説明

アゼチジン誘導体調製のための新規な生成物、方法および中間体

本発明は、N−{1−[ビス−(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イル−メチルスルホンアミドおよびこれのジクロロ水和物およびN−{1−[ビス−(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−(3,5−ジフルオロフェニル)−メチルスルホンアミドなど、アゼチジン誘導体の調製のための新規な方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミドおよびこの二塩酸塩、N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)−メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミドおよびN−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−(3,5−ジフルオロフェニル)メチルスルホンアミドなどのアゼチジン誘導体調製のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩基形の生成物N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミドおよびN−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−(3,5−ジフルオロフェニル)メチルスルホンアミドは、国際公開第01/64634号特許出願において記載されており、これはカンナビノイド受容体、特にCBI型の受容体に高い親和性を有することが知られており、それ故、中枢神経系、免疫系、心臓血管または内分泌腺系あるいは呼吸器官系に影響する疾患、および生殖障害の治療および予防に有用である。したがって、この化合物は、統合失調症、不安症、うつ病、てんかん、神経変性、小脳および脊髄小脳疾患を含む精神病、認識障害、頭部損傷、パニック発作、末梢神経障害、緑内障、偏頭痛、パーキンソン氏病、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏症、レイノー病、振戦、強迫神経症、老人性痴呆症、胸腺疾患、トゥレット症候群、遅発性ジスキネジー、双極性障害、癌、薬物誘導性運動機能障害、失調、内毒素血症性ショック、出血性ショック、低血圧症、不眠症、免疫疾患、多発性硬化症、嘔吐、ぜんそく、摂食障害(過食症または拒食症)、肥満症、記憶障害の治療および予防において、慢性治療およびアルコールまたはドラッグ(例えば、オピオイド、バルビツレート、大麻、コカイン、アンフェタミン、フェンシクリド、幻覚剤またはベンゾジアゼピンなど)の乱用からの離脱において鎮痛剤、または麻酔薬もしくは非麻酔薬の鎮痛作用の促進剤として有用である。
【0003】
本発明は、大量生産に適合する、生成物N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミドおよびN−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−(3,5−ジフルオロフェニル)メチルスルホンアミドを合成するための方法の開発に関する。この製造方法は、シリカ上のクロマトグラフィーによる中間体または完成製品のすべての精製ステップおよびすべての単離をせずに済ませ、結晶化技術の使用を可能にする。
【0004】
また本発明は、N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)−メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミド二塩酸塩の、中枢神経系、免疫系、心臓血管または内分泌腺系あるいは呼吸器官系に影響する疾患、および生殖障害の治療および予防のための使用に関する。したがって、この化合物は、統合失調症、不安症、うつ病、てんかん、神経変性、小脳および脊髄小脳疾患を含む精神病、認識障害、頭部損傷、パニック発作、末梢神経障害、緑内障、偏頭痛、パーキンソン氏病、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏症、レイノー病、振戦、強迫神経症、老人性痴呆症、胸腺疾患、トゥレット症候群、遅発性ジスキネジー、双極性障害、癌、薬物誘導性運動機能障害、失調、内毒素血症性ショック、出血性ショック、低血圧症、不眠症、免疫疾患、多発性硬化症、嘔吐、ぜんそく、摂食障害(過食症または拒食症)、肥満症、記憶障害の治療および予防のための使用、慢性治療およびアルコールまたはドラッグ(例えば、オピオイド、バルビツレート、大麻、コカイン、アンフェタミン、フェンシクリド、幻覚剤またはベンゾジアゼピンなど)の乱用からの離脱における鎮痛剤、または麻酔薬もしくは非麻酔薬の鎮痛作用の促進剤としての使用、メタボリックシンドローム、内臓型肥満およびレボドパ誘発運動障害の治療における使用をしてもよい。
【0005】
国際公開第01/64634号特許出願は、N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−(アリールまたはヘテロアリール)メチルスルホンアミドを合成する一般的方法について記載している。
【0006】
