説明

アクリル系共重合体の製造方法、それによって得られたアクリル系樹脂組成物、及びそれを含むアクリル系接着剤組成物

【課題】高温高湿下における放置後の接着強度の低下が少ないアクリル系接着剤組成物を得ることのできるアクリル系共重合体を提供する。
【解決手段】単量体成分全体を100重量%として、アクリル酸アルキルエステル53〜88重量%、アクリロニトリル10〜35重量%及びグリシジルメタクリレート2〜12重量%を重合して得られる共重合体の製造方法であって、前記アクリル酸アルキルエステルの全量、前記アクリロニトリルの全量の内25〜45%及び前記グリシジルメタクリレートの全量の内75〜55%を先に重合し、当該重合の重合率が20〜50%となったところで、前記アクリロニトリルの残りの75〜55%及び前記グリシジルメタクリレートの残りの25〜45%を供給して共重合を行うことを特徴とするアクリル系共重合体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系共重合体の製造方法とそれによって得られた共重合体を含むアクリル系樹脂組成物、及びそれを含むアクリル系接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体の需要はパソコン用途が主流であったが、近年、ゲーム機、携帯電話、デジタルカメラ、DVDプレーヤー・レコーダー、液晶・プラズマ薄型テレビ、および自動車用途など、半導体市場の裾野が拡張している。携帯電話ではカラー液晶、カメラ、インターネット機能が標準搭載され、高密度3次元実装パッケージへのシフトが加速している。また、デジタルカメラの高画素化に伴うメモリー容量の増大、薄型テレビの拡大により、高機能半導体の需要は、さらに加速するもとの予測されている。半導体インゴットから半導体デバイスが生産されるプロセスでは、多種のアクリル系粘・接着剤が用いられており、近年の半導体デバイスの高密度化・薄肉化に比例し、接着剤用アクリル系樹脂にも高機能化に対応した性能及び長期にわたる信頼性の向上が求められている。
【0003】
アクリル系接着剤組成物としては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエンゴム系及びアクリロニトリル含有アクリルゴムなどの共重合体が用いられていた。しかしながら、従来のアクリロニトリル−ブタジエンゴム系及びアクリロニトリル含有アクリルゴム共重合体を用いたアクリル系接着剤組成物をポリイミドフィルムなどの基材に塗布し、高温高湿下で一定時間放置した後、接着強度を測定すると、層間剥離により、著しく強度が低下するという問題があった(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに、従来のアクリル系樹脂組成物の製造方法では、アクリル酸アルキルエステルとアクリロニトリルとグリシジルメタクリレートという反応性の著しく異なるモノマを重合開始前に全量を混合して重合反応を開始していた。アクリル酸アルキルエステルとアクリロニトリルの反応性の違いにより、アクリロニトリルの重合が不十分であったり、重合反応速度の早いグリシジルメタクリレートが先に重合を完了してしまい、組成物中にグリシジルメタクリレートが過多となった結合部分と、グリシジルメタクリレートをほとんど含有しない部分とが存在していた。
【0005】
【特許文献1】特開昭61−138680公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、高温高湿下における放置後の接着強度の低下が少ないアクリル系接着剤組成物を得ることのできるアクリル系共重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは従来法における上述した欠点を排除すべく、鋭意研究を行った結果、アクリル酸アルキルエステル、アクリロニトリル及びグリシジルメタクリレートを単量体成分とし、その内アクリロニトリルとグリシジルメタクリレートの反応仕込み方法を変更して共重合させることで、これを用いた接着剤組成物の接着強度の低下が少ないアクリル系樹脂組成物が得られることを見出した。
すなわち本発明は、
(1)単量体成分全体を100重量%として、アクリル酸アルキルエステル53〜88重量%、アクリロニトリル10〜35重量%及びグリシジルメタクリレート2〜12重量%を重合して得られる共重合体の製造方法であって、前記アルキルエステルの全量、前記アクリロニトリルの全量の内25〜45%及び前記グリシジルメタクリレートの全量の内75〜55%を先に重合し、当該重合の重合率が20〜50%となったところで、前記アクリロニトリルの残りの75〜55%及び前記グリシジルメタクリレートの残りの25〜45%を供給して共重合を行うことを特徴とするアクリル系共重合体の製造方法、
