説明

アパーチャにおける粒子流れの制御

2つの貯留容器14,15の間にあるアパーチャ10での粒子18の流れは、粒子18をアパーチャ10内での流体17中に浮遊させて、粒子18を流体17中において高電場領域と低電場領域との間で電気泳動的に輸送するように、アパーチャ10を通る電位差を印加して、流体17を粒子18とともにアパーチャ10を通って高圧貯留容器14から低圧貯留容器15へ輸送するように、アパーチャ10を通る圧力差を印加して、アパーチャ10を通る電位差及び/又は圧力差を調整し、アパーチャ10の内部での粒子18の平行移動(translation)に関する正確な制御を達成することによって制御される。これにより、速度および変位の正確な制御が可能になり、アパーチャでの電位および圧力差に関する慎重なコマンドを用いて、アパーチャを通って一方の貯留容器から他方へ溶液中での測定した粒子配送が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、粒子または放射線を検出、測定または制御するための、粒子感受性または放射線感受性のシステムに関し、そして、粒子流れの精密な測定、例えば、材料の反応、転位(translocation)および凝集(aggregation)のきめ細かい制御を達成するために、小型のアパーチャを通る粒子流れの操作に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノスケールの粒子の輸送を制御し、こうした粒子の特性を決定する能力は、分子生物学、生物化学、バイオテクノロジー、遺伝学、医学、ナノテクノロジーの分野において有用である。
【0003】
文献(DuBlois and Wesley, "Sizes and Concentrations of Several Type C Oncornaviruses and Bacteriophage T2 by the Resistive-Pulse Technique", JOURNAL OF VIROLOGY, Aug. 1977, p. 227-233)には、ナノパー(Nanopar)カウンタ、即ち、ナノスケールの粒子を測定するように構成したコールター(Coulter)カウンタが記載されている。このカウンタは、アパーチャを通る電位差および圧力差の影響下で、アパーチャを通過するある一定サイズの粒子の量を電気泳動的に測定する能力を有する。しかしながら、記載したデバイスは、アパーチャでの電圧および圧力を選択的に変化させて、粒子の速度および変位を制御し、その結果、機器の感度を増加させたり、個々の粒子変位制御を可能にするといった能力を欠いている。
【0004】
米国特許第6004443号は、毛細管での自由液体電気泳動の際、サンプル分散を検出し、圧力誘起の流れと電気浸透の流れとの間で不均衡を設定することによって分散を補正することによって、分離コラムでのサンプル分散を制御する方法を教示する。この改善した毛細管電気泳動方法は、毛細管中の粒子の正確な制御を可能にするものであり、媒質が毛細管中で最適に分離される点で有利である。しかしながら、粒子の分離は、一方の貯留容器から他方へというものではなく、さらに、粒子を一方の貯留容器から他方へ拡散させるという提案はない。また、1つの貯留容器における凝集または反応のための粒子の制御が、この方法で達成されていない。
【0005】
米国特許第7279883号は、マイクロ加工技術を用いて製造される革新的な小型コールターカウンタを開示する。カウンタは、粒子をデバイスの導管に通過させるマイクロまたはナノ流体システムを組み込んでおり、デバイスのインピーダンスが粒子の性質に従って変化して、粒子の測定が可能になる。この製造技術は、あるサンプルでマルチサイズの導管を同時に採用することが可能になり、1つの溶液中で多くの異なる粒子の検出が可能になる。しかしながら、このデバイスは、誘起または電気浸透による粒子流れの正確な制御が可能ではないため、その用途では粒子検出に限定される。
【0006】
米国特許第7077939号は、膜に埋め込まれた単一のナノチューブにおいて電気泳動と圧力の組合せを利用した、粒子制御および検出の方法を開示する。しかしながら、この方法は、粒子の速度および変位を正確に制御するために、圧力および電流の両方のリアルタイム調整が可能でない。また、粒子の電気的検出のためのアパーチャとしてのカーボンナノチューブの使用は、測定に影響を与える。カーボンナノチューブは、本来、高い導電性を有しており、それ自体、それが形成するアパーチャの電気的特性を左右する。従って、粒子が通過したときのアパーチャの電気的特性の小さな変化は、カーボンナノチューブの存在によって隠れてしまう。
【0007】
米国特許第4331862号は、異なる流速で異なるサイズおよび濃度の粒子を利用して、血液粒子カウンタを較正する方法を教示する。しかしながら、この較正方法は、電位およびアパーチャサイズの変数の制御を含んでいない。従って、この方法は、その用途ににおいて流速、粒子サイズおよび粒子濃度が、変化できる唯一の変数であるプロセスに限定される。
【0008】
国際出願PCT/EP2005/053366号は、粒子及び/又は電磁放射線の検出、測定または制御のために調整することが可能である調整可能な弾性(elastomeric)アパーチャを開示する。開示したデバイスは、十字形状にプレカットした弾性材料シートの貫通によって最も典型的に製造される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、アパーチャを通る電位差および圧力差を組み合わせて、マイクロおよびナノ流体応用におけるナノスケール粒子の運動の正確な制御を開発することによって、先行システムの不具合を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、2つの貯留容器の間にあるアパーチャにおける粒子流れを制御する方法が提供される。該方法は、粒子をアパーチャ内の流体中に浮遊させること、粒子を流体中の高電位領域と低電位領域との間で電気泳動的に輸送するように、アパーチャを通る電位差を印加すること、流体を粒子とともに、アパーチャを通って高圧貯留容器から低圧貯留容器へ輸送するように、アパーチャを通る圧力差を印加すること、アパーチャの通過前、及び/又は通過中、及び/又は通過後の粒子を監視すること、アパーチャを通る電位差及び/又は圧力差を調整して、アパーチャ内部での粒子の平行移動(translation)に関する正確な制御を達成すること、を含む。
