説明

アッパーサポート及びショックアブソーバに対するアッパーサポートの取付構造

【課題】ストッパ機能と防振機能とが共に有利に発揮され得るアッパーサポートを提供する。
【解決手段】有底のテーパ筒状を呈するベース部材12のテーパ筒部16に、それに対応するテーパ筒形状を呈する本体ゴム部26を固設すると共に、該ベース部材12の底部18の上面に、下部部位が上部部位よりも厚肉とされた筒状のストッパゴム部28を立設し、更に、該ストッパゴム部28の軸方向中間部に、かかる部分を上方からの押圧力により径方向外方に容易に屈曲させる易変形部44を設けた。そして、それら本体ゴム部26とストッパゴム部28とを連結ゴム部30にて一体的に連結すると共に、該連結ゴム部30に対して、該ストッパゴム部28の周りに連続して延びる深底のすぐり部48を設けて、構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アッパーサポート及びショックアブソーバに対するアッパーサポートの取付構造に係り、特に、ショックアブソーバのピストンロッドを車体に防振連結するアッパーサポートと、かかるアッパーサポートをショックアブソーバに対して有利に取り付けるための構造とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のアッパーサポート(ストラットマウント)には、従来より各種の構造のものがあり、その中の一種として、例えば、下記特許文献1等に明らかにされるように、ベース金具と、略厚肉の円筒形状を呈し、ベース金具の上面に固設されて、外部からの入力振動により圧縮変形せしめられる本体ゴム部と、この本体ゴム部の上端面の内周部に一体形成された筒状のストッパゴム部とを有してなるものが、知られている。
【0003】
このようなアッパーサポートにおいては、ベース金具が、ショックアブソーバのピストンロッドの上部に取り付けられる一方、本体ゴム部が、ピストンロッドの上端部に外挿された状態で、下方に向かって開口する略有底の筒形状を有して車体に設けられる車体側取付部内に嵌め込まれて、かかる車体側取付部の筒部により包囲されつつ、車体側取付部の底部とベース金具との上下方向において互いに対向する対向面間に介在するように組み付けられる。これによって、ピストンロッドと車体との間に入力される上下方向(軸方向)や左右、前後方向(軸直角方向)の振動荷重が、本体ゴム部の圧縮方向の弾性変形に基づいて吸収され得るようになっている。
【0004】
また、かかるアッパーサポートにあっては、本体ゴム部の内孔を挿通して延びるピストンロッドの上端部に、本体ゴム部の上端面と所定距離を隔てて固定された円板状のストッパプレートの下面にて、ストッパゴム部の上部部位が下方に押圧されることにより、ストッパゴム部が、軸方向中間部において径方向外方に屈曲せしめられて、上部部位の内周面がストッパプレートの下面に接触位置せしめられるようになっている。そうして、ピストンロッドの下方への変位時(ピストンロッドの引込作動時)に、ストッパプレートが、ストッパゴム部の上部部位を介して車体取付部の底部に接触することで、ピストンロッドの下方への過大な変位が弾性的に規制されるようになっているのである。また、かかるストッパゴム部が本体ゴム部とは別体に設けられるものに比して、部品点数の削減が、有利に実現されているのである。
【0005】
しかしながら、かくの如き構造を有する従来のストッパゴム部付きアッパーサポートでは、上記の如き有利な特徴を発揮する反面、ピストンロッドと車体との間への振動荷重の入力時に、本体ゴム部が弾性的に圧縮変形せしめられるものであるため、柔らかいばね特性を得ることが困難であった。
【0006】
一方、下記特許文献2等には、ショックアブソーバのピストンロッドの上部に取り付けられる底部と、かかる底部のピストンロッドへの取付状態下で、底部から下方に向かって径を漸増させつつ延びるテーパ筒部とを一体的に備えた有底のテーパ筒状を呈するベース金具と、このベース金具のテーパ筒部の外周面に対応した内周面を有するテーパ筒形状を呈し、内周面において、テーパ筒部の外周面に加硫接着等により固着される本体ゴム部とを有するアッパーサポートも開示されている。なお、このアッパーサポートは、本体ゴム部の外周面に、それに対応したテーパ筒状のアウタ金具が固着され、更に、かかるアウタ金具の外周面に、薄肉の被覆ゴム部が、本体ゴム部と一体で形成されている。
【0007】
このような構造のアッパーサポートにあっては、ベース金具の底部のピストンロッドへの取付状態下で、本体ゴム部が、それに対応したテーパ筒形状を有して車体に設けられるテーパ状取付部の内側に、外周面をテーパ状取付部の内周面に接触させるように嵌め込まれて、かかるテーパ状取付部とベース金具のテーパ筒部との間で挟持され、以て、ピストンロッドと車体との間に介装されている。
【0008】
かくして、かかるアッパーサポートでは、ピストンロッドと車体との間に、特に上下方向(軸方向)の振動荷重が入力された際に、本体ゴム部が剪断・圧縮方向において弾性変形せしめられ、それによって、柔らかなばね特性が有効に発揮されて、かかる振動荷重が効果的に吸収され得るようになっているのである。
【0009】
ところが、このような剪断・圧縮タイプのアッパーサポートにおいては、上記の如く、ピストンロッドと車体との間に、上下方向への振動荷重が入力せしめられた際に、柔らかいばね特性を発揮するものの、その反面、本体ゴム部の弾性変形量が不可避的に増大して、本体ゴム部の上端面や下端面の伸張量も大きくなってしまう。そのため、例えば、前述せる圧縮タイプのアッパーサポートの本体ゴム部に一体形成された筒状のストッパゴム部を、圧縮・剪断タイプのアッパーサポートの本体ゴム部の上端面に設けた場合、かかるストッパゴム部の本体ゴム部との接続部分において、それらストッパゴム部の外周面と本体ゴム部の上端面との間に形成される角部に大きな応力集中が繰り返し惹起され、その結果、長期使用によって、かかる角部に亀裂等が生ずる恐れがあった。
【0010】
なお、そのような亀裂の発生の問題を解消するには、本体ゴム部の上端面に、上方に向かって開口する深底のすぐり部を、ストッパゴム部の周りに連続して延びるように形成することが、考えられる。そうすることにより、ストッパゴム部の本体ゴム部との接続部分の自由長が増大せしめられて、本体ゴム部の剪断・圧縮方向の弾性変形時に、ストッパゴム部の本体ゴム部との接続部分に生ずる応力が緩和され、その結果、かかる接続部分での亀裂の発生が効果的に防止され得るのである。
