説明

アシル尿素の合成及びアシル尿素を含む組成物

本発明は、アシル尿素を含むポリイソシアネート組成物の合成方法に関するものである。本発明によれば、少なくとも2個のイソシアネート官能基を含む誘導体を含有する出発組成物を、少なくとも50℃に等しい温度で、少なくとも2種の酸であって該酸のうちの少なくとも1種が強酸(pKa=3)であり、かつ、少なくとも1種が中程度の強さの酸(3≦pKa≦6)であるものの作用に付す。本発明は被覆剤に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、アシル尿素を含む組成物及びこのような組成物の製造方法である。また、ビウレットを基材とするオリゴマーを生じさせる改善方法も対象とする。
【背景技術】
【0002】
本発明を工業的な及び意味論的な状況に置くためには、一定の点を想起し、かつ、一定の定義を特定し又は想起することが望ましい。
【0003】
主として、ポリイソシアネート組成物は、一般に、個々のジ−、トリ−又はテトライソシアネート分子のオリゴ縮合から得られる誘導体から形成される。
【0004】
このようなタイプの分子は、「単量体」として説明され、かつ、ジ(第一アミン)であって随意として1個、さらには2個のその他の第一アミン官能基を有するもののホスゲン化によって得られ得る。従って、このような分子は、少なくとも2個の窒素(ホスゲン化されるジアミンに由来する)を有する炭素鎖からなる単位(当該単位は、以下、「ジアミノ単位」という。)を含む。このジアミノ単位は、ここでは、イソシアネート単量体の現在又は過去の存在の痕跡又は印として役立つ。しかして、該ジアミノ単位は、次の構造:
>N−R−N<
を有するが、ここで、Rは、2個のイソシアネート官能基を無視した後に、イソシアネート単量体の残基である炭化水素基を表す。もちろん、Rは、イソシアネート官能基のオリゴマー化の間に創出される官能基のうち任意のもの、すなわち、カルバメート、尿素(ビウレットを含む)、アロファネート又はビウレット官能基及びオリゴ縮合(オリゴマー化を含む)の説明の折りに述べるものを示さない。−R−の分子量は、せいぜい200に等しい。Rは、LTI、NTI及びUTIのような三官能性単量体の場合には別の「アミノ」基を含み得る。
【0005】
「アミノ」の記号N<及び>Nは、その窒素がイソシアネート、アミン、アミド、イミド又は尿素官能基及び特にオリゴマー化反応によって生成される官能基のような任意の官能基に挿入され得ることを意味する。
【0006】
これらのジアミノ単位は、事実上オリゴ縮合の全てにおいて見いだされ、しかもイソシアネート官能基の転化の大部分において見いだされる。この観察は、ジアミノ単位の数に言及して、特にオリゴ縮合体(オリゴマーを含む)の縮合状態、さらには重縮合体の縮合状態、そしてさらにヘテロ縮合体の場合(この場合には、数タイプのジアミノ単位を有することが可能である)における縮合状態を示すことを可能にする。
【0007】
化学において共通する慣例によれば、イソシアネートの場合のように、ある種の官能基がある種の化合物ファミリーにその名を与えたときに、芳香族又は脂肪族種は、対象とする官能基の結合点に従って定義される。イソシアネートが脂肪族種の炭素上に位置するときには、該イソシアネート化合物は、それ自体が脂肪族種のものであると見なされる。同様に、イソシアネート官能基が芳香族種の炭素を介してその骨格に結合している場合には、単量体全体が表現「芳香族イソシアネート」によって表されるであろう。
【0008】
この点を明らかにするために、次のことを表明する:
・芳香環の一員である結合点を有する任意のイソシアネート官能基は、芳香族であると見なされ、
・sp3混成の炭素である結合点(もちろん窒素の)を有する任意のイソシアネート官能基は、脂肪族と見なされる。
【0009】
脂肪族イソシアネートのなかでは、次の区別がなされ得る:
・最も近い環からせいぜい1個の炭素によって隔てられる結合点(さらに好ましくは、それに直接結合する)を有する任意の脂肪族イソシアネート官能基は、脂環式であると見なされる。
・第二sp3炭素(すなわち、2個の炭素及び1個の水素に結合した炭素)によって保持される結合点を有する任意のイソシアネート官能基は、第二であると見なされる。
・第三sp3炭素(すなわち、3個の炭素に結合した炭素)によって保持される結合点を有する任意のイソシアネート官能基は、第三であると見なされる。
・第三炭素(すなわち、最後の結合を考慮せずに、3個の炭素に結合した炭素)によって保持されるsp3炭素自体によって保持される結合点を有する任意のイソシアネート官能基は、ネオペンチルであると見なされる。
・環外及び非第三sp3炭素によって保持される厳密な意味でのメチレン(−CH2−)自体によって保持される結合点を有する任意のイソシアネート官能基は、線状であると見なされる。
【0010】
単量体に関して、以下、
・「脂肪族」とは、任意の単量体であってそのイソシアネート官能基の全てが脂肪族であるものを意味するものとし、
・「芳香族」とは、任意の単量体であってそのイソシアネート官能基の全てが芳香族であるものを意味するものとし、
・「混合」とは、任意の単量体であってその官能基の少なくとも1個が芳香族であり、かつ、その官能基の少なくとも1個が芳香族であるものを意味するものとし、
・「脂環式」とは、任意の単量体であってそのイソシアネート官能基の全てが脂肪族であり、かつ、その少なくとも1個が脂環式であるものを意味するものとし、
・「線状脂肪族」とは、任意の単量体であってそのイソシアネート官能基の全てが脂肪族であり、そのいずれもが脂環式ではなく、及びその少なくとも1個が線状であるものか、又は回転が自由な少なくとも1個のポリメチレン配列、しかして環外(CH2π(ここで、πは少なくとも2に等しい整数を表す)を有するものを意味するものとする。
【0011】
多少詳しく説明すると、イソシアネート単量体は、
・線状(又は単純)脂肪族として、1個以上の環外ポリメチレン配列(CH2π(ここで、πは、2〜10、有利には4〜8の整数を表す)を有するポリメチレンジイソシアネート単量体、特にヘキサメチレンジイソシアネート(ここで、MPDI:メチルペンタメチレンジイソシアネートの場合と同様に、該メチレンのうち1個は、メチル又はエチル基で置換されていてよい。)、
