説明

アジュバント処理されたウシ用ワクチン

本発明はイー・コリO157:H7のシェディングに拮抗する安全かつ効果的なワクチン組成物を提供する。免疫原的に活性な成分としてイー・コリO157:H7、代謝性油などのアジュバント、および薬理学的に許容される担体を免疫化ワクチンに処方する。本発明はまた、イー・コリO157:H7のシェディングを防止または改善する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、動物、特にウシにおけるイー・コリO157:H7定着を減少させるアジュバント処理されたワクチン、その製法、およびそのシェディング(shedding)を防止するために、その物を動物、特にウシに投与する方法に関する。
【0002】
(従来技術)
イー・コリO157:H7は毒性かつ一般的な食品媒介病原菌であり、このようなイー・コリO157:H7感染がヒトの健康に対する重大な関心の一の源である。イー・コリO157による感染に付随するヒトでの病気が1982年よりますます頻繁に報告されている。ヒトの病気とウシ製品を消費することとの間の疫学的関係が、合衆国、カナダおよび他の国々の飼育場または飼養場から集めた仔ウシまたは成体のウシの糞便からイー・コリO157:H7が単離されることで支持された。ヒト以外の動物からヒトに拡散する、ヒト感染の主たる原因は、汚染した牛肉または他の肉類製品を摂食することである。
【0003】
イー・コリO157:H7は反芻動物および他の動物の腸に定着し、一般にこれらの動物にて顕性疾患を惹起するものではない。イー・コリO157:H7がその定着した動物の糞便にシェディングすることが、ヒトにおけるイー・コリO157:H7感染の原因の一つとなっている。したがって、ヒト感染を防止するには、動物、特にウシにおけるイー・コリO157:H7のコロニー形成およびシェディングを根絶または減少させることが重要である。仔ウシにイー・コリO157:H7を経口接種することで血清中のLPSに対する抗体およびベロ毒素に対する中和抗体の迅速かつ持続的な増加が誘発されることが証明されている。穀類から干し草に短期間に飼料を変えることでウシからのイー・コリのシェディングを減少させる試みもなされた。しかし、この飼料を変更する方法は、全体的に、環境の糞便汚染を排除することができない。というのも、アメリカのウシが干し草だけで構成されている飼料を食べているとするのは疑わしいからである。
【0004】
ウシは大量に食肉処理され、ヒトに感染するのに必要なイー・コリO157:H7の数は少なくてすむため(10−100匹)、イー・コリO157:H7は深刻な健康問題を抱えたままである。食肉処理の段階でイー・コリO157:H7を検出し、その後で死滅させる;ウシの飼料を変えて腸内イー・コリO157:H7の数を減少させる;および動物を免疫処理してイー・コリO157:H7のシェディングを妨げる、とする改良された方法に対する研究に焦点が当てられた。それでもなお、場合によっては、時に悲惨な経済的健全性と環境衛生の結果を伴って、イー・コリO157:H7は、網をくぐり抜け、ほとんど大抵人的誤り(不適当な調理または交差汚染)と一緒になって、大損害を惹起する。ここ数年間において、科学者、家畜生産業者、ジャーナリスト、関連業者、政府代表者および缶詰工場の関係者は、農場経営者/牧場経営者が、食用処理されたウシが食品媒介病原菌をその体外または体内にて缶詰工場内に持ち込むであろう危険性を排除するよう(あるいは少なくとも最小限にするよう)積極的に努力する責任を前提として履行する必要のあることを示している。(a)クリーナー動物(cleaner animal)が、残骸、切り分けられた肉、最終の牛肉製品での病原菌の残存を減少させるであろう;(b)優良管理事例(Good Management Practices)、または優良生産事例(Good Production Practices)が食肉処理用のクリーナー動物を提供することの助けとなるであろう;および(c)食肉処理されるウシの内外に存在する食品媒介病原菌を最小限とするのに、介入の選択および管理事例の影響力が調査されるべきである、と主張されている。
【0005】
テキサス肥畜飼育者組合は、北大西洋で取れるワカメから造られるタスコ(Tasco)(登録商標)なる製品を、食肉処理に付す前の14日間、飼料に配合すると、ウシにおいてイー・コリO157:H7が300%減少したと報告している。CALF News(2002)は、プロバイオティクスまたはいわゆる「体に良い細菌」(実際には、ラクトバシラス・アシドフィルス(lactobacillus acidophilus)菌株)を含有する新しい食用成分が、米国食肉協会研究財団により資金供給された研究に基づいて、生きているウシにて50%程度のイー・コリO157:H7の存在を減少させうると報告した。Zhaoら(1998)は、イー・コリO157:H7に暴露される前に、選択されたプロバイオティクス菌(非腸管出血性大腸菌およびミラビリス変形菌を含む)をウシに投与すると、大抵の動物にてイー・コリO157:H7のキャリッジのレベルを減少させうる結果が得られることを報告した;L−ファーマ・インク(L-Pharma, Inc.)は、現在、この研究に基づくウシ用のプロバイオティクスを販売している。