【0011】
しかしながら、そうした場合、以下の如き問題が生ずる。即ち、ストッパゴム部の本体ゴム部との接続部分に深底のすぐり部を設けると、すぐり部の深さに応じた寸法だけ、ストッパゴム部の高さ寸法が不可避的に大きくなり、それによって、ストッパゴム部の上部部位が、ストッパプレートの下面にて下方に押圧された際に、ストッパゴム部が座屈変形し易くなって、所望の位置よりも下側の位置で屈曲変形せしめられることが多く生じるようになる。そして、そうなった場合には、ストッパゴム部の上部部位の内周面の全部をストッパプレートに確実に接触させることが難しくなり、その結果、上記せる如きストッパゴム部の本来の弾性に基づくストッパ機能を十分に且つ安定的に発揮させることが、困難となってしまうのである。
【0012】
【特許文献1】実用新案登録第2587050号公報
【特許文献2】特開2004−232824号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その課題とするところは、ショックアブソーバのピストンロッドを車体に防振連結するアッパーサポートであって、且つピストンロッドの下方への過大変位を弾性的に規制するストッパゴム部が本体ゴム部に一体で設けられたものにおいて、本体ゴム部による柔らかなばね特性を有効に確保しつつ、ストッパゴム部の弾性に基づく有利なストッパ機能が、更に確実に、しかもより長期亘って安定的に発揮され得るように改良された構造を提供することにある。また、本発明にあっては、そのような改良された構造を有するアッパーサポートをショックアブソーバに対して有利に取り付ける構造を提供することをも、その解決課題とするところである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そして、本発明にあっては、アッパーサポートに係る課題の解決のために、その要旨とするところは、(a)ショックアブソーバのピストンロッドの上部に取り付けられる底部と、該底部の該ピストンロッドへの取付状態下で、該底部から下方に向かって径を漸増させつつ延びるテーパ筒部とを一体的に備えた有底のテーパ筒状を呈する剛性のベース部材と、(b)該ベース部材の前記テーパ筒部の外周面に対応した内周面を有するテーパ筒形状を呈し、該内周面において、該テーパ筒部の外周面に接触して固設される本体ゴム部と、(c)前記ベース部材の前記底部の上面上に、上下方向に延びるように立設された、下部部位が上部部位よりも厚肉とされた筒状体からなり、該上部部位が、該ベース部材の底部を貫通して延びる前記ピストンロッドにおける該ベース部材の取付部位よりも更に上部側部位に、該ベース部材の該底部と所定距離を隔てて対向して取り付けられるストッパプレートの下面にて下方に押圧されることにより、軸方向中間部が全周に亘って径方向外方に屈曲せしめられて、該上部部位の内周面が該ストッパプレートの下面に接触位置せしめられるストッパゴム部と、(d)該ストッパゴム部の軸方向中間部に、全周に亘って周方向に連続して延びるように設けられた薄肉部分からなり、該ストッパゴム部が前記ストッパプレートにて下方に押圧されたときに、径方向外方に容易に屈曲せしめられる易屈曲部と、(e)前記ストッパゴム部と前記本体ゴム部とを一体的に連結する連結ゴム部と、(f)該連結ゴム部に対して、上方に向かって開口して、前記ストッパゴム部の周りに連続して延びるように形成された深底のすぐり部とを含んで構成したことを特徴とするアッパーサポートにある。
【0015】
なお、このような本発明に従うアッパーサポートの好ましい態様の一つによれば、前記ベース部材における前記テーパ筒部の開口側の端部に、外フランジ部が、前記本体ゴム部の下端面と上下方向に所定距離を隔てて対向位置するように設けられる一方、前記すぐり部の深さ寸法が、該外フランジ部と該本体ゴム部の下端面との間の距離よりも大なる大きさとされる。
【0016】
また、本発明に従うアッパーサポートの望ましい態様の一つによれば、前記本体ゴム部と前記ストッパゴム部と前記連結ゴム部とが、前記ベース部材と非接着状態で一体加硫成形された一体加硫成形品にて構成される一方、該ベース部材の前記テーパ筒部における前記外フランジ部の両側面と先端面とを被覆する被覆ゴム部が、該本体ゴム弾性体と一体で設けられ、そして、該テーパ筒部の該外フランジ部に貫通孔が形成されて、該外フランジ部の両側面をそれぞれ被覆する被覆ゴム部部分同士が、該外フランジ部の該貫通孔内に位置する被覆ゴム部部分にて一体に連結されることとなる。
【0017】
さらに、本発明に従うアッパーサポートの好適な態様の一つによれば、前記ストッパゴム部の上部部位に、軸方向に延びるスリットが、周方向に間隔を隔てて複数設けられる。
【0018】
更にまた、本発明に従うアッパーサポートの別の好ましい態様の一つによれば、前記ストッパゴム部の上部部位の内周面が、上方に向かって徐々に大径化するテーパ面又は湾曲面とされる。
【0019】
また、本発明に従うアッパーサポートの望ましい他の態様の一つによれば、前記易変形部が、前記ストッパゴム部の軸方向中間部の互いに対応する内周面と外周面のうちの少なくとも何れか一方に周設された凹溝の底部にて構成される。
【0020】
さらに、本発明に従うアッパーサポートの他の好適な態様の一つによれば、前記ベース部材の前記ピストンロッドへの取付状態下で、前記本体ゴム部が、該本体ゴム部に対応したテーパ筒形状を有して車体に設けられたテーパ状取付部の内側に、外周面を該テーパ状取付部の内周面に接触させるように嵌め込まれて、車体の重量により、該テーパ状取付部と該ベース部材の該底部との間で挟持されることによって、車体に対して締結されることなく、該ピストンロッドと車体との間に介装されるように構成される。
【0021】
