説明

アスペクト比が大きい真珠光沢顔料及びその製造方法

本発明は、アスペクト比が大きい真珠光沢顔料およびその製造方法に関し、更に詳しくは、アルミニウム前駆体水溶液と亜鉛前駆体水溶液を主成分として使用して得られた薄片状アルファ−アルミナ結晶体に、金属または金属前駆体をコーティングして製造された真珠光沢顔料に関する。前記結晶体は、平均粒子厚さが0.5μm以下、平均粒径が15μm以上、アスペクト比が50以上であるため、光沢性が優れている。前記結晶体は、金属色、及び銀色、金色、紫色、青色、緑色の干渉色を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスペクト比が大きい真珠光沢顔料およびその製造方法に関し、更に詳しくは、アルミニウム前駆体水溶液と亜鉛前駆体水溶液を主成分として使用して得られた薄片状アルファ−アルミナ結晶体に、金属または金属前駆体をコーティングして製造された真珠光沢顔料に関する。前記結晶体は、平均粒子厚さが0.5μm以下、平均粒径が15μm以上、アスペクト比が50以上であるため、光沢性が優れている。前記結晶体は、金属色、及び銀色、金色、紫色、青色、緑色の干渉色を表す。
【背景技術】
【0002】
基質としての真珠光沢顔料の重要とされる特性は、粒子サイズ、形状、表面性質及び屈折率である。即ち、反射光と透過光の比率が大きい粒子と小さい粒子で異なるため、鮮明な色を得るために、粒子サイズが均一である必要がある。更に、粒子サイズは光の波長と密接な関係があるため、真珠光沢顔料の着色力に大きく影響を及ぼす。
【0003】
表面積は、粒子サイズが小さくなるほど大きくなるため、着色力と反射率が増加し、色は鮮明となる。しかしながら、粒子が小さいと金属または金属酸化物を均一にコーティングすることが難しく、光の干渉効果が低下し、真珠の光沢性を低下させる。従って、粒子は、多様な真珠色の実現のために十分に均一なサイズを持つものが好ましい。
【0004】
また、着色力と隠蔽力のような真珠色の実現に影響を及ぼすため、真珠光沢顔料の基質は、均一な厚さと平坦な表面を持つ透明な粒子でなければならない。粒子の厚さが均一でなかったり、表面が平坦でない場合、表面で大部分の光が反射したり、散乱する。また、粒子が金属または金属酸化物でコーティングされるとき、粒子の凝集と不均一な厚さが多様な真珠色の実現を阻害する。
【0005】
従って、真珠光沢顔料用基質として有用であるためには、薄片状アルファ−アルミナ結晶体は、厚さが0.5μm以下であり、平均粒子サイズが15〜25μmであり、凝集が発生することなく表面が非常に平坦である透明な薄片状粒子でなければならない。
【0006】
従来の真珠光沢顔料の基質の例として、炭酸鉛、オキシ塩化ビスマス(BiOCl)及び天然または合成雲母を含む。前記雲母は、セラミック材料の延性及び機械的性質を向上させるために補強財として使用されるか、または熱伝導性を向上させるために添加剤として使用される。
【0007】
一方、薄片状アルミナ基質は従来、水熱法を使用して製造されるか、真珠光沢顔料の基質として使用するために添加剤として二酸化チタンを使用して製造される。
前記水熱法は、粒子サイズが小さく、アスペクト比が低いという問題を有する。後者は、真珠光沢顔料の基質として優れた物性を示すにもかかわらず、老化作用がなく、アスペクト比が低く、不均一な粒子サイズ、及び分散性の問題を有する。
【0008】
従って、アルミニウム溶液は通常、溶液化学法により加水分解されて疑ベーマイトになる。前記疑ベーマイトは、400℃以上でガンマ−アルミナ(γ−Al23)に相転移される。六方晶系の薄片状結晶体は、850℃で加熱処理法により溶融塩溶液でγ−アルミナ(γ−Al23)をアルファ−アルミナに変えることで形成される。
【0009】
前記薄片状アルファ−アルミナ結晶体は、金属または金属酸化物でコーティングする際に多様な色の真珠光沢効果を示すように、薄く、均一な平面であり、50以上のアスペクト比(=直径/厚さ)であると共に、透明でなければならない。
しかし、従来の薄片状結晶体は、比較的アスペクト比が低いため、金属及び金属酸化物をコーティングする際、干渉色により発生する不十分な光沢を示す。
【0010】
