説明

アセトアミノフェン含有製剤の製造方法及びアセトアミノフェン含有製剤パッケージ

【課題】特段の製造設備を追加することなく、簡便な方法により変色防止が図れるアセトアミノフェン含有製剤の製造方法及びアセトアミノフェン含有製剤パッケージを提供する。
【解決手段】アセトアミノフェン及び制酸剤を含有するアセトアミノフェン含有製剤の製造方法において、酢酸蒸気を含有する酢酸含有気体で、アセトアミノフェン及び制酸剤を含有する粒状物又は成形物を曝露する曝露処理を施す。アセトアミノフェン及び制酸剤を含有する粒状物又は成形物と、酢酸蒸気を含有する酢酸含有気体とを包装体に封入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセトアミノフェン含有製剤の製造方法及びアセトアミノフェン含有製剤パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、医薬品には複数の有効成分が配合される。例えば、主剤として解熱鎮痛成分を配合した内服固形製剤には、解熱鎮痛成分による胃への負担を低減するために制酸剤が配合される場合がある。解熱鎮痛成分としてアセトアミノフェンを選択し制酸剤と共に配合すると、アセトアミノフェンが変色し商品の価値を低下させるという問題がある。この変色は、アセトアミノフェンと制酸剤とを含有する内服固形製剤(アセトアミノフェン含有製剤)の製造工程中にも生じることがある。
【0003】
従来、このような変色の問題に対して、アセトアミノフェンと制酸剤との接触を避けることで、製剤の変色防止を図ったアセトアミノフェン含有製剤の製造方法が提案されている。例えば、特許文献1には、アセトアミノフェン又は制酸剤を被覆剤で被覆造粒する製剤の製造方法が開示されている。また、特許文献2には、制酸剤を主体とする層以外の層にアセトアミノフェンが含まれる積層錠の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−286614号公報
【特許文献2】特開平5−294829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、アセトアミノフェン又は制酸剤を被覆剤で被覆するため、被覆剤の分だけ服用量が増大すると共に、製造プロセスの複雑化、コストアップ等の問題がある。加えて、有効成分は、服用後、短時間で効果が発揮されること(速効性)が求められるが、被覆造粒した場合、有効成分の溶出が遅くなり、速効性を損なうおそれがある。
また、特許文献2の技術では、積層錠とするための特殊な製造設備を必要とする上、組成によっては層間の剥離等の問題を生じることがある。
さらに、上述の技術によるアセトアミノフェンの変色抑制効果は、未だ十分に満足できるものではなく、より確実に変色を抑制できる技術の開発が望まれている。
そこで、本発明は、特段の製造設備を追加することなく、簡便な方法によりアセトアミノフェンの変色防止が図れるアセトアミノフェン含有製剤の製造方法及びアセトアミノフェン含有製剤パッケージを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のアセトアミノフェン含有製剤の製造方法は、アセトアミノフェン及び制酸剤を含有するアセトアミノフェン含有製剤の製造方法において、酢酸蒸気を含有する酢酸含有気体で、アセトアミノフェン及び制酸剤を含有する粒状物又は成形物を曝露する曝露処理を施すことを特徴とする。前記曝露処理は、前記粒状物又は前記成形物を容器に充填すると共に、前記容器中に前記酢酸含有気体を封入してもよく、前記粒状物を前記酢酸含有気体で曝露した後に打錠成形してもよい。
【0007】
本発明のアセトアミノフェン含有製剤パッケージは、本発明の前記アセトアミノフェン含有製剤を包装体に封入してなることを特徴とする。さらに、前記酢酸含有気体を包装体に封入することが好ましい。
本発明のアセトアミノフェン含有製剤パッケージは、アセトアミノフェン及び制酸剤を含有する粒状物又は成形物と、酢酸蒸気を含有する酢酸含有気体とを包装体に封入してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特段の製造設備を追加することなく、簡便な方法により、アセトアミノフェンの変色防止が図れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(アセトアミノフェン含有製剤)
本発明のアセトアミノフェン含有製剤は、アセトアミノフェンと制酸剤とを含有するものである。
