説明

アミドキシムカルボン酸エステル及びN−ヒドロキシグアニジンカルボン酸エステルのプロドラッグの製造のための使用

本発明は、少なくとも1以上のアミジン−、グアニジン−、N−ヒドロキシアミジン−(アミドキシム)又はN−ヒドロキシグアニジン−官能性を有する医薬物質のバイオアベイラビリティの改善のための及び脳血液関門通過を可能にするための方法及び相応して変性された医薬物質含有医薬品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1以上のアミジン−、グアニジン−、N−ヒドロキシアミジン−(アミドキシム)又はN−ヒドロキシグアニジン−官能性を有する医薬物質のバイオアベイラビリティの改善のための及び脳血液関門通過を可能にするための方法でのアミドキシムカルボン酸エステルの使用及び相応して変性された医薬物質を含有する医薬品に関する。
【0002】
N−ヒドロキシアミジン(アミドキシム)及びN−ヒドロキシグアニジンは、アミジン(Clement, B. Methoden zur Behandlung und Prophylaxe der Pneumocystis carinii Pneumonie (PCP) und anderen Erkrankungen sowie Verbindungen und Formulierungen zum Gebrauch bei besagten Methoden. P 432444.4, 1993)及びグアニジンの経口バイオアベイラビリティの向上のための公知のプロドラッグ原理を提示する。
【0003】
1以上のアミジン又はグアニジン官能性を有する作用物質を含有する医薬調製物は、経口適用の際にほぼ薬理学的作用を有しない。経口投与による作用物質の治療作用のための前提は、消化管路からのこの吸収である。そのような作用の最も重要な機構は受動拡散である。受動拡散の経路での吸収の程度は親油性及びひいては作用物質の酸性度及び塩基性度にも依存する。
【0004】
強力に塩基性の化合物、例えばアミジン及びグアニジンは、胃(pH1)中で、そして小腸(pH6.4)中でほぼ完全にプロトン化されて存在する。したがって、消化管路の膜の脂質二重層を介した進入を必要とする経口投与後の吸収は極めてわずかな程度においてのみ行われる。
【0005】
多岐にわたる疾患の薬剤による治療の際の更なる問題は、脳血液関門を通過する必要性があることである。脳血液関門は、脳中への物質の吸収に関して有効なバリアーである。これは、物質の選択的取り込みを確実にし、進入を妨げる。さらに、この脳血液関門は生理学的バリアーのみならず酵素的バリアーとしても機能する。物質の脳中への浸透には様々なプロセスが関与している。他の適応症に比較して中枢神経系(CNS)中でその作用を発揮する医薬品はわずかしか市販されていない。このうち主たる部分が拡散によりCNS中に達する。この経路では、てんかん、慢性疼痛又はうつといった疾病が治療される。他の重大な機能障害、例えば脳腫瘍又は筋萎縮性側索硬化症はこの経路で今日ではまだ治療できない(PARDRIDGE, W. M. NeuroRx 2005, 2, 3-14)。脳血液関門を受動拡散により乗り越えることができるためには、物質は親油性でなくてはならず、400〜500Da未満のより少ない分子量を有しなくてはならず、未荷電で存在しなくてはならない。特定の小分子、例えばグルコース又はアミノ酸を吸収するためには、様々なトランスポーター系、例えばヌクレオシドトランスポーター、有機アニオンのための流入及び流出−トランスポーター、グルコース−トランスポーター、ペプチドトランスポーター及びアミノ酸−トランスポーターが血液脳幹門で発現している(TAMAI, I; TSUJI, A, J Pharm Sci 2000, 89, 1371-1388及びDE BOER, A.; VAN DER SANDT, I. Annu Rev Pharmacol Toxicol 2003, 43, 629-656)。より大きな分子、例えばインスリン又は鉄含有トランスフェリンは、受容体媒介した輸送を介して取り込まれる。この場合には、特にインスリン−及びトランスフェリン受容体が大きな役割を果たす(DE BOER, A.; VAN DER SANDT, I. Annu Rev Pharmacol Toxicol 2003, 43, 629-656; PARDRIDGE, W. M. Mol Interv 2003, 3, 90-105)。