・環状脂肪族(又は脂環式):部分的に「ネオペンチル」及び脂環式として、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、
・環状脂肪族(脂環式)ジイソシアネートして、ノルボルナンから誘導されるもの又は芳香族イソシアネートの水素化型(例えばホスゲン化によって、その後イソシアネート化に付されるジアミノ化された環を生じさせる核の水素化)、
・芳香脂肪族として、アリーレンジアルキレンジイソシアネート(例えば、OCN−CH2−Φ−CH2−NCOのような)であってその一部分が線状脂肪族と見なされるもの、すなわち、少なくとも2個の炭素によって芳香核から隔てられるイソシアネート官能基を有するもの、例えば、(OCN−[CH2t−Φ−[CH2u−NCO)(ここで、t及びuは1以上である)、
・又は、対象事項としてここに述べたトルイレンジイソシアネートのような芳香族であるが、一方でその水素化型が脂環式であると見なされ、かつ、有利であるもの、例えば、1,3−及び1,4−BIC(ビスイソシアナトメチルシクロヘキサン)
のような脂環式及びアリール脂肪族(又は芳香脂肪族)を含め、脂肪族であることができる。
【0012】
一般に、単量体の分子量は、300を超えず、少なくとも100に等しい。
【0013】
本発明によれば、線状脂肪族単量体を本発明の実施のために少なくとも部分的に使用することが望ましい。また、上記のものに、リシン誘導体、特にLDI(リシンのエステルから誘導されるリシンジイソシアネート)又はLTI(エタノールアミンと共にリシンのエステルから誘導されるリシントリイソシアネート)、NTI(ノニルトリイソシアネートOCN−(CH24−CH(CH2−NCO)−(CH23−NCO)若しくはUTI(ウンデシルトリイソシアネートOCN−(CH25−CH(−NCO)−(CH25−NCO)を加えることもできる。
【0014】
これらの単量体の大部分は、職場の安全に関する規制基準を満たすのには高すぎる蒸気圧を有する。その結果として、これらの分子は、これらのものを重縮合させることによって寸法が増加する。
【0015】
これらの縮合は、イソシアネート官能基を必要とする。これらの「単量体」は、イソシアネートについて多官能性であるため、これらの縮合は、同一分子の2個以上のイソシアネート官能基上で生じ得る。その結果として、これらの反応は、該イソシアネートの転化率に応じてさらに寸法の小さい又は大きいオリゴマーを生じさせ得る。
【0016】
主な重縮合を以下に述べる:
「三量体化」、すなわち、3つの異なる分子に属する3個のイソシアネート官能基によって得られた誘導体を縮合させて、3個の基であってそれら自体がイソシアネート官能基を有するものを保有するイソシアヌル酸環を形成させる。
【0017】
主要な単位である、三量体化の場所で形成されやすい官能基又は環は、次のように表すことができる:
【化1】


【0018】
分子の寸法を増大させる別法は、水の存在下でこれらのものを互いに縮合させて、ビウレットの表現の下で示される3個のイソシアネート官能基を有する誘導体を形成させることである。以下の反応は、最も一般的な場合、すなわち、縮合すべき3種の分子が同一である場合における反応を示している:
【化2】


【0019】
また、これらの単量体とアルコール、特にポリオールとを縮合させることも可能であり、これは、カルバメート、次いでアロファネート多官能性化合物を与える:
【化3】


【0020】
ポリイソシアネート組成物では、当該主な重縮合体のほかに、しばしば少量の様々な縮合型に出くわす。
【0021】
イソシアネートの大部分は、近年まで有機溶媒には基本的に溶解しなかった。有機溶媒の使用は、これらの溶媒又はこれらのうち少なくともいくつかが毒性又は慢性的に毒性であると推定されているため、多くの場合、ますます職場で安全を担当する権限を有する者による非難の対象となっている。この理由のため、少量の溶媒しか含まない、さらには溶媒を含まない技術を開発する試みがますますなされつつある。
【0022】
特に、有機溶媒であって、その存在がこれを扱う者に対して毒性であると推定され、かつ、環境に対して有害であるものの使用を低減させるために、粘性の少ないイソシアネート組成物を開発するための提案がなされている。この粘度の減少は、溶媒の量を減少させ、かつ、該組成物をさらに乳化できるようにすることを可能にする。
【0023】
特に、最も広く使用されているオリゴマーポリイソシアネート組成物のなかでは、ビウレット単位を有し、そして俗に「ビウレット」によって表されるオリゴマー混合物が挙げられる。
【0024】
このビウレットは、現在のところ、非常に少量の酸の存在下でイソシアネート単量体に水を作用させることによって製造されている。該単量体の転化率はほぼ45%である。
【0025】
該単量体がヘキサメチレンジイソシアネートである場合には、該単量体の蒸留後に合成によって生じた生成物の粘度は、ほぼ9000mPa.sである。
【0026】
この合成には2つの重大な不利益がある:除去するのが賢明な不溶性のウレイドが形成すること、及び、その一方で、該単量体の蒸留後の生成物の粘度が比較的高いことである。
【0027】
さらに、市場は、高い官能性を示す組成物を必要としている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
このような理由のため、本発明の目的の一つは、不溶性ウレイドの形成を低減させ又はなくす方法を提供することである。
【0029】
本発明の別の目的は、イソシアネート組成物であって、そのイソシアネートがビウレット基を含むものを提供することである。
【0030】
本発明の別の目的は、同一の単量体転化率に対して最終組成物の粘度を減少させることを可能にする方法であって、該粘度の測定を、残留単量体の除去後に、「標準的な」条件下で実施する(該対象の組成物は、せいぜい1重量%、有利にはせいぜい0.5重量%、好ましくはせいぜい0.2重量%、より好ましくはせいぜい0.1重量%を示す)ものを提供する。粘度の測定については、基準法NFT30−029(1980年8月)を参照されたい。
【0031】
本発明の別の目的は、粘度の減少を示すビウレット基を含む組成物を提供することである。
【0032】
