説明

アダマンタンアミン類の調製方法

本発明は、式(IV)(式中、R、R’はそれぞれメチルであり、Xはハロゲンである。)のある種のアダマンタンアミン類の調製方法、該方法で使用される中間体およびこのような中間体の調製方法に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はある種のアダマンタンアミン類の調製方法、該方法中で使用される中間体およびこのような中間体の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アダマンタンアミン類は長い間、価値のある医薬の1種として知られている。例えば、式IVa)
【化7】

のメマンチン塩酸塩(1−アミノ−3,5−ジメチルアダマンタン塩酸塩、式Va)は非競合的NMDA(N−メチルD−アスパラギン酸塩)受容体拮抗薬であり、これはアルツハイマー病の新しい治療として用いられる。Axura(登録商標)として上市されたメマンチン塩酸塩は、この作用機構を介して作用する最初のAD治療化合物である。メマンチンはドイツにおいて20年を超えて痙性および痴呆症候群の治療のために販売されている。
【0003】
アマンタジン塩酸塩(1−アミノアダマンタン、式IVb)
【化8】

は、ある種のインフルエンザ感染(A型)を治療するために用いられる抗ウイルス剤である。この化合物はまた、パーキンソン病を治療するために用いられる抗ジスキネシー薬でもある。
【0004】
US3、391、142は、1−ブロモ−3,5−ジメチルアダマンタンを濃硫酸中でアセトニトリルと反応させてアセトアミド誘導体を得、ついでアセトアミド誘導体が塩基性加水分解条件下で開裂される、1−ブロモ−3,5−ジメチルアダマンタンから出発するメマンチン塩酸塩の調製方法を記述している。
【0005】
WO01/053234に従って、アダマンタンは、乾燥アセトニトリル、フッ素およびルイス酸を含む反応媒体中でN−(1−アダマンチル)アセトアミドに変換される。この化合物は、酸性または塩基性条件下で開裂され得、アミノアダマンタンを生成する。
【0006】
高毒性のHCNとの反応を避けるために、複数の方法が、ジメチルアダマンタンと尿素またはホルムアミドとの反応を記述している(WO05/023753、RU2246482、DE23184461、EP0392059、CZ288445)。
【0007】
アダマンタンアミン類を調製するための従来の方法では、多数の問題に遭遇する。少なくともいくつかの段階における収量が低い、反応時間が比較的長い、有害な反応条件および/もしくは溶媒が要求されるならびに/またはいくつかの溶媒の使用により最終製品の精製に問題が生じる。
【0008】
従って、上記の問題を克服し、それによって経済的であり、商業規模で実行可能な方法を提供する、高純度のアダマンタンアミン類、特にメマンチン塩酸塩またはアマンタジン塩酸塩を調製するための改良法の必要性がある。
【0009】
従って、本発明は、1つの態様において、式(IV)のアダマンタンアミン
【化9】

(式中、RおよびR’はそれぞれメチルであり、Xはハロゲンである。)の製造方法に関し、その方法は、
(i)式(I)の化合物
【化10】

(式中、R、R’およびXは、それぞれ上に定義した通りである。)をチオ尿素と反応させる;
(ii)得られる式(II)の化合物
【化11】

を酸処理に付し;
(iii)得られるアダマンタンアミンまたはそのハロゲン化水素塩を単離することを含む。
【0010】
一般に、Xは塩素、臭素、ヨウ素などのいずれかのハロゲンであり得る。本発明の特別な実施形態において、Xは、塩素または臭素である。
【0011】
本発明の方法は、該式(I)の化合物(式中、RおよびR’はそれぞれメチルであり、Xはハロゲン、特に塩素または臭素である。)を出発物質として用いることによる、メマンチンハロゲン化水素塩、特にメマンチン塩酸塩の製造に特に適している。
【0012】
本発明もう1つの態様は、式(I)の化合物
【化12】

