説明

アスベスト減容方法

【課題】現場にてアスベストを減容し、処理コストを低減させること。
【解決手段】 アスベスト含有建築壁を排出現場にて減容するアスベスト減容方法であって、アスベスト含有建築壁に飛散防止剤を吹き付けてまたは塗布して含浸させた後、当該アスベスト含有建築材を剥ぎ取り、これを圧縮して一次減容し、所定濃度の酸を添加して所定時間加熱攪拌し、プレス脱水処理してニ次減容し残余の固体分を廃棄物として処理することを特徴とするアスベスト減容方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスベスト減容方法に関し、特に、老朽化したビル等の解体時に排出されるアスベスト含有建築壁を現場にて減容する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
アスベスト問題が認識されるまで、ビル等には断熱性を持たせるため壁や天井にはアスベスト含有の石膏ボードが広く用いられてきた。ビル等のコンクリート建造物は、耐用年数が数十年であるので、近年建て替えが進行しつつある。
【0003】
ここで、アスベスト含有廃棄物は、管理型処分場にて埋設処理することが義務づけられており、一般の産業廃棄物を安定型処理場へ搬入する場合には1万円/m〜2万円/mの処理費しか必要でないところ、5万円/mもの処理費が必要となる。さらに、コンクリート建造物から剥ぎ取られるアスベスト含有廃棄物は湿った綿状であって、非常に嵩が多い。すなわち、排出体積量が多くかつ体積で処理費が計算されるので極力減容したいという潜在的な要請がある。
【0004】
また、現場で袋詰めされたアスベスト含有廃棄物は処理場まで開封してはならないため、減容するのであれば、排出現場にておこなう必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−253854号公報
【特許文献2】特許4153973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
すなわち、解決しようとする問題点は、現場にてアスベストを減容し、処理コストを低減させる点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のアスベスト減容方法は、アスベスト含有建築壁を排出現場にて減容するアスベスト減容方法であって、アスベスト含有建築壁に飛散防止剤を吹き付けてまたは塗布して含浸させた後、当該アスベスト含有建築材を剥ぎ取り、これを圧縮して一次減容し、所定濃度の酸を添加して所定時間加熱攪拌し、プレス脱水処理してニ次減容し残余の固体分を廃棄物として処理することを特徴とする。
【0008】
すなわち、請求項1に係る発明は、一次減容にて酸処理の効率化を図り、酸を、飛散防止剤に由来する廃材の膨潤が生じない濃度であってアスベストの改質(無害化)を可能とする濃度範囲とし、最適条件下で効率的に二次減容をおこなう。なお、温度は90℃以上がよく、100℃以上が好ましいが、沸騰しない温度(沸点110℃)範囲とする。濃度と温度にもよるが、3Nの塩酸の場合は、攪拌時間は100℃で5時間以上であれば、無害化でき、減容率も20%程度以下となる。
【0009】
なお、建築壁とは天井も含むものとする。また、プレス脱水処理は特に限定されず、ベルトプレス、フィルタープレス、スクリュープレスなどの種々の方式を採用することができる。
【0010】
請求項2に記載のアスベスト減容方法は、請求項1に記載のアスベスト減容方法において、酸を塩酸、硝酸、または、塩酸と硝酸との混合液として、二次減容後の容積が一次減容後の容積の50%以下となるようにしたことを特徴とする。
【0011】
すなわち、請求項2に係る発明は、他の酸を用いるより効率的な二次減容が可能となる。なお、塩酸と硝酸との混合液の例としては王水を挙げることができる。
【0012】
請求項3に記載のアスベスト減容方法は、請求項2に記載のアスベスト減容方法において、規定度を1.5N以上6.0N未満としたことを特徴とする。
【0013】
すなわち、請求項3に係る発明は、加熱攪拌と膨潤と無害化とを考慮した適切な減容処理が可能となる。酸が6.0N以上ではアスベスト部分は無害化できるものの飛散防止剤に含まれるアクリル系やビニル系素材の膨潤をもたらす。また、1.5N未満であると膨潤は生じないものの加熱攪拌に時間がかかりアスベスト部分の無害化効率が劣る。
【0014】
請求項4に記載のアスベスト減容方法は、請求項3に記載のアスベスト減容方法において、二次減容後の固形分について、3000粒子中、アスベスト4繊維状粒子未満としたことを特徴とする。
【0015】
すなわち、請求項4に係る発明は、条件を最適化することにより、減容もでき安定型処分場へも搬入可能な処理方法を提供できる。なお、この条件はJIS
A1481に由来するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、現場にてアスベストを減容し、処理コストを低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態を示したフローチャートである。ここでは、老朽化したビルのアスベスト含有建築壁(天井を含む)の処理について説明する。なお、ビルのようなコンクリート建築物の場合、アスベストが含まれている場合は、基材がモルタル若しくは石膏であり、アスベストの含有率はほとんどの場合が12wt%〜13wt%であって、本実施の形態ではこのような壁を対象とした例を説明する。
【0019】
まず、処理対象であるアスベスト含有建築壁の解砕片が環境外に放散することの無いように処理対象場所を養生する(ステップS101)。つづいて飛散防止剤を壁に吹き付け含浸させる(ステップS102)。飛散防止剤としては日本ペイント社製のフリーベストを挙げることができる。所定時間経過後、適宜建築壁の取り外し、解砕をおこなう(ステップS103)。このとき、必要に応じて適宜飛散防止剤を噴霧し、粉塵発生を最小限に抑える。
【0020】
壁片は、剥ぎ取り後は濡れた綿の状態となっており、体積が剥ぎ取り前のおよそ4倍にもなる。そこで、塩酸で改質する前に機械圧縮をおこなう(ステップS104)。この処理により、剥ぎ取り後の体積の約1/2となる。従来では、剥ぎ取り後の状態で袋詰めし、そのまま管理型の処理場に搬出して嵩取引により処理費用が請求されていたところ、この一次減容によりこのままでもコスト削減が実現する。なお、機械圧縮の方法として、減圧圧縮の方法を挙げることができる。
【0021】
つづいて、一次減容したアスベスト含有解砕片を処理容器に投入し、3Nの塩酸を解砕片の体積と略同量注ぐ(ステップS105)。容器をヒータで100℃まで加温し、12時間攪拌する(ステップS106)。これにより、アスベストはJIS
A1481によるアスベスト検査にて否含有(アスベストなし)と判定される程度に改質される。
【0022】
なお、本願出願人が先に出願し登録された特許4153973号公報では、さらにアルカリ処理する方法を開示しているが、本解砕片ではモルタルまたは石膏を含むため、アルカリ処理すると水酸化カルシウムなどの残渣が大量に析出してくる。よって、本実施の形態では減容の観点からアルカリ処理はしない。また、塩酸濃度を高め6Nにもなると飛散防止剤由来の体積膨張が見られるので、塩酸濃度を3Nとしている。
【0023】
攪拌後、ベルトプレスにより固形分を液体分から分離する(ステップS107)。固形分を適宜サンプリングしアスベストを含有していない(0.1%以下)ことを確認し、安定型処理場へ搬出する(ステップS108)。適宜必要に応じて管理型処理場へ搬出してもよい。なお、ベルトプレス後の容積は一次処理後の容積を基準として約20%となる。これは、剥ぎ取り後の容積すなわち従来の搬出容積からすると約10%まで減容されたことを意味する。すなわち、管理型処分場へ廃棄する場合であっても、処理費用が約1/10となることを意味する。同時に、現場から搬出するためのトラックの積載量が1/10となるので、輸送コスト等も単純計算で1/10となることを意味する。
【0024】
<実験例>
次に、塩酸、硝酸、王水、硫酸、リン酸、ギ酸を用いて、濃度を1.5N〜6.0Nとして、100℃で1時間から12時間処理した場合の、アスベスト含有建築壁の減容程度を測定した。実験に際しては、飛散防止剤を塗布した後の同一箇所の解砕片を一次減容したものを用いた。解砕片はいずれも80gであり、体積は242cmである。また用いた酸性溶液は250cmである。
【0025】
表1〜表6にそれぞれ、塩酸、硝酸、王水、硫酸、リン酸、ギ酸を用いた減容効果を調べた。
【0026】
(表1):塩酸

