説明

アテローム性動脈硬化症を評価する方法

アテローム性動脈硬化症を診断するための非侵襲的方法を提供する。一つの例において、本方法には、被験体からの血漿、血清、または末梢血におけるような単球またはその細胞画分におけるFOS、DUSP1、またはFOSおよびDUSP1の双方の発現をアッセイする段階が含まれる。対照と比較した試料中の単球におけるFOS、DUSP1、またはFOSとDUSP1の双方の発現の増加により、被験体がアテローム性動脈硬化症を有することが示される。同様に、薬剤が、被験体におけるアテローム性動脈硬化症の処置に有効であるか否かを決定するための方法も提供される。本方法には、薬剤を処置した単球におけるFOS、DUSP1、またはFOSおよびDUSP1の双方の発現をアッセイする段階が含まれ、対照と比較した試料中の単球におけるFOS、DUSP1、またはFOSおよびDUSP1の双方の発現の減少により、薬剤がアテローム性動脈硬化症の処置に有効であることが示される。単球はインビボまたはインビトロで薬剤と接触させることができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は、アテローム性動脈硬化症のような血管疾患の分野に関し、より具体的には、末梢血において発現された、または血清中に分泌されたマーカーを用いて、アテローム性動脈硬化症を検出するための方法に関する。
【0002】
優先権の主張
本出願は、2004年9月3日に提出された米国特許仮出願第60/607,031号、および2004年10月12日に提出された米国特許仮出願第60/618,275号の恩典を主張するものであり、その双方が全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
背景
心血管疾患は、工業国において主要な健康リスクである。心血管疾患の中でも最も発生率の高いアテローム性動脈硬化症は、心臓発作、卒中、および四肢の壊疽の主な原因である。これはまた米国における主な死因でもある。
【0004】
アテローム性動脈硬化症は、多くの細胞タイプおよび分子因子が関係する複雑な疾患である(論評に関しては、Ross, Nature 362:801〜809, 1993を参照されたい)。プロセスは、動脈壁に沿って並ぶ内皮細胞層への障害に対する反応として起こると考えられている。プロセスには、炎症に先立つ、および炎症を伴う、線維脂肪および線維様病変またはプラークの形成が含まれる。アテローム性動脈硬化症の進行病変は、動脈を閉塞する可能性があり、これは多数の異なる型の障害に対する過剰な炎症-線維増殖反応の結果である可能性がある。例えば、剪断応力は、分岐点および不規則な構造のような血流の乱れが起こる循環系の領域において、アテローム斑が頻繁に発生する原因であると考えられている。
【0005】
アテローム斑の形成において観察される最初の事象は、血液中の単球が血管内皮層に接着して、内皮下間隙を通って移動する際に起こる。隣接する内皮細胞は同時に、酸化された低密度リポタンパク質(LDL)を産生する。次に、これらの酸化型LDLは、単球表面に発現されたスキャベンジャー受容体を通して単球によって大量に取り込まれる。脂質で満たされた単球は「泡沫細胞」と呼ばれ、脂肪線条の主な構成成分である。泡沫細胞とそれらを取り巻く内皮およびSMCとの相互作用によって、最終的に平滑筋細胞の増殖および移動が起こり、線維様プラークが形成されうる。そのようなプラークは、関係する血管を閉塞して血流を制限し、それによって虚血が起こる。
【0006】
虚血は、不適切な還流による臓器の組織における酸素供給の欠乏を特徴とする。心臓における虚血の最も一般的な原因は、心外膜冠動脈のアテローム性動脈硬化症である。これらの血管の内腔を低減させることによって、アテローム性動脈硬化症は、基礎状態における心筋還流の絶対量の減少を引き起こす、または血流の需要が増強された場合の還流の適当な増加を制限する。
【0007】
虚血性アテローム性動脈硬化症の処置に対する主な外科的アプローチは、バイパス移植、血管内膜切除、経皮経管血管形成術(PCTA)である。後者のアプローチはしばしば、閉塞が再発して、しばしばさらに悪化する再狭窄のために失敗する。これは、極めて高い(30〜50%)発生率で起こると推定されている。再狭窄のほとんどが、さらなる炎症、平滑筋蓄積、および血栓症が原因であるように思われる。アテローム性動脈硬化症を診断および/または処置するための方法が依然として必要である。現在のほとんどの方法は、動脈自体または血管機能の評価を必然的に伴う。
【発明の開示】
【0008】
概要
FOSおよびDUSP1発現は、アテローム性動脈硬化症を有する被験体における末梢血単球のような単核球において増加することが、本明細書において開示される。アテローム性動脈硬化症の有効な処置の後、FOSおよびDUSP1は、末梢血単球、血清、および/または血漿において減少することも開示される。
【0009】
一つの態様において、アテローム性動脈硬化症を診断するための、またはアテローム性動脈硬化症の発症もしくは進行のリスクを決定するための非侵襲的方法が提供される。一つの例において、本方法には、被験体からの単球におけるFOS、DUSP1、またはFOSおよびDUSP1の双方の発現をアッセイする段階が含まれ、対照と比較して試料中の単球におけるFOS、DUSP1、またはFOSおよびDUSP1の双方の発現が増加すれば、被験体がアテローム性動脈硬化症を有することが示される。一つの例において、単球は末梢血試料中に存在する。別の例において、FOSおよびまたはDUSP1は、被験体からの血清または血漿試料において評価される。
【0010】
もう一つの態様において、薬剤が被験体におけるアテローム性動脈硬化症の処置に有効であるか否かを決定するための方法が開示される。本方法には、薬剤を処置した単球におけるFOS、DUSP1、またはFOSおよびDUSP1の双方の発現をアッセイする段階が含まれ、対照と比較して試料中の単球におけるFOS、DUSP1、またはFOSおよびDUSP1の双方の発現が減少すれば、薬剤がアテローム性動脈硬化症の処置に有効であることが示される。一つの例において、単球を含む末梢血試料が使用される。もう一つの例において、単球細胞株が使用される。
【0011】
前述および他の特徴および利点は、添付の図面を参照して進行する以下のいくつかの態様の詳細な説明からより明らかとなると思われる。
【0012】
配列表
添付の配列表に記載した核酸およびアミノ酸配列は、米国特許法施行規則1.822条において定義されるように、ヌクレオチド塩基に関しては標準的な文字略号を用いて、およびアミノ酸に関しては三文字コードを用いて示す。各核酸配列の一つの鎖のみを示すが、相補鎖は表示の鎖に対する任意の参照によって含まれると理解される。添付の配列表において:
SEQ ID NO:1〜2はそれぞれ、ヒトGAPDフォワードおよびリバースプライマーの核酸配列である。
【0013】
SEQ ID NO:3〜4はそれぞれ、ヒトTIFフォワードおよびリバースプライマーの核酸配列である。
【0014】
SEQ ID NO:5〜6はそれぞれ、ヒトFOSフォワードおよびリバースプライマーの核酸配列である。
【0015】
SEQ ID NO:7〜8はそれぞれ、ヒトDUSP1フォワードおよびリバースプライマーの核酸配列である。
【0016】
SEQ ID NO:9〜10はそれぞれ、ヒトNFKB1Aフォワードおよびリバースプライマーの核酸配列である。
【0017】
SEQ ID NO:11〜12はそれぞれ、ヒトID2フォワードおよびリバースプライマーの核酸配列である。
【0018】
SEQ ID NO:13〜14はそれぞれ、ヒトPER1フォワードおよびリバースプライマーの核酸配列である。
【0019】
SEQ ID NO:15〜16はそれぞれ、ヒトSAP30フォワードおよびリバースプライマーの核酸配列である。
【0020】
SEQ ID NO:17〜18はそれぞれ、ヒトCD14フォワードおよびリバースプライマーの核酸配列である。
【0021】
SEQ ID NO:19〜20はそれぞれ、ヒトCD206フォワードおよびリバースプライマーの核酸配列である。
【0022】
SEQ ID NO:21〜22はそれぞれ、ヒトCD3フォワードおよびリバースプライマーの核酸配列である。
【0023】
SEQ ID NO:23〜24はそれぞれ、ヒトGP11bフォワードおよびリバースプライマーの核酸配列である。
【0024】
SEQ ID NO:25〜26はそれぞれ、マウスTIFフォワードおよびリバースプライマーの核酸配列である。
【0025】
SEQ ID NO:27〜28はそれぞれ、マウスFOSフォワードおよびリバースプライマーの核酸配列である。
【0026】
SEQ ID NO:29〜30はそれぞれ、マウスDUSP1フォワードおよびリバースプライマーの核酸配列である。
【0027】
SEQ ID NO:31〜34は、FOS siRNA標的核酸配列である。
【0028】
SEQ ID NO:35は、CD14 SAGEタグ配列の核酸配列である。
【0029】
SEQ ID NO:36は、CD163 SAGEタグ配列の核酸配列である。
【0030】
SEQ ID NO:37は、CD3E SAGEタグ配列の核酸配列である。
【0031】
SEQ ID NO:38は、CD79A SAGEタグ配列の核酸配列である。
【0032】
SEQ ID NO:39は、CD99 SAGEタグ配列の核酸配列である。
【0033】
SEQ ID NO:40は、FOS SAGEタグ配列の核酸配列である。
【0034】
SEQ ID NO:41は、二重特異性ホスファターゼ1(dual specificity phosphatase 1)(DUSP1)タグ配列の核酸配列である。
【0035】
SEQ ID NO:42は、B細胞インヒビターにおけるNFκ遺伝子(NFKB1A)SAGEタグ配列の核酸配列である。
【0036】
SEQ ID NO:43は、DNAのインヒビター2(ID2)SAGEタグ配列の核酸配列である。
【0037】
SEQ ID NO:44は、ピリオド相同体1(period homolog 1)(PER1)SAGEタグ配列の核酸配列である。
【0038】
SEQ ID NO:45は、sin3関連ポリペプチド(sin3-associated polypeptide)、30 kDa(SAP30)SAGEタグ配列の核酸配列である。
【0039】
詳細な説明
I.略語
AVG:平均値
BMI:肥満指数
CEA:頚動脈内膜切除
DUSP1:二重特異性ホスファターゼ1
FITC:フルオレセインイソチオシアネート
FOS:ビスキス-ジンキンス(Biskis-Jinkins)骨肉腫
GADP:グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ
GPIIb:糖タンパク質IIb
hsCRP:高感度C反応性タンパク質
ID1:DNA結合のインヒビター2
kDa:キロダルトン
KO:ノックアウト
MAPK:マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ
MCP-1:単球走化性タンパク質1
MNC:単核球
NTC:鋳型対照なし
PCR:ポリメラーゼ連鎖反応
PER1:ピリオド相同体(period homolog)1
PMA:ホルボ12-ミリスチン酸13-アセテート
ROC:受信動作特性
RT:逆転写酵素
SAP30:sin3関連ポリペプチド、30 kDa
SAGE:遺伝子発現の連続解析
SE:標準誤差
siRNA:低分子阻害RNA
SN:CD14+マクロファージ枯渇後のプラーク浮遊細胞
TIF:翻訳開始因子
WT:野生型
【0040】
II.用語
特に明記していなければ、技術用語は、通常の用途に従って用いられる。分子生物学における一般的な用語の定義は、Benjamin Lewin, 「Genes V」, published by Oxford University Press, 1994(ISBN 0-19-854287-9);Kendrew et al.(eds.), 「The Encyclopedia of Molecular Biology」, published by Blackwell Science Ltd., 1994(ISBN 0-632-02182-9);およびRobert A. Meyers(eds.), 「Molecular Biology and Biotechnology : a Comprehensive Desk Reference」, published by VCH Publishers, Inc., 1995(ISBN 1-56081-569-8)において見出されうる。
【0041】
本開示の様々な態様の論評を容易にするために、専門用語に関する以下の説明を提供する。
【0042】
変更させる:
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドのような対象物質の有効量の変化。物質の量は、産生された物質の量の差によって、所望の機能を有する物質の量の差によって、または物質の活性化の差によって変化させることができる。変化は増加または減少となりうる。変更はインビボまたはインビトロとなりうる。
【0043】
いくつかの態様において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの量を変更させることは、物質の有効量(レベル)の少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の増加または減少である。特異的な例において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの増加は、特異的試験のために選択した対照値、統計学的正常値、または標準値と比較してFOSおよび/またはDUSP1ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の増加である。もう一つの特異的な例において、治療プロトコールの開始後のようなポリペプチドまたはポリヌクレオチドの減少は、特異的試験のために選択した対照値、統計学的正常値、または標準値と比較してFOSおよび/またはDUSP1ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の減少である。
【0044】
アテローム性動脈硬化症:
経時的な血管の進行性の狭窄および硬化。アテローム性動脈硬化症は、コレステロール、類脂質材料、およびリポファージを含む黄色がかったプラーク(アテローム)の沈着物が、大きいおよび中等度の大きさの動脈の内膜および内部中膜内に形成される、一般的な型の動脈硬化症である。アテローム性動脈硬化症の処置には、例えばアテローム性動脈硬化症病変の存在によって測定されるアテローム性動脈硬化症の進行の逆転または遅延、および/または徴候(末梢毛細管再充填のような)、症状(胸痛および間欠性跛行のような)または臨床検査証拠(EKG、血管造影術、または他の造影技術によって得られるような)によって測定される心血管機能の改善のような疾患の機能的徴候の逆転または遅延が含まれる。「アテローム性動脈硬化症を評価する」とは、対象被験体がアテローム性動脈硬化症を有するか否かを決定する段階、対象被験体の予後を決定する段階、および/または被験体に投与された治療レジメが被験体の処置において有効であるか否かを決定する段階を示す。
【0045】
結合または安定な結合:
一つの核酸分子のもう一つ(またはそれ自体)の核酸分子に対するハイブリダイゼーション、抗体のペプチドに対する会合、またはもう一つのタンパク質もしくは核酸分子に対するタンパク質の会合のような、二つの物質または分子間の会合。オリゴヌクレオチド分子は、十分量のオリゴヌクレオチド分子が、その標的核酸分子と塩基対を形成するまたはハイブリダイズして、その結合を検出することができれば、標的核酸分子に結合するまたは安定に結合する。
【0046】
結合は、標的:オリゴヌクレオチド複合体または標的:抗体複合体のような、形成された複合体の物理的または機能的特性によるような、当業者に公知の任意の技法によって検出することができる。例えば、結合は、遺伝子の発現、DNA複製、転写、翻訳等のような生合成プロセスに対して結合が観察可能な影響を有するか否かを決定することによって、機能的に検出することができる。
【0047】
核酸分子の相補鎖の結合を検出する物理的方法には、DNアーゼIまたは化学的フットプリンティング、ゲルシフトおよびアフィニティ切断アッセイ法、ノーザンブロッティング、ドットブロッティング、および吸光度検出技法のような方法が含まれるがそれらに限定されるわけではない。例えば、一つの方法は、温度が徐々に上昇した場合の、オリゴヌクレオチド(または類似体)および標的核酸を含む溶液の220〜300 nmでの吸光度の変化を観察する段階を含む。オリゴヌクレオチドまたは類似体がその標的に結合していれば、オリゴヌクレオチド(または類似体)と標的とが互いに解離または融解するにつれて、特徴的な温度で吸光度が突然増加する。もう一つの例において、本方法は、一つまたは双方の核酸分子(または適当であれば抗体もしくはタンパク質)に存在する検出可能な標識のようなシグナルを検出する段階を含む。
【0048】
一つの例において、オリゴマーとその標的核酸との結合は、オリゴマーの50%がその標的から融解する温度(Tm)を特徴とする。より高い(Tm)は、より低い(Tm)を有する複合体と比較して、より強いまたはより安定な複合体であることを意味する。
