説明

アミド誘導体またはその薬学的に許容される酸付加塩およびその医薬用途

【解決手段】本発明は、下式に代表されるアミド誘導体またはその薬学的に許容される酸付加塩、ならびに当該アミド誘導体またはその薬学的に許容される酸付加塩を含有する医薬、ならびに当該アミド誘導体またはその薬学的に許容される酸付加塩を含有する頻尿もしくは尿失禁の治療または予防剤を提供する。
【化1】


【効果】本発明の新規化合物は、従来の化合物よりも著しく高い尿失禁治療効果を有するため、優れた頻尿もしくは尿失禁の治療または予防剤として利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアミド誘導体またはその薬理学的に許容される酸付加塩、それらを含有する医薬、およびそれらを含有する頻尿もしくは尿失禁の治療または予防剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の老齢人口の増加にともない、頻尿・尿失禁に悩む患者の数は増加している。現在、頻尿または尿失禁に対する治療薬としては、主に抗コリン作用、筋弛緩作用を有する薬剤が使用されている。しかし、これらの治療薬を投与すると、口渇、便秘等の消化器症状、起立性低血圧などの循環器症状、または尿閉、残尿等の排尿障害などの副作用をともない、かならずしも有効性を示す用量まで投与できない場合がある。患者のクオリティーオブライフ(QOL)の向上のため、これらの副作用が軽減された頻尿もしくは尿失禁の治療または予防剤の開発が切望されている。
【0003】
副作用が軽減された頻尿もしくは尿失禁の治療または予防剤として、β3作動薬が研究されており、これまでに特許文献1においてβ3作動薬として頻尿治療に有用な化合物が開示されている。具体的には、特許文献1には頻尿もしくは尿失禁を伴いうる過活動膀胱の治療剤として酢酸アニリド誘導体(1)が開示されている。
【0004】
【化1】

【0005】
しかし、本公知文献は、そこに含まれる化合物とは構造的に異なる本願化合物が著しく顕著な排尿筋弛緩作用を有し、ひいては頻尿もしくは尿失禁の治療または予防剤として特に有用であることをなんら示唆するものではない。
【0006】
一方、特許文献2には、特許文献1に記載された酢酸アニリド誘導体(1)を包含するアミド誘導体、ならびにそのインスリン分泌抑制作用、インスリン感受性増強作用、β3刺激作用に基づく抗肥満作用、および抗高脂血症作用が開示されている。しかし、頻尿もしくは尿失禁の治療または予防剤としての作用については開示されていない。
【0007】
また、特許文献3には、特許文献1または特許文献2に記載された化合物、および本願化合物と構造的に類似のアミド誘導体、ならびにそのβ3受容体選択的刺激作用、インスリン分泌促進作用、インスリン感受性増強作用、糖尿病治療薬としての使用が開示されている。しかし、頻尿もしくは尿失禁の治療または予防剤としての作用については開示されておらず、さらに本願実施例3の比較例として示す通り、膀胱平滑筋弛緩作用は本願化合物よりも著しく弱い。
【特許文献1】国際公開第2004/041276号パンフレット
【特許文献2】国際公開第99/20607号パンフレット
【特許文献3】特開平10-218861明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、著しく高い効果を有する優れた頻尿もしくは尿失禁の治療または予防剤として有用な新規化合物、それらを含む医薬、およびそれらを含有する頻尿もしくは尿失禁の治療または予防剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため鋭意検討した結果、新規なアミド誘導体を見出し、またそれらが、膀胱平滑筋の弛緩作用が強く、優れた頻尿もしくは尿失禁の治療または予防効果を有することを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、一般式(I)
【0011】
【化2】

