説明

アミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物、並びにこれを用いた樹脂

【課題】無色透明で高いガラス転移温度と低い線熱膨張係数を有し、且つ有機溶媒への溶解性の高いポリイミドを提供することを目的とする。また、該ポリイミドの原料となる新規なモノマーを提供する。
【解決手段】1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物から誘導される下記一般式(1)で表されるアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物をモノマーとして用いる。前記モノマーと各種ジアミンと反応させることで課題に挙げたポリイミドを合成する。
【化1】


(式中、Aは炭素数2から15の脂肪族ジアミン残基、又は、置換基を有していてもよいベンゼン環を1から4個含む芳香族ジアミン残基を表す。但し、置換基として水酸基は除く。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物から誘導されるアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物、並びに、これを用いて合成されるポリイミドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは優れた機械特性、電気特性、耐熱性、耐薬品性を有し、電気・電子材料、特に半導体用電子材料の分野で、フレキシブルプリント配線用基板、層間絶縁膜、及び保護膜として広く利用されている。しかしながら、一般に芳香族ポリイミドは、ジアミン部分と酸無水物部分の電荷移動相互作用により淡黄色〜赤褐色に着色しており、化学構造を起因とした着色を有する。
【0003】
近年、装置の軽量化、フレキシブル化の観点から、液晶ディスプレー、電子ペーパー、太陽電池等で使用されるガラス基板を代替できる無色透明樹脂材料が望まれており、優れた機械特性、電気特性、耐熱性、耐薬品性を有するポリイミドの無色透明化に関する研究が行われている。
【0004】
ポリイミドは一般に優れた耐薬品性を有する反面、有機溶媒に不溶である。そのため、ポリイミドフィルムの作製には、有機溶媒に可溶な前躯体のポリアミック酸の状態でフィルムキャストした後、300〜350℃で数時間加熱し、溶媒の乾燥と熱イミド化を同時に行う必要がある。例えば、ポリイミドフィルムを保護層として製膜する場合、被保護層にも高い耐熱性が要求されることとなり、被保護層の材質が制限されてしまう。有機溶媒に可溶なポリイミドであれば、熱イミド化工程が不要となり、有機溶媒を蒸発・乾燥させるだけの比較的低い温度での製膜が可能となり、被保護層として選択できる材質の幅は飛躍的に拡大する。また、ポリイミドの製膜を塗布・乾燥で行うことは、意匠性を高める点においても有用である。
【0005】
無色透明なポリイミドとしては、脂環式構造を有するテトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンから合成されるポリイミドが知られている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。特許文献1では、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物から誘導されるエステル基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物をモノマーとしたポリイミドが、高ガラス転移温度、高透明性、高い有機溶媒溶解性を併せ持つ旨が記載されており、ガラス転移温度や光線透過率、線熱膨張係数等の物性値が具体的に開示されている。しかしながら、このようなポリイミドでも、これら性能面において未だ十分とは言えず、さらに優れたポリイミドが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−284414
【特許文献2】特開2008−297362
【特許文献3】特開2010−30972
【特許文献4】特開2010−39032
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、無色透明で高いガラス転移温度と低い線熱膨張係数を有し、且つ有機溶媒への溶解性の高いポリイミドを提供することを目的とする。また、該ポリイミドの原料となる新規なアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意研究を積み重ねた結果、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物から誘導される下記一般式(1)で表されるアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物が、無色透明で高いガラス転移温度と低い線熱膨張係数を有し、且つ有機溶媒への溶解性の高いポリイミドを合成するモノマーとして有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【化1】

(式中、Aは炭素数2から15の脂肪族ジアミン残基、又は、置換基を有していてもよいベンゼン環を1から4個含む芳香族ジアミン残基を表す。但し、置換基として水酸基は除く。)
【0009】
すなわち、本発明のアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物をモノマーとして、各種ジアミンと反応させることにより合成される、下記一般式(3)で表される繰り返し単位を有するポリイミドが、本発明の課題を解決すること見出し、本発明を完成した。
【化2】

