説明

アクリル延伸フィルムの製造方法、光学部材および画像表示装置

【課題】主鎖に環構造を有するアクリル重合体を主成分する、耐熱性に優れるアクリル延伸フィルムの製造方法であって、従来にない延伸方法により、さらに当該フィルムの引き裂き強度を併せて向上できる方法を提供する。
【解決手段】主鎖に環構造を有するアクリル重合体を主成分とし、ガラス転移温度が110℃以上であるアクリル樹脂フィルムを延伸する工程を含み、前記工程において、前記樹脂フィルムのガラス転移温度Tg(℃)、延伸温度Te(℃)および延伸速度Y(%/分)が、13.5×Log(Y)−19≦Te−Tg≦13.5×Log(Y)−10で示される式を満たすように前記樹脂フィルムを延伸する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル重合体を主成分とするアクリル延伸フィルムの製造方法に関する。また、本発明は、当該製造方法により得たアクリル延伸フィルムからなる光学部材と、この光学部材を備える画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのアクリル重合体を主成分とするアクリル樹脂フィルムは、高い光線透過率を有するなど、その光学特性に優れるとともに、成形加工性および表面硬度のバランスに優れることから、自動車および家電製品をはじめとする各種の工業製品における透明材料として幅広く使用されている。また、アクリル樹脂フィルムは光弾性率が低く、近年、液晶表示装置(LCD)などの画像表示装置に用いる光学部材としての使用が増大している。
【0003】
アクリル重合体の1種に、主鎖に環構造を有する重合体がある。主鎖に環構造を有するアクリル重合体は、主鎖に環構造を有さない重合体に比べてガラス転移温度(Tg)が高い。このため、このような重合体を主成分とするアクリル樹脂フィルムは耐熱性が高く、例えば、画像表示装置において光源などの発熱部に近接した配置が容易となるなど、実用上の様々な利点を有する。一例として、主鎖にラクトン環構造を有するアクリル重合体が特開2000−230016号公報(特許文献1)に、主鎖にラクトン環構造を有するアクリル重合体を主成分とするアクリル樹脂フィルムが特開2006−96960号公報(特許文献2)に開示されている。
【0004】
画像表示装置においてアクリル樹脂フィルムは、典型的には偏光子保護フィルムあるいは位相差フィルムとして使用される。画像表示装置の大画面化に伴ってこれらのフィルムの薄膜化、大面積化が強く求められているが、そのためには、樹脂フィルムの強度、可撓性などの機械的特性の向上が望まれる。しかし、主鎖に環構造を有するアクリル重合体を主成分とする場合、環構造によりフィルムの耐熱性が向上する一方で、フィルムが「硬く」なり、この傾向は、樹脂フィルムにおける環構造の含有率が増すほど強くなる。このためアクリル樹脂フィルムにおいて、主成分たるアクリル重合体に環構造を導入することでフィルムの耐熱性を向上させながら、さらにその機械的特性も併せて向上させることは難しく、例えば、折り曲げによって破損が生じたり、フィルムの取扱時に「裂けてしまう」といった問題が生じやすい。
【0005】
ところで、主鎖に環構造を有するアクリル重合体を主成分とする位相差フィルムを開示する特開2008−9378号公報(特許文献3)には、樹脂フィルムの延伸によって、当該フィルムに位相差が付与されるとともに、その可撓性を向上できることが記載されている。しかし、当該公報に記載されている延伸方法では、樹脂フィルムの耐引き裂き特性(引き裂き強度)を十分に向上できない。
【特許文献1】特開2000−230016号公報
【特許文献2】特開2006−96960号公報
【特許文献3】特開2008−9378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、主鎖に環構造を有するアクリル重合体を主成分することで耐熱性を向上させた、延伸されたアクリル樹脂フィルム(アクリル延伸フィルム)の製造方法であって、従来にない延伸方法により、さらに当該フィルムの耐引き裂き特性を併せて向上できる製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の製造方法は、主鎖に環構造を有するアクリル重合体(重合体(A))を主成分とし、ガラス転移温度(Tg)が110℃以上であるアクリル樹脂フィルム(B)を延伸する工程(延伸工程)を含む。ここで前記工程において、前記樹脂フィルムのガラス転移温度Tg(℃)、延伸温度Te(℃)および延伸速度Y(%/分)が、13.5×Log(Y)−19≦Te−Tg≦13.5×Log(Y)−10で示される式(C)を満たすように前記樹脂フィルムを延伸する。
【0008】
本発明の光学部材は、上記本発明の製造方法により得たアクリル延伸フィルムからなる。
【0009】
本発明の画像表示装置は、上記本発明の光学部材を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、重合体(A)を主成分とするアクリル樹脂フィルム(B)を、樹脂フィルム(B)のTg、延伸温度Teおよび延伸速度Yが所定の関係を満たすように延伸することで、耐熱性とともに耐引き裂き特性が向上したアクリル延伸フィルムが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[延伸工程]
