説明

アセチルチオピロリジン誘導体の製法

【課題】ピロリジルチオカルバペネム誘導体を合成する方法において、ハロゲン含有溶媒を使用しないかもしくは使用を低減させ、ならびに/または極度の高温および/もしくは低温を回避するかもしくは低減する中間体合成工程またはそれらを利用するピロリジルチオカルバペネム誘導体を合成方法を提供すること。
【解決手段】スルファミドを合成する方法であって、以下の工程:a)ハロゲン化スルホニルイソシアナートと、アルコールとを、トルエンまたはCH3CN中で反応させて反応
生成物を得る工程;b)工程a)で得られた反応生成物に、ピリジン、置換されたピリジンおよびキノリン類からなる群より選択される化合物を加えて反応生成物を得る工程;およびc)工程b)で得られた反応生成物に、アンモニア水を加えてスルファミドを得る工程、を包含する、方法、ならびにこの方法を合成工程として包含するピロリジルチオカルバペネム誘導体の合成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の属する技術分野)
本発明は、アセチルチオピロリジン誘導体の製造方法に関する。詳細には、本発明は、カルバペネム系抗生物質を、従来の合成方法よりはるかに緩和な条件(例えば、低温の回避)で合成することに関する。本発明はまた、環境汚染物質とされるハロゲン含有溶媒の使用を最小限にしたピロリジルチオカルバペネム誘導体の合成方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
(従来の技術)
広範囲の抗菌スペクトルを有するピロリジルチオカルバペネム誘導体(I)
【0003】
【化23】


は、有用な抗生物質として合成され、現在有望な次世代抗生物質として開発中である(特許文献1)(この式において、R1は水素または低級アルキルであり、R2、R3およびR4はそれぞれ独立して、水素、低級アルキル、置換された低級アルキル、またはアミノ基の保護基であり、あるいは、R2とR3とが窒素原子とともに飽和もしくは不飽和の環式基を形成するか、またはR2もしくはR3とR4とが窒素原子2個と硫黄原子1個と共に飽和も
しくは不飽和の環式基を形成し、この環式基はそれぞれ、さらに酸素、硫黄および窒素からなる群より選択される少なくとも1種を有し得、この環式基はそれぞれ置換され得、X1は水素または水酸基の保護基であり、X2は、水素、カルボキシル基の保護基、アンモニオ基、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、そしてY2は水素またはアミノ基の
保護基である。)。特許文献1では、上記カルバペネム誘導体を製造するための中間体となるピロリジン誘導体およびそのピロリジン誘導体を製造する方法のいくつかが開示された。
【0004】
しかし、特許文献1で用いられる合成方法では、ジクロロメタンのようなハロゲン含有溶媒を溶媒とし,−20℃、−25℃のようなかなりの低温での反応が必要とされる。しかし、ハロゲン含有溶媒は、環境汚染の原因であることから、現在の化合物の合成方法においては使用は極力避けることが望まれる。また、−20℃のような低温での反応系を維持するためには、特殊な実験設備を必要とし、合成方法が煩雑となることから、可能な限り、室温または室温付近での反応系で全工程または殆どの工程を完了させることが所望される。
【0005】
上記ピロリジルチオカルバペネム誘導体を合成するためには、一般に、中間体として、t−ブトキシカルボニル−スルファミドを合成することが必要である。しかし、従来のスルファミド合成方法(例えば、特許文献2)では、アンモニアガスを使用する方法が採用されていることから反応系が複雑となっている。また、−40℃または−65℃といったかなりの低温での長時間の反応が必要であることから、低温を保つ反応系を必要とする。
【0006】
また、L−ヒロドキシプロリンから有用な中間体であるチオールピロリジンを合成する工程においても、従来の方法では、ジクロロメタン中で−45℃での還元反応や、長時間の−65℃での反応などを必要とする。従って、ピロリジルチオカルバペネム誘導体の従来の合成方法は、改良が必要とされる。
【特許文献1】特許第2542773号公報
【特許文献2】特開平5−72986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、ピロリジルチオカルバペネム誘導体を合成する方法において、ハロゲン含有溶媒を使用しないかもしくは使用を低減させ、ならびに/または極度の高温および/もしくは低温を回避するかもしくは低減する中間体合成工程またはそれらを利用するピロリジルチオカルバペネム誘導体の合成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ピロリジルチオカルバペネム誘導体の合成中間体の一つであるスルファミドを、ハロゲン含有溶媒を使用しないかもしくは使用を低減させ、ならびに/または極度の高温および/もしくは低温を回避するかもしくは低減する合成方法を提供する。
【0009】
本発明は、ハロゲン含有溶媒を使用しないかもしくは使用を低減させ、ならびに/または極度の高温および/もしくは低温を回避するかもしくは低減しながら、4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を含むへテロ環化合物のヒドロキシル基をメチルスルホニルオキシ基に、カルボキシル基をヒドロキシメチル基にそれぞれ変換する方法を提供する。
【0010】
本発明は、ハロゲン含有溶媒を使用しないかもしくは使用を低減させ、ならびに/または極度の高温および/もしくは低温を回避するかもしくは低減しながら、4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を含むへテロ環化合物のヒドロキシル基をメチルスルホニルオキシ基に、カルボキシル基をヒドロキシメチル基にそれぞれ変換する方法を提供する。
【0011】
本発明は、ハロゲン含有溶媒を使用しないかもしくは使用を低減させ、ならびに/または極度の高温および/もしくは低温を回避するかもしくは低減しながら、4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、メチルスルホニルオキシ基およびヒドロキシメチル基を含むヘテロ環化合物のメチルスルホニルオキシ基を、アセチルチオ基へと変換する方法を提供する。
【0012】
本発明は、ハロゲン含有溶媒を使用しないかもしくは使用を低減させ、ならびに/または極度の高温および/もしくは低温を回避するかもしくは低減しながら、4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、アセチルチオ基およびヒドロキシメチル基を含むヘテロ環化合物のカルボキシル基をスルファモイル−tert−ブトキシカルボキサミドメチル基へと変換する方法を提供する。
【0013】
本発明は、上記の中間体を調製する方法を実施する工程を少なくとも1つ包含することによって、ハロゲン含有溶媒を使用しないかもしくは使用を低減させ、ならびに/または極度の高温および/もしくは低温を回避するかもしくは低減しながら、チオールピロリジンを合成する方法を提供する。
【0014】
本発明は、上記の中間体を調製する方法を実施する工程を少なくとも1つ包含することによって、ハロゲン含有溶媒を使用しないかもしくは使用を低減させ、ならびに/または極度の高温および/もしくは低温を回避するかもしくは低減しながら、
【0015】
【化24】


で示される化合物(本明細書において、「化合物A」とも称する)、その塩または水和物を合成する方法を提供する。
【0016】
以下に、本発明を詳述する。
【0017】
本発明は、ピロリジルチオカルバペネム誘導体の合成中間体の一つである、スルファミドを、低温での反応を回避しながら合成する方法を提供する。この方法は、以下の工程:
a) ハロゲン化スルホニルイソシアナートと、アルコールとを、溶媒中で反応させて反応生成物を得る工程;
b) 工程a)で得られた反応生成物に、ピリジン、置換されたピリジンおよびキノリン類からなる群より選択される化合物を加えて反応生成物を得る工程;
および
c) 工程b)で得られた反応生成物に、アンモニア水を加えてスルファミドを得る工程、
を包含する。ここで、溶媒の例示としては、トルエン、CH3CN、酢酸エチルなどが挙
げられる。
【0018】
1つの実施態様において、上記方法では、上記スルファミドがBocスルファミド(ここで、Bocは、tert−ブトキシカルボニルである)であり得、
上記ハロゲン化スルホニルイソシアナートがクロロスルホニルイソシアナートであり得、そして
上記アルコールは、tert−ブタノールであり得る。
【0019】
別の実施態様において、本発明の方法では、上記工程a)〜c)の少なくとも1つは、室温〜冷却下、好ましくは、0℃〜−30℃にて行われ得る。
【0020】
他の実施態様において、上記工程a)の反応生成物は、ClSO2NHC(CO)Ot
−Buであり得る(ここで、t−Buはtert−ブチルである)。
【0021】
他の実施態様において、上記工程b)の反応生成物は、ClSO2NHC(CO)Ot−Buのピリジニウム塩、置換されたピリジニウム塩およびキノリン類の塩からなる群より選択される塩であり得る。
【0022】
別の局面において、本発明は、4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を含むへテロ環化合物のヒドロキシル基をメチルスルホニルオキシ基に、カルボキシル基をヒドロキシメチル基にそれぞれ変換する方法を提供する。この方法は、
a)上記4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を含むへテロ環化合物とROHとを、酸の存在下で反応させて反応生成物を得る工程であって、ここで、Rは、C1〜C6アルキルである、工程;
b) 工程a)の反応生成物と、ハロゲン化メタンスルホニルとを、トリエチルアミン存在下で、酢酸エチル中で反応させて反応生成物を得る工程;
c) 工程b)の反応生成物を、酢酸エチル中で、アルコールの存在下でNaBH4で還元して、4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、メチルスルホニルオキシ基およびヒドロキシメチル基を含むへテロ環化合物を得る工程、
を包含する。
【0023】
1つの実施態様において、上記4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を含むへテロ環化合物は、PPR
【0024】
【化25】


であり得、
上記4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、メチルスルホニルオキシ基およびヒドロキシメチル基を含むへテロ環化合物は、PLM
【0025】
【化26】


であり得、
上記酸が、SOCl2、H2SO4またはHClであり得、上記ハロゲン化メタンスルホ
ニルが、塩化メタンスルホニルであり得、そして上記アルコールが、メタノールであり得る。ここで、PNZは、4−ニトロベンジルオキシカルボニルであり、Msは、メタンスルホニルである。
【0026】
一つの実施態様において、上記工程a)は、0℃〜30℃にて行われる。別の実施態様において、上記工程b)は、0℃〜30℃にて行われる。他の実施態様において、上記工程c)が0℃〜30℃にて行われる。
【0027】
別の実施態様において、上記工程a)の反応生成物は、R−PPR
【0028】
【化27】