【0011】
電気泳動は、流体媒質中において高電位場から低電位場への浮遊粒子流れを達成するための公知の手法である。しかしながら、本発明は、こうした手法と、圧力差の印加とを組み合わせて、アパーチャを通って高圧貯留容器から低圧貯留容器への流体輸送を行い、その結果、粒子の平行移動に関する正確な制御を達成している。本発明は、最新のエレクトロニクスの能力を活用して、圧力差および電位に関する精密な測定および正確な制御、そして、アパーチャを通る粒子の運動を測定、制御および操作するための電流の厳密な決定を適用している。圧力差および電位を変化させることによって、アパーチャを通過する粒子の数を制御し測定することが可能であり、その結果、厳密な数の粒子を反応に配送し、溶液中の粒子を分離することができる。
【0012】
本発明の好ましい実施形態において、アパーチャを通る電位差及び/又は圧力差は、アパーチャを通る粒子の平行移動の際に調整され、粒子の速度を制御する。その結果、粒子サイズ、速度、粒子電荷、ゼータ電位(Zeta-potential)及び/又は濃度に関する精密な測定が可能になる。
【0013】
本発明の好ましい実施形態において、アパーチャを通る電位差及び/又は圧力差は、貯留容器の一方に向けてアパーチャを通る厳密な必要量の粒子の配送を制御するように調整される。これにより、粒子が一方の貯留容器から他方へ制御された方法で平行移動できるように、粒子流れ制御が可能になる。こうした制御手法は、厳密な必要量の粒子を貯留容器に配送するために、そして、流体媒質での粒子の拡散および貯留容器での粒子の凝集を制御するために使用できる。
【0014】
本発明の一実施形態において、粒子の速度、電荷及び/又はゼータ電位は、アパーチャを通って印加される電位差及び/又は圧力差に応じて決定される。
【0015】
本発明の一実施形態において、粒子の粒子サイズは、アパーチャを通って印加される電位差及び/又は圧力差に応じて決定される。
【0016】
本発明の一実施形態において、流体中の粒子濃度は、アパーチャを通って印加される電位差及び/又は圧力差に応じて決定される。
【0017】
本発明の一実施形態において、流体中の粒子濃度は、特定の期間にアパーチャを通過する粒子の量を監視することによって決定される。
【0018】
本発明の一実施形態において、流体中の粒子濃度は、(i)異なる圧力条件下でアパーチャを通過する粒子の量、および(ii)異なる圧力条件下でアパーチャを通過する、既知の粒子濃度の流体中の粒子の量を監視することによって決定される。
【0019】
本発明の一実施形態において、流体中の粒子は、事前に較正され、アパーチャのサイズは、事前較正した粒子に対する、アパーチャを通って印加される電位差及び/又は圧力差の影響に従って決定される。
【0020】
本発明の一実施形態において、流体中の粒子は、異なるタイプのものであり、粒子の少なくとも1つのタイプの識別は、粒子がアパーチャを通過する際、アパーチャを通って印加される電位差及び/又は圧力差の影響に従って決定される。これにより、アパーチャを通過する際、異なる粒子を識別することができる。
【0021】
本発明の一実施形態において、流体中の粒子は、異なる電荷のものであり、異なる電荷の粒子は、粒子に対する、アパーチャを通って印加される電位差及び/又は圧力差の異なる影響に従って、互いに分離される。
【0022】
本発明の一実施形態において、第1極性の電位差がアパーチャを通って印加されると、流体中で粒子を一方向に電気泳動的に輸送するようになり、そして、第2極性の電位差がアパーチャを通って印加されると、流体中で粒子を前記一方向とは反対の方向に電気泳動的に輸送するようになる。こうして前記第1および第2極性の電位差の印加を変化させて、アパーチャを通る粒子の転位(translocation)を制御及び/又は監視する。
【0023】
本発明の一実施形態において、粒子は、時間を基準として粒子の少なくとも1つの位置を示す出力を供給する監視プローブによって監視される。監視プローブは、好ましくは、蛍光顕微鏡法、ナノ粒子追跡分析法、他の顕微鏡ベースのイメージング、位相分析光散乱法、および近赤外化学イメージングのうちの1つを利用している。
【0024】
本発明の一実施形態において、粒子の凝集の程度は、アパーチャを通って印加される電位差及び/又は圧力差に応じて決定される。
【0025】
本発明の一実施形態において、予め決定した量の粒子が、アパーチャを通って印加される電位差及び/又は圧力差に応じて、ある反応に配送される。
【0026】
本発明の一実施形態において、粒子は、検出した粒子を示す出力を供給する監視プローブによって監視される。監視プローブは、好ましくは、蛍光顕微鏡法、質量分析法、X線分光法、原子吸光分光法、赤外分光法、近赤外分光法、ラマン分光法、静的レーザ光散乱、動的レーザ光散乱、位相分析光散乱、ナノ粒子追跡分析法、および表面プラズモン共鳴のうちの1つを利用している。
【0027】
本発明の一実施形態において、流体の粘性は変化しながら、粒子は監視される。さらに、本発明は、アパーチャサイズ、およびアパーチャを通る圧力差の組合せを確立し、マイクロおよびナノ流体応用にとって正確な量の体積流量の配送をもたらすように構成してもよい。
【0028】
本発明の他の態様によれば、アパーチャにおける粒子流れを制御するための電気泳動システムが提供される。該システムは、高圧貯留容器と、
低圧貯留容器と、
これらの間に延びる壁であって、高圧貯留容器から低圧貯留容器へ延びるアパーチャを規定する壁と、
アパーチャ内の流体中に浮遊した粒子を、高電位場領域と低電位場領域との間で電気泳動的に輸送するように、アパーチャを通る電位差を印加するための電極手段と、
