説明

アゾ化合物

本発明は、式(I)(ここで、置換基は請求項に定義された意味を有する)の新規染料、かかる染料の製造、これらの染料の使用、及びかかる染料により浸染された又は捺染された材料に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規分散染料、それらの製造、並びに再生若しくは合成の疎水性材料及び/又は再生若しくは合成の疎水性材料を含む混成物を浸染する及び捺染するためのそれらの使用に関する。
【0002】
本発明は、式(I)
【化1】

〔ここで、
1は、C1~2アルキル;アリル;プロパルギル;ベンジル;又はフェニルを意味し、
2は、H;−CH2CH2O−R1;CH2CH2CN;C1~4アルキル;置換C2~4アルキルであって、ハロゲン、−OH、−OC1~2アルキル若しくは−OCOC1~2アルキルから成る群の1個若しくはそれ以上の置換基により置換されている置換C2~4アルキル;C3~4アルケニル;置換C3~4アルケニルであって、好ましくは−Cl若しくは−Brにより置換された置換C3~4アルケニル;プロパルギル;C2~4アルキレン−OCO−C1~2アルキル;C2~4アルキレン−O(CO)O−C1~2アルキル;C1~2アルキレン−COO−R5;C1~2アルキレン−COOCH2COOR5;又はC1~2アルキレン−COOCH2COR6;好ましくはCH2CH2CNを意味し、
5は、C1~4アルキル;ベンジル;C1~2アルコキシエチル;C3~4アルケニル;プロパルギル;テトラヒドロフルフリル−2;フェニル;又は−CH3、−OCH3、−COOCH3若しくは−COOC25により置換されているフェニルを意味し、
6は、CH3又はフェニルを意味し、
3は、H又はCH3を意味する〕
の新規染料並びにそれらの混合物に関する。
【0003】
存在するいずれのアルキルも、別段指摘されていなければ線状又は分枝状である。置換アルキル基はハロゲン、−OH、−OC1~2アルキル又は−OCOC1~2アルキルにより置換されており;C3~4アルケニル;置換C3~4アルケニルであって、好ましくは−Cl若しくは−Brにより置換された置換C3~4アルケニル;プロパルギル;C2~4アルキレン−OCO−C1~2アルキル;C2~4アルキレン−O(CO)O−C1~2アルキル;C1~2アルキレン−COO−R5;C1~2アルキレン−COOCH2COOR5;又はC1~2アルキレン−COOCH2COR6
【0004】
存在するいずれの置換アルキルも、1個又はそれ以上の同一又は異なる置換基により置換され得る。ハロゲン原子は、好ましくは、塩素又は臭素である。
【0005】
式Iにおいて、好ましくは、
1は、C1~2アルキル;アリル;プロパルギルを意味し、
2は、H;−CH2CH2O−R1;CH2CH2CN;C1~4アルキル;アリル;プロパルギル;C2~4アルキレン−OCO−C1~2アルキル;C1~2アルキレン−COO−R5;又はC1~2アルキレン−COOCH2COOR5;好ましくはCH2CH2CNを意味し、
5は、C1~4アルキル;アリル;ベンジル;又はプロパルギルを意味し、
3は、H又はCH3を意味し、
並びにそれらの混合物。
【0006】
特に好ましいものは、
1が、C1~2アルキルを意味し、
2が、−CH2CH2O−CH3;−CH2CH2CN;アリル;プロパルギル;C24OCOC1~2アルキル;C24COO−R5;又はC1~2アルキレン−COOCH2COO−R5;好ましくはCH2CH2CNを意味し、
5が、C1~2アルキル;アリル;又はベンジルを意味し、
3が、H又はCH3を意味する
式(I)の染料及びそれらの混合物である。
【0007】
最も好ましいものは、
1が、CH3を意味し、
2が、−CH2CH2O−CH3;−CH2CH2CN;C24O−CO−C1~2アルキル;C24COO−C1~2アルキル;又はC24COOCH2COO−R5;好ましくはCH2CH2CNを意味し、
5が、C1~2アルキル又はベンジルを意味し、
3が、Hを意味する
式(I)の染料及びそれらの混合物である。
【0008】
最も好ましい染料において、置換基R1はCH3を意味する。
最も好ましい染料において、置換基R3はHを意味する
最も好ましい染料において、置換基R2はCH2CH2CNを意味する。
更なる最も好ましい染料において、置換基R3はCH3を意味する。
【0009】