本発明の製造方法では、延伸工程において、樹脂フィルム(B)を延伸してアクリル延伸フィルムを得る。このとき、樹脂フィルム(B)のガラス転移温度Tg(℃)、延伸温度Te(℃)および延伸速度Y(%/分)が式(C)を満たすように延伸する。なお、式(C)を変形すると、Te−(Tg+13.5×Log(Y))の値が、−19以上−10以下となる。
【0012】
Te−(Tg+13.5×Log(Y))の値が−19未満になる、あるいは−10を超えると、得られるアクリル延伸フィルムの耐引き裂き特性の向上が不十分となる。
【0013】
延伸温度Te(℃)は式(C)を満たす限り特に限定されない。樹脂フィルム(B)のTgおよび延伸速度Yによっても異なるが、重合体(A)が主鎖にラクトン環構造を有する場合、例えば110〜220℃程度であり、典型的には130〜200℃である。
【0014】
延伸により樹脂フィルム(B)に位相差を付与して位相差フィルムとする場合、望む位相差の程度を考慮して延伸温度Teを設定してもよい。延伸温度Teの変化により、樹脂フィルム(B)に付与される位相差の程度が変化する。
【0015】
延伸速度Y(%/分)は、式(C)を満たす限り特に限定されない。延伸により樹脂フィルム(B)から位相差フィルムを得る場合、望む位相差の程度を考慮して延伸速度Y(%/分)を設定してもよい。延伸速度Yの変化により樹脂フィルム(B)に付与される位相差の程度が変化する。重合体(A)が主鎖にラクトン環構造を有する場合、延伸速度Yは、例えば30〜1800%/分程度であり、典型的には70〜1500%/分あるいは255〜1500%/分である。
【0016】
なお、樹脂フィルム(B)における延伸方向の長さが2倍となる延伸を「100%の延伸」とする。即ち、延伸速度Yが100(%/分)とは、樹脂フィルム(B)における延伸方向の長さが1分間で2倍となる延伸速度のことである。
【0017】
延伸倍率は、アクリル延伸フィルムとして望む特性に応じて設定でき、典型的には1〜4倍である。
【0018】
アクリル樹脂フィルム(B)の延伸には、公知の方法を適用できる。延伸方法は、例えば一軸延伸または二軸延伸であり、一軸延伸は、フィルム面内における延伸方向とは垂直な方向に対してフィルムを固定しない自由幅一軸延伸であっても、上記垂直な方向に対してフィルムを固定する定幅一軸延伸であってもよい。二軸延伸は、逐次二軸延伸であっても同時二軸延伸であってもよい。
【0019】
延伸方法は、アクリル延伸フィルムとして望む特性を考慮して選択できる。
【0020】
延伸方法が逐次二軸延伸の場合、一段目の延伸および二段目の延伸のいずれもが式(C)を満たす延伸であればよく、同時二軸延伸の場合、各延伸方向への延伸が、それぞれ式(C)を満たせばよい。
【0021】
二軸延伸における各延伸方向は、例えば、樹脂フィルム(B)の面内における遅相軸の方向および当該方向とは垂直な方向である。
【0022】
延伸方法は特に限定されず、ロール延伸、テンター延伸、オーブン延伸などの各種の延伸方法を適用できる。また、延伸装置には、ロール延伸機、テンター延伸機、あるいは小型の実験用延伸装置として、引張試験機、一軸延伸機、逐次二軸延伸機、同時二軸延伸機など、公知の延伸装置を用いることができる。
【0023】
[重合体(A)]
重合体(A)は、主鎖に環構造を有するアクリル重合体である限り特に限定されない。
【0024】
アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単位および/または(メタ)アクリル酸単位を構成単位として有する重合体であり、(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリル酸の誘導体に由来する構成単位を有してもよい。アクリル重合体が有する全構成単位における、(メタ)アクリル酸エステル単位、(メタ)アクリル酸単位および上記誘導体に由来する構成単位の割合の合計は、通常50重量%以上であり、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。
【0025】
(メタ)アクリル酸エステル単位は、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなどの単量体に由来する構成単位である。重合体(A)は、(メタ)アクリル酸エステル単位として、これらの構成単位を2種類以上有していてもよい。重合体(A)は、(メタ)アクリル酸メチル単位を有することが好ましく、この場合、重合体(A)ならびに重合体(A)を主成分とする樹脂フィルム(B)および当該フィルムを延伸して得られるアクリル延伸フィルムの熱安定性が向上する。
【0026】