である。ここで、Rはアルキル基である。好ましくは、Rは、C1〜C6アルキルであり得る。
【0029】
別の実施態様において、上記工程b)の反応生成物は、PNC−Ms
【0030】
【化28】


である。
【0031】
好ましくは、上記C1〜C6アルキルは、メチルまたはエチルである。より好ましくは、上記C1〜C6アルキルは、メチルである。
【0032】
別の局面において、本発明は、4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を含むへテロ環化合物のヒドロキシル基をメチルスルホニルオキシ基に、カルボキシル基をヒドロキシメチル基にそれぞれ変換する方法を提供する。
【0033】
この方法は、
a)上記へテロ環化合物と、ハロ炭酸アルキルとを、酢酸エチル中で、トリブチルアミン存在下で反応させて反応生成物を得る工程;
b) 工程a)で得られる反応生成物と、ハロゲン化メタンスルホニルとを、トリエチルアミン存在下で反応させて反応生成物を得る工程;
c) 工程b)で得られる反応生成物を、アルコールの存在下でNaBH4水溶液で還
元して、4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、メチルスルホニルオキシ基およびヒドロキシメチル基を含むへテロ環化合物を得る工程、
を包含する。
【0034】
一つの実施態様において、上記4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を含むへテロ環化合物は、PPR
【0035】
【化29】


であり得る。
【0036】
上記4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、メチルスルホニルオキシ基およびヒドロキシメチル基を含むへテロ環化合物は、PLM
【0037】
【化30】


であり得る。
【0038】
上記ハロ炭酸アルキルは、クロロ炭酸エチルであり得る。上記ハロゲン化メタンスルホニルは、塩化メタンスルホニルであり得る。上記アルコールは、イソプロパノールであり得る。
【0039】
好ましくは、上記工程a)は、−30℃〜−40℃にて行われる。好ましくは、上記工程b)は、−40℃〜−50℃にて行われる。好ましくは、上記工程c)は、−40℃〜−50℃にて行われる。
【0040】
一つの実施態様において、上記工程b)の反応生成物は、PRE
【0041】
【化31】


である。

【0042】
別の局面において、本発明は、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を含むヘテロ環化合物のヒドロキシル基をメチルスルホニルオキシ基に、カルボキシル基を−COOR基にそれぞれ変換し、かつヘテロ環化合物のヘテロ原子上に4−ニトロベンジルオキシカルボニル基を導入する方法であって、ここで、Rは、C1〜C6アルキルである方法を提供する。この方法は、以下の工程:
a) 該ヒドロキシル基およびカルボキシル基を含むへテロ環化合物とROHとを、酸から選択される試薬の存在下で反応させて反応生成物を得る工程;
b) 工程a)の反応生成物と、4−ニトロベンジルオキシカルボニルハライドとをアルカリ金属炭酸塩の存在下で反応させて反応生成物を得る工程;
c) 工程b)の反応生成物と、ハロゲン化メタンスルホニルとを、トリエチルアミン存在下で、トルエン中で反応させて4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、メチルスルホニルオキシ基および−COOR基を含むヘテロ環化合物を得る工程、
を包含する。
【0043】
1つの実施態様において、上記のヒドロキシル基およびカルボキシル基を含むヘテロ環化合物は、HYP
【0044】
【化32】


であり得、上記4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、メチルスルホニルオキシ基および−COOR基を含むへテロ環化合物は、MPRM
【0045】
【化33】


であり得(式中、MsおよびPNZは前記と同義である)、上記酸が、SOCl2、PO
Cl3およびHClから選択される試薬であり、上記アルカリ金属は、ナトリウムまたは
カリウムであり得、そして上記ハロゲン化メタンスルホニルは、塩化メタンスルホニルであり得る。
【0046】
好ましくは、上記工程b)は、0〜5℃にて行われる。好ましくは、上記工程c)は、10〜32℃で行われる。
【0047】
本発明はさらに、メチルMPRMの別の合成法を提供する(スキーム1)。本方法では、HYPをPNZ化した後エステル化を行うことにより、入手が比較的困難なPNZ−Clを使用する工程を切り離して実施し得、製造場所選択に柔軟性を付与できるという利点がある。PPRの単離には抽出操作が簡便でかつ濃縮操作を回避できる中和晶析法が適用され得る。この中和晶析法で得られるPPRは、1水和物であった。
スキーム1
【0048】
【化34】


1つの局面において、本発明は、4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、メチルスルホニルオキシ基およびヒドロキシメチル基を含むヘテロ環化合物のメチルスルホニルオキシ基を、アセチルチオ基へと変換する方法を提供する。
【0049】
この方法は、以下の工程:
a) 上記4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、メチルスルホニルオキシ基およびヒドロキシメチル基を含むヘテロ環化合物と、チオ酢酸カリウムとを、アセトニトリル/水、ジメチルホルムアミド/酢酸エチルまたはジメチルホルムアミド/トルエンの混合溶媒中で反応させて4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、アセチルチオ基およびヒドロキシメチル基を含むヘテロ環化合物を得る工程、
を包含する。
【0050】
一つの実施態様において、上記4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、メチルスルホニルオキシ基およびヒドロキシメチル基を含むヘテロ環化合物は、PLM
【0051】
【化35】


であり得、上記4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、アセチルチオ基およびヒドロキシメチル基を含むヘテロ環化合物は、ATP
【0052】
【化36】


であり得る。ここで、Acはアセチルである。好ましくは、上記アセトニトリル/水の混合溶媒は、10容:0.1容〜5容:5容の比の混合溶媒であり得る。
【0053】
1つの実施態様において、上記工程a)は、2〜10時間にわたって、65〜80℃に加熱され得る。好ましくは上記工程a)は、80℃において1〜3時間、またはそれと実質的に同様の加熱条件下で行われ得る。
【0054】
1つの好ましい実施態様において、本発明の方法によってPNZ−プロリン(PPR)からピロリジンメシレート(PLM)を合成し、得られたPLMから、本発明の方法によってアセチルチオピロリジン(ATP)を合成し得る。この実施態様において、好ましくは、酸はH2SO4である。後記の実施例15に示されるように、この製法は、ATPを、中間体(MPRMおよびPLM)に対して抽出操作以外の精製操作を行うことなく、簡便に合成し得るという利点を有する。
【0055】
別の局面において、本発明は、4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、メチルスルホニルオキシ基および−COOR基を含むヘテロ環化合物のメチルスルホニルオキシ基をアセチルチオ基に、−COOR基をヒドロキシメチル基にそれぞれ変換する方法であって、ここで、Rは、C1〜C6アルキルである、方法を提供する。この方法は、以下の工程:
a) 上記ヘテロ環化合物を、アルコールの存在下でNaBH4で還元して、反応生成
物を得る工程;
b) 工程a)の反応生成物と、チオ酢酸カリウムとを、ジメチルホルムアミド/酢酸エチルの混合溶媒中で反応させて4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、アセチルチオ基およびヒドロキシメチル基を含むヘテロ環化合物を得る工程、
を包含する。
【0056】
1つの実施態様において、上記4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、メチルスルホニルオキシ基および−COOR基を含むヘテロ環化合物が、MPRM
【0057】
【化37】


であり得(式中、MsおよびPNZは前記と同義である)、上記4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、アセチルチオ基およびヒドロキシメチル基を含むヘテロ環化合物が、ATP
【0058】
【化38】


であり得、上記Rが、メチルであり得、そして上記アルコールが、メタノールであり得る。
【0059】
1つの実施態様において、好ましくは、上記工程a)0〜5℃で行われ得る。好ましくは、上記工程b)は、8〜10時間にわたって60〜70℃に加熱され得る。好ましくは、上記ジメチルホルムアミド/酢酸エチルの混合溶媒は、10容:0容〜10容:1容の比の混合溶媒であり得る。
【0060】
1つの好ましい実施態様において、本発明の方法によってL−ヒドロキシプロリン(HYP)からメシルプロリンメチルエステル(MPRM)を合成し、得られたMPRMから、本発明の方法によってアセチルチオピロリジン(ATP)を合成し、そして得られたATPから、本発明の方法によってアセチルチオスルファミド(ATS)を合成し得る。この実施態様に従って、後記の実施例11および12に示されるように、単離回数および抽出回数が顕著に減少し、それにより製造日数が顕著に短縮されて高い生産性が達成され得る。
【0061】
別の局面において、本発明は、4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、アセチルチオ基およびヒドロキシメチル基を含むヘテロ環化合物のヒドロキシメチル基をスルファモイル−tert−ブトキシカルボキサミドメチル基へと変換する方法を提供する。この方法は、以下の工程:
上記4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、アセチルチオ基およびヒドロキシメチル基を含むヘテロ環化合物と、Bocスルファミドとを、酢酸エチル中で、トリフェニルホスフィンおよびジイソプロピルアゾジカルボン酸存在下で反応させて4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、アセチルチオ基およびスルファモイル−tert−ブトキシカルボキサミドメチル基を含むヘテロ環化合物を得る工程、を包含する。
【0062】
1つの実施態様において、上記4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、アセチルチオ基およびヒドロキシメチル基を含むヘテロ環化合物は、ATP
【0063】
【化39】


であり得、
上記4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、アセチルチオ基およびスルファモイル−tert−ブトキシカルボキサミドメチル基を含むヘテロ環化合物は、ATS
【0064】
【化40】