そして、本発明にあっては、前記せるショックアブソーバに対するアッパーサポートの取付構造に係る課題の解決のために、ショックアブソーバのピストンロッドを車体に防振連結するアッパーサポートのショックアブソーバに対する取付構造であって、前記アッパーサポートとして、(a)軸方向一方側に向かって次第に大径となるテーパ筒部と、該テーパ筒部の小径側開口部を閉塞する底部とを一体的に備えた有底のテーパ筒状を呈する剛性のベース部材と、(b)該ベース部材の前記テーパ筒部の外周面に対応した内周面を有するテーパ筒形状を呈し、該内周面において、該テーパ筒部の外周面に接触して固設される本体ゴム部と、(c)前記ベース部材の前記底部の外面上に、軸方向に延びるように立設された、基部側部位が先端側部位よりも厚肉の筒形状を呈するストッパゴム部と、(d)該ストッパゴム部の軸方向中間部に、全周に亘って周方向に連続して延びるように設けられた薄肉部分からなり、該ストッパゴム部の先端側部位を基部側に向かって押圧する押圧力が加えられたときに、径方向外方に容易に屈曲せしられめる易屈曲部と、(e)前記ストッパゴム部と前記本体ゴム部とを一体的に連結する連結ゴム部と、(f)該連結ゴム部に対して、前記ベース部材における前記テーパ筒部の開口側とは反対側に向かって開口して、前記ストッパゴム部の周りに連続して延びるように形成された深底のすぐり部とを含んで構成したものを用い、かかるアッパーサポートの前記ベース部材を、前記テーパ筒部が下方に向かって開口するようにして、前記底部において前記ピストンロッドに取り付ける一方、該ベース部材の底部を貫通し且つ前記ストッパゴム部内を挿通せしめられた前記ピストンロッドにおける該ベース部材の取付部位よりも更に上部側部位に、該ベース部材の該底部と所定距離を隔てて対向して取り付けられるストッパプレートの下面にて、該ストッパゴム部の前記先端側部位が下方に押圧されることにより、該ストッパゴム部の前記易屈曲部が径方向外方に屈曲せしめられて、該先端側部位の内周面が該ストッパプレートの下面に接触位置せしめられるように、該ストッパゴム部を配置したことを特徴とするショックアブソーバに対するアッパーサポートの取付構造をも、また、その要旨とするものである。
【発明の効果】
【0022】
すなわち、本発明に従うアッパーサポートにあっては、本体ゴム部が、ショックアブソーバのピストンロッドに取り付けられるベース部材のテーパ筒部に対応したテーパ筒形状を有して、かかるテーパ筒部に固設されている。そのため、例えば、本体ゴム部を、それに対応したテーパ筒状の車体側取付部の内側に嵌め込んで、そのような車体側取付部と、ベース部材のテーパ筒部との間に挟持させた状態で、アッパーサポートを車体に取り付ければ、ピストンロッドと車体との間に、特に上下方向(軸方向)の振動荷重が入力された際に、本体ゴム部が剪断・圧縮方向において弾性変形せしめられ、それによって、柔らかなばね特性が有効に発揮されて、かかる振動荷重が効果的に吸収され得るようになる。
【0023】
しかも、本発明に係るアッパーサポートにおいては、連結ゴム部に対して、深底のすぐり部が、ストッパゴム部の周りに連続して延びるように形成されており、それによって、ストッパゴム部が一体的に立設される連結ゴム部の上面と、それに連続する本体ゴム部の上端面とにおける自由長が有効に長くされている。それ故、上記の如く、ピストンロッドと車体との間に、上下方向の振動荷重が入力された際に、本体ゴム部において柔らかなばね特性が発揮されて、本体ゴム部が大きな量で弾性変形せしめられても、ストッパゴム部の連結ゴム部との接続部分に大きな応力集中が生ずることが可及的に回避乃至は緩和され、その結果、かかる接続部分での亀裂の発生が効果的に防止され得る。
【0024】
そして、本発明に係るアッパーサポートにあっては、ストッパゴム部の下部部位が、上部部位よりも厚肉とされていると共に、その軸方向中間部に、薄肉の易屈曲部が設けられている。それ故、連結ゴム部に深底のすぐり部が設けられることで、ストッパゴム部の高さ(軸方向長さ)が大きくされていても、ストッパゴム部の上部部位がストッパプレートにて下方に押圧されたときに、ストッパゴム部が、下部部位において座屈変形せしめられることなく、その軸方向中間部の易屈曲部において、確実に径方向外方に屈曲せしめられ、それによって、ストッパゴム部の上部部位の内周面の全部を、ストッパプレートに対して、常に、確実に接触させることが可能となる。その結果、ピストンロッドの下方への変位時(ピストンロッドの引込作動時)に、ストッパプレートが、その下面に接触位置せしめられたストッパゴム部の上部部位を介して、例えば車体の一部(車体側取付部等)に接触することで、ピストンロッドの下方への過大な変位を弾性的に規制するようにしたストッパプレートとストッパゴム部とによる有利なストッパ機能が、確実に且つ有効に発揮され得る。
【0025】
従って、かくの如き本発明に従うアッパーサポートにあっては、本体ゴム部による柔らかなばね特性を有効に確保しつつ、ストッパゴム部の弾性に基づく有利なストッパ機能が、十分に且つ確実に、しかも、より長期に亘って安定的に発揮され得るのである。
【0026】
また、本発明に係るアッパーサポートにおいては、ストッパゴム部が、連結ゴム部を介して、本体ゴム部と一体で形成されているところから、ストッパゴム部を本体ゴム部とは別体で設ける場合に比して、部品点数が有利に削減され得て、製作性の向上が効果的に図られ得るといった利点もある。
【0027】
さらに、本発明に従うアッパーサポートにおいて、すぐり部の深さ寸法が、ベース部材におけるテーパ筒部の開口側端部に設けられた外フランジ部と本体ゴム部の下端面との間の距離よりも大なる大きさとされる場合には、かかる外フランジ部と本体ゴム部の下端面との間の距離に相当するピストンロッドの下方への変位ストロークよりも、すぐり部の深さ寸法が大きくされることとなる。
【0028】
このため、例えば、ピストンロッドの下方への大変位時にストッパゴム部の上部部位が接触せしめられる車体の一部が、ピストンロッドが挿入される孔部を備えた、アッパーサポートを車体に取り付けるための車体側取付部等であった場合に、かかる車体側取付部の孔部の開口周縁部の角部分をすぐり部の開口部上に位置させておけば、そのような角部分が、ピストンロッドの下方への大変位によって連結ゴム部と接触するようなことが有利に回避され得る。それによって、かかる角部分との接触による連結ゴム部の損傷が、未然に阻止され、その結果、深底のすぐり部の形成に伴う上記の如きストッパゴム部によるストッパ機能の安定確保に加えて、連結ゴム部、ひいてはアッパーサポート全体の使用耐久性の向上が、より効果的に図られ得ることとなるのである。
【0029】
さらに、本発明に係るアッパーサポートにおいて、ストッパゴム部の上部部位に複数のスリットが設けられる場合や、ストッパゴム部の上部部位の内周面が、上方に向かって徐々に大径化するテーパ面又は湾曲面とされる場合には、ストッパゴム部の上部部位が、ストッパプレートにて下方に押圧されたときに、よりスムーズに径方向外方に屈曲変形せしめられて、かかるストッパゴム部の上部部位の内周面の全部が、ストッパプレートの下面に対して、より確実に接触位置せしめられるようになる。それによって、ストッパゴム部によるストッパ機能が、更に一層確実に発揮され得ることとなる。