【0049】
血管:
その中を血液が循環する管。一般的に血管は内側に内皮が並ぶ弾性の管状の筒状構造である。血管には、動脈、静脈および毛細管が含まれる。血管の特異的な非制限的な例には、大静脈、胸部大動脈、伏在静脈、乳腺動脈、上腕動脈および毛細管が含まれる。もう一つの態様において、血管にはより小さい動脈および静脈が含まれる。さらにもう一つの態様において、血管は微小循環の毛細管である。
【0050】
バフィーコート:
全血を遠心した場合に充填赤血球の塊の上に現れる白血球の黄色または白色の薄層。
【0051】
心血管:
心臓および/または血管に関する。
【0052】
心血管リスク:
心筋虚血および梗塞、間欠性跛行、腸管虚血、網膜虚血、一過性の虚血発作、虚血発作、および心血管機能障害に関連した他の病態のような、しかしこれらに限定されない、心血管系に関連する障害の発生の可能性。特異的な非制限的な例において、障害は心筋虚血または梗塞である。
【0053】
コレステロール低下物質:
被験体におけるコレステロールレベルを低下させる、薬剤、ビタミン、または低分子のような物質。当業者は、コレステロールの効果を決定するために血液のスクリーニングのようなアッセイ法を容易に同定することができる。物質には、ナイアシン、スタチン(例えば、Zocor(商標)、Lipitor(商標)、Pravacol(商標)、Lescor(商標)、Mevacor(商標))、結合樹脂(例えば、Questran(商標))、およびフィブレート(例えば、Lopid(商標)、Lipidil Micro(商標))が含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0054】
DUSP1:
酸化的ストレスおよび熱ショックによって誘導されることが知られている二重特異性ホスファターゼ1。DUSP1はまた、CL100、MVH1、MKP-1およびDTPN10とも呼ばれている。例としてのヒトDUSP1アミノ酸および核酸配列は、GenBankアクセッション番号U01669号(1994年6月11日)およびX68277号(2005年4月18日)、およびSwiss-Prot第P28562号(1996年2月23日)において認められ、それらは参照により本明細書に組み入れられる。ヒトにおいて、DUSP1遺伝子は第5染色体においてコードされる。DUSP1は、MAPキナーゼERKを185位のチロシンで脱リン酸化する二重特異性ホスファターゼである。チンパンジー、ラット、マウスおよびゼブラフィッシュからのオルトログが同定されている(インターネット上でWeizmann Institute of Scienceのウェブサイトにおいて使用可能であるDUSP1のGeneCard、GC05M1721127を参照されたい)。
【0055】
FOS:
腫瘍遺伝子であるフィンケル-ビスキス-ジンキンス骨肉腫(Finkel-Biskis-Jinkins osteosarcoma)(FOS)遺伝子。FOSは、マウス骨肉腫において転写因子をコードするとして同定された。この腫瘍遺伝子の産物は、もう一つの腫瘍遺伝子であるjun腫瘍遺伝子と共に作用して、特定の他の遺伝子の転写速度を異常に変化させる。c-FOSは、FBJ(フィンケル-ビスキス-ジンキンス)およびFBRマウス骨肉腫ウイルス(MSV)において見出されるウイルスv-FOS腫瘍遺伝子の細胞相同体である。ヒトFOS遺伝子は染色体14q21-q31にマッピングされる。FOSは、いくつかの細胞タイプにおいてホルボルエステルによって誘導可能な遺伝子であるTIS28として同定されている。マウスおよびヒトFOSの例としてのアミノ酸および核酸配列はそれぞれ、参照により本明細書に組み入れられる、GenBankアクセッション番号BC029814号(2004年6月30日)、およびV01512号(2004年11月21日)において示され、Swiss-Prot第P0110号(1986年7月1日)として示されている。
【0056】
理論に拘束されることなく、c-FOSは、シグナル伝達、細胞増殖および分化において重要な役割を有すると考えられている。これは、他の転写因子(例えば、c-jun)と共に、遺伝子発現のトランス活性化調節物質として作用する核タンパク質である。チンパンジー、ラット、マウス、およびゼブラフィッシュからのオルトログが同定されている(インターネット上でWeizmann Institute of Scienceのウェブサイトにおいて使用可能であるFOSのGeneCard、GC14P074815を参照されたい)。
【0057】
フラミンガムリスクスコア:
年齢、性別、収縮期圧、喫煙、グルコース不耐性、左心室肥大を含む危険因子と共に、総コレステロール、低密度リポタンパク質(LDL)、および高密度リポタンパク質(HDL)レベルの測定に基づく、無病個体における冠動脈疾患の将来のリスクを予測するために用いられる危険因子スコア(Wilson et al., Am J Cardiol 59:91G〜94G, 1987)。
【0058】
白血球:
感染生物および外来物質に対する体の防御に関係する、「白い細胞」とも呼ばれる血中の細胞。白血球は骨髄において産生される。白血球には、五つの主なタイプが存在し、それらは主な二つの群に分けられる:多形核白血球(好中球、好酸球、好塩基球)および単核球(単球およびリンパ球)。感染症が存在する場合、白血球の産生は増加する。
【0059】
リンパ球:
体の免疫防護に関係するタイプの白血球。リンパ球には二つの主なタイプが存在する:B細胞およびT細胞。
【0060】
マイクロアレイ:
「アレイ」とは、基質上または基質内の特定可能な位置における生体高分子(ペプチドまたは核酸分子のような)または生物学的試料(組織切片のような)のような分子の整列である。「マイクロアレイ」とは、評価または分析のために顕微鏡による試験を必要とするまたは顕微鏡の助けを借りるほど微小化されたアレイである。生物材料を含むアレイは時にDNAチップまたはバイオチップと呼ばれる。一般的に、DNAは、ピンもしくはインクジェットプリンターによってスポットされるか、またはPCRもしくはフォトリソグラフィーを用いてアレイ上で直接合成される。DNAは転写物の二本鎖コピーであるか、またはより短い一本鎖オリゴヌクレオチドであってもよい。一つの態様において、マイクロアレイ分析に関して、RNAを最初に試料から抽出して;RNAを分析の前に増幅することができる。その後、RNA自体、相補的DNA、または増幅されたRNAを標識する。標識された核酸を、競合的または非競合的にマイクロアレイにハイブリダイズする。相補的配列はアレイに結合したままであり、非結合配列は洗浄して除去される。発現された遺伝子をアレイ上の結合したプローブの位置によって同定する。マイクロアレイは、多数の販売元から入手可能であり、または個々の研究所において産生することができる。さらに、マイクロアレイデータを分析するために用いることができるコンピューターソフトウェアが、多数の販売元およびインターネット上で販売されている(例えば、dchipのウェブサイトまたはtigrのウェブサイトを参照されたい)。
【0061】
ハイブリダイゼーション:
DNA、RNAの二つの鎖、またはDNAとRNAの相補性領域の間で塩基対を形成して、それによって二本鎖分子を形成すること。特定の程度のストリンジェンシーが得られるハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイゼーション法の性質ならびにハイブリダイズする核酸配列の組成および長さに応じて変化する。一般的に、ハイブリダイゼーションの温度およびハイブリダイゼーション緩衝液のイオン強度(Na+濃度のような)により、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーが決定される。特定の程度のハイブリダイゼーションを得るためのハイブリダイゼーション条件に関する計算は、Sambrook et al., (1989)「Molecular Cloning」, second edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Plainview, NY(chapter 9および11)において考察されている。非常に高いストリンジェンシー条件(90%同一性を共有する配列を検出する)の例としての非制限的な組には、5×SSCにおいて65℃で16時間でのハイブリダイゼーション、2×SSCにおいて室温(RT)で各15分間の2回の洗浄、および0.5×SSCにおいて65℃で各20分間の2回の洗浄が含まれる。高ストリンジェンシー条件(80%またはそれより高い同一性を共有する配列を検出する)の例としての非制限的な組には、5×〜6×SSCで65℃〜70℃で16〜20時間のハイブリダイゼーション、2×SSCにおいてRTで各5〜20分間の2回の洗浄、および1×SSCで55℃〜70℃で各30分間の2回の洗浄が含まれる。
【0062】
標識:
例えば、ELISA、分光光度法、フローサイトメトリー、または顕微鏡によって検出することができる物質。例えば、標識を核酸分子またはタンパク質に付着させて、それによって核酸分子またはタンパク質を検出することができる。標識の例には、放射性同位元素、酵素基質、コファクター、リガンド、化学発光物質、蛍光体、ハプテン、酵素、およびその組み合わせが含まれるがそれらに限定されるわけではない。標識法および様々な目的にとって適当な標識の選択における指針は、例えばSambrook et al(Molecular Cloning : A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York, 1989)およびAusubel et al.(In Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, 1998)において考察されている。
【0063】
単球:
比較的大きい単核白血球(直径16〜22μm)。単球は通常、循環血の白血球の3〜7%を構成して、通常、リンパ節、脾臓、骨髄、および緩い結合組織において見出される。組織学的色素によって処置すると、単球は、多数の細かい埃様の赤-青色顆粒を含む豊富な淡青色または青灰色の細胞質を表し;しばしば液胞が存在し;核は通常凹んでいるか、またはわずかに折れ曲がっており、繊細な鎖が接触している場所ではより凝縮しているように見える糸のような染色質構造を有する。一般的に、単球は楕円形または腎臓形の核を有し、レース状で直線状の染色質を含み、細かい赤みがかった青色親和性の顆粒で満たされた豊富な灰-青色細胞質を有する。血液中を循環する単球は、組織に移動するとマクロファージへと分化する。
【0064】
ポリヌクレオチド:
長さが100ヌクレオチド塩基より長い配列を含む直鎖状のヌクレオチド配列。
【0065】
ポリペプチド:
長さまたは翻訳後修飾(例えば、グリコシル化またはリン酸化)によらない、任意のアミノ酸の鎖。
【0066】
精製または単離された:
「精製された」または「単離された」という用語は、絶対的な純度を必要とせず;むしろこれは相対的な用語であることが意図される。精製核酸またはタンパク質は、成分が天然に存在する生物の細胞における他の生物学的成分、すなわち他の染色体および染色体外DNAおよびRNA、ならびにタンパク質から単離または精製されており、このように「単離」されている核酸、ペプチドおよびタンパク質には、標準的な精製法によって精製された核酸およびタンパク質が含まれる。この用語はまた、宿主細胞における組換え型発現によって調製された核酸、ペプチド、およびタンパク質と共に化学合成された核酸を含む。
【0067】
このように、例えば、精製細胞調製物は、参照される細胞、タンパク質または核酸が、組織内のその天然の環境における細胞より純粋である調製物である。一つの態様において、特異的細胞タイプの「実質的に精製された」集団は、異なる表現型の細胞を約20%未満、約15%未満、または約10%未満含む細胞の組成物である。このように、実質的に精製された細胞集団には、80%より多い、85%より多い、または90%より多い対象細胞が含まれる。もう一つの態様において、精製細胞集団を産生するプロセスは、得られた集団の50%より多くが対象細胞タイプとなるように、細胞集団を産生するプロセスである。
【0068】
スタチン:
コレステロール生合成に関係する重要な酵素を阻害することによって血清中のコレステロールレベルを低減させる任意のクラスの脂質低下薬。例としてのスタチンには、アトルバスタチン(Lipitor(登録商標))、フルバスタチン(Lescol(登録商標))、ロバスタチン(Mevacor(登録商標)、Altocor(登録商標)、イギリスでは販売されていない)、プラバスタチン(Pravachol(登録商標)、Selektine(登録商標)、Lipostat(登録商標))、ロスバスタチン(Crestor(登録商標))、シンバスタチン(Zocor(登録商標))が含まれる。スタチンには二つの群が存在する:(1)発酵由来:ロバスタチン、シンバスタチン、およびプラバスタチン、ならびに(2)合成スタチン:フルバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン、およびロスバスタチン。一般的に、スタチンは、コレステロールの合成のための体の代謝経路であるHMG-CoAレダクターゼ経路の酵素である3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A(HMG CoA)レダクターゼを競合的に阻害することによって作用する。
【0069】
一つの例であるスタチン、ロバスタチンの構造を以下に示す。

【0070】
被験体:
血管系を有し、造血細胞を有する任意の被験体。一つの態様において、被験体はサル、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、またはウシのような非ヒト哺乳動物被験体である。もう一つの態様において、被験体はヒト被験体である。
【0071】
治療的有効量:
単独で、または薬学的に許容される担体、もしくは一つもしくは複数のさらなる治療物質と共に、所望の反応を誘導する薬学的調製物の量。抗凝固剤のような治療物質が、治療的有効量で投与される。
【0072】
治療物質の有効量は、アテローム性動脈硬化症の低減または血管疾患を有する被験体の生理的病態の改善をアッセイすることのような、異なる多くの方法で決定することができる。有効量はまた、様々なインビトロ、インビボ、またはインサイチューアッセイ法を通して決定することができる。
【0073】
治療物質は、1コースの処置の間、単回投与、または数回投与、例えば毎日投与することができる。しかし、有効量は提供された起源、処置される被験体、処置される病態の重症度およびタイプ、ならびに投与方法に依存しうる。
【0074】
一つの例において、これは、被験体における血管疾患の症状を部分的または完全に緩和するために十分な量である。処置は、血管疾患の進行を一時的に遅らせることのみを含みうるが、同様に血管疾患の進行を永久的に停止または逆転させることが含まれうる。例えば、薬学的調製物は、血管疾患の一つまたは複数の症状を減少させることができ、例えば薬学的調製物の非存在下における量と比較して症状を少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、少なくとも98%、またはさらに少なくとも100%を減少させることができる。
【0075】
疾患の処置:
「処置」とは、血管疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症)の徴候、パラメータ、または症状のような、疾患または病態の徴候または症状を改善する治療介入を指す。処置はまた、血管疾患のような病態の寛解または治癒を誘導することができる。特定の例において、処置には、例えば血管疾患の発症を予防することのような、疾患の完全な発症を阻害することによって、疾患を予防する段階が含まれる。疾患の予防は、血管疾患が完全に存在しないことを必要としない。例えば、少なくとも50%の減少は十分となりうる。
【0076】
血管機能:
血管の機能。血管機能の減少は、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、間欠性跛行、腸管虚血、網膜虚血、一過性の虚血発作(TIA)、虚血発作、血管形成術後の再狭窄、移植性アテローム性動脈硬化症、不安定狭心症、突然死、および血圧の変化に関連する。
【0077】
血管機能の評価:
血管系の機能を測定するアッセイ法。アッセイ法には、血液のパラメータの測定、動脈過形成のアッセイ法、血管収縮性の測定、上腕反応性の測定、および形態計測測定が含まれる。同様に、内皮細胞の評価は、内皮細胞の機能またはパラメータを測定する試験である。「減少した血管機能」とは、標準値または対象試料と比較した場合の血管の任意の機能の減少を示す。このように、一つの例において、血管機能の減少は、正常な血管収縮性の公知の値と比較した場合の血管収縮性の減少である。もう一つの例において、血管機能の減少は、疾患または障害によって影響を受けないことが公知である血管の収縮性と比較した血管のより低い収縮性である。さらなる例において、血管機能の減少は、より初期の時点での同じ被験体の血管の収縮性と比較したより低い血管の収縮性である。「心血管リスク」は、被験体が将来、血管疾患を有するまたは発症するであろう確率である。
