説明

アニオン性シリカ微粒子を含有する層を含む滑水性皮膜の形成方法及び滑水性皮膜形成用の処理剤セット

【構成】アニオン性シリカ微粒子分散液と、シリコーンエマルジョンを組み合わせて基材表面に塗布することにより、滑水性に優れた皮膜を基材表面に形成する。
【効果】本発明の滑水性皮膜は、単に両者を塗布するだけでよく、加水分解などの反応や焼成などの処理を必要としないので誰でも簡単に皮膜を形成することができ、また処理剤セットは水系組成物で、有機溶剤を使用しなくて済み、強アルカリ性、強酸性でもないことから環境、塗装面、人体に対し安全であり、洗車機を利用して塗布する場合や、スプレー缶を利用して塗布する場合にも安心して使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗車後及び雨天時などの水滴の滑落を良好にするため、ガラス面や塗膜表面に滑水性に優れた皮膜を形成する方法及び滑水性皮膜形成用の処理剤セットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
滑水性や發水性に関して、従来から種々の組成物が提案されている。
例えば、アミノ変性シリコーンオイルとカチオン性界面活性剤とを含有する組成物が提案されており(特許文献1)、該組成物は、単にガラス面に噴霧あるいは塗布するだけで、塗り延ばしや拭き取りが一切不要なため作業が容易であり、優れた撥水を示し、現在最も広く普及されている發水皮膜の形成方法である。しかしながら、この方法は、作業性に優れ、發水生に優れているものの、水滴の滑落、すなわち滑水性は満足のいくものではなかった。
また、末端に加水分解可能な官能基を有するシリコーン化合物、または末端に加水分解可能な官能基を有し他端にフルオロアルキル基を併せ持つシリコーン化合物と、酸と、水とを溶剤に溶解後、混合攪拌によって得られた混合液を、基材表面に塗布し、ついで乾燥させることにより得られる機能層が、基材表面とシロキサン結合により化学的に結合されてなることを特徴とする水滴滑落性に優れた表面処理基材が提案されており(特許文献2)、この基材によれば、50μlの水滴が1〜8°程度の傾斜面で落下するものが得られている。この基材は、滑水性、持続性には優れているものの、シリコーンを溶解するための有機溶剤及び加水分解可能な官能基を加水分解するための酸を必要とし、皮膜形成後焼成しなければならず、処理のための設備を必要とし、だれでも簡単に皮膜を形成できるものではなかった。
さらに、(A)疎水化処理された一次平均粒子径100nm以下の無機微粒子、(B)有機ケイ素化合物、(C)該有機ケイ素化合物が溶解し、1.013×102kPaにおける沸点が50〜150℃、且つ蒸発潜熱が0.2〜1.3kJ/gである有機溶媒を含有する超撥水剤組成物が提案され(特許文献3)、この組成物を、自動車等の塗装面、ガラス面に塗布することにより、無機微粒子が形成する表面のフラクタル構造により、20μlの水滴が10°の斜面で滑落する滑水性を有することが示されている。
しかしながら、この組成物は有機溶剤を必須とするので、塗布に当たり環境汚染を引き起こす可能性があり、一般のユーザが安全に使用することができなかった。
【特許文献1】特開平5−301742号公報
【特許文献2】特開2000−144056号公報
【特許文献3】特開2003−206477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、自動車などのガラス面や塗装面に、だれでも簡単にしかも環境を汚染することなく、滑水性に優れた皮膜を形成することができる方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、誰にでも簡単に使用可能な、滑水性に優れた皮膜形成用の処理剤セットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、従来から發水剤として知られているシリコーンにアニオン性シリカ微粒子を組み合わせるとシリコーンの滑水性が向上することに着目し本発明に至った。
親水性のアニオン性シリカ微粒子には、シリコーンへの吸着性及びシリコーンの極性基(例えば、アミノ基)を配向させる性質があり、シリコーンの極性基がアニオン性シリカ微粒子に配向することで、水との水素結合力が弱くなり、水滴の転落角が小さくなるものと考えられる。
【0005】
