説明

アファニゾメノン・フロスアクアエ(AphanizomenonFlosAquae)の抽出物、ならびに同抽出物を含む栄養、美容および薬剤組成物

本発明は、微細藻類アファニゾメノン・フロスアクアエ(Aphanizomenon Flos Aquae Aquae Ralfs ex Born.& Flah.Var.flos aquae)(クラマス湖産AFA)の抽出物およびその生理活性成分、特に、複合体c−フィコシアニン/フィコエリスロシアニン(その発色団フィコビオロビリンを含む)として決定される、AFAフィコシアニン、AFAフィトクロムおよびマイコスポリン様アミノ酸(MAA)、同成分を含む栄養、美容および薬剤組成物を、体細胞もしくは組織の急性もしくは慢性の炎症および酸化変性または無制限の細胞増殖を伴う疾患、障害または病態の予防または治療においての使用のために提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗酸化、抗炎症および抗腫瘍特性に恵まれる、微細藻類アファニゾメノン・フロスアクアエ(Aphanizomenon Flos Aquae Aquae Ralfs ex Born.& Flah.Var.flos aquae)(クラマス湖産AFA)の抽出物、およびその生理活性成分を提供する。さらに、本発明は、その抽出物またはその活性成分、特に、そのC−フィコシアニン/フィコエリスロシアニン複合体(complex)を有する、AFAフィコシアニン、AFAフィトクロムおよびマイコスポリン様アミノ酸(MAA)、の有効量を含む、栄養、美容および薬剤組成物を、単独でまたはその藻類に含まれる補因子(cofactors)との組み合わせで、体細胞もしくは組織の急性もしくは慢性の炎症および酸化変性または無制限の細胞増殖を伴う、疾患(diseases)、障害(disturbances)または病態(conditions)の予防または治療における使用のために提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
藍藻の多種類のうちの1つである、アファニゾメノン・フロスアクアエ(AFA)は、オレゴン州南部のアッパークラマス湖において豊富に見出される。それは、少数の食用微細藻類の1つで、広範にわたるビタミンおよび有機ミネラル、タンパク質およびアミノ酸、オメガ3脂肪酸を含み、真に注目すべき栄養プロファイルの発現を可能とする最適な環境において野生で生育する限りにおいて、スピルリナおよびクロレラなど、池で生育する他の微細藻類と異なる。それは、クロロフィルおよびカロテンなど、抗酸化特性に恵まれた一定数の栄養物を含むことも知られている。最近数年間における多様な研究は、微細藍藻スピルリナのフィコシアニンが保有する顕著な抗酸化および抗炎症特性を示してきた、より近年、AFA未精製抽出物のin vitroにおける抗酸化特性が報告されている(Benedetti S., Scoglio S., Canestrari F.ら、「Antioxidant properties of a novel phycocyanin extract from the blue-green alga Aphanizomenon Flos Aquae」、Life Sciences、第75巻、2004年、2353〜2362頁)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Benedetti S., Scoglio S., Canestrari F.ら、「Antioxidant properties of a novel phycocyanin extract from the blue-green alga Aphanizomenon Flos Aquae」、Life Sciences、第75巻、2004年、2353〜2362頁
【発明の概要】
【0004】
発明の開示
本発明は、クラマス湖産微細藻類(アファニゾメノン・フロスアクアエ(Aphanizomenon Flos Aquae Aquae Ralfs ex Born.& Flah.Var.flos aquae))の活性成分、すなわち、
a)i)C−フィコシアニン(C−PC)およびフィコエリスロシアニン(PEC)―以下、「AFAフィコシアニン」と表す―からなり、その特異的な発色団フィコビオロビリンを含む、フィコビリソーム;ii)AFA特異的なフィトクロム(本明細書では「AFAフィトクロム」と表す)を含み、AFA藻類に固有の、特異的なフィコビリタンパク質複合体;
b)MAA(マイコスポリン様アミノ酸)、クロロフィル、およびカロテン
を濃縮する、その藻類の抽出物を提供する。
【0005】
その抽出工程は、異なる成分の濃度を変更することを調節することができる、遠心分離およびサイズ除外分離技術を使用する。異なる成分の適当な濃度を保証するために、第1段階は、以下のステップ:
a)採取直後のAFA藻類を冷凍し解凍するか、または、出発物質が乾燥AFA粉末である場合は、水で希釈したAFA粉末を超音波で分解して、細胞を破砕する;
b)ステップa)の生成物を遠心分離し、沈殿物(細胞壁分画の大半を保持する)から上清(細胞質分画の大半を保持する)を分離する;
c)水溶性成分(基本抽出物)を含む上清を回収する、
に従い、水性抽出物(本明細書では基本抽出物と表す)を調製することである。
【0006】
その上清を限外濾過膜に通すことにより、水溶性分画をさらに濃縮することができる。特に、抽出物を水溶性成分中に濃縮して調製するために、上述の一次水性抽出物(基本抽出物)を、好ましくは、30kDaのカットオフ分子量を有する膜を用いることによって、サイズ除外限外濾過にかけ、これにより残留物(retentate)(抽出物Bと表す)および濾液を得る。抽出物Bは、高濃度のAFAフィコシアニン(C−PC+PEC)およびAFAフィトクロムを含む。興味深いことに、MAAが、用いられるカットオフサイズを大きく下回る分子量を有するにもかかわらず、その残留物は、MAAの濃度も上昇させる。これに対し、その濾液は、高濃度のカロテン、クロロフィル、および必須脂肪酸を有する。
【0007】
その抽出物の親油性成分は、主に、カロテン、クロロフィル、およびアルファリノレン酸(18:3n−3)により表され、これらすべてが、AFA藻類において比較的高量で存在する。これらの成分は、部分的にその上清(基本抽出物)中に保持されるが、大部分は、上記のステップb)における遠心分離から生じる沈殿物中に存在する。次いで、この沈殿物は、上述の脂溶性物質の凝縮を意図するさらなる抽出工程にかけることができる。その脂溶性物質の濃縮は、以下のステップ:
a)乾燥させた沈殿物を100%エタノール溶液中に懸濁させ、ホモジナイズし暗所、室温において、24時間定常攪拌下にホモジネートを保持する;
b)結果として得られる懸濁液を、4℃、3000rpmで5分間(5’)、遠心分離する;
c)上清を回収する;
d)場合によって、ステップa)からc)に従い、ペレットを第2のエタノール抽出にかける;
e)上清を乾燥させて、脂溶性濃縮物(抽出物C)を得る
に従い、エタノールベースの抽出により得ることが好ましい。
【0008】
こうして得られた脂溶性成分が富化された分画を、次いで、基本抽出物または限外濾過からの濾液に添加し、その抽出物中に既に存在する生理活性物質の効果を高める、可能な限り高濃度の脂溶性物質を得る。
【0009】
本発明による抽出物は、栄養補助物質、薬剤および/または美容製品の形態で提供することができる。基本抽出物は、極めて顕著な抗酸化および抗炎症特性を保持するので、一般的に好ましい。
【0010】
その抽出物の抗酸化特性を保持するまたは高める成分は、単離され、そして物理化学的に特徴付けられている。AFAフィコシアニン(C−PC/PEC)の特定の種類;発色団フィコビオロビリン(PVB);特異的なAFAフィトクロム;マイコスポリン様アミノ酸(MAA)であるポルフィラおよびシノリンが、単独でまたは様々な組み合わせで、最も活性を生じ、そしてその抗酸化活性は、クロロフィル、ベータカロテン、プロビタミンAカロテノイド、カンタキサンチンなどのキサントフィル類カロテン、ビタミンおよびミネラルなど、他の成分によりさらに上昇した。示された抗酸化活性に加えて、基本抽出物および精製済みAFAフィコシアニンともに、シクロオキシゲナーゼ2(COX−2)酵素を顕著に阻害することがわかり、次いで、AFA−PCおよび他の抗炎症分子をともに含むことによって、in vivoの動物モデルにおける炎症を防止および/または抑制しうることがわかった、基本抽出物について、この特性が確認された。さらに、腫瘍細胞株について調べたところ、AFAフィコシアニンは、高度の抗増殖活性を有することを示した。
【0011】
したがって、本発明は、活性成分として、クラマス湖産微細藻類の抽出物またはその単離およびその精製済み活性成分、を含む栄養、美容または薬剤組成物をさらに含む。その活性成分は、特に、a)AFAまたは他の任意の微細藻類中に存在する、AFAフィコシアニン(C−PC/PEC)の特定の種類;b)PEC;c)フィコビオロビリン(PVB);d)AFAフィトクロム;e)AFA中に存在する、または他の任意の藻類供給源からの、マイコスポリン様アミノ酸(MAA)であるポルフィラおよびシノリン;場合によって、クロロフィル、ベータカロテン、プロビタミンAカロテノイド、キサントフィル類カロテン、カンタキサンチン、ビタミンおよびミネラルから選択される補因子(co-factors)または補助剤(coadjuvants)と組み合わせて、また、場合によって、栄養的、美容上または薬剤的に許容できる媒体(vehicles)または賦形剤(excipients)と組み合わせる、を指す。本発明による組成物を調製するために、上述の異なる液体抽出物は、それ自体として用いるかまたは凍結乾燥、噴霧乾燥、およびその他などの手法により乾燥させることができる。
【0012】
好ましい実施形態において、その栄養組成物は、病原体に対する天然の防御を増強または支援する、代謝、炎症および加齢過程により産生される酸化種を除去するのに、有用な、錠剤、カプセル、飲料の形態における栄養補助食品である。別の好ましい実施形態において、その美容組成物は、皮膚科のまたは加齢関連の病変(affections)の予防または治療に用いるための、乳剤、ゲル、ローション、粉末、洗眼液、特に、軟膏またはクリームなど、また、皮膚老化ならびに皮膚および毛髪の光酸化変性を予防する光保護剤として、局所用調製物の形態である。
【0013】
さらに好ましい実施形態において、その薬剤組成物は、錠剤、カプセル、小袋、シロップ、坐薬、バイアルおよび軟膏の形態であり、そしてフリーラジカルを媒介とする病変(pathologies)、炎症または腫瘍の予防または治療に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】AFAの細胞溶解物の成分とシネコシスチス属PCC6803のその成分との比較を示す図である。
【図2】抽出物の分光光度グラフを示す図である。
【図3】PCB発色団の分光光度走査を示す図である。
【図4】光保護化合物の分子構造を示す図である。
【図5】精製試料の波長と吸光度の関係を示す図である。
【図6】MAA標準物質とMAA抽出物のクロマトグラムを示す図である。
【図7】精製済みMAAのUVスペクトルを示す図である。
【図8】血漿試料中におけるMDA(マロンジアルデヒド)レベルの減少を示す図である。
【図9A】PCおよびPCBの、濃度とRBCのMDA阻害との関係、ならびに濃度と血漿のMDA阻害との関係を示す図である。
【図9B】AFA−PCが赤血球のAAPH誘導溶解を阻害する能力を有することを表す、時間と溶血との関係を示す図である。
【図10】異なるPC濃度に伴うAAPH添加後のFL蛍光消失の反応速度、およびPC濃度と蛍光減衰曲線(AUC)の線形相関を示す図である。
【図11】異なるビリン濃度に伴うFL消失の反応速度、およびPCB濃度に対するAUCの正の相関を示す図である。
【図12】トロロックス、GSH、AA、PCおよびPCBの線形回帰分析を、ORAC値に関して示す図である。
【図13】フィコシアニンおよびフィコシアノビリンの、濃度と蛍光阻害の関係を示す図である。
【図14】PCおよびPCBの細胞吸収を評価するための、フィコシアニンおよびフィコシアノビリンの、濃度と蛍光阻害の関係を示す図である。
【図15】AFAフィトクロムのバンドを示す図である。
【図16】光吸収特性を示す図である。
【図17】AFAフィトクロム量のMDAレベルの用量依存的減少を示す図である。
【図18】MAAの、AAPHが誘発する赤血球溶血における用量依存的な低減を示す図である。
【図19】MAAのMDA形成の用量依存的な低下を示す図である。
【図20】MDAの形成阻害を示す図である。
【図21】共役ジエン形成の阻害を示す図である。
【図22】異なるPC濃度による酸化の阻害を示す図である。
