説明

アダマンチル基を有する第4級アンモニウム塩の製造方法

【課題】アダマンチル基を有する第4級アンモニウム塩を短時間で効率よく工業的に高収率、高純度で製造する方法を提供する。
【解決手段】下記の工程A及びBを順次含むことを特徴とするアダマンチル基を有する第4級アンモニウム塩の製造方法である。
工程A:比誘電率が10.0〜20.0である溶媒aに溶解した塩酸アマンタジンと水酸化アルカリ金属との反応物を、ギ酸、並びに、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドと反応させる工程、溶媒aに溶解した1−アミノアダマンタンを、ギ酸、並びに、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドと反応させる工程、1−ハロゲノアダマンタンとジメチルアミンを反応させる工程から選ばれる1−アダマンタンジメチルアミンの製造工程、工程B:溶媒bに溶解した工程Aで得られた1−アダマンタンジメチルアミンとハロゲン化メチルを反応させる1−アダマンタントリメチルアンモニウムハロゲン塩の製造工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アダマンチル基を有する第4級アンモニウム塩の製造方法に関し、詳しくは、アダマンチル基を有する第4級アンモニウム塩を高収率、高純度で製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アダマンタンは、シクロヘキサン環が4個、カゴ形に縮合した構造を有し、対称性が高く、安定な化合物であり、その誘導体は、特異な機能を示すことから、医薬品原料や高機能性工業材料の原料等として有用であることが知られている。
例えば、アダマンタン誘導体は、光学特性や耐熱性等を有することから、光ディスク基板、光ファイバーあるいはレンズ等に用いることが試みられている(例えば、特許文献1及び2参照)。
また、アダマンタンエステル類を、その酸感応性、ドライエッチング耐性、紫外線透過性等を利用して、フォトレジスト用樹脂原料として、使用することが試みられている(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
アダマンタン誘導体のうち、アダマンチル基を有する第4級アンモニウム塩が、ゼオライト用テンプレート剤(構造規定剤)として使用され、重要性が高まってきている(例えば、特許文献4〜6参照)。
これら特許文献には、アダマンチル基を有する第4級アンモニウム塩として、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウム水酸化物が記載されおり、その合成方法として、1−アダマンタミンをトリブチルアミンとジメチルホルムアミドとの混合物に溶解し、メチルヨウ化物と反応させる方法が記載されている。
しかし、該合成方法では、トリブチルメチルアミンヨウ化物塩ができ純度を向上させることができない。
また、非特許文献1には、アミノアダマンタンからジメチル化を経て、ハロゲン化メチルを用いて第4級アンモニウムのハロゲン塩を合成する方法が記載されているが、該合成方法では反応時間が長いため工業的に難しいこと、原料が完全に反応しきれず、精製できないため、高純度、高収率で目的物を得られることができない。
一方、カチオン型第4級アンモニウム塩は、例えば、界面活性剤、抗菌剤、医薬品、医薬部外品及び化粧品の原料、相間移動触媒あるいはイオン化溶媒等として極めて重要な化合物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−305044号公報
【特許文献2】特開平9−302077号公報
【特許文献3】特開平4−39665号公報
【特許文献4】特開1987−191418公報
【特許文献5】特開1987−202814公報
【特許文献6】特開1987−216914公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Russian Journal of Applied Chemistry,74(11),1892−1898(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した如き状況に鑑みなされたもので、アダマンチル基を有する第4級アンモニウム塩を高収率、高純度で効率よく製造することができる、工業的に好適な製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を進めた結果、出発原料として、塩酸アマンタジン、1−アミノアダマンタン、1−ハロゲノアダマンタンから選ばれる化合物から1−アダマンタンジメチルアミンを中間体としてアダマンチル基を有する第4級アンモニウム塩を製造する方法により上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の第4級アンモニウム塩製造方法を提供する。
1.下記の工程A及びBを順次含むことを特徴とするアダマンチル基を有する第4級アンモニウム塩の製造方法。
工程A:比誘電率が10.0〜20.0である溶媒aに溶解した塩酸アマンタジン〔下記式(1−1)〕と水酸化アルカリ金属との反応物を、ギ酸、並びに、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドと反応させる工程、
