説明

アスファルト舗装廃材の再生方法

【課題】 アスファルト舗装路を効率良く、かつアスファルト分を劣化させることなく加熱して軟化させ、この軟化した状態で舗装路を切削することにより元の粒度のまま有効に骨材を回収できるようにしたアスファルト舗装廃材の再生方法を提供する。
【解決手段】
走行車両1の下部に舗装路の路面を覆うようにフード2を備え、このフード2の周端部にはフード2内部を密閉可能なようにカーテン状のゴム材3を垂下させる。また、走行車両1上には高温の水蒸気を発生させるボイラ4を搭載し、このボイラ4にて発生させた高温の水蒸気をフード2内部に噴霧させるようにする。そして、舗装路を切削するときには、先ずボイラ4からの高温の水蒸気をフード2内部に噴霧して、舗装路を効率良く、かつアスファルト分を劣化させることなく加熱して軟化させる。そして、この状態で路面切削機にて切削して骨材を細かく破砕せずに有効に回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路工事などでアスファルト舗装路が掘り起こされることによって発生するアスファルト舗装廃材から骨材を分離回収して再生するアスファルト舗装廃材の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年アスファルトプラントにて製造されるアスファルト混合物は、その使用用途に応じて特殊なものが製造される場合が増えており、例えば5〜13mm粒径の骨材(約85重量%)と砂(約15重量%)の二種類の骨材を専ら使用することで内部に20%程度の空隙率を持たせ、舗装路の路面に雨水などが溜まらないように舗装路内部に水を染み込ませると共に、染み込ませた水は下方の路床から排水させるようにした、いわゆる排水性アスファルト混合物も多く製造されている。
【0003】
ところで、この排水性アスファルト混合物による舗装路を道路工事などで切削する際、通常の舗装路と同様に常温のまま路面切削機にて切削すると、それによって発生するアスファルト舗装廃材(以下「排水性廃材」という)中に含まれる5〜13mm粒径の骨材自体も細かく破砕されて細粒化してしまう。その結果、回収される骨材を使って再度排水性アスファルト混合物を製造しようとしても、上記と同程度の空隙率が確保できずに十分な排水機能を発揮できないため、そのまま上手く再利用することができなかった。
【0004】
一方、従来よりアスファルト舗装路の路面を補修する際に、先ず路面をヒータで加熱して予め柔らかくした上で、リミキサにて掻きほぐした後、これに新規のアスファルト混合物などを添加混合して路面に敷き均すようにした方法がある(特許文献1、2参照)。そこで、この方法のように切削する路面をヒータで加熱して予め柔らかくしておけば、路面切削機による切削を行ったとしても排水性廃材中の骨材が細かく破砕されてしまうのを極力抑えることができ、回収される骨材をそのまま再利用しても十分に排水機能を有した排水性アスファルト混合物を得ることができると考えられる。
【特許文献1】特開2004−124549号公報
【特許文献2】特開2004−124550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ヒータによる路面の加熱は、周囲へ熱放散しやすくて無駄が多く効率が悪い上、加熱温度が高いと簡単に路面を焦がして排水性廃材中のアスファルト分を劣化させてしまい、もしこのような材料をそのまま再利用すればアスファルト混合物の品質の低下を招くおそれがある。
【0006】
本発明は上記の点に鑑み、アスファルト舗装路を効率良く、かつアスファルト分を劣化させることなく加熱して軟化させ、この軟化した状態で舗装路を切削することにより元の粒度のまま有効に骨材を回収できるようにしたアスファルト舗装廃材の再生方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1記載のアスファルト舗装廃材の再生方法は、アスファルト舗装路の路面に高温の水蒸気を噴霧して加熱し、アスファルト舗装路中のアスファルト分を軟化溶融させてその結合力を十分弱めてから路面切削機にて切削して解砕し、アスファルト舗装廃材中の骨材粒度が細粒化されないようにして回収するようにしたことを特徴としている。
【0008】