本発明の別の目的は、単独で使用でき又は他のものとの混合物として使用できる高官能性のポリイソシアネート組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0033】
これらの目的及びその後明らかになるであろうその他の目的は、アシル尿素を含むポリイソシアネート組成物の合成方法において、少なくとも2個のイソシアネート官能基を含む誘導体を含む「出発」組成物を、少なくとも50℃に等しい温度で、少なくとも2種の酸であってそのうちの少なくとも1種が強酸(pKa≦3)であり、かつ、そのうちの少なくとも別のものが中程度の強さの酸(3≦pKa≦6)であるものの作用に付すことを特徴とする、アシル尿素を含むポリイソシアネート組成物の合成方法の手段によって達成される。
【0034】
酸の強さについては、次の論文:「The Determination of Ionisation Constants」,Albert&Serjeant,チャップマン・アンド・ホール社(1971)を参照されたい。
【0035】
トリフリック酸又はビストリフルオルメチルスルホンイミドのような超強酸(13以上のハメット定数)は好ましくない。
【0036】
強酸又は弱酸は、熱分解によって酸を放出し得る先駆物質の形態(例えば、上記定義のうちの一つに従う酸ヨードニウムのような)又は加水分解によって酸を放出し得る先駆物質の形態(ハロゲン化物陰イオンが問題を生じさせない場合には酸ハロゲン化物を含め、対称又は非対称酸無水物のような)で導入できる(完全に又は部分的に)。
【0037】
この温度は、少なくとも50℃に等しい、さらには少なくとも100℃に等しい温度であることが好ましい。芳香族カルボン酸については、少なくとも110℃、さらには130℃の温度が好ましい。
【0038】
反応は、一般に、せいぜい200℃、有利にはせいぜい180℃、好ましくはせいぜい160℃の温度で実施される。
【0039】
これらの操作条件下で、n−アシル尿素単位(図1):
【化4】

を有する化合物が形成される。
【0040】
この式において、R2及びR1は、同一又は異なるものであり、そしてイソシアネート官能基(もちろん、反応したもの)を無視した後に、一般には単量体のイソシアネートの残基を表し、R’は、カルボキシル官能基(もちろん、反応したもの)を無視した後に、カルボン酸の残基である。
【0041】
この反応は、全体的に、
【化5】

と書ける。二酸化炭素ガスの発生(ここでは示さない)が生じる。
【0042】
出発混合物において、該イソシアネート誘導体の少なくとも1種は、単量体であること、すなわち、該誘導体は上に定義されるようなジアミノ単位を1個しか含まないことが好ましい。また、予定される溶媒を考慮に入れずに、該出発混合物は、重量で、単量体の少なくとも3分の1、さらには半分、有利には2/3、好ましくは3/4であることも望ましい。一般に、該出発混合物は、もっぱら単量体のみからなる(不純物及び溶媒は別として)。後者の場合には、該単量体誘導体は、該出発組成物の少なくとも90重量%、有利には95重量%を占める。
【0043】
有利には、単量体誘導体又は、これらのうち1種以上が存在する場合には、該単量体の少なくとも1種は、少なくとも部分的に脂肪族である、すなわち、ジアミノ単位のアミン官能基のうち少なくとも1個、有利には2個、好ましくは全てがsp3混成の炭素によって保持される。
【0044】
本発明の有利な実施態様によれば、アシル尿素の合成は、ビウレットの合成と同一の反応媒体中で実施できる。従って、該ポリイソシアネート組成物は、ビウレット官能基を含む誘導体を含む。これを行うために、該出発組成物を、アミン又はアミン生成用反応剤、有利には流動体の形態(すなわち、蒸気又は液体状)の水とさらに接触させる。
【0045】
もちろん、これを既存の工場設備で実施するときには、この水は細かく分散されていなければならない。
【0046】
有利には、該出発組成物をアミン又はアミン生成用反応剤とさらに接触させるが、ここで、モルで表されるアミン(生成した又は導入された)対単量体の合計のモル比は、1/2〜1/50に至る閉じた範囲(すなわち、限界値を含む)内、有利には1/3〜1/25に至る範囲内で選択される。
【0047】
アシル尿素の合成は、ビウレット官能基を含む誘導体の製造の前、その後又はそれと一緒に実施できる。有利には、該出発組成物と水を前記中程度の酸及び強酸の存在下で接触させる。
【0048】
強酸は、有機酸、特に脂肪族若しくは芳香族スルホン酸、カルボン酸−ホスホン酸を含めてホスホン酸、燐酸エステル又はペルハロアルカン酸から有利に選択される。該カルボン酸−ホスホン酸は、同一の分子中で、本発明に従い強酸及び中程度の酸を互いに結合させる酸であるであることに留意すべきである。このタイプの場合には、単一の酸のみを与えることが可能である。このタイプの酸は、際だった界面活性特性を有するアシル尿素を生じさせる。
【0049】
本発明の好ましい形態によれば、該強酸は、その強い酸性度のほかに、別の酸性度、一般には中程度の酸性度を示す。この場合には、この酸の水素が3個の原子で隔てられること(例えば、エステル化されていないホスホン酸のような)又は4個の原子で隔てられること(例えば、蓚酸のようなものであるが、ただし、後者のものは、操作温度では不安定である危険性があるので、好ましくない。)が好ましい。
【0050】
本発明の有利な実施態様によれば、これら中程度の酸は、脂肪族又は芳香族カルボン酸から選択される。これらのものが安定である限りにおいて、これらの酸は、エーテル又はチオエーテル官能基を含むことができる。特に、これらのものは、「アルケンオキシド」、特に「エチレンオキシド」断片を含むことができる。
【0051】
従って、少なくとも1個のカルボン酸官能基を有する化合物は、脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物又は複素環式化合物である。これらのものは、少なくとも1個、せいぜい6個、好ましくはせいぜい2個のカルボン酸官能基を含む。その炭素数は、2〜20、好ましくは2〜12である。これらのものは、ヘテロ原子又はエステル若しくはカーボネート若しくはエーテルなどのような官能基を含むことができる。
【0052】