【0012】
[式中、R1は、炭素数1〜6の直鎖または分岐アルキル、あるいは無置換または以下の(a)及び(b)から独立に選ばれる1つもしくは複数の置換基によって置換されたフェニル、
(a) 炭素数1〜6の直鎖または分岐アルキル、
(b) ハロゲン
R2およびR3は、それぞれ独立して水素または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐アルキル(ただし、R2およびR3は、同時に水素ではない。)、R4は、水素または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐アルキル、R5a、R5b、R5cおよびR5dは、それぞれ独立して水素または-OR6(ここでR6は、水素または炭素数2〜7の脂肪族もしくは芳香族アシルである。)、Arは、無置換、あるいは1つもしくは複数のR7によって置換されたベンゼン環、チアゾール環、オキサゾール環またはイミダゾール環(ここでR7は、-NR8R9または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐アルキル、R8およびR9は、それぞれ独立して水素、炭素数16の直鎖もしくは分岐アルキルまたは炭素数2〜7の脂肪族もしくは芳香族アシルである。)、であり、nは、0〜2の整数である。]
で示されるアミド誘導体またはその薬学的に許容される酸付加塩、ならびに当該アミド誘導体またはその薬学的に許容される酸付加塩を含有する医薬、ならびに当該アミド誘導体またはその薬学的に許容される酸付加塩を含有する頻尿もしくは尿失禁の治療または予防剤を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一般式(I)で表されるアミド誘導体またはその薬学的に許容される酸付加塩は、優れた頻尿もしくは尿失禁に対する治療効果または予防効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
一般式(I)で表されるアミド誘導体の中で、R1、R2、R3、R4、R7、R8およびR9の炭素数1〜6の直鎖または分岐アルキルとしては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが挙げられ、これらは限定的なものではない。
【0015】
R1のフェニルの置換基であるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられ、これらは限定的なものではない。
【0016】
R6、R8およびR9の炭素数2〜7の脂肪族または芳香族アシルとしては、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ベンゾイルなどが挙げられ、これらは限定的なものではない。
【0017】
R1の無置換、あるいは1つもしくは複数の(a)炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐アルキルまたは(b)ハロゲンによって置換されたフェニルとしては、例えば、フェニル、p-トリル、m-トリル、o-トリル、p-クロロフェニル、m-クロロフェニル、o-クロロフェニルなどが挙げられ、これらは限定的なものではない。
【0018】
R1としては、炭素数1〜6の直鎖または分岐アルキルが好ましく、具体例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert-ブチルが挙げられるが、メチルまたはイソプロピルがさらに好ましい。なお、R1が無置換、あるいは1つまたは複数の(a)炭素数1〜6の直鎖または分岐アルキルまたは(b)ハロゲンによって置換されたフェニルである場合、フェニルまたはp-トリルが好ましい。
【0019】
R2およびR3としては、それぞれ独立して水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルが好ましく、水素、メチル、エチル、プロピルがさらに好ましく、水素、メチルが特に好ましい(ただし、R2とR3は同時に水素ではない)。
【0020】
なお、R1、R2およびR3の特に好ましい組み合わせとしては、R1がメチルまたはイソプロピル、R2およびR3がそれぞれ独立して水素またはメチルである場合が挙げられる(ただし、R2およびR3は同時に水素ではない。)。
【0021】
R4としては、水素、メチル、エチル、プロピルまたはイソプロピルが好ましく、水素、メチル、エチル、プロピルがさらに好ましく、水素が特に好ましい。
【0022】
R5a、R5cおよびR5dとしてはそれぞれ独立して水素、ヒドロキシ、ベンゾイルオキシ、ピバロイルオキシが具体例として挙げられるが、水素、ヒドロキシが好ましく、水素がさらに好ましい。
【0023】
R5a、R5cおよびR5dが水素である場合、R5bとしては-OR6が好ましい。ここでR6としては、水素、アセチル、プロピオニル、ピバロイル、ベンゾイルなどが具体例として挙げられるが、水素、アセチル、ピバロイルまたはベンゾイルが好ましく、水素またはベンゾイルがより好ましく、水素が特に好ましい。したがって、R5bはヒドロキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシまたはベンゾイルオキシが好ましく、ヒドロキシまたはベンゾイルオキシがさらに好ましく、ヒドロキシが特に好ましい。
【0024】
Arとしては、無置換、あるいは1つもしくは複数の置換基によって置換されたベンゼン環、チアゾール環またはオキサゾール環が好ましく、無置換、あるいは1つもしくは複数の置換基によって置換されたベンゼン環またはチアゾール環が特に好ましい。ここでAr上の置換基であるR7としては、-NR8R9、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐アルキル(R8およびR9はそれぞれ独立して水素、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐アルキル、または炭素数2〜7の脂肪族もしくは芳香族アシル)であり、具体例として、アミノ、アミノメチル、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、アセトアミド、ベンズアミド、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルなどが挙げられるが、アミノ、ジメチルアミノ、メチルまたはイソプロピルが好ましく、アミノまたはメチルがさらに好ましく、アミノが特に好ましい。
【0025】
nは、0〜2の整数であるが、1または2が好ましく、特に1が好ましい。ただし、これらはあくまでも具体例を示したに過ぎず、これらに限られるものではない。
【0026】
本発明の一般式(I)のアミド誘導体は1個ないし数個の不斉炭素原子を有するが、これに基づく光学異性体、ジアステレオマーが存在することになる。本発明は、これらの単一異性体またはラセミ体もしくはジアステレオマー混合物も包含する。
【0027】
本発明の一般式(I)のアミド誘導体の薬学的に許容される酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、グルタル酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マンデル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、フタル酸塩等の有機カルボン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、カンファ−スルホン酸塩等の有機スルホン酸塩等が挙げられ、中でも、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩等が好ましく用いられるが、これらに限られるものではない。
【0028】
本発明の一般式(I)のアミド誘導体のうち、R2がメチル、R4が水素、R5a、R5cおよびR5dが水素、R5bが-OR6である下記一般式(Ia)で示される化合物が好ましい代表例として挙げられ、その具体例を表1に示す。
【0029】
【化3】

【0030】
[式中、R1、R3、R6、Arおよびnは、上記定義に同じ。]
なお、表中、Arは記号1a〜1dで示した。その記号はそれぞれ下図の置換基を表す。
【0031】
【化4】

【0032】
【表1−1】

【0033】
【表1−2】

【0034】
【表1−3】

【0035】
【表1−4】

【0036】
上記一般式(I)で示される本発明のアミド誘導体は、その基本骨格や置換基の種類に由来する特徴に基づいた適切な方法で製造することができる。なお、これらの化合物の製造に使用する出発物質と試薬は一般に入手することができるか、またはOrganic Reaction(Wiley & Sons)、Fieser and Fieser’s Reagent for Organic Synthesis(Wiley & Sons)などの参考文献に記載の手順に従った、当業者に既知の方法によって合成できる。代表的な化合物である一般式(Ia)で示されるアミド誘導体の製造方法として、例えばスキーム1に示す方法を挙げることができる。
【0037】
【化5】

【0038】
[式中、R1、R2、R3、R4、R6およびArは、上記定義に同じであり、Yはヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイロキシ、ハロゲンなどの脱離基を示す。]
具体的には、一般式(II)のアミド誘導体は、例えば、特許文献2や特許文献3等に記載されている方法を用い、一般式(III)で表されるアミン誘導体と、一般式(IV)で表されるカルボン酸誘導体を縮合させて得ることができる。この場合、必要に応じて反応系中に、縮合剤、酸もしくは塩基を単独で、または適宜組み合わせて共存させると満足すべき結果が得られる。カルボン酸誘導体(IV)はアミン誘導体(III)に対して1〜20当量を用いることが好ましく、中でも1〜10当量で満足のいく結果が得られる。
【0039】
溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶媒、酢酸、プロピオン酸などの酸性溶媒、水、あるいはそれらの混合溶媒を用いることができるが、Yがヒドロキシであるカルボン酸を用いる場合には、メタノール、エタノール、ジクロロメタン、クロロホルム、もしくは水が好ましく用いられ、Yがアルカノイロキシである酸無水物もしくはハロゲンである酸ハロゲン化物の場合には、DMF、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルムが好ましく用いられる。Yがヒドロキシであるカルボン酸を用いる場合には、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、ジエチルホスホリルシアニド(DEPC)、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドなどの縮合剤を共存させるとよい結果が得られる。
【0040】
また、この縮合においては、塩酸などの酸を適当量添加し、2級アミン部分を塩化しておくと副反応が抑制され、好ましい結果が得られることがある。もちろん、t-ブトキシカルボニル基などの適当な保護基による2級アミン部分の保護/脱保護工程を加えることも考え得る。Yがアルカノイロキシである酸無水物もしくはハロゲンである酸ハロゲン化物を用いて縮合する際に塩基を共存させる場合には、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウムなどの無機塩基、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデカン(DBU)などの有機塩基を用いることができるが、中でもトリエチルアミン、ピリジン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムが好ましく用いられる。また、用いる塩基は、アミン誘導体(III)に対して、1〜30当量、好ましくは1〜10当量が用いられる。
【0041】
Yがアルカノイロキシである酸無水物を用いる際、酸を共存させる場合には、酢酸、プロピオン酸、安息香酸などの有機カルボン酸、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸などを用いることができるが、中でも酢酸が好ましく用いられる。また用いる酸はアミン誘導体(III)に対して、1〜30当量、好ましくは1〜10当量が用いられ、あるいは酢酸自身を反応溶媒として過剰量用いてもよい。
【0042】
反応温度は、通常、-20〜200 ℃、好ましくは0 ℃〜150 ℃で満足すべき結果が得られる。反応時間は、反応温度等の条件に応じて適宜選択されるが、通常、5分〜30時間程度で満足すべき結果が得られる。また、反応系中のアミン誘導体(III)の濃度は、特に限定されるものではないが、通常、1 mmol/L〜1 mol/L程度で好ましい結果が得られる。
【0043】
スキーム1の出発原料となる一般式(III)で表されるアミン誘導体は、例えば、スキーム2に示すように、一般式(V)で表されるニトリルに、一般式(VII)で表されるグリニヤール試薬または水素を付加させ、続いて一般式(VIII)で表されるアミンとイミノ交換反応を行った後、還元して一般式(VI)で表されるアミンを得、続いて脱シリル化した後にニトロ部分を還元して得ることもできる。
【0044】
【化6】