また、請求項2記載のアスファルト舗装廃材の再生方法は、走行車両の下部にアスファルト舗装路の路面を覆うようにフードを備え、該フードの周端部にはフード内部を密閉可能なようにカーテン状の可撓性部材を垂下させると共に、走行車両上には高温の水蒸気を発生させるボイラを搭載し、該ボイラにて発生させた高温の水蒸気を前記フード内部に噴霧させることでアスファルト舗装路の路面を加熱するようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明に係る請求項1記載のアスファルト舗装廃材の再生方法によれば、アスファルト舗装路の路面に高温の水蒸気を噴霧して加熱し、アスファルト舗装路中のアスファルト分を軟化溶融させてその結合力を十分弱めてから路面切削機にて切削して解砕し、アスファルト舗装廃材中の骨材粒度が細粒化されないようにして回収するようにしたので、高温の水蒸気をアスファルト舗装路の内部に浸透させて舗装路を表面と内部の両方から効率良く加熱できると共に、ヒータのように加熱し過ぎることもなくてアスファルト分の劣化のおそれもなく、元の粒度のまま有効に骨材を回収できる。
【0010】
また、請求項2記載のアスファルト舗装廃材の再生方法によれば、走行車両の下部にアスファルト舗装路の路面を覆うようにフードを備え、該フードの周端部にはフード内部を密閉可能なようにカーテン状の可撓性部材を垂下させると共に、走行車両上には高温の水蒸気を発生させるボイラを搭載し、該ボイラにて発生させた高温の水蒸気を前記フード内部に噴霧させることでアスファルト舗装路の路面を加熱するようにしたので、高温の水蒸気を、走行しながら無駄なく舗装路の路面に噴霧することができて更に効率良く加熱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係わる請求項1記載のアスファルト舗装廃材の再生方法にあっては、例えば排水性アスファルト混合物による舗装路を切削し、その排水性廃材から骨材を再利用可能な状態で回収するときには、先ず、舗装路の路面に向けて、アスファルト混合物中のアスファルト分を好適に軟化溶融可能な、例えば約200℃程度の高温の水蒸気を噴霧して路面を加熱していく。このとき、特に排水性アスファルト混合物からなる舗装路では空隙率が20%程度あるため、路面に噴霧した高温の水蒸気の一部は容易にそのまま舗装路内部へと浸透していき、舗装路は路面側からと内部側からの両方から効率良く加熱されていく。また、水蒸気による加熱であるため加熱し過ぎで路面が焦げ付くこともなく、アスファルト分が劣化してしまうようなおそれもない。
【0012】
こうして、舗装路のアスファルト分が適度に加熱されると軟化溶融していき、その結果、骨材同士の結合力は次第に弱まって僅かな力でも容易に解砕できるまでになる。そして、そのような状態とした上で路面切削機にて舗装路を切削して解砕していく。このとき、アスファルト混合物中の各骨材同士の結合力は十分に弱まっているため、路面切削機による切削時にも骨材に対して無用に大きな力が加わることはなく、その結果、骨材を細かく破砕してしまうようなおそれはない。そして、このようにして回収した骨材は、順次ダンプなどに積載していく。このとき、積載された骨材の表面は水の層で覆われているためアスファルトによる付着が生じにくく、例え温度が低下しても再固形化するようなおそれもなく、新たな排水性アスファルト混合物の製造に好適に再利用することができる。
【0013】
また、請求項2記載のアスファルト舗装廃材の再生方法にあっては、アスファルト舗装路上を走行可能な走行車両の下部に、路面を覆うように形成したフードを備え、該フードの周端部にはフード内部を密閉可能なようにカーテン状のゴム材などを周設して垂下させている。また、走行車両の上部には高温の水蒸気を発生させるためのボイラを搭載していると共に、該ボイラと前記フードとをダクトにて連結し、ボイラにて発生させた高温の水蒸気をフード内部に送り出せるようにしている。
【0014】
そして、例えば排水性アスファルト混合物による舗装路を切削する際に、骨材が細かく破砕されてしまわないように予め舗装路を加熱して柔らかい状態とするときには、先ず、前記走行車両を切削予定の路面上を所定の速度で走行させながら、搭載しているボイラにて例えば約200℃程度の高温の水蒸気を発生させ、この高温の水蒸気をダクトを介して車両下部のフード内部に送り込んで噴霧する。このとき、フード内部は略密閉状態となっているため、高温の水蒸気はフード内部に充満し、無駄な熱放散を抑えながら路面を効率良く加熱していくことができる。そして、走行車両が通過し終えた頃には舗装路は十分に加熱されて軟化した状態となっており、その後を走行する路面切削機にて切削を行うと骨材を細かく破砕することなく解砕していくことができ、新たな排水性アスファルト混合物の製造にそのまま再利用可能な状態で骨材を回収することができる。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1はアスファルト舗装路を切削する前に予め加熱して軟化した状態とするための路面加熱用の走行車両の一実施例を示すものである。図中の1は走行車両本体であって、エンジンやタイヤなどを備えており、舗装路上を自在に自走可能としている。前記走行車両1の下部には、図に示すように、路面を覆うように形成したフード2を備えており、該フード2の周端部にはフード2内部を密閉可能なように、略カーテン状の可撓性部材であるゴム材3を周設して垂下させ、該ゴム材3の下端部を路面に当接させている。