であり得る。ここで、Bocは、tert−ブトキシカルボニルである。
【0065】
別の実施態様において、本発明の方法の上記工程は、−20℃〜25℃にて行われ得る。好ましくは、上記工程は、18〜21℃にて行われ得る。
【0066】
1つの実施態様において、4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、アセチルチオ基およびヒドロキシメチル基を含むヘテロ環化合物のヒドロキシメチル基をスルファモイル−tert−ブトキシカルボキサミドメチル基へと変換する方法に使用される上記Bocスルファミドは、本発明の方法によって合成されたものであり得る。
【0067】
別の局面において、本発明は、チオールピロリジンを合成する方法を提供し、この方法は、本発明の上記の中間体合成方法を少なくとも1つ包含する。
【0068】
別の局面において、本発明は、チオールピロリジンを合成する方法を提供する。この方法は、
本発明の方法でスルファミドを合成し、
本発明の方法で、4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を含むヘテロ環化合物から、4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、メチルスルホニルオキシ基およびヒドロキシメチル基を含むヘテロ環化合物を合成し、
本発明の方法で、4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、メチルスルホニルオキシ基およびヒドロキシメチル基を含むヘテロ環化合物から、4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、アセチルチオ基およびヒドロキシメチル基を含むヘテロ環化合物を合成し、そして、
本発明の方法で、上記スルファミドと、4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、アセチルチオ基およびヒドロキシメチル基を含むヘテロ環化合物とから、4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、アセチルチオ基およびスルファモイル−tert−ブトキシカルボキサミドメチル基を含むヘテロ環化合物を合成すること、ならびに
脱保護反応、
を包含する。
【0069】
一つの実施態様において、本発明は、チオールピロリジンを合成する方法を提供する。この方法は、
本発明の方法によって、クロロスルホニルイソシアナートからBocスルファミドを合成し、
本発明の方法によって、PPR
【0070】
【化41】


から、PLM
【0071】
【化42】


を合成し、
本発明の方法によって、PLM
【0072】
【化43】


から、ATP
【0073】
【化44】


を合成し、そして
本発明の方法によって、上記Bocスルファミドと、ATP
【0074】
【化45】


とから、ATS
【0075】
【化46】


を合成すること、ならびに脱保護反応、
を包含する。
【0076】
本発明はさらにATSより得られるSPLと、公知のエノールホスフェート(ELP−PNB)をカップリングさせることにより、前記式(I)で示されるピロリジルチオカルバペネム誘導体を製造する方法も提供する。
【0077】
本製法においては特に、後記の実施例8に示されるように、カップリング反応により得られるTCEの脱保護反応後の抽出操作において、水と有機溶媒、好ましくはテトラヒドロフランの混合液に、金属ハライド、好ましくは塩化マグネシムを、TCEに対して約5〜50重量%、好ましくは約20〜40重量%添加することにより、目的化合物を高濃度に溶解させた水溶液の調製が可能となった。その結果、従来、後処理工程において不可欠であった濃縮操作やカラムクロマトグラフィー処理を行うことなく、目的のピロリジルチオカルバペネム誘導体を純度よく結晶として単離することが可能となった。よって工業的製法としても有用である。この単離操作においては、好ましくは目的物の種晶が使用される。
【0078】
本発明はまた、TCE
【0079】
【化47】


で示される化合物を製造する方法を提供する。この方法は、以下の工程:
4−ニトロベンジル(1R,5R,6S)−[(R)−1−ヒドロキシエチル]−2−オキソ−カルバペネム−3−カルボキシレートとジフェニルホスホクロリデートとを反応させて、以下の化合物:ELP−PNB
【0080】
【化48】


を得る工程;および
該ELP−PNBと、以下の化合物:SPL
【0081】
【化49】


とを反応させて、TCE
【0082】
【化50】


を得る工程、を包含する。
【0083】
1つの実施態様において、上記ELP−PNBは、反応液中から単離することなく前記SPLと反応させることができる。
【0084】
本発明はまた、本発明の上記方法において得られたTCEを含有する反応液またはその抽出液から、結晶を得る工程を包含する、TCE結晶を製造する方法を提供する。
【0085】
1つの実施態様において、上記結晶を得る工程は、前記反応液またはその抽出液にアルコールを添加することを包含し得る。
【0086】
本発明はまた、以下の式
【0087】
【化51】

で示される化合物を合成する方法を提供する。この方法は、合成工程として本発明の中間体合成方法を少なくとも1つ包含する。好ましくは、本発明の方法は、合成工程として本発明の中間体合成方法を少なくとも2つ包含する。より好ましくは、本発明の方法は、可能な中間体合成経路において本発明の中間体合成方法をすべて包含する。1つの実施態様において、本発明は、合成工程として上記方法を包含する、医薬品の製造方法を提供する。
【0088】
別の局面において、本発明はまた、以下の化合物または結晶を提供する。
PPR
【0089】
【化52】

PRE
【0090】
【化53】


ATP
【0091】
【化54】


、およびATS
【0092】
【化55】



【0093】
本発明はさらに、粉末X線回折解析において、2θ値が4.580±0.100、9.060±0.100、18.100±0.100および22.660に主なピークを示すATPの結晶を提供する。
【0094】
本発明はまた、粉末X線回折解析において、2θ値が6.920±0.100、7.000±0.100、11.700±0.100および20.140±0.100に主なピークを示すATSの結晶を提供する。
【0095】
本発明はまた、粉末X線回折解析において、2θ値が19.100±0.100、22.620±0.100および26,000±0.100に主なピークを示す、以下の構造:PLM
【0096】
【化56】


の化合物の結晶を提供する。
【0097】
本発明はまた、粉末X線回折解析において、2θ値が15.910±0.100、19.930±0.100および25.400±0.100に主なピークを示す、以下の構造:TCE
【0098】
【化57】


の化合物の結晶を提供する。
【発明の効果】
【0099】
本発明によって、ハロゲン含有溶媒を使用しないかもしくは使用を低減させ、ならびに/または極度の高温および/もしくは低温を回避するかもしくは低減しながら、ピロリジルチオカルバペネム誘導体を合成することが達成された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0100】
(発明の実施の形態)
本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、単独または併用のいずれの場合も、当該分野において通常用いられる意味において使用される。
(略語)
以下、本明細書において使用される略語を説明する。
BSA(Bocスルファミド):N−tert−ブトキシカルボニルスルファミド
PPR(PNZプロリン):(2S,4R)−4−ヒドロキシ−1−(4−ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン−2−カルボン酸
PLM(ピロリジンメシレート):4−ニトロベンジル(2S,4R)−2−ヒドロキシメチル−4−メチルスルホニルオキシピロリジン−1−カルボキシラート
R−PPR:(2S,4R)−4−ヒドロキシ−1−(4−ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン−2−カルボン酸エステル
PNC−Ms:(2S,4R)−4−メチルスルホニルオキシ−1−(4−ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン−2−カルボン酸エステル
PRE:(2S,4R)−4−メチルスルホニルオキシ−1−(4−ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン−2−カルボン酸炭酸アルキル
ATP(アセチルチオピロリジン):4−ニトロベンジル(2S,4S)−4−アセチルチオ−2−ヒドロキシメチルピロリジン−1−カルボキシラート
ATS(アセチルチオスルファミド):4−ニトロベンジル(2S,4S)−4−アセチルチオ−2−(N−スルファモイル−tert−ブトキシカルボキサミドメチル)ピロリジン−1−カルボキシラート
SPL(チオールピロリジン):4−ニトロベンジル(2S,4S)−4−メルカプト−2−スルファモイルアミノメチルピロリジン−1−カルボキシラート
TCE(チオピロリジンカルバペネムエステル):4−ニトロベンジル(4R,5S,6S)−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−メチル−3−[[(3S,5S)−1−(4−ニトロベンジルオキシカルボニル)−5−(スルファモイルアミノメチル)ピロリジン−3−イル]チオ]−7−オキソ−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−2−カルボキシラート
(定義)
「ピロリジルチオカルバペネム誘導体」とは、カルバペネム系化合物の2位(ただし、IUPAC命名法に従えば、3位である)がピロリジルチオ基で置換された構造
【0101】
【化58】


を有する化合物をいう。ピロリジルチオカルバペネム誘導体は、抗生物質活性を有することが知られている(特許第2542773号)。
【0102】
「スルファミド」、「スルファミド類」および「スルファミド化合物」は、本明細書において互換的に用いられ、−NSO2NH−構造を有する化合物をいう。スルファミドは
、医薬、食品、動植物薬、高分子化学、立体異性体アルコール化合物の製薬上有用な化合物として知られている。そのような有用な化合物としては、ベータラクタム抗菌剤の他、解熱剤、鎮痛剤(A.Giraldesら、Eur.J.Med.Chem.(1989)24、497)、甘味料(J.Org.Chem.(1989)、54、4471)、睡眠剤(B.Unterhaltら、Arch.Phamr.(Weinheim)1988、321、375)、抗痙攣剤(C.H.Leeら、J.Pharm.Sci.1990,79,716)などが挙げられる。
【0103】
「ハロゲン含有溶媒」とは、ハロゲン元素を含有する溶媒をいう。「ハロゲン」とは、周期表17族に属する元素で、ハロゲンとしては、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)が挙げられる。また、「ハロゲン化」とは、ある化合物の水素がハロゲンで置換されたことをいう。
【0104】
本明細書において「低温」とは、室温付近よりかなり低い温度をいい、低温の反応条件下で反応を行う際には、通常、特殊な機器を必要とする。低温の具体例としては、−60℃以下、−40℃以下、−20℃以下、0℃以下、10℃以下などが挙げられるがそれらに限定されない。また、「極度の低温」とは、例えば、−40℃以下の温度をいう。本明細書において「高温」とは、室温付近よりかなり高い温度をいう。高温の具体例としては、100℃以上、80℃以上、60℃以上、50℃以上、40℃以上、30℃以上などが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書において「極度の高温」とは、例えば、80℃以上をいう。このような低温または高温の反応条件は、一般に、特殊な反応系を必要とすることから、あまり所望されない。従って、化合物を合成する際には、このような低温および/または高温の条件を回避するか、または低減することが好ましい。
【0105】
「4−ニトロベンジルオキシカルボニル(基)」とは、
【0106】
【化59】