本発明の発明者らは、アスペクト比が大きい薄片状アルファ−アルミナ結晶体の探索結果として、必須成分として酸化アルミニウム及び酸化亜鉛を含有する薄片状アルファ−アルミナ結晶体及びその製造方法に関して特許を出願している[特許文献1]。上記のように製造された薄片状アルファ−アルミナ結晶体は、厚さが0.1〜0.5μm、直径が15〜25μm、アスペクト比が50〜250である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】大韓民国公開特許第2005−0025126号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の発明者らは、前述した従来の真珠光沢顔料の基質として広く使用されている薄片状アルミナ結晶体の問題点を解決するために、鋭意研究を行った。その結果、主成分(アルミニウム前駆体水溶液及び亜鉛前駆体水溶液)を加水分解した後、熟成工程及び乾燥工程を行ってゲルを製造した。その後、前記得られたゲルを溶融塩法により結晶化して、その結晶体に金属または金属前駆体をコーティングすることで、平均厚さが0.5μm以下、平均直径15μm以上、アスペクト比が50以上である新規の薄片状アルファ−アルミナ結晶体が製造される。また、多様な真珠色がコーティング層の厚さにより得られ、前記コーティング層は光沢性が優れていることを発見し、本発明が完成するに至った。
【0013】
従って、本発明は、主成分として酸化アルミニウム及び酸化亜鉛を含有する新規の薄片状アルファ−アルミナ結晶体に金属または金属前駆体をコーティングして製造された真珠光沢顔料、及びその製造方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、主成分として酸化アルミニウム及び酸化亜鉛が100:0.1〜5質量比で含まれた薄片状アルミナ結晶体に、金属または金属前駆体粒子がコーティングされた真珠光沢顔料に関する。
【0015】
更に、本発明は、
(a)水溶性溶剤を含むアルミニウム前駆体水溶液に、前記アルミニウム前駆体100質量部に対して亜鉛前駆体が0.1〜5質量部含まれる前駆体水溶液を混合することで、金属前駆体水溶液を製造する工程と、
(b)前記金属前駆体水溶液をナトリウム塩水溶液でpH6.0〜7.5に滴定した後、加水分解することで、混合ゲルを製造する工程と、
(c)前記混合ゲルを60〜100℃で5〜30時間熟成する工程と、
(d)前記熟成した混合ゲルを60〜200℃で5〜30時間乾燥する工程と、
(e)前記乾燥した混合ゲルを850〜1,300℃で1〜8時間結晶化することにより、薄片状アルファ−アルミナ結晶体と溶剤が混合されたケーキを製造する工程と、
(f)前記ケーキを室温まで冷却して、溶解及びろ過することで溶剤を除去し、20〜90℃の0.1〜30%硫酸溶液で分散した後、ろ過、洗浄及び乾燥することで、アルファ−アルミナ結晶体を製造する工程と、
(g)pH1.0〜3.0に調節するために前記アルファ−アルミナ結晶体の懸濁水溶液に酸を加え、前記結晶体100質量部に対して、金属または金属前駆体30〜60質量部とアルカリ水溶液30〜65質量部を加えた後、焼成することで、前記結晶体の表面にコーティング層を形成する工程と、
からなる真珠光沢顔料を製造する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態により真珠光沢顔料を製造する方法を示す。
【図2】本発明の実施形態(実施例1)により製造された真珠光沢顔料のX線回折パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
【0018】
本発明は、主成分として酸化アルミニウムと酸化亜鉛が一定質量比で含有されている薄片状アルミナ結晶体に関し、前記結晶体は、金属または金属酸化物ナノ粒子でコーティングされる。アルミニウム結晶体の表面に存在する前記酸化亜鉛は、凝集を抑制しながら、厚さを薄くし、粒子の成長を促進する。従って、使用された薄片状アルファ−アルミナ結晶体は、平均粒子厚さが0.5μm以下、好ましくは0.1〜0.5μm、更に好ましくは0.15〜0.22μmであり、平均粒子サイズが15μm以下、好ましくは15〜40μm、更に好ましくは18〜22μmであり、アスペクト比が50以上、好ましくは50〜250、更に好ましくは60〜100であり、従って、コーティング層の厚さによって真珠光沢顔料は多様な色を演出することができる。
