説明

アトルバスタチンカルシウムの多形

【課題】本発明は、血清コレステロールレベルを低下せしめるのに有用な薬剤である、アトルバスタチンカルシウムを提供することを目的とする。
【解決手段】アトルバスタチンカルシウムの新規V型、当該新規V型の製造方法、並びに当該新規V型を含む医薬組成物及び剤形。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアトルバスタチンカルシウムの新規結晶形、その製造方法並びにそれを含む医薬組成物及び製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アトルバスタチンは、スタチンと称される薬物のクラスのメンバーである。スタチン薬物は、心血管疾患の危険性がある患者の血流中の低密度リポタンパク質(LDL)粒子濃度を低下せしめるのに利用可能な、現在最も治療に有効な薬物である。血流中の高レベルのLDLは、血流を妨害し、そして破裂させることがあり、そして血栓症を促進する冠動脈の病変の形成と関連づけられている。Goodman and Gilman. The Pharmacological Basis of Therapeutics 879 (9th ed. 1996)。血漿LDLレベルの低下は、心血管疾患を有する患者及び心血管疾患ではないが、高コレステロール血症を有する患者における臨床徴候の危険性を低下することが示されている。Scandinavian Simvastatin Survival Stady Group, 1994 ; Lipid Research Clinics Program, 1984a, 1984b。
【0003】
スタチン薬物の作用機構は、ある程度詳しく解明されている。それらは、3−ヒドロキシ−3−メチル−グルタリルCoAレダクターゼ酵素(「HMG−CoAレダクターゼ」)を競合的に阻害することによって、肝臓のコレステロール及び他のステロールを妨害する。HMG−CoAレダクターゼはメバロン酸塩へのHMGの変換を触媒し、これがコレステロールの生合成における速度決定段階にあるので、その阻害は肝臓におけるコレステロール濃度の低下を導く。超低密度リポタンパク質(VLDL)は、肝臓から末梢細胞にコレステロール及びトリグリセリドを輸送するための生物学的担体である。VLDLは、脂肪細胞に蓄えられるか、筋肉によって酸化され得る脂肪酸を放出する末梢細胞において異化作用を受ける。VLDLは、LDL受容体によって除去されるか、又はLDLに変換される中間密度リポタンパク質(IDL)に変換される。コレステロール産生の低下は、LDL受容体の数の増大及びIDLの代謝によるLDL粒子の産生の対応する低下を導く。
【0004】
アトルバスタチンは、〔R−(R* ,R* )〕−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−〔(フェニルアミノ)カルボニル〕−1H−ピロール−1−ヘプタン酸の一般的な化学名である。当該遊離酸はラクトン化する傾向がある。ラクトンの分子構造を式(I)によって表す。
【化1】

【0005】
アトルバスタチンは、LIPITORの名のもと、Warner-Lambert Co.によってヘミカルシウム塩三水和物として販売されている。
【化2】

【0006】
アトルバスタチンは、米国特許第4,681,893号において最初に公開され、そして特許請求された。式(II)に表したヘミカルシウム塩(以後「アトルバスタチンカルシウム」)は、米国特許第5,273,995号に開示されている。この特許は、当該カルシウム塩がCaCl2 を用いたナトリウム塩の転移から生じた塩溶液からの結晶化によって得られ、そして酢酸エチルとヘキサンの5:3混合物からの再結晶化によって更に精製されることを教示する。これらの米国特許第は共に、引用によって本明細書に組み入れられる。
【0007】
本発明は、アトルバスタチンカルシウムの水和物及び無水物状態両方の新規結晶形を含む。多形は、固体における1以上の結晶又は非結晶形を保証する、いくつかの分子及び分子錯体の特性である。単一分子、例えば式(I)のアトルバスタチン又は式(II)の塩錯体は、溶解性、X線回折パター及び固体13C NMRスペクトルの様な物理的特性が異なる様々な固体をもたらし得る。多形における物理的特性の差異は、大量の固体における隣接分子(錯体)の配向及び分子間相互作用から生じる。従って、多形は、金属学における単位格子として考えられる。同一の分子式を持ち、更に多形ファミリーにおける他の形態と比較して異なる利点及び/又は欠点がある物理的特性を有する異なる固体である。