【0006】
にもかかわらず、反芻動物、特にウシにて、その残骸を介してヒトの食料に到達しうる、イー・コリO157:H7の定着を効果的に防止するワクチンを製造する課題がいまなお存在する。
【0007】
(発明の要約)
本発明は、不活化または死滅の全体またはサブユニットのイー・コリO157:H7抗原からなる群より選択される免疫原的に活性な成分を、代謝性油および水酸化アルミニウムアジュバントと組み合わせて含む、ワクチン組成物を提供する。
代謝性油は、他の慣用的なワクチン賦形剤と一緒に、免疫原的に刺激する量にてワクチン組成物にて利用される。
【0008】
本発明のさらなる実施形態において、ワクチン組成物は、単位用量当たり少なくとも1x10個の不活化イー・コリO157:H7またはその成分と、約3−8%、好ましくは5%の代謝性油および約10−25%、好ましくは15%の水酸化アルミニウムを含む約5ないし10容量/容量%のアジュバントとを含む。
本発明の特に好ましい実施形態は、少なくとも2つの投与単位の死滅または不活化イー・コリO157:H7を含むウシ用のワクチン組成物であって、その投与単位の各々が少なくとも1x10個のバクテリンと、約5ないし25容量/容量%のアジュバントとを含み、該アジュバントが少なくとも一つの代謝性油、および水酸化アルミニウムを含み、さらには該投与単位が医薬上許容される担体を含む、ところのワクチン組成物である。
さらには、本発明の目的および特徴は、本明細書に記載の詳細な記載および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0009】
(発明の詳細な記載)
一般に、新規なワクチンを設計する際の問題は、生菌ワクチンが付与された標的宿主にて十分な安全性を欠く可能性があり、そして死菌または不活化菌ワクチンは十分に効果的な免疫原応答を刺激する能力を欠く可能性がある、というものである。通常、許容される効能を得るために、アジュバントまたは免疫原的に刺激する化合物が、ワクチン組成物にて死菌または不活化菌と組み合わせて使用される。しかしながら、標的となる宿主の安全性はアジュバントの添加により譲歩されることが多い。例えば、妊娠している動物は、アジュバントを含有する死菌または不活化菌ワクチンを投与した後で、何度も有意に高割合で流産していることが分かっている。加えて、食用の動物の場合、食品の消費のために販売されている動物の食肉の質に悪影響を与える、注射部位の反応を最少とすることが極めて望ましい。
【0010】
この度、適当なアジュバント、例えば、代謝性油を、本明細書に記載されるような免疫原的に活性な成分と組み合わせて使用すると、得られるイー・コリO157:H7ワクチンの組成物は使用について安全であり、特にウシにて有用であることが見出された。かくして、本発明は、肉質にとって有害である注射部位の反応を最少にしながら、効果的な免疫性と、安全性という目標を同時に達成するものである。
安全かつ効果的なワクチン組成物は:不活化または死滅の全体またはサブユニットのイー・コリO157:H7またはその混合物からなる群より選択される免疫原的に活性な成分と、適当なアジュバントとを一緒に含む。かかるワクチンは、反芻動物の定着を効果的に防止し、それによりイー・コリO157:H7がヒトの食料供給にシェディングする可能性を軽減または排除するであろう。
本明細書にて用いる場合、「免疫原的に活性な」なる語は、免疫応答を刺激する、すなわち、抗体、特に体液性抗体の産生を刺激するか、または細胞媒介性応答を刺激する、能力を意味する。効果的で免疫性を付与する免疫原的に活性な成分の量は変更可能であり、免疫応答を惹起し、イー・コリO157:H7の定着に対して免疫学的保護を付与するのに十分な量である。投与単位当たりの免疫原的に活性な成分の量は、好ましくは少なくとも1x10個の細胞である。これらの量は不活化または死滅の全細胞またはサブユニットの抗原に適している。
【0011】