【0078】
血管組織:
構造の本質的な部分として血管からなる、または血管を含む組織。血管組織は、血管によって操作する、または血管の配列によって構成される。血管組織には、動脈、静脈、毛細管、乳び管、微小血管等が含まれる。一つの態様において、血管組織には、高度血管化臓器(例えば、肺)が含まれる。もう一つの態様において、血管組織は血液の管またはその一部である。血管組織から単離された細胞は組織の残りの成分から単離された細胞集団である。
【0079】
血管機能の評価
被験体における血管機能を評価する方法を本明細書において開示する。詳しく述べると、方法は、アテローム性動脈硬化症を評価する(例えば、アテローム性動脈硬化症の診断または予後を決定する)ために有用である。いくつかの態様において、本方法には、FOS mRNAの発現、またはFOSポリペプチドの存在をアッセイする段階が含まれる。さらなる態様において、本方法には、DUSP1 mRNAの発現またはDUSP1ポリペプチドの存在をアッセイする段階が含まれる。本方法には、血液、血清、または血漿中のFOSおよび/またはDUSP1をモニターする段階が含まれうる。
【0080】
本方法は、例えば、将来の心血管リスクを予測するために用いることができる。具体的には、本方法は、心筋梗塞、間欠性跛行、腸管虚血、網膜虚血、一過性の虚血発作(TIA)、虚血発作、血管形成術後の再狭窄、移植性アテローム性動脈硬化症、不安定狭心症、突然死、および心血管機能障害に関連した他の病態のリスクを予測するために用いることができる。一つの特異的な非制限的な例において、FOSまたはDUSP1の評価は、心筋虚血および/または梗塞に関する心血管リスクを予測するために有用である。心血管リスクは、心筋梗塞、間欠性跛行、腸管虚血、網膜虚血、一過性の虚血発作(TIA)、虚血発作、血管形成術後の再狭窄、移植性アテローム性動脈硬化症、不安定狭心症、突然死、および心血管機能障害に関連した他の病態のような、将来の心血管事象の可能性を示す。心血管リスクに関係する要因には、血清中コレステロール、高血圧症、糖尿病、性別および年齢が含まれるがそれらに限定されるわけではない。本方法はまた、アテローム性動脈硬化症のような疾患の重症度を評価するためにも用いることができる。
【0081】
本明細書において、例えば、それ以外は健康な被験体、または血管疾患を有することが疑われるもしくはリスクを有する被験体のような被験体が、血管疾患を有する、または血管疾患を将来発症する可能性があるか否かを決定するための、血管リスクを評価するための方法が提供される。特定の例において、本方法は、被験体が血管疾患を有する、または血管疾患を将来発症するか否かを妥当な量の感受性および特異性によって決定することができる。いくつかの例において、被験体から得られた、単離または精製PBMC、血清、血液、または血漿は、血管疾患の被験体のリスクを予測するために用いられる。一つの例において、被験体は、血管疾患の症状を示さない(例えば、心筋梗塞または卒中のような急性の有害な血管事象をこれまでに有したことがない)被験体のように、見かけ上健康である。いくつかの例において、健康被験体は、医師が調べた場合に健康であって血管疾患の症状を有しないことを特徴とする被験体である。もう一つの例において、被験体は、血管疾患を有することが疑われる、または血管疾患を将来発症するリスクを有することが疑われる。例えば、そのような被験体は、上昇したコレステロールまたはトリグリセリドレベル、上昇したC-反応性タンパク質レベル、または高血圧症を有してもよい。
【0082】
特異的な非制限的な例において、単球におけるFOSおよび/またはDUSP1の発現は、アテローム性動脈硬化症を非侵襲性に診断するために用いられる。例えば、FOSおよび/またはDUSP1の発現は、疾患の重症度および/または予後を評価するために用いることができる。一つの態様において、単球におけるFOSおよび/またはDUSP1の発現が評価される。単球は、アテローム性動脈硬化症病変に存在しうる、または末梢血における循環中の単球となりうる。さらなる態様において、血漿または血清中のFOSの量が評価される。このように、いくつかの例において、本方法には、アテローム性動脈硬化症のような、しかしこれらに限定されない心血管疾患を発症するリスクを決定するために、末梢血、血漿、血清、または末梢血単核球におけるFOSおよび/またはDUSP1の発現を測定する段階が含まれる。そのような評価は、例えばライフスタイル(食事を含む)の介入または薬理(薬物)治療による治療を開始するか否かを決定するために役立ちうる。
【0083】
本明細書に開示の方法には、FOS、DUSP1、またはFOSおよびDUSP1の双方の発現をアッセイする段階が含まれる。対照試料と比較した、単球を含む試料中におけるFOSおよび/またはDUSP1の発現の増加により、血管機能の減少、例えば将来の心血管リスクの増加、またはアテローム性動脈硬化症の発症が示される。一つの特異的な非制限的な例において、被験体が血管疾患を発症するリスクの評価、または血管機能の評価は、末梢血単核球(PBMC)におけるFOSおよび/またはDUSP1の発現を評価することによって行われる。
【0084】
さらに特異的な非制限的な例において、FOSおよび/またはDUSP1の発現は、治療プロトコールの有効性を評価するために用いられる。処置プロトコールには、スタチン、ナイアシン、もしくは他のコレステロール低下剤、抗炎症剤、または他の任意の薬学的化合物による処置が含まれるがそれらに限定されるわけではない、アテローム性動脈硬化症の進行を逆転させるまたは遅らせるように設計されたアテローム性動脈硬化症の任意の治療が含まれうる。本態様において、単球を含む試料、および/または血液、血清、もしくは血漿試料を、治療開始前に被験体から採取することができる。治療を開始後、単球を含むさらなる試料および/または血液、血清、もしくは血漿試料を被験体から採取する。FOSおよび/またはDUSP1の発現が減少すれば、治療が有効であることを示している。さらに、被験体は、治療プロトコールの持続的な有効性を評価するために経時的にモニターすることができる。異なる用量の効果も同様に、初回投与を受けた被験体からの試料におけるFOSおよび/またはDUSP1の発現を、2回目(異なる)投与を受けた被験体からの試料におけるFOSおよび/またはDUSP1の発現と比較することによって、評価することができる。
【0085】
多様な方法を用いて、アテローム性動脈硬化症病変または末梢血、血清、もしくは血漿中の単球におけるFOSおよび/またはDUSP1の発現を検出することができる。これらの方法には、核酸プローブ、抗体、またはFOSおよび/またはDUSP1の発現を検出するための質量分析のような他の分析技術を用いることが含まれる。FOSおよび/またはDUSP1の発現は、アテローム性動脈硬化症病変における単球もしくは末梢血単球、または血液、末梢血、もしくは血清試料における単球のような、単球において評価される。一つの特異的な非制限的な例において、方法は、FOSおよび/またはDUSP1の発現が単球のみにおいて(または血液、血漿、もしくは血清のみにおいて)評価されるように、血管平滑筋におけるFOSおよび/またはDUSP1の検出を特異的に除外する。このように、一つの態様において、アッセイ系は、単球におけるFOSおよび/またはDUSP1の発現を区別するように設計される。このように、一つの態様において、FOSおよび/またはDUSP1の発現は、血管平滑筋のような血管組織において評価されない。もう一つの態様において、本アッセイ法は、血管組織におけるFOSおよびDUSP1の発現からの血漿中への放出を検出するように設計される。いくつかの例において、本アッセイ法は、単離された末梢血単球(PBMC)、血漿、血液、または血清において行うことができる。
【0086】
FOSおよびDUSP1核酸の検出
一つの態様において、核酸に基づく方法が使用される。これらの方法には、中でも遺伝子発現連続解析(SAGE技術)、RT-PCR、定量的PCR、リアルタイムPCR、ノーザンブロット、ドットブロット、マイクロアレイが含まれる。一般的に、核酸に関して、対照と比較して標的遺伝子mRNA(FOSおよび/またはDUSP1)の発現を検出することができる限り、如何なる方法も使用することができる。当業者は、障害を有しないことが公知である被験体からの試料(陰性対照)、障害を有することが公知である被験体からの試料(陽性対照)、またはFOSおよび/またはDUSP1をコードする核酸の公知の量(健康な被験体において見出される標準または正常レベル)のような、適当な対照を容易に同定することができる。統計学的に正常なレベルは、例えば、アテローム性動脈硬化症を有しないことが公知である、および心事象のリスクが低い被験体から決定することができる。一つの非制限的な例において、正常レベルは、喫煙も飲酒もせず、定期的に運動し、公知の心事象既往を有さず、および心疾患の家族の既往も有しない若い成人の血液、血清、または血漿におけるFOSおよび/またはDUSP1を測定することによって評価することができる。
【0087】
本明細書に記述の方法は、例えば、心血管疾患の症状を示す、または心血管疾患を発症するリスクを有する患者を診断するために、臨床の状況におけるように簡便に用いられる可能性がある、少なくとも一つの特異的核酸プローブを含む予めパッケージングされた診断キットを使用することによって行ってもよい。一つの態様において、このアッセイ法は、末梢血試料、末梢血、血清、または血漿から単離された細胞の試料において医学研究所において行われる。
【0088】
診断技法は、核酸の精製が必要でないように、血液塗末標本(固定および/または凍結)、または組織生検において「インサイチュー」で直接行うことができる。試料からのDNAまたはRNAは、当業者に周知である技法を用いて単離することができる。
【0089】
対象核酸、すなわちFOSまたはDUSP1をコードする核酸に対して特異的である核酸試薬は、そのようなインサイチュー技法に関するプローブおよび/またはプライマーとして用いるためにこれらに遺伝子の配列が与えられれば、容易に生成することができる(例えば、Nuovo, G.J., 1992, 「PCR in situ hybridization : protocols and applications」, Raven Press, NYを参照されたい)。
【0090】
ノーザン解析および/またはRT-PCRに基づいてディファレンシャル・ディスプレイ技法を使用することができる。例としての方法は、以下の実施例の章に開示される。一つの態様において、本明細書に開示の方法は、固相支持体上で何千もの遺伝子を表す核酸の整然としたアレイを用いることが含まれる。対象細胞からのmRNAを用いて、標識された第一鎖cDNAプローブを作製して、次にこれをマイクロアレイとハイブリダイズさせる。一つの態様において、二つのmRNA試料を、試料に由来するcDNAプローブに異なる標識を組み入れることによって、同じマイクロアレイと直接比較する。マイクロアレイ上でのそれぞれの核酸配列に対するプローブのハイブリダイゼーションの程度を定量して、各標識のピクセル強度の比を、二つの試料における相対的mRNA発現の測定として用いる。一つの態様において、アレイは、免疫系または心血管系によって発現された核酸のアレイである。
【0091】
一つの例において、ヒト免疫細胞のライブラリからのcDNAクローンの高スループットシークエンシングに由来する核酸配列を含むリンフォチップが使用される。アレイは、例えば免疫系または心血管系から調製されたライブラリからの何千ものクローンを組み入れることができる。アレイにはまた、免疫細胞の分化、反応、および障害におけるそれらの確立された役割に基づいて公知の構造および機能を有する遺伝子が含まれうる。これらのタイプのアレイは当技術分野において周知である(例えば、その全てが参照により本明細書に組み入れられる、Staudt, Trends Immunol. 22:35〜40, 2001;Staudt and Brown, Ann. Rev. Immunol. 18:829〜859, 2000;Alizadeh et al., Nature 403:503〜511, 2000;Alizadeh et al., Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 64:71〜78, 1999;米国特許出願第20030203416A1号を参照されたい)。
【0092】
アレイは、約100個より多い、約1000個より多い、約16,000個より多い、および約65,000個もしくは250,000個より多い、またはさらに約1,000,000個より多い異なるオリゴヌクレオチドプローブがアレイに含まれるように、高密度アレイとなりうる。オリゴヌクレオチドプローブは、一般的に長さが約10〜約40ヌクレオチドのような、または長さが約15〜約40ヌクレオチドのような、約5〜約50ヌクレオチドの範囲である。
【0093】
アレイにおけるそれぞれの異なるオリゴヌクレオチドプローブ配列の位置および順序は公知である。その上、高密度アレイでは、プローブ密度が異なるオリゴヌクレオチドプローブ約100個/cm2より高くなるような、約600個/cm2より高くなるような、約1000個/cm2より高くなるような、約5,000個/cm2より高くなるような、約10,000個/cm2より高くなるような、約40,000個/cm2より高くなるような、約100,000個/cm2より高くなるような、または約400,000個/cm2より高くなるような、異なるオリゴヌクレオチドプローブ約60個/cm2より高くなるように、多数の異なるプローブが比較的小さい領域を占める。アレイの表面積が小さいこと(約10 cm2未満、約5 cm2未満、約2 cm2未満のような)により、極めて均一なハイブリダイゼーション条件(温度調節、塩濃度等)が許容される、一方極めて多数のプローブにより同時のハイブリダイゼーションの処理が可能となる。
【0094】
一般的に、アレイ技術を用いて遺伝子発現をモニターする方法は、(1)一つまたは複数の標的遺伝子のRNA転写物、またはRNA転写物に由来する核酸を含む標的核酸のプールを提供する段階;(2)高密度アレイとなりうるプローブのアレイ(対照プローブを含む)に核酸試料をハイブリダイズさせる段階;および(3)ハイブリダイズした核酸を検出して、相対的発現(転写)レベルを計算する段階を含む。本出願において、FOSおよび/またはDUSP1の発現が評価される。
【0095】
一つの遺伝子または複数の遺伝子の転写レベルを測定するために、遺伝子または複数の遺伝子のmRNA転写物を含む核酸試料、またはmRNA転写物に由来する核酸を提供することが望ましい。本明細書において用いられるように、mRNA転写物に由来する核酸は、そのmRNA転写物またはその小配列の合成が最終的に、cDNA(mRNAから転写された「第一鎖」)のような鋳型として作用する核酸を指す。このように、mRNAから逆転写されたcDNA、そのcDNAから転写されたRNA、cDNAから増幅されたDNA、増幅されたDNAから転写されたRNA等は、全てmRNA転写物に由来する。そのような産物の検出は、試料中の当初の転写物の存在および/または豊富な量を示している。このように、適した試料には、遺伝子または複数の遺伝子のmRNA転写物、mRNAから逆転写されたcDNA、cDNAから転写されたcRNA等が含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0096】
一般的に、試料中の一つもしくは複数の遺伝子の転写レベル(およびそれによる発現)は、核酸試料が、遺伝子もしくは複数の遺伝子のmRNA転写物の濃度、またはmRNA転写物に由来する核酸の濃度がその遺伝子の転写レベル(したがって発現レベル)に比例する試料となるように、定量される。ハイブリダイゼーションのシグナル強度はまた、ハイブリダイズした核酸の量と比例しなければならない。一般的に、比例性は、比較的厳密であるが(例えば、転写速度の倍加によって、試料核酸プールにおけるmRNA転写物のほぼ倍加、およびハイブリダイゼーションシグナルの倍加が起こる)、当業者は比例性がより和らいで非直線性にさえなりうることを認識するであろう。このように、例えば標的mRNA濃度の5倍増加によって、ハイブリダイゼーション強度の3〜6倍の差が得られるアッセイ法は十分となりうる。より正確な定量が必要である場合、試料調製および本明細書に記述のハイブリダイゼーションにおいて導入された変動を補正するために、対照を行うことができる。さらに、「標準」標的mRNAの連続希釈液を用いて、当業者に周知の方法に従って検量線を調製することができる。当然、転写物(FOSおよび/またはDUSP1のような)の有無の単純な検出が望ましい場合、対照または較正は必要でない可能性がある。
【0097】
一つの態様において、生物学的試料から単離された総mRNAのような核酸試料が使用される。生物学的試料は、心血管疾患を有することが疑われる被験体のような、対象被験体からの任意の生物学的組織または液体となりうる。そのような試料には、血液、血球(白血球のような)、または血管組織を含む組織生検が含まれるがそれらに限定されるわけではない。しかし、試料はまた腹腔液、胸腔液、脳脊髄液、または試料中から分離された細胞となりうる。