(式中、Bは炭素数2から15の脂肪族ジアミン残基、又は、置換基を有していてもよいベンゼン環を1から4個含む芳香族ジアミン残基を表す。AとBは同じでもよく、異なっていてもよい。)
【発明の効果】
【0010】
本発明のアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物をモノマーとして合成されるポリイミドは、無色透明で高いガラス転移温度と低い線熱膨張係数を有し、且つ有機溶媒への溶解性の高いものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物から誘導されるアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物とは、下記一般式(1)で表されるものである。
【化3】

(式中、Aは炭素数2から15の脂肪族ジアミン残基、又は、置換基を有していてもよいベンゼン環を1から4個含む芳香族ジアミン残基を表す。但し、置換基として水酸基は除く。)
【0012】
上記一般式(1)で表されるアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物のAとしては、炭素数2から15の脂肪族ジアミン残基、又は、水酸基を除く置換基を有していてもよいベンゼン環を1から4個含む芳香族ジアミン残基であればよく、特に制限はないが、より具体的には、芳香族ジアミンとしては、ベンゼン環が1個の場合は、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノキシレン、2,5−ジアミノキシレン、2,5−ジアミノデュレン、2−フルオロ−1,4−フェニレンジアミン、2−フルオロ−1,3−フェニレンジアミン、4−フルオロ−1,3−フェニレンジアミン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレンジアミン、2,4,5,6−テトラフルオロ−1,3−フェニレンジアミン、2−クロロ−1,4−フェニレンジアミン、2−クロロ−1,3−フェニレンジアミン、4−クロロ−1,3−フェニレンジアミン、2,5−ジクロロ−1,4−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラクロロ−1,4−フェニレンジアミン、2,4,5,6−テトラクロロ−1,3−フェニレンジアミン、2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレンジアミン、2−トリフルオロメチル−1,3−フェニレンジアミン、4−トリフルオロメチル−1,3−フェニレンジアミン、2,5−ビストリフルオロメチル−1,4−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラキストリフルオロメチル−1,4−フェニレンジアミン、2,4,5,6−テトラキストリフルオロメチル−1,3−フェニレンジアミン等が挙げられ、ベンゼン環が2個の場合は、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、2,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,5,5’−テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’−ジフルオロベンジジン、3,3’−ジフルオロベンジジン、2,2’,5,5’−テトラフルオロベンジジン、2,2’,6,6’−テトラフルオロベンジジン、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロベンジジン、2,2’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、2,2’,5,5’−テトラクロロベンジジン、2,2’,6,6’−テトラクロロベンジジン、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、o−トリジン、m−トリジン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−(3,4−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(2−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(3−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(3−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−オキシビス(3−トリフルオロメチルアニリン)、3,3’−オキシビス(4−トリフルオロメチルアニリン)、4,4’−オキシビス(2,3,5,6−テトラフルオロアニリン)、4,4’−チオビス(2,3,5,6−テトラフルオロアニリン)、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,7−ジアミノ−ジメチルジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド等が挙げられ、ベンゼン環が3個の場合は、p−ターフェニレンジアミン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン等が挙げられ、ベンゼン環が4個の場合は、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、2,2’−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−スルフォニルビス(4−フェニレンサルファニルアニリン)、3,3’−スルフォニルビス(p−フェニレンサルファニルアニリン)等が挙げられる。また、脂肪族ジアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキサン、3,3’−ジアミノジシクロヘキサン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジシクロヘキサン、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジシクロヘキサン、2,2’−ビス(4−アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
【0013】
<アミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の製造方法>
次に本発明のアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の製造方法について説明する。本発明の1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物から誘導されるアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することが可能である。例えば、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物4−クロリドとジアミンとを反応させることで製造することが可能である。より具体的には、まず、溶媒へ溶解させた1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物4−クロリド溶液中へ、ジアミンと脱酸剤を溶解させた溶液を滴下し、0.5〜8時間攪拌する。反応温度は−50〜20℃で行われるが、反応選択性の観点から、より好ましくは−10〜10℃で行うとよい。1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物4−クロリドとジアミンとの反応比率としては、ジアミン1モルに対して1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物4−クロリドを2モル以上用いて反応させる。反応における溶質の濃度は1〜50重量%、より好ましくは20〜40重量%の範囲で行うとよい。反応終了後、析出した生成物を濾別し、トルエン等の不純物を溶解しうる溶媒で洗浄することで目的のアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物を得ることができる。目的物はさらに真空乾燥して次のイミド化反応に用いるとよい。この場合、乾燥温度は60〜150℃、生成物の安定性の観点から、より好ましくは80〜120℃で行うとよい。
【0014】
本発明のアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の製造に用いられる1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物4−クロリドは、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物の4位のカルボン酸をクロリド化することで製造できる。クロリド化には酸クロリドを合成する通常の方法を用いることができ、具体的には、塩化チオニルを使用する方法、三塩化リンを用いる方法が挙げられる。中でも、過剰に用いた塩素化剤を減圧留去で容易に除去できる点で、塩化チオニルを用いるのが好ましい。必要に応じて触媒を使用することもでき、具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、イミダゾール等が挙げられる。
【0015】
本発明のアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の製造に用いられる溶媒としては、特に限定されないが、具体的にはテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、モノエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶媒、アセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、ガンマブチロラクトンなどのエステル系溶媒等が挙げられる。中でも溶解性、安定性の点からシクロヘキサノン、ガンマブチロラクトンが好ましい。これら溶媒は単独で用いても構わないし、任意の複数の溶媒を混合して使用してもよい。
【0016】
本発明のアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の製造に用いられる脱酸剤としては、特に限定されないが、具体的には、ピリジン、トリエチルアミン等の3級アミン類、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ化合物が挙げられる。中でも反応選択性の点からアリルグリシジルエーテルが好ましい。これら脱酸剤の使用量は酸クロリドに対して1モル等量以上、好ましくは5モル等量以上である。上限は特に制限はないものの、経済的な観点から50モル等量以下、好ましくは10モル等量以下の量が使用される。
【0017】
本発明によれば、上記のようにして得られた本発明のアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物をモノマーとして用い、各種ジアミンを反応させることで、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体を製造することができる。
【化4】