免疫原的に活性な成分は、慣用的な技法を用いて定着した動物から単離された全細胞またはサブユニットのイー・コリO157:H7とすることができる。また、イー・コリO157:H7などの生物の保管を維持する種々の国内および国際菌株保存機関から入手可能な菌株などの、イー・コリO157:H7の入手可能な多くの単離体から誘導することもできる。アメリカン・タイプ・カルチャ・コレクション(ATCC)には、例えば、とりわけ、ATCC番号35150、43888、43889、43890、43894および43895の下に、イー・コリO157:H7が寄託されている。セントロ・ヴェネゾタノ・デュ・コレシオネス・デュ・ミクロオルガニスモス、インスチツト・デュ・ビオロジア・エクスペリメンタル、ユニバーシダッド・セントラル・デュ・ベネズエラには、イー・コリO157:H7がCVCM815の下に寄託されている。コレクション・デュ・ルインスチツト・パスツール、インスチツト・パスツールには、イー・コリO157:H7がCIP759の下で寄託されている。バイオレソース・コレクション・アンド・リサーチ・センター、フード・インダストリ・リサーチ・アンド・デベロップメント・インスチチュートには、イー・コリO157:H7がBCRC59の下で寄託されている。また、PCT WO 00/04922はイー・コリO157:H7のO−特異的ポリサッカライドから調製される特定のサブユニットのイー・コリO157:H7抗原を記載する。
【0012】
ワクチン処理工程として、本明細書では、動物当たり少なくとも一つの投与単位を意図する。二つまたはそれ以上の投与単位が特に有用である。投与単位は、典型的には、約1ないし2ミリリットルであり、各投与単位は上記した量の細菌または細菌成分を含有する。当業者であれば、バクテリンまたはその成分の有効な免疫化量が動物にデリバリーされる限り、投与単位当たりのワクチン組成物の最適量、ならびにワクチン処理工程当たりの投与単位の総数を最適化しうることを理解するであろう。
本発明のイー・コリO157:H7ワクチン組成物は、その成分の一つとして最も好ましくは代謝性油を含有する適当なアジュバントを含有する。本明細書で使用する場合の「アジュバント」なる語は、ワクチンまたは免疫原に対する体内の応答を改善するいずれの成分をもいう。アジュバントは、典型的には、本発明のワクチン処方の約0.1ないし50%容量/容量、好ましくはワクチンの約1ないし50%、より好ましくは約1ないし20%、特に1ないし10%容量/容量からなる。約5ないし15%容量/容量の量がさらにより好ましい。
【0013】
ワクチン組成物に利用されるアジュバントとして、標的となる種により代謝可能な少なくとも一つの免疫刺激性油が挙げられる。本発明の組成物に使用するのに適する代謝性油として、オイルエマルジョン、例えば、SPオイル(後記する)、エマルシゲン(Emulsigen)(MPVラボラトリー、ラルストン、NZ)、モンタニド(Montanide)264,266,26(セピック(Seppic)SA、パリ、フランス)ならびにピーナッツオイルおよび他の植物を基礎とする油、スクアラン(鮫肝油)または獣医のワクチン慣習においてアジュバントの使用に適する他の代謝性油が挙げられる。
アジュバント組成物は、好ましくは、代謝性油に加えて、1またはそれ以上の湿潤剤または分散剤を、アジュバントの容量に対して約0.1ないし25%、より好ましくは約1ないし10%、さらにより好ましくは約1ないし3%の量にて含む。湿潤剤または分散剤としては非イオン性界面活性剤が特に好ましい。アジュバントの他の成分として、アジュバントの容量に付き約1容量%までの量のベンジルアルコール、ホルマリンおよびチメロサールなどの保存剤が挙げられる。
【0014】
特に好ましいアジュバントは、SPオイルと称される代謝性油の処方である。実施例を含む明細書に記載されるように、「SPオイル」なる語は、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、スクアラン、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートおよび緩衝化された塩類溶液を含むオイルエマルジョンを表す。一般に、SPオイルエマルジョンは約1ないし3容量/容量%のブロックコポリマー、約2ないし6容量/容量%のスクアラン、より好ましくは約3ないし6%のスクアランおよび約0.1ないし約0.5容量/容量%のポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを含み、残りが緩衝化された塩類溶液であろう。
本発明の極めて好ましいワクチン組成物において、代謝性油は、好ましくは約10−20容量/容量%の量の、最も好ましくは約15容量/容量%の量の水酸化アルミニウムゲルと一緒に利用される。このSPオイルと水酸化アルミニウムゲルの組み合わせが、ワクチン処理された反芻動物にて全身性および局所性免疫作用の両方の作用が誘発されるという点で特に有用なワクチンを提供する。もう一つ別の意外な特徴は、このアジュバントの組み合わせが、あるケースにおいて、特定の抗原形態にてその安全性を有意に改善する点にある。
【0015】