シリコーンにアニオン性シリカ微粒子を組み合わせ、基材表面に皮膜を形成するには、それぞれ別個に塗布する必要がある。シリコーンとアニオン性シリカ微粒子を混合すると、アニオン性シリカ微粒子が分散不安定となり、所期の効果が得られない。
【0006】
シリコーンやアニオン性シリカ微粒子を塗布するために使用する溶媒として、有機溶媒も使用可能であるが、環境汚染や人体への影響の点から水を使用することが望ましい。
【0007】
塗布の順序は問わないが、アニオン性シリカ微粒子は微粒子であるため吸着性も強く、表面の疎水性が弱ければアニオン性シリカ微粒子が塗装面やガラス面に吸着されるので、アニオン性シリカ微粒子を先に塗布することが好ましい。その場合、少量の非イオン界面活性剤を添加すると濡れ性が向上するのでさらに好ましい。
また、アニオン性シリカ微粒子の分散液に樹脂、例えばアルカリ可溶性樹脂の水溶液を少量添加すれば、樹脂の接着力によりアニオン性シリカ微粒子をより強固に基材表面に吸着させることができる。
【0008】
塗装表面やガラス表面は普通、負に帯電しているので、静電気的に吸着されやすいカチオン性有機化合物やカチオン性無機化合物であらかじめ表面をコートしておくと、アニオン性シリカ微粒子はより強く表面に吸着されるのでより好ましい。
【0009】
シリコーンとしてカチオン性であるアミノ変性シリコーンオイルを使用する場合には、まずアミノ変性シリコーンオイルを表面に塗布すれば表面と静電気的に結合するので強固な塗膜を形成することができ、その後アニオン性シリカ微粒子を塗布すれば同様な効果が得られる。
この場合、さらにシリコーンエマルジョンを上塗りすれば、滑水性の点で好ましい。
【0010】
本発明の実施の態様は以下のとおりである。
(1)アニオン性シリカ微粒子分散液を基材表面に塗布した後、シリコーンエマルジョンを塗布することにより、1種以上のシリコーンからなる滑水性皮膜を基材表面に形成する方法。
(2)アニオン性シリカ微粒子分散液に界面活性剤を添加したことを特徴とする(1)記載の方法。
(3)アニオン性シリカ微粒子分散液に樹脂を添加したことを特徴とする(1)記載の方法。
(4)アニオン性シリカ微粒子分散液での塗布に先立ち、カチオン性有機化合物の水溶液により基材表面をコートすることを特徴とする(1)記載の方法。
(5)アニオン性シリカ微粒子分散液での塗布に先立ち、カチオン性無機化合物の分散液により基材表面をコートすることを特徴とする(1)記載の方法。
(6)アニオン性シリカ微粒子分散液での塗布に先立ち、カチオン性有機化合物及びカチオン性無機化合物を含む分散液により基材表面をコートすることを特徴とする(1)記載の方法。
(7)アミノ変性シリコーンオイルエマルジョンを基材表面に塗布し、該表面に皮膜を形成した後、アニオン性シリカ微粒子分散液を塗布することにより、シリコーンからなる滑水性皮膜を基材表面に形成する方法。
(8)アミノ変性シリコーンオイルエマルジョンに、カチオン性有機化合物及び/またはカチオン性無機化合物を添加したことを特徴とする(7)記載の方法。
(9)アニオン性シリカ微粒子分散液でアミノ変性シリコーンオイル表面に塗布した後、さらに1種以上のシリコーンエマルジョンを塗布することを特徴とする(7)または(8)記載の方法。
(10)塗布が、スプレー法で行われることを特徴とする(1)ないし(9)のいずれかに記載の方法。
(11)アニオン性シリカ微粒子分散液と、1種以上のシリコーンエマルジョンからなる、滑水性皮膜形成用の処理剤セット。
(12)アニオン性シリカ微粒子分散液に界面活性剤を添加したことを特徴とする(11)記載の処理剤セット。
(13)アニオン性シリカ微粒子分散液に樹脂を添加したことを特徴とする(11)記載の処理剤セット。
(14)さらに、カチオン性有機化合物の水溶液を組み合わせたことを特徴とする(11)記載の処理剤セット。
(15)さらに、カチオン性無機化合物の分散液を組み合わせたことを特徴とする(11)記載の処理剤セット。
(16)さらに、カチオン性有機化合物の水溶液及びカチオン性無機化合物の分散液の混合液を組み合わせたことを特徴とする(11)記載の処理剤セット。
(17)シリコーンエマルジョンがアミノ変性シリコーンオイルエマルジョンであることを特徴とする(11)記載の処理剤セット。
(18)アミノ変性シリコーンオイルエマルジョンにカチオン性有機化合物及び/またはカチオン性無機化合物を添加したことを特徴とする(17)記載の処理剤セット。
