アポモルヒネを含む肺吸入用医薬組成物
本発明は、性機能障害の治療に用いられる、アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはエステルの吸入可能製剤に関する。本発明はまた、アポモルヒネ製剤の調製方法、ならびに前記製剤を用いた性機能障害の治療方法および前記製剤を含む吸入器に関する。本発明はさらに、性機能障害の治療用薬物の製造におけるアポモルヒネの使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
「勃起障害」という用語は、米国国立衛生研究所により、満足のいく性交を可能にするのに十分な陰茎の勃起を男性が達成および維持できないことであると定義された(J. Am. Med. Assoc.、270(1):83〜90頁(1993)参照)。勃起には十分な動脈血の供給が不可欠であるため、血流を悪化させる障害はいずれも勃起障害の病因論に結びつけることができる。勃起障害の患者は数百万人の男性であり、一般には良性の障害であると考えられているにもかかわらず、彼等の生活の質に深い影響を与えている。しかし、多くの男性では、勃起障害が存在している状態でも、心理的欲求、オーガズムに達する能力、および射精能力が損なわれていないことがわかっている。
【背景技術】
【0002】
勃起障害の病原学的要因は本質的に、心因性または器質性の要因に分類される。
【0003】
勃起障害の心因性の要因としては、性的集中を低下させるか、あるいは感覚的経験の認識を低下させることにより勃起機能を損ね得る、うつ病、不安、および人間関係上の問題などの過程が挙げられる。これにより、勃起を開始または維持することが不可能になる。
【0004】
器質性の要因としては、神経性の要因および血管性の要因が挙げられる。神経性の要因としては例えば、反射発生性の勃起を損ない、勃起の維持に必要な触覚による感覚を中断させる体性神経経路の損傷、および、その位置および重症度に応じて、様々な程度の勃起不全を生じさせる脊髄損傷が挙げられる。血管性の危険因子としては、血流に悪影響を与え、喫煙、糖尿病、高血圧、アルコール、血管疾患、高濃度の血清コレステロール、低濃度の高密度リポタンパク質(HDL)、および関節炎などの他の慢性疾患状態が含まれる要因が挙げられる。
【0005】
例えば、Massachusetts Male Aging Study(MMAS、H.A. Feldmanら、J. Urol.、151:54-61頁(1994)が報告)は、完全勃起障害の年齢調整発生率が、糖尿病を明らかにした対象(sub)において、糖尿病にかかっていない対象の3倍であることを発見した。糖尿病のその多くの側面が勃起障害の直接的原因であることについて多少の異論は付しているが、血管障害を最も多く引き合いに出している。
【0006】
MMASはまた、勃起障害と、心臓疾患ならびにその関連危険因子である高血圧および血清中に低濃度の高密度リポタンパク質(HDL)との著しい相関性を発見した。未治療高血圧患者全体の8〜10%が、高血圧の診断を受けた時点で性的不能であることが報告されている。この文献における勃起障害と血管障害との関連は強力で、心筋梗塞患者、冠動脈バイパス手術を受けた患者、脳血管障害患者、および末梢血管疾患患者では勃起の血行動態が損なわれている。また、喫煙は血管性勃起障害の独立した危険因子であり、喫煙により循環器病に伴う勃起障害の危険性が増大することがわかった。
【0007】
女性も性機能障害にかかることがある。これは年齢に比例して増加することがわかっており、血管の危険因子の存在および閉経の開始に伴う。男性において陰茎を勃起させる血管および筋肉の機構の一部は、女性器の応答における血管性因子と同様であると思われる。
【0008】
女性では、性機能障害は器質性の要因、心因性の要因、またはその組み合わせから起こる。女性機能障害としては、性交の終了まで性的興奮による膣の潤滑-膨潤応答を得るかまたは維持できないことが挙げられる。器質性女性機能障害は、血流を不十分にし、膣の充血を不十分にし、陰核の勃起を不十分にする血管性障害と部分的に関係があることが知られている。
【0009】
米国特許第5770606号および米国特許第6291471号に記載されているように、男性における心因性および器質性の両方の勃起障害をオピオイドアポモルヒネで治療することが知られている。欧州では、男性勃起障害の治療用に、塩酸アポモルヒネの2〜3mgの舌下錠が、Uprima(商標)の名前で入手可能である(例えば公開医薬品審査報告書(EPAR)1945を参照)。
【0010】
アポモルヒネはモルヒネの誘導体であり、薬剤としての使用に関しては、1869年に催吐薬として初めて評価された。20世紀前半には、アポモルヒネは、精神医学的障害用の鎮静薬として、また、アルコール依存患者および麻薬常習者用の行動変化剤として使用された。1967年までに、アポモルヒネのドーパミン作動性効果が認識され、この化合物はパーキンソン症の治療に関して鋭意評価された。この時以降、アポモルヒネは、中枢神経系を刺激して、動物およびヒトにおいて、あくびとして現れる覚醒反応および陰茎の勃起を生じさせる、選択的ドーパミン受容体アゴニストに分類されている。
【0011】
欧州特許出願第0689438号では、パーキンソン病患者の「オフピリオド」症状の緩和に使用されるアポモルヒネ製剤が開示されている。この製剤は(アポモルヒネが水溶液中で不安定であるために選択された)乾燥粉末であり、鼻腔内投与され、鼻粘膜を経由して吸収される。
【0012】
一般に、従来技術ではアポモルヒネの吸入投与に対する偏見がある。これは、アポモルヒネが一般に刺激性の化合物とされていたため、アポモルヒネの吸入は不快であり、避けるべきであると考えられているためである。このため、欧州特許出願第0689438号に開示されている乾燥粉末製剤は、粒径が50〜100μmの粒子を含み、したがってこの粒子は前記鼻腔内投与の後、誤って肺に達することはない。
【0013】
WO 00/35457号は、治療有効量のアポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはプロドラッグを経口投与することで器質性の勃起障害を治療する方法を示唆している。アポモルヒネは嘔気を引き起こすという望ましくない副作用があり、この出願では、嘔気を回避しながら所望の治療効果を達成するのに十分な量のアポモルヒネを投与することが可能であるとしている。これは、最大約5.5ng/mlの血漿中アポモルヒネ濃度が得られる任意の量のアポモルヒネを投与することで可能であると示唆されている。
【0014】
WO 01/74358号では、アポモルヒネ製剤を用いた男性勃起障害の治療方法が記載されているとしている。この発明でも、嘔気を引き起こすことなく所望の治療効果を達成することを目指している。患者の血漿中アポモルヒネ濃度は最大10ng/mlであるといわれており、患者の15%未満が嘔吐を経験している。WO 01/74358号では、肺への吸入を含む各種の投与方式が提案されている。しかし、WO 01/74358号に例示された唯一の吸入用製剤は、犬の肺に直接気管を経由して導入されるアポモルヒネおよび重亜硫酸ナトリウムの水溶液を含んでいる。
【0015】
WO 99/38467号では、ヒト女性の性機能障害を寛解させる方法であって、前記ヒト女性にアポモルヒネを、前記女性の刺激下の陰核内血流および膣壁血流を向上させるのに十分な量、ただし実質的に嘔気を引き起こす量に満たない量で投与するステップを含む方法が記載されているとしている。このバランスを達成するために、血漿中アポモルヒネ濃度を5.5ng/ml以下に維持することが示唆されている。アポモルヒネの舌下投与が提案されている。
【0016】
従来技術ではアポモルヒネが性機能障害の治療に有用であることが明らかに開示されているが、公知の治療は未だ理想に達していない。従来技術でなされた主張にもかかわらず、治療による嘔吐は、この副作用を生じないと示唆されている血漿中アポモルヒネ濃度でさえ常に引き起こされる。さらに、既存の治療ではまた、治療効果の発現まで長い遅延がしばしば生じる。このため、いつ治療効果が現れるのが望ましいか予知し、次いでその前のある時間にアポモルヒネの用量を投与することを患者が必要とする場合には、先を見越した量が必要になる。
【0017】
従来技術では用量をできるだけ少なくして随伴性の副作用を低下させることを試みてきたが、これまで有効性と副作用の必要なバランスを達成するのは困難であった。しかし、肺吸入により少量のアポモルヒネを投与して、治療有効量のアポモルヒネに通常伴う副作用を回避または最小限に抑えながら、所望の治療効果を与えることができることがついに判明した。
【非特許文献1】J. Am. Med. Assoc.、270(1):83〜90頁(1993)
【非特許文献2】H.A. Feldmanら、J. Urol.、151:54-61頁(1994)
【特許文献1】米国特許第5770606号
【特許文献2】米国特許第6291471号
【非特許文献3】公開医薬品審査報告書(EPAR)1945
【特許文献3】欧州特許出願第0689438号
【特許文献4】WO 00/35457号
【特許文献5】WO 01/74358号
【特許文献6】WO 99/38467号
【非特許文献4】米国薬局方第26版、第601章、装置4(2003)
【特許文献7】WO 97/03649号
【特許文献8】WO 02/43701号
【特許文献9】WO 96/23485号
【特許文献10】WO 02/00197号
【特許文献11】米国特許第6257233号
【特許文献12】WO 01/00262号
【特許文献13】WO 02/07805号
【特許文献14】WO 02/89880号
【特許文献15】WO 02/89881号
【特許文献16】WO 01/82906号
【特許文献17】WO 02/030499号
【特許文献18】WO 01/89616号
【非特許文献5】米国薬局方第26版、第601章、装置3(2003)
【非特許文献6】米国薬局方第26版、第601章、装置B(2003)
【非特許文献7】欧州薬局方、方法5.2.9.18、装置C、補遺2000
【非特許文献8】EPAR(公開医薬品審査報告書)1945、Uprima、一般名:塩酸アポモルヒネ、「科学的議論」、25〜27頁(2002)
【非特許文献9】EPAR1945、「科学的議論」、12頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、治療効果が速やかに現れ、アポモルヒネの投与に通常伴う副作用、すなわち嘔気および眠気を減少させるか回避さえし、投与が容易である、性機能障害の治療を提供することにある。
【0019】
肺吸入により刺激を引き起こすことなくアポモルヒネを投与することが可能であることがついに見出された。毒物学研究が行われ、所望の治療効果を達成することが見込まれる用量を、28日の期間にわたり複数濃度で少なくとも12回投与した際、犬が吸入したアポモルヒネは安全であったことがわかった。研究では、刺激または他の組織病理学的変化の徴候はみられなかった。
【0020】
アポモルヒネの微粒子が肺から急速に吸収され、アポモルヒネの治療効果が極めて迅速に現れることも見出された。実際、治療効果の発現は、入手可能なUprima(登録商標)舌下錠によるアポモルヒネ投与後に観察される発現よりも著しく速やかである。
【0021】
さらに、性機能障害の治療に必要なアポモルヒネの量は、前記用量が肺吸入で投与される際に、Uprima(登録商標)舌下錠およびNastechにより開発されている鼻腔内アポモルヒネ組成物など、現在入手可能な形態の性機能障害治療用アポモルヒネにより与えられる用量に比べて著しく小さいことがわかった。
【0022】
さらに、アポモルヒネを肺吸入で投与すると、治療効果の例外的に速やかな発現と有利な持続時間および血漿からの薬物の速やかな除去を提供する、極めて有利な薬物動態プロファイルがもたらされる。これは、恐らくは薬物が頬粘膜にゆっくり吸収され、嚥下される薬物の割合が小さいために、治療効果の発現が遅れ、血漿中に薬物が長期間存在するという、Uprima(登録商標)錠の薬物動態とは対照的である。
【0023】
有利なことに、肺注入で投与されるアポモルヒネの小さい用量および/または結果として観察される血漿中濃度プロファイルにより、失神、嘔吐、および眠気を含む、アポモルヒネの投与に一般に伴う副作用の発生が低下することもわかった。
【0024】
最後に、本来は不安定で容易に酸化されるアポモルヒネを、経時安定性に優れ、したがって商業化に適した製剤として、肺吸入用に調剤できることがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の一態様によれば、アポモルヒネの投与に通常伴う副作用を回避または最小限に抑えながら、肺吸入により性機能障害を治療する、アポモルヒネを含む新規医薬組成物が提供される。
【0026】
本発明の他の一態様によれば、肺注入で投与されるアポモルヒネを含む新規医薬組成物を使用する、性機能障害の新規治療方法が提供される。これらの方法でも、アポモルヒネの投与に伴う副作用を回避しながら所望の治療効果が達成される。
【0027】
本発明の組成物および方法はまた、所望の治療効果の速やかな発現を提供する。さらに、本発明の組成物および方法は、男性および女性の両方の治療にも適している。
【0028】
本発明は、これまで用いられた投与方式に対していくつかの著しく、また予期しない利点を有する、アポモルヒネの高性能の吸入送達に関する。本発明の投与方式および製剤は、この優れた性能を可能にする。
【0029】
アポモルヒネは遊離塩基の形態で、または酸付加塩として存在することができる。本発明では、塩酸アポモルヒネおよびアポモルヒネの遊離塩基の形態が好ましいが、アポモルヒネの他の薬理学的に許容できる形態も使用できる。本明細書で用いる「アポモルヒネ」という用語は、この化合物の遊離塩基の形態、および薬理学的に許容できるその塩またはエステルを含む。
【0030】
塩酸塩以外の他の許容される酸付加塩としては、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸リン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、グルコン酸塩などが挙げられる。
【0031】
本明細書で用いるアポモルヒネの「薬学的に許容できるエステル」は、10位および11位のヒドロキシル官能基の一方または両方と形成され、in vivoで加水分解し、また人体内で容易に分解して本特許化合物またはその塩が残るエステルを含むエステルを意味する。好適なエステル基としては例えば、各アルキルまたはアルケニル部分の炭素数が6以下であるという点で有利である、薬学的に許容できる脂肪族カルボン酸、具体的にアルカン酸、アルケン酸、シクロアルカン酸、およびアルカン二酸から誘導されるエステル基が上げられる。具体的なエステルとしては例えばギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、アクリル酸エステル、およびコハク酸エチルが挙げられる。
【0032】
アポモルヒネの遊離塩基は、肺障壁を極めて容易に乗り越えるため、本発明では特に魅力的であることから、肺注入によるその投与により治療効果が極めて速やかに現れることが予測される。したがって、本明細書で開示される組成物はいずれも、アポモルヒネの遊離塩基を用いて調剤することができる。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、医薬組成物は乾燥粉末の形態である。好ましくは、乾燥粉末は乾燥粉末吸入器(DPI)により投与される。
【0034】
本発明の一実施形態では、組成物は、アポモルヒネを含む活性粒子であって、質量中央空気力学的粒径(MMAD)が10μm以下の活性粒子を含む。
【0035】
本発明の他の実施形態では、組成物はアポモルヒネの活性粒子、および粘着防止材であり、組成物中の粒子間の凝集を減少させる添加剤材料を含む。
【0036】
本発明のさらに他の実施形態では、組成物は、アポモルヒネ、およびラクトースなど不活性賦形剤材料の担体粒子を含む。担体粒子は約5〜約1000μmの平均粒径を有することができる。
【0037】
一代替実施形態では、組成物は、加圧式定量噴霧式吸入器(pMDI)を用いて投与される溶液または懸濁液である。本実施形態の組成物は、HFA134aまたはHFA227などの液体噴霧剤に混合または溶解した、上記で論じた乾燥粉末組成物を含むことができる。
【0038】
本発明の一実施形態では、吸入を経由して性機能障害を治療するのに用いられる組成物は、アポモルヒネ(すなわち、アポモルヒネ、アポモルヒネの遊離塩基、薬学的に許容できるその塩またはエステル。塩酸塩の重量を基準とする)約100μg〜約2400μgの用量を含む。用量は前記アポモルヒネ約200μg〜約1800μg、前記アポモルヒネ約300μg〜約1600μg、または前記アポモルヒネ約400μg〜約1200μgを含むことができる。他の実施形態では、各患者の必要量および耐性に基づいて、用量が400μg〜1200μgの単位で与えられる。例えば、前記アポモルヒネ約400、約500、約600、約700、約800、約900、約1000、約1100および/または約1200μgの用量を与えることができる。
【0039】
例えば、女性機能障害を治療する際、治療効果を得るのに比較的少ない用量で十分な場合、前記モルヒネ約100、約200、約300、約400、約500および/または約600μgの用量を与えることができる。
【0040】
本発明の別の実施形態では、粉末組成物の用量は、多段式液体インピンジャ、米国薬局方第26版、第601章、装置4(2003)、AndersenカスケードインパクタまたはNew Generationインパクタで測定された、(塩酸塩の重量を基準とする)アポモルヒネ約100μg〜約1800μgの微粒子用量をin vitroで送達する。好ましくは、用量は、前記アポモルヒネ約200μg〜約1200μg、前記アポモルヒネ約400μg〜約1000μg、約400μg〜約900μg、または前記アポモルヒネ約600μg〜約800μgの微粒子用量をin vitroで送達する。あるいは、例えば女性機能障害を治療する際、治療効果を得るのに比較的少ないアポモルヒネしか必要でない場合、用量は、前記アポモルヒネ約100μg〜約900μg、前記アポモルヒネ約200μg〜約600μg、前記アポモルヒネ約200μg〜約400μgの微粒子用量をin vitroで送達することが好ましい。
【0041】
肺吸入を経由したアポモルヒネの送達が、経口送達および鼻腔内送達など、従来技術で試みられた他の経路による送達より効率が高いことがわかった。下記で論じる研究では、肺吸入により用量1200μgを投与することで、めまいなど軽症の(重症ではない)副作用を伴ったが、失神および嘔吐などの重症な副作用は生じなかったことを示している。重症ではないにしても、用量1200μgに伴う軽症の副作用は、臨床環境以外でのこのような用量の使用に制限を与えると思われ、それより多い用量は研究されなかった。これらの発見とは対照的に、過去の研究では、アポモルヒネの吸入投与により、嘔吐などの深刻な副作用が生じないことは明らかにされなかった。さらに、Nastech Pharmaceutical Company Inc.がアポモルヒネの鼻腔内送達について行った研究では、2mgを超えるアポモルヒネを臨床環境で、許容できない副作用を引き起こさずに鼻腔内投与を行うことができることを示した。
【0042】
投与効率の高さは、400μgと少量のアポモルヒネの吸入投与後に臨床効果が観察されるという事実によっても示される。一方、Uprima(登録商標)舌下錠では、所望の効果を得るのに最低2mgが必要のようである。
【0043】
本発明のある実施形態では、アポモルヒネは粉末組成物の約3%〜約80%、約5%〜約50%、または約15%〜約40%である。
【0044】
本発明の一実施形態では、用量は塩酸アポモルヒネ約600μgを含み、この用量はin vivoで約3.5ng/ml〜約4.9ng/mlのCmaxを与える。他の実施形態では、用量は塩酸アポモルヒネ約900μgを含み、この用量はin vivoで約7.4ng/ml〜約8.8ng/mlのCmaxを与える。さらに他の実施形態では、用量は塩酸アポモルヒネ約1200μgを含み、この用量はin vivoで約9.2ng/ml〜約16.2ng/mlのCmaxを与える。任意の用量のアポモルヒネでのCmaxは、肺吸入投与の1〜30分後、好ましくは1〜5分後に現れる。薬物の終末排出にはいずれの用量でも約1時間かかる。
【0045】
したがって、本発明の一実施形態によれば、アポモルヒネを含む組成物であって、該組成物の肺吸入による投与が、投与後1〜5分以内にCmaxを与える組成物が提供される。
【0046】
一実施形態では、女性機能障害の治療に好ましくは、Cmaxは少なくとも2ng/nlである。他の実施形態では、Cmaxは少なくとも7ng/nlである。
【0047】
本発明の他の実施形態では、組成物の肺吸入による投与が、50〜70分の終末排出半減期を与える。
【0048】
さらに他の実施形態では、組成物の肺吸入による投与が、用量依存性AUC0-∞を与える。
【0049】
他の実施形態では、組成物の肺吸入による投与が、用量依存性AUC0-tを与える。
【0050】
本発明のさらなる実施形態では、組成物の肺吸入による投与が、用量依存性Cmaxを与える。
【0051】
本発明の他の実施形態によれば、アポモルヒネの用量が肺に吸入され、前記用量は約10分以内に治療効果を与えるのに十分である。
【0052】
一態様では、本発明は、性機能障害の治療用のアポモルヒネの単位用量を提供する。単位用量は、上記で論じたアポモルヒネを含む医薬組成物を含む。
【0053】
一実施形態では、本発明のアポモルヒネ組成物を含むブリスター(blister)が提供される。ブリスターは好ましくはホイルブリスターであり、空洞を有する基材をその中に含む。空洞は粉末組成物を含んでおり、破断可能なカバーで密封された開口部を有する。
【0054】
用量および/または薬物充填ブリスターは、好ましくは粉末組成物1〜5mgを含み、アポモルヒネは粉末組成物の約3%〜約80%、約5%〜約50%、または約15%〜約40%である。例えば女性機能障害の治療用に必要な治療用量が比較的少ない場合、アポモルヒネは粉末組成物の約3%〜約40%、約4%〜約25%、または約5〜20%であってもよい。
【0055】
本発明の他の実施形態によれば、本明細書に記載される本発明の化合物を含む乾燥粉末吸入器が提供される。
【0056】
さらなる実施形態では、吸入器は能動的吸入器である。さらに他の実施形態では、吸入器は呼吸作動式吸入器である。
【0057】
一実施形態では、本発明の組成物はブリスター中に保持され、その内容物は前記吸入器のいずれかを用いて投与することができる。好ましくは、ブリスターはホイルブリスターである。
【0058】
他の実施形態では、ブリスターは、組成物と接するポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンを含む。
【0059】
他の態様では、本発明は、粉末化アポモルヒネ組成物の吸入可能なエアロゾルの製造方法を対象とする。
【0060】
本発明のさらに別の態様では、肺吸入による性機能障害治療用の薬物の製造におけるアポモルヒネの使用が提供される。
【0061】
組成物、方法または治療、吸入器、ブリスター、吸入方法、および用量の一部は、好ましい平均粒径約40μm〜約70μmを有する担体材料を含むものとして上述されているが、他の実施形態によれば、これらの組成物、方法または治療、吸入器、ブリスター、吸入方法、および用量における担体材料は、他の平均粒径範囲、例えば約5μm〜約1000μm、約10μm〜約70μm、約20μm〜約30μmを有することができることを理解されたい。
【発明の効果】
【0062】
したがって、本発明が従来技術に対するいくつかの著しい利点を提供することが上記から明らかである。特に、本発明はアポモルヒネの高性能の肺送達を提供する。この高性能により、ピーク血液濃度に迅速に達することが可能になり、治療効果の迅速な臨床上の発現が可能になる。本発明により提供されるアポモルヒネの肺投与の効果は一貫しかつ再現可能であり、この高性能投与の一貫性により、アポモルヒネの投与に通常伴う副作用が減少する。また、この高性能が必要とする総用量は、他の投与経路を用いた場合に必要とされる総用量と比べても少ない。
【0063】
本発明の顕著な特徴は、アポモルヒネのより大きい血中濃度を達成し、従来技術のアポモルヒネ治療に比較して副作用を減少させながら、従来技術で用いられる量よりはるかに少ない量のアポモルヒネを投与することが可能であるという点である。実際、以下に示すように、本発明に従って投与されるアポモルヒネ900μgという用量は、Uprima(登録商標)4mg舌下錠で実現されるレベルの6倍のアポモルヒネの血中濃度を実現する一方で、許容できない副作用プロファイルのため市販されていないこの4mg錠剤とは対照的に、いかなる著しい副作用を引き起こすこともない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
本発明の実施形態は、性機能障害の治療に用いられる、アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはエステルの吸入可能製剤を対象とする。本発明の実施形態はまた、アポモルヒネ製剤の調製方法、ならびに前記製剤を用いた性機能障害の治療方法および前記製剤を含む吸入器に関する。本発明の実施形態はまた、性機能障害の治療用薬物の製造におけるアポモルヒネの使用も対象とする。
【0065】
本発明の吸入可能製剤は、乾燥粉末吸入器(DPI)を経由して投与することが好ましいが、加圧式定量噴霧式吸入器(pMDI)またはネブライズシステムを経由して投与してもよい。
【0066】
本発明では、アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはエステルの用量(すなわちμg単位)は、塩酸塩(塩酸アポモルヒネ)の重量を基準に記載する。したがって、「アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはエステル」100μgの用量は、塩酸アポモルヒネ100μgまたは等量の他の塩、エステル、もしくは塩基を意味する。
【0067】
乾燥粉末吸入用組成物
医薬活性薬剤を、乾燥微粒子(活性粒子)の形態で該活性薬剤を含む粒状薬物組成物の肺投与により患者に投与することが知られている。活性粒子の粒径は、活性薬剤の肺吸収の部位を決定する上で非常に重要である。粒子を肺の奥深くに送達するためには、粒子は極めて細かい必要があり、例えば質量中央空気力学的粒径(MMAD)が10μm未満である必要がある。空気力学的粒径が約10μmを超える粒子は、喉壁に嵌入する可能性が高く、一般的には肺に到達しない。空気力学的粒径が約5μm〜約2μmの粒子は、一般に細気管支に沈着されるが、空気力学的粒径が約3μm〜約0.05μmの比較的小さい粒子は肺胞に沈着される可能性が高い。
【0068】
本発明の一実施形態では、組成物は、アポモルヒネを含む活性粒子であって、MMADが10μm以下の活性粒子を含む。他の実施形態では、活性粒子のMMADは約5μm〜約2μmである。さらに別の実施形態では、活性粒子の質量中央空気力学的粒径は約3μm〜約0.05μmである。本発明の一実施形態では、アポモルヒネ粒子の少なくとも90%の粒径が5μm以下である。
【0069】
しかし、粒径約10μm未満の粒子は、その表面積と体積の比が大きいため熱力学的に不安定であり、表面の遊離エネルギーが著しく過剰になり、粒子が凝集する傾向にある。吸入器では、微粒子の凝集および粒子の吸入器壁への密着は、活性粒子が吸入器を大きな凝集物として離れるか、あるいは活性粒子が吸入器を離れられず吸入器の内部に密着した状態にとどまるか、または吸入器を目詰まりもしくは閉塞させるという点で問題である。
【0070】
吸入器の各作動間で、また異なる吸入器や異なる粒子バッチ(batch)の間で、粒子の安定な凝集物が形成される程度が一定でないため、用量の再現性が悪い。さらに、凝集物の形成は、活性粒子のMMADが非常に増大し得ることを意味しており、活性粒子の凝集物は肺の必要部分に到達しない。したがって、本発明の目的は、良好な再現性を与えるため投与が正確で予見可能になる粉末製剤を提供することにある。
【0071】
乾燥粉末製剤の計量用量(MD)は、問題の吸入器により提供される計量された形態で存在する活性薬剤の全質量である。例えば、MDはCyclohaler(登録商標)用カプセル、またはAspirair(登録商標)噴霧器中のホイルブリスター中に存在する活性薬剤の質量でもよい。
【0072】
放出用量(ED)は、作動後の吸入器から放出される活性薬剤の全質量である。吸入器の内部または表面上に残る物質は含まれない。EDの測定は、均一用量サンプリング装置(DUSA)としばしば呼ばれる装置で吸入器から放出された全質量を収集し、これを有効定量湿式化学アッセイで回収することで行われる。
【0073】
微粒子用量(FPD)は、作動後に吸入器から放出され、規定の限界値より小さい空気力学的粒径で存在する活性薬剤の全質量である。本明細書で微粒子用量またはFPDという用語を用いる場合、空気力学的粒径は5μmより小さい。FPDの測定は、2段式インピンジャ(TSI)、多段式液体インピンジャ(MSLI)、AndersenカスケードインパクタまたはNext Generationインパクタ(NGI)などのインパクタまたはインピンジャを用いて行われる。各インパクタまたはインピンジャは、段階(stage)ごとに所定の空気力学的粒径収集用カットポイントを有する。FPD値は、有効定量湿式化学アッセイで定量された段階ごとの活性薬剤回収率を解釈することで得られる。このアッセイでは、単一段階カットを用いてFPDを測定するか、段階ごとの沈着のより複雑な数学的補間を用いる。
【0074】
微粒子画分(FPF)は通常、EDで分けられたFPDとして定義され、百分率で表される。本明細書では、微粒子用量百分率(%FPD)という用語は、粒径5μm以下で送達される全計量用量の割合を意味するものとして使用される(すなわち、%FPD=100×FPD/全計量用量)。
【0075】
本明細書で「超微粒子用量」(UFPD)という用語は、吸入器で送達され、粒径3μm以下である活性材料の全質量を意味するものとして使用される。本明細書で「超微粒子画分」という用語は、吸入器で送達され、粒径3μm以下である活性材料の全量の割合を意味するものとして使用される。本明細書で超微粒子用量百分率(%UFPD)という用語は、粒径3μm以下で送達される全計量用量の割合を意味するものとして使用される(すなわち、%UFPD=100×UFPD/全計量用量)。
【0076】
本明細書では、「送達用量」および「放出用量」または「ED」という用語は互換的に使用される。これらは吸入用製品に関する現行の欧州薬局方モノグラフに示すように測定される。
【0077】
「吸入器の作動」とは、粉末の用量が吸入器中のその静止位置から除去されるプロセスを意味する。このステップは、粉末が吸入器に充填されてすぐに使用可能になった後に行われる。
【0078】
微粒子が凝集する傾向があることは、所与の用量におけるFPFが極めて予見不能となり、結果として肺または肺の正確な部分に投与される微粒子の割合が変化しやすいことを意味している。これは例えば、微粒子の形態で純粋薬物を含む製剤において観察される。そのような製剤は流動性が小さく、FPFも少ない。
【0079】
この状況を改善し、一定のFPFおよびFPFを与える試みとして、乾燥粉末製剤にはしばしば添加剤材料が含まれる。
【0080】
添加剤材料は、乾燥粉末製剤中の粒子間の凝集を低下させることを目的とする。添加剤材料は、微粒子間の弱い結合力に干渉し、粒子を分離した状態にとどめ、このような粒子の相互間の、存在すれば製剤中の他の種の粒子との、および吸入器の内面に対する粘着を低下させる。粒子の凝集体が形成された場合、添加剤材料の粒子を加えることでこれらの凝集体の安定性が低下するため、凝集体は吸入器の作動で創出された乱気流中で壊れやすくなり、粒子は装置から除去され、吸入される。凝集体が壊れる際に、活性粒子は個別の微粒子、または肺に到達することが可能な少数の粒子の凝集体に戻ることができる。
【0081】
従来技術では、(一般に粒径が活性微粒子に匹敵する)添加剤材料の別の粒子を含む乾燥粉末製剤が議論されている。いくつかの実施形態では、添加剤材料は、活性粒子および/または任意の担体粒子上にコーティング、一般には不連続コーティングを形成することができる。
【0082】
好ましくは、添加剤材料は粘着防止材であり、粒子間の凝集を低下させる傾向にあり、微粒子が吸入器の内面に接着することも防止する。有利には、添加剤材料は減摩剤または流動促進剤であり、粉末製剤の吸入器中での流動性を向上させる。このように使われる添加剤材料は粘着防止材または減摩剤と常に呼ばれる訳では必ずしもないが、粒子間の凝集を減少させるか、粉末の流動を促進させる効果を有する。添加剤材料は時に力制御剤(FCA)とも呼ばれ、通常は用量再現性を改善し、より高いFPFを実現する。
【0083】
したがって、本明細書で用いる添加剤材料またはFCAは、それが粒子表面に存在することで、他の粒子の存在下で、また粒子が曝される表面に関して、その粒子が受ける粘着および凝集表面力を改変することができる材料である。一般に、その機能は粘着力および凝集力の両方を低下させることである。
