説明

アトルバスタチンのストロンチウム塩、及びこれを含む医薬組成物

本発明は、高脂血症及び高コレステロール血症の予防及び治療に有用な、改善された溶解度を有するアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物またはその多形体、及びこれを含む医薬組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された溶解度を有するアトルバスタチンストロンチウム塩(atorvastatin strontium salt)またはその水和物またはその多形体、及びこれを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アトルバスタチン、即ち、式(II)の構造を有する[R−(R,R)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸は、HMG−CoA還元酵素阻害剤(HMG−CoA reductase inhibitor)であって、血中コレステロールを減少させるのに効果的であると知られている(特許文献1参照)。
【化1】

【0003】
遊離酸形態のアトルバスタチンは低い安定性を有し、式(III)のアトルバスタチンラクトン(lactone)に変換する傾向がある。従って、アトルバスタチンの医薬組成物の製造時、遊離酸形態の代わりにアトルバスタチンの多様な塩が利用されている。特許文献1は、多様なアトルバスタチンの塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩、鉄塩(第二鉄塩又は第一鉄塩)のような金属塩及び1−デオキシ−2−(メチルアミノ)−D−グルシトール塩、N−メチルグルカミン塩、コリン塩及びアルギニン塩のような有機塩を開示しており、これらの中で式(IV)のアトルバスタチンカルシウム塩が最も好ましい。
【化2】

【0004】
なお、他のアトルバスタチン塩も提示されているが、その例としては、t−ブチルアミン塩及びジシクロヘキシルアミン塩(特許文献2);アンモニウム塩(特許文献3);リジン塩、アルギニン塩及びオルニチン塩(特許文献4)及びビスマス塩(特許文献5)などが挙げられる。しかし、これらの塩は、吸湿性と安定性などの薬学的特性においてアトルバスタチンカルシウム塩より劣る。
【0005】
前記式(IV)のアトルバスタチンカルシウム塩は、その水和物または溶媒和物を含めてI型結晶、II型又はIV型結晶(特許文献6)、III型結晶(特許文献7)、及びV型ならびにXIX型結晶(特許文献8)のような多様な結晶多形で存在し得る。
また、他の結晶形アトルバスタチンのカルシウム塩が特許文献9、特許文献10、及び特許文献11などに開示されている。また、様々な形態の非晶形アトルバスタチンカルシウム塩が特許文献12号、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17及び特許文献18などに開示されている。しかし、非晶形アトルバスタチンカルシウム塩は、大量生産が困難であり、吸湿性、安定性、生体内への吸収速度及び生体利用率のような物理化学的特性において結晶形より劣っている(非特許文献1)。
【0006】
結晶形又は非晶形の公知のアトルバスタチンカルシウム塩の中で特許文献6に開示されたI型結晶のアトルバスタチンカルシウム塩が商業的な応用に最も好ましく、リピトール(Lipitor)(登録商標)(ファイザー(Pfizer)社製)という商品名で高脂血症治療剤として市販されている。
【0007】
医薬組成物の製造時、固形の有効成分の物理化学的性質は、粉砕過程における流動性、錠剤の製剤過程における圧縮性、又は水媒体中への放出速度などに影響を及ぼす。特に、経口投与用医薬組成物の場合、有効成分の胃腸管液への放出速度は治療効果を決める重要な要素のうち一つである。よって、医薬組成物の固形の有効成分は、その溶解度、生体利用率、圧縮性及び安定性を改善させ得る物理化学的性質を有することが要求されているが、公知のアトルバスタチンカルシウム塩は前記物理化学的性質をすべて満たさない。
【0008】
従って、改善された物理化学的性質を有する新規のアトルバスタチン塩の開発が必要とされており、本発明者らは物理化学的性質、特に溶解度が改善されたアトルバスタチン塩またはその水和物を見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,273,995号
【特許文献2】国際公開第2000/017150号
【特許文献3】国際公開第2001/036384号
【特許文献4】国際公開第2003/082816号
【特許文献5】国際公開第2005/014541号
【特許文献6】米国特許第5,969,156号
【特許文献7】米国特許第6,121,461号
【特許文献8】米国特許第6,605,729号
【特許文献9】国際公開第2003/070702号
【特許文献10】国際公開第2004/043918号
【特許文献11】国際公開第2006/048894号
【特許文献12】国際公開第1997/003960号
【特許文献13】国際公開第2000/071116号
【特許文献14】国際公開第2001/028999号
【特許文献15】国際公開第2001/042209号
【特許文献16】国際公開第2003/068739号
【特許文献17】国際公開第2005/073187号
【特許文献18】国際公開第2006/021969号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Oishi及びYakuri,Chiryo,1998,26(8),1241−1252
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、アトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物またはその多形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は前記目的を達成するためのものであって、本発明の一態様によれば、下記式(I)のアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物またはその多形体を提供する。
【化3】