上記に挙げられた式(I)による新規化合物並びにそれらの混合物は、非常に有用な分散染料である。
【0010】
これらの染料の生成は、式(II)
【化2】

のジアゾ化アミンを式(III)
【化3】

のアミンとカップリングする(ここで、すべての置換基は上記に定義されたのと同じ意味を有する)ことにより果たされる。
【0011】
ジアゾ化及びカップリングは、一般的に知られた方法により果たされる。ジアゾ化は、たとえば、亜硝酸ナトリウムを用いて酸の水性媒質中で行われる。ジアゾ化はまた、他のジアゾ化剤たとえばニトロ硫酸を用いて行われ得る。追加的酸が反応媒質中にジアゾ化中存在し得、たとえばリン酸、硫酸、酢酸、プロピオン酸、塩酸又はこれらの酸の混合物(たとえば、リン酸と酢酸の混合物)である。ジアゾ化は、好都合には、−10から10℃好ましくは0℃から5℃の温度範囲内で行われる。
【0012】
式(III)のカップリング成分への式(II)のジアゾ化化合物のカップリングは、公知の態様で、たとえば酸の水性又は水性−有機媒質中で好ましくは0℃から50℃一層好ましくは20℃から40℃の温度範囲内で行われる。用いられる酸は、たとえば、塩酸、酢酸、硫酸又はリン酸である。たとえば、ジアゾ化とカップリングは同じ反応媒質中で行われ得る。
【0013】
固体形態の又は水溶液としての若しくはニトロシル硫酸中のアルカリ金属亜硝酸塩(たとえば亜硝酸ナトリウムのような)が、ニトロソ化剤として用いられる。
【0014】
ジアゾニウムイオンの製造、典型的には求電子性イオンアリール−N2+を形成するべき低温における過剰の亜硝酸又は類似のもの(ニトロシル硫酸のような)との反応によっての製造は、文献たとえばAdvanced Organic Chemistry,Fieser & Fieser,第736〜740頁又はOrganische Chemie,K.Peter、C.Vollhardt,第1154〜1157頁,第1版,1988年に開示されている。
【0015】
式(II)及び(III)の化合物は公知であるか、あるいは当業者によく知られた態様で容易に生成され得る。
【0016】
式(I)の新規染料並びにそれらの混合物は、半合成及び好ましくは合成の疎水性繊維材料特に生地材料を浸染する及び捺染するために用いられ得る。かかる半合成疎水性繊維材料を含有する混成布から成る生地材料もまた、本発明の染料により浸染又は捺染され得る。
【0017】
適当な半合成生地材料は、主として、セルロース・21/2アセテート、セルローストリアセテート、ポリアミド、及び高分子量のポリエステル及びポリウレタン、並びにセルロースとのそれらの混合物である。
【0018】
合成疎水性生地材料は、主として、線状芳香族ポリエステルたとえばテレフタル酸とグリコール(特にエチレングリコール)から成るもの又はテレフタル酸と1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンの縮合物;ポリカーボネートたとえばα,α−ジメチル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルメタンとホスゲンから成るもの;並びにポリビニルクロライド、ポリアミド及びポリウレタンをベースとした繊維から成る。基材として用いられる好ましい疎水性生地材料は、ポリウレタン繊維とポリエステル繊維の混合物である。
【0019】
疎水性合成材料はシート様又はスレッド様構造体の形態にあり得、またたとえばヤーン又は織られた、編まれた若しくはループ形成された生地布に加工され得る。本新規染料はまた、マイクロファイバーの形態の疎水性合成材料を浸染するために適している。
【0020】
式(I)による新規染料を使用前に染料処方物に変換することが便宜である。これは、染料を0.1から10ミクロンの平均粒子サイズに摩砕することにより行われる。摩砕は、分散剤の存在下で行われ得る。典型的には、湿潤染料が分散剤と共に摩砕され、そしてその後に真空下で又は噴霧乾燥により乾燥される。捺染糊及び染浴は、そのようにして得られた処方物に水を添加することにより製造され得る。
【0021】
式(I)による新規染料は、公知の浸染又は捺染方法たとえば仏国特許出願公開第1,445,371号明細書に記載されたものにより、生地材料に施用される。
【0022】
典型的には、ポリエステル繊維材料は、慣用のアニオン性又は非イオン性分散剤の存在下で及び慣用の膨潤剤(キャリヤー)の存在又は不存在下で65℃から140℃の温度範囲にて、吸尽法により水性分散液から浸染される。