流体を粒子とともに、アパーチャを通って高圧貯留容器から低圧貯留容器へ輸送するように、アパーチャを通る圧力差を印加するための加圧手段と、
アパーチャを通る電位差及び/又は圧力差を調整して、アパーチャ内での粒子の平行移動に関する正確な制御を達成するための調整手段と、を備える。
【0029】
本発明の他の態様によれば、アパーチャでの粒子流れを制御する方法が提供される。該方法は、粒子をアパーチャ内での流体中に浮遊させること、粒子を流体中の高電場領域と低電場領域との間で電気泳動的に輸送するように、アパーチャを通る電位差を印加すること、アパーチャでの流体の温度を調整して、アパーチャ内での粒子の平行移動に関する正確な制御を達成すること、とを含む。
【0030】
本発明の他の態様によれば、アパーチャでの粒子流れを制御する方法が提供される。該方法は、粒子をアパーチャ内での流体中に浮遊させること、粒子を流体中の高電場領域と低電場領域との間で電気泳動的に輸送するように、アパーチャを通る電位差を印加して、出力電流を発生すること、該電流を調整して、アパーチャ内での粒子の平行移動に関する正確な制御を達成すること、とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明をより良く理解するために、例として添付図面を参照する。
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気泳動システムを図示する。
【図2】時間に対する電流のグラフであり、こうした電気泳動システムの使用で得られる代表的な測定値の軌跡を示す。
【図3】時間に対する電流のグラフであり、電流−時間の測定値を拡大表示するシステムの能力を示す。
【図4】本発明の1つの可能性ある応用での電気泳動システムの使用における3つの位相A,B,Cを図示し、粒子流れ操作および分離の原理を示している。
【図5】本発明の他の可能性ある応用での電気泳動システムの使用における2つの位相A,Bを図示し、アパーチャを通る転位を制御するためにシステムがどのように使用できるかを示している。
【図6】本発明の他の可能性ある応用での電気泳動システムの使用を図示し、システムが凝集を操作する能力を示している。
【図7】本発明の他の可能性ある応用での電気泳動システムの使用を図示し、システムが反応を制御する能力を示している。
【図8】時間に対する圧力差(P1−P2)および時間に対する電流のグラフであり、異なる濃度での圧力軌跡および電流軌跡を示すもので、システムが溶液中の粒子の濃度を決定する能力を示している
【図9】既知の濃度の粒子の較正により、粒子の濃度を計算するための圧力の使用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、本発明の1つの実施形態を構成する電気泳動システムを図示する。該システムは、上部高圧貯留容器14と下部低圧貯留容器15との間に延びるアパーチャ10を規定する基板壁11を含み、流体17を収容する。上部貯留容器14と基板壁11との間および基板壁11と下部貯留容器15との間にシール16が設けられ、流体17が貯留容器14,15から流出しないようにしている。流体17に加えて、上部貯留容器14は、溶液中に浮遊した粒子18を収容し、そして上部電極12と、上部圧力ポート16とを含む。
【0034】
下部貯留容器15は、溶液中に浮遊した粒子18を収容し、そして下部電極13と、下部圧力ポート29と、ダイヤフラム19とを含む。ダイヤフラム19は、必須ではないが、流体17を圧力ポート29近傍にあるガスから分離する好ましい実施形態である。流体−ガス分離の他の方法が当業者に知られており、こうした配置の代わりに使用できる。
【0035】
基板の材料は、これに限定されないが、金属、例えば、チタン、銅、シリコン、アルミニウム、鋼、またはこれらの組合せ;ポリマー、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ゴム(rubber)、熱可塑性プラスチック、またはこれらの組合せを含んでもよく、そして、それ自体は公知であるが、所望の表面性質のために追加された適切なコーティングを備えた上記材料の全てを含んでもよい。アパーチャ10は、基板材料に適用可能なものとして当業者に知られている多くの方法によって製造できる。これらの製造方法は、これに限定されないが、アブレーション、融解、エッチング、パンチング、ドリル加工、プロービング(probing)、鋳造(casting)、化学気相成長、スピンヒーティングなどを含む。
【0036】
上部圧力ポート16は、配管を介して上部貯留容器14内の圧力を制御する上部圧力レギュレータ20と接続される。レギュレータ20への圧力供給は、真空容器から、大気または加圧タンク、またはこれらの組合せまでにでき、レギュレータ20は、上部貯留容器14内の圧力を任意の所望のレベルに調整可能である。圧力ゲージ27が、上部貯留容器14内の圧力を監視する。レギュレータ20は、真空容器の下限から圧力タンクの上限まで、使用者が望む任意の圧力を供給するように設定できる。
【0037】
本発明の一実施形態において、レギュレータ20は、一定の真空または一定の圧力に手動で設定可能であり、または通気孔に開放できる機械的レギュレータである。そして、レギュレータ20は、当業者に知られているように、上部貯留容器14での圧力をレギュレータ20のエラー限界内で、この設定圧力に制御することになる。
【0038】
本発明の他の実施形態において、レギュレータ20は、電子回路であり、通信ライン25を経由してコンピュータ22内のソフトウエアプログラムによって制御される。本実施形態では、使用者は上部貯留容器14の圧力を選択または設定できる。コンピュータ22は、当業者に自明なように、この設定圧力と圧力ゲージ27の測定値との差に基づいて制御信号を生成できる。この制御信号は、通信ライン25を経由してレギュレータ20に送信でき、レギュレータ20は、上部貯留容器14の圧力を所望の圧力に変更するように適宜調整する。
【0039】