医薬多形の最も重要な物理的特性の1つに、水溶液中でのそれらの溶解性、特に患者の胃液中でのそれらの溶解性がある。例えば、胃腸管を介する吸収が遅い場合、有害な環境で蓄積しない様にゆっくりと溶解することは、患者の胃又は腸における条件に対して不安定な薬物にとってしばしば望ましい。一方で、薬物の有効性が当該薬物のピークの血流レベルと相関している場合、スタチン薬物が共有し、そして当該薬物が胃腸(GI)系によって素速く吸収されることを提供する特性が、結果として更に素速く溶解する形態になると、更にゆっくり溶解する形態の匹敵する量以上に有効性の増大を示しやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
米国特許第5,969,156号は、以下の形態の発明者によって命名されたアトルバスタチンの3つの多形、I型、II型及びIII 型を開示している。米国特許第5,969,156号の発明者は、非結晶性アトルバスタチンカルシウム以上にそれらの形態が、若干の加工的利点及び治療的利点があることを主張しているが、他のこれまでの発見されていないアトルバスタチンカルシウムの形態によっても利点は実現され得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、アトルバスタチンの形態I以上に高い水溶性があるという利点を有する、無水物及び水和物状態両方のアトルバスタチンカルシウムの新規V型を提供する。本発明は更に、新規V型並びに当該新規V型を含む医薬組成物及び製剤の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1はアトルバスタチンカルシウムのV型のX線粉末回折像である。
【図2】図2はアトルバスタチンカルシウムのV型の、固体13C−NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
アトルバスタチンカルシウムの新規結晶形態、V型は、X線粉末回折及び固体13C核磁気共鳴技術を用いる米国特許第5,273,995号及び第5,969,156号に記載の手順を実施することによって得られた結晶修飾物と、はっきり区別される。
【0012】
V型のX線粉末回折像(図1)は、2θが5.3±0.2及び8.3±0.2度のときに2つの中程度のピークを有し、そして2θが18〜23度の範囲のときに1つの大きいピークを有し、これは2θが約18.3±0.2度のときに最大である。このX線パターンは、既知のI型、II型、III 型及びIV型のものとはっきり区別され、そして2θにおける8〜14度の範囲及び2θにおける15〜26度の範囲の、2つの広い丘を特徴とする非結晶性アトルバスタチンカルシウムのX線パターンともはっきり区別される。図1のX線粉末回折像は、1050/70モデルのゴニオメーターを用いる湾曲グラファイトモノクロメーターを有するPhilips X線粉末回折計を用いて、当業界で知られている方法によって得られた。λ=1.5418Åの銅の放射を使用した。測定範囲:3〜30度(2θ)。
【0013】
V型の固体13C−NMRスペクトルは、以下の化学シフトによって特徴づけられる:
【表1】

【0014】
この固体13C−NMRスペクトル(図2)は、既知のI型、II型、III 型及びIV型のものとはっきり区別され、そして21.0ppm 、26.4ppm 、69.7ppm のときに最大である60〜75ppm の範囲にある1つの広域ピーク、及び138.8ppm において、V型のものと大きく異なるシフトと共に異なるパターンを示す非結晶形態のものとも区別される。図2のスペクトルは、125.76MHz で作動するBruker DMX−500デジタルF NMRスペクトロメーター上で得られた。当該装置は固体のためにBL−4cpmasプローブヘッド及び高解像度/高性能(HPHP)1H を備え付けられた。マジック角及びプロトンデカップリング効率は獲得前に最適化された。試料は4mmのジルコニアローターによる5.0KHz のスピン速度でスピンされた。
【0015】
アトルバスタチンカルシウムのV型は最大12%の水を含むことがあり、これはアトルバスタチンカルシウムの分子当たり9個の水分子の化学量論的な値に対応している。この様に、アトルバスタチンカルシウムのV型は、0〜9モルの水の、種々の水和状態で存在し得る。
【0016】
本発明は更に、アトルバスタチンカルシウムのV型の製造方法を提供する。当該方法は、アトルバスタチン塩溶液を形成するためにアトルバスタチン塩を溶媒に溶解し、任意にアトルバスタチン塩溶液から不純物を除去し、アトルバスタチン塩溶液をカルシウム塩と接触させ、そして新規V型のアトルバスタチンカルシウムを単離する段階を含んで成る。