で表される基をいい、本明細書において、ときに、PNZと表記する。PNZ基は、Bocなどと並んで有用な保護基である。
【0107】
「カルボキシ(基)」とは、−COOHで表される基をいう。
【0108】
「ヒドロキシ(基)」とは、−OHで表される基をいう。
【0109】
「ヘテロ環(基)」とは、炭素およびヘテロ原子をも含む環状構造を有する基をいう。ここで,ヘテロ原子は、O、SおよびNからなる群より選択され、同一であっても異なっていてもよく、1つ含まれていても2以上含まれていてもよい。ヘテロ環基は、芳香族系または非芳香族系であり得、そして単環式または多環式であり得る。ヘテロ環基は置換されていてもよい。
【0110】
「メチルスルホニルオキシ(基)」とは、−OSO2CH3で表される基をいう。
【0111】
「ヒドロキシメチル(基)」とは、−CH2OHで表される基をいう。
【0112】
「アセチルチオ(基)」とは、−S−COCH3で表される基をいう。
【0113】
「スルファモイル−tert−ブトキシカルボキサミドメチル(基)」とは、CH2
(Boc)SO2NH2で表される基をいう。
【0114】
「tert−ブトキシカルボニル(基)」は、本明細書において「Boc」とも表記され、−COOC(CH33で表される基いう。Bocは、有用な保護基である。
【0115】
「チオールピロリジン」とは、ピロリジンの水素の代わりにチオール基が置換された化合物またはその誘導体をいう。
【0116】
「酸」とは、鉱酸、有機酸およびルイス酸を含む広義の酸をいう。鉱酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、およびリン酸などが挙げられるがこれらに限定されない。有機酸としては、例えば、p−トルエンスルホン酸が挙げられるがこれに限定されない。ルイス酸としては、例えば、SOCl2、POCl3、AlCl3およびBF3などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0117】
「アルコール」とは、脂肪族炭化水素の1または2以上の水素原子をヒドロキシル基で置換した有機化合物をいう。本明細書においては、ROHとも表記される。ここで、Rは、アルキル基である。好ましくは、Rは、C1〜C6アルキルであり得る。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロパノール)、tert−ブタノールなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0118】
「アルキル」とは、メタン、エタン、プロパンのような脂肪族炭化水素から水素原子が一つ失われて生ずる1価の基をいい、一般にCn2n+1−で表される(ここで、nは正の
整数である)。アルキルは、直鎖または分枝鎖であり得、環状または非環状であり得る。本明細書において「置換されたアルキル」とは、アルキルのHが置換されたアルキルをいう。これらの具体例は、C1〜C2アルキル、C1〜C3アルキル、C1〜C4アルキル、C1〜C5アルキル、C1〜C6アルキル、C1〜C7アルキル、C1〜C8アルキル、C1〜C9アルキル、C1〜C10アルキル、C1〜C11アルキルまたはC1〜C12アルキル、C1〜C2置換されたアルキル、C1〜C3置換されたアルキル、C1〜C4置換されたアルキル、C1〜C5置換されたアルキル、C1〜C6置換されたアルキル、C1〜C7置換されたアルキル、C1〜C8置換されたアルキル、C1〜C9置換されたアルキル、C1〜C10置換されたアルキル、C1〜C11置換されたアルキルまたはC1〜C12置換されたアルキルであり得る。ここで、例えばC1〜C10アルキルとは、炭素原子を1〜10個有する直鎖または分枝状のアルキルを意味し、メチル(CH3
)、エチル(C25−)、n−プロピル(CH3CH2CH2−)、イソプロピル((CH32CH−)、n−ブチル(CH3CH2CH2CH2−)、n−ペンチル(CH3CH2CH2CH2CH2−)、n−ヘキシル(CH3CH2CH2CH2CH2CH2−)、n−ヘプチル(CH3CH2CH2CH2CH2CH2CH2−)、n−オクチル(CH3CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−)、n−ノニル(CH3CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−)、n−デシル(CH3CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−)、−C(CH32CH2CH2CH(CH32、−CH2CH(CH32、シクロアルキルとしては、
シクロプロピル、シクロヘキシルなどなどが例示される。また、例えば、C1〜C10置換されたアルキルとは、C1〜C10アルキルであって、そのうち1または複数の水素原子が置換基により置換されているものをいう。
【0119】
本明細書においては、特に言及がない限り、置換は、ある有機化合物または置換基中の1または2以上の水素原子を他の原子または原子団で置き換えることをいう。水素原子を1つ除去して1価の置換基に置換することも可能であり、そして水素原子を2つ除去して2価の置換基に置換することも可能である。
【0120】
置換基としては、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、シクロアルケニル、置換されたシクロアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、アルコキシ、置換されたアルコキシ、炭素環基、置換された炭素環基、ヘテロ環基、置換されたヘテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ、置換されたヒドロキシ、チオール、置換されたチオール、シアノ、ニトロ、アミノ、置換されたアミノ、カルボキシ、カルバモイル、置換されたカルボキシ、アシル、アシルアミノ、置換されたアシル、チオカルボキシ、置換されたチオカルボキシ、アミド、置換されたアミド、置換されたカルボニル、置換されたチオカルボニル、置換されたスルホニルまたは置換されたスルフィニルが挙げられるがそれらに限定されない。上記の置換基が置換された基である場合は、そのさらなる置換のための置換基についても上記と同様に選択され得る。
【0121】
「イソシアナート」とは、−N=C=Oを有する化合物をいう。イソシアナートとしては、イソシアン酸メチルCH3N=C=O、スルホニルイソシアナートOSO2−N=C=Oなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0122】
「メタンスルホニル」とは、CH3SO2−表される基をいう。
【0123】
「ハロ炭酸アルキル」とは、XCOORで表される化合物をいい、ここで、Xはハロゲン基であり、そしてRはアルキルである。ハロ炭酸アルキルとしては、クロロ炭酸エチルが挙げられる。
【0124】
「アセトニトリル」とは、CH3CNで表される化合物である。「ジメチルホルムアミ
ド」、「DMF」とは、(CH32NCHOで表される化合物である。アセトニトリル/水の混合溶媒とは、アセトニトリルと水とが混和可能な任意の割合で混合している溶媒をいう。アセトニトリルと水の比率としては、好ましくは、10容:0.1容〜5容:5容が挙げられるがそれらに限定されない。ジメチルホルムアミド/トルエンの混合溶媒とは、ジメチルホルムアミドとトルエンとが混和可能な任意の割合で混合している溶媒をいう。ジメチルホルムアミドとトルエンの比率としては、好ましくは、10容:0容〜1容:10容の比が挙げられるがそれらに限定されない。ジメチルホルムアミド/酢酸エチルの混合溶媒とは、ジメチルホルアミドと酢酸エチルとが混和可能な任意の割合で混合している溶媒をいう。ジメチルホルムアミドと酢酸エチルの比率としては、好ましくは、10容:0容〜1容:10容の比が挙げられるがそれらに限定されない。
【0125】
「脱保護反応」とは、BocまたはPNZのような保護基を脱離させる反応をいう。脱保護反応としては、Pd/Cを用いる還元反応のような反応が挙げられる。
【0126】
本発明の各方法において、目的とする生成物を、反応液から夾雑物(未反応減量、副生成物、溶媒など)を、当該分野で慣用される方法(例えば、抽出、蒸留、洗浄、濃縮、沈澱、濾過、乾燥など)によって除去した後に、当該分野で慣用される後処理方法(例えば、吸着、溶離、蒸留、沈澱、析出、クロマトグラフィーなど)を組み合わせて処理して単離し得る。
【0127】
本明細書において、得られた化合物の物性を決定するために、粉末X線回折を用いた解析法が用いられる。
【0128】
1つの局面において、本発明は、TCE結晶を簡便に得る方法を提供する。この方法は、本発明のELP−PNBを、反応液中から単離した後または単離することなく前記SPLと反応させる工程を包含する。好ましくは、この工程は、本発明の方法において得られたTCEを含有する反応液またはその抽出液にアルコール(例えば、メタノール)を加える工程を包含する。TCEの前駆体を単離することなく、X線解析のためのTCE結晶を得ることができるということは、従来予測不可能であった格別の効果である。
【0129】
本明細書において、化合物の物性は、上記X線回折による解析結果によって特定することができる。特定の方法は、粉末X線解析によって得られた定性分析のピークによって特定する方法が含まれる。ピークによって化合物の物性を特定する場合、主なピークによって特定することが好ましい。ここで、主なピークとは、そのI/Ioの値が、30以上であるもの、通常は、50以上であるもの、好ましくは、70以上であるもの、より好ましくは80以上であるものをいう。ここで、I/Ioは、最大強度を示すピークの強度値をIoとして各ピークの強度値IをIoで除して100倍することによって得られる。ここで、主なピークを規定する際のI/Ioの閾値は、上記に限定されず、解析結果に応じて任意に決定することができる。従って、上記I/Ioの閾値は、100以下であればどのような点に設定しても良いが、通常は30と100との間の任意の点であり得る。
【0130】
本発明の各中間体の結晶は、安定であり、取り扱い易く、カルバペネム誘導体の工業的製法において有用である。
【0131】
以上のように、本発明について、その詳細を種々の形態で記載したが、本明細書における具体的な実施態様および実施例は、単なる例示であって、本発明の範囲は、例示される特定の実施態様または実施例には決して限定されないことが理解される。
【実施例】
【0132】
(実施例1:N−tert−ブトキシカルボニルスルファミド(Bocスルファミド、BSA)の合成法)
(A:液体アンモニア−法)(従来法)
酢酸エチル(626L)にt−ブチルアルコール(32.7kg)を加えて−40℃に冷却、これに−40±10℃でクロロスルホニルイソシアネート(62.5kg)を滴下した後、40分間攪拌した。反応液を−65℃に冷却し、−60±10℃で液体アンモニア(45.1kg)を滴下した後、15±10℃に昇温した。この反応液に22%硫酸水(約150kg)を加えてpH 9.5±1.0に調節し、水(約100kg)を加えて攪拌した後分液した。水層を酢酸エチル(230L)で洗浄した後、22%硫酸水(約170kg)を加えてpH 2.0±0.5に調節し、得られたBSAスラリーを7±3℃で1時間攪拌した後、結晶を濾過し、乾燥してBSA 78.35kgを得た(収率:90.4%)。
【0133】
(B:アンモニア水法)(本発明の方法)
トルエン(387ml)にt−ブチルアルコール(20.95g)を加えて−0℃以下に冷却、−1〜−3℃でクロロスルホニルイソシアネート(40.0g)を滴下した後、20分間攪拌した。これに0〜−4℃でピリジン(49.2g)を滴下した後、40分間攪拌した。さらに0〜−4℃で25%アンモニア水(114g)を滴下、さらに水(32g)を加えて−1〜3℃で2.5時間攪拌した後氷冷下1晩放置した。この反応液を分液し、水層はトルエン(150ml)で洗浄、各トルエン層は水(128ml)で再抽出した後水層を合わせた。この水層に22%硫酸水(271g)を加えてpH 2に調節し、得られたBSAスラリーを5℃で30分攪拌した後、結晶を濾過、乾燥してBSA 53.37gを得た(収率:96.2%)。
(スキーム2)
【0134】
【化60】