少なくとも1個のカルボキシル官能基を含む化合物の例としては、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、ピバル酸、安息香酸、ウンデカン酸、ステアリン酸、シクロヘキサンカルボン酸及びそれらの分岐同族体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
少なくとも2個のカルボキシル官能基を含む化合物の例としては、アジピン酸、ドデカン二酸、ウンデカン二酸、グルタル酸及びそれらの分岐同族体、例えば、2−エチルヘキサン酸、2−メチルペンタン酸又は2−エチルコハク酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
また、特に該組成物について2倍の架橋操作が想定される場合には、不飽和酸も使用できる。アクリル酸、メタクリル酸又はフマル酸のような酸が使用できる。しかしながら、このときには、ビニル重合を阻害する遊離基補足剤を添加することが望ましい。このような補足剤は、当業者に周知である。
【0055】
粘度の低下を与える場合には、せいぜい15個、有利にはせいぜい12個、好ましくはせいぜい10個の炭素原子の脂肪族又は芳香族一酸を使用することが好ましい。これらの一酸は、有利には、少なくとも2個の炭素、有利には少なくとも3個、好ましくは少なくとも4個の炭素原子を有する。また、これらの酸は、少なくとも1個の第二炭素をも有する。
【0056】
高い官能性を与える場合には、中程度の酸は、二酸又は三酸であることができる。この場合には、一般に、環状イミドの形成が促進されないように、このような多酸を選択することが望ましい。例えば、該分子は、2個のカルボキシル官能基間の間隔が十分にあり及び/又は該分子の配置が該環状イミドの形成を与えないようなものであるように選択できる。従って、当業者に周知であるように、このような選択肢を採用するためには、2個のカルボキシル官能基間の炭素数(又は鎖原子の数。該鎖が完全には炭素でない場合。)は少なくとも5に等しく、或いはその配置は、テレフタル酸又はm−若しくはp−フェニレン二酢酸の場合のように、それに対して好都合ではく、或いはこれらの条件の両方が満たされる。
【0057】
ジアシル尿素(基本的な)は、次式:
【化6】

(式中、R1、R2、R3及びR4は同一又は異なるものであり、イソシアネート官能基(もちろん、反応したもの)を無視した後に、一般には単量体のイソシアネートの残基(本明細書に列挙したものを参照)を表し、R”は、2個のカルボキシル官能基(もちろん、反応したもの)を無視した後に、ジカルボン酸の残基である。)
に相当する。
【0058】
中程度の酸は、アシル尿素を生じさせるために、窒素上に少なくとも1個の水素を有するカルボキシアミドによって、完全に又は部分的に置換できることが指摘される。しかしながら、これらのアシル尿素は、二量体と一度だけ反応するが、これは、カルボン酸から得られるものよりもこれらのアシル尿素の利益を少なくする。
【0059】
強酸と中程度の酸との間の境界線は、それらの酸性度が近い(さらには、わずかに重複する)ことが可能である一方で、その系が、該中程度の酸の少なくとも1種が強酸の少なくとも1種の酸性度よりも有意に低い酸性度を示すときに、最良に機能する。従って、該強酸のpKaは、少なくとも1単位、有利には2単位ずつ中程度の酸のpKaとは異なることが望ましい。多数の強酸及び/又は中程度酸の場合には、その規則は以下のように定められる。該強酸のうち少なくとも1種のpKaは、少なくとも1pK単位、有利には2pK単位ずつ、中程度酸のうち少なくとも1種のpKa、有利には該中程度酸の全てのpKaとは異なることが望ましい。
【0060】
強酸の含有量は、その強酸官能基の合計(当量として表される)対単量体の合計(モルとして表される)のモル比が少なくとも0.1‰、有利には0.5‰、好ましくは1‰に等しいように選択される。
【0061】
上限値について、強酸の含有量は、強酸官能基の合計(当量として表される)対単量体の合計(モルとして表される)のモル比がせいぜい2%、有利には1%に等しいように選択されることが望ましい。
【0062】
中程度酸の含有量は、当量として表される中程度酸官能基の合計(分子)対モルとして表される単量体の合計(分母)が少なくとも2‰、有利には5‰、好ましくは1%に等しいように選択される。
【0063】
粘度低下効果を最大化させることが望ましい場合には、反応に関与する中程度酸の量を制限することが好ましい。この量は、酸及び単量体の全てが初めから導入されるときの含有量である。中程度酸の量は、中程度酸官能基の合計(当量として表される)対単量体の合計(モルとして表される)のモル比がせいぜい10%、有利には5%に等しいように選択される。粘度を与えない場合には、20%まで上昇させることが可能である。
【0064】
前記強酸又は強酸の混合物に関して、このものは、一般に、反応混合物の加熱が開始される前に導入される。このものは、一般に、希釈形態、有利には、その希釈剤の重量のせいぜい50倍、好ましくは1〜20倍で希釈された形態で導入される。
【0065】
本発明の一実施態様によれば、該強酸は水で希釈される。換言すれば、該希釈剤は水又は水性混合物である。
【0066】
本発明の一具体例によれば、該強酸は、C1〜C14アルコール、有利にはC3〜C10アルコールで希釈される。
【0067】
本発明の好ましい実施形態によれば、該強酸は、前記中程度酸又は該中程度酸の混合物で希釈される。
【0068】
ビウレットとアシル尿素の同時合成においては、通常の順序を想起すること及びアシル尿素の合成を挿入する方法を想起することが望ましい。
【0069】
この合成方法は、次の操作の連続を含む:
・イソシアネート、好ましくはジイソシアネート、又はイソシアネートの混合物を反応器に導入し、
・該イソシアネート混合物にカルボキシル化合物又はアミドを添加し、
・少なくとも1個の強酸官能基及び1個のカルボン酸官能基を含むビウレット化触媒又はビウレット化触媒の混合物を添加し、
・該混合物をほぼ140℃の温度に加熱し、
・二酸化炭素ガスの放出を制御するように、ビウレット化剤である水を注入し、
・該反応媒体を130℃〜160℃の間の温度で1〜5時間にわたって保持し、
・薄膜装置による真空蒸留のような好適な方法によって未反応のイソシアネート単量体を除去し、
・ポリイソシアネートビウレットアシル尿素組成物を回収すること。
【0070】