「アリール」という用語は、フェニール、ナフチルまたはインデニール基を表し、これらアリール基は、1つまたは複数のハロゲン、アルキル、アルコキシ、ホルミル、ヒドロキシル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、−CO−alk、シアノ、−COOH、COOalk、アミド、アルキルスルファニル、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルスルファニルアルキル、アルキルスルフィニルアルキル、アルキルスルホニルアルキルまたはヒドロキシアルキルでもって、非置換または置換されている。「ヘテロアリール」という用語は、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、クロマニル、2,3−ジヒドロベンゾフリル、2,3−ジヒドロベンゾチエニル、フリル、イミダゾリル、イソクロマニル、イソキノリル、ピロリル、ピリジル、ピリミジル、キノリル、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリル、チアゾリルおよびチエニル環を表し、これらヘテロアリール基は、場合によってハロゲン、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、−COOH、COOalk、アルキルスルファニル、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルスルファニルアルキル、アルキルスルフィニルアルキル、アルキルスルホニルアルキルまたはヒドロキシアルキルでもって非置換または置換されている。
【0007】
国際公開第01/64634号特許出願は、テトラヒドロフランなどの不活性溶媒中において、トリフェニルホスフィンおよびジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)の存在下、N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−(3,5−ジフルオロフェニル)メチルスルホンアミドおよびN−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]−アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミドに対して共通の中間体、すなわち1−[ビス(4−クロロフェニル)−メチル]アゼチジン−3−オールおよびN−(アリールまたはヘテロアリール)メチルスルホンアミドから開始されるN−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−(アリールまたはヘテロアリール)メチルスルホンアミドの合成について記載している。これらの生成物は、1回または複数回のシリカ上のクロマトグラフィー処理および/または結晶化の後に得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、クロマトグラフィーをせずに生成物の高純度を可能にする単離方法を用いて、N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミドをスケールアップのために合成する方法における改良に関する。Mitsunobu反応に関するこの新規の合成は、THFに代えてトルエン中において行い、シリカ上でのクロマトグラフィー溶媒の変更、有機溶液の脱水用生成物上での静的乾燥(共沸蒸留で代替)を省略することで方法の簡素化を可能にし、N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)−メチル]アゼチジン−3−イル}−N−(3,5−ジフルオロフェニル)メチルスルホンアミドおよびN−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミドを、予めカラムクロマトグラフィーをせずに、イソプロパノールから直接結晶化することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、新規な生成物の新規塩N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミド二塩酸塩を得ることも可能にした。この塩N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミド二塩酸塩は、イソプロパノール中の塩酸存在下、好ましくはイソプロパノール中の5〜6N塩酸存在下において得られる。
【0010】
N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミド7およびN−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−(3,5−ジフルオロフェニル)メチルスルホンアミド9の生成は、合成スキーム(I)に従って実施される。
【0011】
【化1】

【0012】
合成スキーム(I)に記載した手順によれば、N−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アセトアミド2は、テトラヒドロフラン中のナトリウムボロヒドリドの存在下、次いで硫酸存在下でのアセトニトリルの存在下、4,4’−ジクロロベンゾフェノン1から得られる。