重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、重合体(A)を主成分として含む組成物からなる樹脂フィルム(B)のTgが110℃以上であることから、通常110℃以上である。重合体(A)のTgは、得られるアクリル延伸フィルムの耐熱性が向上することから、115℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、130℃以上がさらに好ましい。
【0027】
環構造の種類は特に限定されず、例えば、ラクトン環構造、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造、N−置換マレイミド構造および無水マレイン酸構造から選ばれる少なくとも1種である。
【0028】
重合体(A)のTgが高く、得られるアクリル延伸フィルムの耐熱性がより向上することから、環構造は、ラクトン環構造およびグルタルイミド構造から選ばれる少なくとも1種が好ましい。また、構造内に窒素原子を含まないために着色(黄変)が生じにくく、アクリル延伸フィルムとしての光学特性に優れることから、環構造はラクトン環構造が好ましい。
【0029】
以下の式(1)に、グルタルイミド構造および無水グルタル酸構造を示す。
【0030】
【化1】

【0031】
上記式(1)におけるR1およびR2は、互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、X1は、酸素原子または窒素原子である。X1が酸素原子のときR3は存在せず、X1が窒素原子のとき、R3は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基またはフェニル基である。
【0032】
1が窒素原子のとき、式(1)により示される環構造はグルタルイミド構造となる。グルタルイミド構造は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル重合体をメチルアミンなどのイミド化剤によりイミド化して形成できる。
【0033】
1が酸素原子のとき、式(1)により示される環構造は無水グルタル酸構造となる。無水グルタル酸構造は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体を、分子内で脱アルコール環化縮合させて形成できる。
【0034】
以下の式(2)に、N−置換マレイミド構造および無水マレイン酸構造を示す。
【0035】
【化2】

【0036】
上記式(2)におけるR4およびR5は、互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、X2は、酸素原子または窒素原子である。X2が酸素原子のときR6は存在せず、X2が窒素原子のとき、R6は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基またはフェニル基である。
【0037】
2が窒素原子のとき、式(2)により示される環構造はN−置換マレイミド構造となる。N−置換マレイミド構造を主鎖に有する重合体(A)は、例えば、N−置換マレイミドと(メタ)アクリル酸エステルとを共重合して形成できる。
【0038】
2が酸素原子のとき、式(2)により示される環構造は無水マレイン酸構造となる。無水マレイン酸構造を主鎖に有する重合体(A)は、例えば、無水マレイン酸と(メタ)アクリル酸エステルとを共重合して形成できる。
【0039】
なお、式(1)、(2)の説明において例示した、環構造を形成する各方法では、各々の環構造の形成に用いる重合体が全て(メタ)アクリル酸エステル単位を構成単位として有するため、当該方法により得た重合体(A)はアクリル重合体となる。
【0040】
重合体(A)が主鎖に有していてもよいラクトン環構造は特に限定されず、例えば4〜8員環であってもよいが、環構造としての安定性に優れることから5員環または6員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。6員環であるラクトン環構造は、例えば、特開2004−168882号公報に開示されている構造であるが、前駆体(前駆体を環化縮合反応させることで、ラクトン環構造を主鎖に有する重合体(A)が得られる)の重合収率が高いこと、前駆体の環化縮合反応により、高いラクトン環含有率を有する重合体(A)が得られること、メタクリル酸メチル単位を構成単位として有する重合体を前駆体にできること、などの理由から、以下の式(3)により示される構造が好ましい。
【0041】
【化3】

【0042】
上記式(3)において、R7、R8およびR9は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜20の範囲の有機残基である。当該有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
【0043】
式(3)における有機残基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数が1〜20の範囲のアルキル基;エテニル基、プロペニル基などの炭素数が1〜20の範囲の不飽和脂肪族炭化水素基;フェニル基、ナフチル基などの炭素数が1〜20の範囲の芳香族炭化水素基;上記アルキル基、上記不飽和脂肪族炭化水素基および上記芳香族炭化水素基において、水素原子の一つ以上が、水酸基、カルボキシル基、エーテル基およびエステル基から選ばれる少なくとも1種の基により置換された基;である。