本発明の別の目的は、減少した粘度及び/又は高い官能性を有するポリイソシアネート組成物を提供することである。
【0071】
この目的及びその後明らかになるであろうその他の目的は、アシル尿素を含むポリイソシアネート組成物の手段によって達成される。
【0072】
これらの組成物は、アシル尿素及び非アシル化オリゴマー(ビウレットのような)を共合成する先ほど説明した方法によって、又は別々に製造されたアシル尿素を混合させることによって得られ得る。第2の経路は、それよりも高価であるが、粘度を低下させるにはそれよりも効果的である。
【0073】
本発明に従うアシル尿素は、従来から市販されているポリイソシアネート組成物(序論参照)の特性を改変させることを可能にする。
【0074】
アシル尿素は、可能な限り軽質であること、すなわち、これらのものは、有利にはせいぜい5個のジアミノ単位からなることが好ましい。
【0075】
その理由は、その反応が任意のイソシアネート官能基(この官能基が単量体に属するのか又はオリゴマーに属するのかを問わず)上で生じ得るからである。該アシル尿素が格別に有利な効果を有するためには、これらのものを単量体としてあまり多く取り入れないこと、しかしてこれらのものを上に定義されるようなジアミノ単位としてあまり多く有さないことが好ましい。
【0076】
モノアシル尿素(1種のモノカルボン酸に相当する)は2個のジアミノ単位しか含まないこと、ビスアシル尿素は3種の単量体(及び2種のモノカルボン酸)に相当し、しかして3個のジアミノ単位を有すること、二酸から得られるジアシル尿素は4個のジアミノ単位を含むこと、真の3量体又は真のビウレットのアシル尿素は、4個のジアミノ単位を有することに留意すべきである。
【0077】
組成物の粘度特性を改善させるためには、該組成物は、せいぜい5個のジアミノ単位、さらにはせいぜい3個のジアミノ単位のアシル尿素を少なくとも1重量%、有利には少なくとも1.5重量%、好ましくは少なくとも2重量%含むことが望ましい。
【0078】
有利には、このような組成物は、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも1.5重量%、より好ましくは少なくとも2%のモノアシル尿素を含む。
【0079】
また、本発明に従う組成物は、官能性を増大させることをも目的とする。この場合には、これらのものは、アジピン酸のような少なくとも二官能性の酸に相当するジアシル尿素を少なくとも2重量%、有利には少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%含むことができる。
【0080】
非常に明確にいうと、本発明に従う組成物は、モノアシル尿素とジアシル尿素の両方を含むことができ、かつ、前2段落の制約を満たすことができる。
【0081】
本発明は、ビウレット官能基をベースとする組成物に特によく適合する。
【0082】
従って、本発明によれば、これらの組成物は、少なくとも10重量%、有利には15重量%、好ましくは25重量%の真ビウレット(すなわち、単一のビウレット官能基と3個のジアミノ単位のみを含むもの)を含むことが望ましい。
【0083】
本発明は、比較的高い重質オリゴ縮合物含有量を含む高度に縮合した組成物のために特に有利である。従って、このような組成物は、真ビウレット(3個のビウレット単位)のせいぜい4/5、有利には2/3、好ましくはせいぜい半分(重量で)を含むことが望ましい。
【0084】
イソシアヌル酸官能基を含むものを含めて様々な縮合体にまで一般化するためには、モノアシル尿素の合計(分子)対少なくとも6個のジアミノ単位のオリゴマーの合計の重量比率が少なくとも2%、有利には5%、好ましくは7%に等しいことが望ましい。
【0085】
一般に、アシル尿素の存在のため官能性が害されないようにするために、モノアシル尿素の合計(分子)対少なくとも6個のジアミノ単位のオリゴマーの合計の重量比率は、せいぜい50%、有利には40%、好ましくは20%に等しい。
【0086】
さらに具体的にビウレットに戻ると、イソシアネート単量体の転化率は、NCO/ビウレット化剤並びにNCO/カルボキシル及び/又はアミド官能基の比に依存する。NCO/求核剤(可動水素を含む化合物)比が大きければ大きいほど、イソシアネート官能基の転化率は低い。さらに、転化率が大きければ大きいほど、得られるポリイソシアネート組成物の粘度も大きい。イソシアネート官能基の転化率又はイソシアネート単量体の転化率を決定するNCO/求核剤(可動水素を含む化合物)比は、得られるべきポリイソシアネート組成物に従って設定される。一般に、単量体の転化率は、5〜90%、好ましくは10〜60%である。
【0087】
驚くべきことに、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)から得られた従来のビウレットと比較すると、本発明の主題の化合物は、それよりも低い粘度を特徴とするが、これは、大気に放出される揮発性有機化合物を減少させる点で有利である。本発明の主題の化合物の粘度は、関連するイソシアネート単量体、すなわち、短鎖(4〜10鎖要素)を有する脂肪族イソシアネート誘導体(本明細書において、「線状」という。)よりも一般に高い粘度を与える脂環式化合物に非常に明らかに依存する。
【0088】
本発明の好ましい実施態様によれば、当該方法によって得られる本発明の組成物は、
・真のビウレット単位を含む化合物が少なくとも5%存在すること、
・真のアシル尿素化合物が少なくとも1.5%存在すること、
・NCO含有量が100gの組成物当たり0.5〜25重量%、好ましくは1〜20重量%のNCOであること、
・ポリビウレット及び/又はアシル尿素化合物が存在すること
を特徴とする。
【0089】
本発明の主題の化合物は、官能性誘導体の合成のために使用でき、或いは装飾的、機能的及び/又は保護的な目的のために有機又は無機表面(金属、ブラスチック、木材、布、革、コンクリートなど)に適用される被覆剤用組成物の製造のために使用できる。
【0090】
また、本発明の化合物は、ポリウレタン(フォーム)、エラストマー、繊維又はゴムを基材とする材料を製造する際にも取り入れられ得る。
【0091】
従って、その適用分野は非常に多様であり(ペイント、ワニス、接着剤、タイヤなど)、これは、屋外用途又は特定の媒体にさらされる用途(水中に浸漬される材料など)について等しく屋内用途に関連する。
