説明

アノードの焦点スポットを放射する少なくとも一つのX線放射線の並進及び/又は回転変位の動きを固定基準位置に対して実施するための集積アクチュエータ手段と、放射されたX線ビームの結果的な平行及び/又は角度シフトを補償するための手段とを具備するX線診断システム

本発明は、改善されたパワー定格を持つ高解像度撮像アプリケーションでの使用のためのX線システム、より特には、回転アノードタイプのX線源を使用して、又は代わりに、カーボンナノチューブ(CNT)技術で作られた空間的に分布されたX線源のアレイを使用して、X線ベースの画像取得システムのための様々なシステム構成に関し、取得された2D投影データのセットから速い動きの対象物(例えば、心筋のような)の正確な再構成のために必要とされるような、取得されたCTの改善された時間的解像度のために、より高いサンプリングレートを可能にする。本発明によると、各X線源は、固定基準位置に対するX線源のアノード204、204‘、204a’又は204b‘の位置を動かすことにより少なくとも一つの並進及び/又は回転変位を実施するための少なくとも一つの集積アクチュエータユニット206、206’、206a又は206bを有し、ここで、後者(回転変位)は、例えば、アノードに衝突する電子ビーム202、202a若しくは202bを供給する電子ビーム放射カソード201、201a若しくは201b、又は取付プレート207、207a若しくは207bにより付与される。これは、その焦点スポット位置205でアノードの過熱によるパワー制限を克服するのを助ける。これに加えて、アノード変位からの結果としての焦点スポットサイズにおける偏差を補償するアノードの焦点スポット205の適合した焦点合わせを可能にするための焦点ユニット203、並びに/又は回転アノードの変位動きの方向に反対の方向へ電子ビーム202、202a若しくは202bを偏向する電場及び/若しくは磁場を生成するための偏向手段211、211a若しくは211bが供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善されたパワー定格を持つ高解像度撮像アプリケーションでの使用のためのX線システム、より特には、回転アノードタイプのX線源を使用して、又は代わりに、カーボンナノチューブ(CNT)技術で作られた空間的に分布されたX線源のアレイを使用して、このように、取得された2D投影データのセットから速い動きの対象物(例えば、心筋のような)の正確な再構成のために必要とされるような、取得されたCTの改善された時間的解像度のために、より高いサンプリングレートを可能にする、X線ベースの画像取得システムのための様々なシステム構成に向いている。本発明によると、各X線源は、固定基準位置に対してX線源のアノードの位置を動かすことにより少なくとも一つの並進及び/又は回転変位を実施するための少なくとも一つの集積アクチュエータ手段を有し、ここで、後者(回転変位)は、例えば、取付プレート、又は前記アノードに衝突する電子ビームを供給する電子ビーム放射カソードにより付与される。これに加えて、前記アノード変位からの結果としての焦点スポットサイズにおける偏差を補償するアノードの焦点スポットの適合した焦点合わせを可能にするための焦点ユニット、並びに/又は回転アノードの変位動きの方向に反対の方向へ電子ビームを偏向する電場及び/若しくは磁場を生成するための偏向手段が供給される。
【背景技術】
【0002】
従来のハイパワーX線管は、通常、加熱又はフィラメント電流が通るカソードフィラメントを保持する真空チャンバを有する。通常40kVと160kVとの間のオーダーの高電位差が、また真空チャンバ内に位置されるカソードとアノードとの間に付与される。この電位差は、管電流、すなわち電子のビームが、真空チャンバの内部の真空領域を通ってカソードからアノードへ流れるようにさせる。それから、電子ビームは、X線を生成するために充分なエネルギーで、小さな領域、すなわちアノードの焦点スポットに衝突する。
【0003】
今日、ハイパワーX線源の最も重要なパワー限定要因の一つは、これらのアノード材料の溶融温度である。同時に、小さな焦点スポットが、撮像システムの高い空間解像度のために必要とされ、これが焦点スポットでの非常に高いエネルギー密度を導く。残念なことに、斯様なX線源へ付与されるパワーの大部分は、熱に変換される。電子ビームパワーからX線パワーへの変換効率は、最大で約1%と2%との間であるが、多くの場合もっと低い。結局、ハイパワーX線源のアノードは、特に焦点(約数ミリ平方メートルの範囲内の領域)内に極端な熱負荷を坦持し、これは、熱管理の特別な手段が採られていない場合、管の破壊を導くだろう。よって、効率的な熱消散は、現在のハイパワーX線源の開発で直面する最大の難題の一つを示す。一般に使用されるX線アノードのための熱管理技術は、非常に高い温度に抵抗できる材料を使用するステップと、熱を真空管の外へ移動させることは困難なので大量の熱を格納できる材料を使用するステップと、アノードの小さな角度を使用することにより光学的焦点を拡大することなく熱的に効果的な焦点スポット領域を拡大するステップと、アノードを回転することにより熱的に効果的な焦点スポット領域を拡大するステップとを含む。
【0004】
大きな冷却容量を具備するハイパワーX線源を除いて、動きのあるターゲット(例えば、回転アノード)を具備するX線源を使用することは、非常に効果的である。固定アノードと比較して、回転アノードタイプのX線源は、アノード材料の損傷(例えば、溶融又は亀裂)が回避されるように、焦点スポット内に生成される熱エネルギーを速く分散させる利点を提供する。これは、より広めの検出有効範囲のために、現代のCTシステムでは、典型的には30秒から3秒へ下がった短い走査時間でパワーの増大を許容する。電子ビームに対して焦点トラックの速度が高くなるほど、電子ビームがそのパワーを材料の同じ小さなボリュームへ蓄える時間が短くなり、よって、結果的にピーク温度が低くなる。
【0005】
大きな半径(例えば、10cm)を持つ回転ディスクとしてアノードを設計し、このディスクを高い周波数(例えば150Hzより高い)で回転することにより、高い焦点トラック速度が達成される。しかしながら、アノードが真空で回転するので、管エンベロープの外側への熱エネルギーの転送は、放射線に大きく依存し、固定アノードで使用される液体冷却と同じ程の効果がない。よって、高い熱蓄積容量及びアノードと管エンベロープとの間の良好な放射線交換のための回転アノードが設計される。回転アノードに関連する他の困難さは、真空下でのベアリングシステムの操作と、アノードの高い温度の破壊力に抗するこのシステムの保護である。回転アノードX線源の初期には、アノードの限定された熱蓄積容量が、高い管パフォーマンスに対する主要な障害であった。これは、新しい技術の導入で変わった。例えば、アノードに真鍮をかぶせたグラファイトブロックが見出され、これは熱蓄積容量及び熱消散を劇的に増大させ、液体アノードベアリングシステム(摺動ベアリング)が包囲冷却オイルへの熱伝導を供給し、回転エンベロープ管を供給することは回転アノードの背面に対する直接的液体冷却を可能にする。
【0006】
X線撮像システムが動きのあるオブジェクトを描くために使用される場合、高速画像生成が、動きの偽信号の発生を回避するために、通常要求される。例は、人間の心臓のCTスキャンである(心臓CT)。この場合、100ms未満内の高い有効範囲及び高解像度で心筋の全CT走査を実施することが望ましく、この100msは、心筋が休止している間の拍動サイクル中のタイムスパン内である。しかしながら、高速画像生成は、それぞれのX線源の高いピークパワーパフォーマンスを必要とする。
【0007】
カーボンナノチューブ技術に基づいたX線マイクロ源の最近の開発は、今日では、固定に空間的に分配されたX線源を備えたX線システムコンセプトを可能にする。これにより、CNT技術は、高い空間解像度及び速いスイッチング機能を具備するX線源を持てるという利点を意味し、よって、回転X線源の代わりに、固定のCTスキャナ構成の新世代へ導くことができた。しかしながら、空間的に分配されたX線源を持つコンセプトの画像品質に対する限定要因はX線源の最小ピッチであり、これは固定のCT又はマイクロCTセットアップでの特定のX線源のスイッチング周波数により与えられる、最大画像取得周波数もまた規定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