(式中、Bは炭素数2から15の脂肪族ジアミン残基、又は、置換基を有していてもよいベンゼン環を1から4個含む芳香族ジアミン残基を表す。AとBは同じでもよく、異なっていてもよい。)
【0018】
そしてさらに上記ポリイミド前駆体をイミド化することで下記一般式(3)の繰り返し単位を有する、高い透明性、高い溶解性を兼ね備えたポリイミドを製造することが可能である。
【化5】

(式中、Bは炭素数2から15の脂肪族ジアミン残基、又は、置換基を有していてもよいベンゼン環を1から4個含む芳香族ジアミン残基を表す。AとBは同じでもよく、異なっていてもよい。)
【0019】
上記一般式(3)のBとしては、炭素数2から15の脂肪族ジアミン残基、又は、置換基を有していてもよいベンゼン環を1から4個含む芳香族ジアミン残基であればよく、特に制限はないが、より具体的には、芳香族ジアミンとしては、ベンゼン環が1個の場合は、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノキシレン、2,5−ジアミノキシレン、2,5−ジアミノデュレン、2−フルオロ−1,4−フェニレンジアミン、2−フルオロ−1,3−フェニレンジアミン、4−フルオロ−1,3−フェニレンジアミン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレンジアミン、2,4,5,6−テトラフルオロ−1,3−フェニレンジアミン、2−クロロ−1,4−フェニレンジアミン、2−クロロ−1,3−フェニレンジアミン、4−クロロ−1,3−フェニレンジアミン、2,5−ジクロロ−1,4−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラクロロ−1,4−フェニレンジアミン、2,4,5,6−テトラクロロ−1,3−フェニレンジアミン、2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレンジアミン、2−トリフルオロメチル−1,3−フェニレンジアミン、4−トリフルオロメチル−1,3−フェニレンジアミン、2,5−ビストリフルオロメチル−1,4−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラキストリフルオロメチル−1,4−フェニレンジアミン、2,4,5,6−テトラキストリフルオロメチル−1,3−フェニレンジアミン、2,5−ジヒドロキシ−1,4−フェニレンジアミン等が挙げられ、ベンゼン環が2個の場合は、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、2,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,5,5’−テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’−ジフルオロベンジジン、3,3’−ジフルオロベンジジン、2,2’,5,5’−テトラフルオロベンジジン、2,2’,6,6’−テトラフルオロベンジジン、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロベンジジン、2,2’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、2,2’,5,5’−テトラクロロベンジジン、2,2’,6,6’−テトラクロロベンジジン、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、o−トリジン、m−トリジン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−(3,4−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(2−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(3−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(3−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−オキシビス(3−トリフルオロメチルアニリン)、3,3’−オキシビス(4−トリフルオロメチルアニリン)、4,4’−オキシビス(2,3,5,6−テトラフルオロアニリン)、4,4’−チオビス(2,3,5,6−テトラフルオロアニリン)、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,7−ジアミノ−ジメチルジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニルスルホン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられ、ベンゼン環が3個の場合は、p−ターフェニレンジアミン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン等が挙げられ、ベンゼン環が4個の場合は、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、2,2’−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−スルフォニルビス(4−フェニレンサルファニルアニリン)、3,3’−スルフォニルビス(p−フェニレンサルファニルアニリン)等が挙げられる。また、脂肪族ジアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキサン、3,3’−ジアミノジシクロヘキサン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジシクロヘキサン、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジシクロヘキサン、2,2’−ビス(4−アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
【0020】
本発明のポリイミドの製造方法は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。
一般的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミンからポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を合成し、次いでイミド化反応を行うことにより製造される。
【0021】
<ポリイミド前駆体の製造方法>
次にポリイミド前駆体の製造方法について説明するが、本発明は以下の方法に限定されるものではない。まず脱水を行った重合溶媒へ一種又は二種以上のジアミンを溶解し、そこにテトラカルボン酸二無水物の粉末を徐々に添加し、1〜100時間、好ましくは2〜50時間攪拌する。反応温度は−30〜100℃、好ましくは−10〜50℃で行うとよい。テトラカルボン酸二無水物とジアミンの反応比率はモル比で1:0.8〜1.2が好ましく、高重合度のものが得られる点で1:1に近いほど好ましい。溶液中の全モノマー濃度は、1〜50重量%、好ましくは5〜30重量%である。