【0013】
また、本発明の他の態様によれば、有効成分として式(I)のアトルバスタチンストロンチウム塩、その水和物またはその多形体、並びに薬学的に許容可能な担体を含む、高脂血症及び高コレステロール血症の予防及び治療に有用な医薬組成物を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物またはその多形体は、その純度及び熱安定性が高く、また、優れた水溶性を有するため、高脂血症及び高コレステロール血症を含むHMG−CoA還元酵素関連疾患の予防または治療に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の上記および他の目的および特徴は、各々が下記を示す添付の図面と併せて本発明の以下の記載から明らかとなるであろう。
【図1】本発明によるアトルバスタチンストロンチウム塩のI型結晶の粉末X線回折(XRPD)スペクトルを示す図である。
【図2】本発明によるアトルバスタチンストロンチウム塩のII型結晶のXRPDスペクトルを示す図である。
【図3】本発明によるアトルバスタチンストロンチウム塩のIII型結晶のXRPDスペクトルを示す図である。
【図4】本発明によるアトルバスタチンストロンチウム塩のIV型結晶のXRPDスペクトルを示す図である。
【図5】本発明によるアトルバスタチンストロンチウム塩の非晶形のXRPDスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の式(I)のアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物またはその多形体は、純粋で熱安定性を有し、公知のいずれのアトルバスタチン塩よりも高い水溶性を有する。
【0017】
本発明によるアトルバスタチンストロンチウム塩は、2価のストロンチウムイオンと結合した2個のアトルバスタチン分子を有し、それに一つ以上の水分子が結合され得る。このようなアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物は、非晶形(amorphous form)または様々な形態の結晶形(crystal form)の構造に製造され得る。
【0018】
本発明の好ましい実施態様によれば、I型〜IV型結晶として定義されるアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物が提供され、これらの中で式(Ia)で表されるI型結晶のアトルバスタチンストロンチウム塩の五水和物(pentahydrate)が好ましい。
【化4】