【0017】
また、走行車両1の上部には、高温の水蒸気を発生させるためのボイラ4を搭載していると共に、該ボイラ4と前記フード2とを蒸気用のダクト5にて連結しており、ボイラ4にて発生させた高温の水蒸気を、前記ダクト5を介してフード2内部へ送り出して噴霧させるようにしている。なお、前記ボイラ4にて発生させる水蒸気の温度は、エネルギー効率を考慮してアスファルト舗装路のアスファルト分を軟化溶融させられる最低限の温度であれば良く、例えば約200℃程度に設定すれば良いが、加熱する舗装路の性状に応じて適宜温度に調整すればよい。
【0018】
しかして、アスファルト舗装路を路面切削機などで切削し、そのとき回収される骨材を再利用して再生させるときには、先ず、前記走行車両1を切削予定の路面上を微速走行させながら、搭載したボイラ4を稼動させて約200℃程度の高温の水蒸気を発生させ、この高温の水蒸気をフード2内部へと送り込んで噴霧させる。このとき、フード2内部は略密閉状態となっており、高温の水蒸気はフード2内部に充満して無駄な熱放散も極力抑えられて舗装路を効率良く加熱していくと共に、高温の水蒸気が周囲に噴出するようなこともなくて作業上都合が良い。また、高温の水蒸気はアスファルト混合物表面に触れると結露してその際に大きな潜熱を放出するため、水蒸気が保有する熱量を有効に舗装路の加熱に利用することができる。また、特に舗装路が排水性アスファルト混合物から成るものである場合には、舗装路内部の空隙率は約20%程度もあるため、噴霧した高温の水蒸気の一部は舗装路内部へと容易に浸透していき、舗装路を路面側からと内部側からの両方から効率良く加熱していく。このように、舗装路を高温の水蒸気によって加熱するため、加熱のし過ぎなどで路面が焦げ付くこともなく、アスファルト分が劣化してしまうようなおそれもない。なお、舗装路を加熱した水蒸気は、結露したもの同士が結合していって60〜80℃程度の温水となり、この温水はやがて舗装路内部へと染み込んでいって最終的に下方の路床より排水されていく。
【0019】
そして、前記走行車両1が通過した後、その直ぐ後を走行する路面切削機(図示せず)にて舗装路の切削を行う。このとき、舗装路のアスファルト分は高温の水蒸気に晒されることによって軟化溶融しており、骨材同士の結合力は十分に弱まっていて僅かな力でも容易に解砕されるまでになっていて、その結果、路面切削機にて切削処理を行っても、排水性廃材中の骨材に対して無用に大きな力が加わって骨材が細かく破砕されてしまうようなおそれもなく、骨材を元の粒度のままで有効に回収することができる。そして、こうして回収した骨材を順次ダンプなどに積載していく。このとき、積載される骨材はその表面を水の層で覆われているため、アスファルトによる付着が生じにくく、温度低下に伴う再固形化のおそれもなくて、新たに製造する排水性アスファルト混合物にそのまま好適に再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るアスファルト舗装廃材の再生方法に使用する、舗装路を加熱するための走行車両の一実施例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0021】
1…走行車両 2…フード
3…ゴム材(可撓性部材) 4…ボイラ
5…ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト舗装路の路面に高温の水蒸気を噴霧して加熱し、アスファルト舗装路中のアスファルト分を軟化溶融させてその結合力を十分弱めてから路面切削機にて切削して解砕し、アスファルト舗装廃材中の骨材粒度が細粒化されないようにして回収するようにしたことを特徴とするアスファルト舗装廃材の再生方法。
【請求項2】
走行車両の下部にアスファルト舗装路の路面を覆うようにフードを備え、該フードの周端部にはフード内部を密閉可能なようにカーテン状の可撓性部材を垂下させると共に、走行車両上には高温の水蒸気を発生させるボイラを搭載し、該ボイラにて発生させた高温の水蒸気を前記フード内部に噴霧させることでアスファルト舗装路の路面を加熱するようにしたことを特徴とする請求項1記載のアスファルト舗装廃材の再生方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−104689(P2006−104689A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−289487(P2004−289487)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000226482)日工株式会社 (177)
【Fターム(参考)】