(2)(1)記載の製造方法によって得られたアクリル系共重合体を含むアクリル系樹脂組成物、
(3)(1)記載の製造方法によって得られたアクリル系共重合体、又は、(2)記載のアクリル系樹脂組成物を含むアクリル系接着剤組成物、に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、半導体デバイスの高密度化・薄肉化に対応可能な高接着力を付与できるアクリル系接着剤組成物に好ましく用いられる、アクリル系樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本願発明のアクリル系共重合体を製造する方法について詳述する。
第1の工程において、まず、反応容器をN置換することが好ましい。これに、アクリル酸アルキルエステルの全量、使用するアクリロニトリルの全量の内25〜45%、使用するグリシジルメタクリレートの全量の内75〜55%を仕込む。また、必要に応じてラジカル重合開始剤、反応溶剤及び連鎖移動剤等の原料を供給してもよい。アクリル酸アルキルエステルの配合量は、全モノマー中53〜88重量%であるが、好ましくは65〜75重量%である。アクリル酸アルキルエステルの配合量は求められるTgにより異なる。アクリロニトリルの配合量は、全モノマー中10〜35重量%であって、その内、25〜45%を先に(すなわち、第1の工程において)用いるが、好ましくは30〜40%を先に用いる。グリシジルメタクリレートの配合量は、全モノマー中2〜12重量%であって、その内、75〜55%を先に用いるが、好ましくは70〜60%を先に用いる。グリシジルメタクリレートの配合量は、求められる電気絶縁性、弾性率により異なる。ラジカル重合開始剤は、重合必要量の2〜10倍量用いることが好ましく、より好ましくは重合必要量の2〜5倍量である。ここで、重合必要量とは、用途に応じて目的の分子量まで重合するために必要な配合量のことである。原料を供給した後、Nで溶存酸素が1%以下になるまでバブリングするのが好ましい。次に、窒素気流下または密閉状態で、ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度より5〜40℃低い温度にて原料を撹拌し、重合を開始する。
【0010】
次に、第2の工程として、重合率が20〜50%になったところでアクリロニトリルの残りの75〜55%及びグリシジルメタクリレートの残りの25〜45%を添加する。好ましくは、重合率は30〜40%になったところで、アクリルニトリル及びグリシジルメタクリレートの残りを添加する。また、アクリロニトリルの残りの70〜60%及びグリシジルメタクリレートの残りの30〜40%を添加するのが好ましい。その後重合率が80〜99%になるまで重合させる。撹拌時間は、1〜24時間である。ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度は、ラジカル重合開始剤の種類により異なる。
【0011】
また、第3の工程として、ラジカル重合開始剤の99mol%が2〜5時間で熱分解する温度±5℃で撹拌して、さらに重合させることが好ましい。撹拌時間は、1〜10時間である。
以上の方法により、本発明の共重合体を製造することができる。
かくして得られるアクリル系樹脂組成物は、これを用いた接着剤組成物の高温高湿下での接着強度の低下を抑制することができる。
【0012】
本発明における上記のアクリル酸アルキルエステル成分としては、以下の例には限定されないが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−2−エチルへキシル、アクリル酸ラウリルが挙げられる。これらのアクリル酸アルキルエステル成分は、2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0013】
本発明において使用されるラジカル重合開始剤としては、以下の例には限定されないが、有機過酸化物系およびアゾ化合物系が挙げられる。有機過酸化物系としては、過酸化水素、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ケトンパーオキサイド類、アルキルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類等が挙げられる。アゾ化合物系としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルに代表されるニトリル類、アミジン類、アルキル類、脂環類等が挙げられる。溶液重合のときは、使用した溶媒への溶解度が高い開始剤を使用し、懸濁重合のときは水への溶解度が低い、ラウリルパーオキサイドのような長鎖アルカンをもつ有機過酸化物を用いることが好ましい。