【図23】AFA抽出物中のPC濃度とMDAレベルとの関係を示す図である。
【図24】水溶性および脂溶性抽出物の不在下(ブランク)および存在下における、AAPHがもたらす相対蛍光強度の減衰を、基準となる標準物質トロロックスと比べて示す図である。
【図25】酸化/抗酸化状態に関して、MDA、GSH、レチノールについて得られた結果を示す図である。
【図26】血液試料を、酸化マーカー含量である、MDA、カルボニル、AOPPについての評価を示す図である。
【図27】総チオールの血漿レベルを示す図である。
【図28】血漿の総抗酸化状態を示す図である。
【図29】、AFA抽出物(水溶性部分、脂溶性部分)、純PC、およびPCBによる、COX−1およびCOX−2の阻害を示す図である。
【図30】カプサイシンによる、組織における血漿タンパク質の流出の結果として、炎症部位内に蓄積した着色剤エバンスブルーの分光光度法での吸収量により測定した、組織炎症レベルを示す図である。
【図31】SPによる、組織における血漿タンパク質の流出の結果として、炎症部位内に蓄積した着色剤エバンスブルーの分光光度法での吸収量により測定した、組織炎症レベルを示す図である。
【図32】AFA−PCが時間依存的抗増殖効果を有することを示す図である。
【図33】皮膚表面解析用のVISIOSCAN VC98を用いた検査を示す図である。
【図34】皮膚の弾力性試験結果を示す図である。
【図35】皮膚の湿潤性試験結果を示す図である。
【図36】皮膚の形状測定結果(しわの量または深さ)を示す図である。
【図37】皮膚の形状測定結果(しわの数および幅)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
AFA藻類フィコビリソーム(AFAフィコシアニン)の構造決定および特異的特性
無傷のシアノバクテリア細胞において、フィコシアニン(PC)は、機能的形態(αβ)6でフィコビリソームの内部に存在する(1)。その細胞の破砕後、タンパク質は、分析される生体に応じて、異なる凝集状態(単量体、二量体、三量体、六量体)に見出すことができる。クラマス湖産AFA藻類の場合、AFA抽出物中に含まれるPCおよび抽出物自体から精製されるPCの両方とも、PCの電気泳動解析は、タンパク質が、大半の場合、総分子量121000を有する、その三量体形態(αβ)3で見出されることを示している。モノマーαβは、約40000(18500のサブユニットα+21900のサブユニットβ)の分子量である。これとは別に、スピルリナから精製したPCに関する研究の大半が、タンパク質は、スピルリナ中において、約37500の分子量を有する単量体形態αβで見出され、したがって、AFAから精製したPCと比較して異なる凝集状態を示すことを示唆する。
【0016】
AFAフィコビリソームのクロマトグラフィー解析は、他のシアノバクテリア種におけると同様に、PCのαサブユニットが1つの補欠分子族に結合するのに対し、βサブユニットは2つの補欠分子族に結合することをも示している。その補欠分子族または発色団は、フィコシアノビリン(PCB)と呼ばれ、タンパク質の青色およびその抗酸化力の原因である(2)。
【0017】
AFAとスピルリナとの間の根本的な差異は、フィコビリソームの異なる構造に基づく。スピルリナに対して、クラマス湖産AFAのフィコビリソームは、色素アロフィコシアニンを含まず、スピルリナには欠如する構造的要素、すなわち、フィコエリスロシアニン(PEC)、に結合する色素cフィコシアニンのみを含む。PECは、今までのところ、限られた数のシアノバクテリア種中のみにおいて同定されている、光合成色素である(3)。PECは、PCの化学的構造と極めて類似する化学的構造を有し、会合して単量体および三量体を形成する2つのサブユニットαおよびβにより構成される。にもかかわらず、PCの各単量体がPCBの3分子に結合するのに対し、PECはPCBの2分子をサブユニットβに、また、フィコビオロビリン(PVB)の1分子をαサブユニットに結合させる固有の特性を有し、これが、その色素の紫色の原因となっている。
【0018】
クラマス湖産藻類のフィコビリソームは、特別に、cフィコシアニンおよびフィコエリスロシアニンの結合体により構成され、クラマス湖産AFA藻類のフィコビリソームのこの異なる性質的(qualitative)構造が、スピルリナおよび他の藍藻類からAFAを区別するさらに決定的な因子を追加する。
【0019】
図1は、AFAの細胞溶解物の成分を、別のよく知られたシアノバクテリアである、シネコシスチス属PCC6803のその成分と比較する。いずれのシアノバクテリアにおいても、フィコビリソームを表す青色バンドを見ることができるが、AFA藻類におけるフィコビリソームは、より低い分子量を示し、スピルリナなど一般的な微細藻類に対し、AFAフィコビリソームにおいては、アロフィコシアニンではなく、フィコシアニンのみが存在することを確認する。さらに、図1は、AFA中にフィコエリスロシアニンに典型的である明るい紫色のバンド(矢印により示す)も存在することを示し、これにより、クラマス湖産藻類のフィコビリソーム中におけるその存在を裏付ける。
【0020】
各青色バンドは、質量分析計に接続したHPLC(RP−HPLC−ESI−MS)によりさらに解析した。異なる保持時間により、フィコビリソームのタンパク質を分離し、その分子量に基づき同定した。得られた結果を、以下の表に示す。第1に、シネコシスチス属(表1)においては、フィコシアニン(28.2分におけるcpcAおよび28.9分におけるcpcB)およびアロフィコシアニン(30.7分におけるapcAおよび31.2分におけるapcB)がともに存在するのに対し、AFA(表2)においては、フィコシアニン(28.8分におけるcpcAおよび30.0分におけるcpcB)のみが存在することを観察することができる。第2に、AFAにおいては、シネコシスチス属中には存在せず、2つのビリンが付着したフィコエリスロシアニンのベータサブユニットに対応する分子量19469のタンパク質(25分におけるpecB)を同定した。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
この固有の構造が、そのフィコシアニンを濃縮するAFA藻類抽出物のより強力な抗酸化および抗炎症作用を説明するのに重要な要素であり、とりわけ、なぜ、精製済みAFAフィコシアニンが、スピルリナに由来するPCなど他のPCよりもさらに強力な(抗酸化および抗炎症試験がともに示すように、下記を参照のこと)結果となるかを説明するのに重要である。AFAフィコビリソームにおけるC−PCとPECとの間の結合は極めて強いので、既知の精製手法によっては分解することができない(下記を参照のこと)。したがって、精製済みAFA−PCは、複合体C−PC/PECにより構成される、精製済みAFAフィコビリソームとして表されるべきである。しかし、便宜上、この複合体を、「AFA−PC」またはPCと表す。
【0024】
精製手法(図2)
AFA−PCおよびその発色団PCBは、基本抽出物から出発して精製した。PCは、以下の通りに、乾燥AFA抽出物から精製した。
・ 500mgの抽出物を、50mlの100mMリン酸Na緩衝液pH7.4中に懸濁させる;
・ 4℃、2500rpmで10分間(10’)遠心分離する;
・ 上清を回収し、固体の硫酸アンモニウムを50%飽和まで添加する;
・ 試料を攪拌状態に保ちつつ、4℃で60分間タンパク質を沈殿させる;
・ 4℃、10000rpmで30分間遠心分離する;
・ 無色透明の上清を廃棄し、少量の5mMリン酸Na緩衝液pH7.4中に青色の沈殿物を再懸濁させる;
・ 同じ緩衝液に対して、4℃で一晩透析する;
・ 5mMのリン酸Na緩衝液pH7.4で平衡化した2.5×25cmのヒドロキシアパタイト製カラム(米国、カリフォルニア州、Bio−Rad Laboratories社製)内に透析済みPCを入れる;
・ リン酸Na緩衝液pH7.0のイオン強度を上昇(5〜150mM)させながら、試料を溶出する;
・ 分画を回収し、分光光度計により620nmおよび280nmにおける吸光度を読み取る;
・ Abs620/Abs280>4(純PCの指標)である分画をプールする;
・ 50%飽和の硫酸アンモニウムにより、4℃で1時間PCを沈殿させる;
・ 4℃、10000rpmで30分間(30’)遠心分離する;
・ 上清を廃棄し、150mMのリン酸Na緩衝液pH7.4中にPCを再び懸濁させる;
・ 同じ緩衝液に対して、4℃で透析する;
・ 精製済みPCをフラスコに移し、暗所中+4℃または−20℃で保存する。
【0025】
図2は、精製の結果として得られる抽出物の分光光度グラフを示す。精製済みPCは、実際、2つのサブユニットC−PCおよびPECを含む全フィコビリソームであるということがわかることができる。実際、C−PCの最大吸収は、図2の分光分析においてピークの頂点を表す、620nmであることが知られている。PECの最大吸収は、αサブユニット(フィコビオロビリン)について566nm、およびβサブユニットの2つのPCBについてそれぞれ593nmおよび639nmであることも知られている。3つの値すべては、実際、精製済みPCの分光光度パターンを構成する釣り鐘型ピークに含まれている。AFA藻類におけるC−PCとPECとの間の強い連結を考えると、PECと同様iC−PCも、精製済みPC抽出物中に必然的に存在する。これは、AFAに由来するPCが、大半の研究がなされてきた、スピルリナ由来のそれ(PC)を含む、他のシアノバクテリアのPCとは、構造および機能の両面で、顕著に異なることを意味する。特に、この差異は、AFA PCが、他の源に由来するPCと共通する一部分、すなわちC−PCと、、異なる一部分、PEC成分とを有するという点にあり、したがって、複合体C−PC/PECと関連する、その特性は新規であり、もっぱらAFA(および他の微細藻類に由来する類似のC−PC/PEC複合体)に起因する。
【0026】
AFAフィコシアニンの定量
純PCのモル濃度を測定するため、本発明者らは、三量体形態(αβ)3では770000M-1cm-1に等しい、620nmにおけるモル吸光係数εを用いた。1MのPC溶液が、620nmにおいて吸光値770000を有することを意味する。
【0027】
抽出物中のPC濃度を測定するため、本発明者らは、620nmにおいて70lg-1cm-1の比吸光係数E1%を用いた。これは、1%のPC(すなわち、1g/100ml)を含む溶液が、620nmにおいて70を吸収することを意味する。これらの計算によれば、基本抽出物中の平均PC含量は、80〜100mg/g DW(8〜10% DW)に等しいのに対し、抽出物B中の平均PC含量は、約360mg/g DW(36% DW)である。
【0028】
PCB発色団の精製(図3)
・ 500mgの抽出物を、50mlの蒸留済みH2O中に懸濁させる。
・ 4℃、2500rpmで10分間(10’)遠心分離する。
・ 藍色の上清を静かに移し、1%のトリクロロ酢酸でPCを沈殿させる。
・ 攪拌しつつ、暗所中4℃で1時間インキュベートする。
・ 4℃、10000rpmで30分間(30’)遠心分離する。
・ PCを含むペレットを回収し、メタノールで3回洗浄する。
・ 1mg/mlのHgCl2を含む10mlのメタノール中にそのペレットを再懸濁させる。
・ 暗所中42℃で20時間インキュベートし、PCからPCBを放出させる。
・ 2500rpmで10分間(10’)遠心分離し、タンパク質を除去する。
・ PCBを含む上清にβメルカプトエタノール(1μl/ml)を添加し、HgCl2を沈殿させる。
・ −20℃で24時間インキュベートする。
・ 4℃、10000rpmで30分間(30’)遠心分離し、白色の沈殿物を除去する。
・ 上清に10mlの塩化メチレン/ブタノール(2:1、v/v)を添加する。
・ 20mlの蒸留済みH2Oで洗浄し、3000rpmで10分間(10’)遠心分離する。
・ 上層を除去し、PCBを含む下層部分を回収する。
・ 15ml H2O中で、PCBを3回洗浄する。
・ 窒素下で乾燥させ、−20℃で保存する。
【0029】
結果として得られる分光光度走査は、PCBが、370および690nmにおいて2つの吸収ピークを生じることを示す。
【0030】
他のフィコシアニンとの比較におけるクラマス湖産藻類のフィコシアニンの抗酸化性の優位性
フィコシアニン(PC)は、すべての微細藍藻類の典型的な青色色素であるが、各特定の微細藻類において、異なる構造的および機能的特性を有する(22)。栄養補助食品および潜在的な天然薬剤として用いられるPCの源について、今までの研究は、スピルリナに焦点を合わせている。スピルリナのフィコシアニンは、肝臓(27)、呼吸器系(28)、および脳(29、30)などの異なる生理的領域に対する顕著な活性を伴う、抗酸化(23)および抗炎症(24、25、26)特性を有することを示している。クラマス湖産藻類のフィコシアニンなど他のフィコシアニンに関する研究の欠如を踏まえ、本発明者らは、AFA(クラマス湖産)藻類に由来する水性抽出物の抗酸化能を、微細藻類スピルリナ・プラテンシス(Spirulina platensis)に由来するPCを濃縮する液体抽出物である、製品Serum Bleu(商標)との関連で比較的に測定した。