【0084】
粒子が互いにまたは吸入器自体に強力に結合する傾向が低下することで、粉末の凝集および粘着が低下するだけでなく、流動特性の改善を進めることもできる。これにより、各用量について計量される粉末量のばらつきが低下し、吸入器からの粉末の放出が向上するため、用量再現性が向上する。また、吸入器から離れる活性材料が患者の肺の下部に到達する可能性が高まる。
【0085】
粉末が吸入器内にある際には、粒子の不安定な凝集体が存在することが好ましい。上記したように、粉末が吸入器を効率よく再現可能に離れるためには、このような粉末の粒子は大きい、好ましくは40μmより大きい必要がある。このような粉末は、粒径約40μm以上の個々の粒子、および/または粒径が約40μm以上のより微小な粒子の凝集体の形態であることができる。形成された凝集体の直径は約1000μmとなり、添加剤材料を加えることで、これらの凝集体は吸入時に形成される乱気流中で効率よく壊れやすくなる。したがって、粉末中に粒子の不安定なまたは「柔らかい」凝集体が形成されていることが、実質的に凝集が存在しない粉末に比較して好ましい。そのような不安定な凝集体は、粉末が吸入器内にある際には安定であるが、粉末が投与されると破壊される。
【0086】
活性粒子間の凝集および密着の減少により、凝集体の直径が減少するか、または個別の粒子になって同等の性能が得られる。
【0087】
したがって、本発明の他の実施形態では、組成物はアポモルヒネの活性粒子および添加剤材料を含む。添加剤材料は、WO 97/03649号に開示されているように、活性粒子の表面に密着する傾向にある粒子の形態であってもよい。あるいは、添加剤材料は、WO 02/43701号に開示されているように、例えば共粉砕法により活性粒子の表面をコートしてもよい。
【0088】
本発明のある実施形態では、アポモルヒネ製剤は「担体を含まない」製剤であり、アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはエステルおよび1種または複数の添加剤材料が含まれる。そのような担体を含まない製剤はWO 97/03649号に開示されており、その開示全体を参照により本明細書に組み込む。これらの実施形態によれば、粉末製剤は、アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはエステル、および粘着防止材を含む添加剤材料を含む。
【0089】
粉末は、アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはエステルを粉末の重量に対して少なくとも60重量%含む。有利には、粉末は、アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはエステルを粉末の重量に対して少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%含む。最も有利には、粉末は、アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはエステルを粉末の重量に対して少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、さらに好ましくは少なくとも97重量%含む。できるだけ小さい粉末、特に患者に投与されるべき有効成分以外の物質を肺に導入することには生理学的利点があると思われる。そのため、添加剤材料の添加量はできるだけ少ないことが好ましい。したがって、最も好ましい粉末は、アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはエステルの99重量%を超える。
【0090】
有利には、これらの「担体を含まない」製剤では、粉末粒子の少なくとも90重量%が粒径63μm未満、好ましくは30μm未満、より好ましくは10μm未満である。上記で示すように、アポモルヒネ(または薬学的に許容できるその塩もしくはエステル)粒子の粒径は、肺の下部への効果的な送達のためには、0.1μm〜5μmの範囲内にあるべきである。添加剤材料が粒子の形態である場合、これらの添加剤粒子は粒径が肺の下部への送達に好ましい範囲の外にあることが有利である。
【0091】
添加剤材料はアミノ酸を含むことが特に有利である。アミノ酸は、添加剤材料として存在する場合、活性材料の大きい呼吸性画分を与え、粉末の流動性を良好にする。好ましいアミノ酸はロイシン、特にL-ロイシンである。アミノ酸のL形が一般に好ましいが、D形およびDL形を使用してもよい。添加剤材料は、任意の以下のアミノ酸、すなわちロイシン、イソロイシン、リシン、バリン、メチオニン、システイン、およびフェニルアラニンの1種または複数を含んでもよい。有利には、粉末は、アポモルヒネ(または薬学的に許容できるその塩)を粉末の重量に対して少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%含む。有利には、粉末は添加剤材料を粉末の重量に対して8%以下、より有利には5重量%以下で含む。上記に示すように、場合によっては粉末が添加剤材料を約1重量%含むことが有利である。添加剤材料は、ステアリン酸マグネシウムまたはコロイダル二酸化ケイ素を同時に(または代替的に)含んでもよい。
【0092】
添加剤材料またはFCAは、約0.1重量%〜約10重量%、好ましくは約0.15%〜5%、最も好ましくは約0.5%〜約2%の量で与えることができる。本発明では、好適な添加剤材料としては粘着防止材が挙げられるが、それだけに限定されない。添加剤材料としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ロイシン、レシチン、およびフマル酸ステアリルナトリウムが挙げられ、参照により本明細書に組み込まれるWO 96/23485号にさらに詳しく記載されている。
【0093】
添加剤材料が微粉化ロイシンまたはレシチンの場合、約0.1重量%〜約10重量%の量で与えるのが好ましい。好ましくは、添加剤材料は、微粉化ロイシンの約3%〜約7%、好ましくは約5%である。好ましくは、微粉化ロイシンの少なくとも95重量%が粒径150μm未満、好ましくは100μm未満、最も好ましくは50μm未満である。好ましくは、微粉化ロイシンの質量中央径は10μm未満である。
【0094】
ステアリン酸マグネシウムまたはフマル酸ステアリルナトリウムを添加剤材料として使用する場合、約0.05%〜約10%、約0.15%〜約5%、約0.25%〜約2%、または約0.15%〜約0.5%の量で与えることが好ましい。
【0095】
乾燥粉末の投与装置からの抽出を向上させ、一定のFPFおよびFPDを提供するさらなる試みとして、乾燥粉末製剤にはしばしば、活性材料の微粒子と混合した賦形剤材料の担体粗粒子が含まれる。吸入器内では、活性微粒子は、互いに密着するよりは担体粗粒子の表面に密着する傾向にあるが、投与装置の作動および気道吸入時に放出されて分散し、微細懸濁液を与える。担体粒子のMMADは90μmを超えることが好ましい。
【0096】
担体微粒子が含まれていることは、非常に少ない用量の活性薬剤を投与する場合、非常に魅力的である。非常に少量の粉末を正確かつ再現性高く投与することは非常に難しく、非常に少量の粉末しか投与せず、粉末が活性粒子を主に含む場合、投与された粉末の量のばらつきが小さくても、活性薬剤の用量のばらつきは大きくなる。したがって、希釈剤を大きな賦形剤粒子の形態で加えると、投与がより再現性高く正確になる。
【0097】
担体粒子は、任意の許容される不活性賦形剤材料または材料の組み合わせからなることができる。例えば、担体粒子は、糖アルコール、ポリオール、および結晶糖から選択される1種または複数の材料からなることができる。他の好適な担体としては、塩化ナトリウムおよび炭酸カルシウムなどの無機塩、乳酸ナトリウムなどの有機塩、ならびに多糖およびオリゴ糖などの他の有機化合物が挙げられる。有利には、担体粒子はポリオールを含む。具体的には、担体粒子は結晶糖、例えばマンニトール、デキストロース、またはラクトースの粒子であることができる。好ましくは、担体粒子はラクトースからなる。
【0098】
しかし、担体粗粒子を活性微粒子の組成物に加える際に出会うさらなる困難として、送達装置の作動時に比較的大きい担体粒子の表面から微粒子を離れさせることがある。
【0099】
他の活性粒子および担体粒子に活性粒子が存在する場合それを分散させて吸入用活性微粒子のエアロゾルを形成するステップは、肺ないの所望の吸収部位に到達する活性材料の用量の割合を測定する上で重要である。この分散の効率を向上させるため、組成物中に上記で論じた天然の添加剤材料を含めることが知られている。活性微粒子、担体粒子、および添加剤材料を含む組成物はWO 96/23485号に開示されている。
【0100】
したがって、本発明の一実施形態では、組成物はアポモルヒネを含む活性粒子および担体粒子を含む。担体粒子の平均粒径は、約5〜約1000μm、約4〜約40μm、約60〜約200μm、または約150〜約1000μmであることができる。担体粒子に有用な他の平均粒径は約20〜約30μmまたは約40〜約70μmである。
【0101】
アポモルヒネおよび担体粒子を含む組成物は、添加剤材料をさらに含むことができる。添加剤材料は、WO 97/03649号に開示されているように、活性粒子の表面に密着する傾向にある粒子の形態であってもよい。あるいは、添加剤材料は、WO 02/43701号に開示されているように、例えば共粉砕法により活性粒子の表面をコートしてもよく、WO 02/00197号に開示されているように、担体粒子の表面をコートしてもよい。
【0102】
乾燥粉末吸入器では、投与されるべき用量は非加圧乾燥粉末の形態で貯蔵され、吸入器が作動すると、粉末の粒子は患者により吸入される。乾燥粉末吸入器は、患者の息が吸入器の原動力を与える唯一のガス源である「受動式」吸入器であることができる。「受動式」乾燥粉末吸入器としては例えば、RotahalerおよびDiskhaler(GlaxoSmithKline)、Turbohaler(Astra-Draco)ならびにNovolizer(商標)(Viatris GmbH)が挙げられる。あるいは、圧縮ガス源または代替エネルギー源を用いる「能動式」吸入器を使用することもできる。好適な能動式吸入器としては例えば、Aspirair(商標)(Vectura Ltd)および(米国特許第6257233号が対象とする)Nektar Therapeutics製能動式吸入器が挙げられる。
【0103】
特に好ましい「能動式」乾燥粉末吸入器は、本明細書ではAspriair吸入器と称する。詳細は、その内容が参照により本明細書に組み込まれるWO 01/00262号、WO 02/07805号、WO 02/89880号、およびWO 02/89881号に記載されている。ただし、本発明の組成物は受動式または能動式のいずれの吸入器でも投与可能であると理解されたい。
【0104】
前述の粉末製剤を患者に送達するのに使用できる好ましい吸入器の概要を図1に示す。この種の吸入器はWO 02/089880号およびWO 02/089881号に詳述されている。
【0105】
図1および2によれば、吸入器は、渦室12を含み、入口と出口を有する、粉末製剤のエアロゾル生成用の渦ノズル11を含む。渦室は、それを通じて使用者が吸入して吸入器を使用するマウスピース13内に位置する。通気道(図示せず)は渦室とマウスピースの間に画定することができ、それにより使用者は粉末化薬物以外に空気も吸入可能になる。
【0106】
粉末製剤は、支持体および貫通可能なホイル蓋により画定されるブリスター14内に収容される。ブリスター保持器15はブリスターを所定の位置に保持する。図示するように、支持体はその内部に形成される粉末製剤保持用の空洞を有する。空洞の開口端は蓋で密封される。渦室の空気流入管の末端には、貫通可能なホイル蓋を貫通する貫通ヘッド16がある。リザーバ17が通路を介してブリスターに接続している。空気源、好ましくは加圧ガスまたは噴霧剤の手動ポンプまたはキャニスターが、リザーバにガス(例えばこの例では空気)を所定の圧力(例えば1.5バール)まで充填する。好ましい一実施形態では、リザーバは、リザーバ室を画定するシリンダ内に収容されるピストンを含む。ピストンはシリンダ内に推進されてリザーバ室の体積を減少させ、充填ガスに加圧する。
【0107】
使用者が吸入すると、バルブ18が呼吸作動式機構19により開かれることにより、空気が加圧空気リザーバからブリスターを通過し、そこで粉末製剤が気流中に混入する。気流は粉末製剤を渦室12に運び、そこで粉末製剤と空気の回転渦が入口と出口の間に生まれる。気流中に混入した粉末製剤は、渦室を連続的に通過するよりは、渦室に非常に短時間(典型的には0.3秒未満、好ましくは20ミリ秒未満)留まり、純粋な薬物製剤(すなわち、担体なし)の場合、粉末製剤の一部が渦室の壁に付着する。次に、この粉末は、粉末近傍の境界層に存在する強い剪断力によりエアロゾルになる。渦の作用により粉末製剤の粒子は脱凝集され、薬物および担体を含む製剤の場合は、薬物が担体から取り除かれ、したがって粉末製剤のエアロゾルは出口を経由して渦室から出る。エアロゾルは使用者によりマウスピースを通じて吸入される。
【0108】
渦室は2つの機能を果たすと考えられている。脱凝集、すなわち粒子のクラスターを個別の呼吸性粒子に分解すること、および、濾過、すなわち特定の粒径未満の粒子を選択的に、出口からより簡単に出られるようにすることである。脱凝集により、粉末製剤の凝集クラスターは呼吸性粒子に分解され、濾過により、クラスターの渦室に滞留する時間が長くなり、クラスターが脱凝集するための時間が長くなる。脱凝集は、乱気流、および渦室内の気流の速度勾配による強い剪断力の形成により実現することができる。速度勾配は、渦室の壁に近い境界層で最も急である。
【0109】
渦室は、実質的に円筒型室の形態である。有利には、渦室は非対称形である。図2および3に示す実施形態では、渦室の壁8は螺旋または渦巻の形態である。入口3は渦室1の外周に対して実質的に接線方向にあり、出口2は渦室1の軸に対して一般に同心状である。したがって、ガスは入口3を経由して渦室1に接線方向に入り、出口2を経由して軸方向に出る。出口2の中央から測定した渦室1の半径Rは、入口の最大半径Rmaxから最小半径Rminまで平坦に小さくなる。したがって、入口3の位置から角度θ(シータ)の半径RはR=Rmax(1-θk/2pi)で求められ、式中、k=(Rmax-Rmin)/Rmaxである。気流および薬物の混入粒子が室の周囲を循環すると、渦室1の有効半径が小さくなる。こうして、気流が通過する渦室1の有効断面積が小さくなり、気流は加速されて薬物の混入粒子の沈着が減少する。さらに、気流が2piラジアン(360°)を通過する際、気流は入口3を経由して流入する気流と平衡になり、気流の衝突により引き起こされる乱気流が減少し、渦中での流体の損失が少なくなる。
【0110】
入口3と出口2の間に渦が生まれ、そこで剪断力が発生して粉末製剤の粒子を脱凝集させる。薬物が出口の壁に沈着する可能性を減少させるため、出口2の長さはできるだけ短いことが好ましい。図2の吸入器の渦室の一般的な形態を図3に示す。渦室の形状は下記の表に列挙した寸法により確定する。これらの寸法の好ましい値も表に示す。室の円錐状部分の高さhの好ましい値が0mmであることに留意されたい。これは、渦室は先端(屋根)が平板である時に最も効率よく機能することがわかったためである。
【0111】
【表1】
【0112】
室1の直径と出口2の直径の比は、ノズルのエアロゾル形成性能に多大な影響を与える。図2の非対照ノズルでは、直径は(Rmax+Rmin)として定義される。比は4〜12、好ましくは6〜8である。図2および3の好ましい実施形態では、比は6.9である。
【0113】
図示した実施形態では、渦室はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、アクリル、または黄銅から機械加工されるが、広範な代替材料が可能である。渦室をポリマーから射出成形することが、高体積での製造に有利である。好適な材料としてはポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリアミド、ポリスチレン、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ならびにポリプロピレンおよびポリエチレンテレフタレート(PET)を含むポリオレフィンが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0114】
本発明の実施形態による吸入器は、大きい微粒子画分を有する比較的ゆっくり移動するエアロゾルを生成することができる。吸入器は、粉末薬物の測定用量を完全かつ反復可能にエアロゾル化し、患者の吸気流の速度未満かそれと実質的に同じである速度でエアロゾル化した用量を吸気流に送達し、したがって患者の口への嵌入による沈着を減少させることが可能である。さらに、この効率的エアロゾル化系は、エアロゾル形成に用いられるエネルギーが小さいため、単純で小さく低コストの吸入器を可能にする。アエロゾル形成に必要な流体エネルギーは、圧力に流量を乗じた経時的積分として定義できる。これは典型的には5ジュール未満であり、3ジュールと低くてもよい。
【0115】
本発明のある実施形態では、粉末組成物の少なくとも35%である微粒子画分が、吸入器の作動時に生成される。微粒子画分は45%、50%、または60%以上であるのが特に好ましい。微粒子画分は、好ましくは少なくとも70%であり、最も好ましくは少なくとも80%である。一実施形態では、この粉末はアポモルヒネと担体材料の組み合わせを含む。
【0116】
最も好ましくは、粉末組成物の投与に用いられる吸入器は能動式吸入器であり、この装置では、粉末組成物の少なくとも35%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%である微粉末画分が吸入器の作動時に生成される。能動式吸入器は用量のエアロゾル化において患者の吸入に依存しないため、薬物の送達が、受動式吸入器を用いて観察した場合と比べてより反復可能になる。
【0117】
本発明の他の実施形態によれば、アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはエステルの用量は、投与用量のうちの微粉末用量に関して規定される。肺に到達する用量中のアポモルヒネの割合(%FPD)は、使用される製剤および使用される吸入器に依存する。したがって、35%の%FPDが得られる場合、塩酸アポモルヒネの用量1000μgでは患者の肺にアポモルヒネ350μgが送達される一方、60%の%FPDが得られる場合、同用量では患者の肺にアポモルヒネ600μgが送達され、%FPDが70%の場合、700μgが送達されるものと、本発明では予測している。したがって、アポモルヒネの用量を、多段式液体インピンジャまたはAndersonカスケードインパクタで測定される、使用された製剤および吸入器におけるFPDに関して規定するのが適当である。
【0118】
したがって、本発明の他の実施形態によれば、患者の肺に粉末組成物の用量を吸入させるステップを含む、吸入による性機能障害の治療方法であって、粉末組成物の用量が多段式液体インピンジャ、米国薬局方第26版、第601章、装置4(2003)、AndersenカスケードインパクタまたはNew Generationインパクタで測定された、(塩酸塩の重量を基準とする)アポモルヒネ約100μg〜約1800μgの微粒子用量をin vitroで送達する方法が提供される。好ましくは、用量は、前記アポモルヒネの微粉末用量約200μg〜約1200μg、約400μg〜約1000μg、約400μg〜約900μg、または約600μg〜約800μgをin vitroで送達する。あるいは、例えば女性機能障害を治療する際、治療効果を得るのに比較的少ないアポモルヒネしか必要でない場合、用量は、前記アポモルヒネ約100μg〜約900μg、前記アポモルヒネ約200μg〜約600μg、前記アポモルヒネ約200μg〜約400μgの微粒子用量をin vitroで送達することが好ましい。
【0119】
多段式液体インピンジャに関して上記のように定義される、(塩酸塩の重量を基準とする、アポモルヒネの遊離塩基、または薬学的に許容できるアポモルヒネの塩もしくはエステルを含む)アポモルヒネの用量は、本明細書に記載されるブリスター、吸入器、および組成物に関しても同様に使用することができる。
【0120】
微粒子画分以外の他の対象パラメータは、上記で定義した超微粒子画分である。粒径が5μm未満の粒子(FPFに対応)が肺への局所送達に好適であるが、全身送達ではさらに微小な粒子が必要である。薬物が血流に吸収されるためには肺胞に到達しなければならないからである。したがって、本発明の製剤および吸入器が、少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも60%、最も好ましくは少なくとも70%の超微粒子画分を与えるのに十分であることが特に好ましい。
【0121】
好ましくは、活性材料の少なくとも90重量%が粒径10μm以下、好ましくは5μm以下である。それにより粒子は吸入器の作動時に良好な懸濁液を与える。
【0122】
本発明の一実施形態によれば、能動型吸入器を用いてアポモルヒネ乾燥粉末製剤を投与し、最善の微粉末画分および微粉末用量を実現し、かつ、非常に重要なことだが、これを一貫して実現するのを確実にすることができる。好ましくは、吸入器は、患者の吸入開始により用量送達の引き金が切られるような呼吸引き金手段を含む。これは、患者がその吸入と吸入器の作動とを調整する必要がなく、用量を吸気流の最適地点に送達することができることを意味する。このような吸入器を一般に「呼吸作動式」と称する。
【0123】
上述のRotohalerおよびDiskhalerなど従来の吸入器を用いる本発明の実施形態では、担体粒子の粒径が約10〜約1000μmに及ぶことがある。これらの実施形態の一部では、担体粒子の粒径が約20μm〜約120μmに及ぶことがある。これらの実施形態の他の一部では、担体粒子の少なくとも90重量%の粒径が1000μm未満、好ましくは60μm〜1000μmである。これらの担体粒子は粒径が比較的大きいため、良好な流動および混入特性を与える。
【0124】
これらの実施形態では、粉末は賦形剤材料の微粒子を含んでもよい。この材料は例えば、担体材料としての使用に適した上記で言及した材料の1種などの材料、特にデキストロースまたはラクトースなどの結晶糖であることができる。微小な賦形剤材料は、賦形剤材料と担体粒子の両方が存在する場合、担体粒子と同一または異なる材料からなることができる。微粒子材料の粒径は一般に30μmを超えず、好ましくは20μmを超えない。
【0125】
粉末はまた、送達および放出を促進する追加の賦形剤を用いて調剤してもよい。例えば、上記で論じたように、粉末組成物は、粉末の流動特性を促進する比較的大きな担体粒子、例えば質量中央空気力学的粒径が90μmを超えない粒子を用いて調剤してもよい。あるいは、疎水性微粒子を担体材料中に分散してもよい。例えば、疎水性微粒子を多糖またはポリマーマトリックス内に分散して、組成物全体を肺への直接送達用の微粒子として調剤してもよい。多糖またはポリマーは、活性薬剤の即時放出に対するさらなるバリアとして働く。これはさらに制御放出プロセスを促進する。好適な多糖の一例はキサンタンガムである。好適なポリマー材料としてはポリ乳酸、ポリグリコール酸などが挙げられる。好ましい疎水性材料としては、オレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エルカ酸、ベヘン酸などの固相脂肪酸、またはその(エステルおよび塩などの)誘導体が挙げられる。このような材料の具体例としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ならびに天然および合成肺界面活性剤の他の例が挙げられる。特に好ましい材料としては、肺を経由した送達用に認可された金属ステアリン酸塩、特にステアリン酸マグネシウムが挙げられる。
【0126】
大きな担体粒子は、上記で論じたDiskhalerおよびRotahaler吸入器など受動型吸入器を用いて投与されるべき組成物に含まれる際に特に有用である。これらの吸入器は、作動時に吸入器内で大きな乱気流を生むことがないため、担体粒子の存在は、担体粒子が粉末の流動特性に有利な影響を与えるという点で有利であり、粉末が収容されているブリスターまたはカプセルから粉末を抽出するのがさらに容易になる。
【0127】
ある状況では、吸入用粉末は粉末の各成分を同時に混合することで調製してもよい。例えば、粉末は活性材料の粒子とラクトースを共に混合することで調製してもよい。
【0128】
能動式吸入器、例えば上述のAspirair吸入器を用いる本発明の実施形態では、担体粒子は好ましくは5〜100μmであり、粒径40〜70μmまたは粒径20〜30μmであってもよい。所望の粒径は、例えば賦形剤を篩い分けすることで得られる。所望の粒径範囲40〜70μmを得るには、材料を45〜63μmのスクリーンに通して、45μmスクリーンを通過する粒子を除外し、63μmを通過しない粒子を除外することで篩い分ければよい。最も好ましくは、賦形剤はラクトースである。
【0129】
アポモルヒネ粒子の好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも99%が粒径5μm以下である。下記に詳述するように、このような製剤は、好ましい能動型吸入器を経由して投与される場合、約80%を超える微粉末画分、および約70%を超える超微粉末画分を与えることができる。
【0130】
投与装置が作動時に装置内に大きい乱気流を生む場合、そのような製剤では、粉末は、粉末の流動特性を向上させる大きな担体粒子を含む必要がない。装置はたとえ粉末の流動特性が低くとも粉末を抽出できるため、そのような製剤に用いられる希釈剤材料の粒径を小さくすることが可能である。一実施形態では、賦形剤材料の粒子は粒径10μm以下にさえしてもよい。
【0131】
本発明の粉末組成物がその内部で通常用いられる乾燥粉末吸入器としては、粉末組成物の個別の用量が吸入器中に、例えば単一用量カプセルまたはブリスターの形で導入される「単一用量」吸入器、例えばRotahaler(商標)およびSpinhaler(商標)、ならびに、吸入器の作動時に粉末の1用量が、吸入器に含まれる粉末材料のリザーバから取り除かれる複数用量吸入器、例えばTurbohaler(商標)が挙げられる。
【0132】
上述のように、ある粉末の場合、能動式吸入器には、他の形態の吸入器を用いた場合に比べてより大きい微粉末画分およびより一貫した用量間の反復可能性が得られるという利点がある。そのような吸入器としては、例えばAspirair(商標)またはNektar Therapeuticsの能動式吸入器が挙げられ、患者の吸入が粉末のエアロゾル化した雲の生成の引き金をひく、同種の呼吸作動式吸入器であってもよい。
【0133】
担体粒子が存在する場合、その量は、粉末の全重量に対して最大99重量%、最大95重量%、最大90重量%、最大80重量%、または最大50重量%である可能性がある。任意の賦形剤材料が存在する場合、その量は、粉末の全重量に対して最大50重量%、有利には最大30重量%、特別には最大20重量%である可能性がある。
【0134】
粉末粒子の粒径に言及する場合、粒径とは、反対のことを指さない限り、体積加重粒径のことであると理解されたい。粒径はレーザー回折法で計算することができる。粒子が粒子表面上に添加剤材料を含む場合、コートされた粒子の粒径もまた、コートされていない粒子に関して示した好ましい粒径範囲内にあることが有利である。
【0135】
肺の深部に送達される活性材料の粒子の割合をできるだけ大きくするのが明らかに望ましい一方、肺の深部に侵入する他の成分をできるだけ少なくするのが通常好ましい。そのため粉末は一般に、活性材料の粒子、および活性材料の粒子を担持する担体粒子を含む。
【0136】
WO 01/82906号に記載されているように、用量が投与されたことを患者に示す添加剤材料を、その用量中に与えることもできる。以下で指標材料と称する添加剤材料は、乾燥粉末吸入器用に調剤された粉末中に存在するか、または例えば吸入器内の別の位置に別個の形態で存在することができ、それにより添加剤は、活性材料を含む粉末と同時に、またはそれに引き続き、吸入時に生成された気流湯中に混入する。
【0137】
ある状況、例えば、存在する任意の担体粒子および/または任意の微小な賦形剤材料が、それ自体口咽頭領域内で感覚を誘発することが可能な材料からなる場合、担体粒子および/または微小な賦形剤材料は指標材料を構成することができる。例えば、担体材料および/または微粒子賦形剤はマンニトールを含んでもよい。他の好適な指標材料はメントールである。
【0138】
上記で論じたように、本発明の一実施形態では、アポモルヒネと担体材料の組み合わせを含む吸入可能な粉末組成物が提供される。好適なアポモルヒネのエステルの一例は、ジイソブチリルアポモルヒネである。あるいは、アポモルヒネは塩酸アポモルヒネを含むか、アポモルヒネは遊離塩基の形態である。
【0139】
いずれにせよ、アポモルヒネは、前記アポモルヒネ約200μg〜約1800μg、前記アポモルヒネ約300μg〜約1600μg、または前記アポモルヒネ約400μg〜約1200μgの量で与えられる。他の実施形態では、各患者の必要量および耐性に基づいて、用量が400〜1200μgの単位で与えられる。例えば、前記アポモルヒネ約400、約500、約600、約700、約800、約900、約1000、約1100および/または約1200μgの用量を与えることができる。例えば、女性機能障害を治療する際、治療効果を得るのに比較的少ない用量で十分な場合、前記モルヒネ約100、約200、約300、約400、約500および/または約600μgの用量を与えることができる。
【0140】
これらの粉末組成物が吸入された場合、好ましくは、治療効果が発現するまでの時間は15分未満、より好ましくは約10分未満、最も好ましくは9分未満である。この根拠は、以下でより詳しく論じる薬物動態データである。データが示すところでは、1名を除く全対象で、また試験したアポモルヒネの全用量について、1〜3分後にCmaxが得られた。血漿からの薬物の排出は比較的迅速であり、薬物動態研究で試験した全用量について約60分の終末半減期が観察される。血漿からの薬物のこのように速やかな排出は有利である。アポモルヒネは、自動車または重機の運転などある種の作業を患者が行うのを妨げることがある眠気などの副作用を有することが知られているからである。
【0141】
また、Cmax、AUC0-∞およびAUC0-tについても用量比例性が示された。
【0142】
本発明のある実施形態では、各用量はブリスターパックのホイル「ブリスター」内に収容される。アポモルヒネは酸化されやすいため、投与前にアポモルヒネの酸化を防止(または実質的に制限)することが重要である。ホイルブリスターを用いる本発明の実施形態によれば、投与前の製剤の空気への暴露(および許容できないアポモルヒネの酸化)は、密封されたホイルブリスター内に各用量を収容することで防止される。密封ホイルブリスターは一般にアポモルヒネの酸化を防止するのに十分だが、中東など世界の一部にみられるような特定の気候下では、加水分解が潜在的な問題である。加水分解も、複数のブリスターを、例えばアルミニウムホイルなどのホイルからなる密封袋などのさらなる密封容器に入れることで防止(または制限)される。貯蔵および輸送時のダメージなどから密封ブリスターを保護するため、さらなる機械的保護が望ましいこともある。密封ホイルブリスター(ならびに任意選択の密封バッグおよび/または他の保護包装)を使うことで、酸化防止剤を製剤に含める必要がなくなる。
【0143】
本発明のアポモルヒネ乾燥粉末組成物は、下記で論じる実験用のホイルブリスターに移した。ブリスターは基材および蓋からなる。基材は、薬物と接するポリマー層、軟質強化アルミニウム層、および外側ポリマー層を含む積層体である。アルミニウムは水分および酸素バリアを与える一方、ポリマーは薬物と接する比較的不活性の層を与える。軟質強化アルミニウムは延性であるため、ブリスター形状に「冷間成形」することができる。典型的には厚さ45〜47μmである。外側ポリマー層は積層体にさらなる強度を与える。蓋材料は、ヒートシールラッカー、硬圧延アルミニウム層(典型的には厚さ20〜30μm)、および外側ポリマー層を含む。ヒートシールラッカーは、ヒートシール時に基材ホイル積層体のポリマー層に接着する。アルミニウム層は硬圧延されて貫通が容易になる。薬物と接するポリマー層の材料としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、およびポリエチレン(PE)が挙げられる。基材ホイル上の外側ポリマー層は、典型的には配向ポリアミド(oPA)である。
【0144】
加圧式定量噴霧式吸入器用組成物