【0014】
本発明において連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては以下の例には限定されないが、メルカプタン系およびダイマー系が挙げられる。メルカプタン系にはn−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどが挙げられる。またダイマー系にはα−メチルスチレンダイマーが挙げられる。
本発明において反応溶剤を使用することができる。反応溶剤としては、以下の例には限定されないが、有機溶媒及び無機溶媒が使用でき、例えば、メチルエチルケトン、トルエン、アセトン及び水等が挙げられる。また、分散助剤を加えてもよく、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、でんぷん、燐酸カルシウム、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウム等の懸濁重合に使用する分散助剤、及び乳化重合に使用する乳化剤等が挙げられる。
【0015】
本発明の製造方法により得たアクリル系共重合体は、接着剤用に、溶媒に溶解して溶液状のアクリル系樹脂組成物として提供することもできる。溶媒としては、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン等、一般的な有機溶媒を用いることができる。これらの溶媒は、単独で、また、2種以上を混合して用いることができる。溶媒の使用量は、アクリル系共重合体との合計量に対し、アクリル系共重合体の含有割合(固形分濃度)が、10〜30重量%となる量が好ましく、15〜20重量%となる量がより好ましい。
【0016】
本発明の製造方法により得られるアクリル系共重合体、及びアクリル系共重合体を含むアクリル系樹脂組成物を用いると、アクリル系接着剤組成物の高温高湿下での接着強度の低下を抑制することができ、また、信頼性を向上させることができる。
【0017】
アクリル系共重合体及びアクリル系樹脂組成物は、例えば、エポキシ樹脂及びその硬化剤、必要に応じて硬化促進剤、各種フィラー等、と混合してアクリル系接着剤組成物として使用することができる。その形態はフィルム状でもペースト状でも溶液状でもよい。
【0018】
フィルム状にする場合の手法には特に制限はなく、例えば基材フィルム上に各種塗工装置を用いて上記アクリル系接着剤組成物のワニスを塗工し乾燥して製造することができる。
【0019】
アクリル系共重合体とエポキシ樹脂の混合割合には特に制限はなく、例えば前者/後者(重量比)で10/90〜90/10の割合で使用することが可能である。
【0020】
前記エポキシ樹脂としては、硬化して接着作用を呈するものであればよく、一般に二官能以上(1分子中にエポキシ基を2個以上含有)のエポキシ樹脂が使用できる。二官能エポキシ樹脂(1分子中にエポキシ基を2個含有するエポキシ樹脂)としては、ビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂等が例示される。また、三官能以上(1分子中にエポキシ基を3個以上含有)の多官能エポキシ樹脂を用いてもよく、三官能以上の多官能エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が例示される。
【0021】
エポキシ樹脂の硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤として通常用いられているものを使用でき、アミン、ポリアミド、酸無水物、ポリスルフィド、三弗化硼素、及びフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有する化合物であるビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSや、フェノール樹脂が使用できる。吸湿時の耐電食性に優れる点からはフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂またはクレゾールノボラック樹脂等を用いることが好ましい。
【0022】
硬化剤は、一般に、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、硬化剤のエポキシ基と反応する基が0.6〜1.4当量となるように使用することが好ましく、0.8〜1.2当量となるように使用することがより好ましい。硬化剤が少なすぎたり多すぎたりすると耐熱性が低下する傾向がある。