アミノ酸L−ドーパを例にとると、プロドラッグ原理を使用しており、これにより水溶性カテコールアミンドーパミンが脳血液関門を乗り越えることができる。この輸送は、アミノ酸−トランスポーターLAT1(large neutral amino aeid transporter)により生じる。この通路後に、ドーパミンへの脱カルボキシル化が行われる(PARDRIDGE, W. M. Mol Interv 2003, 3, 90-105)。
【0006】
ジアミジンはマラリアに対し、ニューモシスティス・ジロベシ(Pneumocystis jiroveci)(昔はカリニ(carinii))肺炎に対し、トリパノソーマ症(アフリカ睡眠病)及びリーシュマニア症に対して駆虫剤として使用される(WERBOVETZ, K. Curr Opin Investig Drugs 2006, 7, 147-157)。特に発展途上国においては、これら疾病は高い致死率でもってますます重要視されている問題を提示する。
【0007】
市場には3つの非経口により適用すべきジアミジンが存在する。ペンタミジン(Pentacarinat(R))は既に60年間アフリカ睡眠病の初期状態において使用されている。アフリカ睡眠病の第2相においては、髄膜脳炎相には有効性はもはや存在せず、というのは血液脳幹門は成功して通過できないからである。したがって、極めて毒性のあるヒ素化合物が投与されなくてはならない。アフリカ睡眠病の第2相において作用する医薬物質は不足している。
【0008】
アミジン又はグアニジンを官能基として有する全ての作用物質が、受動拡散を介してのみ取り込まれることができる場合には経口投与の際に不十分な吸収を示すことが推測される。
【0009】
カルボン酸を有する医薬物質は極めて広く知られており、経口医薬剤形としても適用されることができる。ここでは特に、酢酸−、プロピオン酸−及びサリチル酸誘導体の群からの全ての鎮痛薬を挙げることができる。
【0010】
このN−ヒドロキシル化誘導体、例えばアミドキシム及びN−ヒドロキシグアニジンは、酸素原子の導入によりより少ない塩基性を示す。生理学的条件下ではこれはプロトン化して存在しない。ベンズアミドキシムは、アミドキシム官能性を有する様々な医薬物質のためのモデル化合物を示す(Clement, B. Drug Met Rev 2002, 34, 565-579)。
【0011】
ペンタジミン及びジミナゼンはジアミジンを示し、経口適用により吸収されない。したがって、これはアミドキシムプロドラッグに移行された。(DE 10 2006 034 256.9)。
【0012】
ペンタジアミジンを例にとると、ペントキシムエステルへの移行によりこの溶解性の減少化も伴うことが示された。これはことによると、ペントキシムエステルの経口適用後の、ペンタアミジンの100%でないバイオアベイラビリティのための根拠でもある(Clement B.; Buerenheide A.; Rieckert W.; Schwarz J. Chem Med Chem 2006, 1, 1260-7)。
【0013】
さらに、この減少した水溶性は、水溶液の注射による医薬品の投与がもはや可能でない欠点を生じる。これは経口投与が重要である場合に特に問題である。
【0014】
したがって、本発明の課題は、アミドキシム−又はN−ヒドロキシグアニジンプロドラッグへ移行した物質の水溶性及びひいてはこの経口バイオアベイラビリティも高め、かつ/又は、ひいては、脳血液関門の通過を可能にすることであった。
【0015】
この課題は、請求項1の特徴部を有する本発明による使用により解決される。下位請求項は本発明の有利な実施態様を説明する。
【0016】
発明の詳細な説明
本発明により、式
【化1】

[式中、nは0〜12であり、かつR1は水素、アルキル残基又はアリール残基である]
のアミドキシムカルボン酸エステル(I)及びN−ヒドロキシグアニジンカルボン酸エステル(II)又はその塩の、医薬物質の溶解性、バイオアベイラビリティ及び血液脳関門通過性の改善のための医薬品における医薬物質の1以上のアミジン−、N−ヒドロキシアミジン−(アミドキシム)、グアニジン又はN−ヒドロキシグアニジン−官能物の代替物としての使用が提案される。