加圧式定量噴霧式吸入器(pMDI)は、典型的には2つの構成要素、すなわち、その中に薬物粒子(この場合はアポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはエステル)が加圧下、懸濁液または溶液の形態で収容されるキャニスター構成要素、および、キャニスターを保持し作動させるのに用いられるレセプタクル構成要素を有する。典型的には、キャニスターは製剤の複数用量を含むが、単一用量キャニスターを有することも可能である。キャニスター構成要素は、典型的にはそこからキャニスターの内容物を排出できるバルブ付き出口を含む。エアロゾル薬物のpMDIからの投与は、キャニスター構成要素に力を加えてキャニスターをレセプタクル構成要素の方向に押すことで、バルブ付き出口を開き、薬物粒子をバルブ付き出口からレセプタクル構成要素を経由して運搬し、レセプタクル構成要素の出口から排出することで行われる。キャニスターからの排出時には、薬物粒子は霧状になってエアロゾルを形成する。
【0145】
患者が、彼または彼女の吸入によりエアロゾル化した薬物を排出することで、薬物粒子が患者の吸気流に混入し、肺に運ばれることが意図されている。
【0146】
典型的には、pMDIでは噴霧剤を用いてキャニスターの内容物が加圧され、レセプタクル構成要素の出口から薬物粒子が噴霧される。pMDI吸入器では、製剤は液体の形態で与えられ、噴霧剤と共に容器内に滞留する。噴霧剤は各種の形態を取り得る。例えば、噴霧剤は圧縮ガスまたは液化ガスを含んでもよい。好適な噴霧剤としてはCFC11およびCFC12などのCFC(クロロフルオロカーボン)噴霧剤、ならびにHFA134aおよびHFA227などのHFA(ヒドロフルオロアルカン)噴霧剤が挙げられる。1種または複数の噴霧剤を所与の製剤中に使用することができる。
【0147】
吸入による吸入器の作動調整を改善するために、呼吸作動式バルブシステムを用いてもよい。このようなシステムは例えばBaker Nortonおよび3Mから入手可能である。このような吸入器を用いるため、患者は吸入器を「用意し」、患者が吸入すると用量が自動的に噴射される。
【0148】
本発明のある実施形態によれば、pMDI用製剤を用いてアポモルヒネを患者の肺に送達する。アポモルヒネは、前記アポモルヒネ約200μg〜約1800μg、前記アポモルヒネ約300μg〜約1600μg、または前記アポモルヒネ約400μg〜約1200μgの量で与えられる。他の実施形態では、各患者の必要量および耐性に基づいて、用量が400μg〜1200μgの単位で与えられる。例えば、前記アポモルヒネ約400、約500、約600、約700、約800、約900、約1000、約1100および/または約1200μgの用量を与えることができる。
【0149】
例えば、女性機能障害を治療する際、治療効果を得るのに比較的少ない用量で十分な場合、前記モルヒネ約100、約200、約300、約400、約500および/または約600μgの用量を提供することができる。
【0150】
ある実施形態では、pMDI用製剤は「懸濁液」型製剤または「溶液」型製剤であり、いずれも噴霧剤として液化ガスを用いる。pMDI用製剤のin vivoでの効果は、治療効果の発現までの時間、および治療効果の持続時間という点で上述のDPK製剤と同様であると思われる。
【0151】
溶液型pMDI
pMDI技術のうち、溶液型pMDIが全身肺送達に最適であると思われる。溶液型pMDIが最も微小なミストを与え、吸入器を変形することで比較的容易に最適化できるためである。また、近年開発されたバルブ(例えばBespakから入手可能)では、現行のシステムに比べ正味重量が増加しており、したがって溶液型pMDIでは懸濁液型pMDIに比べ潜在的に送達可能な全身用量が大きくなる。
【0152】
溶液型pMDI技術を用いて、HFA噴霧剤を用いたアポモルヒネエステル(例えば、ジイソブチリルアポモルヒネ)の送達用製剤を調製することができる。
【0153】
しかし、従来の溶液型pMDI技術は、HFA噴霧剤を用いたアポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩を送達するのに適当とは思われない。すなわち、アポモルヒネ塩基は不安定なため現行の手法では調剤できず、アポモルヒネ塩は極性が高いためHFA噴霧剤中の溶液として調剤できない。例えば、塩酸アポモルヒネは、これらの系中で好適なまたは許容できる溶解性を有するには少なくとも50%のエタノールを必要とし、このような系は技術的にも許容できず、患者にも許容されるとは思われない。このような系でも、溶液濃度は25μg/用量未満しか得られず、乾燥粉末噴霧器について上述した有効用量を大きく下回る。
【0154】
これまで、調剤者はpMDI用溶液中に存在する水の量を最小限に抑えることを模索してきた。水は、(WO 02/030499号で報告されるように)製剤中の微粒子画分を減少させ、かつ/または(WO 01/89616号で報告されるように)製剤の安定性を減少させることが知られていたからである。
【0155】
本発明の一実施形態によれば、アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩を含むpMDI用溶液は、驚くべきことに、水を系に意図的に加えることで提供される。すなわち、好適なpMDI溶液は、HFA134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)および/またはHFA227(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン)を約50%〜約98%(w/w)、水を約2%〜約10%(w/w)、ならびにエタノールを約0%〜約47%(w/w)含む噴霧剤溶液に、アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩を加えることで得られると思われる。好ましくは、水は5%超〜約10%(w/w)の量で与えられる。エタノールは、約12%〜約40%(w/w)の量で与えることが好ましい。12ml溶液は、HFA134a、水、および/またはエタノール以外に塩酸アポモルヒネ約170mgを含むことが好ましい。3M被覆(DUPONT 3200 200)キャニスターを吸入器用キャニスターとして使用してもよい。
【0156】
懸濁液型pMDI
懸濁液型pMDIを用いてアポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩を肺に送達することもできる。しかし、懸濁液型pMDIにはいくつかの欠点がある。例えば、懸濁液型pMDIは、溶液型pMDIと比べて送達用量が少なく、懸濁液に関連する他の問題、例えば用量の不統一、バルブの閉塞、および懸濁液の不安定化(例えば沈降)を生じやすい。これらの理由などのため、懸濁液型pMDIは、溶液型pMDIに比べ調剤および製造がはるかに複雑である。
【0157】
本発明の一実施形態によれば、アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩のための懸濁液型pMDIが提供される。好ましくは、懸濁液型pMDIの噴霧剤は、2種の市販のHFA噴霧剤、最も好ましくはHFA227(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン)約60%とHFA134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)約40%のブレンドである。この手法では、さらに賦形剤を加えずに、(濃度整合性による)初期物理安定性が示された。このことは、そのような系が容易に製造可能であることを示唆しているが、他の賦形剤を少量加えて医薬の端麗さを高めてもよい。例えば、Bespak BK630シリーズ0.22mm作動装置を有する3M被覆(Dupont 3200 200)キャニスター中で、HFA227約60%とHFA134a約40%のブレンドが塩酸アポモルヒネと共に調製された。これらの実験の結果は下記実施例16を参照して論じる。
【0158】
ネブライズシステム
他の可能な投与方法はネブライズシステムを経由する。このようなシステムとしては、従来の超音波ネブライズシステムおよびジェットネブライズシステム、ならびに(Boehringer Ingelheimから入手可能な)Respimatまたは(Aradigmから入手可能な)AERxなど最近紹介された手持ち型装置が挙げられる。このようなシステムでは、アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはエステルは、例えばメタ重亜硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤により滅菌水溶液中で安定化されると思われる。用量は上記と同様であり、ネブライズシステムにおける肺に到達するアポモルヒネの割合を少なくすることを考慮に入れて調節される。これらのシステムは使用できるが、使用上の効率および便利さのいずれも、上述のDPIシステムには明らかに劣る。
【0159】
(実施例)
本発明を例示する各種実施例を以下で論じる。特記なき場合、実施例では吸入器としてVectura Limited製のAspirairプロトタイプ吸入器を使用した。
【0160】
(実施例1)
ラクトースの調製
Respitose SV003(DMV International Pharma、オランダ)ラクトースの篩い分け画分を、バルク材料を63μmの篩に通すことで製造する。次に、この材料を45μmスクリーンで篩い分け、保持された材料を収集した。Malvern Instruments, Ltd.(Malvern、英国)製のMastersizer 2000を用いて行ったラクトースの2つのバッチの粒径分析の結果を図4Aおよび4Bに示す。
【0161】
図示するように、ラクトースの体積加重平均値は約50〜約55μm、d10は約4〜約10μm、d50は約50〜約55μm、d90は約85〜約95μmであり、d10、d50、d90は分析したラクトースの10%、50%、および90%の直径を意味する。
【0162】
(実施例2)
アポモルヒネ-ラクトース製剤の調製
塩酸アポモルヒネをMacfarlan Smith Ltdから得て、以下の製品規格に従って、すなわちレーザー回折分析に基づいて粒径10μm未満が99.9%以上になるように微粉化した。レーザー回折分析の実際の典型的結果は以下の通りである。すなわち、d10が1μm未満、d50が1〜3μm、d90が6μm未満であり、d10、d50、d90は分析した塩酸アポモルヒネの10%、50%、および90%の直径を意味する。塩酸アポモルヒネを(一般に用いられる空気ではなく)窒素で微粉化して酸化分解を防止する。Malvern Instruments, Ltd.(Malvern、英国)製のMastersizer 2000を用いて行った微粉化塩酸アポモルヒネの2つのバッチの粒径分析の結果を図5Aおよび5Bに示す。
【0163】
(実施例2(a))
200μg製剤の調製
実施例1のラクトース70gを、好適なミキサーの金属製混合容器に入れた。次に、微粉化塩酸アポモルヒネ10gを加えた。次に、実施例1のラクトース70gをさらに加え、得られた混合物を15分間タンブルした。次に、得られたブレンドを150μmスクリーンに通した。選別されたブレンド(すなわち、スクリーンを通過したブレンドの部分)を次に15分間再度ブレンドした。
【0164】
Andersenカスケードインパクタ(米国薬局方第26版、第601章、装置3(2003))で測定されたアポモルヒネ-ラクトース粉末の粒径分布では、薬物粒子が十分に分散したことが明らかになった。特に、200μg用量の粒径分布は以下の通りであった。
【0165】
微粉末用量(5μm未満) 117μg
超微粉末用量(2.5μm未満) 80μg
MMAD(質量中央空気力学的粒径) 1.94μm
【0166】
(実施例2(b))
100μg製剤の調製
実施例1のラクトース72.5gを、好適なミキサーの金属製混合容器に入れた。次に、微粉化塩酸アポモルヒネ5gを加えた。次に、実施例1のラクトース72.5gをさらに加え、得られた混合物を15分間タンブルした。次に、得られたブレンドを150μmスクリーンに通した。選別されたブレンド(すなわち、スクリーンを通過したブレンドの部分)を次に15分間再度ブレンドした。
【0167】
以下に記載するように、図7Aおよび7Bによれば、実施例2(a)および2(b)の特定のバッチで使用されたミキサーは、英国GatesheadのChristison Scientific Equipment Ltdが販売する低剪断ミキサーである、Inversina可変速度タンブラーミキサーであった。他のバッチで使用されたミキサーは、こちらもChristison Scientific Equipment Ltdが販売する高剪断ミキサーであるRetsch Grindomixミキサーであった。脱凝集は混合プロセスの強度に影響されやすいことがわかったが、上記で言及したInversinaミキサーなど、金属製容器の付いた低剪断ミキサーを用いることで、一定した微粒子画分(約60%)が得られた。
【0168】
(実施例3)
ブリスターへの製剤の取り込み
実施例2(a)および2(b)の製剤をそれぞれ以下のようにブリスターに取り込んだ。アポモルヒネ-ラクトース製剤3mgを各ブリスターに入れた。各ブリスターの基材は、配向ポリアミド(外側)、アルミニウム45μm(中央)、およびPVC(内側)の積層体から成形された冷間成形アルミニウムブリスターである。ブリスターの蓋は、ヒートシールラッカーを有する、硬圧延30μm蓋ホイルからできている。製剤をブリスター内部に充填後、ブリスター基材上に蓋を載せ、ヒートシールラッカーを介して蓋を基材にヒートシールすることで、ブリスターを密封する。
【0169】
最初の開発時には、上記のアルミニウム/PVCブリスターを使用した。研究中、(技術的理由ではなく)われわれは、性能に変化がないと思われたアルミニウム/ポリエチレン(PE)ブリスターも試験した。しかし、下記の表に示す結果では、PEブリスター材料の性能がかなり悪い模様であることが示されている。また、塩酸アポモルヒネがポリエチレンの存在下で化学的に劣化することも証明されている。
【0170】
【表2】
【0171】
PEブリスターを用いた初期(initial)安定性データでは、1カ月後、関連物質ピークの一部が初期ピークに比べて増大していることも示されている。これは、製剤品がPEの存在下で劣化することを示唆している。このため、PVCホイルブリスターを塩酸アポモルヒネと共に用いるのが好ましい。ポリプロピレンも許容できる代替物である。
【0172】
(実施例4)
安定性データ
各製剤が薬物(200μg)を6.67%含んだ、実施例2(a)のアポモルヒネ-ラクトース製剤を含む、上記で言及したブリスターを、ヒートシールしたアルミニウムラミネート袋に入れて患者用パックを複製した。保管条件は、25℃および相対湿度60%、ならびに40℃および相対湿度75%(加速保存条件)であった。安定性データを1年間にわたって収集し、1カ月目および3カ月目には両方の保管条件について、6カ月目、9カ月目、および12カ月目には25℃および相対湿度60%で保管したブリスターについて収集した。安定性試験の結果を図6A〜6Cに示す。
【0173】
化学安定性は、薬物の安定性の基準となる。塩酸アポモルヒネは、特に酸素/空気および水の存在下で不安定であるとの評判があるため、これが必要である。
【0174】
化学安定性を試験するため、製剤をラミネート袋およびブリスターから取り除き、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で試験した。アッセイ値は、製剤中の予測アポモルヒネ含有量のパーセントであり、関連物質(Rel Subs)は、クロマトグラム中の全ピーク面積の百分率としての全関連物質ピークである。当業者に理解されるように、これらの値(図6Aに示す)は、Rel Subsについて許容可能なパラメータである0.1%以内である。
【0175】
物理安定性も同一の時間フレームにわたって測定した。これは、肺の深部に送達される薬物の量が経時的に異なるかどうかを調査する、安定性プログラムの「性能」に関する側面である。結果を図6Bおよび6Cに示す(図中、合格を「Pass」と表記)。
【0176】
送達用量の均一性をAspirair(商標)噴霧器を用いて11個のDUSAについて標準的な慣行に従って測定し、最初のショットは報告しなかった。このことは、送達用量の均一性をショット2〜11について計算して必要なn=10が得られることを意味している。製剤は20%薬物ブレンド(標準的な例に従って製造)であり、3mg充填して名目用量600μgを得た。
【0177】
微粒子の空気力学的評価をAndersenカスケードインパクタ(ACI)を用いて行った。FPD=5μm以下の微粒子用量、FPF=5μm以下の微粒子画分。均一性試験と空気力学的評価のいずれも流量は60l/分であった。
【0178】
【表3】
【0179】
測定した10用量の各々について投与用量(μg)を示したグラフを図23Aに示す。
【0180】
【表4】
【0181】
測定した10用量の各々について投与用量(μg)を示したグラフを図23Bに示す。
【0182】
(実施例5)
吸入試験
アポモルヒネ-ラクトース製剤を含むブリスターについて、Aspirairプロトタイプ吸入器を用いて試験した。
【0183】
下記の吸入データを得るために、吸入器を3つの装置、すなわち多段式液体インピンジャ(MSLI)(米国薬局方第26版、第601章、装置4(2003))、Andersonカスケードインパクタ(ACI)((米国薬局方第26版、第601章、装置3(2003))、および投与単位サンプリング装置(DUSA)((米国薬局方第26版、第601章、装置B(2003))と組み合わせて使用した。これらの装置はそれぞれ、吸入器のマウスピースを受けるインプットを有する。
【0184】
DUSAを使用して、吸入器から離れる薬物の全量を測定する。この装置からのデータで、計量および送達用量が得られる。送達用量は、吸入器から離れる薬物の量として定義される。これには、DUSA装置のスロート、DUSA装置の測定部、およびDUSA装置の後続のフィルター中の薬物の量が含まれる。ブリスターまたは吸入器の他の領域に残った薬物は含まれず、DUSA装置の測定プロセスで「失われた」薬物を含まない。計量用量は、ブリスターを離れる全薬物を含む。
【0185】
MSLIは、乾燥粉末製剤の肺の深部への送達を評価する装置である。MSLIは、米国薬局方第26版、第601章、装置4(2003)、および欧州薬局方、方法5.2.9.18、装置C、補遺2000に従う、乾燥粉末吸入器(DPI)の粒径(空気力学的粒径分布)を測定するのに用いることができる、5段式カスケードインパクタを含む。
【0186】
ACIは、乾燥粉末製剤の肺の深部への送達を評価する別の装置である。ACIは、米国薬局方第26版、第601章、装置3(2003)に従う、乾燥粉末吸入器(DPI)の粒径(空気力学的粒径分布)を測定するのに用いることができる、多段式カスケードインパクタである。
【0187】
下記の通り、MSLIおよびACI試験装置は、特に、肺の深部への送達に相関するこの試験装置の各部分において測定される、微粒子用量(FPD)、すなわち、例えばμg単位の薬物の量、および、肺の深部への送達に相関するこの試験装置の各部分において測定される、微粒子画分(FPF)、すなわち、計量用量の百分率を求めることができる。
【0188】
実施例2のアポモルヒネ-ラクトース製剤について行った試験の結果を図7Aおよび7Bに示す。FPD、FPF、およびMMADの値は、MSLIおよびACIデータから、Copley Inhaler Data Analysis Software(CITDAS)V1.12を用いて生成した。6つの製剤のデータを図7Aに示す。データは列5000内で同定される。さらなる4つの製剤のデータを図7Bに示す。各図では、製剤の試験データは2種類、すなわち、製剤の送達用量の均一性に関するデータ(列6000)、および製剤の微粒子の性能に関するデータ(列7000)に分かれる。
【0189】
図7Aによれば、列5000中に列挙される最初の5つの製剤は、実施例2(b)の100μg製剤3mgを含む。列挙された第6の製剤は、実施例2(a)の200μg製剤3mgを含む。列5000における第1、第2、および第6の製剤の列挙には、「Inversina」という表示が含まれており、実施例2で用いたミキサーがInversinaミキサーであったことを示している。第3、第4、および第5の製剤の列挙には、「Grindomix」という表示が含まれており、実施例2で用いたミキサーがGrindomixミキサーであったことを示している。列挙された第2および第4の製剤には「空気ジェット」という表示も含まれており、これらの製剤では、従来のスクリーン篩(列挙した第3、第5、および第6の製剤で使用)ではなく、真空をスクリーン篩装置に適用する空気ジェット篩を用いて、実施例1のラクトースを篩い分けたことを示している。列挙された第5の製剤には、この材料の概算粒径範囲を示す、「20〜30μm超微粒子」という表示も含まれている。
【0190】
図7Aのセクション6000では、上記DUSA装置を使用して、ブリスター中での薬物保持(6012)、吸入器中での薬物保持(6013)、送達用量(6015)、計量用量(6020)、および質量平衡百分率(6025)に関する製剤のデータを与える。n=10という表示は、吸入器およびDUSA装置が、DUSAデータが列挙される3つの製剤の各々について10回作動したことを示す。セクション6000で列挙したデータは10回の作動の平均である。
【0191】
図7Bのセクション7000では、2種の異なる装置、MSLIおよびACIを用いて微粒子性能を測定する。ACIのデータが入手可能な場合は括弧()内に示す。いずれにせよ、セクション7000で与えられるデータは、粒径5μm未満の粒子(本論考では「微粒子」と称する)に関するデータである。したがって、列7012はブリスター内での微粒子薬物保持を示し、列7013は吸入器内での微粒子薬物保持を示し、列7015は送達用量中での微粒子の量を示し、列7020は製剤のFPDを示し、列7025は製剤のFPFを示し、列7015は計量用量中の微粒子の量を示し、列7035はMSLI(ACI)試験における製剤の質量平衡百分率を示し、列7036は製剤の試験流量を示す。列7005は、吸入器およびMSLI(またはACI)装置が作動した回数を示し、列挙したデータは「n」回の作動の平均である。
【0192】
図7Bは図7Aと同様であり、同様の項目は同様の参照番号を有する。列5000に列挙した第1の製剤は、実施例2(b)の100μg製剤3mgを含み、残り4つの製剤は、実施例2(a)の200μg製剤3mgを含む。全製剤はInversinaミキサーで製造され、45μmスクリーンおよび63μmスクリーンを用いて調製されたラクトースで調製された。列6000のDUSAデータは、n=11である以外は図7Aと同様にして得た。列7000の微粒子性能データはすべて、ACI装置を用い、n=2、流量60L min-1で得た。
【0193】
図7Aおよび7Bに示すように、低剪断Inversinaミキサーで製剤を混合した際、微粒子画分(FPF)は最小62%〜最大70%の範囲であり、送達用量のパーセントは最小81%〜最大94%の範囲であった。製剤は高剪断Grindomixミキサーで製造され、45〜63μmラクトースを含む製剤の微粒子画分は47%〜50%であった。高剪断ミキサーを用いて製造された粒径20〜30μmの製剤は、微粒子画分が62%とさらに大きかった。
【0194】
(実施例6)
3mgブリスターに入れる400μg製剤の調製
上記の実施例2に記載の方法で、各成分を以下の量で与えることで、400μg製剤を製造することができる。
【0195】
【表5】
【0196】
(実施例7)
3mgブリスターに入れる600μg製剤の調製
上記の実施例2に記載の方法で、各成分を以下の量で与えることで、600μg製剤を製造することができる。
【0197】
【表6】
【0198】
上記実施例ではブリスターの「充填重量」を3mgとしているが、より大きいまたは小さい充填用量とすることもできると理解されたい。例えば、下記の実施例8〜12では、充填重量を1mgまたは2mgとする。そのような充填重量をブリスターに充填するには様々な技法を使用することができるが、充填重量1mg〜5mgのブリスターがHarro-Hoefliger Omnidose Drum Fillerを用いて商業生産されたことが知られている。
【0199】
(実施例8)
2mgブリスターに入れる800μg製剤の調製
上記の実施例2に記載の方法で、各成分を以下の量で与えることで、800μg製剤を製造することができる。
【0200】
【表7】
【0201】
(実施例9)
1mgブリスターに入れるステアリン酸マグネシウムを含む200μg製剤の調製
各成分を以下の量で与えることで、ステアリン酸マグネシウムを含む200μg製剤を調製することができる。
【0202】
【表8】
【0203】
この製剤は、ステアリン酸マグネシウムを塩酸アポモルヒネと共に混合物に加える以外は、上記の実施例2に記載の方法で調製することができる。
【0204】
(実施例10)
2mgブリスターに入れるロイシンを含む400μg製剤の調製
各成分を以下の量で与えることで、ロイシンを含む400μg製剤を調製することができる。
【0205】
【表9】
【0206】
この製剤は、微粉化ロイシンを塩酸アポモルヒネと共に混合物に加える以外は、上記の実施例2に記載の方法で調製することができる。
【0207】
Malvern Instruments, Ltd.(Malvern、英国)製のMastersizer 2000を用いて行った好ましい微粉化ロイシンの粒径分析の結果を図8に示す。図示するように、例示された微粉化ロイシンの体積加重平均粒径は3.4μmで、90%の粒子の体積加重平均粒径は6μm未満である。
【0208】
(実施例11)
2mgブリスターに入れる200μg製剤の調製
上記の実施例2に記載の方法で、各成分を以下の量で与えることで、200μg製剤を製造することができる。
【0209】
【表10】
【0210】
(実施例12)
1mgブリスターに入れる200μg製剤の調製
上記の実施例2に記載の方法で、各成分を以下の量で与えることで、200μg製剤を製造することができる。
【0211】
【表11】
【0212】
(実施例13)
2mgブリスターに入れる400μg製剤の調製
上記の実施例2に記載の方法で、各成分を以下の量で与えることで、400μg製剤を製造することができる。
【0213】
【表12】
【0214】
(実施例14)
DPI吸入によりアポモルヒネで治療した患者のin vivo臨床データ
この研究では、35名のボランティア患者に、4つのランダムな用量のプラセボ、塩酸アポモルヒネ200μg、塩酸アポモルヒネ400μg、または塩酸アポモルヒネ800μgを投与した。用量は、実施例3のブリスター(3mgブリスター中に塩酸アポモルヒネ200μg)またはプラセボブリスター(ラクトースのみ)を備えたAspirairプロトタイプ吸入器を用いて投与した。
【0215】
各治療の間、患者に所与の用量を投与した後、患者を1人にして視覚的な性的刺激(VSS)を1時間観察した。投与後50〜55分の時点で、患者は60分の時点で研究が終了すると予告された。60分後、患者はそのVSSに対する応答の性質および持続を評価するよう要請された。なお、応答の性質は以下の4グレードの1つとして定義される。0:効果なし;1:多少腫脹、堅固さなし;2:多少腫脹、堅固。ただし貫入には適さない;3:腫脹、堅固。貫入は可能だが、完全勃起ではない;4:完全勃起。
【0216】
この研究は二重盲検的に行われ、治療薬を投与した保健医療専門家および患者のいずれも、投与された実際の用量を知らされなかった。この研究に参加した患者はランダム化された。各治療の間、35名の患者はそれぞれ用量に関わらず4つのブリスターを受け入れた。すなわち、塩酸400μgを受け入れた患者は、2つの塩酸アポモルヒネブリスターおよび2つのプラセボブリスターを受け入れ、プラセボのみを受け入れた患者は4つのプラセボブリスターを受け入れた。
【0217】
研究では、塩酸アポモルヒネ400μgおよび800μgで治療された群は、プラセボまたはアポモルヒネ200μgの用量で治療された群と比較して、効果の発現が早く、持続時間が長く、勃起が完全であった。例えば、グレード3および4の応答者を基準にすると、塩酸アポモルヒネ800μgで治療された群では、塩酸アポモルヒネの投与後約8分以内に効果発現の中央値を示す一方、塩酸アポモルヒネ200μg群では約11分以内であった。400および800μg群では、グレード3または4の応答は速やかに4分で得られた。この治療を、一度に4つの用量ではなく単一用量(すなわち、1つの800μgブリスター用量)で繰り返すと、治療に対する応答がさらに速やかに発現し、それによりさらに効果的な治療が得られるものと思われる。
【0218】
本研究では、プラセボ(4つのブリスター、それぞれプラセボからなる)で治療された患者の平均応答率は31.4%であった。200μg群(4つのブリスター、1つは塩酸アポモルヒネ200μgを含み、残り3つのブリスターはそれぞれプラセボを含む)の平均応答率は22.9%であり、400μg群(4つのブリスター、2つは塩酸アポモルヒネ200μgを含み、残り2つはプラセボを含む)の平均応答率は48.5%であり、800μg群(4つのブリスター、それぞれ塩酸アポモルヒネ200μgを含む)の平均応答率は58.5%であった。400μgおよび800μgで治療された患者は、プラセボまたは200μgで治療された患者に比べて応答率が著しく高かったため、400μgおよび800μgの用量が有効であると考えられる(下記の表6を参照)。
【0219】
【表13】
【0220】
プロトコルに定義された有効性の一次的基準は、国際勃起機能スコア(IIEF)に定義された一般的基準によるグレード3または4の勃起を報告した患者の割合とした。グレード3または4の勃起は「性交の成功に十分である」と見なされる。これらの基準によれば、塩酸アポモルヒネの用量400μgおよび800μgが有効であると考えられる。
【0221】
図9および10に示すように、「十分な」勃起の割合、つまりグレード4または「完全」勃起の割合および応答率の両方において、活性用量群の間に明らかな用量反応相関が観察された。例えば、塩酸アポモルヒネ800μgで治療された群では、プラセボ、塩酸アポモルヒネ200μgおよび400μgで治療された群に比べて、グレード4の勃起の数が多く、応答率が高く、効果の発現も速やかであった。
【0222】
有効性に関して、下記の表7では、塩酸アポモルヒネ200μg投与群の効果発現の中央値は投与後11分(標準偏差4.2)であり、プラセボ群の効果発現の中央値は投与後10分(標準偏差7.8)であったことを示している。一方、塩酸アポモルヒネ400μgおよび800μg投与群は、より速やかな効果発現の中央値を示した(それぞれ8(標準偏差7.5)および8(標準偏差5.0))。塩酸アポモルヒネ400μgおよび800μg投与群はまた、塩酸アポモルヒネ200μgまたはプラセボで治療された群に比べて完全勃起数が多く、応答率の百分率が高かった。
【0223】
【表14】
【0224】
各個別の群における効果の発現および持続を図11〜14により詳細に例示する。プラセボで治療された患者での効果の発現および持続を図11に示す。塩酸アポモルヒネ200μgで治療された患者での効果の発現および持続を図12に示す。塩酸アポモルヒネ400μgで治療された患者での効果の発現および持続を図13に示し、塩酸アポモルヒネ800μgで治療された患者での効果の発現および持続を図14に示す。例えば、図14によれば、塩酸アポモルヒネ800μg群の患者1名の勃起開始が投与後約4分であったことが明らかである。例えば、図13によれば、塩酸アポモルヒネ400μg群の患者1名の勃起開始が投与後約3分であったことが明らかである。一方、図12では、200μg群の患者1名の勃起開始が投与後約40分であったことを示している。全体として、これらの図は、塩酸アポモルヒネ400μgおよび800μgを投与された群では勃起開始が早かったことを示している。試験時間が60分続き、50〜55分の時点で、患者は試験が60分の時点で終了することを知らされたことに留意されたい。
【0225】
各投与期間中の有害事象を観察した。1種または複数の有害事象を経験した患者の割合は、4つの全治療群で同様であった。重篤な有害事象は観察されず、どの患者でも有害事象による実験の早期中断はなかった。有害事象はすべて重症度が軽度または中程度であり、治療群内での発症率も小さかった。表8は全有害事象のまとめである。表9は全治療関連有害事象のまとめであり、表10は身体系によって治療関連有害事象を分類する。
【0226】
表8によれば、塩酸アポモルヒネ800μg群のわずか6%しか有害事象を経験せず、これはプラセボ群および塩酸アポモルヒネ200μg群において有害事象を経験した患者の割合と同じである。
【0227】
【表15】
【0228】
【表16】
【0229】
【表17】
【0230】
各患者について、吸入70分後に血液サンプルを収集した。血液サンプルを分析した。試験を完了した34名の各患者について、アポモルヒネ400および800μg用量の血中濃度を表11にng/ml単位で示す。これらの血液サンプルが、血漿中濃度ピークからかなり経過して採取されたことを、下記の実施例15で論じるデータから理解されたい。
【0231】
【表18】
【0232】