【0031】
CuCl2により酸化され、2つの抽出物と共にプレインキュベートされた、血漿試料中におけるMDA(マロンジアルデヒド)レベルの減少を図8に示すが、ここでは、100nMのPC濃度における抽出物が、血漿脂質の酸化の阻害においてはるかに有効であり、同一の100nMのPC濃度におけるSerum Bleu(商標)がもたらす33%の阻害に対して89%のレベルに達するMDA形成の阻害を伴うことを、見ることができる。これは、同じPC濃度において、AFA抽出物の方が、スピルリナ抽出物よりも顕著にさらに強力であることを示す。このような差異は、2つの明らかで相補的な因子:a)2種類のPCの構造的ひいては機能的な多様性;b)フィトクロムの場合と同様、スピルリナなど他の微細藻類において、欠如する、またはMAAのように、さらに希少に存在する、さらなる抗酸化因子の抽出物中における存在、に帰することができる。しかしながら、C−PC(スピルリナ由来)に関連してAFA PCのより高い抗酸化力はまた、脂質過酸化に関する文献中で提示されるデータとの比較を通じても示される。
【0032】
血漿および赤血球の脂質過酸化
AAPHにより酸化したラット肝ミクロソーム上のその抗脂質過酸化特性について調べたところ、スピルリナ由来のC−PCは、TBARS(共役(conjugated)ジエン、MDA)の産生を、11.35μMのIC50で阻害した(23、Bhatら)。スピルリナ由来のC−PCは、AAPHにより誘導されたヒト赤血球溶解に対してもまた、RomayおよびGonzales(41)により調べられている:この場合のIC50は35μMであった。
【0033】
本発明者らは、AFA−PCおよびそのPCB両者が、a)CuCl2により酸化されたヒト血漿;b)AAPHにより酸化されたRBC(赤血球[red blood cells or erythrocytes])、におけるMDA形成を阻害する、同じ能力を調べた。本発明者らはまた、AFA−PCおよびPCBが、赤血球のAAPH誘導溶解を阻害する、能力をも調べた。前者の場合、健常志願者に由来するヘパリン添加血液を1500gでの10分間の遠心分離後に血漿試料を得た。PCまたはPCBの上昇する濃度(範囲:0.1〜1μM)の存在下において、PBS(対照)または100μM CuCl2と共に37℃で2時間インキュベートした血漿試料中における脂質酸化の程度が、535nmにおけるTBA反応性物質を測定することにより分析された(42)。赤血球に関しては、インフォームドコンセントの取得後に、健常志願者から静脈穿刺を経てヘパリン添加した血液試料を得た。赤血球(RBC)は、1500gでの10分間の遠心分離により単離し、PBSにより3回洗浄し、最後に、同じ緩衝液を用いて5%のヘマトクリットレベルまで再懸濁した。RBCは、PCまたはPCBの異なる濃度(範囲:0.1〜1μM)の存在下において、PBS(対照)または50mM AAPHと共に37℃で4時間インキュベートした。マロンジアルデヒド(MDA)を主とする、脂質過酸化指標としての、TBA反応性物質は、前記の通りに分析された(42)。簡潔に言うと、1mlの反応混合物を、250μlのTBA(0.67%)および100μlのH3PO4(0.44M)と共に95℃で1時間インキュベートし、次いで、150μlのTCA(20%)を添加した。遠心分離後、上清中の過酸化物含量を、MDAのモル吸光係数(OD535)を用いて決定した。
【0034】
図9Aに示す通り、PCおよびPCBは、ペルオキシルラジカル産生物質(generator)であるAAPHと共に37℃で2時間インキュベートしたRBC(赤血球)中における脂質過酸化の程度を、用量依存的に阻害し(各試験濃度について、p<0.05)(パネルA)、これと同時に、PCおよびPCBは、CuCl2と共に37℃で2時間インキュベートした試料中における金属誘導酸化から、血漿脂質を用量依存的に保護した(p<0.05)(パネルB)。いずれの阻害実験においても、IC50値は、PCおよびPCBに対する(スピルリナに由来するC−PCの11.35μMに対して)約0.140μMおよび0.160μMであった。
【0035】
本発明者らはまた、AFA−PCが赤血球のAAPH誘導溶解を阻害する、能力を調べた。図9Bが示す通り、AFA−PCは、(スピルリナに由来するC−PCに対する37μMのIC50に対して)わずか250nMのAFA−PCにより、50%を超える赤血球の溶解を、恒常的に(すなわち、1時間〜6時間にわたり)阻害することができる。
【0036】
試験の方法または濃度における一部の差異を考慮に入れるにせよ、いずれの場合においても、スピルリナに由来するC−PCを超えるAFA−PCの優位性は、真に注目すべきであり、IC50値における差異は、75〜150倍AFA−PCに有利である。Bhatら(23)による同じ研究で報告される通り、200μMのスピルリナC−PC用量により脂質過酸化が95%阻害される、という事実により、効力における差異のさらに大きな兆候を見ることができる。図9Aにおいて、本発明者らは、同程度の阻害を得るために、わずか1μMのAFA−PCが必要であること、すなわち200倍少ないことを見ることができる。これは、C−PCそれ自体と、AFA藻類およびその抽出物を特徴づけるC−PC/PEC複合体との間の顕著な差異が、唯一の異なる要素である、PECに正確に起因することを確認し、これにより、PECがそのままで極めて強力な分子であることを示す。
【0037】
加えて、PCのIC50は、PCBのIC50よりもわずかに低い。その最も主要な活性成分と考えられる、PCBが、一旦精製されしたがってより濃縮されれば、その活性成分であるそれの全分子よりも顕著に強力であるべきことを踏まえると、これは、いささか驚くべきことである。依然として極めて強力ではあるが、実質的にやや弱化しているという事実は、全PCにおいて、PCB自体よりも実質的にさらに強力でありうる他の因子が存在することを意味する。本発明者らは、全PCが、C−PCおよびそのPCB発色団のほかに、PCBおよびPVB(フィコビオロビリン)をともにその発色団として含む、PECを含むことを知る。したがって、本発明者らは、精製済みPCBと全PCとの間の効力における顕著な差異を創出する因子は、正確にPEC成分、特に、極めて強い抗酸化物質であると考えられる、そのPVB発色団であると考える。
【0038】
AFA−PCおよびそのPCBの抗酸化能(ORAC)の評価
ORAC(酸素ラジカル吸収能)法は、基準分子としてのトロロックス(ビタミンEの水溶性の類似体(analog))との比較においてその活性を測定し、純粋なおよび構成する物質の総抗酸化能を決定するのに広く用いられる(31)。しかしながら、それは、今まで、PCおよびPCBなど、シアノバクテリアに由来する純天然分子の抗酸化能を決定するのに用いられたことがない。
【0039】
ORACアッセイは、わずかな変更を伴うOuら(32)の方法を用いて、485nm励起および520nm発光(emission)でのFLUOstar OPTIMA蛍光分光光度計(ドイツ、BGM LABTECH社製)において、37℃で行った。簡潔に言うと、最終アッセイ混合物において、ペルオキシルラジカル産生物質としてAAPH(4mM)と共に、フルオレセイン(FL)(0.05μM)をフリーラジカル攻撃の標的として用いた。トロロックス(1μM)を対照標準として、また、リン酸緩衝液をブランクとして用いた。アッセイ混合物における試験化合物の濃度は、0.025μM〜2μMの範囲にあった。すべての物質を溶解し、75mMリン酸Na緩衝液pH7で希釈した。PCB溶液は、化合物をまずエタノール中に溶解し、次いで、その溶液をその緩衝液により所望の濃度にすることにより、調製した。すべての試料は、3重(triplicate)に行った。蛍光は、AAPHの添加後5分ごとに記録した。最終結果(ORAC値)は、試料とブランクとの間の蛍光減衰曲線(AUC)下の面積における差を用いて計算し、トロロックス当量として表した。
【0040】
ORAC値 = [(AUCsample−AUCblank)/(AUCtrolox−AUCblank)]×(モル濃度trolox/モル濃度sample
AA、GSH、PCおよびPCB濃度(x)に対するORAC値(y)の線形回帰分析は、相関係数により評価されるデータを十分に説明した。
【0041】
PCは、620nmでの励起時に647nmにおいて発光する水溶性の蛍光タンパク質であり、この固有の蛍光は520nmにおけるFL発光とは干渉せず、PCを反応混合物に添加した後に蛍光強度の変更は証明されなかった。AAPH添加後のFL蛍光消失の反応速度上のPCの効果は図10に報告され、PC濃度(0.025μM〜0.150μMの範囲)と蛍光減衰曲線(AUC)下の正味面積との間の線形相関を明確に示す(r=0.998、p<0.0001)。
【0042】
発色団PCBは、PCの鮮明な青色の原因であり、タンパク質からの放出後において、PCの場合と同様、FL蛍光に影響を及ぼさなかった、370nmおよび690nmにおける吸収の2つの特徴的なピークを示す。図11は、異なるビリン濃度に伴うFL消失の反応速度、およびPCB濃度(0.025μM〜0.150μMの範囲)に対するAUCの正の相関(r=0.995、p<0.0005)を示す。
【0043】
最後に、純PCおよびPCBが、ペルオキシルラジカルを直接に消失させる、能力を、よく知られた純抗酸化分子のそれと比較した。図12は、トロロックス、GSH、AA、PCおよびPCBの線形回帰分析を、ORAC値に関して報告する。これらのデータにより、本発明者らは、PCおよびPCBが最高のORAC値(それぞれ、20.33および22.18トロロックス当量)を有するのに対し、GSHおよびAAは、最低値(0.57および0.75)を示すことを見出した。ORAC試験においても、PCBおよびAFA−PC値が極めて類似する事実は、AFA−PCにおいてPECが果たす極めて重要な役割を確認する。
【0044】
引用した天然化合物に対して、ORAC値に関する参考文献は得られない。しかしながら、本発明者らの知る限り、ORAC活性(ORACFL)がFLを蛍光プローブとして用いて評価された、純抗酸化分子に関しては、PCBのORAC値(トロロックスμモル/PCB μモルかそれともトロロックスμモル/PCB mgとして表現される)が、文献中に最も高く見出される。例えば、Ouら(Ouら、2001)が、ORACFL法により異なるフェノール化合物の抗酸化能を決定し、見出された最高値は、7.28および6.76トロロックスμモル/化合物μモルであり、これは、相対ORAC値を、トロロックスμモル/試料μモルよりむしろ、トロロックスμモル/試料mgとして表せば、フラボノイド、クエルセチンおよび(+)−カテキンに対して、それぞれ、24.0および23.3トロロックスμモル/化合物mgとなるのに対し、一方、PCBに対して、ORACは、37.0トロロックスμモル/mgとなる。
【0045】
培養細胞上のAFAフィコシアニンとそのPCBの保護効果
基本抽出物から出発し、既に述べた手法に従い、本発明者らは、そのC−PC/PEC複合体を伴う、AFAフィコシアニンを精製し、培養生細胞上のその抗酸化特性を調べた。AFA−PCおよびPCB用量の増加とともにかまたは伴わずに、ジャーカット細胞(白血病Tリンパ球の不死化細胞株)に、500μM H2O2による酸化ストレスを与えた。H2O2に由来する酸化に続き、細胞内プローブ(ジクロロフルオレセイン)により放出される(emitted)蛍光を、H2O2によるインキュベーションの30分後に蛍光計により記録した(492nmにおける励起および520nmにおける発光)。細胞をAFA−PC(範囲:0.1〜10μM)および500μM H2O2と共に30分間インキュベートすることにより、本発明者らは、H2O2が誘発する細胞内蛍光の低減とともに、0.5μMのIC50、および10μMにおける100%阻害(非酸化細胞)を伴う、用量依存的な保護効果を観察する(図13)。
【0046】
C−PCおよびPECからなる、全PCの抗酸化特性は、C−PCに対してはフィコシアニビリン(PCB)であり、PECに対してはPCBおよびPVB(フィコビオロビリン)の両方である、その発色団に存在する。本発明者らは、C−PC発色団であるPCBを精製し、これをH2O2により酸化された培養細胞において調べた(範囲:0.1〜40μMのFCB)。この場合においてもまた、本発明者らは、0.5μMのIC50、および40μMにおける100%阻害(非酸化細胞)を伴う、用量依存的な抗酸化効果を観察する(図13)。
【0047】
試験濃度において、細胞内蛍光の増大がみられないという事実が示す通り、培養細胞を伴うがH2O2を伴わずに30分間インキュベートしたAFA−PCおよびPCB双方は、酸化効果を有さない。