【0017】
12より大きいnが選択される場合には、溶解性、バイオアベイラビリティ及び血液脳関門通過の改善はもはや与えられない。
【0018】
N−ヒドロキシアミジン(アミドキシム)及びN−ヒドロキシグアニジンは、アミジンの経口バイオアベイラビリティを向上させるための成功したプロドラッグ原理である(DE 10 2006 034 256.9)。
【0019】
本発明により提案される、アミドキシム又はN−ヒドロキシグアニジンのジカルボン酸とのエステル化及びジカルボン酸のエステルは、溶解性、特に水性媒体中での溶解性及びバイオアベイラビリティを公知のプロドラッグに対して顕著に改善する。
【0020】
アミドキシム又はN−ヒドロキシグアニジンとジカルボン酸/ジカルボン酸エステルでのエステル化は、脱プロトン化した酸官能基の導入された負電荷に基づきベンズアミジンに比較したこの電荷の極性変換を示し、したがって水性媒体中での高められたバイオアベイラビリティ及び溶解性が引き起こされる。
【0021】
本発明による化合物のこの特別な利点は、これが血中で脱プロトン化されて存在し、したがって有機アニオンのためのトランスポーター(organic anion transporter (OAT))のための基質として作用し、かつこの経路で消化管路からの顕著に改善された吸収及びひいては高められたバイオアベイラビリティを示し、これにより有機アニオンのためのこの種のトランスポーターを介してこの血液脳幹門を乗り越えることが可能になる。これは、アフリカ睡眠病の療法における決定的な進展であるものであり、というのはこの疾病の第2相も効果的に治療できるからである。
【0022】
さらに、このエステル化は血液脳幹門の克服を可能にするものである。血液中ではこの化合物は脱プロトン化して存在し、この結果これは血液脳幹門での有機アニオンのためのトランスポーター(organic anion transporter (OAT))のための基質であることができる。
【0023】
カルボン酸の導入により、注入可能な医薬剤形も可能であり、というのはアミジンの場合には水溶性が再度回復するからである。これは特にR1が水素である場合に良好に当てはまる。
【0024】
本発明による使用によれば、少なくとも1以上のアミジン−、N−ヒドロキシアミジン(アミドキシム)−、グアニジン−又はN−ヒドロキシグアニジン官能物の、アミドキシムジカルボン酸エステル及びN−ヒドロキシグアニジンジカルボン酸エステルでの代替により、当該医薬物質の溶解性を向上させることが達成される。これにより、これは経口投与によりまず有効に吸収され、引き続き身体固有のエステラーゼ及びN−レダクターゼにより再度本来の作用形態、アミジン又はグアニジンに再変換されることができる(プロドラッグ原理)。この特筆すべき、変換されたアミドキシム−又はN−ヒドロキシグアニジン官能物の消化管路における吸収能は明らかに、作用物質分子の高められた溶解性のためである。さらに、この新規のプロドラッグ原理は、脳血液関門を乗り越えることを可能にすることができる。
【0025】
作用物質が少なくとも1以上の有効なアミジン−、N−ヒドロキシアミジン(アミドキシム)−、グアニジン−又はN−ヒドロキシグアニジン官能基を提案された形態で含有する場合に十分である。作用物質はこれに応じて、例えば複数のアミドキシム官能性(例えば2つ、例えばペントキシムエステルの場合)又はN−ヒドロキシグアニジン官能性を含有でき、その際次いで少なくとも1のこれらの基は前述のように変性されている。ちょうど同じように、少なくとも1の作用物質が1以上のアミジン−、N−ヒドロキシアミジン(アミドキシム)、グアニジン−又はN−ヒドロキシグアニジン官能基を有する限りは、作用物質の混合物も使用できる。この経口投与形態は液状、半固形又は固形の調製物として、特にタブレット、ドラジェ、ペレット又はマイクロカプセルとして構成されていることができる。この場合に、液状の調製物が使用される実施形態のためには、作用物質又は作用物質混合物は適した非毒性の溶媒中に、例えば水、一価アルコール、特にエタノール、多価アルコール、特にグリセリン及び/又はプロパンジオール、ポリグリコール、特にポリエチレングリコール及び/又はMiglyol、グリセリンホルマール、ジメチルイソソルビット、天然又は合成の油中に取り込まれることができる。半固形又は固形の調製物の製造のためには、慣用の基材、例えばベントナイト、ビーガム、グアー粉及び/又はセルロース誘導体、特にメチルセルロース及び/又はカルボキシメチルセルロース、並びにビニルアルコール及び/又はビニルピロリドンからのポリマー、アルギナート、ペクチン、ポリアクリラート、固形及び/又は液状ポリエチレングリコール、パラフィン、脂肪アルコール、ワセリン及び/又はロウ、脂肪酸及び/又は脂肪酸エステルが適用される。