【0023】
さらに硬化剤とともに硬化促進剤を用いることもでき、硬化促進剤としては、各種イミダゾール類等が挙げられる。硬化促進剤を使用する場合の配合量は好ましくは、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計100重量部に対して0.1〜20重量部、より好ましくは0.5〜15重量部である。0.1重量部未満であると硬化速度が遅くなる傾向にあり、また20重量部を超えると可使期間が短くなる傾向がある。
【0024】
本発明の製造方法により得られるアクリル系共重合体、及びこれを含むアクリル系樹脂組成物は、アクリル系接着剤組成物として用いることが可能である。さらにアクリル系接着剤組成物は、半導体用接着剤、フレキシブル配線板用基板材料及びそれに用いられる接着剤、回路接続用接着フィルム等の電子材料に好ましく用いられる。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0026】
(実施例1)
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管および排出管、加熱ジャケットによって構成された4リットルフラスコを反応器とし、まずフラスコ内を窒素パージし、30mL/minで気流した。次いで、フラスコに、モノマー混合物の反応初期敷液とし水2000g、分散助剤としてポリビニルアルコール0.2gを仕込んだ。
【0027】
このように保持された器内に、溶存酸素を1%以下にしたアクリル酸ブチル340g、アクリル酸エチル320g、アクリロニトリル90g(総供給量の33%)、クリシジルメタクリレート40g(総供給量の67%)からなるモノマー混合物、さらにラウリルパーオキサイドを対モノマーで0.6mol%、n−オクチルメルカプタンを対モノマー0.007mol%供給した後ジャケットより加熱して、反応器内温度を55℃に保持、重合を開始した。その後重合率が30%になったところでアクリロニトリルを190g(総供給量の67%)とグリシジルメタクリレートを20g(総供給量の33%)の混合物を供給し、さらに5時間反応を継続させた。その後重合率80%以上を確認し、90℃に昇温して2時間反応させた。
【0028】
なお、重合率は、重合中の反応液を一部採取し、加熱して残存モノマー、水分及びその他の揮発分を揮発させて、固形分濃度(a重量%)を求め、この値(a重量%)から、次式によって求めた。
【数1】

【0029】
しかる後、反応器内容物を冷却し、生成したアクリル系共重合体を取り出し、これを水洗、脱水、乾燥し、酢酸エチルとトルエンの混合溶媒に加熱残分が15重量%となるように溶解し、樹脂ワニス(アクリル系樹脂組成物)を作製した。
次いで樹脂ワニス470重量部、エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート828)20重量部、フェノール樹脂(大日本インキ化学(株)製、LF2882)20重量部、硬化促進剤として1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール(四国化成工業(株)製、キュアゾール2PZ−CN)0.2重量部からなる接着剤組成物(アクリル系接着剤組成物)を作製した。この接着剤組成物を、基材として厚さ25μmのポリイミドフィルム(宇部興産性のユーピレックスSGA−25を使用)に塗布し、温度80℃で30分、温度100℃で30分乾燥した。その後乾燥したフィルムを上記ポリイミドフィルムではさみ、金型温度170℃、圧力1.8MPa、圧力保持時間18秒の条件でホットロールラミネーターを用いて貼り付け、170℃で1時間硬化させ、接着剤層を備えた接着フィルムを作製した。この接着フィルムをテスター産業株式会社製90度ピール強度測定機を用いて接着強度を測定した。また、この接着フィルムを温度85℃、湿度85%に調整した恒温恒湿槽に48時間、100時間放置した後の接着強度を測定した。
【0030】
(実施例2)
重合開始後の重合率45%で残りのアクリロニトリルとグリシジルメタクリレートを供給した以外は実施例1と同様の製造方法で、アクリル系共重合体を製造し、実施例1と同様な方法で樹脂ワニス、接着剤組成物、接着剤フィルムを作製し、接着強度を測定した。
【0031】
(比較例1)
アクリル酸ブチル340g、アクリル酸エチル320g、アクリロニトリル280g及びグリシジルメタクリレート60gを初期に一括して供給した以外は実施例1と同様の製造方法で、アクリル系共重合体を製造し、実施例1と同様な方法で樹脂ワニス、接着剤組成物、接着剤フィルムを作製し、接着強度を測定した。