【0045】
[式中、R1、R2、R3、R4およびR6は、上記定義に同じであり、Xは、ブロモまたはクロロ、TBSはtert-ブチルジメチルシリル基、DIBALは、水素化ジイソブチルアルミニウムを示す。]
第一工程のグリニヤールまたは水素付加反応および第二工程のイミノ交換、還元反応は、当業者には自明の方法で対応するアルデヒドから導くことができる一般式(V)で表されるニトリルを出発物質として用い、例えば、特開平5-221936やRecl. Trav. Chim. Pays-Bas, 110, 25(1991)、およびJ. Org. Chem., 58, 4315(1993) 等に記載されている方法で行うことができる。
【0046】
第一工程の付加反応では、グリニヤール試薬(VII)または水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)にニトリル(V)を加えることで、イミン中間体(Va) を得ることができる。反応混合物中のニトリル(V)の濃度は、特に限定されないが、通常、1 mmol/L〜1 mol/Lで満足すべき結果が得られる。グリニヤール試薬(VII)は0.5〜50当量を用いることが可能であるが、通常、1〜20当量、好ましくは1〜5当量が用いられる。反応溶媒としては,特に限定されないが、テトラヒドロフラン(THF)、エーテル、ジメトキシエタン(DME)、ジオキサン等のエーテル系溶媒を、単独で、もしくはこれらの溶媒2種類以上を混合して用いることができ、中でもTHF、エーテル、またはこれらの混合溶媒が好ましく用いられる。反応温度としては、通常、0〜150 ℃,好ましくは0〜100 ℃が考えられるが、20〜80 ℃の範囲で満足すべき結果が得られる。反応時間は反応温度等の条件に応じて適宜選択されるが、通常、5分〜50時間で満足すべき結果が得られる。
【0047】
DIBALは、0.5〜10当量を用いることが可能であるが、通常、1〜5当量、好ましくは1〜3当量が用いられる。反応溶媒としては、特に限定されないが、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を、単独で、もしくはこれらの溶媒2種類以上を混合して用いることができ、中でもジクロロメタンが好ましく用いられる。反応温度としては、通常、-100〜0 ℃、好ましくは-80〜-20 ℃が考えられるが、-80〜-50 ℃の範囲で満足すべき結果が得られる。反応時間は反応温度等の条件に応じて適宜選択されるが、通常、5分〜10時間で満足すべき結果が得られる。
【0048】
第二工程であるイミノ交換、還元反応では、イミン中間体(Va)を単離することなくアミン(VIII)を加え、続いて水素化金属還元剤で還元するか、酸、金属触媒の存在下、水素添加するが、中間に生成するイミンまたはエナミンを単離しても目的物を得ることができる。
【0049】
反応溶媒としては、第一工程で用いた溶媒をそのまま用いてもよいが、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、特に、メタノールを混合して反応すると好ましい結果が得られる。また、第一工程の反応溶媒を減圧留去して、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒のみで反応を行ってもよい。
【0050】
アミン(VIII)は、0.5〜50当量を用いることが可能であるが、通常、1〜20当量、好ましくは1〜5当量が用いられる。水素化金属還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化シアノホウ素ナトリウム、水素化ホウ素亜鉛、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム、水素化トリアセトキシホウ素テトラメチルアンモニウム、ボランーピリジン錯体など、酸の共存する条件で比較的安定なもので実行可能であり、特に、水素化ホウ素ナトリウム、水素化シアノホウ素ナトリウム、ボランーピリジン錯体が好ましく用いられる。水素化金属還元剤は、0.5〜50当量を用いることが可能であるが、通常、1〜20当量、好ましくは1〜10当量が用いられる。反応温度は、通常、-40〜150 ℃、好ましくは-30〜80 ℃で満足すべき結果が得られる。反応時間は、反応温度等の条件に応じて適宜選択されるが、通常、30分〜10時間程度で満足すべき結果が得られる。また、反応系中の基質(Va)の濃度は、特に限定されるものではないが、通常、1 mmol/L〜1 mol/Lが好ましい。
【0051】
酸、金属触媒の存在下水素添加する場合、反応溶媒としては、第一工程で用いた溶媒をそのまま用いてもよいが、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒を混合しても好ましい結果が得られる。また、第一工程の反応溶媒を減圧留去して、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒のみで反応してもよい。
【0052】
本工程では、酸を共存させることも好ましい手段のひとつであるが、共存させる酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸もしくはリン酸等の無機酸、メタンスルホン酸もしくはp-トルエンスルホン酸などのスルホン酸または安息香酸、酢酸もしくはシュウ酸などのカルボン酸等、通常、アミン類と塩を形成する酸は何でも用いることができるが、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸または安息香酸が好ましく、中でもp-トルエンスルホン酸、安息香酸がより好ましく用いられる。共存させる酸の量は特に限定されないが、0.5〜50当量の範囲で実施可能であり、通常は1〜30当量、好ましくは1〜10当量で満足すべき結果が得られる。
【0053】
金属触媒としては、酸化白金、水酸化パラジウム、パラジウム-炭素など、通常の水素添加反応に用いられる触媒はすべて使用可能であるが、酸化白金、パラジウム-炭素が好ましく用いられる。反応温度は-30〜80 ℃、好ましくは10〜50 ℃で、水素圧は1〜100気圧、好ましくは1〜30気圧で実施可能であるが、通常は室温、常圧で好ましい結果が得られる。反応時間は反応条件によって適宜選択されるが、通常、30分〜30時間で満足すべき結果が得られる。また、反応系中の基質(Va)の濃度は、特に限定されるものではないが、通常、1 mmol/L〜1 mol/Lが好ましい。
【0054】
脱シリル反応は、通常用いられている方法を何でも用いることができるが、特に酸性条件下、加水分解する方法が好ましく用いられる。もちろん、無水条件下、テトラブチルアンモニウムフルオリドやHF-ピリジンなどをフッ素源に脱シリル化することも好ましい方法である。
【0055】
ニトロ基の還元は、通常用いられる方法を何でも用いることができるが、特に上記の還元条件で示した金属触媒による水素添加反応が好ましく用いられる。もちろん、酸性条件下、鉄、亜鉛、塩化スズなどにより還元することも好ましい方法である。
【0056】
本発明の化合物が頻尿もしくは尿失禁の治療または予防に有効であることは、文献[J. Pharmacol. Exp. Ther., 293, 939(2000)]の方法で、摘出膀胱平滑筋を弛緩させる作用を示すこと、あるいは文献[Neurology and Urodynamics, 21, 558(2002)]の方法で、プロスタグランジンE2(PGE2)で誘発した排尿反射の間隔を延長させる作用を示すことで確認できるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0057】
本発明の化合物は、摘出膀胱平滑筋を弛緩させる作用、あるいはPGE2で誘発した排尿反射の間隔を延長させる作用を有することから、ヒトへの医薬として用いることができる。
【0058】
具体的には、頻尿、尿意切迫もしくは尿失禁の治療または予防に有用な医薬品として用いることができる。特に、神経因性膀胱障害、夜間頻尿、過活動型膀胱、不安定膀胱、神経性頻尿、心因性頻尿、夜尿症、膀胱けいれん、慢性膀胱炎、慢性前立腺炎、前立腺肥大、前立腺癌などの疾患によって引き起こされる頻尿または尿失禁などの排尿障害の治療または予防に用いることができる。
【0059】
ここでいう神経因性膀胱障害とは、膀胱、尿道、外尿道括約筋からなる下部尿路を支配している神経が何らかの障害を受けた結果、下部尿路の蓄尿、排尿機能に異常をきたした状態をいう。ここで、神経に障害を与える疾患としては、脳血管障害、脳腫瘍、脳外傷、脳炎、脳腫瘍、正常圧水頭症、痴呆、パーキンソン病、線条体黒質変性症、進行性核上性麻痺、オリーブ・橋・小脳萎縮症、Shy-Drag症候群、脊髄損傷、脊髄血管障害、脊髄腫瘍、脊髄炎、頸髄圧迫性疾患、脊髄空洞症、多発性硬化症、二分脊椎、脊髄髄膜瘤、Tethered cord症候群、ミエロパチーなどを挙げることができる。
【0060】