CNTベースのX線源について語ることは、常に電子ビームエミッタのサイズとしての小型化を示すことであり、アノードは数ミリメートルの範囲内にある必要があるだろう。しかし、小型化されたX線源でさえ、上述の熱問題に直面するだろう。回転アノードがCNTX線源に対するオプションとしても、もちろん、分布された小型X線源及び数百又は数千のX線源を具備するシステムについて考える場合、各X線源内のマイクロ回転アノードを実現するための労力は、相対的に高くなるだろう。これらから離れても、モータを備えるマイクロ真空システムが実現するのが容易ではない(たとえ可能であるとしても、また変形例があるとしても)ので、信頼性が問題であろう。より簡易なアプローチは、アノードの異なる領域を放射することにより、焦点スポット内に消散される熱を速く分散させるために、焦点スポットがアノード上で相対的な動きを描くような、アノード材料の小さな動きである。
【0009】
よって、上述の問題を克服する新規なX線管セットアップを提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的の観点で、本発明の第1の例示的実施例は、空間的に分配されたシーケンシャルにスイッチ可能なX線源のアレイを有するX線スキャナシステムであって、前記X線源は所与のスイッチング周波数でプログラム可能なスイッチングシーケンスによりアドレスされ、各X線源は、焦点スポットの位置でアノードに衝突する入力電子ビームの方向に垂直な面に対して鋭角に傾斜した平面的なX線放射表面を持つ前記アノードと、電子ビームを生成するために使用される少なくとも一つの固定の電子ビーム放射カソードに対して前記アノードの少なくとも一つの並進及び/又は回転変位の動きを実施するための少なくとも一つの集積されたアクチュエータユニットとを有する、X線スキャナシステムに向けられている。これにより、前記少なくとも一つの集積されたアクチュエータユニットは、例えば、電場が印加されるとき機械的ストレス又は歪みを生成するピエゾクリスタルアクチュエータであり、特定の方向にアノードを動かす。これらの代替として、例えば、機械的、モータ駆動式、静電的、磁気的、流体圧的又は空気式アクチュエータのような他の何れのタイプのアクチュエータも、もちろん適用可能である。このようにして、加熱領域は増大され、X線源の出力部でのより高いX線パワーが可能である。
【0011】
本発明によると、通常の動作温度と前記焦点スポット位置での前記アノードの温度との偏差に依存して前記少なくとも一つの集積されたアクチュエータユニットにより実施される前記アノードの並進及び/又は回転変位の動きのサイズ、方向、速度及び/又は加速度を制御するアクチュエータ制御ユニットが見られる。これにより、このアクチュエータ制御ユニットは、前記X線スキャナシステムにより実行される画像取得手順が、ぼやけ又は時間的エリアジング偽信号なしに対象の画像ボリュームの正確な3D再構成を可能にする2D投影画像のセットを生じるように、前記X線源をシーケンシャルにスイッチングするためスイッチング周波数に依存して、前記少なくとも一つの集積されたアクチュエータユニットにより実施されるアノードの並進及び/又は回転変位の動きのサイズ、方向、速度及び/又は加速度を制御するのに適する。
【0012】
それに加えて、各X線源は、前記X線源のアノードのX線放射表面上の焦点スポットの位置に電子ビームを焦点合わせするための少なくとも一つの焦点ユニットだけでなく、前記少なくとも一つの固定の電子ビーム放射カソードに対する前記アノードの並進及び/又は回転変位からの結果的な焦点スポットサイズの偏差が補償されるように、前記アノードの焦点スポットの焦点合わせを調整するための焦点制御ユニットも有する。
【0013】
この実施例によると、前記アノードの並進変位の動きが、前記アノードの傾斜角の方向に直線的な変位線に沿って動き、前記アノードの並進及び/又は回転変位の動きのサイズが前記焦点スポットサイズの範囲内又は前記焦点スポットサイズより大きいことが、好ましくは見られる。
【0014】
前記アノードにより放射されるX線ビームが同じX線ビーム方向を導き、よって、前記アノードの傾斜角及び前記変位の動きに関係なく同じ視野を導くことが、特に提供される。
【0015】
前記空間的に分配されたX線源が、カーボンナノチューブの形式で電界放出カソードを使用して多くの個別にアドレス可能なX線マイクロ源により与えられ、前記少なくとも一つの固定の電子ビーム放射カソードが、また、カーボンナノチューブ技術で実現される。
【0016】
本発明の他の例示的実施例は、本質的にディスク形状の回転アノードを具備する回転アノードタイプの少なくとも一つのX線源を有するX線スキャナシステムであって、前記少なくとも一つのX線源の前記回転アノードが、焦点スポットの位置で前記回転アノードに衝突する入力電子ビームの方向に垂直な面に対して鋭角に傾斜した平面的なX線放射表面を持ち、固定の取付プレートに対して前記少なくとも一つのX線源の回転アノードの少なくとも一つの並進変位の動きを実施するための少なくとも一つの集積されたアクチュエータユニットと、通常の動作温度と前記焦点スポット位置でのアノードの温度との偏差に依存して前記少なくとも一つの集積されたアクチュエータユニットにより実施される前記回転アノードの並進変位の動きのサイズ、方向、速度及び/又は加速度を制御するためのアクチュエータ制御ユニットと、前記回転アノードの並進変位の動きの方向と反対の方向に前記電子ビームを偏向する電場及び/又は磁場を生成するための少なくとも一つの偏向手段と、前記固定の取付プレートに対して前記回転アノードの前記並進変位からの結果的な前記焦点スポット位置の偏差が補償されるように、電場及び/又は磁場の強さを調整するための偏向制御ユニットとを有する、X線スキャナシステムを示す。
【0017】
X線ビームの位置をガントリ及び検出器に対して不変を維持するために、補償態様で全体のX線源を動かす一方、焦点スポットを外側に動かすことにより、X線源の熱容量が増大できる。これにより、電子ビーム偏向は、焦点スポットトラックの熱拡散の量を拡大し、同時に利用可能な熱容量を改善する。
【0018】
この実施例によると、前記少なくとも一つの集積されたアクチュエータユニットは、電場が印加されるとき機械的ストレス又は歪みを生成するピエゾクリスタルアクチュエータ又は電気的モータにより与えられる。
【0019】
更に、前記アノードの並進変位の動きが、前記アノードの傾斜角の方向に直線的な変位線に沿って動くことが、好ましくは見られる。
【0020】
本発明の更に他の例示的実施例は、本質的にディスク形状の回転アノードを持つ各X線源を具備する回転アノードタイプの2つ以上のX線源を有するX線スキャナシステムであって、これら回転アノードの各々が、焦点スポットの位置でそれぞれの前記回転アノードに衝突する入力電子ビームの方向に垂直な面に対して鋭角に傾斜した平面的なX線放射表面を持ち、固定の取付プレートに対して各X線源を動かすことにより少なくとも一つの並進変位の動きを実施するための少なくとも一つの集積されたアクチュエータユニットと、互いに対して前記2つ以上のX線源の位置での少なくとも一つの並進変位の動きを実施するための少なくとも一つの他の集積されたアクチュエータユニットと、前記回転アノードの並進変位の動きの方向と反対の方向に前記電子ビームを偏向する電場及び/又は磁場を生成するための少なくとも一つの偏向手段と、前記X線源の回転アノードから放射されるX線放射により放射されたX線検出器に対するそれぞれのX線源の焦点スポット位置の偏差が補償されるように電場及び/又は磁場の強さを調整するための偏向制御ユニットとを有し、前記偏差は、前記固定の取付プレートに対する前記回転アノードの並進変位からである、X線スキャナシステムに向けられている。