【0032】
(比較例2)
初期のグリシジルメタクリレートの配合量を20g(総供給量の33%)、重合率30%で供給するグリシジルメタクリレートの配合量を40g(総供給量の67%)にした以外は実施例1と同様の製造方法で、アクリル系共重合体を製造し、実施例1と同様な方法で樹脂ワニス、接着剤組成物、接着剤フィルムを作製し、接着強度を測定した。
【0033】
(比較例3)
初期に供給するアクリロニトリルの配合量を190g(総供給量の67%)、重合率30%で供給するアクリロニトリルの配合量を90g(総供給量の33%)にした以外は実施例1と同様の製造方法で、アクリル系共重合体を製造し、実施例1と同様な方法で樹脂ワニス、接着剤組成物、接着剤フィルムを作製し、接着強度を測定した。
【0034】
(比較例4)
重合開始後の重合率15%で残りのアクリロニトリルとグリシジルメタクリレートを供給した以外は実施例1と同様の製造方法で、アクリル系共重合体を製造し、実施例1と同様な方法で樹脂ワニス、接着剤組成物、接着剤フィルムを作製し、接着強度を測定した。
【0035】
(比較例5)
重合開始後の重合率60%で残りのアクリロニトリルとグリシジルメタクリレートを供給した以外は実施例1と同様の製造方法で、アクリル系共重合体を製造し、実施例1と同様な方法で樹脂ワニス、接着剤組成物、接着剤フィルムを作製し、接着強度を測定した。
【0036】
【表1】

【0037】
実施例1〜実施例2による接着フィルムは、85℃/85%RH放置後のピール強度低下が少なくなった。これに対して、比較例1〜5による接着フィルムでは、時間の経過と共にピール強度が著しく低下した。すなわち、従来の方法でアクリロニトリルとグリシジルメタクリレートを初期に全量供給した比較例1では、初期のピール強度も348N/mと低く、85℃/85%RH放置後のピール強度も150N/mと約60%低下した。また、グリシジルメタクリレートを初期に総供給量の33%、重合開始後の重合率30%で総供給量の67%を供給した比較例2では、比較例1と同様にピール強度が低下した。アクリロニトリルを初期に総供給量の67%、重合開始後の重合率30%で総供給量の33%を供給した比較例3では、初期のピール強度が60N/mと低く、85℃/85%RH放置後のピール強度も10N/mとさらに低下した。重合開始後の重合率15%でアクリロニトリルとグリシジルメタクリレートを供給した比較例4では、初期のピール強度は1300N/mと高かったものの、85℃/85%RH放置後のピール強度は最終的に約75%低下した。また、重合開始後の重合率60%でアクリロニトリルとグリシジルメタクリレートを供給した比較例5では、初期のピール強度が500N/mと低く、85℃/85%RH放置後のピール強度も最終的に40N/mと低い結果となった。
【0038】
本発明では、アクリロニトリルとグリシジルメタクリレートの重合反応を制御し、組成物構造を均一化させることで、これを用いた接着剤組成物の接着強度の低下を抑制することが可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単量体成分全体を100重量%として、アクリル酸アルキルエステル53〜88重量%、アクリロニトリル10〜35重量%及びグリシジルメタクリレート2〜12重量%を重合して得られる共重合体の製造方法であって、
前記アクリル酸アルキルエステルの全量、前記アクリロニトリルの全量の内25〜45%及び前記グリシジルメタクリレートの全量の内75〜55%を先に重合し、
当該重合の重合率が20〜50%となったところで、前記アクリロニトリルの残りの75〜55%及び前記グリシジルメタクリレートの残りの25〜45%を供給して共重合を行うことを特徴とするアクリル系共重合体の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の製造方法によって得られた共重合体を含むアクリル系樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1記載の製造方法によって得られた共重合体、又は、請求項2記載のアクリル系樹脂組成物を含むアクリル系接着剤組成物。

【公開番号】特開2010−6942(P2010−6942A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167370(P2008−167370)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】