下部圧力ポート29は、上部圧力ポート16と上部圧力レギュレータ20との接続と同様に、配管を介して下部圧力レギュレータ21と接続される。上部貯留容器の圧力制御の場合のように、下部圧力レギュレータ21は、所望の圧力に手動で設定可能であり、または、コンピュータ22からの通信ライン26を経由して電子制御可能である。レギュレータ21はまた、一定の真空または一定の圧力に接続可能であり、あるいは大気と通気可能である。下部貯留容器15での圧力は、圧力ゲージ28によって監視される。
【0040】
本発明の一実装例では、電極12の電位は、通信ライン24を経由してコンピュータ22によって制御される。本発明の他の実装例では、電極12の電位は、手動で制御される。実装例に拘わらず、通信ライン24を経由して電極12に流れる電流量は、コンピュータ22によって監視、記録される。
【0041】
同様にして、電極13の電位は、手動で設定され、あるいは通信ライン23を経由してコンピュータ22によって制御され、あるいはグランドに接続される。本発明の一実装例では、コンピュータ22は、通信ライン23での電流を監視、記録する。
【0042】
国際公開第2006/063872号に記載されているように、電位差が電極12,13の間に印加された場合、電極12,13の間に電流が生ずるようになる。同じ電流が、通信ライン23,24を流れることになる。当業者に明らかなように、国際公開第2006/063872号に記載されているように、粒子18がアパーチャ10を通過するとき、アパーチャ10の電気的特性が変化して、これは電極12,13の間および通信ライン23,24を通る電流を変化させる。この電流変化は、イベントと称され、国際公開第2006/063872号に記載されているように、アパーチャ10のサイズ、電極12,13間の電位差、粒子18のサイズ、アパーチャ10を通る粒子18の速度を含む、多くの変数に依存している。
【0043】
図2のグラフは、上述のような所定の変数セットで粒子がアパーチャを通過するときの、典型的な電流−時間プロファイル100を示す。全ての変数が一定のままであれば、粒子がアパーチャ10を通過するときのイベント101,102,103での電流軌跡は、形状、持続時間104および振幅105の点で同一になる。しかしながら、上述した変数のうち変化する幾つかは、イベントでの軌跡の形状を変化させるようになる。例えば、当業者に明らかなように、電極12,13を通る電位差が変化すると、軌跡の振幅105が増加または減少するようになる。
【0044】
本発明の一実施形態において、粒子18は、上述したように、電極12,13を通る電位差を印加することによって電気泳動により、アパーチャ10を通って移動する。粒子18の生じた運動の方向は、電極12,13間の電位差の極性に依存することになる。
【0045】
本発明の他の実施形態において、流体17は、上述した方法によって上部貯留容器14と下部貯留容器15との間に圧力差を印加することによって、アパーチャ10を通過させられる。アパーチャ10を通る流体17の流れ方向は、より高い相対圧力を有する上部貯留容器14から、より低い相対圧力を有する下部貯留容器15への方向になる。流体17がアパーチャ10を通過するとき、粒子18をアパーチャ10を通って流体の流れ方向に輸送する。
【0046】
本発明の他の実施形態において、圧力印加による粒子18の輸送は、粒子の濃度を計算するために用いられる。
【0047】
本発明の一実施形態において、アパーチャ10を通る粒子18の流れは、貯留容器14,15を通る圧力差と電極12,13を通る電位差との組合せによって制御される。
【0048】
本発明の一実施形態において、アパーチャ10を通る粒子18の速度は、貯留容器14,15を通る圧力差および電極12,13を通る電位差を制御することによって制御される。
【0049】
さらに、本発明の一実施形態において、粒子の平行移動は、貯留容器14,15を通る圧力差および電極12,13を通る電位差を制御することによって、アパーチャ10を通じて厳密に制御される。
【0050】
当業者に明らかなように、所定のデータ収集装置では、収集の精度は、所定のイベントについて記録したデータポイントの数によって決定される。本発明の一実施形態において、データ収集装置は、1秒当たり100000データポイント、または100kHzのレートでを記録するようになる。こうして粒子18がアパーチャ10を0.001秒で通過した場合、データ収集装置は、前記イベントの1000ポイントを記録することになる。粒子18の速度が減少して、アパーチャ10を0.01秒で通過した場合、同じデータ収集装置は、前記イベントの10000ポイントを記録することになり、これにより記録の精度が高くなる。
【0051】
当業者に明らかなように、データ収集装置の限界に対して測定値の振幅を増加させることによって、より高精度の測定値が取得できる。アナログ・デジタル(A/D)変換器が、電位または電流をアナログからデジタル信号に翻訳し、コンピュータで記録可能にするありふれたデバイスである。A/Dは、0〜5V,0〜−10V,−5〜5V,−10〜10V,0〜5mA,0〜10mAなどの典型的なアナログ入力範囲を有する。この入力範囲は、デバイスの変換精度を表す。例えば、典型的な16ビットA/Dは、入力信号が変換される65536ビットの範囲を有する。従って、0〜5Vの入力範囲では、16ビットデバイスが、5/65536または76.3マイクロボルト/ビットの増分で記録可能になる。こうして入力信号の振幅が、例えば0.25Vである場合、A/Dは、0.25/0.0000763または3276ビットを記録装置に送給することになる。0.25の振幅信号のより高精度の測定値を得るためには、信号処理の分野での一般的な手法が、信号を増幅することである。例えば、0.25Vのアナログ信号を2.5Vに増幅した場合、A/Dは、32765ビットを記録装置に送給することになり、これにより測定値の精度を10倍増加できる。
【0052】