【0092】
本発明の化合物は、200ハーゼン以下の低い着色指数を示す。
【0093】
最終混合物のうち本発明の化合物が有するイソシアネート官能基は、
・オキシム、ピラゾール、トリアゾール、イミダゾール、ラクタム又はケトエステルのような当業者に周知のイソシアネート官能基一時遮断剤(ここで、これらの化合物の全ては、1個以上の置換基を有するものとする。例としては、メチルエチルケトキシム、3,5−ジメチルピラゾール、ε−カプロラクタムなどが挙げられるが、これらに限定されない。)、
・例えば、アミノ−又はチオアルキルトリアルコキシシランのような、求核性官能基を含むアルコキシシラン、
・アクリル酸ヒドロキシアルキル、
・ジアミン、ジオール又はポリオールのような鎖延長剤
から選択できる様々な求核成分によって最終的に又は一時的に及び完全に又は部分的に官能化され得る。これらの化合物は、有機相又は水性相中で反応し得る。
【0094】
ポリウレタン又はポリ尿素型の被覆剤の場合には、本発明の化合物の共反応体は、
・アクリル酸(シクロ)アルキル若しくはアクリル酸ヒドロキシアルキル又はメタクリル酸(シクロ)アルキル若しくはメタクリル酸ヒドロキシアルキルのような、活性化二重結合を有する単量体化合物の重合によって誘導されるアクリル酸ポリオール(チオール)、
・アクリル酸ポリアミン、
・二酸又はジエステル又はカーボネートとジオール又はアミノアルコールとの重縮合から得られるポリエステルポリオール(チオール)又はポリアミン重合体、
・ポリカーボネートポリオール(チオール)重合体、
・ポリアミンのヒドロキシル及び/又はアミノ及び/又はチオ官能基を有するアルキル単位を含むポリシロキサン化合物、
・ヒドロキシル及び/又はアミン及び/又はチオール官能基を有するポリエーテル、
・ヒドロキシル又はカルボン酸官能基を含むポリプレン、
・アルコキシシラン、
或いは、一時的に遮断されたヒドロキシル、チオール又はアミン官能基を含む重合体化合物
であることができる。これらの遮断官能基の例としては、イミン、ジオキソラン、アセタールなどが挙げられる。
【0095】
これらの重合体及びこれらの重合体の構成単量体の合成は当業者に周知である。二重結合を有する単量体の例としては、アクリル酸及びメタクリル酸のn−ブチル、シクロヘキシル、メチル、イソプロピル又はt−ブチル、アクリルアミド及びメタクリルアミド並びにそれらのN−アルキル化誘導体、アクリル酸及びメタクリル酸、スチレン、ブタジエン又はビニル誘導体が挙げられる。
【0096】
重縮合反応の単量体の例としては、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ドデカン二酸、フタル酸又はこれらの二酸のエステル、炭酸メチル、炭酸エチル、炭酸プロピレン又は炭酸エチレンのような炭酸アルキレン、ブタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオールのようなジオールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
ポリエーテル化合物又はエポキシ重合体の例としては、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドが挙げられる。
【0098】
様々な充填剤、触媒、レオロジー添加剤又は顔料のような化合物を前記処方物に添加して所望の特性を導入することができる。
【0099】
次の実施例は、本発明を例示するものである。
【実施例】
【0100】
分析方法:
イソシアネート官能基の定量法:
「ジブチルアミン」法によるイソシアネート官能基の定量のための標準化された方法を使用する。定量すべき混合物のイソシアネート官能基との反応で消費されなかったN,N−ジブチルアミンを基準HCl溶液により逆滴定する。反応したN,N−ジブチルアミンと導入量との間の差によって、定量すべき混合物中のイソシアネート官能基含有量を測定することが可能になる。
【0101】
重合体のMn及びMW値の決定:
数平均分子量及び重量平均分子量を決定するための方法としてゲル透過クロマトグラフィーを使用する。既知の分子量のポリスチレン基準物を使用してゲル透過カラムを検量する。使用する溶離用溶媒は、基準重合体及び分析されるべき重合体にとって申し分のない溶媒である。このものは、重合体を検出するための方法(屈折率測定又は紫外線吸収による分析又は赤外線による分析)によって導入される制限を考慮して選択される。この溶媒は、テトラヒドロフランのようなエーテル、ジクロルメタンのような塩素化誘導体などから選択される。
分析されるべき重合体の溶離容量を基準重合体の溶離容量と比較し、それから分子量を推定する。また、構成成分である分析されるべき混合物の溶離オリゴマーも、1H NMR、13C NMR、赤外線などのような様々な構造分析技術による分析及びキャラクタリゼーションのために別々に回収できる。
これらの技術は、1500以下の分子量を有するオリゴマーの量の優れた決定を可能にする。
【0102】
粘度の決定
実質的に同一の結果を与える2つの方法を使用して粘度を決定する。これらの結果は、25℃の温度について与える。
第1の方法は、1980年8月の基準法NFT30−029に基づく:ワニス、ペイント及び関連する調製物の見掛けの動的粘度測定用の回転式粘度計のための操作方法。
商品名Rheovisco LV8のレオメーターを使用してこれを行う。操作温度は25℃である。装置の選択及び選択される操作条件は、粘度範囲による。例えば、0〜5000mPa.sの粘度範囲については、6回転/分の速度でL2シリンダーを使用し、0〜20000mPa.sの粘度範囲については、6回転/分の速度でL3シリンダーを使用し、そして0〜1000mPa.sの粘度範囲については、6回転/分の速度でL1シリンダーを使用する。
粘度を測定するために使用する第2の方法は、「ボール落下」方法である。その測定値は、前記方法によって与えられる値に非常に近い。
既知の密度(d=7.8)及び既知の直径(2mm)のステンレス鋼ボールを使用する。
未知の粘度のポリイソシアネートを20mmの直径及び20cmの高さを有する試験管に導入する。この試験管は、10cmずつ分けられた2つの印を有する。これを、サーモスタットで制御されかつ調節された浴中に浸漬させることによって、測定温度(25℃)で状態調製する。