溶媒aに溶解した1−アミノアダマンタン〔下記式(1−2)〕を、ギ酸、並びに、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドと反応させる工程、
1−ハロゲノアダマンタン〔下記式(1−3)〕とジメチルアミンを反応させる工程
から選ばれる1−アダマンタンジメチルアミン〔下記式(2)〕の製造工程、
工程B:溶媒bに溶解した工程Aで得られた1−アダマンタンジメチルアミン〔下記式(2)〕とハロゲン化メチルを反応させる1−アダマンタントリメチルアンモニウムハロゲン塩〔下記式(3)〕の製造工程。
【0009】
【化1】

【0010】
2.工程Bにおけるハロゲン化メチルが臭化メチル又はヨウ化メチルである上記1に記載の製造方法。
3.工程Aにおける溶媒aが比誘電率10.0〜18.7のアルコールである上記1又は2に記載の製造方法。
4.前記アルコールが第2級アルコールである請求項3に記載の製造方法。
5.工程Aにおける1−ハロゲノアダマンタンが1−ブロモアダマンタンである上記1又は2に記載の製造方法。
6.工程Bにおける溶媒bの比誘電率が4.0〜20.0のアルコール系溶媒、エステル系溶媒及びエーテル系溶媒から選ばれる1種以上である上記1〜5のいずれかに記載の製造方法。
7.さらに、下記の工程Cを含む上記1〜6のいずれかに記載の製造方法。
工程C:溶媒cに溶解した、工程Bで得られた1−アダマンタントリメチルアンモニウムハロゲン塩〔下記式(3)〕をイオン交換する1−アダマンタントリメチルアンモニウムOH塩〔下記式(4)〕の製造工程。
【0011】
【化2】

【0012】
8.工程Cにおけるイオン交換を水酸化アルカリ金属を用いて行なう上記7に記載の製造方法。
9.水酸化アルカリ金属が水酸化カリウムである上記8に記載の製造方法。
10.工程Cにおけるイオン交換を塩基性陰イオン交換樹脂(OH形)を用いて行なう上記7に記載の製造方法。
11.工程Cにおける溶媒cが水及び/又はアルコールである上記7〜10のいずれかに記載の製造方法。
12.工程Cで得られた1−アダマンタントリメチルアンモニウムOH塩中に含まれるアルコールが5質量%以下、アルカリ金属及びアルカリ金属化合物がアルカリ金属原子換算で2質量%以下、ハロゲンイオンがハロゲン原子換算で2質量%以下である上記7〜11のいずれかに記載の製造方法。
13.さらに、下記の工程Dを含む上記1〜6のいずれかに記載の製造方法。
工程D:工程Bで得られた1−アダマンタントリメチルアンモニウムハロゲン塩を精製する工程。
14.工程Bにおけるハロゲン化メチルが臭化メチルであり、工程Dで精製した1−アダマンタントリメチルアンモニウム臭素塩中に含まれる臭素イオンが臭素原子換算で28.3質量%以上、1−アダマンタンジメチルアミンが0.5質量%以下、アルカリ金属が1000ppm以下である上記13に記載の製造方法。
15.工程Bにおけるハロゲン化メチルがヨウ化メチルであり、工程Dで精製した1−アダマンタントリメチルアンモニウムヨウ素塩中に含まれるヨウ素イオンがヨウ素原子換算で38.2質量%以上、1−アダマンタンジメチルアミンが0.5質量%以下、アルカリ金属が1000ppm以下である上記13に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法により、アダマンチル基を有する第4級アンモニウム塩である1−アダマンタントリメチルアンモニウムハロゲン塩又は1−アダマンタントリメチルアンモニウムOH塩を短時間で効率よく工業的に高収率で製造することができる。
1−アダマンタントリメチルアンモニウムハロゲン塩の場合、該第4級アンモニウム塩中の臭素イオンが原子換算で28.3質量%以上又はヨウ素イオンが原子換算で38.2質量%以上、中間体である1−アダマンタンジメチルアミンが0.5質量%以下、アルカリ金属が原子換算で1000ppm以下である高純度の第4級アンモニウム塩を製造することができる。
1−アダマンタントリメチルアンモニウムOH塩の場合、該第4級アンモニウム塩中のアルコールが5質量%以下、アルカリ金属及びアルカリ金属化合物がアルカリ金属原子換算で2質量%以下、ハロゲンイオンがハロゲン原子換算で2質量%以下である高純度の第4級アンモニウム塩を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のアダマンチル基を有する第4級アンモニウム塩の製造方法は、工程A及びBを順次含むことを特徴とする。
[工程A]
工程Aは、下記反応式で表される工程から選ばれる工程であり、塩酸アマンタジン〔下記式(1−1)〕を出発物質とする場合、比誘電率が10.0〜20.0である溶媒aに溶解した塩酸アマンタジンと水酸化アルカリ金属等の塩基との反応物を、ギ酸、並びに、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドと反応させて、1−アダマンタンジメチルアミン〔下記式(2)〕とする工程、あるいは、1−アミノアダマンタン〔下記式(1−2)〕を出発物質とする場合、溶媒aに溶解した1−アミノアダマンタンを、ギ酸、並びに、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドと反応させて、1−アダマンタンジメチルアミン〔下記式(2)〕とする工程、さらに、1−ハロゲノアダマンタン〔下記式(1−3)〕を出発物質とする場合、該1−ハロゲノアダマンタンをジメチルアミンと反応させて、1−アダマンタンジメチルアミン〔下記式(2)〕とする工程から選ばれる製造工程からなる。