(式中、RおよびR’はそれぞれメチルであり、Xは塩素または臭素である。)である。
【0013】
式(I)の化合物は、式(III)の化合物
【化13】

(式中、R1はヒドロキシまたはハロゲンである。)を酸性媒体中でハロアセトニトリルX−CH−CN(式中、Xはハロゲン、特に塩素または臭素である。)と反応させて得られ得る。
【0014】
R1は、例えばヒドロキシ、臭素または塩素、特にヒドロキシまたは臭素である。本出願を通して、Xは、例えば、臭素または塩素および特に塩素である。式(III)の化合物は、既知であるかまたはそれ自体が既知の方法に従って得られ得る。
【0015】
式(III)の化合物とハロアセトニトリル、特にクロロアセトニトリルとの反応に用いられる酸性媒体は、好適には強鉱酸、特に硫酸を含む。該酸性媒体の更なる任意選択の成分は、1つ以上の溶媒、例えば有機酸、例えばプロピオン酸または特に酢酸;および/または極性の非プロトン性溶媒、例えばN、N−ジメチルホルムアミド(DMF);および金属塩触媒、例えば硫酸鉄(lll)を含む。
【0016】
本発明の1つの実施形態は、硫酸;有機酸、特に酢酸;および場合によりDMFを含む溶液中における、1−ヒドロキシ−3,5−ジメチルアダマンタン(式(III)の化合物、式中、Rは、ヒドロキシル)とクロロアセトニトリルとの反応を含む。
【0017】
もう1つの実施形態は、硫酸、DMF、硫酸鉄(lll)および場合により有機酸、特に酢酸を含む溶液中における、1−ブロモ−3,5−ジメチルアダマンタン(式(III)の化合物、式中、Rはブロモ)とクロロアセトニトリルとの反応を含む。
【0018】
式(III)の化合物とハロアセトニトリルとの反応は、温和な条件下、例えば0から70℃、好適には0℃から室温および特に0から10℃の温度において有利に実施される。一般に、強鉱酸が、反応物、溶媒(複数)および場合による触媒の混合物に、温度が上記の限度を超えないようにして加えられる。該鉱酸の添加後、該反応混合物は、必要ならば、該反応を完結するために適した時間に亘り、例えば120分までの間および好適には30から90分の間、室温または高温、例えば50から100℃の温度に、好適には70から80℃の温度に維持され得る。最後に、該反応混合物は、例えば該反応混合物を周囲条件で水を用いる加水分解、洗浄、分離および有機残渣の乾燥により、通常の方法で後処理され、このように式(I)の化合物(式中、RおよびR’は、それぞれメチルである。)が得られる。
【0019】
式(I)の化合物(式中、RおよびR’は、それぞれ水素である。)は、例えば、A.Jirgensons ら.,Synthesis 2000,12,1709から知られており、例えば、その中に記述されているように得られ得る。
【0020】
式(I)の化合物とチオ尿素との反応は、適切な溶媒中で、例えば、60から120℃好適には該反応混合物の還流温度で、例えば、約4時間から約10時間の時間内で有利に実施される。適した溶媒は、例えば、C−Cのアルコール、例えば、メタノール、エタノールまたはn−またはイソプロパノール、特にエタノールまたはイソプロパノールである。式(II)の得られる化合物は、通常の方法、例えば溶媒の除去、洗浄、結晶化および/または乾燥により単離され得る。
【0021】
従って、本発明は、反応段階(i)が、溶媒としてC−Cのアルコール中で実施される上述の方法に関する。
【0022】
本発明の更なる目的は、式(II)の化合物
【化14】