【0022】
ポリイミド前駆体の製造で使用されるテトラカルボン酸二無水物としては、本発明のアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物を用いることが必須であるが、単独で用いてもよいし、既知のテトラカルボン酸二無水物と組み合わせて使用してもよい。組み合わせて使用する場合は、本発明のポリイミドの特性を損なわない範囲で組み合わせてもよいし、あるいは、既知のポリイミドの構造に透明性、溶解性を向上させる目的で本発明のモノマー構造を導入することも可能である。組み合わせて使用可能なテトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルフォンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ハイドロキノン−ビス(トリメリテートアンハイドライド)、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1−カルボキシメチル−2,3,5−シクロペンタントリカルボン酸−2,6:3,5−二無水物、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0023】
ポリイミド前駆体の製造で使用される重合溶媒としては、特に限定されないが、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド溶媒、ガンマブチロラクトン、ガンマカプロラクトン等の環状エステル溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート溶媒、トリエチレングリコール等のグリコール系溶媒、クレゾール、クロロフェノール等のフェノール系溶媒、アセトフェノン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶媒は単独でも使用してもよいし、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0024】
<ポリイミドの製造方法>
本発明のポリイミドは、上記のようにして得られるポリイミド前駆体をさらにイミド化することにより得ることができる。イミド化には、一般に高温加熱によりイミド化させる方法と、脱水環化剤を用いて化学的にイミド化させる方法があるが、本発明のポリイミドはいずれの方法を用いても製造することができる。化学的にイミド化させる場合は、上記で得られたポリイミド前駆体溶液にピリジン、ピコリン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン等の3級アミン触媒と共に、無水酢酸、無水マレイン酸、無水フタル酸等の有機酸無水物を添加し、20〜100℃で1〜24時間攪拌することによって、目的のポリイミドを得ることができる。有機酸無水物の使用量は、ポリイミド前駆体の理論脱水量の1〜10倍が好ましい。また、3級アミン触媒の使用量は有機酸無水物に対して、0.1〜2倍量が好ましい。さらにこのようにして得られたポリイミドは、大量の貧溶媒中へ沈殿させて、洗浄することにより単離することも可能である。
【0025】
上記のようにして得られた本発明のポリイミドは、有機溶媒へ高い溶解性を示す。高い溶解性を示す有機溶媒の具体例としては、モノグライム、ジグライム、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、ガンマブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒等が挙げられる。また、本発明のポリイミドを有機溶媒に溶解したポリイミドワニス(重合溶液)は透明性の高いものとして得ることができる。
【0026】
本発明のポリイミドワニスは、ガラス、アルミニウム、銅、ステンレス板、シリコン、カプトンフィルム、エポキシ樹脂フィルム等の基板上に流延して塗布し、乾燥することにより、ポリイミドフィルムを形成することができる。塗布の方法としては、ポリイミドワニスを上記した基板上へ垂らし、スリット幅の固定された支持体などでなぞり溶液を延ばすことにより均一な高さに塗布することができる。他の塗布方法としてインクジェット法、スピンコート法、ディップ法など、溶液を所定の厚みで塗布できる方法であれば制限なく使用できる。
【0027】
次に、塗布された塗膜には溶媒が含まれているので乾燥する。乾燥の際の温度は、下限が40℃、好ましくは70℃、さらに好ましくは100℃で行うことができ、一方、上限は通常350℃、好ましくは300℃、さらに好ましくは250℃である。
【実施例】
【0028】
以下、本発明につき実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでない。
【0029】
H−NMRスペクトル>
合成したアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の分子構造は、日本電子データム社製NMR分光高度計(JNM−AL300)を用い、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解して、H−NMRを測定することにより確認した。
【0030】
<還元粘度>
合成したポリイミドの還元粘度は、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。測定試料は、N,N−ジメチルアセトアミドで0.5重量%に調製した溶液を用いた。
【0031】
<光線透過率(透明性)>
日立製作所製分光光度計(U−3310)を用いて、400nmにおける光透過率を測定した。
【0032】
<ガラス転移温度>
島津製作所製熱機械分析装置(TMA−50)を用いて、力学的物性の変化からガラス転移温度を求めた。
【0033】
<線熱膨張係数>
島津製作所製熱機械分析装置(TMA−50)を用いて、熱機械分析により、荷重5gf、昇温速度5℃/分における試験片の伸びより、30〜200℃の範囲での平均値として線熱膨張係数を求めた。
【0034】
実施例1 <アミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の合成>
窒素置換した500mL四口フラスコへ1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸1,2−無水物4−クロライド50.0g(0.231mol)とガンマブチロラクトン97.2gを加え溶解させ、A液とした。次に別の容器へp−フェニレンジアミン11.9g(0.110mol)、ガンマブチロラクトン118.8g、アリルグリシジルエーテル75.2g(0.659mol)を加え溶解させ、B液とした。次にA液を0〜5℃へ冷却し、5℃を超えないようにB液をA液へゆっくり滴下した。1時間攪拌後、反応液をトルエン864.0gへ投入し、沈殿物を濾別した。これをトルエンで洗浄後、100℃で12時間真空乾燥して白色粉末を得た(収率88%)。図1に示すH−NMRスペクトルより、得られた生成物は下記式(4)で表されるアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物であることを確認した。
【0035】
【化6】