本発明の化合物は、中でも神経因性膀胱障害、過活動型膀胱、不安定膀胱、慢性膀胱炎、慢性前立腺炎、前立腺肥大によって引き起こされる頻尿または尿失禁などの排尿障害の治療または予防剤として好ましく使用される。ただし、本発明の頻尿もしくは尿失禁の治療または予防剤の利用は、これらの疾患例のみに限定されるものではない。
【0061】
また本発明の化合物は、上記の通り頻尿、尿意切迫もしくは尿失禁の治療または予防剤として用いられるだけでなく、さらに、頻尿、尿意切迫もしくは尿失禁のための治療または予防方法、あるいは頻尿、尿意切迫もしくは尿失禁のための使用に用いることができる。さらに、例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サル、など、ヒト以外の哺乳類にも、頻尿、尿意切迫もしくは尿失禁の治療または予防剤に有用な医薬品として、頻尿、尿意切迫もしくは尿失禁のための治療または予防方法として、あるいは頻尿、尿意切迫もしくは尿失禁の治療または予防のための使用にも用いることができる。
【0062】
本発明の化合物を頻尿・尿失禁治療薬などの薬剤として臨床で使用する際には、薬剤はフリーの塩基またはその酸付加塩自体でもよく、また賦形剤、安定化剤、保存剤、緩衝剤、溶解補助剤、乳化剤、希釈剤、等張化剤などの添加剤が適宜混合されていてもよい。投与形態としては、錠剤・カプセル剤・顆粒剤・散剤・シロップ剤などによる経口剤、注射剤・座剤・液剤などによる非経口剤、あるいは軟膏剤・クリーム剤・貼付剤などによる局所投与等を挙げることができる。本発明の頻尿・尿失禁治療薬または予防剤は上記有効成分を0.00001〜90重量%、より好ましくは0.0001〜70重量%含有することが望ましい。
【0063】
その使用量は症状、年齢、体重、投与方法等に応じて適宜選択されるが、成人に対して、注射剤の場合、有効成分量として1日0.1μg〜1g、経口剤の場合1μg〜10g、貼付剤の場合1μg〜10gであり、それぞれ1回または数回に分けて投与することができる。
【0064】
また、本発明の化合物は、他の排尿障害の予防または治療薬、または排尿障害を引き起こす疾患(例えば前立腺肥大症、前立腺癌、糖尿病、脳血管障害、アルツハイマー病を含む痴呆症、うつ病、パーキンソン病、多発性硬化症など)の予防または治療薬と組合せて用いることもできる。
【0065】
他の排尿障害の予防または治療薬としては、例えば、プロパンセリン(Propantheline)、オキシブチニン(Oxybutynin)、プロピベリン(Propiverine)、トルテロジン(Tolterodine)、テミベリン(Temiverine)、トロスピウム(Trospium)、ダリフェナシン(Darifenacin)、ソリフェナシン(Solifenacin)、KRP-197などの抗コリン薬、フラボキセート(Flavoxate)などの平滑筋弛緩薬、NS-8、ZD-0947、KW-7158、ABT-598、WAY-151616などのカリウムチャネルオープナー、ニフェジピン(Nifedipine)、フルナリジン(Flunarizine)などのカルシウムチャネル拮抗薬、バクロフェン(Baclofen)、ジアゼパム(Diazepam)、ランペリソン(Lanperisone)などの骨格筋弛緩薬、イミプラミン(Imipramine)、デシプラミン(Desipramine)、フルオキセチン(Fluoxetine)、フルボキサミン(Fluvoxamine)、ミルナシプラン(Milnacipran)、パロキセチン(Paroxetine)、デュロキセチン(Duloxetine)などの抗うつ薬、デスモプレシン(Desmopressin)などのバゾプレッシン作動薬、TAK-637、SR-48968、Talnetantなどのタキキニン拮抗薬、クレンブテロール(Clenbuterol)、KUC-7483、YM-178、GW-427353などのβ作動薬、カプサイシン、レジニフェラトキシンなどのバニロイド作動薬、SB-705498、AMG-0347、BCTC、A-784168、SPM-955、DD-161515などのバニロイド拮抗薬、ONO-8711、ONO-8992などのPGE拮抗薬、FlurbiprofenなどのCOX阻害薬、R-450などのα1作動薬、ドキサゾシン(Doxazosin)、インドラミン(Indramin)、テラゾシン(Terazosin)、ウラピジル(Urapidil)、アルフゾシン(Alfuzosin)、プラゾシン(Prazosin)、ナフトピジル(Naftopidil)、タムスロシン(Tamsulosin)、セロドシン(Selodosin)、 フィドキソシン(Fiduxosin)、KMD-3213などのα1拮抗薬、ヴィンポセチン(Vinpocetine)、GW-286103、ゾニセミド(Zonisamide)、メキシレチン(Mexiletine)、ラノラジン(Ranolazine)、リルゾール(Riluzole)などのナトリウムチャネル阻害薬などを挙げることができる。
【0066】
排尿障害を引き起こす疾患としては、例えば、前立腺肥大症、前立腺癌、糖尿病、脳血管障害、アルツハイマー病を含む痴呆症、うつ病、パーキンソン病、多発性硬化症などが挙げられ、前立腺肥大症の予防または治療薬としては、例えば、フィナステリド(Finasteride)、デュタステリド(Dutasteride)、イゾンステリド(Izonsteride)、CS-891、MK-434などの5α-レダクターゼ阻害薬、フルタミド(Flutamide)、ビカルタミド(Bicalutamide)、ニルタミド(Nilutamide)などのアンドロゲン受容体拮抗薬、アリルエストレノール(Allylestrenol)、クロルマジノン(Chlormadinone)、ゲストノロン(Gestonorone)、シプロテロン(Cyproterone)、オサテロン(Osaterone)、ノメゲストロール(Nomegestrol)などの抗アンドロゲン薬、SB-217242、TA-0201などのエンドセリン拮抗薬、エビプロスタット、セルニルトンなどの植物性製剤、上記したα1拮抗薬などを挙げることができる。
【0067】
前立腺癌の予防または治療薬としては、例えば、リュープロレリン(Leuprorelin)、ゴセレリン(Goserelin)、ブセレリン(Buserelin)、ナファレリン(Nafarelin)、トリプトレリン(Triptorelin)などのLH-RH作動薬、セトロレリックス(Cetrorelix)、ガニレリックス(Ganirelix)、アブラリックス(Abarelix)などのLH-RH拮抗薬、上記した5α-レダクターゼ阻害薬、上記したアンドロゲン受容体拮抗薬、上記した抗アンドロゲン薬などを挙げることができる。
【0068】
糖尿病予防または治療薬としては、例えば、ピオグリタゾン(Pioglitazone)、トログリタゾン(Troglitazone)、ロシグリタゾン(Rosiglitazone)などのインスリン抵抗性改善薬、トルブタミド(Tolbutamide)、クロルプロパミド(Chlorpropamide)、トラザミド(Tolazamide)、アセトヘザミド(Acetohezamide)、グリクロピラミド(Glyclopyramide)、グリベンクラミド(Glibenclamide)、グリクラジド(gliclazide)、グリメピリド(Glimepiride)、レパグリニド(Repaglinide)、ナテグリニド(Nateglinide)などのインスリン分泌促進薬、メトホルミン(Metformin)、ブホルミン(Buformin)などのビグアナイド剤、インスリン、アカーボース(Acarbose)、ボグリボース(Voglibose)、ミグリトール(Miglitol)、エミグリテート(Emiglitate)などのα-グルコシダーゼ阻害薬、AJ-9677、SR-58611-A、SB-226552、AZ40140などのβ3アドレナリン受容体作動薬、その他、エロゴセット(Erogoset)、プラムリンチド(Pramlintide)、レプチン(Leptin)、BAY-27-9955などを挙げることができる。
【0069】
脳血管障害の予防または治療薬としては、例えば、アニラセタム、イブジラスト、チアプリド、カルジオクローム、シチコリン、γ-アミノ酪酸、イフェンプロジル、ニセルゴリン、ビンポセチン、ニゾフェノン、ベンシクラン、シネパジドなどを挙げることができる。
【0070】
アルツハイマー病を含む痴呆症の予防または治療薬としては、例えば、ドネペジルなどを挙げることができる。
【0071】
うつ病の予防または治療薬としては、例えば、上記した抗うつ薬などを挙げることができる。
【0072】
パーキンソン病の予防または治療薬としては、例えば、アマンタジン、トリヘキシフェニジル、ブロモクリプチン、レボドパ、カルビドパ、アポモルヒネなどを挙げることができる。
【0073】
多発性硬化症の予防または治療薬としては、例えば、ステロイド剤、インターフェロン-β-1bなどを挙げることができる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0075】
(参考例1)
2-(tert-ブチルジメチルシロキシ)-2-(4-ヒドロキシ-3-ニトロフェニル)アセトニトリルの合成(ニトリル(3))
【0076】
【化7】