各患者に対する投与70分後の血中濃度に関する、400μg用量と800μg用量との比較を図15に示す。Uprima(商標)舌下錠2mg(0.7ng/ml)、4mg(1.25ng/ml)、および5mg(1.7ng/ml)の既知の平均Cmaxもプロットする。なお、Uprima舌下錠4mgおよび5mgは、許容できない副作用を有することが知られている。例えば、Uprima舌下錠4gは、欧州医薬品審査庁により臨床安全性が許容できないと判断された(EPAR(公開医薬品審査報告書)1945、Uprima、一般名:塩酸アポモルヒネ、「科学的議論」、25〜27頁(2002)参照)。
【0233】
表4〜6に関する上述の臨床データ、および表11の血液濃度データが、本発明の実施形態に従い吸入されたアポモルヒネにより副作用の危険性が最小限に抑えられるという結論の根拠となる。
【0234】
第一に、治療(薬理学)効果は通常Cmaxの値に依存する。しかし、副作用はしばしば、薬物の全身暴露に依存する。全身暴露は、投与時間から血漿中濃度がゼロに戻るまでの血漿中濃度の積分(すなわち、AUC0〜%曲線下の面積)として測定することができる。表11の測定値は、本発明に従って吸入経由で投与した後、血漿中濃度がかなり急速に低い値にまで低下することを示している。一方、大部分の他の投与経路では、吸収ははるかに急速かつ完全である。例えば、EPAR1945は、Uprimaの排出半減期は2mg皮下投与で2.7時間、4mg皮下投与で4.2時間、5mg皮下投与で3.9時間、6mg皮下投与で4.0時間である。(EPAR1945、「科学的議論」、12頁)。
【0235】
吸入用製剤に関連する短い半減期がもたらす第二の、しかし同等に重要な利点は、製剤の半減期が短いために、治療効果および任意の副作用の期間が短いことである。そのため、副作用が発症したとしても短期間であり、患者は運転などの通常の活動を再開することができる。
【0236】
(実施例15)
フェーズI研究
フェーズIの二重盲検・ランダム化・プラセボ制御研究を行い、16人の健康な男性ボランティアにおける600μg、900μg、および1200μgの各単独用量の安全性、耐容性、および薬物動態を調査した。臨床研究中、有効性に関する評価は行わなかった。
【0237】
薬物動態学的血漿サンプリングを、投与前と、用量投与後の以下の間隔、すなわち、1分、3分、5分、10分、15分、30分、45分、1時間、1.5時間、2時間、4時間、8時間、12時間、および24時間の間隔で行った。
【0238】
非区画分析により血漿中アポモルヒネ濃度から以下の薬物動態パラメータが導かれた。
【0239】
Cmax 最大血漿中濃度[ng/ml]
tmax Cmaxが生じる時間
AUC0-t t=0から最終定量可能濃度までの曲線下面積[ng/ml×時]
AUC0-∞ t=0から無限大までの曲線下面積[ng/ml×時]
t1/2 終末排出半減期
【0240】
結果を図16〜図19に示し、下記の表12および13に要約する。tmaxが中央値として表されることに留意されたい。
【0241】
【表19】
【0242】
【表20】
【0243】
表13に示す数字は、本発明を用いた場合、舌下Uprima(商標)錠に比べてCmax値が著しく高くなることを示している。600μgおよび900μgの用量を吸入投与した際に、著しい副作用は観察されなかった。1200μg用量を投与した際には、めまいを高確率で伴ったが、アポモルヒネでしばしば観察される失神および嘔吐といったより重大な副作用は伴わなかった。一方、Uprima錠は2mgおよび3mgしか市販されていない。用量がさらに多くなると許容できない副作用プロファイルを引き起こすためである。
【0244】
したがって、驚くべきことに、本発明の肺吸入によるアポモルヒネの投与により、従来技術で好まれた投与形式と比べて血中濃度ははるかに高くなるが、これらの高い血中濃度は著しい副作用を伴わないことがわかった。
【0245】
研究から以下の結論を導くことができた。アポモルヒネの最大血漿中濃度を伴う急速な全身吸収は、投与後1〜3分に観察された。Cmax、AUC0-∞およびAUC0-tについて用量比例性が示された。血漿からの薬物の排出は比較的迅速であり、全研究用量について約60分の終末半減期が観察される。排出半減期は用量依存性のようである。
【0246】
アポモルヒネに関して、有効性と副作用は比例関係にあることに留意するのが重要である。本発明によれば、治療有効性が存在し、かつ著しい副作用がないという狭い窓を確実に標的化することができる。
【0247】
対象が経験する副作用は、吸入投与の結果としての短い暴露時間によって制限することができると考えられる。舌下錠による暴露時間はかなり長く、経口および経鼻投与でも同様である。
【0248】
初期薬物分配相は用量の投与後約1〜15分の範囲であり、残りのサンプリング時点にわたって比例排出相が観察される。
【0249】
薬物動態プロファイルは、吸入によるアポモルヒネの送達が、Uprima(商標)と比べて高い効率性および再現性を有することから、吸入されたアポモルヒネの所与の用量についてCmaxが著しく高くなり、tmaxが示すように吸収が非常に速やかであり、任意の吸収された用量のアポモルヒネの除去の遅延がないことを示している。
【0250】
結果は、吸入方式の投与により患者内および患者間で血漿中濃度の可変性が小さい血漿が得られることに伴う、予測された急速な吸収、急速な全身有効性、および急速な排出を証明している。この研究から得られる耐容性および薬物動態パラメータは、勃起障害を治療しようとする際に、吸入によるアポモルヒネの送達により、アポモルヒネの治療の窓に容易に到達することを示している。
【0251】
(実施例16)
溶液型pMDI用製剤
pMDI製剤を以下の表に列挙した成分を用いて調製した。Bespak BK630シリーズ0.22mm作動装置を有する3M被覆(DUPONT 3200 200)キャニスターに製剤を入れ、引き続き上記のような患者の肺への送達に使用することができる。
【0252】
【表21】
【0253】
この製剤は10%〜30%の微粒子画分を与えることができると予測される。
【0254】
(実施例17)
懸濁液型pMDI用製剤
Bespak BK630シリーズ0.22mm作動装置を有する3M被覆(Dupont 3200 200)キャニスター中で、HFA227、HFA134a、および塩酸アポモルヒネを用いて懸濁液型pMDIを調製した。すなわち、以下に示す製剤を調製した。
【0255】
【表22】
【0256】
製剤BをAndersonカスケードインパクタを用いて10回の排出について試験した。結果は以下の通りで、各値は10回の排出の平均とした。
【0257】
【表23】
【0258】
(表中、微粒子は粒径5μm以下の粒子と定義する。)
【0259】
(実施例18)
Cyclohalerで使用する塩酸アポモルヒネ400μgカプセル
塩酸アポモルヒネ400μgカプセルを5個調製し、100l.min-1で運転するよう構成されたACI(米国薬局方第26版、第601章、装置3)中のCyclohaler吸入器(商標)(Miatから入手可能)内で試験した。各カプセルは充填重量25mgで、以下の成分を含んでいた。
【0260】
【表24】
【0261】
なお、DMV Pharmaから入手可能なPharmatose 150Mは、(DMV Pharmaの文献によれば)315μm未満が100%、150μm未満が少なくとも85%、100μm未満が少なくとも70%、45μm未満が少なくとも50%という粒径分布を有するラクトースを含む。Meggle Pharmaから入手可能なSorbolac 400は、(Meggle Pharmaの文献によれば)100μm未満が100%、63μm未満が少なくとも99%、32μm未満が少なくとも96%という粒径分布を有するラクトースを含む。
【0262】
予備ブレンドの調製
Pharmatose、Sorbolac、およびロイシンを層状に混合ボウルに入れ、ロイシンがSorbolacの間に挟み込まれ、Sorbolacが逆にPharmatoseの間に挟み込まれるようにした。上記のRetsch Grindomix高剪断ミキサーを用い、粉末を60秒間、2000rpmでブレンドした。予備ブレンドを1時間ミキサー内に置いてからさらに使用した。
【0263】
最終ブレンドの調製
塩酸アポモルヒネを混合ボウル中で予備ブレンドの間に挟み込んだ。Grindomixミキサーを用いて10分間、2000rpmで混合した。次に、ブレンドを212μm篩に通した。
【0264】
その後、最終ブレンドをカプセルに入れ、各カプセルの充填重量を25mgとした。次に、カプセルをCyclohalerに入れ、ACI(米国薬局方第26版、第601章、装置3)内で試験し、データを上記CITDASで分析し、以下の結果を得た。
【0265】
【表25】
【0266】
ACIの各構成要素に運搬され、吸入器内に保持された薬物の平均量(μg)を図20に示す。したがって、例えば、超微粒子用量はCITDASパッケージによりこのデータから製造することができる。
【0267】
(実施例19)
塩酸アポモルヒネ400μg入り2mgブリスター
塩酸アポモルヒネ400μgブリスターを5個調製し、60l.min-1で運転するよう構成されたACI(米国薬局方第26版、第601章、装置3)中の実施例5の吸入器内で試験した。各ブリスターは充填重量2 mgで、以下の成分を含んでいた。
【0268】
【表26】
【0269】
実施例2(a)および2(b)に一般的に記載されている混合ボウル内で、塩酸アポモルヒネをRespitoseの間に挟み込んだ。Grindomixミキサーを用いて5分間、2000rpmで粉末を混合した。次に、ブレンドを212μm篩に通した。その後、ブレンドをブリスターに入れ、各ブリスターの充填重量を2mgとした。次に、ブリスターを実施例5の吸入器に入れ、ACI(米国薬局方第26版、第601章、装置3)内で試験し、データを上記CITDASで分析し、以下の結果を得た。
【0270】
【表27】
【0271】
ACIの構成要素に運搬され、吸入器内に残った薬物の平均量(μg)を図21に示す。したがって、例えば、超微粒子用量はCITDASパッケージを用いてこのデータから製造することができる。
【0272】
ACIデータから生成される1.70μmのMMADは著しく微細であり、レーザー光回折により測定されるこの塩酸アポモルヒネのバッチの中央径(図5Bで報告されるように1.453μm)に非常に近いことに留意されたい。このことは、吸入器が薬物を、凝集体ではなくその一次粒子またはそれに近い形に効率的に還元していることを示す。これは吸入器では通常あり得ないことである。例えば、塩酸アポモルヒネの(粒径の点で)同一のバッチを実施例18のCyclohalerで送達した際、2.3μmとより大きいMMADが測定され、この製剤および吸入器が凝集体を排除する上で有効ではなかったことが示された。
【0273】
実施例18の製剤および吸入器と比較すると、実施例19の製剤および吸入器は、送達用量に優れ(89.2%対81%)、微粒子画分に優れ(81%対67%)、微粒子用量百分率に優れ(72%対55%)、超微粒子用量百分率に優れている(67%対44%)。
【0274】
また、上記データから、実施例19の製剤および吸入器は70%を超える超微粒子画分(3μm未満)を生成することが明らかである。微粒子画分(5μm未満)が局所送達に許容できると考えられるが、全身送達ではさらに微小な粒子が必要であると思われる。薬物が血流に吸収されるためには肺胞に到達しなければならないからである。したがって、70%を超える超微粒子画分が特に有利である。
【0275】
上記で言及したデータは、本発明の好ましい吸入器は本発明の好ましい製剤と組み合わせると特に効率的であることを示している。
【0276】
実施例18の製剤(Cyclohalerを備える)および実施例19の製剤(好ましい吸入器を備える)はいずれも、MMADが3.47、FPFが66.7、微粒子用量百分率が52.4%であった実施例16の懸濁液型pMDIに比べ性能が著しく優れていることにも留意されたい。
【0277】
(実施例20)
共ジェット粉砕型およびメカノフュージョン型アポモルヒネ製剤の比較
微細な賦形剤粒子を有するいくつかの塩酸アポモルヒネ製剤を、共ジェット粉砕で、またメカノフュージョンで調製し、次にこれらの製剤を試験した。共ジェット粉砕はジェットミルで行い、メカノフュージョンプロセスはメカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン社)で行った。
【0278】
Sorbolac 400ラクトース19.0gと微粉化L-ロイシン1.0gをメカノフュージョンシステム内で組み合わせた。この材料を出力20%の設定で5分間、次いで出力80%の設定で10分間加工した。この材料を回収し、「2A」と記録した。
【0279】
塩酸アポモルヒネ15.0gと微粉化L-ロイシン0.75gをメカノフュージョンシステム内で組み合わせた。この材料を出力20%の設定で5分間、次いで出力80%の設定で10分間加工した。この材料を回収し、「2B」と記録した。
【0280】
「2B」2.1gと微粉化ロイシン0.4gを、乳鉢および乳棒を使って手で2分間ブレンドした。微粉化ロイシン2.5gを加え、さらに2分間ブレンドした。微粉化ロイシン5gを加え、さらに2分間ブレンドした。次に、混合物をAS50螺旋型ジェットミル内で、入口圧力7bar、粉砕圧力5bar、供給量5ml/分にして加工した。この粉末を、300μm金属製篩にへらを用いて徐々に通した。この材料を「10A」と記録した。
【0281】
「10A」1.5gを微粉化L-ロイシン0.20gおよびSorbolac 400ラクトース3.75gと、乳鉢内でへらを用いて手で10分間組み合わせた。この粉末を、300μm金属製篩にへらを用いて徐々に通した。この材料を「10B」と記録した。
【0282】
微粉化塩酸アポモルヒネ9gおよび微粉化ロイシン1gをメカノフュージョンシステムに入れ、20%(1000rpm)で5分間加工した。次に、この初期ブレンドをAS50螺旋型ジェットミル内で、入口圧力7bar、粉砕圧力5bar、供給量5ml/分にして加工した。この材料を「11A」と記録した。
【0283】
ブレンド後、この粉末を終夜放置し、次いで振とうにより300μm金属製篩に徐々に通した。この材料を「11B」と記録した。
【0284】
微粉化塩酸アポモルヒネ2gと微粉化ロイシン0.5gを、乳鉢および乳棒を使って手で2分間ブレンドした。微粉化ロイシン2.5gを加え、さらに2分間ブレンドした。次いで、微粉化ロイシン5gを加え、さらに2分間ブレンドした。次に、混合物をAS50螺旋型ジェットミル内で、入口圧力7bar、粉砕圧力5bar、供給量5ml/分にして加工した。この粉末を、300μm金属製篩にへらを用いて徐々に通した。この材料を「12A」と記録した。
【0285】
Sorbolac 400 16.5gおよび微粉化ロイシン0.85gをメカノフュージョンシステムに入れ、20%(1000rpm)で5分間、次いで80%(4000rpm)で10分間加工した。この材料を「13A」と記録した。
【0286】
微粉化塩酸アポモルヒネ0.5gと「13A」2.0gを、乳鉢内でへらを用いて手で10分間ブレンドした。この粉末を、300μm金属製篩にへらを用いて徐々に通した。この材料を「13B」と記録した。
【0287】
いくつかのホイルブリスターに、以下の製剤を約2mg充填した。
10A-塩酸アポモルヒネ20%、l-ロイシン5%、微粉化ロイシン75%(共ジェット粉砕)
10C-塩酸アポモルヒネ26.2%、l-ロイシン5%、Sorbolac 68.7%(幾何的)
11B-塩酸アポモルヒネ95%、l-ロイシン5%(共ジェット粉砕)
12A-塩酸アポモルヒネ20%、ロイシン5%、微粉化ロイシン75%(すべて共ジェット粉砕)
13B-塩酸アポモルヒネ20%、l-ロイシン5%、Sorbolac 400 75%(ロイシンおよびSorbolacはメカノフュージョン処理)
【0288】
次に、これらをAspirair吸入器からNGIに向けて60l/分の流量で噴射した。Aspirairは15mlリザーバと共に1.5barで操作した。各in vitro試験をスクリーンに向けて1回行い、次いで選択された候補を繰り返した。また、さらなる候補をACI内で60l/分で繰り返した。
【0289】
【表28】
【0290】
【表29】
【0291】
【表30】
【0292】
共ジェット粉砕型製剤は、能動式乾燥粉末吸入器を用いて投与した際にも、例外的なFPFを示した。この改善は、スロートへの沈着が5%未満と、メカノフュージョン型製剤の16〜29%に比べて減少していることが主な理由であると思われる。「12A」は「10A」の反復として製造したが、メカノフュージョン加工された予備ブレンドは除いた(それが不要であることを示すため)。
【0293】
その調製が上記の通りである製剤12Aと共に得られたFPFの再現可能性を試験した。
【0294】
いくつかのホイルブリスターに製剤12Aを約2mg充填した。30用量を噴射することで全寿命用量均一性を試験し、放出された用量をDUSAで回収した。全寿命用量均一性の結果を図22のグラフに示す。
【0295】
平均放出用量は389g、相対標準偏差は6.1%であり、薬物-ラクトース製剤の全寿命用量均一性は非常に良好であった。
【0296】
(実施例21)
適切なアポモルヒネ用量の提供
フェーズ1研究から、吸入されたアポモルヒネの最大耐量は約900μgであることが見出された。
【0297】
実施例7で使用した製剤はアポモルヒネを20%(w/w)(600μg)含んでいた。ブリスター充填重量を3mgとする実験を行い、これらのブリスターが72%の微粒子画分を与えることがわかった。このため、900μgを得るには、600μg薬物製剤のブリスター充填重量を3mgから4.5mgにするか、いくつかのブリスターを使用する(例えば、1×600μg/3mgおよび1×300μg/1.5mg)必要となる。
【0298】
別の選択肢は、薬物充填量を20%から30%(w/w)に増やして充填重量をブリスター当たり3mgに維持することである。
【0299】
上記の実施例2に記載の方法で、各成分を3mgブリスター当たり以下の量で与えることで、この製剤を製造することができる。
【0300】
【表31】
【0301】
ACIの結果(下記の表17に示す)では、ブリスター中の充填重量を3mgから4.5mgに増加させると、20%(w/w)製剤を用いるFPFがわずかに減少することがわかる。30%(w/w)製剤のFPFは74%へとわずかに増大した。このことは、30%(w/w)製剤が用量増大に使用できることを示している。
【0302】
【表32】
【0303】
(実施例22)
篩い分けたラクトース担体粒子と篩い分けなかったラクトース担体粒子の使用比較
進行中の30%(w/w)ブレンド開発の一部として、Respitose SV003の代わりにSorbolac 400を用いたブレンドを調製した。
【0304】
篩い分けなかったSorbolac 400および篩い分けたSorbolac 400(100μmメッシュ篩使用)を用いて製剤を調製した。
【0305】
上記の実施例2に記載の方法で、各成分を3mgブリスター当たり以下の量で与えることで、この製剤を製造することができる。
【0306】
【表33】
【0307】
初期結果は、篩い分けた製剤のFPF(65%)が篩い分けなかった製剤のFPF(61%)より大きいことを示す。
【0308】
(実施例23)
pMDI用製剤の調製
本発明のさらなる製剤を以下のように調製することができる。微粉化アポモルヒネ12.0gおよびレシチンS PC-3(Lipoid GMBH)4.0gをビーカーに秤量する。粉末をHosokawa AMS-MINIメカノフュージョンシステムに、蓋の最大の入口に取り付けた漏斗を介して移し替え、装置は3.5%で運転する。入口を密封し、スイッチを入れて冷却水を導入する。装置を20%で5分間、次いで50%で10分間運転する。装置のスイッチを切り、取り外し、得られた製剤を機械的に回収する。
【0309】
缶の調製
粉末0.027gを缶に秤量し、50μlバルブを缶に圧着し、HFA 134a 12.2gを缶に充填する。
【0310】
(実施例24)
受動式吸入器に用いるメカノフュージョン型製剤の調製
本発明のさらなる製剤を以下のように調製することができる。微粉化アポモルヒネ20%、Sorbolac 400ラクトース78%、およびステアリン酸マグネシウム2%を含む混合物20gをHosokawa AMS-MINIメカノフュージョンシステムに、蓋の最大の入口に取り付けた漏斗を介して移し替え、装置は3.5%で運転する。入口を密封し、スイッチを入れて冷却水を導入する。装置を20%で5分間、次いで80%で10分間運転する。装置のスイッチを切り、取り外し、得られた製剤を機械的に回収する。
【0311】
(実施例24)
アポモルヒネ遊離塩基製剤
上記の実施例2に記載の方法で、各成分を以下の量で与えることで、600μg製剤を製造することができる。
【0312】
【表34】
【0313】
これまでの明細書では、本発明を具体的に例示された実施形態およびその実施例に関連づけて説明した。しかし、下記の特許請求の範囲に記載される本発明のより広範な精神および範囲から逸脱することなく、本発明に各種の改変および変更を加えることができることは自明である。したがって、明細書および図面は、本発明を限定するというよりは例示するものと見なすべきである。
【図面の簡単な説明】
【0314】
【図1】本発明の粉末製剤を送達するのに使用できる好ましい吸入器の概要を示す図である。
【図2】本発明の粉末製剤を投与するのに用いられる吸入器中で使用することができる非対称形の渦室を示す図である。
【図3】非対称形吸入器の渦室の代替形態の断面図である。
【図4A】実施例1のラクトースの粒径分布を示す図である。
【図4B】実施例1のラクトースの粒径分布を示す図である。
【図5A】実施例2の微粉化アポモルヒネの粒径分布を示す図である。
【図5B】実施例2の微粉化アポモルヒネの粒径分布を示す図である。
【図6A】実施例2(a)および3の200μgのアポモルヒネ-ラクトース製剤の安定性データを示す図である。
【図6B】実施例2(a)および3の200μgのアポモルヒネ-ラクトース製剤の安定性データを示す図である。
【図6C】実施例2(a)および3の200μgのアポモルヒネ-ラクトース製剤の安定性データを示す図である。
【図7A】実施例2および3のアポモルヒネ-ラクトース製剤について行った試験の結果を示す図である。
【図7B】実施例2および3のアポモルヒネ-ラクトース製剤について行った試験の結果を示す図である。
【図8】実施例10の微粉化ロイシンの粒径分布を示す図である。
【図9】実施例14の患者の治療群による勃起の性質を示す図である。
【図10】実施例14の患者の治療群による応答率を示す図である。
【図11】実施例14においてプラセボで治療された患者群での効果の発現および持続を示す図である。
【図12】実施例14においてアポモルヒネ200μgで治療された患者群での効果の発現および持続を示す図である。
【図13】実施例14においてアポモルヒネ400μgで治療された患者群での効果の発現および持続を示す図である。
【図14】実施例14においてアポモルヒネ800μgで治療された患者群での効果の発現および持続を示す図である。
【図15】400μgおよび800μg用量について、各患者の投与70分後の血中濃度(T70)の比較を示し、さらにUprima(登録商標)舌下錠2mg、4mg、および5mgでの既知の平均Cmaxを示す図である。
【図16】実施例15で論じるフェーズ1研究中に収集した薬物動態データを示す図である。
【図17】実施例15で論じるフェーズ1研究中に収集した薬物動態データを示す図である。
【図18】実施例15で論じるフェーズ1研究中に収集した薬物動態データを示す図である。
【図19】実施例15で論じるフェーズ1研究中に収集した薬物動態データを示す図である。
【図20】実施例18において、ACIの11の各構成要素に運搬された薬物の量(μg)を示す図である。
【図21】実施例19において、ACIの11の各構成要素に運搬された薬物の量(μg)を示す図である。
【図22】実施例20の製剤12Aの全寿命用量均一性に関する結果を示す図である。
【図23A】実施例4で論じた、異なって充填されたブリスターからの本発明の組成物の送達用量の均一性を示す図である。
【図23B】実施例4で論じた、異なって充填されたブリスターからの本発明の組成物の送達用量の均一性を示す図である。
【符号の説明】
【0315】
1 渦室
2 出口
3 入口
7
8 壁
11 渦ノズル
12 渦室
13 マウスピース
14 ブリスター
15 ブリスターホルダー
16 貫通ヘッド
17 リザーバ
18 バルブ
19 呼吸作動式機構
【技術分野】
【0001】
「勃起障害」という用語は、米国国立衛生研究所により、満足のいく性交を可能にするのに十分な陰茎の勃起を男性が達成および維持できないことであると定義された(J. Am. Med. Assoc.、270(1):83〜90頁(1993)参照)。勃起には十分な動脈血の供給が不可欠であるため、血流を悪化させる障害はいずれも勃起障害の病因論に結びつけることができる。勃起障害の患者は数百万人の男性であり、一般には良性の障害であると考えられているにもかかわらず、彼等の生活の質に深い影響を与えている。しかし、多くの男性では、勃起障害が存在している状態でも、心理的欲求、オーガズムに達する能力、および射精能力が損なわれていないことがわかっている。
【背景技術】
【0002】
勃起障害の病原学的要因は本質的に、心因性または器質性の要因に分類される。
【0003】
勃起障害の心因性の要因としては、性的集中を低下させるか、あるいは感覚的経験の認識を低下させることにより勃起機能を損ね得る、うつ病、不安、および人間関係上の問題などの過程が挙げられる。これにより、勃起を開始または維持することが不可能になる。
【0004】
器質性の要因としては、神経性の要因および血管性の要因が挙げられる。神経性の要因としては例えば、反射発生性の勃起を損ない、勃起の維持に必要な触覚による感覚を中断させる体性神経経路の損傷、および、その位置および重症度に応じて、様々な程度の勃起不全を生じさせる脊髄損傷が挙げられる。血管性の危険因子としては、血流に悪影響を与え、喫煙、糖尿病、高血圧、アルコール、血管疾患、高濃度の血清コレステロール、低濃度の高密度リポタンパク質(HDL)、および関節炎などの他の慢性疾患状態が含まれる要因が挙げられる。
【0005】
例えば、Massachusetts Male Aging Study(MMAS、H.A. Feldmanら、J. Urol.、151:54-61頁(1994)が報告)は、完全勃起障害の年齢調整発生率が、糖尿病を明らかにした対象(sub)において、糖尿病にかかっていない対象の3倍であることを発見した。糖尿病のその多くの側面が勃起障害の直接的原因であることについて多少の異論は付しているが、血管障害を最も多く引き合いに出している。
【0006】
MMASはまた、勃起障害と、心臓疾患ならびにその関連危険因子である高血圧および血清中に低濃度の高密度リポタンパク質(HDL)との著しい相関性を発見した。未治療高血圧患者全体の8〜10%が、高血圧の診断を受けた時点で性的不能であることが報告されている。この文献における勃起障害と血管障害との関連は強力で、心筋梗塞患者、冠動脈バイパス手術を受けた患者、脳血管障害患者、および末梢血管疾患患者では勃起の血行動態が損なわれている。また、喫煙は血管性勃起障害の独立した危険因子であり、喫煙により循環器病に伴う勃起障害の危険性が増大することがわかった。
【0007】
女性も性機能障害にかかることがある。これは年齢に比例して増加することがわかっており、血管の危険因子の存在および閉経の開始に伴う。男性において陰茎を勃起させる血管および筋肉の機構の一部は、女性器の応答における血管性因子と同様であると思われる。
【0008】
女性では、性機能障害は器質性の要因、心因性の要因、またはその組み合わせから起こる。女性機能障害としては、性交の終了まで性的興奮による膣の潤滑-膨潤応答を得るかまたは維持できないことが挙げられる。器質性女性機能障害は、血流を不十分にし、膣の充血を不十分にし、陰核の勃起を不十分にする血管性障害と部分的に関係があることが知られている。
【0009】
米国特許第5770606号および米国特許第6291471号に記載されているように、男性における心因性および器質性の両方の勃起障害をオピオイドアポモルヒネで治療することが知られている。欧州では、男性勃起障害の治療用に、塩酸アポモルヒネの2〜3mgの舌下錠が、Uprima(商標)の名前で入手可能である(例えば公開医薬品審査報告書(EPAR)1945を参照)。
【0010】
アポモルヒネはモルヒネの誘導体であり、薬剤としての使用に関しては、1869年に催吐薬として初めて評価された。20世紀前半には、アポモルヒネは、精神医学的障害用の鎮静薬として、また、アルコール依存患者および麻薬常習者用の行動変化剤として使用された。1967年までに、アポモルヒネのドーパミン作動性効果が認識され、この化合物はパーキンソン症の治療に関して鋭意評価された。この時以降、アポモルヒネは、中枢神経系を刺激して、動物およびヒトにおいて、あくびとして現れる覚醒反応および陰茎の勃起を生じさせる、選択的ドーパミン受容体アゴニストに分類されている。
【0011】
欧州特許出願第0689438号では、パーキンソン病患者の「オフピリオド」症状の緩和に使用されるアポモルヒネ製剤が開示されている。この製剤は(アポモルヒネが水溶液中で不安定であるために選択された)乾燥粉末であり、鼻腔内投与され、鼻粘膜を経由して吸収される。
【0012】
一般に、従来技術ではアポモルヒネの吸入投与に対する偏見がある。これは、アポモルヒネが一般に刺激性の化合物とされていたため、アポモルヒネの吸入は不快であり、避けるべきであると考えられているためである。このため、欧州特許出願第0689438号に開示されている乾燥粉末製剤は、粒径が50〜100μmの粒子を含み、したがってこの粒子は前記鼻腔内投与の後、誤って肺に達することはない。
【0013】
WO 00/35457号は、治療有効量のアポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはプロドラッグを経口投与することで器質性の勃起障害を治療する方法を示唆している。アポモルヒネは嘔気を引き起こすという望ましくない副作用があり、この出願では、嘔気を回避しながら所望の治療効果を達成するのに十分な量のアポモルヒネを投与することが可能であるとしている。これは、最大約5.5ng/mlの血漿中アポモルヒネ濃度が得られる任意の量のアポモルヒネを投与することで可能であると示唆されている。
【0014】
WO 01/74358号では、アポモルヒネ製剤を用いた男性勃起障害の治療方法が記載されているとしている。この発明でも、嘔気を引き起こすことなく所望の治療効果を達成することを目指している。患者の血漿中アポモルヒネ濃度は最大10ng/mlであるといわれており、患者の15%未満が嘔吐を経験している。WO 01/74358号では、肺への吸入を含む各種の投与方式が提案されている。しかし、WO 01/74358号に例示された唯一の吸入用製剤は、犬の肺に直接気管を経由して導入されるアポモルヒネおよび重亜硫酸ナトリウムの水溶液を含んでいる。
【0015】
WO 99/38467号では、ヒト女性の性機能障害を寛解させる方法であって、前記ヒト女性にアポモルヒネを、前記女性の刺激下の陰核内血流および膣壁血流を向上させるのに十分な量、ただし実質的に嘔気を引き起こす量に満たない量で投与するステップを含む方法が記載されているとしている。このバランスを達成するために、血漿中アポモルヒネ濃度を5.5ng/ml以下に維持することが示唆されている。アポモルヒネの舌下投与が提案されている。
【0016】
従来技術ではアポモルヒネが性機能障害の治療に有用であることが明らかに開示されているが、公知の治療は未だ理想に達していない。従来技術でなされた主張にもかかわらず、治療による嘔吐は、この副作用を生じないと示唆されている血漿中アポモルヒネ濃度でさえ常に引き起こされる。さらに、既存の治療ではまた、治療効果の発現まで長い遅延がしばしば生じる。このため、いつ治療効果が現れるのが望ましいか予知し、次いでその前のある時間にアポモルヒネの用量を投与することを患者が必要とする場合には、先を見越した量が必要になる。
【0017】
従来技術では用量をできるだけ少なくして随伴性の副作用を低下させることを試みてきたが、これまで有効性と副作用の必要なバランスを達成するのは困難であった。しかし、肺吸入により少量のアポモルヒネを投与して、治療有効量のアポモルヒネに通常伴う副作用を回避または最小限に抑えながら、所望の治療効果を与えることができることがついに判明した。
【非特許文献1】J. Am. Med. Assoc.、270(1):83〜90頁(1993)
【非特許文献2】H.A. Feldmanら、J. Urol.、151:54-61頁(1994)
【特許文献1】米国特許第5770606号
【特許文献2】米国特許第6291471号
【非特許文献3】公開医薬品審査報告書(EPAR)1945
【特許文献3】欧州特許出願第0689438号
【特許文献4】WO 00/35457号
【特許文献5】WO 01/74358号
【特許文献6】WO 99/38467号