【0023】
好ましくは、セルロース・21/2アセテートは65℃から85℃の温度にてそしてセルローストリアセテートは115℃までの温度にて浸染される。
【0024】
本新規染料は、連続法である吸尽法についてのサーモゾル法により浸染するために、並びに近代の画像化方法(たとえば、熱転写捺染、インクジェット捺染、熱溶融インクジェット捺染)についてのように又は在来の捺染方法により捺染するために適している。
【0025】
サーモゾル法、吸尽法及び連続法はよく知られた染色方法であり、そしてたとえばM.Peter及びH.K.Rouette,「Grundlagen der Textilveredelung;Handbuch der Technologie, Verfahren und Maschinen」,第13改訂版,1989,Deutscher Fachverlag GmbH,独国フランクフルト・アム・マイン,ISBN3−87150−277−4に記載されており、しかして次のページが特に興味深い。すなわち、第460〜461頁、第482〜495頁、第556〜566頁及び第574〜587頁。
【0026】
インクジェット捺染法において、インキの個々の液滴が、ノズルから基材上に制御態様で吹き付けられる。この目的のために、連続式インクジェット法及びドロップ・オン・デマンド法が主として用いられる。連続式インクジェット法の場合において、液滴は連続的に生成され、そして捺染に必要とされなかった液滴は捕集容器中にそらされそして再循環される。対照的に、不連続式ドロップ・オン・デマンド法の場合においては、液滴は所望に応じて発生されそして捺染され、すなわち、液滴はこれが捺染のために必要である時のみ発生される。液滴は、たとえば、ピエゾインクジェットヘッドにより又は熱エネルギー(バブルジェット(登録商標))により発生され得る。
【0027】
熱溶融インクジェット捺染機において、固形熱溶融インキが、インクジェット捺染機のヘッド中で該インキを溶融しそしてこの液体インキを吐出することの可能な捺染機に充填され、しかして該液体インキは、基材に衝突すると急速に再固化する。慣用の熱溶融インクジェット捺染機は、約120から約150℃のプリントヘッド及びインクジェットの温度でもって動作する。これらの温度において、固形インキは、低粘度の液体(一般に、噴射温度において測定される場合約8から25cP)に溶融される。
【0028】
在来の捺染方法は周知であり、そして捺染インキ又は捺染糊が基材へ転写されるやり方について相違する。たとえば、インキ又は糊は、隆起活字(たとえば、凸版、フレキソ印刷)により、平面状表面(平版印刷)から、くぼみ表面(凹版)から又はステンシル(シルクスクリーン)を通じて施用され得る。異なる施用方法及び異なる基材は、インキについて異なる性質を要求する。
【0029】
浸染は吸尽法により水性液から行われ、そして液比は広範囲(たとえば、1:4から1:100好ましくは1:6から1:50)から選ばれ得る。
【0030】
浸染時間は、20から90分好ましくは30から60分である。
染液は、追加的に、他の添加剤たとえば染色助剤、分散剤、湿潤剤及び消泡剤を含み得る。
【0031】
液はまた、鉱酸(硫酸又はリン酸のような)又は好都合にはまた有機酸(たとえば、ギ酸又は酢酸)並びに/あるいは塩(酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム又は硫酸ナトリウムのような)を含み得る。酸は、主として、染液(好ましくは、4から5の範囲にある)のpHを調整するのに役立つ。
【0032】
分散染料は、通常、染液中に微細分散液の形態で存在する。この分散液の製造のための適当な分散剤は、たとえば、芳香族スルホン酸/ホルムアルデヒド縮合物、スルホン化クレオゾール油/ホルムアルデヒド縮合物、リグニンスルホネート、若しくはアクリル酸誘導体のコポリマーのようなアニオン性分散剤好ましくは芳香族スルホン酸/ホルムアルデヒド縮合物若しくはリグニンスルホネート、又はポリアルキレンオキシド(たとえば、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドから重付加反応により得られ得る)をベースとした非イオン性分散剤である。更なる適当な分散剤は、米国特許第4,895,981号明細書に又は米国特許第5,910,624号明細書に列挙されている。