【0021】
換言すると、X線スキャナシステムのガントリ及び当該ガントリに装着された特定の検出器に対してX線ビームの位置を不変に維持するために、補償態様で、全体の管を同時に動かす一方で、その焦点スポットを外側に動かすことにより、X線源の熱容量を増大することが、見られるだろう。電子ビームの動きは、焦点スポットトラックの熱拡散の量を拡大し、よって、同時に利用できる熱容量を改善する。
【0022】
この実施例の他の態様によると、通常の動作温度と前記焦点スポット位置での回転アノードの温度との偏差に依存して前記少なくとも一つの集積されたアクチュエータユニットにより実施されるそれぞれの回転アノードの並進変位の動きのサイズ、方向、速度及び/又は加速度を制御するためのアクチュエータ制御ユニットが見られる。それに加えて、前記アクチュエータ制御ユニットは、走査されるべき対象の領域のサイズに依存して互いに対して2つ以上のX線源の焦点スポットの位置における並進変位の動きのサイズ及び/又は方向を制御するのに適する。
【0023】
これに関連して、前記回転アノードの並進変位の動きが、前記アノードの傾斜角の方向に直線的変位のラインに沿って行くことが、好ましくは見られる。互いに対して特定のX線源の焦点スポット位置を調整するための並進変位の動きは、前記X線スキャナシステムが具備する回転ガントリのローターに対して軸方向及び/又は半径方向に直線的変位ラインに沿って行く。
【0024】
この実施例の他の態様によると、前記X線源は、前記回転ガントリのローターに対して接線方向及び半径方向に前記焦点スポット位置の調整を可能にするベローズシステムにより接続される2つの部分からなる単一の真空ケース内に位置されることが提供される。これらのX線源により共有される共通の電子ビーム放射カソードに対して最も近いX線源が、風車タイプのブレードアノードを持つ。
【0025】
本発明のこれら及び他の利点は、添付の図面を参照して、これ以降説明される実施例に関する例を介して明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1a】図1aは、従来から知られた従来のCTスキャナ装置の構成を示す。
【図1b】図1bは、図1aで例示されたCTスキャナ装置の概略的ブロック図を示す。
【図2a】図2aは、電子ビームの方向に垂直な面に対して傾斜したX線放射アノードの表面に位置される焦点スポットの位置に衝突する電子ビームを生成するカーボンナノチューブタイプ(CNT)の電子ビームエミッタを具備する、本発明の第1の実施例によるX線源のための新規な設定を示し、ここで、前記アノードは2つの固定的に取り付けられたピエゾアクチュエータにより前記電子ビームの方向に並進的に変位される。
【図2b】図2bは、前記アノードが、個別に制御される前述の2つの固定的に取り付けられたピエゾアクチュエータにより、前記電子ビームの方向に並進的に変位され、また焦点スポット位置の周りを回転して変位される、図2aに示された設定の変形例を示す。
【図3a】図3aは、電子ビームの方向に垂直な面に対して傾斜されたX線放射アノードの表面に位置される焦点スポットの位置に衝突する電子ビームを生成するカーボンナノチューブタイプ(CNT)の電子ビームエミッタを具備する、本発明の第2の実施例によるX線源のための他の新規な設定を示し、ここで、前記アノードは固定的に取り付けられたピエゾアクチュエータによりその傾斜した面の傾斜角に沿った方向に並進的に変位される。
【図3b】図3bは、前記アノードが、個別に制御される2つの固定的に取り付けられたピエゾアクチュエータにより、前記電子ビームの方向に並進的に変位され、また焦点スポット位置の周りを回転して変位される、図3aに示された設定の変形例を示す。
【図4】図4は、従来から知られている従来の回転アノードディスクの設計断面図(縦断面図)を示す。
【図5a】図5aは、本発明の例示的実施例による面に位置された焦点スポットの位置に衝突するカソードの放射電子ビームの方向に垂直な前記面に対して傾斜した面を持つX線放射アノードを具備する本発明の第3の実施例による回転アノードタイプのX線管の断面図を示し、前記X線管は、固定の取付プレートに対してその傾斜した面の傾斜角に沿った方向に少なくとも一つのX線源の回転アノードの少なくとも一つの並進変位動きを実施するためのアクチュエータユニットと、回転アノードの並進変位動きの方向と反対の方向に前記電子ビームを偏向させる電場及び/又は磁場を生成するための偏向手段とを具備する。
【図5b】図5bは、固定の取付プレートに対してアノードの回転シャフトと平行な方向に前記少なくとも一つのX線源の回転アノードの少なくとも一つの並進変位動きを実施するための他のアクチュエータユニットを具備する図5に示されたX線管の変形例を示す。
【図6】図6a及び図6bは、可変の焦点スポット距離を持つ回転アノードタイプの2つのX線管での2つの概略的に示されるアプリケーションシナリオを示し、ここで、前記焦点スポット距離は走査されるべき対象の領域のサイズに依存して調整される。
【図7a】図7aは、本発明の例示的実施例による面に位置された焦点スポットの位置に衝突する電子ビームの方向に垂直な前記面に対して傾斜した面を持つX線放射アノードを各々持つ回転アノードタイプの2つのX線管のアプリケーションシナリオを示し、前記X線管各々は、少なくとも一つの固定の取付プレートに対してアノードの回転シャフトと平行な方向にこれらの焦点スポットの並進変位を実施するための2つのアクチュエータ手段を具備し、各々は、回転アノードの並進変位動きが補償されるように放射される電子ビームを偏向させる電場及び/又は磁場を生成するための偏向手段を具備する。
【図7b】図7bは、対象のより広い領域の場合に対する図7aで示されたようなアプリケーションシナリオを示す。
【図8a】図8aは、焦点トラックが加熱される内部部分の場合に対する本発明の例示的実施例による面に位置された焦点スポットの位置に衝突する電子ビームの方向に垂直な前記面に対して傾斜した面を持つX線放射アノードを各々持つ回転アノードタイプの2つのX線管のアプリケーションシナリオを示し、前記X線管各々は、少なくとも一つの固定の取付プレートに対してこれらの傾斜した面の傾斜角に沿った方向にこれらの焦点スポットの並進変位を実施するための2つのアクチュエータ手段を具備し、各々は、アノードの並進変位動きが補償されるように放射される電子ビームを偏向させる電場及び/又は磁場を生成するための偏向手段を具備する。
【図8b】図8bは、焦点トラックが加熱される外部部分の場合に対する図8aに示されたようなアプリケーションシナリオを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の例示的実施例によるX線スキャナシステムが、添付図面を参照して特別に洗練してより詳細に説明されるだろう。
【0028】
図1aは、従来から知られているCT撮像システムの構成を示す。図1aに描かれているような現在のCT撮像システムでは、回転ガントリ101上に取り付けられたX線源102は、X線106の扇形又はコーン形状のビームを生成しながら、患者の身体107又は検査されるべき他の対象物の長手軸108の周りを回転する。ガントリ101上のX線源102の位置と直径方向に反対側に通常取り付けられるX線検出器アレイ103は、患者の身体107を通ることにより減衰されて検出されたX線を電気信号へ変換しながら、患者の長手軸108の周りの方向に回転する。コンピュータ又はワークステーション113上で動作する画像レンダリング及び再構成システム112は、平面的再フォーマット画像、面が陰影のある表示、又はボクセル化されたボリュームデータセットから患者の内部のボリュームレンダリング画像を再構成する。
【0029】
図1bに描かれるような概略的ブロック図において、検出器要素103aの単一の行だけが示されている(すなわち、検出器の行)。通常、参照符号103により示されるようなマルチスライス検出器アレイは、複数の擬似平行又は平行スライスに対応する投影データが走査中に同時に取得できるように、複数の平行な行の検出器要素103aを有する。代わりに、領域検出器がコーンビームデータを得るために利用されてもよい。検出器要素103aは、患者を完全に囲んでもよい。図1bは、また、単一のX線源102を示すが、多くの斯様なX線源が、ガントリ101の周りに位置付けられてもよい。