【0030】
そして、本発明に従うショックアブソーバに対するアッパーサポートの取付構造にあっても、上記せる本発明に従うアッパーサポートにおいて奏され得る作用・効果と実質的に同一の作用・効果が、極めて有効に享受され得ることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0032】
先ず、図1乃至図3には、本発明に従う構造を有するアッパーサポートの一例としての自動車用サスペンション機構のショックアブソーバに取り付けられるアッパーサポートが、その縦断面形態と上面形態と下面形態とにおいて、それぞれ概略的に示されている。それらの図から明らかなように、本実施形態のアッパーサポート10は、ベース部材としてのベース金具12とゴム弾性体14とを有し、それらが非接着状態で一体加硫成形されてなる一体加硫成形品として、構成されている。なお、以下からは、便宜上、図1中の上方を上側乃至は上方と言い、また、その反対側を下側乃至は下方と言うこととする。
【0033】
より具体的には、アッパーサポート10を構成するベース金具12は、下方に向かって次第に大径化するテーパ筒部16と、このテーパ筒部16の小径側の上側開口部を閉塞する底部18とを一体的に備えた、全体として、下方に向かって開口する有底のテーパ筒形状を呈している。
【0034】
そして、底部18は、上下両面が平滑面された、所定厚さを有する円板形状を有し、その中心部に、円形の挿通孔20が、板厚方向に貫通して、設けられている。この挿通孔20は、アッパーサポート10が取り付けられるショックアブソーバのピストンロッドの上端部(後述するボルト部)が挿通可能な大きさの内径を有している。
【0035】
また、テーパ筒部16は、底部18と同一の厚さで、底部18から下方に向かって径を漸増させつつ延び出す形態を有し、その大径側の先端部(下端部)には、径方向外方に突出し且つ周方向に連続して延びる外フランジ部22が、一体的に設けられている。つまり、外フランジ部22は、上下両面が平滑面とされた、テーパ筒部16と同一厚さの円環板形態を呈し、テーパ筒部16の開口側端部の外周面に対して、一体的に周設されている。また、この外フランジ部22の外周部には、複数個(ここでは4個)の小径の貫通孔24が、周方向において互いに間隔を隔てて、穿設されている。
【0036】
一方、ゴム弾性体14は、本体ゴム部26とストッパゴム部28と連結ゴム部30とを、更に有している。本体ゴム部26は、比較的に厚い一定の肉厚を有して、下方に向かって徐々に大径化するテーパ筒状の全体形状を有している。そうして、この本体ゴム部26の内周面32が、ベース金具12のテーパ筒部16の外周面34に対応したテーパ面とされていると共に、本体ゴム部26の外周面36が、テーパ筒部16の外周面34のテーパ角度と略同じテーパ角度を有して、内周面32の径方向外方に、それと平行に延びるテーパ面とされている。
【0037】
また、かかる本体ゴム部26では、その外周面36の下端縁:ア(大径側の端縁)が、内周面32の下端縁:イ(大径側の端縁)よりも、所定寸法だけ径方向外側で且つ高い位置に位置せしめられている一方、外周面36の上端縁:ウ(小径側の端縁)が、内周面32の上端縁:エ(小径側の端縁)の鉛直上方に所定寸法だけ離間して、位置せしめられている。
【0038】
これにより、本体ゴム部26において、外周面36の最大径が、内周面32の最大径よりも所定寸法大きくされている一方、外周面の最小径が、内周面32の最小径と略同じ大きとされている。また、そのような外周面36の下端縁:アと内周面の下端縁:イとを連結する大径側端面37が、略半円弧状の凹状湾曲面とされている一方、外周面36の上端縁:ウと内周面の上端縁:エとを連結する小径側端面38が、鉛直方向に延びる平坦面とされている。なお、図1及び図2中、39は、本体ゴム部26の外周面36に対して、周方向に一定間隔を隔てて複数設けられた凹所である。
【0039】
そして、このような本体ゴム部26が、ベース金具12のテーパ筒部16に対して、内周面32をテーパ筒部16の外周面34に非接着で密接せしめた状態において固設されている。また、かかる固設状態下において、本体ゴム部26には、ベース金具12における外フランジ部22の上面の全面と、下面の内周側部分の除く大部分と、先端面の全面とをそれぞれ被覆する被覆ゴム部41が、一体で形成されている。そして、この被覆ゴム部41は、その一部が、外フランジ部22の各貫通孔24内に充填されて、外フランジ部22の上面と下面とをそれぞれ被覆する被覆ゴム部41部分同士を互いに連結した状態で、各貫通孔24の内周面に係合せしめられている。これによって、本体ゴム部26が、ベース金具12のテーパ筒部16に対して非接着とされているにも拘わらず、かかる本体ゴム部26、ひいてはゴム弾性体14全体のベース金具12からの剥離が防止され得るようになっている。
【0040】
一方、ストッパゴム部28は、全体として円筒形状を呈し、本体ゴム部26よりも十分に薄い肉厚と、本体ゴム部26の内外周面の最小内径よりも小さな外径とを有している。そして、テーパ筒状を呈する本体ゴム部26の内側において、それと同軸上で上下方向に真っ直ぐに延びるように位置せしめられた状態で、ベース金具12の底部18の内周部上に、前記挿通孔20の開口部を取り囲むように直立して、固設されている。
【0041】
また、かかるストッパゴム部28においては、外周面が、高さ方向の全体に亘って、一定の径で真っ直ぐに延びる円筒面とされている一方、内周面の上端部が、上方に向かって次第に大径化するテーパ状摺動面40とされている。
【0042】
さらに、ストッパゴム部28の内周面の高さ方向略中央部には、断面略V字状の凹溝42が、周方向に連続して、水平に延びるように形成されている。これにより、ストッパゴム部28の高さ方向中央部位が、全周に亘って、凹溝42の底部にて構成されて、他の部分よりも薄肉化された薄肉部44とされている。
【0043】
また、ストッパゴム部28の内周面の下端部が、薄肉部44を与える凹溝42の形成部位の上側に位置する円筒状の内周面部分よりも小径の円筒面とされると共に、かかる内周面の下端部から凹溝42の形成部位までの間の内周面部分が、下方に向かって次第に小径化するテーパ面乃至は湾曲面とされている。そうして、ストッパゴム部28の薄肉部44よりも下側部分(下部部位)の全体が、径方向内方に膨出せしめられて、薄肉部44よりも上側部分(上部部位)に比して厚肉化されている。