アセトアミノフェン含有製剤の剤形は、固形であり、例えば、粉体、顆粒、造粒物等の粒状製剤、口腔内崩壊錠、チュアブル錠等の錠剤、カプセル製剤等が挙げられる。
なお、打錠成形された錠剤は、アセトアミノフェンの変色がより促進されることから、錠剤において本発明の効果が顕著に現れる。錠剤においてアセトアミノフェンの変色が促進される要因は定かではないが、アセトアミノフェンと制酸剤との接触面積が大きくなるためと推測される。
アセトアミノフェン(N−(4−ヒドロキシフェニル)アセトアミド)は、別名パラセタモールとも呼ばれ、日本薬局方に収載されている解熱鎮痛成分である。
アセトアミノフェン含有製剤中のアセトアミノフェンの配合量は、アセトアミノフェン含有製剤の用途、経口投与量等を勘案して決定でき、例えば、1〜99質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましく、20〜60質量%がさらに好ましい。上記範囲であれば、他の配合成分とのバランスを取りつつ、アセトアミノフェンの薬効が充分に発揮できる。
【0010】
制酸剤は、従来公知のものを用いることができ、例えば、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸カルシウム・炭酸マグネシウムの共沈生成物、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、アルミニウムグリシネート等が挙げられ、中でも、本発明の効果が顕著に発揮される乾燥水酸化アルミニウムゲルが好ましい。アセトアミノフェンの変色は、制酸剤のpHが高いほど促進され、アセトアミノフェン含有製剤中の水分含量が多いほど促進される傾向にある。乾燥水酸化アルミニウムゲルは、そのpHと水分含量とのバランスがよく、アセトアミノフェンの変色の進行が比較的穏やかなため、本発明の効果が顕著に発揮される。本発明においては、これらの制酸剤を1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0011】
アセトアミノフェン含有製剤中の制酸剤の配合量は、アセトアミノフェンの配合量を勘案して決定でき、例えば、アセトアミノフェン1質量部に対し0.01〜100質量部が好ましく、0.05〜10質量部がより好ましく、0.1〜5質量部がさらに好ましい。0.01質量部未満であると、アセトアミノフェンの変色が生じにくく、100質量部超であるとアセトアミノフェン含有製剤中のアセトアミノフェンの含有量が少なすぎて、アセトアミノフェンの変色が認識されにくい。
【0012】
アセトアミノフェン含有製剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、アセトアミノフェン及び制酸剤以外の有効成分(任意有効成分)を配合することができる。任意有効成分としては、例えば、アスピリン、イブプロフェン等のアセトアミノフェンを除く解熱鎮痛成分、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素等の鎮静催眠剤、塩酸イソチベンジル、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸メトジラジン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、酒石酸アリメマジン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、d−マレイン酸クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン剤、カフェイン、無水カフェイン等の中枢興奮剤、ビタミンB1もしくはその誘導体又はこれらの塩類、ビタミンB2もしくはその誘導体又はこれらの塩類、ビタミンCもしくはその誘導体又はそれらの塩類等が挙げられる。これらの任意有効成分は、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
アセトアミノフェン含有製剤中の任意有効成分の配合量は、アセトアミノフェン含有製剤の用途等を勘案して決定でき、例えば、0.01〜90質量%が好ましく、0.01〜70質量%がより好ましい。
【0013】