【0030】
X線源102のオペレーションは、CTシステム100の制御機構109により管理される。この制御機構は、一つ以上のX線源102へ電力及びタイミング信号を供給するX線コントローラ110を有する。制御機構109に属するデータ取得システム111(DAS)は、検出器要素103aからのアナログデータをサンプリングし、これらのデータを次のデータ処理のためデジタル信号へ変換する。画像再構成器112は、データ取得システム111からサンプリングされデジタル化されたX線データを受信して、高速画像再構成手順を実施する。画像再構成器112は、例えば、コンピュータ113内にある特定のハードウェア、又はこのコンピュータにより実行されるソフトウェアプログラムでもよい。再構成された画像は、大容量記憶装置(ストレージ)114に画像を格納するコンピュータ13への入力として付与される。コンピュータ113は、また、ユーザインタフェース又はグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を介して信号を受信する。特に、前記コンピュータは、幾つかの構成においてキーボード及びマウス(図示されていない)を含むオペレータコンソール115から命令及び走査パラメータを受信する。関連したディスプレイ116(例えば、陰極線管ディスプレイ)は、オペレータがコンピュータ113から再構成された画像及び他のデータを観察可能にする。オペレータが提供する命令及びパラメータは、制御信号及び情報をX線コントローラ110、データ取得システム111、及びガントリ101内に患者107を位置づけるためにモータ駆動の患者テーブル104を制御するテーブルモータコントローラ117(「動きコントローラ」とも呼ばれる)へ供給するためにコンピュータ113により使用される。特に、患者テーブル104は、ガントリ開口部105を通して患者を動かす。
【0031】
幾つかの構成では、コンピュータ113は、記憶装置118(「媒体リーダー」とも呼ばれる)、例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、CD−ROMドライブ、DVDドライブ、磁気光ディスク(MOD)、又は他のデジタル装置を有し、他のデジタル装置は、フロッピー(登録商標)ディスク119、CD−ROM、DVDのようなコンピュータ可読媒体、又はネットワーク若しくはインターネットのような他のデジタルソースからの命令及び/又はデータを読み取るようなイーサネット(登録商標)装置のようなネットワーク接続装置を含む。コンピュータは、ここで説明され使用されるような機能を実行するようにプログラムされ、用語「コンピュータ」は、コンピュータとして従来呼ばれている集積回路に限らず、コンピュータ、プロセッサ、マイクロコントローラ、マイクロコンピュータ、プログラマブルロジックコントローラ、アプリケーション専用の集積回路及び他のプログラマブル回路を広く指す。
【0032】
電子ビームの方向に垂直な面に対して傾斜したX線放射アノード204の表面に位置される焦点スポット205の位置に衝突する電子ビーム202を生成するカーボンナノチューブタイプ(CNT)の電子ビームエミッタ201を具備する、本発明の第1の実施例によるX線源のための新規な設定200aが、図2aに示される。この図から導かれるように、前記アノードは、2つの固定して取り付けられたピエゾアクチュエータ206及び206'により、前記電子ビームの方向に並進的に変位できる。よって、結果的なX線ビームは、距離dだけ平行にシフトできる。この設定の代わりとして、単一のピエゾアクチュエータ206も使用できる。ピエゾ制御に同期した焦点合わせは、アノードターゲット204上の同じ焦点スポットサイズを得るために位置合わせされる必要がある。従って、ピエゾアクチュエータ206及び206'の伸びΔlは、X線ビームの所望の平行シフトdと好ましくは同じである。
【0033】
アノードが、個別に制御される2つの固定して取り付けられたピエゾアクチュエータ206及び206'により、電子ビームの方向に並進的に変位され、焦点スポット位置205の周りに鋭角θだけ回転的に変位される。よって、平行ビームシフトが可能なだけでなく、ビーム方向を動かすことにより、より大きな範囲のシフトも可能である。
【0034】
これらによる構成の両方は、改善された空間解像度を達成するためにサンプリング状況を最適にするために好適に使用できる仮想X線源シフトに対応するビーム移動を提供する。
【0035】
図2a及び図2bに描かれたセットアップジオメトリの他の改善によると、例えば描写面の背後に位置される他のピエゾアクチュエータ(図示されず)があってもよい。例えば、エッジ位置又はアノード204の他のコーナーに位置される少なくとも3つ又は4つのアクチュエータを具備する新規な設定が提供されてもよい。これは、少なくとも一つの他の直線的又は曲線の方向、例えば描写面に垂直な、よって電子ビーム202の方向に垂直な並進方向、又は電子ビームの拡散方向と一致する回転軸の周りの回転方向にアノードを並進的に又は回転して動かすことを可能にし、これは、各アクチュエータが個別に制御される場合、完全な立体角Ω=4π(ステラジアンsrで与えられる)にわたる走査を実施可能にする。
【0036】
電子ビームの方向に垂直な面に対して傾斜したX線放射アノード204の表面に位置される焦点スポット205の位置に衝突する電子ビーム202を生成するCNTタイプの電子ビームエミッタ201を具備する、本発明の第2の実施例によるX線源のための他の新規な設定が、図3aに示される。この図から得られるように、アノードは、固定に取り付けられたピエゾアクチュエータ206により、その傾斜面の傾斜角に沿った方向に並進的に変位できる。これは、1次元又は2次元動きである。克服すべき距離は、少なくとも焦点スポットサイズの大きさであるべきであるが、もちろん、(例えば、焦点スポットサイズの2倍以上の動きのような)より大きな動きは、互いに隣り合う幾つかのターゲットポイントを可能にし、全体的なパワーに対して局地的温度分配が改善されるだろう。アノードの傾斜角のアノード形状に関係なく、アクチュエータによる当該動きが、異なるX線ビーム方向又はジオメトリを導かないことが提供される。
【0037】
この設定の変形例は図3bに描かれていて、アノード204が、2つの固定して取り付けられたピエゾアクチュエータ206及び206'により、電子ビーム202の方向に並進的に変位され、焦点スポット位置の周りに回転して変位される。これにより、ピエゾアクチュエータ206及び206'の伸びが相対的に小さくなり、アノード204は、傾斜したアノード面に衝突するX線ビームが常に同じ視野をカバーするように、調整されることが提供される。従って、僅かに異なる位置に第2のCNTエミッタ201'を持つことが必要である(及び適合する焦点合わせを実施するための手段もおそらく)。CNTエミッタの速いスイッチング能力は、また、X線源ユニットの「最後の」出力ビームが、多かれ少なかれ同一のビーム品質で同一の視野を常にカバーする限り、複数のエミッタ配置を可能にする。種々異なる設定が、較正手順により調整できる。
【0038】
図2a及び図2bで描かれた設定ジオメトリを参照して既に説明されたように、例えば描写面の背後に位置される他のピエゾアクチュエータ(図示されず)が、図3a及び図3bで描かれたようなこの第2の実施例による設定ジオメトリに、またあってもよい。また、エッジ位置又はアノード204のコーナーに位置される少なくとも3つ又は4つのアクチュエータを有する新規な設定であって、これらアクチュエータの各々が個別に制御される場合、完全な立体角Ω=4π[sr]にわたる走査を実施可能にする新規な設定は、実現可能な考え得る設計オプションであろう。
【0039】