【0044】
さらに、このようなストッパゴム部28の周方向に等間隔を隔てた複数箇所(ここでは4箇所)には、上端面において開口する狭幅のスリット46が、薄肉部44を越えて、内周面が小径の円筒面とされた下端部の近くにまで達する深さをもって、それぞれ一つずつ形成されている。なお、それら複数のスリット46の周方向の間隔は、必ずしも一定でなくとも良い。
【0045】
また、連結ゴム部30は、本体ゴム部26よりも薄く且つストッパゴム部28よりも厚い肉厚を有する略円筒状の全体形状を有している。そして、本体ゴム部26の小径側端面38とストッパゴム部28の外周面との間に位置せしめられて、ベース金具12の底部18の外周部上に固設された状態で、内周面と外周面とにおいて、本体ゴム部26の小径側端面38とストッパゴム部28の外周面とに対してそれぞれ一体化されている。これによって、本体ゴム部26とストッパゴム部28とを、一体的に連結している。
【0046】
そして、このような連結ゴム部30には、上方に向かって開口するすぐり部48が、ストッパゴム部28の周りに連続して延びるように形成されている。このすぐり部48は、その開口幅が、連結ゴム部30の幅と同一の寸法とされており、また、その深さ寸法:d1 が、本体ゴム部26の外周面36の下端縁:アと、ベース金具12の外フランジ部22の上面を被覆する被覆ゴム部41部分の上面との間の距離:d2 よりも、所定寸法大きくされている。これによって、ここでは、すぐり部48の内面の面積が十分に大きくされて、本体ゴム部26の外周面36の上端縁:ウとストッパゴム部28の外周面の下端縁とを繋ぐ連結ゴム部30の自由表面の面積、更にはその自由長が、有利に大ならしめられている。また、すぐり部48の底面が湾曲面とされており、それによって、ストッパゴム部28と連結ゴム部30との間の角部や本体ゴム部26と連結ゴム部30との間の角部が、何れも凹状湾曲面からなる湾曲角部とされている。
【0047】
而して、かくの如き構造とされたアッパーサポート10にあっては、例えば、以下のようにして、ショックアブソーバのピストンロッドと車体との間に介装されることとなる。
【0048】
すなわち、先ず、図4に示されるように、車軸側に固定されたショックアブソーバのピストンロッド50の上端面52に一体的に立設されるボルト部54が、ベース金具12の底部18の挿通孔20内に、底部18の下面側から挿通されて、このボルト部54に第一ナット56が螺合されることにより、ベース金具12の底部18が、それらピストンロッド50の上端面と第一ナット56との間で締付固定され、以て、アッパーサポート10が、ピストンロッド50の上端部に、位置固定に取り付けられる。
【0049】
このとき、ベース金具12のテーパ筒部16が、底部18から下方に向かって径を漸増させつつ延び出すように位置せしめられる。また、ベース金具12に固設されたゴム弾性体14のうち、本体ゴム部26が、テーパ筒部16と同様に、下方に向かって拡径するように配置される一方、ストッパゴム部28は、ピストンロッド50のボルト部54に外挿された状態で、それと同軸的に位置せしめられる。なお、図4中、58はコイルスプリング58であり、また60は、コイルスプリング58の上端部を支持するスプリングシートであり、更に、61は、スプリングシート60とベース金具12との間に介在せしめられるベアリングである。
【0050】
そして、かくしてピストンロッド50に取り付けられたアッパーサポート10が、車体に対して固定的に設けられた車体側取付部62に組み付けられる。この車体側取付部62は、テーパ筒状の本体ゴム部26の外周面36に対応した、下方に向かって徐々に大径化するテーパ状の内周面を有するテーパ状取付部64と、このテーパ状取付部64の小径の上側開口部を閉塞する円板状取付部66とを備えている。また、かかる円板状取付部66の中央部には、大径の円形孔68が穿設されている。
【0051】
そして、そのような車体側取付部62における円板状取付部66の円形孔68内に、ベース金具12が取り付けられたピストンロッド50のボルト部54のうちのベース金具12取付部分よりも上部側部位と、ストッパゴム部28が、下側から挿通せしめられると共に、本体ゴム部26が、車体側取付部62のテーパ状取付部64の内側に嵌め込まれて、本体ゴム部26の外周面36の全面が、円板状取付部66の外周部の下面と、テーパ状取付部64の下面とに接触位置せしめられる。そうして、車体の重量が、車体側取付部62を介して本体ゴム部26に及ぼされて、この本体ゴム部26が、車体側取付部62のテーパ状取付部64とベース金具12の底部18との間で挟持され、以て、アッパーサポート10が、車体に対してボルト等で、何等締結されることなく、ピストンロッド50と車体との間に介装されて、組み付けられる。
【0052】
なお、このとき、本体ゴム部26に車重が加わることにより、すぐり部48の深さ寸法:d1 や、本体ゴム部26の大径側端面37とベース金具12の外フランジ部22の上面を被覆する被覆ゴム部41部分の上面との間の距離:d2 が、それぞれ小さくされるが、そのような状況下においても、前者の深さ寸法の:d1 が、後者の距離:d2 よりも大なる大きさとされている状態は維持されるようになる。また、車体側取付部62の円板状取付部66における円形孔68の開口周縁部が、すぐり部48の開口部上に位置せしめられるようになる。
【0053】
そして、そのようなアッパーサポート10の車体とピストンロッド50との間への介装状態下で、図5に示されるように、ストッパゴム部28の上側部分が、ピストンロッド50のボルト部54におけるアッパーサポート10の取付部位よりも上端部に固定されるストッパプレート70にて下方に押圧されて、屈曲変形せしめられる。
【0054】
このストッパゴム部28を押圧するストッパプレート70は、車体側取付部62の円板状取付部66と略同じかそれよりも所定寸法大きな円板金具からなり、その中央部に、浅底の円形凹部74が設けられ、また、この円形凹部74の中心に、ボルト孔72が穿設されている。
【0055】
そして、このようなストッパプレート70が、アッパーサポート10が取り付けられたピストンロッド50のボルト部54の上端部に固定される際には、図6に二点鎖線で示されるように、先ず、ストッパプレート70が、ピストンロッド50の上方において、円形凹部74を上方に向かって開口させる向きで、ピストンロッド50やアッパーサポート10と同軸的に配置される。このとき、ストッパプレート70の円形凹部74の外周面が、アッパーサポート10のストッパゴム部28の上端部に設けられたテーパ状摺動面40と接触するように位置せしめられる。