【0098】
核酸(mRNAのような)は、当業者に周知の多数の任意の方法によって試料から単離することができる。総mRNAを単離する方法は当業者に習知である。例えば、核酸を単離および精製する方法は、「Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology : Hybridization With Nucleic Acid Probes, Part I. Theory and Nucleic Acid Preparation」, P.Tijssen, ed. Elsevier, N.Y.(1993)の第3章、および「Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology : Hybridization With Nucleic Acid Probes, Part I. Theory and Nucleic Acid Preparation」, P.Tijssen, ed. Elsevier, N.Y.(1993)の第3章において詳細に記述されている。一つの例において、総核酸を、例えば、酸グアニジウム-フェノール-クロロホルム抽出法を用いて所定の試料から単離して、ポリA+ mRNAは、オリゴdTカラムクロマトグラフィーによって、または(dT)n磁気ビーズを用いて単離される(例えば、Sambrook et al., 「Molecular Cloning : A Laboratory Manual」(2nd ed.), Vols 1〜3, Cold Spring Harbor Laboratory, (1989)または「Current Protocols in Molecular Biology」, F. Ausubel et al., Greene Publishing and Wiley-Interscience, N.Y.(1987)を参照されたい)。もう一つの例において、オリゴ-dT磁気ビーズを用いてmRNAを精製してもよい(Dynal Biotech Inc., Brown Deer, WI)。
【0099】
核酸試料をハイブリダイゼーションの前に増幅することができる。定量的結果が望ましい場合、増幅された核酸の相対的頻度を維持するまたは制御する方法を使用する。「定量的」増幅法は、当業者に周知である。例えば、定量的PCRは、同じプライマーを用いて対象配列の公知の量を同時に共増幅する段階を含む。これは、PCR反応を較正するために用いることができる内部標準を提供する。次にアレイには、増幅された核酸を定量するために内部標準物質に対して特異的なプローブが含まれうる。
【0100】
適した増幅法には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(Innis et al., 「PCR Protocols, A guide to Methods and Application」, Academic Press, Inc. San Diego, 1990を参照されたい)、リガーゼ連鎖反応(LCR)(Wu and Wallace, Genomics 4:560, 1989;Landegren et al., Science 241:1077, 1988;およびBarringer et al., Gene 89:117, 1990を参照されたい)、転写増幅(Kwoh et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173, 1989を参照されたい)、および自給式配列複製(Guatelli et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87:1874, 1990)が含まれるがそれらに限定されるわけではない。一つの態様において、試料mRNAは、逆転写酵素ならびにオリゴdTおよびファージT7プロモーターをコードする配列からなるプライマーによって逆転写されて、一本鎖DNA鋳型を提供する(「第一鎖」と呼ばれる)。第二のDNA鎖は、DNAポリメラーゼを用いて重合化される。二本鎖cDNAの合成後、T7 RNAポリメラーゼを加えて、RNAをcDNA鋳型から転写する。各単一のcDNA鋳型からの数ラウンドの転写によって増幅されたRNAが得られる。
【0101】
インビトロ重合化法は当業者に周知である(例えば、Sambrook、前記;Van Gelder et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87:1663〜1667, 1990を参照されたい)。直接転写法は、アンチセンス(aRNA)プールを提供する。アンチセンスRNAを標的核酸として用いる場合、アレイにおいて提供されたオリゴヌクレオチドプローブは、アンチセンス核酸の小配列と相補的となるように選択される。逆に、標的核酸プールがセンス核酸のプールである場合、オリゴヌクレオチドプローブは、センス核酸の小配列と相補的となるように選択される。最後に、核酸プールが二本鎖である場合、標的核酸にセンスおよびアンチセンス鎖の双方が含まれることから、プローブは、いずれのセンス鎖であってもよい。
【0102】
プロトコールには、センスまたはアンチセンス核酸のいずれかのプールを生成する方法が含まれる。実際に、望ましければセンスまたはアンチセンス核酸のいずれかを生成するために一つのアプローチを用いることができる。例えば、cDNAを、T3およびT7プロモーターに隣接するようにベクター(例えば、Stratagene's pBluescript II KS(+)ファージミド)に直接クローニングすることができる。T3ポリメラーゼによるインビトロ転写は、一つのセンス鎖のRNA(インサートの方向に応じてセンス)を産生するが、T7ポリメラーゼによるインビトロ転写は反対方向のセンス鎖を有するRNAを産生するであろう。他の適したクローニング系には、Cre-loxPプラスミドサブクローニングのために設計されたファージラムダベクターが含まれる(例えば、Palazzolo et al., Gene 88:25〜36, 1990を参照されたい)。
【0103】
一つの態様において、組織、末梢血、または他の試料からの核酸を、例えばナイロンメンブレンもしくはニトロセルロースを含む膜のような固相支持体に、またはマイクロタイタープレートもしくはポリスチレンビーズのようなプラスチック表面に固定することができる。FOSおよび/またはDUSP1に特異的に結合する標識された核酸プローブは、固定された試料に結合する。標識には、放射性標識、酵素標識、および結合試薬(アビジンまたはビオチンのような)が含まれる。アニールされた標識された核酸試薬の検出は、当業者に周知の標準的な技術を用いて行われる。
【0104】
一つの態様において、ハイブリダイズした核酸は、試料核酸に結合した一つまたは複数の標識を検出することによって検出される。標識は、任意の多くの方法によって組み入れられうる。一つの例において、標識は試料核酸の調製における増幅段階の際に同時に組み入れられる。このように、例えば、標識プライマーまたは標識ヌクレオチドによるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、標識された増幅産物を提供するであろう。一つの態様において、先に記述したように、標識ヌクレオチド(フルオレセイン標識UTPおよび/またはCTPのような)を用いる転写の増幅は、転写された核酸に標識を組み入れる。
【0105】
または、標識は、当初の核酸試料(mRNA、ポリA mRNA、cDNA等)に、または増幅が完了した後の増幅産物に直接付加してもよい。標識を核酸に付着させる手段は当業者に周知であり、これには例えば、ニックトランスレーションまたは核酸のキナーゼ処理による末端標識(例えば標識RNAによる)、および試料核酸を標識(例えば、蛍光体)に接合させる核酸リンカーのその後の付着(ライゲーション)が含まれる。
【0106】
用いるために適した検出可能な標識には、分光光度、光化学、生化学、免疫化学、電子、光学、または化学的手段によって検出可能な如何なる組成物も含まれる。有用な標識には、標識されたストレプトアビジン共役体を染色するためのビオチン、磁気ビーズ(例えば、DYNABEADS(商標))、蛍光色素(例えば、フルオレセイン、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光タンパク質等)、放射性標識(例えば、3H、125I、35S、14C、または32P)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、およびELISAにおいて一般的に用いられる他の酵素)、ならびに金コロイドまたは着色ガラスもしくはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス等)ビーズのような比色測定標識が含まれる。そのような標識の使用を教示する特許には、米国特許第3,817,837号;米国特許第3,850,752号;米国特許第3,939,350号;米国特許第3,996,345号;米国特許第4,277,437号;米国特許第4,275,149号;および米国特許第4,366,241号が含まれる。
【0107】
そのような標識を検出する手段も同様に周知である。このように、例えば放射性標識は、写真フィルムまたはシンチレーションカウンターを用いて検出してもよく、蛍光マーカーは放射された光を検出するために光検出器を用いて検出してもよい。酵素標識は典型的に、酵素に基質を提供する段階、および酵素の作用によって基質上に産生された反応産物を検出する段階によって検出され、比色測定標識は単に着色した標識を可視化することによって検出される。
【0108】
標識は、ハイブリダイゼーションの前または後に標的(試料)核酸に加えてもよい。いわゆる「直接標識」は、ハイブリダイゼーションの前に標的(試料)核酸に直接付着したまたは組み入れられた検出可能な標識である。対照的に、いわゆる「間接標識」は、ハイブリダイゼーション後にハイブリッド二本鎖に接合される。しばしば、間接標識は、ハイブリダイゼーションの前に標的核酸に付着されている結合部分に付着する。このように、例えば標的核酸はハイブリダイゼーションの前にビオチン化されてもよい。ハイブリダイゼーション後、アビジン結合蛍光体が、ハイブリッド二本鎖を有するビオチンに結合して、容易に検出される標識を提供する(「Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Vol.24 : Hybridization With Nucleic Acid Probes」, P.Tijssen, ed. Elsevier, N.Y., 1993を参照されたい)。
【0109】
核酸ハイブリダイゼーションは、変性したプローブおよび標的核酸を、プローブとその相補的標的が相補的塩基対形成を通して安定なハイブリッド二本鎖を形成することができる条件で提供する段階を含む。次に、ハイブリッド二本鎖を形成しない核酸を洗浄して除去して、ハイブリダイズした核酸を典型的に、付着した検出可能な標識の検出を通して検出する。一般的に、温度を増加させること、または核酸を含む緩衝液の塩濃度を減少させることによって、核酸は変性すると認識される。低ストリンジェンシー条件(例えば、低い温度および/または高い塩)では、ハイブリッド二本鎖(例えば、DNA:DNA、RNA:RNA、またはRNA:DNA)は、アニールした配列が完全に相補的でない場合でも形成するであろう。このように、ハイブリダイゼーションの特異性はより低ストリンジェンシーでは低減する。逆により高いストリンジェンシー(例えば、より高い温度またはより低い塩)では、ハイブリダイゼーションの成功はより少ないミスマッチを必要とする。
【0110】
当業者は、異なる程度のストリンジェンシーを提供するようにハイブリダイゼーション条件を設計することができることを認識するであろう。一つの態様において、ハイブリダイゼーションは、この場合、ハイブリダイゼーションを確実にするために6×SSPE-Tにおいて37℃(0.005%トライトンX-100)において低ストリンジェンシーで行い、その後、ミスマッチしたハイブリッド二本鎖を消失させるためにより高いストリンジェンシー(例えば、37℃で1×SSPE-T)で洗浄を行う。望ましいレベルのハイブリダイゼーション特異性が得られるまで、ますますより高いストリンジェンシー(例えば、37℃〜50℃で0.25×SSPE-Tもの低さまで低下させる)で連続的な洗浄を行ってもよい。ストリンジェンシーはまた、ホルムアミドのような物質を加えることによって増加させることができる。ハイブリダイゼーションの特異性は、試験プローブに対するハイブリダイゼーションを、存在しうる様々な対照(例えば、発現レベル対照、標準化対照、ミスマッチ対照等)に対するハイブリダイゼーションと比較することによって評価してもよい。
【0111】
一般的に、ハイブリダイゼーション特異性(ストリンジェンシー)とシグナル強度との間には関係が存在する。このように、一つの態様において、洗浄は、一貫した結果を生成して、バックグラウンド強度の約10%より大きいシグナル強度を提供する最高のストリンジェンシーで行われる。このように、ハイブリダイズしたアレイを連続的により高いストリンジェンシー溶液で洗浄して、各洗浄の間に読み取ってもよい。このように産生されたデータセットの分析により、ハイブリダイゼーションパターンが認識可能に変化せず、特定の対象オリゴヌクレオチドプローブに対して適切なシグナルを提供する場合より上の洗浄ストリンジェンシーが明らかとなるであろう。これらの段階は、市販のアレイシステムに関して標準化されている。
【0112】
ハイブリダイゼーションの結果を評価する方法は、提供される対照と共に、用いる特異的プローブ核酸の性質によって変化する。一つの態様において、それぞれのプローブに関する蛍光強度の単純な定量を決定する。これは、アレイ上の(例えば、標識が蛍光標識の場合、アレイ上のそれぞれの位置での固定された励起照度によって産生された蛍光(強度)の量の検出)それぞれの位置(異なるプローブを表す)におけるプローブシグナル強度を単に測定することによって行われる。「対照」試料(治療プロトコールによる処置前の同じ患者からのような)によって産生された強度と、「試験」試料(治療プロトコールによって処置した患者からのような)からの核酸とハイブリダイズしたアレイの絶対強度を比較することによって、プローブのそれぞれにハイブリダイズする核酸の相対的発現の測定値が提供される。
【0113】
例えば、これらの方法によって検出された発現の変化は、治療が異なれば異なり得て、これにはそのような核酸のレベル(量)もしくは機能的活性、その発現もしくはタンパク質への翻訳、またはその位置もしくは安定性の増加または減少が含まれてもよい。増加または減少は、例えば、FOSおよび/またはDUSP1をコードする核酸のような、特定の核酸の発現における約1倍、2倍、3倍、4倍、5倍の変化(増加または減少)となりうる。
【0114】
含まれる特定の方法は、より初期の時期の被験体に由来するまたは被験体から採取した試料中に存在する分子レベルと比較して分子レベルの差(増加または減少)があれば、アテローム性動脈硬化症にとって診断的である、または特異的治療プロトコールの有用性に関して予後的である、被験体に由来するまたは被験体から採取した単球を含む試料(血清、血液、または組織試料のような)における分子の量を測定する段階を含む。含まれる特定の方法は、対象の治療プロトコールに対して正確に反応する、または反応しない被験体のような、対照試料に存在する分子レベルと比較した分子レベルと比較して、被験体に由来するまたは被験体から採取した試料中の分子量を測定する段階を含む。これは核酸アレイを用いて行うことができるが、そのような核酸アレイを用いる必要はない。
【0115】
核酸分子の発現における増加または減少を含む変更は、例えば、インビトロ核酸増幅および/または核酸ハイブリダイゼーションを用いて検出することができる。そのような検出法の結果は、例えばハイブリダイゼーションの量または増幅の量を決定することによって定量することができる。
【0116】
FOSおよびDUSP1ポリペプチドの検出
いくつかの態様において、FOSおよび/またはDUSP1ポリペプチドの量を測定する。これは、イムノアッセイ法または分光光度法を用いて行うことができる。FOSおよび/またはDUSP1の発現は、対照に対して調製することができる。当業者は、障害を有しないことが公知である被験体からの試料(陰性対照)、障害を有することが公知の被験体からの試料(陽性対照)、またはFOSおよび/またはDUSP1ポリペプチドの公知の量(健康な被験体において見出される標準または正常レベル)のような、適当な対照を容易に同定することができる。FOSおよび/またはDUSP1ポリペプチドの統計学的に正常レベルは、例えば、アテローム性動脈硬化症を有しないことが公知である被験体、および心事象のリスクが低い被験体から決定することができる。一つの非制限的な例において、正常レベルは、喫煙も飲酒もせず、定期的に運動し、公知の心事象既往を有さず、および心疾患の家族の既往も有しない若い成人の血液、血清、または血漿におけるFOSおよび/またはDUSP1を測定することによって評価することができる。
【0117】
モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、ならびにその断片も同様に、FOSおよび/またはDUSP1の発現を検出および定量するために使用することができる。これは、例えば免疫組織化学、イムノアッセイ法(酵素結合イムノソルベントアッセイ法(ELISA)、またはラジオイムノアッセイ法(RIA))、ウェスタンブロッティング、フローサイメトリーまたは蛍光測定検出によって行うことができる。抗体(またはその断片)は、FOSおよび/またはDUSP1をインサイチューで検出するために、免疫蛍光または免疫電子顕微鏡の場合のように、組織学的に用いることができる。インサイチュー検出には、被験体からの組織標本を標識抗体に接触させる段階、試料中の単球に対する抗体の結合を検出する段階が含まれる。そのようなインサイチュー検出を得るために、広範な組織学的方法(染色技法のような)を改変することができる。
【0118】
一般的に、FOSおよびDUSP1のイムノアッセイ法には、典型的に生物学的液体、組織抽出物、または新しく採取した細胞のような、単球を含む生物学的試料を抗体の存在下でインキュベートする段階、および当技術分野において周知である多くの任意の技術によって結合した抗体を検出する段階が含まれる。生物学的試料は血液、血清、または血漿となりうる。生物学的試料はまた単離された単球となりうる。生物学的試料は、ニトロセルロースのような固相支持体もしくは担体、または細胞、細胞粒子、もしくは可溶性タンパク質を固定することができる他の固体支持体に接触させて固定することができる。次に、支持体を、適した緩衝液によって洗浄した後、FOSに結合する抗体またはDUSP1に結合する抗体による処置を行ってもよい。次に、固体支持体に緩衝液によって2回目の洗浄を行い、未結合の抗体を除去することができる。抗体が直接標識されている場合、固体支持体上の結合した標識の量を通常の手段によって検出することができる。抗体が非標識の場合、FOSおよび/または抗体に特異的に結合するその抗体を検出する標識された第二の抗体を用いることができる。
【0119】
「固相支持体または担体」とは、抗原または抗体に結合することができる任意の指示体を意図する。周知の支持体または担体には、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および改変セルロース、ポリアクリルアミド、斑糲岩、ならびに磁鉄鉱が含まれる。担体の性質は、本開示の目的に関してある程度可溶性または不溶性となりうる。支持材料は、共役した分子が抗原または抗体に結合することができる限り、実質的に任意の可能性がある構造的形状を有してもよい。このように、支持体の形状は、ビーズのような球状であってもよく、試験管の内表面のような円柱状であってもよく、または棹の外表面であってもよい。または、表面はシートまたは試験片のような平坦であってもよい。
【0120】
一つの態様において、タンパク質は、末梢血試料のような単球を含む試料から単離される。他の態様において、タンパク質は、血清または血漿から単離される。一つの態様において、酵素結合イムノソルベントアッセイ法(ELISA)を用いてタンパク質を検出する(Voller, 「The Enzyme Linked Immunosorbent Assay(ELISA)」, Diagnostic Horizons 2:1〜7, 1978, Microbiological Associates Quarterly Publication, Walkersville, Md;Voller et al., J. Clin. Pathol. 31:507〜520, 1978;Butler, Meth. Enzymol. 73:482〜523, 1981;Maggio, (ed.)「Enzyme Immunoassay」, CRC Press, Boca Raton, Fla., 1980;Ishikawa, et al., (eds.)「Enzyme Immunoassay」, Kgaku Shoin, Tokyo, 1981)。この方法において、抗体に結合した酵素は、例えば、分光光度法、蛍光測定、または肉眼的手段によって検出することができる化学部分を産生するような方法で、適当な基質、好ましくは色素産生基質と反応するであろう。抗体を検出可能に標識するために用いることができる酵素には、マレイン酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、δ-5-ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α-グリセロホスフェート、デヒドロゲナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼが含まれるがそれらに限定されるわけではない。検出は、酵素の色素産生基質を用いる比色測定法によって行うことができる。検出はまた、同様に調製された標準物質と比較した基質の酵素反応の程度の肉眼的比較によって行うこともできる。
【0121】
しかし、検出は、多様な他の任意のイムノアッセイ法を用いて行うことができる。例えば、抗体または抗体断片の放射性標識によって、ラジオイムノアッセイ法(RIA)を用いることを通してフィンガープリント遺伝子野生型または変異体ペプチドを検出することが可能である(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Weintraub, B., 「Principles of Radioimmunoassays, Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques」, The Endocrine Society, March, 1986を参照されたい)。もう一つの例において、感度のよい特異的なタンデム免疫放射測定アッセイ法を用いてもよい(Shen and Tai, J. Biol. Chem., 261:25, 11585〜11591, 1986を参照されたい)。放射性同位元素は、γカウンター、シンチレーションカウンターまたはオートラジオグラフィーを用いるような手段によって検出することができる。
【0122】
同様に、蛍光化合物によって抗体を標識することも可能である。蛍光標識抗体を適切な波長の光に曝露すると、次にその存在が蛍光により検出されうる。最も一般的に用いられる蛍光標識化合物は、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリスリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルデヒド、およびフルオレスカミンである。抗体はまた、152Euまたは他のランタノイド系列のような蛍光を放射する金属を用いて検出可能に標識することができる。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような金属キレート基を用いて抗体に付着させることができる。抗体はまた、化学発光化合物にそれを共役させることによって、検出可能に標識することができる。次に、化学発光タグを付けた抗体の存在を、化学反応の経過において生じる発光の存在を検出することによって決定する。特に有用な化学発光標識化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、セロマティック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルである。同様に、生物発光化合物を、本発明の抗体を標識するために用いることができる。生物発光は、触媒タンパク質が化学発光反応の効率を増加させる生態系において見出されるタイプの化学発光である。生物発光タンパク質の存在は、発光の存在を検出することによって決定される。標識の目的にとって重要な生物発光化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼ、およびアエコリンである。
【0123】
当業者に公知の任意の方法を用いて、FOSおよび/またはDUSP1タンパク質を検出および定量することができる。このように、さらなる態様において、分光光度法が使用される。分光光度法には、質量分析、核磁気共鳴分光法、およびその組み合わせが含まれる。一つの例において、質量分析を用いて血液試料、血清試料、または血漿試料のような生物学的試料におけるFOSおよび/またはDUSP1タンパク質の存在を検出する(例えば、Stemmann, et al., Cell Dec 14;107(6):715〜26, 2001;インターネットのPharmaGenomicsのウェブサイトで入手可能であるZhukov et al., 「From Isolation to Identification : Using Surface Plasmon Resonance-Mass Spectrometry in Proteomics」, PharmaGenomics, March/April 2002を参照されたい)。
【0124】
アテローム性動脈硬化症の処置において用いられる物質のスクリーニング
アテローム性動脈硬化症の処置において有用な物質を選択するための方法が本明細書において提供される。方法には、対象試験化合物を単球に接触させる段階、ならびにFOSの発現、DUSP1の発現、またはFOSおよびDUSP1の双方の発現を評価する段階が含まれる。
【0125】
単球はインビトロで存在しうる。一つの態様において、単球は、ヒトおよび非ヒト細胞を含む単球細胞株からの細胞となりうる。単球細胞株の特異的な例は、THP-1、U937、HL-60、K562、MonoMac6、J774A.1、RAW264.7およびLADMACである。もう一つの態様において、単球はまた、被験体からの末梢血単球となりうる。一つの態様において、末梢血単球は他の血液成分から単離される。
【0126】
単球はまたインビボで存在しうる。一つの例において、対象薬剤の治療的有効量が被験体に投与される。単球を含む試料を被験体から採取して、FOS、DUSP1、またはFOSおよびDUSP1の双方の発現を評価する。例えば試料は末梢血となりうる。
【0127】
FOS、DUSP1、またはFOSおよびDUSP1の双方の発現を対照と比較することができる。当業者は、障害を有しないことが公知である被験体からの試料(陰性対照)、障害を有することが公知である被験体からの試料(陽性対照)、またはFOSおよび/またはDUSP1をコードする核酸の公知の量(健康な被験体において見出される標準または正常レベル)のような、適当な対照を容易に同定することができる。統計学的に正常なレベルは、例えば、アテローム性動脈硬化症を有しないことが公知である被験体、および心事象のリスクが低い被験体から決定することができる。一つの非制限的な例において、正常レベルは、喫煙も飲酒もせず、定期的に運動し、公知の心事象既往を有さず、心疾患の家族の既往も有しない若い成人の血液、血清、または血漿におけるFOSおよび/またはDUSP1を測定することによって評価することができる。適した対照には、標準値、物質に接触させていない単球におけるFOSおよび/またはDUSP1のレベルが含まれ、FOSおよび/またはDUSP1レベルは、試験物質を投与していない、または緩衝液のような試験物質の担体のみを投与した被験体からの試料である。
【0128】
試験物質は、化学化合物、低分子、ポリペプチド、または他の生物学的物質(例えば、抗体またはサイトカイン)を含む任意の対象化合物となりうる。いくつかの例において、サイトカイン、薬剤(スタチンのような)、または増殖因子のパネルのような、可能性がある物質のパネルをスクリーニングする。
【0129】
所望の活性に関して試験することができる分子の組み合わせライブラリを調製するための方法は当技術分野において周知であり、これには、例えば、拘束されたペプチドとなりうるペプチドのファージディスプレイライブラリ(例えば、米国特許第5,622,699号;米国特許第5,206,347号;Scott and Smith, Science 249:386〜390, 1992;Markland et al., Gene 109:13〜19, 1991を参照されたい)、ペプチドライブラリ(米国特許第5,264,563号)、ペプチド模倣体ライブラリ(Blondelle et al., Trends Anal Chem. 14:83〜92, 1995)、核酸ライブラリ(O'Connell et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:5883〜5887, 1996;Tuerk and Gold, Science 249:505〜510, 1990;Gold et al., Ann. Rev. Biochem. 64:763〜797, 1995);オリゴ糖ライブラリ(York et al., Carb. Res. 285:99〜128, 1996;Liang et al., Science 274:1520〜1522, 1996;Ding et al., Adv. Expt. Med. Biol. 376:261〜269, 1995)、リポタンパク質ライブラリ(de Kruif et al., FEBS Lett. 399:232〜236, 1996)、糖タンパク質または糖脂質ライブラリ(Karaoglu et al., J Cell Biol. 130:567〜577, 1995)、または例えば薬物もしくは他の薬剤を含む化学ライブラリ(Gordon et al., J Med. Chem. 37:1385〜1401, 1994;Ecker and Crooke, BioTechnology 13:351〜360, 1995)を作製する方法が含まれる。ポリヌクレオチドは、細胞ポリペプチドを含む細胞標的に対して結合特異性を有する核酸分子が天然に存在することから、およびそのような特異性を有する合成分子を容易に調製および同定できることから、ES細胞の機能を変更させることができる物質として特に有用となりうる(例えば、米国特許第5,750,342号を参照されたい)。
【0130】
一つの態様において、高スループットフォーマットにおいて、単球をマルチウェルプレートまたはスライドガラスもしくはマイクロチップのウェルに導入することができ、試験物質と接触させることができる。一般的に、細胞はアレイにおいて、特に位置特定可能なアレイにおいて、細胞および溶液を操作するために、ならびに特に調べられる機能に関して単球をモニターするために、ロボットを簡便に用いることができるように組織化される。高スループットフォーマットを用いる長所は、多くの試験物質を同時に調べることができ、望ましければ、対照反応も同様に試験条件と同一の条件で行うことができる点である。そのため、本明細書に開示の方法は、単球の機能を変更することができる物質、例えばFOS発現、DUSP1発現、またはその双方を変更する物質を同定するために、一つ、少数、または多数の試験物質をスクリーニングするための手段を提供する。一つの態様において、対照と比較して、FOS発現、DUSP1発現、またはその双方を減少させる物質が同定される。減少は、例えば少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、または少なくとも約90%となりうる。対照は標準値、物質に接触させていない細胞、FOS、DUSP1、もしくはその双方の発現に影響を及ぼすことが公知である物質に接触させた細胞、薬学的担体に接触させた細胞、またはFOS、DUSP1、もしくはその双方の発現に影響を及ぼさないことが公知である物質に接触させた細胞となりうる。
【0131】
細胞を、化合物が細胞と相互作用するために十分に試験化合物と接触させる。化合物が異なる受容体に結合する場合、物質がその受容体に結合するために十分な時間、細胞に接触させる。いくつかの態様において、細胞を、基質のリン酸化に影響を及ぼすために十分な期間、試験化合物と共にインキュベートする。いくつかの態様において、細胞はインビトロで試験化合物によって37℃で5%CO2湿潤大気において処置される。試験化合物による処置後、細胞をCa2+およびMg2+を含まないPBSによって洗浄して、記述されるように(Haldar et al., Cell Death Diff. 1:109〜115, 1994;Haldar et al., Nature 342:195〜198, 1989;Haldar et al., Cancer Res. 54:2095〜2097, 1994)総タンパク質を抽出する。さらなる態様において、試験化合物の連続希釈液を用いる。
【0132】
アテローム性動脈硬化症の処置法
被験体における血管機能を改善するための方法が本明細書において開示される。方法には、被験体における障害を処置するために、本明細書に開示の方法を用いて同定された物質の治療的有効量を被験体に投与する段階が含まれる。一つの態様において、被験体はアテローム性動脈硬化症を有する。他の態様において、被験体は心筋梗塞を有する、または間欠性跛行、腸管虚血、網膜虚血、一過性虚血発作(TIA)、虚血発作、血管形成術後の再狭窄、移植性アテローム性動脈硬化症、不安定狭心症、または心血管機能障害に関連したもう一つの病態を有する。
【0133】