さらに、本発明のアセトアミノフェン含有製剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として乳糖、デンプン、ショ糖、マンニトール、結晶セルロース等の賦形剤;ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アラビアゴム、α化デンプン(部分α化デンプン・PCS:旭化成工業株式会社製)等の結合剤;カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン又はその架橋体、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、α化デンプン(部分α化デンプン・PCS:旭化成工業株式会社製)、クロスカルメロースナトリウム等の崩壊剤;ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ジメチルポリシロキサン、タルク、ポリエチレングリコール、硬化油等の滑沢剤、着色剤、甘味剤等を配合することができる。アセトアミノフェン含有製剤中の任意成分の配合量は、アセトアミノフェン含有製剤の剤形等に応じて決定できる。
【0014】
アセトアミノフェン含有製剤の水分含量は、特に限定されないが、例えば、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。水分含量が少ないほど、アセトアミノフェンの変色が生じにくいためである。
【0015】
本発明のアセトアミノフェン含有製剤の製造方法は、酢酸蒸気を含有する酢酸含有気体で、アセトアミノフェン及び制酸剤を含有する粒状物又は成形物を曝露する曝露処理を施すものである。
【0016】
アセトアミノフェン含有製剤の製造方法は、例えば、アセトアミノフェンと制酸剤とを混合して粒状物を得(第一工程)、得られた粒状物を打錠成形して成形物(錠剤)を得る(第二工程)ものが挙げられる。本発明は、さらに、粒状物又は成形物に曝露処理を施すことにより、アセトアミノフェン含有製剤を製造するものである。
【0017】
第一工程は、アセトアミノフェン及び制酸剤を含む粒状物を得る工程である。粒状物は、アセトアミノフェンと制酸剤との粉体混合物や、該粉体混合物に賦形剤や結合剤等を加えて造粒した造粒物等、一般に粉体、顆粒、造粒物と呼ばれるものを含む概念である。
前記粒状物の内、粉体混合物は、ボーレコンテナミキサー20L型(コトブキ技研工業株式会社製)等の混合容器、粉体混合ミキサー等、公知の粉体混合装置を用いて調製できる。また、造粒物は、攪拌造粒装置、転動造粒装置等、公知の造粒装置を用いて調製できる。
【0018】
第二工程は、第一工程で得られた粒状物に、必要に応じて賦形剤、結合剤、崩壊剤等を加えて打錠成形した口腔内崩壊錠、チュアブル錠等の成形物(錠剤)を得る工程である。錠剤は、従来公知の打錠装置を用いて得ることができる。
【0019】
曝露処理は、前記第一工程で得られた粒状物に対して施してもよいし、前記第二工程で得られた錠剤に対して施してもよいし、粒状物及び錠剤の両方に対して施してもよい。また、前記第一工程で、アセトアミノフェンと制酸剤とを酢酸含有気体で曝露しながら混合してもよい。
【0020】
曝露処理は、アセトアミノフェン及び制酸剤を酢酸含有気体で曝露できればよく、例えば、アセトアミノフェン及び制酸剤を容器に充填すると共に、予め調製した酢酸含有気体を前記容器に封入し、該容器を密閉して行うことができる。曝露処理に用いる容器としては、クラフトライナー製の蓋付き容器であるX型ファイバードラム、ガラス製、ステンレス鋼製等の蓋付き容器等が挙げられる。
また、例えば、粉体混合に用いる混合容器にアセトアミノフェン及び制酸剤を入れ、予め調製した酢酸含有気体を前記混合容器内に吹き込みながらアセトアミノフェン及び制酸剤を攪拌混合することで、曝露処理を行うことができる。
あるいは、カーゼ等の織物繊維、不織布、脱脂綿、多孔質体等の保水性を有する基材に酢酸を含浸させて酢酸含浸体とし、該酢酸含浸体をアセトアミノフェン及び制酸剤と共に容器中に密封することで、曝露処理を行ってもよい。この方法によれば、酢酸含浸体から揮発した酢酸蒸気が容器内の空気中に分散し、容器内の空気が酢酸含有気体となる。そして、容器内の酢酸含有気体により、アセトアミノフェン及び制酸剤に曝露処理を施すことができる。
また、あるいは、分解反応により酢酸を生成する化合物をアセトアミノフェン及び制酸剤と共に容器中に密封し、加湿及び加温を行うことで、曝露処理を施すことができる。分解反応により酢酸を生成する化合物としては、アスピリン等が挙げられる。例えば、アスピリンを用いて曝露処理を行う場合には、任意有効成分として配合するものとは別にアスピリンを添加し、加湿及び加温を行う。例えば、加湿は60〜90%RH程度とされ、加温は35〜60℃程度とされる。