【0056】
そして、そのような状態から、ストッパプレート70の円形凹部74が、ストッパゴム部28の内孔内に侵入せしめられるように、ストッパプレート70が徐々に下降せしめられて、ピストンロッド50のボルト部54の上端部が、円形凹部74のボルト孔72内に挿通される。これによって、図6に実線で示される如く、ストッパゴム部28のテーパ状摺動面40が、ストッパプレート70の円形凹部74の外周面と、かかる円形凹部74の周りに周方向に延びるように位置するストッパプレート70の外周部の下面とに摺動せしめられる。そうして、ストッパゴム部28が、全周に亘って、よりスムーズに径方向外方に屈曲せしめられる。
【0057】
このとき、前述せるように、ストッパゴム部28は、その周りにすぐり部48が形成されて、比較的に高い高さとされているにも拘わらず、高さ方向中間部に薄肉部44が設けられていると共に、それよりも下側部分が厚肉とされているため、かかる薄肉部44において、確実に屈曲せしめられることとなる。このことから明らかなように、ここでは、薄肉部44にて、易変形部が構成されている。また、ストッパゴム部28に対して、薄肉部44よりも下側にまで延びる深さのスリット46が、周方向に等間隔を隔てて複数設けられているため、ストッパゴム部28が、径方向外方に向かって、よりスムーズに屈曲変形せしめられるようになる。
【0058】
そして、そのような状態から、ストッパプレート70の円形凹部74の下面が、ピストンロッド50のボルト部54に螺合された第一ナット56に当接するまで、ストッパプレート70が更に下降せしめられた後、図5に示されるように、円形凹部74の底部が、第一ナット56とその上部に螺合された第二ナット76との間で締付固定される。
【0059】
これにより、ストッパプレート70が、ピストンロッド50のボルト部54におけるアッパーサポート10の取付部位よりも上端部に固定される。また、このストッパプレート70のピストンロッド50への固定状態下で、アッパーサポート10のストッパゴム部28が、薄肉部44よりも上側部分の内周面の全面において、ストッパプレート70の外周部の下面の全面に接触位置せしめられる。更に、そのようなストッパゴム部28の上側部分が、車体側取付部62の円板状取付部66の上面に対して、上方に所定距離を隔てて対向配置されるようになる。
【0060】
そうして、アッパーサポート10が、ピストンロッド50と車体との間に介装された状態下において、それらピストンロッド50と車体との間に、上下方向の振動荷重が入力された際に、本体ゴム部26が剪断・圧縮方向に弾性変形せしめられて、柔らかいばね特性が発揮されるようになっている。また、ピストンロッド50の下方への変位時(ピストンロッド50の引込作動時)において、その変位量が所定以上の大きさとなった際には、ストッパプレート70が、その下面に接触位置せしめられたストッパゴム部28の上側部分を介して、車体取付部62の円板状取付部66に接触せしめられるようになっている。
【0061】
そして、かくして、本実施形態のアッパーサポート10では、ピストンロッド50と車体との間に入力される上下方向(軸方向)の振動荷重が、本体ゴム部26の柔らかいばね特性に基づいて、極めて有効に吸収され得るようになっており、また、ピストンロッドの下方への過大な変位が、ストッパプレート70とストッパゴム部28とによって弾性的に規制され得るようになっているのである。
【0062】
また、その一方で、かかるアッパーサポート10においては、前述せる如く、ストッパゴム部28の周りに深底のすぐり部48が設けられて、本体ゴム部26の外周面36の上端縁:ウとストッパゴム部28の外周面の下端縁とを繋ぐ連結ゴム部30の上面の自由長が有利に大ならしめられており、しかも、ストッパゴム部28と連結ゴム部30との間の角部や本体ゴム部26と連結ゴム部30との間の角部が、何れも湾曲角部とされている。
【0063】
従って、かくの如き本実施形態のアッパーサポート10にあっては、ピストンロッド50と車体との間への上下方向の振動荷重の入力時に、本体ゴム部26が大きな量で弾性変形せしめられても、ストッパゴム部28の連結ゴム部30との接続部分に大きな応力集中が生ずることが可及的に回避乃至は緩和され、その結果、かかる接続部分での亀裂の発生が効果的に防止され得る。
【0064】
しかも、すぐり部48の深さ寸法:d1 が、本体ゴム部26の大径側端面37とベース金具12の外フランジ部22の上面を被覆する被覆ゴム部41部分の上面との間の距離:d2 、つまり、ピストンロッド50と車体との間への上下方向の振動荷重の入力時におけるピストンロッド50の上方への最大ストロークに相当する寸法よりも大きくされている。それ故、上下方向の振動入力時に、車体側取付部62の円板状取付部66における円形孔68の開口周縁部が、すぐり部48の底面(連結ゴム部30の上面)に接触して、かかる底面が損傷するようなことも、有効に防止され得る。
【0065】
また、本実施形態においては、ストッパプレート70のピストンロッド50への取付に際して、ストッパゴム部28がストッパプレート70にて下方に押圧されたときに、ストッパゴム部28が、高さ方向中間部に設けられた薄肉部44において、常に、確実に屈曲変形せしめられて、ストッパゴム部28の薄肉部44よりも上側部分の内周面の全面が、ストッパプレート70に接触位置せしめられるようになる。それ故、例えば、ストッパゴム部28がストッパプレート70にて下方に押圧されたときに、ストッパゴム部28が、下側部分の様々な位置で座屈し、そのために、ストッパプレート70の下面に対するストッパゴム部28の接触部分が小さくなったり、或いは確実な接触が困難となったりするようなことが、有効に回避され得る。そして、その結果として、ストッパプレート70の下面に接触位置せしめられたストッパゴム部28の上部部位が車体側取付部62に接触することで、ピストンロッド50の下方への過大な変位を弾性的に規制するようにしたストッパプレート70とストッパゴム部28とによるストッパ機能が、確実に且つ有効に発揮され得るのである。
【0066】
従って、かくの如き本実施形態のアッパーサポート10にあっては、本体ゴム部26による柔らかなばね特性を有効に確保しつつ、ストッパゴム部28の弾性に基づく有利なストッパ機能が、十分に且つ確実に、しかも、より長期に亘って安定的に発揮され得るのである。