【0015】
【化3】

【0016】
塩酸アマンタジンあるいは1−アミノアダマンタンを原料とする場合、工程Aは、1級アミンにメチル基を導入する還元的アミノ化反応であるエシュバイラー・クラーク反応(Eschweiler−Clarke methylation)を行うものである。
エシュバイラー・クラーク反応は、1級アミンに過剰のギ酸、及び過剰のホルムアルデヒド(HCOH)又はパラホルムアルデヒド〔OH(CH2O)nH〕を加えて加温し、2級アミンへと還元する反応である。
これにより、1級アミンに対してメチル基を導入し、同様の反応機構で2級アミンに対してメチル基を導入して、3級アミンを効率的にかつ高純度及び高収率で得ることができる。
【0017】
出発物質である塩酸アマンタジン〔1−アダマンタンアミン塩酸塩〕は、入手容易なことから市販品を用いることができる。
工程Aで使用する溶媒aは、比誘電率が10.0〜20.0であり、比誘電率が10.0〜18.7であるアルコールが好ましく、比誘電率が15.0〜18.7であるアルコールがより好ましい。
10.0以上であれば、塩酸アマンタジンの溶解性が良好であり、20.0以下であれば、通常反応溶媒として使用できる。
また、比誘電率が上記範囲内であるアルコールとしては、例えば、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、sec−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール等が挙げられる。
この中でも、溶媒aとして、2−プロパノール、sec−ブタノール、sec−ペンタノール、3−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−ヘプタノール及び3−ヘプタノール等の第2級アルコールを使用することがより好ましい。これらは、単独でも、2種類以上混合して使用してもよい。
【0018】
塩酸アマンタジンから誘導される反応物もしくは1−アミノアダマンタンは、溶媒aに溶解もしくは分散していることが望ましいため、溶媒aの使用量は、塩酸アマンタジンに対して、通常0.5〜20質量倍が好ましく、より好ましくは1〜10質量倍である。0.5質量倍以上であれば、上記反応物もしくは1−アミノアダマンタンが溶解して良好に反応し、20質量倍以下であれば、全体の体積が大きくなりすぎず適量である。
【0019】
出発物質を塩酸アマンタジンとする場合、使用する塩基としては水酸化アルカリ金属等が好ましく、例えば、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等が挙げられるが、水酸化ナトリウムが好ましい。
水酸化ナトリウムは、通常水溶液として反応系内に加えられ、水酸化ナトリウム水溶液の濃度は通常50〜80質量%程度であることが好ましい。
50質量%以上の濃度であれば、塩酸アマンタジンの溶解性が良好であり、80質量%以下であれば水酸化ナトリウムの不溶分解物が生じることがない。
水酸化ナトリウムの使用量は、塩酸アマンタジンに対して、通常0.9〜1.1モル倍が好ましい。
また、塩酸アマンタジンと塩基を反応させた後は、反応物の分離や精製等の必要はなく、そのまま反応系内にギ酸、並びに、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドを加え、反応させることができる。
【0020】
工程Aで使用するギ酸は、通常80〜97質量%程度のギ酸水溶液として反応系内に加えることが好ましい。上記範囲内であれば、全体の体積も大きくならず、製造の効率が良い。
ギ酸の使用量は、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドに対して、通常0.3〜0.7モル倍が好ましく、0.4〜0.5モル倍がより好ましい。
0.3モル倍以上であれば、良好に反応が進行し、0.7モル倍より多くても反応に影響がでないため、0.7モル倍以下が最適である。
工程Aで使用するホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドは、通常30〜50質量%程度の水溶液として反応系内に加えることが好ましい。上記範囲内であれば、反応の発熱も小さく製造の効率がよい。
ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドの使用量は、塩酸アマンタジン又は1−アミノアダマンタンに対して、通常2〜20モル倍が好ましく、3〜8モル倍がより好ましい。2モル倍以上であれば、短時間で反応が進行し、20モル倍より多くても反応時間はほぼ一緒となるため、20モル倍以下でよい。
工程Aにおいて、ギ酸、並びに、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドを加えた後の反応系内の温度は、50〜90℃程度であることが好ましい。該温度内であれば反応が速やかに進行し、反応生成物が熱分解するおそれもない。
【0021】
塩酸アマンタジンを原料とする場合、例えば、以下の手順で工程Aを進行することができる。
反応容器に塩酸アマンタジンを仕込み、50℃の2−プロパノールを加えて溶解させる。その後、50質量%水酸化ナトリウム水溶液(塩酸アマンタジンに対して同モル量)を加え2時間反応させる。