【0036】
実施例2 <アミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の合成>
ジアミン成分としてp−フェニレンジアミンの代わりにm−フェニレンジアミンを用いた他は実施例1に記載した方法に従って、下記式(5)で表されるアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物を合成した(収率87%)。H−NMRスペクトルを図2に示す。
【0037】
【化7】

【0038】
実施例3 <アミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の合成>
窒素置換した500mL四口フラスコへ1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸1,2−無水物4−クロライド55.0g(0.254mol)とシクロヘキサノン55.0gを加え溶解させ、A液とした。次に別の容器へ4,4’−ジアミノジフェニルエーテル24.2g(0.121mol)、シクロヘキサノン242.0g、アリルグリシジルエーテル82.8g(0.725mol)を加え溶解させ、B液とした。次にA液を0〜5℃へ冷却し、5℃を超えないようにB液をA液へゆっくり滴下した。9時間攪拌後、反応液をトルエン825.0gへ投入し、沈殿物を濾別した。これをトルエンで洗浄後、80℃で24時間真空乾燥して白色粉末を得た(収率87%)。図3に示すH−NMRスペクトルより、得られた生成物は下記式(6)で表されるアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物であることを確認した。
【0039】
【化8】

【0040】
実施例4 <アミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の合成>
窒素置換した100mL四口フラスコへ1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物4−クロリド7.5g(34.6mmol)とシクロヘキサノン7.5gを加え溶解させ、A液とした。次に別の容器へ2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル5.3g(16.5mmol)、シクロヘキサノン26.4g、アリルグリシジルエーテル11.3g(99.0mmol)を加え溶解させ、B液とした。次にA液を0〜5℃へ冷却し、5℃を超えないようにB液をA液へゆっくり滴下した。4時間攪拌後、反応液をトルエン263gへ投入し、沈殿物を濾別した。これをトルエンで洗浄後、80℃で12時間真空乾燥して白色粉末を得た(収率56%)。図4に示すH−NMRスペクトルより、得られた生成物は下記式(7)で表されるアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物であることを確認した。
【0041】
【化9】

【0042】
実施例5 <アミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の合成>
窒素置換した100mL四口フラスコへ1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物4−クロリド10.0g(46.2mmol)とシクロヘキサノン10.0gを加え溶解させ、A液とした。次に別の容器へ4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン5.46g(22.0mmol)、シクロヘキサノン75.1g、アリルグリシジルエーテル15.1g(132mmol)を加え溶解させ、B液とした。次にA液を0〜5℃へ冷却し、5℃を超えないようにB液をA液へゆっくり滴下した。4時間攪拌後、反応液を外温65℃で減圧濃縮し、66.3gとした。この濃縮液をトルエン150.0gへ投入し、沈殿物を濾別した。これをトルエンで洗浄後、90℃で14時間真空乾燥して白色粉末を得た(収率95%)。図5に示すH−NMRスペクトルより、得られた生成物は下記式(8)で表されるアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物であることを確認した。
【0043】
【化10】

【0044】