【0044】
重合体(A)における上記環構造(ラクトン環構造を除く)の含有率は特に限定されないが、例えば5〜90重量%であり、10〜70%重量が好ましく、10〜60重量%がより好ましく、10〜50重量%がさらに好ましい。
【0045】
重合体(A)が主鎖にラクトン環構造を有する場合、当該重合体におけるラクトン環構造の含有率は特に限定されないが、例えば5〜90重量%であり、20〜90重量%、30〜90重量%、35〜90重量%、40〜80重量%および45〜75重量%になるほど、より好ましくなる。
【0046】
重合体(A)における環構造の含有率が過度に小さくなると、得られるアクリル延伸フィルムの耐熱性が低下したり、耐溶剤性および表面硬度が不十分となることがある。一方、上記含有率が過度に大きくなると、得られるアクリル延伸フィルムの機械的特性が低下する。
【0047】
主鎖に環構造を有する重合体(A)は、公知の方法により製造できる。環構造がラクトン環構造である重合体(A)は、例えば、特開2006−96960号公報、特開2006−171464号公報あるいは特開2007−63541号公報に記載の方法により製造できる。環構造がN−置換マレイミド構造、無水グルタル酸構造あるいはグルタルイミド構造である重合体(A)は、例えば、特開2007−31537号公報、WO2007/26659号公報あるいはWO2005/108438号公報に記載の方法により製造できる。環構造が無水マレイン酸構造である重合体(A)は、例えば、特開昭57−153008号公報に記載の方法により製造できる。
【0048】
重合体(A)は、(メタ)アクリル酸エステル単位および(メタ)アクリル酸単位以外の構成単位を有していてもよく、このような構成単位は、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、メタリルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシメチル−1−ブテン、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなどの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸などの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸、などの単量体に由来する構成単位である。重合体(A)は、これらの構成単位を2種以上有していてもよい。
【0049】
重合体(A)は、当該重合体に対して負の固有複屈折を与える作用を有する構成単位を有していてもよい。この場合、得られるアクリル延伸フィルムの複屈折特性、位相差特性などの光学特性の制御の自由度が向上し、当該フィルムの光学部材としての使用用途が拡大する。
【0050】
なお、固有複屈折とは、重合体の分子鎖が一軸配向した層(例えばフィルム)における、分子鎖が配向する方向(配向軸)に平行な方向の光の屈折率n1から、配向軸に垂直な方向の光の屈折率n2を引いた値(即ち、“n1−n2”)をいう。重合体(A)自体の固有複屈折の正負は、固有複屈折に関して当該構成単位が与える作用と、重合体(A)が有するその他の構成単位が与える作用との兼ね合いにより決定される。
【0051】
重合体(A)は、紫外線吸収能を有する構成単位(UVA単位)を有していてもよい。この場合、得られるアクリル延伸フィルムの紫外線吸収能が向上する。UVA単位は特に限定されないが、少ない含有率で高い紫外線吸収能が得られることから、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体およびベンゾフェノン誘導体から選ばれる少なくとも1種の誘導体に由来する構成単位が好ましい。なお、UVA単位の含有率が大きくなるとフィルムの成形時に着色が生じやすくなるため、高い紫外線吸収能を有するUVA単位とすることによって、アクリル延伸フィルムの着色を抑制でき、当該フィルムは光学部材の用途に好適となる。
【0052】
重合体(A)の重量平均分子量は、例えば1000〜300000の範囲であり、5000〜250000の範囲が好ましく、10000〜200000の範囲がより好ましく、50000〜200000の範囲がさらに好ましい。
【0053】
[樹脂フィルム(B)]
樹脂フィルム(B)は、重合体(A)を主成分として含む。ここで主成分とは、樹脂フィルム(B)における含有量が最も大きな成分であり、当該含有量は、典型的には50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上である。
【0054】