(19)各組成物がそれぞれ別の容器に収納されていることを特徴とする(11)ないし(18)のいずれかに記載の処理剤セット。
(20)容器がスプレー缶である(19)記載の処理剤セット。
【0011】
本発明における、アニオン性シリカ微粒子とは、粒径が4〜200nmの一次粒子からなるシリカ微粒子で、表面が負に帯電しているものである。
粒径が200nmを超えると、シリカ微粒子層の透明性が悪くなり、またガラス面や塗装面に吸着しにくくなるので本発明の効果が得られなくなる。
【0012】
アニオン性シリカ微粒子の分散液とは、負に帯電した4〜100nmの無定形シリカ粒子が水中に分散したシリカゾル、あるいは負に帯電した粒径200nmの鱗片状シリカ粒子が水中に分散したシリカ分散液である。
【0013】
本発明における、シリコーンとは、従来から發水剤として知られているものでよく、例えばアミノ変性シリコーンオイル、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アルキルアラキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、アミド変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、シリコーンレジンなどの一種もしくは二種以上を使用することができる。
二種以上のシリコーン皮膜を形成するには、二種以上のシリコーンを混合して塗布する方法、それぞれのシリコーンを回分式に塗布する方法、のいずれも採用できる。
【0014】
本発明においてアニオン性シリカ微粒子に添加される界面活性剤は、濡れ性を向上させるものであれば特に限定されないが、アニオン性シリカ微粒子分散液の分散安定性の点で非イオン界面活性剤が好ましい。
【0015】
また、同じくアニオン性シリカ微粒子に添加される樹脂も、特に限定されないが、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などのエマルジョン、あるいはスチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂などのアルカリ可溶性樹脂の水溶液が使用できる。
【0016】
本発明において、予め表面を処理するカチオン性有機化合物としては、モノアルキルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、EO付加型アンモニウムクロライド、アミン酢酸塩類などのカチオン界面活性剤、あるいはポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート4級化物、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドとアクリルアミドの共重合体、カチオン性セルロース誘導体などのカチオン性高分子化合物の中から選択することができ、これらを水溶液として使用する。
カチオン性無機化合物としては、粒径10〜100nmのアルミナ微粒子や、粒径25〜50nmのカチオン性シリカ微粒子から選択することができ、これらを水分散液にして使用する。また、シリカの微粒子をカチオン性とするには周知の帯電手段が適用できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、環境を汚染したり人体に対して有害な有機溶剤を使用しなくて済み、また基材及び人体に対して危険な酸やアルカリを一切使用していないので、一般のユーザが安心して使用することができ、また、2種以上の処理剤を単に塗布するだけで、誰でも簡単に皮膜を形成することができ、しかも形成された皮膜は滑水性に優れているので、洗車時の洗浄水量や洗浄時間を大幅に少なくすることができ、雨天の場合にも水滴が残らないので、窓ガラスの視野を良好に保つことができ、塗装の耐久性も増す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施例で使用したテスト用基板、噴霧装置及び測定機器は以下のとおりである。
テスト用基板
ガラス板:松浪硝子工業(株)製マイクロスライドガラスS−1215(76×26mm)
塗装板:アクリル樹脂塗装鉄板(50×50mm)
噴霧装置
スプレーノズル:Canyon Corp.製「CHS−3AN−Bu/W ストレーナーなし 2C22」
測定機器
接触角、転落角:Kyowa Interface Science Co. LTD.製 Model:CA−DT