【0021】
酢酸含有気体は、揮発した酢酸(酢酸蒸気)が気体中に分散したものである。酢酸蒸気を分散させる気体は、特に限定されないが、例えば、アルゴン、窒素等の不活性ガス、空気等が挙げられる。中でも、取り扱い及び経済的な優位性から、空気を用いることが好ましい。
酢酸含有気体中の酢酸濃度は、例えば、1mg/L以上が好ましく、2.5mg/L以上2000mg/L未満がより好ましく、5〜1000mg/Lがさらに好ましい。1mg/L以上であれば、アセトアミノフェンの変色防止効果がより向上する。2000mg/L未満であれば、アセトアミノフェン含有製剤が膨潤したり、アセトアミノフェン含有製剤同士が付着したりすることを防止できる。
【0022】
アセトアミノフェンは、制酸剤を構成するアルミニウムやマグネシウム等の金属類と配合変化し、変色を生じるものと推測される。
本発明によれば、アセトアミノフェン及び制酸剤を酢酸含有気体で曝露することで、アセトアミノフェンと制酸剤との接触によるアセトアミノフェンの変色を防止できる。従って、アセトアミノフェン含有製剤の製造工程中で、アセトアミノフェン及び制酸剤を含有する粒状物又は成形物を保管する際にも、アセトアミノフェンが変色することを防止できる。さらに、曝露処理が施され、酢酸含有気体の曝露下から開放された後においても、アセトアミノフェンの変色の進行が抑制され、変色防止が図られたアセトアミノフェン含有製剤を得ることができる。
本発明では、アセトアミノフェン又は制酸剤を被覆したり、多層錠に成形する必要がなく、アセトアミノフェン及び制酸剤を含有する粒状物又は成形物を酢酸含有気体で曝露するという簡便な方法で、アセトアミノフェンの変色を防止できる。
【0023】
(アセトアミノフェン含有製剤パッケージ)
本発明のアセトアミノフェン含有製剤パッケージは、アセトアミノフェン含有製剤が包装体に封入されたものである。
アセトアミノフェン含有製剤パッケージ品は、例えば、PTP(Press Through Package)包装品、SP(Strip Package)包装品、瓶詰品等の容器入り品等、密封可能な包装体により包装されたものが挙げられる。
【0024】
PTP包装品は、凹状の収容部が形成された容器フィルムと、前記収容部の開口部を密閉するように容器フィルムに固着されたカバーフィルムとで包装体が構成され、前記収容部にアセトアミノフェン含有製剤が封入されたものである。前記容器フィルムの材質は、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられ、中でも、ポリ塩化ビニルが好ましい。このような材質を用いることで、酢酸蒸気が包装体外に放散することを抑制できると共に、酢酸による容器フィルムの劣化を防止できる。前記カバーフィルムの材質は、アルミニウムフィルムが好ましい。このような材質を用いることで、酢酸蒸気が包装体外に放散することを抑制できると共に、酢酸によるカバーフィルムの劣化を防止できる。
【0025】
PTP包装品のアセトアミノフェン含有製剤パッケージは、例えば、次のように製造できる。
まず、アセトアミノフェン含有製剤を得る。容器フィルムに形成された収容部にアセトアミノフェン含有製剤を入れ、該収容部に酢酸含有気体を送り込みながら収容部の開口部を覆うようにして容器フィルムにカバーフィルムを重ねる。そして、容器フィルムとカバーフィルムとをヒートシールして、PTP包装品のアセトアミノフェン含有製剤パッケージを得ることができる。
【0026】
アセトアミノフェン含有製剤は、曝露処理を施したものであってもよいし、曝露処理を施していないものであってもよい。
【0027】
収容部に送り込む酢酸含有気体中の酢酸濃度は、得られるアセトアミノフェン含有製剤パッケージの収容部内の酢酸濃度を勘案して決定できる。例えば、収容部内の酢酸濃度が好ましくは1mg/L以上、より好ましくは2.5mg/L以上2000mg/L未満、さらに好ましくは5〜1000mg/Lとなるように調整する。
【0028】
SP包装品は、対向するフィルムの間にアセトアミノフェン含有製剤が挟み込まれるように封入されたものである。SP包装品のフィルムの材質は、例えば、アルミニウムフィルム、ポリ塩化ビニル等が挙げられ、中でも、アルミニウムフィルムが好ましい。このような材質を用いることで、酢酸蒸気が包装体外に放散することを抑制できると共に、酢酸による包装体の劣化を防止できる。
【0029】