【0026】
さらに、固形調製物中では、自体公知の増量剤(Streckmittel)、例えばコロイドシリカ、タルク、乳糖、澱粉粉末、糖、ゼラチン、金属酸化物及び/又は金属塩が含有されていることができる。更なる添加物質として、安定剤、乳化剤、分散剤並びに保存料が提案される。
【0027】
本発明による使用により変性された医薬物質は、経口投与の際に傑出した吸収能及びひいてはバイオアベイラビリティを有し、これによりアミジン又はグアニジンの薬理学的作用は顕著に高められる。したがって、いまやアミジンの経口適用のための最適な医薬形態が提供されることができる。
【0028】
官能基アミジン及びグアニジンが様々な適用領域のための様々な重要な作用物質の本質的成分であることにより、本発明による使用は特別な意味合いを獲得する。これは特に以下の作用物質クラス又は作用物質の成分である:プロテアーゼ阻害剤(トロンビン阻害剤、例えばメラガトラン、Xa因子、VII因子又は凝固カスケードの全てのプロテアーゼの阻害剤;マトリプターゼ阻害剤)、抗凝血薬、血栓溶解薬、抗線維素溶解薬、DNA−及びRNA−インターカレーション化合物(例えばペンタミジン、ジミナゼン、イソメタミジウム)、N−メチル−D−アスパラギン酸レセプター−アンタゴニスト及びウィルス性酵素の阻害剤(例えばノイラミニダーゼ阻害剤)。
【0029】
有効なアミジン官能性又はグアニジン官能性を発揮する作用物質は、特に血液凝固阻害のために、内臓及び/又は皮膚のリーシュマニア症、トリパノソーマ症(アフリカ睡眠病)、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)により引き起こされる肺炎(PCP)の予防及び治療のために、癌腫瘍の成長阻害、血圧降下、神経保護のために、並びに、ウィルス性感染、例えばインフルエンザ及びHIV感染の撲滅のために使用されることができる。
【0030】
上記の列記は単なる例示に過ぎず、本発明は根本的に、少なくとも1のアミジン官能性又はグアニジン官能性を有する全ての作用物質を含み、これは本発明により改善されたプロドラッグに移行されている。したがって、本発明による方法は、極めて幅広い範囲の作用物質クラス及び適応症に適用可能であり、かつ、活性形態がアミジン又はグアニジンを含む様々な医薬物質のバイオアベイラビリティを顕著に向上できる。
【0031】
本発明による方法により変性された化合物のための例として、O−スクシニルベンズアミドキシム、ペンタミジンコハク酸エステル及びジミナゼンコハク酸エステルが挙げられる。
【0032】
本発明による調製物は、実施例に基づきより詳細に説明される。
【0033】
本発明による調製物は、材料及び方法の章において実施例に基づきより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、O−スクシニルベンズアミドキシムの経口投与後のベンズアミジンの血漿レベル曲線を示す。
【図2】図2は、ジミナゼンスクシニル酸エステルの代謝を示す。
【図3】図3は、ペンタミジンスクシニル酸エステルの代謝を示す。
【0035】
材料及び方法
1)実施例1:
O−スクシニルベンズアミドキシム
【化2】

【0036】
ベンズアミドキシム1.0gを無水のアセトン40ml中に溶解した。無水コハク酸1.64gの添加後に4時間還流下で撹拌した。この反応の完全性をDCを用いて試験した。反応終了後に溶媒を完全に取り出し、この粗生成物をトルエンから晶出した。
収率:82%
融点:151℃

【0037】