97質量%ギ酸水溶液(塩酸アマンタジンに対して3モル倍)をゆっくり滴下し、37質量%ホルムアルデヒド水溶液(塩酸アマンタジンに対して4モル倍)をゆっくり滴下して、80℃に昇温した後、3時間反応させる。
ガスクロマトグラフィー等で塩酸アマンタジンが消失したことを確認した後、25質量%水酸化ナトリウム水溶液で反応液をpH10に調整し溶媒bを加え分取する。
分取した溶媒bを次工程でそのまま使用する。工程Aでは高収率及び高純度で1−アダマンタンジメチルアミンを得ることができるため、精製せずに粗体のまま、次工程に使用することができる。
純度が低い場合は、別途、1−アダマンタンジメチルアミンの精製を行い単離して、次工程で使用してもよい。
【0022】
1−ハロゲノアダマンタンを原料とする場合、出発物質である1−クロロアダマンタン、1−ブロモアダマンタンは入手容易なことから市販品を用いることができる。
1−ブロモアダマンタンの方が反応の進行が速く好ましい。
溶媒は必ずしも使用しなくても良いが、必要に応じて、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド等を使用しても良い。
反応温度は150℃〜250℃程度が好ましい。低すぎると反応速度が低下し、高すぎると副反応がおこり、1−アダマンタンジメチルアミンの収率が低下する。
ジメチルアミンの使用量は、1−ハロゲノアダマンタンに対して通常2〜10モル倍が好ましく、2.5〜7モル倍がより好ましい。
少なすぎると反応の進行が遅くなり、多すぎると仕込み量が低下し、生産効率が低下する。
【0023】
1−ブロモアダマンタンを原料とする場合、例えば、以下の手順で工程Aを進行することができる。
耐圧反応器に1−ブロモアダマンタン、ジメチルアミン(1−ブロモアダマンタンに対して3モル倍)を仕込み、200℃に昇温した後、8時間反応させる。
室温まで冷却した後、1−ブロモアダマンタンと同質量の水並びに50質量%水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウムとして1−ブロモアダマンタンに対し、1.2モル倍)、1−ブロモアダマンタンに対し、質量で2倍の酢酸エチルを加え、有機層を分取する。
分取した有機層を次工程でそのまま使用する。工程Aでは高収率及び高純度で1−アダマンタンジメチルアミンを得ることができるため、精製せずに粗体のまま、次工程に使用することができる。
純度が低い場合は、別途、1−アダマンタンジメチルアミンの精製を行い単離して、次工程で使用してもよい。
【0024】
[工程B]
工程Bは、下記反応式で表される工程であり、溶媒bに溶解した工程Aで得られた1−アダマンタンジメチルアミン〔下記式(2)〕を、ハロゲン化メチルと反応させる、1−アダマンタントリメチルアンモニウムハロゲン塩〔下記式(3)〕の製造工程である。
【0025】
【化4】

【0026】
上記式中、Xはハロゲン原子を示し、1−アダマンタンジメチルアミンと反応させるハロゲン化メチルは、臭化メチル又はヨウ化メチルであることが好ましい。
ハロゲン化メチルの使用量は、1−アダマンタンジメチルアミンに対して、通常0.9〜5モル倍が好ましく、1.1〜2モル倍がより好ましい。
0.9モル倍以上であれば、反応は良好であり、5モル倍以下であれば、ハロゲン由来の副生物の生成を減少させることが可能である。
【0027】
工程Bで使用する溶媒bとしては、比誘電率が4.0〜20.0であるものが好ましい。比誘電率が4.0以上であれば、1−アダマンタンジメチルアミンの溶解性が良好であり、20.0以下であれば、通常反応溶媒として使用できる。
また、溶媒bはアルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒であることが好ましく、例えば、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、2−ペンタノール、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、1,2−ジメトキシエタン等が挙げられる。これらは、単独でも、2種類以上混合して使用してもよい。
【0028】
反応温度は、ハロゲン化メチルを反応系内に加える際、通常−60〜100℃程度が好ましく、さらに−20℃〜50℃であることが好ましい。
反応温度が上記範囲内であれば、反応が良好に進行し、目的物が結晶化されるため効率よく製造することが可能であり、熱による品質低下のおそれもない。
また、1−アダマンタンジメチルアミンとハロゲン化メチルとの反応の際、発熱するため、上記反応温度を保ちながら、ハロゲン化メチルを滴下する等の適当な方法で加えることが好ましい。
【0029】
例えば、以下の手順で工程Bを進行することができる。
工程Aで得られた1−アダマンタンジメチルアミンを2−プロパノールに溶解させ0℃に冷却した後、ハロゲン化メチル(1−アダマンタンジメチルアミンに対して1.1モル倍)を滴下し反応させる。
ガスクロマトグラフィー等で1−アダマンタンジメチルアミンが消失したことを確認した後、溶媒を減圧留去し、粗体として1−アダマンタントリメチルアンモニウム塩を得る。
【0030】
[工程C]
工程Cは、下記反応式で表される工程であり、溶媒cに溶解した、工程Bで得られた1−アダマンタントリメチルアンモニウムハロゲン塩〔下記式(3)〕を、イオン交換する1−アダマンタントリメチルアンモニウムOH塩(1−アダマンタントリメチルアンモニウムヒドロキシド)〔下記式(4)〕の製造工程である。