(式中、RおよびR’はそれぞれメチルであり、Xは塩素または臭素である。)である。
【0023】
式(II)の化合物はついで、所望のアダマンタンアミンまたはそのハロゲン化水素塩を得るために酸性媒体中で処理される。好適な酸性媒体は、例えば、水性酸性媒体またはC−Cのアルコールと酸の混合物もしくはC−Cのアルコール、水および酸の混合物である。式(II)の化合物の変換段階における適した酸は、例えば、C−Cの有機カルボン酸、例えば酢酸、プロピオン酸またはブタン酸、特に酢酸である。有用なアルコールは、上に定義した、例えばエタノールまたはイソプロパノールである。一般に、式(II)の化合物は、酸性媒体中で、該変換を完結するために十分な時間、例えば、12時間までの期間および好適には4から8時間の期間還流下で処理される。
【0024】
従って、本発明はまた、段階(ii)における該酸処理が、C−Cのカルボン酸、特に酢酸ならびに水およびC−Cのアルコールからなる群から選ばれる1つ以上の溶媒を含む媒体中で式(II)の化合物を処理することを含む、上に定義した方法にも言及する。
【0025】
式(II)の化合物の単離段階は、省略され得、式(I)の化合物は、式(I)の化合物を、例えば、上述の反応媒体中、特に上述の酸、水および/またはC−Cのアルコールを含む反応媒体中で還流下でチオ尿素で処理することにより、所望のアダマンタンアミンまたはそのハロゲン化水素塩に直接変換され得る。
【0026】
それぞれの場合において、得られるアダマンタンアミンは、例えば、反応溶液をアルカリ性にし、得られる生成物を既知の方法で単離および精製することにより、反応混合物から遊離塩基の形態で単離され得る。例えば、該反応混合物は、水酸化ナトリウムなどの水酸化アルカリで処理される。適した有機溶媒の添加後、相分離を行い、ついで有機層は、濃縮、結晶化および/または乾燥段階などの通常の仕上げ段階に付され得る。
【0027】
従って、本発明は、段階(iii)においてアダマンタンアミンが、反応溶液をアルカリ性にすることにより遊離塩基として単離される上に定義した方法に言及する。
【0028】
遊離塩基の形態のアダマンタンアミンは、例えばC−Cのアルコールおよび場合により水を含む媒体中のそれぞれのハロゲン化水素酸で処理することにより、それぞれのハロゲン化水素塩に容易に変換され得る。
【0029】
従って、本発明はまた、ハロゲン化水素酸、特に塩酸の処理による遊離アダマンタンアミン塩基のアダマンタンアミンハロゲン化水素塩への変換の追加の段階を含む上述の方法にも関する。
【0030】
好適なアダマンタンアミン類、メマンチン塩酸塩またはアマンタジン塩酸塩は、C−Cのアルコール、特にエタノールまたはイソプロパノールおよび塩酸水溶液を含む溶液中でメマンチンまたはアマンタジンを処理することにより有利に得られる。好適には、濃塩酸が、C−Cのアルコール中のメマンチンまたはアマンタジンの溶液にゆっくり加えられる。
【0031】
メマンチンまたはアマンタジンを遊離塩基の形態で単離する代わりに、反応混合物にハロゲン化水素酸を直接加え、例えば上述のようにメマンチンまたはアマンタジンハロゲン化水素塩を単離することにより、遊離塩基を単離せずに、原料のメマンチンまたはアマンタジンを含む上記反応混合物が、直接それぞれのメマンチンまたはアマンタジンハロゲン化水素塩に変換され得る。
【0032】
従って、本発明はまた、C−Cのカルボン酸ならびに水およびC−Cのアルコールからなる群から選ばれる1つ以上の溶媒を含む媒体中におけるチオ尿素との反応によって式(II)の化合物を単離せずに式(I)の化合物が、直接アダマンタンアミンに変換される上述の方法にも関する。更に、本発明はまた、原料のアダマンタンアミンを含む反応混合物にハロゲン化水素酸を加えることにより、遊離塩基を単離せずに、アダマンタンアミンが直接アダマンタンアミンハロゲン化水素塩に変換されるこのような方法にも関する。
【0033】
実施例により本発明を更に説明する。
【実施例1】
【0034】
2−クロロ−N−(3,5−ジメチル−アダマンタン−1−イル)−アセトアミドの調製(方法1)
還流凝縮器、オイルベンチル(oilventile)、機械的攪拌器、温度計および滴下漏斗を備えた0.50L丸底三首フラスコに、1−ヒドロキシ−ジメチル−アダマンタン(10.00g、55.47mmol)、クロロアセトニトリル(8.38g、110.94mmol)および酢酸(17.74ml、307.48mmol)を仕込む。得られる懸濁液を激しく攪拌しながら0℃に冷却する。冷却した反応混合物に温度を10℃未満に保ちながら硫酸(96%、17.74ml、332.80mmol)を加える。添加終了後、透明な該反応混合物を室温にさせる。得られる懸濁液を水でゆっくり処理(0℃、100ml)し、0−5℃で更に30分間攪拌する。分離後、無色結晶性固体を水流中で洗浄(0℃、100ml、2x)し、減圧下(40℃72h、25mbar)で乾燥し、2−クロロ−N−(3,5−ジメチル−アダマンタン−1−イル)−アセトアミド13.25g(51.80mmol,93.4%)を得る。