消化管路からの吸収及び引き続くベンズアミジンへの還元の検出のためにO−スクシニルベンズアミドキシムを新規のプロドラッグ原理のためのモデル化合物として選択し、それぞれ3匹のラットに経口投与した。この両者のエステルのベンズアミジンへの代謝はこの場合にin vivoで以下のように進行した:
【化3】

【0038】
ジミナゼンコハク酸エステル及びペンタミジンコハク酸エステルの代謝は付属の図2〜3中に示されている。
【0039】
ラット研究の実施に関する方法
動物試験についてシュレスヴィッヒホルシュタイン州の農業、環境及び農村地域省(Ministerium fuer Landwirtschaft, Umwelt und laendliche Raeume des Landes Schleswig-Holstein)により2007年7月4日に認可を受けた。
【0040】
麻酔をキシランジン及びケタミンを用いて行う。両者をi.m.注射した。このシリコーンカテーテルは頚静脈及び頚動脈中に埋没される。これは、局所的な抗血栓性かつ抗炎症性の特性を有し、しかしながら全身性に作用しない。眼は手術の間に角膜保護クリーム(Oculotect(R))で保護され、並びにリンガー−乳酸−溶液3〜4mlをs.c.で術後のエネルギー供給の改善のために適用した。動物を抗炎症性に(Finadyne(R)、1mg/kg KG)かつ抗生物質により(Amoxicillin(R)、15%、10mg/kg KG)処置し、術後に覚醒まで世話をし、保温した。手術の翌日に動物は、Nutri plus(R)、エネルギーペースト(大豆油、糖蜜、肝油、肉エキス、鉱物予備混合物、ビタミン予備混合物)を得た。
【0041】
動物は試験終了後にペントバルビタール(i.v.)で安楽死させた。
【0042】
ラットの飼育
試験動物として平均重量200gを有する雄のウィスターラットを使用する。動物は個々にケージで飼育する。2日毎にパワー飼料を得る。水及び乾燥飼料は随意に提供される。
【0043】
物質の適用
物質の正確な計量供給を算出できるように、動物を夕方に物質適用前に秤量する。経口で投与すべき物質(プロドラッグ)を喉ゾンデを介して適用する。このためにO−スクシニルベンズアミドキシムを100mMのリン酸緩衝液、pH8.5中に溶解する。静脈内に投与されるベンズアミジンを溶血を妨げるべく0.9%のNaCl溶液中に溶解する。注射跡に再度1回少なくとも0.5mlの0.9%NaClを用いて後洗浄した。この物質適用はそのつど朝に行われる。
【0044】
このプロドラッグを3匹のラットに適用する。ベンズアミジンを2匹のラットに静脈内投与する。O−スクシニルベンズアミドキシムの経口投与用量は50mg/kg KGである。ベンズアミジンを10mg/kg KGの濃度で適用した。
【0045】
血液試料の取り出し
ラットから6つの血液試料を獲得できる。コンディションのための試験期間は1日間かかる。血液試料を経口適用後の8時間又は静脈適用後の6時間の期間にわたり獲得する。経口投与後に試料取り出しを、30、60、90、120、240及び480分後に行い、静脈適用後に5、10、20、40、80及び360分後に行う。血液取り出し前にカテーテルを血液の出現までの短期の吸引により空にした。血液取り出し(300μl)をマルチベット(Multivetten(R) 600, Sahrstedt, Nuembrecht)を用いて行う。カテーテルを空けておくために追加してヘパリン及びNaClからなる混合物約0.3mlを吹きかけた。獲得した完全血液を遠心分離(1500g、10分間、4℃)した。遠心分離後に約150μlの血漿を上清として取り出し、エッペンドルフ容器中にピペット注入し、−80℃で凍結する。
【0046】
血液試料の後処理
ゆっくりとした融解後に150μlの血漿を再蒸留水(Aqua bidest.)600μlまで希釈する。引き続きこの血漿試料を固相抽出を用いて後処理する。1000μlのメタノールを用いたカラムのコンディショニング及び1000μlの再蒸留水を用いた平衡化の後に試料提供(600μl)を行う。この収着剤を試料提供後に600μlの再蒸留水で洗浄する。この物質の溶出を再蒸留水pH3/メタノール(6/4、V/V)を用いて行う。この後でこの溶出物を乾燥まで濃縮し、100μlの再蒸留水/メタノール(9/1、V/V)で取り込み、HPLCに供給する。
【0047】
ベンズアミドキシム及びベンズアミジンの分離のためのHPLC分析