SPオイルを利用する場合、本発明のワクチン組成物中のアジュバントとしてのSPオイルの免疫原的に刺激する量は、免疫原的に活性な成分、感染の可能性のある照射の程度、ワクチン組成物の投与方法、ウシの年齢および大きさ等に従って変化しうる。一般に、ワクチン組成物の約1%ないし50容量/容量%の量のSPオイルが適当であり、好ましくは約4%ないし10容量/容量%、より好ましくは約4%ないし5容量/容量%のSPオイルである。
本発明のワクチン組成物に用いるのに適する医薬的に(または薬理学的に)許容される担体は、獣医薬組成物に適する慣用的な液体担体、好ましくは組織培地にて用いるのに適する平衡塩類溶液または他の水基剤溶液であってもよい。他の入手可能な担体も利用することができる。
【0016】
当該分野にて入手可能な付加的な賦形剤を、上記した種々の実施形態に従ってワクチン組成物に含めてもよい。例えば、pH調整剤を利用してもよい。
上記した、担体を含む、本発明のワクチン組成物の成分は、利用可能な技法を用いて一緒にすることができる。
上記した、活性成分としてのイー・コリO157:H7の免疫原的に活性な成分に加えて、本発明のワクチン組成物はまた、他の活性成分、例えば、サルモネラ・ダブリスまたはサルモネラ・チフィムリウス等あるいはその組み合わせに拮抗して方向付けられる抗病原性成分を含有してもよい。一またはそれ以上のこれら細菌の量は、効能に関する文献から決定してもよく、あるいは利用可能な技法を用いて決定してもよい。
【0017】
本発明の一の実施形態において、本発明の免疫原的に活性な成分を、多糖類、ペプチド、蛋白等、あるいはその組み合わせなどの適当な生体化合物とコンジュゲートさせてもよい。
本発明の好ましい実施形態において、本発明のワクチン組成物を上記した投与単位形態に処方し、投与を容易にし、投与量の均一性を確実にしてもよい。エマルジョンの調製に適用できる技法などの、利用可能な技法を用いて処方を行ってもよい。
本発明のワクチン組成物は、非経口的に、例えば、筋肉内、皮下、腹腔内、皮内等、好ましくは皮下的に投与することができる。
【0018】
実際に行うにおいて、本発明のワクチン組成物は、イー・コリO157:H7の担体に照射可能と予想される時間により決定することのできる、一の投与計画に従った有効量にて、非経口的に、皮下的に、または他の利用可能な手段により、好ましくは非経口的に、より好ましくは皮下的に投与される。この方法においては、処理される動物は天然の照射の前に免疫性を構築する時間を有していてもよい。本発明を限定するものでない、実施例によれば、典型的な治療計画または投与計画は、潜在的な照射の少なくとも約2−8週間前に、一の投与単位を非経口投与すること、好ましくは皮下注射することを含めてもよい。少なくとも2回の投与、例えば、バクテリンに潜在的に照射する約8週前に一の投与単位を、処理された動物の潜在的照射の約3−5週前に第二の投与単位を投与することが好ましい。上記したように、投与単位は、典型的には、活性成分を一の量にて含有し、アジュバントおよび不活性成分を上記したように一定の割合にて含有する、約0.1ないし10ミリリットルのワクチン組成物の範囲内にあるであろう。おそらく、約0.5ないし5ミリリットルの範囲内にある投与単位がより好ましく、約1ないし2ミリリットルが特に好ましい。
【0019】
本発明をさらに明確に理解するために、以下にその実施例を述べる。これら実施例は単なる例示であり、本発明の範囲および基礎となる原理を制限するものと決して解釈されるべきではない。実際、本明細書に示され、記載される修飾に加えて、本発明の種々の修飾が以下の実施例および以上の記載から明らかとなるであろう。かかる修飾もまた、添付した特許請求の範囲の範囲内にあると意図される。
【0020】
実施例
実施例1−ワクチンの調製
【表1】

【0021】
成分を混合し、安定な塊またはエマルジョンが形成されるまで均一化する。均一化の前に、成分または混合物をオートクレーブに付してもよい。エマルジョンをさらに濾過により滅菌処理に付してもよい。
【0022】
ワクチン処方:ウシのイー・コリO157:H7バクテリン
投与容量:2ml/投与
【表2】

【0023】
13.8リットルを3.86x10個の細胞/mlの濃度の発酵物より収穫した。
*750mlのSPオイルは0.75mlの5%チメロサールを含有する(750mlx0.001=0.75ml)
6ml−0.75ml=5.25ml(必要とする添加量)
【0024】
ブレンド経路
1. 不活化菌を少なくとも30分間、150−200rpmで混合し、十分な混合を確保する。
2. 3000mlの混合菌を採取し、10000rpmで30分間遠心分離に付す(残りの抗原のストックを4℃に維持する)。
3. ペレットを集め、該ペレットを0.01M PBSを用いて3000mlとして再度懸濁させ、十分に混合する。
4. 971.5mlの再度懸濁された細胞を採取し、2028.5mlの0.01M PBSを添加して総容量を3000mlとする。これがフラクションAである。