樹脂フィルム(B)は、重合体(A)以外の重合体を含んでもよい。このような重合体は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)などのポリオレフィン;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂などのハロゲン含有重合体;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体などのスチレン重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシペンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴムあるいはアクリル系ゴムを配合したABS樹脂、ASA樹脂などのゴム質重合体;などである。ゴム質重合体は、その表面に、重合体(A)と相溶し得る組成のグラフト部を有することが好ましい。また、ゴム質重合体が粒子状である場合、その平均粒子径は、得られるアクリル延伸フィルムの透明性向上の観点から、300nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましい。
【0055】
上記例示した重合体のなかでも、重合体(A)との相溶性、特に主鎖にラクトン環構造を有する重合体(A)との相溶性に優れることから、シアン化ビニル単量体に由来する構成単位と芳香族ビニル単量体に由来する構成単位とを含む共重合体が好ましい。当該共重合体は、例えば、スチレン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル樹脂である。
【0056】
樹脂フィルム(B)は、110℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する。樹脂フィルム(B)における重合体(A)の含有率および重合体(A)の構成(例えば、樹脂(A)が有する環構造の種類、あるいは樹脂(A)における環構造の含有率など)によっては、樹脂フィルム(B)のTgは115℃以上、120℃以上、さらには130℃以上となる。このような樹脂フィルム(B)からは、Tgが110℃以上、115℃以上、120℃以上、あるいは130℃以上のアクリル延伸フィルムが得られる。樹脂フィルム(B)のTgは、典型的には110〜180℃である。
【0057】
樹脂フィルム(B)のTgは、当該フィルムを構成する組成物(重合体(A)を主成分とする組成物)のTgと基本的に同じである。
【0058】
重合体(A)ならびに重合体(A)を含む組成物のTgは、ASTM−D−3418の規定に基づき、示差走査熱量計(DSC)を用いて、始点法により求めることができる。2以上の重合体を含む組成物では、当該組成物に含まれる重合体間の相溶性が良好であれば、重合体同士の相溶に対応する1つのTgが測定される。このとき、測定されたTgを組成物のTgとすることができる。Tgが2以上測定されるときは、主成分である重合体のTgを組成物のTgとすればよい。
【0059】
樹脂フィルム(B)は、負の固有複屈折を有する重合体を含んでもよい。この場合、得られるアクリル延伸フィルムの光学特性の制御の自由度が向上し、当該フィルムの光学部材としての使用用途が拡大する。
【0060】
負の固有複屈折を有する重合体は、例えば、シアン化ビニル単量体と芳香族ビニル単量体との共重合体である。当該共重合体は、例えばスチレン−アクリロニトリル共重合体であり、スチレン−アクリロニトリル共重合体は、広範囲の共重合組成において重合体(A)との相容性に優れる。
【0061】
スチレン−アクリロニトリル共重合体は、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、バルク重合などの各種の重合方法による製造が可能である。本発明の製造方法により得られるアクリル延伸フィルムを光学部材として使用する場合、当該フィルムの透明性および光学特性が向上することから、溶液重合またはバルク重合により製造したスチレン−アクリロニトリル共重合体を用いることが好ましい。
【0062】
樹脂フィルム(B)は、添加剤を含んでもよい。添加剤は、例えば、紫外線吸収剤;酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤などの安定剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモンなどの難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤に代表される帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;有機フィラー、無機フィラー;樹脂改質剤;可塑剤;滑剤;難燃剤などである。樹脂フィルム(B)における添加剤の添加量は、例えば0〜5重量%であり、0〜2重量%が好ましく、0〜0.5重量%がより好ましい。
【0063】
樹脂フィルム(B)は、重合体(A)を主成分として含み、必要に応じて重合体(A)以外の重合体あるいは添加剤などを含む樹脂組成物の成形により得られる。樹脂組成物の成形は、射出成形、ブロー成形、押出成形、キャスト成形などの公知の手法により行えばよい。成形温度は特に限定されないが、例えば150〜350℃であり、200〜300℃が好ましい。
【0064】
重合体(A)を主成分として含む樹脂組成物は、公知の手法により得ることができる。