【0017】
本発明のアトルバスタチン塩は、アルカリ金属塩、例えばリチウム、ナトリウム及びカリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えばマグネシウム塩;並びにアンモニウム及びアルキル、アリール又はアルカリアンモニウム塩を含む。好ましいアトルバスタチン塩はアルカリ金属塩であり;最も好ましいものはナトリウム塩である。
【0018】
アトルバスタチン塩を溶解することができ、そしてアトルバスタチンカルシウムのV型が単離され得る溶媒のいずれかが、本発明の溶媒に適している。従って、溶媒の選択は、アトルバスタチン塩及びカルシウム塩の選別に依存するだろう。当該溶媒は、アトルバスタチン塩及びカルシウム塩が少なくともある程度溶解するものから選択されるべきである。ある程度溶解するとは、アトルバスタチンの場合50〜60℃で0.02g/mlよりも実質的に溶解しないことはないこと、そしてカルシウム塩の場合10〜15℃で0.0002Mよりも実質的に溶解しないことはないことを意味する。
【0019】
適当な溶媒は、限定しないがヒドロキシ溶媒、例えば水、アルコール及びそれらの混合物を含み、これは鉱酸又は塩基の添加によって酸性又は塩基性のいずれかにされたヒドロキシ溶媒及びヒドロキシ溶媒を含む。
【0020】
本発明のカルシウム塩は、アトルバスタチン塩溶液に加えられた場合にCa2+及び陰イオン性成分に解離することができるカルシウムの無機及び有機塩を含む。特に使用され得る有機塩は、カルボン酸塩及びスルホン酸塩である。特にカルボン酸塩は低級アルキルのカルボン酸塩、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩及び酒石酸塩及びアリールカルボン酸塩、例えば安息香酸塩及びフタル酸塩、並びに高級アルキルのカルボン酸塩、ステアリン酸塩、ドデカン酸塩等である。アスコルビン酸カルシウム及びコハク酸カルシウムも含まれる。特に使用され得るスルホン酸塩は、低級アルキル及びアリールのスルホン酸塩、例えばメタンスルホン酸カルシウム、ベンゼンスルホン酸カルシウム及びp−トルエンスルホン酸カルシウムである。好ましい有機酸カルシウム塩は低級カルボン酸塩であり、最も好ましい有機カルシウム塩は酢酸カルシウムである。
【0021】
溶解性に依存して、使用され得る無機塩は、ハロゲン化物塩、例えばCaCl2 、CaF2 、CaBr2 及びCaI2 、並びにホウ酸カルシウム(B4 CaO7 )、テトラフルオロホウ酸カルシウム(CaBF4 )、炭酸カルシウム(CaCO3 )、一塩基性リン酸カルシウム(Ca(H2 PO42 )、二塩基性リン酸カルシウム(CaHPO4 )及び三塩基性リン酸カルシウム(Ca(PO42 )、硫酸カルシウム(CaSO4 )及び水酸化カルシウム(Ca(OH)2 )、並びにそれらの水和物を含む。
【0022】
有機性、無機性に関わらず、当該カルシウム塩は、好ましくはアトルバスタチン塩溶液中で、アトルバスタチン1モル当たり0.5モルのCa2+を提供する量が加えられる。例えば、アトルバスタチン塩がアトルバスタチンナトリウム(アトルバスタチン-Na+)である場合、アトルバスタチン塩1モル当たり約0.5モルのカルシウム塩が適している。アトルバスタチン塩がアトルバスタチンマグネシウム([アトルバスタチン-]2Mg+)である場合、アトルバスタチン塩1モル当たり約1モルのカルシウム塩が適している。さもなければ、アトルバスタチンを含む混合型の塩が形成しうる。
【0023】
当該カルシウム塩は、実質的に純粋な形態、すなわち固体として、又は液体の場合には純粋な液体として、アトルバスタチン塩溶液に対して当該カルシウム塩を添加することによって、あるいは好ましくは最初にカルシウム塩溶液を形成し、そして次にアトルバスタチン塩溶液とカルシウム塩溶液を接触させることによって、アトルバスタチン塩溶液と接触され得る。最も好ましいのは、最初にカルシウム塩を溶媒に溶解し、そして次にカルシウム塩溶液をアトルバスタチン塩溶液に徐々に加えることによって、当該カルシウム塩とアトルバスタチン塩溶液とを接触させることである。適当なカルシウム塩の溶媒は、アトルバスタチン塩に適した溶媒として既に言及した溶媒であるが、当該カルシウム塩は特定の溶媒中で少なくともある程度溶解性があるものである。
【0024】