【非特許文献4】米国薬局方第26版、第601章、装置4(2003)
【特許文献7】WO 97/03649号
【特許文献8】WO 02/43701号
【特許文献9】WO 96/23485号
【特許文献10】WO 02/00197号
【特許文献11】米国特許第6257233号
【特許文献12】WO 01/00262号
【特許文献13】WO 02/07805号
【特許文献14】WO 02/89880号
【特許文献15】WO 02/89881号
【特許文献16】WO 01/82906号
【特許文献17】WO 02/030499号
【特許文献18】WO 01/89616号
【非特許文献5】米国薬局方第26版、第601章、装置3(2003)
【非特許文献6】米国薬局方第26版、第601章、装置B(2003)
【非特許文献7】欧州薬局方、方法5.2.9.18、装置C、補遺2000
【非特許文献8】EPAR(公開医薬品審査報告書)1945、Uprima、一般名:塩酸アポモルヒネ、「科学的議論」、25〜27頁(2002)
【非特許文献9】EPAR1945、「科学的議論」、12頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、治療効果が速やかに現れ、アポモルヒネの投与に通常伴う副作用、すなわち嘔気および眠気を減少させるか回避さえし、投与が容易である、性機能障害の治療を提供することにある。
【0019】
肺吸入により刺激を引き起こすことなくアポモルヒネを投与することが可能であることがついに見出された。毒物学研究が行われ、所望の治療効果を達成することが見込まれる用量を、28日の期間にわたり複数濃度で少なくとも12回投与した際、犬が吸入したアポモルヒネは安全であったことがわかった。研究では、刺激または他の組織病理学的変化の徴候はみられなかった。
【0020】
アポモルヒネの微粒子が肺から急速に吸収され、アポモルヒネの治療効果が極めて迅速に現れることも見出された。実際、治療効果の発現は、入手可能なUprima(登録商標)舌下錠によるアポモルヒネ投与後に観察される発現よりも著しく速やかである。
【0021】
さらに、性機能障害の治療に必要なアポモルヒネの量は、前記用量が肺吸入で投与される際に、Uprima(登録商標)舌下錠およびNastechにより開発されている鼻腔内アポモルヒネ組成物など、現在入手可能な形態の性機能障害治療用アポモルヒネにより与えられる用量に比べて著しく小さいことがわかった。
【0022】
さらに、アポモルヒネを肺吸入で投与すると、治療効果の例外的に速やかな発現と有利な持続時間および血漿からの薬物の速やかな除去を提供する、極めて有利な薬物動態プロファイルがもたらされる。これは、恐らくは薬物が頬粘膜にゆっくり吸収され、嚥下される薬物の割合が小さいために、治療効果の発現が遅れ、血漿中に薬物が長期間存在するという、Uprima(登録商標)錠の薬物動態とは対照的である。
【0023】
有利なことに、肺注入で投与されるアポモルヒネの小さい用量および/または結果として観察される血漿中濃度プロファイルにより、失神、嘔吐、および眠気を含む、アポモルヒネの投与に一般に伴う副作用の発生が低下することもわかった。
【0024】
最後に、本来は不安定で容易に酸化されるアポモルヒネを、経時安定性に優れ、したがって商業化に適した製剤として、肺吸入用に調剤できることがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の一態様によれば、アポモルヒネの投与に通常伴う副作用を回避または最小限に抑えながら、肺吸入により性機能障害を治療する、アポモルヒネを含む新規医薬組成物が提供される。
【0026】
本発明の他の一態様によれば、肺注入で投与されるアポモルヒネを含む新規医薬組成物を使用する、性機能障害の新規治療方法が提供される。これらの方法でも、アポモルヒネの投与に伴う副作用を回避しながら所望の治療効果が達成される。
【0027】
本発明の組成物および方法はまた、所望の治療効果の速やかな発現を提供する。さらに、本発明の組成物および方法は、男性および女性の両方の治療にも適している。
【0028】
本発明は、これまで用いられた投与方式に対していくつかの著しく、また予期しない利点を有する、アポモルヒネの高性能の吸入送達に関する。本発明の投与方式および製剤は、この優れた性能を可能にする。
【0029】
アポモルヒネは遊離塩基の形態で、または酸付加塩として存在することができる。本発明では、塩酸アポモルヒネおよびアポモルヒネの遊離塩基の形態が好ましいが、アポモルヒネの他の薬理学的に許容できる形態も使用できる。本明細書で用いる「アポモルヒネ」という用語は、この化合物の遊離塩基の形態、および薬理学的に許容できるその塩またはエステルを含む。
【0030】
塩酸塩以外の他の許容される酸付加塩としては、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸リン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、グルコン酸塩などが挙げられる。
【0031】
本明細書で用いるアポモルヒネの「薬学的に許容できるエステル」は、10位および11位のヒドロキシル官能基の一方または両方と形成され、in vivoで加水分解し、また人体内で容易に分解して本特許化合物またはその塩が残るエステルを含むエステルを意味する。好適なエステル基としては例えば、各アルキルまたはアルケニル部分の炭素数が6以下であるという点で有利である、薬学的に許容できる脂肪族カルボン酸、具体的にアルカン酸、アルケン酸、シクロアルカン酸、およびアルカン二酸から誘導されるエステル基が上げられる。具体的なエステルとしては例えばギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、アクリル酸エステル、およびコハク酸エチルが挙げられる。
【0032】
アポモルヒネの遊離塩基は、肺障壁を極めて容易に乗り越えるため、本発明では特に魅力的であることから、肺注入によるその投与により治療効果が極めて速やかに現れることが予測される。したがって、本明細書で開示される組成物はいずれも、アポモルヒネの遊離塩基を用いて調剤することができる。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、医薬組成物は乾燥粉末の形態である。好ましくは、乾燥粉末は乾燥粉末吸入器(DPI)により投与される。
【0034】
本発明の一実施形態では、組成物は、アポモルヒネを含む活性粒子であって、質量中央空気力学的粒径(MMAD)が10μm以下の活性粒子を含む。
【0035】
本発明の他の実施形態では、組成物はアポモルヒネの活性粒子、および粘着防止材であり、組成物中の粒子間の凝集を減少させる添加剤材料を含む。
【0036】
本発明のさらに他の実施形態では、組成物は、アポモルヒネ、およびラクトースなど不活性賦形剤材料の担体粒子を含む。担体粒子は約5〜約1000μmの平均粒径を有することができる。
【0037】
一代替実施形態では、組成物は、加圧式定量噴霧式吸入器(pMDI)を用いて投与される溶液または懸濁液である。本実施形態の組成物は、HFA134aまたはHFA227などの液体噴霧剤に混合または溶解した、上記で論じた乾燥粉末組成物を含むことができる。
【0038】
本発明の一実施形態では、吸入を経由して性機能障害を治療するのに用いられる組成物は、アポモルヒネ(すなわち、アポモルヒネ、アポモルヒネの遊離塩基、薬学的に許容できるその塩またはエステル。塩酸塩の重量を基準とする)約100μg〜約2400μgの用量を含む。用量は前記アポモルヒネ約200μg〜約1800μg、前記アポモルヒネ約300μg〜約1600μg、または前記アポモルヒネ約400μg〜約1200μgを含むことができる。他の実施形態では、各患者の必要量および耐性に基づいて、用量が400μg〜1200μgの単位で与えられる。例えば、前記アポモルヒネ約400、約500、約600、約700、約800、約900、約1000、約1100および/または約1200μgの用量を与えることができる。
【0039】
例えば、女性機能障害を治療する際、治療効果を得るのに比較的少ない用量で十分な場合、前記モルヒネ約100、約200、約300、約400、約500および/または約600μgの用量を与えることができる。
【0040】
本発明の別の実施形態では、粉末組成物の用量は、多段式液体インピンジャ、米国薬局方第26版、第601章、装置4(2003)、AndersenカスケードインパクタまたはNew Generationインパクタで測定された、(塩酸塩の重量を基準とする)アポモルヒネ約100μg〜約1800μgの微粒子用量をin vitroで送達する。好ましくは、用量は、前記アポモルヒネ約200μg〜約1200μg、前記アポモルヒネ約400μg〜約1000μg、約400μg〜約900μg、または前記アポモルヒネ約600μg〜約800μgの微粒子用量をin vitroで送達する。あるいは、例えば女性機能障害を治療する際、治療効果を得るのに比較的少ないアポモルヒネしか必要でない場合、用量は、前記アポモルヒネ約100μg〜約900μg、前記アポモルヒネ約200μg〜約600μg、前記アポモルヒネ約200μg〜約400μgの微粒子用量をin vitroで送達することが好ましい。
【0041】
肺吸入を経由したアポモルヒネの送達が、経口送達および鼻腔内送達など、従来技術で試みられた他の経路による送達より効率が高いことがわかった。下記で論じる研究では、肺吸入により用量1200μgを投与することで、めまいなど軽症の(重症ではない)副作用を伴ったが、失神および嘔吐などの重症な副作用は生じなかったことを示している。重症ではないにしても、用量1200μgに伴う軽症の副作用は、臨床環境以外でのこのような用量の使用に制限を与えると思われ、それより多い用量は研究されなかった。これらの発見とは対照的に、過去の研究では、アポモルヒネの吸入投与により、嘔吐などの深刻な副作用が生じないことは明らかにされなかった。さらに、Nastech Pharmaceutical Company Inc.がアポモルヒネの鼻腔内送達について行った研究では、2mgを超えるアポモルヒネを臨床環境で、許容できない副作用を引き起こさずに鼻腔内投与を行うことができることを示した。
【0042】
投与効率の高さは、400μgと少量のアポモルヒネの吸入投与後に臨床効果が観察されるという事実によっても示される。一方、Uprima(登録商標)舌下錠では、所望の効果を得るのに最低2mgが必要のようである。
【0043】
本発明のある実施形態では、アポモルヒネは粉末組成物の約3%〜約80%、約5%〜約50%、または約15%〜約40%である。
【0044】
本発明の一実施形態では、用量は塩酸アポモルヒネ約600μgを含み、この用量はin vivoで約3.5ng/ml〜約4.9ng/mlのCmaxを与える。他の実施形態では、用量は塩酸アポモルヒネ約900μgを含み、この用量はin vivoで約7.4ng/ml〜約8.8ng/mlのCmaxを与える。さらに他の実施形態では、用量は塩酸アポモルヒネ約1200μgを含み、この用量はin vivoで約9.2ng/ml〜約16.2ng/mlのCmaxを与える。任意の用量のアポモルヒネでのCmaxは、肺吸入投与の1〜30分後、好ましくは1〜5分後に現れる。薬物の終末排出にはいずれの用量でも約1時間かかる。
【0045】
したがって、本発明の一実施形態によれば、アポモルヒネを含む組成物であって、該組成物の肺吸入による投与が、投与後1〜5分以内にCmaxを与える組成物が提供される。
【0046】
一実施形態では、女性機能障害の治療に好ましくは、Cmaxは少なくとも2ng/nlである。他の実施形態では、Cmaxは少なくとも7ng/nlである。
【0047】
本発明の他の実施形態では、組成物の肺吸入による投与が、50〜70分の終末排出半減期を与える。
【0048】
さらに他の実施形態では、組成物の肺吸入による投与が、用量依存性AUC0-∞を与える。
【0049】
他の実施形態では、組成物の肺吸入による投与が、用量依存性AUC0-tを与える。
【0050】
本発明のさらなる実施形態では、組成物の肺吸入による投与が、用量依存性Cmaxを与える。
【0051】
本発明の他の実施形態によれば、アポモルヒネの用量が肺に吸入され、前記用量は約10分以内に治療効果を与えるのに十分である。
【0052】
一態様では、本発明は、性機能障害の治療用のアポモルヒネの単位用量を提供する。単位用量は、上記で論じたアポモルヒネを含む医薬組成物を含む。
【0053】
一実施形態では、本発明のアポモルヒネ組成物を含むブリスター(blister)が提供される。ブリスターは好ましくはホイルブリスターであり、空洞を有する基材をその中に含む。空洞は粉末組成物を含んでおり、破断可能なカバーで密封された開口部を有する。
【0054】
用量および/または薬物充填ブリスターは、好ましくは粉末組成物1〜5mgを含み、アポモルヒネは粉末組成物の約3%〜約80%、約5%〜約50%、または約15%〜約40%である。例えば女性機能障害の治療用に必要な治療用量が比較的少ない場合、アポモルヒネは粉末組成物の約3%〜約40%、約4%〜約25%、または約5〜20%であってもよい。
【0055】
本発明の他の実施形態によれば、本明細書に記載される本発明の化合物を含む乾燥粉末吸入器が提供される。
【0056】
さらなる実施形態では、吸入器は能動的吸入器である。さらに他の実施形態では、吸入器は呼吸作動式吸入器である。
【0057】
一実施形態では、本発明の組成物はブリスター中に保持され、その内容物は前記吸入器のいずれかを用いて投与することができる。好ましくは、ブリスターはホイルブリスターである。
【0058】
他の実施形態では、ブリスターは、組成物と接するポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンを含む。
【0059】
他の態様では、本発明は、粉末化アポモルヒネ組成物の吸入可能なエアロゾルの製造方法を対象とする。
【0060】
本発明のさらに別の態様では、肺吸入による性機能障害治療用の薬物の製造におけるアポモルヒネの使用が提供される。
【0061】
組成物、方法または治療、吸入器、ブリスター、吸入方法、および用量の一部は、好ましい平均粒径約40μm〜約70μmを有する担体材料を含むものとして上述されているが、他の実施形態によれば、これらの組成物、方法または治療、吸入器、ブリスター、吸入方法、および用量における担体材料は、他の平均粒径範囲、例えば約5μm〜約1000μm、約10μm〜約70μm、約20μm〜約30μmを有することができることを理解されたい。
【発明の効果】
【0062】
したがって、本発明が従来技術に対するいくつかの著しい利点を提供することが上記から明らかである。特に、本発明はアポモルヒネの高性能の肺送達を提供する。この高性能により、ピーク血液濃度に迅速に達することが可能になり、治療効果の迅速な臨床上の発現が可能になる。本発明により提供されるアポモルヒネの肺投与の効果は一貫しかつ再現可能であり、この高性能投与の一貫性により、アポモルヒネの投与に通常伴う副作用が減少する。また、この高性能が必要とする総用量は、他の投与経路を用いた場合に必要とされる総用量と比べても少ない。
【0063】
本発明の顕著な特徴は、アポモルヒネのより大きい血中濃度を達成し、従来技術のアポモルヒネ治療に比較して副作用を減少させながら、従来技術で用いられる量よりはるかに少ない量のアポモルヒネを投与することが可能であるという点である。実際、以下に示すように、本発明に従って投与されるアポモルヒネ900μgという用量は、Uprima(登録商標)4mg舌下錠で実現されるレベルの6倍のアポモルヒネの血中濃度を実現する一方で、許容できない副作用プロファイルのため市販されていないこの4mg錠剤とは対照的に、いかなる著しい副作用を引き起こすこともない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
本発明の実施形態は、性機能障害の治療に用いられる、アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはエステルの吸入可能製剤を対象とする。本発明の実施形態はまた、アポモルヒネ製剤の調製方法、ならびに前記製剤を用いた性機能障害の治療方法および前記製剤を含む吸入器に関する。本発明の実施形態はまた、性機能障害の治療用薬物の製造におけるアポモルヒネの使用も対象とする。
【0065】
本発明の吸入可能製剤は、乾燥粉末吸入器(DPI)を経由して投与することが好ましいが、加圧式定量噴霧式吸入器(pMDI)またはネブライズシステムを経由して投与してもよい。
【0066】
本発明では、アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはエステルの用量(すなわちμg単位)は、塩酸塩(塩酸アポモルヒネ)の重量を基準に記載する。したがって、「アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはエステル」100μgの用量は、塩酸アポモルヒネ100μgまたは等量の他の塩、エステル、もしくは塩基を意味する。
【0067】
乾燥粉末吸入用組成物
医薬活性薬剤を、乾燥微粒子(活性粒子)の形態で該活性薬剤を含む粒状薬物組成物の肺投与により患者に投与することが知られている。活性粒子の粒径は、活性薬剤の肺吸収の部位を決定する上で非常に重要である。粒子を肺の奥深くに送達するためには、粒子は極めて細かい必要があり、例えば質量中央空気力学的粒径(MMAD)が10μm未満である必要がある。空気力学的粒径が約10μmを超える粒子は、喉壁に嵌入する可能性が高く、一般的には肺に到達しない。空気力学的粒径が約5μm〜約2μmの粒子は、一般に細気管支に沈着されるが、空気力学的粒径が約3μm〜約0.05μmの比較的小さい粒子は肺胞に沈着される可能性が高い。
【0068】
本発明の一実施形態では、組成物は、アポモルヒネを含む活性粒子であって、MMADが10μm以下の活性粒子を含む。他の実施形態では、活性粒子のMMADは約5μm〜約2μmである。さらに別の実施形態では、活性粒子の質量中央空気力学的粒径は約3μm〜約0.05μmである。本発明の一実施形態では、アポモルヒネ粒子の少なくとも90%の粒径が5μm以下である。
【0069】
しかし、粒径約10μm未満の粒子は、その表面積と体積の比が大きいため熱力学的に不安定であり、表面の遊離エネルギーが著しく過剰になり、粒子が凝集する傾向にある。吸入器では、微粒子の凝集および粒子の吸入器壁への密着は、活性粒子が吸入器を大きな凝集物として離れるか、あるいは活性粒子が吸入器を離れられず吸入器の内部に密着した状態にとどまるか、または吸入器を目詰まりもしくは閉塞させるという点で問題である。
【0070】
吸入器の各作動間で、また異なる吸入器や異なる粒子バッチ(batch)の間で、粒子の安定な凝集物が形成される程度が一定でないため、用量の再現性が悪い。さらに、凝集物の形成は、活性粒子のMMADが非常に増大し得ることを意味しており、活性粒子の凝集物は肺の必要部分に到達しない。したがって、本発明の目的は、良好な再現性を与えるため投与が正確で予見可能になる粉末製剤を提供することにある。
【0071】
乾燥粉末製剤の計量用量(MD)は、問題の吸入器により提供される計量された形態で存在する活性薬剤の全質量である。例えば、MDはCyclohaler(登録商標)用カプセル、またはAspirair(登録商標)噴霧器中のホイルブリスター中に存在する活性薬剤の質量でもよい。
【0072】
放出用量(ED)は、作動後の吸入器から放出される活性薬剤の全質量である。吸入器の内部または表面上に残る物質は含まれない。EDの測定は、均一用量サンプリング装置(DUSA)としばしば呼ばれる装置で吸入器から放出された全質量を収集し、これを有効定量湿式化学アッセイで回収することで行われる。
【0073】
微粒子用量(FPD)は、作動後に吸入器から放出され、規定の限界値より小さい空気力学的粒径で存在する活性薬剤の全質量である。本明細書で微粒子用量またはFPDという用語を用いる場合、空気力学的粒径は5μmより小さい。FPDの測定は、2段式インピンジャ(TSI)、多段式液体インピンジャ(MSLI)、AndersenカスケードインパクタまたはNext Generationインパクタ(NGI)などのインパクタまたはインピンジャを用いて行われる。各インパクタまたはインピンジャは、段階(stage)ごとに所定の空気力学的粒径収集用カットポイントを有する。FPD値は、有効定量湿式化学アッセイで定量された段階ごとの活性薬剤回収率を解釈することで得られる。このアッセイでは、単一段階カットを用いてFPDを測定するか、段階ごとの沈着のより複雑な数学的補間を用いる。
【0074】
微粒子画分(FPF)は通常、EDで分けられたFPDとして定義され、百分率で表される。本明細書では、微粒子用量百分率(%FPD)という用語は、粒径5μm以下で送達される全計量用量の割合を意味するものとして使用される(すなわち、%FPD=100×FPD/全計量用量)。
【0075】
本明細書で「超微粒子用量」(UFPD)という用語は、吸入器で送達され、粒径3μm以下である活性材料の全質量を意味するものとして使用される。本明細書で「超微粒子画分」という用語は、吸入器で送達され、粒径3μm以下である活性材料の全量の割合を意味するものとして使用される。本明細書で超微粒子用量百分率(%UFPD)という用語は、粒径3μm以下で送達される全計量用量の割合を意味するものとして使用される(すなわち、%UFPD=100×UFPD/全計量用量)。
【0076】
本明細書では、「送達用量」および「放出用量」または「ED」という用語は互換的に使用される。これらは吸入用製品に関する現行の欧州薬局方モノグラフに示すように測定される。
【0077】
「吸入器の作動」とは、粉末の用量が吸入器中のその静止位置から除去されるプロセスを意味する。このステップは、粉末が吸入器に充填されてすぐに使用可能になった後に行われる。
【0078】
微粒子が凝集する傾向があることは、所与の用量におけるFPFが極めて予見不能となり、結果として肺または肺の正確な部分に投与される微粒子の割合が変化しやすいことを意味している。これは例えば、微粒子の形態で純粋薬物を含む製剤において観察される。そのような製剤は流動性が小さく、FPFも少ない。
【0079】
この状況を改善し、一定のFPFおよびFPFを与える試みとして、乾燥粉末製剤にはしばしば添加剤材料が含まれる。
【0080】
添加剤材料は、乾燥粉末製剤中の粒子間の凝集を低下させることを目的とする。添加剤材料は、微粒子間の弱い結合力に干渉し、粒子を分離した状態にとどめ、このような粒子の相互間の、存在すれば製剤中の他の種の粒子との、および吸入器の内面に対する粘着を低下させる。粒子の凝集体が形成された場合、添加剤材料の粒子を加えることでこれらの凝集体の安定性が低下するため、凝集体は吸入器の作動で創出された乱気流中で壊れやすくなり、粒子は装置から除去され、吸入される。凝集体が壊れる際に、活性粒子は個別の微粒子、または肺に到達することが可能な少数の粒子の凝集体に戻ることができる。
【0081】
従来技術では、(一般に粒径が活性微粒子に匹敵する)添加剤材料の別の粒子を含む乾燥粉末製剤が議論されている。いくつかの実施形態では、添加剤材料は、活性粒子および/または任意の担体粒子上にコーティング、一般には不連続コーティングを形成することができる。
【0082】
好ましくは、添加剤材料は粘着防止材であり、粒子間の凝集を低下させる傾向にあり、微粒子が吸入器の内面に接着することも防止する。有利には、添加剤材料は減摩剤または流動促進剤であり、粉末製剤の吸入器中での流動性を向上させる。このように使われる添加剤材料は粘着防止材または減摩剤と常に呼ばれる訳では必ずしもないが、粒子間の凝集を減少させるか、粉末の流動を促進させる効果を有する。添加剤材料は時に力制御剤(FCA)とも呼ばれ、通常は用量再現性を改善し、より高いFPFを実現する。
【0083】
したがって、本明細書で用いる添加剤材料またはFCAは、それが粒子表面に存在することで、他の粒子の存在下で、また粒子が曝される表面に関して、その粒子が受ける粘着および凝集表面力を改変することができる材料である。一般に、その機能は粘着力および凝集力の両方を低下させることである。
【0084】
粒子が互いにまたは吸入器自体に強力に結合する傾向が低下することで、粉末の凝集および粘着が低下するだけでなく、流動特性の改善を進めることもできる。これにより、各用量について計量される粉末量のばらつきが低下し、吸入器からの粉末の放出が向上するため、用量再現性が向上する。また、吸入器から離れる活性材料が患者の肺の下部に到達する可能性が高まる。
【0085】
粉末が吸入器内にある際には、粒子の不安定な凝集体が存在することが好ましい。上記したように、粉末が吸入器を効率よく再現可能に離れるためには、このような粉末の粒子は大きい、好ましくは40μmより大きい必要がある。このような粉末は、粒径約40μm以上の個々の粒子、および/または粒径が約40μm以上のより微小な粒子の凝集体の形態であることができる。形成された凝集体の直径は約1000μmとなり、添加剤材料を加えることで、これらの凝集体は吸入時に形成される乱気流中で効率よく壊れやすくなる。したがって、粉末中に粒子の不安定なまたは「柔らかい」凝集体が形成されていることが、実質的に凝集が存在しない粉末に比較して好ましい。そのような不安定な凝集体は、粉末が吸入器内にある際には安定であるが、粉末が投与されると破壊される。
【0086】
活性粒子間の凝集および密着の減少により、凝集体の直径が減少するか、または個別の粒子になって同等の性能が得られる。
【0087】
したがって、本発明の他の実施形態では、組成物はアポモルヒネの活性粒子および添加剤材料を含む。添加剤材料は、WO 97/03649号に開示されているように、活性粒子の表面に密着する傾向にある粒子の形態であってもよい。あるいは、添加剤材料は、WO 02/43701号に開示されているように、例えば共粉砕法により活性粒子の表面をコートしてもよい。
【0088】
本発明のある実施形態では、アポモルヒネ製剤は「担体を含まない」製剤であり、アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはエステルおよび1種または複数の添加剤材料が含まれる。そのような担体を含まない製剤はWO 97/03649号に開示されており、その開示全体を参照により本明細書に組み込む。これらの実施形態によれば、粉末製剤は、アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはエステル、および粘着防止材を含む添加剤材料を含む。
【0089】
粉末は、アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはエステルを粉末の重量に対して少なくとも60重量%含む。有利には、粉末は、アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはエステルを粉末の重量に対して少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%含む。最も有利には、粉末は、アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはエステルを粉末の重量に対して少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、さらに好ましくは少なくとも97重量%含む。できるだけ小さい粉末、特に患者に投与されるべき有効成分以外の物質を肺に導入することには生理学的利点があると思われる。そのため、添加剤材料の添加量はできるだけ少ないことが好ましい。したがって、最も好ましい粉末は、アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはエステルの99重量%を超える。
【0090】
有利には、これらの「担体を含まない」製剤では、粉末粒子の少なくとも90重量%が粒径63μm未満、好ましくは30μm未満、より好ましくは10μm未満である。上記で示すように、アポモルヒネ(または薬学的に許容できるその塩もしくはエステル)粒子の粒径は、肺の下部への効果的な送達のためには、0.1μm〜5μmの範囲内にあるべきである。添加剤材料が粒子の形態である場合、これらの添加剤粒子は粒径が肺の下部への送達に好ましい範囲の外にあることが有利である。
【0091】
添加剤材料はアミノ酸を含むことが特に有利である。アミノ酸は、添加剤材料として存在する場合、活性材料の大きい呼吸性画分を与え、粉末の流動性を良好にする。好ましいアミノ酸はロイシン、特にL-ロイシンである。アミノ酸のL形が一般に好ましいが、D形およびDL形を使用してもよい。添加剤材料は、任意の以下のアミノ酸、すなわちロイシン、イソロイシン、リシン、バリン、メチオニン、システイン、およびフェニルアラニンの1種または複数を含んでもよい。有利には、粉末は、アポモルヒネ(または薬学的に許容できるその塩)を粉末の重量に対して少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%含む。有利には、粉末は添加剤材料を粉末の重量に対して8%以下、より有利には5重量%以下で含む。上記に示すように、場合によっては粉末が添加剤材料を約1重量%含むことが有利である。添加剤材料は、ステアリン酸マグネシウムまたはコロイダル二酸化ケイ素を同時に(または代替的に)含んでもよい。
【0092】
添加剤材料またはFCAは、約0.1重量%〜約10重量%、好ましくは約0.15%〜5%、最も好ましくは約0.5%〜約2%の量で与えることができる。本発明では、好適な添加剤材料としては粘着防止材が挙げられるが、それだけに限定されない。添加剤材料としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ロイシン、レシチン、およびフマル酸ステアリルナトリウムが挙げられ、参照により本明細書に組み込まれるWO 96/23485号にさらに詳しく記載されている。
【0093】
添加剤材料が微粉化ロイシンまたはレシチンの場合、約0.1重量%〜約10重量%の量で与えるのが好ましい。好ましくは、添加剤材料は、微粉化ロイシンの約3%〜約7%、好ましくは約5%である。好ましくは、微粉化ロイシンの少なくとも95重量%が粒径150μm未満、好ましくは100μm未満、最も好ましくは50μm未満である。好ましくは、微粉化ロイシンの質量中央径は10μm未満である。
【0094】
ステアリン酸マグネシウムまたはフマル酸ステアリルナトリウムを添加剤材料として使用する場合、約0.05%〜約10%、約0.15%〜約5%、約0.25%〜約2%、または約0.15%〜約0.5%の量で与えることが好ましい。
【0095】
乾燥粉末の投与装置からの抽出を向上させ、一定のFPFおよびFPDを提供するさらなる試みとして、乾燥粉末製剤にはしばしば、活性材料の微粒子と混合した賦形剤材料の担体粗粒子が含まれる。吸入器内では、活性微粒子は、互いに密着するよりは担体粗粒子の表面に密着する傾向にあるが、投与装置の作動および気道吸入時に放出されて分散し、微細懸濁液を与える。担体粒子のMMADは90μmを超えることが好ましい。
【0096】
担体微粒子が含まれていることは、非常に少ない用量の活性薬剤を投与する場合、非常に魅力的である。非常に少量の粉末を正確かつ再現性高く投与することは非常に難しく、非常に少量の粉末しか投与せず、粉末が活性粒子を主に含む場合、投与された粉末の量のばらつきが小さくても、活性薬剤の用量のばらつきは大きくなる。したがって、希釈剤を大きな賦形剤粒子の形態で加えると、投与がより再現性高く正確になる。
【0097】
担体粒子は、任意の許容される不活性賦形剤材料または材料の組み合わせからなることができる。例えば、担体粒子は、糖アルコール、ポリオール、および結晶糖から選択される1種または複数の材料からなることができる。他の好適な担体としては、塩化ナトリウムおよび炭酸カルシウムなどの無機塩、乳酸ナトリウムなどの有機塩、ならびに多糖およびオリゴ糖などの他の有機化合物が挙げられる。有利には、担体粒子はポリオールを含む。具体的には、担体粒子は結晶糖、例えばマンニトール、デキストロース、またはラクトースの粒子であることができる。好ましくは、担体粒子はラクトースからなる。
【0098】
しかし、担体粗粒子を活性微粒子の組成物に加える際に出会うさらなる困難として、送達装置の作動時に比較的大きい担体粒子の表面から微粒子を離れさせることがある。
【0099】
他の活性粒子および担体粒子に活性粒子が存在する場合それを分散させて吸入用活性微粒子のエアロゾルを形成するステップは、肺ないの所望の吸収部位に到達する活性材料の用量の割合を測定する上で重要である。この分散の効率を向上させるため、組成物中に上記で論じた天然の添加剤材料を含めることが知られている。活性微粒子、担体粒子、および添加剤材料を含む組成物はWO 96/23485号に開示されている。
【0100】
したがって、本発明の一実施形態では、組成物はアポモルヒネを含む活性粒子および担体粒子を含む。担体粒子の平均粒径は、約5〜約1000μm、約4〜約40μm、約60〜約200μm、または約150〜約1000μmであることができる。担体粒子に有用な他の平均粒径は約20〜約30μmまたは約40〜約70μmである。