図3は、電極12,13間の電位差を増加することと、粒子流れを遅くするように圧力差を変化させることとの組合せが、電流−時間軌跡100に対して可能性ある効果を有することを図示している。2つの類似した粒子18が、異なる速度かつ異なる電位でアパーチャ10を通過させられた場合、より低い電位(ΔV1)および大きな速度を持つ粒子は、アパーチャ10を通過する際、振幅108および持続時間107を持つイベント軌跡106を生成する。より小さな速度でより高い電位(ΔV2)でアパーチャ10を通過させられた同一の粒子18が、振幅108より著しく高い振幅110および持続時間107より著しく長い持続時間111を持つイベント軌跡109を生成する。こうして第1に所定のイベントについてより多くのデータポイントを収集することによって、第2に本段落で議論したように信号を増幅することによって、アパーチャ10を通過する際、粒子18の測定精度の増加が可能になる。
【0053】
本発明の重要な任意の特徴が、アパーチャを通る圧力差および電位差を変化させる能力を使用者に提供し、その結果、アパーチャ10を通過する粒子の測定精度を増加させることは相応に理解されよう。
【0054】
本発明の重要な任意の特徴が、特定の測定値において物理的に拡大表示する能力を使用者に提供することは相応に理解されよう。
【0055】
本発明の重要な任意の特徴が、イベント軌跡での小さな差に基づいて、類似の粒子での小さな物理的変化を測定する能力を使用者に提供することは相応に理解されよう。システムは、高精度の軌跡を収集することが可能であるため、使用者は、類似の粒子間の小さな差を識別することが可能になる。
【0056】
本発明の重要な任意の特徴が、異なるサイズおよび電荷の粒子を識別する能力を使用者に提供することも相応に理解されよう。デバイスの測定精度により、使用者は、異なる粒子の軌跡を識別することが可能になる。
【0057】
本発明の重要な任意の特徴が、同じサイズのアパーチャ10を用いて、一定の電位傾斜および圧力傾斜の下でのイベント軌跡を相関させる能力を使用者に提供することも相応に理解されよう。システムの制御可能なパラメータを一定に維持した場合、イベント軌跡100は特定の粒子について較正可能であり、粒子特徴(signature)定義付けが容易になる。
【0058】
本発明の他の重要な任意の特徴が、アパーチャ10の孔サイズを特徴付ける能力を使用者に提供する。図3を参照して、同じ濃度の同じ粒子18が一定の圧力および電位傾斜でアパーチャ10を通過させられた場合、イベント軌跡106の振幅109および持続時間108を変化できる唯一のパラメータは、アパーチャ10のサイズである。こうしてあるイベントの特定の振幅および持続時間を、特定の粒子および特定の溶液での特定の粒子濃度、そして特定の圧力勾配、特定の電位勾配について、特定のアパーチャ孔サイズに較正することが可能である。
【0059】
本発明の他の重要な任意の特徴が、異なる電荷を持つ粒子を分離する能力を使用者に提供する。図4を参照して、粒子40,41は、流体17中に浮遊している異なる電荷を持つ2つの異なるタイプの粒子である。上部貯留容器14に印加された圧力P1は、下部貯留容器15に印加された圧力P2より高く、その結果、流体17は、上部貯留容器14からアパーチャ10を通って下部貯留容器15に付勢される。この流れは、貯留容器間の圧力差(P1−P2)の関数である。流体17がアパーチャ10を通過する際、それと共に浮遊状態の粒子40,41を輸送する(図4A)。上述のように、電極12,13間に電位を印加することにより、粒子の電荷に従って、アパーチャ10を通る粒子流れを増加または減少させる。従って、比電荷(specific charge)の1つの粒子40が、流体17に起因してアパーチャ10を通過するとともに、他の比電荷の他の粒子41が電気泳動に起因して静止したままになるような電位30が存在する(図4B)。また、ある一定の電荷の1つの粒子40がアパーチャ10を一方向に通過し、異なる電荷の他の粒子41がアパーチャ10を他の方向に通過する電荷30も存在する(図4C)。異なる電荷の粒子40,41が、アパーチャ10を異なる方向に流れる場合、これらは溶液中で分離されることになる。
【0060】
圧力差がゼロになるように選択した場合、粒子の電荷およびゼータ電位は、当業者に明らかなように、関連するパルス持続時間から抽出可能である。この計算は、電気泳動が支配的である場合、単純なだけであり、従って、輸送時間が電気泳動移動度に直接に関連付けられる。電気泳動による駆動力を均等化するように圧力を変化させ、アパーチャを通る転位から粒子を実際に停止することは、粒子電荷を抽出する他の可能性ある方法である。
【0061】
本発明の他の応用が、一方の貯留容器から他方への粒子の転位を制御することである。図5は、貯留容器14,15の間で流体17中の粒子18の濃度差が存在する場合の動作中のシステムを示す。図5Aにおいて、圧力差P1−P2がゼロであり、自然拡散により、粒子50が、アパーチャ10を通って高い粒子濃度の領域52から低い粒子濃度の領域51から進行している。図5Bにおいて、圧力差P1−P2が正であり、流体17はアパーチャ10を通るように付勢されている。流体17は、高濃度の領域51から低濃度の領域52へ進行し、それと共に粒子50,53,54を運搬し、領域間の粒子の転位レートを増加させる。図5Bを参照して、拡散レートは、適切な電位30を電極12,13に印加することによってさらに増加させることができ、その結果、アパーチャ10を通る粒子50,53,54の速度を増強し、転位レートをさらに増加させるようになる。
【0062】
反対に、電極12,13間の電位30の極性が反転した場合、正味の効果は、アパーチャ10を通過する粒子の速度を減速させることになり、領域51,52間の粒子転位レートを減少させる。さらに、圧力差P1−P2が負である場合、流体17は、領域52から領域51へ流れるようになり、電極12,13間の電位30に応じて、粒子転位を反転させることができる。当業者に明らかになるように、圧力差P1−P2および電極12,13間の電位30の組合せの注意深い制御により、使用者は、高濃度領域51と低濃度領域52との間の粒子転位レートを制御することが可能になる。
【0063】
電圧を反転し、イベント周波数を測定することによって、拡散が監視/定量化できる。粒子が小さく、高速である場合、大きな粒子と比べて、アパーチャのエリアから遠くまでより速く拡散する。従って、反転電圧でのイベント周波数は、拡散定数および粒子サイズに比例して変化する。