【0033】
適当なインキ又は糊は、a)式(I)の少なくとも1種の染料又は式(I)の化合物の混合物、b)水、又は水と有機溶媒の混合物、無水有機溶媒若しくは低融点を有する固体を含む媒質及びc)随意に更なる添加剤を含む。
【0034】
インキ又は糊は、好ましくは、インキ又は糊の総重量を基準として1から35重量%の範囲特に2から35重量%の範囲好ましくは2から30重量%の範囲一層好ましくは2.5から20重量%の範囲にある総量の上記の式(I)の染料を含む。
【0035】
インキは、99〜65重量%特に98〜65重量%好ましくは98〜70重量%一層好ましくは97.5〜80重量%の上記に挙げられた媒質b)(水、又は水と有機溶媒の混合物、無水有機溶媒若しくは低融点を有する固体を含む)を含む。
【0036】
媒質b)が水と有機溶媒を含む混合物又は無水有機溶媒である場合は、式(I)の染料又はそれらの混合物は、この媒質中に好ましくは完全に溶解される。
【0037】
好ましくは、式(I)の染料又はそれらの混合物は、20℃においてこの媒質b)中における2.5重量%より小さくない溶解度を有する。
【0038】
本発明のインキ組成物が紙様基材又はアセテート−、ポリエステル−、ポリアミド−、ポリアクリルニトリル−、ポリビニルクロライド−若しくはポリウレタン−ポリマー及びそれらの混成物から成る疎水性基材を捺染するために用いられる場合、インキは、好ましくは、次の組成物と一緒に用いられる。
【0039】
媒質が水と有機溶媒の混合物である場合、水対有機溶媒の重量比は、好ましくは99:1から1:99の範囲一層好ましくは99:1から50:50の範囲特に好ましくは95:5から80:20の範囲にある。
【0040】
水との混合物中に含まれる有機溶媒は、水溶性溶媒又は様々な水溶性溶媒の混合物であることが好ましい。好ましい水溶性有機溶媒は、C1~6アルコール、好ましくはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec‐ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、シクロペンタノール及びシクロヘキサノール;線状アミド、好ましくはジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミド;ケトン及びケトアルコール、好ましくはアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン及び4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン;水混和性エーテル、好ましくはテトラヒドロフラン及びジオキサン;ジオール、好ましくは2から12個の炭素原子を有するジオールたとえば1,5−ペンタジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、チオジグリコール並びにオリゴ及びポリアルキレングリコール、好ましくはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール;トリオール、好ましくはグリセロール及び1,2,6−ヘキサントリオール;ジオールのモノ−C1~4アルキルエーテル、好ましくは2から12個の炭素原子を有するジオールのモノ−C1~4アルキルエーテル、特に好ましくは2−メトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]エタノール及びエチレングリコールモノアリルエーテル;環状アミド、好ましくは2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、カプロラクタム及び1,3−ジメチルイミダゾリドン;環状エステル、好ましくはカプロラクトン;スルホキシド、好ましくはジメチルスルホキシド及びスルホランである。
【0041】
好ましい組成物において、b)による媒質は、水及び少なくとも2種又はそれ以上一層好ましくは2から8種の水溶性有機溶媒を含む。
【0042】