分析すべき物質の分離のために以下のHPLC分析を使用した:
HPLCポンプ:Waters 600
検出器:Waters 2417 Tunable Absorbance Detektor
オートサンプラー:Waters 717 plus Autosampler
インテグレーター:EZChromTM Elite Client/Server Version 2.8.3 画像2249 撮影及び評価ソフトウェア
固定相:Synergy Max-RP 80A; 250*4.6 mm、前カラムC18 4.0*3.0 mmを有する(Phenomenex, Aschaffenburg)
カラム温度:24℃で一定、カラム炉を用いる
移動相:10mM オクチルスルホナート、再蒸留水中、pH2.5
(濃縮したH3PO4)/アセトニトリル(82.5/17.5、V/V)
移動時間:30分間
検出器:UV検出器、229nm
流速:1.0ml/分
注入容積:10μl
検出器感度:Absorbance units fullscale:2000
保持時間:ベンズアミドキシム:23.5±0.5分
ベンズアミジン:26.5±0.5分。
【0048】
この溶出物をSatorius Membranfilter (0.45 μm)を用いて濾過し、超音波浴中で15分間脱気した。
【0049】
O−スクシニルベンズアミドキシム、ベンズアミドキシム及びベンズアミジンの分析のためのHPLC分析
分析すべき物質の分離のために以下のHPLC分析を使用した:
HPLCポンプ:Waters 600
検出器:Waters 2417 Tunable Absorbance Detektor
オートサンプラー:Waters 717 plus Autosampler
インテグレーター:EZChromTM Elite Client/Server Version 2.8.3 画像2249 撮影及び評価ソフトウェア
固定相:Synergy Max-RP 80A; 250*4.6 mm、前カラムC18 4.0*3.0 mmを有する(Phenomenex, Aschaffenburg)
移動相:100mM リン酸緩衝液、再蒸留水中、pH7.0(30%KOHを用いて)/アセトニトリル(92/8、V/V)
移動時間:25分
検出:229nm
流速:1.0ml/分
注入容積:10μl
検出器感度:Absorbance units fullscale:2000
保持時間:ベンズアミジン:5.3±0.3分
O−スクシニルベンズアミドキシム:11.7±0.3分
ベンズアミドキシム:15.2±0.3分。
【0050】
この溶出物をSatorius Membranfilter (0.45 μm)を用いて濾過し、超音波浴中で15分間脱気した。
【0051】
この獲得されたデータからはO−スクシニルベンズアミドキシムの経口投与後のベンズアミジンの経口バイオアベイラビリティが決定されることができた(第1表):
第1表:O−スクシニルベンズアミドキシムの経口投与後のベンズアミジンのバイオアベイラビリティ
【表1】

【0052】
上記表から明らかである通り、ベンズアミジンはO−スクシニルベンズアミドキシムの経口投与後に32%のバイオアベイラビリティを有する。これは、プロドラッグは経口投与後吸収され、血液中で作用形態に還元されていることを示す。
【0053】
この試験結果は添付した図面中に示されており、その際、
図1は、O−スクシニルベンズアミドキシムの経口投与後のベンズアミジンの血漿レベル曲線を示す、
図2は、ジミナゼンスクシニル酸エステルの代謝を示す、及び
図3は、ペンタミジンスクシニル酸エステルの代謝を示す。
【0054】
本発明の特別な実施態様は以下の通りである:
1.式(I)のアミドキシムカルボン酸エステル又は式(II)のN−ヒドロキシグアニジンカルボン酸エステル
【化4】

[式中、nは0、・・・、12であり、かつR1は水素、アルキル残基及びアリール残基からなる群から選択されている]
及びその塩の、医薬物質の溶解性、バイオアベイラビリティ及び/又は血液脳関門通過性の改善のための医薬品における医薬物質の1以上のアミジン−、N−ヒドロキシアミジン−(アミドキシム)、グアニジン−又はN−ヒドロキシグアニジン−官能物の代替物としての使用。