従来から知られているような従来の回転アノードディスクのデザイン断面図(縦断面図)が、図4に示される。回転アノードディスクは、回転軸の周りにアノードを回転させる回転シャフト209に取り付けられる回転アノード204'を有し、回転アノード204'は、焦点スポット205の位置でアノードに衝突する入力電子ビーム202の方向に垂直な面に対して傾斜角だけ傾斜した平面的X線放射表面を持つ。図4から、回転アノード上の焦点スポットに生成される熱が、傾斜アノード面より下約1センチメートルまで延在する非常に狭い環状領域205aに限定されることがわかる。これは、パワー定格が制限されていない場合、過熱を導く。ここで課題は、「即座に」利用可能である熱蓄積容量を拡大することである。したがって、熱によりアクセス可能であるボリュームをできるだけ大きくする必要がある。
【0040】
表面に位置される焦点スポットの位置に衝突するカソードの放射電子ビーム202の方向に垂直な平面に対して傾斜する当該面を持つX線放射アノード204'を具備する本発明の例示的実施例による回転アノードタイプのX線管の断面図が、図5aに示される。これにより、X線管は、固定の取付プレート207に対してその傾斜面の傾斜角に沿った方向に少なくとも一つの並進変位の動きを実施するためのアクチュエータ206aと、回転アノードの並進変位の動きの方向と反対の方向に電子ビームを偏向する電場及び/又は磁場を生成するための偏向手段211とを具備する。CTスキャン中に、電子ビーム202は、焦点スポットトラックの熱拡散のボリュームを拡大し、同時に利用可能な熱容量を改善するために外側に大きく偏向される。アクチュエータ206aを使用して、焦点スポット位置は、アノードの傾斜角に沿った方向に動く変位212のラインに沿って、同時にX線源を動かすことにより、取付プレートに対して不変のままである。
【0041】
図5aを参照して説明された設定を示すこのX線管の変形例であって、固定の取付プレート207に対してアノードの回転シャフト209に平行な方向に少なくとも一つのX線源の回転アノード204'の少なくとも一つの並進変位の動きを実施するための他のアクチュエータ206a'を有するこのX線管の変形例が、図5bに描かれている。
【0042】
軸方向にコーン形状のビームCTを実施するために必要な、可変の焦点スポット距離を持つ回転アノードタイプの2つのX線管を備えた2つの概略的に描かれたアプリケーションシナリオが、図6a及び図6bに示される。ここで描かれた実施例によると、投与量を節約し、コーンビーム偽信号を最小にするために、走査されるべき対象領域(ROI)のサイズに依存して焦点スポット距離を調整するためのアクチュエータ手段が、提供される。このROIは、脳検査の場合6センチメートルから8センチメートルの間の長さ及び幅を持ち、それぞれ心臓及び肺検査の場合、10センチメートルから8センチメートルの間の長さ及び幅を持つ。このために、継続した調整が望ましい。解決策の一つは、走査が始まる前にアクチュエータ206a’で回転シャフト209の軸方向に沿ってX線源を機械的に調整して動かすことである。
【0043】
本発明の例示的実施例による表面に位置される焦点スポットの位置に衝突する電子ビーム202a又は202bの方向に垂直な面に対して傾斜した表面を持つX線放射アノード204a’又は204b’を持つ回転アノードタイプの2つのX線管を備えたアプリケーションシナリオが、図7aに描かれている。対象のより広い領域を走査するための同様のアプリケーションシナリオが、図7bに示される。これらの図からわかるように、前記X線管は、少なくとも一つの固定の取付プレート207に対してアノードの回転シャフト209a及び209bに平行な方向にこれら焦点スポットの並進変位を実施するための2つのアクチュエータ手段206a及び206a’又は206b及び206b’それぞれを各々が具備している。更に、各X線管は、回転アノードの並進変位の動きが補償されるように、電子ビームを偏向する電場及び/又は磁場を生成するため偏向手段211a又は211bを具備する。前記X線管は、例えば、2つの別個の放射線扇形ビームを生成するために、CTスキャナシステムのガントリのローターに取り付けられる。ここで描かれた実施例によると、約20センチメートルまでの焦点スポット距離は、走査されるべき対象の領域のサイズに依存して、例えば患者を走査する前にX線管の少なくとも一つを動かす第1のアクチュエータ206a’又は206b’により調整可能である。加えて、第2の(又は結合された)アクチュエータ206a又は206b、それぞれは、走査中にこれらのアノード角に沿った変位212a及び212bの2つの個別のラインのそれぞれ一つに沿って、前記X線管のシフトを可能にする。両方のX線管の少なくとも一つの直線的動きが、走査中に提供され、これは1秒、最大20秒かかる。これに関連して、変位の各ラインは、このアノードの傾斜表面に沿ったそれぞれのアノード204a’又は204b’の回転軸と特定の管の焦点スポットとの接続の拡張であることに留意されたい。前記アノードから放射されるX線ビームにより照射される検出器の位置に対する焦点スポットの位置は、それぞれのカソードの放射電子ビームの協調された同時の(対抗)偏向により一定を保っている。
【0044】
本発明の例示的実施例による前記表面上に位置される焦点スポットの位置に衝突する電子ビーム202a又は202bの方向に垂直な面に対して傾斜する表面を持つX線放射アノード204a’又は204b’を各々持つ回転アノードタイプの2つのX線管を持つアプリケーションシナリオが、図8aに描かれている。これにより、焦点トラックの内部部分が加熱されることが見られる。加熱される焦点トラックの外部部分を持つ類似のアプリケーションシナリオが、図8bに示される。示されるように、X線管各々は、少なくとも一つの固定の取付プレート207に対するこれらの傾斜面の傾斜角度に沿った方向に、これらの焦点スポットの並進変位を実施するための2つのアクチュエータ手段206a及び206’又は206b及び206b’それぞれを具備する。これら両方とも、回転アノードタイプの並進変位の動きが補償されるように、反対方向に放射された電子ビームを偏向する電場及び/又は磁場を生成するための偏向手段211a又は211bを具備する。
【0045】
本発明の他の例示的実施例では、2つのX線管は、例えば、ベローズシステムにより接続される2つの部分から成る単一の真空ケース内に位置される。この「ベローズデザイン」の他の実施例では、両方のX線管は、同一のカソードを共有し、X線管のうちの共有するカソードに最も近いX線管が、風車タイプの刃付きアノードを持ってもよい。この最も近いアノードは、刃の一つがビームと交差するとき、電子ビームにより当たる。このとき、遠い方のアノードは活性的でなく、逆もまた同様である。これにより、ベローズシステムは、CTスキャナシステムの回転ガントリのローターに対して、接線方向及び半径方向で焦点スポットの位置の調整を可能にする。
【0046】
上述された第3の例示的実施例による本発明の利点は、軸方向に大きなコーンビームCTのためのX線源の組み合わせが、データ問題を見逃すことや固有のコーンビーム偽信号を回避するために、少なくとも2つの焦点スポットを生成するために提供されることにある。走査時間があまりにも短くて熱がかなりの距離を移動できないので、焦点スポットの熱負荷が、より大きな焦点スポットトラックにわたって熱を拡散させることにより、非常に大きく低減される。これを達成するために、X線管は、CTシステムガントリのローター上で基本的に半径方向にシフトされ、検出器までの焦点スポットの距離は、これらの電子ビームの適当な(対抗)偏向で一定に保たれる。これにより、X線管のパワー定格が、大きく改善できる。代わりに、又はそれに加えて、低減された熱安定性を持つアノード材料が使用できる。焦点スポット距離を調整するためにアクチュエータがいずれにせよ実施されるので、追加の労力は合理的である。
【0047】