【0019】
本発明のアトルバスタチンストロンチウム塩の結晶形は、CuKα光源を用いた粉末X線回折 (X−ray powder diffraction)(XPRD)分析によって確認することができる。
【0020】
具体的に、本発明の一つの好ましい実施態様によるI型結晶として定義される式(Ia)のアトルバスタチンストロンチウム塩の五水和物は、XPRDスペクトルにおける10%以上のI/Io値(Iは各ピークの強度;Ioは最大ピークの強度)を有する主要ピークが4.0、4.8、5.9、6.5、7.3、7.8、8.8、9.5、9.8、10.2、11.6、14.7、17.5、18.9、19.5、19.8、20.2、21.3、22.7、23.1、24.3、25.6及び26.3の回折角(2θ±0.2)で現れる特徴的な結晶構造を有する(図1)。
【0021】
本発明の別の好ましい実施態様によるII型結晶として定義されたアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物は、XPRDスペクトルにおける10%以上のI/Io値を有する主要ピークが4.0、5.0、6.4、8.0、10.0、10.3、12.7、13.0、16.6、18.6、19.1、20.0、21.8及び22.2の回折角(2θ±0.2)で現れる特徴的な結晶構造を有する(図2)。
【0022】
本発明のさらに別の好ましい実施態様によるIII型結晶として定義されたアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物は、XPRDスペクトルにおける10%以上のI/Io値を有する主要ピークが3.8、5.2、6.2、7.9、10.7、19.7及び24.0の回折角(2θ±0.2)で現れる特徴的な結晶構造を有する(図3)。
【0023】
本発明のさらに別の好ましい実施態様によるIV型結晶として定義されたアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物は、XPRDスペクトルにおける10%以上のI/Io値を有する主要ピークが3.8、5.2、5.8、6.2、7.6、8.1、9.2、10.3、11.9、15.5、18.1、19.8、20.7、21.1、22.1、23.2、24.3及び26.3の回折角(2θ±0.2)で現れる特徴的な結晶構造を有する(図4)。
【0024】
本発明のまた別の好ましい実施態様によれば、非晶形のアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物を提供し、これはXPRDスペクトルで特徴的な回折角ピークを示さない(図5)。
【0025】
本発明の式(I)のアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物またはその多形体は、純粋な形態で存在し得、過酷な条件(60℃、相対湿度75%)に4週間以上晒された後にも初期の水分含量を維持し得ることから、薬学的に要求される安定性の条件を充分に満たす。
【0026】
さらに、本発明の式(I)のアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物またはその多形体は、他のアトルバスタチン塩に比べて高い水溶性を有するため、薬学的により効果的である。例えば、アトルバスタチンカルシウム塩の三水和物に比べて2倍以上高い水溶性を有する。
【0027】
本発明によれば、式(I)のアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物またはその多形体は、(i)式(II)のアトルバスタチンまたは式(III)のアトルバスタチンラクトンを水酸化ストロンチウムと反応させるか、または(ii)反応性ストロンチウム塩をアトルバスタチンナトリウム塩またはカリウム塩に加えて塩交換を誘導するか、あるいは(iii)以前に得られた一つのアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物を所望する他の多形体に切り替えて製造することができる。
【0028】
具体的には、I型結晶として定義される式(Ia)のアトルバスタチンストロンチウム塩の五水和物は、水と有機溶媒との混合溶媒に溶解されたアトルバスタチンナトリウム塩またはカリウム塩の溶液に反応性ストロンチウム塩を添加し、生成された混合物を0℃からその使用溶媒の沸点の温度範囲で30分〜24時間攪拌した後、生成された結晶を通常の方法により濾過及び乾燥して製造することができる。
【0029】
前記反応性ストロンチウム塩は、塩化ストロンチウム、臭化ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、過塩素酸ストロンチウム、 酢酸ストロンチウム、炭酸ストロンチウム及びシュウ酸ストロンチウム及びこれらの混合物から選ばれることができ、特に塩化ストロンチウム及び酢酸ストロンチウムが好ましい。
【0030】
前記有機溶媒はアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びこれらの混合物から選ばれることができ、特にアセトニトリル、アセトン及びメタノールが好ましい。
【0031】
本発明のアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物またはその多形体は、高い純度、熱安定性だけでなく、改善された水溶性を有するため、高脂血症及び高コレステロール血症を含むHMG−CoA還元酵素関連疾患の予防または治療に医薬的に用いることができる。
【0032】
従って、本発明は有効成分として式(I)のアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物またはその多形体、及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物を提供する。
【0033】
本発明による医薬組成物は経口用、直腸用及び注射用を含めた多様な経路で投与されることができ、この中で経口投与が好ましい。
【0034】
経口投与用として本発明の医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、丸剤などの形態でも良く、薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤とともに製剤化され得る。好適な担体、希釈剤または賦形剤としては、例えば澱粉、糖、及びマンニトールのような賦形剤;リン酸カルシウム及びシリカ誘導体のような充填剤及び増量剤;カルボキシメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、ゼラチン、アルギン酸塩、及びポリビニルピロリドンのような結合剤;タルク、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウム、水素化ヒマシ油及び固体のポリエチレングリコールのような滑沢剤; ポビドン、クロスカルメロースナトリウム、及びクロスポビドンのような崩壊剤;ポリソルベート、セチルアルコール、及びモノステアリン酸グリセロール等のような界面活性剤などが挙げられる。また、前記賦形剤、希釈剤または添加剤のような添加物なしで、又は添加物とともに特定量の有効成分を含む多様な医薬組成物は公知の通常の方法によって製造され得る(文献[Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PA,19th Edition,1995]参照)。
【0035】
好ましい実施態様において、本発明の経口投与用の医薬組成物は有効成分として式(I)のアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物またはその多形体を、組成物の総重量を基準として0.1〜95重量%、好ましくは1〜70重量%の量で含有することができる。
【0036】
式(I)のアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物またはその多形体の一般的な1日服用量は、ヒトを含む哺乳動物に対して0.5〜500mg/kg体重、好ましくは5〜150mg/kg体重の範囲であることができ、また、単回投与又は分割投与することができる。
【0037】
本発明を下記実施例により更に詳細に説明する。しかし、下記実施例は本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
実施例1:I型結晶のアトルバスタチンストロンチウム塩の製造
アトルバスタチンラクトン50.0gをt−ブチルメチルエーテル150mlとアセトン100mlとの混合液に懸濁させた後、水200mlに溶解された水酸化ナトリウム3.7gを30分に亘って徐々に滴加し、室温で約3時間攪拌した。有機層を除去した後、水層にt−ブチルメチルエーテル150mlを加えて室温で10分間攪拌した。有機層を再び除去し、水層にアセトン200mlを加えた。前記混合液を50℃に昇温させて、水250mlに溶解された酢酸ストロンチウム10.2gを2時間に亘って徐々に滴加し、50℃で8時間攪拌して生成された溶液を室温に冷却した。生成された沈殿物を濾過し、アセトン60mlと水90mlとの混合溶液で洗浄し、大気中で乾燥して白色結晶性粉末の標題化合物50.7g(収率85%)を得た。
含水率(カールフィッシャー水分計):約6.9%
前記含水率の分析結果に基づいて、前記で得られた結晶性粉末が式(Ia)の五水和物であることが確認され、そのXRPDの結果、下記表1に示されているように、10%以上のI/Io値を持つ特徴的なピークを有する結晶であることが分かった。よって、前記で得られた結晶性粉末をI型結晶と命名した。
表1
【表1】