【0101】
アポモルヒネおよび担体粒子を含む組成物は、添加剤材料をさらに含むことができる。添加剤材料は、WO 97/03649号に開示されているように、活性粒子の表面に密着する傾向にある粒子の形態であってもよい。あるいは、添加剤材料は、WO 02/43701号に開示されているように、例えば共粉砕法により活性粒子の表面をコートしてもよく、WO 02/00197号に開示されているように、担体粒子の表面をコートしてもよい。
【0102】
乾燥粉末吸入器では、投与されるべき用量は非加圧乾燥粉末の形態で貯蔵され、吸入器が作動すると、粉末の粒子は患者により吸入される。乾燥粉末吸入器は、患者の息が吸入器の原動力を与える唯一のガス源である「受動式」吸入器であることができる。「受動式」乾燥粉末吸入器としては例えば、RotahalerおよびDiskhaler(GlaxoSmithKline)、Turbohaler(Astra-Draco)ならびにNovolizer(商標)(Viatris GmbH)が挙げられる。あるいは、圧縮ガス源または代替エネルギー源を用いる「能動式」吸入器を使用することもできる。好適な能動式吸入器としては例えば、Aspirair(商標)(Vectura Ltd)および(米国特許第6257233号が対象とする)Nektar Therapeutics製能動式吸入器が挙げられる。
【0103】
特に好ましい「能動式」乾燥粉末吸入器は、本明細書ではAspriair吸入器と称する。詳細は、その内容が参照により本明細書に組み込まれるWO 01/00262号、WO 02/07805号、WO 02/89880号、およびWO 02/89881号に記載されている。ただし、本発明の組成物は受動式または能動式のいずれの吸入器でも投与可能であると理解されたい。
【0104】
前述の粉末製剤を患者に送達するのに使用できる好ましい吸入器の概要を図1に示す。この種の吸入器はWO 02/089880号およびWO 02/089881号に詳述されている。
【0105】
図1および2によれば、吸入器は、渦室12を含み、入口と出口を有する、粉末製剤のエアロゾル生成用の渦ノズル11を含む。渦室は、それを通じて使用者が吸入して吸入器を使用するマウスピース13内に位置する。通気道(図示せず)は渦室とマウスピースの間に画定することができ、それにより使用者は粉末化薬物以外に空気も吸入可能になる。
【0106】
粉末製剤は、支持体および貫通可能なホイル蓋により画定されるブリスター14内に収容される。ブリスター保持器15はブリスターを所定の位置に保持する。図示するように、支持体はその内部に形成される粉末製剤保持用の空洞を有する。空洞の開口端は蓋で密封される。渦室の空気流入管の末端には、貫通可能なホイル蓋を貫通する貫通ヘッド16がある。リザーバ17が通路を介してブリスターに接続している。空気源、好ましくは加圧ガスまたは噴霧剤の手動ポンプまたはキャニスターが、リザーバにガス(例えばこの例では空気)を所定の圧力(例えば1.5バール)まで充填する。好ましい一実施形態では、リザーバは、リザーバ室を画定するシリンダ内に収容されるピストンを含む。ピストンはシリンダ内に推進されてリザーバ室の体積を減少させ、充填ガスに加圧する。
【0107】
使用者が吸入すると、バルブ18が呼吸作動式機構19により開かれることにより、空気が加圧空気リザーバからブリスターを通過し、そこで粉末製剤が気流中に混入する。気流は粉末製剤を渦室12に運び、そこで粉末製剤と空気の回転渦が入口と出口の間に生まれる。気流中に混入した粉末製剤は、渦室を連続的に通過するよりは、渦室に非常に短時間(典型的には0.3秒未満、好ましくは20ミリ秒未満)留まり、純粋な薬物製剤(すなわち、担体なし)の場合、粉末製剤の一部が渦室の壁に付着する。次に、この粉末は、粉末近傍の境界層に存在する強い剪断力によりエアロゾルになる。渦の作用により粉末製剤の粒子は脱凝集され、薬物および担体を含む製剤の場合は、薬物が担体から取り除かれ、したがって粉末製剤のエアロゾルは出口を経由して渦室から出る。エアロゾルは使用者によりマウスピースを通じて吸入される。
【0108】
渦室は2つの機能を果たすと考えられている。脱凝集、すなわち粒子のクラスターを個別の呼吸性粒子に分解すること、および、濾過、すなわち特定の粒径未満の粒子を選択的に、出口からより簡単に出られるようにすることである。脱凝集により、粉末製剤の凝集クラスターは呼吸性粒子に分解され、濾過により、クラスターの渦室に滞留する時間が長くなり、クラスターが脱凝集するための時間が長くなる。脱凝集は、乱気流、および渦室内の気流の速度勾配による強い剪断力の形成により実現することができる。速度勾配は、渦室の壁に近い境界層で最も急である。
【0109】
渦室は、実質的に円筒型室の形態である。有利には、渦室は非対称形である。図2および3に示す実施形態では、渦室の壁8は螺旋または渦巻の形態である。入口3は渦室1の外周に対して実質的に接線方向にあり、出口2は渦室1の軸に対して一般に同心状である。したがって、ガスは入口3を経由して渦室1に接線方向に入り、出口2を経由して軸方向に出る。出口2の中央から測定した渦室1の半径Rは、入口の最大半径Rmaxから最小半径Rminまで平坦に小さくなる。したがって、入口3の位置から角度θ(シータ)の半径RはR=Rmax(1-θk/2pi)で求められ、式中、k=(Rmax-Rmin)/Rmaxである。気流および薬物の混入粒子が室の周囲を循環すると、渦室1の有効半径が小さくなる。こうして、気流が通過する渦室1の有効断面積が小さくなり、気流は加速されて薬物の混入粒子の沈着が減少する。さらに、気流が2piラジアン(360°)を通過する際、気流は入口3を経由して流入する気流と平衡になり、気流の衝突により引き起こされる乱気流が減少し、渦中での流体の損失が少なくなる。
【0110】
入口3と出口2の間に渦が生まれ、そこで剪断力が発生して粉末製剤の粒子を脱凝集させる。薬物が出口の壁に沈着する可能性を減少させるため、出口2の長さはできるだけ短いことが好ましい。図2の吸入器の渦室の一般的な形態を図3に示す。渦室の形状は下記の表に列挙した寸法により確定する。これらの寸法の好ましい値も表に示す。室の円錐状部分の高さhの好ましい値が0mmであることに留意されたい。これは、渦室は先端(屋根)が平板である時に最も効率よく機能することがわかったためである。
【0111】
【表1】
【0112】
室1の直径と出口2の直径の比は、ノズルのエアロゾル形成性能に多大な影響を与える。図2の非対照ノズルでは、直径は(Rmax+Rmin)として定義される。比は4〜12、好ましくは6〜8である。図2および3の好ましい実施形態では、比は6.9である。
【0113】
図示した実施形態では、渦室はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、アクリル、または黄銅から機械加工されるが、広範な代替材料が可能である。渦室をポリマーから射出成形することが、高体積での製造に有利である。好適な材料としてはポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリアミド、ポリスチレン、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ならびにポリプロピレンおよびポリエチレンテレフタレート(PET)を含むポリオレフィンが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0114】
本発明の実施形態による吸入器は、大きい微粒子画分を有する比較的ゆっくり移動するエアロゾルを生成することができる。吸入器は、粉末薬物の測定用量を完全かつ反復可能にエアロゾル化し、患者の吸気流の速度未満かそれと実質的に同じである速度でエアロゾル化した用量を吸気流に送達し、したがって患者の口への嵌入による沈着を減少させることが可能である。さらに、この効率的エアロゾル化系は、エアロゾル形成に用いられるエネルギーが小さいため、単純で小さく低コストの吸入器を可能にする。アエロゾル形成に必要な流体エネルギーは、圧力に流量を乗じた経時的積分として定義できる。これは典型的には5ジュール未満であり、3ジュールと低くてもよい。
【0115】
本発明のある実施形態では、粉末組成物の少なくとも35%である微粒子画分が、吸入器の作動時に生成される。微粒子画分は45%、50%、または60%以上であるのが特に好ましい。微粒子画分は、好ましくは少なくとも70%であり、最も好ましくは少なくとも80%である。一実施形態では、この粉末はアポモルヒネと担体材料の組み合わせを含む。
【0116】
最も好ましくは、粉末組成物の投与に用いられる吸入器は能動式吸入器であり、この装置では、粉末組成物の少なくとも35%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%である微粉末画分が吸入器の作動時に生成される。能動式吸入器は用量のエアロゾル化において患者の吸入に依存しないため、薬物の送達が、受動式吸入器を用いて観察した場合と比べてより反復可能になる。
【0117】
本発明の他の実施形態によれば、アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはエステルの用量は、投与用量のうちの微粉末用量に関して規定される。肺に到達する用量中のアポモルヒネの割合(%FPD)は、使用される製剤および使用される吸入器に依存する。したがって、35%の%FPDが得られる場合、塩酸アポモルヒネの用量1000μgでは患者の肺にアポモルヒネ350μgが送達される一方、60%の%FPDが得られる場合、同用量では患者の肺にアポモルヒネ600μgが送達され、%FPDが70%の場合、700μgが送達されるものと、本発明では予測している。したがって、アポモルヒネの用量を、多段式液体インピンジャまたはAndersonカスケードインパクタで測定される、使用された製剤および吸入器におけるFPDに関して規定するのが適当である。
【0118】
したがって、本発明の他の実施形態によれば、患者の肺に粉末組成物の用量を吸入させるステップを含む、吸入による性機能障害の治療方法であって、粉末組成物の用量が多段式液体インピンジャ、米国薬局方第26版、第601章、装置4(2003)、AndersenカスケードインパクタまたはNew Generationインパクタで測定された、(塩酸塩の重量を基準とする)アポモルヒネ約100μg〜約1800μgの微粒子用量をin vitroで送達する方法が提供される。好ましくは、用量は、前記アポモルヒネの微粉末用量約200μg〜約1200μg、約400μg〜約1000μg、約400μg〜約900μg、または約600μg〜約800μgをin vitroで送達する。あるいは、例えば女性機能障害を治療する際、治療効果を得るのに比較的少ないアポモルヒネしか必要でない場合、用量は、前記アポモルヒネ約100μg〜約900μg、前記アポモルヒネ約200μg〜約600μg、前記アポモルヒネ約200μg〜約400μgの微粒子用量をin vitroで送達することが好ましい。
【0119】
多段式液体インピンジャに関して上記のように定義される、(塩酸塩の重量を基準とする、アポモルヒネの遊離塩基、または薬学的に許容できるアポモルヒネの塩もしくはエステルを含む)アポモルヒネの用量は、本明細書に記載されるブリスター、吸入器、および組成物に関しても同様に使用することができる。
【0120】
微粒子画分以外の他の対象パラメータは、上記で定義した超微粒子画分である。粒径が5μm未満の粒子(FPFに対応)が肺への局所送達に好適であるが、全身送達ではさらに微小な粒子が必要である。薬物が血流に吸収されるためには肺胞に到達しなければならないからである。したがって、本発明の製剤および吸入器が、少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも60%、最も好ましくは少なくとも70%の超微粒子画分を与えるのに十分であることが特に好ましい。
【0121】
好ましくは、活性材料の少なくとも90重量%が粒径10μm以下、好ましくは5μm以下である。それにより粒子は吸入器の作動時に良好な懸濁液を与える。
【0122】
本発明の一実施形態によれば、能動型吸入器を用いてアポモルヒネ乾燥粉末製剤を投与し、最善の微粉末画分および微粉末用量を実現し、かつ、非常に重要なことだが、これを一貫して実現するのを確実にすることができる。好ましくは、吸入器は、患者の吸入開始により用量送達の引き金が切られるような呼吸引き金手段を含む。これは、患者がその吸入と吸入器の作動とを調整する必要がなく、用量を吸気流の最適地点に送達することができることを意味する。このような吸入器を一般に「呼吸作動式」と称する。
【0123】
上述のRotohalerおよびDiskhalerなど従来の吸入器を用いる本発明の実施形態では、担体粒子の粒径が約10〜約1000μmに及ぶことがある。これらの実施形態の一部では、担体粒子の粒径が約20μm〜約120μmに及ぶことがある。これらの実施形態の他の一部では、担体粒子の少なくとも90重量%の粒径が1000μm未満、好ましくは60μm〜1000μmである。これらの担体粒子は粒径が比較的大きいため、良好な流動および混入特性を与える。
【0124】
これらの実施形態では、粉末は賦形剤材料の微粒子を含んでもよい。この材料は例えば、担体材料としての使用に適した上記で言及した材料の1種などの材料、特にデキストロースまたはラクトースなどの結晶糖であることができる。微小な賦形剤材料は、賦形剤材料と担体粒子の両方が存在する場合、担体粒子と同一または異なる材料からなることができる。微粒子材料の粒径は一般に30μmを超えず、好ましくは20μmを超えない。
【0125】
粉末はまた、送達および放出を促進する追加の賦形剤を用いて調剤してもよい。例えば、上記で論じたように、粉末組成物は、粉末の流動特性を促進する比較的大きな担体粒子、例えば質量中央空気力学的粒径が90μmを超えない粒子を用いて調剤してもよい。あるいは、疎水性微粒子を担体材料中に分散してもよい。例えば、疎水性微粒子を多糖またはポリマーマトリックス内に分散して、組成物全体を肺への直接送達用の微粒子として調剤してもよい。多糖またはポリマーは、活性薬剤の即時放出に対するさらなるバリアとして働く。これはさらに制御放出プロセスを促進する。好適な多糖の一例はキサンタンガムである。好適なポリマー材料としてはポリ乳酸、ポリグリコール酸などが挙げられる。好ましい疎水性材料としては、オレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エルカ酸、ベヘン酸などの固相脂肪酸、またはその(エステルおよび塩などの)誘導体が挙げられる。このような材料の具体例としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ならびに天然および合成肺界面活性剤の他の例が挙げられる。特に好ましい材料としては、肺を経由した送達用に認可された金属ステアリン酸塩、特にステアリン酸マグネシウムが挙げられる。
【0126】
大きな担体粒子は、上記で論じたDiskhalerおよびRotahaler吸入器など受動型吸入器を用いて投与されるべき組成物に含まれる際に特に有用である。これらの吸入器は、作動時に吸入器内で大きな乱気流を生むことがないため、担体粒子の存在は、担体粒子が粉末の流動特性に有利な影響を与えるという点で有利であり、粉末が収容されているブリスターまたはカプセルから粉末を抽出するのがさらに容易になる。
【0127】
ある状況では、吸入用粉末は粉末の各成分を同時に混合することで調製してもよい。例えば、粉末は活性材料の粒子とラクトースを共に混合することで調製してもよい。
【0128】
能動式吸入器、例えば上述のAspirair吸入器を用いる本発明の実施形態では、担体粒子は好ましくは5〜100μmであり、粒径40〜70μmまたは粒径20〜30μmであってもよい。所望の粒径は、例えば賦形剤を篩い分けすることで得られる。所望の粒径範囲40〜70μmを得るには、材料を45〜63μmのスクリーンに通して、45μmスクリーンを通過する粒子を除外し、63μmを通過しない粒子を除外することで篩い分ければよい。最も好ましくは、賦形剤はラクトースである。
【0129】
アポモルヒネ粒子の好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも99%が粒径5μm以下である。下記に詳述するように、このような製剤は、好ましい能動型吸入器を経由して投与される場合、約80%を超える微粉末画分、および約70%を超える超微粉末画分を与えることができる。
【0130】
投与装置が作動時に装置内に大きい乱気流を生む場合、そのような製剤では、粉末は、粉末の流動特性を向上させる大きな担体粒子を含む必要がない。装置はたとえ粉末の流動特性が低くとも粉末を抽出できるため、そのような製剤に用いられる希釈剤材料の粒径を小さくすることが可能である。一実施形態では、賦形剤材料の粒子は粒径10μm以下にさえしてもよい。
【0131】
本発明の粉末組成物がその内部で通常用いられる乾燥粉末吸入器としては、粉末組成物の個別の用量が吸入器中に、例えば単一用量カプセルまたはブリスターの形で導入される「単一用量」吸入器、例えばRotahaler(商標)およびSpinhaler(商標)、ならびに、吸入器の作動時に粉末の1用量が、吸入器に含まれる粉末材料のリザーバから取り除かれる複数用量吸入器、例えばTurbohaler(商標)が挙げられる。
【0132】
上述のように、ある粉末の場合、能動式吸入器には、他の形態の吸入器を用いた場合に比べてより大きい微粉末画分およびより一貫した用量間の反復可能性が得られるという利点がある。そのような吸入器としては、例えばAspirair(商標)またはNektar Therapeuticsの能動式吸入器が挙げられ、患者の吸入が粉末のエアロゾル化した雲の生成の引き金をひく、同種の呼吸作動式吸入器であってもよい。
【0133】
担体粒子が存在する場合、その量は、粉末の全重量に対して最大99重量%、最大95重量%、最大90重量%、最大80重量%、または最大50重量%である可能性がある。任意の賦形剤材料が存在する場合、その量は、粉末の全重量に対して最大50重量%、有利には最大30重量%、特別には最大20重量%である可能性がある。
【0134】
粉末粒子の粒径に言及する場合、粒径とは、反対のことを指さない限り、体積加重粒径のことであると理解されたい。粒径はレーザー回折法で計算することができる。粒子が粒子表面上に添加剤材料を含む場合、コートされた粒子の粒径もまた、コートされていない粒子に関して示した好ましい粒径範囲内にあることが有利である。
【0135】
肺の深部に送達される活性材料の粒子の割合をできるだけ大きくするのが明らかに望ましい一方、肺の深部に侵入する他の成分をできるだけ少なくするのが通常好ましい。そのため粉末は一般に、活性材料の粒子、および活性材料の粒子を担持する担体粒子を含む。
【0136】
WO 01/82906号に記載されているように、用量が投与されたことを患者に示す添加剤材料を、その用量中に与えることもできる。以下で指標材料と称する添加剤材料は、乾燥粉末吸入器用に調剤された粉末中に存在するか、または例えば吸入器内の別の位置に別個の形態で存在することができ、それにより添加剤は、活性材料を含む粉末と同時に、またはそれに引き続き、吸入時に生成された気流湯中に混入する。
【0137】
ある状況、例えば、存在する任意の担体粒子および/または任意の微小な賦形剤材料が、それ自体口咽頭領域内で感覚を誘発することが可能な材料からなる場合、担体粒子および/または微小な賦形剤材料は指標材料を構成することができる。例えば、担体材料および/または微粒子賦形剤はマンニトールを含んでもよい。他の好適な指標材料はメントールである。
【0138】
上記で論じたように、本発明の一実施形態では、アポモルヒネと担体材料の組み合わせを含む吸入可能な粉末組成物が提供される。好適なアポモルヒネのエステルの一例は、ジイソブチリルアポモルヒネである。あるいは、アポモルヒネは塩酸アポモルヒネを含むか、アポモルヒネは遊離塩基の形態である。
【0139】
いずれにせよ、アポモルヒネは、前記アポモルヒネ約200μg〜約1800μg、前記アポモルヒネ約300μg〜約1600μg、または前記アポモルヒネ約400μg〜約1200μgの量で与えられる。他の実施形態では、各患者の必要量および耐性に基づいて、用量が400〜1200μgの単位で与えられる。例えば、前記アポモルヒネ約400、約500、約600、約700、約800、約900、約1000、約1100および/または約1200μgの用量を与えることができる。例えば、女性機能障害を治療する際、治療効果を得るのに比較的少ない用量で十分な場合、前記モルヒネ約100、約200、約300、約400、約500および/または約600μgの用量を与えることができる。
【0140】
これらの粉末組成物が吸入された場合、好ましくは、治療効果が発現するまでの時間は15分未満、より好ましくは約10分未満、最も好ましくは9分未満である。この根拠は、以下でより詳しく論じる薬物動態データである。データが示すところでは、1名を除く全対象で、また試験したアポモルヒネの全用量について、1〜3分後にCmaxが得られた。血漿からの薬物の排出は比較的迅速であり、薬物動態研究で試験した全用量について約60分の終末半減期が観察される。血漿からの薬物のこのように速やかな排出は有利である。アポモルヒネは、自動車または重機の運転などある種の作業を患者が行うのを妨げることがある眠気などの副作用を有することが知られているからである。
【0141】
また、Cmax、AUC0-∞およびAUC0-tについても用量比例性が示された。
【0142】
本発明のある実施形態では、各用量はブリスターパックのホイル「ブリスター」内に収容される。アポモルヒネは酸化されやすいため、投与前にアポモルヒネの酸化を防止(または実質的に制限)することが重要である。ホイルブリスターを用いる本発明の実施形態によれば、投与前の製剤の空気への暴露(および許容できないアポモルヒネの酸化)は、密封されたホイルブリスター内に各用量を収容することで防止される。密封ホイルブリスターは一般にアポモルヒネの酸化を防止するのに十分だが、中東など世界の一部にみられるような特定の気候下では、加水分解が潜在的な問題である。加水分解も、複数のブリスターを、例えばアルミニウムホイルなどのホイルからなる密封袋などのさらなる密封容器に入れることで防止(または制限)される。貯蔵および輸送時のダメージなどから密封ブリスターを保護するため、さらなる機械的保護が望ましいこともある。密封ホイルブリスター(ならびに任意選択の密封バッグおよび/または他の保護包装)を使うことで、酸化防止剤を製剤に含める必要がなくなる。
【0143】
本発明のアポモルヒネ乾燥粉末組成物は、下記で論じる実験用のホイルブリスターに移した。ブリスターは基材および蓋からなる。基材は、薬物と接するポリマー層、軟質強化アルミニウム層、および外側ポリマー層を含む積層体である。アルミニウムは水分および酸素バリアを与える一方、ポリマーは薬物と接する比較的不活性の層を与える。軟質強化アルミニウムは延性であるため、ブリスター形状に「冷間成形」することができる。典型的には厚さ45〜47μmである。外側ポリマー層は積層体にさらなる強度を与える。蓋材料は、ヒートシールラッカー、硬圧延アルミニウム層(典型的には厚さ20〜30μm)、および外側ポリマー層を含む。ヒートシールラッカーは、ヒートシール時に基材ホイル積層体のポリマー層に接着する。アルミニウム層は硬圧延されて貫通が容易になる。薬物と接するポリマー層の材料としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、およびポリエチレン(PE)が挙げられる。基材ホイル上の外側ポリマー層は、典型的には配向ポリアミド(oPA)である。
【0144】
加圧式定量噴霧式吸入器用組成物
加圧式定量噴霧式吸入器(pMDI)は、典型的には2つの構成要素、すなわち、その中に薬物粒子(この場合はアポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはエステル)が加圧下、懸濁液または溶液の形態で収容されるキャニスター構成要素、および、キャニスターを保持し作動させるのに用いられるレセプタクル構成要素を有する。典型的には、キャニスターは製剤の複数用量を含むが、単一用量キャニスターを有することも可能である。キャニスター構成要素は、典型的にはそこからキャニスターの内容物を排出できるバルブ付き出口を含む。エアロゾル薬物のpMDIからの投与は、キャニスター構成要素に力を加えてキャニスターをレセプタクル構成要素の方向に押すことで、バルブ付き出口を開き、薬物粒子をバルブ付き出口からレセプタクル構成要素を経由して運搬し、レセプタクル構成要素の出口から排出することで行われる。キャニスターからの排出時には、薬物粒子は霧状になってエアロゾルを形成する。
【0145】
患者が、彼または彼女の吸入によりエアロゾル化した薬物を排出することで、薬物粒子が患者の吸気流に混入し、肺に運ばれることが意図されている。
【0146】
典型的には、pMDIでは噴霧剤を用いてキャニスターの内容物が加圧され、レセプタクル構成要素の出口から薬物粒子が噴霧される。pMDI吸入器では、製剤は液体の形態で与えられ、噴霧剤と共に容器内に滞留する。噴霧剤は各種の形態を取り得る。例えば、噴霧剤は圧縮ガスまたは液化ガスを含んでもよい。好適な噴霧剤としてはCFC11およびCFC12などのCFC(クロロフルオロカーボン)噴霧剤、ならびにHFA134aおよびHFA227などのHFA(ヒドロフルオロアルカン)噴霧剤が挙げられる。1種または複数の噴霧剤を所与の製剤中に使用することができる。
【0147】
吸入による吸入器の作動調整を改善するために、呼吸作動式バルブシステムを用いてもよい。このようなシステムは例えばBaker Nortonおよび3Mから入手可能である。このような吸入器を用いるため、患者は吸入器を「用意し」、患者が吸入すると用量が自動的に噴射される。
【0148】
本発明のある実施形態によれば、pMDI用製剤を用いてアポモルヒネを患者の肺に送達する。アポモルヒネは、前記アポモルヒネ約200μg〜約1800μg、前記アポモルヒネ約300μg〜約1600μg、または前記アポモルヒネ約400μg〜約1200μgの量で与えられる。他の実施形態では、各患者の必要量および耐性に基づいて、用量が400μg〜1200μgの単位で与えられる。例えば、前記アポモルヒネ約400、約500、約600、約700、約800、約900、約1000、約1100および/または約1200μgの用量を与えることができる。
【0149】
例えば、女性機能障害を治療する際、治療効果を得るのに比較的少ない用量で十分な場合、前記モルヒネ約100、約200、約300、約400、約500および/または約600μgの用量を提供することができる。
【0150】
ある実施形態では、pMDI用製剤は「懸濁液」型製剤または「溶液」型製剤であり、いずれも噴霧剤として液化ガスを用いる。pMDI用製剤のin vivoでの効果は、治療効果の発現までの時間、および治療効果の持続時間という点で上述のDPK製剤と同様であると思われる。
【0151】
溶液型pMDI
pMDI技術のうち、溶液型pMDIが全身肺送達に最適であると思われる。溶液型pMDIが最も微小なミストを与え、吸入器を変形することで比較的容易に最適化できるためである。また、近年開発されたバルブ(例えばBespakから入手可能)では、現行のシステムに比べ正味重量が増加しており、したがって溶液型pMDIでは懸濁液型pMDIに比べ潜在的に送達可能な全身用量が大きくなる。
【0152】
溶液型pMDI技術を用いて、HFA噴霧剤を用いたアポモルヒネエステル(例えば、ジイソブチリルアポモルヒネ)の送達用製剤を調製することができる。
【0153】
しかし、従来の溶液型pMDI技術は、HFA噴霧剤を用いたアポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩を送達するのに適当とは思われない。すなわち、アポモルヒネ塩基は不安定なため現行の手法では調剤できず、アポモルヒネ塩は極性が高いためHFA噴霧剤中の溶液として調剤できない。例えば、塩酸アポモルヒネは、これらの系中で好適なまたは許容できる溶解性を有するには少なくとも50%のエタノールを必要とし、このような系は技術的にも許容できず、患者にも許容されるとは思われない。このような系でも、溶液濃度は25μg/用量未満しか得られず、乾燥粉末噴霧器について上述した有効用量を大きく下回る。
【0154】
これまで、調剤者はpMDI用溶液中に存在する水の量を最小限に抑えることを模索してきた。水は、(WO 02/030499号で報告されるように)製剤中の微粒子画分を減少させ、かつ/または(WO 01/89616号で報告されるように)製剤の安定性を減少させることが知られていたからである。
【0155】
本発明の一実施形態によれば、アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩を含むpMDI用溶液は、驚くべきことに、水を系に意図的に加えることで提供される。すなわち、好適なpMDI溶液は、HFA134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)および/またはHFA227(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン)を約50%〜約98%(w/w)、水を約2%〜約10%(w/w)、ならびにエタノールを約0%〜約47%(w/w)含む噴霧剤溶液に、アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩を加えることで得られると思われる。好ましくは、水は5%超〜約10%(w/w)の量で与えられる。エタノールは、約12%〜約40%(w/w)の量で与えることが好ましい。12ml溶液は、HFA134a、水、および/またはエタノール以外に塩酸アポモルヒネ約170mgを含むことが好ましい。3M被覆(DUPONT 3200 200)キャニスターを吸入器用キャニスターとして使用してもよい。
【0156】
懸濁液型pMDI
懸濁液型pMDIを用いてアポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩を肺に送達することもできる。しかし、懸濁液型pMDIにはいくつかの欠点がある。例えば、懸濁液型pMDIは、溶液型pMDIと比べて送達用量が少なく、懸濁液に関連する他の問題、例えば用量の不統一、バルブの閉塞、および懸濁液の不安定化(例えば沈降)を生じやすい。これらの理由などのため、懸濁液型pMDIは、溶液型pMDIに比べ調剤および製造がはるかに複雑である。
【0157】
本発明の一実施形態によれば、アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩のための懸濁液型pMDIが提供される。好ましくは、懸濁液型pMDIの噴霧剤は、2種の市販のHFA噴霧剤、最も好ましくはHFA227(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン)約60%とHFA134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)約40%のブレンドである。この手法では、さらに賦形剤を加えずに、(濃度整合性による)初期物理安定性が示された。このことは、そのような系が容易に製造可能であることを示唆しているが、他の賦形剤を少量加えて医薬の端麗さを高めてもよい。例えば、Bespak BK630シリーズ0.22mm作動装置を有する3M被覆(Dupont 3200 200)キャニスター中で、HFA227約60%とHFA134a約40%のブレンドが塩酸アポモルヒネと共に調製された。これらの実験の結果は下記実施例16を参照して論じる。
【0158】
ネブライズシステム
他の可能な投与方法はネブライズシステムを経由する。このようなシステムとしては、従来の超音波ネブライズシステムおよびジェットネブライズシステム、ならびに(Boehringer Ingelheimから入手可能な)Respimatまたは(Aradigmから入手可能な)AERxなど最近紹介された手持ち型装置が挙げられる。このようなシステムでは、アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはエステルは、例えばメタ重亜硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤により滅菌水溶液中で安定化されると思われる。用量は上記と同様であり、ネブライズシステムにおける肺に到達するアポモルヒネの割合を少なくすることを考慮に入れて調節される。これらのシステムは使用できるが、使用上の効率および便利さのいずれも、上述のDPIシステムには明らかに劣る。
【0159】
(実施例)
本発明を例示する各種実施例を以下で論じる。特記なき場合、実施例では吸入器としてVectura Limited製のAspirairプロトタイプ吸入器を使用した。
【0160】
(実施例1)
ラクトースの調製