【0019】
図1は、本発明の方法を図示したものである。本発明は、特定の薄片状アルミナ結晶体に金属または金属前駆体をコーティングすることで製造される真珠光沢顔料に関する。前記薄片状アルミナ結晶体は、本発明者により出願された大韓民国公開特許第2005−25126号に開示されている。
【0020】
まず、金属前駆体水溶液は、水溶性溶剤が含有されたアルミニウム前駆体水溶液と亜鉛前駆体水溶液を混合して製造される。
【0021】
従来のアルミニウム前駆体が、本発明のアルミニウム前駆体として使用され得る。アルミニウム前駆体の例として限定はなく、アルミニウムの酸塩、ハロゲン化物及び酸化物が含まれ、特に、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム及び塩化アルミニウムを含む。また、従来の亜鉛前駆体が、本発明の亜鉛前駆体として使用され得る。亜鉛前駆体の例として限定はなく、亜鉛の酸塩、ハロゲン化物及び酸化物が含まれ、特に、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛及び塩化亜鉛を含む。本発明において、硫酸アルミニウムは、加水分解、溶剤との化学親和力、及び結晶化後の水内の薄片状結晶体との容易な分離などの特性を考慮して選択される。その他の前駆体として、硫酸亜鉛は、硫酸アルミニウムとの化学親和力、及び薄片状結晶体の厚さ減少と凝集の防止が優れていることを考慮して選択される。前記硫酸亜鉛は、300℃以上の温度で酸化亜鉛に酸化される。前記酸化亜鉛は、結晶化工程で、薄片状アルファ−アルミナの結晶面に付着する。従って、表面エネルギーが相対的に高い(0001)面の成長が抑制されながら、表面エネルギーが相対的に低い
【0022】
【化1】

【0023】
面の成長が促進される(エピタキシャル成長)。
【0024】
従って、厚さ方向への成長が抑制されながら、直径方向への成長が促進されるため、相対的に厚さが薄く、サイズが大きい薄片状アルミナ結晶体を形成する。また、前記酸化亜鉛が使用される量によって様々な厚さとサイズを持つため、多様なアスペクト比を持つ薄片状アルファ−アルミナ結晶体が製造される。
【0025】
前記アルミニウム前駆体と亜鉛前駆体は、水溶液の形態で使用されることが好ましい。前記濃度は、各々15〜35%と20〜50%の範囲が好ましい。前記範囲外の濃度は、加水分解と乾燥の実施、薄片状アルファ−アルミナ結晶体の凝集の防止、及びサイズ及びアスペクト比の調節において問題が発生する。
【0026】
前記亜鉛前駆体は、アルミニウム前駆体100質量部に対して0.05〜5質量部の含量で使用されるのが好ましい。前記含量が0.05質量部未満の場合、薄片状アルファ−アルミナ結晶体の凝集を抑制することが難しく、アスペクト比は厚さの増加により減少される。前記含量が5質量部を超過する場合、前記酸化亜鉛は不純物として作用し、結晶化工程で不均一核を生成するため、サイズの小さい結晶体を形成する。
【0027】
更に、前記溶剤水溶液は、固相を核生成と核成長が比較的に容易である液相に変える。溶融塩で核生成と核成長の機構は下記のとおりである。溶質分子または原子は凝集して種を形成し、表面自由エネルギーと体積自由エネルギーの支配下で核生成及び核成長が続く。
【0028】
前記薄片状アルファ−アルミナ結晶体の核生成は、均一核生成と不均一核生成に分けられる。前記均一核生成は、溶融塩溶液内の過飽和による原子の拡散により起きる。前記不均一核生成は、溶液を含む容器または固体または不純物の表面で発生する。
【0029】
前記薄片状アルファ−アルミナ結晶体の核生成は、その他の物質の核生成の場合のように不均一に進行する。界面エネルギーは、核生成がるつぼの表面及び不純物粒子の表面のような固体表面に発生するときに低下するため、活性エネルギーが不均一核生成より比較的低くなる。
【0030】