HNMR(300MHz,DMSO−d6,ppm)δ7.66.(b,1H,NH),3.93(s,2H,RCHCl),2.08(m,1H,RCH),1.75(m,2H,RCHR),1.57(m,4H,RCHR),1.28(m,4H,RCHR),1.11(s,2H,RCHR),0.82(s,6H,RCH).13CNMR(75MHz,DMSO−d6,ppm):δ164.82(CO),52.73,50.12,46.69,43.42,42.17,31.81,29.43.MS(EI,m/z):255[M],220[M−Cl],163[M−CClNO].IR(KBr,cm−1):1661s(VRCONHR,アミドI),1574s(アミドII).E.A.(CHN,%):C1422ClNO・0.1HAcの理論値:C,65.15;H,8.00;N,5.15.実測値:C65.15,H8.62,N5.35.mp.:106.8℃.
【実施例2】
【0035】
2−クロロ−N−(3,5−ジメチル−アダマンタン−1−イル)−アセトアミドの調製(方法2)
還流凝縮器、オイルベンチル、機械的攪拌器、温度計および滴下漏斗を備えた4.0L丸底三首フラスコに1−ヒドロキシ−ジメチル−アダマンタン(47.50g、263.48mmol)、ジメチルホルムアミド(42.13ml)、クロロアセトニトリル(39.81g、526.97mmol)および酢酸(84.27ml、1.46mol)を仕込む。得られる懸濁液を室温で激しく攪拌しながら硫酸(96%、84.27ml、1.58mol)でゆっくり処理すると反応混合物が約70℃に達する。添加終了後、透明な該反応混合物を室温に冷却させる。得られる懸濁液を水(0℃、475ml)でゆっくり処理し、0−5℃で更に60分間攪拌する。分離後、無色結晶性固体を水流(0℃、475ml、2x)中で洗浄し、減圧下(40℃、72h、25mbar)で乾燥し、2−クロロ−N−(3,5−ジメチル−アダマンタン−1−イル)−アセトアミド62.18g(243.09mmol、92.26%)を得る。
【実施例3】
【0036】
2−クロロ−N−(3,5−ジメチル−アダマンタン−1−イル)−アセトアミドの調製(方法3)
還流凝縮器、オイルベンチル、機械的攪拌器、温度計および滴下漏斗を備えた0.50L丸底三首フラスコに1−ヒドロキシ−ジメチル−アダマンタン(10.00g、55.47mmol)、クロロアセトニトリル(8.38g、110.94mmol)、ジメチルホルムアミド(8.87ml)および酢酸(17.74ml、307.48mmol)を仕込む。得られる懸濁液を室温で激しく攪拌しながら硫酸(96%、17.74ml、332.80mmol)でゆっくり処理すると該反応混合物が約70℃に達する。添加終了後、透明な該反応混合物を70℃で水(15℃、100ml)でゆっくり処理する。発熱反応が終わると生成物が結晶化する。得られる懸濁液を0−5℃に冷却し、この温度で更に60分間攪拌する。濾過後、無色結晶性固体を水流(20℃、50ml、4x)中で洗浄し、減圧下(40℃、72h、25mbar)で乾燥して、2−クロロ−N−(3,5−ジメチル−アダマンタン−1−イル)−アセトアミド13.71g(53.59mmol、96.61%)を得る。
【実施例4】
【0037】
2−クロロ−N−(3,5−ジメチル−アダマンタン−1−イル)−アセトアミドの調製(方法4)
還流凝縮器、オイルベンチル、機械的攪拌器、温度計および滴下漏斗を備えた0.50L丸底三首フラスコに1−ヒドロキシ−ジメチル−アダマンタン(10.00g、55.47mmol)、クロロアセトニトリル(8.38g、110.94mmol)および酢酸(17.74ml、307.48mmol)を仕込む。得られる懸濁液を室温で激しく攪拌しながら硫酸(96%、17.74ml、332.80mmol)でゆっくり処理し、それによって反応混合物が約70℃に達する。添加終了後、透明な該反応混合物を70℃で水(15℃、100ml)でゆっくり処理する。発熱反応が終わると生成物が結晶化する。得られる懸濁液を0−5℃に冷却し、この温度で更に60分間攪拌する。濾過後、無色結晶性固体を水流(20℃、50ml、4x)中で洗浄し、減圧下(40℃、72h、25mbar)で乾燥して、2−クロロ−N−(3,5−ジメチル−アダマンタン−1−イル)−アセトアミド13.61g(53.19mmol、95.89%)を得る。
【実施例5】
【0038】
2−クロロ−N−(3,5−ジメチル−アダマンタン−1−イル)アセトアミドの調製(方法5)
還流凝縮器、オイルベンチル、機械的攪拌器、温度計および滴下漏斗を備えた0.25L丸底三首フラスコに1−ブロモ−3,5−ジメチルアダマンタン化合物(5.00g、20.56mmol)、硫酸鉄(lll)(84mg、0.21mmol)、ジメチルホルムアミド(6.00ml)、クロロアセトニトリル(4.19g、55.50mmol)および酢酸(9.23g、153.73mmol)を仕込む。反応混合物を攪拌しながら5−10℃に冷却する。温度を5−10℃に保ちながら硫酸(96%、8.87ml、166.4mmol)を滴下する。添加終了後、得られる懸濁液を80℃に約90分間加熱する。該反応混合物を室温に冷却させ、水(50ml)で加水分解する。5℃に冷却し、更に30分攪拌後、残渣を分離し、水流(150ml)中で洗浄し、減圧下(40℃、72h、25mbar)で乾燥し、2−クロロ−N−(3,5−ジメチル−アダマンタン−1−イル)−アセトアミド3.23g(12.63mmol、61.4%)を上述の無色粉体として得る。