【0048】
極めて重要なことは、PCおよびPCBの細胞吸収を評価するため、両化合物を細胞と共に2時間プレインキュベートし、その後、培地を洗浄して、任意の非吸収PCおよびPCBを除去し、H2O2により30分間細胞を酸化させたことである。図14が示す通り、細胞内蛍光の用量依存的な阻害がある。これは、細胞が、膜内または細胞質内に、両抗酸化分子をともに保持しうることを意味する。
【0049】
これは、2つの分子の抗酸化活性が、in vivoにおいて治療用に有効である可能性が極めて高いことが分かるので、極めて重要な知見である。
【0050】
精製済みスピルリナC−PCに関してなされた研究が、細胞の細胞質ゾルへ浸透するその能力を既に分かっていた(43)のに対し、これは、精製済みPCBが細胞内に、入りそして保持される能力の最初の実証である。さらに、これは、同じ能力が、特異なAFA−PC(C−PC/PEC複合体)について示された最初である。試験濃度において、細胞内蛍光の増大がみられないという事実が示す通り、細胞と共に2時間インキュベートされたPCおよびPCBはともに、酸化効果を生じなかった。
【0051】
酸化作用物質および抗酸化物質を同時に添加した、図13において、本発明者らは、PCおよびPCBが与える細胞保護の程度が同等であることを認めるのに対し、図14から示される通り、吸収試験において、PCBの抗酸化効果は、やや速く(PCに対するIC50が4.2μMであるのに対し、PCBに対するIC50は1.9μM)、また、やや高い(PCによる90%未満の保護に対して、PCBによる90%を超える保護)という結果となる。これは、PCと比べて、PCBの吸収度が、(PCBのより精製された性質を踏まえれば、予測されうる通り)実際にやや高いことを意味する。にもかかわらず、吸収度は、いずれの場合においても、抗酸化物質および酸化作用物質の同時の添加とともに与えられる保護の程度に極めて近いことを踏まえれば、いずれの化合物に対して真に注目すべきである。
【0052】
他方では、この生細胞試験は、全PCの抗酸化特性に対するPEC成分の重要な関連性についての前の検討材料(consideration)を確認する。図13および14がともに示す通り、精製済みの全PCが、精製済みPCBと同じ極めて高い抗酸化力を有し、その濃度が、全PCの一部としてのその濃度と比べて、精製後、さらに高い、という事実は、PCBがPCの唯一の活性作用物質ではなく、実際、1つまたは複数の他の作用物質が(PVBから出発して)、PC中に存在することなら何であれ、それらは、PCB自体よりも顕著により強力である可能性が極めて高い、ということを示唆する。
【0053】
抽出物をその中に含まれるAFAフィコシアニンよりも有効とする相乗作用因子の新規な決定
本発明者らは、C−PC/PEC複合体を有する、AFA−PCが、スピルリナなどの他の藻類に由来する純C−PCよりも顕著により強力であるということを見てきた。しかし、クラマス湖産藻類中には、その主要な抗酸化および抗炎症性の本質(principle)である、フィコシアニン/フィコエリスロシアニン複合体と比べて、基本抽出物から出発する、その抽出物の優位性を説明する他の因子が存在する。
【0054】
このような差を説明する主な因子は、AFA藻類の光制御系を構成するより広範なフィコビリタンパク質複合体を構成する第2の要素、すなわち、絶対的には、その藻類において今まで見出された最も強力な抗酸化の本質である、その特異的な発色団である。クラマス湖産藻類が特に富む、「マイコスポリン様アミノ酸」またはMAAと呼ばれる、すべての藻類に典型的な特異的な分子、ならびに、クロロフィル、ベータカロテンおよびカロテノイド、に加えて各種のビタミンおよびミネラルなど、その抗酸化作用および抗炎症作用が既に知られている一連の栄養分子中に、さらなる因子を同定することができる。
【0055】
A)クラマス湖産藻類に典型的な固有のフィトクロムである、「AFAフィトクロム」の同定
フィトクロムは、植物が光を検出するのに用い、可視スペクトルの赤色および遠赤色領域における光に対して感受性のある、光受容体、色素である。これらは、(日周期のリズム(rythms)を通して)開花の調節、発芽およびクロロフィルの合成を含む、植物における多くの異なる機能を果たす。AFAにおけるこのフィトクロムの固有の種類の存在が、光合成過程においてCフィコシアニンを補うよう他のシアノバクテリアが通常用いる他のフィコビリタンパク質、すなわち、アロフィコシアニン、の欠如により説明しうるので、後者(クロロフィルの合成)は、AFA藻類との関連で特に重要である。一方、本発明者らが見たように、クラマス湖産藻類におけるアロフィコシアニンの位置はPECにより占められるが、特に、クラマス湖産藻類が、高い光回収能力を必要とする非熱帯環境において生育することを考えると、PECのみでは十分でないと思われ、したがって、AFA藻類は、そのより高い必要性を独自のフィトクロムで調和させていると思われる。
【0056】
本明細書において初めて検出され記載される、AFAフィトクロムは、独自の特異な構造を有するが、フィトクロムの一般的な群(family)を代表するものとしてこれを定義することも依然として可能である。長年にわたり、異なる種類のフィトクロムが植物において見出されており、それは、異なるフィトクロム遺伝子(例えば、コメにおいて3種類、トウモロコシにおいて6種類)を有するだけでなく、各植物、または少なくとも各植物群の、特異的なフィトクロムの、その大半で、顕著に異なるタンパク質成分、したがって構造を有する。にもかかわらず、これらがすべてフィトクロムであるのは、これらがすべて、フィトクロモビリンと呼ばれる、同じビリタンパク質を、光吸収発色団として、用いるからである。この発色団は、フィコシアニンの発色団であるフィコシアノビリンと類似し、4つのピロール環(テトラピロール)の開鎖からなる単一のビリン分子であることを特徴とする。すべてのフィトクロムの活性本質は、異なる種間におけるいくつかの変異を考慮に入れるにせよ、その異なる一般構造において、なおもこの発色団のままであるので、各単一フィトクロムの特性を他のフィトクロムにも帰することができる(44)。より具体的に、その正常のPr状態において、このビリタンパク質は、650〜670nMの最大値で吸光するが、赤色光により活性化されると、730nMの最大吸収でPfrに変換される。
【0057】
AFAフィトクロムの説明と精製
AFAフィトクロムは、相対的に固有の構造を有する一方で、赤色/遠赤色スペクトルにおける光を吸収するその発色団として、ビリタンパク質を有する。その構造および活性を確立するため、本発明者らは、以下のプロトコールによりフィトクロムを精製した。
【0058】
・ 1gの抽出物を10mLのリン酸1K緩衝液、pH7.0中に懸濁させる。
【0059】
・ その半分の体積とともに、1分間にわたるボルテックスを2回行う。
【0060】
・ 細胞を2%トリトンX100とともに35分間(35’)インキュベートする。
【0061】
・ 28000rpmで16〜18時間遠心分離する。
【0062】
・ スクロース密度段階勾配法により、上清を回収する。
【0063】
・ スイングアウトローターを用いて、150000gで12時間、勾配分離物をスピンする。
【0064】
・ −20℃で保存する。
【0065】
フィトクロムが、約1Mのスクロースで可視化される、強い橙色の溶解物バンドに対応するのに対し、フィコビリソームは、約0.75Mに位置する。2つのバンドのこの関係はまた、三量体AFA−PCの約4倍である、その藻類中に存在するフィトクロムの分子量についても、信頼できる指標を与える。後者(三量体AFA−PC)が121Kdであるので、本発明者らは、AFAフィトクロムのMWを約480Kdにおいてあらかじめ確立することができる(図15)。
【0066】
その光吸収特性について調べたところ、フィトクロムは、平衡状態におけるPr(赤色光吸収)形態およびPfr(遠赤色光吸収)形態にそれぞれ対応する、672nMおよび694nMにおいて2つのピークを伴い吸光することを示す(図16)。
【0067】
AFA中に含まれるフィトクロムの量について、本発明者らの最初の評価は、以下の予備的な結果を与える:2mg/g(または0.2% DW)。抽出物について、基本抽出物中では濃度が約0.5%に上昇し、抽出物B中では約1%に上昇した。
【0068】
抗酸化活性
精製済みAFAフィトクロムは、極めて強力な抗酸化物質であることを示した。100μMにおける酸化作用物質CuCl2と共にヒト血漿試料を2時間インキュベートすると、チオバルビツール酸との反応後535nmにおける分光光度計により測定(TBA試験)される、脂質過酸化の後期副生成物(a late byproduct)である、マロンジアルデヒド(MDA)レベルの上昇が生じる。AFA藻類から抽出したAFAフィトクロム量を増加させながら(2〜16nM)100μMのCuCl2と共に37℃で2時間、血漿をインキュベートすると、MDAレベルの極めて強力な用量依存的減少を観察することができる(図17)。実際、本発明者らは、わずか16nMのAFAフィトクロムにより、対照に近いMDAレベルを伴う、ほぼ完全な脂質過酸化の阻害を得る。3.6nMのIC50が、PCBに対して得られるIC50を45倍下回ることが注目される。本明細書に記載のフィトクロムが、AFA−PCと比べて、基本抽出物に観察される、より高い抗酸化活性の原因であることは疑いない。
【0069】
B)クラマス湖産藻類の「マイコスポリン様アミノ酸」(MAA)の同定
MAAは、アミノ酸またはそのアミノアルコールを置換している、窒素原子で接合した(conjugated)シクロヘキセノンまたはシクロヘキセニミン発色団を特徴とする、水溶性の化合物である(図4に示す)。
【0070】
それは、310〜360nmの範囲の最大吸収および約300の平均分子量を有する(4)。MAAは、選択的にUV光子の吸収の後、光化学反応を生じることなしに無害な熱の形態で吸収された放射エネルギーの散逸を受けて、これによって、少なくとも部分的に、屈光性(phototropic)生物の成長および光合成を、保護する、受動的なサンスクリーンである。UV遮蔽において役割を有するほか、いくつかのMAAがまた、生物中において光力学的に産生される活性酸素種のスカベンジャーとして作用する抗酸化特性をも示すことが明らかにされている(5)。
【0071】
本発明者らは、藍色植物門のアファニゾメノン・フロスアクアエおよびその抽出物におけるMAAの存在を調べた。今日まで報告されるシアノバクテリアの大半は、その主要MAAとしてシノリンを含むが、本発明者らは、少量のシノリンに加え、アファニゾメノン・フロスアクアエ中の主要MAAとして、ポルフィラ334のまれな存在を見出した。
【0072】
【化1】

【0073】
MAAの抽出、精製、および定量
MAAは、既に報告されているように抽出された(6)。簡潔に言うと、45℃の水浴中に2.5時間インキュベートすることにより、2mlの20%(v/v)含水メタノール(HPLCグレード)中で20mgのAFA粉末または20mgの抽出物を抽出した。遠心分離(5000g;米国、パロアルト、Beckman社製、GS−15R型遠心分離機)後、上清を蒸発乾燥させ、2mlの100%メタノール中に再溶解し、2〜3分間ボルテックスし、10000gで10分間遠心分離した。上清を蒸発させ、HPLCにおける分析用に同じ容量の0.2%酢酸中か、または、抗酸化特性の評価用に200μlのリン酸緩衝液(PBS)中に抽出物を再溶解させた。試料は、HPLC分析、または抗酸化特性試験(下記を参照のこと)にかける前に、0.2μm孔径のシリンジフィルター(イタリア、ミラノ、VWR International社製)により濾過した。
【0074】
AFAおよびその抽出物のMAAは、334nmの最大吸収を有する。MAAのさらなる精製は、文献(7)に従い、Alltima C18型カラムおよびガード(イタリア、ミラノ、Alltech社製、4.6×250mm内径、5μm充填剤)を装備したHPLCシステム(日本、東京、日本分光株式会社製)を用いて行われた。検出波長は330nm、移動相は流量1.0ml分-1における0.2%酢酸であった。MAAの同定は、ドイツ、エアランゲン、フリードリヒアレクサンダー大学、Manfred Klisch博士のご厚意により提供された、ポルフィラ334、シノリンおよびパリシンを主に含む、アマノリ属種およびオバクサ属種などの標準品と吸収スペクトルおよび保持時間を比較することにより行った。試料の吸収スペクトルは、シングルビーム分光光度計(米国、パロアルト、Beckman社製、DU640型)の200〜800nmにおいて測定した。生スペクトルは、コンピュータに転送し、MAAのピーク解析のために数学的に処理された。
【0075】