前記不均一核生成での活性エネルギーは、固体表面の溶液の濡れ角によって大きく変わり、核生成は濡れ角が小さいほど容易となる。
【0031】
しかしながら、濡れ角が小さくとも、表面の化学親和力または物性は濡れ角よりも重要因子であるため、核生成は容易に発生されない。従って、固体表面の微細気孔や溝、または核生成物質と固体表面との化学親和力がある場合、核生成が促進される。
【0032】
不均一核発生には2種類がある。一つは、るつぼ表面と不純物粒子表面での核発生及び核成長であり、もう一つは、エピタキシャル方向と呼ばれる特定方向への核成長である。
【0033】
従来の水溶性溶剤が、本発明で使用され得る。前記水溶性溶剤は、アルミニウム前駆体との化学親和力が優れており、比較的低い温度でも溶融塩を容易に形成し、結晶化後の水に容易に溶解される。前記水溶液溶剤の例として限定はなく、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウム、硝酸カリウム及び水酸化カリウムを含む。前記水溶性溶剤は、アルミニウム前駆体100質量部に対して80〜120質量部の含量で使用されることが好ましい。前記含量が80質量部未満の場合、溶融塩の形成と薄片状アルファ−アルミナ結晶体の成長が困難となり得る。前記含量が120質量部を超過する場合、薄片状アルファ−アルミナ結晶体のサイズとアスペクト比が減少してしまう。
【0034】
次の工程として、前記金属前駆体水溶液をナトリウム塩水溶液でpH6.0〜7.5に滴定した後、加水分解を行い、混合ゲルを製造する。
【0035】
従来のナトリウム塩水溶液は、本発明で使用され得る。前記ナトリウム塩の例として限定はなく、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム及びこれらの混合物を含む。
【0036】
前記混合ゲルを熟成して乾燥する。前記熟成は、5〜30時間60〜100℃で実施される。前記温度が60℃未満の場合、前記混合ゲルに含有される疑ベーマイトの成長が困難となり得る。前記温度が100℃を超過する場合、疑ベーマイトの形態変化が、熱水反応により起こり、薄片状結晶体の形成が困難となり得る。前記時間が5時間未満の場合、均一な混合ゲルが得られず、疑ベーマイトの成長が抑制されるため、薄片状アルファ−アルミナ結晶体の凝集が激しく起きる。前記時間が30時間を越えると、疑ベーマイトの過度な成長により厚さが厚い薄片状アルファ−アルミナ結晶体が得られる。前述した混合、加水分解及び熟成工程により、疑ベーマイトの核生成と核成長及び前記混合ゲルの均一な分散が達成される。これらの工程は、結晶化工程で針状ガンマ−アルミナの凝集により発生する薄片状結晶体の形成を促進させ、また、薄片状アルファ−アルミナ結晶体の表面に酸化亜鉛を分布させるため、厚さの減少が起こり、粒子の製造を促進させ、粒子の凝集を防止する。
【0037】
前記乾燥は、5〜30時間60〜200℃で実施される。前記温度が60℃未満の場合、乾燥が不十分である。前記温度が200℃を超えるとき、混合ゲルの過度な乾燥収縮により硬い乾燥ゲルが形成され、疑ベーマイトの凝集により不均一な薄片状結晶体が形成され得る。
【0038】
前記乾燥工程において、水分が十分に除去されるため、結晶化工程で水分の触媒作用を防止する。
【0039】
前記乾燥された混合ゲルは、1〜8時間850〜1,300℃で結晶化される。前記温度が850℃未満の場合、薄片状アルファ−アルミナ結晶体の形成が困難となり得る。前記温度が1,300℃を超える場合、溶剤を含有する硫黄が分離され、溶融塩の維持が困難であるため、薄片状結晶体が凝集し、また、製造コストが増加する。
【0040】
温度勾配なく均一な溶融塩が結晶化により形成されるように、アルファ−アルミナに相転移される前に、十分なサイズを持つ薄片状結晶体が針状粒子の凝集により形成されることが好ましい。
【0041】
前記結晶化されたケーキは、従来の方法により冷却、洗浄及び乾燥される。本発明において、室温まで前記ケーキを冷却し、29〜90℃で0.1〜30%、好ましくは1〜10%硫酸溶液で前記ケーキを分散した後、ろ過、洗浄及び乾燥することで、薄片状アルファ−アルミナ結晶体は製造される。前記硫酸溶液の濃度が0.1%未満の場合、薄片状アルファ−アルミナ結晶体の分散が困難となり得る。前記濃度が30%を超過すると、分散効果が期待できない一方、廃液を排出すための費用が増加する。