【0077】
[式中、TBSは、上記定義に同じ。]
4-ヒドロキシ-3-ニトロベンズアルデヒド(2)(200 mg, 1.20 mmol)、TBSCN(97%)(435 mg, 2.99 mmol)のジクロロメタン溶液(3 mL)にヨウ化亜鉛(76 mg, 0.238 mmol)を加え、室温で17時間撹拌した。反応混合物に飽和 NaHCO3 水溶液を加えた後、ジエチルエーテルで抽出し、続いて有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を乾燥、濃縮し、目的のニトリル(3)を黄色オイルとして得た(525 mg)。目的のニトリル(3)は精製することなく次の反応に使用した。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ(ppm) : 0.19 (s, 3H), 0.27 (s, 3H), 0.95 (s, 9H), 5.49 (s, 1H), 7.26 (s, 1H), 7.70 (dd, J = 2.0, 8.8 Hz, 1H), 8.22 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 10.7 (s, 1H).
(参考例2)
2-(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-2-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)アセトニトリルの合成(ニトリル(4))
【0078】
【化8】

【0079】
[式中、TBSは、上記定義に同じ。]
粗ニトリル(3)(525 mg)のメタノール溶液(5 mL)に、10 % パラジウム/炭素(200 mg)を加え、水素雰囲気下、室温で1時間撹拌した。反応混合物を濾過し、続いて濾液を濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶出液;n-ヘキサン:酢酸エチル= 5:1)で精製し、目的のニトリル(4)を黄色オイルとして得た(165 mg, 2段階で収率 49 %)。
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ(ppm) : 0.08 (s, 3H), 0.18 (s, 3H), 0.91 (s, 9H), 5.53 (s, 1H), 6.66 (dd, J = 2.0, 8.4 Hz, 1H), 6.67 (t, J = 8.4 Hz, 1H), 6.86 (d, J = 2.0 Hz, 1H).
(参考例3)
2-(3-アミノ-4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)フェニル)-2-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)アセトニトリルの合成(ニトリル(5))
【0080】
【化9】