SP包装品のアセトアミノフェン含有製剤パッケージは、例えば、次のように製造できる。
まず、アセトアミノフェン含有製剤を得、得られたアセトアミノフェン含有製剤を対向する一対のフィルムの間に供給する。次いで、酢酸含有気体を前記一対のフィルムの間に供給しながら、前記一対のフィルムの四方をヒートシールすることで、SP包装品のアセトアミノフェン含有製剤パッケージを得ることができる。
【0030】
容器入り品のアセトアミノフェン含有製剤パッケージは、ガラス製、プラスチック製の蓋付き瓶等の密閉可能な容器に、アセトアミノフェン含有製剤と酢酸含有気体とが封入されたものである。
容器入り品のアセトアミノフェン含有製剤パッケージは、例えば、アセトアミノフェン含有製剤と、予め調製した酢酸含有気体とを容器に封入することで製造できる。また、例えば、アセトアミノフェン含有製剤を容器本体に充填し、酢酸含浸体を容器内、例えば蓋の内面等に貼付することで製造できる。
【0031】
こうして得られたアセトアミノフェン含有製剤パッケージは、アセトアミノフェン含有製剤が包装体内で酢酸含有気体により曝露されているため、保管及び流通中のアセトアミノフェンの変色を防止できる。
【0032】
なお、曝露処理が施されたアセトアミノフェン含有製剤を包装体に封入する場合には、包装体に酢酸含有気体を封入しなくてもよい。ただし、アセトアミノフェンの変色を長期に防止する観点から、包装体に酢酸含有気体を封入することが好ましい。
【実施例】
【0033】
(使用原料)
各例に用いた使用原料は以下の通りである。
<アセトアミノフェン>
・アセトアミノフェン:顆粒、岩城製薬株式会社製
<制酸剤>
・乾燥水酸化アルミニウムゲル:乾燥水酸化アルミニウムゲルS100(商品名)、協和化学工業株式会社製
・メタケイ酸アルミン酸マグネシウム:ノイシリンUS2(商品名)、富士化学株式会社製
・酸化マグネシウム:富田製薬株式会社製
・炭酸マグネシウム:富田製薬株式会社製
<任意有効成分>
・無水カフェイン:株式会社静岡カフェイン工業所製
・アリルイソプロピルアセチル尿素:アリプロナール、金剛化学株式会社製
<崩壊剤>
・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース:信越化学工業株式会社製
<滑沢剤>
・ステアリン酸マグネシウム:太平化学産業株式会社製
【0034】
(変色抑制効果の評価方法)
各例のアセトアミノフェン含有製剤について、次のように変色抑制効果を評価した。まず、保管開始時のアセトアミノフェン含有製剤のb*値を分光測色計CM−2022(コニカミノルタセンシング株式会社製、測定条件:*L*a*b系)にて測定し、この値をb*値−Aとした。また、保管後のアセトアミノフェン含有製剤のb*値を測定し、この値をb*値−Bとした。求めた各b*値から下記(1)式によりΔb*値を算出した。
【0035】
Δb*値=[b*値−B]−[b*値−A] ・・・(1)
【0036】
算出したΔb*値を下記基準により分類し、変色抑制効果を評価した。評価が「◎」又は「○」に分類されたものを変色抑制効果があると判断した。
◎:Δb*値が1.0未満(目視では、変色が認められない)
○:Δb*値が1.0以上2.5未満(目視で、わずかに変色が認められる)
×:Δb*値が2.5以上(目視で、明らかに変色が認められる)
【0037】
(外観形状の評価方法)
保管後のアセトアミノフェン含有製剤の外観形状について、下記の評価基準により判定した。
○:保管前後で外観形状の差異が認められない
×:保管後に外観形状の変化が認められる
【0038】
(実施例1〜31)
酢酸を含浸させたガーゼをポリエチレン製袋に入れ、該ポリエチレン製袋を開封した状態で5LのX型ファイバードラム(アルミ蒸着型ファイバードラム、株式会社福井洋樽製作所製)に入れた。その後、該X型ファイバードラムに蓋をし4時間静置して、X型ファイバードラム内に酢酸蒸気を分散させ、X型ファイバードラム内を表1〜3に示す酢酸濃度の酢酸含有気体で満たした。X型ファイバードラム内の酢酸濃度は、ガーゼに含浸させる酢酸の量により調整した。なお、X型ファイバードラム内の酢酸濃度は、検知管(No.81、No.81L、株式会社ガステック製)を用いて測定した。
表1〜3の組成に従い、ボーレコンテナミキサー20L型(コトブキ技研工業株式会社製)を用い、各原料を粉体混合し、粉体のアセトアミノフェン含有製剤6500gを得た。このアセトアミノフェン含有製剤100gをポリエチレン製袋に入れた。該ポリエチレン製袋を開封状態のまま、上記の酢酸蒸気を分散させた前記X型ファイバードラム内に入れ、50℃、2週間保管し、変色抑制効果及び外観形状の評価を行った。その結果を表1〜3に示す。