実施例6 <ポリイミドの合成、及び、ポリイミド膜の作製>
十分に乾燥させた攪拌機付き密閉反応容器へ4,4’−ジアミノジフェニルエーテル10.7mmolを仕込み、モレキュラーシーブス4Aで十分に脱水したN,N−ジメチルアセトアミドを加えて溶解させた。この溶液へ実施例1で合成したアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物10.7mmolを加えた。この時の全モノマー濃度が20%濃度となるよう、先に加えたN,N−ジメチルアセトアミドの量を調節した。室温で22時間攪拌し、透明かつ均一で粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。
引き続き、理論脱水量の2倍モルとなる無水酢酸と理論脱水量の1倍モルとなるピリジンを投入し50℃で4時間攪拌後、室温で13時間攪拌して化学イミド化を行った。これを大量のメタノールに滴下して析出した固体を単離した。再度メタノールで洗浄後、乾燥して目的とするポリイミドを白色粉末として得た。得られたポリイミドの還元粘度は0.83dL/gであった。
上記で得られたポリイミド粉末をガンマブチロラクトンに溶解してポリイミドワニスとし、ガラス板上に塗布した。このガラス板を大気雰囲気下80℃で20分間乾燥させた。その後、基板から膜を剥がして窒素雰囲気下段階的に昇温させ、最終的に250℃で1時間乾燥させ、無色透明のポリイミド膜(膜厚30μm)を得た。
【0045】
実施例7 <ポリイミドの合成、及び、ポリイミド膜の作製>
テトラカルボン酸二無水物成分として実施例2で合成したアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物を用いた他は実施例6に記載した方法に従ってポリイミドを合成した。得られたポリイミドの還元粘度は0.45dL/gであった。得られたポリイミド粉末から実施例6に記載した方法に従ってポリイミド膜(膜厚25μm)を作製した。
【0046】
実施例8 <ポリイミドの合成、及び、ポリイミド膜の作製>
テトラカルボン酸二無水物成分として実施例3で合成したアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物を用いた他は実施例6に記載した方法に従ってポリイミドを合成した。得られたポリイミドの還元粘度は0.84dL/gであった。得られたポリイミド粉末から実施例6に記載した方法に従ってポリイミド膜(膜厚32μm)を作製した。
【0047】
実施例9 <ポリイミドの合成、及び、ポリイミド膜の作製>
テトラカルボン酸二無水物成分として実施例4で合成したアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物を用いた他は実施例6に記載した方法に従ってポリイミドを合成した。得られたポリイミドの還元粘度は1.4dL/gであった。得られたポリイミド粉末から実施例6に記載した方法に従ってポリイミド膜(膜厚24μm)を作製した。
【0048】
実施例10 <ポリイミドの合成、及び、ポリイミド膜の作製>
テトラカルボン酸二無水物成分として実施例5で合成したアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物を用いた他は実施例6に記載した方法に従ってポリイミドを合成した。得られたポリイミドの還元粘度は0.32dL/gであった。得られたポリイミド粉末から実施例6に記載した方法に従ってポリイミド膜(膜厚33μm)を作製した。
【0049】
<溶解性>
実施例6〜10で得られたポリイミドは、N−メチル−2−ピロリドン、ガンマブチロラクトン、N,N,−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドへそれぞれ20重量%以上溶解し、非プロトン性有機溶媒への高い溶解性を示した。
【0050】
<透明性>
実施例6〜10で得られたポリイミド膜について、波長400nmでの光線透過率(T)を測定した。結果を表1に示した。
【0051】
<ガラス転移温度>
実施例6〜10で得られたポリイミド膜について、ガラス転移温度を測定した。結果を表1に示した。
【0052】
<線熱膨張係数>
実施例6〜10で得られたポリイミド膜について、線熱膨張係数を測定した。結果を表1に示した。
【0053】
【表1】