【実施例1】
【0019】
(1)ガラス板を非イオン界面活性剤「ID206」(日本油脂(株)製)を0.01%添加したアニオン性シリカゾル「スノーテックスS」(日産化学工業(株)製、粒径8〜11nm、SiO30%)の0.7%水分散液に浸漬し、常温で乾燥させる。
(2)上記ガラス板をアミノ変性シリコーンオイルエマルジョン「BY22−830」(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、有効成分15%)の0.3%水溶液に浸漬し水洗する操作を2回繰り返し、常温で乾燥した後、接触角と転落角を測定した。
【実施例2】
【0020】
(1)ガラス板をアニオン性シリカゾル「クレボゾール30R25」(AZエレクトロニクス・マテリアルズ(株)製、粒径25nm、SiO30%)の1.3%水分散液に浸漬し、常温で乾燥させる。
(2)上記ガラス板をジメチルシリコーンオイルエマルジョン「LE−45」(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、有効成分35%)の0.3%水溶液に浸漬し水洗する操作を2回繰り返し、常温で乾燥した後、接触角と転落角を測定した。
【実施例3】
【0021】
(1)ガラス板を非イオン界面活性剤「ID206」を0.01%添加したアニオン性シリカゾル「スノーテックスS」の0.7%水分散液に浸漬し、常温で乾燥させる。
(2)上記ガラス板をアミノ変性シリコーンオイルエマルジョン「BY22−830」の0.3%水溶液に浸漬し水洗する操作を2回繰り返す。
(3)上記ガラス板をジメチルシリコーンエマルジョン「LE−45」の0.2%水溶液に浸漬し水洗し、常温で乾燥した後、接触角と転落角を測定した。
【実施例4】
【0022】
(1)ガラス板を非イオン界面活性剤「ID206」を0.01%添加したアニオン性シリカゾル「スノーテックスS」の0.7%水分散液に浸漬し、常温で乾燥させる。
(2)上記ガラス板をアミノ変性シリコーンオイルエマルジョン「BY22−830」の0.3%水溶液とジメチルシリコーンエマルジョン「LE−45」の0.2%水溶液の混合溶液(1:1重量比)に浸漬し水洗する操作を2回繰り返し、常温で乾燥した後、接触角と転落角を測定した。
【実施例5】
【0023】
(1)塗装板をアルカリ可溶性樹脂水溶液「アクリスGSA−404L」((株)岐阜セラック製造所製、スチレンアクリル樹脂水溶液、有効成分25%)を0.0125%添加したアニオン性シリカゾル「スノーテックスN」(日産化学工業(株)製、粒径10〜20nm、SiO20%)の1.0%水分散液に浸漬し、常温で乾燥させる。
(2)上記塗装板をアミノ変性シリコーンオイルエマルジョン「BY22−830」の0.3%水溶液に浸漬し水洗する操作を2回繰り返し、常温で乾燥した後、接触角と転落角を測定した。
【実施例6】
【0024】
(1)塗装板をカチオン性高分子化合物の水溶液「リポフローMN」(ライオン(株)製、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドとアクリルアミドの共重合体水溶液、濃度5.5%)の0.2%水溶液に浸漬し、水洗する。
(2)上記塗装板をアニオン性シリカゾル「スノーテックスN」の2.0%水分散液に浸漬し、常温で乾燥させる。
(3)上記塗装板をアミノ変性シリコーンオイルエマルジョン「BY22−830」の0.3%水溶液に浸漬し水洗する操作を2回繰り返し、常温で乾燥した後、接触角と転落角を測定した。
【実施例7】
【0025】
(1)ガラス板をアルミナゾル「アルミナゾル−200」(日産化学工業(株)製、粒径100nm×10nm、Al10%)の4.0%水分散液に浸漬し、水洗する。
(2)上記ガラス板をアニオン性シリカゾル「スノーテックスN」の2.0%水分散液に浸漬し、常温で乾燥させる。
(3)上記ガラス板をアミノ変性シリコーンオイルエマルジョン「BY22−830」の0.3%水溶液に浸漬し水洗する操作を2回繰り返し、常温で乾燥した後、接触角と転落角を測定した。
【実施例8】
【0026】
(1)ガラス板をカチオン性シリカゾル「クレボゾール30CAL25」(AZエレクトロニクス・マテリアルズ(株)製、粒径25nm、SiO30%)の1.3%水分散液に浸漬し、水洗する。
(2)上記ガラス板をアニオン性シリカゾル「クレボゾール30R25」の1.3%水分散液に浸漬し、常温で乾燥させる。