特に好ましい態様において、アトルバスタチン塩がアトルバスタチンアルカリ金属塩であり、そしてアトルバスタチン塩の溶媒が1:2のメタノール:水混合物であるとき、好ましいカルシウム塩は酢酸カルシウムであり、そして好ましいカルシウム塩の溶媒は水である。当該カルシウム塩の溶媒が水である場合、それは好ましくは約20〜30mMのカルシウム塩溶液、更に好ましくは約25mMの溶液を提供する量で使用される。
【0025】
更に、アトルバスタチン塩とカルシウム塩は、結果として、V型の結晶化が、形成されるアトルバスタチンカルシウム溶液を冷却することによって誘導されるように、上文及び実施例に開示されている、上昇した温度及び濃度で混合される。上昇した温度は、好ましくは40℃以上80℃以下、更に好ましくは50℃以上70℃以下、そして最も好ましくは約60℃である。当業者は、温度及び濃度を調節することによって、アトルバスタチンカルシウムのV型の収量が最適化され得ることを理解するだろう。アトルバスタチンカルシウムのV型の結晶化はまた、アトルバスタチンカルシウムの種結晶、好ましくはV型の添加によって誘導されることもあるが、他の形態も使用され得る。
【0026】
アトルバスタチンカルシウムのV型の結晶が、自発的に、冷却によって、種を加えることによって、又は別の誘導によって、そのいずれかで結晶化されると、当該結晶は濾過又は当業界で知られている他の常用の手段によって単離され得る。単離された結晶はまた、常用の手段によって乾燥され得る。
【0027】
更に、アトルバスタチンカルシウムが、THF又はアルコール、例えばメタノール又はエタノール中にアトルバスタチンカルシウムを溶解し、そして次に逆溶媒として水を加えることによって、V型を結晶化し得ることが明らかとなった。
【0028】
本発明の更なる観点は、アトルバスタチンカルシウムの新規形態を含む医薬組成物及び剤形である。
【0029】
本発明の組成物は、アトルバスタチンカルシウムの新規V型を含んで成る粉末、顆粒、凝集体及び他の固体組成物である。更に、本発明が考慮しているV型の固体組成物には、希釈剤、例えばセルロース誘導型材料、例えば粉末状のセルロース、微結晶セルロース、極微小のセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシルプロピルセルロース、ヒドロキシルプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩並びに他の置換型及び非置換型セルロース;デンプン;あらかじめゼラチン化されたデンプン;無機性希釈剤、例えば炭酸カルシウム及び二リン酸カルシウム及び医薬業界で知られている他の希釈剤も含まれうる。更に他の適当な希釈剤は、ロウ、糖及び糖アルコール、例えばマンニトール及びソルビトール、アクリラートポリマー及びコポリマー、並びにペクチン、デキストリン及びゼラチンを含む。
【0030】
更に本発明で考慮される賦形剤は、結合剤、例えばアカシアゴム、あらかじめゼラチン化されたデンプン、アルギン酸ナトリウム、グルコース、並びに湿式及び乾式顆粒化及び直接的な圧縮成形工程で使用される他の結合剤を含む。アトルバスタチンカルシウムのV型の固体組成物においても使用され得る賦形剤は、更に崩壊剤、例えばデンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン(crospovidone)、低級置換型ヒドロキシプロピルセルロース及び他のものを含む。更に、賦形剤は、成形用潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム及びカルシウム並びにステアリルフマル酸ナトリウム;芳香剤;甘味剤;防腐剤;医薬として許容される色素及び流動促進剤(glidant)、例えば二酸化ケイ素も含みうる。
【0031】
当該製剤は、経口、口腔内、直腸、非経口(皮下、筋肉内、及び静脈内を含む)、吸入及び経眼投与を含む。任意な特定の場合における最も適した経路は、処置される症状の性質及び重症度に依存するが、本発明の最も好ましい経路は経口である。当該剤形は便宜的に単位剤形で提示され、そして製薬業界で周知の方法のいずれかによって製造され得る。
【0032】
剤形は、固体の剤形、例えば錠剤、粉末、カプセル、座剤、サチェット、トローチ及びロゼンジ、並びに液体懸濁剤及びエリキシルを含む。限定することを意図して記載していないが、本発明はまた、アトルバスタチンカルシウムの固体を識別する特性が失われたら、アトルバスタチンカルシウムの真溶液に適していることも意図していない。しかしながら、そのような溶液を製造するための(例えば、アトルバスタチンに加えて、溶媒和化合物を前記溶液に対して、溶媒和化合物とのある比率で送達するように)新規形態の使用は、本発明の考慮の範囲内にあると思われる。