【0013】
1,1−ビス(p−クロロフェニル)メチルアミンは、塩酸およびブタノールの存在下、N−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アセトアミド2から得られ、塩酸塩3の形で単離される。
【0014】
1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−オール臭化水素酸塩4は、エタノールおよび重炭酸ナトリウムの存在下、次いで臭化水素酸の存在下トルエン中において、エピブロモヒドリンおよび[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アミン塩酸塩3から調製される。
【0015】
1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−オール臭化水素酸塩4を使用する利点は、タイプ5または8のN−(アリールまたはヘテロアリール)メチルスルホンアミドを、トルエン中のトリフェニルホスフィンおよびジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD)の存在下、1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−オールと反応させることによって、アゼチジンの位置3において鎖を多様化できることである。国際公開第01/54634号に、使用する溶媒は、DEADを含む還流THFであると一般的に記載されている。40℃と60℃の間、優先的には50℃と60℃の間の温度のトルエンが好ましく、このトルエンにより、特にN−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミドに関して、クロマトグラフィーのステップを省略できることが、今や判明した。反応が完了したとき、トルエン/イソプロパノール共沸蒸留によってトルエンを除去することが可能であり、これによってN−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミドの結晶化が、トリフェニルホスフィンオキシドの沈殿を生ずることなく行われる。したがって、この改良は、クロマトグラフィーによる精製ではこれまで実現していない、このような生成物の大規模製造を想定することを可能にする。
【0016】
本発明は、
a)トルエン中のDIADおよびトリフェニルホスフィンの存在下、1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−オール臭化水素酸塩をN−(アリールまたはヘテロアリール)メタンスルホンアミドと反応させて、N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−(アリールまたはヘテロアリール)メチルスルホンアミドを生成し、これを単離することを特徴とする、N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−(アリールまたはヘテロアリール)メチルスルホンアミドの合成法を得ることを可能にした。
【0017】
本発明は、
a)トルエン中のDIADおよびトリフェニルホスフィンの存在下、1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−オール臭化水素酸塩を、N−キノリン−6−イルメタンスルホンアミドと反応させてN−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミドを生成すること(反応は、40℃と60℃の間において行われることが好ましい。)、および次いで
b)N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミドを(好ましくはイソプロパノール中の塩酸存在下において)N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミド二塩酸塩に転換して、これを単離することを特徴とする、N−{1−[ビス−(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミド二塩酸塩の合成を得ることを可能にした。
【0018】
本発明は、トルエン中のDIADおよびトリフェニルホスフィンの存在下、1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−オール臭化水素酸塩をN−(3,5−ジフルオロフェニル)メタンスルホンアミドと反応させて、N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−(3,5−ジフルオロフェニル)メタンスルホンアミドを生成し、これを単離することを特徴とする、N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−(3,5−ジフルオロフェニル)メタンスルホンアミド9の合成を得ることも可能にした。
【0019】
本発明を、以下の合成実施例において説明する。
【実施例1】
【0020】
スキーム(I)によるN−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミドおよびこの中間体の調製:
中間体N−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アセトアミドの調製
0.87gのホウ化水素ナトリウムおよび40mlのTHFを、機械式攪拌機、温度計、25mlの等圧化滴下ロートおよび蒸留塔を備えた500mlの三つ口フラスコに入れ、65±5℃とする。次いで、120mlのTHFに溶解した20gの4,4’−ジクロロベンゾフェノンを攪拌しながら加える。16.5mlのメタンスルホニルクロリドを、得られた溶液に60分間にわたって加える。反応塊の温度を、さらに1時間65±5℃に維持する。反応が完了したとき、反応塊を20±5℃に冷却し、次いで84mlのモル塩酸溶液を加える。水相を除去し、次いで有機相を70±5℃に加熱して、約100mlのTHFを蒸留により除去する。120mlのアセトニトリルを反応塊に加え、50±5℃に予備冷却する。次いで反応媒体の温度を80±5℃とし、約100mlを留去する。次いで、8.5mlの純水に溶解した15.3gの95%硫酸を30分間にわたって加える。温度を、3〜4時間にわたって80±5℃に維持する。反応が完了したとき、300mlの純水を70±5℃において反応塊に加え、次いで得られた混合物を冷却し、50±5℃において30〜40分間(結晶化の開始が観察されるまで)維持する。次いで、媒体を5〜10℃に冷却する。次いで懸濁液をろ過する。次いでケーキを、30mlの純水で洗浄し、吸引ろ過し、真空(40〜45℃/5mmHg)下、オーブン中で恒量に達するまで乾燥する。
【0021】
このようにして、23.3gのN−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アセトアミドを収率91.1%で得る。
【0022】
中間体1,1−ビス(p−クロロフェニル)メチルアミン塩酸塩の調製
78.3gのN−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アセトアミド、200mlのn−ブタノールおよび235mlの純水を、機械式攪拌機、温度計、250mlの等圧化滴下ロートおよび凝縮器を備え、その上に計泡器が取り付けられている2リットルの反応容器に入れる。次いで、214mlの36%塩酸を、温度20±5℃において、滴下ロートを介して15分間にわたって加える。次いで反応塊の温度を、10〜15時間にわたって90±5℃に維持する。反応が完了したとき、200mlの純水を反応塊に注ぐ。次いで媒体の温度を100±5℃とし、約550mlを留去する。さらに200mlの純水を加えて蒸留を再開し、約100mlを留去する。次いで反応媒体を、3〜4時間かけて自然に20±5℃へと冷却する。このようにして得られた懸濁液を5±5℃に冷却し、次いでろ過する。次いでケーキを80mlの純水で洗浄して吸引ろ過し、オーブン中で真空(40〜45℃/5mmHg)下、恒量に達するまで乾燥する。
【0023】
このようにして、74.1gの1,1−ビス(p−クロロフェニル)メチルアミン塩酸塩を、収率96%で得る。
【0024】
中間体1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−オール臭化水素酸塩の調製
20gの1,1−ビス(p−クロロフェニル)メチルアミン塩酸塩、120mlのエタノールおよび12.2gの炭酸水素ナトリウムを、機械式攪拌機、温度計、25mlの等圧化滴下ロートおよび凝縮器を備え、その上に計泡器が取り付けられている1リットルの反応容器に入れる。反応塊を80±5℃において1時間加熱し、次いで55±5℃に冷却する。16.7gのエピブロモヒドリンを滴下ロートを介して30分間にわたって加え、反応塊を55±5℃において4〜5時間維持し、次いでさらに4〜5時間還流する。反応が完了したとき、反応媒体の温度を30±5℃に下げて、100mlのトルエンおよび100mlの純水を加える。混合物を30分間攪拌し、次いで水相を除去する。次いで有機相を50mlの純水で2回洗浄する。4mlの48%臭化水素酸水溶液を、得られた有機相に加え、混合物を約30分間結晶化の開始が観察されるまで攪拌する。次いで懸濁液を10±5℃に冷却してろ過する。次いでケーキを15mlのトルエンで3回洗浄し、吸引ろ過し、真空(50〜55℃/10mmHg)下、オーブン中で恒量に達するまで乾燥する。
【0025】
このようにして、22.6gの1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−オール臭化水素酸塩を、収率83.9%で得る。
【0026】
N−キノリン−6−イルメタンスルホンアミドの調製
150gの6−アミノキノリン、3000mlのジクロロメタンおよび90.5gのピリジンを、機械式攪拌機、250mlの添加用ロートおよび窒素導入口を備えた5リットルの三つ口丸底フラスコに入れる。透明な黄色溶液を得る。反応媒体を攪拌し、5±2℃に冷却する。
【0027】
123.9g、すなわち1.06当量のメタンスルホニルクロリドを、5±2℃において30分間かけて加える。
【0028】
媒体は濃い赤色に変わり、添加終了時に媒体の温度は12℃である。
【0029】
添加終了から10分後、まだ5±2℃において、反応媒体は突然濃密になる(不均一なピンク色の反応媒体)。
【0030】