【0064】
本発明の他の応用は、使用者が粒子の凝集を制御することが可能なことである。上述のように、本発明は、アパーチャ10を通る粒子の転位を慎重に制御し、測定する能力を有する。図6を参照して、粒子60が、互いに接触すると凝集(61)する傾向がある場合、本発明により、使用者は、凝集として利用可能な粒子60の量を慎重に制御することが可能であり、こうして凝集体61の制御が可能になる。凝集体は、電圧を反転させ、凝集体をアパーチャ10を通って下部貯留容器から上部貯留容器へ駆動することによって分析可能である。上部貯留容器での粒子は、下部貯留容器での粒子と同じである必要はないことに留意すべきである。上部貯留容器および下部貯留容器での粒子が同じでない場合、粒子60が上部貯留容器から下部貯留容器へ転位したとき、混合した凝集体が形成できる。
【0065】
本発明の他の応用は、測定した量の粒子についての反応への配送を可能にすることである。図7を参照して、アパーチャ10を通る流体17での粒子の移動が、上述のように、圧力差(P1−P2)および電極12,13間の電位30の組合せによって制御される。この方法では、粒子18は、粒子71を既に収容している貯留容器15に配送される。粒子71が粒子18と接触すると、粒子72を生成するようにして反応が起こる。各粒子72が、2つの粒子18と1つの粒子71との間の特異反応の結果である。当業者に判るように、粒子72を生成する反応のレートは、粒子71を収容する流体17への粒子18の配送レートによって制御可能である。こうして、測定した量の1つのタイプの粒子を他のタイプの粒子を収容する溶液に配送することによって、反応の制御が可能であることは理解されよう。
【0066】
圧力及び/又は電圧の反転を使用して、粒子の分析、及び/又は、そのサイズ及び/又は電荷の抽出が可能になる。
【0067】
本発明の他の応用が、粒子および粒子形成のリアルタイム観測を可能にすることである。図7を参照して、測定プローブ74が貯留容器15の壁を通って挿入され、粒子のリアルタイム観測を可能にする。こうしたプローブ74によって実施可能な測定は、これに限定されないが、蛍光分光法、質量分析法、X線分光法、原子吸光分光法、赤外分光法、近赤外分光法、ラマン分光法、静的レーザ光散乱、動的レーザ光散乱、位相分析光散乱、ナノ粒子追跡分析法、および表面プラズモン共鳴を含む。
【0068】
使用する測定テクニックに拘わらず、反応に関する情報が、測定プローブ74によって、測定を解明し、測定に関連したデータを保存する測定装置75に配送される。例えば、粒子72が、ある一定の条件の下で他の粒子18を取り込んで、粒子73になる場合、プローブ74を通じて適用される検出および測定テクニックは、この形成を検出し、使用者に報告することが可能になる。こうして、粒子での変化を時間に関して特徴付ける測定データを提供することが可能である。また、流体17中での粒子71,72,73のブラウン運動を、上述した方法によってプローブ74を通じて観測し、測定することも可能である。
【0069】
本発明の1つの可能な応用では、図7での粒子18は、血液中のウイルス71の集合へ測定した量が配送される抗体であってもよい。そして、プローブ74は、ウイルス71に対する抗体の効果を測定することが可能になる。
【0070】
上述したように、本発明の一例が、アパーチャを通る粒子の量を時間に関して決定する能力を有する。これにより、使用者は、アパーチャを通る粒子の量を期間とともに測定することによって、溶液中の粒子濃度を決定することが可能である。溶液の流れレート(flow rate)が既知である場合、溶液中の粒子濃度は、アパーチャを通過した粒子の量を、ある一定の期間だけアパーチャを通過した流体の体積で除算することによって計算できる。溶液の流れレートが未知である場合、粒子の濃度は、既知の濃度の較正用粒子を用いて計算できる。
【0071】
本発明の更なる応用では、使用者は、測定した量の溶液流れを、ある期間だけアパーチャを通じて配送する能力が提供される。図1を参照して、ある期間だけアパーチャを通過する粒子18の数、あるいは粒子流れレートは、下記パラメータによって決定される。
1)貯留容器14,15の間の圧力差P1−P2
2)電極12,13の間の電位差
3)流体17での粒子18の濃度
4)溶液中での粒子18のタイプまたは極性
5)アパーチャ10の孔サイズ
【0072】
図8を参照して、列挙したパラメータをシステムにおいて一定に維持した場合、電流データ軌跡は、ある一定の期間だけアパーチャを通過する粒子の同じ量のイベント84を検出すべきであるということになり、これは当業者に明らかであろう。溶液中で既知の粒子濃度について、代表的な圧力差80−時間および電流軌跡81−時間を図8に示している。圧力差80が安定状態まで上昇すると、電流軌跡81でのイベントが周期的で安定になる。こうして図示した時間ウインドウ83では、粒子の濃度が既知である場合、溶液の流れレートは、アパーチャ10を通過する粒子の数(軌跡81でのイベント数)を計数することによって計算できる。粒子の数は、溶液中の粒子濃度で除算して、時間ウインドウ83において圧力差80での流量を決定する。流れレートは、流量を、時間ウインドウ83の期間で除算することによって決定される。
【0073】
同じ圧力プロファイルを同じ溶液での未知の濃度に適用した場合、システムは、電流軌跡82でのイベントの数を計数することによって、この濃度を決定することができる。流れレートは、軌跡81によって既に較正されているため、イベント数を流れレートで除算することによって、新しい濃度が決定できる。
【0074】
同様な方法で、圧力パルス、例えば、図8中の圧力差80の合計持続時間だけ、一方の貯留容器から他方へ移送された流体の合計量を計算することも可能である。圧力パルスの合計持続時間だけアパーチャを通過する既知の濃度の粒子の数を計数することによって、移送された流体の量が決定できる。そして、同じ圧力パルスを、同じ溶液中の新たな未知の粒子濃度に適用した場合、この溶液の粒子濃度は、該濃度でのイベントまたは粒子の数を計数することによって決定できる。