物質は本明細書に開示の方法を用いて同定され、治療的有効量は経験的な用量-反応曲線を作製する段階、モデリングを用いて効力および有効性を予測する段階、ならびに生物科学において用いられる他の方法を含む、様々な方法によって決定される。一般的に、物質の治療的有効量は、心血管機能障害に関連した任意の病態のような、処置される疾患または障害の症状および/または基礎となる原因を予防、処置、低減、消失、および/または改善するために十分な量である。一つの態様において、治療的有効量は、アテローム性動脈硬化症を処置するため、またはコレステロールを低下させるために十分な量である。治療的有効量は、処置される被験体(例えば、被験体の種または体格)、被験体が有する心血管機能障害のタイプ、および物質の投与部位(例えば、静脈内、局所等)に依存するであろう。一つまたは複数の用量を投与することができる。投与は全身または局所となりえて、筋肉内、皮下、静脈内、腹腔内、鼻腔内、または経口投与のような任意の経路によって行うことができる。投与は注射によって行うことができる。注射による投与の特異的な非制限的な例には、皮下注射、筋肉内注射、または静脈内注射による投与が含まれる。投与が静脈内である場合、内皮前駆細胞の注射可能な液体浮遊液を調製して、持続的点滴またはボーラスとして投与することができる。治療的有効量は、スタチンまたは単球の機能に影響を及ぼす物質のようなもう一つの物質と共に投与することができる。
【0134】
特に説明していなければ、本明細書において用いた化学技術用語は全て、本開示が属する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。単数形「一つの」、「一つの(an)」、および「その」には、文脈が明らかにそうでないことを明記している場合を除き、複数形が含まれる。同様に、「または」という用語には、文脈が明らかにそうでないことを明記している場合を除き、「および」が含まれると意図される。核酸またはポリペプチドに関して与えられた、全ての塩基の大きさまたはアミノ酸の大きさ、および全ての分子量または分子質量値は、近似値であり、説明のために提供される。本明細書に記述の方法および材料と類似または同等の方法および材料を、本開示の実践または試験のために用いることができるが、適した方法および材料を以下に記述する。「含む」という用語は「含まれる」の意味である。本明細書において言及した全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献はその全内容物が参照により本明細書に組み入れられる。矛盾する場合は、用語の説明を含めた本明細書が優先するであろう。さらに、材料、方法、および実施例は説明するために限られ、制限すると意図されない。
【0135】
本開示は、以下の非制限的な実施例によって説明される。
【0136】
実施例
アテローム性動脈硬化症における炎症の重要性は、心リスクの階層化のために高感度C反応性タンパク質(hsCRP)のような炎症マーカーが臨床で用いられているという証拠によって十分に確立されるようになった(Libby et al., Circulation 105(9):1135〜1143, 2002;Ross, N Engl J Med 340(2):115〜126, 1999)。寿命の増加と肥満およびメタボリック症候群のような心危険因子の流行によって、新しいバイオマーカーおよび治療標的の発見は、加齢およびインスリン抵抗性に一般的に関連したこの疾患の管理を改善するために役立ちうる。
【0137】
心血管研究者は、疾患組織を得ることの難しさ、系の機能的複雑さ、およびインビトロでのヒト疾患モデルの欠如のような多数の要因によって制限を受けている。体中を循環する多様な血球は、四つの理由からアテローム性動脈硬化症研究の理想的な組織となる:1)それらは容易にアクセスでき、アテローム性動脈硬化症プロセスにおける重要な要素である単球のような炎症細胞が含まれる;2)循環中の血球は、疾患を有する血管内腔に間欠的に密に接して、そのためレポーターとして作用する可能性がある;3)血球は定義された細胞表面マーカーを有し、それによって均一になるまでのその精製を容易にすることができる;4)分化表現型を保持する不死化ヒト単球細胞株が存在し、このようにインビトロ研究を支持することができる。
【0138】
疾患マーカーおよび発病に関係する遺伝子を同定するために、アテローム性動脈硬化症を有する患者からの循環中の単球において遺伝子発現を定量化して、遺伝子発現連続解析(SAGE)技術を用いて健常被験体と結果を比較した(その全てが参照により本明細書に組み入れられる、Polyak et al., J Clin Oncol 19(11):2948〜2958, 2001;Saha et al., Nat Biotechnol 20(5):508〜512, 2002;Patino et al., Circ Res 91(7):565〜569, 2002)。本明細書において示した分析は、健常対照者と比較して患者の単球における様々な高レベルのストレス反応および炎症性遺伝子転写物が明らかとなり、特にその一つであるFOSは、患者の循環中の単球において強く発現された。血漿hsCRPと比較すると、上昇したFOS転写物レベルは、冠血管再生術を必要とする重度のアテローム性動脈硬化症を有する患者に、より有意に関連した。FOSは当初、マウス骨肉腫ウイルスの形質転換活性として同定され、その後このウイルス腫瘍遺伝子のヒト相同体は十分に特徴が調べられている(Finkel et al., Science 151(711):698〜701, 1966;Ransone et al., Annu Rev Cell Biol 6:539〜557, 1990)。FOSは、骨髄細胞の分化および活性化において研究されているが、単球およびアテローム性動脈硬化症におけるその役割は、FOSがアテローム性動脈硬化症のマーカーおよびメディエーターであることを示す相補的な臨床および基礎実験データと共に本明細書において証明される。
【0139】
実施例1
材料および方法
以下の材料および方法を本明細書に開示の実験において用いた。
【0140】
ヒト被験体:
患者および健常ボランティアは全て、インフォームドコンセントを得た後に募集した。標準的な外科ガイドラインに従ってアテローム性動脈硬化症のための心内膜切除を受けるように予定された患者から、患者を選択した。健常対照被験体は、既往および身体検査、心電図、エコー心電図、運動ストレス試験および内膜-中膜の厚み(IMT)測定を伴う頚動脈超音波造影に基づいて、有意なアテローム性動脈硬化症が存在しないことを確認するためにスクリーニングした。全ての被験体に関する除外基準は:慢性感染症、血管炎、または他の任意の炎症疾患、新生物疾患、免疫抑制治療および化学療法の既往であった。
【0141】
血液の精製:
血液試料を対照および患者から術前に採取して、既に記述されているように採取後1時間以内に処理した(Holodniy et al., J Clin Microbiol 33(6):1562〜1566, 1995)。血液試料を、クエン酸ナトリウムを含むVacutainer CPT試験管(Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)に採取して、次に、単核球(MNC)の一段階単離を可能にするゲルバリアを有するFicoll Hypaque勾配を4℃で行った。MNCを、下記のようにRT-PCRのためにRNA溶解/結合緩衝液(Dynal Biotech Inc. Brown Deer, WI)に浮遊させた。CD14マイクロビーズおよびFcブロック試薬を用いてプロトコールに従って二重カラム精製によって単球を得た(Miltenyi Biotec, Auburn, CA)。細胞数および生存率をトリパンブルー排除(>95%)によって決定して、フローサイトメトリー(>95%CD14+)およびRT-PCRによって純度を決定した(図4A〜B)。
【0142】
マクロファージの精製:
外科的切除の1時間以内に、ヒト頚動脈プラークを、記述の内容に以下の改変を加えて処理した(St. Croix et al., Science 289(5482):1197〜1202, 2000;Liu-Wu et al., Cytometry 29(2):155〜164, 1997)。組織をすすいで細かい0.5 mmの立方体に切断して、IV型コラゲナーゼ(450単位/ml)、DNアーゼI(500単位/ml)、およびトリプシンインヒビター(1 mg/ml)(Worthington Biochemical Co., Lakewood, NJ)を含むHank's緩衝塩溶液(HBSS、HEPES 4.8 mg/ml)において37℃で30分〜1時間消化した。得られた細胞浮遊液を600〜40μmナイロンフィルター(Spectrum Laboratories, Inc., Rancho Dominguez, CA)に連続的に濾過して、単球に関して記述したように、CD14マイクロビーズを用いてマクロファージを単離した。細胞生存率はトリパンブルー排除によって95%より高かった。マクロファージの純度は、CD14+免疫反応性(>90%)およびRT-PCRによって決定した(図4B)。
【0143】
マウスおよび脾細胞:
C57BL/6J ApoE遺伝子ノックアウトマウス(少なくとも10代戻し交配、Jackson Laboratory, Bar Harbor, ME)を、動物飼育ガイドラインに従って通常飼料(4.5%脂肪)で維持した。17〜21週齢でマウスを屠殺して、脾臓を氷冷RPMI培地に入れて軽くすりつぶし、40μmフィルターによって濾過して、冷ACK緩衝液(Bio-Whittaker, Walkersville, MD)において赤血球を溶解した。生存率が80%より高い精製脾細胞(25〜50×106個/動物)を、RNA溶解緩衝液に浮遊させた。
【0144】
細胞株および組織培養:
ヒト単球細胞株は全てAmerican Type Culture Collection(Manassas, VA)から得て、プロトコールに従って維持した。MonoMac6細胞株は記述されている(Ziegler-Heitbrock et al., Int J Cancer 41(3):456〜461, 1988)。
【0145】
SAGE:
SAGEライブラリは、LongSAGEプロトコール(Saha et al., Nat Biotechnol.20(5):508〜512, 2002)に従って作製した。ライブラリあたり50,000〜100,000タグをシークエンシングするために、SpectruMedix 192-キャピラリー自動シークエンサー(SpectruMedix, State College, PA)を用いた。SAGEタグを、ライブラリあたりタグ100,000個に対して正規化されたSAGE2000ソフトウェア(オンラインで使用できるsagenetのウェブサイトを参照されたい)を用いて計数して、Unigene/SAGEmapデータベース(Lash et al., Genome Res 10(7):1051〜1060, 2000)を用いて同定した。一つのUnigeneクラスタにマッチするタグを合計して、変化倍率/調べたタグの総数を、Microsoft Accessを用いて行った。
【0146】
定量的リアルタイムRT-PCT:
溶解物(細胞105個)からのmRNAをポリ(dT)磁気ビーズ(Dynal Biotech Inc. Brown Deer, WI)に結合させることによって精製して、Superscript II(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて逆転写した。様々な遺伝子のプライマー配列を全て表1に提供する。標準的な定量的RT-PCRを、7900HT配列検出システム(Applied Biosystems, Inc., Foster City, CA)において、SYBR Green(Molecular Probes, Eugene, OR)およびTaqManプロトコールを用いて2個ずつ少なくとも2〜3回行った(Cerutti et al., J Clin Invest 113(8):1234〜1242, 2004)。RT-PCRデータは、候補遺伝子と二つの異なる対照遺伝子、すなわち真核細胞翻訳開始因子(EIF3S5またはTIF)およびGAPDとの間の平均サイクル閾値(Ct)比を測定することによって正規化した。式2Ct(候補)/2Ct(対照)を用いて、正規化した比を計算した。Cluster v2.2およびTreeviewソフトウェア(米国政府によって維持されているRana/Eisen Softwareのウェブサイトでオンラインで入手可能(Cerutti et al., J Clin Invest 113(8):1234〜1242, 2004))を用いて、色によってコードした標準化された変化倍率を対数変換対照標準化比から生成した。
【0147】
プライマー配列を以下に記載する。
【0148】
【表1】

遺伝子プライマー対配列を様々な定量的RT-PCR反応のために用いた。完全な遺伝子の名称は、プライマー対を使用している対応する図面の説明文に示す。
【0149】
免疫組織化学およびウェスタンブロッティング:
抗体:
ウサギポリクローナル抗FOS(Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)、マウスモノクローナル抗ヒトCD14(Immunotech, Marseille, France)、マウスモノクローナル抗GAPD(Ambion, Austin, TX)、および陰性対照マウスIgG(Biocare, Walnut Creek, CA)。頚動脈プラークの連続凍結切片(8〜10μm)を、アルカリホスファターゼに共役させた二次抗体によって展開したVector Blue基質(Vector Laboratories, Inc., Burlingame, CA)によって免疫染色した(Yu et al., Mol Cell 7(3):673〜682, 2001)。ウェスタンブロッティングは、既に記述されたとおりに実施した(Audic et al., Genome Res 7(10):986〜995, 1997)。
【0150】
血漿CRP測定:
血漿中の高感度C反応性タンパク質レベルを、プロトコールに従って固相酵素結合イムノソルベントアッセイ法を用いて決定した(BioCheck, Inc., Burlingame, CA)。精度を確保するために、試料を全て再測定して、外部研究所(Quest Diagnostics, Inc., Baltimore, MD)によって確認した。
【0151】
siRNAによるFOS阻害:
非特異的およびFOS siRNA二本鎖をDharmacon Research(Lafayette, CO)から購入した。FOS siRNA標的配列:

。siRNA 600 pmolを、Nucleofector Solution V 100μlにおいて、製造元(Amaxa Inc., Gaithersburg, MD)のプロトコールに従って、細胞1×106個に一過性にトランスフェクトした。
【0152】
単球の機能:
前処置実験に関して、細胞を10μMシンバスタチンおよび/または1 mMメバロネートと共に20時間インキュベートした後、ホルボル12-ミリスチン酸13-アセテート(PMA, Sigma, St. Louis, MO)によって刺激した。非接着細胞を2回軽く洗浄して除去し、それらをプールすることによって細胞の接着を決定した。残りの接着細胞をトリプシン-EDTA(Invitrogen, Carlsbad, CA)によって放出した。生存している非接着および接着細胞をトリパンブルー色素を用いて計数した。培地への累積的なMCP-1放出を、PMA刺激の24時間後にMCP-1イムノアッセイキット(R&D Systems, Minneapolis, MN)を用いて決定した。
【0153】
統計解析:
データを平均値±標準誤差(SE)として表記する。P値は、両側のStudent's t-検定を用いて計算した。SAGEタグ計数のP値は、既に記述されたようにライブラリ間の試料の大きさを考慮に入れて計算した(Audic et al., Genome Res 7(10):986〜995, 1997)。
【0154】
実施例2
遺伝子発現連続解析
このシークエンシングに基づく遺伝子発現技術の特異性を大きく増加させるSAGEの改変版を使用した(Saha et al., Nat Biotechnol 20(5):508〜512, 2002;Velculescu et al., Trends Genet 16(10):423〜425, 2000)。SAGEの定量的特性により、最小の標準化必要条件によってデータ分析が単純となる。精製CD14+単球を、単球特異的候補遺伝子に関してスクリーニングするために用いる、限られた数のSAGEライブラリを作製するための戦略を用いた。この後に、より大きい群の被験体における候補遺伝子を効率よく確認するために、単核球を用いてさらに高スループット定量的逆転写PCR(RT-PCR)を行った。
【0155】
全体でSAGEライブラリ7個を作製した。CD14+単球ライブラリ5個は以下のように作製した:頚動脈内膜切除(CEA)患者から2個(P1、P2);年齢をマッチさせた健常対照(C1)から1個;および年齢に関連する変化を除外するために、およびさらなる対照として作用するように若い被験体から2個(A1、A2)(方法に被験体選択の詳細)(表2)。