ボールを液体の頂部に置き、そしてこれら印間の間隔に及ぶのにかかる時間を測定する。この粘度の値を次式の適用によって得、そしてこれを25℃でのmPa.sで表す。
25℃での粘度=1.11×t×100(ここで、tは、印間の10cmの間隔についてのボール落下時間(秒で表す)である。)
【0103】
合成例
例1:ビウレット及びアシル尿素単位を含むポリイソシアネート組成物
使用した装置は、窒素で不活性にされた2L反応器を含み、そして該反応器は、機械撹拌器、還流冷却器、ガス放出弁、及びほぼ200℃に予備加熱されかつ窒素で掃引された40cmの長さ及び1cmの直径を有する第2縦型管型反応器に連結された封管を備える。この管型反応器自体は、液状の水を供給するための装置に連結されている。
1000gのヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を2L反応器に導入する。出発NCO含有量は1.19である。反応媒体の温度は21℃である。燐酸ジブチル(DBP)の50重量%2−エチルヘキサノール溶液2.58gとプロピオン酸0.89gとを添加する。それぞれ、DBP/HDI及びプロピオン酸/HDIモル比は、1×10-3及び2×10-3である。この反応媒体を1分当たり250回転で撹拌する。この反応媒体の温度を140℃にもたらす。
19gの水、すなわち、5.65のHDI/H2Oモル比を該水供給用装置に導入する。
この19gの水を1時間にわたって注入するが、この水は、窒素で掃引された管型反応器内で、液体の状態から蒸気の状態に変化する(120L/時間)。反応が直ちに開始し、そして二酸化炭素の放出が観察される。該反応器の温度を140℃に保持する。
20分間にわたって水を注入した後の反応媒体のNCO含有量は1.138である。35分後に、これは1.060である。
水の注入の終了時に、NCO含有量は100g当たり0.961モルである。
HDIポリ尿素の不溶性粒子は、事実上観察されなかった。
この反応混合物をさらに2時間にわたって撹拌したままにし、そしてこの時間の終了時に、反応媒体のNCO含有量は100g当たり0.901モルで安定化する。HDIの転化率は、ほぼ48.7%である。
次いで、この反応媒体を焼結ガラス漏斗No.1によって濾過して、961gの回収された反応媒体の重量に対して20.5mgのレベルの不溶性物質を与えた。
その後、該反応媒体の860gを、薄膜装置上でHDI単量体を0.2mbarの真空下及び160℃で第1パスについては400g/時間及び第2パスについては200g/時間の処理量でもって連続して2回蒸留することにより、精製する。
ビウレット及びアシル尿素を含むポリイソシアネート組成物を310g回収し、そして当該組成物のNCO含有量は22.5%であり、該組成物の25℃での粘度は4850mPa.sであった。HDI単量体のレベルは0.5%以下である。
赤外線分析と組み合わされ、かつ、13C NMR分析でサポートされたゲル透過クロマトグラフィーによる分析は、
・HDIとプロピオン酸の真アシル尿素の含有量が1.5重量%であること、
・真ビウレットの含有量が43%であること、
・HDI2量体の含有量が4.3%であること
を示すことを可能にする。
【0104】
例2:ビウレット及びアシル尿素単位を含むポリイソシアネート組成物
同一タイプの反応器配置が例1と同様に利用でき、そしてその方法を同一の態様で実施するが、ただし、1500gのHDI、3.1gのプロピオン酸、及び強酸触媒としてp−トルエンスルホン酸(pTSA)の20重量%2−エチルヘキサノール溶液23gを使用する。
水の量は25gである。
それぞれのモル比は、pTSA/HDI:3×10-3、プロピオン酸/HDI:5.2×10-3、HDI/H2O:6.4である。
プロピオン酸及びpTSA触媒溶液の添加後の反応媒体の含有量は1.146である。
45分間にわたって水を注入した後の反応媒体のNCO含有量は0.950である。
水の注入の終了時に、NCO含有量は100g当たり0.871モルである。
HDIポリ尿素の不溶性粒子は事実上観察されなかった。
この反応混合物をさらに2時間にわたって撹拌したままにし、そして当該時間の終了時に、該反応媒体のNCO含有量は、100g当たり0.834モルで安定化する。HDIの転化率はほぼ55%であった。
次いで、反応媒体を焼結ガラスロートNo.1によって濾過して、1430gの回収された反応媒体の重量に対して38mgのレベルの不溶性物質を与えた。
蒸留後に得られたビウレット及びアシル尿素単位を含むポリイソシアネート組成物は、21.8%のNCO含有量を示す。
HDI単量体のレベルは0.5%以下である。HDIとプロピオン酸のアシル尿素レベルは2.3%である。HDI2量体の含有量は4%である。真ビウレットの含有量は40%である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシル尿素を含むポリイソシアネート組成物の合成方法において、少なくとも2個のイソシアネート官能基を含む誘導体を含む出発組成物を、少なくとも50℃に等しい温度で、少なくとも2種の酸であってそのうちの少なくとも1種が強酸(pKa≦3)であり、かつ、そのうちの少なくとも別のものが中程度の強さの酸(3≦pKa≦6)であるものの作用に付すことを特徴とする、アシル尿素を含むポリイソシアネート組成物の合成方法。
【請求項2】
イソシアネート誘導体の少なくとも1種が単量体であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
単量体誘導体が、重量で、前記出発組成物の少なくとも1/3、有利には1/2を占めることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
単量体誘導体が、前記出発組成物の少なくとも90重量%、有利には95重量%を占めることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