【0042】
従って、主成分として酸化アルミニウム及び酸化亜鉛が一定質量比含有された薄片状アルファ−アルミナ結晶体は、平均粒子厚さが0.5μm以下、好ましくは0.1〜0.5μm、更に好ましくは0.15〜0.22μmであり、平均粒子サイズが15μm以上、好ましくは15〜40μm、更に好ましくは18〜22μmであり、アスペクト比が50以上、好ましくは50〜250、更に好ましくは60〜100である。
【0043】
本発明は、前述した方法で得られた薄片状アルファ−アルミナ結晶体に金属または金属前駆体をコーティングして製造された真珠光沢顔料に関する。前記含量は、金属色及び銀色、金色、赤色、紫色、青色、緑色の干渉色を表す。
【0044】
アルファ−アルミナ結晶体の懸濁水溶液に酸を添加してpHを1.0〜3.0に調節し、アルカリ性水酸化物と共に金属または金属前駆体を加えた後、攪拌、ろ過、洗浄、乾燥及び焼成工程を行うことで、金属または金属酸化物コーティング層が結晶体の表面に形成されて、本発明による真珠含量を最終的に製造する。
【0045】
前記pHは効率的な加水分解を行うために前述した範囲内であることが好ましい。前記pHが1.0未満の場合、アルファ−アルミナ粒子へのコーティングが困難となる。前記pHが3.0を超えると、金属前駆体の凝集が過度に発生する。
【0046】
前記金属または金属前駆体の例として、金、銀、銅、チタン、スズ及び鉄のような金属、金属の酸塩、金属ハロゲン化物、及び金属酸化物を含む。特に、塩化金(I)、塩化金(II)、塩化銀、硝酸銀、硫酸銅、硝酸銅、塩化銅、硫酸チタン、硝酸チタン、塩化チタン、硫酸スズ、硝酸スズ、塩化スズ、硫酸鉄、硝酸鉄、塩化鉄及びこれらの混合物を含む。
【0047】
該金属または金属前駆体は、アルファ−アルミナ結晶体100質量部に対して30〜60質量部の含量で使用される。前記含量が30質量部未満のとき、満足な光沢と干渉色が得られない。前記含量が60質量部を超過すると、満足な光沢が得られず、濁った干渉色が生じる。
【0048】
更に、金属または金属前駆体と共に添加される前記アルカリ水溶液は、薄片状アルミナ粒子への金属または金属前駆体のコーティングを効率的にするために使用される。アルカリ性物質の例として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びアンモニアを含む。該アルカリ水溶液は、アルファ−アルミナ結晶体100質量部に対して30〜65質量部の含量で使用される。前記含量が30質量部未満の場合、金属または金属前駆体のコーティング速度が遅い。前記含量が65質量部を超過する場合、加水分解が非常に促進されるため、凝集が過度に発生する。
【0049】
前記焼成は、30〜60分間700〜1,000℃で実施される。前記温度が700℃未満の場合、金属酸化物の形成が不十分となる。前記温度が1,000℃を超えると、金属酸化物の表面に亀裂が生じるため、品質が低下する。
【0050】
従って、製造された真珠光沢顔料は、金属または金属前駆体及びアルカリ水酸化物の含量によって金属色、及び銀色、金色、赤色、紫色、青色及び緑色の多様な干渉色を表すと共に、光沢が優れている。
【0051】
本発明を下記実施例により更に詳しく説明する。下記実施例は、本発明を例示するだけであり、請求発明の範囲の限定とみなしてはならない。
【0052】
製造例:薄片状アルファ−アルミナの製造
製造例1
精製水1,900mLを含有する5L反応器に、硫酸アルミニウム(Al2(SO43・18H2O)670g、硫酸ナトリウム(Na2SO4)345g、硫酸カリウム(K2SO4)280g及び34%硫酸亜鉛(ZnSO4・7H2O)1.5gを65℃で混合して、均一な混合溶液を製造した。炭酸ナトリウム(Na2CO3)324gとリン酸ナトリウム((NaPO36)2.7gを蒸留水900mLに65℃で溶解してアルカリ水溶液を製造した。65℃の硫酸アルミニウム混合溶液を攪拌しながら、アルカリ溶液で25mL/分の速度で滴定し、最終的にpHを6.8に調節して、疑ベーマイトと溶剤の混合ゲルを製造した。前記混合ゲルを20時間90℃で熟成して、60℃で真空蒸留し、20時間110℃で乾燥した。前記乾燥した混合ゲルを約5mm以下に粉砕し、2Lのアルミナるつぼ内で7時間1,200℃で結晶化を実施して、薄片状アルファ−アルミナ結晶体を製造した。前記るつぼを室温まで冷却し、温水(60℃)で前記溶剤を溶解した後、ろ過をすることにより、前記アルファ−アルミナ結晶体から前記溶剤を分離した。5L反応器に薄片状アルファ−アルミナ結晶体と10%硫酸溶液3Lを入れ、前記混合液を60℃で48時間攪拌して、前記結晶体を完全に分散した。