【0156】
【表2】

1 SAGEライブラリ構築のために用いた被験体の個々のプロフィール、ならびに定量的RT-PCRのために用いた健常被験体(対照)および頚動脈内膜切除患者(患者)の群プロフィール。患者1(P1)、患者2(P2)、年齢を適合させた対照1(C1)、若い年齢対照1(A1)、若い年齢対照2(A2)、冠血管心疾患(CHD)。
【0157】
非単球において同様に発現された候補遺伝子をスクリーニングするために、二つの単球枯渇単核球(非単球)細胞ライブラリを被験体P1およびA1から作製した。
【0158】
全体でSAGEタグ460,012個または単球SAGEライブラリ5個(P1、P2、C1、A1、A2)からの推定2〜3倍の重複範囲のトランスクリプトームをシークエンシングして、Unigeneデータベースにおける遺伝子13,154個にマッチさせた。ライブラリ毎に平均で少なくとも二つのタグにおいて発現された公知のタグに基づくと、単球ライブラリ間の対応のある相関係数は非常に高く、0.9992±0.0004であった。CD14表面抗原を用いて精製された単球に関して予想されたように、CD14転写物は、CD163のような他の単球マーカーと同様に大きく濃縮された(表3)。対照的に、ほとんどがリンパ球からなる非単球SAGEライブラリはそれぞれ、CD3EおよびCD79AのようなTおよびB細胞マーカーが濃縮された(表3)。
【0159】
【表3】

造血マーカーおよび単球候補遺伝子タグ計数を、その関連する配列および遺伝子同定子と共に様々なSAGEライブラリに関して作表する。全体でSAGEライブラリ7個、すなわちCD14+単球(単球)ライブラリ5個、および単球枯渇(非単球)ライブラリ2個を示す。示したタグ数を、ライブラリあたりタグ100,000個に標準化する。()は、患者対対照C1タグ比を表す、P<0.001。患者1(P1)、患者2(P2)、年齢をマッチさせた対照1(C1)、より若い年齢対照1(A1)、より若い年齢対照2(A2)。
【0160】
実施例3
候補遺伝子の評価
患者2人のP1およびP2、ならびに対照C1単球SAGEライブラリの間でSAGEタグ比較を行った(表3)。スクリーニングの厳密度および再現性を高めるために、候補297個のリストを得るためにP1およびP2双方の単球ライブラリにおいて少なくとも1.5倍増加したタグのみを考慮した(P<0.001、タグの合計≧25)(完全なリストはオンラインで入手可能)。この予備的なリストからのそれぞれのタグに、以下のさらなる基準を適用した:1)年齢に関連する差を除外するために対照A1およびA2単球ライブラリの双方における低いタグ数;ならびに2)比較的単球特異的な遺伝子を選択するために非単球ライブラリにおける低いタグ数。
【0161】
上記の基準を用いて、候補遺伝子6個、すなわちフィンケル-ビスキス-ジンキンス骨肉腫遺伝子(FOS)、二重特異性ホスファターゼ1(DUSP1)、B細胞インヒビターαにおけるκ軽鎖ポリペプチド遺伝子エンハンサーの核因子(nuclear factor of kappa light polypeptide gene enhancer in B cells inhibitor-alpha)(NFKBIA)、DNA結合のインヒビター2(ID2)、ピリオド相同体1(PER1)、およびsin3関連ポリペプチド(SAP30)を選択し、これは全て調節または転写機能に関連した(表3)。二つの最も異なるように発現された候補遺伝子は、増殖および分化に関係する癌原遺伝子であるFOS、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)調節にとって重要なストレス反応ホスファターゼであるDUSP1であった(Shaulian et al., Nat Cell Biol 4(5):E131〜136, 2002;Clark et al., J Endocrinol 178(1):5〜12, 2003;Farooq et al., Cell Signal 16(7):769〜779, 2004)。少数の異なるように発現されたSAGEタグは、遺伝子の割付がなく、これらを追跡調査したところ、それらが高度に発現された公知の遺伝子からの多型タグであることが判明した。混合細胞集団を含む非単球SAGEライブラリP1とA1の間で、強く異なるように発現された候補遺伝子は観察されなかった。
【0162】
試料のプロセシングおよび精製要件を最小限にするために、単球特異的遺伝子発現を測定するために全単核球(MNC)分画を用いることが実現可能であるか否かを調べた。これは、患者および対照MNC試料の単球含有量が類似であって、それぞれ20±9%および22±9%であったことから、可能であるように思われた。MNCを用いた患者および対照の間でのFOSおよびDUSP1の変化倍率を決定して、精製単球を用いて得られた結果と比較した。MNCまたは単球分画のいずれかを用いることによって得られた変化倍率の比はほぼ同一であり、単球特異的遺伝子発現を正確に検出するために、MNCを用いることができるであろうことを示している(図4)。MNC RT-PCR値が単球含有量(約20%)を間接的に反映したこと、およびCD14抗体を用いる単球の精製がFOSまたはDUSP1遺伝子発現比を有意に変化させなかったことは注目に値する。
【0163】
実施例4
被験体の試料の定量的RT-PCR
MNCを用いて循環中の単球における異なる遺伝子発現をプロスペクティブに確認するために、CEAを予定している患者を全体で25人、および年齢をマッチさせた健常対照被験体19人を本発明者らの試験のために選択した(表1)。患者および対照被験体は年齢が厳密にマッチしたが、男性、家族の既往、および冠動脈疾患の既往のような、アテローム性動脈硬化症に関連した固有の危険因子のために顕著な差が認められた。高血圧症および高脂血症の処置は、対照と比較して患者においてより発生率が高く、それぞれ、92%対32%、および80%対37%であった。しかし、血圧およびLDLコレステロールレベルは、試験時に二つの群の間で同等であった。
【0164】
候補遺伝子6個の相対的発現レベルをカラーコードして、対照群および患者群に関するその平均値(AVG)によって順に並べた(図1A)。FOSおよびDUSP1は、そのSAGEタグ数を確認する患者において最高の発現パターンを有し、それらは患者の順序を大きく左右した。患者対対照における平均FOSおよびDUSP1 RT-PCRの増加倍率はそれぞれ、8.3±2.2(P=0.003)および3.6±0.9(P=0.009)であった(図1B)。追跡研究において、FOSは、患者および対照の間で最も一貫した差を生じた。図1Cおよび1Eはそれぞれ、FOSおよびDUSP1の個々の対照および患者被験体RT-PCRレベルを示す。FOSおよびDUSP1レベルには高い程度の相関を認めた。
【0165】
実施例5
増加したFOSレベルの臨床的重要性
血漿hsCRPは、炎症の臨床的に有用な指標であり、将来の心事象の予測因子であることが示されていることから、FOSが同様に診断的であるか否かを試験した。FOSと比較して、hsCRPは、対照被験体と比較して患者において1.9±0.2倍(P=0.22)で、有意に上昇しなかった(図1B)。hsCRPとFOSレベルの間の相関は低かった(相関係数<0.6)。もう一つの炎症マーカーである血漿インターロイキン-6レベルを測定したが、これもFOSほど顕著な差を示さなかった。
【0166】
FOSレベルの変動を説明することができる患者における如何なる差も存在するか否かを決定するために、CEA外科的転帰(3ヶ月から1年以上の追跡)、病態および投薬に関連した心危険因子、と共に肥満指数(BMI)および10年フラミンガム心リスクのようなのような定量的測定値のような、入手可能な全ての患者情報を調べた(表1)。限られた患者集団における変数が多数であるために、FOSレベルに関する制御された多分散分析を行うことができなかった。意外にも、そのCEA手術の必要性によって証拠とされるように、全ての患者が末梢血管疾患を有するとすると、冠動脈血管再生術(冠動脈バイパス移植手術または血管形成術)の既往は、FOSレベルの上昇に関連するように思われることが観察された(図1C)。経験的に、最高の対照被験体FOSレベルを陽性試験の閾値とすると、冠動脈再生術患者9人中8人が検出された(感度89%)。上位6個の候補遺伝子を組み合わせた平均(AVG)RT-PCR値は、感度を改善しなかった。冠動脈再生術患者を同定するためのFOSに関する受信者動作特性(ROC)は、hsCRPより高い感度および特異性を明らかにした(図1D)。
【0167】
DUSP1に関してFOSと類似の観察を行った(図1E)。冠動脈再生の既往によって示されるように、より広範なアテローム性動脈硬化症を有する患者も同様に、より高レベルのDUSP1によって同定された。患者および対照血漿試料におけるFOSのタンパク質レベルを、抗FO抗体(図6)を用いるウェスタンブロット分析によって調べた(図6)。高レベルのFOSが検出されたが、レベルはFOS mRNAほど有意に上昇しなかった。これらの観察は、免疫分光光度法アッセイの最適化が、患者におけるFOS発現の測定を劇的に単純化する可能性があることを証明している。
【0168】
実施例6
プラークおよびアテローム性動脈硬化症モデルにおけるFOSの発現
発病に関係する候補遺伝子がアテローム性動脈硬化症プラークマクロファージにおいて発現されて、アップレギュレートされるか否かを調べた。第一段階として、CEAプラークの連続切片において免疫組織化学を行って、FOSのCD14+細胞への特異的同時局在を観察した(図2A)。マクロファージにおけるFOS発現を確認するために、多数の頚動脈プラークからCD14+細胞を精製して、RT-PCRを用いてマクロファージの濃縮を確認した(図5B)。候補遺伝子6個の進行的により高いレベルがMNC、単球(Mono)、およびプラークマクロファージ(Mac)においてそれぞれ観察され、本明細書に開示の仮説を支持した(図5B)。上位二つの循環中の単球の候補遺伝子FOSおよびDUSP1に関して最高レベルが観察された。
【0169】
これらの候補遺伝子の生物学的重要性をさらに確立するために、単球をマクロファージ様細胞に分化させるための強力な刺激であるホルボル12-ミリスチン酸13-アセテート(PMA)によって刺激したいくつかの異なる単球細胞株において、その発現を調べた。PMA処置後3時間もの速さで、候補遺伝子の誘導が認められた。DUSP1は、細胞株2個において抑制されたが、FOSは、5個全ての細胞株において均一に誘導され、これが単球活性化の好ましい指標であることを確認した(図2C)。
【0170】
FOSがアテローム性動脈硬化症の発症において関係している可能性があるか否かに取り組むために、そのレベルを、RT-PCRによってApoE遺伝子野生型(WT)およびノックアウト(KO)マウスからの循環中の造血細胞を表す脾細胞において調べた。KOマウスは、様々な程度に自発的な大動脈アテローム性動脈硬化症プラークを発症する。患者の単核球と同様に、KOマウスにおいて広範なFOS誘導を認めたが、平均値はWT同腹子より有意に高かった(図2D)。
【0171】
実施例7
FOSの調節は単球機能に影響を及ぼす
アテローム性動脈硬化症の一次および二次予防の双方におけるスタチンの有効性は、十分に確立されており、現在では疾患の進行に対する処置の肝要な部分である。インビトロモデルとしてPMAによって刺激したTHP1細胞を用いて、FOS発現、ならびに単球活性化、接着、およびアテローム性動脈硬化症プラーク形成の重要な成分である単球走化性タンパク質1(MCP-1)の放出に関連した二つの重要な機能に及ぼすスタチンの効果を調べた(Gu et al., Mol Cell 2(2):275〜281, 1998;Boring et al., Nature 394(6696):894〜897, 1998)。PMAによる刺激前にスタチンを前処置すると、FOSタンパク質のレベルが低減した(図3A)。FOSのこの低減は、スタチンが阻害したHMG-CoAレダクターゼの産物であるメバロネートを加えることによって逆転し、薬理学的特異性を示した。FOSの低減と平行して、対照と比較した場合のプラスチック基質への単球接着および培地へのMCP-1放出は約70%低減した(図3A)。スタチン処置に関連したこれらの機能的観察はいずれも、培地にメバロネートを含めることによって特異的に逆転した。
【0172】
FOSの薬理学的阻害の他に、低分子干渉RNA(siRNA)分子を用いてFOS転写物の遺伝子阻害を調べた。ウェスタンブロッティングによって評価したところ、FOS特異的siRNAトランスフェクションにより、PMA処置の4時間後にFOSタンパク質の誘導が顕著に低減された(図3B)。FOSタンパク質誘導の低減に関連して、PMA刺激単球接着は、同じ期間において約50%減少した。対照的に、非特異的配列(NS)に対して向けられたsiRNAは、FOSタンパク質レベルまたは細胞接着のいずれに対しても如何なる阻害効果も示さなかった。
【0173】
本発明は、重要な疾患プロセスに関係する容易に入手可能な細胞のインビボトランスクリプトームに焦点を当てる有用性を証明する。SAGE技術を用いて、アテローム性動脈硬化症患者の単球において高度に発現された調節遺伝子6個を同定した。候補遺伝子の中で、FOSは、最も示差的に発現されたマーカー適合であった。アテローム性動脈硬化症モデルにおけるFOS発現の種間保存および単球活性化におけるその役割はいずれも、疾患の発病におけるその重要性を強調する。
【0174】
対照被験体と比較して、FOS転写物レベルは、アテローム性動脈硬化症による狭窄のために頚動脈内膜切除を必要とする患者において8倍以上増加した。血漿中のhsCRPと比較すると、本明細書において示した試験におけるFOS転写物レベルは、疾患の重症度に対してより感度が高かった。FOSレベルを紛失した唯一の冠動脈血管再生患者は、スタチンの最高用量を投与した患者3人中の1人であり、それらの全員が同様に低いFOSレベルを有した。最後に、この試験に登録した患者25人中、患者1人が追跡調査時に虚血事象を有した。CEA手術の9ヶ月後、最高のFOSレベルを有する患者(P9)は、緊急の血管再生を必要とする前回の大腿動脈バイパス移植の後に血栓症を発症した。この患者はこれまで冠動脈再生術を受けていなかったが、彼女は右冠動脈に90%の狭窄を有することがわかっていたが、スタチン処置を受けていなかった。スタチン処置を受けている対照被験体は低レベルのFOSを有するが、母集団の数は限られていることにも注目されたい。
【0175】
開示のデータは、単球活性化の機能的阻害がスタチン処置と相関することを証明する。最近、PROVE IT-TIMI 22臨床試験により、急性冠動脈症候群患者において標準用量のスタチン処置に対して高用量のスタチン処置の有意な恩典が示された(Cannon et al., N Engl J Med 350(15):1495〜1504, 2004)。本明細書に示した発現データとこの臨床試験の結果を組み合わせると、治療レジメがアテローム性動脈硬化症を処置するために有用であるか否かを決定するために、単球を用いて治療レジメを試験することができることを証明する。一つの例において、治療プロトコールが個々の被験体に対して有益であるか否かを決定するために患者からの末梢血試料を用いることができる。もう一つの例において、単球細胞株を用いて、治療物質がアテローム性動脈硬化症の処置において一般的に有用となりうるか否かを決定することができる。
【0176】
全単核球画分を用いる単純化されたRT-PCR試験を本明細書において示す。しかし、如何なる感受性のある特異的なFOSアッセイ法および/またはDUSP1アッセイ法を開発して行うことができる。理論に拘束されることなく、FOSは、反応性の転写調節因子であることが公知であり、これは疾患の活性または処置の有効性でさえもそのモニターとして有用である理由となりうるであろう。SAGEデータベースのデジタルおよび定量的特性により、単球および非単球トランスクリプトームが全ての研究者にオンラインで入手可能である。これらのトランスクリプトームを用いて、アテローム性動脈硬化症を検出するため、特異的被験体の予後を決定するため、またはアテローム性動脈硬化症を処置するために有用な物質のスクリーニングにおいて、有用な他の遺伝子を同定することができる。FOS発現(細胞分化にとって重要)は、冠動脈疾患のスクリーニングのために用いられる冠動脈カルシウムスコアの分子同等物である冠動脈石灰化の初期指標として有用であると考えられている(O'Rourke et al., J Am Coll Cardiol 36(1):326〜340, 2000)。
【0177】