MAAは、前述のようにAFA試料および抽出物から部分的に精製された。45℃で2.5時間の20%メタノールによる試料の抽出は、この手順により、少量の光合成色素(620nmにおけるフィコシアニンなど)も抽出されたにせよ(以下の図の破線を参照のこと)、334nmにおいて顕著なピーク(MAA)を生じた。MAA試料は、タンパク質および塩を除去するために、100%メタノールによりさらに処置され、最終的に非極性光合成色素を除去するために、0.2%酢酸によりさらに処理された。結果として得られる、部分的に精製されたMAAは、334nmに最大吸収を有した(図5、実線)。
【0076】
334nmにおいて吸収する化合物が、単一のMAAであるか、または1以上のMAAの混合物であるかを見出すため、HPLCによりMAAのさらなる解析および精製を行った。その試料のクロマトグラム(図6)は、シノリンおよびポルフィラ334としてそれぞれ同定された、保持時間4.2分(ピーク1)および7.6分(ピーク2)を有する2つのMAAの存在を示す。ポルフィラ334は、シノリンが少量でのみ存在する(ピーク面積比1:15)ので、AFAにおける主要なMAAであると思われる。
【0077】
精製済みMAAのUVスペクトルは、334nmにおけるその最大吸収を確認した(図7)。シノリンおよびポルフィラ334に対する334nmにおけるモル吸光係数が、それぞれ、44700および42300M-1cm-1であることを考慮し、本発明者らは、
a)クラマス湖産藻類について、シノリンに対して0.49mgg-1DWの濃度およびポルフィラ334に対して7.09mgg-1DWの濃度;したがって、そのMAA総含量は、0.76%藻類DWに等しい;
b)抽出物について、MAAに対して17〜21mgの濃度(すなわち、1.7〜2.1% DW)
を計算した。
【0078】
全藻類AFAが、UV曝露下で見出される最大濃度、すなわち、0.84%に近い、高構成レベルのMAA(0.76% DW)を含む(8)ので、これらは重要なデータである。また、本発明者らは、その抽出物が、全藻類よりもはるかに高い濃度を有し、最大可能濃度よりもはるかに高いレベルに達している、ことをも見出した。
【0079】
MAA(抽出物中のシノリンおよびポルフィラ334)は、分子量300を有する、構造的に単純な分子である。このことは、これらの水溶性分子が、腸内膜から血液脳関門に至る、各種の障壁を容易に通過することを可能にし、腸(gut)から脳に至る、どこでも必要な、その抗酸化活性を発現する能力を確認する。
【0080】
MAAの抗酸化効果の評価
抽出物中に含まれるMAAの抗酸化特性を評価するため、ヒト赤血球試料を、フリーラジカル鎖の形成を誘発し、その結果、ドラブキン溶液によりヘモグロビンを定量することにより測定される(33)、赤血球溶血の並行な上昇と共に膜のリン脂質の酸化を誘発する、100mM AAPHとともに、漸増量のMAA(5〜80μM)と共に、37℃で3時間インキュベートした。結果を図18に示すが、ここで、AAPHが誘発する赤血球溶血における用量依存的な低減を、MAAがいかにしてもたらし、これにより細胞を酸化的損傷から保護するのかを、観察することができる。
【0081】
同様に、酸化作用物質(100μMのCuCl2)による血漿試料のインキュベーションは、チオバルビツール酸との反応後535nmにおける分光光度計により測定(TBA試験)される、脂質過酸化の後期副生成物である、マロンジアルデヒド(MDA)レベルの上昇を生じる。クラマス湖産AFA藻類から抽出したMAA量を増加させながら(5〜80μM)100μMのCuCl2と共に37℃で2時間、血漿をインキュベートすると、図19に示す通り、MDAレベルの用量依存的な低下を観察することができる。MAA濃度を80μMに等しくすると、非酸化血漿(対照)の場合と極めて類似するMDAレベルが得られる。
【0082】
いずれの試験も、AFAに由来するMAAが、抽出物に、そのフィコシアニンに由来するもの以外に、フリーラジカルのスカベンジャーとしてより強力な力を与える、真の抗酸化分子であると本発明者らが明言することを可能にする。
【0083】
C)抽出物を、それに含まれるフィコシアニンよりもさらに強力にする、さらなる相乗作用因子の決定
クラマス湖産AFA藻類は、異なる機能活性に恵まれた広範な栄養基質(matrix)を含む。特に、クラマス湖産藻類およびその抽出物は、クロロフィル;ベータカロテンおよび他のプロビタミンAカロテノイド;カンタキサンチンなどのキサントフィル類カロテン;抗酸化ビタミンおよびミネラルなどの重要な活性本質を含む。
【0084】
クロロフィル
最近数年間において、クロロフィル(CHL)の半合成類似体である、クロロフィリン(CHLN)という分子に関する研究が力強く発展している。多様な研究が、CHLNの顕著な抗酸化特性、特に、肝臓および脳などの重要器官との関連において、より共通の抗酸化物質(ビタミンCおよびE、GSH、など)よりも顕著に高い抗酸化特性を明示している(9)。その抗酸化特性は、CHLNがCOX−2を選択的に阻害する能力に起因する、特異的な抗炎症特性と関連する(10)。クロロフィルがCOX−2を選択的に阻害する能力は、フィコシアニンによる同じ能力と共に、抽出物を天然の抗炎症剤として特に強力なものとしている。このことは、抽出物が、その中に含まれるフィコシアニンよりもより強力なCOX−2阻害剤である、事実を説明する一助にもなる。
【0085】
より一般的に、CHLNは、肝癌(12)、乳癌(13)および結腸癌(14)などの各種腫瘍との関連において、抗突然変異誘発特性(11)および抗増殖特性を示している。フィコシアニンも、顕著な抗増殖特性を有するので、両分子の同時的な存在が、抽出物を、潜在的に重要な抗腫瘍生成物としている。
【0086】
研究の大半は半合成CHLNについてのものであるとはいえ、2つの分子の密接な類似性を踏まえると、天然のクロロフィルにも同じ特性を帰することができる。実際、2つの分子の抗増殖能を比較したところ、天然のCHLの方が、はるかに低濃度において、CHLNよりもさらに顕著に強力であることが示されている。(15)。
【0087】
クラマス湖産藻類においては、クロロフィル濃度が、(ウィートグラスおよび他の草類など、クロロフィルに最も富む野菜に対する最大濃度0.3%に対して)最低1%を有し、天然における最高濃度の1つであることを考えると、フィコシアニンとクロロフィルの抗酸化、抗炎症、および抗増殖の相乗作用が、クラマス湖産AFA抽出物の顕著な優位性に寄与する。
【0088】
AFA藻類におけるクロロフィルaの定量法は、文献(16)で論じられる通り、藻類細胞を破砕した後、有機溶媒中への色素の抽出、それに続く分光光度法による測定、に基づく。異なる種類の有機溶媒を用いた後、本発明者らは、メタノールが、最良の抽出能を有することを見出した。試料(100mgのAFAリフラクタンスウィンドウ2メッシュ122/071005)を、10mlの100%メタノール中に懸濁させ、ポッター型ホモジナイザー(a mechanical potter)により3分間(3’)ホモジナイズし、暗所中、室温で24時間、回転プレート上に放置した。
【0089】
次いで、結果として得られる抽出物を4℃、3000rpmで5分間(5’)遠心分離し、上清を回収し投与する一方、ペレットは第2の抽出のため、10mlの100%メタノール中に再び懸濁させた。室温で24時間後、その抽出物を4℃、3000rpmで5分間(5’)遠心分離し、上清を回収し投与する一方、ペレットは3回目の抽出のため、10mlの100%メタノール中に再度再懸濁させた。その色素が664nmにおいて特徴的な吸収ピークを有するので、以下のPorraの式(17)により、3つのメタノール抽出物中のクロロフィルa濃度を計算した。
【0090】
クロロフィルa(μg/ml)=16.29×Abs664
1回目の抽出により、本発明者らは、96.11μg/mlのクロロフィルa濃度を得、2回目および3回目の抽出により、4.63および0.68μg/mlの濃度を得た。したがって、AFA試料中のクロロフィルaの総含量は、101.42μg/mlまたは10.14mg/g DW(1.014% DW)である。
【0091】
上述と同じ手法を用いることによって、本発明者らは、基本抽出物中において、クロロフィル含量が約50%低下し、したがって、濃度が約0.5%低下することを見出した。
【0092】
カロテン
クラマス湖産藻類は、ベータカロテン中に発現された、高含量のカロテンを有する。さらに、それは、ビタミンAの前駆体および非前駆体のいずれでもある、広範なカロテンを含む。非前駆体のうち、クラマス湖産藻類は、特に顕著なカンタキサンチン含量を有する。
【0093】
クラマス湖産藻類 ベータカロテンとしての総カロテン=1600mg/Kg
カンタキサンチン=327mg/Kg
基本抽出物 ベータカロテンとしての総カロテン=420mg/Kg
カンタキサンチン=41mg/Kg
抽出物B ベータカロテンとしての総カロテン=2400mg/Kg
上記の数字は、長年にわたる異なる生成物バッチに対する異なる試験の平均である。基本抽出物中のカロテン濃度は、依然として顕著であるとはいえ、明らかに低下している。とりわけ、藻類およびその抽出物中のカロテンは、通常の野菜において、部分的に吸収を阻害する、いかなるセルロース膜も他の因子も有さない、天然の食物源に由来するので、ヒト(our organism)により高度に吸収される。血漿レチノールは、ビタミンAの活性形態であり、重要な抗酸化特性を有し、眼から肝臓、口から神経系に至る、ヒトの各種の系を保護しうることが示されている(18)。
【0094】
ROSと比較して、ベータカロテンそのものよりもより高い抗酸化作用に恵まれ(19)、一重項酸素に関しては、ベータカロテンとリコペン(最大効果)と、ルテインとゼアキサンチン(最小効果)との中間の抗酸化作用に恵まれた(20)、カロテノイドである、カンタキサンチン含量が特に興味深い。カンタキサンチンはまた、藻類およびその抽出物に含まれるフィコシアニンおよびクロロフィルの同じ特性と相乗作用する、強力な抗脂質過酸化特性をも有する(21)。この相乗作用が、抗酸化および抗炎症活性の観点では、抽出物は、その中に含まれる精製済みフィコシアニンよりもさらに強力であるという事実を説明する一助となる。
【0095】
基本抽出物をAFAフィコシアニンおよびPCBと対比して調べる
CuCl2による酸化的損傷に由来するTBARS形成の基本抽出物の阻害
AFA PCの標準的な含量を有する、抽出物の抗酸化力は、精製済みPCそのものの抗酸化力のほか、PCの活性補欠分子族である、精製済み発色団フィコシアノビリン(PCB)の抗酸化力ともまた比較されている。CuCl2による血漿の酸化により生じるマロニルジアルデヒド(MDA)の形成に関する試験は、抽出物が、全抽出物中における他の活性抗酸化分子の存在に起因して、純PCおよびその発色団PCBよりもさらに高い抗酸化力を有することを示し、一方、PCおよびPCBが、100nMの濃度におけるMDA形成阻害度30〜40%による、同様の抗酸化能を有するのに対し、100nMの同様のPC濃度を有する、基本抽出物は、最大89%までの阻害度を生じることを示す(図20)。
【0096】
CuCl2による血漿の酸化後における共役ジエンの形成においてもまた、PC濃度100nMにおける基本抽出物は、同じ100nMの濃度における純PCよりも顕著に高い抗酸化能を有する。実際、図21は、純PCに反して、その抽出物とともに、共役ジエンの形成が事実上完全に阻害されることを示す。さらに、このことは、基本抽出物が、その中における他の活性分子、特に、AFAフィトクロムの、存在に明らかに起因して、いかに純PCよりも顕著により強力であるかを示す。
【0097】
CuCl2による酸化的損傷に由来するTBARS形成のプレインキュベートした基本抽出物の阻害
AFA抽出物をヒト血漿試料と共にプレインキュベートし、これに続いて100μMで酸化作用物質CuCl2による同じ試料のインキュベーションを行ったところ、245nmにおける分光光度計により初期副生成物(early by-products)である共役ジエンの産生によって測定されるように、リポタンパク質の酸化が、用量依存的に強く減少した。ジエンの形成がその抽出物により阻害される、最初の遅延段階(a first lag-phase)の後にさらに進行する酸化、その漸進的な減少は、抽出物中わずか150nMのPC濃度によりほぼ完全な阻害レベルに達する(図22)。
【0098】
CuCl2による血漿脂質の酸化は、後の段階において、マロニルジアルデヒドまたはMDAの形成をもまた、生じる。AFA抽出物とともに血漿のプレインキュベーションはまた、MDAレベルの用量依存的な減少をも生じ、これは、わずか100nMのPC濃度により、本発明者らが、非酸化または対照血漿の場合と完全に同等なMDA値を得る(#p<0.05)ほどに強力であった(図23)。
【0099】
基本抽出物のORAC評価