(3)上記ガラス板をアミノ変性シリコーンオイルエマルジョン「BY22−830」の0.3%水溶液に浸漬し水洗する操作を2回繰り返し、常温で乾燥した後、接触角と転落角を測定した。
【実施例9】
【0027】
(1)塗装板をアミノ変性シリコーンオイルエマルジョン「BY22−830」の0.3%水溶液に浸漬した後、常温で乾燥させる。
(2)上記塗装板をアニオン性シリカゾル「スノーテックスS」の0.7%水分散液に浸漬し、常温で乾燥した後、接触角と転落角を測定した。
【実施例10】
【0028】
(1)塗装板をアミノ変性シリコーンオイルエマルジョン「BY22−830」の0.3%水溶液に浸漬した後、常温で乾燥させる。
(2)上記塗装板を非イオン界面活性剤「ID206」を0.05%添加したアニオン性シリカゾル「スノーテックスN」の2.0%水分散液に浸漬した後、水洗する。
(3)上記塗装板をアミノ変性シリコーンオイルエマルジョン「BY22−830」の0.3%水溶液に浸漬し、水洗する操作を2回繰り返し、常温で乾燥した後、接触角と転落角を測定した。
【実施例11】
【0029】
(1)ガラス板に、非イオン界面活性剤「ID206」を0.01%添加したアニオン性シリカゾル「スノーテックスS」の0.7%水分散液をスプレーノズルより噴霧し、常温で乾燥させる。
(2)上記ガラス板に、アミノ変性シリコーンオイルエマルジョン「BY22−830」の0.3%水溶液をスプレーノズルより噴霧し、スプレーノズルで水洗する操作を2回繰り返し、常温で乾燥した後、接触角と転落角を測定した。
【実施例12】
【0030】
(1)塗装板に、アミノ変性シリコーンオイルエマルジョン「BY22−830」の0.3%水溶液をスプレーノズルより噴霧した後、常温で乾燥させる。
(2)上記塗装板に、非イオン界面活性剤「ID206」を0.05%添加したアニオン性シリカゾル「スノーテックスN」の2.0%水分散液をスプレーノズルより噴霧した後、スプレーノズルで水洗する。
(3)上記塗装板に、アミノ変性シリコーンオイルエマルジョン「BY22−830」の0.3%水溶液をスプレーノズルより噴霧し、スプレーノズルで水洗する操作を2回繰り返し、常温で乾燥した後、接触角と転落角を測定した。
【実施例13】
【0031】
(1)塗装板に、カチオン性高分子化合物の水溶液「リポフローMN」の0.2%水溶液をスプレーノズルより噴霧し、スプレーノズルで水洗する。
(2)上記塗装板に、アニオン性シリカゾル「スノーテックスN」の2.0%水分散液をスプレーノズルより噴霧し、常温で乾燥させる。
(3)上記塗装板に、アミノ変性シリコーンオイルエマルジョン「BY22−830」の0.3%水溶液をスプレーノズルより噴霧し、スプレーノズルで水洗する操作を2回繰り返し、常温で乾燥した後、接触角と転落角を測定した。
【実施例14】
【0032】
(1)塗装板に、アルカリ可溶性樹脂水溶液「アクリスGSA−404L」を0.0125%添加したアニオン性シリカゾル「スノーテックスN」の1.0%水分散液をスプレーノズルより噴霧し、常温で乾燥させる。
(2)上記塗装板に、アミノ変性シリコーンオイルエマルジョン「BY22−830」の0.3%水溶液をスプレーノズルより噴霧し、スプレーノズルで水洗する操作を2回繰り返し、常温で乾燥した後、接触角と転落角を測定した。
【0033】
[比較例]
(1)ガラス板及び塗装板をアミノ変性シリコーンオイルエマルジョン「BY22−830」の0.3%水溶液に浸漬する。
(2)上記ガラス板及び塗装板を水洗し、常温で乾燥した後、接触角と転落角を測定した。
【0034】
上記各実施例及び比較例における接触角と転落角の測定値を表1に示す。
表の結果から明らかなように、アニオン性シリカ微粒子を併用しない比較例と比べ本発明の実施例では転落角が小さく、特に2種類のシリコーンオイルを使用した実施例では転落角が非常に小さくなった。また、実施例2に見られるように接触角、すなわち發水性と、転落角とは必ずしも関係しない。

【表1】

【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の滑水性皮膜は、アニオン性シリカ微粒子のシリコーンに対する吸着力及びシリコーンの極性基のアニオン性シリカ微粒子への配向を利用しているので、単に両者を塗布するだけでよく、加水分解などの反応や焼成などの処理を必要としないので誰でも簡単に皮膜を形成することができる。