【0075】
さらに、使用者は、システムを較正するのに使用した粒子とは異なる粒子の溶液中の粒子濃度を決定することも可能である。異なる粒子を使用した場合、電流軌跡でのイベントの持続時間および振幅は、較正に使用したものと異なることになる。しかしながら、1つのイベントが、アパーチャ10を通過する粒子ごとに発生する。従って、イベントの大きさに拘わらず、粒子の存在はこうしたイベントによって説明される。従って、アパーチャを通過した粒子の数は決定でき、こうして粒子濃度は計算できる。
【0076】
上述した方法は、圧力に起因した粒子の転位レートが電気泳動に起因した転位レートより著しく大きい場合、普通に適用可能である。しかしながら、補正係数を導入し、電気泳動に起因した転位周波数を説明することが可能であり、その場合、これが、圧力に起因した転位レートと比べて顕著である。
【0077】
また、使用者は、システムを較正するのに使用した粒子とは異なる粒子の溶液中の粒子濃度を決定することも可能である。この場合、この方法は、少なくとも2つの異なる圧力で(1つは、好ましくはP=0である)較正用粒子のアパーチャを横切る転位レートを測定することをベースとしている。そして、同じ測定を、未知の濃度の粒子のサンプルについて繰り返す。そして、転位レート−圧力は、リニア関係としてプロットできる。そして、未知の濃度は、リニア関係の傾斜から計算できる。これは、フィットしたラインの傾斜が、関連する粒子濃度に比例しているため、可能である。この方法を説明する例を図9に示す。未知のサンプルの濃度を計算するためのこの方法は、電気泳動に起因した転位レートおよび圧力に起因した転位レートの両方を考慮しており、上述した方法よりも一般的である。
【0078】
本発明の他の応用は、アパーチャ10の孔サイズの特徴付けを可能にする(図1)。上述のように、特定の溶液17におけるある一定タイプの粒子18が、ある一定の圧力差(P1−P2)および電極12,13間の電位30とともに、所定のアパーチャサイズに関して、定義した期間83中に、ある一定量のイベント84を誘起する。アパーチャサイズが増加した場合、アパーチャ10を通る流れレートは増加することになり、従って、より多くのイベント84がシステムで観測される。こうして特定の動作条件下で、ある一定のイベントレートと、特定のアパーチャ孔サイズとを相関させることによって、アパーチャの未知のサイズが、予め設定した条件下でイベントの数によって識別可能である。
【0079】
本発明を上述した好ましい実施形態の観点から説明したが、これらの実施形態は例示に過ぎず、請求項はこれらの実施形態に限定されないと理解すべきである。当業者は、添付の請求項の範囲内に入るものとして熟考される開示内容の観点から、変更および代替を行うことが可能になる。本明細書で開示または説明した各特徴が、単独で、またはここで開示または説明した何れか他の特徴との適切な組合せで、本発明に組み込み可能である。例えば、何れの請求項の特徴は、何れか他の請求項の特徴と組み合わせてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの貯留容器の間にあるアパーチャ内またはアパーチャを通る粒子流れを制御する方法であって、
粒子をアパーチャ内の流体中に浮遊させることと、
粒子を流体中の高電位領域と低電位領域との間で電気泳動的に輸送して出力電流を発生するように、アパーチャを通る電位差を印加することと、
流体を粒子とともに、アパーチャを通って高圧貯留容器から低圧貯留容器へ輸送するように、アパーチャを通る圧力差を印加することと、
出力電流を測定することによって、アパーチャの通過前、及び/又は通過中、及び/又は通過後の粒子を監視することと、
アパーチャを通る電位差及び/又は圧力差を調整して、平行移動に関する制御を達成し、およびアパーチャ内部での粒子の測定に関する制御を達成することと、を含む方法。
【請求項2】
アパーチャを通る電位差及び/又は圧力差は、アパーチャを通る粒子の平行移動の際に調整され、粒子の速度を制御する請求項1記載の方法。
【請求項3】
アパーチャを通る電位差及び/又は圧力差は、貯留容器の一方に向けてアパーチャを通る厳密な必要量の粒子の配送を制御するように調整される請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
粒子の速度は、アパーチャを通って印加される電位差及び/又は圧力差に応じて決定される請求項1、2または3記載の方法。
【請求項5】
粒子の電荷及び/又はゼータ電位は、アパーチャを通って印加される電位差及び/又は圧力差に応じて決定される請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
粒子の粒子サイズは、アパーチャを通って印加される電位差及び/又は圧力差に応じて決定される請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
流体中の粒子濃度は、アパーチャを通って印加される電位差及び/又は圧力差に応じて決定される請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
流体中の粒子濃度は、特定の期間にアパーチャを通過する粒子の量を監視することによって決定される請求項7記載の方法。
【請求項9】
流体中の粒子濃度は、(i)異なる圧力条件下でアパーチャを通過する粒子の量、および(ii)異なる圧力条件下でアパーチャを通過する、既知の粒子濃度の流体中の粒子の量を監視することによって決定される請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
流体中の粒子は、事前に較正され、アパーチャのサイズは、事前較正した粒子に対する、アパーチャを通って印加される電位差及び/又は圧力差の影響に従って決定される請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