添加終了から15分後、冷却槽を取り除いて混合物を室温に温める。媒体は濃密になり、次いで450mlのジクロロメタンを加える。媒体は攪拌しやすくなる。室温において、約24時間の接触時間後に反応の終点が得られる。混合物を14±2℃に冷却し、499mlの水道水を5分間にわたり加える。次いで、408mlの5N水酸化ナトリウムを30分にわたり加える。水酸化ナトリウムの添加は幾分発熱性で、4℃の上昇が起こる。
【0031】
水酸化ナトリウム添加の終了時のpHは12でなければならないが、そうでない場合はさらに水酸化ナトリウムを加えてこの値にする。
【0032】
相を沈降によって分離する。透明な黄色の2相が得られる。水相を300mlのジクロロメタンで3回洗浄する。水相を14±2℃に冷却する。6N塩酸を30分間かけて加える。塩酸を最初数ml加えたときから濃密な黄色沈殿が観察される。添加後、赤色溶液が突然沈殿する。混合物を10℃においてさらに30分間攪拌し、次いで放置して室温に温める。990mlの10%重炭酸ナトリウム水溶液を、室温において30分間かけて加える。添加の終了時に、pHは8と9の間でなければならないが、もしそうでない場合は調節する必要がある。発泡性の濃密なピンク色媒体が得られる。混合物を室温において一夜攪拌し、次いで2±2℃において1時間冷却し、次いでろ過する。
【0033】
ろ液を150mlの水道水で3回すすぎ、ピンク色の固体を真空(100mmbar)下、35℃のオーブンに入れて、恒量にする。182.8gのN−キノリン−6−イルメタンスルホンアミドが得られ、これは収率80.6%である。
【0034】
H NMRスペクトル(300MHz)−δ ppm中−DMSO−d6中:3.12(s,3H);7.51(dd,J=4.5および8.5Hz,1H);7.63(dd,J=2.5および9.0Hz,1H);7.75(d,J=2.5Hz,1H);8.01(d,J=8.5Hz,1H);8.32(広幅d,J=8.5Hz,1H);8.82(dd,J=2.0および4.5Hz,1H);10.2(広幅s,1H)。
【0035】
N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミドの調製
299.4gの1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−オール臭化水素酸塩、130.8mlの10N水酸化ナトリウムおよび3リットルのトルエンを、機械式攪拌機、温度計、250mlの等圧化滴下ロートおよび凝縮器を備え、その上に計泡器が取り付けられている5リットルの反応容器に入れる。懸濁液が得られる。
【0036】
混合物を、50℃において攪拌しながら均一な2相媒体が得られるまで1時間30分加熱する。2相を沈降によって分離する。塩基性水相を、300mlのトルエンで再抽出する。有機相を一緒にして、1138mlの脱イオン水で2回洗浄する。微量の水分を除去するためにトルエン相を蒸留する。730mlのトルエン/水混合物を、155mbarの下、57℃において留去する。224.2gのトリフェニルホスフィンおよび179.9gのN−キノリン−6−イルメタンスルホンアミドを、20±2℃において一度に反応媒体に加え、その後700mlのトルエンを加える。オレンジ色の懸濁液を得る。反応媒体を50±2℃に加熱する。
【0037】
178.5mlのジイソプロピルアゾジカルボキシレートを、1時間にわたって加える。反応は発熱反応であるので、添加終了時の反応媒体の温度は、54±2℃である。赤色の溶液が得られる。加熱をさらに1時間30分、54±2℃において継続する。加熱を止めて、反応の終点を確認するために、HPLCモニタリングを実施する。混合物を、1500mlの脱イオン水で2回洗浄する。2330mlのトルエン/水混合物を、173mbarの下59±2℃において留去する。蒸留を止めて、さらに3リトルのイソプロパノールを加える。蒸留を継続する。2700mlのトルエン/イソプロパノール混合物を、192mbarの下、44±2℃において留去する。蒸留を止めて、イソプロパノール中のトルエン含有率をチェックする(10%容量/容量を超えてはならない)。2600mlのイソプロパノールを、攪拌しながら加え、その間反応媒体の温度を44℃に維持する。加熱を止めて、31±2℃において結晶化シードを加える。混合物を一夜ゆっくりと攪拌しながら室温に冷却する。
【0038】
18±2℃において18時間攪拌した後、クリーム〜オレンジ色の懸濁液を得る。反応媒体を13±2℃に1時間冷却し、次いでろ過し、ケーキをスラリー化し、次いで予め10±2℃に予備冷却したイソプロパノール381mlで2回すすぐ。得られた混合物を吸引ろ過し、真空下35±2℃において恒量に達するまで乾燥する。178.1gのN−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミドを得る。すなわち、収率は45%である。
【0039】
H NMRスペクトル(400MHz)−δ ppm中−DMSO−d6中:
2.76(m,2H);3.02(s,3H);3.42(m,2H);4.40(s,1H);4.85(m,1H);7.31(広幅d,J=8.5Hz,4H);7.36(広幅d,J=8.5Hz,4H);7.59(dd,J=4.5および8.5Hz,1H);7.71(dd,J=2.5および9.0Hz,1H);7.97(d,J=2.5Hz,1H);8.04(d,J=9.0Hz,1H);8.39(dd,J=1.5および8.5Hz,1H);8.94(dd,J=2.0および4.5Hz,1H)。
【0040】