【0039】
実施例2:II型結晶のアトルバスタチンストロンチウム塩の製造
実施例1で得られたアトルバスタチンストロンチウム塩のI型結晶10.0gを含水率が2%以下となるまで減圧乾燥して、白色結晶性粉末の標題化合物9.3g(収率:100%)を得た。
含水率(カールフィッシャー水分計 ):約1.5%
前記で得られた結晶性粉末のXRPDの結果、下記表2に示されているように、10%以上のI/Io値を持つ特徴的なピークを有する結晶であることが分かった。よって、前記で得られた結晶性粉末をII型結晶と命名した。
表2
【表2】

【0040】
実施例3:III型結晶のアトルバスタチンストロンチウム塩の製造
アトルバスタチンラクトン50.0gをt−ブチルメチルエーテル200mlとメタノール200mlとの混合液に懸濁させた後、水200mlに溶解させた水酸化ナトリウム3.7gを30分に亘って徐々に滴加した後、室温で約3時間攪拌した。有機層を除去した後、水層にt−ブチルメチルエーテル150mlを加え、室温で約10分間攪拌した。有機層を再び分離し、水層にメタノール50ml、t−ブチルメチルエーテル150ml及び蒸留水650mlを順次添加した。前記混合液を50℃に昇温させながら水250mlに溶解された酢酸ストロンチウム10.2gを2時間に亘って徐々に滴加し、50℃で17時間攪拌して生成された溶液を室温に冷却した。生成された沈殿物を濾過し、メタノール100mlと水50mlとの混合溶液で洗浄し、大気中で乾燥して白色結晶性粉末の標題化合物43g(収率:77%)を得た。
含水率(カールフィッシャー水分測定装置):約5.5%
前記で得られた結晶性粉末のXRPDの結果、下記表3に示されているように、10%以上のI/Io値を持つ特徴的なピークを有する結晶であることが分かった。よって、前記で得られた結晶性粉末をIII型結晶と命名した。
表3
【表3】