ORAC試験により抽出物の抗酸化能を評価するために、本発明者らは、PCおよびPCBについてORACを調べるのに用いたのと同じ手法を用いた。AFA抽出物の水溶性および脂溶性成分をともに調べるため、本発明者らは、まず、以下の通りに、2つの水溶性および脂溶性抽出物を調製した。
【0100】
水溶性抽出物の調製
・ 10mgの抽出物を1mlの蒸留水中に量り取り、ポッター型ホモジナイザーにより1分間ホモジナイズする。
【0101】
・ 4℃、2500rpmで10分間(10’)遠心分離し、細胞破屑物を除去する。
【0102】
・ 上清を回収し、ペレットを1mlの水中に再懸濁させる。
【0103】
・ ポッター型ホモジナイザーにより1分間ホモジナイズする。
【0104】
・ 4℃、2500rpmで10分間(10’)、遠心分離する。
【0105】
・ 上清を回収し、最初の水による抽出物から得られた上清と混合する。
【0106】
・ その水による抽出物(PCの存在により、青色を有する)を、+4または−20℃で保存する。
【0107】
脂溶性抽出物の調製
・ 前出の抽出から得られたペレットを、1mlのアセトン中に再懸濁させる。
【0108】
・ ポッター型ホモジナイザーにより、1分間ホモジナイズする。
【0109】
・ 上清を回収し、ペレットを1mlのアセトン中に再懸濁させる。
【0110】
・ ポッター型ホモジナイザーにより1分間ホモジナイズする。
【0111】
・ 4℃、2500rpmで10分間(10’)、遠心分離する。
【0112】
・ 上清を回収し、最初のアセトンによる抽出物から得られた上清と混合する。
【0113】
・ その脂溶性抽出物(カロテンの存在により、橙色を有する)を、+4または−20℃で保存する。
【0114】
図24は、AAPHがもたらす蛍光の、その2つの抽出物の不在下(ブランク)および存在下における減衰を、基準となる標準物質トロロックスと比べて示す。曲線下面積の測定により、本発明者らは、水溶性抽出物については、トロロックス当量828μモル/乾燥重量g、脂溶性抽出物については、トロロックス当量468μモル/乾燥重量gのORACを得た。これは、総ORAC能が、トロロックス当量1296μモル/乾燥重量gであることを意味する。
【0115】
in vivo試験
健常対象におけるMDA、GSHおよびレチノールの血漿レベルに対する、AFA藻類およびAFA抽出物をともなう補給(the supplementation)の効果
以下の試験は、主にAFA藻類およびAFA藻類抽出物に基づく処方により行った。それはまた、アシドフィルス菌およびタンパク質分解酵素などの消化管因子をも含んでいたが、抗酸化活性は、主に藻類因子に帰属させるべきである。
【0116】
病歴が、消化器、血糖、その他の、重篤な過去の病態を示さなかった、23〜63歳の男性4例および女性4例の、比較的健康な8例の対象が、本試験への参加を自由に志願した。どの対象も、食事またはカロリーの特別の制限を受けず、どの対象も菜食主義者でなく、その補給期間における食事またはライフスタイルの変更は示唆されなかった。
【0117】
試験開始前に、その参加者は、各自の病歴に関する客観的な医学的分析および評価を受け、これは、大部分の場合、月経前症候群のいくつかの事例、時折の関節痛事象、食後の重感、時折の頭痛、一般的な便通不規則(generic gastrointestinal irregularities)、消化不良の、症状の発現など、人口において一般にみられ、おそらくは自律神経系の性質の、病気(ailments)のいくつかの存在のみを示した。
【0118】
本試験で用いられた栄養処方は、したがって、クラマス湖産AFA藻類、200mg;AFA抽出物、100mg;アシドフィルス菌DDS−1(100億(10 bill.)CFU/グラム)、100mg;タンパク質分解活性を有する発酵済みマルトデキストリン、100mg、からなる500mg粉末を含む、「0」植物カプセルにより投与された。各参加者は、第0日から始めて、毎食と共に3カプセルずつ、1日9カプセルを服用した。
【0119】
血液試料は、時点0、1カ月後、および3カ月後に、へパリン処理した真空容器(vacutainers)中に採取し、各試料は、2つの部分に分割した。第1の部分は、フローサイトメトリーによるリンパ球の免疫表現型検査(immunophenotyping)、イムノネフェロメトリック(immunophelometric)および化学発光の原理に基づく自動式機器による、甲状腺プロファイル、肝臓、心臓、および腎臓の、機能に関する酵素検査、自動システムおよびドライケミストリー法をともなうタンパク質および脂質分析、自動システムおよびコールター原理(COULTER principle)(インピーダンス法(impedenziometric))をともなう血色素量検査(emocromocytometric exam)、など、最も一般的なパラメータについて、ウルビーノの病院の分析検査室により分析された。
【0120】
血液試料の他の部分は、MDAおよび抗酸化物質である減少した(reduced)、グルタチオン(GSH)、ビタミンE(αトコフェロール)、およびビタミンA(レチノール)の測定により、脂質過酸化レベルを調べるのに用いた。血液試料は、+4℃、3000rpmで10分間の遠心分離により加工(processed)し、こうして得られた血漿は、−20℃で保存し、以下のように使用された。血漿MDAは、TBARS(チオバルビツール酸反応物質)法(28)に従い、535nmにおける分光光度計により測定した。GSH用量は、GSHによるジスルフィドDTNB(5,5’−ジチオビス2−ニトロ安息香酸)の還元(reduce)能に基づいた(29)。その還元形態において、DTNB(c.e.m.13600M-1cm-1)は、強い黄色を発し、それは412nmで測定される。αトコフェロールおよびレチノールの血漿レベルは、Alltech社製のプレカラム(7.5×4.6mm内径)を前に置き、Alltima C18型カラム(5μm、250×4.6mm内径;イタリア、Alltech社製)を用いることにより、(30)に記載の通りに、HPLC(日本、東京、日本分光株式会社製)により決定した。そのクロマトグラフィープロファイルは、Borwin 1.5ソフトウェア(日本、東京、日本分光株式会社製)により解析した。
【0121】
対象の酸化/抗酸化状態に関して、調べた3つのパラメータについて得られた結果を、図25に示す。
【0122】
少しも食事またはライフスタイルの変更を導入することなしに、本生成物の補給により生じる抗酸化状態および脂質過酸化に関して、極めて肯定的な結果がもたらされたという事実は、重要である。AFA藻類中に存在し、AFA抽出物においてさらに濃縮された、AFAフィコシアニン、フィトクロム、およびMAAは、フリーラジカルスカベンジャーとして強力な肯定的制御をまた実行し、AFA藻類中およびその抽出物中に存在する高レベルのクロロフィル、カロテノイド、ならびに他の抗酸化ビタミンおよびミネラルのために、本生成物は、ヒト体内における全般的な抗酸化活性の強力なエンハンサーとして自らを提示する。
【0123】
結果は、以下の通りにまとめることができる。
【0124】
a)血漿レチノール中の極めて高い平均値の上昇、すなわち、補給の3カ月後に+60%の上昇がみられる;
b)脂質過酸化の最も重要なマーカーの1つである、血漿MDAレベル中の目覚しい減少(−35.5%)がみられる。この結果は、上記に示したin vitroでの非常に目覚しい結果を、in vivoにおいて強く確認する;
c)本生成物が与える全般的な抗酸化保護はまた、身体が、内因性GSHの顕著な増加(+16.8%)を生じるのに役立った。
【0125】
高圧治療(hyperbaric treatment)を受ける患者に対するAFAおよびAFA抽出物に基づく生成物をともなう補給の効果
高圧酸素療法は、減圧に由来する病気(illnesses)、一酸化炭素中毒、ガス塞栓症、および組織感染症などの、様々な病態の治療に使用され成功している。高圧酸素への曝露は、実際、血中に溶解する酸素の有益な増加を生じる。しかし、有益な作用と共に、十分な抗酸化防護により保護しないならば、細胞および組織を損傷しうる循環ROS(活性酸素種)も増加しうる(34)。このために、高圧療法を受ける患者は、一般に、抗酸化ビタミンを補給される。
【0126】
高圧療法が誘発する酸化ストレスに対するAFAおよびクラマス湖産AFA抽出物に基づく処方の効果を評価するため、ファーノ「高圧療法センター(Centro di Terapia Iperbarica)」(イタリア)の患者9例を試験に組み入れた。患者9例のうち、16〜73歳の、男性が5例で女性は4例であり、無菌性大腿骨壊死(n=5)、リウマチ性多発筋痛(n=1)、ならびに大腿骨および脛骨骨髄炎(ostheomyelitis)(n=3)などの異なる病変(pathologies)に罹患していた。
【0127】
これらの患者に、上述の同じ生成物を補給した。初回の高圧セッション以降、患者は、3回の主食間に分けて、1日6カプセルの服用を開始した。
【0128】
各患者からの血液試料の採取は、1回目および15回目の高圧セッションの直前および直後に実施した。次いで、試料は、MDA、カルボニル、AOPPなど、いくつかの酸化マーカー含量のほか、血漿中のチオール、脂溶性ビタミン、および血漿自体の総抗酸化レベルについても評価された。
【0129】
結果は、本処方を補給された患者において、高圧治療は、15セッション後でさえも、酸化マーカーの増加を生じないことを示す(図26)。実際、その治療の進行と共にこれらのマーカー中の顕著な増加が通常みられることを考えれば、本試験において本発明者らは、実際、1〜15回目のセッションで、1.54±0.17μモル/l(1回目のセッション)から1.42±0.16μモル/l(15回目のセッション)へと値が変化する、MDAレベル(脂質過酸化)の、7.8%の減少(p<0.05)、105.7±18.8μモル/l(1回目のセッション)から84.0±15.5μモル/l(15回目のセッション)へと値が変化する、AOPP(タンパク質酸化の後期副生成物)の20.5%の減少(p<0.05)を見る一方、タンパク質カルボニル(タンパク質酸化の初期副生成物)は無変化のままである(図26)。
【0130】
全般的な抗酸化プロファイルもまた、高圧治療期間において維持される。総チオール(グルタチオンおよびタンパク質のSH基)の血漿レベルは、254±18μモル/l(1回目のセッション)から275±30μモル/l(15回目のセッション)へと値が変化し、8.3%上昇(p=非有意(n.s.))した。同時に、本発明者らは、図27および28に示す通り、1.19±0.03mモル/lのトロロックス当量(1回目のセッション)から2.04±0.03μモル/lのトロロックス当量(15回目のセッション)へと値が変化する、血漿の総抗酸化状態の有意な上昇(p<0.05)を見る。
【0131】
最も一般的な抗酸化物質(トコフェロール、カロテノイド、レチノール)の血漿レベルが無変化のままであることを踏まえ、本発明者らは、総抗酸化状態における上昇が、本処方により供給された同じ栄養物質によって、カロテノイドおよびレチノールなど、消費された抗酸化物質の補充に部分的に起因し、また、フィコシアニン、フィトクロム、MAA、およびクロロフィルなどの特定の藻類抗酸化物質の循環系における並行的な蓄積による、と仮定することができる。要するに、AFAおよびAFA抽出物に基づく処方は、抗酸化防御を非常に増大させ、効果的に高圧療法を受ける患者を、高圧酸素が産生するフリーラジカルの増加から保護する。
【0132】
抗炎症活性
in vitro試験
シクロオキシゲナーゼ(COX)酵素は、プロスタグランジン(PG)、トロンボキサン、およびプロスタサイクリンなどのエイコサノイドの合成における第1段階を触媒する。この酵素には、2つの異なるアイソフォームが存在する。COX−1が、ホメオシタシスの通常の調節に関与するのに対し、COX−2は、PG産生の原因であり、それが次々に急性炎症を促進する。
【0133】
藍藻類に由来するフィコシアニンは、強力な抗炎症活性を有する。微細藻類スピルリナ・プラテンシスに由来するフィコシアニンは、効果的な選択的COX−2阻害物質であり(35)、これらが、脂肪酸から炎症性エイコサノイドの形成を生じる、カスケードを生理的および部分的に阻害することが示されている(36)。
【0134】
クラマス湖産AFA藻類に由来するフィコシアニンが、スピルリナに由来するそれ(フィコシアニン)とは異なること、COX酵素に対するその効果について試験が今までに行われていないことを踏まえ、本発明者らは、Cayman社製の免疫酵素キット「COX阻害物質スクリーニングアッセイ」により、このような試験を行うことに決めた。こうして、本発明者らは、AFA抽出物(水中の水溶性部分、およびアセトン中の脂溶性部分をともに;25〜200μg/mlの範囲)、純PC(0.03〜3μM)、およびPCB(0〜15μM)による、COX−1およびCOX−2の阻害を評価した。結果を図29に示し、AFA抽出物、PC、およびPCBの異なる濃度におけるCOX−1およびCOX−2の百分率による活性グラフを表示する。