【0081】
[式中、TBSは、上記定義に同じ。]
ニトリル(4)(165 mg, 0.593 mmol)、イミダゾール(194 mg, 2.85 mmol)の DMF溶液(5 mL)に、TBSCl(214 mg, 1.42 mmol)を加え、室温で18時間撹拌した。反応混合物に水を加えた後酢酸エチルで抽出し、続いて有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を乾燥、濃縮し、次に、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶出液;n-ヘキサン:酢酸エチル= 10:1)で精製して、目的のニトリル(5)を黄色オイルとして得た(206 mg, 収率 89 %)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ(ppm) : 0.12 (s, 3H), 0.19 (s, 3H), 0.25 (s, 6H), 0.92 (s, 9H), 1.02 (s, 9H), 3.80 (br s, 2H), 5.36 (s, 1H), 6.67 (dd, J= 2.0, 8.0 Hz, 1H), 6.72 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 6.82 (d, J = 2.0 Hz, 1H).
(参考例4)
N-(2-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-5-((tert-ブチルジメチルシリルオキシ)(シアノ)メチル)フェニル)メタンスルホンアミドの合成(ニトリル(6))
【0082】
【化10】

【0083】
[式中、TBSは、上記定義に同じ。]
ニトリル(5)(196 mg, 0.500 mmol)、ピリジン(0.3 mL)の ジクロロメタン溶液(3 mL)に、0 ℃でメシルクロリド(60 μL, 0.78 mmol)を加え、続いて室温で17時間撹拌した。反応混合物に水を加えた後酢酸エチルで抽出し、続いて有機層を水、飽和硫酸銅水溶液、水、飽和 NaHCO3 水溶液、飽和食塩水の順で洗浄した。有機層を乾燥、濃縮し、次に、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶出液;n-ヘキサン:酢酸エチル= 15:1)で精製して、目的のニトリル(6)を黄色オイルとして得た(211 mg, 収率 94 %)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ(ppm) : 0.16 (s, 3H), 0.23 (s, 3H), 0.31 (s, 6H), 0.94 (s, 9H), 1.03 (s, 9H), 2.99 (s, 3H), 5.46 (s, 1H), 6.72 (br s, 1H), 6.90 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.17 (dd, J= 2.4, 8.0 Hz, 1H), 7.60 (d, J = 2.4 Hz, 1H).
(参考例5)
N-(5-(2-(4-ニトロフェネチルアミノ)-1-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)プロピル)-2-ヒドロキシフェニル)メタンスルホンアミドの合成(アミン(7))
【0084】
【化11】

【0085】
[式中、TBSは、上記定義に同じ。]
ニトリル(6)(210 mg, 0.446 mmol)のジエチルエーテル溶液(5 mL)に、室温でメチルマグネシウムブロミド(0.87 M THF溶液)(1.2 mL, 1.0 mmol)を加え、続いて 5 時間加熱環流した。反応混合物を室温まで冷却し、メタノール 3 mL、p-ニトロフェネチルアミン(200 mg, 0.987 mmol)/メタノール 5 mLを加え、20 時間撹拌した。次に反応混合物を0 ℃に冷却し、水素化ホウ素ナトリウム(35 mg, 0.93 mmol)を加え、続いて室温で 3 時間撹拌した。反応混合物に水を加えた後酢酸エチルで抽出し、続いて有機層を乾燥、濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶出液;n-ヘキサン:酢酸エチル= 15:1)で精製し、目的のアミン(7)を褐色オイルとして得た(74 mg, 収率 32 %)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ(ppm) : -0.21 (s, 3H), -0.03 (s, 3H), 0.81 (s, 9H), 1.07 (d, J = 6.4 Hz, 3H), 2.74-3.13 (m, 5H), 2.94 (s, 3H), 4.44 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 6.58 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.84 (dd, J = 1.6, 8.0 Hz, 1H), 7.26 (s, 1H), 7.29 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 8.12 (d, J = 8.4 Hz, 2H).
(参考例6)
N-(5-(2-(4-ニトロフェネチルアミノ)-1-ヒドロキシプロピル)-2-ヒドロキシフェニル)メタンスルホンアミドの合成(アミン(8))
【0086】
【化12】