前記分散された溶液をろ過して、洗浄し、100℃で乾燥することで、平均粒子厚さが0.25μm、平均粒子サイズが20μmである透明な薄片状アルファ−アルミナ粒子を製造した。原子分析を通して、0.1質量部の酸化亜鉛を含有することを確認した。
【0053】
製造例2
34%硫酸亜鉛3gを使用することを除いて前記製造例1と同様に、透明な薄片状アルファ−アルミナ結晶体を製造した。
前記薄片状アルファ−アルミナ結晶体は、平均粒子厚さが0.22μm、平均粒子サイズが18.3μmであることを確認した。原子分析を通して、0.2質量部の酸化亜鉛を含有することを確認した。
【0054】
実施例:真珠光沢顔料の製造
実施例1
製造例1で製造された薄片状アルファ−アルミナ粒子100gを脱イオン水2Lに懸濁させ、温度を70℃まで上昇させた。5%塩酸を添加してpHを2.0に調節した後、30分間攪拌した。40%TiOCl2と水酸化ナトリウム溶液を加えることにより、アルファ−アルミナ粒子の表面にTiO(OH)2コーティング層が形成された。TiOCl2と水酸化ナトリウム溶液の添加量を増加させるにつれて、銀色(75nm)、金色(110nm)、赤色(130nm)、紫色(138nm)、青色(150nm)及び緑色(180nm)の干渉色に変わる。所望する干渉色が得られたら、TiOCl2と水酸化ナトリウム溶液の添加を中止した後、10分以上攪拌した。その後、ろ過、洗浄及び乾燥、焼成を800℃で実施することで、アナターゼ構造の二酸化チタン層が薄片状アルファ−アルミナ粒子の表面に形成された。
【0055】
実施例2
製造例2で製造された薄片状アルファ−アルミナ粒子100gを脱イオン水2Lに懸濁させ、温度を70℃まで上昇させた。5%塩酸を添加してpHを2.0に調節した後、30分間攪拌した。5%SnCl4・5H2O溶液60mLと水酸化ナトリウム溶液を同時に加えた後、30分間攪拌し、40%TiOCl2と水酸化ナトリウム溶液を加えることにより、アルファ−アルミナ粒子の表面にTiO(OH)2コーティング層が形成された。TiOCl2と水酸化ナトリウム溶液の添加量に伴いコーティング層の厚さが増加するにつれて、銀色(78nm)、金色(115nm)、赤色(133nm)、紫色(141nm)、青色(155nm)及び緑色(187nm)の干渉色に変わる。所望する干渉色が得られたら、TiOCl2と水酸化ナトリウム溶液の添加を中止した後、10分以上攪拌した。その後、ろ過、洗浄及び乾燥、焼成を800℃で実施することで、ルチル構造の二酸化チタン層が薄片状アルファ−アルミナ粒子の表面に形成された。
【0056】
実施例3
製造例1で製造された薄片状アルファ−アルミナ粒子100gを脱イオン水2Lに懸濁させ、温度を70℃まで上昇させた。5%塩酸を添加してpHを2.0に調節した後、30分間攪拌した。5%SnCl4・5H2O溶液60mLと水酸化ナトリウム溶液を加えることにより、アルファ−アルミナ粒子の表面にTiO(OH)2コーティング層が形成された。金色が得られるまで、TiOCl2及び水酸化ナトリウム溶液を加え、30分以上攪拌した。水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを3.0に調節した。所望する色(真珠色)が得られるまで、塩化鉄溶液を加えた後、ろ過、洗浄及び乾燥した。焼成を900℃で実施することで、二酸化チタンと酸化鉄のコーティング層(125nm)が薄片状アルファ−アルミナ粒子の表面に形成された。
【0057】
実施例4