【0135】
AFA基本抽出物の脂溶性分画が、134μg/mlのIC50によりCOX−2を選択的に阻害するのに対し、COX−1は増加する。水溶性分画も、84.5μg/mlのIC50によりCOX−2を選択的に阻害するのに対して、COX−1は、おだやかに阻害されるのみである(200μg/mlのAFA抽出物の場合で30%の阻害)。
【0136】
純PCは、いずれの酵素にも作用するが、この場合でさえも、阻害は、COX−1と比べてCOX−2に優先的であり、COX−2に対する活性はCOX−1に対する場合よりもほぼ10倍高い(1.1μMに対する0.15μMのIC50)。最後に、発色団PCBは、COX−1活性を増大させ、COX−2の阻害剤ではほとんどない。
【0137】
こうして、本発明者らは、クラマス湖産AFA藻類のフィコシアニンはまた、COX−2の顕著な選択的阻害を可能とする、強力な抗炎症分子であることをも確認した。COX阻害が、フィコシアニンを含む、水性抽出物のみにより生じるのでなく、脂溶性抽出物によっても生じ、したがって、AFA抽出物中の他の分子の存在を示すということに注目することも興味深い。
【0138】
本明細書において、本発明者らは、スピルリナに由来するフィコシアニンに対して行われた試験とのいくつかの比較による考察をも示すことができる。Reddyらによる研究において、スピルリナ・プラテンシスに由来するフィコシアニンのIC50は、クラマス湖産に由来するフィコシアニンの0.15μMに対して、0.18μMであると報告されている。クラマス湖産PCに有利なこのわずかな差異はさておき、強調すべきさらにそしてより重要な差異が存在する。1μMにおいて、スピルリナ由来のフィコシアニンが約60%のCOX−2阻害を生じるのに対し、クラマス湖産に由来するフィコシアニンは、同じ1μMの濃度において、約75%の阻害を生じる。これは、実質的な差異であり、AFAフィコシアニンが、迅速かつより強力な抗炎症効果を生じうることを示す。
【0139】
また、AFAフィコシアニンにより生じる阻害百分率は、スピルリナPCの最低レベルと、セレコキシブおよびロフェコキシブなどの薬剤のより高いレベルとの中間である(37)。これは、クラマス湖産藻類のPCにより生じるCOX−2阻害の程度が理想的である、すなわち、迅速かつ効果的な抗炎症活性を生じる程度には十分高いが、やはり依然として部分的であり、このため、その薬剤に典型的な心血管性の副作用を回避する程度に生理的であることを意味する。
【0140】
AFA抽出物のCOX−2阻害活性も、極めて重要である。図が示す通り、脂溶性成分は、水溶性成分の場合よりも低度ではあるが、顕著な程度の阻害(134μg/mlのIC50)を有し、同時に、COX−1の促進活性をも有する。COX−2の阻害が炎症性エイコサノイドの産生を低減するとすれば、COX−1の刺激は、抗炎症性エイコサノイドの内因的産生を増加させ、こうして、総抗炎症効果を倍加するので、これは興味深い結果をもたらす。このことが、AFA基本抽出物の脂溶性分画を、重要な薬理特性に恵まれた、独自の抗炎症作用物質とする。本特許は、クラマス湖産藻類に由来する任意の脂溶性抽出物の栄養学的および薬理学的使用をも保護する。
【0141】
そこで、本発明者らが、AFA基本抽出物全体を視野に入れるならば、水溶性および脂溶性成分の合わせた活性は、強力なCOX−2阻害物質としてともに作用することを考えると、COX−2の顕著な阻害をもたらし、また、一方で、水溶性成分により生じるCOX−1の低減(−30%)、および、脂溶性成分により生じるCOX−1の刺激(+45%)の結果から、COX−1の同レベルの実質的な維持が生じる。AFA抽出物全体のIC50が約100μg/ml(2成分の平均)であるのに対し、200μg/mlの投与時においては、約75%のCOX−2阻害がみられる。これが、純PCに関して上記で論じた百分率による阻害のレベルであり、そこで示した考察は、in vitroにおける200μg/mlが、わずか、600〜800mgのin vivo用量に対応すると推測しうる(plausibly)(38)という事実に照らすと、特別な意味を獲得する。実験による確認を待っているときでさえ、本発明者らは、AFA抽出物が、1日にわずか1〜2カプセル/錠により容易に到達する用量において、真に独自の、治療的特性、栄養的特性、および薬理的特性に恵まれた、強力な抗炎症作用物質を構成する、とおそらく明言することができる。これらの特性は、in vivoでの動物試験により確認されている。
【0142】
in vivo試験
本試験において、本発明者らは、0.25μモル/kgのカプサイシン(チリペッパーの活性本質)または2nモル/kgのサブスタンスP(炎症性神経性応答の原因である受容体と共に作用する)による、炎症促進刺激(pro-inflammatory stimulus)を受けたアルビノの雄スイスマウスにおける、PCを含む藻類抽出物(AFA抽出物)の抗炎症特性を詳しく調べた。組織炎症レベルは、組織における血漿タンパク質の流出の結果として、炎症部位内に蓄積した着色剤エバンスブルーの分光光度法での吸収量により測定した。図30に示す通り、カプサイシン(0.25μモル/kg)またはSP(2nモル/kg)の静脈内注射は、炎症刺激を受けなかった対照マウスにおいて観察される場合と比べて、試験組織内における血漿流出の増加を誘発する。AFA抽出物(1600mg/kgまたは800mg/kg)によるマウスの前処置は、血漿流出を顕著に阻害し、対照群と同等な値にまで引き下げる。
【0143】
実際、カプサイシンの注射は、胃(23.2±0.2対29.9±0.5ng EB/組織g、p<0.05)および膀胱(33.2±5.2対39.9±1.8ng EB/組織g、p<0.05)の両方における血漿流出の増加を誘発する。1600mg/kgのAFA抽出物によるマウスの前処置は、両組織における血漿タンパク質の流出の顕著な低減を誘発し、胃における値をEB 23.6±0.2ng/g、および膀胱における値をEB 30.6±2.3ng/gとする。
【0144】
同様に、SPの注射は、胃(13.5±1.1対22.1±1.8ng EB/組織g、p<0.05)および十二指腸(17.2±1.2対24.0±1.8ng EB/組織g、p<0.05)における血漿流出の顕著な増加を誘発する。800mg/kgのAFA抽出物によるマウスの前処置は、胃における値を20.1±1.3ng EB/g(p=非有意)、および膀胱における値を16.7±1.9ng EB/g(p<0.05)と、血漿タンパク質の流出を顕著に低減する(図31)。
【0145】
抗増殖活性
文献では、微細藻類スピルリナに由来する純PCが、アポトーシス機構を介して、白血病細胞株(39)などの腫瘍細胞株およびマクロファージ細胞株(40)の、増殖を阻害する顕著な特性をin vitroにおいて有することが報告されている。
【0146】
そこで、本発明者らは、単球マクロファージRAW264.7腫瘍細胞株の細胞において、その細胞を、PCの用量を増加させ(範囲:0〜25μM)ながら、インキュベートすることにより、C−PC/PEC複合体を有する、純AFA−PCの抗増殖活性を調べた。図32の結果の通り、24、48、および72時間のインキュベーション後における細胞活力の分析は、AFA−PCが、極めて顕著な、用量および時間依存的抗増殖効果を有することを示した。
【0147】
AFA抽出物の皮膚特性および美容特性
クラマス湖産藻類AFAおよびその抽出物中のフィコシアニンおよび他の相乗作用分子の抗酸化および抗炎症特性を踏まえると、栄養学的および薬理学的目的のための経口投与のほか、皮膚治療の使用および美容目的ともに、皮膚への局所用としても用いることができる、ということは明白である。
【0148】
密封貼付(occlusive patch)試験(刺激試験)
予備試験として、本発明者らは、クラマス湖産AFA藻類を毒性学的に調べ、その皮膚使用が、毒性または炎症反応をもたらさないことを確立した。試験は、イタリア、フェラーラ大学の「美容センター(Centro di Cosmetologia)」において実施した。「密封貼付試験」は、無傷のヒト皮膚に対して単回投与で貼付したときの美容生成物の刺激作用を評価するために実施した。試験は、試験実施に対して書面により同意した、男女の健常志願者対象20例を対象に実施した。以下の対象は、試験から除外した。
【0149】
・最近2カ月以内に類似の試験に参加したすべての対象、
・皮膚炎に罹患するすべての対象、
・アレルギー性皮膚反応の既往を有するすべての対象、
・抗炎症薬治療(ステロイドまたは非ステロイド)下にあるすべての対象。
【0150】
試験は、クラマス湖産AFA藻類の粉末を対象に実施した。貼付用生成物を調製するため、粉末を蒸留水と混合し、シリンジを用いてフィンチャンバー(Bracco社製)内に直接注入し、次いで、参加者の前腕部または背部の皮膚に貼付し、粘着テープで保護した。美容生成物は、皮膚表面に接触させたまま48時間放置し、その後の48時間にわたり生成物を貼付した部位を洗浄しないよう、参加者に指示した。フィンチャンバーの除去および皮膚部位の残存美容生成物からの洗浄は、試験実施者が行った。皮膚反応の評価は、以下のスケールに従い、フィンチャンバーの除去後15分および24時間において実施した。
紅斑:0−なし 1−軽度 2−はっきりと見える 3−中等度 4−重篤(serious)
浮腫:0−なし 1−軽度 2−はっきりと見える 3−中等度 4−重度(strong)
紅斑および浮腫スコアの総計を「刺激指数」と定義する。15分および24時間での刺激指数を最終報告書に報告する。20回の試験の平均刺激指数を計算する。次いで、生成物を以下のパラメータに従って分類した。
【0151】
平均刺激
指数 分類
<0.5 刺激なし
0.5〜2.0 軽度の刺激
2.0〜5.0 中等度の刺激
5.0〜8.0 高度の刺激
上述の手法およびパラメータに従う、クラマス湖産藻類AFAに対する試験結果は、
「志願者対象20例の健康な皮膚に対して、密封条件下で、蒸留水により希釈して(1:10)貼付された、試験生成物は、
フィンチャンバー除去後の15分において0.25(zero. twenty five)
フィンチャンバー除去後の24時間において0.15(zero. fifteen)
の平均刺激指数を示した。
【0152】
使用した評価スケールに従い、生成物であるクラマス湖産藻類(アファニゾメノン・フロスアクアエ)は、刺激なし、と分類することができる。」
有効性研究
美容および皮膚成分としての藻類の非刺激性および無毒性を確認した時点で、本発明者らは、8%のクラマス湖産藻類基本抽出物を含むクリームの調製を開始し、皮膚の柔軟性、水分補給、およびしわなどの美容パラメータに関するその有効性を調べた。試験は、30〜65歳の個体15例を対象に無作為に実施した。彼らは、特定の皮膚(dermatological or skin)問題で選ばれたのでなく、実際、しわの量などのパラメータについては、大半の参加者が、深いしわを有さなかったことにより、統計学的に非有意の結果がもたらされた。にもかかわらず、しわが実際に存在する場合、しわの軽減に関する結果は極めて明瞭であった。本研究は、統計学的な有意性の欠如に対して、一部のパラメータに関して最終的なものではないが、AFA抽出物の皮膚および美容特性を強く確認する予備報告ではあり、したがって、これが、特定の皮膚(dermatological and skin)問題により明確に方向づけられたさらなる研究の正当性を保証する。本発明者らは、本明細書に、本研究の手法および主要な結果を示す。
【0153】
試験は、8%AFA抽出物を含む生成物と、同じ植物ベースにより構成されるが、藻類抽出物を含まない、プラセボ生成物とを比較して実施した。その2つの生成物を
a)AFA抽出物を含む植物乳液
b)基本植物乳液
と呼ぼう。
【0154】
以下に記載の試験対象患者基準(inclusion criteria)に従い、30〜65歳の、女性志願者対象15例をその試験に選択した。
【0155】
・全般的に良好な健康状態、
・皮膚症なし、
・進行中の薬剤治療なし、
・通常の日常的行為を変更しないと誓約、
・既往症にアトピー症なし。
【0156】
その2つの生成物は、以下の通りに、顔の各面に毎日1回ずつ、参加者自身により塗布された。
【0157】
・顔の右側面(DX):AFA抽出物を有する植物乳液、
・顔の左側面(SX):基本植物乳液。
【0158】
本研究で解析されたパラメータは、
・皮膚の弾力性
・湿潤指数
・皮膚の形状測定
であった。
【0159】
パラメータの測定は、以下のスキームに従い実施した。
【0160】
・生成物の塗布前(T0)
・生成物塗布の15日後(T15)および30日後(T30)
皮膚の弾力性