また、処理剤セットは水系組成物で、有機溶剤を使用しなくて済み、強アルカリ性、強酸性でもないことから環境、塗装面、人体に対し安全であり、洗車機を利用して塗布する場合や、スプレー缶を利用して塗布する場合にも安心して使用できるものであり、産業上の利用性は高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性シリカ微粒子分散液を基材表面に塗布した後、シリコーンエマルジョンを塗布することにより、1種以上のシリコーンからなる滑水性皮膜を基材表面に形成する方法。
【請求項2】
アニオン性シリカ微粒子分散液に界面活性剤を添加したことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
アニオン性シリカ微粒子分散液に樹脂を添加したことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
アニオン性シリカ微粒子分散液の塗布に先立ち、カチオン性有機化合物の水溶液により基材表面をコートすることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
アニオン性シリカ微粒子分散液の塗布に先立ち、カチオン性無機化合物の分散液により基材表面をコートすることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
アニオン性シリカ微粒子分散液の塗布に先立ち、カチオン性有機化合物及びカチオン性無機化合物を含む分散液により基材表面をコートすることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
アミノ変性シリコーンオイルエマルジョンを基材表面に塗布し、該表面に皮膜を形成した後、アニオン性シリカ微粒子分散液を塗布することにより、シリコーンからなる滑水性皮膜を基材表面に形成する方法。
【請求項8】
アミノ変性シリコーンオイルエマルジョンに、カチオン性有機化合物及び/またはカチオン性無機化合物を添加したことを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
アニオン性シリカ微粒子分散液をアミノ変性シリコーンオイル表面に塗布した後、さらに1種以上のシリコーンエマルジョンを塗布することを特徴とする請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
塗布が、スプレー法で行われることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
アニオン性シリカ微粒子分散液、及び1種以上のシリコーンエマルジョンからなる、滑水性皮膜形成用の処理剤セット。
【請求項12】
アニオン性シリカ微粒子分散液に界面活性剤を添加したことを特徴とする請求項11記載の処理剤セット。
【請求項13】
アニオン性シリカ微粒子分散液に樹脂を添加したことを特徴とする請求項11記載の処理剤セット。
【請求項14】
さらに、カチオン性有機化合物の水溶液を組み合わせたことを特徴とする請求項11記載の処理剤セット。
【請求項15】
さらに、カチオン性無機化合物の分散液を組み合わせたことを特徴とする請求項11記載の処理剤セット。
【請求項16】
さらに、カチオン性有機化合物の水溶液及びカチオン性無機化合物の分散液の混合液を組み合わせたことを特徴とする請求項11記載の処理剤セット。
【請求項17】
シリコーンエマルジョンがアミノ変性シリコーンオイルエマルジョンであることを特徴とする請求項11記載の処理剤セット。
【請求項18】
アミノ変性シリコーンオイルエマルジョンにカチオン性有機化合物及び/またはカチオン性無機化合物を添加したことを特徴とする請求項17記載の処理剤セット。
【請求項19】
各組成物がそれぞれ別の容器に収納されていることを特徴とする請求項11ないし請求項18のいずれかに記載の処理剤セット。
【請求項20】
容器がスプレー缶である請求項19記載の処理剤セット。

【公開番号】特開2006−247544(P2006−247544A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−68707(P2005−68707)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(592007612)横浜油脂工業株式会社 (29)
【Fターム(参考)】