(実施例2:(2S,4R)−4−ヒドロキシ−1−(4−ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン−2−カルボン酸(PNZ−プロリン、PPR)の合成法)
水(600ml)に水酸化ナトリウム(53.69g)を溶解させた後氷冷し、これにL−ヒドロキシプロリン(80.0g)を加えて溶解させ、PNZ−Cl(144.69g)のトルエン(160ml)溶液を2〜6℃で滴下した後2℃で1時間攪拌した。反応液にトルエン(240ml)を加えて分液、水層はトルエン(120ml)で洗浄、各トルエン層は0.2%水酸化ナトリウム水溶液(200ml)で再抽出した。水層を合わせ、酢酸エチル(800ml)および36%塩酸(80.33g)を加えて抽出、酢酸エチル層は食塩水(240ml)で2回洗浄、各水層は酢酸エチル(200ml)で再抽出した。酢酸エチル層を合併、濃縮と酢酸エチル(800ml)追加を3回繰り返して脱水した。得られた濃縮液(400g)にトルエン(270ml)を加えて氷冷下1時間晶析後、結晶を濾過、乾燥してPPR 176.15gを得た(収率:93.1%、融点133〜135℃)。
【0135】
(実施例3:4−ニトロベンジル(2S,4R)−2−ヒドロキシメチル−4−メチルスルホニルオキシピロリジン−1−カルボキシラート(ピロリジンメシレート、PLM)の合成法)
(A:ジクロロメタン法(従来法))
ジクロロメタン(248L)にPNZ−プロリン(31.0kg)を加えた後−5±5℃に冷却し、クロロ炭酸エチル(11.9kg)を加え、さらに同温度でトリエチルアミン(12.1kg)を滴下後25分攪拌した。次に−45±5℃に冷却し、同温度で塩化メタンスルホニル(12.6kg)およびトリエチルアミン(12.1kg)を滴下した後35分攪拌した。次に−45±5℃でイソプロピルアルコール(78kg)を滴下、さらに同温度で水素化ホウ素ナトリウム(5.7kg)の水(23kg)溶液を滴下した後35分攪拌した。次に反応液を2.4%塩酸水溶液(234kg)に加えて分液、ジクロロメタン層は2%炭酸水素ナトリウム水溶液、3%食塩水の順に洗浄、各水層はジクロロメタン(31L)で再抽出した。ジクロロメタン層を合わせ、50Lまで濃縮した後、酢酸エチル(250L)を加えて110Lまで濃縮した。次にヘキサン(62L)を加え、3℃で1時間晶析熟成した後、結晶を濾過、乾燥してPLM 34.9kgを得た(収率:93.3%)。
【0136】
(B:トリブチルアミン/酢酸エチル法)
酢酸エチル(40ml)にPNZ−プロリン(5.00g)およびトリブチルアミン(3.58g)を加えた後−35±5℃に冷却し、これに同温度でクロロ炭酸エチル(1.92g)を滴下後1時間攪拌した。次に−45±5℃に冷却し、同温度で塩化メタンスルホニル(2.27g)およびトリエチルアミン(2.61g)を滴下した後1.5時間攪拌した。次に−45±5℃でイソプロピルアルコール(16ml)を滴下、さらに同温度で水素化ホウ素ナトリウム(0.91g)の水(3.6ml)溶液を滴下した後30分攪拌した。次に反応液を3.3%硫酸水溶液(42g)に加えて分液、酢酸エチル層は3.3%硫酸水溶液、2%炭酸水素ナトリウム水溶液、3%食塩水の順に洗浄、各水層は酢酸エチル(10ml)で再抽出した。酢酸エチル層を合わせ濃縮した後、トルエン(5ml)を加え、氷冷下1時間晶析熟成した後、結晶を濾過し、乾燥してPLM 2.54gを得た(収率:84.2%、融点100〜102℃)。
(スキーム3)
【0137】
【化61】


(実施例4:4−ニトロベンジル(2S,4R)−2−ヒドロキシメチル−4−メチルスルホニルオキシピロリジン−1−カルボキシラート(ピロリジンメシレート、PLM)の合成法−メチルエステル経由法(低温反応回避))
(メチル(2S,4R)−4−ヒドロキシ−1−(4−ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン−2−カルボキシラート(メチルエステル体(1))の合成法)
メタノール(124ml)にPNZ−プロリン(31.03g)を加えた後、約20℃で塩化チオニル(7.99ml)を滴下し、同温度で3時間攪拌した。次に反応液を7%炭酸水素ナトリウム水溶液(540ml)に流入し、トルエン(124ml)および酢酸エチル(500ml)で抽出した。有機層は水(200ml)2回、飽和食塩水(200ml)の順に洗浄後硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒留去することによりメチルエステル体(1)を淡黄褐色油状物として35.06g得た(収率:100%)。
【0138】
(メチル(2S,4R)−1−(4−ニトロベンジルオキシカルボニル)−4−メチルスルホニルオキシピロリジン−2−カルボキシラート(MPRM)の合成法)
メチルエステル体(1)(35.06g)を酢酸エチル(350ml)に溶解させ、−10℃に冷却した。つぎに−10〜−5℃で塩化メタンスルホニル(10.06ml)およびトリエチルアミン(17.84ml)を滴下後−5±5℃で1時間攪拌した。反応液を1.4%硫酸水(170ml)に流入して抽出、有機層は水(170ml)、1%炭酸水素ナトリウム水溶液(170ml)、飽和食塩水(170ml)の順に洗浄、各水層は酢酸エチル(170ml)で再抽出した。有機層を合併、硫酸マグネシウムで乾燥した後溶媒を留去し、得られたスラリーにトルエン(150ml)を加えて晶析後濾過し、乾燥してMPRMを白色結晶として36.92g得た(収率:91.8%(PPRを基準とする))。
【0139】
(4−ニトロベンジル(2S,4R)−2−ヒドロキシメチル−4−メチルスルホニルオキシピロリジン−1−カルボキシラート(ピロリジンメシレート、PLM)の合成法)
MPRM(1.5g)を酢酸エチル(12ml)に溶解させ、NaBH4(0.28g
)を加え、さらに7〜10℃でメタノール(0.92ml)を滴下した後5〜10℃で6.5時間攪拌した。反応液を2%硫酸水(12.3ml)に流入して抽出、有機層は1%炭酸水素ナトリウム水溶液(12ml)、水(12ml)2回の順に洗浄、各水層は酢酸エチル(10ml)で再抽出した。有機層を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒留去し、これにトルエン(4ml)を加えて晶析後濾過し、乾燥してPLMを結晶として1.31g得た(収率:94.1%)。
(スキーム4)
【0140】
【化62】


この結晶について、理学電機株式会社製RINT1100を用いて以下の条件で粉末X線回折構造解析を行ったところ、図1のようなピークを示す結果を得た。管球:Cu、管電圧:40kV、管電流:40mA、ゴニオメータ:広角ゴニオメータ、サンプリング角度0.020°、スキャンスピード:2.00°/分、走査軸:2θ/θ、オフセット角度:0.000°、アタッチメント:標準試料ホルダー、モノクロメータ:使用、モノクロ受光スリット:0.60mm、発散スリット:1°、散乱スリット:1°、および受光スリット:0.15mm。
【0141】
図1は、上段において、粉末X線回折解析の生データを示し、下段において、各ピークの位置および大きさを示す。さらに、各ピークについて数値化したものを図2に示す。
(実施例5:4−ニトロベンジル(2S,4S)−4−アセチルチオ−2−ヒドロキシメチルピロリジン−1−カルボキシラート(アセチルチオピロリジン、ATP)の合成法)(A:DMF−トルエン溶媒)
PLM(40.0kg)にチオ酢酸カリウム(16.0kg)、ジメチルホルムアミド(75kg)およびトルエン(104kg)を加えてスラリー化した後、65±5℃に昇温し、4時間攪拌した。反応終了後酢酸エチル(540kg)と水(300kg)で抽出、有機層は5%食塩水(200kg)で2回洗浄、各水層は酢酸エチル(110kg)で再抽出した。酢酸エチル層を合わせ、290Lまで濃縮した後、トルエン(300kg)を加えて290Lまで濃縮した。得られたスラリーを25±10℃で1晩晶析熟成した後、結晶を濾過し、乾燥してATP 27.9kgを得た(収率:73.7%、融点130〜132℃)。
【0142】
この結晶について、RINT1100を用いて実施例4に記載のものと同一の条件で粉末X線回折構造解析を行ったところ、図3のようなピークを示す結果を得た。上段は、粉末X線回折解析の生データを示し、下段は各ピークの位置および大きさを示す。さらに、各ピークについて数値化したものを図4に示す。
(B:CH3CN−水溶媒)
PLM(7.5g)にチオ酢酸カリウム(4.60g)、アセトニトリル(22.5ml)および水(1.5ml)を加えた後、65℃に昇温し、10時間攪拌した。反応終了後酢酸エチル(113ml)と水(30ml)で抽出、有機層は5%食塩水(37.5ml)で2回洗浄、各水層は酢酸エチル(52.5ml)で再抽出した。酢酸エチル層を合わせ、HPLCで定量したところ、ATPが5.59g生成していた(生成率:80.7%)。
(スキーム5)
【0143】
【化63】