【0039】
(比較例1〜9、参考例1)
酢酸を含浸させたガーゼをX型ファイバードラムに入れなかった以外は、表3〜4の組成に従い粉体のアセトアミノフェン含有製剤を調製し、実施例1と同様にして変色抑制効果及び外観形状の評価を行い、その結果を表3〜4に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
表1〜3に示す通り、酢酸含有気体の曝露下で保管した実施例1〜31は、いずれも変色抑制効果が「○」又は「◎」であった。一方、表4に示す通り、酢酸含有気体で曝露せずに保管した比較例1〜9は、いずれも変色抑制効果が「×」であった。
これらの結果から、酢酸含有気体の曝露下で保管することで、粉体のアセトアミノフェン含有製剤の変色を防止できることが判った。
【0045】
実施例1〜6と、実施例7〜26との比較において、制酸剤の種類にかかわらず、酢酸濃度を5mg/L以上とすることで、変色抑制効果は「◎」であった。ただし、酢酸濃度を2000mg/Lとした実施例23〜26では、粉体同士の付着が見られた。
【0046】
表3の実施例27〜31に示すように、酢酸濃度1000mg/Lで曝露処理を施した場合、制酸剤/アセトアミノフェンで表される質量比が、0.05〜10の範囲で、変色抑制効果が認められた。
【0047】
(実施例32〜35)
表5に示す組成Aに従い、ボーレコンテナミキサーを用いて各原料を混合して粉体混合物を得、得られた粉体混合物を打錠機にて、φ10.5mm、厚さ5.8mm、550mgの円盤状に成形し、錠剤のアセトアミノフェン含有製剤を得た。このアセトアミノフェン含有製剤100gについて、実施例1と同様にしてX型ファイバードラム内で保管し、変色抑制効果及び外観形状の評価を行い、その結果を表6に示す。
【0048】
(比較例10)
酢酸を含浸させたガーゼをX型ファイバードラムに入れなかった以外は、実施例32と同様にして変色抑制効果及び外観形状の評価を行い、その結果を表6に示す。
【0049】
【表5】

【0050】
【表6】

【0051】
表6に示す通り、酢酸含有気体の曝露下で保管した実施例32〜35は、いずれも変色抑制効果が「○」又は「◎」であった。一方、酢酸含有気体で曝露せずに保管した比較例10は、変色抑制効果が「×」であった。
これらの結果から、酢酸含有気体の曝露下で保管することで、錠剤のアセトアミノフェン含有製剤の変色を防止できることが判った。
加えて、酢酸濃度を2.5mg/L以上とした実施例33〜35は、酢酸濃度を1mg/Lとした実施例32よりも変色抑制効果が向上していた。なお、酢酸濃度を2000mg/Lとした実施例35は、錠剤が膨潤していた。
【0052】
(実施例36)
混合容器(ボーレコンテナミキサー20L型、コトブキ技研工業株式会社製)内に、酢酸蒸気を分散し、混合容器内を酢酸濃度5mg/Lの酢酸含有気体で満たした。
次いで、表7に示す組成Bに従い、酢酸含有気体で満たされた混合容器内に、各原料を投入し混合して粉体のアセトアミノフェン含有製剤を得た。その後、アセトアミノフェン含有製剤を混合容器内で50℃、2週間保管し、変色抑制効果及び外観形状の評価を行った。その結果を表8に示す。
【0053】
(比較例11)
混合容器内に酢酸蒸気を分散しなかった以外は、実施例36と同様にして変色抑制効果及び外観形状の評価を行い、その結果を表8に示す。
【0054】
【表7】

【0055】
【表8】

【0056】
表8に示す通り、酢酸混合気体で曝露処理を施しながら、アセトアミノフェン含有製剤を調製した実施例36は、変色抑制効果が「◎」であり、粉体同士の付着等も認められなかった。一方、曝露処理を施さなかった比較例11は、変色抑制効果が「×」であった。このことから、本発明は、アセトアミノフェン含有製剤の製造工程中における変色防止に有効であることが判った。
【0057】
(実施例37)
蓋付きのガラス瓶(規格11K、第一硝子株式会社製)の蓋の内面に、酢酸を含浸させた不織布のシート(含浸シート)を貼付したものを用意した。表5に示す組成Aに従い、ボーレコンテナミキサーを用いて各原料を混合して粉体混合物を得、得られた粉体混合物を打錠機にて、φ10.5mm、厚さ5.8mm、550mgの円盤状に成形し、錠剤のアセトアミノフェン含有製剤を得た。得られたアセトアミノフェン含有製剤15gを蓋付きのガラス瓶に入れ、ガラス瓶を蓋で密封して、瓶詰品のアセトアミノフェン含有製剤パッケージを得た。得られたアセトアミノフェン含有製剤パッケージを50℃で2週間保管し、アセトアミノフェン含有製剤の変色抑制効果及び外観形状の評価を行った。その結果を表9に示す。なお、ガラス瓶内の酢酸濃度は、2週間保管後において10mg/Lであった。