単量体誘導体又は単量体誘導体の少なくとも1種が少なくとも部分的に脂肪族であること、すなわち、ジイソシアネート単位のイソシアネート官能基のうち少なくとも1個、有利には2個、好ましくは全てがsp3混成の炭素によって保持されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ポリイソシアネート組成物がビウレット官能基を含む誘導体を含み、しかも前記出発組成物と、アミン又はアミン生成用反応剤、有利には流体の形態の水とをさらに接触させることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ポリイソシアネート組成物がビウレット官能基を含む誘導体を含み、しかも前記出発組成物と、アミン又はアミン生成用反応剤、有利には流体の形態の水とをさらに接触させ、ここで、モルで表されるアミン(生成された又は導入された)対単量体の合計のモル比が、1/2〜1/50に至る閉じた範囲(すなわち、限界値を含む)内、有利には1/3〜1/25に至る範囲内で選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記出発組成物と水とを、有利には予め添加された前記中程度の酸及び強酸の存在下で接触させることを特徴とする、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
強酸が脂肪族若しくは芳香族スルホン酸、カルボン酸−ホスホン酸を含めてホスホン酸、燐酸エステル又はペルハロアルカン酸から選択されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
中程度酸が脂肪族又は芳香族カルボン酸から選択されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
中程度酸を先駆物質の形態で反応媒体に少なくとも部分的に導入することを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
強酸を先駆物質の形態で反応媒体に少なくとも部分的に導入することを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
中程度酸の少なくとも1種が、少なくとも1のpK単位、有利には2のpK単位で少なくとも1種の強酸とは異なることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
強酸の含有量は、その強酸官能基の合計(当量として表される)対単量体の合計(モルとして表される)のモル比が、少なくとも0.1‰、有利には0.5‰、好ましくは1‰に等しいように選択されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
強酸の含有量は、その強酸官能基の合計(当量として表される)対単量体の合計(モルとして表される)のモル比がせいぜい2%、有利には1%に等しいように選択されることを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
中程度酸の含有量は、その中程度酸官能基の合計(当量として表される)対単量体の合計(モルとして表される)が少なくとも2‰、有利には5‰、好ましくは1%に等しいように選択されることを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
中程度酸の含有量は、その中程度酸官能基の合計(当量として表される)対単量体の合計(モルとして表される)のモル比がせいぜい10%、有利には5%に等しいように選択されることを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
強酸を、希釈された形態、有利にはその希釈剤の重量のせいぜい50倍、好ましくは1〜20倍で希釈された形態で導入することを特徴とする、請求項1〜17に記載の方法。
【請求項19】
前記強酸を水で希釈することを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記強酸をC1〜C14アルコール、有意にはC3〜C10アルコールで希釈することを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記強酸を前記中程度酸で希釈することを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
せいぜい5個のジアミノ単位のアシル尿素を少なくとも1重量%、有利には少なくとも1.5重量%、好ましくは少なくとも2%含むイソシアネート組成物。
【請求項23】
少なくとも1%のモノアシル尿素を含むことを特徴とする、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
少なくとも二官能性の酸に相当する少なくとも2%のジアシル尿素を含むことを特徴とする、請求項22又は23に記載の組成物。
【請求項25】
少なくとも10重量%、有利には少なくとも15重量%、好ましくは25重量%の真ビウレットを含むことを特徴とする、請求項20〜24のいずれかに記載の組成物。
【請求項26】
重量で、せいぜい4/5、有利には2/3、好ましくはせいぜい1/2の真ビウレットを含むことを特徴とする、請求項20〜25のいずれかに記載の組成物。
【請求項27】
モノアシル尿素(分子:numerator)対少なくとも6個のジアミノ単位のオリゴマーの重量比率が少なくとも2%、有利には5%、好ましくは7%であることを特徴とする、請求項20〜26に記載の組成物。
【請求項28】
モノアシル尿素(分子)対少なくとも6個のジアミノ単位のオリゴマーの重量比率がせいぜい50%、有利には40%、好ましくは20%であることを特徴とする、請求項20〜27に記載の組成物。

【公表番号】特表2007−513195(P2007−513195A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543589(P2006−543589)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【国際出願番号】PCT/FR2004/003262
【国際公開番号】WO2005/070882
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(390023135)ロディア・シミ (146)
【氏名又は名称原語表記】RHONE−POULENC CHIMIE
【Fターム(参考)】