2.この医薬物質は、プロテアーゼ阻害剤、DNA−及びRNA−インターカレーション化合物、ウィルス性酵素阻害剤及びN−メチル−D−アスパラギン酸−レセプターアンタゴニストの群から選択されていることを特徴とする実施態様1に記載の使用。
3.プロテアーゼ阻害剤が、トロンビン阻害剤、Xa因子、VII因子の阻害剤又は凝固カスケードの全てのプロテアーゼ阻害剤又はマトリプターゼ阻害剤であることを特徴とする実施態様2記載の使用。
4.プロテアーゼ阻害剤がウロキナーゼ阻害剤であることを特徴とする実施態様2に記載の使用。
5.DNA−及びRNA−インターカレーション化合物はペンタミジン、ジミナゼン又はイソメタミジウムであることを特徴とする実施態様2記載の使用。
6.ウィルス性酵素阻害剤がノイラミニダーゼ阻害剤であることを特徴とする実施態様2記載の使用。
7.医薬物質が、内臓及び/又は皮膚のリーシュマニア症、トリパノソーマ症、トリパノソーマ症の第2相又はニューモシスチス・カリニにより引き起こされる肺炎の予防及び治療のための、癌腫瘍の成長阻害のための、血液凝固阻害のための、血圧降下のための、神経保護のための、又はインフルエンザ及びHIV感染を含むウィルス性感染の撲滅のためのものであることを特徴とする実施態様1から6までのいずれか1項記載の使用。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のアミドキシムカルボン酸エステル又は式(II)のN−ヒドロキシグアニジンカルボン酸エステル
【化1】

[式中、nは、0、・・・、12であり、R1は、水素、アルキル残基及びアリール残基からなる群から選択されている]及びその塩の、医薬物質の溶解性、バイオアベイラビリティ及び/又は血液脳関門通過性の改善のための医薬品における医薬物質の1以上のアミジン−、N−ヒドロキシアミジン−(アミドキシム)、グアニジン−又はN−ヒドロキシグアニジン−官能物の代替物としての使用において、この医薬物質は、プロテアーゼ阻害剤であるトロンビン阻害剤、Xa因子、VII因子の阻害剤若しくは凝固カスケードの全てのプロテアーゼの阻害剤又はマトリプターゼ阻害剤、DNA−及びRNA−インターカレーション化合物、ウィルス性酵素阻害剤及びN−メチル−D−アスパラギン酸−レセプターアンタゴニストの群から選択されていることを特徴とする使用。
【請求項2】
DNA−及びRNA−インターカレーション化合物はペンタミジン、ジミナゼン又はイソメタミジウムであることを特徴とする請求項1記載の使用。
【請求項3】
ウィルス性酵素阻害剤がノイラミニダーゼ阻害剤であることを特徴とする請求項1記載の使用。
【請求項4】
医薬物質が、内臓及び/又は皮膚のリーシュマニア症、トリパノソーマ症、トリパノソーマ症の第2相又はニューモシスチス・カリニにより引き起こされる肺炎の予防及び治療のための、癌腫瘍の成長阻害のための、血液凝固阻害のための、血圧降下のための、神経保護のための、又はインフルエンザ及びHIV感染を含むウィルス性感染の撲滅のためのものであることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−510956(P2011−510956A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544724(P2010−544724)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【国際出願番号】PCT/EP2009/051132
【国際公開番号】WO2009/095499
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(509131362)ドリッテ パテントポートフォーリオ ベタイリグングスゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (7)
【氏名又は名称原語表記】Dritte Patentportfolio Beteiligungsgesellschaft mbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Berliner Strasse 1, D−12529 Schoenefeld/Waltersdorf, Germany
【Fターム(参考)】