(実施例6:4−ニトロベンジル(2S,4S)−4−アセチルチオ−2−(N−スルファモイル−tert−ブトキシカルボキサミドメチル)ピロリジン−1−カルボキシラート(アセチルチオスルファミド、ATS)の合成法)
ATP(100.0g)にトリフェニルホスフィン(90.2g)、BSA(83.0g)および酢酸エチル(2.4L)を加えてスラリー化した後、20℃以下でジイソプロピルアゾジカルボン酸(DIAD)(68.3g)を滴下した。18〜21℃で2時間攪拌した後濃縮、メタノール(0.5L)を加えて濃縮、再度メタノール(0.5L)を加えて濃縮した後メタノールで液量を700gに調整した。この溶液を65℃に加熱し水(75g)を加えた後、50℃で2時間攪拌して晶析、さらに室温で1晩放置後、結晶を濾過し、乾燥してATS 121.68gを得た(収率:81.0%、融点133〜136℃:IR(KBr) 3361,3226,2978,1708,1692,1523,1381,1336,1187,1149 cm-11H−NMR(CDCl3)δ 1.48(s,9H),1.57−1.61(ddd,1H,J=14.1Hz,J=5.4Hz,J=3.6Hz),2.35(s,3H),2.59(dt,1H,J=14.1Hz,J=8.6Hz),3.27(dd,1H,J=12.1Hz,J=6.5Hz),3.62(dd,1H,J=14.9Hz,J=2.7Hz),3.96(m,1H),4.02(dd,1H,J=14.9Hz,J=8.5Hz),4.27(dd,1H,J=12.1Hz,J=7.8Hz),4.55(m,1H),5.18(ABq,2H,J=13.4Hz),5.86(br,2H),7.49(A22,2H,J=8.7Hz),8.24(A22,2H,J=8.7Hz);13C−NMR(CDCl3)δ
28.09,30.51,34.46,39.15,49.93,52.17,56.72,66.11,84.15,123.91,128.19,143.10,147.81,151.81,155.10,194.85;FABMS m/z 533 [M+H]+,555 [M+Na]+)。
(スキーム6)
【0144】
【化64】


この結晶について、RINT1100を用いて実施例4に記載のものと同一の条件で粉末X線回折構造解析を行ったところ、図5のようなピークを示す結果を得た。上段は、粉末X線回折解析の生データを示し、下段は各ピークの位置および大きさを示す。さらに、各ピークについて数値化したものを図6に示す。
【0145】
さらに、ATSの単結晶X線結晶構造解析の立体図を以下に示す。
【0146】
【化65】


(実施例7:4−ニトロベンジル(2S,4S)−4−メルカプト−2−スルファモイルアミノメチルピロリジン−1−カルボキシラート(チオールピロリジン、SPL)の合成法)
(1)
アセチルチオスルファミド(18.3kg)にメタノール(72.3kg)およびメタンスルホン酸(1.65kg)を加えて65±5℃で7.7時間攪拌した。反応液を25℃以下に冷却した後、減圧下、溶媒留去して約50Lまで濃縮した。濃縮液を酢酸エチル(125kg)と水(136kg)の混合液に流入して抽出、有機層は5%食塩水(94kg)で3回洗浄、各水層は酢酸エチル(55kg)で再抽出し、有機層を合併した。この有機層を減圧下、溶媒留去して約34kgまで濃縮し、さらに酢酸エチル(98kg)を加えて減圧下、再び溶媒留去して約34kgまで濃縮してSPL/酢酸エチル溶液を得た。
スキーム7
【0147】
【化66】


(2)
アセチルチオスルファミド(134.4g)にメタノール(672ml)および98%硫酸(63.2g)を加えて65±5℃で2時間攪拌した後、減圧下、溶媒留去した。濃縮液を酢酸エチル(1067ml)と水(933ml)の混合液に流入して抽出、有機層は5%食塩水(700ml)で3回洗浄、各水層は酢酸エチル(400ml)で再抽出し、有機層を合併した。この有機層を減圧下、溶媒留去、さらに酢酸エチル(800ml)を加えて減圧下、再び溶媒留去してSPL/酢酸エチル溶液280gを得た。
【0148】
(実施例8:化合物Aの合成法)
(1)4−ニトロベンジル(4R,5S,6S)−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−メチル−3−[[(3S,5S)−1−(4−ニトロベンジルオキシカルボニル)−5−(スルファモイルアミノメチル)ピロリジン−3−イル]チオ]−7−オキソ−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−2−カルボキシラート(チオピロリジンカルバペネムエステル、TCE)の合成法
(抽出法)
SPL/酢酸エチル溶液(280g)にエノールホスフェート(120.0g)、ジメチルホルムアミド(600ml)を加えて氷冷し、さらにジイソプロピルエチルアミン(36.4g)を加えて5℃以下で1晩反応させた。この反応液を酢酸エチル(900ml)と水(900ml)の混合液に流入して抽出、有機層は0.7%塩酸水(612g)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(252g)、5%食塩水(360g×2回)の順に洗浄、各水層は酢酸エチル(400ml)で再抽出し、有機層を合併した。この有機層を減圧下、溶媒留去して740gまで濃縮した後、メタノール(222.5ml)とTCE種晶を加えて25℃で65分間晶析、さらにメタノール(1157ml)を加えて室温下、60分間晶析した。得られた結晶を濾過し、乾燥してTCE 142.18gを得た(収率:95.9%)。
【0149】
この結晶について、RINT1100を用いて実施例4に記載のものと同一の条件で粉末X線回折構造解析を行ったところ、図7のようなピークを示す結果を得た。上段は、粉末X線回折解析の生データを示し、下段は各ピークの位置および大きさを示す。さらに、各ピークについて数値化したものを図8に示す。
【0150】
(直接晶析法)
SPL/酢酸エチル溶液(11.7g、ATS 5.60g相当)にエノールホスフェート(5.0g)、アセトニトリル(20ml)を加えて氷冷し、さらにジイソプロピルエチルアミン(1.52g)を加えて5℃以下で1晩反応させた。この反応液に、2℃以下を維持しながらメタノール(60ml)とTCE種晶を加えて0〜2℃で1時間晶析した後、結晶を濾過し、乾燥してTCE 4.42gを得た(収率:71.5%)。
【0151】
この結晶について、RINT1100を用いて実施例4に記載のものと同一の条件で粉末X線回折構造解析を行ったところ、図9のようなピークを示す結果を得た。上段は、粉末X線回折解析の生データを示し、下段は各ピークの位置および大きさを示す。さらに、各ピークについて数値化したものを図10に示す。
【0152】
(2)(4R,5S,6S)−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−メチル−7−オキソ−3−[[(3S,5S)−5−(スルファモイルアミノメチル)ピロリジン−3−イル]チオ]−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−2−カルボン酸(化合物A)の合成法
TCE(10.0kg)にテトラヒドロフラン(60L)を加えて溶解させ、これにイオン交換水(40kg)、10%Pd−C(5.0kg)および塩化マグネシウム・6水和物(1.4kg)を加えた後、水素ガスを導入して0.5MPaに加圧下、26〜38℃で2時間攪拌した。反応液を濾過し、Pd−Cをテトラヒドロフラン(18L)−イオン交換水(12L)の混合液で洗浄してろ液に合併、これに塩化マグネシウム・6水和物(0.7kg)を加えて溶解させ、さらにテトラヒドロフラン(300L)を加えて26±2℃で下層を分液した。得られた下層を0±5℃に冷却した後、メタノール(40L)と化合物Aの種晶(10g)を加えて化合物Aを晶析させた。一方、分液後の上層に塩化マグネシウム・6水和物(0.7kg)を加えて下層を分液する操作をさらに2回繰り返し、得られた下層は順次、化合物Aのスラリーに合併した。これにさらにメタノール(75L)を流入し、0±5℃で1時間、さらに−10±5℃で1時間晶析熟成させた後、結晶を濾過、乾燥して粗化合物A 3.84kgを得た(収率:67.1%)。
【0153】
(3)化合物Aの精製
イオン交換水(66.0kg)に粗化合物A(3.30kg)を加えて約55℃に加温溶解し、50℃以上を維持しながらこの溶液を活性炭素(0.10kg)でプレコートした濾過機、0.2μのメンブレンフィルター、限外濾過膜および無菌濾過フィルターの順に通して濾過した。濾過液を24〜18℃に冷却後、30分攪拌して結晶を析出させ、さらに2±3℃に冷却して2時間熟成した。これに無菌濾過フィルターで濾過したイソプロピルアルコール(26.1kg)を1時間20分かけて流入後、−3〜−7℃で4時間、さらに−10〜−13℃で1晩晶析熟成した後、結晶をろ取した。得られた結晶はイソプロピルアルコール(4.17kg)とイオン交換水(1.32kg)を混合し、無菌濾過フィルターで濾過した80%イソプロピルアルコール水で洗浄後、60℃で18時間減圧乾燥して化合物A 2.89kgを得た(収率87.5%)。
スキーム8
【0154】
【化67】