特に好ましい水溶性溶媒は、環状アミド、特に2−ピロリドン、N−メチルピロリドン及びN−エチルピロリドン;ジオール、好ましくは1,5−ペンタンジオール、エチレングリコール、チオジグリコール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコール;並びにジオールのモノ−C1~4アルキル及びジ−C1~4アルキルエーテル、一層好ましくは2から12個の炭素原子を有するジオールのモノ−C1~4アルキルエーテル、特に好ましくは2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノールである。
【0043】
b)による好ましい媒質は、
(i)75から95重量部の水、及び
(ii)25から5部の1種又はそれ以上の次の溶媒、すなわちジエチレングリコール、2−ピロリドン、チオジグリコール、N−メチルピロリドン、シクロヘキサノール、カプロラクトン、カプロラクタム及び1,5−ペンタンジオール
を含み、しかして部数は重量により、そして(i)及び(ii)のすべての部数は総計100になる。
【0044】
水及び1種又はそれ以上の有機溶媒を含む更なる有用なインキ組成物の例は、米国特許第4963189号明細書、米国特許第4703113号明細書、米国特許第4626284号明細書及び欧州特許出願公開第425150号明細書に見られる。
【0045】
b)による媒質が無水(すなわち、1重量%より少ない水)有機溶媒を含む場合、この溶媒は、30〜200℃一層好ましくは40〜150℃特に好ましくは50〜125℃の沸点を有する。
【0046】
有機溶媒は、水不溶性溶媒、水溶性溶媒、又はかかる溶媒の混合物であり得る。好ましい水溶性有機溶媒は、上記に記載された水溶性有機溶媒のすべて及びそれらの混合物である。
【0047】
好ましい水不溶性溶媒は、とりわけ、脂肪族炭化水素;エステル好ましくはエチルアセテート;塩素化炭化水素好ましくはCH2Cl2;及びエーテル好ましくはジエチルエーテル;並びにそれらの混合物を包含する。
【0048】
b)による液体媒質が水不溶性有機溶媒を含む場合、液体媒質中における染料の溶解度を増加するために、極性溶媒を添加することが好ましい。
【0049】
かかる極性溶媒の例は、C1~4アルコール好ましくはエタノール又はプロパノール;ケトン好ましくはメチルエチルケトンである。
【0050】
無水有機溶媒は、単一溶媒、又は2種若しくはそれ以上の異なる溶媒の混合物から成り得る。
【0051】
それが異なる溶媒の混合物である場合、2から5種の異なる無水溶媒を含む混合物が好ましい。これは、貯蔵中のインキ組成物の乾燥性質及び安定性の良好な制御を可能にするところのb)による媒質を与えることを可能にする。
【0052】
無水有機溶媒又はそれらの混合物を含むインキ組成物は、速い乾燥時間が要求される場合並びに特にそれらがプラスチック、金属及びガラスのような疎水性で非吸収性の基材上のプリントのために用いられる場合、特に有益である。
【0053】
好ましい低融点媒質は、60から140℃の融点を有する。有用な低融点固体は、長鎖脂肪酸又はアルコール好ましくはC18~24炭素鎖を有するもの、及びスルホンアミドを包含する。慣用の低融点インキビヒクルは、一般に、様々な割合のロウ、樹脂、可塑剤、粘着付与剤、粘度調節剤及び酸化防止剤を含む。
【0054】
本発明のインキ組成物及び捺染糊は、更に、助剤として、インクジェットインキ又は捺染糊において通常用いられる追加的成分、たとえば緩衝剤、粘度改善剤、表面張力改善剤、固着促進剤、殺生物剤、腐食防止剤、均染剤、乾燥剤、保湿剤、インキ浸透用添加剤、光安定剤、UV吸収剤、蛍光増白剤、凝固減少剤、イオン性又は非イオン性界面活性剤及び導電性塩を含み得る。これらの助剤は、好ましくは、0〜5重量%の量にてインキに添加される。捺染糊には、捺染糊の総重量を基準として70重量%まで特に60重量%まで好ましくは55重量%まで。
【0055】
本発明のインキ組成物における沈殿を防ぐために、用いられる染料は、清浄に精製されねばならない。これは、普通に知られた精製方法でもって行われ得る。
本発明の組成物が紡織繊維材料を捺染するために用いられる場合、次の組成物を用いることが好ましい。
【0056】
紡織繊維材料を捺染する場合、溶媒(水を含めて)のほかに、有用な添加剤は、合成増粘剤、天然増粘剤又は改質天然増粘剤であり、しかしてこれらの増粘剤は水溶性非イオン性セルロースエーテル、アルギン酸塩又はビーンガムエーテルを包含し得る。水溶性非イオン性セルロースエーテル、アルギン酸塩及びビーンガムエーテルはすべて、インキを或る粘度に調節するべき増粘剤として用いられる。