【実施例6】
【0039】
2−クロロ−N−(3,5−ジメチル−アダマンタン−1−イル)アセトアミドの調製(方法6)
還流凝縮器、オイルベンチル、機械的攪拌器、温度計および滴下漏斗を備えた0.25L丸底三首フラスコに1−ブロモ−3,5−ジメチルアダマンタン(5.00g、20.56mmol)、硫酸鉄(lll)(84mg、0.21mmol)およびジメチルホルムアミド(6.00ml)を仕込む。反応混合物を攪拌しながら5−10℃に冷却する。温度を5−10℃に保ちながら硫酸(96%、8.87ml、166.4mmol)を滴下する。添加終了後、得られる懸濁液を5℃でクロロアセトニトリル(4.19g、55.50mmol)で処理し、ついで70−80℃に30分間加熱する。該反応混合物を室温に冷却させ、水(50ml)で加水分解する。5℃に冷却し、更に30分攪拌後、残渣を分離し、水流(150ml)中で洗浄し、減圧下(40℃、72h、25mbar)で乾燥し、上述の2−クロロ−N−(3,5−ジメチル−アダマンタン−1−イル)−アセトアミド3,52g(13.76mmol、66.9%)を得る。
【実施例7】
【0040】
2−カルバミミドスルファニル−N−(3,5−ジメチル−アダマンタン−1−イル)アセトアミドの調製
還流凝縮器、オイルベンチルおよび磁気攪拌棒を備えた0.25L丸底二首フラスコに2−クロロ−N−(3,5−ジメチル−アダマンタン−1−イル)−アセトアミド(2.00g、7.82mmol)、エタノール(16ml)およびチオ尿素(718mg、9.43mmol)を仕込む。懸濁液を攪拌しながら加熱還流する。10分後、溶媒を減圧下で取り除き、無色の油を得る。攪拌しながらアセトニトリル(76ml)を加えると、残渣が結晶化する。得られる懸濁液を0℃に冷却し、更に60分間攪拌を続ける。無色沈殿物を分離し、アセトニトリル(10ml、3x)で洗浄し、減圧下(40℃、60mbar、8h)で乾燥し、2−カルバミミドスルファニル−N−(3,5−ジメチル−アダマンタン−1−イル)アセトアミド1.96g(5.90mmol、75.5%)を無色粉体として得る。HNMR(300MHz,DMSO−d6,ppm):9.52.(b,1H,NH),9.27.(b,1H,NH),3.90(s,2H,RCHS),2.08(m,1H,RCH),1.73(m,2H,RCHR),1.57(m,4H,RCHR),1.28(m,4H,RCHR),1.09(s,2H,RCHR),0.80(s,6H,RCH).13CNMR(75MHz,DMSO−d6,ppm):δ170.13,166.69(CO),53.21,50.05,46.49,42.09,34.07,31.77,29.92,29.35.MS(ESI,m/z):296.0[M−Cl].IR(KBr,cm−1):1663s(VRCONHR,アミドI),1553s(アミドII).mp.:212.3℃(dec.).E.A.(C,H,N;%):C1526ClNOSの理論値:C,54.18;H,7.90;N12.66.実測値:C54.11,H6.94,N12.56.
【実施例8】
【0041】
1−アミノ−3,5−ジメチルアダマンタン(メマンチン塩基)の調製
還流凝縮器、オイルベンチル、機械的攪拌器、温度計および滴下漏斗を備えた0.50L丸底三首フラスコに2−クロロ−N−(3,5−ジメチル−アダマンタン−1−イル)−アセトアミド(10.00g、39.10mmol)、エタノール(77.52ml)、酢酸(15.5ml)およびチオ尿素(3.57g、46.92mmol)を仕込む。得られる懸濁液を加熱還流(70℃)し、この温度で攪拌して6時間保つ。濁った溶液を水酸化ナトリウム(50%、15.5ml)でアルカリ性にし、約60℃でトルエンで処理する。相分離を行い、水性層を廃棄する。有機層を真空下で濃縮し、イソプロパノール中(5ml)に溶解し、濾過する。残渣を乾燥し、1−アミノ−3,5−ジメチルアダマンタン5.22g(29.12mmol,74.5%)を液体として得る。これは、貯蔵すると結晶化する。HNMR(300MHz,DMSO−d6,ppm):δ2.04(m,1H,RCH),1.45(b,1.5H,RNH),1.33(m,2H,RCHR),1.25−0.98(m,10H,RCHR),0.80(s,6H,RCH).13CNMR(75MHz,DMSO−d6,ppm):δ52.31,50.39,48.39,44.43,42.37,32.16,30.13,30.00.MS(EI,m/z):179[M].IR(フィルム,cm−1):3342,3268cm−1(m,vNH),1593(m,δNH).
【実施例9】
【0042】
1−アミノ−3,5−ジメチルアダマンタン塩酸塩(メマンチン塩酸塩)の調製