【0065】
[アクリル延伸フィルム]
本発明の製造方法により得られるアクリル延伸フィルムは、主鎖に環構造を有するアクリル重合体(A)を主成分として含むため、耐熱性に優れる。当該延伸フィルムのTgは、例えば110℃以上であり、重合体(A)の構成およびアクリル延伸フィルムにおける重合体(A)の含有率によっては、115℃以上、120℃以上、さらには130℃以上となる。このような高いTgを有するアクリル延伸フィルムは、画像表示装置における光源などの発熱部近傍への配置が容易となるなど、光学部材としての用途に好適である。
【0066】
本発明の製造方法により得られるアクリル延伸フィルムは、従来にない延伸方法に基づく高い耐引き裂き特性を有する。
【0067】
当該延伸フィルムの引き裂き強度は、例えば20.0kg/cm2以上であり、場合によっては25.0kg/cm2以上、30.0kg/cm2以上、さらには35.0kg/cm2以上となる。
【0068】
本発明の製造方法により得られるアクリル延伸フィルムは、その他、アクリル重合体を主成分として含むことに基づく、高い透明性、低い光弾性率などの優れた特性を示す。
【0069】
本発明の製造方法により得られるアクリル延伸フィルムの用途は特に限定されない。当該延伸フィルムは、その高い耐熱性および機械的特性から、画像表示装置に用いる光学部材としての用途に好適である。光学部材は特に限定されず、例えば、偏光子保護フィルム、位相差フィルム、複屈折フィルムである。画像表示装置は特に限定されず、例えば、液晶表示装置である。
【0070】
本発明の製造方法は、上記説明した延伸工程以外の任意の工程を含んでもよい。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
【0072】
最初に、本実施例において作製した重合体(A)、樹脂フィルム(B)および延伸フィルムの評価方法を示す。
【0073】
[ガラス転移温度]
重合体(A)を含む組成物のガラス転移温度(Tg)は、ASTM−D−3418の規定に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク社製、DSC−8230)を用い、窒素ガスフロー(50mL/分)雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により評価した。リファレンスにはα−アルミナを用いた。
【0074】
[引き裂き強度]
延伸フィルムの引き裂き強度は、以下のように求めた。
【0075】
最初に、作製した延伸フィルムから、幅1.5cmおよび長さ6cmの短冊状の試験片を2枚切り出した。試験片の幅方向は、逐次二軸延伸における一段目の延伸方向とした。
【0076】
次に、図1に示すように、各々の試験片1a、1bにおける一方の端部から1.5cmの部分(接着部2)をのりしろとしてエポキシ接着剤(昭和高分子製、アラルダイト)を塗布し、2枚の試験片を互いに接着して、1枚の試験片とした。これを室温で24時間放置することで接着部分を養生した後、引っ張り試験機(QC引張試験機、テスター産業製)に装着し、2枚の試験片における接着部2近傍の部分が引き裂かれるまで引っ張り試験を実施して、延伸フィルムの引き裂き強度を求めた。試験片は、その長さ方向の端部を試験機のチャックに固定した。試験時の引っ張り速度は300mm/分とし、引き裂き強度は、試験によって試験片が引き裂かれたときの荷重を、試験片の断面積で除した値とした。
【0077】
(製造例1)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応装置に、40重量部のメタクリル酸メチル(MMA)、10重量部の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、重合溶媒として50重量部のトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤として0.03重量部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、商品名:ルペロックス570)を添加するとともに、3.34重量部のトルエンに上記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.06重量部を溶解した溶液を2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させ、さらに4時間の熟成を行った。
【0078】
次に、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)として0.045重量部のリン酸オクチル/ジオクチル混合物(堺化学工業製、Phoslex A-8)を加え、約80〜105℃の還流下において2時間、環化縮合反応を進行させた後、240℃のオートクレーブにより重合溶液を90分間加熱し、環化縮合反応をさらに進行させた。
【0079】