Respitose SV003(DMV International Pharma、オランダ)ラクトースの篩い分け画分を、バルク材料を63μmの篩に通すことで製造する。次に、この材料を45μmスクリーンで篩い分け、保持された材料を収集した。Malvern Instruments, Ltd.(Malvern、英国)製のMastersizer 2000を用いて行ったラクトースの2つのバッチの粒径分析の結果を図4Aおよび4Bに示す。
【0161】
図示するように、ラクトースの体積加重平均値は約50〜約55μm、d10は約4〜約10μm、d50は約50〜約55μm、d90は約85〜約95μmであり、d10、d50、d90は分析したラクトースの10%、50%、および90%の直径を意味する。
【0162】
(実施例2)
アポモルヒネ-ラクトース製剤の調製
塩酸アポモルヒネをMacfarlan Smith Ltdから得て、以下の製品規格に従って、すなわちレーザー回折分析に基づいて粒径10μm未満が99.9%以上になるように微粉化した。レーザー回折分析の実際の典型的結果は以下の通りである。すなわち、d10が1μm未満、d50が1〜3μm、d90が6μm未満であり、d10、d50、d90は分析した塩酸アポモルヒネの10%、50%、および90%の直径を意味する。塩酸アポモルヒネを(一般に用いられる空気ではなく)窒素で微粉化して酸化分解を防止する。Malvern Instruments, Ltd.(Malvern、英国)製のMastersizer 2000を用いて行った微粉化塩酸アポモルヒネの2つのバッチの粒径分析の結果を図5Aおよび5Bに示す。
【0163】
(実施例2(a))
200μg製剤の調製
実施例1のラクトース70gを、好適なミキサーの金属製混合容器に入れた。次に、微粉化塩酸アポモルヒネ10gを加えた。次に、実施例1のラクトース70gをさらに加え、得られた混合物を15分間タンブルした。次に、得られたブレンドを150μmスクリーンに通した。選別されたブレンド(すなわち、スクリーンを通過したブレンドの部分)を次に15分間再度ブレンドした。
【0164】
Andersenカスケードインパクタ(米国薬局方第26版、第601章、装置3(2003))で測定されたアポモルヒネ-ラクトース粉末の粒径分布では、薬物粒子が十分に分散したことが明らかになった。特に、200μg用量の粒径分布は以下の通りであった。
【0165】
微粉末用量(5μm未満) 117μg
超微粉末用量(2.5μm未満) 80μg
MMAD(質量中央空気力学的粒径) 1.94μm
【0166】
(実施例2(b))
100μg製剤の調製
実施例1のラクトース72.5gを、好適なミキサーの金属製混合容器に入れた。次に、微粉化塩酸アポモルヒネ5gを加えた。次に、実施例1のラクトース72.5gをさらに加え、得られた混合物を15分間タンブルした。次に、得られたブレンドを150μmスクリーンに通した。選別されたブレンド(すなわち、スクリーンを通過したブレンドの部分)を次に15分間再度ブレンドした。
【0167】
以下に記載するように、図7Aおよび7Bによれば、実施例2(a)および2(b)の特定のバッチで使用されたミキサーは、英国GatesheadのChristison Scientific Equipment Ltdが販売する低剪断ミキサーである、Inversina可変速度タンブラーミキサーであった。他のバッチで使用されたミキサーは、こちらもChristison Scientific Equipment Ltdが販売する高剪断ミキサーであるRetsch Grindomixミキサーであった。脱凝集は混合プロセスの強度に影響されやすいことがわかったが、上記で言及したInversinaミキサーなど、金属製容器の付いた低剪断ミキサーを用いることで、一定した微粒子画分(約60%)が得られた。
【0168】
(実施例3)
ブリスターへの製剤の取り込み
実施例2(a)および2(b)の製剤をそれぞれ以下のようにブリスターに取り込んだ。アポモルヒネ-ラクトース製剤3mgを各ブリスターに入れた。各ブリスターの基材は、配向ポリアミド(外側)、アルミニウム45μm(中央)、およびPVC(内側)の積層体から成形された冷間成形アルミニウムブリスターである。ブリスターの蓋は、ヒートシールラッカーを有する、硬圧延30μm蓋ホイルからできている。製剤をブリスター内部に充填後、ブリスター基材上に蓋を載せ、ヒートシールラッカーを介して蓋を基材にヒートシールすることで、ブリスターを密封する。
【0169】
最初の開発時には、上記のアルミニウム/PVCブリスターを使用した。研究中、(技術的理由ではなく)われわれは、性能に変化がないと思われたアルミニウム/ポリエチレン(PE)ブリスターも試験した。しかし、下記の表に示す結果では、PEブリスター材料の性能がかなり悪い模様であることが示されている。また、塩酸アポモルヒネがポリエチレンの存在下で化学的に劣化することも証明されている。
【0170】
【表2】
【0171】
PEブリスターを用いた初期(initial)安定性データでは、1カ月後、関連物質ピークの一部が初期ピークに比べて増大していることも示されている。これは、製剤品がPEの存在下で劣化することを示唆している。このため、PVCホイルブリスターを塩酸アポモルヒネと共に用いるのが好ましい。ポリプロピレンも許容できる代替物である。
【0172】
(実施例4)
安定性データ
各製剤が薬物(200μg)を6.67%含んだ、実施例2(a)のアポモルヒネ-ラクトース製剤を含む、上記で言及したブリスターを、ヒートシールしたアルミニウムラミネート袋に入れて患者用パックを複製した。保管条件は、25℃および相対湿度60%、ならびに40℃および相対湿度75%(加速保存条件)であった。安定性データを1年間にわたって収集し、1カ月目および3カ月目には両方の保管条件について、6カ月目、9カ月目、および12カ月目には25℃および相対湿度60%で保管したブリスターについて収集した。安定性試験の結果を図6A〜6Cに示す。
【0173】
化学安定性は、薬物の安定性の基準となる。塩酸アポモルヒネは、特に酸素/空気および水の存在下で不安定であるとの評判があるため、これが必要である。
【0174】
化学安定性を試験するため、製剤をラミネート袋およびブリスターから取り除き、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で試験した。アッセイ値は、製剤中の予測アポモルヒネ含有量のパーセントであり、関連物質(Rel Subs)は、クロマトグラム中の全ピーク面積の百分率としての全関連物質ピークである。当業者に理解されるように、これらの値(図6Aに示す)は、Rel Subsについて許容可能なパラメータである0.1%以内である。
【0175】
物理安定性も同一の時間フレームにわたって測定した。これは、肺の深部に送達される薬物の量が経時的に異なるかどうかを調査する、安定性プログラムの「性能」に関する側面である。結果を図6Bおよび6Cに示す(図中、合格を「Pass」と表記)。
【0176】
送達用量の均一性をAspirair(商標)噴霧器を用いて11個のDUSAについて標準的な慣行に従って測定し、最初のショットは報告しなかった。このことは、送達用量の均一性をショット2〜11について計算して必要なn=10が得られることを意味している。製剤は20%薬物ブレンド(標準的な例に従って製造)であり、3mg充填して名目用量600μgを得た。
【0177】
微粒子の空気力学的評価をAndersenカスケードインパクタ(ACI)を用いて行った。FPD=5μm以下の微粒子用量、FPF=5μm以下の微粒子画分。均一性試験と空気力学的評価のいずれも流量は60l/分であった。
【0178】
【表3】
【0179】
測定した10用量の各々について投与用量(μg)を示したグラフを図23Aに示す。
【0180】
【表4】
【0181】
測定した10用量の各々について投与用量(μg)を示したグラフを図23Bに示す。
【0182】
(実施例5)
吸入試験
アポモルヒネ-ラクトース製剤を含むブリスターについて、Aspirairプロトタイプ吸入器を用いて試験した。
【0183】
下記の吸入データを得るために、吸入器を3つの装置、すなわち多段式液体インピンジャ(MSLI)(米国薬局方第26版、第601章、装置4(2003))、Andersonカスケードインパクタ(ACI)((米国薬局方第26版、第601章、装置3(2003))、および投与単位サンプリング装置(DUSA)((米国薬局方第26版、第601章、装置B(2003))と組み合わせて使用した。これらの装置はそれぞれ、吸入器のマウスピースを受けるインプットを有する。
【0184】
DUSAを使用して、吸入器から離れる薬物の全量を測定する。この装置からのデータで、計量および送達用量が得られる。送達用量は、吸入器から離れる薬物の量として定義される。これには、DUSA装置のスロート、DUSA装置の測定部、およびDUSA装置の後続のフィルター中の薬物の量が含まれる。ブリスターまたは吸入器の他の領域に残った薬物は含まれず、DUSA装置の測定プロセスで「失われた」薬物を含まない。計量用量は、ブリスターを離れる全薬物を含む。
【0185】
MSLIは、乾燥粉末製剤の肺の深部への送達を評価する装置である。MSLIは、米国薬局方第26版、第601章、装置4(2003)、および欧州薬局方、方法5.2.9.18、装置C、補遺2000に従う、乾燥粉末吸入器(DPI)の粒径(空気力学的粒径分布)を測定するのに用いることができる、5段式カスケードインパクタを含む。
【0186】
ACIは、乾燥粉末製剤の肺の深部への送達を評価する別の装置である。ACIは、米国薬局方第26版、第601章、装置3(2003)に従う、乾燥粉末吸入器(DPI)の粒径(空気力学的粒径分布)を測定するのに用いることができる、多段式カスケードインパクタである。
【0187】
下記の通り、MSLIおよびACI試験装置は、特に、肺の深部への送達に相関するこの試験装置の各部分において測定される、微粒子用量(FPD)、すなわち、例えばμg単位の薬物の量、および、肺の深部への送達に相関するこの試験装置の各部分において測定される、微粒子画分(FPF)、すなわち、計量用量の百分率を求めることができる。
【0188】
実施例2のアポモルヒネ-ラクトース製剤について行った試験の結果を図7Aおよび7Bに示す。FPD、FPF、およびMMADの値は、MSLIおよびACIデータから、Copley Inhaler Data Analysis Software(CITDAS)V1.12を用いて生成した。6つの製剤のデータを図7Aに示す。データは列5000内で同定される。さらなる4つの製剤のデータを図7Bに示す。各図では、製剤の試験データは2種類、すなわち、製剤の送達用量の均一性に関するデータ(列6000)、および製剤の微粒子の性能に関するデータ(列7000)に分かれる。
【0189】
図7Aによれば、列5000中に列挙される最初の5つの製剤は、実施例2(b)の100μg製剤3mgを含む。列挙された第6の製剤は、実施例2(a)の200μg製剤3mgを含む。列5000における第1、第2、および第6の製剤の列挙には、「Inversina」という表示が含まれており、実施例2で用いたミキサーがInversinaミキサーであったことを示している。第3、第4、および第5の製剤の列挙には、「Grindomix」という表示が含まれており、実施例2で用いたミキサーがGrindomixミキサーであったことを示している。列挙された第2および第4の製剤には「空気ジェット」という表示も含まれており、これらの製剤では、従来のスクリーン篩(列挙した第3、第5、および第6の製剤で使用)ではなく、真空をスクリーン篩装置に適用する空気ジェット篩を用いて、実施例1のラクトースを篩い分けたことを示している。列挙された第5の製剤には、この材料の概算粒径範囲を示す、「20〜30μm超微粒子」という表示も含まれている。
【0190】
図7Aのセクション6000では、上記DUSA装置を使用して、ブリスター中での薬物保持(6012)、吸入器中での薬物保持(6013)、送達用量(6015)、計量用量(6020)、および質量平衡百分率(6025)に関する製剤のデータを与える。n=10という表示は、吸入器およびDUSA装置が、DUSAデータが列挙される3つの製剤の各々について10回作動したことを示す。セクション6000で列挙したデータは10回の作動の平均である。
【0191】
図7Bのセクション7000では、2種の異なる装置、MSLIおよびACIを用いて微粒子性能を測定する。ACIのデータが入手可能な場合は括弧()内に示す。いずれにせよ、セクション7000で与えられるデータは、粒径5μm未満の粒子(本論考では「微粒子」と称する)に関するデータである。したがって、列7012はブリスター内での微粒子薬物保持を示し、列7013は吸入器内での微粒子薬物保持を示し、列7015は送達用量中での微粒子の量を示し、列7020は製剤のFPDを示し、列7025は製剤のFPFを示し、列7015は計量用量中の微粒子の量を示し、列7035はMSLI(ACI)試験における製剤の質量平衡百分率を示し、列7036は製剤の試験流量を示す。列7005は、吸入器およびMSLI(またはACI)装置が作動した回数を示し、列挙したデータは「n」回の作動の平均である。
【0192】
図7Bは図7Aと同様であり、同様の項目は同様の参照番号を有する。列5000に列挙した第1の製剤は、実施例2(b)の100μg製剤3mgを含み、残り4つの製剤は、実施例2(a)の200μg製剤3mgを含む。全製剤はInversinaミキサーで製造され、45μmスクリーンおよび63μmスクリーンを用いて調製されたラクトースで調製された。列6000のDUSAデータは、n=11である以外は図7Aと同様にして得た。列7000の微粒子性能データはすべて、ACI装置を用い、n=2、流量60L min-1で得た。
【0193】
図7Aおよび7Bに示すように、低剪断Inversinaミキサーで製剤を混合した際、微粒子画分(FPF)は最小62%〜最大70%の範囲であり、送達用量のパーセントは最小81%〜最大94%の範囲であった。製剤は高剪断Grindomixミキサーで製造され、45〜63μmラクトースを含む製剤の微粒子画分は47%〜50%であった。高剪断ミキサーを用いて製造された粒径20〜30μmの製剤は、微粒子画分が62%とさらに大きかった。
【0194】
(実施例6)
3mgブリスターに入れる400μg製剤の調製
上記の実施例2に記載の方法で、各成分を以下の量で与えることで、400μg製剤を製造することができる。
【0195】
【表5】
【0196】
(実施例7)
3mgブリスターに入れる600μg製剤の調製
上記の実施例2に記載の方法で、各成分を以下の量で与えることで、600μg製剤を製造することができる。
【0197】
【表6】
【0198】
上記実施例ではブリスターの「充填重量」を3mgとしているが、より大きいまたは小さい充填用量とすることもできると理解されたい。例えば、下記の実施例8〜12では、充填重量を1mgまたは2mgとする。そのような充填重量をブリスターに充填するには様々な技法を使用することができるが、充填重量1mg〜5mgのブリスターがHarro-Hoefliger Omnidose Drum Fillerを用いて商業生産されたことが知られている。
【0199】
(実施例8)
2mgブリスターに入れる800μg製剤の調製
上記の実施例2に記載の方法で、各成分を以下の量で与えることで、800μg製剤を製造することができる。
【0200】
【表7】
【0201】
(実施例9)
1mgブリスターに入れるステアリン酸マグネシウムを含む200μg製剤の調製
各成分を以下の量で与えることで、ステアリン酸マグネシウムを含む200μg製剤を調製することができる。
【0202】
【表8】
【0203】
この製剤は、ステアリン酸マグネシウムを塩酸アポモルヒネと共に混合物に加える以外は、上記の実施例2に記載の方法で調製することができる。
【0204】
(実施例10)
2mgブリスターに入れるロイシンを含む400μg製剤の調製
各成分を以下の量で与えることで、ロイシンを含む400μg製剤を調製することができる。
【0205】
【表9】
【0206】
この製剤は、微粉化ロイシンを塩酸アポモルヒネと共に混合物に加える以外は、上記の実施例2に記載の方法で調製することができる。
【0207】
Malvern Instruments, Ltd.(Malvern、英国)製のMastersizer 2000を用いて行った好ましい微粉化ロイシンの粒径分析の結果を図8に示す。図示するように、例示された微粉化ロイシンの体積加重平均粒径は3.4μmで、90%の粒子の体積加重平均粒径は6μm未満である。
【0208】
(実施例11)
2mgブリスターに入れる200μg製剤の調製
上記の実施例2に記載の方法で、各成分を以下の量で与えることで、200μg製剤を製造することができる。
【0209】
【表10】
【0210】
(実施例12)
1mgブリスターに入れる200μg製剤の調製
上記の実施例2に記載の方法で、各成分を以下の量で与えることで、200μg製剤を製造することができる。
【0211】
【表11】
【0212】
(実施例13)
2mgブリスターに入れる400μg製剤の調製
上記の実施例2に記載の方法で、各成分を以下の量で与えることで、400μg製剤を製造することができる。
【0213】
【表12】
【0214】
(実施例14)
DPI吸入によりアポモルヒネで治療した患者のin vivo臨床データ
この研究では、35名のボランティア患者に、4つのランダムな用量のプラセボ、塩酸アポモルヒネ200μg、塩酸アポモルヒネ400μg、または塩酸アポモルヒネ800μgを投与した。用量は、実施例3のブリスター(3mgブリスター中に塩酸アポモルヒネ200μg)またはプラセボブリスター(ラクトースのみ)を備えたAspirairプロトタイプ吸入器を用いて投与した。
【0215】
各治療の間、患者に所与の用量を投与した後、患者を1人にして視覚的な性的刺激(VSS)を1時間観察した。投与後50〜55分の時点で、患者は60分の時点で研究が終了すると予告された。60分後、患者はそのVSSに対する応答の性質および持続を評価するよう要請された。なお、応答の性質は以下の4グレードの1つとして定義される。0:効果なし;1:多少腫脹、堅固さなし;2:多少腫脹、堅固。ただし貫入には適さない;3:腫脹、堅固。貫入は可能だが、完全勃起ではない;4:完全勃起。
【0216】
この研究は二重盲検的に行われ、治療薬を投与した保健医療専門家および患者のいずれも、投与された実際の用量を知らされなかった。この研究に参加した患者はランダム化された。各治療の間、35名の患者はそれぞれ用量に関わらず4つのブリスターを受け入れた。すなわち、塩酸400μgを受け入れた患者は、2つの塩酸アポモルヒネブリスターおよび2つのプラセボブリスターを受け入れ、プラセボのみを受け入れた患者は4つのプラセボブリスターを受け入れた。
【0217】
研究では、塩酸アポモルヒネ400μgおよび800μgで治療された群は、プラセボまたはアポモルヒネ200μgの用量で治療された群と比較して、効果の発現が早く、持続時間が長く、勃起が完全であった。例えば、グレード3および4の応答者を基準にすると、塩酸アポモルヒネ800μgで治療された群では、塩酸アポモルヒネの投与後約8分以内に効果発現の中央値を示す一方、塩酸アポモルヒネ200μg群では約11分以内であった。400および800μg群では、グレード3または4の応答は速やかに4分で得られた。この治療を、一度に4つの用量ではなく単一用量(すなわち、1つの800μgブリスター用量)で繰り返すと、治療に対する応答がさらに速やかに発現し、それによりさらに効果的な治療が得られるものと思われる。
【0218】
本研究では、プラセボ(4つのブリスター、それぞれプラセボからなる)で治療された患者の平均応答率は31.4%であった。200μg群(4つのブリスター、1つは塩酸アポモルヒネ200μgを含み、残り3つのブリスターはそれぞれプラセボを含む)の平均応答率は22.9%であり、400μg群(4つのブリスター、2つは塩酸アポモルヒネ200μgを含み、残り2つはプラセボを含む)の平均応答率は48.5%であり、800μg群(4つのブリスター、それぞれ塩酸アポモルヒネ200μgを含む)の平均応答率は58.5%であった。400μgおよび800μgで治療された患者は、プラセボまたは200μgで治療された患者に比べて応答率が著しく高かったため、400μgおよび800μgの用量が有効であると考えられる(下記の表6を参照)。
【0219】
【表13】
【0220】
プロトコルに定義された有効性の一次的基準は、国際勃起機能スコア(IIEF)に定義された一般的基準によるグレード3または4の勃起を報告した患者の割合とした。グレード3または4の勃起は「性交の成功に十分である」と見なされる。これらの基準によれば、塩酸アポモルヒネの用量400μgおよび800μgが有効であると考えられる。
【0221】
図9および10に示すように、「十分な」勃起の割合、つまりグレード4または「完全」勃起の割合および応答率の両方において、活性用量群の間に明らかな用量反応相関が観察された。例えば、塩酸アポモルヒネ800μgで治療された群では、プラセボ、塩酸アポモルヒネ200μgおよび400μgで治療された群に比べて、グレード4の勃起の数が多く、応答率が高く、効果の発現も速やかであった。
【0222】
有効性に関して、下記の表7では、塩酸アポモルヒネ200μg投与群の効果発現の中央値は投与後11分(標準偏差4.2)であり、プラセボ群の効果発現の中央値は投与後10分(標準偏差7.8)であったことを示している。一方、塩酸アポモルヒネ400μgおよび800μg投与群は、より速やかな効果発現の中央値を示した(それぞれ8(標準偏差7.5)および8(標準偏差5.0))。塩酸アポモルヒネ400μgおよび800μg投与群はまた、塩酸アポモルヒネ200μgまたはプラセボで治療された群に比べて完全勃起数が多く、応答率の百分率が高かった。
【0223】
【表14】
【0224】
各個別の群における効果の発現および持続を図11〜14により詳細に例示する。プラセボで治療された患者での効果の発現および持続を図11に示す。塩酸アポモルヒネ200μgで治療された患者での効果の発現および持続を図12に示す。塩酸アポモルヒネ400μgで治療された患者での効果の発現および持続を図13に示し、塩酸アポモルヒネ800μgで治療された患者での効果の発現および持続を図14に示す。例えば、図14によれば、塩酸アポモルヒネ800μg群の患者1名の勃起開始が投与後約4分であったことが明らかである。例えば、図13によれば、塩酸アポモルヒネ400μg群の患者1名の勃起開始が投与後約3分であったことが明らかである。一方、図12では、200μg群の患者1名の勃起開始が投与後約40分であったことを示している。全体として、これらの図は、塩酸アポモルヒネ400μgおよび800μgを投与された群では勃起開始が早かったことを示している。試験時間が60分続き、50〜55分の時点で、患者は試験が60分の時点で終了することを知らされたことに留意されたい。
【0225】
各投与期間中の有害事象を観察した。1種または複数の有害事象を経験した患者の割合は、4つの全治療群で同様であった。重篤な有害事象は観察されず、どの患者でも有害事象による実験の早期中断はなかった。有害事象はすべて重症度が軽度または中程度であり、治療群内での発症率も小さかった。表8は全有害事象のまとめである。表9は全治療関連有害事象のまとめであり、表10は身体系によって治療関連有害事象を分類する。
【0226】
表8によれば、塩酸アポモルヒネ800μg群のわずか6%しか有害事象を経験せず、これはプラセボ群および塩酸アポモルヒネ200μg群において有害事象を経験した患者の割合と同じである。
【0227】
【表15】
【0228】
【表16】
【0229】
【表17】
【0230】
各患者について、吸入70分後に血液サンプルを収集した。血液サンプルを分析した。試験を完了した34名の各患者について、アポモルヒネ400および800μg用量の血中濃度を表11にng/ml単位で示す。これらの血液サンプルが、血漿中濃度ピークからかなり経過して採取されたことを、下記の実施例15で論じるデータから理解されたい。
【0231】
【表18】
【0232】
各患者に対する投与70分後の血中濃度に関する、400μg用量と800μg用量との比較を図15に示す。Uprima(商標)舌下錠2mg(0.7ng/ml)、4mg(1.25ng/ml)、および5mg(1.7ng/ml)の既知の平均Cmaxもプロットする。なお、Uprima舌下錠4mgおよび5mgは、許容できない副作用を有することが知られている。例えば、Uprima舌下錠4gは、欧州医薬品審査庁により臨床安全性が許容できないと判断された(EPAR(公開医薬品審査報告書)1945、Uprima、一般名:塩酸アポモルヒネ、「科学的議論」、25〜27頁(2002)参照)。
【0233】
表4〜6に関する上述の臨床データ、および表11の血液濃度データが、本発明の実施形態に従い吸入されたアポモルヒネにより副作用の危険性が最小限に抑えられるという結論の根拠となる。
【0234】
第一に、治療(薬理学)効果は通常Cmaxの値に依存する。しかし、副作用はしばしば、薬物の全身暴露に依存する。全身暴露は、投与時間から血漿中濃度がゼロに戻るまでの血漿中濃度の積分(すなわち、AUC0〜%曲線下の面積)として測定することができる。表11の測定値は、本発明に従って吸入経由で投与した後、血漿中濃度がかなり急速に低い値にまで低下することを示している。一方、大部分の他の投与経路では、吸収ははるかに急速かつ完全である。例えば、EPAR1945は、Uprimaの排出半減期は2mg皮下投与で2.7時間、4mg皮下投与で4.2時間、5mg皮下投与で3.9時間、6mg皮下投与で4.0時間である。(EPAR1945、「科学的議論」、12頁)。
【0235】
吸入用製剤に関連する短い半減期がもたらす第二の、しかし同等に重要な利点は、製剤の半減期が短いために、治療効果および任意の副作用の期間が短いことである。そのため、副作用が発症したとしても短期間であり、患者は運転などの通常の活動を再開することができる。
【0236】
(実施例15)
フェーズI研究
フェーズIの二重盲検・ランダム化・プラセボ制御研究を行い、16人の健康な男性ボランティアにおける600μg、900μg、および1200μgの各単独用量の安全性、耐容性、および薬物動態を調査した。臨床研究中、有効性に関する評価は行わなかった。
【0237】
薬物動態学的血漿サンプリングを、投与前と、用量投与後の以下の間隔、すなわち、1分、3分、5分、10分、15分、30分、45分、1時間、1.5時間、2時間、4時間、8時間、12時間、および24時間の間隔で行った。
【0238】
非区画分析により血漿中アポモルヒネ濃度から以下の薬物動態パラメータが導かれた。
【0239】
Cmax 最大血漿中濃度[ng/ml]
tmax Cmaxが生じる時間
AUC0-t t=0から最終定量可能濃度までの曲線下面積[ng/ml×時]
AUC0-∞ t=0から無限大までの曲線下面積[ng/ml×時]
t1/2 終末排出半減期
【0240】
結果を図16〜図19に示し、下記の表12および13に要約する。tmaxが中央値として表されることに留意されたい。
【0241】
【表19】
【0242】
【表20】
【0243】
表13に示す数字は、本発明を用いた場合、舌下Uprima(商標)錠に比べてCmax値が著しく高くなることを示している。600μgおよび900μgの用量を吸入投与した際に、著しい副作用は観察されなかった。1200μg用量を投与した際には、めまいを高確率で伴ったが、アポモルヒネでしばしば観察される失神および嘔吐といったより重大な副作用は伴わなかった。一方、Uprima錠は2mgおよび3mgしか市販されていない。用量がさらに多くなると許容できない副作用プロファイルを引き起こすためである。
【0244】
したがって、驚くべきことに、本発明の肺吸入によるアポモルヒネの投与により、従来技術で好まれた投与形式と比べて血中濃度ははるかに高くなるが、これらの高い血中濃度は著しい副作用を伴わないことがわかった。
【0245】
研究から以下の結論を導くことができた。アポモルヒネの最大血漿中濃度を伴う急速な全身吸収は、投与後1〜3分に観察された。Cmax、AUC0-∞およびAUC0-tについて用量比例性が示された。血漿からの薬物の排出は比較的迅速であり、全研究用量について約60分の終末半減期が観察される。排出半減期は用量依存性のようである。
【0246】
アポモルヒネに関して、有効性と副作用は比例関係にあることに留意するのが重要である。本発明によれば、治療有効性が存在し、かつ著しい副作用がないという狭い窓を確実に標的化することができる。
【0247】
対象が経験する副作用は、吸入投与の結果としての短い暴露時間によって制限することができると考えられる。舌下錠による暴露時間はかなり長く、経口および経鼻投与でも同様である。
【0248】
初期薬物分配相は用量の投与後約1〜15分の範囲であり、残りのサンプリング時点にわたって比例排出相が観察される。
【0249】
薬物動態プロファイルは、吸入によるアポモルヒネの送達が、Uprima(商標)と比べて高い効率性および再現性を有することから、吸入されたアポモルヒネの所与の用量についてCmaxが著しく高くなり、tmaxが示すように吸収が非常に速やかであり、任意の吸収された用量のアポモルヒネの除去の遅延がないことを示している。
【0250】
結果は、吸入方式の投与により患者内および患者間で血漿中濃度の可変性が小さい血漿が得られることに伴う、予測された急速な吸収、急速な全身有効性、および急速な排出を証明している。この研究から得られる耐容性および薬物動態パラメータは、勃起障害を治療しようとする際に、吸入によるアポモルヒネの送達により、アポモルヒネの治療の窓に容易に到達することを示している。
【0251】
(実施例16)
溶液型pMDI用製剤
pMDI製剤を以下の表に列挙した成分を用いて調製した。Bespak BK630シリーズ0.22mm作動装置を有する3M被覆(DUPONT 3200 200)キャニスターに製剤を入れ、引き続き上記のような患者の肺への送達に使用することができる。
【0252】
【表21】
【0253】
この製剤は10%〜30%の微粒子画分を与えることができると予測される。
【0254】
(実施例17)
懸濁液型pMDI用製剤
Bespak BK630シリーズ0.22mm作動装置を有する3M被覆(Dupont 3200 200)キャニスター中で、HFA227、HFA134a、および塩酸アポモルヒネを用いて懸濁液型pMDIを調製した。すなわち、以下に示す製剤を調製した。
【0255】
【表22】
【0256】
製剤BをAndersonカスケードインパクタを用いて10回の排出について試験した。結果は以下の通りで、各値は10回の排出の平均とした。
【0257】
【表23】
【0258】
(表中、微粒子は粒径5μm以下の粒子と定義する。)
【0259】
(実施例18)
Cyclohalerで使用する塩酸アポモルヒネ400μgカプセル
塩酸アポモルヒネ400μgカプセルを5個調製し、100l.min-1で運転するよう構成されたACI(米国薬局方第26版、第601章、装置3)中のCyclohaler吸入器(商標)(Miatから入手可能)内で試験した。各カプセルは充填重量25mgで、以下の成分を含んでいた。
【0260】
【表24】
【0261】
なお、DMV Pharmaから入手可能なPharmatose 150Mは、(DMV Pharmaの文献によれば)315μm未満が100%、150μm未満が少なくとも85%、100μm未満が少なくとも70%、45μm未満が少なくとも50%という粒径分布を有するラクトースを含む。Meggle Pharmaから入手可能なSorbolac 400は、(Meggle Pharmaの文献によれば)100μm未満が100%、63μm未満が少なくとも99%、32μm未満が少なくとも96%という粒径分布を有するラクトースを含む。
【0262】
予備ブレンドの調製
Pharmatose、Sorbolac、およびロイシンを層状に混合ボウルに入れ、ロイシンがSorbolacの間に挟み込まれ、Sorbolacが逆にPharmatoseの間に挟み込まれるようにした。上記のRetsch Grindomix高剪断ミキサーを用い、粉末を60秒間、2000rpmでブレンドした。予備ブレンドを1時間ミキサー内に置いてからさらに使用した。
【0263】
最終ブレンドの調製
塩酸アポモルヒネを混合ボウル中で予備ブレンドの間に挟み込んだ。Grindomixミキサーを用いて10分間、2000rpmで混合した。次に、ブレンドを212μm篩に通した。
【0264】
その後、最終ブレンドをカプセルに入れ、各カプセルの充填重量を25mgとした。次に、カプセルをCyclohalerに入れ、ACI(米国薬局方第26版、第601章、装置3)内で試験し、データを上記CITDASで分析し、以下の結果を得た。
【0265】
【表25】
【0266】
ACIの各構成要素に運搬され、吸入器内に保持された薬物の平均量(μg)を図20に示す。したがって、例えば、超微粒子用量はCITDASパッケージによりこのデータから製造することができる。
【0267】
(実施例19)
塩酸アポモルヒネ400μg入り2mgブリスター
塩酸アポモルヒネ400μgブリスターを5個調製し、60l.min-1で運転するよう構成されたACI(米国薬局方第26版、第601章、装置3)中の実施例5の吸入器内で試験した。各ブリスターは充填重量2 mgで、以下の成分を含んでいた。