【0031】
【化5】

【0032】
イオン交換の方法としては、1−アダマンタントリメチルアンモニウムハロゲン塩の溶液中に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ塩を添加し、析出するアルカリ金属のハロゲン化物を除去する方法、あるいはOH形陰イオン交換樹脂と接触させる方法等がある。
【0033】
水酸化アルカリ塩を使用する場合、1−アダマンタントリメチルアンモニウムハロゲン塩を溶媒cに溶解させた中に、例えば、水酸化カリウムをそのまま、或いは水酸化カリウムの溶媒cの溶液を、1−アダマンタントリメチルアンモニウムハロゲン塩の0.8〜5モル倍量添加し、析出する中性無機塩をろ過により除去した後得られた溶液より1−アダマンタントリメチルアンモニウムOH塩を得ることができる。
溶媒cとしては、1−アダマンタントリメチルアンモニウムハロゲン塩や1−アダマンタントリメチルアンモニウムOH塩の溶解度は高いが、中性無機塩の溶解度が低いものが好ましく、例えば、水及び/又はアルコールが用いられる。アルコールとしては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0034】
反応温度は、溶媒が液体であって、かつ−30℃〜120℃程度までが好ましく、さらに0℃〜100℃であることが好ましい。
この範囲内であると、イオン交換反応が良好に進行し中性無機塩の除去効率の良い温度で反応を実施可能であり、必要に応じて濃縮等の操作を行なうことも可能で、熱による品質低下のおそれもない。
【0035】
OH形陰イオン交換樹脂を使用する場合、1−アダマンタントリメチルアンモニウムハロゲン塩の溶媒cの溶液中にOH形陰イオン交換樹脂を添加した後、OH形陰イオン交換樹脂をろ過等で除去した溶液あるいはOH形陰イオン交換樹脂を充填したカラム中に1−アダマンタントリメチルアンモニウムハロゲン塩の溶媒cの溶液を仕込み、展開溶媒として溶媒cを使用して、カラム出口より流出してきた溶液より、1−アダマンタントリメチルアンモニウムOH塩を得ることができるが、後者の方がより残留ハロゲンの少ない1−アダマンタントリメチルアンモニウムOH塩を得ることができる。
【0036】
OH形陰イオン交換樹脂としては、強塩基性のものであれば使用可能で、例えばアンバーライトIRA400J(オルガノ社製)、ダイヤイオンSA10A(三菱化学社製)等が代表的なものとして挙げられる。
OH形であればそのまま、Cl形であれば一度アルカリでOH形にイオン交換して使用することができる。
溶媒cとしては特に水が好ましいが、他の溶媒cとして挙げたものを2種類以上混合して使用してもよい。
OH形陰イオン交換樹脂の使用温度は、0〜80℃程度までが好ましく、OH形陰イオン交換樹脂を除去した後は、アルカリ塩を使用する場合と同様に必要に応じて濃縮等の操作を行なうことも可能で、熱による品質低下のおそれもない。
【0037】
[第4級アンモニウムOH塩の純度]
本発明の工程A、B及びCを含む方法により製造された1−アダマンタントリメチルアンモニウムOH塩は、1−アダマンタントリメチルアンモニウムOH塩中に含まれるアルコールが5質量%以下、アルカリ金属及びアルカリ金属化合物がアルカリ金属原子換算で2質量%以下、ハロゲンイオンがハロゲン原子換算で2質量%以下とすることができる。
上記のとおり、本発明の製造方法により高純度の第4級アンモニウムOH塩を製造することができる。
なお、上記純度の第4級アンモニウムOH塩でなければ、ゼオライト製造用テンプレート剤として使用した場合に、収率が低下してしまうため、使用することが難しい。
なお、必要に応じて、工程A、B及びCの後、晶析等により、1−アダマンタントリメチルアンモニウムOH塩を精製し、さらに純度を向上させることができる。
【0038】
[工程D]
本発明のアダマンチル基を有する第4級アンモニウム塩の製造方法は、工程A及びBの後、工程Bで得られた1−アダマンタントリメチルアンモニウムハロゲン塩を精製する工程Dを行うことが好ましい。
精製の工程には再結晶で塩を析出する工程を含み、さらにはろ過や洗浄等を含む。精製は、第4級アンモニウムハロゲン塩の純度が高くなるまで何度行っても良い。
再結晶は溶媒として例えばアセトンを使用することで、高収率、高純度の1−アダマンタントリメチルアンモニウムハロゲン塩を得ることができる。
【0039】
[第4級アンモニウムハロゲン塩の純度]
本発明の工程A、B及びDを含む方法により製造された1−アダマンタントリメチルアンモニウムハロゲン塩は、ハロゲン化メチルとして臭化メチルを使用した場合、臭素イオンの含有量を臭素原子換算で28.3質量%以上とすることができ、ハロゲン化メチルとしてヨウ化メチルを使用した場合、ヨウ素イオンの含有量をヨウ素原子換算で38.2質量%以上とすることができる。
また、1−アダマンタントリメチルアンモニウムハロゲン塩中に含まれる不純物として、工程Bで未反応であった1−アダマンタンジメチルアミンの含有量を0.5質量%以下とすることができ、さらに、アルカリ金属の含有量を1000ppm以下とすることができる。
上記のとおり、本発明の製造方法により高純度の第4級アンモニウムハロゲン塩を製造することができる。なお、上記純度の第4級アンモニウムハロゲン塩でなければ、ゼオライト製造用テンプレート剤として使用した場合に、収率が低下してしまうため、使用することが難しい。
【実施例】