【0054】
表1の結果より、実施例6〜10のポリイミド膜は、すべて高い透過率を有し無色透明のものであった。また、非常に高いガラス転移温度を持ち、低線熱膨張係数となった。したがって、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物から誘導された本発明のアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物を、モノマーとして使用することで、無色透明で高いガラス転移温度と低い線熱膨張係数を有し、且つ有機溶媒への溶解性の高いポリイミドが得られることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例1に記載のテトラカルボン酸二無水物のH−NMRスペクトルである。
【図2】実施例2に記載のテトラカルボン酸二無水物のH−NMRスペクトルである。
【図3】実施例3に記載のテトラカルボン酸二無水物のH−NMRスペクトルである。
【図4】実施例4に記載のテトラカルボン酸二無水物のH−NMRスペクトルである。
【図5】実施例5に記載のテトラカルボン酸二無水物のH−NMRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物から誘導される下記一般式(1)で表されるアミド基含有テトラカルボン酸二無水物。
【化1】

(式中、Aは炭素数2から15の脂肪族ジアミン残基、又は、置換基を有していてもよいベンゼン環を1から4個含む芳香族ジアミン残基を表す。但し、置換基として水酸基は除く。)
【請求項2】
請求項1に記載のアミド基含有テトラカルボン酸二無水物とジアミンから合成される下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体。
【化2】

(式中、Bは炭素数2から15の脂肪族ジアミン残基、又は、置換基を有していてもよいベンゼン環を1から4個含む芳香族ジアミン残基を表す。AとBは同じでもよく、異なっていてもよい。)
【請求項3】
請求項1に記載のアミド基含有テトラカルボン酸二無水物とジアミンから合成される下記一般式(3)で表される繰り返し単位を有するポリイミド。
【化3】

(式中、Bは炭素数2から15の脂肪族ジアミン残基、又は、置換基を有していてもよいベンゼン環を1から4個含む芳香族ジアミン残基を表す。AとBは同じでもよく、異なっていてもよい。)
【請求項4】
波長400nmにおける光線透過率が80%以上である請求項3に記載のポリイミド。
【請求項5】
非プロトン性有機溶媒に5重量%以上溶解する請求項3又は4に記載のポリイミド。
【請求項6】
ガラス転移温度が250℃以上である請求項3〜5のいずれかに記載のポリイミド。
【請求項7】
線熱膨張係数が60ppm/K以下である請求項3〜6のいずれかに記載のポリイミド。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれかに記載のポリイミドを少なくとも一部に含有して成るディスプレー用透明プラスチック基板。
【請求項9】
請求項3〜7のいずれかに記載のポリイミドを少なくとも一部に含有して成る太陽電池用透明プラスチック基板。
【請求項10】
請求項3〜7のいずれかに記載のポリイミドを少なくとも一部に含有して成る照明用透明プラスチック基板。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−72121(P2012−72121A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183221(P2011−183221)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000231497)日本精化株式会社 (60)
【Fターム(参考)】