(方法1)
磁気攪拌棒、窒素流入口およびオイルベンチルを備えた0.05L丸底フラスコ中で1−アミノ−3,5−ジメチルアダマンタン(2.69g、15.00mmol)をイソプロパノール(2.7ml)中に溶解する。この透明な攪拌溶液に、塩酸水溶液(31%、2ml)を室温で滴下する。得られる懸濁液を0℃に冷却し、さらに60分間攪拌する。無色結晶性固体を濾過により集め、イソプロパノール(0.5ml、3x)で洗浄し、減圧下(48h、30℃、50mbar)で乾燥してメマンチン塩酸塩2.24g(10.38mmol、69.2%)を得る。HNMR(300MHz,DMSO−d6,ppm):δ8.24(s,3H,NH),2.11(m,1H,RCH),1.65(m,2H,RCHR),1.46(m,4H,RCHR),1.28(s,4H,RCHR),1.10(m,2H,RCHR)0.83(s,6H,RCH).13CNMR(75MHz,DMSO−d6,ppm):δ52.81,49.96,46.31,41.96,38.91,32.37,30.05,29.54.MS(EI,m/z,遊離塩基):179[M].IR(KBr,cm−1):3435(m、VNH).mp.:>300(subl.).E.A.(C,H,N;%):C1222ClN・HOの理論値:C,66.25;H,10.28;N,6.44.実測値:C,66.31%;H,9.40;N,6.20.GC(rel.Ar):99.85%.
【実施例10】
【0043】
1−アミノ−3,5−ジメチルアダマンタン塩酸塩(メマンチン塩酸塩)の調製(方法2)
還流凝縮器、オイルベンチル、機械的攪拌器、温度計および滴下漏斗を備えた0.50L丸底フラスコに2−クロロ−N−(3,5−ジメチル−アダマンタン−1−イル)−アセトアミド(10.00g、39.10mmol)、チオ尿素(3.571g、46.92mmol)、水(77.5ml)および酢酸(15.5ml)を仕込み、加熱還流し、この温度で6時間攪拌して維持する。該反応混合物を約60℃まで冷却させ、塩酸水溶液(31%、25ml)を滴下して処理する。得られる懸濁液を室温に冷却する。沈殿物を濾過により集め、水(10ml)で洗浄し、減圧下(30℃、25mbar、12h)で乾燥し、メマンチン塩酸塩5.78g(26.87mmol、68.7%)を実施例9に記述したような無色結晶性固体として得る。
【実施例11】
【0044】
1−アミノ−3,5−ジメチルアダマンタン塩酸塩(メマンチン塩酸塩)の調製(方法3)
還流凝縮器、オイルベンチル、機械的攪拌器、温度計および滴下漏斗を備えた4.0L丸底三首フラスコに2−クロロ−N−(3,5−ジメチル−アダマンタン−1−イル)−アセトアミド(106.7g、0.42mol)、チオ尿素(38.1g、0.50mol)、酢酸(165.4ml)およびエタノール(827.1ml)を仕込む。該反応混合物を攪拌しながら加熱還流し、この温度で8時間保持する。反応の終了後、容器の内容物を室温にさせる。濁った溶液を濾過し、透明な濾液を先ず水(1070ml)で処理し、ついで外部冷却なしで水酸化ナトリウム水溶液(50%、165.4ml)で15分間処理する。温度は、60℃に達し得る。トルエン(215ml)を加え、該混合物を15分間激しく攪拌する。相分離を実施する。水性相を45−55℃で、トルエン(220ml)で1回抽出する。該相を分離し、有機層を合わせ、水性層を廃棄する。合わせた有機相に、水酸化ナトリウム(50%、100ml)を加え、2相系を45−55℃で15分間激しく攪拌する。該相を分離し、水性層を廃棄する。温度が45−55℃の間に維持されていることを確実にして、有機層を水(100ml)で処理する。該相を分離し、水性層を廃棄する。有機層を攪拌しながら温度を45−55℃の間に維持して塩化ナトリウム(濃水溶液、100ml)で処理する。相分離を行い、水性層を廃棄する。有機相を濾過し、還流凝縮器、オイルベンチル、機械的攪拌器、温度計および滴下漏斗を備えた2.0L丸底三首フラスコに移す。容器の内容物を攪拌しながら0−5℃に冷却する。温度を20℃未満に維持して、塩酸水溶液(31%、53ml)を加える。添加終了後、得られる懸濁液を0−5℃に冷却し、更に30分間攪拌する。無色、微結晶性固体を濾過により集め、トルエン(100ml、3x)で洗浄し、減圧下(40℃,30mbar、18.5h)で乾燥し、メマンチン塩酸塩71.25g(0.33mol、71.16%)を実施例9に記述したような結晶性固体として得る。
【実施例12】
【0045】
N−アダマンタン−1−イル−2−クロロ−アセトアミドの合成