【0040】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0041】
[実施例1]
還流冷却管、温度計、攪拌機を備えた500ml三口フラスコに、塩酸アマンタジン39.4g[FW:187.11、0.21mol]、2−プロパノール(比誘電率:18)200mLを加え、溶解させた。溶液の温度を50℃に昇温し、その後、50質量%水酸化ナトリウム水溶液17gをゆっくり滴下して、1時間攪拌し、97質量%ギ酸水溶液30ml[FW:46.03、0.77mol]をゆっくり滴下した。攪拌しながら、37質量%ホルムアルデヒド水溶液85g[FW:30.03、1.05mol]を30分かけて滴下した。滴下終了後80℃まで昇温し、3時間反応を行なった。反応液を冷却し、25質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH10に調整した。酢酸エチル250mlを加え、有機相を分取した。
還流冷却管、温度計、攪拌機を備えた500ml三口フラスコに、分取した粗1−アダマンチルジメチルアミン溶液を加え、0℃まで冷却した。氷冷下、攪拌しながら臭化メチル19.9g[FW:94.94、0.21mol]を4時間かけて滴下した。滴下終了後、反応液を5時間反応させた。反応液を冷却した後、固形分をろ別し、さらにアセトンで洗浄後、乾燥して目的物であるアダマンチルトリメチルアンモニウムブロマイドを51.8g[FW:274.24、収率90.0%](白色粉体)で得た。
【0042】
[実施例2]
還流冷却管、温度計、攪拌機を備えた500ml三口フラスコに、塩酸アマンタジン39.4g[FW:187.11、0.21mol]、2−プロパノール200mLを加え、溶解させた。溶液の温度を50℃に昇温し、その後、50質量%水酸化ナトリウム水溶液17gをゆっくり滴下して、1時間攪拌し、97質量%ギ酸水溶液30ml[FW:46.03、0.77mol]をゆっくり滴下した。攪拌しながら、37質量%ホルムアルデヒド水溶液85g[FW:30.03、1.05mol]を30分かけて滴下した。滴下終了後80℃まで昇温し、3時間反応を行なった。反応液を冷却し、25質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH10に調整した。酢酸エチル250mlを加え、有機相を分取した。
還流冷却管、温度計、攪拌機を備えた500ml三口フラスコに、分取した粗1−アダマンチルジメチルアミン溶液を加え、0℃まで冷却した。氷冷下、攪拌しながらヨウ化メチル29.8g[FW:141.94、0.21mol]を4時間かけて滴下した。滴下終了後、反応液を5時間反応させた。反応液を冷却した後、固形分をろ別し、さらにアセトンで洗浄後、乾燥して目的物であるアダマンチルトリメチルアンモニウムヨージドを58g[FW:312.2、収率86%](白色粉体)で得た。
【0043】
実施例1及び2で得られた下記式で表わされる第4級アンモニウム塩のスペクトルデータを下記に示す。
【0044】
【化6】

【0045】
スペクトルデータ
核磁気共鳴スペクトル(溶媒:CDCl3)日本電子株式会社製 JNM−ECA500
1H−NMR(500MHz):1.69(b,6H)、2.05(c,6H)、2.35(d,6H)、3.3(a,9H)
13C−NMR(125MHz):30.0(e)、35.0(d、c)、48.0(a)、72.5(b)
【0046】
[実施例3]
還流冷却管、温度計、攪拌機を備えた500ml三口フラスコに、1−アミノアダマンタン31g[FW:151.25、0.21mol]、2−プロパノール200mLを加え、溶解させた。溶液の温度を50℃に昇温し、97質量%ギ酸水溶液30ml[FW:46.03、0.77mol]をゆっくり滴下した。攪拌しながら、37質量%ホルムアルデヒド水溶液85g[FW:30.03、1.05mol]を30分かけて滴下した。滴下終了後80℃まで昇温し、3時間反応を行なった。反応液を冷却し、25質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH10に調整した。酢酸エチル250mlを加え、有機相を分取した。
還流冷却管、温度計、攪拌機を備えた500ml三口フラスコに、分取した粗1−アダマンチルジメチルアミン溶液を加え、0℃まで冷却した。氷冷下、攪拌しながらヨウ化メチル31.3g[FW:141.94、0.22mol]を4時間かけて滴下した。滴下終了後、反応液を5時間反応させた。反応液を冷却した後、固形分をろ別し、さらにアセトンで洗浄後、乾燥して目的物であるアダマンチルトリメチルアンモニウムヨージドを61g[FW:312.2、収率93%](白色粉体)で得た。
【0047】
[実施例4]
温度計、攪拌機を備えた30mLの圧力容器に、1−ブロモアダマンタン6.65g[FW:215.13、30.9mmol]、ジメチルアミン4.18g[FW:45.08、92.7mmol]を加えた。撹拌しながら200℃まで昇温し、200℃で8時間反応した。反応終了後、25℃まで冷却し、水5ml、50質量%の水酸化ナトリウム水溶液2.97gを徐々に加えた。さらに、酢酸エチル10mlを加え、有機層を分取した。