次に、上記加熱後の重合溶液に、アクリロニトリル−スチレン共重合体5重量部を混合し、得られた重合溶液を減圧下240℃で1時間乾燥して、主鎖にラクトン環構造を有する重合体(A)とアクリロニトリル−スチレン共重合体とからなる透明な組成物を得た。当該組成物のTgは1点のみ測定され、その値は124.7℃であった。
【0080】
(製造例2)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応装置に、40重量部のMMA、10重量部のMHMA、重合溶媒として50重量部のトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤として0.03重量部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、商品名:ルペロックス570)を添加するとともに、3.34重量部のトルエンに上記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.06重量部を溶解した溶液を2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させ、さらに4時間の熟成を行った。
【0081】
次に、得られた重合溶液に、環化触媒として0.045重量部のリン酸オクチル/ジオクチル混合物(堺化学工業製、Phoslex A-8)を加え、約80〜105℃の還流下において2時間、環化縮合反応を進行させた後、240℃のオートクレーブにより重合溶液を90分間加熱し、環化縮合反応をさらに進行させた。
【0082】
次に、上記加熱後の重合溶液に、アクリロニトリル−スチレン共重合体5重量部と、紫外線吸収剤(チバスペシャリティケミカルズ製、TINUVIN477)1重量部とを混合し、得られた重合溶液を減圧下240℃で1時間乾燥して、主鎖にラクトン環構造を有する重合体(A)、アクリロニトリル−スチレン共重合体および紫外線吸収剤からなる透明な組成物を得た。当該組成物のTgは1点のみ測定され、その値は122.2℃であった。
【0083】
(実施例1)
製造例1で作製した組成物をプレス成形機により250℃でプレス成形して、厚さ約120μmの樹脂フィルムとした。
【0084】
次に、作製した樹脂フィルムを二軸延伸装置(東洋精機製作所社製TYPE EX4、装置は以降の実施例、比較例においても同じ)により逐次二軸延伸して、厚さ約60μmのアクリル延伸フィルムを得た。一段目の延伸は、延伸倍率1.5倍、延伸温度140℃、延伸速度300%/分で行い、二段目の延伸は、フィルム面内における一段目とは垂直な方向に、延伸倍率1.5倍、延伸温度140℃、延伸速度300%/分で行った。この延伸条件は、一段目および二段目ともに上述した式(C)(13.5×Log(Y)−19≦Te−Tg≦13.5×Log(Y)−10)を満たす。
【0085】
このように得たアクリル延伸フィルムの引き裂き強度は、26.3kg/cm2であった。
【0086】
(実施例2)
延伸温度を、一段目および二段目ともに145℃にした以外は実施例1と同様にして、アクリル延伸フィルムを得た。この延伸条件は、一段目および二段目ともに、式(C)を満たす。
【0087】
このように得たアクリル延伸フィルムの引き裂き強度は、21.7kg/cm2であった。
【0088】
(実施例3)
延伸温度を、一段目および二段目ともに150℃とし、延伸速度を、一段目および二段目ともに1000%/分とした以外は実施例1と同様にして、アクリル延伸フィルムを得た。この延伸条件は、一段目および二段目ともに、式(C)を満たす。
【0089】
このように得たアクリル延伸フィルムの引き裂き強度は、37.6kg/cm2であった。
【0090】
(実施例4)
延伸温度を、一段目および二段目ともに155℃とした以外は実施例3と同様にして、アクリル延伸フィルムを得た。この延伸条件は、一段目および二段目ともに、式(C)を満たす。
【0091】
このように得たアクリル延伸フィルムの引き裂き強度は、20.7kg/cm2であった。
【0092】
(実施例5)
主鎖にグルタルイミド構造を有するアクリル重合体(ロームアンドハース製、KAMAX T−150、Tg=145℃)をプレス成形機により250℃でプレス成形して、厚さ約120μmの樹脂フィルムとした。
【0093】
次に、作製した樹脂フィルムを二軸延伸装置により逐次二軸延伸して、厚さ約60μmのアクリル延伸フィルムを得た。一段目の延伸は、樹脂フィルムのMD方向(プレス成形時のMD方向)に、延伸倍率1.5倍、延伸温度160℃、延伸速度300%/分で行い、二段目の延伸は、樹脂フィルムのTD方向(プレス成形時のTD方向)に、延伸倍率1.5倍、延伸温度160℃、延伸速度300%/分で行った。この延伸条件は、一段目および二段目ともに上述した式(C)を満たす。
【0094】
このように得たアクリル延伸フィルムの引き裂き強度は、35.7kg/cm2であった。
【0095】
なお、このアクリル重合体は、その構成単位としてN−メチル−ジメチルグルタルイミド単位およびメチルメタクリレート単位を有する。
【0096】
(比較例1)
延伸速度を、一段目および二段目ともに50%/分とした以外は実施例1と同様にして、アクリル延伸フィルムを得た。この延伸条件は、一段目および二段目ともに、式(C)を満たさない。