【0057】
有用な水溶性非イオン性セルロースエーテルは、たとえば、メチル−、エチル−、ヒドロキシエチル−、メチルヒドロキシエチル−、ヒドロキシプロピル−又はヒドロキシプロピルメチル−セルロースを包含する。好ましいものは、メチルセルロース又は特にヒドロキシルエチルセルロースである。セルロースエーテルは、慣用的に、インキにおいてインキの総重量を基準として0.01から2重量%特に0.01から1重量%好ましくは0.01から0.5重量%の量にて用いられる。
【0058】
有用なアルギン酸塩は、特に、アルカリ金属アルギン酸塩好ましくはアルギン酸ナトリウムを包含する。これらは、慣用的に、インキにおいてインキの総重量を基準として0.01から2重量%特に0.01から1重量%好ましくは0.01から0.5重量%の量にて用いられる。
【0059】
捺染糊は、70重量%までの増粘剤、好ましくは55重量%までの増粘剤を含む。捺染糊において、増粘剤は、捺染糊の総重量を基準として3から70重量%特に5から60重量%好ましくは7から55重量%の量にて用いられる。
【0060】
インクジェット捺染法において、1から40mPa.s特に5から40mPa.s好ましくは10から40mPa.sの粘度を有するインキ組成物が好ましい。10から35mPa.sの粘度を有するインキ組成物が特に好ましい。
【0061】
15〜73mN/m特に20〜65mN/m特に好ましくは30〜50mN/mの表面張力を有するインキ組成物が好ましい。
【0062】
0.1〜100mS/cm特に0.5〜70mS/cm特に好ましくは1.0〜60mS/cmの導電率を有するインキ組成物が好ましい。
【0063】
インキは、更に、緩衝剤物質、たとえば酢酸塩、リン酸塩、ホウ砂、ホウ酸塩又はクエン酸塩を含み得る。それらの例は、酢酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム及びクエン酸ナトリウムである。
【0064】
かくして得られた浸染物又は捺染物は、良好な全般的堅牢度を有する。特に顕著なものは、熱移染堅牢度、熱固着堅牢度及びプリーティング堅牢度、特に優秀な湿潤堅牢度である。
【0065】
次の例において、部数及び百分率は重量による。温度は、摂氏度にて与えられている。
【0066】
実施例1
ジアゾ化
15.4部の2−アミノ−5−ニトロフェノールを13.7部の冷30%水酸化ナトリウム溶液中に溶解する。36.5部の30%HClを添加し、そしてその後1時間の期間中に6.9部の亜硝酸ナトリウムを水溶液(40%)として0〜5℃の温度にて添加する。この溶液を0〜5℃にて2時間撹拌し、そして0.1部のアミノスルホン酸を添加して過剰量の亜硝酸ナトリウムを破壊する。
【0067】
カップリング
100部の氷酢酸中の20.8部のN−シアノエチル−N−メトキシエチルアミノベンゼンの溶液を、上記のジアゾニウム塩溶液に連続的に添加する。この溶液を30℃にて24時間撹拌する。沈殿した染料を濾別し、水で洗浄し、そして真空中で60℃にて乾燥する。式(IV)
【化4】


のこの単離染料は505nmのλmax(DMF中)を有し、そしてポリエステルを良好な全般的堅牢度特に湿潤堅牢度でもって赤色の色合いにて浸染する。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
施用実施例A
湿りプレスケーキの形態の17.5部の実施例1による染料を、リグニンスルホネートをベースとした32.5部の商業用分散剤と共に公知方法により湿式粉砕し、そして微粉砕して粉末にする。1.2部のこの染料調製物を70℃の2000部の脱塩水(40部の硫酸アンモニウムを含有する)に添加する。この染浴のpH値を、85%ギ酸でもって5に調整する。100部の洗濯済みポリエステル繊維布をこの染浴中に入れ、容器を閉鎖し、20分かけて130℃に加熱し、そしてこの温度にて更に60分間浸染を続ける。冷却後、ポリエステル繊維布を染浴から取り出し、すすぎ、セッケンで洗い、そして通常のやり方でヒドロ亜硫酸ナトリウムでの還元により清浄にする。熱固着(180℃,30sec)後、鮮やかな赤色の浸染物が、非常に良好な全般的堅牢度、特に光及び昇華に対する堅牢度、特に優秀な湿潤堅牢度でもって得られる。実施例2から30の染料が類似の態様で用いられ得、そして非常に良好な全般的堅牢度を有する浸染物が得られる。