5. もう一度971.5mlの再度懸濁された細胞を採取し、2028.5mlの0.01M PBSを添加して総容量を3000mlとする。これがフラクションBである。
6.2250mlのAlOHゲルをフラクションAに加え、この組み合わせを1時間150−200rpmで混合する。
7. 750mlのSPオイルをフラクションBに加え、この組み合わせを1時間150−200rpmで混合する。
8. 上記のフラクションAとフラクションBを合わせ、その組み合わせを1時間150−200rpmで混合する。
9. 5.25mlの5%チメロサールを添加し、その容量を0.01M PBSを用いて14800mlとする。
10. ワクチンを少なくとも30分間150−200rpmで混合する。
11. pHをチェックし、必要ならばpHを7(+0.2)に調整する。
12. pHを調整した後、ワクチンを0.01M PBSを用いて15000mlとし、少なくともさらに30分間混合する。
13. ワクチンを充填してラベルを貼る。
【0025】
実施例2
アジュバント処理した、またはアジュバント処理していないイー・コリO157:H7ワクチンで予防接種した後のウシにおける血清学的応答の評価およびウシにおける試験ワクチンの安全性
商業的供給源から得た24頭の健康な雑種のウシをこの試験に用いる。その年齢は第一の予防接種時に6−12月齢の範囲にあり、雌雄の両方の動物を用いる。ウシは適用される動物保護規定に合致するハウジングに収容されているグループである。水と食べ物は自由に摂取することができる。試験責任者と相談した上で植物獣医師(plant veterinarian)が必要があるとしたすべての動物を処理した。試験の前および間の処理を記録する。抗生物質または場合によっては免疫抑制薬を必要とする動物を試験から除外する。
【0026】
ワクチン組成物を処方して、9CFR§§113.26および113.33にて規定されるように、不妊および実験室の動物の安全性について試験する。ワクチンを2−7℃で貯蔵する。仔ウシを無作為に一群6頭の動物の群に分ける。群6を従来通りにアジュバント処理したワクチンで予防接種する。群7を本発明に従ってアジュバント処理したワクチンで予防接種し、群5予防接種されていない対照として適用する。仔ウシに適当なワクチンを2mlの用量で皮下経路を介して予防接種する。第二の用量を3−4週にて投与し、第三の用量をさらに3−4週後に投与する。仔ウシを第一と第二の投与の際に採血し、その後、第三の予防接種から4週経過するまで毎週採血する。各血清サンプルを抗体反応について評価する。
血清分析を統計的に解析し、抗体応答における違いを決定する。ELISA価を測定し、ワクチン応答を評価して結果を平均化する。
【0027】
各予防接種の後、3日間、注射部位を観察する。何らかの注射部位の反応が認められたならば、その場合、ウシを予防接種後14日まで、あるいはその反応が消えるまで観察する。注射部位の反応を3つの方向(長さ、幅および高さ)にて測定する。毎日の反応の評点をLxWxHで算定する。合計の反応の評点をMann Whitney Rank Sumで解析する。有意性のレベルをp<0.05にセットする。
結果は以下のとおりである:
血清学:ELISA価
対照:群5
標準アジュバント:群6
本発明のSPオイル オイル/水酸化アルミニウムアジュバント:群7
【0028】
【表3】

【0029】
結果:第三の予防接種から14日経過後のELISA価のレベルに基づき、群7の動物が対照群および群6の動物と比べて高い免疫原的応答を示す。
【0030】
【表4】

【0031】
−1dpv2=第二の予防接種の前の日における注射部位の評価
0dpv2=第二の予防接種の日における注射部位の評価
1dpv2=第二の予防接種の1日経過後における注射部位の評価
2dpv2=第二の予防接種の2日経過後における注射部位の評価
3dpv2=第二の予防接種の3日経過後における注射部位の評価
4dpv2=第二の予防接種の4日経過後における注射部位の評価
5dpv2=第二の予防接種の5日経過後における注射部位の評価
6dpv2=第二の予防接種の6日経過後における注射部位の評価
7dpv2=第二の予防接種の7日経過後における注射部位の評価
10dpv2=第二の予防接種の10日経過後における注射部位の評価
11dpv2=第二の予防接種の11日経過後における注射部位の評価
【0032】
結果は、本発明に従ってアジュバント処理したワクチンにおいて、有意に高い免疫原性応答を示しながら、反応部位にて同様の反応速度のあることを示す。
【0033】
実施例3
フィールド実験
実施例1のワクチン組成物を2ヶ月にわたる実験の商業的フィードロットにて利用し、イー・コリO157:H7のフィードロットのウシにおける有病率を減少させる種々のインターベンションの有効性を評価して比較した。実施例1のイー・コリを一ヶ月の間隔で実験の間2回投与した。最後の予防接種から3日目に、USDA−FSISはワクチン接種したウシの食肉処理を許可した。該ワクチンは宿主の免疫系を刺激し、特にT細胞およびB細胞の両方が体液性抗体およびある種のCMI因子を惹起することを刺激した。