【0097】
このように得たアクリル延伸フィルムの引き裂き強度は、16.0kg/cm2であった。
【0098】
(比較例2)
延伸速度を、一段目および二段目ともに1000%/分とした以外は実施例1と同様にして、アクリル延伸フィルムを得た。この延伸条件は、一段目および二段目ともに、式(C)を満たさない。
【0099】
このように得たアクリル延伸フィルムの引き裂き強度は、9.5kg/cm2であった。
【0100】
(比較例3)
延伸温度を、一段目および二段目ともに160℃とした以外は実施例1と同様にして、アクリル延伸フィルムを得た。この延伸条件は、一段目および二段目ともに、式(C)を満たさない。
【0101】
このように得たアクリル延伸フィルムの引き裂き強度は、13.5kg/cm2であった。
【0102】
(比較例4)
製造例2で作製した組成物をプレス成形機により250℃でプレス成形して、厚さ約120μmの樹脂フィルムとした。
【0103】
次に、作製した樹脂フィルムを二軸延伸装置により逐次二軸延伸して、厚さ約60μmのアクリル延伸フィルムを得た。一段目の延伸は、樹脂フィルムのMD方向(プレス成形時のMD方向)に、延伸倍率1.5倍、延伸温度140℃、延伸速度100%/分で行い、二段目の延伸は、樹脂フィルムのTD方向(プレス成形時のTD方向)に、延伸倍率1.5倍、延伸温度140℃、延伸速度100%/分で行った。この延伸条件は、一段目および二段目ともに、式(C)を満たさない。
【0104】
このように得たアクリル延伸フィルムの引き裂き強度は15.0kg/cm2であった。
【0105】
(比較例5)
延伸温度を、一段目および二段目ともに150℃とし、延伸速度を、一段目および二段目ともに3000%/分とした以外は実施例1と同様にして、アクリル延伸フィルムを得た。この延伸条件は、一段目および二段目ともに、式(C)を満たさない。
【0106】
このように得たアクリル延伸フィルムの引き裂き強度は、16.8kg/cm2であった。
【0107】
実施例1〜5、比較例1〜5の結果を表1および図2に示す。なお、図2では、横軸をTe−(Tg+13.5×Log(Y))、縦軸を引き裂き強度としたグラフにより、実施例および比較例の結果を示す。図2では、横軸にして−19から−10の範囲が、式(C)が満たされる範囲である。
【0108】
【表1】

【0109】
表1、図2に示すように、式(C)を満たす延伸により、得られたアクリル延伸フィルムの引き裂き強度が向上した。特に、実施例1、3、5、即ち、図2に示す横軸の値にしておよそ−15〜−19の範囲において、高い引き裂き強度が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明によれば、耐熱性および機械的特性が向上したアクリル延伸フィルムが得られ、この延伸フィルムは、画像表示装置の光学部材として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】実施例で評価したアクリル延伸フィルムの引き裂き強度の測定方法を説明するための図である。
【図2】実施例および比較例として作製したアクリル延伸フィルムの引き裂き強度を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖に環構造を有するアクリル重合体を主成分とし、ガラス転移温度(Tg)が110℃以上であるアクリル樹脂フィルムを延伸する工程を含み、
前記工程において、前記樹脂フィルムのガラス転移温度Tg(℃)、延伸温度Te(℃)および延伸速度Y(%/分)が、13.5×Log(Y)−19≦Te−Tg≦13.5×Log(Y)−10で示される関係を満たすように前記樹脂フィルムを延伸する、アクリル延伸フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記環構造が、ラクトン環構造、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造、N−置換マレイミド構造および無水マレイン酸構造から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のアクリル延伸フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記環構造が、ラクトン環構造である請求項1に記載のアクリル延伸フィルムの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法により得たアクリル延伸フィルムからなる光学部材。
【請求項5】
請求項4に記載の光学部材を備える画像表示装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−52138(P2010−52138A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216124(P2008−216124)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】