これにより、本発明は、デュアル管解決策が選択される場合に、軸方向のコーンビームCTに対するデュアル焦点スポット源の焦点スポット距離の軸方向の調整のためにアクチュエータを使用するという前提条件に基づく。これにより、本発明の進歩的ステップは、事実上、固定の取付プレートに対するX線管の並進変位のためのアクチュエータ手段が、稼働走査手順の間にX線管の並進変位の動きを実行するために供給されることにある。同時に、X線管の焦点スポットの位置に衝突する電子ビームは、半径方向に偏向できる。結果として、熱拡散のエリア及びボリューム、従って焦点スポットトラックの下の同時に利用可能な熱蓄積容量が強化されるので、焦点スポットの最大温度の低減が達成でき、よって、これは改善されたパワー定格を得るために役立つ。
【0048】
本発明は、何れのタイプのX線源、特に回転アノードタイプのX線源、CNTエミッタベースのX線源、又は例えば小さな熱エミッタのような他のタイプの電子ビームエミッタを具備するX線源に対して、並びに、マイクロCT、X線断層合成、X線及びCTアプリケーションのようなX線画像の何れの分野にも適用できる。ここで説明されたX線スキャナ装置は医療設定に属しているように説明されているが、本発明の利益は、工業設定、又は例えば限定するわけではないが、空港のバッゲージ走査システム若しくは他の種類の輸送センターのような輸送設定で典型的に実行されるシステムのような非医療システムに生じてもよいことは考えられる。本発明は、例えばX線ベースの物質検査の分野、又は例えば心臓CT、若しくは実時間で(例えば心筋のような)速い動きの対象の画像データを取得するために適用される他のX線画像アプリケーションでの医療画像の分野のような、高いピークパワーを持つ画像の速い取得が要求されるアプリケーションシナリオで特に実行される。
【0049】
本発明は、図面及び前述の説明において詳細に例示され説明されてきたが、斯様な例示及び説明は、例証的又は例示的であって限定的ではないと考えられるべきであり、このことは、本発明が、開示された実施例に限定されないことを意味する。開示された実施例に対する他の変形例は、図面、開示された明細書及び添付の請求項の学習から、請求されている本発明を実践する当業者により理解され遂行できるだろう。請求項において、単語「有する」は他の要素又はステップを除外しないし、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外しない。更に、請求項内の参照符号は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでないことは、留意されるべきである。
【符号の説明】
【0050】
使用された参照符号及びそれらの意味のテーブル
100 従来から知られているような従来のCT画像システム
101 従来のCT画像システム100の回転ガントリ
102 回転ガントリ101に取り付けられたX線源又はX線管102
103 X線源又はX線管102とは直径方向に反対に回転ガントリ101に取り付けられたX線検出器アレイ103
103a 検査されるべき例えば患者107の身体のような、X線検出器アレイとX線源との間の対象物を通過する投影X線を感知するX線検出器アレイ103が具備する複数の検出器要素103a
104 患者107をガントリ開口部105を通って動かす、従来のCT画像システム100のモータ駆動の患者テーブル
105 回転ガントリ101の柱状ガントリ開口部105
106 回転ガントリ101の反対側に位置されるX線検出器アレイ103に向かってX線源又はX線管102から投影されるX線の扇形又はコーンビーム
107 患者テーブル104上に横たわる患者
108 患者の長手軸と典型的に一致する、回転ガントリ101の回転軸
109 従来のCT画像システム100の制御機構
110 X線源102又は複数のX線源へパワー及びタイミング信号を供給するX線コントローラ
111 検出器アレイ103aからのアナログデータをサンプリングし、当該データを次の処理のためにデジタル信号へ変換するコントロール機構109に属するデータ取得システム(DAS)
112 データ取得システム111からサンプリングされデジタル化されたX線データを受けて、高速画像再構成を実施する画像再構成器
113 再構成された画像の画像データが入力として付与されるコンピュータ又はワークステーション113
114 コンピュータ113に接続された大容量記憶装置
115 例えば、キーボード及びマウス(図示されず)を有する、命令及び走査パラメータをコンピュータが受けるオペレータコンソール
116 コンピュータ113から受けた再構成された画像データをオペレータが視覚化する関連のディスプレイ(例えば陰極線管ディスプレイ)
117 回転ガントリ101内に患者107を位置決めするために、モータ駆動患者テーブル104を制御するモータコントローラ(「動きコントローラ」とも呼ばれる)
118 コンピュータ可読媒体119からの命令及び/又はデータを読み出すため、例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、CD−ROMドライブ、DVDドライブ、磁気光ディスク、又はネットワーク接続装置(例えば、イーサネット(登録商標)装置)のような他のデジタル装置のような、記憶装置(「媒体リーダー」とも呼ばれる)
119 例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、DVD、又はネットワーク又はインターネットのような他のデジタル装置のようなコンピュータ可読媒体
200a 電子ビームの方向に垂直な面に対して傾いているX線放射アノードの表面に位置される焦点スポットの位置に衝突する電子ビームを生成するカーボンナノチューブ(CNT)タイプの電子ビームエミッタを具備する本発明の第1の例示的実施例によるX線源に対する新規な設定であって、前記アノードは図2aに描かれているような設定2つの固定に取り付けられたピエゾアクチュエータにより前記電子ビームの方向に並進的に変位される。
200b 前記アノードが、前述の2つの固定に取り付けられたピエゾアクチュエータにより焦点スポット位置の周りに回転的に変位され、前記電子ビームの方向に並進的に変位される、図2aに描かれる設定の変形例
201 電子ビーム202を生成するために使用される、電子ビーム放射カソード
201‘ 他の電子ビーム202を生成するために使用される、他の電子ビーム放射カソード
201a 電子ビーム202aを生成するために使用される、第1のX線管の電子ビーム放射カソード
201b 電子ビーム202bを生成するために使用される、第2のX線管の電子ビーム放射カソード
202 カソード201により放射される電子ビーム
202a 第1のX線管のカソード201aにより放射される電子ビーム
202b 第2のX線管のカソード201bにより放射される電子ビーム
203 X線源アノード204のX線放射面上の焦点スポット205の位置に電子ビーム202を焦点合わせするために使用される、固定位置の焦点ユニット
203‘ 第2の焦点スポットを焦点合わせするために使用される、焦点ユニット
203‘’ 第2の焦点スポットを焦点合わせするために使用される、焦点ユニット
204 焦点スポット205の位置で前記アノードに衝突する入力電子ビーム202の方向に垂直な平面に対して鋭角だけ傾斜した平面的X線放射面を備えたアノード
204‘ 焦点スポット205の位置で前記アノードに衝突する入力電子ビーム202の方向に垂直な平面に対して鋭角だけ傾斜した平面的X線放射面を備えた回転アノード
204a‘ 焦点スポット205の位置で前記アノードに衝突する入力電子ビーム202の方向に垂直な平面に対して鋭角だけ傾斜した平面的X線放射面を備えた第1のX線管の回転アノード
204b‘ 焦点スポット205の位置で前記アノードに衝突する入力電子ビーム202の方向に垂直な平面に対して鋭角だけ傾斜した平面的X線放射面を備えた第2のX線管の回転アノード
205 アノード204又は204‘の傾斜面上の焦点スポット位置
205‘ 第2のX線管のアノードの傾斜面上の他の焦点スポットの第1の位置
205‘’ 第2のX線管のアノードの傾斜面上の他の焦点スポットの第2の位置
205a 加熱傾向にある短い走査時間の間、電子ビームの生成熱にアクセス可能な狭いトロイダル領域
205a‘ 加熱拡散のための大きなボリューム(大きな熱容量、低減された温度)
