクリル化ポリアミノアミド。
【請求項7】
使用される化合物(B)が、アクリル酸および/またはメタクリル酸とトリメチロールプロパン1molあたり1〜30molプロピレンオキシド付加生成物との反応により得られるエステルであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のアクリル化ポリアミノアミド。
【請求項8】
マイケル付加において化合物(B)および(A)を1:1〜3:1のモル比で使用することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のアクリル化ポリアミノアミド。
【請求項9】
マイケル付加において化合物(B)および(A)を少なくとも3:1のモル比で使用することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のアクリル化ポリアミノアミド。
【請求項10】
マイケル付加において化合物(B)および(A)を少なくとも4:1のモル比で使用することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のアクリル化ポリアミノアミド。
【請求項11】
化合物(A)の調製において、少量のC2〜22モノカルボン酸の存在下でジカルボン酸とジアミンとの反応を実施することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のアクリル化ポリアミノアミド。
【請求項12】
モノカルボン酸を、ジ以上のカルボン酸(ex dicarboxylic acid)およびモノカルボン酸の酸基の総数に基づいて1〜25%の酸基の量で使用することを特徴とする、請求項11に記載のアクリル化ポリアミノアミド。
【請求項13】
架橋性化合物および光開始剤を含有する放射線硬化性被覆組成物であって、架橋性化合物が請求項1〜12のいずれかに記載の少なくとも1種のアクリル化ポリアミノアミドを含有することを特徴とする組成物。
【請求項14】
顔料を更に含有し、印刷用インクであることを特徴とする、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の組成物のオフセット印刷への使用。

【公表番号】特表2011−500903(P2011−500903A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529264(P2010−529264)
【出願日】平成20年10月4日(2008.10.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/008404
【国際公開番号】WO2009/049780
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】