還流冷却管、温度計、攪拌機を備えた50ml三口フラスコに、分取した粗1−アダマンチルジメチルアミン溶液を加え、0℃まで冷却した。氷冷下、攪拌しながら臭化メチル2.93g[FW:94.94、0.21mol]を1時間かけて滴下した。滴下終了後、5時間反応させた。反応液を冷却した後、固形分をろ別し、さらにアセトンで洗浄後、乾燥して目的物であるアダマンチルトリメチルアンモニウムブロマイドを7.54g[FW:274.24、収率89.0%](白色粉体)で得た。
【0048】
[実施例5]
温度計、攪拌機を備えた200mlの圧力容器に、実施例1で得られたアダマンチルトリメチルアンモニウムブロマイド20.0g[FW:274.24,73mmol]、メタノール66mlを加え溶解した。この中に85質量%水酸化カリウム4.82g[FW:56.11、73mmol]をメタノール10mlに溶解したものを、30℃以下になるように冷却、攪拌しながら30分かけて滴下すると、イオン交換反応が進むに従って無機塩が析出してきた。その後25℃で30分攪拌を行った後、5℃まで冷却し、ろ過を行なった。ろ液を濃縮,乾固し、トリメチルアダマンチルアンモニウムOH塩14.62g[FW:211.35、69mmol、収率95mol%]を得た。
【0049】
[実施例6]
陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA402BL OH AG(オルガノ社製))350mlをカラムに充填し、純水でよく洗浄した。実施例1で得られたアダマンチルトリメチルアンモニウムブロマイド20.0g[FW:274.24、73mmol]を純水20mlに溶解して充填カラムに流し、次いで展開溶媒として純水を40ml/minで流し、pH12以上の流出液を回収した。回収した水溶液を40℃で濃縮、乾固し、トリメチルアダマンチルアンモニウムOH塩15.0g[FW:211.35,71mmol、収率97mol%]を得た。
【0050】
[比較例1]
200ml三口フラスコに1−アミノアダマンタン10.0g(66mmol)、トリブチルアミン29.0g(156mmol)、ジメチルホルムアミド60mlを入れ、溶解した後、氷浴で冷却した。これにヨウ化メチル28.4g(200mmol)を30分かけて滴下した。数時間後に結晶の析出が見られ、15時間後に氷浴を外して室温に戻した。析出している結晶をろ過したのち、60mlのテトラヒドロフランで洗浄し、さらに60mlのジエチルエーテルで洗浄した後、真空乾燥を行ないアダマンチルトリメチルアンモニウムヨージド12.8g(40mmol、第1晶)を得た。
ろ液に対してジエチルエーテル60ml、アセトン60mlを加えて、冷蔵庫で一晩放置し、さらに析出した結晶をろ過して上記と同様の回収を行い、目的のアダマンチルトリメチルアンモニウムヨージド2.5g(8mmol、第2晶)を得た。[全収量15.3g(48mmol)、収率73%]。
【0051】
[比較例2]
還流冷却管、温度計、攪拌機を備えた500ml三口フラスコに、1−アミノアダマンタン31g[FW:151.25、0.21mol]、エタノール(比誘電率:24.3)200mLを加え、溶解させた。溶液の温度を50℃に昇温し、97質量%ギ酸水溶液30ml[FW:46.03、0.64mol]をゆっくり滴下した。攪拌しながら、37質量%ホルムアルデヒド水溶液85g[FW:30.03、0.84mol]を30分かけて滴下した。滴下終了後80℃まで昇温し、3時間反応を行なった。反応液を冷却し、25質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH10に調整した。酢酸エチル250mlを加え、有機相を分取した。
還流冷却管、温度計、攪拌機を備えた500ml三口フラスコに、分取した粗1−アダマンチルジメチルアミン溶液を0℃まで冷却した。氷冷下、攪拌しながらヨウ化メチル31.3g[FW:141.94、0.22mol]を4時間かけて滴下した。滴下終了後、反応液を5時間反応させた。反応液を冷却した後、固形分をろ別し、さらにアセトンで洗浄後、乾燥して目的物であるアダマンチルトリメチルアンモニウムヨージドを19.7g[FW:312.2、収率30%](白色粉体)で得た。
【0052】
[比較例3]
還流冷却管、温度計、攪拌機を備えた500ml三口フラスコに、塩酸アマンタジン39.4g[FW:187.11、0.21mol]、2−プロパノール200mLを加え、溶解させた。溶液の温度を50℃に昇温し、97質量%ギ酸水溶液30ml[FW:46.03、0.77mol]をゆっくり滴下した。攪拌しながら、37質量%ホルムアルデヒド水溶液85g[FW:30.03、1.05mol]を30分かけて滴下した。滴下終了後80℃まで昇温したが、1−アダマンタンジメチルアミンへの反応の進行がみられなかった。
【0053】
実施例及び比較例で得られた第4級アンモニウム塩中に含まれる、臭素イオン(臭素分、臭素原子換算値)及びヨウ素イオン(ヨウ素分、ヨウ素原子換算値)の含有量をイオンクロマトグラフにて測定し、ナトリウム及びナトリウム化合物(ナトリウム原子換算値)並びにカリウム及びカリウム化合物(カリウム原子換算値)の含有量をICP質量分析法(ICP−MS)により測定し、1−アダマンチルジメチルアミン、メタノール含量をFID−GCにより測定した。また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC−RI法)にて測定することにより、1−アダマンタンジメチルアミンの含有量と目的物である第4級アンモニウム塩の純度を分析した。上記の測定結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、アダマンチル基を有する第4級アンモニウム塩を短時間で効率よく工業的に高収率で製造することができる。また、本発明の方法で得られる第4級アンモニウム塩は高純度であるため、ゼオライト製造用のテンプレート剤、界面活性剤、抗菌剤等に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程A及びBを順次含むことを特徴とするアダマンチル基を有する第4級アンモニウム塩の製造方法。