皮膚の弾力性は、CUTOMETER(登録商標)SEM 575(COURAGE + KHAZAKA electronic GmbH製)により測定した。弾力性の測定は、1が可能な弾力性の最大値を表す、0〜1のスケールにより行った。
【0161】
皮膚の湿潤指数
皮膚の湿潤性の測定は、国際的に認知されたCORNEOMETER(登録商標)に基づく。通常の室内条件(20℃および40〜60%の空気湿度)における試験部位の、健康皮膚は、>50の湿潤指数を有するべきである。35〜50の範囲の湿潤指数が、乾燥した皮膚を表すのに対し、35より劣る場合は極めて乾燥した皮膚を表す。これらの値は、結果の解釈に対するただの指標である。
【0162】
皮膚の形状測定
in vivoにおける皮膚表面解析用のVISIOSCAN VC98を用いて、しわの軽減を検査する(図33)。パラメータは、
・SEr:粗さ
・SEsc:鱗状態(scaliness)
・SEsm:滑らかさ、しわの幅および形態に比例する
・Sew:しわ、 しわの数および幅に比例する
・量:しわの深さに比例し、より深いしわは、量パラメータがより大きい
である。
【0163】
各種パラメータに関する結果を、2つのパラメータのみ、すなわち、皮膚の弾力性および皮膚の湿潤性について、専用のソフトウェアであるStatgraphic plus(バージョン5.1)を用いる多因子分散分析(ANOVA)により、統計学的に解析したところ、統計学的に有意な結果が得られた。本発明者らの指示に従い試験を実施したパビア大学の研究者らが到達した結論は、以下の通りであった。「処置期間全体において、顔の右側面に塗布された、活性生成物の使用が、ベースラインの値と比べて、統計学的に有意な湿潤性および弾力性の上昇をもたらしたのに対し、プラセボ(左側面)での処置は、有意な変化をもたらさなかった。」
上記の結論に関しては、皮膚の形状測定については、統計学的に有意な結果がみられなかった。しかし、これは、生成物の無効性(failure)に起因したのでなく、参加者の大半が、時点0において、彼らの皮膚が既に最適な状態に近かったことを踏まえると、いかなる本格的な改善(serious improvement)も、不可能とさせるような、初期状態を有していたという事実に起因した。これが、本研究の弱点であった。しかしながら、実際に改善を要する皮膚状態(皮膚病変の状態には該当しない)を有する参加者を選択し、適宜結果を解釈したところ、本発明者らは以下の結果を得た。
【0164】
皮膚の弾力性
参加者15例のうち、12例のみが、最適より少ない弾力性状態を有した。実際、弾力性指数を0〜1(1が可能な最大値)としたところ、本発明者らは、参加者中に0.57〜0.98の範囲の値を得た。この範囲に基づき、本発明者らは、3つのふさわしい区分を確立した。
【0165】
0.9〜1=最適の弾力性状態
0.75〜0.9=中等度の弾力性状態
<0.75=低度の弾力性状態
30日間の処置期間を考慮に入れると、図34のグラフは、より低いレベルからより高いレベルへの参加者の移行として、改善のレベルを報告する。
【0166】
解析した12例のうち、当初、4例が低度の弾力性を、8例が中等度の(moderate or medium)皮膚の弾力性を有した。処置の30日後、低度の弾力性を有する参加者はいなくなり、中等度の弾力性を有する参加者も2例のみであり、残る10例は高度の弾力性に移行し、この最後の分類においては、0例から10例へという注目すべき転換を示した。
【0167】
皮膚の湿潤性
通常の室内条件(20℃および40〜60%の空気湿度)における試験部位の、健康皮膚は、>50の湿潤指数を有するべきである。35〜50の範囲の湿潤指数が、中程度に乾燥した皮膚を表すのに対し、<35の値は極めて乾燥した皮膚を表す。これらの値を本発明者らの解釈基準として採用すると、図35のグラフは、30日の期間において認められた改善を、より低いレベルからより高いレベルへの参加者の移行として報告する。
【0168】
参加者15例のうち、1例のみ(青色)が極めて乾燥した皮膚を有し、7例が中等度に乾燥した皮膚を有し、7例が正常に湿潤した皮膚を有した。15例のうち8例のみが実際の改善を要するけれども、最終結果は、処置期間の終了時に、極めて乾燥した皮膚を有する参加者は残らず、中等度に乾燥した皮膚を有する参加者は、7例から5例に減り、健康な湿潤した皮膚を有する参加者は7例から10例へと移行した。
【0169】
皮膚の形状測定
皮膚の形状測定に関しては、ゼロに近いT0値または初期を有する、参加者が多すぎるため、試験パラメータの一部が使用できなかった。すなわち、Serまたは皮膚の粗さパラメータに注目したところ、本発明者らは、参加者15例のうち12例が、0.0または皮膚の粗さ全くなしの初期値を有し、パラメータSEscまたは皮膚の鱗状態に関しては、参加者15例のうち10例が、0.0または鱗状態全くなしの値を有することを見た。したがって、本発明者らは、Sew、またはしわの数および幅、ならびにしわの深さについて測定したしわの量を指す、VOLの、2つのパラメータに評価を限定した。ここでも、Sewでは参加者7例のみ、VOLでは9例のみが是正を要する初期値を有し、残りはゼロに近い値を有したので、本発明者らは、統計学的な有意性に到達できなかった。にもかかわらず、図36が示す通り、わずかながら値を変化させた参加者は、顕著な改善を有した。
【0170】
こうして、しわの量または深さの軽減に関して、本発明者らは、30日間の処置期間において、−18%〜−65%の軽減範囲を有し、しわの量の改善の点で極めて顕著な達成レベルである。
【0171】
図37では、30日間の処置期間において、しわの数および幅の軽減が、−5%〜−48%となり、また、しわ上のAFA抽出物ベースの美容クリームの潜在的な有効性の該請求の範囲を正当化し、そして、この問題によってより具体的な影響を受ける参加者を選択することにより、しわ軽減に関するより具体的な研究の実現をとりわけ保証する、著明な結果である。
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37. For the comparison of the COX-2 inhibition produced by the phycocyanins of spirulina and by the drugs celecoxib and rofecoxib, see Reddy C.M. et al., Selective inhibition of cyclooxygenase-2 by Cphycocyanin, a biliprotein from Spirulina platensis, in Biochem Biophys Res Commun 277(3):599-603, 2000.
38. Since a human being has approximately 3.5 liters of blood, 200 μg/ml multiplied by 3.5 give a total quantity of 600-800 mg. Clearly it is a theoretical calculation in need of experimental confirmations, but it is a plausible hypothesis.
39. Subhashini J. et al., Molecular mechanisms in C-Phycocyanin induced apoptosis in human chronic myeloid leukemia cell line-K562, in Biochem Pharmacol. 2004;68(3):453-62.
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ:
a)採取直後のAFA藻類を冷凍し解凍するか、または、出発物質が乾燥AFA藻類粉末である場合は、水で希釈したAFA粉末を超音波で分解して、細胞を破砕する;
b)ステップa)の生成物を遠心分離し、沈殿物から上清を分離する;
c)水溶性成分を含む上清を回収する、
により得られる、クラマス湖産微細藻類(アファニゾメノン・フロスアクアエ(Aphanizomenon Flos Aquae Aquae Ralfs ex Born.& Flah.Var.flos aquae))の水性抽出物。
【請求項2】
d)請求項1に記載の抽出物を、カットオフ分子量30kDaの膜を用いるサイズ除外限外濾過にかける;
e)残留物を回収する、
により水溶性成分を濃縮する、クラマス湖産微細藻類の抽出物。
【請求項3】
以下のステップ:
f)請求項1に記載のステップb)において得られる乾燥させた沈殿物を純エタノールに懸濁し、ホモジナイズし、そして暗所、室温において24時間定常攪拌下にホモジネートを保持する;
g)結果として得られる懸濁液を、4℃、3000rpmで5分間(5’)、遠心分離する;
h)上清を回収する;
i)場合によって、ステップf)からh)に従い、ペレットを第2のエタノール抽出にかける;
l)場合によって、上清を乾燥させ、脂溶性濃縮物を得る、
により得られる親油性成分が富化された分画を添加した、請求項1から2に記載のクラマス湖産微細藻類の抽出物。
【請求項4】
フィコシアニン/フィコエリスロシアニン複合体(C−PC/PEC)、フィコビオロビリン(PVB)、AFAフィトクロム、マイコスポリン様アミノ酸のポルフィラ334およびシノリンからなる群から選択される、請求項1から3に記載のクラマス湖産AFA微細藻類抽出物の単離された生理活性成分。
【化1】

【請求項5】
請求項1から3に記載のクラマス湖産藻類抽出物または請求項4に記載の単離成分、またはその混合物を含む物質(matter)の組成物。
【請求項6】
クロロフィル、ベータカロテン、プロビタミンAカロテノイド、キサントフィル類カロテン、カンタキサンチン、ビタミンまたはミネラルをさらに含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
栄養、美容、または薬剤の使用に適した、請求項5から6に記載の組成物。
【請求項8】
対象における細胞または組織に対する酸化的損傷を予防、制御または治療するための組成物の調製のための、請求項1から3に記載のクラマス湖産藻類抽出物または請求項4に記載のその単離成分の使用。
【請求項9】
対象における炎症を予防、制御または治療するための組成物の調製のための、請求項1から3に記載のクラマス湖産藻類抽出物または請求項4に記載のその単離成分の使用。
【請求項10】
対象における腫瘍細胞増殖を予防、制御または治療するための組成物の調製のための、請求項1から3に記載のクラマス湖産藻類抽出物または請求項4に記載のその単離成分の使用。
【請求項11】
対象における皮膚病変(affections)を予防、制御または治療するための組成物の調製のための、請求項1から3に記載のクラマス湖産藻類抽出物または請求項4に記載のその単離成分の使用。
【請求項12】
対象における眼病変(pathologies)を予防、制御または治療するための組成物の調製のための、請求項1から3に記載のクラマス湖産藻類抽出物または請求項4に記載のその単離成分の使用。
【請求項13】
前記組成物が、洗眼液の形態である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記対象が、ヒト対象である、請求項8から13に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図21】
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【図22】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図17】
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【図20】
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【図23】
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【公表番号】特表2009−541389(P2009−541389A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516970(P2009−516970)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005623
【国際公開番号】WO2008/000431
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(508375343)ヌトラテック ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (2)
【氏名又は名称原語表記】NUTRATEC S.R.L.
【Fターム(参考)】