【0071】
ポリエステルヤーンの浸染が、実施例2〜30でもって類似的に行われ得る。
【0072】
施用実施例B
実施例1において得られた2.5部の染料を、20部のジエチレングリコールと77.5部の水の混合物中に25℃にて撹拌しながら溶解して、インクジェット捺染のために適した捺染インキを得る。
【0073】
実施例2から30の染料又は実施例1から30の染料の混合物もまた、施用実施例Bに記載された態様と類似の態様で用いられ得る。
【0074】
施用実施例C
本発明による捺染糊が
500gの増粘剤(ビーンガムエーテル、たとえばIndalcaTM)、
10gの固着促進剤(たとえばPrintogen HDNTM)、
10gの均染剤(たとえばSandogen CNTM)、
10gの染色用の緩衝剤・分散剤系(たとえばSandacid PBTM,1:2)、及び
10gの実施例1の染料
から成り、そして水を1000gになるまで添加する。
【0075】
(Indalcaはイタリア国のCesalpinia S.p.Aから購入された。Sandogen、Printogen及びSandacidは、スイス国ムッテンツのClariant AGの商標である。)
【0076】
この捺染糊を、紙様基材、紡織繊維材料、並びにプラスチックフィルム及びプラスチック透明材を捺染するために用いる。
【0077】
実施例2から30の染料又は実施例1から30の染料の混合物もまた、施用実施例Cに記載された態様と類似の態様で用いられ得る。
【0078】
施用実施例D
施用実施例Cの捺染糊を用いて、ポリエステル両面メリヤス布を慣用の捺染機でもって捺染した。生じた捺染布を110℃にて3分間乾燥し、そして次いで175℃にて7分間熱スチームで処理する。この布を冷水道水で5分間すすぎ、そして次いで脱塩水で5分間すすいだ。そのように処理された布を、4g/lのNa2CO3、2g/lのヒドロ亜硫酸ナトリウム塩(85%)及び1g/lのLyogen DFTTM(スイス国ムッテンツのClariant AGの商標)を含む浴中で還元的に清浄にした。水道水での15分間の更なるすすぎに続いて、最終乾燥工程を行った。これにより、非常に良好な全般的堅牢度、特に光及び昇華に対する堅牢度、特に優秀な湿潤堅牢度を有する鮮やかな赤色のプリントがあるポリエステル布がもたらされる。
【0079】
実施例2から30の染料又は実施例1から30の染料の混合物もまた、施用実施例Dに記載された態様と類似の態様で用いられ得る。
【0080】
施用実施例E
インクジェット捺染用組成物は、好ましくは、媒質を40℃に加熱しそして次いで実施例1の染料を添加することにより製造される。その混合物を染料が溶解されるまで撹拌する。次いで、この組成物を室温まで冷却し、そして更なる成分を添加する。
【0081】
インキ組成物の個々の成分の割合は、
6部の実施例1の染料、
20部のグリセロール、及び
74部の水
である。このインキ組成物を、紙様基材、紡織繊維材料、並びにプラスチックフィルム及びプラスチック透明材を捺染するために用いる。
【0082】
実施例2から30の染料又は実施例1から30の染料の混合物もまた、施用実施例Eに記載された態様と類似の態様で用いられ得る。
【0083】
施用実施例F
施用実施例Eの捺染インキを用いて、ポリエステル両面メリヤス布をインクジェット捺染した。施用実施例Dの捺染後処理に類似して、この捺染布を処理した。これにより、非常に良好な全般的堅牢度、特に光及び昇華に対する堅牢度、特に優秀な湿潤堅牢度を有する鮮やかな赤色のプリントがあるポリエステル布がもたらされる。
【0084】
実施例2から30の染料又は実施例1から30の染料の混合物もまた、施用実施例Fに記載された態様と類似の態様で用いられ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

〔ここで、
1は、C1~2アルキル;アリル;プロパルギル;ベンジル;又はフェニルを意味し、
2は、H;−CH2CH2O−R1;CH2CH2CN;C1~4アルキル;置換C2~4アルキルであって、ハロゲン、−OH、−OC1~2アルキル若しくは−OCOC1~2アルキルから成る群の1個若しくはそれ以上の置換基により置換されている置換C2~4アルキル;C3~4アルケニル;置換C3~4アルケニルであって、好ましくは−Cl若しくは−Brにより置換された置換C3~4アルケニル;プロパルギル;C2~4アルキレン−OCO−C1~2アルキル;C2~4アルキレン−O(CO)O−C1~2アルキル;C1~2アルキレン−COO−R5;C1~2アルキレン−COOCH2COOR5;又はC1~2アルキレン−COOCH2COR6;好ましくはCH2CH2CNを意味し、