製造例2で製造された薄片状アルファ−アルミナ粒子100gを脱イオン水2Lに懸濁させ、温度を70℃まで上昇させた。5%塩酸を添加してpHを3に調節し、30分間攪拌した。水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH値を維持した。所望する色(真珠色)が得られるまで、塩化鉄溶液を加えた後、ろ過、洗浄及び乾燥した。焼成を900℃で実施することで、酸化鉄層が薄片状アルファ−アルミナ粒子の表面に形成された。
【0058】
実施例5
製造例1で製造された薄片状アルファ−アルミナ粒子100gを脱イオン水2Lに懸濁させ、温度を70℃まで上昇させた。5%塩酸を添加してpHを1〜3に調節し、30分間攪拌した。10%HAuCl4・xH2O溶液30mLを加えた後、前記混合液を30分間攪拌した。前記混合液を一定速度で10%NaBH4250gで滴定して、ろ過、洗浄及び乾燥することで、金コーティング層が薄片状アルファ−アルミナ粒子の表面に形成された。
【0059】
実施例6
製造例1で製造された薄片状アルファ−アルミナ粒子100gを脱イオン水2Lに懸濁させ、温度を70℃まで上昇させた。5%塩酸を添加してpHを3に調節した後、30分間攪拌した。10%AgNO3溶液250mLを加えた後、前記混合液を30分間攪拌し、一定速度で10%NaBH4250gで滴定した。滴定後、前記混合液をろ過、洗浄及び乾燥することで、銀コーティング層が薄片状アルファ−アルミナ粒子の表面に形成された。
【0060】
実施例7
製造例1で製造された薄片状アルファ−アルミナ粒子100gを脱イオン水2Lに懸濁させ、温度を70℃まで上昇させた。5%塩酸を添加してpHを2に調節し、前記混合液を30分間攪拌した。10%CuSO4・5H2O溶液150mLを加えながら攪拌した後、前記混合液を一定速度で10%NaBH4250gで滴定した。滴定後、前記混合液をろ過、洗浄及び乾燥することで、銅コーティング層が薄片状アルファ−アルミナ粒子の表面に形成された。
【0061】
比較例1〜4:金属酸化物コーティング層
平均直径が8.5μm、平均厚さが0.3μm、アスペクト比が20〜30である薄片状アルファ−アルミナ結晶体に、実施例1〜4のように、アナターゼ構造の二酸化チタン層、ルチル構造の二酸化チタン層、二酸化チタン層、酸化第一鉄層及び酸化鉄層が形成された。
【0062】
比較例5〜7:金属コーティング層
比較例1と同一の薄片状アルファーアルミナ結晶体に、実施例5〜7のように、金層、銀層及び銅層がコーティングされた。
【0063】
実験例1
実施例1〜7と比較例1〜7で製造された真珠光沢顔料の厚さ、粒子サイズアスペクト比及び光沢を測定し、その結果を表1に示す。この時、光沢は次のように測定する。真珠光沢顔料0.3gは実施例1〜7と比較例1〜7で製造された。粘度が1200cpsであるニトロセルロース5gと前記顔料を混合し、前記混合物を十分に分散した。前記分散された試料は、隠蔽率測定紙(draw down card)に置かれ、Doctor Applicators(Gape100μm)を利用して均一に塗布した。前記試料を十分に乾燥し、60°の正反射率(光沢度)を光沢センサー(PG-1M、日本デンソー製)で測定した。
【0064】
【表1】

*アルファ−アルミナ
【0065】
実施例1〜7と比較例1〜7において、金属または金属酸化物層によって様々な色が発言された。しかし、表1によると、光沢において、実施例が比較例に比べて優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
前述した通り、本発明による高品質の真珠光沢顔料は、主成分として酸化アルミニウム及び酸化亜鉛を一定質量比で含有する、厚さが0.1〜0.3μmで薄く、サイズが15μm以下であり、アスペクト比が50以上である薄片状アルファ−アルミナ結晶体に金属または金属前駆体をコーティングして製造され、従って、高い光沢を実現することができ、金属色または銀色、金色、赤色、紫色、青色及び緑色の様々な干渉色の演出が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分として酸化アルミニウム及び酸化亜鉛を100:0.1〜5質量比で含有し、金属または金属前駆体粒子がコーティングされた薄片状アルミナ結晶体を含有する真珠光沢顔料。