【0033】
カプセル製剤は、当然の事ながら、ゼラチン又は他の常用の被包材料から作られ得るカプセル内に固体組成物を含み得る。錠剤及び粉末もコーティングされ得る。錠剤及び粉末はまた腸溶性コーティングでコーティングされ得る。腸溶性コーティングされた粉末の形態は、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ポリビニルアルコール、カルボキシメチルエチルセルロース、スチレンとマレイン酸のコポリマー、メタクリル酸とメタクリル酸メチルのコポリマー、及び同様の材料を含んで成るコーティングを有することもあり、そして所望ならば、それらは適当な可塑剤及び/又は増量剤と一緒に適用され得る。コーティングした錠剤は錠剤の表面上にコーティングを有するか、あるいは腸溶性コーティングした粉末又は顆粒を含んで成る錠剤であってもよい。
【0034】
本発明の医薬組成物の好ましい単位剤形は、典型的に0.5〜100mgのアトルバスタチンカルシウムの新規V型、又はアトルバスタチンカルシウムの他の形態とのそれらの混合物を含む。更に一般的には、アトルバスタチンカルシウムの形態の単位剤形の合計量は2.5mg〜80mgである。
【0035】
この様に本発明の様々な観点を記載した以下の例は、本発明の特定の態様を例示するために提供される。それらは限定することをなんら意図していない。
【実施例】
【0036】
例1
アトルバスタチンのナトリウム塩(52.2g)をメタノール(510ml)に溶解し、そして次に水(1L)で希釈した。生じた溶液を、1:1の酢酸エチル/ヘキサン(1L)を含む分液ロートに移した。層は、分液ロートを介して窒素ガスで泡立てることによって混合した。窒素流の停止後、分離した層及び、上側の有機層を除去した。下側の水層を1:1の酢酸エチル/ヘキサン(1L)で洗浄し、そして次に丸底フラスコに移した。活性炭(10.2g)を加えた。フラスコを50℃に加熱し、溶液を2時間撹拌した。その後、活性炭はセライトを介した濾過によって除去し、炭及びセライトをメタノール(1540ml)ですすぎ、そしてすすぎ液及び濾液を1つのアトルバスタチンナトリウム塩溶液に混合した。
【0037】
精製によって得られたアトルバスタチンの量は、精製したアトルバスタチンナトリウム塩溶液の校正したHPLC解析によって決定した。この解析に基づき、酢酸カルシウムの量(8.38g、0.5当量)を水(1.9L)に溶解し、そして60℃に加熱した。アトルバスタチンナトリウム塩溶液を63℃に加熱し、そして当該溶液は、アトルバスタチンナトリウム塩溶液に酢酸カルシウム溶液を徐々に加えることによって一緒にした。添加を完了した後、混合物を冷却した。V型の結晶化は43℃で開始し、そして冷却はフラスコの温度が13℃に達するまで続けられた。
【0038】
結晶はゆっくりと吸引濾過することによって単離し、そして次に無水シリカ上で5日間脱水され、アトルバスタチンカルシウム塩のV型を生成した。
【0039】
例2
アトルバスタチンカルシウム(10mg)を室温でメタノール(400ml)に溶解した。水(300ml)を、撹拌しながらメタノール溶液に徐々に加え、そして生じた溶液を60℃に加熱した。当該溶液を10〜15℃の間で3時間冷却した。沈殿は約40℃で開始した。続いて濃いスラリーを、減圧下、50℃で48時間乾燥させ、アトルバスタチンカルシウムのV型を生成させた。
【0040】
例3
アトルバスタチンカルシウム(5g)を室温でメタノール(100ml)に溶解した。このメタノール溶液に対し、水(100ml)を撹拌しながら加えた。沈殿はスラリーを15℃に冷却した直後に生じ、沈殿物は濾過され、そして減圧下、50℃で48時間乾燥することによってアトルバスタチンカルシウムのV型が生成した。
【0041】
例4
アトルバスタチンカルシウム(5g)をメタノール(200ml)に溶解した。当該メタノール溶液を、水(150ml)を含む撹拌した反応容器に加えた。得られたスラリーを10℃に冷却し、濾過し、そして減圧下、50℃で乾燥させ、アトルバスタチンカルシウムのV型を生成した。
【0042】
例5
アトルバスタチンカルシウム(1g)を、加熱後にエタノール(15ml)中で溶解した。このエタノール溶液に対し、水(10ml)を撹拌しながら加えた。沈殿はすぐに開始した。ゲル状の沈殿物を真空にすることなく濾過し、そして減圧下、50℃で24時間乾燥させ、アトルバスタチンカルシウムのV型を生成した。
【0043】
例6