【0067】
また、かかるアッパーサポート10においては、本体ゴム部26とストッパゴム部28とが、連結ゴム部30を介して一体で形成されているところから、上記の如き優れた特徴が、可及的に少ない部品点数にて、極めて有利に発揮され得るのであり、更には、部品点数の減少に伴う製作性の向上も、効果的に図られ得ることとなる。
【0068】
さらに、本実施形態のアッパーサポート10にあっては、本体ゴム部26とストッパゴム部28と連結ゴム部30とからなるゴム弾性体14の全体が、ベース金具12に対して非接着状態で一体加硫成形された一体加硫成形品にて構成されているため、製作に際して、接着剤を用いない分だけ、低コスト化と製作性の向上とが、有利に図られ得る。
【0069】
しかも、ベース金具12の外フランジ部22を被覆する被覆ゴム部41が、本体ゴム部26に一体で形成されると共に、この被覆ゴム部41の一部が、外フランジ部22の貫通孔24内に充填されて、貫通孔24の内周面に係合されていることにより、本体ゴム部26、ひいてはゴム弾性体14のベース金具12からの剥離が防止されるようになっている。それ故、本体ゴム部26とストッパゴム部28による上記の如き優れた防振機能とストッパ機能とが、より長期に亘って安定的に発揮され得るのである。
【0070】
また、かかるアッパーサポート10にあっては、ストッパゴム部28に複数のスリット46とテーパ状摺動面40が設けられていることで、車体への組付に際して、ストッパプレート70にて押圧されたときに、径方向外方に、よりスムーズに屈曲変形せしめられるようになっているところから、ストッパゴム部28による上記せるストッパ機能が、より安定的に確保され得る。
【0071】
さらに、かかるアッパーサポート10では、ストッパゴム部28の高さ方向中間部の内周面に凹溝42が設けられて、この凹溝42の底部にて薄肉部44が形成されているところから、ストッパゴム部28を、上方からの押圧力により、高さ方向中間部の予め定められた箇所において径方向外方に容易に屈曲させるための構造が、簡略な構造において、容易に実現され得る。
【0072】
更にまた、本実施形態のアッパーサポート10においては、車体に対して、ボルト等により締結されることなしに組み付けられているため、車体に対する組付性が、効果的に高められている。
【0073】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないものであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0074】
例えば、すぐり部48の深さは、例示のものに、特に限定されるものではなく、少なくとも、ピストンロッド50と車体との間への上下方向への振動荷重の入力時に、ストッパゴム部28の連結ゴム部30との接続部分に大きな応力集中が生ずることが可及的に回避乃至は緩和され得る程度において、本体ゴム部26の外周面36の上端縁:ウとストッパゴム部28の外周面の下端縁とを繋ぐ連結ゴム部30の上面の自由長が確保され得る大きさとされておれば良い。また、このすぐり部48の形成によって薄肉化された連結ゴム部30の厚さも、少なくとも、ゴム弾性体14の加硫成形時において、金型内の本体ゴム部26の形成部分とストッパゴム部28の形成部分との間を未加硫ゴムが流動可能となる程度の厚さとされておれば良い。つまり、そのような連結ゴム部30の厚さを確保し得る程度の範囲内において、すぐり部48の深さを深くすることが出来るのである。
【0075】
また、前記実施形態では、ストッパゴム部28の内周面に、断面V字状の凹溝42が周設されて、その凹溝42の底部部位にて、易変形部としての薄肉部44が形成されていたが、例えば、そのような薄肉部44を形成する凹溝42を、それとは異なる断面形状をもって形成したり、或いはストッパゴム部28の外周面のみに又は内周面と外周面の両方に形成することも出来る。そしてまた、凹溝42の底部以外の形態において、ストッパゴム部28の高さ方向の中間部に、薄肉部分からなる易変形部を形成することも、勿論、可能である。
【0076】
さらに、ベース部材たるベース金具12をゴム弾性体14に対して加硫接着して、アッパーサポート10を形成しても良い。
【0077】
更にまた、本体ゴム部26のテーパ状の外周面に、それに対応したテーパ筒状の剛性の外側部材を、非接着で或いは加硫接着により一体的に固設乃至は固着して、アッパーサポート10を、ベース金具12とゴム弾性体14と外側部材との一体加硫成形品にて構成することも出来る。なお、この場合には、外側部材を車体側取付部62に対して、ボルト等により締結して、アッパーサポート10を車体に組み付けるようにしても良い。
【0078】
また、ベース部材は、剛性を有するものであれば、その材質が、特に限定されるものではない。
【0079】
加えて、前記実施形態では、本発明を、自動車用サスペンション機構のショックアブソーバに取り付けられるアッパーサポートとショックアブソーバに対するアッパーサポートの取付構造に適用したものの具体例を示したが、本発明は、自動車用以外のショックアブソーバに取り付けられるアッパーサポートと、そのようなダストカバーと自動車用以外のショックアブソーバに対するアッパーサポートの取付構造の何れに対しても、有利に適用されるものであることは、勿論である。
【0080】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に従う構造を有するアッパーサポートの一例を示す縦断面説明図である。
【図2】図1における上面説明図である。
【図3】図1における下面説明図である。
【図4】図1に示されたアッパーサポートをショックアブソーバのピストンロッドに取り付けた状態を示す説明図である。
【図5】図1に示されたアッパーサポートをショックアブソーバのピストンロッドと車体との間に介装して、組み付けた状態を示す説明図である。
【図6】図1に示されたアッパーサポートをショックアブソーバのピストンロッドと車体との間に介装させるときの途中の状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0082】
10 アッパーサポート 12 ベース金具
14 ゴム弾性体 16 テーパ筒部
18 底部 22 外フランジ部
26 本体ゴム部 28 ストッパゴム部