【0058】
(比較例12)
ガラス瓶の蓋の内面に、含浸シートを貼付しなかった以外は、実施例37と同様にして瓶詰品のアセトアミノフェン含有製剤パッケージを製造し、変色抑制効果及び外観形状の評価を行った。その結果を表9に示す。
【0059】
【表9】

【0060】
表9に示す通り、ガラス瓶の蓋の内面に含浸シートを貼付した実施例37は、変色抑制効果が「◎」であり、錠剤の膨潤や、錠剤同士の付着等は認められなかった。一方、ガラス瓶の蓋の内面に含浸シートを貼付しなかった比較例12は、変色抑制効果が「×」であった。
このことから、本発明により、瓶詰品としたアセトアミノフェン含有製剤パッケージ中のアセトアミノフェン含有製剤の変色を防止できることが判った。
【0061】
(実施例38)
表5に示す組成Aに従い、ボーレコンテナミキサーを用いて各原料を混合して粉体混合物を得、得られた粉体混合物を打錠機にて、φ10.5mm、厚さ5.8mm、550mgの円盤状に成形し、錠剤のアセトアミノフェン含有製剤を得た。得られたアセトアミノフェン含有製剤にPTP包装を施し、PTP包装品であるアセトアミノフェン含有製剤パッケージを得た。PTP包装に際しては、容器シートの収容部に向けて酢酸含有気体を送り込み、収容部内の酢酸濃度を5mg/Lとした。得られたアセトアミノフェン含有製剤パッケージを50℃で2週間保管し、アセトアミノフェン含有製剤の変色抑制効果及び外観形状の評価を行った。その結果を表10に示す。なお、PTP包装品の容器フィルムにはVSL−4610−N(厚み:0.33mm、住友ベークライト株式会社製)を用い、カバーフィルムにはアルミニウムフィルム(厚さ:20μm)を用いた。
【0062】
(比較例13)
PTP包装に際し、酢酸含有気体を収容部に送り込まなかった以外は、実施例38と同様にしてPTP包装品のアセトアミノフェン含有製剤パッケージを製造し、アセトアミノフェン含有製剤の変色抑制効果及び外観形状の評価を行った。その結果を表10に示す。
【0063】
【表10】

【0064】
表10に示す通り、収容部に酢酸含有気体を封入した実施例38は、変色抑制効果が「◎」であり、錠剤の膨潤等が認められなかった。一方、収容部に酢酸含有気体を封入しなかった比較例13は、変色抑制効果が「×」であった。
このことから、本発明により、PTP包装品としたアセトアミノフェン含有製剤パッケージ中のアセトアミノフェン含有製剤の変色を防止できることが判った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセトアミノフェン及び制酸剤を含有するアセトアミノフェン含有製剤の製造方法において、
酢酸蒸気を含有する酢酸含有気体で、アセトアミノフェン及び制酸剤を含有する粒状物又は成形物を曝露する曝露処理を施すことを特徴とするアセトアミノフェン含有製剤の製造方法。
【請求項2】
前記曝露処理は、前記粒状物又は前記成形物を容器に充填すると共に、前記容器中に前記酢酸含有気体を封入することを特徴とする、請求項1に記載のアセトアミノフェン含有製剤の製造方法。
【請求項3】
前記粒状物を前記酢酸含有気体で曝露した後に打錠成形することを特徴とする、請求項1又は2に記載のアセトアミノフェン含有製剤の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項のアセトアミノフェン含有製剤を包装体に封入してなることを特徴とするアセトアミノフェン含有製剤パッケージ。
【請求項5】
さらに、前記酢酸含有気体を包装体に封入してなることを特徴とする、請求項4に記載のアセトアミノフェン含有製剤パッケージ。
【請求項6】
アセトアミノフェン及び制酸剤を含有する粒状物又は成形物と、酢酸蒸気を含有する酢酸含有気体とを包装体に封入してなることを特徴とするアセトアミノフェン含有製剤パッケージ。

【公開番号】特開2011−68584(P2011−68584A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220084(P2009−220084)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】