【請求項2】
厚さが0.1〜0.5μm、平均直径が15〜40μm、アスペクト比が50〜250である真珠光沢顔料。
【請求項3】
前記金属または金属前駆体は、金、銀、銅、チタン、スズ及び鉄からなる群から選択された金属、これらの金属の酸塩、ハロゲン化物及び酸化物からなる群から選択される真珠光沢顔料。
【請求項4】
前記金属または金属前駆体は、薄片状アルミナ結晶体100質量部に対して、30〜60質量部の含量で使用される真珠光沢顔料。
【請求項5】
真珠光沢顔料は、銀色、金色、赤色、紫色、青色、緑色及び金属色からなる群から選択される色を有する真珠光沢顔料。
【請求項6】
(a)水溶性溶剤を含むアルミニウム前駆体水溶液に、前記アルミニウム前駆体100質量部に対して、亜鉛前駆体が0.1〜5質量部含まれる前駆体水溶液を混合することで、金属前駆体水溶液を製造する工程と、
(b)前記金属前駆体水溶液をナトリウム塩水溶液でpH6.0〜7.5に滴定した後、加水分解することで、混合ゲルを製造する工程と、
(c)前記混合ゲルを60〜100℃で5〜30時間熟成する工程と、
(d)前記熟成した混合ゲルを60〜200℃で1〜48時間乾燥する工程と、
(e)前記乾燥した混合ゲルを850〜1,300℃で1〜8時間結晶化することで、結晶化されたケーキを製造する工程と、
(f)薄片状結晶体と溶剤が混合された前記ケーキを室温まで冷却して、前記ケーキを溶解及びろ過することで溶剤を除去し、20〜90℃の0.1〜30%硫酸溶液で分散した後、ろ過、洗浄及び乾燥することで、アルファ−アルミナ結晶体を製造する工程と、
(g)pH1.0〜3.0に調節するために前記アルファ−アルミナ結晶体の懸濁水溶液に酸を加え、前記結晶体100質量部に対して、金属または金属前駆体30〜60質量部とアルカリ水溶液30〜65質量部を加えた後、焼成することで、前記結晶体の表面にコーティング層を形成する工程と、
からなる真珠光沢顔料の製造方法。
【請求項7】
前記アルミニウム前駆体は、アルミニウムの酸塩、ハロゲン化物及び酸化物からなる群から選択され、前記亜鉛前駆体は、アルミニウムの酸塩、ハロゲン化物及び酸化物からなる群から選択される、請求項6に記載の真珠光沢顔料の製造方法。
【請求項8】
前記水溶性溶剤は、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウム、硝酸カリウム及び水酸化カリウムからなる群から選択される、請求項6に記載の真珠光沢顔料の製造方法。
【請求項9】
前記水溶性溶剤は、アルミニウム前駆体100質量部に対して、80〜120質量部の含量で使用される、請求項6に記載の真珠光沢顔料の製造方法。
【請求項10】
前記ナトリウム塩は、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム及びリン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項6に記載の真珠光沢顔料の製造方法。
【請求項11】
前記金属または金属前駆体は、金、銀、銅、チタン、スズ及び鉄からなる群から選択される金属、これらの金属の酸塩、ハロゲン化物及び酸化物からなる群から選択される、請求項6に記載の真珠光沢顔料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−502774(P2010−502774A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526522(P2009−526522)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【国際出願番号】PCT/KR2007/003556
【国際公開番号】WO2008/026829
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(398043850)コリア リサーチ インスティテュート オブ ケミカル テクノロジー (21)
【出願人】(509044936)シーキューヴィー カンパニー リミテッド (3)
【Fターム(参考)】