【0041】
実施例4:IV型結晶のアトルバスタチンストロンチウム塩の製造
実施例3で得られたIII型結晶のアトルバスタチンストロンチウム塩4.5gをアセトニトリル72mlと、蒸留水18mlと、t−ブチルメチルエーテル9mlとの混合液に懸濁させ、前記懸濁液を55〜60℃で約17時間攪拌した後、室温に冷却した。生成された沈殿物を濾過し、アセトニトリル30mlと蒸留水30mlとの混合液に再懸濁し、前記懸濁液を70℃で24時間攪拌した後、室温に冷却し濾過した。生成された沈殿物を濾過し、大気中で乾燥して白色結晶性粉末の標題化合物2.5gを得た。
含水率(カールフィッシャー水分計):約4.2%
前記で得られた結晶性粉末のXRPDの結果、下記表4に示されているように、10%以上のI/Io値を持つ特徴的なピークを有する結晶であることが分かった。よって、前記で得られた結晶性粉末をIV型結晶と命名した。
表4
【表4】

【0042】
実施例5:非晶形のアトルバスタチンストロンチウム塩の製造
実施例3で得られたIII型結晶のアトルバスタチンストロンチウム塩50.0gをアセトン100mlとメタノール50mlとの混合溶液中で50℃に昇温させながら溶解させ、生成された溶液を濾過した。濾液にt−ブチルメチルエーテル1000mlとイソプロピルエーテル500mlとの混合溶液を一度に加え、混合液を1時間攪拌した。生成された沈殿物を濾過し、大気中で乾燥して白色粉末の標題化合物45g(収率77%)を得た。
含水率(カールフィッシャー水分計):約3.1%
前記で得られたアトルバスタチンストロンチウム塩のXRPDの結果、図5に示されているように、特徴的なピークを有しない非晶形であることが分かった。
【0043】
実施例6:I型結晶のアトルバスタチンストロンチウム塩の製造
実施例3で得られたIII型結晶のアトルバスタチンストロンチウム塩10.0gをメタノール100mlと水100mlとの混合溶液に懸濁させ、前記懸濁液を約50℃で約17時間攪拌し室温に冷却した。生成された沈殿物を濾過し、メタノール10mlと水10mlとの混合溶液で洗浄した後、大気中で乾燥して白色結晶性粉末の標題化合物9.2g(収率77%)を得た。
含水率(カールフィッシャー水分計):約7.2%
前記化合物のXRPDの結果は、実施例1で得られた結晶の粉末X線回折スペクトルの結果と同一であった。
【0044】
実施例7〜11:I型結晶のアトルバスタチンストロンチウム塩の製造
実施例3で得られたIII型結晶のアトルバスタチンストロンチウム塩10.0gを、水及び下記表5に示した有機溶媒に懸濁させたことを除いては、実施例6の方法を繰り返して各々の標題化合物を得た。
【表5】

前記化合物のXRPDの結果は、実施例1で得られた結晶の粉末X線回折スペクトルの結果と同一であった。
【0045】
実施例12:I型結晶のアトルバスタチンストロンチウム塩の製造
実施例2で得られたアトルバスタチンストロンチウム塩のII型結晶2.0gを相対湿度60%に維持されているチャンバー(chamber)内に1日以上保管し、白色結晶性粉末の標題化合物2.1gを得た。
含水率(カールフィッシャー水分計):約7.0%
前記化合物のXRPDの結果は、実施例1で得られた結晶の粉末X線回折スペクトルの結果と同一であった。
【0046】
実験例1:水溶性テスト
本発明による式(1)のアトルバスタチンストロンチウム塩または水和物またはその多形体と、公知のアトルバスタチンカルシウム塩の三水和物を、それぞれ脱イオン水またはリン酸緩衝液(pH6.8)の中で飽和状態になるまで溶解させた後、残った固体を濾過により除去した。濾過した後、得られた各々の飽和溶液をアトルバスタチンの含量測定条件に従ってHPLCで分析して、溶解されたアトルバスタチンの量を測定した。その結果を表6に示した。
【表6】