【0268】
【表26】
【0269】
実施例2(a)および2(b)に一般的に記載されている混合ボウル内で、塩酸アポモルヒネをRespitoseの間に挟み込んだ。Grindomixミキサーを用いて5分間、2000rpmで粉末を混合した。次に、ブレンドを212μm篩に通した。その後、ブレンドをブリスターに入れ、各ブリスターの充填重量を2mgとした。次に、ブリスターを実施例5の吸入器に入れ、ACI(米国薬局方第26版、第601章、装置3)内で試験し、データを上記CITDASで分析し、以下の結果を得た。
【0270】
【表27】
【0271】
ACIの構成要素に運搬され、吸入器内に残った薬物の平均量(μg)を図21に示す。したがって、例えば、超微粒子用量はCITDASパッケージを用いてこのデータから製造することができる。
【0272】
ACIデータから生成される1.70μmのMMADは著しく微細であり、レーザー光回折により測定されるこの塩酸アポモルヒネのバッチの中央径(図5Bで報告されるように1.453μm)に非常に近いことに留意されたい。このことは、吸入器が薬物を、凝集体ではなくその一次粒子またはそれに近い形に効率的に還元していることを示す。これは吸入器では通常あり得ないことである。例えば、塩酸アポモルヒネの(粒径の点で)同一のバッチを実施例18のCyclohalerで送達した際、2.3μmとより大きいMMADが測定され、この製剤および吸入器が凝集体を排除する上で有効ではなかったことが示された。
【0273】
実施例18の製剤および吸入器と比較すると、実施例19の製剤および吸入器は、送達用量に優れ(89.2%対81%)、微粒子画分に優れ(81%対67%)、微粒子用量百分率に優れ(72%対55%)、超微粒子用量百分率に優れている(67%対44%)。
【0274】
また、上記データから、実施例19の製剤および吸入器は70%を超える超微粒子画分(3μm未満)を生成することが明らかである。微粒子画分(5μm未満)が局所送達に許容できると考えられるが、全身送達ではさらに微小な粒子が必要であると思われる。薬物が血流に吸収されるためには肺胞に到達しなければならないからである。したがって、70%を超える超微粒子画分が特に有利である。
【0275】
上記で言及したデータは、本発明の好ましい吸入器は本発明の好ましい製剤と組み合わせると特に効率的であることを示している。
【0276】
実施例18の製剤(Cyclohalerを備える)および実施例19の製剤(好ましい吸入器を備える)はいずれも、MMADが3.47、FPFが66.7、微粒子用量百分率が52.4%であった実施例16の懸濁液型pMDIに比べ性能が著しく優れていることにも留意されたい。
【0277】
(実施例20)
共ジェット粉砕型およびメカノフュージョン型アポモルヒネ製剤の比較
微細な賦形剤粒子を有するいくつかの塩酸アポモルヒネ製剤を、共ジェット粉砕で、またメカノフュージョンで調製し、次にこれらの製剤を試験した。共ジェット粉砕はジェットミルで行い、メカノフュージョンプロセスはメカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン社)で行った。
【0278】
Sorbolac 400ラクトース19.0gと微粉化L-ロイシン1.0gをメカノフュージョンシステム内で組み合わせた。この材料を出力20%の設定で5分間、次いで出力80%の設定で10分間加工した。この材料を回収し、「2A」と記録した。
【0279】
塩酸アポモルヒネ15.0gと微粉化L-ロイシン0.75gをメカノフュージョンシステム内で組み合わせた。この材料を出力20%の設定で5分間、次いで出力80%の設定で10分間加工した。この材料を回収し、「2B」と記録した。
【0280】
「2B」2.1gと微粉化ロイシン0.4gを、乳鉢および乳棒を使って手で2分間ブレンドした。微粉化ロイシン2.5gを加え、さらに2分間ブレンドした。微粉化ロイシン5gを加え、さらに2分間ブレンドした。次に、混合物をAS50螺旋型ジェットミル内で、入口圧力7bar、粉砕圧力5bar、供給量5ml/分にして加工した。この粉末を、300μm金属製篩にへらを用いて徐々に通した。この材料を「10A」と記録した。
【0281】
「10A」1.5gを微粉化L-ロイシン0.20gおよびSorbolac 400ラクトース3.75gと、乳鉢内でへらを用いて手で10分間組み合わせた。この粉末を、300μm金属製篩にへらを用いて徐々に通した。この材料を「10B」と記録した。
【0282】
微粉化塩酸アポモルヒネ9gおよび微粉化ロイシン1gをメカノフュージョンシステムに入れ、20%(1000rpm)で5分間加工した。次に、この初期ブレンドをAS50螺旋型ジェットミル内で、入口圧力7bar、粉砕圧力5bar、供給量5ml/分にして加工した。この材料を「11A」と記録した。
【0283】
ブレンド後、この粉末を終夜放置し、次いで振とうにより300μm金属製篩に徐々に通した。この材料を「11B」と記録した。
【0284】
微粉化塩酸アポモルヒネ2gと微粉化ロイシン0.5gを、乳鉢および乳棒を使って手で2分間ブレンドした。微粉化ロイシン2.5gを加え、さらに2分間ブレンドした。次いで、微粉化ロイシン5gを加え、さらに2分間ブレンドした。次に、混合物をAS50螺旋型ジェットミル内で、入口圧力7bar、粉砕圧力5bar、供給量5ml/分にして加工した。この粉末を、300μm金属製篩にへらを用いて徐々に通した。この材料を「12A」と記録した。
【0285】
Sorbolac 400 16.5gおよび微粉化ロイシン0.85gをメカノフュージョンシステムに入れ、20%(1000rpm)で5分間、次いで80%(4000rpm)で10分間加工した。この材料を「13A」と記録した。
【0286】
微粉化塩酸アポモルヒネ0.5gと「13A」2.0gを、乳鉢内でへらを用いて手で10分間ブレンドした。この粉末を、300μm金属製篩にへらを用いて徐々に通した。この材料を「13B」と記録した。
【0287】
いくつかのホイルブリスターに、以下の製剤を約2mg充填した。
10A-塩酸アポモルヒネ20%、l-ロイシン5%、微粉化ロイシン75%(共ジェット粉砕)
10C-塩酸アポモルヒネ26.2%、l-ロイシン5%、Sorbolac 68.7%(幾何的)
11B-塩酸アポモルヒネ95%、l-ロイシン5%(共ジェット粉砕)
12A-塩酸アポモルヒネ20%、ロイシン5%、微粉化ロイシン75%(すべて共ジェット粉砕)
13B-塩酸アポモルヒネ20%、l-ロイシン5%、Sorbolac 400 75%(ロイシンおよびSorbolacはメカノフュージョン処理)
【0288】
次に、これらをAspirair吸入器からNGIに向けて60l/分の流量で噴射した。Aspirairは15mlリザーバと共に1.5barで操作した。各in vitro試験をスクリーンに向けて1回行い、次いで選択された候補を繰り返した。また、さらなる候補をACI内で60l/分で繰り返した。
【0289】
【表28】
【0290】
【表29】
【0291】
【表30】
【0292】
共ジェット粉砕型製剤は、能動式乾燥粉末吸入器を用いて投与した際にも、例外的なFPFを示した。この改善は、スロートへの沈着が5%未満と、メカノフュージョン型製剤の16〜29%に比べて減少していることが主な理由であると思われる。「12A」は「10A」の反復として製造したが、メカノフュージョン加工された予備ブレンドは除いた(それが不要であることを示すため)。
【0293】
その調製が上記の通りである製剤12Aと共に得られたFPFの再現可能性を試験した。
【0294】
いくつかのホイルブリスターに製剤12Aを約2mg充填した。30用量を噴射することで全寿命用量均一性を試験し、放出された用量をDUSAで回収した。全寿命用量均一性の結果を図22のグラフに示す。
【0295】
平均放出用量は389g、相対標準偏差は6.1%であり、薬物-ラクトース製剤の全寿命用量均一性は非常に良好であった。
【0296】
(実施例21)
適切なアポモルヒネ用量の提供
フェーズ1研究から、吸入されたアポモルヒネの最大耐量は約900μgであることが見出された。
【0297】
実施例7で使用した製剤はアポモルヒネを20%(w/w)(600μg)含んでいた。ブリスター充填重量を3mgとする実験を行い、これらのブリスターが72%の微粒子画分を与えることがわかった。このため、900μgを得るには、600μg薬物製剤のブリスター充填重量を3mgから4.5mgにするか、いくつかのブリスターを使用する(例えば、1×600μg/3mgおよび1×300μg/1.5mg)必要となる。
【0298】
別の選択肢は、薬物充填量を20%から30%(w/w)に増やして充填重量をブリスター当たり3mgに維持することである。
【0299】
上記の実施例2に記載の方法で、各成分を3mgブリスター当たり以下の量で与えることで、この製剤を製造することができる。
【0300】
【表31】
【0301】
ACIの結果(下記の表17に示す)では、ブリスター中の充填重量を3mgから4.5mgに増加させると、20%(w/w)製剤を用いるFPFがわずかに減少することがわかる。30%(w/w)製剤のFPFは74%へとわずかに増大した。このことは、30%(w/w)製剤が用量増大に使用できることを示している。
【0302】
【表32】
【0303】
(実施例22)
篩い分けたラクトース担体粒子と篩い分けなかったラクトース担体粒子の使用比較
進行中の30%(w/w)ブレンド開発の一部として、Respitose SV003の代わりにSorbolac 400を用いたブレンドを調製した。
【0304】
篩い分けなかったSorbolac 400および篩い分けたSorbolac 400(100μmメッシュ篩使用)を用いて製剤を調製した。
【0305】
上記の実施例2に記載の方法で、各成分を3mgブリスター当たり以下の量で与えることで、この製剤を製造することができる。
【0306】
【表33】
【0307】
初期結果は、篩い分けた製剤のFPF(65%)が篩い分けなかった製剤のFPF(61%)より大きいことを示す。
【0308】
(実施例23)
pMDI用製剤の調製
本発明のさらなる製剤を以下のように調製することができる。微粉化アポモルヒネ12.0gおよびレシチンS PC-3(Lipoid GMBH)4.0gをビーカーに秤量する。粉末をHosokawa AMS-MINIメカノフュージョンシステムに、蓋の最大の入口に取り付けた漏斗を介して移し替え、装置は3.5%で運転する。入口を密封し、スイッチを入れて冷却水を導入する。装置を20%で5分間、次いで50%で10分間運転する。装置のスイッチを切り、取り外し、得られた製剤を機械的に回収する。
【0309】
缶の調製
粉末0.027gを缶に秤量し、50μlバルブを缶に圧着し、HFA 134a 12.2gを缶に充填する。
【0310】
(実施例24)
受動式吸入器に用いるメカノフュージョン型製剤の調製
本発明のさらなる製剤を以下のように調製することができる。微粉化アポモルヒネ20%、Sorbolac 400ラクトース78%、およびステアリン酸マグネシウム2%を含む混合物20gをHosokawa AMS-MINIメカノフュージョンシステムに、蓋の最大の入口に取り付けた漏斗を介して移し替え、装置は3.5%で運転する。入口を密封し、スイッチを入れて冷却水を導入する。装置を20%で5分間、次いで80%で10分間運転する。装置のスイッチを切り、取り外し、得られた製剤を機械的に回収する。
【0311】
(実施例24)
アポモルヒネ遊離塩基製剤
上記の実施例2に記載の方法で、各成分を以下の量で与えることで、600μg製剤を製造することができる。
【0312】
【表34】
【0313】
これまでの明細書では、本発明を具体的に例示された実施形態およびその実施例に関連づけて説明した。しかし、下記の特許請求の範囲に記載される本発明のより広範な精神および範囲から逸脱することなく、本発明に各種の改変および変更を加えることができることは自明である。したがって、明細書および図面は、本発明を限定するというよりは例示するものと見なすべきである。
【図面の簡単な説明】
【0314】
【図1】本発明の粉末製剤を送達するのに使用できる好ましい吸入器の概要を示す図である。
【図2】本発明の粉末製剤を投与するのに用いられる吸入器中で使用することができる非対称形の渦室を示す図である。
【図3】非対称形吸入器の渦室の代替形態の断面図である。
【図4A】実施例1のラクトースの粒径分布を示す図である。
【図4B】実施例1のラクトースの粒径分布を示す図である。
【図5A】実施例2の微粉化アポモルヒネの粒径分布を示す図である。
【図5B】実施例2の微粉化アポモルヒネの粒径分布を示す図である。
【図6A】実施例2(a)および3の200μgのアポモルヒネ-ラクトース製剤の安定性データを示す図である。
【図6B】実施例2(a)および3の200μgのアポモルヒネ-ラクトース製剤の安定性データを示す図である。
【図6C】実施例2(a)および3の200μgのアポモルヒネ-ラクトース製剤の安定性データを示す図である。
【図7A】実施例2および3のアポモルヒネ-ラクトース製剤について行った試験の結果を示す図である。
【図7B】実施例2および3のアポモルヒネ-ラクトース製剤について行った試験の結果を示す図である。
【図8】実施例10の微粉化ロイシンの粒径分布を示す図である。
【図9】実施例14の患者の治療群による勃起の性質を示す図である。
【図10】実施例14の患者の治療群による応答率を示す図である。
【図11】実施例14においてプラセボで治療された患者群での効果の発現および持続を示す図である。
【図12】実施例14においてアポモルヒネ200μgで治療された患者群での効果の発現および持続を示す図である。
【図13】実施例14においてアポモルヒネ400μgで治療された患者群での効果の発現および持続を示す図である。
【図14】実施例14においてアポモルヒネ800μgで治療された患者群での効果の発現および持続を示す図である。
【図15】400μgおよび800μg用量について、各患者の投与70分後の血中濃度(T70)の比較を示し、さらにUprima(登録商標)舌下錠2mg、4mg、および5mgでの既知の平均Cmaxを示す図である。
【図16】実施例15で論じるフェーズ1研究中に収集した薬物動態データを示す図である。
【図17】実施例15で論じるフェーズ1研究中に収集した薬物動態データを示す図である。
【図18】実施例15で論じるフェーズ1研究中に収集した薬物動態データを示す図である。
【図19】実施例15で論じるフェーズ1研究中に収集した薬物動態データを示す図である。
【図20】実施例18において、ACIの11の各構成要素に運搬された薬物の量(μg)を示す図である。
【図21】実施例19において、ACIの11の各構成要素に運搬された薬物の量(μg)を示す図である。
【図22】実施例20の製剤12Aの全寿命用量均一性に関する結果を示す図である。
【図23A】実施例4で論じた、異なって充填されたブリスターからの本発明の組成物の送達用量の均一性を示す図である。
【図23B】実施例4で論じた、異なって充填されたブリスターからの本発明の組成物の送達用量の均一性を示す図である。
【符号の説明】
【0315】
1 渦室
2 出口
3 入口
7
8 壁
11 渦ノズル
12 渦室
13 マウスピース
14 ブリスター
15 ブリスターホルダー
16 貫通ヘッド
17 リザーバ
18 バルブ
19 呼吸作動式機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アポモルヒネを含む、肺吸入による性機能障害治療用の組成物であって、前記アポモルヒネが遊離塩基、薬学的に許容できる塩またはエステルの形態である組成物。
【請求項2】
前記アポモルヒネが塩酸アポモルヒネである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物の肺吸入による投与が、投与後1〜5分以内にCmaxを与える、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記Cmaxが少なくとも2ng/mlである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記Cmaxが少なくとも7ng/mlである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物の肺吸入による投与が、50〜70分の終末排出半減期を与える、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物の肺吸入による投与が、用量依存性AUC0-∞を与える、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物の肺吸入による投与が、用量依存性AUC0-tを与える、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物の肺吸入による投与が、用量依存性Cmaxを与える、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物の肺吸入による投与が、アポモルヒネの投与に通常伴う副作用を伴わない、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
(塩酸塩の重量基準で)アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはエステル約100〜約1600μgであるアポモルヒネの用量を与える、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記用量が約200〜約1600μgである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記用量が約300〜約1200μgである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記用量が約400〜約1000μgである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記性機能障害が勃起障害である、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記性機能障害が女性機能障害である、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記勃起障害が心因性である、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記勃起障害が器質性である、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
乾燥粉末組成物である、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記アポモルヒネの質量中央空気力学的粒径が10μm以下である、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
前記質量中央空気力学的粒径が5μm以下である、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
少なくとも90%の前記アポモルヒネの粒径が10μm以下である、請求項19から21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
少なくとも90%の前記アポモルヒネの粒径が5μm以下である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
添加剤材料をさらに含む、請求項19から23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記添加剤材料が前記組成物の約0.15重量%〜約5重量%の量で提供される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記添加剤材料がロイシン、ステアリン酸マグネシウム、レシチン、およびステアリルフマル酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項24または25に記載の組成物。
【請求項27】
賦形剤材料をさらに含む、請求項19から26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記賦形剤材料が、平均粒径40〜70μmの担体粒子の形態である、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
噴霧剤、溶媒、および水を含む溶液型pMDI用製剤を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記噴霧剤がHFA134aおよび/またはHFA227である、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記溶媒がエタノールである、請求項29または30に記載の組成物。
【請求項32】
前記水が前記溶液型pMDI用製剤の2重量%超〜約10重量%の量で存在する、請求項29から31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
噴霧剤を含む懸濁液型pMDI用製剤である、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記噴霧剤がHFA134aおよび/またはHFA227である、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記噴霧剤がHFA134aを約60重量%、HFA227を約40重量%含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
性機能障害の治療方法であって、そのような治療を必要とする対象に請求項1から35のいずれか一項に記載の組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項37】
前記性機能障害が男性勃起障害である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記性機能障害が女性機能障害である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
アポモルヒネの投与に通常伴う副作用を引き起こさない、請求項36から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
肺吸入による性機能障害治療用の薬物の製造におけるアポモルヒネの使用であって、前記薬物が請求項1から35のいずれか一項に記載の組成物を含む使用。
【請求項41】
前記薬物がアポモルヒネの投与に通常伴う副作用を引き起こさない、請求項40に記載の使用。
【請求項42】
請求項1から28のいずれか一項に記載の組成物を含む乾燥粉末吸入器。
【請求項43】
能動式吸入器である、請求項42に記載の乾燥粉末吸入器。
【請求項44】
呼吸作動式吸入器である、請求項42または43に記載の乾燥粉末吸入器。
【請求項45】
請求項42から44のいずれか一項に記載の乾燥粉末吸入器に使用されるブリスターであって、前記組成物を含むブリスター。
【請求項46】
ホイルブリスターである、請求項45に記載のブリスター。
【請求項47】
前記組成物と接するポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンを含む、請求項45または46に記載のブリスター。
【請求項1】
アポモルヒネを含む、肺吸入による性機能障害治療用の組成物であって、前記アポモルヒネが遊離塩基、薬学的に許容できる塩またはエステルの形態である組成物。
【請求項2】
前記アポモルヒネが塩酸アポモルヒネである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物の肺吸入による投与が、投与後1〜5分以内にCmaxを与える、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記Cmaxが少なくとも2ng/mlである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記Cmaxが少なくとも7ng/mlである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物の肺吸入による投与が、50〜70分の終末排出半減期を与える、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物の肺吸入による投与が、用量依存性AUC0-∞を与える、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物の肺吸入による投与が、用量依存性AUC0-tを与える、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物の肺吸入による投与が、用量依存性Cmaxを与える、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物の肺吸入による投与が、アポモルヒネの投与に通常伴う副作用を伴わない、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
(塩酸塩の重量基準で)アポモルヒネまたは薬学的に許容できるその塩もしくはエステル約100〜約1600μgであるアポモルヒネの用量を与える、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記用量が約200〜約1600μgである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記用量が約300〜約1200μgである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記用量が約400〜約1000μgである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記性機能障害が勃起障害である、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記性機能障害が女性機能障害である、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記勃起障害が心因性である、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記勃起障害が器質性である、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
乾燥粉末組成物である、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記アポモルヒネの質量中央空気力学的粒径が10μm以下である、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
前記質量中央空気力学的粒径が5μm以下である、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
少なくとも90%の前記アポモルヒネの粒径が10μm以下である、請求項19から21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
少なくとも90%の前記アポモルヒネの粒径が5μm以下である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
添加剤材料をさらに含む、請求項19から23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記添加剤材料が前記組成物の約0.15重量%〜約5重量%の量で提供される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記添加剤材料がロイシン、ステアリン酸マグネシウム、レシチン、およびステアリルフマル酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項24または25に記載の組成物。
【請求項27】
賦形剤材料をさらに含む、請求項19から26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記賦形剤材料が、平均粒径40〜70μmの担体粒子の形態である、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
噴霧剤、溶媒、および水を含む溶液型pMDI用製剤を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記噴霧剤がHFA134aおよび/またはHFA227である、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記溶媒がエタノールである、請求項29または30に記載の組成物。
【請求項32】
前記水が前記溶液型pMDI用製剤の2重量%超〜約10重量%の量で存在する、請求項29から31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
噴霧剤を含む懸濁液型pMDI用製剤である、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記噴霧剤がHFA134aおよび/またはHFA227である、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記噴霧剤がHFA134aを約60重量%、HFA227を約40重量%含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
性機能障害の治療方法であって、そのような治療を必要とする対象に請求項1から35のいずれか一項に記載の組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項37】
前記性機能障害が男性勃起障害である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記性機能障害が女性機能障害である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
アポモルヒネの投与に通常伴う副作用を引き起こさない、請求項36から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
肺吸入による性機能障害治療用の薬物の製造におけるアポモルヒネの使用であって、前記薬物が請求項1から35のいずれか一項に記載の組成物を含む使用。
【請求項41】
前記薬物がアポモルヒネの投与に通常伴う副作用を引き起こさない、請求項40に記載の使用。
【請求項42】
請求項1から28のいずれか一項に記載の組成物を含む乾燥粉末吸入器。
【請求項43】
能動式吸入器である、請求項42に記載の乾燥粉末吸入器。
【請求項44】
呼吸作動式吸入器である、請求項42または43に記載の乾燥粉末吸入器。
【請求項45】
請求項42から44のいずれか一項に記載の乾燥粉末吸入器に使用されるブリスターであって、前記組成物を含むブリスター。
【請求項46】
ホイルブリスターである、請求項45に記載のブリスター。
【請求項47】
前記組成物と接するポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンを含む、請求項45または46に記載のブリスター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【公表番号】特表2006−522785(P2006−522785A)
【公表日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506129(P2006−506129)
【出願日】平成16年4月14日(2004.4.14)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001627
【国際公開番号】WO2004/089374
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(504085521)ベクトゥラ・リミテッド (15)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年4月14日(2004.4.14)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001627
【国際公開番号】WO2004/089374
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(504085521)ベクトゥラ・リミテッド (15)
【Fターム(参考)】
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