【0027】
(表2):硝酸

【0028】
(表3):王水

【0029】
(表4):硫酸

【0030】
(表5):リン酸

【0031】
(表6):ギ酸

【0032】
表に表したように、酸としては、塩酸、硝酸、王水が好ましく、規定度としては1.5N〜6.0N、好ましくは1.5N〜5.0N、更に好ましくは1.5N〜3.0Nであり,処理時間は5時間〜12時間が好ましい。特に塩酸の場合は、3.0Nの濃度で5時間〜12時間処理すると、アスベスト否含有と判定されるレベルまで改質され、減容効果とも相まって好適であることが確認できる。なお、別の現場から排出された解砕片も同様の結果を示した。また、酢酸を用いた場合も同様の結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、飛散防止剤の膨潤を生じないようにしつつアスベストを改質し減容効果に優れる方法を提供することができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスベスト含有建築壁を排出現場にて減容するアスベスト減容方法であって、
アスベスト含有建築壁に飛散防止剤を吹き付けてまたは塗布して含浸させた後、当該アスベスト含有建築材を剥ぎ取り、
これを圧縮して一次減容し、
所定濃度の酸を添加して所定時間加熱攪拌し、
プレス脱水処理してニ次減容し残余の固体分を廃棄物として処理することを特徴とするアスベスト減容方法。
【請求項2】
酸を塩酸、硝酸、塩酸と硝酸との混合液として、二次減容後の容積が一次減容後の容積の50%以下となるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のアスベスト減容方法。
【請求項3】
規定度を1.5N以上6.0N未満としたことを特徴とする請求項2に記載のアスベスト減容方法。
【請求項4】
二次減容後の固形分について、3000粒子中、アスベスト4繊維状粒子未満としたことを特徴とする請求項3に記載のアスベスト減容方法。




【図1】
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【公開番号】特開2011−38370(P2011−38370A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189113(P2009−189113)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(507242721)株式会社 亀屋産業 (2)
【Fターム(参考)】