還流凝縮器、オイルベンチル、機械的攪拌器、温度計および滴下漏斗を備えた0.50L丸底三首フラスコに1−ヒドロキシアダマンタン(10.00g、65.69mmol)、クロロアセトニトリル(9.92g、131.38mmol)、ジメチルホルムアミド(11ml)および酢酸(21ml、363.96mmol)を仕込む。得られる懸濁液を室温で激しく攪拌ながら硫酸(96%、21ml)でゆっくり処理すると、反応混合物は約80℃に達する。添加終了後、透明な該反応混合物を70℃でゆっくりと水(15℃、118ml)で処理する。発熱反応が止まると、生成物が結晶化する。得られる懸濁液を攪拌しながら0−5℃に冷却する。濾過後、無色結晶性固体を水流中で洗浄し、減圧下(40℃、19h、25mbar)で乾燥し、N−アダマンタン−1−イル−2−クロロ−アセトアミド14.90g(65.43mmol、99.60%)を得る。HNMR(300MHz,CDCl,ppm):6.24(b,1H,NH),3.94(s,2H,RCHCI),2.10(m,3H,RCH),2.03(m,6H,RCHR),1.70(m,6H,RCHR).13CNMR(75MHz,DMSO−d6,ppm):δ164.61(CO),52.39,42.89,41.37,36.22,29.38.MS(EI,m/z):227[M].IR(KBr,cm−1):1662s(VRCONHR,アミドI),1569s(アミドII).mp.:123.4℃.
【実施例13】
【0046】
N−アダマンタン−1−イル−2−カルバミミドイルスルファニル−アセトアミド塩酸塩の調製
還流凝縮器、オイルベンチルおよび磁気攪拌棒を備えた0.25L丸底二首フラスコにN−アダマンタン−1−イル−2−クロロ−アセトアミド(2.00g、8.78mmol)、エタノール(16ml)およびチオ尿素(802mg、10.54mmol)を仕込む。懸濁液を攪拌しながら加熱還流する。15分後、溶媒を減圧下で除去する。アセトニトリル(76ml)を油状残渣に攪拌しながら加える。得られる懸濁液を更に30分間攪拌する。無色沈殿物を室温で分離し、アセトニトリル(10ml、3x)で洗浄し、減圧下(40℃、60mbar、19h)で乾燥して、表題化合物2.18g(7.16mmol、81.6%)を無色微結晶性粉体として得る。HNMR(300MHz,DMSO−d6,ppm):9.42(b,3H,NH),8.32(s,1H,NH),3.95(s,2H,RCHS),2.07−1.81(m,9H,RCH,RCHR),1.61(s,6H,RCHR).13CNMR(75MHz,DMSO−d6,ppm):δ170.18,166.65(CO),51.67,40.57,35.84,34.14,28.70.MS(ESI,m/z):298.0[MH−CI].IR(KBr,cm−1):1662s(VRCONHR,アミドI),1555s(アミドII).mp.:180℃(dec).E.A.(C,H,N;%):C1526ClNOS・0.1HOの理論値:C,51.08;H,7.32;N13.75.実測値:C51.07,H7.22,N13.65.
【実施例14】
【0047】
アマンタジンHCIの合成
還流凝縮器、オイルベンチル、機械的攪拌器、温度計および滴下漏斗を備えた2.0L丸底三首フラスコにN−アダマンタン−1−イル−2−クロロ−アセトアミド(71.0g、0.31mol)、チオ尿素(28.5g、0.37mol)、酢酸(123.6ml)およびエタノール(550.2ml)を仕込む。反応混合物を攪拌しながら加熱還流し、この温度で8時間保持する。反応の終了後、容器の内容物を室温にさせる。懸濁液をセライト上で濾過し、透明な濾液をまず水(710ml)、ついで水酸化ナトリウム水溶液(50%、124ml)で外部冷却せずに10分間処理する。温度は、50℃まで上昇し得る。トルエン(142ml)を加え、混合物を15分間激しく攪拌する。相分離を行う。水性相を45−55℃で、トルエン(142ml)で1回抽出する。該相を分離し、有機層を合わせ、水性層を廃棄する。合わせた有機相に水酸化ナトリウム(50%、71ml)を加え、該2相系を45−55℃で15分間激しく攪拌する。該相を分離し、水性層を廃棄する。有機層をトルエン(20ml)で希釈し、50−60℃で水酸化ナトリウム(50%、71ml)で洗浄し、水性層を廃棄する。温度が50−60℃の間に維持されていることを確実にして、有機層を水(71ml)で処理する。該相を分離し、水性層を廃棄する。有機層を攪拌して温度を45−55℃の間に維持して塩化ナトリウム(飽和水溶液、71ml)で処理する。相分離を行い、水性層を廃棄する。有機相をセライト上で濾過し、還流凝縮器、オイルベンチル、機械的攪拌器、温度計および滴下漏斗を備えた2.0L丸底三首フラスコに移す。移送ラインをトルエン(20ml、2x)で洗浄する。容器の内容物を攪拌しながら0−5℃に冷却する。温度を20℃未満に維持して、塩酸水溶液(31%、53ml)を加える。添加終了後、得られる懸濁液を0−5℃に冷却し、さらに60分間攪拌する。無色の微結晶性固体を濾過により集め、トルエンで洗浄し、減圧下(40℃、30mbar、18.5h)で乾燥してアマンタジンHCl47.34g(0.25mol、80.89%)を微結晶性固体として得る。mp.>300℃(subl.).HNMR(300MHz,DMSO−d6,ppm):δ7.24.(b,3H,NH),2.06(m,3H,RCH),1.82(s,6H,RCHR),1.60(m,6H,RCHR).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)式(I)の化合物
【化1】