して約2.5gまで濃縮してTCE/酢酸エチル溶液を得た。この溶液を0℃に冷却し、ジメチルホルムアミド(2ml)およびメタノール(10ml)を加(実施例9:アモルファスTCEの合成)
(1)4−ニトロベンジル(2S,4S)−4−メルカプト−2−スルファモイルアミノエチルピロリジン−1−カルボキシレート(チオールピロリジン、SPL)の合成
アセチルチオスルファミド(33.6kg)にメタノール(140.0kg)および98%精製硫酸(15.8kg)を加えて65±5℃で2.0±0.5時間攪拌した。反応液を減圧下、溶媒留去して約110Lにまで濃縮した。濃縮液を酢酸エチル(225kg)と水(250kg)との混合液に流入して抽出し、有機層を5%食塩水(175kg)で3回洗浄、各水層を酢酸エチル(90kg)で再抽出し、有機層を合併した。この有機層を減圧下、溶媒留去して約70kgまで濃縮し、さらに酢酸エチル(180kg)を加えて減圧下、再び溶媒留去して約70kgまで濃縮してSPL/酢酸エチル溶液を得た。
【0155】
(2)4−ニトロベンジル(4R,5S,6S)−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−メチル−3−[[(3S,5S)−1−(4−ニトロベンジルオキシカルボニル)−5−(スルファモイルアミノエチル)ピロリジン−3−イル]チオ]−7−オキソ−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−2−カルボキシレート(チオピロリジンカルバペネムエステル、TCE)の合成
SPL/酢酸エチル溶液(約70kg)にエノールホスフェート(30.0kg)、ジメチルホルムアミド(143kg)を加えて0±5℃に冷却し、さらにジイソプロピルエチルアミン(9.1kg)を加えて0±5℃で18±4時間攪拌した。この反応液に酢酸エチル(200kg)および水(225kg)を流入して抽出し、有機層を0.7%塩酸水(153kg)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(63kg)、5%食塩水(90kg×2回)の順に洗浄、各水層を酢酸エチル(90kg)で再抽出し、有機層を合併した。この有機層を減圧下、溶媒留去して約104Lまで濃縮し、さらに酢酸エチル(180kg)を加えて減圧下、溶媒留去して約104Lまで濃縮し、さらに酢酸エチル(180kg)を加えて減圧下、溶媒留去して約155Lにまで濃縮した。このTCE/酢酸エチル溶液をトルエン(365kg)に約30分かけて流入し、得られたTCEスラリーをろ過、乾燥してTCEを淡黄色粉末として36.6kg得た(収率:98.7%)。
【0156】
(実施例10)
(ELP−PNBを単離しないTCEの合成)
(1)4−ニトロベンジル(2S,4S)−4−メルカプト−2−スルファモイルアミノメチルピロリジン−1−カルボキシレート(チオールピロリジン、SPL)の合成法
アセチルチオスルファミド(1.08g)にメタノール(5.4ml)および濃硫酸(0.20g)を加えて65±5℃で7時間攪拌した。反応液を25℃以下に冷却した後、酢酸エチル(8.2ml)と水(8ml)の混合液に流入して抽出、有機層は5%食塩水(5.5ml)で3回洗浄、各水層は酢酸エチル(3.3ml)で再抽出し、有機層を合併した。この有機層を減圧下、溶媒留去した後、さらに酢酸エチル(5ml)を加えて減圧下、再び溶媒留去して約2.2gまで濃縮してSPL/酢酸エチル溶液を得た。
【0157】
(2)4−ニトロベンジル(4R,5S,6S)−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−メチル−3−[[(3S,5S)−1−(4−ニトロベンジルオキシカルボニル)−5−(スルファモイルアミノメチル)ピロリジン−3−イル]チオ]−7−オキソ−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−2−カルボキシレート(チオピロリジンカルバペネムエステル、TCE)の合成
(A)アセトニトリル法
ケトン体(609mg)にアセトニトリル(2.4ml)を加えて−30℃に冷却し、ジフェニルホスホロクロリデート(0.43g)およびジイソプロピルエチルアミン(0.22g)を加え、0℃で2時間攪拌した後、ジメチルホルムアミド(3ml)およびSPL/酢酸エチル溶液(約2.2g)、ジイソプロピルエチルアミン(0.26g)を加えて5℃以下で16時間攪拌した。反応液は酢酸エチル(13ml)と5%食塩水(6.1ml)の混合液に流入して分液し、有機層は5%食塩水(6.1ml)で2回洗浄、各水層は酢酸エチル(13ml)で再抽出し、有機層を合併した。この有機層を減圧下、溶媒留去した後、さらに酢酸エチル(6ml)を加えて減圧下、再び溶媒留去して約2.5gまで濃縮してTCE/酢酸エチル溶液を得た。この溶液を0℃に冷却し、ジメチルホルムアミド(2ml)およびメタノール(15ml)を加えた後、TCE種晶(10mg)を加え、0±5℃で1時間、−10±5℃で4時間晶析した後、結晶をろ過、乾燥してTCE 807mgを得た(収率:70.5%)。
【0158】
(B)ジメチルホルムアミド法
ケトン体(609mg)にジメチルホルムアミド(3ml)を加えて−30℃に冷却し、ジフェニルホスホロクロリデート(0.43g)およびジイソプロピルエチルアミン(0.22g)を加え、0℃で2時間攪拌した後、SPL/酢酸エチル溶液(約2.2g)と混合し、さらにジイソプロピルエチルアミン(0.26g)を加えて5℃以下で16時間攪拌した。反応液は酢酸エチル(13ml)と水(6.1ml)の混合液に流入して分液し、有機層は5%食塩水(6.1ml)で2回洗浄、各水層は酢酸エチル(13ml)で再抽出し、有機層を合併した。この有機層を減圧下、溶媒留去した後、さらに酢酸エチル(6ml)を加えて減圧下、再び溶媒留去えた後、TCE種晶(10mg)を加え、0±5℃で1時間、−10±5℃で3時間晶析した後、結晶をろ過、乾燥してTCE 910mgを得た(収率:73.7%)。
スキーム9
【0159】
【化68】


(実施例11:アセチルチオピロリジン(ATP)の合成法)
(MPRM(メシル体(2))の直接合成法)
A)塩化チオニル法
メタノール(50ml)にL−ヒドロキシプロリン(10.0g)を加えて冷却し、塩化チオニル(9.98g)を0〜10℃で滴下した後、40℃で2時間攪拌した。反応液を冷却後、48%水酸化ナトリウム水溶液(6.99g)を0〜10℃で滴下した。冷水道水(30ml)を加えて冷却し、炭酸カリウム(15.81g)を0〜20℃で発泡に注意しながら加えた。再び冷却後、53%PNZ−Clトルエン溶液(31.02g)を0〜5℃で滴下し、0〜5℃で1時間攪拌した。反応液を濃縮後、酢酸エチル(100ml)、水道水(60ml)を加えて分液し、有機層を濃縮した。濃縮液にトルエン(100ml)を加えて濃縮した後、再度トルエン(100ml)を加え、10〜20℃でトリエチルアミン(9.26g)を加えた。塩化メタンスルホニル(9.61g)を12〜32℃で滴下した後、水道水(60ml)を加えて晶析後、ろ過、乾燥してMPRMを結晶として27.8g得た(収率:90.6%)。
B)オキシ塩化リン法
メタノール(50ml)にL−ヒドロキシプロリン(10.0g)を加えて冷却し、オキシ塩化リン(5.85g)を0〜20℃で滴下した後60℃で2時間攪拌した。反応液を冷却後、48%水酸化ナトリウム水溶液(3.18g)を0〜10℃で滴下した。冷水道水(40ml)を加えて冷却し、炭酸カリウム(15.81g)を0〜20℃で発泡に注意しながら加えた。再び冷却後、53%PNZ−Clトルエン溶液(31.02g)を0〜5℃で滴下し、0〜5℃で1時間攪拌した。反応液を濃縮後、酢酸エチル(100ml)、水道水(50ml)を加えて分液し、有機層を濃縮した。濃縮液にトルエン(100ml)を加えて濃縮した後、再度トルエン(100ml)を加え、10〜20℃でトリエチルアミン(9.26g)を加えた。塩化メタンスルホニル(9.61g)を10〜30℃で滴下した後、水道水(60ml)を加えて晶析後、ろ過、乾燥してMPRMを結晶として26.1g得た(収率:85.0%)。
C)塩酸ガス法
12.5%メタノール−塩酸ガス溶液(38.9g)にL−ヒドロキシプロリン(5.0g)を0〜20℃で加え、室温(25±5℃)で3時間攪拌した。反応液を冷却後、48%水酸化ナトリウム水溶液(7.33g)を0〜10℃で滴下した。約30mlまで濃縮後、冷水道水(40ml)を加えて冷却し、炭酸カリウム(8.43g)を0〜20℃で発泡に注意しながら加えた。再び冷却後、53%PNZ−Clトルエン溶液(31.02g)を0〜5℃で滴下し、0〜5℃で1時間攪拌した。反応液を濃縮後、酢酸エチル(50ml)、水道水(30ml)を加えて分液し、有機層を濃縮した。濃縮液にトルエン(50ml)を加えて濃縮した後、再度トルエン(50ml)を加え、10〜20℃でトリエチルアミン(4.63g)を加えた。塩化メタンスルホニル(4.80g)を10〜30℃で滴下した後、水道水(30ml)を加えて晶析後、ろ過、乾燥してMPRMを結晶として13.2g得た(収率:85.9%)。
D)合成塩酸(35%塩酸)法
メタノール(50ml)にL−ヒドロキシプロリン(10.0g)を加え、合成塩酸(10.8g)を流入し60℃で8時間攪拌後、室温(25±5℃)で一晩(約15時間)放置した。反応液を冷却後、48%水酸化ナトリウム水溶液(3.14g)を0〜10℃で滴下した。冷水道水(30ml)を加えて冷却し、炭酸カリウム(15.81g)を0〜20℃で発泡に注意しながら加えた。再び冷却後、53%PNZ−Clトルエン溶液(31.02g)を0〜5℃で滴下し、0〜5℃で1時間攪拌した。反応液を濃縮後、酢酸エチル(100ml)、水道水(60ml)を加えて分液した。(有機層定量生成率:95%)
(スキーム10)
【0160】
【化69】