【0034】
処理場に輸送してから48時間以内に、一の囲い当たり25頭のウシから皮および糞便のサンプルを集めた。収集後、サンプルを分析するために研究室に送った。イー・コリO157:H7分析のデータは、病原菌の陽性について試験し、囲い当たりに収集したサンプル全体で割った、皮、糞便および皮または糞便のパーセンテージとして報告された。皮および糞便のサンプルは共に同じ動物に由来するため、皮または糞便のいずれかのサンプルが陽性であるならば、該動物は陽性であると考えられるとして、研究者は該データを解析した。処理の間の陽性サンプルのパーセンテージの差はカイ二乗適合度試験を用いて測定した(SAS Inc.、Cary、NC)。該ワクチンは皮サンプルでの病原菌の有病率を20.3%減少させ、糞便サンプル中では31.1%減少させることが判明した。ラクトバシラス・アシドフィルスまたはネオマイシン薬用飼料補助品で処理するような他のインターベンション方法と合わせると、該ワクチンは抗原のシェディングにおいてさらなる減少を提供する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活化または死滅の全体またはサブユニットのイー・コリO157:H7あるいはその混合物からなる群より選択される免疫原的に活性な成分;代謝性油のアジュバント;および任意の医薬上許容される担体を含む、ワクチン組成物。
【請求項2】
免疫原的に活性な成分が不活化または死滅の全体またはサブユニットのイー・コリO157:H7であるところの、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
免疫原的に活性な成分が不活化の全体のイー・コリO157:H7であるところの、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
アジュバントがワクチン組成物の0.1ないし50容量/容量%からなるところの、請求項1または2記載の組成物。
【請求項5】
アジュバントが代謝性油および水酸化アルミニウムゲルを含むところの、上記した請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
アジュバントが代謝性油の1ないし50容量/容量%からなるところの、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
代謝性油がスクアランであるところの、請求項5または6記載の組成物。
【請求項8】
アジュバントがさらに1またはそれ以上の湿潤剤および/または分散剤を含むところの、請求項5ないし7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
湿潤剤および/または分散剤がアジュバントの0.1ないし25容量/容量%からなるところの、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
湿潤剤および/または分散剤が非イオン性界面活性剤からなる群より選択されるところの、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
非イオン性界面活性剤がポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックコポリマーおよびポリオキシエチレンエステルからなる群より選択されるところの、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
免疫原的に活性な成分が単位用量当たり少なくとも1x10個の細胞を提供するのに十分な量にて存在するところの、請求項10記載の組成物。
【請求項13】
動物を請求項1記載の組成物で処理することを含む、動物中のイー・コリO157のシェディングを減少させる方法。
【請求項14】
動物をさらにラクトバシラス・アシドフィルスまたはネオマイシン薬用飼料補助品で処理することを含む、請求項13記載の方法。

【公表番号】特表2006−519880(P2006−519880A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509222(P2006−509222)
【出願日】平成16年3月5日(2004.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/006941
【国際公開番号】WO2004/080400
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】