アトルバスタチンカルシウム(1g)を室温でTHF(25ml)に溶解した。この溶液に対し、水(60ml)を撹拌しながら加えた。反応混合物を室温で18時間撹拌し、そして沈殿物(ゲル)真空にすることなく濾過し、そして減圧下、50℃で24時間乾燥させ、アトルバスタチンカルシウムのV型を生成した。
【0044】
本発明はその好ましい態様に関して記載した。この記載から、当業者は、上文に記載し、そして本明細書で請求した本発明の範囲及び精神を逸脱することなく、本発明の変更を行うことができることを理解するだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アトルバスタチンカルシウムのV型又はその水和物。
【請求項2】
実質的に図1で描写されたX線粉末回折像を有する、請求項1に記載のアトルバスタチンカルシウムのV型又はその水和物。
【請求項3】
約5.5及び8.3度(2θ)にX線粉末回折のピークを、そして約18−23度(2θ)に広域のピークを有する、請求項1に記載のアトルバスタチンカルシウムのV型又はその水和物。
【請求項4】
実質的に図2で描写された固体13C−NMRスペクトルを有する、請求項1に記載のアトルバスタチンカルシウムのV型又はその水和物。
【請求項5】
約21.9、25.9、118.9、122.5、128.7、161.0及び167.1ppmのときに固体13C−NMRのシグナルを有する、請求項1に記載のアトルバスタチンカルシウムのV型又はその水和物。
【請求項6】
アトルバスタチンカルシウム1モル当たり最大約9モルの水分子を含むアトルバスタチンカルシウムのV型。
【請求項7】
アトルバスタチンカルシウムのV型又はその水和物の製造方法であって、以下の段階、
a)溶媒中でアトルバスタチンの、金属のアンモニウム又はアルキルアンモニウム塩を溶解し、アトルバスタチン塩溶液を形成せしめ、
b)アトルバスタチン塩溶液をカルシウム塩と接触させ、そして
c)アトルバスタチンカルシウムのV型又はその水和物を単離すること、
を含んで成る方法。
【請求項8】
アトルバスタチンの塩がアトルバスタチンの金属塩である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
アトルバスタチンの金属塩がアトルバスタチンのナトリウム塩である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
カルシウム塩が酢酸カルシウム塩である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
カルシウム塩が溶媒中で溶解され、そしてアトルバスタチン塩溶液が、当該カルシウム塩溶液をアトルバスタチン塩溶液に添加することによって当該カルシウム塩と接触される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
アトルバスタチンカルシウムのV型又はその水和物の製造方法であって、以下の段階、
a)テトラヒドロフラン及びヒドロキシ溶媒から成る群から選択される溶媒中で、アトルバスタチンカルシウムを溶解し、アトルバスタチンカルシウム塩溶液を形成せしめ、
b)水をアトルバスタチンカルシウム塩溶液に添加し、そして
c)アトルバスタチンカルシウムのV型又はその水和物を単離すること、
を含んで成る方法。
【請求項13】
溶媒がメタノールである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
溶媒がエタノールである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
溶媒がテトラヒドロフランである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
治療量の、請求項1に記載のアトルバスタチンV型又はその水和物を含んで成る医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−102439(P2009−102439A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30514(P2009−30514)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【分割の表示】特願2001−538875(P2001−538875)の分割
【原出願日】平成12年11月16日(2000.11.16)
【出願人】(501079705)テバ ファーマシューティカル インダストリーズ リミティド (283)
【Fターム(参考)】