N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミド二塩酸塩の調製
351.5gのN−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミドを、20±2℃において、機械式攪拌機、500mlの添加用ロートおよび窒素導入口を備えた3リットルの三つ口丸底フラスコに入れ、その後1760mlのメタノールを加える。反応媒体を、50±2℃に加熱する。302mlのイソプロパノール中の塩酸溶液(新たに滴定した4.9N)を5分間にわたり加える。発熱性は観察されていない。イソプロパノール中の塩酸溶液を加えた後、暗黄色の溶液を得る。
【0041】
加熱を止める。結晶化シードを30±2℃において加える。混合物を18時間かけて室温に温める。室温における18時間の接触時間後、ベージュ色の微細懸濁液を得る。
【0042】
反応媒体を5±2℃に冷却する。この温度において1時間保持する。得られた混合物を、焼結ロートを通してろ過する。生成物を、5±2℃に予備冷却した350mlのメタノールで2回洗浄する、得られた生成物を、オーブン中10ミリバールの真空下60℃において恒量になるまで乾燥する。
【0043】
このようにして、322.9gのN−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミド二塩酸塩(白色の結晶性粉末)を得る。すなわち収率は80%である。
【0044】
N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミド二塩酸塩の融点は、125℃である。
【0045】
H NMRスペクトル(400MHz)−δ ppm中−DMSO−d6中と75%−25%配座異性体の混合物:3.12(s,2.2H)および3.30(s,0.8H);3.92〜4.23(m,4H);5.22(m,0.7H)および5.60(m,0.3H);5.99(広幅m,0.7H)および6.26(広幅m,0.3H);7.47(広幅d,J=8.5Hz,4H);7.72(広幅d,J=8.5Hz,4H);7.95〜8.09(m,2H);8.25(広幅s,0.7H)および8.38(広幅s,0.3H);8.42(d,J=9.0Hz,1H);8.95(広幅d,J=8.5Hz,1H);9.23(広幅d,J=5.0Hz,1H);13.2(広幅m,0.3H)および13.5(大広幅m,0.7H)。
【実施例2】
【0046】
N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−(3,5−ジフルオロフェニル)メタンスルホンアミドの調製。中間体1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−オール臭化水素酸塩の調製は、実施例1と共通である。
【0047】
N−(3,5−ジフルオロフェニル)メタンスルホンアミドの調製
14.0kgの3,5−ジフルオロアニリンおよび56リットルのTHFを、反応容器に充填する。9.6kgのピリジンを、攪拌した溶液に加える。反応媒体を0℃に冷却し、13.10kgのメタンスルホニルクロリドを加え、その間温度を0〜10℃に1時間30分維持する。メタンスルホニルクロリド添加の終了時、反応媒体を25℃において2時間加熱する。29リットルの脱イオン水、次いで6.6kgの塩酸(30%w/w)を反応媒体に加える。60リットルの溶媒を、外部浴を100℃に維持して大気圧において留去し、次いで反応媒体を20℃に冷却する。得られた懸濁液をろ過し、固形物を合計20リットルの脱イオン水で洗浄する。固形物を、真空(20mbar)下、40℃において水分含有量が0.5%未満となるまで乾燥する。このようにして19.48kg(87%)の微黄色結晶性固体を得る(m.p.:121℃)。
【0048】
N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−(3.5−ジフルオロフェニル)−メタンスルホンアミド
6.66kgの1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−オール臭化水素酸塩、84リットルのトルエンおよび28リットルの脱イオン水を反応容器に投入する。3.46kgの水酸化ナトリウム溶液(30%w/w)をこの混合物に加える。反応媒体を、45℃において1時間攪拌し、次いで25℃に冷却し、沈降によって相分離した後、有機相を回収し、28リットルの脱イオン水で3回洗浄する。有機相を、4.87kgのトリフェニルホスフィンおよび3.50kgのN−(3,5−ジフルオロフェニル)メタンスルホンアミドを投入した反応容器に加える。次いで16リットルの溶媒を、真空下36℃の外部浴を用いて留去する。反応媒体を50℃に加熱する。次いで、3.96kgのジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD)を1時間にわたり加え、50℃において加熱をさらに1時間継続する。54リットルの溶媒を、55℃の外部浴を用いて真空下留去し、次いで100リットルの2−プロパノールを反応媒体に加え、その後60リットルの溶媒を、90℃の外部浴を用いて大気圧下留去する。反応媒体を20℃に冷却し、この温度において2時間攪拌する。予期した生成物が、反応媒体中に結晶化する。これをろ過し、固形物を2−プロパノールで2回洗浄する(2×10リットル)。得られた固形物を、112リットルの2−プロパノールの存在下反応容器に入れ、反応媒体を透明な溶液が得られるまで還流する。この溶液を、80℃に予熱したフィルターを通してろ過する。予期された生成物が、20℃への冷却の間に結晶化する。結晶化を12〜24時間継続する。生成物をろ過し、10リットルの2−プロパノールで3回洗浄する。固形物を真空(32およびバール)下、50℃において乾燥する。