工程A:比誘電率が10.0〜20.0である溶媒aに溶解した塩酸アマンタジン〔下記式(1−1)〕と水酸化アルカリ金属との反応物を、ギ酸、並びに、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドと反応させる工程、
溶媒aに溶解した1−アミノアダマンタン〔下記式(1−2)〕を、ギ酸、並びに、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドと反応させる工程、
1−ハロゲノアダマンタン〔下記式(1−3)〕とジメチルアミンを反応させる工程
から選ばれる1−アダマンタンジメチルアミン〔下記式(2)〕の製造工程、
工程B:溶媒bに溶解した工程Aで得られた1−アダマンタンジメチルアミン〔下記式(2)〕とハロゲン化メチルを反応させる1−アダマンタントリメチルアンモニウムハロゲン塩〔下記式(3)〕の製造工程。
【化1】

【請求項2】
工程Bにおけるハロゲン化メチルが臭化メチル又はヨウ化メチルである請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
工程Aにおける溶媒aが比誘電率10.0〜18.7のアルコールである請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記アルコールが第2級アルコールである請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
工程Aにおける1−ハロゲノアダマンタンが1−ブロモアダマンタンである請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項6】
工程Bにおける溶媒bの比誘電率が4.0〜20.0のアルコール系溶媒、エステル系溶媒及びエーテル系溶媒から選ばれる1種以上である請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
さらに、下記の工程Cを含む請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
工程C:溶媒cに溶解した、工程Bで得られた1−アダマンタントリメチルアンモニウムハロゲン塩〔下記式(3)〕をイオン交換する1−アダマンタントリメチルアンモニウムOH塩〔下記式(4)〕の製造工程。
【化2】

【請求項8】
工程Cにおけるイオン交換を水酸化アルカリ金属を用いて行なう請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
水酸化アルカリ金属が水酸化カリウムである請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
工程Cにおけるイオン交換を塩基性陰イオン交換樹脂(OH形)を用いて行なう請求項7に記載の製造方法。
【請求項11】
工程Cにおける溶媒cが水及び/又はアルコールである請求項7〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
工程Cで得られた1−アダマンタントリメチルアンモニウムOH塩中に含まれるアルコールが5質量%以下、アルカリ金属及びアルカリ金属化合物がアルカリ金属原子換算で2質量%以下、ハロゲンイオンがハロゲン原子換算で2質量%以下である請求項7〜11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
さらに、下記の工程Dを含む請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
工程D:工程Bで得られた1−アダマンタントリメチルアンモニウムハロゲン塩を精製する工程。
【請求項14】
工程Bにおけるハロゲン化メチルが臭化メチルであり、工程Dで精製した1−アダマンタントリメチルアンモニウム臭素塩中に含まれる臭素イオンが臭素原子換算で28.3質量%以上、1−アダマンタンジメチルアミンが0.5質量%以下、アルカリ金属が1000ppm以下である請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
工程Bにおけるハロゲン化メチルがヨウ化メチルであり、工程Dで精製した1−アダマンタントリメチルアンモニウムヨウ素塩中に含まれるヨウ素イオンがヨウ素原子換算で38.2質量%以上、1−アダマンタンジメチルアミンが0.5質量%以下、アルカリ金属が1000ppm以下である請求項13に記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−246429(P2011−246429A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144935(P2010−144935)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】