【0087】
[式中、TBSは、上記定義に同じ。]
アミン(7)(74 mg, 0.14 mmol)のメタノール溶液(1 mL)に、4 M 塩化水素/ジオキサン(0.9 mL, 3.6 mmol)を加え、室温で 16 時間撹拌した。反応混合物に 1 N NaOH水溶液を加え、pH=12とした後、アンモニア飽和クロロホルムで抽出し、続いて有機層を乾燥、濃縮した。得られた粗生成物をプレパラティブ TLC(展開溶媒;アンモニア飽和クロロホルム:メタノール= 5:1)で精製し、目的のアミン(8)を黄色オイルとして得た(31 mg, 収率 54 %)。
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ(ppm) : 1.10 (d, J = 6.4 Hz, 3H), 2.74-3.00 (m, 5H), 2.91 (s, 3H), 4.38 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 6.77 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.94 (dd, J = 2.0, 8.4 Hz, 1H), 7.27 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.34 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 8.10 (d, J = 8.8 Hz, 2H).
(参考例7)
N-(5-(2-(4-アミノフェネチルアミノ)-1-ヒドロキシプロピル)-2-ヒドロキシフェニル)メタンスルホンアミドの合成(アミン(9))
【0088】
【化13】

【0089】
アミン(8)(31 mg, 0.076 mmol)のメタノール溶液(2 mL)に、10 % パラジウム/炭素(15 mg)を加え、水素雰囲気下、室温で1時間撹拌した。反応混合物を濾過し、続いて濾液を濃縮して、目的のアミン(9)を黄色オイルとして得た(29 mg)。目的のアミン(9)は精製することなく次の反応に使用した。
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ(ppm) : 1.11 (d, J = 6.4 Hz, 3H), 2.49-2.77 (m, 5H), 2.85 (s, 3H), 4.30 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 6.58 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 6.75 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.78 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 6.88 (dd, J = 1.6, 8.0 Hz, 1H), 7.22 (d, J = 1.6 Hz, 1H).
(実施例1)
2-(2-アミノチアゾール-4-イル)-N-(4-(2-(1-ヒドロキシ-1-(4-ヒドロキシ-3-(メチルスルホンアミド)フェニル)プロパン-2-イルアミノ)エチル)フェニル)アセトアミドの合成(アミド(10))
【0090】
【化14】

【0091】
アミン(9)(29 mg, 0.076 mmol)、2-(2-アミノチアゾール-5-イル)酢酸(28 mg, 0.18 mmol)、1 N HCl水溶液(2.53 mL, 0.25 mmol)の THF 溶液(0.7 mL)に、EDCI( 32mg, 0.17 mmol)を加え、室温で17時間撹拌した。反応混合物に 1 N NaOH水溶液(0.30 mL, 0.30 mmol)を加えた後、混合溶媒(アンモニア飽和クロロホルム:メタノール= 5:1)で抽出し、続いて有機層を乾燥、濃縮した。得られた粗生成物をプレパラティブ TLC(展開溶媒;アンモニア飽和クロロホルム:メタノール= 5:1)で精製、続いて凍結乾燥し、目的のアミド(10)を淡緑色固体として得た(26 mg, 収率 65 %)。
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ(ppm) : 1.13 (d, J = 6.4 Hz, 3H), 2.25-2.79 (m, 4H), 2.85-2.97 (m, 1H), 2.89 (s, 3H), 3.57 (s, 2H), 4.25 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 6.39 (s, 1H), 6.71 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.83 (dd, J = 2.0, 8.4 Hz, 1H), 6.97 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.21 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.39 (d, J = 8.8 Hz, 2H).
(実施例2)
N-(4-(2-(1-ヒドロキシ-1-(4-ヒドロキシ-3-(メチルスルホンアミド)フェニル)プロパン-2-イルアミノ)エチル)フェニル)-2-フェニルアセトアミドの合成(アミド(11))
【0092】
【化15】

【0093】
フェニル酢酸エチル(33 mg, 0.20 mmol)のメタノール溶液(2 mL)に、1 N NaOH水溶液(0.5 mL, 0.5 mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物に1 N HCl水溶液(0.5 mL, 0.5 mmol)を加えた後、濃縮した。この濃縮物に、アミン(9)(31 mg, 0.082 mmol)、THF 2 mL、0.1 N HCl水溶液(0.82 mL, 0.082 mmol)、EDCI( 31 mg, 0.17 mmol)を加え、室温で17時間撹拌した。反応混合物に 1 N NaOH水溶液(0.10 mL, 0.10 mmol)を加えた後、酢酸エチルで抽出し、続いて有機層を乾燥、濃縮した。得られた粗生成物をプレパラティブ TLC(展開溶媒;アンモニア飽和クロロホルム:メタノール= 5:1)で精製し、目的のアミド(11)を淡緑色オイルとして得た(26 mg, 収率 64 %)。
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ(ppm) : 1.09 (d, J = 6.4 Hz, 3H), 2.62-2.94 (m, 5H), 2.84 (s, 3H), 3.67 (s, 2H), 4.41 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 6.79 (d, J= 8.0 Hz, 1H), 6.94 (dd, J = 2.0, 8.0 Hz, 1H), 7.01 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.20-7.25 (m, 2H), 7.29-7.36 (m, 5H), 7.40 (d, J = 8.4 Hz, 2H).
(実施例3)
ラット摘出膀胱平滑筋弛緩作用試験
本法は、文献 [J. Pharmacol. Exp. Ther., 293, 939(2000)] に準じて実施した。正常Spague-Dawley系雄性ラットの膀胱を摘出し、95% O+5% COにて十分に酸素化した栄養液(Krebs液 [NaCl 118 mM; KCl 4.7 mM; NaH2PO4 1.1 mM; glucose 10 mM; NaHCO3 25mM; MgCl2・7H2O 1 mM;CaCl2・2H2O 2.5 mM])中にて2x10mm程度の膀胱切片標本を作製した。95% O+5% COを通気した37℃の栄養液(Krebs液)を満たしたマグヌス管内に標本を懸架し、0.5 gの負荷をかけながら60分間以上安定化させた。膀胱標本静止張力は張力トランスデューサーを介してペンレコーダーに記録した。被験化合物は約10分間ごとに累積投与した。薬効は、10 μMフォルスコリン添加による弛緩反応を100%とし、50%弛緩させるときの被験化合物の濃度の対数をpEC50値として評価した。被験化合物は蒸留水もしくは10%ジメチルスルホキシド水溶液に溶解した。
【0094】
ここで使用した被験化合物のうち、酢酸アニリド誘導体(1)は特許文献1記載の方法に従い合成した。また、以下に示す特許文献3および実施例11記載の化合物(12)は、特許文献3記載の方法に従い合成した。
【0095】
【化16】