(アセチルチオピロリジン(ATP)の合成法)
A)ATP抽出省略法
メシル体(2)(27.55g)に酢酸エチル(120ml)およびメタノール(16.5ml)を加え、34℃に加温して溶解させた後冷却した。0〜5℃でNaBH4(1
3.2g)を2時間かけて加え、さらに0〜5℃で3時間攪拌した。反応液を5%硫酸水(138ml)に流入して抽出、有機層を5%食塩水(55ml)で2回洗浄した後、濃縮した。濃縮液ににチオ酢酸カリウム(10.17g)、ジメチルホルムアミド(50ml)および酢酸エチル(66ml)を加えた後、65±5℃に昇温し、8時間攪拌した。反応液を30℃以下に冷却し、水道水(44ml)および5%硫酸水溶液(11ml)を加え、溶媒留去して晶析後、ろ過、乾燥してATPを結晶として18.4g得た(収率:75.8%)。
【0161】
B)ATP抽出法
メシル体(2)(5.00g)に酢酸エチル(20ml)およびメタノール(3ml)を加え、36℃に加温して溶解させた後冷却した。0〜5℃でNaBH4(0.94g)
の酢酸エチル(5ml)懸濁液を2時間かけて加え、さらに0〜5℃で4時間攪拌した。反応液を5%硫酸水(25ml)に流入して抽出、有機層を水道水(5ml)で2回洗浄した後、濃縮した。濃縮液ににチオ酢酸カリウム(1.84g)、ジメチルホルムアミド(9ml)および酢酸エチル(13.5ml)を加えた後、65±5℃に昇温し、10時間攪拌した。反応液を30℃以下に冷却し、水道水(9ml)および酢酸エチル(9ml)を加えて抽出、有機層は1%硫酸水溶液(9ml)、水道水(9ml)の順に洗浄、各水層は酢酸エチル(4.5ml)で再抽出した。酢酸エチル層を合併し、濃縮した後、トルエン(25ml)を加えて濃縮した。得られたスラリーを晶析後ろ過、乾燥してATPを結晶として3.35g得た(収率:76.1%)。
(スキーム11)
【0162】
【化70】


(実施例12:アセチルチオスルファミド(ATS)の合成法)
ATP(10.0g)にトリフェニルホスフィン(9.03g)、BSA(7.48g)および酢酸エチル(60mL)を加えてスラリー化した後、20℃以下でジイソプロピルアゾジカルボン酸(DIAD)(68.3g)/酢酸エチル(10mL)を1時間で滴下した。18〜21℃で7時間攪拌した後46.6gまで濃縮、イソプロピルアルコール(IPA)(50mL)を加えて48.5gまで濃縮、再度IPA(50mL)を加えて48.2gまで濃縮した。再度IPA(50mL)を加え66.7gまで濃縮した。この溶液を65℃に加熱し水(7.5g)を加えた後、50℃で2時間攪拌して晶析、次に50℃から25℃まで2.5 時間かけて徐冷晶析、最後に25℃で2時間攪拌して結晶をろ過、乾燥してATS 11.05gを得た(収率:73.5%)。
【0163】
実施例11および12に従って、L−ヒドロキシプロリンを出発物質としてATSを合成した場合、実施例2および4〜6に従って合成した場合と比較して、単離回数は5回から3回に削減され、抽出回数は19回から4回に削減され、そして概算製造日数は536日から160日短縮されて、生産性が526/160=3.3倍に向上した。
【0164】
(実施例13:PNZ−プロリン(PPR)の直接晶析法による合成)
水(50ml)に炭酸カリウム(18.97g)を溶解させた後氷冷し、これにL−ヒドロキシプロリン(10.0g)を加えて溶解させ、53%PNZ−Clトルエン溶液(31.02g)を2〜8℃で滴下した後2℃で1時間攪拌した。反応液からトルエン層を分液後、水層に36%塩酸を15.40g加え10℃で30分攪拌した。晶析を確認後、36%塩酸4.60gを加え5℃で1時間攪拌した後、結晶をろ過、乾燥してPPR1水和物 23.76gを得た(収率:94.9%)。
(スキーム12)
【0165】
【化71】


(実施例14:メシルプロリンメチルエステル(MPRM)の合成(直接晶析法))
PPR1水和物(10.00g)をメタノール(50ml)に溶解させた後、濃硫酸(598mg)を加えた。60℃に加温後7時間攪拌した。10℃以下に冷却してpH約5まで中和した後、16.6gまで濃縮した。酢酸エチル(50ml)、10%NaCl(50ml)に反応液を加え分液操作により水層を除去後、酢酸エチル層を20.7gまで減圧濃縮した。トルエンに溶媒置換した後、トリエチルアミン(3.70g)を10℃以下で加えた。25℃に温調後、塩化メタンスルホニル(3.83g)を10分間で滴下した後、水を加えて晶析後、ろ過、乾燥してMPRMを結晶として11.23g得た(収率91.6%)。
(スキーム13)
【0166】
【化72】


(実施例15:アセチルチオピロリジン、ATP)の合成法(MPRM非単離法)
PPR1水和物(10.00g)をメタノール(50ml)に溶解させた後、濃硫酸(598mg)を加えた。60℃に加温後7時間攪拌した。10℃以下に冷却してpH約5まで中和した後、17.8gまで濃縮した。酢酸エチル(50ml)、10%NaCl(50ml)に反応液を加え分液操作により水層を除去後、酢酸エチル層を脱水濃縮した。PNZ−プロリンメチルエステル(PPRM)酢酸エチル溶液を氷冷した後、塩化メタンスルホニル(3.83g)、トリエチルアミン(3.70g)を加えた。反応終了後、酸洗浄、水洗を行い酢酸エチル層を脱水濃縮した。濃縮液(14.5g)に酢酸エチル(48ml)、メタノール(7.5ml)を加え、氷冷後、NaBH4を30分間隔で5分割
(計2.31g)して加えた。1時間攪拌後、5%硫酸洗浄、水洗を行い酢酸エチル層を減圧濃縮(11.8g)した。濃縮液にDMF(23ml)、酢酸エチル(34ml)、AcSK(4.52g)を加え65℃に加温して7時間熟成した。40℃以下に冷却後、1%硫酸(24ml)を加え減圧濃縮(60.0gまで)を行った。室温に冷却後、1.5時間晶析を行い、ATPを7.62g得た。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】図1は、PLMの粉末X線回折解析図の一例である。上段において、粉末X線回折解析の生データを示し、下段において、各ピークの位置および大きさを示す。縦軸は、cps(counts per second、計数率)を表し、横軸は、2θ(回折角)を表す。
【図2】図2は、図1の解析図の各ピークについて数値化した結果である。
【図3】図3は、ATPの粉末X線回折解析図の一例である。上段において、粉末X線回折解析の生データを示し、下段において、各ピークの位置および大きさを示す。縦軸は、cpsを表し、横軸は、2θを表す。
【図4】図4は、図3の解析図の各ピークについて数値化した結果である。
【図5】図5は、ATSの粉末X線回折解析図の一例である。上段において、粉末X線回折解析の生データを示し、下段において、各ピークの位置および大きさを示す。縦軸は、cpsを表し、横軸は、2θを表す。
【図6】図6は、図5の解析図の各ピークについて数値化した結果である。
【図7】図7は、抽出法によって単離されたTCEの粉末X線回折解析図の一例である。上段において、粉末X線回折解析の生データを示し、下段において、各ピークの位置および大きさを示す。縦軸は、cpsを表し、横軸は、2θを表す。
【図8】図8は、図7の解析図の各ピークについて数値化した結果である。
【図9】図9は、直接晶析法によって単離されたTCEの粉末X線回折解析図の一例である。上段において、粉末X線回折解析の生データを示し、下段において、各ピークの位置および大きさを示す。縦軸は、cpsを表し、横軸は、2θを表す。
【図10】図10は、図9の解析図の各ピークについて数値化した結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末X線回折解析において、2θ値が6.920±0.100、7.000±0.100、11.700±0.100および20.140±0.100に主なピークを示す、ATS
【化19】

(式中、Acはアセチルであり、Bocは、tert−ブトキシカルボニルであり、PNZは、4−ニトロベンジルオキシカルボニルである)の結晶。
【請求項2】
以下の4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、アセチルチオ基およびヒドロキシメチル基を含むヘテロ環化合物ATP
【化7】


(式中、AcおよびPNZは前記と同義である)と、Bocスルファミドとを、酢酸エチル中で、トリフェニルホスフィンおよびジイソプロピルアゾジカルボン酸存在下で反応させて、4−ニトロベンジルオキシカルボニル置換された、アセチルチオ基およびスルファモイル−tert−ブトキシカルボキサミドメチル基を含むヘテロ環化合物ATS
【化8】


(式中、Ac、BocおよびPNZは前記と同義である)を得る工程、
を包含する、請求項1に記載の結晶の製造方法
【請求項3】
前記ヘテロ環化合物ATPとBocスルファミドとの反応後、アルコールを加える工程を包含する、請求項2に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−285495(P2008−285495A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173609(P2008−173609)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【分割の表示】特願2002−129301(P2002−129301)の分割
【原出願日】平成14年4月30日(2002.4.30)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【Fターム(参考)】