流体中の粒子は、異なるタイプのものであり、粒子の少なくとも1つのタイプの識別は、粒子がアパーチャを通過する際、アパーチャを通って印加される電位差及び/又は圧力差の影響に従って決定される請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
流体中の粒子は、異なる電荷のものであり、異なる電荷の粒子は、粒子に対する、アパーチャを通って印加される電位差及び/又は圧力差の異なる影響に従って、互いに分離される請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
第1極性の電位差がアパーチャを通って印加されると、流体中で粒子を一方向に電気泳動的に輸送するようになり、そして、第2極性の電位差がアパーチャを通って印加されると、流体中で粒子を前記一方向とは反対の方向に電気泳動的に輸送するようになり、こうして前記第1および第2極性の電位差の印加を変化させて、アパーチャを通る粒子の転位を制御及び/又は監視するようにした請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
粒子は、時間を基準として粒子の少なくとも1つの位置を示す出力を供給する監視プローブによって監視され、監視プローブは、好ましくは、蛍光顕微鏡法、ナノ粒子追跡分析法、他の顕微鏡ベースのイメージング、位相分析光散乱法、および近赤外化学イメージングのうちの1つを利用している請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
粒子の凝集の程度は、アパーチャを通って印加される電位差及び/又は圧力差に応じて決定される請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
予め決定した量の粒子が、アパーチャを通って印加される電位差及び/又は圧力差に応じて、ある反応に配送される請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
粒子は、検出した粒子を示す出力を供給する監視プローブによって監視され、監視プローブは、好ましくは、蛍光顕微鏡法、質量分析法、X線分光法、原子吸光分光法、赤外分光法、近赤外分光法、ラマン分光法、静的レーザ光散乱、動的レーザ光散乱、位相分析光散乱、ナノ粒子追跡分析法、および表面プラズモン共鳴のうちの1つを利用している請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
流体の粘性は変化しながら、粒子は監視される請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
アパーチャ内またはアパーチャを通る粒子流れを制御するための電気泳動システムであって、
高圧貯留容器と、
低圧貯留容器と、
これらの間に延びる壁であって、高圧貯留容器から低圧貯留容器へ延びるアパーチャを規定する壁と、
アパーチャ内の流体中に浮遊した粒子を、高電位領域と低電位領域との間で電気泳動的に輸送して出力電流を発生するように、アパーチャを通る電位差を印加するための電極手段と、
流体を粒子とともに、アパーチャを通って高圧貯留容器から低圧貯留容器へ輸送するように、アパーチャを通る圧力差を印加するための加圧手段と、
出力電流を測定するための手段と、
アパーチャを通る電位差及び/又は圧力差を調整して、平行移動に関する制御を達成し、およびアパーチャ内部での粒子の測定に関する制御を達成するための調整手段と、を備えるシステム。
【請求項20】
アパーチャを通る圧力差を監視するための圧力検出手段をさらに備える請求項19記載のシステム。
【請求項21】
アパーチャを通る電位差を監視するための電位検出手段をさらに備える請求項19または20記載のシステム。
【請求項22】
アパーチャでの粒子を計数するための計数手段をさらに備える請求項19、20または21記載のシステム。
【請求項23】
アパーチャでの粒子を監視するための検出手段をさらに備える請求項19〜22のいずれかに記載のシステム。
【請求項24】
アパーチャでの粒子を検出し、時間を基準として粒子の少なくとも1つの位置を示す出力を供給する監視プローブをさらに備え、
監視プローブは、好ましくは、動的レーザ光散乱、レーザドップラー速度測定、位相分析光散乱法、近赤外分光法、近赤外化学イメージングのうちの1つを利用している請求項19〜23のいずれかに記載のシステム。
【請求項25】
アパーチャを通る流体の流れを監視するための流れ監視手段をさらに備える請求項19〜24のいずれかに記載のシステム。
【請求項26】
調整手段は、高周波圧力パルスを流体に印加するようにした請求項19〜25のいずれかに記載のシステム。
【請求項27】
調整手段は、アパーチャを通る電位差の極性を反転させるようにした請求項19〜26のいずれかに記載のシステム。
【請求項28】
アパーチャでの流体の温度を調整して、アパーチャ内部での粒子の平行移動および測定に関する制御を達成することを含む請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
出力電流を測定するための手段は、データ収集装置を備える請求項19〜27のいずれかに記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−518268(P2013−518268A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550431(P2012−550431)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051087
【国際公開番号】WO2011/092218
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(507196516)アイゾン・サイエンス・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】IZON SCIENCE LIMITED
【Fターム(参考)】