【0096】
その結果、表2 に示す通り、いずれの化合物も用量依存的なラット摘出膀胱平滑筋静止張力弛緩作用を示したが、実施例1のアミド(10)および実施例2のアミド(11)では、特許文献1記載の酢酸アニリド誘導体(1)あるいは特許文献3および実施例11記載の化合物(12)より20倍以上強い、予想を越える作用が認められた。
【0097】
【表2】

【0098】
(実施例4)
ラットPGE2誘発頻尿モデルの排尿機能測定試験
本法は、文献[Neurourology and Urodynamics, 21, 558(2002)] に準じて実施した。Spague-Dawley系雌性ラットを用いて、イソフルラン麻酔下に膀胱内圧測定用カテーテルを膀胱内に、および薬物投与用のカテーテルを頸静脈に挿入・固定した。術後3日目にラットをボールマンケージに入れ、膀胱に留置したカテーテルに三方活栓をつなぎ、一方からは生理食塩水を持続注入し排尿反射を惹起させ、他方で膀胱内圧の変化をトランスデューサーを介して記録した。生理食塩水の持続注入による安定した排尿反射が確認された後に、膀胱内注入液を60 μMのプロスタグランジンE2 液に変更し、さらに持続注入した。プロスタグランジン E2液の膀胱内持続注入による頻尿状態惹起が確認された後に化合物を静脈内投与し、投与後の評価パラメーターの変化を観察した。評価パラメーターは、投与後2回の平均排尿間隔とし、薬物投与前3回の平均排尿間隔に対する比にて表した。
【0099】
その結果、表3 に示す通り、実施例1のアミド(10)および実施例2のアミド(11)では、0.1 mg/kgの静脈内投与にて23.3および24.1%の排尿間隔延長作用が観察された。一方、特許文献1記載の酢酸アニリド誘導体(1)では3 mg/kgの静脈内投与でも、7.8%の排尿間隔延長のみしか観察されず、本発明の化合物に強力な作用が確認された。
【0100】
【表3】

【0101】
(実施例5)
ヒト摘出膀胱平滑筋に対する弛緩作用
膀胱ガン手術により摘出された男性膀胱(32-72 才)の正常部分(非癌化部分)を使用した。95% O2 + 5% CO2にて十分に酸素化した栄養液(Krebs液 (NaCl 118 mM; KCl 4.7 mM; NaH2PO41.2 mM; glucose 10 mM; NaHCO3 25 mM; MgCl2・7H2O 1.2 mM; CaCl2・2H2O 2.5 mM))中にて3x10 mm程度の膀胱切片標本を作製した。95% O2 + 5% CO2を通気した37 ℃の栄養液(Krebs液)を満たしたマグヌス管内に標本を懸架し、0.5 gの負荷をかけ、60分間以上放置して安定化させた。膀胱標本静止張力は張力トランスデューサーを介してペンレコーダーで記録した。被験化合物は約10分間ごとに累積投与した。被験化合物は蒸留水もしくは10%DMSO水溶液に溶解した。
【0102】
その結果、10 μMフォルスコリン添加による弛緩反応を100%とした場合、実施例1のアミド(10)および実施例2のアミド(11)は10μMの濃度で約80%の摘出標本弛緩作用を示し、ヒトにおいても強力な作用を示すことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明になる、新規なアミド誘導体またはその薬理学的に許容される酸付加塩は、それらを有効成分とする医薬、特に頻尿もしくは尿失禁の治療または予防剤として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

[式中、R1は、炭素数1〜6の直鎖または分岐アルキル、あるいは無置換または以下の(a)及び(b)から独立に選ばれる1つもしくは複数の置換基によって置換されたフェニル、
(a)炭素数1〜6の直鎖または分岐アルキル、
(b)ハロゲン
R2およびR3は、それぞれ独立して水素または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐アルキル(ただし、R2およびR3は、同時に水素ではない。)、R4は、水素または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐アルキル、R5a、R5b、R5cおよびR5dは、それぞれ独立して水素または-OR6(ここでR6は、水素または炭素数2〜7の脂肪族もしくは芳香族アシルである。)、Arは、無置換、あるいは1つもしくは複数のR7によって置換されたベンゼン環、チアゾール環、オキサゾール環またはイミダゾール環(ここでR7は、-NR8R9または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐アルキルであり、R8およびR9は、それぞれ独立して水素、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐アルキルまたは炭素数2〜7の脂肪族もしくは芳香族アシルである。)、であり、nは、0〜2の整数である。]
で示されるアミド誘導体またはその薬学的に許容される酸付加塩。
【請求項2】
一般式(I)において、R1は、炭素数1〜6の直鎖または分岐アルキルである、請求項1に記載のアミド誘導体またはその薬学的に許容される酸付加塩。
【請求項3】
一般式(I)において、R5a、R5cおよびR5dは、水素であり、R5bは、-OR6(ここでR6は、水素または炭素数2〜7の脂肪族もしくは芳香族アシルである。)である、請求項1または2に記載のアミド誘導体またはその薬学的に許容される酸付加塩。
【請求項4】
R6は、水素、アセチル、ピバロイルまたはベンゾイルである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアミド誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
一般式(I)において、Arは、無置換、あるいは1つもしくは複数のR7で置換されたベンゼン環またはチアゾール環であり(ここでR7は、-NR8R9または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐アルキルである。)、nは、1または2である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアミド誘導体またはその薬学的に許容される酸付加塩。
【請求項6】
R7は、アミノ、ジメチルアミノ、メチルまたはイソプロピルである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアミド誘導体またはその薬学的に許容される酸付加塩。
【請求項7】
一般式(I)において、R1は、メチルまたはイソプロピルであり、R2およびR3は、それぞれ独立して水素またはメチルである(ただし、R2およびR3は、同時に水素ではない。)、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアミド誘導体またはその薬学的に許容される酸付加塩。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のアミド誘導体またはその薬学的に許容される酸付加塩を含有する医薬。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のアミド誘導体またはその薬学的に許容される酸付加塩を含有する頻尿もしくは尿失禁の治療または予防剤。

【公開番号】特開2009−190992(P2009−190992A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31483(P2008−31483)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】