205b1 焦点トラックの第1の焦点スポット位置
205b2 焦点トラックの第2の焦点スポット位置
206 電子ビーム202を生成するために使用される、少なくとも一つの固定の電子ビーム放射カソード201に対してアノード204の少なくとも一つの並進及び/又は回転変位の動きを実施するための集積アクチュエータユニット
206‘ 電子ビーム202を生成するために使用される、少なくとも一つの固定の電子ビーム放射カソード201に対してアノード204の少なくとも一つの並進及び/又は回転変位の動きを実施するための集積アクチュエータユニット
206a 電場が付与されるとき、機械的ストレス又は歪みを生成する電気モータ又はピエゾクリスタルアクチュエータである、第1のX線管の第1の集積アクチュエータユニット
206a‘ 電場が付与されるとき、機械的ストレス又は歪みを生成する電気モータ又はピエゾクリスタルアクチュエータである、第1のX線管の第2の集積アクチュエータユニット
206b 電場が付与されるとき、機械的ストレス又は歪みを生成する電気モータ又はピエゾクリスタルアクチュエータである、第2のX線管の第1の集積アクチュエータユニット
206b‘ 電場が付与されるとき、機械的ストレス又は歪みを生成する電気モータ又はピエゾクリスタルアクチュエータである、第2のX線管の第2の集積アクチュエータユニット
207 固定の取付プレート
208 アノード204により放射される、X線ビーム
208a 第1のX線管のアノード204aにより放射される、X線ビーム
208b 第2のX線管のアノード204aにより放射される、X線ビーム
209 前記X線管の回転アノードシャフト(ローター)
209a 第1のX線管の回転アノードシャフト(ローター)
209b 第2のX線管の回転アノードシャフト(ローター)
210 前記X線管の管サスペンション
210a 第1のX線管の管サスペンション
210b 第2のX線管の管サスペンション
211 アノード204又は204‘の並進的変位の動きの方向と反対の方向にカソード201により放射される電子ビーム202を偏向する電場及び/又は磁場を生成するための偏向手段
211a 回転アノード204a‘の並進的変位の動きの方向と反対の方向にカソード201aにより放射される電子ビーム202aを偏向する電場及び/又は磁場を生成するための第1のX線管の偏向手段
211b 回転アノード204b‘の並進的変位の動きの方向と反対の方向にカソード201bにより放射される電子ビーム202bを偏向する電場及び/又は磁場を生成するための第2のX線管の偏向手段
212 アノード204又は204‘の傾斜角の方向に走る直線的変位ライン(「機械的変位のライン」とも呼ばれる)
212a アノード204a‘の傾斜角の方向に走る直線的変位ライン(「機械的変位のライン」)
212b アノード204b‘の傾斜角の方向に走る直線的変位ライン(「機械的変位のライン」)
300a 電子ビームの方向に垂直な面に対して傾いているX線放射アノードの表面に位置される焦点スポット205の位置に衝突する電子ビーム202を生成するカーボンナノチューブ(CNT)タイプの電子ビーム放射カソード201を具備する本発明の第2の例示的実施例によるX線源に対する更に新規な設定であって、前記アノードは固定に取り付けられたピエゾアクチュエータ206によりその傾斜面の入射角に沿った方向に並進的に変位される。
300b アノード204が、2つの固定に取り付けられたピエゾアクチュエータ206及び206‘により焦点スポット位置の周りに回転的に変位され、電子ビーム202の方向に並進的に変位される、図3aに描かれる設定の変形例
400 従来から知られている従来の回転アノードディスクの設計断面(縦断面)
500a 本発明の例示的実施例による前記表面に位置される焦点スポットの位置に衝突するカソードの放射電子ビーム202の方向に垂直な面に対して傾斜される表面を持つX線放射アノード204‘を具備する本発明の第3の例示的実施例による回転アノードタイプのX線管の断面前記であって、前記X線管は、固定の取付プレート207に対してその傾斜面の傾斜角に沿った方向に少なくとも一つのX線源の回転アノード204‘の少なくとも一つの並進変位の動きを実施するためのアクチュエータユニット206aと、回転アノードの並進的変位の動きの方向と反対の方向に電子ビームを偏向する電場及び/又は磁場を生成するための偏向手段とを具備する。
500b 固定の取付プレート207に対するアノードの回転シャフト209に平行な方向に少なくとも一つのX線源の回転アノード204‘の少なくとも一つの並進変位の動きを実施するための他のアクチュエータユニット206a’を具備する図5aに描かれたX線管の変形例
600a+600b 可変の焦点スポット距離を持つ回転アノードタイプの2つのX線管を備えた2つの概略的に描かれたアプリケーションシナリオであって、前記焦点スポット距離は、走査されるべき対象の範囲のサイズに依存して調整される。
700a 本発明の例示的実施例による前記表面に位置される焦点スポットの位置で衝突する電子ビーム202a又は202bの方向に垂直な平面に対して傾斜した表面を備えたX線放射アノード204a‘又は204b’を各々が持つ回転アノードタイプの2つのX線管を持つアプリケーションシナリオであって、前記X線管各々は、少なくとも一つの固定の取付プレート207に対してアノードの回転シャフト209a及び209bに平行な方向にこれら焦点スポットの並進変位を実施するための2つのアクチュエータ手段206a及び206a’又は206b及び206b’それぞれを具備し、各X線管は、回転アノードの並進変位の動きが補償されるように、電子ビームを偏向する電場及び/又は磁場を生成するための偏向手段211a又は211bを具備する。
700b 対象のより広めの領域の場合に対する、アプリケーションシナリオ700aと同一のアプリケーションシナリオ
800a 焦点トラックが加熱される内部部分の場合に対する本発明の例示的実施例による前記表面に位置される焦点スポットの位置で衝突する電子ビーム202a又は202bの方向に垂直な平面に対して傾斜した表面を備えたX線放射アノード204a‘又は204b’を各々が持つ回転アノードタイプの2つのX線管を持つアプリケーションシナリオであって、前記X線管各々は、少なくとも一つの固定の取付プレート207に対してこれらの傾斜した表面の傾斜角に沿った方向にこれら焦点スポットの並進変位を実施するための2つのアクチュエータ手段206a及び206a’又は206b及び206b’それぞれを具備し、各X線管は、回転アノードの並進変位の動きが補償されるように、反対方向に放射された電子ビームを偏向する電場及び/又は磁場を生成するための偏向手段211a又は211bを具備する。
800b 焦点トラックが加熱される外部の部分の場合に対する、アプリケーションシナリオ800aと同一のアプリケーションシナリオ
d 傾斜したアノード表面上に位置される焦点スポットの位置で衝突する電子ビームの方向に垂直な方向の並進焦点スポット変位の距離
FS 少なくとも一つの固定の取付プレート207に対して傾斜したアノード表面の傾斜角に沿った方向の並進焦点スポット変位の距離
θ 回転焦点スポット変位の角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間的に分配されたシーケンシャルにスイッチ可能なX線源のアレイを有するX線スキャナシステムであって、前記X線源は所与のスイッチング周波数でプログラム可能なスイッチングシーケンスによりアドレスされ、各X線源は、焦点スポットの位置でアノードに衝突する入力電子ビームの方向に垂直な面に対して鋭角に傾斜した平面的なX線放射表面を持つ前記アノードと、電子ビームを生成するために使用される少なくとも一つの固定の電子ビーム放射カソードに対して前記アノードの少なくとも一つの並進及び/又は回転変位の動きを実施するための少なくとも一つの集積されたアクチュエータユニットとを有する、X線スキャナシステム。
【請求項2】
前記少なくとも一つの集積されたアクチュエータユニットは、電場が印加されるとき、機械的ストレス又は歪みを生成するピエゾクリスタルアクチュエータにより与えられる、請求項1に記載のX線スキャナシステム。