【0047】
表6に示されているように、本発明のアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物またはその多形体は、公知のアトルバスタチンカルシウム塩の三水和物に比べて約2倍以上高い溶解度であり、このことは本発明のアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物またはその多形体がアトルバスタチンの放出により適していることを示唆する。
【0048】
本発明は特定の実施態様に関して記載しているが、添付の特許請求の範囲に定義されるような本発明の範囲内で様々な改良および変更がなされ得ることが、本発明の分野の当業者により認識されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物またはその多形体。
【化1】

【請求項2】
結晶形であることを特徴とする、請求項1に記載のアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物またはその多形体。
【請求項3】
式Iaで表されることを特徴とする、請求項2に記載のアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物またはその多形体。
【化2】

【請求項4】
粉末X線回折スペクトルにおける10%以上のI/Io値を有するピークが4.0、4.8、5.9、6.5、7.3、7.8、8.8、9.5、9.8、10.2、11.6、14.7、17.5、18.9、19.5、19.8、20.2、21.3、22.7、23.1、24.3、25.6及び26.3の回折角(2θ±0.2)で現れることを特徴とする、請求項3に記載のアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物またはその多形体。
【請求項5】
粉末X線回折スペクトルにおける10%以上のI/Io値を有するピークが4.0、5.0、6.4、8.0、10.0、10.3、12.7、13.0、16.6、18.6、19.1、20.0、21.8及び22.2の回折角(2θ±0.2)で現れることを特徴とする、請求項2に記載のアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物またはその多形体。
【請求項6】
粉末X線回折スペクトルにおける10%以上のI/Io値を有するピークが3.8、5.2、6.2、7.9、10.7、19.7及び24.0の回折角(2θ±0.2)で現れることを特徴とする、請求項2に記載のアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物またはその多形体。
【請求項7】
粉末X線回折スペクトルにおける10%以上のI/Io値を有するピークが3.8、5.2、5.8、6.2、7.6、8.1、9.2、10.3、11.9、15.5、18.1、19.8、20.7、21.1、22.1、23.2、24.3及び26.3の回折角(2θ±0.2)で現れることを特徴とする、請求項2に記載のアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物またはその多形体。
【請求項8】
粉末X線回折スペクトルにおける10%以上のI/Io値を有するピークを有しない非晶形であることを特徴とする、請求項1に記載のアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物またはその多形体。
【請求項9】
(i)式(II)のアトルバスタチンまたは式(III)のアトルバスタチンラクトンを水酸化ストロンチウムと反応させるか、または(ii)アトルバスタチンナトリウム塩或いはカリウム塩に反応性ストロンチウム塩を添加して塩交換を誘導するか、あるいは(iii)一つの形態のアトルバスタチンストロンチウム塩或いはその水和物を他の多形体に切り替えることを含む、式(I)のアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物またはその多形体の製造方法。
【化3】

【請求項10】
前記反応性ストロンチウム塩が、塩化ストロンチウム、臭化ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、過塩素酸ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、炭酸ストロンチウム及びシュウ酸ストロンチウム、及びこれらの混合物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
有効成分として請求項1に記載のアトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物またはその多形体と薬学的に許容可能な担体を含むことを特徴とする、 高脂血症及び高コレステロール血症の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項12】
経口投与用組成物であることを特徴とする、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
アトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物またはその多形体が、前記組成物の総量を基準にして0.1〜95重量%の量であることを特徴とする、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
アトルバスタチンストロンチウム塩またはその水和物またはその多形体が、組成物の総量を基準にして1〜70重量%の量であることを特徴とする、請求項13に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−516756(P2010−516756A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547168(P2009−547168)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【国際出願番号】PCT/KR2008/000357
【国際公開番号】WO2008/093951
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(599139534)ハンミ ファーム. シーオー., エルティーディー. (56)
【Fターム(参考)】