5は、C1~4アルキル;ベンジル;C1~2アルコキシエチル;C3~4アルケニル;プロパルギル;テトラヒドロフルフリル−2;フェニル;又は−CH3、−OCH3、−COOCH3若しくは−COOC25により置換されているフェニルを意味し、
6は、CH3又はフェニルを意味し、
3は、H又はCH3を意味する〕
の染料並びにそれらの混合物。
【請求項2】
1が、C1~2アルキル;アリル;プロパルギルを意味し、
2が、H;−CH2CH2O−R1;CH2CH2CN;C1~4アルキル;アリル;プロパルギル;C2~4アルキレン−OCO−C1~2アルキル;C1~2アルキレン−COO−R5;又はC1~2アルキレン−COOCH2COOR5;好ましくはCH2CH2CNを意味し、
5が、C1~4アルキル;アリル;ベンジル;又はプロパルギルを意味し、
3が、H又はCH3を意味する、
請求項1に記載の染料並びにそれらの混合物。
【請求項3】
1が、C1~2アルキルを意味し、
2が、−CH2CH2O−CH3;−CH2CH2CN;アリル;プロパルギル;C24OCOC1~2アルキル;C24COO−R5;又はC1~2アルキレン−COOCH2COO−R5;好ましくはCH2CH2CNを意味し、
5が、C1~2アルキル;アリル;又はベンジルを意味し、
3が、H又はCH3を意味する、
請求項2に記載の染料並びにそれらの混合物。
【請求項4】
1が、CH3を意味し、
2が、−CH2CH2O−CH3;−CH2CH2CN;C24O−CO−C1~2アルキル;C24COO−C1~2アルキル;又はC24COOCH2COO−R5;好ましくはCH2CH2CN、好ましくはCH2CH2CNを意味し、
5が、C1~2アルキル又はベンジルを意味し、
3が、Hを意味する、
請求項3に記載の染料及びそれらの混合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の式(I)の染料の製造方法において、式(II)
【化2】

〔ここで、すべての置換基は請求項1〜4のいずれか一項に与えられた意味を有する〕
のジアゾ化アミンを式(III)
【化3】

〔ここで、すべての置換基は請求項1〜4のいずれか一項に与えられた意味を有する〕
のアミンとカップリングすることを特徴とする方法。
【請求項6】
全合成又は半合成の疎水性有機材料好ましくはポリエステルとポリウレタンの混合物を含む繊維若しくはスレッド又はそれから製造された材料を浸染する又は捺染するための、請求項1〜4のいずれか一項に記載の式(I)の分散染料又はそれらの混合物の使用。
【請求項7】
インクジェット捺染法又は熱溶融インクジェット法のための、請求項1〜4のいずれか一項に記載の式(I)の分散染料又はそれらの混合物の使用。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の式(I)の染料又はそれらの混合物を含む組成物。
【請求項9】
組成物が、捺染糊若しくは捺染インキ又はインクジェット捺染インキ若しくは熱溶融インクジェット捺染インキである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の式(I)の染料又はそれらの混合物でもって浸染された又は捺染されたところの、全合成又は半合成の疎水性有機材料を含む繊維若しくはスレッド又はそれから製造された材料。

【公表番号】特表2008−523189(P2008−523189A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544930(P2007−544930)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2005/056682
【国際公開番号】WO2006/061438
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(596033657)クラリアント インターナショナル リミティド (48)
【Fターム(参考)】