(式中、R、R’およびXは、それぞれ下に定義する通りである。)をチオ尿素と反応させること;
(ii)式(II)の得られる化合物
【化2】

を酸処理に付すことおよび
(iii)得られるアダマンタンアミンまたはそのハロゲン化水素塩を単離すること
を含む、式(IV)のアダマンタンアミン
【化3】

(式中、RおよびR’は、それぞれメチルであり、Xはハロゲンである。)の製造方法。
【請求項2】
反応段階(i)が、溶媒としてC−Cのアルコール中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階(ii)における酸処理が、式(II)の化合物をC−Cのカルボン酸、特に酢酸、ならびに水およびC−Cのアルコールからなる群から選ばれる1つ以上の溶媒を含む媒体中で処理することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
段階(iii)において、反応溶液をアルカリ性にすることにより、アダマンタンアミンが遊離塩基として単離される、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ハロゲン化水素酸、特に塩酸を用いる処理により、遊離アダマンタンアミン塩基をアダマンタンアミンハロゲン化水素塩へ変換する追加の段階を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
式(I)の化合物が、C−Cのカルボン酸、ならびに水およびC−Cのアルコールからなる群から選ばれる1つ以上の溶媒を含む媒体中でチオ尿素との反応により、式(II)の化合物を単離せずにアダマンタンアミンに直接変換される、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
原料アダマンタンアミンを含む反応混合物にハロゲン化水素酸を加えることにより、遊離塩基を単離せずに、アダマンタンアミンが直接アダマンタンアミンハロゲン化水素塩に変換される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
Xが塩素または臭素である、式(1)
【化4】

の化合物。
【請求項9】
式(III)の化合物
【化5】

(式中、R1は、ヒドロキシまたはハロゲンである。)が、酸性媒体中でハロアセトニトリルX−CH−CN(式中、Xはハロゲンである。)と反応される、請求項8に記載の式(1)の化合物の調製方法。
【請求項10】
RおよびRがそれぞれメチルであり、Xが塩素または臭素である、式(II)
【化6】

の化合物。
【請求項11】
メマンチンまたはそのハロゲン化水素塩の製造のための請求項8に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項12】
メマンチンまたはそのハロゲン化水素塩の製造のための請求項10に記載の式(II)の化合物の使用。

【公表番号】特表2009−527517(P2009−527517A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555684(P2008−555684)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001440
【国際公開番号】WO2007/096124
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(507281878)ヘクサル アクチェンゲゼルシャフト (2)
【Fターム(参考)】