【請求項3】
通常の動作温度と前記焦点スポット位置での前記アノードの温度との偏差に依存して前記少なくとも一つの集積されたアクチュエータユニットにより実施される前記アノードの並進及び/又は回転変位の動きのサイズ、方向、速度及び/又は加速度を制御するためのアクチュエータ制御ユニットを有する、請求項1又は2に記載のX線スキャナシステム。
【請求項4】
前記アクチュエータ制御ユニットは、前記X線スキャナシステムにより実行される画像取得手順が、ぼやけ又は時間的エリアジング偽信号なしに対象の画像ボリュームの正確な3D再構成を可能にする2D投影画像のセットを生じるように、前記X線源をシーケンシャルにスイッチングするためスイッチング周波数に依存して、前記少なくとも一つの集積されたアクチュエータユニットにより実施される前記アノードの並進及び/又は回転変位の動きのサイズ、方向、速度及び/又は加速度を制御する、請求項3に記載のX線スキャナシステム。
【請求項5】
各X線源は、前記X線源のアノードのX線放射表面上の焦点スポットの位置に電子ビームを焦点合わせするための少なくとも一つの焦点ユニットと、前記少なくとも一つの固定の電子ビーム放射カソードに対する前記アノードの並進及び/又は回転変位からの結果的な焦点スポットサイズの偏差が補償されるように、前記アノードの焦点スポットの焦点合わせを調整するための焦点制御ユニットとを有する、請求項1乃至4の何れか一項に記載のX線スキャナシステム。
【請求項6】
前記アノードの並進変位の動きが、前記アノードの傾斜角の方向に直線的な変位線に沿って動く、請求項1乃至5の何れか一項に記載のX線スキャナシステム。
【請求項7】
前記アクチュエータ制御ユニットは、前記アノードにより放射されるX線ビームが同じX線ビーム方向を導き、よって、前記アノードの傾斜角及び前記変位の動きに関係なく同じ視野を導くように、前記少なくとも一つの集積されたアクチュエータユニットを制御する、請求項3又は4に記載のX線スキャナシステム。
【請求項8】
前記アノードの並進及び/又は回転変位の動きのサイズが前記焦点スポットサイズの範囲内又は前記焦点スポットサイズより大きい、請求項1乃至7の何れか一項に記載のX線スキャナシステム。
【請求項9】
前記空間的に分配されたX線源が、カーボンナノチューブの形式で電界放出カソードを使用して多くの個別にアドレス可能なX線マイクロ源により与えられる、請求項1乃至8の何れか一項に記載のX線スキャナシステム。
【請求項10】
前記少なくとも一つの固定の電子ビーム放射カソードがカーボンナノチューブ技術で実現される、請求項1乃至9の何れか一項に記載のX線スキャナシステム。
【請求項11】
本質的にディスク形状の回転アノードを具備する回転アノードタイプの少なくとも一つのX線源を有するX線スキャナシステムであって、前記少なくとも一つのX線源の前記回転アノードが、焦点スポットの位置で前記回転アノードに衝突する入力電子ビームの方向に垂直な面に対して鋭角に傾斜した平面的なX線放射表面を持ち、固定の取付プレートに対して前記少なくとも一つのX線源の回転アノードの少なくとも一つの並進変位の動きを実施するための少なくとも一つの集積されたアクチュエータユニットと、通常の動作温度と前記焦点スポット位置での前記アノードの温度との偏差に依存して前記少なくとも一つの集積されたアクチュエータユニットにより実施される前記回転アノードの並進変位の動きのサイズ、方向、速度及び/又は加速度を制御するためのアクチュエータ制御ユニットと、前記回転アノードの並進変位の動きの方向と反対の方向に前記電子ビームを偏向する電場及び/又は磁場を生成するための少なくとも一つの偏向手段と、前記固定の取付プレートに対して前記回転アノードの前記並進変位からの結果的な前記焦点スポット位置の偏差が補償されるように、電場及び/又は磁場の強さを調整するための偏向制御ユニットとを有する、X線スキャナシステム。
【請求項12】
前記少なくとも一つの集積されたアクチュエータユニットは、電場が印加されるとき機械的ストレス又は歪みを生成するピエゾクリスタルアクチュエータ又は電気的モータにより与えられる、請求項11に記載のX線スキャナシステム。
【請求項13】
前記アノードの並進変位の動きが、前記アノードの傾斜角の方向に直線的な変位線に沿って動く、請求項11又は12に記載のX線スキャナシステム。
【請求項14】
本質的にディスク形状の回転アノードを持つ各X線源を具備する回転アノードタイプの2つ以上のX線源を有するX線スキャナシステムであって、これら回転アノードの各々が、焦点スポットの位置でそれぞれの前記回転アノードに衝突する入力電子ビームの方向に垂直な面に対して鋭角に傾斜した平面的なX線放射表面を持ち、固定の取付プレートに対して各X線源を動かすことにより少なくとも一つの並進変位の動きを実施するための少なくとも一つの集積されたアクチュエータユニットと、
互いに対して前記2つ以上のX線源の位置での少なくとも一つの並進変位の動きを実施するための少なくとも一つの他の集積されたアクチュエータユニットと、前記回転アノードの並進変位の動きの方向と反対の方向に前記電子ビームを偏向する電場及び/又は磁場を生成するための少なくとも一つの偏向手段と、
前記X線源の回転アノードから放射されるX線放射により放射されたX線検出器に対するそれぞれのX線源の焦点スポット位置の偏差が補償されるように電場及び/又は磁場の強さを調整するための偏向制御ユニットとを有し、前記偏差は、前記固定の取付プレートに対する前記回転アノードの並進変位からである、X線スキャナシステム。
【請求項15】
通常の動作温度と前記焦点スポット位置での前記回転アノードの温度との偏差に依存して前記少なくとも一つの集積されたアクチュエータユニットにより実施されるそれぞれの回転アノードの並進変位の動きのサイズ、方向、速度及び/又は加速度を制御するためのアクチュエータ制御ユニットを有する、請求項14に記載のX線スキャナシステム。
【請求項16】
前記アクチュエータ制御ユニットは、走査されるべき対象の領域のサイズに依存して互いに対して2つ以上のX線源の焦点スポットの位置における並進変位の動きのサイズ及び/又は方向を制御する、請求項15に記載のX線スキャナシステム。
【請求項17】
前記アノードの並進変位の動きが、前記アノードの傾斜角の方向に直線的変位のラインに沿って行く、請求項14乃至16の何れか一項に記載のX線スキャナシステム。
【請求項18】
互いに対して特定のX線源の焦点スポット位置を調整するための並進変位の動きが、前記X線スキャナシステムが具備する回転ガントリのローターに対して軸方向及び/又は半径方向に直線的変位ラインに沿って行く、請求項14乃至17の何れか一項に記載のX線スキャナシステム。
【請求項19】
前記X線源は、前記回転ガントリのローターに対して接線方向及び半径方向に前記焦点スポット位置の調整を可能にするベローズシステムにより接続される2つの部分からなる単一の真空ケース内に位置される、請求項14乃至18の何れか一項に記載のX線スキャナシステム。
【請求項20】
これらのX線源により共有される共通の電子ビーム放射カソードに対して最も近いX線源が、風車タイプのブレードアノードを持つ、請求項14乃至19の何れか一項に記載のX線スキャナシステム。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8b】
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【公表番号】特表2011−520233(P2011−520233A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508034(P2011−508034)
【出願日】平成21年5月4日(2009.5.4)
【国際出願番号】PCT/IB2009/051814
【国際公開番号】WO2009/136349
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】