30 連結ゴム部 44 薄肉部
46 スリット 48 すぐり部
50 ピストンロッド 62 車体側取付部
64 テーパ状取付部 66 円板状取付部
70 ストッパプレート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショックアブソーバのピストンロッドの上部に取り付けられる底部と、該底部の該ピストンロッドへの取付状態下で、該底部から下方に向かって径を漸増させつつ延びるテーパ筒部とを一体的に備えた有底のテーパ筒状を呈する剛性のベース部材と、
該ベース部材の前記テーパ筒部の外周面に対応した内周面を有するテーパ筒形状を呈し、該内周面において、該テーパ筒部の外周面に接触して固設される本体ゴム部と、
前記ベース部材の前記底部の上面上に、上下方向に延びるように立設された、下部部位が上部部位よりも厚肉とされた筒状体からなり、該上部部位が、該ベース部材の底部を貫通して延びる前記ピストンロッドにおける該ベース部材の取付部位よりも更に上部側部位に、該ベース部材の該底部と所定距離を隔てて対向して取り付けられるストッパプレートの下面にて下方に押圧されることにより、軸方向中間部が全周に亘って径方向外方に屈曲せしめられて、該上部部位の内周面が該ストッパプレートの下面に接触位置せしめられるストッパゴム部と、
該ストッパゴム部の軸方向中間部に、全周に亘って周方向に連続して延びるように設けられた薄肉部分からなり、該ストッパゴム部が前記ストッパプレートにて下方に押圧されたときに、径方向外方に容易に屈曲せしめられる易屈曲部と、
前記ストッパゴム部と前記本体ゴム部とを一体的に連結する連結ゴム部と、
該連結ゴム部に対して、上方に向かって開口して、前記ストッパゴム部の周りに連続して延びるように形成された深底のすぐり部と、
を含んで構成したことを特徴とするアッパーサポート。
【請求項2】
前記ベース部材における前記テーパ筒部の開口側の端部に、外フランジ部が、前記本体ゴム部の下側端面と上下方向に所定距離を隔てて対向位置するように設けられる一方、前記すぐり部の深さ寸法が、該外フランジ部と該本体ゴム部の下側端面との間の距離よりも大なる大きさとされている請求項1に記載のアッパーサポート。
【請求項3】
前記本体ゴム部と前記ストッパゴム部と前記連結ゴム部とが、前記ベース部材と非接着状態で一体加硫成形された一体加硫成形品にて構成される一方、該ベース部材の前記テーパ筒部における前記外フランジ部の両側面と先端面とを被覆する被覆ゴム部が、該本体ゴム部と一体で設けられ、そして、該テーパ筒部の該外フランジ部に貫通孔が形成されて、該外フランジ部の両側面をそれぞれ被覆する被覆ゴム部部分同士が、該外フランジ部の該貫通孔内に位置する被覆ゴム部部分にて一体に連結されている請求項2に記載のアッパーサポート。
【請求項4】
前記ストッパゴム部の上部部位に、軸方向に延びるスリットが、周方向に間隔を隔てて複数設けられている請求項1乃至請求項3のうちの何れか1項に記載のアッパーサポート。
【請求項5】
前記ストッパゴム部の上部部位の内周面が、上方に向かって徐々に大径化するテーパ面又は湾曲面とされている請求項1乃至請求項4のうちの何れか1項に記載のアッパーサポート。
【請求項6】
前記易変形部が、前記ストッパゴム部の軸方向中間部の互いに対応する内周面と外周面のうちの少なくとも何れか一方に周設された凹溝の底部にて構成されている請求項1乃至請求項5のうちの何れか1項に記載のアッパーサポート。
【請求項7】
前記ベース部材の前記ピストンロッドへの取付状態下で、前記本体ゴム部が、該本体ゴム部に対応したテーパ筒形状を有して車体に設けられたテーパ状取付部の内側に、外周面を該テーパ状取付部の内周面に接触させるように嵌め込まれて、車体の重量により、該テーパ状取付部と該ベース部材の該底部との間で挟持されることによって、車体に対して締結されることなく、該ピストンロッドと車体との間に介装されるようになっている請求項1乃至請求項6のうちの何れか1項に記載のアッパーサポート。
【請求項8】
ショックアブソーバのピストンロッドを車体に防振連結するアッパーサポートのショックアブソーバに対する取付構造であって、
前記アッパーサポートとして、
軸方向一方側に向かって次第に大径となるテーパ筒部と、該テーパ筒部の小径側開口部を閉塞する底部とを一体的に備えた有底のテーパ筒状を呈する剛性のベース部材と、
該ベース部材の前記テーパ筒部の外周面に対応した内周面を有するテーパ筒形状を呈し、該内周面において、該テーパ筒部の外周面に接触して固設される本体ゴム部と、
前記ベース部材の前記底部の外面上に、軸方向に延びるように立設された、基部側部位が先端側部位よりも厚肉の筒形状を呈するストッパゴム部と、
該ストッパゴム部の軸方向中間部に、全周に亘って周方向に連続して延びるように設けられた薄肉部分からなり、該ストッパゴム部の先端側部位を基部側に向かって押圧する押圧力が加えられたときに、径方向外方に容易に屈曲せしられめる易屈曲部と、
前記ストッパゴム部と前記本体ゴム部とを一体的に連結する連結ゴム部と、
該連結ゴム部に対して、前記ベース部材における前記テーパ筒部の開口側とは反対側に向かって開口して、前記ストッパゴム部の周りに連続して延びるように形成された深底のすぐり部とを含んで構成したものを用い、
かかるアッパーサポートの前記ベース部材を、前記テーパ筒部が下方に向かって開口するようにして、前記底部において前記ピストンロッドに取り付ける一方、該ベース部材の底部を貫通し且つ前記ストッパゴム部内を挿通せしめられた前記ピストンロッドにおける該ベース部材の取付部位よりも更に上部側部位に、該ベース部材の該底部と所定距離を隔てて対向して取り付けられるストッパプレートの下面にて、該ストッパゴム部の前記先端側部位が下方に押圧されることにより、該ストッパゴム部の前記易屈曲部が径方向外方に屈曲せしめられて、該先端側部位の内周面が該ストッパプレートの下面に接触位置せしめられるように、該ストッパゴム部を配置したことを特徴とするショックアブソーバに対するアッパーサポートの取付構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−230447(P2008−230447A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74025(P2007−74025)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】