記述の方法または組成物の正確な詳細は、変更または改変してもよく、それらも記述の本発明の趣旨に含まれることは明らかであろう。本発明者らは、添付の特許請求の範囲および趣旨に含まれるそのような全ての改変および変更を主張する。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】健常な対照被験体および頚動脈内膜切除患者においてSAGEによって同定された候補遺伝子の単核球mRNA発現レベルを示すデジタル画像およびグラフである。図1Aは、候補遺伝子の発現レベルの標準化された変化倍率を示し、カラーコードで示す(赤、誘導;緑、抑制)。被験体を遺伝子6個の平均発現値(AVG)の順に示す。三群は以下からなる:A、若年対照A1およびA2;対照、健常被験体C1〜C19;および患者、頚動脈内膜切除患者P1〜P25。図1Bは、対照(n=19)対患者(n=25)における、上の二つの候補遺伝子、すなわちFOSおよびDUSP1の相対的発現レベル、ならびに血漿hsCRPレベルを示す棒グラフである。値を平均値±SEとして示す。対照および患者の間の差に関するP値は、Student's t-検定を用いて計算した。図1Cは、それぞれの群内でのFOSの相対的発現レベルの順に示した対照および患者の棒グラフである。菱形は、血管形成術、または冠動脈バイパス移植手術のいずれかによる冠動脈再生術(再生)の既往を示す;四角、現在のHMG CoAレダクターゼインヒビター処置(スタチン);丸、現在のアスピリン処置(ASA)。RT-PCR測定は全て2個ずつ行い、少なくとも2回繰り返した。図1Dは、冠動脈再生患者を同定する際の、FOS(黒丸および実線)およびhsCRP(四角および破線)の有用性に関する受信者動作特性曲線の折れ線グラフである。図1Eは、それぞれの群におけるDUSP1の相対的発現レベルの順に示した対照および患者の棒グラフである。患者(P)および対照(C)の番号は、図1Cにおける番号づけに対応し、このように(再生)、(スタチン)、および(ASA)に関して菱形、四角、および丸によって示された臨床情報をこのパネルにおいて維持する。対照と患者のFOSおよびDUSP1発現レベルの間には高い相関を認める。
【図2】ヒト頚動脈プラークマクロファージ、活性化ヒト単球、およびApoE KOマウス脾細胞におけるFOSの発現を示すデジタル画像およびグラフである。図2Aは、ヘマトキシリン-エオジン(H&E)、陰性対照免疫グロブリン(対照Ig)、およびCD14またはFOSに対する抗体によって染色したヒト頚動脈プラークの新鮮な凍結切片のデジタル画像である。マクロファージのCD14+染色は、FOS免疫反応性と同時局在する(倍率25倍)。CD14染色は細胞表面の細胞質膜の染色と一貫したより散在性の外観を呈するが、FOSパターンは核の局在と一貫してより斑点状であることに注目されたい。患者4人からの図2Bに示したデジタル画像に関して、対応する単核球(MNC)、循環中の単球(Mono)および頚動脈プラーク精製マクロファージ(Mac)調製物を、定量的RT-PCRのために用いた。図1Aに記述したように、示した標準化発現レベルを得た。単球濃度の増加およびマクロファージへの活性化に関連した候補遺伝子発現の進行性のより高いパターンに注目されたい。図2Cは、異なるヒト単球細胞株5個を20 nM PMAによって表記の時間刺激して、先に記述したようにRT-PCRを行ったデジタル画像である。図2Dは、ApoE遺伝子ノックアウト(KO、n=11)および野生型(WT、n=14)からの脾細胞におけるFOS mRNAの相対的発現の差を示す棒グラフである。値は平均値±SEとして表し、P=0.04である。
【図3】PMAによる単球の活性化に及ぼすスタチンおよびFOS siRNA阻害の機能的効果を示すデジタル画像およびグラフである。図3Aは、THP1細胞を、2 nM PMAによる刺激前にシンバスタチンおよび/またはメバロネートによって20時間前処置した棒グラフおよびデジタル画像である。細胞接着をPMA刺激の4時間後に決定し;培地への累積的なMCP-1放出をPMA刺激の24時間後にアッセイした。ウェスタンブロットは、表記の条件でPMA刺激の4時間後のFOSタンパク質レベルを示している。スタチン処置後の細胞接着およびMCP-1放出の差に関するP値はそれぞれ、0.004および0.04であった。図3Bは、siRNAを4時間トランスフェクトした後THP1細胞を2 nM PMAによって30分刺激した棒グラフおよびデジタル画像である。対照(-)細胞を、トランスフェクション対照としてsiRNAなしで偽トランスフェクトした。非特異的配列(NS)とFOS標的配列(FOS)siRNAとの差は有意であり、P=0.006であった。示したデータは、2個または3個で少なくとも3回繰り返した実験の代表である。
【図4】対照と比較した患者におけるFOSおよびDUSP1の変化倍率比(比(P/C))の棒グラフであり、全ての単核球(MNC)または精製単球(単球)がRT-PCRのために用いられるか否かを保存する。値を、患者および対照に関してn=6の平均値±SEとして示す。
【図5】単球およびマクロファージの純度の確認を示すプロットおよびデジタル画像の組である。図5Aは、単核球(MNC)、精製単球(単球)、および単球枯渇(非単球)分画におけるCD14-(陰性)およびCD14+(フルオレセインイソチオシアネート(FITC)に共役した抗CD14抗体に関して陽性)細胞の相対的分布プロフィールを示すフローサイトメトリーからの一連のプロットである。図5Bは、異なる血液分画および頚動脈プラーク精製からの未希釈(1)および1/10希釈(0.1)cDNAのRT-PCRのデジタル画像の組である。細胞マーカー:対照遺伝子、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPD)、および翻訳開始因子(TIF);単球、CD14;マクロファージ、マクロファージマンノース受容体(CD206);リンパ球、CD3;血小板、糖タンパク質IIb(GPIIb)。NTC、鋳型対照なし;RT-、逆転写酵素なし;SN、CD14+マクロファージ枯渇後のプラーク浮遊細胞。
【図6】血漿中のFOSタンパク質発現のデジタル画像である。これは、対照4人および患者4人の血漿タンパク質の等量(50μg)に対して抗FOS抗体を用いるウェスタンブロットを示す。FOSタンパク質の陽性対照として、THP1細胞をPMA(C+)によって刺激した。対照および患者に関する下の二つのパネルは、ゲルの異なる領域におけるタンパク質の移動効率の起こりうる差に関して制御するために、ゲルの反対側で再泳動した同じ対応する試料を示す。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図2D】

【図3A】

【図3B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、被験体におけるアテローム性動脈硬化症を評価する、またはアテローム性動脈硬化症の進行を決定する方法:
被験体からの単球を含む生物学的試料におけるFOS、DUSP1、またはFOSおよびDUSP1の双方の発現をアッセイする段階であって;
対照と比較した単球におけるFOS、DUSP1、またはFOSおよびDUSP1の双方の発現の増加により、被験体におけるアテローム性動脈硬化症が評価される段階。
【請求項2】
アテローム性動脈硬化症を評価する段階がアテローム性動脈硬化症を診断する段階を含み、方法が被験体におけるアテローム性動脈硬化症の有無を決定する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
アテローム性動脈硬化症を評価する段階が、被験体の予後を決定する段階を含み、方法が被験体におけるアテローム性動脈硬化症の重症度を決定する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
対照が、アテローム性動脈硬化症を有しないことが公知である1または複数の被験体における発現レベルの標準値である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
試料が、末梢血単球、血液を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
単球がアテローム性動脈硬化症病変に由来する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
FOS、DUSP1、またはFOSおよびDUSP1の双方の発現をアッセイする段階が、FOS mRNA、DUSP1 mRNA、またはFOSおよびDUSP1 mRNAの双方の有無を評価する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
FOS mRNA、DUSP1 mRNA、またはFOSおよびDUSP1 mRNAの双方の有無をアッセイする段階が、ポリメラーゼ連鎖反応またはハイブリダイゼーション反応を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
FOS mRNA、DUSP1 mRNA、またはFOSおよびDUSP1 mRNAの双方の有無をアッセイする段階が、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
FOS、DUSP1、またはFOSおよびDUSP1の双方の発現をアッセイする段階が、FOSタンパク質、DUSP1タンパク質、またはFOSおよびDUSP1タンパク質の双方の有無を評価する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
FOS、DUSP1、またはFOSおよびDUSP1タンパク質の双方の有無をアッセイする段階が、FOSタンパク質に特異的に結合する抗体、DUSP1タンパク質に特異的に結合する抗体、またはFOSタンパク質に結合する抗体およびDUSP1タンパク質に結合する抗体に、単球またはその成分を接触させる段階を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
FOSタンパク質に特異的に結合する抗体、DUSP1タンパク質に特異的に結合する抗体、またはFOSタンパク質に結合する抗体およびDUSP1タンパク質に結合する抗体が直接標識される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
標識が放射性マーカー、蛍光マーカー、酵素、または金属である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
試料が末梢血、血清、または血漿である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
以下の段階を含む、薬剤が被験体におけるアテローム性動脈硬化症の処置に有効であるか否かを決定する方法:
薬剤の有効量を接触させた単球におけるFOS、DUSP1、またはFOSおよびDUSP1の双方の発現をアッセイする段階であって、試料中の単球におけるFOS、DUSP1、またはFOSおよびDUSP1の双方の発現の減少により、薬剤がアテローム性動脈硬化症の処置に有効であることが示される段階。
【請求項16】
FOS、DUSP1、またはFOSおよびDUSP1の双方の発現を対照と比較する段階をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
単球がインビボである、請求項15記載の方法。
【請求項18】
単球がインビトロである、請求項15記載の方法。
【請求項19】
単球が不死化細胞株に由来する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
単球がアテローム性動脈硬化症を有する被験体に由来する、請求項15記載の方法。
【請求項21】
単球が末梢血単球である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
単球がアテローム性動脈硬化症病変に由来する、請求項20記載の方法。
【請求項23】
FOS、DUSP1、またはFOSおよびDUSP1の双方の発現をアッセイする段階が、FOS mRNA、DUSP1 mRNA、またはFOSおよびDUSP1 mRNAの双方の有無を評価する段階を含む、請求項15記載の方法。
【請求項24】
FOS mRNA、DUSP1 mRNA、またはFOSおよびDUSP1 mRNAの双方の有無をアッセイする段階が、ポリメラーゼ連鎖反応またはハイブリダイゼーションを含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
FOS mRNA、DUSP1 mRNA、またはFOSおよびDUSP1 mRNAの双方の有無をアッセイする段階が、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を含む、請求項23記載の方法。
【請求項26】
FOS、DUSP1、またはFOSおよびDUSP1の双方の発現をアッセイする段階が、FOSタンパク質、DUSP1タンパク質、またはFOSおよびDUSP1タンパク質の双方の有無を評価する段階を含む、請求項15記載の方法。
【請求項27】
FOSタンパク質、DUSP1タンパク質、またはFOSタンパク質およびDUSP1タンパク質の双方の有無をアッセイする段階が、FOSに特異的に結合する抗体、DUSP1タンパク質に特異的に結合する抗体、またはFOSタンパク質に結合する抗体およびDUSP1タンパク質に結合する抗体に、単球またはその成分を接触させる段階を含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
FOSタンパク質に特異的に結合する抗体、DUSP1タンパク質に特異的に結合する抗体、またはFOSタンパク質に結合する抗体およびDUSP1タンパク質に結合する抗体が直接標識される、請求項26記載の方法。
【請求項29】
標識が放射性マーカー、蛍光マーカー、酵素、または金属である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
以下の段階を含む、被験体におけるアテローム性動脈硬化症を診断する、またはアテローム性動脈硬化症の進行を決定する方法:
被験体由来の血清または血漿におけるFOS、DUSP1、またはFOSおよびDUSP1の双方の発現をアッセイする段階であって;
対照と比較した血清または血漿におけるFOS、DUSP1、またはFOSおよびDUSP1の双方の発現の増加により、被験体がアテローム性動脈硬化症を有することが示される、または被験体におけるアテローム性動脈硬化症の重症度が示される段階。
【請求項31】
FOS、DUSP1、またはFOSおよびDUSP1の双方の発現をアッセイする段階が、FOS mRNA、DUSP1 mRNA、またはFOSおよびDUSP1 mRNAの双方の有無を評価する段階を含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
FOS mRNA、DUSP1 mRNA、またはFOSおよびDUSP1 mRNAの双方の有無をアッセイする段階が、ポリメラーゼ連鎖反応またはハイブリダイゼーション反応を含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
FOS mRNA、DUSP1 mRNA、またはFOSおよびDUSP1 mRNAの双方の有無をアッセイする段階が、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
FOS、DUSP、またはFOSおよびDUSP1の双方の発現をアッセイする段階が、FOS、DUSP1、またはFOSおよびDUSP1タンパク質の双方の有無を評価する段階を含む、請求項30記載の方法。
【請求項35】
FOSタンパク質、DUSP1タンパク質、またはFOSおよびDUSP1タンパク質の双方の有無をアッセイする段階が、FOSに特異的に結合する抗体、DUSP1タンパク質に特異的に結合する抗体、またはFOSタンパク質に結合する抗体およびDUSP1タンパク質に結合する抗体に、血清または血漿を接触させる段階を含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
FOSタンパク質に特異的に結合する抗体、DUSP1タンパク質に特異的に結合する抗体、またはFOSタンパク質に結合する抗体およびDUSP1タンパク質に結合する抗体が直接標識される、請求項35記載の方法。
【請求項37】
標識が放射性マーカー、蛍光マーカー、酵素、または金属である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
FOSタンパク質、DUSP1タンパク質、またはFOSタンパク質およびDUSP1タンパク質の双方の発現を評価する段階が質量分析を含む、請求項34記載の方法。
【請求項39】
FOSタンパク質、DUSP1タンパク質、またはFOSおよびDUSP1タンパク質の発現を評価する段階が質量分析を含む、請求項10記載の方法。
【請求項40】
FOSタンパク質、DUSP1タンパク質、またはFOSおよびDUSP1タンパク質の双方の発現を評価する段階が質量分析を含む、請求項26記載の方法。

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2008−512094(P2008−512094A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530430(P2007−530430)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【国際出願番号】PCT/US2005/031469
【国際公開番号】WO2006/029052
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(502006782)アメリカ合衆国 (47)
【Fターム(参考)】