【0049】
収量:5.72kg(68%)の微黄色結晶性固体(m.p.:159℃)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新規な生成物、N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミド二塩酸塩。
【請求項2】
その融点が125℃であることを特徴とする、請求項1に記載の生成物。
【請求項3】
イソプロパノール中の塩酸溶液から結晶化されることを特徴とする、請求項1に記載の生成物。
【請求項4】
a)トルエン中のDIADおよびトリフェニルホスフィンの存在下、1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−オール臭化水素酸塩を、N−キノリン−6−イルメタンスルホンアミドと反応させて、N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミドを生成すること、および次いで
b)N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミドを、N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミド二塩酸塩に転換し、これを単離すること
を特徴とする、N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミド二塩酸塩の合成方法。
【請求項5】
ステップa)が、40℃と60℃の間の温度において行われることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップa)が、50℃と60℃の間の温度において行われることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
ステップb)が、イソプロパノール中のHClの存在下において行われることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記イソプロパノールが、5Nから6N濃度の塩酸を有することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
a)トルエン中のDIADおよびトリフェニルホスフィンの存在下、1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−オール臭化水素酸塩をN−(アリールまたはヘテロアリール)メタンスルホンアミドと反応させて、N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−(アリールまたはヘテロアリール)メチルスルホンアミドを生成し、これを単離すること
を特徴とする、N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−(アリールまたはヘテロアリール)メチルスルホンアミドの合成方法。
【請求項10】
医薬を製造するための、N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミド二塩酸塩の使用。
【請求項11】
メタボリックシンドローム治療用医薬を製造するための、N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミド二塩酸塩の使用。
【請求項12】
アルツハイマー病治療用医薬を製造するための、N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミド二塩酸塩の使用。
【請求項13】
統合失調症治療用医薬を製造するための、N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミド二塩酸塩の使用。
【請求項14】
レボドパ誘発運動障害治療用医薬を製造するためのN−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミド二塩酸塩の使用。
【請求項15】
肥満症治療用医薬を製造するためのN−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]アゼチジン−3−イル}−N−キノール−6−イルメチルスルホンアミド二塩酸塩の使用。

【公表番号】特表2008−516932(P2008−516932A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536214(P2007−536214)
【出願日】平成17年10月10日(2005.10.10)
【国際出願番号】PCT/FR2005/002490
【国際公開番号】WO2006/040465
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(500152119)アバンテイス・フアルマ・エス・アー (65)
【Fターム(参考)】